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血吸い刀は、天泣に躍る

#サクラミラージュ #戦後 #謎解き、やらなくても大丈夫ですよ #出来る事→カフェでお茶、散策、謎解き、戦闘準備 #断章投下済。プレ受付開始しています

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●|天泣《てんきゅう》
 その日は、雲一つない蒼穹の空であった。
 されど、空から降り注ぐのは雨。しとしとと降る雨は、カフェーの庭を埋め尽くす華やかな紫陽花たちをまた違った様相へと変化させる。
「天気雨だね」
 傘を差しながら歩く女性が連れの男性を振り返る。雨のしずくがまた紫陽花を濡らしていく。
「そうだね。もうひとつ、『天泣』って呼び方もあるんだよ?」
 別の傘を差しながら女性に追いついてきた男性が微笑む。
「てんきゅう?」
「天が泣くと書いて、天泣。ほら、空が泣いているみたいだろう?」
「ふふ。そうやって浪漫ちっくな雰囲気にしようとしてる?」
「まさか。ただ、キミとこの光景に見蕩れているだけだよ」
 そう言ってカフェーから出てきた二人は紫陽花の花壇で足を止める。天気雨という珍しい光景の中の紫陽花を、二人は楽しみながら、手を重ねてお互いに微笑む。
「それにしても……見事なまでに青い紫陽花ばかりだね」
「本当に。不思議な事もあるものだ」
 そうは言いながら、見事な紫陽花には変わりない。触れようと手を伸ばしたその瞬間。
「じゃあ。もっと色鮮やかにいたしましょう」
「え?」
 後ろから聞こえてきた声。気配など無かったハズなのに、唐突に現れたその声に振り向いたその瞬間。

 雨を斬り裂く速度で、銀閃が走る。

「え……あ……?」
「な……え……?」
 二人の視界が崩れ落ちていく……否、横薙ぎに切断された体がずり落ちていき。
 切断面から血を噴き出す。
「ああ……やはり、紫陽花はこのように色とりどりでないと」
 血に染まり、色を変えた紫陽花を『辻斬り少女』は愛でる。
 雨の中の紫陽花……記憶にある色とりどりの紫陽花を、彼女は守りたい。

 ――だから。

「青い紫陽花は染めてしまいましょう。人の血で。それが一番いい」

 しとしとと降る雨の中。紫陽花に魅入られた影朧の少女はふわりと姿を消した。

●予知
「お集まりいただき、ありがとうございます。グリモア猟兵のリッカと申します」
 その少女はゆっくりと首を垂れる。一緒に肩に乗っているバトモンが皮膜を広げてへちょっとなりながらお辞儀をする。

「早速、グリモアがもたらした予知をお伝えしましょう」

 グリモアが映し出す世界はサクラミラージュ。先の戦争にて幻朧帝から解き放たれるも、戦果の爪跡がいまだ残るこの世界の在り方は変わっていない。
 『|幻朧桜《げんろうざくら》』と呼ばれる神秘の桜が世界中に、一年中咲き乱れ。傷つき虐げられた者たちの『過去』から生まれた、『影朧』を癒すために呼び寄せる――それが決して癒されぬ……|この世界の命《いま》を脅かす存在と成り果てていようとも。

「少し季節遅れですが、見事な紫陽花の庭園を持つカフェーがあります」

 グリモアの映像が切り替わる。
 紫陽花の華やかなる光景。されど、その花の色は青ばかり。

「皆さんは紫陽花の花の色が青になる理由、ご存じですか?」
 そう言って猟兵たちを振り返るリッカ。
 『土壌が酸性になっているからだろう?』という声が上がる中、誰かが言う。『死体が埋まっているから』と。
 それらの答えに満足したように微笑み、リッカは映像に向き直る。青い紫陽花ばかりの庭に。
「掘り返したら、死体のひとつでも出てくるかもしれませんね?」
 少し楽し気にそう告げて。リッカは『ですが』と予知の話を続ける。
「この犯人は、紫陽花の花を赤くしたいようです」
 切り替わる。青い紫陽花が赤く染まっている光景に。その赤が血であることを猟兵たちは悟る。
「条件は、この『紫陽花の咲き誇る庭園』にて、『天気雨]の時に、『青一色を訝しむ声』」
 その条件が揃った時に、『彼女』は現れる。

 『辻斬り少女』――刀で生者を惨殺する影朧。

「この庭園は、『彼女』にとって非常に思い入れのある場所のようです」
 故に、記憶に有る、色とりどりの紫陽花庭園に戻したい、と考えている。
「『赤が足りない。ならば染めてしまおう』と。そのために人を斬っています」
 それを止めなければいけない。

「幸いにして、天気雨が降るタイミングを捉えました。その前に現地へ行って……あら、それにしても時間がありますね。ちょっとゆっくりしてもらって大丈夫です」
 一度雨が上がった紫陽花庭園。それは見事なものだ。のんびり散策するのもいい。
 庭園のすぐ傍にカフェーがあるので、こちらから望むのもいいだろう。メニューは珈琲と紅茶とパンケヱキと、味もシンプルに。主役は紫陽花だ。邪魔はしない。

「そうでした。庭園に手を入れるのは影朧が現れてからにしてください。条件が変わってしまいますので」
 ご注意くださいね、とリッカは告げて。

 猟兵たちをサクラミラージュへと送り出した。


るちる
 お久しぶりです。るちるです。ゆるふわっと復活しました。たぶん。
 しばらく離れていたので、文体とか雰囲気とか変わってるかもしれませんが、お付き合い頂ければ幸いです。
 ああ、それから。

