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シャチを狙うは狂気の海豚

作者：寅杜柳

●鮭被るシャチ達の街
　獣人戦線、アメリカ西海岸。
　仮初の繁栄を謳歌するこの国の例に漏れず、シャチ獣人が住民の大半を占める街は限りなく平和であった。
　そして最近のこの街の若者の間で流行っているのは鮭を象ったデザインの帽子。平和であるからこそファッションを楽しむ余裕も出てくるらしいのだが、何故鮭になったのか流行の発端は不明だ。
　なんでも数十年前に同じような流行があったという事だが――ともあれ、この地のシャチ達はややのんびりしていて、悪く言えば平和ボケというやつだ。
　そんなシャチ達を狙い、海より幻朧帝国の悪しきエージェントが忍び寄っている事を、住民は想像だにしていなかった。

　グリモアベース。
「さて、獣人戦線の世界各地に存在する特定種族が多く住む街が、幻朧帝国に狙われる事件の予知の一つが見えたからちょっと力を貸してくれないかな。」
　そう猟兵達に呼びかけ、説明を始めるのはシャチのキマイラであるヴィクトル・サリヴァン（星見の術士・f06661）。

「今回狙われてるのはアメリカ西海岸にある少数種族のシャチが多く住む観光地の街だよ。シャチは未だ猟兵に覚醒した者もいない種族だけど、幻朧帝国は猟兵に覚醒する前に大勢殺戮する事で覚醒の芽を摘もうとしてるのかもしれない。やってくる作戦は逢魔弾道弾を街の重要な場所に設置して起爆、周辺一帯を逢魔が辻に変えて住民皆殺し、っていう物騒なものだから何としても起爆前にエージェントを撃破して欲しい」
　そうヴィクトルは言って、予知の詳細について説明を移す。

「標的となったシャチの街は観光地、住民の階梯は大半が2で他も少しずついる感じかな。シャチはサメと同じ位は大柄なひとが多いから街も大体普通の街の二倍スケール、その上であちこちに水場があって乾燥に困り難いような造りになってるみたいだよ。住民は大体のんびりしてて、最近では鮭の帽子が流行ってるみたい。本物使ってるわけじゃなくてそれっぽいデザインにしてるだけなんだけど、その帽子を被ってたら話の切っ掛け位にはできるかもね」
　町や住人について説明したヴィクトルは、次に破壊工作を仕掛けてくるオブリビオンについて語る。

「今回の幻朧帝国のエージェントは『サイコパスアルブスイルカ』、名前の通りイルカ獣人でゾルダートグラードの改造を受けて冷徹な生体戦闘マシーンにされている。どういう因果で幻朧帝国の工作員になってるかは知らないけど、予知では夜に海の方から街へ侵入してくるから海岸で待ち伏せていれば多分遭遇はできるだろうね。発見したら確実に撃破、宜しく頼むよ」
　そう説明したヴィクトルは首にかけたグリモアである鍵を手にして、転送の準備を開始する。

「去年の後半にサメが覚醒して、最近ではカラスとウシも猟兵に覚醒しそうな気配が一寸ありそう、かな。ここに至るまでに多くの事件が予知されて都度破壊工作は阻止されてきたけど、シャチ達もまた覚醒するまで数多く狙われるかもしれない。彼らの命を守るために、頑張っていこう」
　そう言ってグリモア猟兵は話を締め括り、グリモアを輝かせて猟兵をシャチ達の観光地の街へと転送したのだった。

第1章 日常 『観光を楽しもう！』

POW   :    とにかく体当たりで積極的に楽しむ SPD   :    あちこち素早く回りつつたっぷり楽しむ WIZ   :    ガイドブックや案内を確認しながらのんびり楽しむ 👑5 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

●シャチの街を観光してみよう
　幻朧帝国に狙われたアメリカのシャチ達が多く住まう街へと転移してきた猟兵達。
　標的のエージェントがやってくるのはグリモア猟兵により夜になってからだと予知されている。
　今はまだ日が高い時間帯、戦闘開始までこの観光地の街で楽しみながら、街の様子を頭に入れておくのもいいだろうと其々散策を開始する。

