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サマー・パーティーは終わらない!

#アリスラビリンス #グリモアエフェクト #戦後

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#戦後


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「ここは……」
 ウサギ穴を通り抜けたアリス達が見たのは、どこまでも広がる海と砂浜、そして空だった。
 まるで常夏のビーチのような光景は、晴れ晴れとして心地が良い。
 砂浜の上にはベンチやテーブルが置かれ、そこにはメニュー表のようなものも置かれている。トロピカルジュースやアイスの名前が目に留まった。

「なんだか綺麗なところだけど……」
「オウガの罠かも……」
 今までいた国で恐ろしい目に遭ってきたアリスにとって、リゾートのような光景は疑わしいものに思えてしまう。
 恐怖と困惑で足を止めてしまうアリス達だが――彼ら彼女らの身体に少しずつ異変が起き始めた。
 なんだか暑い。それに怠い。熱中症でも起こしてしまったのだろうか。
 アリス達は次第に体力を削られ、砂浜の上に蹲ってしまう。

 そんな彼らの元に――少しずつ、踊るオウガが近付いていた。


「集まってくれてありがとう。今日はアリスラビリンスで、アリス達を助けて欲しいんだ」
 猟兵達を笑顔で出迎え、ニオ・リュードベリ(空明の嬉遊曲・f19590)は資料を開く。
「『逃さずの国』と呼ばれる国にアリス達が囚われてるのが分かったの。この国は年中サマー・パーティーの会場になっていて、それに相応しい行動を取らないと暑さとダルさで動けなくなっちゃうんだ。だからみんなには、夏らしい行動をしながらアリスを助けて欲しいんだよ!」
 『逃さずの国』に迷いこんだアリス達は困惑し、夏らしい行動を取れずにダウンしてしまっているらしい。このままアリスを放っておけば、襲いくるオウガに食べられてしまうだろう。
 それを阻止するためにも、まずは猟兵達が相応しい行動を取らなければならない。
「この『逃さずの国』は国全体が大きなビーチになってて、砂浜と海がどこまでも広がっているんだって。あちこちに設置されてるベンチやテーブルに着くと、トロピカルな飲み物とかアイスなんかも出てくるみたい。こういうビーチでの楽しみっぽいものをエンジョイすれば、問題なく動けるはずだよ!」
 つまり海の中を泳いだり、砂浜で遊んだり、海を見ながらのんびりと美味しいものを楽しめば、それだけで動けなくなるほどの暑さや倦怠感を感じなくなるというわけだ。

「現地に行ったら、まずはアリスを襲おうとしているオウガ達を倒して欲しいよ。今回出てくるオウガはヒマワリみたいな姿をしているんだって」
 オウガの名前は『おどるよさんふらわー』。踊りが大好きなヒマワリ型のオウガらしい。可愛らしい見た目をしているが、アリスを襲おうとしているのは間違いないのでしっかり倒さなければならない。
「『おどるよさんふらわー』は存在が夏そのものだから、『逃さずの国』の特性には引っかからずに済んでるみたい……。対抗するためにも、みんなも夏っぽいことを楽しんでね!」
 海を利用して戦ったり、砂浜を駆けてみたり、トロピカルな飲食物を楽しみながら戦ったり。
 そういう行動をすれば、いつも通りに戦えるだろう。

「無事にオウガを倒せても、『逃さずの国』の特性は消えないよ。だからオウガを倒した後は、アリスのためにサマー・パーティーを楽しみ続けて欲しいの」
 猟兵がサマー・パーティーを楽しんでいる様子を見せれば、それを参考にアリス達も動くだろう。そうすれば、いずれ彼ら彼女らも脱出口であるウサギ穴に辿り着けるはずだ。
「オウガとの戦いが終わる頃には、夜になって星空が広がるんだって。星と海を見ながらロマンチックに過ごすことだって、夏らしくて素敵だと思うよ」
 オウガとの戦いでは昼の海を。
 アリスを助ける時は夜の海を。
 二つの異なった時間帯で夏を楽しめば、無事に事件は解決出来るはずだ。

「説明はこのくらいかな」
 資料を閉じて、ニオは改めて猟兵達に笑顔を向ける。
「せっかくの海だし、よければ楽しんできて欲しいな。それじゃあ、行ってらっしゃい!」


ささかまかまだ
 こんにちは、ささかまかまだです。
 海に行きたいです。

●『逃さずの国』
 今回の『逃さずの国』はビーチのようなサマー・パーティー会場です。
 海と砂浜がどこまでも広がり、休憩用のベンチやテーブル(パラソル付き)が所々に置かれています。
 ベンチやテーブルで願えば、トロピカルジュースや冷たいアイスが提供されるようです。これらの飲食物は安全なものです。

 この国では夏らしい行動を取らなければ、強い暑さと倦怠感に襲われてしまいます。
 とにかく夏を楽しみましょう。

 アリス達はダウンしていますが、猟兵が夏らしい行動を取れば真似して動き始めます。
 彼らへの関与の有無はどちらでもお任せします。
 参考までに、迷い込んできた集団は10代の子どもの集まりのようです。

●一章『おどるよさんふらわー』
 国へと迷い込んだアリスを襲うべく、オウガが襲いかかってきます。
 夏らしい行動を取りつつ倒しましょう。

●二章『満天の星空の下で』
 夜のビーチを楽しみましょう。
 猟兵達が楽しめば、それがアリス救出に繋がります。


 どの章からでも参加していただいて大丈夫ですし、特定の章だけ参加していただくのも歓迎です。
 進行状況や募集状況はマスターページに適宜記載していく予定です。
 締め切りの告知もそちらで行っているので確認していただけると幸いです。

 それでは今回もよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『おどるよさんふらわー』

POW   :    へっどばんきんぐ
単純で重い【ヘッドバンキングからの頭突き】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ぐるぐるぶーん
【腕のような部位を広げたままの高速回転】によりレベル×100km/hで飛翔し、【回転数】×【ノリ】に比例した激突ダメージを与える。
WIZ   :    ばらまきだんす
近接範囲内の全員を【花びらまみれ】にする【愉快な踊り】を放ち、命中した敵にダメージと麻痺、味方に隠密効果を与える。

イラスト:月代サラ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 『逃さずの国』へ足を踏み入れた猟兵達は、海風と潮の香りによって出迎えられた。
 サマー・パーティー真っ最中のこの国は、どこまでも広がる青空と、白い砂浜、そして雄大な海に覆われている。
 砂浜に点在するテーブルやベンチに着けば、パラソルの下でトロピカルジュースやアイスも楽しむことも出来るようだ。
 ここは夏の楽園のような国だが――同時にオウガの狩り場でもある。

 この国では、夏を楽しめない者は弱っていく運命にある。
 サマー・パーティーの参加者にならなければ、暑さと倦怠感で身動きが取れなくなってしまうのだ。
 事実、迷い込んだアリス達は砂浜に蹲ってしまっている。そして弱ったアリスを喰らおうと、オウガ達がこの場に近付いてきていた。

 此度のオウガはヒマワリに似た『おどるよさんふらわー』。
 このオウガ達を倒し、アリスを守るためにも――まずは夏を楽しもう!
冬原・イロハ
【海遊隊】4人
2022年水着着用

オウガに襲われないように夏を楽しまなくちゃ! ですね!
被っている麦藁帽子をアリスさんに被せて、さあ、何か飲みましょう~
とお誘いします

パラソル下でフルーツたっぷりのアイスティーをいただいてからオウガ退治
若葉さん、颯汰さん、行ってきますね!