 謎解きはごゆるりと。

●全体
 2章構成の通常シナリオです。
 どんなノリでもOKです。リプレイはプレ準拠。

 禁止事項:R18的な行為および公序良俗に反する行為。庭園の『外観』が変わるような事。OPとマスターより含めて『ダメ』って記載している事項。

 ただし、庭園を掘り返すのは辻斬り少女が『現れてから』ならOKです。

●1章
 日常『雨上がりの紫陽花路』。
 目的は時間つぶしなので、実質自由時間となります。2章から戦闘だけ参加でも可。
 現地にあるのはカフェーと紫陽花庭園。紫陽花庭園は散策できるような道と広さがあります。カフェーはすぐ傍の少し高い位置に。のんびりできます。
 その他、記載のない事項でもごゆっくり。
 ちなみに今は雨上がり。雨が降ってきたら戦いの合図です。

●2章
 ボス戦『辻斬り少女』との戦闘。
 天気雨の降る中の戦闘となります。場所は紫陽花庭園の中。
 辻斬り少女には知性も理性もあります。ただ狂っているだけ。記憶の中の紫陽花の為だけに生きている、ともいえるかもしれません。紫陽花を守るように動くので、その習性は利用できるかも。
 会話は可能。ただし『辻斬りを止めよ』という説得は不可能。転生は……どうでしょう? 説得次第? その他の事項は普通に会話できますが、斬り付けながら話します。だって目の前に獲物がいるんですもの。


 オープニング公開後、プレ受付開始。執筆は夜~朝方になる上、先着順に受け入れとはならないと思います。
 2章は断章を入れますが、1章は断章なしです。
 あとはタグ参照。

 それでは皆さんの参加をお待ちしていまーす!
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第1章 日常 『雨上がりの紫陽花路』

POW   :    全てを満喫して楽しむ

SPD   :    おいしいとこどりで楽しむ

WIZ   :    ゆるりと穏やかに楽しむ

イラスト:葎

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リカルド・マスケラス(サポート)
『炊き出し系ヒーローの登場っすよ~』
装着者の外見 オレンジの瞳 藍色の髪
基本は宇宙バイクに乗ったお面だが、現地のNPCから身体を借りることもある

割と【料理】技能が必要なイベントなど得意。ジャンル的には大衆料理をとにかく量作る感じの得意。宇宙バイクで簡易キッチンセットなども引っ張っているので、そういうのを使って料理することもある。素材を余すことなく毒抜きなど行ったりすのも得意。
その世界での料理や行事などについても【世界知識】でカバーしたりできます。
また、食料に困窮した世界では【森羅穣霊陣】で作物を急成長させて食料を生産することも可能

自分の学んだ技術を現地民に伝えられる機会があればやりたい




「おお~、見事な紫陽花っすね」
 リカルド・マスケラス(希望の仮面マスカレイド・f12160)の、のんびりした声が仮面から響く。そう、割とチャラい感じの狐のお面から。
 お面だけで飛んで来たら近くにカフェーの従業員がいて、良い感じに交渉できたのでお身体お借りしております(なお、男性。だって相方のウェイトレスが巨乳だったから)
「眼福っすね」
 何が、とは問わない。だって目の前にあるだけだから、素敵な光景が。

 さて、グリモア猟兵から『現地に行って待ってて』と言われて来たところで何すんねん、って感じだったりする。

 ただいまカフェーの入り口付近。
 カフェーから外を見れば、露に濡れた紫陽花の、独特の雰囲気が漂う庭園がある。その間を縫うように走る道を、リカルドはゆっくりと歩いていく。視界に収まる紫陽花を愛でる……と同時に目の前を走るウェイトレスが跳ねる(?)様子もしっかり納めていく。平和だ。
 従業員じゃなければ、カフェーでゆっくりしていても良かったかもしれない。
 めちゃくちゃいい雰囲気なのだが、この二人、恋人じゃないって。どういうこと?
 ちらり、と装着者たる男性の表情を頭の側面から観つつ、狐面は深呼吸を一つ。

 空に意識を遣れば、雨の気配など一切無いが、グリモアの予知がそう言っているなら、この後、『降る』のだろう。
 天気雨が降った後には、血の雨が……それは降らない様にしなければならない。

(そういえば、狙われるのは誰なんすかね?)

 もしかすると、目の前ではしゃいでいるウェイトレスの女性なのかもしれないし、猟兵の誰かが『キーワード』を言うのかもしれない。
(ま、その時までのんびり過ごすっすよ)
 リカルドの視界の中、雨を纏った紫陽花が風に仄かに穏やかに揺れている。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍
WIZ

カフェにて飲み物をいただきながら時間になるのを待ちましょうか。

私はどちらかと青い紫陽花の方が好きですね。
紫陽花を望む席でパンケーキと紅茶を頼み、花を眺めながら思うのはそんな風に色の事。
私自身が藍晶石のクリスタリアンだからか青の色味を好みます。
動よりは静。
頭に血がのぼるような事があっても強制的に冷静さを与えてくれるような青。
……。
確か死体の腐敗によっても土壌は酸性になるんでしたか。
まさか。
…もしかしてだからこそ影朧はこの場所に惹かれるのかしら?

