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ケルベロス・ウォー⑫〜森羅のグラビティピラー

#ケルベロスディバイド #ケルベロス・ウォー #神経樹グラビティピラー

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●全世界決戦体制
 如何なる思惑か。
 デウスエクスの統括者たる『十二剣神』、その六柱は地球に対して総力戦を仕掛ける。
 彼らの最大の目的は、特務機関DIVIDE本部『東京タワー』の地下に渦巻く『地球の精髄』である。
 これを奪われれば、地球は遠からず崩壊を迎える。
 無論、これを阻止せねばならない。
 だが、十二剣神は無敵の『永遠回廊』にて守られて――いた。
 建造された決戦配備によって十二剣神が一柱『神経樹グラビティピラー』を守る永遠回廊は破られた。
 その瞬間、地球に住まう人々は見上げるしかなかった。
 圧倒的な巨躯。
 地球よりも巨大なのではないかと思わせるほどの圧倒的威容。
 枝葉と根が絡まりあって人型を為したような巨大なる存在は、十二剣神『神経樹グラビティピラー』。

「癒やし合い、伝え合い、振る舞い合う……」
 その声は地球全土に降り注ぐようだった。
「生命とはなんと醜きものか。吾は生命の醜さに耐えられぬ」
 それは人の営みの否定であった。
 有史以来、人類が積み重ねてきたものを根底からではなく、頭ごなしに否定するものであった。
「吾が求むるは強者のみ」
 見上げてなお全容知れぬほどの巨大なる存在、『神経樹グラビティピラー』は言う。
「吾が求むるは強者のみ。そして、強者とは不滅のデウスエクスに歩からなぬ。寄り添わねば生きられぬ生命は、断じて強者ではない」
 そう、求めるは強者。
 それこそが絶対。
 絶対は真理であり、不滅なのだ。故に『神経樹グラビティピラー』はデウスエクスを求める。
 永遠にして不滅なる存在。

「強者に阿るのが弱者だというのならば、きっとそうなのだろう。その理屈は」
 亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、『神経樹グラビティピラー』を見上げてそういった。
「あれが『宇宙の神経』そのもの、というわけか。そおして、あの姿は……」
「然り、この姿は諸君ら生命に知覚できる限界範囲に過ぎぬ」
 そう。
 あの巨大な姿すら、末端に過ぎない。
 人間の視覚知覚できる範囲が、あの巨人なのだ。

「本当の吾の姿は、この星はおろか、いかなる銀河、星団よりも大きい。『永遠回廊』を破ったところで、吾を滅ぼすことなどできはしないのだ」
「……」
『エイル』博士は、その星映す黒い瞳を細めた。
「良い機会だ。醜き生命を、吾が直々に根絶してくれよう」
 戦場に迸るは膨大なグラビティ・チェイン。
 駆けつけた猟兵たちの身に降り注ぐ凄まじいグラビティ・チェインは彼らの身を『進化』させようと、その身の内側にある力を引きずり出すようであった。
「吾は『神経樹グラビティピラー』。此の星からグラビティ・チェインを奪う、諸悪の根源である――」

●ケルベロス・ウォー
 ナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)は吐き気を催していた。
 腹の底からせり上がるような嫌悪感。
 しかし、口元を押さえれど彼女は猟兵達に言う。
「あれが十二剣神『神経樹グラビティピラー』……! そして、これがグラビティ・チェイン……! 皆さんも感じておられることでしょう、これは『進化』を促す力……!」
 そう、猟兵たちも感じていた。
 己が『真の姿』を引きずり出すような、異様なる力。
 それが間断なく己達に注ぎ続けているのだ。
 抵抗することもできるが、しかし受容することで尋常ならざる力を己たちが引き出せることも理解していた。