「わぁ、シャチのみなさんは大きいんですね」
　このシャチの街にやってきた熊ヶ谷・咲幸（チアフル☆クレッシェンド・f45195）というアイドルの少女はきょろきょろ街を歩くシャチ獣人達を見て呟いた。
　背はクマ獣人よりも大きいだろうか、少数種族らしいがこのシャチばかりの街では寧ろ他の種族が少数派となり、巨人達に囲まれたような気分になってしまう。
　陽射しの厳しいこの街のシャチ達は基本的に薄着――恐らく気ままに水に飛び込んだりしてもすぐ乾くようなタイプの衣服を着ていて、デザインそのものはひとそれぞれでバラエティ豊かに見える。
　世界各地で戦いが続く獣人戦線においてこのアメリカの繫栄は仮初ではあるものの、戦火に晒されていない彼らはファッションを楽しむ余裕があるのだろう。
「それにしても……あれもファッション、なんですかね？」
　咲幸の目に留まったのはシャチ達が頭に乗せている鮭の形をした帽子。デフォルメされたものもあるけれども、生きているのではないかと錯覚するような造型のものもあって、実に独特なセンスである。
『数十年前、もっと前にも流行っていたらしいわよ。ブームはリバイバルするものなのねー』
　通りかかったシャチの女性に聞いてみればそんな回答が返って来て、この奇妙なファッションは何度か流行を繰り返しているらしい。
『う～ん。世界って不思議だリン！』
　八朔と熊を合わせたような姿のマスコット『フラクトクマリン』の言葉に同意しつつ、咲幸はこのシャチの街の大通りを歩いていく。

「このぼうし　そざいは　なんだろう？」
　そして海月のような白い印象のネッド・アロナックス（ガムゴム人の冒険商人・f41694）は、帽子屋に入って並べられた商品を見ていた。
　今の流行らしい鮭帽子、デフォルメされたものは大体布製のように見えるけれどもリアル調な鮭帽子はまるで生きているかのようでどうやって作られたのか少々気になるところ。
『ああ、それが気になるのかい？』
　興味深げに見ているネッドに気付いたシャチの店主が近づいて話しかけてきた。
『素材は合成皮革の一種らしいぞ。｜糧食《レーション》製造の技術も一部流用されてるらしいな』
　店主の説明になるほど、と頷きつつ、少々変わった素材の鮭皮のような手触りを確認するネッド。
　変わった素材として入手するのもいいかもしれないと素材屋さんとしての視点で考えながら、他に変わった素材はないか店主に尋ねてみるネッドであった。

　そしてもう一人、ブラックタールの猟兵が小路を歩きながら街の風景を眺めている。
「みんな暑そうだね♪」
　全身真っ黒なクローネ・マックローネ（｜闇《ダークネス》と｜神《デウスエクス》を従える者・f05148）、このアメリカ西海岸の街の日光をよく吸収して体温も上昇しているようにも感じられる。
　シャチと言えば白黒ボディ、特に背側側は黒が大半故にこの陽射しによく熱せられているようで、街のあちこちにある水浴び場らしき場所では暑さで少しばかり虚ろな目になったシャチ達がバケツに水を汲んで頭から被って涼を取ったりもしているようだ。
　日陰で体を伸ばしてぐでっているサーモンハットを被ったシャチの一人に声をかけて聞いてみれば、この水浴び場の水はよく冷えた清潔な淡水に処理されていて、この地で陸の方に生活の基盤を置いているシャチには欠かせないとのこと。
『大体は川の方から取水してるけど海辺には淡水化処理施設もあるからなー。多少の川の水が干上がっても何とかできるらしい。まあそうなったら海の方に泳ぎに行くんだけどな！』
　そう言ってくい、と巨漢のシャチは海岸の方を示した。
（「……その施設とか、狙われそうかな？」）
　海の方からやってくるらしいイルカのエージェント、街の海辺にそんな施設があるならば重要拠点として狙ってきてもおかしくはないだろうとクローネは考える。
　そして情報を教えてくれたシャチにお礼を言うと、クローネは海岸の方へと向かっていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