暑いので夏を楽しむように
氷属性の攻撃を
ウフフ、かき氷、いいですね!
ニイヅキさんのお願いに応えて
氷属性のドラゴンを放ち、さんふらわー踊り食いを披露します
氷像っぽいドラゴンで氷をゲット&オウガも氷漬けにも出来てうぃんうぃん

かち割り氷はアリス含む皆さんにお任せして
私はかき氷機でガリガリ
元々のメニューからトッピングも流用できそうですね~


尾花・ニイヅキ
【海遊隊】
2021水着着用

サマーパーティー!
わくわくするね、イロハ!

UC発動
アリス達の身体を程よく冷やしつつ
パラソルの下に避難させよう
砂浜も暑いだろう?火傷してしまうよ
さ、飲み物はどうする?
迷っちゃう?なら王道のトロピカルな飲み物にしよう!

飲み物を飲んで一息ついたらオウガ退治だ
よし、行こうイロハ!
颯汰、若葉、アリス達を頼むぞ

UCを継続しているからな
僕の攻撃はキンキンだぞ!
《槍投げ》や《矢弾の雨》、拳で片っ端から敵を氷漬けだ!

……ね、イロハ
ここのドリンクやアイスも良いけど
僕はイロハのかき氷、食べたいな
えへへ、やった!
よし、もっと凍らせていくぞ!

何味をお願いしようかな
ご褒美があると気合も入るな!


檍原・颯汰
【海遊隊】

熱中症擬き……それもある意味夏らしいね?
まずはアリスたちを安心させに行こうかな
この国の特徴を伝えて、夏を楽しめるように助力
ほら、僕ら現代っ子って遊ぶにも情報が必要だからさ~
僕はトロピカルジュース飲もう~

ニイヅキさん、イロハさんの戦闘支援に
狛犬のあられをドッグランよろしく放って
念のためUCも使っておく

若葉さんとニイヅキさんと一緒に氷砕き
ひんやり涼しい…
君(アリス)達もやってみる?
氷入れにアイスピック、道具はあるみたいだし
かき氷にはフルーツやアイスをのせて
夏らしいものを作ってみよう
自分でアレンジするのも楽しいね

水着や浮き輪、水鉄砲
皆が海遊びできるものも欲しいね
愉快な仲間達持ってないかな?


鵯村・若葉
【海遊隊】
夏らしい行動をしないなら熱中症擬きで夏らしくしてやるということなのでしょうか……?

そうですね
情報があった方が安心して行動できます
皆様はどんな遊びをしたいですか?
でもまずは水分補給にしましょうか

大丈夫ですよ
ここの飲食物は安全です
折角なので自分もトロピカルジュースを頂きます

UCで敵を近寄らせないよう防御しつつ皆様の疲労を回復
しじま、冬原様と尾花様の援護を
敵に《呪詛》を紡いでやりなさい

かち割り氷やかき氷って夏らしいですよね
氷は沢山作って頂きましたし――砕きますか
自分で作るというのも夏休み感があって良いかと

アリスの皆様が遊びたいと仰っていたものを探したいですね
どなたかがお持ちだと良いのですが




 白い砂浜、青い海――いかにも夏のビーチらしい光景に、冬原・イロハ(戦場のお掃除ねこ・f10327)は海と同じ色の瞳を輝かせる。
 隣にやってきた尾花・ニイヅキ(新月の標・f31104)も全身で潮風を感じつつ、花咲くような笑顔を浮かべていた。
「今日はサマーパーティーだって? わくわくするね、イロハ!」
「はい! オウガに襲われないよう夏を楽しまなくちゃ! ですね!」
 二人は水着のパレオを揺らしつつ、蹲るアリス達の元へと向かう。その後方では、檍原・颯汰(ダークネス「シャドウ」のアリスナイト・f44104)と鵯村・若葉(無価値の肖像・f42715)がのんびり歩を進めていた。
「ええっと、この国の特性は夏らしい行動をしないなら熱中症擬きで夏らしくしてやるということなのでしょうか……?」
 綺麗な光景でも、ここは危険な『逃さずの国』。小さく首を捻りつつ現状確認する若葉に、颯汰はゆるりと頷く。
「熱中症擬き……それもある意味夏らしいね? 僕らも気をつけないとだし、先に席を取っておこうか」
 颯汰が視線を向けるのはイロハとニイヅキの向かった先、アリス達の方向。皆の様子を確認してから、颯汰と若葉はパラソル付きのテーブル席へと向かった。

 イロハとニイヅキはアリス達に軽く挨拶をし、自分達の身分を明かす。助けに来たと伝えれば、アリス達は安心して二人の話を聞いてくれた。
 イロハは特に幼いアリスに麦わら帽子を被せてから、身体を支えて助け起こす。
「さあ、何か飲みましょう~」
「砂浜も暑いだろう? 火傷してしまうよ。まずは身体を冷やして、水分補給だ」
 ニイヅキは魔力のマントを展開し、そこから溢れる冷気でアリス達の身体を冷やした。これである程度は熱中症擬きも緩和出来るが、やはり水分を摂った方が確実に良くなるだろう。
 二人はアリスを支えつつ、颯汰と若葉の待つ席へと向かう。男性陣もアリス達に挨拶し、テーブルに置かれたメニューを差し出した。
「僕はトロピカルジュース飲もう~。早速注文してみよっか」
 颯汰が軽く念じれば、突然テーブルの上にトロピカルジュースが現れた。颯汰は迷うことなくジュースを口にし、おいしい~と緩く笑顔を浮かべる。
「大丈夫ですよ、ここの飲食物は安全です。ジュースを飲みながら、これからのことを少し相談させてください」
 若葉も颯汰と同じジュースを呼び出し、すぐに口に付ける。冷たいジュースは、夏の暑さ対策にはピッタリだった。
 その様子を確認しながら、イロハとニイヅキも同様に飲み物を注文していた。
「わぁ、このアイスティー、フルーツたっぷりです。なんだか贅沢ですね♪」
「あ、僕もそれにしよう! アリスも好きなものを注文してくれ。迷っちゃうなら、王道のトロピカルな飲み物にしよう!」
 猟兵達が美味しそうにジュースを飲んでいる様子に安心したのか、アリス達もそれぞれ好きな飲み物を頼み、ゴクゴクと飲んでいく。
 そうすれば彼ら彼女らも顔色も良くなってきたようで、少しずつ笑顔も浮かべ始めていた。

