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チェイン☆パニックは、鋼鉄の咎

#アイドル☆フロンティア #デイドリーム

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#アイドル☆フロンティア
#デイドリーム


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●真実
 ハウリング音が響く拡声器を手にしたオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』は、アイドル☆フロンティアのとある街、人々が一斉に横断するスクランブル交差点の中心に彼は立っていた。
 キーン、と独特な音を立てるハウリングは、人々の耳目を強制的に引き付けるものであった。
「っ、なんだよ、うっせーなぁ!」
 往来の若者は、耳障りな音に僅かに腹を立てた。
 反応はまちまちであった、と言うべきか。
 確かにハウリング音は人々に不快な思いをさせただろう。
 だが、今まさに声を荒げた若者ほど苛立ちをあらわにするものは僅かだった。それは人々の抱えるストレスの質というものに差があるからだ。

 若者たちのように即座に苛立ちを発散できる者たちは、まだ生きやすい者たちであると言えるだろう。
 しかし、現代社会は彼らのように怒りを発散させる者たちを歓迎はしない。
 淘汰、まではしないものの、冷ややかな目で見るだろう。
「いいですか、みなさーん☆ よぉく聞いて下さーい☆」
『光の戦士ボウロンジャー』は、その見た目からは想像もできないほどに……高い声を響かせた。
 スクランブル交差点を歩く人々は、その声に訝しむ。
 だが、それも一瞬だった。
 すぐさま無視して人々は道を急ごうとするだろう。

「いいですかぁ☆ 皆さんは闇の支配者を倒す為に選ばれた光の戦士たちなんです! この世界は、闇の支配を受けているんです☆ いいですかぁ☆ それはぁ、『九人の英雄』たちによってなされていることなんでぇす☆」
 ああ、と人々は思っただろう。
 頭のおかしい奴なんだな、と。
 いるんだよな、こういう奴、と。
 人々はよくある陰謀論者なのだと理解して、興味なさげに歩みを再開しようとした。
 だが、次の瞬間、僅かでも『そうかもしれない」と思考した人々は、足を止めた。
「足が……? なんで、動かないっ……!? 商談に遅刻しちまう!?」
「えっ、えっ!? これから出社しないといけないのに……!」
「わかりますよぉ☆ みなさんがどうしてしたくもない労働をしなくちゃあならないのか☆ それはですね、全部『九人の英雄』たちのせいなんです☆」
「だからなんだよ、その『九人の英雄』たちってのは!」
「もちろん、お教えしますよぉ☆」
 それが『光の戦士ボウロンジャー』の手腕であった。

 その言葉を聞いた瞬間、人々の心の中には『骸の海』が溢れ出してしまっていた。
 働きたくない。
 休みが欲しい。
 のんびりしたい。
 それはささやかな願いであった。
 だがしかし、現実にはならない。
 そう、実現しないのだ。
 何故なら。
「そうです☆ これもそれもみんな『九人の英雄』たちが戦い続けたからです☆」
 アイドル☆フロンティアにそんな話はない。
 だが、『光の戦士ボウロンジャー』は、まるであったかことのように語り続ける。
「彼らは他の小国家同士の戦争に介入して、これを引っ掻き回し続けたのです☆ 結果、彼らは戦争状態を引き伸ばし、多くの国が滅びることになったのです!」
 正気を保った者たちからすれば、一体何の話をしているのだと思っただろう。
 実際、意味がわからなかった。
 小国家?
 そもそも、『九人の英雄』とは?

『光の戦士ボウロンジャー』の語る言葉は、どれもが偽りの言葉であった。
 だがしかし、あるものにとっては真実に思えたことだろう。
 そういうユーベルコードであるとしか思えない。
 誘発されたストレスが連鎖反応を引き起こし、次々と人々の心の中から骸の海が溢れ出し、その姿がオブリビオンへと変貌していく。
「……」
 それは物言わぬ、心なきオブリビオン『マインド・ロボット』。
「さあ、みなさんも真実を☆」
『マインド・ロボット』たちを引き連れた『光の戦士ボウロンジャー』は拡声器を手に、まるで群れなすようにアイドル☆フロンティアを埋め尽くさんと、その偽りの真実でもって世界を侵食しはじめるのだった――。

●アイドル☆フロンティア
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。アイドル☆フロンティアにおいて、連鎖的に人々の中から『骸の海』が溢れ出してしまう事件が予知されてしまいました……」
 彼女の暗い表情からも、それがどんなに深刻な事態であるかを知ることができただろう。
 それも一体のオブリビオンから発生してしまった事態であるようだった。

 オブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』は、、ありもしない偽りの真実によって人々が日々労働に勤しむのは、『九人の英雄』たちのせいだと、でっちあげているのだ。
 無論、人々もこれが真実だとは思ってない。
 だが、時に人は好都合な虚構を信じることもある。
 そこに漬け込まれて、人々は『骸の海』を溢れさせ、連鎖反応的にオブリビオンへと変貌してしまったのだ。
「まさにドミノ倒し状態です。街がパニックになるのは時間の問題でしょう。ですが、これを見過ごすことはできません。現場に向かい、アイドルステージを召喚し、オブリビオンを一掃しましょう!」
 ナイアルテは、それがどんなに難しいことなのかわかっている。
 アイドルステージは観客席。
 サイリウムの光は、すべて人々の無意識なのだ。
 加えて、観客を魅了するパフォーマンスが求められる。

 敵の数もそうだが、何故かこの世界のオブリビオンは非常に強大だ。
 応援なくば、戦うことも立ち行かぬだろう。
「皆さんのパフォーマンスは、観客の応援を得ることでユーベルコードの威力が上がるのです。これを利用しない手はないですよね」
 そして、ナイアルテは今一度深く一礼し、面を上げた。

「ストレスの元を煽った虚構に塗れたオブリビオンの言説をぶっとばしましょう!」
 人々のストレスを解消できるのは猟兵達だけなのだ。
 見えぬ脅威。
 そのストレスの恐ろしさを垣間見る事件に立ち向かう猟兵たちの背中をナイアルテは見送るのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はアイドル☆フロンティアで起こる連鎖的に心の中から『骸の海』を溢れさせてしまう人々の事件を解決するシナリオになっております。
 その元凶となったオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』を打倒し、オブリビオンとなった人々を元にもどしましょう。

 街に溢れたオブリビオンたちですが、すぐさまアイドルステージを出現させて戦わねばなりません。

 ※アイドルステージとは。
 出現したアイドルステージ上でしか、『骸の海』を心に持つ人々はオブリビオン化しません。
 観客席には人々の無意識が『サイリウム』となって召喚されています。
 その人々の無意識を魅了するパフォーマンスを加えて戦えば、応援の量に応じて威力が増加します。
 この世界のオブリビオンはなぜか非常に強大ですので、応援が得られた方が良いでしょう。

●第一章
 集団戦です。
 オブリビオン『マインド・ロボット』溢れる街中に乗り込み、アイドルステージを召喚し、オブリビオンを一掃しましょう。
 数が数だけに大規模なアイドルパフォーマンスが求められるでしょう。
 それによって応援を受けて戦えば、百人力です!