いえ、文豪でもあるまいしこの発想はいくらなんでも突飛だわね。




 窓から見上げる空はとても青く、透き通っている。
 視線を落とした先で、露に濡れる紫陽花は先ほどまで雨に打たれていたとは思えず、まるで朝露に輝いているようにも見える。
 カフェーの窓から鮮やかな光景を眺めながら、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は時間になるのを待っていた。
 グリモアの予知が指し示す時間まではあと少し。しかし、ひと息つくには十分すぎる時間がある。
「お待たせしました」
 降ってきた言葉に藍が視線を遣れば、どうやら注文したパンケーキと紅茶が届いたようだ。
 ほの香る紅茶を口元へ運び、ひと口潤して。
 再び視線を遣った青い紫陽花を眺めながら。
(私はどちらかと青い紫陽花の方が好きですね)
 そんな感想を抱く。
 色の事。
(私は……青の色味を好みます)
 彼女自身が藍晶石のクリスタリアンだからか。
 動よりは静――頭に血がのぼるような事があっても、強制的に冷静さを与えてくれるような青。

(……)

 深く、深く、『青』の事を考えて……思い当たる。
(確か死体の腐敗によっても土壌は酸性になるんでしたか)
 紫陽花の花が青になる条件――土壌が酸性になる事。
 死体が腐敗する中で発生する様々なものが土壌を酸性へと導く。
「……まさか」
 思わず声が出る。だが、思い当たる節もある。
(……もしかしてだからこそ影朧はこの場所に惹かれるのかしら?)
 目を細めて紫陽花庭園を見つめる……何も気配は感じない。答えが分かるとしたら、この後。
(いえ、文豪でもあるまいしこの発想はいくらなんでも突飛だわね)
 そんな事を思いながら。
 藍はパンケーキにナイフを入れて、その甘味を堪能するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジゼル・サンドル
カフェーで紅茶とパンケヱキをいただこう。

紫陽花は好きだ。お母さんが好きな花だったから。
故郷に咲いてたのは赤やピンクが多かったけど、青や紫も綺麗だと思う。青一色の庭園もそれはそれで見事なもの、だけど。

昔は赤いのもあったということなのだよな…
お世話になってる理科の先生から聞いた話だと…ええと、酸性の土壌だとアルミニウムイオンが溶け出してアントシアニンと結合して青くなるんだったか…死体の腐り始めは酸化作用が強くなるから論理的にはあり得なくもないかも、らしい…?
でも本当に死体埋まってたりしたら庭園やカフェーどころじゃなくなるから嫌だな…

考え込んでても仕方ないか、気晴らしに鼻歌でも歌いながら散策しよう。




 たんたんたん、と足元が軽快な音を刻む。
 ここが舞台なら、軽やかに歩を進めながら歌声を響かせていただろう。
 それほどまでに見事な一面の紫陽花。

 庭園を望めるカフェーの中、ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は逸る気持ちを抑えつつ、窓際をとことこと歩き回る。
 と、その時、きゅ~っ、とお腹からヘルプ。
 小さな散策を終えて、ジゼルは席に着く。
 ちょうど良い頃合いだったらしい。
 ウェイターが紅茶とパンケヱキを運んできた。

 目の前に並んだパンケヱキと紅茶のセットに目を輝かせながら、まずはパンケヱキをひとくち。あむっ、と頬張った口の中に、ふわりと甘い、幸せが広がる。
 パンケヱキを堪能しつつ、ちらりと視線を横に遣れば、先ほどと変わらない紫陽花庭園。少し風が吹いたのか、露が流れ落ちて、また少し違う顔を見せる庭園は視線の高さが変わったことも手伝って、新鮮な景色に見える。
(紫陽花は好きだ)
 ――お母さんが好きな花だったから。
 ジゼルの脳裏に浮かぶ故郷に咲いてた光景は、赤やピンクが多かったけれども。
(青や紫も綺麗だと思う。青一色の庭園もそれはそれで見事なもの、だけど……)
 じっ、と庭園を見つめる。
 思い出すのはグリモアの予知がもたらした情報。『辻斬り少女』の言葉。
(昔は赤いのもあったということなのだよな……?)
 ならば、何故に今は青一面なのか?
 紫陽花の花の色が赤から青に変わる理由……それは。
(お世話になってる理科の先生から聞いた話だと……ええと)
 紅茶でのどを潤して、カップを両手で抱えながら、思考を巡らせる。
(酸性の土壌だとアルミニウムイオンが溶け出してアントシアニンと結合して青くなる、んだったか……?)
 科学的にはそうだ。問題は、その状況を作り出せるもの……つまり。
(死体の腐り始めは酸化作用が強くなるから論理的にはあり得なくもないかも、らしい……?)
 導き出された答え。
 でも、それでも。こんなに素敵な庭園だから思う。
「でも本当に死体埋まってたりしたら庭園やカフェーどころじゃなくなるから嫌だな……」
 思わず声が零れてしまう。誰にも聞かれてないから不穏にはなってないけれど。声になった想いは、ジゼルの心にカタチを残す。
「……」
 カップの中でゆらりゆらりと動く飴色の表面を見ながら……次の瞬間、ジゼルは小さく嘆息をこぼす。
(考え込んでても仕方ないか)
 とりあえずは美味しいパンケヱキを堪能することの方が重要である。
 気を取り直して、パンケヱキに挑み、紅茶の香りを楽しんで。
 ふぅ、と満足の吐息が零れる頃には少し気分も晴れた。
 まだ少し時間があるようだ。
「気晴らしに鼻歌でも歌いながら散策しよう」

