決め台詞はアクセント次第
ルイナ・ラヴ
封神武侠界にある傾国にて猟兵として恥ずかしい事がないよう日々鍛練に勤しんでおります
傾国の同志達は皆さん各々決めゼリフのような格好良い言葉を最後に決める事が多いですし私も何か決めゼリフのようなものが有った方が猟兵として貫禄が出るかもしれません、多分…
朱鳥さんの鬼の山岡や、ユイナさんのきみに握手を贈ろう、みたいな、なんかこうっ私も自分らしさを絡めたキメの言葉と言うか…
難しいですね、変に力むと返ってカッコ良さが台無しになってしまいますから
ここは自分らしく、なんか行ける気がする…とか?
うーん、何か違う気がしますね、多分…
ハッ!多分…多分いける気がする!!
これです、私らしさが溢れる決めゼリフ…多分!
封神武侠界の一角には「傾国」と呼ばれる地域がある。
邪仙の手によって開かれたこの地に住まう者は君主の心を奪い国を危うくする……のではなく、オブリビオンの魔の手から世界を守るため、猟兵として恥ずかしい事がないように振る舞うため、日々鍛練に勤しんでいた。
「むー……」
その片隅にある書庫でルイナは頭を抱えていた。
「私も何か決めゼリフのようなものが有った方が猟兵として貫禄が出るかもしれません、多分……」
ルイナは自身のことを器用貧乏だと自覚している故に、何らかの形で「キャラ立ち」をしたがってた。
そう思い立ったのは、傾国の同志が皆、各々決めゼリフのような格好良い言葉——例えば朱鳥氏なら「鬼の山岡」、ユイナ氏なら「きみに握手を贈ろう」などと最後に締める事が多かったから。
「なんかこうっ私も自分らしさを絡めたキメの言葉と言うか……」
ヴァンパイアの力を覚醒させる時「我が○○よ」と言うことはあるが、同じような台詞を言うレプリカ氏の亡国の王女たる威厳は自分にはない。
何より近しい者同士でのキャラ被りは大罪だと思ったのか、候補から外したようだ。
「難しいですね、変に力むと返ってカッコ良さが台無しになってしまいますから」
煮詰まった頭を冷まそうと背もたれに体を預ける。
「ここは自分らしく『なんか行ける気がする』……とか? うーん、何か違う気がしますね、多分……」
敵の前で言うにはあまりにも弱々しすぎると却下したルイナは、自分が関わったオブリビオンとの戦いをグリモア猟兵がまとめた報告書を眺め出す。
自分が意識せず、頻繁に言っている台詞こそが「自分らしさ」を一番示せる事柄ではないかと信じて。
そんな中、ある単語が引っかかった。
「ハッ! 『多分』……多分、いける気がする!!」
机の端に置いてあった辞書を手に取りめくる。
1つ、数・量・程度が多いこと。「礼を——に頂く」。
2つ、多くの例。「ご——にもれず」。
「これです、私らしさが溢れる決めゼリフ……『多分』!」
これならば助けた者に言う時にも敵を煽る時にも使える、とルイナは立ち上がり歓喜の声を上げた。
だが参考にした辞書が古すぎたのか、差した光明で目が眩んだのか、ルイナは名詞の意味でしか見てなかった、多分。
副詞の「多分」の意味は十中八九とか、大抵とか、おそらく……を意味する。
それでもきっと、ルイナなら使いこなすことが出来るはずだ……多分。
成功
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