●第二章
 ボス戦です。
 数多くのオブリビオンを一掃しましたが、彼らを扇動していた一体の一際強力なオブリビオンが残っています。
 それが『光の戦士ボウロンジャー』です。
 前章で助け出した人々はすでに元の姿に戻っています。
 彼らはすでに皆さんのアイドルパフォーマンスで、ファンになっています。彼らの声援を受けて、『光の戦士ボウロンジャー』を撃破しましょう。

●第三章
 日常です。
 皆さんの活躍によって、この連鎖事件は解決しました。
 正気を取り戻した人々はすっかり皆さんのファンとなっています。特にオブリビオンから元に戻された人々は皆さんを強烈に覚えていますので、写真をねだられます。
 取り合わなくてもいいでしょうが、折角の機会なので付き合ってもいいかもしれません。
 ちょっとしたアイドル気分も、たまにはリフレッシュにはいいはずです。

 それでは連鎖的に起こってしまう人々のオブリビオン化事件。人々の心に沈むストレスを解消して、皆ハッピーにするためにパフォーマンスを決める皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『マインド・ロボット』

POW   :    ロボニクス・ボム
自身の身体部位を切断し、(レベル×切断部位数)m半径内の全てを爆破する【自走式追尾爆弾】に変換する。
SPD   :    反生命化装置
知性のない【機械】をレベル体まで眷属化できる。弱点「【自爆装置】」の付与量に比例し、眷属の戦闘力が増加する。
WIZ   :    ギブアップレイ
【胸の模様】から【精神破壊光線ギブアップレイ】を放つ。ダメージは与えないが、命中した対象の感情から【生きる意欲】を奪う。

イラスト:雲間陽子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……」
 何も考えたくない。
 考えれば、それだけ心にストレスが溜まる。
 だから、何も考えたくない。
 生きるためには働かなくてはならない。別に金が稼ぎたいわけではない。生きる糧を得るために仕方なく生きているだけなのだ。
 だから、何も考えたくない。
 別にいいじゃあないか。
 何かを考えずとも生きていたって。誰も困らない。 
 社会の歯車になることをどうして謗られなければならない。
 精一杯生きてきたじゃないか。それなのに、まるでロボットのようだと。言われたことしかできないと言われる。
「……」
 それでいい。それがいい。
 命令されたことしかしない。それ以外しない。そんな生き方があってもいいじゃないか。
 オブリビオン『マインド・ロボット』たちは街に溢れている。
 それを先導するのがオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』である。
「みなさんのような歯車になることを強いるのが『九人の英雄』なのです☆ 彼らが生み出したのは、ただ争いという需要のみ☆ 平和という幻想を見せて、ただ徒に人を戦いに駆り立てたのです☆ さあ、みなさんは目覚める奴隷となって、この世界を破壊してやりましょう☆」
 その扇動に従うように何も考えたくないと己が心の中の骸の海を溢れさせた人々は、連鎖的に生まれていく――。
ルクス・アルブス
【ステルク】

えっ。香りました?
わたしぜんぜんわからなかったですけど!

いやそう言うと、いつもはわかってる、みたいですけど、
いつももわかってはいないんですが。

なんかお話は聞いたことある気が……。
って、はい!覚えてます!
覚えてますから『憂国学徒兵』マラソンは許してください!

(しばらくおまちください。|杏《A》|仁《N》|豆腐《D》で救命しています)

ふっ。ステラさんからのリクエスト、応えないわけにはいかないですね。(イケメン勇者面)
あっ、いえ、口元の欠片はスルーしてくださいよぅ。

それではあらためましていきます……【ボレロ】!

って、ステラさーん!?
煩悩でユーベルコードキャンセルされてるじゃないですかー!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
香りがほんのりしまぁぁぁすっ!!
いえ、ぶっちゃけこの世界にエイル様は関係ない気がしますけれども!
小国家同士の戦争に介入する『九人の英雄』――『憂国学徒兵』ですね?
よろしい、ならば断罪だ!!

さてルクス様がアナフィラキシーショック起こしかけてるので
手作り杏仁豆腐の餌付けで救命しましょう
思わぬところでバイスタンダー
大丈夫ですかルクス様
この世界ならルクス様は無敵ですよ
さぁ立って
演奏するのです!料理も出来る演奏家勇者アイドルとして!!

このストーリー仕立て完ぺきでは
後は歌うだけ
大丈夫、メイドに出来ない事はありません!
【ヴァレット・パープル】
メイドの力、お見せしましょう!



 街中を征くは、鋼鉄の人形。
 オブリビオン『マインド・ロボット』は、人々の心から溢れた骸の海によって、その人達を鋼鉄の骸のごとき姿に変貌させていた。
 彼らは皆、一様にうつむくようにして行軍を続ける。
「……」
 言葉はない。
 ただ進む。
 命令されるままに。命令されたくないと願っていたはずなのに、命令されることで何も考えなくていいという楽さに流されていた。
 それで困ることはない。
 これまでと同じなのだ。
 自分で動いていたように思えて、己がただの奴隷だったことを自覚してしまっていたのだ。
 眠れる奴隷が目覚めた時、己の立場を自覚して絶望する。
 溢れた骸の海がそれを証明していた。