 アリス達が落ち着いたのを確認し、早速若葉が手を挙げる。
「それでは。皆様はどんな遊びをしたいですか?」
 思いがけない提案に対し、アリス達はぱちぱちと瞬きをする。そこですかさず颯汰も会話へと加わった。
「ほら、僕ら現代っ子って遊ぶにも情報が必要だからさ~」
 颯汰の言葉に促され、アリス達はぽつりぽつりと返答し始める。砂遊びとか、水鉄砲遊びとか、皆がやりたい遊びも夏らしいものだった。
「どれも楽しそうですね」
「ああ、早速遊びに……と言いたいところだが、先にやるべきことがあるな」
 イロハとニイヅキもアリス達の言葉に頷きつつ、視線を遠くに向ける。そこには――迫りくるオウガの群れの姿があった。
「よし、イロハ。オウガ退治だ! 颯汰、若葉、アリス達を頼むぞ」
「アイスティーも飲めて元気いっぱいですからね。それでは若葉さん、颯汰さん、行ってきますね!」
 元気いっぱいパラソルを飛び出す女性陣の背を見送りつつ、颯汰と若葉は友人達を呼び寄せる。
「あられ、二人を頼んだよ」
「しじま、冬原様と尾花様の援護を」
 狛犬のあられは霊気の炎を纏い、勢いよく女性陣の元へと駆ける。鵯のしじまはまじないの力を帯びた囀りを奏でつつ、一歩先にオウガの元へと飛んでいった。
 仲間達が前線へ出たのを確認し、二人はアリス達をしっかりとパラソルの中へ退避させた。
「ちょっとばら撒くね。パラソルの下が結界になるから、ここにいれば安全だよ」
「必ずお守りします。ですので、ここから離れないでくださいね」
 颯汰の撒いたカードと若葉の紡ぐ呪詛が重なれば、生まれるのは強固な結界。アリス達を癒やし、外敵を寄せ付けない結界の中は、優しい光で溢れていた。
 颯汰と若葉はアリスを庇うように立ち塞がる。彼らの背中に、アリス達は強い安心感を覚えていた。

 アリスを喰らうべくやってきたオウガ、『おどるよさんふらわー』は愉快な舞を踊りつつ、じわじわ迫ってきているようだ。
 そんな彼らの前に、イロハとニイヅキは堂々と立ち塞がる。
「暑いですからね、夏らしくいきましょう……!」
「ああ! キンキンにしてやろう!」
 二人が宣戦布告をすると同時に、あられとしじまも辿り着く。まずはあられが突進して敵の陣形を見出し、そこにしじまの呪詛が足止めをする。その猛攻にオウガ達は愉快な踊りしか返せないようだ。
「よし、僕も続くぞ!」
 ニイヅキはマントを大きく翻すと、周囲に氷の槍を展開していく。そのまま槍の雨を降らせてやれば、オウガ達の花弁はどんどん散っていった。
「私も頑張ります!」
 すかさずイロハも前へと飛び出し、バルディッシュをブンブンと振るう。打ちのめされたオウガはパタリと倒れ、物言わぬ花へと変わった。
 残る敵も倒すべく、イロハは続けてユーベルコードを使おうとするが――それより先に、ニイヅキの声が聞こえてきた。
「……ね、イロハ。さっきのドリンクも良かったけど、僕はイロハのかき氷、食べたいな」
「ウフフ、かき氷、いいですね! それなら、かき氷の為のドラゴンさんを呼び出します!」
 ニイヅキの提案を受け、イロハは堂々とバルディッシュを掲げる。召喚されるのは、巨大な氷属性のドラゴンだ。
 ドラゴンは次々にオウガを喰らうと、そのまま体内でオウガを凍らせていく。
「どんどん氷を作りましょう~」
「えへへ、やった! よし、もっと凍らせていくぞ!」
 ニイヅキも負けじと敵陣へ飛び込み、氷の拳を振るう。まともにパンチを食らったオウガもまた、カチコチの氷へ変わっていた。

 一通りオウガの群れを退治したことを確認し、イロハとニイヅキはパラソルの元へと帰る。二人の腕の中には、大量の氷が収められていた。あられも背中に氷を乗せて運搬を手伝い、しじまは静かに若葉の肩へと止まった。
「わあ。氷いっぱいだねぇ」
 思いがけない収穫に颯汰は喜び、若葉はガサガサとテーブルを漁る。
「……まさかこんなものの用意もあるとは」
 若葉が発見したのは、氷入れにアイスピック、かき氷機といった道具の数々。まさかセルフ用の道具まで充実しているとは。
「道具もあるなら問題ないですね。トッピングも、さっきのアイスティとかから流用できそうです」
「これで万全だな。せっかくだから、みんなでかき氷を作ろう!」
 イロハとニイヅキの提案に、アリス達の表情が明るくなる。彼らもかき氷には乗り気だった。
「それでは……まずは砕きますか。自分で作るというのも夏休み感があって良いかと」
 若葉はアイスピックを手に取り、景気よく氷塊をかち割る。同時に、ひんやりとした空気が皆の身体を撫でた。
「ひんやり涼しい……僕もやろっと。君達もやってみる?」
 颯汰もアリスを誘い、一緒に氷をサリサリしていく。皆で力を合わせると、大きな氷もすぐに小さくなっていった。
 一方、ニイヅキは少し離れた位置に立ち、一際大きな氷塊と向かい合う。
「よし……ていっ!」
 槍を氷に突き立てれば、氷は景気よく粉々になった。その見事な光景に、アリス達も思わず拍手している。
 皆の楽しそうな氷割りを見ながら、イロハはかき氷機をひたすら回していた。
「ジュースはシロップの代わりになりそうですし、アイスを乗せても美味しそうですね~」
 次々メニューを考案して、そのためのトッピングを呼び出して。イロハの周囲には、次々と様々な味のかき氷が並べられていた、

 こうしてたくさんのかき氷が出来たなら、皆で好きな味を選んでいただきます。
 若葉はトロピカルジュース味のかき氷を味わいつつ、しみじみと海を眺める。
「……夏らしいですよね、こういうの」
「いいよね。暑いところで冷たいの食べるの」
 颯汰もアイスがけのかき氷を咀嚼しつつ、のんびり海へと視線を向けていた。
 ニイヅキもトロピカルジュース味のかき氷を片手に戦いの疲れを癒やしている。
「うん、やっぱりイロハにかき氷を頼んで正解だった。最高だよ!」
「ありがとうございます。アリスさんもどんどん食べてくださいね」
 イロハもマンゴー味のかき氷を楽しみながら、友人やアリスの様子を眺めていた。
 アリスもかき氷を気に入ったようで、好きな味を思い切り楽しんでいるようだ。
 しかし、夏はまだまだ終わらない。かき氷を食べたのなら、次のことを考えなければ。
「かき氷会が終わりましたら、遊びの道具も探してみましょうか。水着の用意もあるかもしれません」
 若葉の意見に颯汰がこくりと頷いて。
「水鉄砲とか浮き輪とか、そういうのがあるといいよね。ここって愉快な仲間たちはいないのかなぁ?」
「今のところ、それらしい人影は見てないが……」
 キョロキョロと周囲を眺めるニイヅキに対し、イロハが小さく微笑む。
「オウガがいなくなったなら、出てきてくれるかもしれませんね」
 皆でこれからのことを話し合って、これからの時間を楽しむ計画を立てる。
 こういうやりとりも――きっとサマー・パーティーの一環だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ナナセ・ナナミ
サマーパーティー!パーテーといえばフェス!フェスといえば…マイクパフォーマンスは必要でしょ!

マイク片手にMCをしながら、ライムを刻んで皆に指示を出していくぜ!
こういう事してノセちゃえば相手も強くなる?
そうかもね、でも世界一のストリートダンサー目指そうって言うアタイ達が、ノリで負けてちゃお笑い草だよ!