 エネルギーも充填して、カフェーを後にするジゼル。
 空は快晴、雨の気配など微塵も無し。青空を背景に、露に濡れた紫陽花の路をくぐり抜ける。

 とても楽しそうだ、とジゼルは軽快な足取りで外へ出た。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー

青々と咲き誇る、紫陽花の園。
青色美人と名高い私に相応しい、美しい光景ですね。
華やかな庭園で、優雅にコーヒーを満喫する麗しい大人の女性。
今の私を傍から見たら、まるで絵画を切り取ったかのような美し……

飽きました。冗長すぎるのはよくないですね。
まぁ、そういうわけで景色を眺めながらコーヒーを啜る私です。
ついでに【念動ソナー】で意味もなく周囲の様子を探る私です。
せっかくなので、地中を探って埋蔵金でも見つからないかと試す私です。
まぁ、見つからなくてもそれはそれで。
この景色と香りと味と風情を楽しめたのですから、満足です。
ああ、これで禁煙席でなかったらパーフェクトだったのですが。




 先ほどまで降っていたであろう、雨の気配は一切感じない。

 空は蒼く、柔らかい光が注ぐ庭園。もちろん主役は紫陽花。
 傍らにあるカフェーはその邪魔にならないよう、存在感を消しながら、しかし紫陽花と一緒になってひとつの光景を作っている。
 その傍らにある、まるで絵画を切り取ったかのような美しさ。

 青々と咲き誇る、紫陽花の園を従えながら、華やかな庭園で、優雅にコーヒーを満喫する麗しい大人の女性。
「青色美人と名高い私に相応しい、美しい光景ですね」
 口元に運ぶ仕草すら麗しい。

「飽きました。冗長すぎるのはよくないですね」

 かちゃり、とコーヒーカップをソーサ―において、青空の元、エリー・マイヤー(被造物・f29376)は懐からそそくさと|煙草《汚染物質の塊》を取り出した。ちょっとニコチンとかタールとかが足りないんですよねぇ。今日も空気より煙草が美味い。
 ふぅ、と紫煙を吐き出しながら、視線を紫陽花庭園へ。
 そう、この美人、青の静より無色の動である。めっちゃ動く、だから美しい。

 まぁ、そういうわけで景色を眺めながらコーヒーを啜るエリーさんである。
 いいよ、|私《書いてる人》はそっちのほうが好きだよ、愛してる。

「……」

 静かに周囲を探るエリー。もちろん影朧の気配は無いが、グリモアの予知が正しければ、『条件』が揃えば現れるはずだ。その時間までは待機……すればいいはずだが。
「……」
 そのままの態勢で|念動ソナー《サイ・ソナー》を放つエリー。目に見えない、しかし、物を探知する念動力の波が放たれる。
(ええ、ついでに【念動ソナー】で意味もなく周囲の様子を探る私です)
 そう、戯れだ。
(せっかくなので、地中を探って埋蔵金でも見つからないかと試す私です)
 なんか見つかったらいいなー的な。
 まぁ、見つからなくてもそれはそれで。
「この景色と香りと味と風情を楽しめたのですから、満足です」
 ついでに外で禁煙席でも無いのでパーフェクト。キセルがあるような世界なので特に問題ないですよ。煙を吹きつけたりしなければね!

 【念動ソナー】の波が、一定周期で放たれる。
 ソナーはその一定周期で対象が動いているかどうかを探る……だが、エリーの念動ソナーなら。多少の慣れは必要でも、動かないモノを探ることもできよう。

「……ん? これは……」

 紫陽花庭園の端っこ付近。
 地中にある何か。
「……」
 あまり『嬉しくない』ものを見つけて。
 エリーは嘆息とともに紫煙を吐き出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『辻斬り少女』

POW   :    【先制攻撃型UC】血桜開花~満開~
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    【先制攻撃型UC】絶対殺人刀
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、殺意】を籠めた【斬撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【急所、又はそれに類する部位】のみを攻撃する。
WIZ   :    【先制攻撃型UC】ガール・ザ・リッパー
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】が命中した対象を切断する。

イラスト:久蒼穹

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●紫陽花『庭園』
 見事な紫陽花の『庭園』を持つカフェー。
 つまり、人が散策できる程度の広さはあるということだ。

 仮に。死体がひとつ埋まっていたとしよう。

 その死体ひとつのせいで、庭園の紫陽花が全部青くなるだろうか?
 ……否である。
 影響を与えるには広すぎるし、ましてや場所によっては土も分断されている(岩や道などで)
 例えば一箇所。青に染まるならそんな理由もあるだろうが、死体ひとつでどうにかなる庭園では無いのだ。

 だから、この庭園の紫陽花が青に染まったのは、別の理由。環境、手間のかけ方、肥料の量、あるいは時間の経過。
 そういった時代の流れが、この紫陽花庭園を作り上げているのである。

 そういう事だから、この庭園に死体は埋まっていない……わけではない。
 逆だ。
 『庭園に』死体が埋まっているのではなく。
 死体が埋まっていた『場所に庭園が出来た』のだ。
 正確に言えば、庭園が『広くなった』のだ。その範囲に彼女の死体はある。