 そんな暗澹たる空気を引き裂くようにして響いたのは、一つの叫びだった。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りが、ほんのりしまぁぁぁぁすっ!!」
 それはあまりにも場違いな叫びであった。
 暗い鬱屈とした雰囲気をぶち壊すような声。
 その声の主、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は盛大にぶっちゃけた。
 まるでちゃぶ台返しのようであった。
「えっ。香りました? わたしぜんぜんわからなかったですけど!」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は自身が最も苦手とするシリアスな雰囲気にドン引きしながらも、ステラの叫びにもドン引きしていた。
 二重にドン引きすることによってシリアスを打ち消す高度な技術である。そんな技術はない。

「いえ、ぶっちゃけこの世界に『エイル』様は関係ない気がしますけれども!」
「じゃあ、いいんじゃないですか?」
「ですが、あのオブリビオンが語る与太話は捨て置くことはできません!」
「そうなんですか? わたしには何がなんだか……いえ、いつもはわかってる、みたいな感じになりましたけれど、いつもわかってはないんですが……何か、聞いたことあるお話のような……?」
「小国家同士の戦争に介入する『九人の英雄』――『憂国学徒兵』ですね?」
「え、あ、はぁ……」
 ルクスには、ピンと来ていなかった。
 が、ステラにはピンと来ている様子だった。
「よろしい、ならば断罪だ!! 覚えていますよね、ルクス様!」
「えっ、あ、はい! 覚えてます! 覚えてますから『憂国学徒兵』マラソンは許してください!」
 そんな二人のコミカルなやりとりとは裏腹に、『マインド・ロボット』たちがゆっくりと迫ってくるのだ。
 それも大群である。
 どれだけの人々が心から骸の海を溢れ出させたのかわからぬほどであった。

「シ、シリアスが過ぎませんか!?」
 あまりの光景にルクスは失神しそうになっていた。
 いや、アナフィラキシー・ショックをお腰掛けていた。
「ルクス様、これを! 手作り杏仁豆腐です!」
 思わぬところからのバイスタンダー。
 救命の杏仁豆腐でルクスはなんとか踏み堪えていた。
「大丈夫ですかルクス様。この世界ならルクス様は無敵ですよ」
 召喚されるアイドルステージ。
 豪華絢爛。
 紙吹雪と共に銀テープが吹き飛び、スポットライトが乱舞する。
 そんなアイドルステージの周囲には人々の無意識が変貌したサイリウムライトの光が揺れている。

「さぁ立って。演奏するのです! 料理もできる演奏系勇者アイドルとして!!」
 属性が大渋滞である。
 しかし、ルクスは不敵に笑む。
「ステラさんからのリクエスト、応えないわけにはいかないですよね」
 画風が代わっている。
 なんだか少女漫画チックにキラキラしている気がする。
 心做しかイケメンに見える不思議!
 だが。
 ひょい、杏仁豆腐ついてるぜ☆
「口元はスルーしてくださいよぅ」
「後は歌うだけです! さあ、行きましょう、ルクス様。『憂国学徒兵』を語るオブリビオンをぶっ飛ばすのです」
「それでは、あらためましていきます……ボレロ! 響け、わたしの魂!」
 グランドピアノの旋律が戦場に響き渡る。
 ユーベルコードによる魂に響く旋律は、『マインド・ロボット』たちの鋼鉄の骸を打ち据える。

 そして、ステラが飛び込む。
 しかし、ステラは主人様が絡んでいるがゆえに平常心が損なわれていた。
 彼女の頭の中ではあれやそれやな煩悩が満ちていた。
 しかたない。
 かれこれ数年、主人様成分を全うに補充できていないのだ。
 補充できていないものは、どこから供給するのか。無論、自己供給である。
「って、ステラさーん!? 煩悩で弱体化してませんか!?」
「大丈夫です、メイドにできないことはありません! メイドに不可能などありませんので」
 炸裂する自爆装置。
 放たれたのは『マインド・ロボット』たちのユーベルコード。
 爆風荒ぶ中に、メイドは立つ。
 爆発とは無縁とも言えるメイド服。
 しかし、そのメイド服を焦がしながらもステラは立つ。
 何故なら、彼女は完璧なメイド。
 主人が絡まない時の平常心など、そこら辺に投げ捨てて置けばいい。
 であれば、彼女はなんのために戦うのか。
 煩悩ために。ではないと、いいけれど、まあ、煩悩やろなぁ……という具合である。 
 弱体化してなお、有り余る主人様への特大激重感情と共にステラの瞳は獰猛にもユーベルコードに輝いた。
「メイドの力、お見せしましょう!」
「うそでしょう?」
 ルクスは見ただろう。 
 爆発の嵐の中に立つステラのユーベルコードの鮮烈な光が、戦場を切り裂いたのを――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【理ジェ】

サージェさんの前口上をキャンセルして鼓の音を入れ、
【虚実置換】でサージェさんを番長スタイルに早着替えさせて……。

ひとつ、人の世、涎を啜り
ふたつ、不埒なたわわ三昧
みっつ、魅力の浮き袋を
崇めて魅せよう、チョコバスト

ばばーん、とサージェさんにピンスポ当てて、殺陣の音楽を流すね。

戦闘はサージェさんメインなので、わたしはサポート。
近寄ってきた敵を【ダイナソー】で殴るくらいにしておくね。

『九人の英雄』にすべての責任を押しつけるなど片腹痛い!

そんな他責思考に未来などない。自らの道は自分で決めるもの。

そして!
そんなあなたに『菜医愛流帝』!
powerとkawaiiの『菜医愛流帝』にみんなの清き一票を


サージェ・ライト
【理ジェ】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくてあるぇぇぇぇぇぇ?!
今日最後まで言い切れる流れでしたよね?!
しかも違う口上になってるぅぅぅ!?
桃娘サムライじゃないですよ私!?
あと、その口上、菜医愛流帝さんの事ですよね!?
わかりました、乗りましょう

抜けば玉散るクノイチの牙
ええい、寄るな寄らば、ていやーーっ!!(漆黒竜ノ牙投擲)
ふっ、またつまらぬモノを……アッハイ
ちゃんと斬りますね
「手数こそ正義! 参ります!!」
攻撃回数重視の【疾風怒濤】ーッ!!

ふっ、これぞ魅せるクノイチ……

さぁ萌えよ!『菜医愛流帝』に!
P(power)&K(kawaii)しちゃう『菜医愛流帝』に皆さんの清き一票を!



