ルイナ・ラヴ
我が故郷ダークセイヴァーは夏は涼しくて良いですね、久しぶりの帰省ですのでたまには懐かしさに浸るのもまた夏休みの思い出です、多分!
思えば私が猟兵に覚醒したのはダークセイヴァーで起きた何の戦争の後でした、吸血鬼の血を引きながら人々を護り領主たる吸血貴族と激しく戦った事もありましたね…
未だ吸血鬼による支配の爪跡は残るもののこの世界もだいぶ希望と自由が満ちて参りました、我が故郷も他の世界と同じくこれから平和へと向かってくれれば良いのですが…とは云えこうして夏休みが満喫出来るのも少し世界が良くなった証左、喜ばずにはいられません!
かつて戦地となったこの辺りに来ると思い出します、この世界を解放する為に戦って下さった猟兵達を、そして、今は私もその猟兵の一人である事を…その誇りを胸に平和な夏休みを満喫しようではありませんか!
大丈夫、これからも多分、行ける気がします!
「我が故郷ダークセイヴァーは夏は涼しくて良いですね」
直射日光が存在してもルイナの肌は黒くなっても焼け爛れることはない。しかし反射光がないだけでここまで過ごしやすさが変わるのかと認識するきっかけにはなった。
「来ると思い出します、この世界を解放する為に戦って下さった猟兵達を」
ルイナが猟兵に覚醒したのはダークセイヴァーで勃発した戦争———「闇の救済者戦争」の後であった。ルイナが今いるこの湖もまた、かつて戦地となった場所の1つであった。
戦前でも戦中でもなく、一旦の終結を迎えたタイミングで自分がなぜ猟兵に覚醒したのかは分からない。しかしこれもまた何か理由があるのだろう多分、と吸血鬼の血を引く身でありながらグリモア猟兵の預り知らぬ場所で悪徳領主たる吸血貴族と激しく戦い、人々を護った。そして傾国の地に集う者達を知り、その一員となり、異界で艦隊を指揮する吸血鬼とも対峙した。
「久しぶりの帰省ですのでたまには懐かしさに浸るのもまた夏休みの思い出です、多分!」
かつては吸血鬼の牙にかかって死んだ者の血で濁っていた湖の水も供給が絶たれたことで、本来の姿を取り戻しつつある。とはいえ人が飲んでも病を得ない、本当に澄んだ水になるにはまだまだ時間がかかるだろう。
「我が故郷も他の世界と同じくこれから平和へと向かってくれれば良いのですが……」
この世界では未だ吸血鬼による支配の爪跡、影響力は残っている。吸血鬼は戒厳令を敷いて親玉たる闇の種族の長———五卿六眼が半壊させられたことを押し隠そうとしたが、人の口に戸は立てられない。
神出鬼没の猟兵だけでなく常闇の燎原から帰還した者達からの知らせに勇気づけられ、立ち上がり、新たな鬨の声を上げて闇の救済者となった者達による反乱が起き始めているという。
そういう意味ではこの世界もだいぶ希望と自由が満ちてきたと言える。
「とは云えこうして夏休みが満喫出来るのも少し世界が良くなった証左、喜ばずにはいられません!」
いくら半吸血鬼といえども、こんな無防備な姿で1人でいたらもれなく襲われる。それがこの世界の常識だった。
だけど今、ルイナはずっと襲われていない。運が極めて良かったからではないはずだ、多分。
「大丈夫、これからも多分、行ける気がします!」
本物の空がないことを隠すように晴れることを知らない雲が頭上を埋め尽くす世界で、ルイナは体を思いっきり伸ばした。
成功
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