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脅かされる『火』を守り抜け

#サイキックハーツ

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#サイキックハーツ


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「今日は集まってくださりありがとうございます。
 皆さんは、プロメテウスの火をご存知ですか?」

 古びた映画館、依頼に応え集った猟兵達に対し、歓待の飲み物を配り終えたアウロラニア・ミーマメイズはそう口火を切った。
 スクリーンには今回の依頼に関係があるのか無いのか、骨でできた武器を真上に放り投げた猿達が、落ちてくるそれをキャッチできず後頭部を強打する様子が映っている。

 ──プロメテウスの火。
 ギリシャ神話において、男神プロメテウスが人類に火を齎したことこそが人類文明の興りである、という逸話だ。
 事実、武器として、夜を照らす明かりとしてのみならず、人類は火によって十分食料を加熱する習慣を得たことによって、脳の発達にリソースを割けるだけの栄養を得られる様になったとする学説もあり、決して大袈裟な話ではないだろう。

「では、火を……知恵を奪われたなら人類はどうなってしまうのでしょう」

 今回討伐しなければならないオブリビオンは、そういった厄介な特性を持つのだという。

「転移して頂く世界はサイキックハーツです。
 その街ではここ暫く、不審な怪生物の目撃情報と共に、突発的な暴力事件や不注意による事故が多発しており、また、それらが起こる範囲は広がり続けています。
 具体的には……」

 広げられた地図に描かれた円と、その間際にある一つの単語に猟兵達の目が惹きつけられる。
 『石油化学コンビナート』。
 誰かが呟くのに合わせ、アウロラニアは頷いた。

「サイキックハーツはエスパー達の世界です。
 これまでは善良な人々により致命的な事態は食い止められて来ましたが、それも限界でしょう。
 一刻も早く元凶であるオブリビオンを討伐し、破滅的な事件・事故の発生を防がなければなりません」

 エスパー達の不死性も、|サイキック《ユーベルコード》には無力である以上、大規模な事故や混乱はそのまま致命的な事態を呼び寄せ得る。

「敵は明らかにこの地域、特に広大な山間部に根を下ろしています。
 まずは眷属か配下とみられる怪生物を調査して拠点を探し当てて下さい。
 四足歩行らしきことは分かっていますが、詳細は不明です」

 目撃情報から絞り込むも良し、魔法やドローンを使っても、直接駆け回って探すのも良いだろう。
 殊更姿を隠している様子でも無い為、猟兵達ならば然程難しくは無い筈だ。

「事態は一刻を争います。
 これ以上の被害が出てしまう前に、どうかこの街の人々を助けてあげてください」

 そう締め括ると、アウロラニアは猟兵達に頭を下げたのだった。


ユキハナカグヤ
 はじめまして、ユキハナカグヤです。
 当シナリオは比較的オーソドックスな三章構成となっております。

 一章は冒険です。
 怪生物の足取りを辿り、敵拠点の位置を掴んで下さい。
 オープニングにある通り、特別難易度の高いものではありません。

 二章は怪生物の正体であるオブリビオンと集団戦。
 三章は事件の元凶とのボス戦。
 因みに危険度★(通常のオブリビオン事件相当)になります。

 判定の方針について等、私のGMページもご覧ください。
 ご参加お待ちしております。
 また、途中参加も歓迎です。
 よろしくお願いしますね。
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第1章 冒険 『未確認生物を追え!』

POW   :    体力の限り駆け回って探す!

SPD   :    目撃情報を精査して居場所を特定する!

WIZ   :    ドローンや使い魔で広範囲を調査する!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ギュスターヴ・ベルトラン
人に知恵を与えるもの…個人的には林檎だが、神学的な事は横に置いとく

【祈り】を捧げ今日のお菓子…林檎味の飴を噛み砕きUC発動
影からカラスを具現化し、感覚を共有
【第六感】を研ぎ澄ませ、山間部を索敵させる
目撃情報も多いって話だし、痕跡はすぐ掴めるはずだ

四足歩行らしいが、獣としての本能ではなく悪意の気配が混じってる気がする
カラスの【悪を嗅ぎつける】力が関連してんのか、それとも黒幕の意思が風に乗ったか
…案外、その両方かもな

相手がどういう思惑で動いてるかは知らねえが、サイキックハーツは俺の生まれた世界だ
ろくでもねえヤツはお呼びじゃねえんだよ
…暴れるつもりなら、容赦はしねえよ



●静けき空を許され、鴉は翔ける

「人に知恵を与えるもの……ね。
 個人的には林檎だが……」

 静かながら険しさも感じさせる山間部中腹にて、ひとりごちる司祭が居た。
 今は控えるか、と頭を振ると、彼は両手を組み、祈りを捧げる。

 ただそれだけの所作で身に纏う空気を一変させるのは、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)だ。

 彼は懐から取り出した艶めいて赤い林檎形の飴を口に放り込み、爽やかな甘みを確かめる。
 甘味を噛み砕くと同時、木々の合間より差し込む光に象られたギュスターヴの影が、俄かにざわついた。

「──神はカラスを養ってくださる。
 ほら、行ってこい」

 振り返ることもなく天を仰ぐ司祭の足元から、影は次第に立ち上がり、悠々と翼を広げる鴉となって飛び立つ。
 その静けさのまま、しかし鴉は猟兵たるギュスターヴが駆けるのと同じ速さで山並みを見下ろして翔け、五感から得られる全てを彼に伝えていく。

 司祭もまたその場に留まっているばかりではない。
 故郷たる世界をオブリビオンの好きにはさせない、という確かな想いを直感に、悪意を捉えることに集中し、与えられる情報から、磨き抜かれた鏡の様に真実を映し出す。