 並み居るオブリビオン『マインド・ロボット』の群れ。 
 それは波のような大群であったことだろう。
 自らを鋼鉄の骸へと変貌させたのは、心の中より溢れた骸の海。
 彼らの心から溢れたストレスは、そのまま彼らの体をも変貌させた。日々の生活のストレス。それは生きるための糧を得るために得たものだった。
 必要にかられて労働に勤しまねばならぬという現実は、徐々に彼らの心を蝕んだだろう。
 外的要因をはねのけるはずの鋼鉄の鎧は、いつしか内側にあった柔らかいものをも蝕んだ。
 故に虚しか残っていない。
 彼らは皆、鎧った心の内側をすり減らして生きているのだ。
 それ故に、オブリビオンと変じた彼らは虚ろな眼差しのまま、行軍する。
 誰かが、彼らを救わねばならない。
 そうしなければならない。
 でなければ、骸の海に全てが飲み込まれてしまうから。

「お呼びとあらば参じましょう」
 それは明朗なる声であった。
 この薄暗い絶望が香る街中にあって、太陽の日差しのように明るくも軽い声であった。
「私はクノイチ、胸が大きくて」
 いつもの前口上。だが、響き渡るのは鼓の音。
 瞬間、前口上にきらめくサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)の体。
 それはユーベルコードの輝きだった。
「あるぇぇぇぇぇぇぇ?!」
 なにこれ! なにこれ!? とサージェは戸惑っていた。
 何が起こっているのか。
 さっぱりわからない。
 自身の前口上はいつからこんな豪華絢爛なやつになったのか。なんか番長スタイルになっている。

「ひとつ、人の世、涎を啜り」
 なんか始まった。
「ふたつ、不埒なたわわ三昧」
 え、なにこれ、とサージェは困惑した。 
 アイドルステージのライトに照らされた彼女自身が一番困惑しているという事態。
 オブリビオン『マインド・ロボット』たちは困惑というよりも虚ろなままにサージェを取り囲んでいた。
 容赦なしである。
「みっつ、魅力の浮袋を」
「だからなんなんです、この急に始まったナレーションみたいなの!? 今日最後まで言い切れる流れでしたよね!?」
 言い切れる流れってなんだろうか。知らない子ですね。
「崇めて魅せよう、チョコバスト」
 チョコバスト。
 まあ、言わずともわかる。 
 サージェの実ったたわわのことである。飛んだり跳ねたりする度に揺れるあれである。
 いっつも、一番サージェのクノイチらしいところはどこですか? というクエスチョンに対して一番にでてくるのは、その二つであった。一番なのに二つあるとはこれ如何に。いいじゃろがい! 一番が二つあっても!  二つあったらお得じゃろがい!!」

「桃娘サムライ!」
 それは菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の声だった。
 ばばーんと、サージェにスポットライトが集まる。
 殺陣の勇壮なるBGMが響き渡る。
 はっきりって、かなり場違いな気がしてならないが、ここはアイドルステージである。サイリウムの光が揺れるのであれば、それは人々の無意識を揺さぶるものであった。
 コッテコテの時代劇めいた演出。
 しかし、コテコテなのは古来より人々の心を揺さぶってきたからこそ残った様式美であるとも言えるだろう。
 故に人々の無意識には、これが効くのだ!
「それって『菜医愛流帝』さんのことですよね!? その口上!」
「気にしなーい! サージェさん、わたしがサポートするから!」
「ええい、わかりました乗りましょう!」
 どこからともなく飛んできた流れ弾にグリモア猟兵の心がクリティカルを食らったような気がしないでもないが多分気の所為である。 
 だって、『菜医愛流帝』とは別人だからね。そう言い張れるメンタルを持っているのだ。たぶん。

「ええい、寄るな寄らば、ていやーーっ!!」
 迫る『マインド・ロボット』たちのッ群れをサージェは凄まじい勢いの連続攻撃で持って両断していく。
「ふっ、またつまらぬものを……」
「ちゃんとして」
「アッハイ」
 サージェは瞳をユーベルコードの光を湛えながら、迫る『マインド・ロボット』たちに立ち向かう。
 疾風怒濤(クリティカルアサシン)たる庵地激。
 連撃が桜吹雪のように翻り、『マインド・ロボット』たちを切り裂くのだ。

「ふっ、これぞ魅せるクノイチ……」
「はい、次のシーン!」
「えー」
「それにね、『九人の英雄』にすべての責任を押し付けるなど片腹痛い! そんな他責思考に未来などない。自らの道は自分で決めるもの! そして!」
 理緒は己が最も言いたいことをシーンのクライマックスに持ってきたのだ。
「そんなあなたに『菜医愛流帝』!」
「ええ、Power&Kawaiiしちゃう」
『菜医愛流帝に皆さんの清き一票を!」
 絶対なんか総選挙的な何かと勘違いしている二人。
 これ、そういうんじゃないから――!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『光の戦士ボウロンジャー』

POW   :    出でよ☆光輝く戦士たち!
【|闇の支配者を倒す決起《只の迷惑デモ》】を配信中、レベル体までの視聴者を【|光の戦士たち《熱狂的陰謀論者》】の形で召喚する。[|光の戦士たち《熱狂的陰謀論者》]の戦闘力は視聴者の有能さに比例。
SPD   :    真実を知る☆勇気ある応援者!
常識的な行動を囁く【|批判するアンチ共《常識ある知識人達》】と、非常識な行動を囁く【|正しき光の戦士たち《狂信的陰謀論者》】が現れる。[|正しき光の戦士たち《狂信的陰謀論者》]に従うと行動成功率が8倍になる。
WIZ   :    目覚めよ☆正義の心を持つ者よ!
【光の拡声器】から【|この世の真実《洗脳陰謀論》】を放ち、レベルm半径内の対象に「自身に少し有利な行動」を取らせる(抵抗は可能)。