第2章 ボス戦 『サイコパスアルブスイルカ』

POW   :    殺戮の宴人 【パリピ化ガス】を噴出し、吸引した全員を【パリピ】化し、レベル秒間操る。使用者が製作した【迷彩ヘルメット】を装備した者は無効。 SPD   :    聖地製造 【オートエイム銃】【ガス手榴弾ランチャー】【殺戮工具】を備え、内部の味方は睡眠不要になる塹壕を、1日にレベルｍ掘ることができる。 WIZ   :    殺戮AIモード 自身の【無差別殺戮プログラム】を解放し、物質透過能力と3回攻撃を得る。ただし毎秒加速する【飢えと乾き】を満たし続けないと餓死。 イラスト：橡こりす 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

●殺戮イルカを撃破せよ
　そして、夜が来る。
　一部ではまだ夜の海を楽しんでいる観光客の居る海岸だったが、殺風景な淡水化処理施設の周りにはほぼ人気はなく、静まり返っていた。
　近くの海に三角形の背びれと白波が立って、丸っこいイルカ獣人――『サイコパスアルブスイルカ』が浮上してくる。
　このオブリビオンの狙いは逢魔弾道弾によるこのシャチの観光地の破滅、この処理施設で爆破できたならば街中を逢魔が辻に変えられると判断しての事だろう。
　しかしそれを阻止する為、予知して淡水化処理施設の付近に潜伏していた猟兵達が一斉に飛び出してオブリビオンを包囲する。
　一瞬目を見開くイルカ獣人だったが、すぐさま内蔵兵器を展開して迎撃態勢に入る。機械化改造により肉体精神両面を生体戦闘マシーンにされたオブリビオンに動揺はないのだろう。
　このオブリビオンをげきはできなければ街はオブリビオン蔓延る魔の都に変えられ滅びる――その悲劇を阻止すべく、猟兵達はユーベルコードを起動し、戦闘を開始した。


●喰らい付いたら大回転
『クカカカカカッ！！』
　丸っこい可愛らしい外見とはかけ離れた奇声をあげながら、サイコパスアルブスイルカは塹壕を高速で掘り進み製造していく。
　ユーベルコードにより造られたそれはエージェントにとっての陣地、突破困難な地形があっという間に築かれていく。
「こんなところにいたんですね！」
　そこに駆け付けてきたのは熊ヶ谷・咲幸（チアフル☆クレッシェンド・f45195）とはっさくまのフラクトクマリン。
　咲幸はレジェンドパクトを気合と共にこじ開けてアイドル衣装へと変身して、
「貴方を、骸の海を浄化します！」
　既に猟兵に抗う為の塹壕は長さこそ短いが掘られており、その中に飛び込んだサイコパスアルブスイルカは隠れながら抗戦の構えだ。
　銃やガス手榴弾ランチャー、おまけに殺戮工具まで備え遠距離攻撃に優れた塹壕に隠れた相手に対し、接近戦を得意とする咲幸にとっては射程的に不利だろう。
　どう切り崩すか悩む咲幸に、クマリンが渋みのある声色でアドバイスを送る。
『何とか隠れながら近づくリン！　……と言っても遮蔽物が……』
　周囲へと視線を向けるクマリン、海岸であり小柄とはいえ咲幸が隠れられるサイズの遮蔽物は見当たらない。
　そうこう考えている内にオートエイム銃の銃口が咲幸に向けられる。まずい、と警告しようとするクマリンだが、
「隠れるんだね、分かった！」
　そう咲幸はクマリンのアドバイスに応え、地面をぶん殴り砂を吹き飛ばした。
　そこに開いたのは大穴、咲幸はその規格外の怪力で地中を掘り進んでいく。地中にいる彼女に対し、塹壕に備えられた武器は土の壁に阻まれ攻撃が届かない。
　そしてそのまま掘り進んだ咲幸は塹壕の側面に穴をあけ、ぎょっとした雰囲気のイルカ獣人へと飛び掛かる。
「ワニさんと戦った時に思いついたこの技で！」
　ウシ獣人達の街を幻朧帝国のワニのエージェントから守る為に行った先日の戦いを思い返しながら、希望の力を籠めたまますべすべしたイルカに抱き着いて【クレッシェンド☆ツイスター】のユーベルコードを起動する。
「いっきますよ〜！」
　彼女の両腕はさながらワニの顎、｜抱き着かれた《喰いつかれた》獲物に逃れる術もなく、咲幸が始めた高速回転――デスロールのようなそれにイルカは高速で回転させられて、
「クレッシェンド☆ツイスター！！」
　掛け声と共に飛び出してきた壁の反対側の壁に咲幸はオブリビオンごと突っ込んで、地面を掘り進むドリルのように押し付けて機械化改造されたイルカのつるつるした表皮と中の機械部品を回転で削り取っていく。
　ただ万全の状態のオブリビオンを削り切るには少々足りなかったようだ。
「目、目が回ります〜」
　曲がりくねった塹壕の壁を幾つかぶち破り回転を止めた咲幸がふらふらしている間にイルカは捕縛から脱出、塹壕の外へ飛び出し距離を取って。
『咲幸ちゃんはいつも無茶苦茶だリン』
　そして咲幸にようやく追いついてきたクマリンは、どこか諦めの混じった低い声でそう呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