「確かにある、あるな……。
 だがこれは……混じりっけが無さ過ぎる。
 あぁ、知ってる、知っているとも、お前らは」

 例え悪意に満ちていようとも、人には人の、獣には獣の理性がある。
 人が笑顔で手を握り合う背中にナイフを握りしめる様に、動物が反撃される危険の無いものを選び嬲る様に。
 それら自身の|面《おもて》を飾る理性をも焼かれ、損ない、殺戮に堕ちるモノ達。

「イフリートか……!」

 隠されることもなく疎に散らばる痕跡を辿り行く中、澄み渡る鴉の視界が捉えたのは、分割存在となりかつて誇った巨躯を減じたのであろう、背鰭の如き炎を湛えた獣達の姿だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シン・クレスケンス(サポート)
◆人物像
落ち着いた雰囲気を持つ穏やかな青年。
窮地でも動じず冷静な状況判断で切り抜ける。

◆行動
探究心や知識欲が旺盛(どの分野でも)。
魔術の研究者でもあり、魔術とそれに通じる学問や技術に特に目がなく、それらの品や事象の情報を仕入れてはUDC『ツキ』と精霊『ノクス』を伴い、各世界を飛び回っている。
ツキ曰く、ワーカホリック。

意外とアクティブで運動能力も高く、スポーツや野外活動をしている姿も。

コンピュータを使っての情報収集の他、柔和な雰囲気と人当たりの良さで対人の情報収集や説得に回ることも。

◆口調
・シン→ステータス参照
(※使役は呼び捨て)
・ツキ→俺/お前、呼び捨て
だぜ、だろ、じゃないか?等男性的な話し方



●その瞳は電子を疾り、その脚は峻険なるを破る

「よりにもよって、石油コンビナートで事故が誘発される恐れがあるとは、穏やかではありませんね」

 山中へと向かう道すがら、早くもスマートフォンを繰り怪生物の情報を集め回っているのはシン・クレスケンス(真理を探求する眼・f09866)だ。
 彼自作のサーバーマシンも処理能力を後押し、夥しい情報が見る間に画面上に統合整理されていく。
 ほぅ、と息を吐くと画面から顔を上げたシンは、長い指を顎に添え、浮かび上がって来るものを整理がてら口に出して確認し始めた。

「数が多い……多過ぎますね。
 理性無きイフリート故、姿を隠している訳ではない、それは分かります。
 しかし、目撃者に襲い掛かっている様子も無いというのは不自然に過ぎる」

 殺戮衝動に呑まれたイフリートだからこそ、目の前の獲物を見逃すことはあり得ない筈だ。

「つまり、それを覆すものがここにある。
 ……興味深い」

 幾多の情報を繋ぎ合わせた一点、オブリビオンの拠点らしき場所に大まかに当たりをつけたシンは、整備された道から一歩外れると、猟兵としての身体能力に任せ、確かな足取りで駆け始めた。

 仕立ての良いジャケットを風に揺らしながら、山中を縫う様に走るその姿は、しかし不思議と違和感を覚えさせることはない。
 穏やかな物腰通りの一面もあるものの、彼はどうして野外活動にも通じており、この程度のハードなアスレチックもまた、お手のものなのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

佐藤・和鏡子
石油コンビナートやプロメテウスの火、というキーワードが気になったので協力します。
下手なことをされたら大惨事な立地条件ですから。
謎の獣は山間部に出るようなので夜の山道を救急車で流して探してみようと思います。
もちろん赤色灯やサイレンは切って普通の車として使います。
見つけたら追跡のユーベルコードを使って追跡力を上げて追いかけます。
向こうも車で追ってきたらさすがに気づくはずなので、自前の運転技術も併用してさらに確実に追えるようにします。
攻撃せず、見失わない程度に距離を取って追跡するようにして獣の住処まで案内してもらいます。



●星照らす夜、赤と白との追跡劇

 静まり返った夜の山中、星明かりに照らされながら走る、年季の入った救急車が一台。

「そろそろ頃合いでしょうか……」

 そう呟きハンドルを握り直すのは佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)だった。
 彼女もまた大規模な事故・災害発生の危険を憂い、謎の獣を直接追跡しようと待ち構えていたのである。

 そんな和鏡子の前には今、四肢を燃やす大型の獣……イフリートがこれまた燃え盛る背を見せて歩みを進めていた。

 小さなナースは慎重にアクセルを踏むと獣を追い始める。
 目立たない様ライトさえ消しているにも関わらず、さしたる苦労も無く追跡を行えているのは、彼女の高い運転技術は勿論のこと、追跡に特化したそのユーベルコードの力あってのものだった。

 だが、同時に和鏡子は違和感を覚えても居た。

(こちらに気付いている筈なのに、振り切ろうとする素振りが見えませんね……?)