 庭園の持ち主は知らないであろう。
 その少女が庭園の紫陽花に心癒されていたことを。
 あの日も落ち込んで、癒されようとこの地に来たことを。
 不幸はその時に起きた。通りすがりの偶発的な快楽殺人。
 そして彼女はこの地に魂を縛られてしまったのだ。

 彼女は生前、博識な女学生であった。知識があった。
 だから、朧な思考で、こう思ってしまった。
 『私の死体で土が酸性になってしまいました』と。
 『いやだ、私のせいであの彩り豊かな庭園が青に染まってしまったなんて』と。
 ――そんな事、赦せるわけがない、と。

 そんな事は無い。彼女ひとりの影響でこの庭園が鮮やかな青に染まったわけではないのだ。
 だから。少女の、『辻斬り少女』の想いは間違っている。

 そんな彼女の手元にはいつの間にか刀があった。
 人を斬りたくなるような鮮やかな刃。
 そうだ、アルカリ性のものがあるじゃない――人の血。
 人の血で紫陽花を育てたら、色が変わるんじゃないかしら?
 青一色を惜しむ人ならその血を捧げてもらってもいいかしら?
 大丈夫、何回も重ねていけばきっと土壌から変わるから。
 雨に人の血を混ぜて、美しい紫陽花を育てましょう。
 大丈夫、私はずっと此処にいるから。
 天気雨の日に会いましょう?

●天が泣く時……
 ぱらぱら、と。空から雨が降ってくる。
 見上げた空は蒼いまま。青天のままに、雨粒がぱらぱらと降ってくる。
 天気雨、狐の嫁入り――あるいは天泣。

 その涙に誘われて。
 『辻斬り少女』は姿を顕す。庭園の端っこ辺り、自分の死体がある辺り。
 カフェーから最も遠く、見づらい位置。雨の日に外に出てくる店員もそういないし、そもそも店員は紫陽花に見慣れていて、青一色を惜しむなんて事は無い。
 それでも青を惜しむ声、あるいは気持ち。誰かのものを感じ取ったのだろうか。

 カフェーから出てきた猟兵たちが彼女と相対する。

『あら? 私を認識しているの? それじゃあ、遠慮なくその血を頂きます』
 辻斬り少女が告げる。
『抵抗しても構いませんよ。私は、あなたの血が欲しいだけですから』
 ちゃきっ、と鯉口を切る少女。いつでも『斬れる』と告げている。

 言葉は届くかもしれないが、戦いは避けられない。
 辻斬り少女が戦いを止める時――それは自身が再び力尽きるか、刃を手放した時。
 猟兵たちもまた戦闘態勢となって、辻斬り少女を迎え撃つ

●補足●
 庭園の中での戦闘。
 多少段差(道と花壇、飾りの岩があったり等)がありますが、足を取られるようなことはありません。
 戦闘で紫陽花が散っても庭園の持ち主は気にしないでしょう。遠慮なく戦えます。

 辻斬り少女は初手、先制UCを使ってきますが、必中ではありません。というか、相対した状態で彼女から動く、とご認識ください。回避や防御、あるいはカウンターでしのげばOK。その後、本格的な戦闘が始まります。

 転生するかどうかは皆さんの展開次第。そのまま倒してしまっても問題ありません。

 カフェーについて。
 後から死体が出てきても、カフェーがしばらく営業停止になるくらい。死体のあった区画を潰しても庭園は維持できる感じです。ちょっとした話題になりますが、カフェーや庭園の人たちは完全に無関係な死体なので、特に困ったことにはならなさそうです。

 辻斬り少女の想いはどこへ到達するか……よろしくお願いします。
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?

|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす

リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす

悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす。|熟成肉《リビングデッド》うまうま

|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす

同行者の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす




『……ッ!』
 『辻斬り少女』が素早く踏み込む。それと同時に抜刀。本来、迎え撃つ形の居合を踏み込み形で使うことによって、高速の斬撃を放つ辻斬り少女。
「っとぉぉ~!? 危ないっす!」
 その一撃をのけぞる形で回避する飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)。逃げ遅れたアホ毛が、きぃぃん、と甲高い音を立てて刃を弾く。そう、普段はアホ毛のように見えるが、『|包丁《ヤンデレブレード》』である。
「ヒト型……なら、わたしは人型を辞めるべきっすかね?」
 『「デビルキング法」に則り、身体に悪そうなものを食べる私かっこいい』な杏子にとって、目の前の辻斬り少女は影朧とてオブリビオン。どんな|忘れられた食材《オブリビオン》だって、おいしく頂くのが彼女のポリシーである。
 が。
『あら? ヒト辞めちゃうんですか?』
 そういって刀を引く辻斬り少女。ヒトの血が必要な彼女にとって『ヒト』である事は重要事項らしい。
「くっ……」
 どんなモノにだって可食部はある。リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるはずだ。なくても食器としても活用するからいいし。だから目の前の彼女にだってそういう部位があるかなって探してみたいのが、|食道楽の悪魔《グラトニー》の本性ってものである。
 だが目の前の彼女はそんな楽しみを許してくれそうにない。
「ならば!」
 せめて一矢というか、空腹感ぐらいは与えておきたい。
 しゅばば、と杏子の両手が動く。その手が器を持った時、そこにあったのは【|失われた料理《アンブロシア》】――特別な効果を持つオブリビオン料理。
 独特な香りが辺り一帯に漂い、辻斬り少女にも確かに届く。
 それを見届けてから差し出す杏子。
「温かいうちにたんと召し上がれ」
『不要です!』
 対して刀を振るって攻撃を仕掛ける辻斬り少女。その瞬間。
『痛っ、ぅ?!』
 辻斬り少女に激痛が走る。
 『制約:【温かいうちにたんと召し上がれ】』を破った反動。制約を破るたび、激痛を与える【空腹感】が対象に降り注ぐ。
「ふふふ、しっかりと味わっていただくっすよ!」
『くっ、ならば血の一滴くらいはいただきましょう!』
「痛い?!」
 辻斬り少女の切っ先が杏子の肩先をかすめて、白い肌から数敵の血が紫陽花へと落ちる。
『ふぅ、やっと……痛い痛い痛い!?』
 血が紫陽花に落ちた瞬間、気を抜いた辻斬り少女へ、空腹感を伴う激痛が何度でも舞い降りるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