アメたろうは尻尾スイング!ももすけは滑空アタックでアタイショウはベロビンタをダンスを踊りながら叩き込んじゃって。

アタイのダンスパートナーはやっぱりだんじろう、キミに決めたぜ!
もちろんキミ達もだぜふらわーさん達!

一緒にダンスする様に踊りながら格闘術を叩き込んで行くぜ!
さながら情熱溢れる多人数ダンスだ!




 白い砂浜を蹴り上げて、ナナセ・ナナミ(ダンシングバトラー・f45409)は『逃さずの国』を軽やかに進む。
 ぐったりと頭を下げるアリス達の元まで辿り着くと、ナナセは弾むように言葉を紡いだ。
「アリスさん、サマーパーティーをしに来たよ! パーテーといえばフェス! フェスといえば……これ!」
 ナナセの手にはポップに飾り付けられたマイクが握られていた。マイクを通してライムを刻み、紡ぐ言葉はさらに軽やかになっていく。
「みんな、ちょっとお疲れモードかな? それならパラソルの下に行っちゃおう! ドリンク片手に休憩したら、その後はみんなで海遊び!」
 ナナセの声に励まされたのか、アリス達は一人、また一人と立ち上がり、ライムの通りパラソルの下へ進んでいく。勇気を出してドリンクを飲めば、彼らの顔色も少しずつ良くなってきた。
 これでアリス達は大丈夫だろう。しかしこの場には、他にも対処しなければならない存在がいる――ナナセの声にノリノリで踊りながら接近する、オウガの群れだ。
「あっちもかなりノってるね? ひょっとして強くなっちゃってる? でも……アタイ達がノリで負けてちゃお笑い草だよ! みんな、出番だよ!」
 ナナセの周囲に飛び出すのは、共に夢を追うバトモン達。彼らも弾むようなリズムに乗りつつ、戦う姿勢を整えていた。

 まず前に飛び出したのはアメたろうだ。アメたろうはブンブンと尻尾を振るい、迫るオウガ達を次々に打ちのめす。
 そうして敵の動きを乱したら、ももすけが更に空から追撃を加える。吹き飛んだ敵を相手にするのは、軽やかに踊るタイショウの仕事だ。ベチンベチンとベロビンタをお見舞いすれば、オウガ達は弾けるように消え去った。
 しかし敵の数はかなり多い。バトモン達の連携から逃れたオウガは、ナナセを攻撃すべくヘドバンしながら接近してきている。
「よし、ダンスパートナーはやっぱりだんじろう、キミに決めたぜ! もちろんキミ達もだぜふらわーさん達!」
 ナナセもだんじろうと共に激しいダンスを踊りつつ、一気に敵との距離を詰める。
 ヘドバンの波を潜り抜け、相手の動きに合わせてステップを踏んで。二人でオウガを翻弄しつつ、放つのは全身を使った格闘術。
 ナナセの足が敵の足元を払ったかと思えば、すかさずだんじろうが鋭いキックを放つ。流れるような連携は、それ自体が一つの演目のようだ。
「さあ、最後まで行っちゃうぜ!」
 ナナセとバトモン達のダンスとバトルは見学していたアリス達だけでなく、倒されるオウガまでを魅了し、夏を盛り上げていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メルクーア・シュヴェーフェル
また妙な場所もあるもんだ。
しかし夏らしい行動な、水着でも着てトロピカルジュース飲んでりゃいいのか?
まあやってみりゃ分かるだろ。

さて、夏を楽しみながらアリスを助けてオウガも倒すってのは流石にやることが多いな。
戦うのは【コンバイン・ウェポン】で呼び出した武器に任せるか。
パラソルとかスイカ割りの棒とか夏っぽい武器出しとくか。

後はアリスの保護か。
テーブルでジュース頼んだら、回復用の錬金薬混ぜてアリス達にも渡してやろう。

ほら、暑さでふらついてんならまず冷たいもん飲め。
んでパラソルの下に入って休んでろ、とりあえずここに罠はねーから安心しな。

あ?なんで水着に白衣羽織ってるか?
ステータスの都合だ、気にすんな。




「へえ、ここが『逃さずの国』か。また妙な場所もあるもんだ」
 潮風に白衣をはためかせながら、メルクーア・シュヴェーフェル(NPCショップ『ザルツ』店主・f41973)は周囲に視線を巡らす。
 さんさんと降り注ぐ太陽光相手には、涼しい水着というチョイスは悪くない。この地で求められる『夏らしい行動』という条件も満たしているだろう。
 もう少しそれらしさを出すために、適当なテーブル席でトロピカルジュースも頼んでみる。口をつければ、濃厚な果物の味わいが広がった。
「確かに、こうしていれば暑さも思っていたより気にならないか。でも、やるべきことはこれだけじゃないんだよな……」
 メルクーアの視線の先には、こちらへ迫ってくるオウガの群れも見えている。彼らの対処まで自力で行うのは、なかなか骨が折れそうだ。
 そこでメルクーアはプリママテリアを取り出し、ユーベルコードの力を注ぐ。万能物質はパラソルやスイカ割りの棒のような、夏らしい武器へと姿を変えた。
「よし、敵の対処は任せる。アタシはアリスの方へ行くからな」
 メルクーアが蹲るアリスの元へと進み始めたと同時に、武器達はオウガの元へと飛んでいく。
 夏パワーを存分に纏った武器達は、踊り狂うオウガ達をどんどん殴ったり叩いたrしているようだ。もう任せておいて大丈夫だろう。
 その様子を横目に見ながら、メルクーアはアリス達の元まで寄った。

「アンタ達、大丈夫……そうには見えないな。今準備するから、少し待ってろ」
 メルクーアはアリス達の様子を観察し、すぐにテーブルへと近付く。そのままジュースを呼び出し、中に回復用の錬金薬を注ぎ込んで。
 メルクーアは手早くアリス達にジュースを配り、彼ら彼女らの顔を覗き込んだ。
「ほら、暑さでふらついてんならまず冷たいもん飲め」
「ありがとうございます……」
 促されたアリス達が次々にジュースを飲めば、顔色はどんどん良くなっていく。
「よし、これでもう動けるな。それじゃあパラソルの下に入って休んでろ、とりあえずここに罠はねーから安心しな」
 メルクーアが誘導すれば、アリス達は素直に従う。みんなでほっと一息つけば、会話する余裕も生まれてきて。
「そういえば、お姉さんってお医者さん?」
「ん? アタシは錬金術師だよ。なんで医者かって……ああ、これか」
 アリスからの疑問を受けて、メルクーアは自分の衣服を見下ろす。水着に白衣の組み合わせは確かに医者っぽいような、そうでもないような。
「ステータスとか色々都合があるんだよ、服装は気にすんな」
 なんとなく頬をかくメルクーアに、アリスがこくりと頷いて。
 そうしたゆるいやり取りの裏では、しっかりとオウガが討伐されていたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 日常 『満天の星空の下で』

POW   :    星空を全身で楽しむ

SPD   :    星空を道具を用いて楽しむ

WIZ   :    星空を風流に楽しむ

イラスト:うさねぎ

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 オウガがすべて倒される頃には、太陽は海の中に沈んでいた。
 空には満点の星空が広がり、海面にも映し出された星々が煌めいている。
 オウガがいなくなったことに安心したのか、この地で暮らす愉快な仲間たちもやってきたようだ。ここに住んでいるのは二足歩行の動物達で、なんとなくぬいぐるみを思わせる。彼らはアリス達の手伝いがしたいらしく、ウサギ穴探しも手伝ってくれるだろう。

 これでようやく落ち着けそうだが――『逃さずの国』の特性はまだ残っている。
 夏を楽しまなければ、暑さと倦怠感に襲われてしまうのだ。
 だからアリス達がこの国を出るためにも、サマー・パーティーは行わなければならない。

 どこまでも広がる海と星空を眺めながら、まだまだ夏を楽しもう。
 それこそが、アリスを救う手立てなのだから。
メルクーア・シュヴェーフェル
景色が奇麗なのはまーいい事なんだが、
行動を強制されるってのは長居したい所ではねーな。

さて、夜の海で夏を楽しむとなると泳ぐのは危ねえよな。
多少の食い物飲み物はあるしもう少し増やして飲み食いするって手もあるが、
あと夏の夜っぽい事っつーと…花火とか?