 迫るは星よりも星団よりも巨大だという『神経樹グラビティピラー』。
 迷っている暇はない。
 いや、そればかりではない。
『進化』を受容した猟兵たちは、目を見開いた。
「何が、見えるのですか……?」
 ナイアルテの言葉にグラビティ・チェインによって『進化』を受容した猟兵たちは信じられないものを目の当たりにしていた。
 そう、知覚力が進化したことにより、彼らの瞳には地球を取り囲む無数の『グラビティピラー軍団』が認識できてしまっていたのだ。
 そして、『グラビティピラー軍団』は己たちを知覚した者を認め、集団包囲攻撃を仕掛けてくるのだ。
 これは『進化』を受容した者にしか迎撃できず、また彼らにしか干渉できないようだった。
「……来る? 一体何が」
 ナイアルテには何も見えない。
 そして、猟兵たちは説明する暇もないのだと、迫りくる『神経樹グラビティピラー』と『グラビティピラー軍団』を前にして立ち向かわねばならないのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『ケルベロス・ウォー』の戦争シナリオとなります。

『十二剣神』、『神経樹グラビティピラー』を守る『永遠回廊』を破り、ついに攻撃を仕掛ける事が可能になりました。
 ですが、凄まじいグラビティ・チェインを『神経樹グラビティピラー』は皆さんに注ぎ、『進化』させようとしています。
 進化を受容すれば常時『真の姿』状態で戦うことができます。
 ですが、知覚力が進化したことにより、地球を取り囲む無数の『グラビティピラー軍団』もまた認識できるようになってしまいました。それらの集団包囲攻撃が『進化』を受容した猟兵に襲いかかってきます。
 また、この『進化』は拒絶することもできますし、『神経樹グラビティピラー』を倒せば進化は終了します。

 ※プレイングボーナス……「進化」を受容するか、拒絶する。

 それでは、狙われた地球を守るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『十二剣神『神経樹グラビティピラー』』

POW   :    受容せよ。グラビティ・チェインは吾が力でもある
【濃密なグラビティ・チェインの霧】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【重グラビティ起因型神性不全症(寿命削減)】による汚染を与え続ける。
SPD   :    受容せよ。神経樹は宇宙を覆い尽くしている
【天空から降り注ぐ神経樹の槍】【建造物から生える神経樹の槍】【大地から生える神経樹の槍】を組み合わせた、レベル回の連続攻撃を放つ。一撃は軽いが手数が多い。
WIZ   :    受容せよ。デウスエクスこそが到達点である
視界内の任意の全対象を完全治療する。ただし対象は【神経侵食】に汚染され、レベル分間、理性無き【暴走デウスエクス】と化す。

イラスト:hina

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

久遠寺・遥翔
見えないだけで取り囲まれてるっていうのなら無視するわけには行かない。
進化を受け入れてまとめて駆逐する。
いくぜ|相棒《イグニス》。これはこの惑星が生き残るための戦いだ。

「偉そうなことを言っておきながらお前らも群れてんじゃねえか。行くぜ雑草ども、まとめて焼き払ってやる」
真の姿となったキャバリア、イグニシオン・ソーリスに[騎乗]しての[空中戦]
神経樹の槍を進化した[心眼]で[見切り]、かわしたり[焼却]したりしながら
神殺しの刃たるUCで槍ごと軍団を焼き尽くす黄金の斬撃波を放つ。



 十二剣神『神経樹グラビティピラー』。
 それは生命に知覚できる限界の形で地球に現れていた。
 あまりにも巨大。
 だが、本来の姿は、この巨大さ以上の大きさであるという。
 曰く、星団よりも遥かに大きい。
 まるで枝葉と根とを組み合わせ人型にしたかのような姿。
 それは生命の知覚限界を指し示すものであったことだろう。
「そして、知覚力が進化しなければ視えぬ『グラビティピラー軍団』、か。視えないだけで地球が取り囲まれているっていうのなら無視するわけにはいかない」
 久遠寺・遥翔(焔の機神イグニシオン/『黒鋼』の騎士・f01190)は己が身に降り注ぐグラビティ・チェインを受容した。