イラスト:AgMino

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は仇死原・アンナです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 鋼鉄の骸を猟兵達は一掃した。
 しかし、アイドルステージには、ひときわ強力なオブリビオンがいる。
 そう、人々の心の中にある骸の海を連鎖反応的に溢れかえらせたオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』であった。
「ちょこざいなことをしてくれますねぇ☆ ですが、私達は負けません☆ なぜなら、私達が正しいから☆ 全ては『九人の英雄』のせいなのです☆ 争いが終わらないのも、争いが起こるのも、全て、彼らのせいです☆ 彼らは成功などしていないのです。歴史は修正され、捏造されているのです☆」
 そう語る彼の言葉は全てが偽りに思えた。
 少なくとも、このアイドル☆フロンティアにおいては意味のない言葉ばかりであった。
 何故なら、この世界では真を語るという彼の言葉は虚実であるからだ。
「騙されてはなりませんよぉ☆ どんなことを言おうと、彼らは争いの前にはやってこない☆ いつだって争いの後にやってくる彼らの言葉など、信じてはなりません☆」
 そう人々の無意識が変貌したサイリウムに語りかける『光の戦士ボウロンジャー』。
 それに呼応するようにサイリウムの光が波を打つ。
 しかし、『マインド・ロボット』たちを撃破した猟兵たちの周囲に多くの人々の姿があった。

「ぬっ☆ なんですか、あなたたちは☆」
 その言葉に彼らは頷いた。
 猟兵たちが撃破した『マインド・ロボット』に変貌していた人々は、猟兵のファンになっていた。
 何故なら、彼女たちの絢爛たる戦いぶりは、彼らの心の虚に潤いを満たしてくれたから。
 不純な動機かもしれない。
 けれど、確かに彼らの心には滾るものがあったのだ。
 響き渡る声援。
 その声援を受けて猟兵達はアイドルステージから溢れる力を得るだろう。
「ぬう☆ なんてアイドルパフォーマンス……! ですが、まだ私の言葉を信じるものたちがいるかぎりはぁ☆」
 未だに人々の無意識に虚実でもって惹き寄せようとする『光の戦士ボウロンジャー』。
 阻まねばならない。
 虚実では、真に打ち勝つことはできないのだと示さねばならない――。
ルクス・アルブス
【oxea】

なんかあれですね。
先に言いがかりをつけて勢いで押し切るクレーマーみたいですね。
それに『憂国学徒兵』さんを悪者にして、なにか変わるんでしょうか?

不満を煽って自分を正しく見せても、実力がないとあんまり意味ないですよ。

って、ええ!?
いきなりなんですかー!?

いや、ほんとになんですか、この悪い子的な服装は!
わたしこれでも勇者なんですよ!

衣装?
がーるずばんど?
これでみんなで演奏するってことです?

なんだー、それならそうと言ってくださいよ!
はい。キーボードならたぶんなんとかなります!
わたし、天性の音楽家ですから。

急なセッションだってどんとこいです!

一奏必萌の|デスメタル《破壊音波》をお贈りします!


菫宮・理緒
【oxea】

捏造されてるんだ。
で、あなたの話は捏造じゃないの?

それに、『彼らは争いの後にやってくる』って言ってるけど、当たり前だよね。
争いがあるから、彼らが来てるんだから。

でもまぁ。
言葉で語っても仕方なさそうだよね。
ここは正々堂々アイドル勝負だ!

【虚実置換】でみんなの衣装を早着替え、
ルクスちゃんは闇勇者、サージェさんはセクシークノイチ、
わたしはゴシックパンク、ステラさんは……なんかメイド服のままでいい気がする!

ふふん♪
これこそ必殺ガールズバンドの術!

って、わたしがギターとボーカル!?
ま、『希』ちゃん、ギター任せた!エレキだしなんとかできるよね!?

わたしは渾身のデスシャウトを一撃!(壊滅的音痴砲


ステラ・タタリクス
【oxea】
出てきましたか諸悪の根源!!
エイル様の為にビンタ、ええビンタで消滅させます!!

……確かに、貴方の語る話に真実はあるのでしょう
事実、かの世界は戦いが無くなっていない
戦いに際しては心に平和を、と謳いながら
平和の中で戦いを求める本能がある
ですがそれが人の業ならばそれを乗り越えるのみ
『成功』なんてしてませんよ
それはエイル様が一番わかっています!
エイル様が此処に居ませんので代わりにメイドが潰します!

この世界はパフォーマンスが重要
ってえぇ……何故私だけ変わってないんです?
ふっ、メイドに不可能はありませんので!
【ヴァレット・パープル】!
このドラム捌きに見惚れなさい!
あとでビンタしますからね絶対!


サージェ・ライト
【oxea】
まぁ、言ってる事は確かにそうなんですが

賛同?なんで?
猟兵が消えて喜ぶ人に主導権渡してどうするんですか
どんなに絶望してても現実はがむしゃらに突っ込んできますから
他責にした所で轢かれて事故るだけ
私たちは自分の足で歩いていかないと

しかし理緒さんの言葉がこの世界では正統なのでしょう
アイドルパフォーマンスで……ってあるぇぇぇぇ!?
ガールズバンドにセクシー要ります!?

ああもう!やってやりますよ!
【VR忍術】ベーシスト物まねの術!
有名なベーシストの物まねを絶対成功させるチートです!
ええ、私、目立たないクノイチですので旋律だけは支えますね

私たちの魂をくらえーー!!(なんかポーズしながら)



「いでよ、光の戦士たち!」
 オブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』は、手にした拡声器を振り回し、次々と光の戦士を呼び出した。
 彼の配信を見ていた視聴者たちを光の戦士として召喚したのだ。
 さらなる手勢を手に入れた彼は意気揚々と声を張り上げた。
「全ては捏造☆ 我々が正しいのです!」
「捏造されてるんだ。で、あなたの話は捏造じゃないの?」
 その言葉に菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は問い返した。
「それに、『彼らは争いの後にやってくる』って言ってるけど、当たり前だよね。争いがあるから、彼らがきているんだから」
「ああ言えばこういいますね! みなさぁん、彼女たちの言葉を聞いてはなりません。彼女たちこそ諸悪の根源なのです☆」
「諸悪の根源はあなたたちでしょう!」
『光の戦士ボウロンジャー』の言葉にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は憤慨しきっていた。 
 怒り心頭と言ってもいい。
 確かに、『光の戦士ボウロンジャー』の語る言葉に僅かなりとて真実はあるのだろう。