よし、【アイテム錬成】で打ち上げ花火作るか。
花火の種類は普通の丸く広がるやつ以外になんかあるか…
そういやここの愉快な仲間たちはぬいぐるみっぽい見た目だし似た形に広がる花火も作れそうだな。
どんどん作って打ち上げてくとするか。

…なんかずっと働いてた気がするな。
ま、一仕事終えた後に冷たい物飲みながらゆっくりするってのも、
夏の楽しみの一つだろ。




 昼から夜に変わり、海岸は幻想的な光景へと変わった。
 広がる星空と海を眺めつつ、メルクーア・シュヴェーフェルは小さく息を吐く。
「景色が奇麗なのはまーいい事なんだが、行動を強制されるってのは長居したい所ではねーな」
 オウガという分かりやすい危機こそ去ったものの、この地が危険な『逃さずの国』であることに変わりはない。アリス達をこの国から逃がすためにも、もう少し夏らしいことを続けなければならないだろう。
 メルクーアは星空を見上げるアリス達をちらりと見ると、顎に手を当て考え込む。
「夜の海だと泳ぐのは危ねえよな。分かりやすいのは飲み食いか? あと夏の夜っぽい事っつーと……」
 必要なものを考えて、メルクーアはプリママテリアと錬金薬を手に取る。錬金術を駆使してイメージを膨らまし、想像するのは――。

「おーい。アリス達、それからその辺で見てる愉快な仲間たち。夏っぽいことするから、そっちに集まってくれ!」
 メルクーアの指示に従い、アリス達は少し離れた位置にまとまって座る。その周囲に愉快な仲間たちも腰掛けた。
 みんなの準備が整ったことを確認すると、メルクーアは作成したアイテムに火をつける。
 次の瞬間――海岸に鮮やかな光の花が咲いた。メルクーアが作ったのは特製の打ち上げ花火だ。
 王道の丸い形のものから、ちょっと変わった模様のもの、それから愉快な仲間たちをモチーフにした動物のシルエット等々。
 様々な形、鮮やかな色で彩られた花火は、見学するアリスや愉快な仲間たちを楽しませる。
「花火見てるのもいいけど、ちゃんと水分も取れよ。暑かったらアイスもあるからな」
 メルクーアは花火を打ち上げつつも、アリス達の様子を気にかけていた。促されてきちんとジュースを飲むアリス達に、メルクーアは頷きを返す。
 メルクーア自身もトロピカルジュースを飲みながら、のんびりと空を見上げる。
「……なんかずっと働いてた気がするな」
 ここまで頑張ってきたのだから、のんびり過ごすことだって大切だろう。
 夏らしい景色を前に夏らしい飲み物を飲み、ただただゆっくりと過ごす――これもまた、一つの夏の楽しみ方なのだから。
 明るく照らされる皆の笑顔を見守りつつ、花火の音に耳を傾けて。
 メルクーアの用意したとっておきの夏の思い出は、きっと皆の心に深く刻まれていっただろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナナセ・ナナミ
よーし、アリスさん達!
まだまだフェスは始まったばかり、夏を満喫しちゃおうぜ!

所で皆はウォーターパーティって知ってる?
音楽に乗りながら水鉄砲なんか使って水をかけあう、夏にぴったりな最高満点に情熱的なお祭りさ!

本来夜にやるならライトアップなんかするんだけど…今は必要ないよね?
だってこんな満天な星空にライトアップされてるんだから!

ほらアリスさんたちも愉快な仲間さん達も!
そこの花に咲いていた水鉄砲を取って波打ち際で踊ろうぜ!
皆も行くよ!ももすけは空から、だんじろうはダンスで回りながら水をばら撒いちゃって!
タイショウはドリンクのアレンジ、アメたろうは…ばしゃばしゃって水をかけてるね、でも可愛いからよし!




 無事にオウガが退けられたからか、アリス達の様子は昼間よりずっと元気そうだ。
 そんなアリス達の元へ、ナナセ・ナナミは笑顔を浮かべて駆け寄る。
「みんなすっかり元気になったね! よーし、アリスさん達! まだまだフェスは始まったばかり、夏を満喫しちゃおうぜ!」
 ナナセに声をかけられたアリス達は同意するように声を上げ、一緒に砂浜を歩き出す。
 目指すのは、ナナセがこっそり目をつけていた不思議な花畑だ。その道中もおしゃべりすることは忘れない。
「ところでみんなはウォーターパーティって知ってる?」
「ううん、初めて聞いた。どんなパーティー?」
「音楽に乗りながら水鉄砲なんか使って水をかけあう、夏にぴったりな最高満点に情熱的なお祭りさ! 本来夜にやるならライトアップなんかするんだけど……」
 言葉を紡ぎつつ、ナナセは空を見上げる。つられてアリス達も空を見れば、そこには天然のライトアップ――煌めく星空が目に飛び込む。
「こんな星空にライトアップされてるんだから大丈夫だよね!」
 ナナセの言葉にアリス達はこくこく頷く。ライトアップが問題ないなら、あとは遊び道具の確保だ。
 みんなで向かった花畑の中には――なんと水鉄砲が咲いている。植物で出来た水鉄砲はなかなか頑丈そうで、それでいて軽い。
「じゃーん! さっき見つけたんだ。アリスも愉快な仲間さん達も手に取って! みんなで波打ち際で踊ろうぜ!」
 それぞれ好きなデザインの水鉄砲を手に取り、愉快な仲間たちも一緒に波の側まで。
 白い砂浜の上を駆け回り、とっておきのパーティーが始まった。

 夏の開放感につられ、アリスも仲間たちもどんどん水鉄砲を振り回す。
 溢れる水の中を、ナナセはバトモン達と軽やかに踊っていた。
「行くよ、アタイのバトモン達! 一緒にパーティを盛り上げちゃって!」
 きらきら輝くももすけが空から水を振りまけば、だんじろうのダンスがそれをさらに弾けさせる。
 光と水のシャワーの下で、ナナセ達は楽しく跳ね回る。
 疲れた子にはタイショウがアレンジしたドリンクが手渡され、休憩の準備もバッチリ。
 そして――アメたろうは波打ち際でばしゃばしゃと跳ね回り、みんなに水をかけている。ダンスとは違うかもしれないが、可愛いから問題なしだ。
 思い切りびしょ濡れになってはしゃげるのも、夏の特権。煌めく星の下で、ナナセはみんなと手を取り踊る。
 砂浜に残ったたくさんの足跡は、みんなで刻んだ夏の思い出となっていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
【海遊隊】

これから次の国へ向かうアリスさんもいるでしょうし
美味しい物を食べさせてあげたいですね!