 次第に道を駆け始め、時に険しい崖を、時に大型車には本来通れそうもない狭い獣道を選ぶイフリートだが、そこには背後を追跡する救急車を振り切ろうとする意図は全く見られない。
 目的地が近いのか、徐々に二頭、三頭と数を増す獣達は、互いにコミュニケーションを取る様子すら無く、ただ只管に駆け続ける。
 一つでも掴めるものが無いか、観察し続けていた和鏡子は、それを見て気が付いた。

「もしかして、そこに辿り着くことが一番大事なんですか……?
 この状態は、彼らにとっても正常なものではない?」

 逆だったのだ。
 イフリート達は集まることそのものに反応しない、現状その動きは序列を作り、統率を取っているものではなく、群れとして動いている様にも見えない。
 即ち、今この瞬間、彼らの目的地は彼らの拠点ではない。
 徐々に広がっていた目撃情報の観測園、その全域から元凶たるオブリビオンに誘引され、大規模な群れが、巨大な棲家が作られようとする、その瞬間がそこにあったのだった。

 そう、険しい山中に見合わず大きく開かれた、作り掛けのこの巨大迷宮こそが、正しく彼らの棲家となるものに違いない、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ガルム』

POW   :    炎獣の牙
【炎の牙】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【熱量】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    炎獣の吐息
【口】から【高熱の火炎】を放ち攻撃する。その後、着弾点からレベルm半径内が、レベル秒間【燃えたぎる溶岩】状態になる。
WIZ   :    業炎の罠
戦場全体に、【溶岩】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:史牙空兎虎

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章1

 微かな月と、満点の星が照らす山中、広く広く開かれた、イフリート達の住処、作り掛けた巨大迷宮があった。
 ついに辿り着いた猟兵達の前で、今まさに各地から集まって来ただろう獣達が、既にその場に居た獣達へと首を垂れる。

 群れに新たな顔ぶれが加わり、その陣容が更に厚くなったその瞬間、イフリート──ガルム達が一斉に猟兵達を振り向く。

 分割存在となり、各々2mそこそこの体高となって尚、牙を剥き出しに、獰猛さをそのまま地に足打ち付けて踏み締める姿は、かつての勇猛さの|縁《よすが》を感じさせる。

 目的地へと辿り着き、最早獲物しか目に入らないガルム達は、山中に低い咆哮を轟かせ、猟兵へと襲い掛かるのだった。
ギュスターヴ・ベルトラン
そりゃ獣なら自分のテリトリーで狩るよな
ノク、キリエ…オレの近くにくっついてな

――主よ、御名にて
【祈り】を捧げUC発動
迷宮が出来る前の大地へ引き戻す【奇蹟】の御業だ
…これ使うとグラサンや影業が使えなくなるのが難点だな

迷路の完全書き換えは無理でも、空気は清浄化、光を遮る影の存在を許さずという規則が一時的に敷かれる
敵の攻撃が察知しやすくなるってことだな
キリエの蝋燭が【気配感知】で光るのを確認しながら迷宮を進む
知恵のついた獣は、獲物がのこのこ出てくる迷宮の出口に陣取ってるだろう
じゃあその気配のある場所が出口ってことじゃん?

出口についたならノクの【竜爪撃】に合わせて刀で敵を攻撃する



●迷暗かき消す光、一人と二匹の大立ち回り

 炎漲る四足で地を蹴り迫るガルム達。
 それと対峙するは仕立ての良いカソックを纏った司祭と、夜空の如き翼膜を持つ仔竜、修道服を纏い小さな燭台を携えた小鹿……ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)とそのバトモン、ノクターンとキリエだ。

 イフリートは低い唸り声から地を揺らす分厚い咆哮を上げ、噴き出す炎と共に作り掛けた迷宮を見る間に完成させていくが、側のバトモン達が油断無く身構える中、ギュスターヴは焦燥を見せる事なく手を組み祈りを捧げていた。

 星空をも覆い隠す高い迷宮壁に囲まれ、照らすものが子鹿の手による灯一つになっても尚、彼の祈りは止まらない。

 その祈りは、迷宮を構成していく鳴動が収まる頃に、何処からとも知れぬ柔らかな光が齎されることで報われる。

──主よ、御名にて

 柔らかな光は決してギュスターヴ達の目を焼くことなく、高く厚い壁を影と共に消し去っていく。
 今この時だけ、炎に地面が焼け焦がされる匂いも清浄な風に攫われ、彼らを襲うべく身を隠す場所を失った獣達もそれに追われる様に頽れる迷宮の外へ外へと追い立てられていく。

「さて……行くか。頼むぜ、ノク、キリエ」

 わしわしと二匹の首筋を撫でてやるギュスターヴ。
 彼らはキリエの持つ蝋燭がイフリートの気配に揺らぐのを頼りにして、広い伽藍堂を抱えた迷宮の出口へと進んでいく。

 群れ成す獣達の気配に蝋燭が強く明滅する出口、本来なら自身もまた何重に隠されていたそこも、今では待ち受けるガルム達を隠す役割を果たすのみ。
 確実に待ち受ける戦いの気配に、しかし意気満々と立ち上がった仔竜も、携えた刀を抜き放ったギュスターヴも、その後ろに控える様に下がった小鹿も怯む様子は全く無い。

 その長い指を唇に当て、もう片方の手で指を三つ立ててカウントダウンしてみせるギュスターヴ。
 その指が0を数えた瞬間、ノクターンは咆哮を上げ、脆くなった出口を爪の一撃で易々と破ってみせた。
 不意を打つ礫にたじろぐガルム達に、迷いなくギュスターヴも地を蹴り、切り掛かる。
 浄化の力閃くその一振りは、彼自身も見上げる巨体を両断、斬り伏せてみせる。

「さぁ、どこからでも掛かって来やがれ!
 火がデカかろうが、身体がデカかろうが、そんなモンじゃ俺とこいつらを倒せやしねぇってことを教えてやる!」

 金の両眼でしかと敵を見据え、今しがたガルム達が迷宮を打ち立てたそれを吹き飛ばす様な気炎を上げるギュスターヴ。
 バトモン達も、両脚でしかと大地を踏み締め、或いは片手でスカートを摘み一礼し、揚々と彼に従う。