夜鳥・藍
人の血であっても腐敗すれば酸性になりますよ。
ええ、あなたがやっている事は逆効果。青色の、酸性の元となる物をせっせとふりまいてるようなものです。
多少心苦しくはありますが事実はお伝えしませんと。……その霞がかかったような紫陽花への想いを一刻でも止めるためにも。
実際はどうかは別としてやっていることが逆効果だったとしたら。

先制にはあらかじめ抜いていた青月で受け防ぎます。
私自身はきちんとした剣技は習ってませんが、ヒーローズアースで知り合ったヒーローの女性、そして私の前世が想いに応えてくれる。
防ぎきったあとは春乙女で真に姿になり改めて青月による攻撃を。
飛翔能力で浮き紫陽花を踏みにじる事がないように。




『くっ、面妖な事を……!』
 ずくずく、と疼く腹痛をどうにか抑え込んで『辻斬り少女』は深呼吸を繰り返す。心頭滅却すれば火もまた涼し。腹痛も呼吸を整えれば我慢できる。
 精神を統一して周囲を見渡せば、そこには新たな人影。
『では気を取り直して……その血を捧げてもらってよろしいかしらっ!!』
 高速で踏み込んでからの一閃。間合いに飛び込みながらの居合斬り――ガール・ザ・リッパー。
 普通であれば、気が付いた時には体が2つに分かたれているであろう。
 しかし、猟兵が彼女の存在を気付いているならば。

 キィィンッ。

 甲高い音を立てて辻斬り少女の刃を夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)の『青月』が弾き返す。
「人の血であっても腐敗すれば酸性になりますよ」
『腐敗すれば、でしょう? 血だまりに紫陽花を植えるわけじゃない』
 ほのかに青白い月光を放つ鋒両刃造の打刀を構える藍に対して、辻斬り少女は刀を正眼に構える。
「ええ、あなたがやっている事は逆効果。青色の、酸性の元となる物をせっせとふりまいてるようなものです」
『やってみないとわからないじゃない。血と雨と混ざった土壌は美しい紫陽花を咲かせるかもしれないわ』
 じりじり、と間合いを詰めながら、言葉の応酬をする二人。
「……」
 藍が無言で辻斬り少女を見つめる。
 『多少心苦しくはありますが事実はお伝えしませんと』――そう思いながら告げた言葉は通じない。辻斬り少女には知性も理性もあるが、ただ狂っているのだから。
(……その霞がかかったような紫陽花への想いを一刻でも止めるためにも。そう思いましたが)
 やっていることが逆効果だったとしても……辻斬りを止めよ、という説得は通じないようだ。
 ならば、力づくで止めるしかない。

「死は終わりでなく……」

 藍が呟く。直後、藍の姿が光の翼を持ち、顔を隠した女性の姿へと変じる――【|春乙女《ペルセフォネ》】
『……ッ!!』
 藍の変化に力の威圧を感じた辻斬り少女は弾かれたように地を蹴り、刃の連撃を叩きつける。
 それに逆らうことなく青月の刃で受け流す。
(私自身はきちんとした剣技は習ってませんが、ヒーローズアースで知り合ったヒーローの女性、そして私の前世が想いに応えてくれる)
 辻斬り少女の斬撃に合わせて、藍が大きく横薙ぎ。
『くっ……!』
 少々でも剣の覚えがある藍と、刀に操られたように辻斬りを繰り返す少女では体幹が違う。刃を受け流されて態勢を崩す辻斬り少女。
「せめて、此れ以上が無い様に」
 ふわり、と翼を舞い上がりながら、体を回転させる藍。紫陽花を避けて空にあがった藍の動きは大きく鋭く……そして力強く。体の回転を乗せた刀の一撃は袈裟斬りの軌道を描いて辻斬り少女を斬り裂くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エリー・マイヤー

現れましたか。
念動ソナーにより、出現する場所はなんとなくわかっていました。
そんな私は、当然危なげもなく不意打ちを避け
うわ攻撃はっや

などと実際ものすごく驚きつつ、念動力を周囲に放出。
外向きに力をかけて、攻撃の勢いを削ぎます。
そのまま上向きの念動力で自身を空に逃がし、攻撃を回避です。
そんな感じで対応したら、反撃に【念動エクスプロージョン】。
不意に襲い掛かる念動力の炸裂で、着実に体力を削りましょう。