そうと決まれば野外調理道具を砂浜に置いてから
波に気を付けてサーフフィッシング
釣り竿から魔法の糸を出して夜釣りを楽しみます♪
しろねこランタンを点けて、糸を発光させて……っと
夜はイカが活発ですし
砂山のような岸に似た浅場では、光に反応して食らいつく大型のシロギス狙い
ちょい投げで大丈夫なので、興味あるアリスさんにも釣りをオススメしてみましょう
夜ならではの景色やランタンの光に和みます~

ブリキザメさんにも沖の方でぐわっと呑み込み漁を頼んで

颯汰さんと若葉さんにさばいて貰った諸々
愉快な仲間さんたちとも一緒にいただきます!
ウフフ、釣りたてを食べるのは美味しいですねぇ
アウトドアの醍醐味ですから、川キャンプで楽しむのも良いかもです
ニイヅキさん達が拾った貝や木を見せてもらい
ビーチコーミング、夏っぽいです

花火もランタンも綺麗ですねぇ
ニイヅキさんが炎で描くものをわくわくと眺めて
アリスの皆さんと一緒にリクエストをします!


尾花・ニイヅキ
【海遊隊】

国の特性対策というのもあるけど
折角だから楽しまないとだよね!

夜の海辺……
花火や夜の波打ち際を歩くのもいいが
やっぱりバーベキューが良いんじゃないか!!?
アリス達の旅路は続くんだろう?
頑張る為にも美味しい物は大事だ
僕がお腹減ったとか……
……そういうのも、あるけど

イロハ、釣りしてきてくれるの?
ふふ、今回も大漁だと良いね!
気を付けてね!

僕は薪代わりの流木を拾いに行こう
アリスや愉快な仲間達も手伝ってくれる?

あれは――ランタン?
あっちにいる皆は飾り付けを準備してくれているのかな
僕らも面白い形の木や貝を見つけたら、思い出にとっておくのも良いよね!

ん、下拵えは二人がしてくれるのか
少しゆっくりさせて貰おうか、イロハ

いざBBQ!
UCで流木に火を付ける
アリス達も愉快な仲間達も遠慮せず食べて!
ふふ、イロハの釣ってくれた魚、美味しい!
イロハの釣りテクニックは凄いよね!
今度僕も釣り、やってみようかな?

あ、打ち上げ花火!?
愉快な仲間達が用意してくれたのか
僕も宙に向かってUC
花火のように炎で何か描いてみるぞ!


檍原・颯汰
【海遊隊】

もう夜になっちゃったね~
夏らしいこと……そうだね、BBQもいいかも!
アリスの皆はどうだろう?

色々集めなくちゃだから、足元はなるべく明るくしたいかも?
星空も海原も綺麗で癒されるけど、光源があると安心だよね
この国らしいランタンを借りて砂浜に置いていこう
ビーチキャンドルだっけ? あれに似てるね
願い事をして灯す的な……
アリスも愉快な仲間たちも、願いを込めていくといいかも

ところでイロハさんは調理道具を置いていったね
これは調理は任せる、的な?
イカの中身の抜き方は何となく知ってるけど……ご飯系のラノベや漫画、結構流行ってて読んだ知識としては……ある
何事も経験かなぁ(調理未経験)
ニイヅキさん、イロハさんはキャンプ慣れしてて凄いね
野外調理もなんか夏キャンプっぽくていいかも
興味ありそうなアリスたちと一緒に悪戦苦闘しつつ…
若葉さん、調理慣れしてるねぇ
僕はご飯は食堂だったり外で買っちゃうからなぁ

ブリキザメが採ってきた貝も焼いていこう~
見事に海鮮BBQだ
不思議の国じゃなかなかありつけない料理じゃない?


鵯村・若葉
【海遊隊】

夜は夜で良い過ごし方もありますし
腹ごしらえも大切ですね

冬原さんと尾花さんの勢いに驚きつつも和み
お気をつけて行ってらっしゃいませ

星明かりがあるとはいえ、もう少し光源は必要そうですね
少し環境を整えましょうか
愉快な仲間達の皆さんにランタンがないか聞いてみましょう
この国独自のものもあるかもしれません
可愛らしいものや綺麗なものもあると良いのですが
ランタンには《祈り》込めた光も灯し
波打ち際に並べておけばこの先は海だとわかりやすいですし
――時折寄せる波に光が映って綺麗ですね

お二人は食材や薪集めで大変でしょうし
……そういうこと、でしょうね
ラノベ知識……知識があるのならどうにかなる気もします
実践の機会と思えば
アリスの皆さんも焦らず作業してくださいね
確かに屋外調理もキャンプっぽさがあります
……自分は、一人暮らしがそれなりに長いので
それこそ経験です
きっと彼女達もそうでしょう
檍原さんは器用ですから……大丈夫、すぐ慣れますよ

皆さんの楽しそうな姿を見つつ
彼らのこれからの旅路が良いものであるよう祈りましょう




 涼しい夜風に頬を撫でられつつ、海遊隊一行はアリス達の方を見る。
 猟兵達に介抱されオウガの危機からも逃れられたことで、彼らも昼頃よりは元気そうだ。
 けれどぼんやりしていては、再び『逃さずの国』の特性に苦しめられてしまう。何か対策しなくては。
「もう夜になっちゃったね~。これからどうしよう?」
 檍原・颯汰はなんとなく靴で砂浜を撫でながら、周囲の様子を観察する。すっかり暗くなったけれど、星明かりのおかげである程度の行動は支障なく行えそうだ。
「国の特性対策というのもあるけど、折角だから楽しまないとだよね! 何が出来るかなぁ」
 尾花・ニイヅキもキョロキョロと視線を巡らせる。夜の浜辺といえば花火や散歩もいいが、他にもアイデアがあるはずだ。何か閃かないかと、ニイヅキは小さく首を傾げる。
「それでしたら、こういうのはどうでしょうか!」
「どうしました、冬原さん」
 ぴしっと手を挙げる冬原・イロハに、鵯村・若葉が視線を向ける。颯汰とニイヅキも顔を上げてイロハを見つめた。
「これから次の国へ向かうアリスさんもいるでしょうし、美味しい物を食べさせてあげたいです!」
「なるほど。夜は夜で良い過ごし方もありますし、腹ごしらえも大切ですね」
 イロハの提案に頷く若葉の隣に、瞳を輝かせたニイヅキも駆け寄る。颯汰も柔らかく笑顔を浮かべ、皆の元へと近付いていく。
「だったらやっぱりバーベキューが良いんじゃないか!!?」
「……そうだね、BBQもいいかも! 海ならではのものとか、食べたいよね。アリスの皆はどうだろう?」
 颯汰に声をかけられたアリス達も同意するように頷いたり、笑顔を浮かべたり。彼らも甘いものはたくさん飲み食いしたけれど、ご飯系はまだ食べていない。これからのことを考えれば、食事をしておくことは大切だろう。それに――海の幸だって食べたいし!
「アリスの皆も乗り気で嬉しいよ。僕もお腹減ったとか……そういうのも、あったから」
 ニイヅキの年頃らしい反応も、皆の気持ちを和ませる。猟兵だってお腹が空くのだ。
「そうと決まれば、まずは食材集めですね。ここは私達に任せてください!」
 イロハは手際よく野外調理道具を並べ、それから釣り竿を握りしめる。気付けば彼女の後ろには、気合充分のブリキザメも現れていた。
「ありがとうイロハ。ふふ、今回も大漁だと良いね! 僕も準備、手伝うよ!」
 ニイヅキもイロハに感謝を示しつつ、今にも走り出しそうな様子。彼女の視線は浜のほうに向いており、薪になるものを探しに行くつもりらしい。
 元気いっぱいな女子二人に圧倒されながら、颯汰と若葉も背筋を伸ばす。
「僕らも必要そうなものを探しに行こうか。さっきみたいに、道具も借りれるかも」
「そうですね。少し環境を整えましょうか。愉快な仲間たちも現れていますし、話を聞いてみましょう」
 男性陣は愉快な仲間と合流し、一緒に準備することにしたようだ。
 アリス達にはドリンクや海を楽しんでもらいつつ、のんびり過ごすようにお願いして。
 楽しい楽しい夜のバーベキューに向けて――四人はそれぞれ向かうべき場所へ進んでいく。