 事実、世界に争いはつきない。
『戦いに際しては心に平和を』と謳いながら、平和の中で戦いを求める本能がある。
 それが人の業である。
 どうしようもない悪性である。
「諸悪の根源、言うに事欠いて、私達をそう謗るのですか☆ 許されませんよ☆ 私達は人々のために立ち上がった光の戦士☆」
 彼は言う。
「争いを生み出すのは、平和を求めるために戦うという手段をとった矛盾を正せぬ者たちがいるからなのです☆ 平和と言いながら手段は争い。その矛盾は、ただの強者絶対、弱者必滅の論理しか生み出さないのです☆ 御覧なさい、世界を!!」
「ええ、その通りなのでしょう。ですが、それを乗り越えるのまた人!」
「まぁ、言っていることは確かにそうなんですが」
「賛同者☆」
「賛同? なんで? 猟兵が消えて喜ぶ人に主導権わたしてどうするんですか」
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は首を傾げていた。

「私達の言葉に賛同しているのではないのですか?」
「なんで? どんなに絶望していても、現実はがむしゃらに突っ込んできますから。他責にしたところで、轢かれて事故るだけ。私達あは自分の足で歩いていかないと」
「そうですよ。というか、なんかあれですね。先に言いがかりをつけて勢いで押し切るクレーマーみたいですね」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)もまた頷いた。
 彼らの論法は、まさにそれであった。
 言いがかりをとっかかりにして相手にしがみつく。
 体力を消耗させて、自分たちの元まで引きずり下ろすことしかできない。
 そして、やっていることは数の暴力。
 光の戦士たちが迫る。

「それに『憂国学徒兵』さんを悪者にして、何が変わるんでしょうか?」
「不満をぶつける相手を見つけた時、人間はどこまでも強く慣れるのです☆ そうでしょう? 皆、大好きなのですよ、共通の敵、社会の敵、敵、敵、敵! 敵を見つけるのが人間の得意なところです! 大義名分とい名の棍棒を渡せば、あなたも、あなたも、あなたも、あなたも! 振りかぶってたたきつけるのですから☆」
「そうやって不安を煽るんですね。誰もがあなたのようになるという鏡合わせを見せて……でも、実力がないとあんまり意味ないですよ」
「ここであなたたちの土俵にたつ意味はないよ。ここはアイドル☆フロンティア! なら、ここは正々堂々アイドル勝負だ!」
 理緒の瞳がユーベルコードに輝く。
「って、ええ!? いきなりなんですかー!?」
 ルクスが驚愕する。
 彼女の姿は、闇勇者をイメージした黒いゴシックな衣装に早変わりしていた。
「いや、ほんとになんですか、この悪い子的な服装は!? わたしこれでも勇者なんですよ!」
「あるぇぇぇぇえ!? なんか衣装の露出具合が上がっているような気がするんですが!?」
 サージェは、いつものクノイチ衣装よりも更に過激にセクシーであった。
 ともすれば、IQが著しく下がっていそうな衣装であった。
「ふふん♪ これこそ必殺ガールズバンドの術!」
「ガールズバンドにセクシー要ります?」
 要る。
 ないよりあったほうが嬉しい。それがセクシー要素。汚れ役とも言う。
「あの、私は変わっていないのですが」
 ステラはいつものメイド服姿であった。
 代わり映えしなかった。
 だが、理緒は頭を振った。
 ゴシックパンクのじゃらじゃらとしたシルバーが音を鳴らした。
「ステラさんは、なんかメイド服のままでいい気がする!」
「面倒くさくなってませんよね!?」
「だいじょうぶ、メイドには不可能なことなんてないんでしょう? なら、ステラさんがメイドであることは可能性の発露なんだよ。そうでしょ?」
 そうかな?
 そうかも!

「ふっ、メイドに不可能はない。その通りでございます! でしたら!」
 ステラの前に現れるドラム。
 いつのまにかドラムスティックを握りしめたステラはシンバルを打ち据え、リズムを取る。
「これ、みんなで演奏するってことです?」
「そうだよ! ここはアイドル☆フロンティアなんだから、アイドルパフォーマンスで圧倒しちゃおうって話!」
「なんだー、それならそう言ってくださいよ! はい、キーボードならなんとなかります! わたし、天性の音楽家ですから」
「勇者ですって言わないんですね……」
「サージェさんも、ほら!」
「ああもう! やってやりますよ! ベースだろうとなんだろうと! これがVR忍術! ベーシストものまねの術!」
 四人がアイドルステージの上でユーベルコードの光を発露する中、理緒は満足げに頷いていた。
 その顔は後方P面であった。

 しかし、彼女は何故か四人のセンターにいた。
「あれ!? わたし……」
「ドラムはステラさんですし、キーボードはわたし、サージェさんはベースですよね? なら」
「もしかして、わたしがギターとボーカル!?」
 センターに立っている、ということはそういうことである。
「ま、『希』ちゃん、ギター任せた! エレキだからんとなかって!」
「さあ、いきますよ! このドラム捌きに見惚れなさい!」
「私たちの魂をくらえー!!」
 サージェのポーズと共にステラのドラムスティックが振るわれる。
 瞬間、光が満ちて炸裂する。
『光の戦士ボウロンジャー』は呻いた。
 その圧倒的なアイドルパフォーマンスに周囲の人間の無意識であるサイリウムが波打つからだ。

「だ、騙されては……こんな、急増のガールズバンドなんかに……!」
「一奏必萌の|デスメタル《破壊音波》をお贈りします!」
 炸裂するキーボードから出たとは思えないほどの破壊音波が『光の戦士ボウロンジャー』を打ち据える。 
 さらにベースの旋律に乗って、かき鳴らされるギター。
 理緒は息を吸い込んだ。
「渾身の――!」
 のけぞった体。
 目一杯吸い込んだ空気を肺からいっぺんに振り絞るような叫び。
「デスシャウト――!!」
「それはもうガールズバンドっぽくないのでは☆」
 炸裂する壊滅的音痴砲の衝撃波が『光の戦士ボウロンジャー』の身を打ち据えた。
 強烈な一撃に身が傾ぐ。

 しかし、まだ、とばかりに彼が立ち上がった先にあったのは。
「『エイル』様の為にビンタさせていただきます」
 ステラだった。
 メイド服を翻し、その赤い瞳はアイドルパフォーマンスの光を背にして影で見えなかったはずだ。
 だが、爛々と輝く赤い瞳は鋭くも『光の戦士ボウロンジャー』を見下ろしていた。
 ある種の人にとってはご褒美の眼光。
「あ、あ、あ☆」
「あなたに『エイル』様を語る資格などあろうはずもなし」
 振るわれた往復ビンタ。
 それは強烈は破裂音と共に何度も何度も響き渡り、三人は、うわぁ……と『光の戦士ボウロンジャー』が恍惚と共に消滅していく姿に、ドン引きするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『トキメキ☆ファンサービス!』

POW   :    カッコよく!