さて…
紫陽花が青いのも、アナタがそうなったのも、私が青く美しいのも。
アナタのせいではありません。
そこを気に病むくらいなら、来世で作って見せてください。
色とりどりの紫陽花の園を。
アナタの手で、私達にも。




『ぐっ、うぅっっ!!』
 肩口から入った文字通りの袈裟斬り。着物と肌が大きく裂け抉れるその一撃に、『辻斬り少女』は思わず後退して跪く。
『はぁっ、はぁっ……』
 荒い息に滴り落ちる冷や汗。されど、影朧という存在からか、血は一滴も出てこない。ただ、その部分が黒く無くなっている。地面と挟み込む様に置いた刀がカタカタカタと振動している。
『……そう。私は人を、斬らないと……!』
 顔をあげる辻斬り少女。
 そこに居たのはエリー・マイヤー(被造物・f29376)。傘を差しながら紫煙を燻らせる彼女は、カフェーから真っ直ぐ『ここ』へ来ていた。【念動ソナー】によって、出現する場所はなんとなくわかっていたからだ。

「現れましたか」
『……!』

 エリーが言葉を発するのと辻斬り少女が踏み込んだのが同時。
 だが、いかな先制攻撃とて相手がわかっていてその攻撃も見えているならば不意打ちとはなりえない。
 そう、エリーは当然危なげもなく不意打ちを避け。
「うわ攻撃はっや」
 傘を真っ二つにされていた。ちょっとエリーさん、それお店のものですよ?
『ちっ……!』
 とはいえ、辻斬り少女のガール・ザ・リッパーはしっかりと回避している。
 傘を投げつけつつ、エリーは念動力を周囲に放出。
 なお、実際にはものっそい驚いていたのは秘密である。
『くぅっ……! 面妖な!!』
 目に見えない壁を叩きつけられたように弾き飛ばされる辻斬り少女。追撃を放とうとしていた思惑は潰されて、後ずさりながらしっかりと着地する。刃を真横に構えて目を細める辻斬り少女。
『ここならっ!』
 何かを感じ取ったのか、胴を薙ぎ払う動きで刃を振るう。キン、と甲高い音がして。
「ちょ」
 念動力がどうにかなったらしい。だが、エリーの念動力は弾ではない。指向性があるものの、その場を満たす性質に近い。辻斬り少女へ叩きつけたソレはどうにかされても、まだ手はある。
「……っ」
 再度踏み込んできた辻斬り少女の跳ね上げるような下からの斬撃を、上向きの念動力で自身を空に逃がすことで回避する。
『……っ!』
 後ろに退けばそのまま振り下ろしの三連撃となった攻撃は、刃の軌道から逃れる様に空へ飛んだエリーによって中断される。
『ですが、空に逃れたとて! ……?!』
 手にした刀を投げつけようとして、しかし、目を見開いて自分の右手を見つめる辻斬り少女。動きが止まる。
「……? ですが」
 隙を逃すエリーではない。
 視線を向けると同時に【|念動エクスプロージョン《サイ・エクスプロージョン》】を放つ。
『ぐぁっ?!』
 エリーから叩きつけられた破裂する念動力をまともに受けて吹き飛ばされる辻斬り少女。
「まだまだ。着実に体力を削りましょう」
 辻斬り少女の体が空中にある間に、何度も【念動エクスプロージョン】を放つエリー。
『くぅっ……!』
 何度も襲い来る衝撃を気合で耐える辻斬り少女の体が、紫陽花の花壇の中に落ちる。
『はっ! 紫陽花!!』
 花壇の中と気付いた辻斬り少女が焦るように周囲を見渡す。だが、紫陽花と紫陽花の間へすとんと落ちたようで紫陽花には被害は無い。
『青い、紫陽花……私が、私が……!』
「紫陽花が青いのも、アナタがそうなったのも、私が青く美しいのも。アナタのせいではありません」
 紫陽花ごしにエリーが告げる。……ん? 最後なんて??? ここシリアスシーンでは? アッハイモドリマス。
『だとしても! 私は『あの』紫陽花を取り戻したいのです!!』
 辻斬り少女が刀を構えて立ち上がる。
「そこを気に病むくらいなら、来世で作って見せてください」
『……え?』
 エリーの言葉に不意を打たれたよう……に動きを止める辻斬り少女。『来世』、すなわち転生。影朧であるならば幻朧桜に導かれ、『その事』も意識にあるはずなのに。
 辻斬り少女は『その事』を告げられ、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
「色とりどりの紫陽花の園を。アナタの手で、私達にも」
 エリーの言葉に、辻斬り少女の手にする刀がカタカタカタと震えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジゼル・サンドル
(死体一つで全ての紫陽花が青くなるわけないな…)と散策してるうちに気付いた。歌姫探偵といいつつまだまだだな…

でも事件を未然に防ぐのが探偵だ、凶行は止めてみせる。紫陽花が青いのは君のせいじゃないのだから。
【多重詠唱】で重ねた【結界術】や【オーラ防御】【霊的防護】で攻撃を凌ぎ、距離をとる。

『♪血を吸って咲く花の色は美しい?心のようにうつろう花の色、変わる理由はひとつじゃない』
UC「想い響く詠唱」に乗せて歌い、血でなくても色は変わると訴えつつミラージュフラワーで赤い紫陽花を映し出し心を【浄化】。