 しろねこランタンに明かりを灯し、釣り竿から煌めく糸を手繰らせる。柔らかな光に包まれつつ、イロハはサーフフィッシングに励んでいた。
「夜釣りといえばイカですよね……っと」
 砂山のような場所に腰掛け、軽く釣り竿を振る。糸の先端が海の中に沈んでいけば、周囲にゆらりとした気配が集まっているのが実感できる。
 反応があったのを確認し、糸を引き上げれば――無事にシロギスが釣り上げられた。
 釣った魚をバケツに入れ、イロハは再び釣りに励む。少し離れた沖のほうでは、ブリキザメが意気揚々と呑み込み漁に励んでいる様子も見えた。
 そんなイロハ達の様子が気になったのか、数人のアリスがドリンク片手に歩いてくる。イロハはそちらに顔を向け、小さく手を振った。
「みなさん、身体は大丈夫ですか?」
「うん、ありがとう。あの……よければ私達も、釣りを手伝っていい?」
 心遣いももちろんあるが、幼いアリスからすれば釣り自体も興味深いものだろう。彼らの提案に、イロハは笑顔を浮かべる。
「ありがとうございます。ここならちょい投げで大丈夫なので、一緒にやってみましょう~」
 みんなで一緒に砂の上に座って、釣り竿を操って。ゆるやかな夜の釣りは、楽しげに進んでいく。

 ニイヅキは砂浜に足跡をつけながら、のんびりと散策していた。
 時折流木を見つけては手に取り、形や乾き具合を吟味する。薪として使えそうならしっかりと抱え、再び砂を踏んで。
 その最中、目に留まったのはちょっとした森のような場所。あそこなら枝なども落ちていそうだ。
 よく見ると森の中には愉快な仲間たちもいるようだ。ニイヅキは彼らの元に歩み寄り、元気に声をかける。
「こんばんは。これからみんなでBBQをするんだ。よければ一緒にどう?」
「楽しそう! アリスも一緒なんだよね、行く行く~。それならお手伝いもするよ」
「ありがとう。それだったら薪集めを手伝ってくれるかな?」
 愉快な仲間たちはニイヅキの提案に了承し、一緒に枝や流木を拾っていく。
 ニイヅキも大きな流木を抱えたところで、ふと顔を上げて。海のほうを見ればぼんやりとした明かりが見える。イロハの手繰る魔法の糸の煌めきだ。
 それから男性陣とアリス達が待つ地点を見れば、そちらにも優しい光が見えた。
「あれは――ランタン?」
 みんな飾りつけをしているのだろうか。それなら自分も、とニイヅキは綺麗な貝も集めだすのだった。

 颯汰と若葉は愉快な仲間たちの元へ向かいつつ、周囲の様子を観察していた。
「星のおかげで意外と明るいけど、もうちょっと足元に光源があると嬉しいよね」
 星空も海原も綺麗で癒されるけど。と語りつつも、颯汰は活動環境の様子が気になるようだ。若葉も同様の意見を持つからこそ、共に改善に向けて行動している。
「ランタンなどがあるといいでしょうか。この国独自のものもあるかもしれません」
 おとぎの国らしいランタンで浜辺を彩れば、また夏らしくて素敵な光景になるだろう。
 そう願いつつ、二人は近くの愉快な仲間たちへと声をかける。事情を話せば、彼らはいくつかのランタンを提供してくれた。
 南国風の花や模様で飾り付けられたランタンは、光を灯せば柔らかく周囲を照らす。
「綺麗なものが借りられましたね。波打ち際に並べておけばこの先は海だとわかりやすいですし」
 若葉がランタンに祈りを籠めれば、光量はより強く、けれど印象はより柔らかく変わる。眩しすぎず、けれどしっかりと存在感を放つ光に、颯汰は楽しげに目を細めた。
「ビーチキャンドルだっけ? あれに似てるね。願い事をして灯す的な……僕もやってみようかな」
 颯汰もまたランタンを手に取り、祈りを籠める。優しい灯りは、見ているだけで心が和んだ。
 二人は愉快な仲間たちと共にランタンを運び、アリス達の元へと置く。
「みんなでこれ並べてみない? 願いを込めていくといいかも」
「かなりの数を借りられましたから、是非どうぞ」
 アリス達も二人の真似をして、ランタンを手に取り、祈ったり、お願い事を言葉にしてみたり。
 そうしてみんなで灯したランタンを、綺麗に波打ち際に並べていって。
 波に柔らかな光が反射する様は、星明かりとはまた違った幻想的な光を生み出していた。
「――綺麗ですね」
「うん。キラキラだね」
 若葉と颯汰はアリス達と並んで、のんびりと景色を眺める。こうしたまったりとした過ごし方も、きっと夏らしいだろう。
 このままぼーっとしていたい気持ちはある。けれどBBQはこれからだ。
 聞こえてきたのはいくつかの足音、イロハとニイヅキ、それからアリスと愉快な仲間たちのもの。男性陣もそちらに顔を向け、帰ってくる人々へと小さく手を振った。

「……というわけで、たくさん釣ってきました! アリスのみんなすごかったです」
 イロハとブリキザメはたくさんの魚や貝を集めてきたようだ。大量の釣果にみんなの期待も大きく高まる。
「こっちもたくさん集められたよ。愉快な仲間たちにも手伝ってもらったんだ」
 ニイヅキも集めた薪をまとめて置いて、準備を整える。けれど火をつけるには、まだ少し早いだろう。
 魚はそのまま食べるわけにもいかない。颯汰はイロハが置いていた調理器具と釣果を交互に見遣り、頷く。
「これは調理は任せる、的な?」
「……そういうこと、でしょうね」
 若葉もしみじみと頷く。ここから先は自分達の仕事のようだ。
「二人はしばらく休んでて。準備が出来たら呼ぶよ」
「アリスや仲間たちのみなさんもごゆっくり。もし興味がある方がいれば、一緒に調理しましょうか」
「ありがとうございます~」
「あ、よかったら僕の道具も使ってくれ。イロハの道具のそばにあるから」
 二人の提案に数人のアリスが乗り、一緒に調理器具の元へと向かう。彼らの背中を見送りつつ、イロハとニイヅキは適当なベンチに腰掛けた。
「お言葉に甘えて、少しゆっくりさせてもらおうか。ランタン、綺麗だね」
「そうしましょう。なんだか絵画みたいな景色ですね……」
 作業疲れで火照った身体を夜風で涼ませ、二人はぼんやりと海を眺める。調理場からは、男性陣とアリス達の楽しげな声が聞こえてきていた。
「みんなも楽しそうで良かった。あ、そうだ。こんなのを拾ってたんだけど、あとで一緒に飾り付けない?」
 ニイヅキは自分の拾った貝や木を差し出し、小さく笑う。イロハは瞳を輝かせ、ニイヅキの手の中を覗き込んだ。
「ビーチコーミング、夏っぽくていいですね。是非飾りましょう!」
「やった! やろうやろう!」
 少し休んだら新しい作業へ。アクティブな二人は、まだまだ夏を楽しむつもりだ。