 負けじと幾つもの低い咆哮を上げた巨獣が飛び掛かって来るが、彼らの意気を挫くには程遠い。
 爪の一振り、刀の一閃がひらめく度に巨体が地に伏す、大立ち回りが始まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐藤・和鏡子
ただの獣かと思っていましたが、予想以上に高い知能を持っていたようですね。
まさか、大量に集まって迷宮を作っているとは思いませんでした。
命中すればするほど威力と命中率が上がる炎の牙を直で受けるのは避けたいので救急車を使って対抗します。
具体的には炎の牙を運転技術を駆使して躱したり救急車の車体で防ぎながらアクセル全開の救急車で敵目掛けて突っ込んで撥ね飛ばします。
(轢殺のユーベルコードに技能を乗せてさらに命中率や威力を上げるようにします)
囲まれないように走り回るつもりですが、囲まれたらアクセルターンの要領で車体を回転させて弾き飛ばします。



●咆哮を掻き消し、サイレンは響く

 多数のイフリート達に囲まれる襲われる中、救急車で駆け抜け戦うのは佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)だった。

 救急車は炎を湛える牙を剥き出しに迫るガルムを逆に跳ね飛ばし、轢き飛ばしては、数を活かして囲もうとする獣達を上回る機動力で蹂躙していく。

「迷宮を作る程の知能ですものね。
 確かに厄介です、けど……っ」

 幾ら巨獣といえども、彼女の鋭いハンドル捌きの前には獲物を捉えるには至らない。
 それどころか、年代ものでボロに近い筈の救急車が暴れる度、和鏡子のユーベルコードの力により、彼らが折角築きつつあった筈の迷宮が瓦礫と変えられていく。

「この迷宮も、壊せるなら壊しておいた方が良いものですから……なんだか悪い気もしますけど、そのままにはしておけません」

 焦燥からか闇雲に群がり牙を突き立てるガルムも居るが、地に脚付かずの攻撃は車体を傷付けるにも些か力不足であり、或いは高速のマニューバで引き摺られ剥がされて、或いは壁と車体に挟まれて、と散々に薙ぎ倒されていく。

 地に伏す巨体は増えるばかり、それもまた包囲を敷くのを難しくし、彼女に味方するばかりだ。
 しかし敵もさるもの、何頭もの獣が未だ無事な壁を蹴ったかと思うと、宙を舞い一斉に襲い掛かる。

「……っ!」

 ガルム達の巨体が視界を埋め尽くす様はそのまま回避困難なことを示すが、和鏡子もまた歴戦の猟兵、アクセルを全力で踏み込むと、流れる様な動きでハンドルとクラッチを操作し、急激に車体を回転させることで迫り来るイフリートを次々と吹き飛ばした。

 今しがた使われた壁を粉砕した彼女は、再び救急車をイフリート達へと向き直らせると、アクセルを踏み込む。
 サイレンを鳴らし、ランプを灯し、イフリート達の焦燥を更に助長することで混乱へと変えて。

「やはり油断なりませんね。
 ここで可能な限り数を減らして、他の方の負担を軽減します」

 甲高いサイレンの響き、赤い回転照明が辺りを照らす中、一部の隙も無くした和鏡子の前に、ガルム達はただただ倒れいくのみだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸(サポート)
お騒がせ☆アイドル×力持ちの女の子です。

戦闘時など、アイドル⭐︎フロンティア以外ではコンパクトを力技で【こじ開け】て変身します。そのせいかリボンが絡まるなど不完全な変身も
変身時に出現したキラキラエフェクトはしばらく物質化しており、攻撃を防いだり掴んで投げたり出来ます

がむしゃらに頑張るタイプで【怪力】による正面突破や力技がメインですが、力をコントロールできなかったり等でドジをすることもしばしば。【奇跡のドジ】でいい方向に向かうことも

マスコットのクマリンは「咲幸ちゃん、〜リン、〜だリン」みたいな感じで喋りツッコミ等サポートも兼ねます

UCは指定した物や公開されている物をどれでも使用します。



●溢れる輝き、元気星大爆発

 「こんなに大きな迷宮を作ろうとしていて、しかも数を増やしていっているなんて……放ってはおけません!」

 立ち並ぶガルムの群れに果敢に向かっていくのは熊ヶ谷・咲幸(チアフル☆クレッシェンド・f45195)だ。

「これで……変身!です!……ふんぬっ!」

 彼女は走りながら、いつもの様に懐から取り出したレジェンドパクトをこれまたいつもの様に|なんだか凄まじい《バキっとかベキっという》破壊音をさせてこじ開けると正面へと翳し、溢れる光の渦へと勢い良く飛び込んだ。
 彼女が手を振る度、足を踏み出す度、くるりと身を翻す度、輝くリボンに各部が包まれ、可憐なアイドルの姿が現れていく。

「掴め!希望の元気星!
 チアフル☆クレッシェンド、見参!です!」

 最後にスカートをふわりと揺らしながら一回転し、両足を踏み鳴らしてばっちりとポーズを決める。
 その凄まじい膂力による足踏みは咲幸の周囲を覆う、物理的な威力さえもった輝きを吹き飛ばし、彼女を倒そうと飛び掛かっていたガルム達を強かに打ち据えた。

「さぁ、行きますよっ!
 せぇりゃぁぁぁぁぁっ!」

 足を地面をめり込ませ、力強い踏み込みをそのまま速度に変えて敵陣に飛び込むと、昏倒したイフリートの尾を掴んだ咲幸は、彼女より何倍も大きく重い筈の巨体を勢い良く振り回し始める。

 ガルムにとっては自分と同等の重量・体積の武器である。
 燃える牙を突き立てるべく襲い掛かろうとするも容易に薙ぎ払われ、全周を囲んで一斉に攻撃を仕掛けようとも、振り回される獲物に対して本体がこうも小さくては、狙いを付けるのも一苦労だ。