植物にとっては毒のアルミニウムを無毒化して色を変えるのが紫陽花だ、彼女の心の毒も無毒化できるといいのだが…




 不気味な振動を放つ刀の柄を『ぎゅっ』と握り込んで。
 『辻斬り少女』は大きく飛び退って態勢を立て直す。深呼吸。閉じていた瞳を再度開いた時には、人の血を求める辻斬りに戻っている。
『……!』
 視界に入ってきたのは、紫矢絣に紅袴――歌姫の情熱を宿す歌姫探偵の衣装。
「……」
 ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)もまたしっかりと辻斬り少女を認める。
『……ッ!』
 ひと呼吸――その間にジゼルとの間合いを詰めた辻斬り少女は即座に刀を振り降ろす。それを幾重にも。近寄るもの、否、近くにいるもの全てを斬り裂かんとする血桜開花。
「……っ!」
 その華ながら鋭い一撃を、ジゼルは多重詠唱にて同時に展開した結界術、オーラの護り、霊的防護によって幾重にも重ねた障壁で防ぐ。

 ――仲間の言葉が風に乗って聞こえてきたので知っている。ここには辻斬り少女の死体がある。

(だが、死体一つで全ての紫陽花が青くなるわけないな……)
 散策してるうちに気付いた真実、といっていいだろう。
(歌姫探偵といいつつまだまだだな……)
 そんな思いもまだ胸の内にはある。
 でも。
「でも事件を未然に防ぐのが探偵だ、凶行は止めてみせる」
『何を……!』
 辻斬り少女は連撃の手を緩めず、しかし、その悉くがジゼルによって防がれている。拮抗した状況に辻斬り少女は焦ることもなく、しかし応える
「紫陽花が青いのは君のせいじゃないのだから」
『……! だとしても!』
 あの記憶の中に在る彩り鮮やかな紫陽花を諦める理由にはならない。人の血を求める事を止める理由にはならない。
「……ふっ、えいっ!」
 叫んだことで少しだけ攻撃の手に翳りが見えた。その隙をついて、ジゼルがえいやっと両の掌を突き出す。もちろん展開している障壁も備えたまま。
『きゃぁっ!!』
 不意を突かれて、たたらを踏みながら後退する辻斬り少女。その間に、ジゼルは距離を取る。
『くぅ……はっ?!』
 数瞬、衝撃によるめまいでジゼルから意識を逸らしてしまった辻斬り少女。気付いた時にはジゼルが次の行動に移っていた……すなわち。

 ♪~血を吸って咲く花の色は美しい?

 ジゼルの歌声が響く――【|想い響く詠唱《センティメント・アリア》】

 ♪~心のようにうつろう花の色、変わる理由はひとつじゃない

 『わたしの歌を、想いを、聴いてくれないか?』と、胸元にぎゅっと抱いた銀の懐中時計――『夜空に歌うクロウタドリ』を通じて。
 ゆらり、と揺れるジゼルの背後。そこに映し出されたのは赤い紫陽花――歌姫の心のままに咲く『|心映しの花《フルール・ド・クール》』が夢現に咲いていく。
『……っ』
 踏み込もうとしていた辻斬り少女の足が止まる。
 目の前にはまるで自分の記憶の様な色鮮やかな紫陽花がある。それを斬る事は……出来ない。思わず零れる涙。
 ジゼルの歌声が辻斬り少女の『芯』を揺さぶる。

 そう、『あの』美しい紫陽花を取り戻したい。それが切なる願いで、その手段は人を斬る事。血を得る事。血で染める事。それしかない、それしかないと|思って《狂って》。

『……え?』
 呆けた様に自身の手を見つめる辻斬り少女。そこにはしっかりと握られた刀の柄がある……いつの間にか握っていた、否、『握らされた』刀が。
『……ぁ……』
 刀がかしゃん、と音を立てて地面に落ちる。
『わ、私、私は……どうして……』
 刀から後ずさるようにして距離を取る少女。
「……?」
 ジゼルが内心、首を傾げる。この少女は『人を斬る影朧』として成り立っていたのではないか? と。それがどうして『自身の相方とも言える刀』に動揺しているのか? もしかして……この少女は。
 でも、その前に。
(うまくいったみたいだ)
 植物にとっては毒のアルミニウムを無毒化して色を変えるのが紫陽花。ならば彼女の心の毒も無毒化できるのではないか……? その心の毒を『狂気』と考えていたジゼルだが、もしかしたら『別のもの』であった可能性はある。
 いずれにしても、その『呪縛』から解放されたのは事実。ジゼルの歌声が少女の芯を打ち、想いを響かせて、心を浄化したのだ。
「正気に、戻ったみたいだな」
『え? ……ああ、そう、なのでしょうか? そうなのでしょうね』
 何やら腑に落ちない様子の少女は、それでもぺこりとジゼルへ、猟兵たちへ頭を下げる。
『お手間を取らせました』
「よかった。事件を未然に防げて」
 少女の声に応えるジゼル。しかし言葉が続かない。何故か、といえば少女の体が消えそうになっていたからだ。
『はい。元々、「私」に|現世《うつせ》に顕れるほどの|力《想い》は無いみたい、ですから……』
 徐々に細っていく声。と同時に体がゆっくりと透けていき、最後は幻朧桜の花散る風に溶けていく。

 ――止めて下さって、ありがとうございます。

 そんな声が風に紛れて聞こえて。
 ジゼルはふふ、と笑みを浮かべるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年07月29日


挿絵イラスト