SPD   :    クールに!

WIZ   :    セクシーに!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 四人の活躍によって、連鎖反応を濾していた事件は解決された。
 大本であるオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』を撃破したためだ。人々は心の中より溢れ出した骸の海から開放され、呆然としていたが、四人の姿を覚えていた。
「あ、あの! 俺達あなたたちの演奏で目が醒めたんです! 破壊的なシャウト! 暴論すらぶっ壊す勢い!」
「何もかも壊すような破滅的な旋律! 芸術は爆発だというが、これからは破壊ですね!」
「せ、セクシークノイチ……しゃ、しゃしん、イイッスか!」
 ぐるりと取り囲まれる四人。
 取り合う必要はないかもしれない。
 しかし、人々は四人に心酔したように集まり出している。
 このままでは収拾がつかなくなりそうだ。
 ここは彼らに付き合うのもよいかもしれない。おそらく、この熱狂は三日と保つまい。
 なら、ここで写真やサービスに付き合うのも悪くないのではないだろうか――?
ルクス・アルブス
【oxea】

なんか破滅的な旋律とか言われてるんですけど、
それってもちろん、良い意味で、ですよね!?

いままでにない旋律ってことですよね!?そうですよね!?
(近場の人をがっくんがっくん)

って、握手会?
なんだか演奏家のイベントとはちょっと違う気がするんですが……。
ま、まぁいいです。

ステラさーん、いっしょに写真……(見た瞬間、首をぶんっと戻して)
あ、うん。あそこはもっと違う世界でした。わたしの知っているファンではなかったです。

それでは気を取り直しつつ、覚悟決めましょう!

とはいえ……みなさま、どっちで写真撮りますかー?

黒勇者バージョンと、白勇者がありますよ!
(【はっぴーぶれいぶ!】でアイドル勇者も披露)


菫宮・理緒
【oxea】

え?え?なになに!?
こんな地味カタメカクレより、メイドさんやセクシークノイチや黒勇者がいますよ!?

っていうか、わたし『菜医愛流帝』の布教に来たはずなのに!

ほ、ほら、あそこで後方転移面してるのが『菜医愛流帝』の中の……。
って、聞いてくれなーい!?

わ、解ったー。解りましたから!
チェキおっけーの握手会形式にするから、とりあえず落ち着こう。そして並ぼう!

ね、『希』ちゃん、ひとり3分とかでいいのかな?
『うーん、ちょっと長い気もするけど、撮影あるからそのくらいかも?』

え?え?え?今度はなになに!?
VRアイドル?『希』ちゃんもいっしょに!?

えーい、もーどーにでもなれー!
『希』ちゃん、ご指名です!


ステラ・タタリクス
【oxea】
初めてのライブでしたが上手くいったようで
ルクス様が荒ぶっていますが破壊的な旋律っていつもどおりでは?
さて、普段通りのメイドには誰も来ていない様子
今のうちにナイアルテ様とアフタヌーンティーといきましょう
毎回転送維持お疲れ様です、と

と思っていた平和なメイドがいました
何か音楽のファンとは思えない様子なんですが!?
ご褒美の眼光って何ですか!?
私、ただのクールメイドですけども?!
ちょっとルクス様ヘルプ!! ってそっぽ向きました!?

ええい、どきなさい!
ファンサが欲しい!?私がエイル様のファンサが欲しいくらいなんですけども!?
なんかエイル様の香りが消えていく気がするんですが!?
だーれーかー!


サージェ・ライト
【oxea】
ふぅ、|oxea《オキシア》の初ライブは大成功!
クノイチ大勝利!(?)
これでまた平穏な忍ぶ生活にってあるぇぇぇぇぇ!?
こーゆーのって、ボーカルとかギターとかに集まるものなんじゃないんですか!?
ベースは目立たないって聞いたのにっ
ほら向こうに素敵なカタメカクレがってもう飲み込まれてるぅぅぅ!?
いや、諦めるわけには!
私は菜医愛流帝さんの布教をですね!?
あーーーれーーー?!(流されていく)

くっ、クノイチの主義には反しますが写真くらいなら
あ、SNSにアップロードは禁止で!!
忍べなくなっちゃう!!

ところでそろそろ着替えてもいいでしょうか
なんか落ち着かなくてですね
特に胸元が安定しないって言うか!



『oxea』――それは四人ガールズバンドの伝説的幕開けを知らしめるものであった。
 謳え!
 アイドル☆フロンティアにおいて暴論を駆逐し、虚構を否定する歌を!
 これこそが過去の化身を滅ぼす猟兵の歌である!

 ――なんて、まあ、そんな具合にオブリビオン『光の戦士ボウロンジャー』をぶっ飛ばした(主にメイドがしばいたとも言う)四人は人々に囲まれていた。
 圧倒的パフォーマンス。
 加えて、四人が四人、全てが美少女である。
 これで人気がでないほうがおかしい。
 でなければ、世界の方が間違っているということになる。 
「ふぅ、|oxea《オキシア》の初ライブは大成功! クノイチ大勝利!」
「ええ、はじめてのライブでしたがうまくいったようで」
「なんか破滅的な旋律とか言われてるんですけど、それってもちろん、良い意味で、ですいよね?!」
 それはどうかな。
 サージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の言葉に首をかしげそうになったが、それよりも早く彼女たちを取り囲む一般人たち。
「いままでにない旋律ってことですよね!? そうですよね!?」
 ルクスは菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)の肩を掴んでガックンガッックンゆらして同意を求めていた。
 それってもう恫喝じゃないかな、と理緒は思わないでもなかった。
 が、それどころではなかった。

「写真! 一枚だけ! 一枚だけでいいんです! お願いしまーす!」
「ふ、ふひっ、メカクレ最高!」
「セクシークノイチ、君に決めた!」
「ぜひ、我がメイド喫茶に! 一緒にメイドの天下を取りましょう!」
「ゴスロリ、絶対似合うと思うの。黒勇者的に合うはず! さあ、さあさあ!!」
 一般人たちは四人を取り囲んでいた。
 ちょっとしたパニック状態である。
 それもそのはずである。彼女たちのライブは、アイドルステージで行われ、多くの人々を魅了した。
 当然ファンになろうってもんである。
 これが例え、三日天下の如き熱狂であったとしても、そおれでも今、彼女たちは求められているのだ。