「えい……っ!りゃぁぁぁっ!
 と、っと……もうダメになっちゃいましたか。
 次……っはこっち!ええーいっ!」

 掴まれて武器にされているガルムも戦いを続ける内に彼女の怪力に耐え切れなくなるが、その度に咲幸は自身の身体毎巨獣を投げ飛ばし、ボウリングのピンの様に薙ぎ倒された敵群から新たな獲物を拾ってしまう。

「まだまだ行きます!
 どりゃぁぁぁぁぁっ!」

 溢れ出す元気は一向に尽きる様子は無く、可憐な姿から繰り出される嵐の様な大暴走は、ただただ激しくなっていくのみなのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです



●焔を鎮める白薔薇の輝き

 無数の巨獣が倒れ伏す戦場に、威圧を伴う低い咆哮が幾重にも響き渡る。
 残ったガルム達が、猟兵達にすっかり崩されつつある陣容に、迷宮を作り直し立て直そうとしているのだ。
 各所から溢れた溶岩が見る間に高く、硬質な壁を作り出していく。

 そんな獰猛な唸りが溢れ、地揺れる中でも落ち着き払った様子を見せるのは響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)だ。

 彼女は分厚い壁に聞き耳を立て、迷宮内に何頭ものイフリートが彷徨いているのを確認すると、高く壁に差し込む星明かりを目指し、生まれ持った一対の翼で舞い上がっていく。

「……少し、はしたないですけれど」

 時折優雅な所作でスカートを抑えつつ、迷宮壁の上へと辿り着いた彼女は、そのまま倒すべきイフリート達がどこに集まっているかを確認していく。

(出口付近も固められていますが、巡回も多いですわね。
 必ず2頭以上で行動している。
 それだけ知性が高いということでしょうか。
 一番多く巻き込めるのは……あの辺り)

 今度は星々に照らされて、輝く髪を、美しいドレスとヴェールを風に靡かせながら、壁の上をステップを踏む様に飛ぶリズ。
 目星を付けた場所で魔導杖を取り出した彼女は、微かな月明かりに煌めく青いクリスタルにその力を注ぎ込んでいく。

「この薔薇のように綺麗に滅して差し上げますわ」

 リズの言葉と共に溢れる白き薔薇の花弁達、それは広く、広く、星の輝きに変わって迷宮へと降り注ぎ、燃え盛る肉体を持つ巨獣達を滅し鎮めていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディル・ウェッジウイッター(サポート)
紅茶をはじめとしたお茶が好きな青年です


戦闘力は有していますが、直接戦う事よりサポートや裏方に回る戦い方が得意
お茶はもちろん、カトラリーの投擲やモートスプーンも武器として使用しています


ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、積極的に行動しますが他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は行いません


アドリブ・連携可です



●惨々たる地に香りは舞う。猫も舞う

 地は焼け焦げ、そこかしこに巨獣が倒れ伏し、瓦礫の山が築かれる、そんな惨状に、しかし鼻腔を擽る柔らかな香りが漂う。
 ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)が粛々と準備を続けている紅茶と、その傍らを彩るスコーンの香りだ。

「皆様、ようこそお出で下さいました。お茶ができるまでの間、あちらの方とのご歓談をお楽しみください」

 いつの間にやらその周囲を囲み、瞳を輝かせているケットシー達の姿にもディルは動じない。
 穏やかな所作で間近に迫り来るガルム達を示し、楽しい茶会を代価としてその力を借り受けようといった様子。

 勿論と言うべきか、ケットシー達は激しく首肯し、我先にとイフリート達との戦いに加わっていく。
 名残惜し気に磨き抜かれたカップやカトラリーに視線を残す者が居るのも致し方のない事だろう。
 なにせ、ディルが供そうという紅茶の香りは、地が焦げるそれを忘れさせ、猫も思わず目尻を緩めてしまう様なものであったし、スコーンやジャムの香ばしく甘やかな匂いは、それはもう、食べる前からその美味を確信させるものであったのだから。

 荒い地面を獣が駆ける。
 かたや人も見上げる巨躯で瓦礫をも弾き飛ばして迫るガルム。
 かたやとりどりの衣装を身に付け、軽やかに二足で地を蹴るケットシー達。

 口腔に蓄えた火炎の吐息で吹き払おうとするイフリートに、カウボーイハットのケットシー達の二丁拳銃が火を吹けば、その瞳を穿たれ悶える巨獣の頭を杖を持つ紳士姿のケットシー達がエネルギー弾で吹き飛ばし、残るガルムは銃士姿のケットシー達がレイピアをもって討ち取る。

 一部の隙も無い連携、その高い戦闘力に掛かっては、最早イフリートと言えどもされるがままとならざるを得ず。
 果敢に挑み掛かる巨獣が絶えるまでのその間、食前の運動とばかりに鮮やかに蹴散らされていってしまうのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『竜種ニルオース』

POW   :    ドラゴンブレイズ
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【ドラゴンブレス】を放つ。発動後は中止不能。
SPD   :    原始の竜種
戦場内を【知性なき】世界に交換する。この世界は「【知性ある振る舞いを禁ずる】の法則」を持ち、違反者は行動成功率が低下する。
WIZ   :    ヒートスケイル
【自身の鱗】に【熱エネルギー】を注ぎ込み変形させる。変形後の[自身の鱗]による攻撃は、【接近するだけで火傷】の状態異常を追加で与える。