●ガスをばらまく改造イルカ
　そして塹壕から飛び出してきた改造イルカ獣人に、二人の猟兵が仕掛けていく。
　チャイナ服の人狼、瑠璃・やどり（チャイナウルフガール・f03550）は愛用の巨大ハンマー『双喜』を大きく振りかぶってイルカ目掛け振り下ろす。
　咄嗟に回避するイルカ、しかしそこに『宇宙カブJD-1725』に乗った数宮・多喜（撃走サイキックライダー・f03004）がやや距離を取りつつ『SMG-MP5udc』の援護射撃でやどりから離れようとするイルカを妨害する。
（「しかしまあなんというか……よくここまで破壊だけに塗り替えられるものだねぇ」）
　多喜のテレパスで伝わってくるこのオブリビオンの思考の全ては殺戮に関するもの、逢魔弾道弾でこのシャチの街をオブリビオンの都へと変えてしまうことばかりだ。
　改造されているとはいえここまで来ては説得など不可能だろう。ならば早々に仕留めるしかない、宇宙カブを走らせつつハンマーで苛烈に攻め立てる人狼を射撃で支援していく。
『クケケケケケケケ！』
　二人の猟兵の攻勢にサイコパスアルブスイルカは隠し持っていた迷彩ヘルメットを取り出し被って、頭部の噴気孔からパリピ化ガスを噴出。
　そのガスは吸引した猟兵達をパリピ化し操作する厄介な気体、咄嗟にやどりは離れ吸引を免れるが、結界のように展開されたガスに対処しつつ接近戦を仕掛けるのは難しいだろう。
「ここはアタシの出番だね！」
　宇宙カブを一旦停止させた多喜がユーベルコード【ゴッドパワーライド】を起動、
「こいつはちょっとしたゴッドスピードライドの応用でね……そらっ！」
　すると宇宙カブの形状が変形、乗騎により適した形状へと変化してその機動力を向上させる。
　武器や防具にも変形できるがここは速度が重要、息を止めて一気に宇宙カブを加速させて多喜は飛び込んでいく。
　内蔵火器で迎撃、少しでも接近を遅らせガスを吸わせようとするイルカだが多喜の機動力の前にその足止めは通用しない。あっという間に接近した多喜はイルカが被った迷彩ヘルメットをすれ違いざまに掴み奪い取り、そしてやどりの方へと放り投げた。
「それを被りな！　ガスを無効化できる！」
　多喜の言葉にやどりは即座にヘルメットを装着、パリピ化ガスを無効化しながらサイコパスアルブスイルカへと一気に飛び込んで、
「いっくよー！」
　ユーベルコード【跳！打！壊！散！】を発動、打ち出の小槌型ハンマーをフルスイングして丸っこいオブリビオンのボディを全力で殴り飛ばす。
　一気に100メートル吹き飛ばされたイルカは数回地面にバウンドし倒れるが、起き上がって甲高い笑い声をあげる。
　精神面でも改造されたイルカのオブリビオンは命が潰えるまでその作戦行動を止めない。哀れな殺戮機械へ引導を渡すべく、やどりと多喜は追撃を仕掛けていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