「え? え? なになに!? こんな地味カタメカクレより、メイドさんやセクシークノイチや黒勇者がいますよ!?」
 お前のような地味カタメカクレがいるか。
 ダウトである。
 理緒は圧倒されていた。
 次々に迫る一般人たち。
 一大派閥と言って良いほどに形成された列。
「ていうか、わたし『菜医愛流帝』の布教にきたはずなのに!」
「へ、平穏な忍生活に戻るはずが、この私が手遅れだと!? あるえぇぇぇぇ!?」
 さらっとなんか言っている理緒。
 そして、サージェもまた取り囲まれていた。
 こういうのって普通、ボーカルやギターと言ったはバンドの花形に集中するものではないのか?
 ベースを担当していたサージェは、己が目立っていなかったと思っていたのだ。
 だが、認識が甘い。判断も遅い。あと忍んでない。

「ほら向こうに素敵なカタメカクレがってもう飲み込まれてるぅぅぅ!?」
 サージェの眼前で理緒は人々に取り囲まれて円陣が出来上がっているではないか。
 なんか遠くに悲鳴が聞こえてくるような気さえした。
 理緒は焦っていた。
 布教は大事なことである。だから、人が集まる事自体はよいことだと思ったのだ。
「ほ、ほら、あそこで後方転移面しているのが『菜医愛流帝』の中の……」
 中の人など存在しない!
 それよりも今は眼の前にいる理緒に首ったけなのである。
「わ、わかったー。わかりましたから!」
「では!」
「チェキおっけーの握手会形式にするから、とりあえず落ち着こう。そして並ぼう!」
「わかりましたぁ!!」
 理緒の号令で形成される列。

 それはさながら握手会イベントであった。
 突発的なイベントであるが、ファンたちの行動はあまりにも鮮やかだった。
 列誘導、形成。
 すべてが有志で行われていた。
「握手は5秒間でーす。会話は30秒でーす。スムーズな進行にご理解くださーい」
「なんかすごい仕切ってる人たちがいますけど……あの、あの、演奏家のイベントとはちょっと違う気がするんですが……」
 ルクスは困惑したし、困ったようにステラを見やる。
 しかし、そこにあったのは鋭い眼光に晒されるファンたちと、一段高い場所から見下ろすステラであった。
「その塩な眼光がたまらないです!」
「ありがとうございます!」
「目線、お願いします! もっとゴミを見るような目、だいじょうぶですか!!」
 どう見てもやばい。
 なんかルクスは自分が想像した世界とはかなりかけ離れた世界がそこにあるのを理解して、首を振って視線を逸らした。

「なんかわたしの知っているファンではなかったです」
 見なかったことにする。
 そんな中、ステラは『光の戦士ボウロンジャー』をぶちのめした時の眼光をリクエストされっぱなしで困っていた。 
 塩対応されるのが常……常か? まあ、常であった自分が塩対応を求められる。
 なんとも不思議な光景である。
「ご褒美の眼光ありがとうございます!!」
「私、ただのクールメイドなんですけれども……」
 助けて、と視線をルクスに向ける。
 だが、ルクスは視線を逸らして握手会を続行している。

「黒と白、どっちにします?」
「白でおなしゃす!!!」
「はーい、かしこまりましたー」
 死んだ目でルクスは握手とチェキを繰り返している。
 アイドルって大変なんだなぁ、と思っているのだろう。
「ちょっとルクス様! そっぽ向かないでください!」
「ああっ! まだご褒美を貰ってません!」
「ええい、どきなさい!」
「ありがとうございます!」
「これはファンサではありません! 私が『エイル』様のファンサが欲しいくらいなんですけれども!?」
「今日イチの眼光頂きました!」
 ステラはこうまで話が通じないのかと、辟易した。
 そうこうしているうちに、彼女の求める香りがどんどん消えて薄まっていくような気がした。
 そんな彼女の周りにまとわりつくファンたち。
「だーれーかー!」
 助けを求める声が響き渡る。

 誰も助けることはできなかった。
 はっきり言ってオブリビオンよりも強敵である。
「あの、私は『菜医愛流帝』の布教をですね!?」
 サージェは最後まで抵抗を試みていた。
 しかし、ファンたちの勢いは増すばかりである。それもそのはずだ。こんなセクシークノイチがいるのだ。
 誰だって殺到する。
 みんなそうする。
「あ、SNSにアップロードは禁止で!!」
「忍べなくなっちゃうからですよね! わかってます! フリですよね! 忍べてないクノイチのキャラづくりですよね!」
「キャラ作りじゃないですよ!?」」
 サージェはそろそろ着替えたくてしかたなかった。
 なんか胸元が落ち着かないのだ。
 いつもじゃないだろうか?

 そんな風に三人がもみくちゃになっているさなか、理緒は声を張り上げる。
「『希』ちゃん、やっぱり時間短縮できない!?」
『うーん、やっぱり30秒じゃさばけないかー』
「でしょう?!」
「あ、あの、『希』ちゃんと一緒にスリーショットもいいッスか?」
「え、『希』ちゃんも一緒に!?」
「うっす! お二人の掛け合い、最高っす! エモっす! これは全世界に発信しなけりゃならないと使命を感じたっす!」
 そんな使命があるのか。
 いやない。
 ないが、理緒はもうオブリビオンと戦うよりも疲弊していた。

 だから、もう破れかぶれであった。
「えーい、もーどうにでもなれー!」
 なんとかなれー! と理緒は大盤振る舞いを始める。
 すると、他の三人を囲んでいたファンたちもヒートアップしてくるではないか。
「ちょっと理緒さん! このままじゃ、私、忍べなくなってしまいます!」
「おどきになってください! 私は主人様を追いかけなくては!」
「黒? 白? 黒? なんだかわけがわからなくなってきましたー」
 ああ、これはしばらく無理だな、と理緒は諦観の境地に至る。

 こうしてガールズバンド『oxea』の伝説の一日は、アイドル☆フロンティアに刻まれ、歴史の一頁に確かに記されることになったのだ。
 ふぉーえば――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年08月16日


挿絵イラスト