イラスト:来賀晴一

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●断章2

 ガルム達は全て倒れた。
 最早迷宮の作り手は存在せず、その名残に所々崩れた迷宮があるのみ。

 だが、この事件の元凶は未だ斃れてはいない。
 『それ』は身の守りを配下に任せ、時が過ぎゆくのを待っていた。
 己の本能が、その力の使い方を何より良く知っていた。
 全ての知恵が自らと同じ原始に還る時を、この迷宮の下で。

 立ち並ぶ巨壁が揺らぐ。
 地が砕け、崩壊していく迷宮の下から、ついに元凶の姿が現れる。

 焔纏う巨躯はまさしくイフリート。
 しかして姿は翼こそ無いものの、竜そのもの。
 体高は優に5mを超え、両の瞳には理性はおろか、ガルム達に見られた様な知性すら一片も見られない。

 邪魔だとばかりに迷宮を破壊し、地を揺るがす咆哮を上げる、その名はニルオース。
 知性なき世界を広げる、人類を原始に還す者。

 星々が見守るその下で、無辜の人々の営みのその上で、知恵焼き尽くす焔を絶つ戦いが、始まった。
ギュスターヴ・ベルトラン
理性的な判断、戦略的な行動、節制ある態度…
信じるために理解し、理解するために信じるというのが、オレにとっての知性だ
信仰とは即ち知性である…とも言えるわけだが

早い話、オレの信仰心への地雷ぶち抜く案件的な?
…上等じゃねえか、ここから先は|言葉《知性》はいらねえ
ブチのめしてやる

でたらめにUCを発動する
上下攻撃の切り替えタイミングなど考えずにただ攻撃する

小さく鳴くノクとキリエの【祈り】を背に受け、防御を捨てた【特攻】で刀を振るう
普段は抑えてるが今回は【リミッター解除】してやる
竜種相手に大立ち回りとは聖ゲオルギウスにでもなった気分だな!

…知性なき竜に斃されるなんて、それこそ人の知性の敗北だ
許せるものかよ



●祈ること、戦うこと、絆というもの

 口腔よりちろちろと炎を覗かせ辺りを睥睨する竜に、臆すことなく踏み出す影が一つ。
 星明かりに冴え冴えと煌めく刀を手にした、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)だ。

「理性的な判断、戦略的な行動、節制ある態度……。
 信仰は人の内に善き知性を育て、知性もまた善き信仰へ人を近付ける、無くてはならない両輪だ。
 そいつを踏み躙る所業、許す訳にはいかねぇな」

 殺戮に堕ちた竜を確と見上げ、司祭として堅い信仰をもって話す口調が故、穏やかにも見える彼の語り口だが、己が信仰の要を踏み抜かんとするその悪意に、ギュスターヴの内心は手にした刃と一体となったが如く、怒りに燃え、冷たく冴え渡っている。

 竜──ニルオースもまた、不遜にも講釈を垂れる人間を|縊《くび》り殺そうと、悪意に濡れるその瞳を細めて見詰め返すと、太い四肢で大地を踏み締め咆哮を轟かせ、知性ある振る舞いを封じる理を戦場へと敷いていく。

 上等、最早|言葉《知性》は要らぬ、と最後に胸元の十字を握り締めるギュスターヴ。
 彼はその身に纏った|黒衣《カソック》を翻し、金に輝く|眼《まなこ》を見開き、己に倍しなお余る体躯を持つニルオースへ果敢に切り掛かっていった。

 彼が|擡《もた》げられる首に飛び掛かり、刀を振り下ろせば、天上より鋭利極まり無い一条の光が竜を貫く。
 彼が一陣の風となり懐に飛び込み、その刃を振り上げれば、光もまた地より輝き竜の巨体を焼く。
 その戦い振りは勇猛にして、しかし乱雑極まり無く、傷を負う度に獰猛さを増すニルオースが反撃にその巨体から突進を繰り出す度に、その尾で薙ぎ払う度に、少しずつ、確かに彼は傷付いていく。

 ギュスターヴが己の身を惜しむことの無い戦いに身を投じる背後で、彼のバトモン達もまた、己の心身を|擲《なげう》って戦っていた。

 祈りそのものである。

 知性ある振る舞いを禁じられ、しかし主人を信じ、彼の為、遍く人々の為に祈ることを選択したノクターンとキリエ、星屑の仔竜と祈り灯す小鹿。
 彼らは目の前で行われる戦いに、バトモンとしての闘争本能に焼かれゆく心で、それを抑える知性を封じられ、尚懸命に祈り続けていた。
 仔竜が五体を投げ打ち、爪を痛める程地を掴み祈るのは、その祈りの懸命さからばかりではない。
 小鹿が小さな燭台から両手を決して離さず祈り続けるのも、また同じく。
 獰猛に低くならんとする鳴き声を、しかし主人への想いと真摯な祈りが高く切実なものへと留めていた。

 一際激しくなっていくギュスターヴとニルオースの戦いには、変化が訪れようとしていた。
 ギュスターヴの動きが如実に鋭くなり始めたのである。
 踏み込みはより深く、鱗を削いでいた斬撃さえも確と肉に食い込み、これまでまともに受けていた突進は手にした刀で受け流すように。
 見ると、微かな輝きが彼の身体とバトモン達を繋いでいた。
 小鹿──キリエの持つ燭台から伸びた光だ。
 寄り添い祈る二匹はいつの間にかすっかり落ち着きを取り戻し、言葉も仕草も無くとも、静かに、しかし確かな原始の祈りを形としていた。
 それが届き、主人とバトモンを繋いだのだ。

 己に課した制約全てを解き放ち、ギュスターヴは駆ける。
 自身とバトモン達、一人と二匹分の闘争本能を爆発させて、知性焦がす炎を掻き消さんと。
 その姿は聖ゲオルギウスもかくや、真摯な祈りの両輪を背に受け疾る様はメルカバーをも想起させる。