 颯汰は包丁を手に取ると、比較的小さなイカをじーっと観察する。真剣な颯汰の横顔をちらりと見て、若葉が声をかけた。
「檍原さん、調理の経験は?」
「あんまり……でも、イカの中身の抜き方は何となく知ってるよ。ご飯系のラノベや漫画、結構流行ってて読んだ知識としては……ある」
「……知識があるのならどうにかなる気もします。今回は実践の機会と思えば」
「何事も経験かなぁ」
「ええ。自分もできる範囲でお教えしますよ」
 若葉も魚と包丁を手に取り、調理の準備を進める。すぐそばにいたアリス達は、道具を前に緊張しているようだ。
「アリスの皆さんも焦らず作業してくださいね。怪我をしないことが一番大切ですから」
「うんうん。安全第一で頑張ろ~」
 こうしてみんなで一緒に、魚やイカの下ごしらえを始めて。若葉が先生となって教えつつ、颯汰の知識も作業を進める手助けになっていく。
「若葉さん、調理慣れしてるねぇ」
 手際の良い若葉の様子に、颯汰は思わず感心していた。颯汰のほうはアリスと共に悪戦苦闘しているようだ。
「……自分は、一人暮らしがそれなりに長いので。それこそ経験です」
「経験って大事なんだねぇ。僕はついつい外食したり買っちゃったりしてるし、こう、本格的な調理って初めてで」
「はい。道具もしっかりとしたものが揃っているので、今回は本格的でも安心かと……それは冬原さんや尾花さんのおかげでもありますね。彼女らも経験豊富でしょうから」
 イロハが用意したキャンプ道具が、使い込まれているが丁寧に手入れもされている。女性陣がアウトドアを好んでいるという話は、度々耳にしたことがあった。
「あの二人もキャンプ慣れしてて凄いよね。野外調理とか夏キャンプっぽくて楽しいから、まだまだやってみたいかも」
「檍原さんはこれから、ですね」
「これからかぁ」
「檍原さんは器用ですから、調理もきっとすぐに慣れます」
「ありがとう。良い先生達がついててくれるから、僕も安心だよ」
 作業が進んでいけば、颯汰の包丁さばきも少しずつ良くなっていく。
 こうやって技術が向上していくのは頼りになる若葉先生、イロハやニイヅキの用意してくれた道具、それから颯汰自身の向上心のおかげだろう。
 若葉もまた颯汰やアリスと共に語らいながら調理することに、いつもとは違った楽しさを見出していた。

 そうして魚や貝の下ごしらえも終わり、いよいよBBQの時。
 ニイヅキは薪を組み上げると、そこに魔法の火を付ける。小さな火は一瞬で炎に変わり、夜の砂浜を煌々と照らした。
 あとは網も置いて、食材も置いて。そうすれば――香ばしい香りが周囲に広がっていく。
「魚も貝も大丈夫そう?」
「ああ、良い焼け具合だよ。みんなが上手く下ごしらえしてくれたおかげだ」
 ちょっぴり心配そうな颯汰にニイヅキが笑顔を返す。どの食材もしっかり火が通っているようで、もう食べられそうだ。
「それではみんなでいただきましょう」
「ええ、アリスの皆さんも、仲間たちも集まってください」
 イロハと若葉が客人を呼び寄せ、お皿やフォークなども配って。みんなで火を囲めば、準備は万端。
 せーので『いただきます!』と声をあげ、それぞれが好きな食材を皿に乗せて、口へと運ぶ。
「~~~! このシロギス、フワフワだ!」
「貝もばっちり焼けてて美味しいです♪」
 新鮮な魚に感動するニイヅキの横では、イロハがブリキザメの獲ってきた貝を味わう。その横では、颯汰が自分の捌いたイカを食べていた。
「……良かったぁ、ちゃんと捌けてた。不思議の国じゃなかなかありつけない料理だし、こういうのもいいよね」
「アリスさんが捌いてくれたお魚も美味しいです。野外調理、大成功ですね」
 若葉も自分たちの成果を確認し、満足げに頷く。彼の言葉にアリスたちも嬉しそうに微笑んでいた。
 どんどんBBQが進んでいる傍らでは、数人の仲間たちが何かの準備を行っていたようだ。彼らは大きく手を振って、こちらに注目するように呼びかけていた。
 一体何事だろうと猟兵達とアリスが顔を上げれば――空に大きく、光の花が咲き誇る。
 どうやら愉快な仲間たちは打ち上げ花火を用意していたらしい。これまた夏らしい光景に、皆の表情も綻んだ。
「わぁ、綺麗ですねぇ」
「ほんとに夏って感じだねぇ」
 花火にランタン、BBQの炎。様々な明かりに照らされる浜辺を、イロハや颯汰はしみじみと眺める。
 ニイヅキは一度皿を近くに置くと、元気いっぱい仲間たちの元へと駆けていた。
「僕も手伝うよ! 炎で何か描いてみるぞ!」
 魔法の炎を鮮やかに手繰り、花火のように空中に絵を描く。そんなニイヅキの催しは、アリスや仲間たちに大好評だった。
「リクエストがあればどうぞ!」
「だったらねこさんはどうでしょうか!」
 気付けばイロハもニイヅキの元に駆け寄り、一緒に楽しんでいる様子。
 若葉は淡々と食事を続けつつ、皆の様子を見守る。その優しい視線に気付いたのか、颯汰は若葉の側に歩み寄った。
「こういうの、楽しいよね」
「はい、本当に。今日の思い出が、彼らのこれからの旅路を良いものにしてくれるといいのですが」
 その言葉には、確かな祈りが籠められている。颯汰も同意するように頷き、視線をアリスたちへと向けた。

 みんなの笑顔は色とりどりの明かりに照らされ、夜の海を彩る。
 たくさん夏を楽しんだのだから、もう『逃さずの国』は恐れなくていい。
 美味しかった記憶、楽しかった記憶は糧となり――きっとアリスを次の世界へと導いてくれるはずだ。


 こうして夜は更けて、楽しい時間は過ぎていく。
 その思いのまま国を巡れば、いずれウサギ穴も見つかるだろう。
 アリスたちは『逃さずの国』を発ち、また新たな国へと進んでいく。
 彼らの足取りは優しく楽しい猟兵に支えられ、力強いものへとなっていくだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年08月16日


挿絵イラスト