●咎負う海豚は骸の海へ
　猟兵達の攻撃に追われたサイコパスアルブスイルカは無差別殺戮プログラムを起動する。
　追い込まれた状況で発動したこの力は物質透過能力と三回攻撃と強力ではあるが、代償も大きく毎秒加速する飢えと乾きを満たし続けねば餓死してしまう。
　諸刃の剣に縋らねばならないのは相当追い込まれているという事だろう――改造された精神で何かに縋るような希望を抱くのかは不明ではあるが。
　そんなイルカのオブリビオンに引導を渡すべくやってきたのはと轟・やゆよ（あにそん伝道師・f06396）と政木・朱鞠（狐龍の姫忍・f00521）の二人。
「ふーん、やっと、ボスのお出ましか……」
「あたしも駆けつけてきたのよさ！」
　始末すべき咎を背負った悪を睨む朱鞠、気合十分なバーチャルキャラクターのやゆよ。対するサイコパスアルブスイルカは改造された胴体から兵器を展開、弾幕を展開して一気に勝負に出る。
「復讐でもなく、破壊だけを目的とする貴方の咎、キッチリと清算してから骸の海に帰って貰うよ」
　忍者の身軽さでオブリビオンが作った塹壕の地形も利用しつつ攻撃を躱しつつ朱鞠は仕掛ける隙を伺って、
「危ないじゃないのよさ！」
　アイドル衣装のやゆよは銃撃を躱し、更に仕掛けてきたイルカ獣人の鈍器攻撃をステージ上で披露するような華麗なダンスの動作で回避する。
　しかし攻撃の手数が多く、あまり長時間躱し続ける事は難しいだろう。
（「それにしても物質透過が厄介ね」）
　拷問具『荊野鎖』を構えつつ思考する朱鞠。愛用の拷問用の鎖も、今の状態のサイコパスアルブスイルカはすり抜けてダメージを与えられないだろう。
　かといって餓死を狙うような持久戦は逢魔弾道弾を相手が抱えている以上不安が大きい。どう攻めるべきか、と朱鞠が思考する間にやゆよがユーベルコード【プロジェクト・リトルウィッシュ】を起動する。
「みんな、あたしの気持ちに応えてほしいだわさ！」
　世界の壁を越え、故郷であるキマイラフューチャーのネットを使っている人々にやゆよは呼びかける。
　この状況で悪しきオブリビオンからこの街の獣人達を守る――その願い願いの実現可能性とキマイラフューチャーの人々の賛同の多さにより実現されたのは、物質透過能力の無効化。
『クカカッ！？』
　驚くオブリビオン、そしてこの好機を朱鞠が見逃すはずもなく、身を隠していた地形の影から飛び出して鎖が届く間合いへと距離を詰めようとする。
　冷徹な生体戦闘マシーンはすぐさま驚愕から脱しまだ残っている三回攻撃、火器を展開し朱鞠を迎撃しようとする。
「ちょっとの間だけ、大人しくしていてくれるかな…なるべく痛くしないから……」
　しかし朱鞠がそれに対し【忍法・鋳薔薇姫】のユーベルコードを起動すれば、彼女の足元の陰から金属光沢の鎖――触手が放出され、サイコパスアルブスイルカの身体から展開された武器の数々を絡め捕りその攻撃的行動を無効化する。
　この忍術は使用時間の制限がある、だがその制限はもう考えなくていいだろう。
「……骸の海に帰りなさい」
　イルカのつるつるした身体に絡みつく荊野鎖、それが一気にひっぱられ喰らい付いたスパイクがずたずたに引き裂き、その血を奪い取るようにして生命を丸ごと刈り取ったのだった。

　かくしてアメリカ西海岸のシャチ達の街は冷酷なイルカの破壊工作から守られ、変わらぬ平穏な明日がやってくる。
　この仮初の平和が維持されいつか本物になるのか、はたまた砕かれてしまうのかは分からない。
　それでもこの地に生きる獣人達が平和に生きられるよう願いつつ、猟兵達はグリモアベースへと帰還したのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

最終結果：成功 完成日:2025年07月31日