 「っああぁぁぁぁッ‼︎」

 一閃。
 深く深く切り付けたその刃は、ニルオースの内で浄化の力を迸らせ、遠く激しく吹き飛ばしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鈴乃宮・影華(サポート)
「どうも、銀誓館の方から助っ人に来ました」
銀誓館学園所属の能力者……もとい、猟兵の鈴乃宮です

かつての様にイグニッションカードを掲げ
「――|起動《イグニッション》!」で各種装備を展開
友人から教わった剣術や
体内に棲む黒燐蟲を使役するユーベルコードを主に使用

TPO次第では
キャバリアの制御AIである『E.N.M.A』が主体となるユーベルコードを使用したり
『轟蘭華』や乗り物に搭載した重火器をブッ放したり
「|神機召喚《アクセス》――|起動《イグニッション》!」からのキャバリア召喚で暴れます

例え依頼の成功の為でも、他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
不明な点はお任せします



●黒き群虫は巨竜を喰らう

 イフリートの獰猛な咆哮が轟く。
 知恵無き竜は深傷に殊更激昂し、地を砕き、迷宮の残骸を踏み潰しては苛立ちをぶつけていた。

 そんな剣呑極まる巨竜の前に、赤いマフラーを靡かせ現れたのは鈴乃宮・影華(暗がりにて咲く影の華・f35699)だ。

「──|起動《イグニッション》!」

 彼女は懐から取り出した不可思議な模様のカードを掲げると、一息に戦闘準備を完了させる。
 その手に下げたものは一見なんの変哲もない楽器ケースだが、唸りを上げて莫大なエネルギーを漲らせる様子は、誰にも尋常のものと思わせることはないだろう。

 ニルオースもまた、四肢で大地を踏み締め、影華を見下ろす大きな顎より立て続けにブレスを放つことで脅威を排除せんとする。

「この街に住む人々を、好きにはさせないわよ」

 幾度も放たれるブレスを、幾度も地を蹴り回避しては、エネルギーを解き放ち、ニルオースに痛烈なダメージを与えていく影華。
 その動きもまた、念動力により補助され、尋常のものではあり得べからざる速さと力強さを備えている。

 痺れを切らした巨竜が、放ち続けるブレスをそのままに突進を繰り出しても彼女は一切の動揺を見せることはない。

「──じゃあ皆、お願いね」

 彼女の白い四肢が、赤いマフラーが、その全身が、その髪や制服同様の黒に染まり、吹き荒ぶ風に乗って崩れていく。
 姿を探すこともなくブレスで薙ぎ払おうとするニルオースだが、それでも尚影華の方が疾い。

 彼女の身体全てより変じた無数の黒燐虫は、既にしてニルオースの全身に纏わりついており──

 侵食する毎にその傷口を抉り、内から掻き出すような非情な喰らい方は、巨竜をのたうち回らせて有り余るものだった。

 声も枯れんばかりに咆哮を上げ、激痛に悶え暴れ回るニルオースだが、冷徹至極な黒燐虫達はその侵食を止める様子は無い。
 その責め苦は延々と巨竜を苦しめ続け、未だ遠く終わる気配を感じさせないのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

サンディ・ノックス
俺は正義の味方じゃないからね
街に住むヒトが困っているから助けにきたわけじゃない
自身の力に圧倒的な自信を持っている存在に無力さを味わわせてやりたい
それだけ

俺は火が苦手、極力近付きたくないな
だから竜とは距離を取って戦おう

ユーベルコード解放・夜陰を発動するよ
俺の魔力の源は「悪意」
昔ちょっとした事故で融合してしまった、悪意に満ちた武器なんだ
そいつは俺に限らず
どんなものも取り込んで融合しようと常に狙っている
それを攻撃に転換した技さ

暴力的な力の持ち主よ
俺の悪意に食われてしまえ

仮に竜の火に焼かれて火傷で体が疼いても戦意は消えないよ
どこまでも冷静に、穏やかに微笑んで
お前など恐れるに足りないと思い知らせてやろう



●殺意に花開く漆黒の大輪

 切り立った崖をワイヤーフックをもって駆け降りて、星影を遮り戦場に降り立つのはサンディ・ノックス(調和する白と黒・f03274)だ。

「正義の味方なんて柄じゃないからね。
 しっかり悪意を持って倒させてもらうよ」

 それに応えるかの如く低く苛烈な咆哮を上げるニルオース。
 その身に纏う鱗は見る間により鋭く攻撃的な形状に変化していき、その周囲は全身より放出される熱による陽炎で揺らめいている。

 巨竜が漲る殺戮衝動のままに、四肢で大地を弾けさせ、立ち塞がる猟兵を轢き潰そうとする瞬間、サンディもまた動く。

「そうだ!
 その悪意をもっと迸らせてくれよ──
 できるものならね?」

 星々の輝きが戦場を照らす中、無数の煌めきが解き放たれる。
 それは悪意を渇望し、喰らう、漆黒の水晶だ。
 音も無く闇に潜む様に散った黒水晶は、サンディが指を鳴らしたその瞬間に驟雨の如く降り注いで牙を向く。

 ニルオースもまたその巨体で振り払おうと、苛立たし気に唸りを上げ、身に纏った熱で焼き払おうとするも、その余りの数の前には徒に傷を増やすに終わるのみ。
 傷付けられる程に爛々と輝きを増す殺意に引き寄せられ、更なる追撃を呼び寄せてしまう一方だ。

 混乱と苛立たしさに悶える巨竜の瞳に、弧を描くサンディの笑みが映る。

 その瞬間、ニルオースは駆け出した。
 最早深傷などなんの問題でも無い──あの嘲笑の主を狩らなければ、殺さなくては、ただそれだけの為に竜は駆ける。

「ははっ。
 そら、こっちだ!」

 恐ろしく卓越した演技により表情一つで更に強烈な殺意を、悪意を煽ることに成功したサンディは、積み重なった迷宮の残骸を、崖の階を利用し、ワイヤーフックで宙を舞うように駆け抜ける。

 その間にも黒水晶はニルオースの全身を襲う。
 瞬き一つの間にも無数に突き立ち、その幾つもが鱗の間に突き立ち、阻まれたものもまた、いやます殺戮衝動に反応して再び襲い来る。

 時を経る毎に水晶の煌めきは巨竜の体内へと沈み込んでいき、その痛みが尚更殺意を強くする悪循環。
 その咆哮は半ば悲痛なものを帯びながらも、しかし殺意に呑まれたその在り方が故に最早止まる術は無い。
 漸く掴むものの無い弊所に猟兵を追い詰めようというその時には、ニルオースの全身どこにも傷の無い場所など無く。

「幾ら強くても、悪意に呑まれ、悪意に使われてその様じゃぁね。
 お前も所詮、可哀想なヤツだってことだ」

 その言葉と共に、存分に殺意を喰らって大きく育った黒水晶が一斉に、まるで花開くかの様に巨竜の体内を突き破り、サンディの手に帰るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐藤・和鏡子
斬刑のユーベルコードで高空まで上がってから急降下して時速795キロの速力に消防斧の重量(重量攻撃)と私自身の腕力(怪力)を乗せて相手の脳天に振り下ろします。
どんな生物でも脳を破壊すれば殺せますから。
看護用モデルとしてオートクレーブ(高温高圧水蒸気による殺菌装置)による消毒が可能なように耐熱設計(火炎耐性・環境耐性)になっているとはいえ、限界もありますから、超高空からの急降下攻撃にすれば敵の高熱に曝されるリスクを最低限にするようにします。
そちらが知性を焼き尽くす炎なら、私は人類が生み出した叡智の結晶。
叡智の力をその身体で存分に味わっていってくださいね。



●その身、一閃の白刃となりて

 全身に傷を負い、血潮の如く微かに揺らめく炎をあちらこちらから噴き出しながら、しかしニルオースは止まらない。
 魂の底より湧き出でる殺戮衝動のまま、命ある限り暴走を続ける。

 そんな炎竜の前に姿を見せるのは、佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)だ。
 咆哮を上げて突進するニルオースだが、和鏡子は手にした消防斧でその巨体を受け流す。

「まだやれるでしょう?
 あなたの全霊を見せてみなさい!」

 後方に流され、纏った炎を怒りにより激しく燃え上がらせるニルオース。
 全身の鱗が長く鋭利に変形し、その瞳は一層強まる殺意に暗い輝きを放つ。

「そう、私から目を離さないことです。
 外してしまっては手間ですからね」

 和鏡子の周囲に赤い嵐が舞う。
 見るも鮮やかな彼岸花の花弁達に包まれて、彼女はその幼気な容姿に見合わず古めかしい、しかし使い込まれてこれ以上無く馴染んだ、白い看護服の装いへと変わっていく。

 その手で看護帽の角度を調整し直し、改めて消防斧を握った和鏡子の姿が地上から掻き消える。
 凄絶な速度をもって高空へと翔ける姿の勇ましさは、装いが変わったことで、彼女の猟兵としての、戦士としての一面の鋭さがより研ぎ澄まされているという証だ。

 星空に包まれながら、高く高く上昇していく和鏡子。
 生身の人間には辛いだろう大気の薄さも、機械人形である彼女の身体には苦にもならない。

 ふわり、と白衣を揺らして彼女が停止する。

 それは十分な高度に到達した印、地より殺意に満ちた両の眼で見上げるイフリートに、冷たく冴え渡る処刑台が用意されたということ。

「知性を焼き尽くす殺意ある炎。
 この私の、人類の叡智の結晶たる躯体をもって……斬り伏せます!」

 眼科に見えるのは、殺戮衝動のまま和鏡子に向けて咆哮を上げるニルオース、立ち並ぶ深い山々、そして……守るべき人々の暮らしの光。

 斧を構えた彼女が夜空を翔け降りる。
 風を裂き、空を裂き、夜を裂いて、白い流星が、殺意漲る竜を屠らんと。

「はぁぁぁぁぁぁっ!」

 一閃。
 雄々しき顎を両断され、太い首の半ばまでをも断ち切られ、ニルオースが崩れ落ちる。
 その瞳は濁り、先程までの残虐に澄んだ殺意は見る影も無い。

「呑まれる己が無ければ、殺意に苦しむこともないでしょう。
 例え束の間であろうとも、安らかに眠って下さい」

 手向けの花弁が舞う中で、巨竜の骸に灯った地を焼く残火は、静かに掻き消えていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​


●終結

 徐々に空が白みゆく中、戦いは終わった。
 無数のイフリートを呼び寄せていた巨竜は斃れ、広く難解な迷宮は跡形も無い。
 今日も街行く人々はそれぞれの暮らしを、実は確かに、昨日までよりも平穏になった日々を送るのだろう。

 猟兵達が見下ろす中、街が目覚めていく、人々の暮らしに『火』が灯っていく。

 それをある者は満足気に、ある者は名残惜し気に見守り、一人、また一人とそれぞれの日々へと帰って行くのだった。

最終結果:成功

完成日:2025年09月18日


挿絵イラスト