 込み上げてくる力。
『進化』。
 せり上がるようにして焔の黒剣の柄を握りしめる。
「いくぜ、|相棒《イグニス》。これはこの惑星が生き残るための戦いだ」
「いいや。これは生命の根絶のための戦いだ。全て無駄だ。お前たち弱者にとって、永遠不滅のデウスエクスに勝利する手立てはない。吾にとって最も価値あるのは、やはりデウスエクスだ。生命よ、根絶せよ」
 降り注ぐは神経樹の槍。
 天より飛来し、さらには地面からも生えるようにして襲い来る槍。
 それだけではない。
 地上に建造された建築物からも無数の神経樹の槍が生えて遥翔を襲うのだ。
 まるで四方八方からの飽和攻撃。

 更に迫るは『グラビティピラー軍団』。
 彼が『進化』を受け入れたが故に無数の『グラビティピラー軍団』は間断なく遥翔に襲いかかる。
「偉そうなこと言っておきながらお前らも群れてんじゃねえか」
「これも全て吾である。区別はない。まだ、そこまで知覚できるほどに『進化』していないか、猟兵。やはり永遠不滅には程遠い醜さよ」
「はっ、いくぜ雑草ども、まとめて焼き払ってやる」
 身を包みこむようにしてキャバリアが彼の体を覆っていく。
「『イグニシオン・ソーリス』!」
 真の姿を顕にしたキャバリアと共に遥翔は『神経樹グラビティピラー』へと迫る。
『グラビティピラー軍団』の猛攻を受け阻まれるも、手にした剣を振るう。

「神をも滅する厄災の焔――原初駆動(イグニッション)、レーヴァテイン!!」
 振るうは、焔。
 黄金の斬撃波がユーベルコードの煌きと共に『グラビティピラー軍団』を切り裂く。
 燃えるようにして斬撃の跡に残された残骸を蹴って、『イグニシオン・ソーリス』が宙を飛ぶ。
 さらに注ぐ神経樹の槍は次々と道を阻むように降り注ぎ、生え揃い、『イグニシオン・ソーリス』を寄せ付けない。
「疾く、消えよ。生命。その醜さを宇宙は許容しない」
「生命が生きようとするのを醜いと言うか。変化を醜いと言うか。見ろ、生命の煌きを!」
 遥翔の背にあるのは、最前線であろうと、危険に満ちていようと決戦配備を建造するために全世界から集った人類の総力。
 そこには危険を顧みず生きようとする者たちのいのちの輝きがあった。
 
 それすら『神経樹グラビティピラー』は醜いと言った。
「永遠不滅のどこに美しさがある!」
 変わらぬこと、不変であることが強者であるという言葉を否定するように掲げた剣の刀身から噴出する焔の斬撃が迫りくる『グラビティピラー軍団』を薙ぎ払うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
無限の進化か
私が日々剣の腕を磨いているのも一種の進化であると捉えれよう…だが、ひとつだけ言わせて貰う
我らは、人類は、自らの意思であらゆる困難を乗り越えるべく進化してきた
グラビティ・チェインに頼り、他者から奪う事で進化と名ばかりな突然変異を繰り返してきた化け物とは違うとな

故に私は貴様が仄めかす進化を拒絶してやるさ…我が剣でな

四方八方より強襲する神経樹の槍を躱し、いなし、斬り、迎撃する
【戦闘演算】により出現箇所を割り出せば、鞘型アームドフォートの砲撃で生えてくる前に頭を叩いてやるさ

本体への動線が見えればエアシューズをフル稼働させ、神経樹の槍を盾にしようとも『絶空斬』の一閃でただ…斬り抜くのみ!



 凄まじいグラビティ・チェインが身に注ぐ。
 熱を持つ体。
 肉体を構成する骨格、そしてそれを包む筋肉。
 それ自体が熱を持つようであり、燃焼された熱はさらなる筋力を身にもたらす。
 暴れ狂うように肉体が痙攣し、頭の中まで溢れる力に支配されそうになる。
 それが十二剣神『神経樹グラビティピラー』がもたらす『進化』。
「『進化』せよ。強者以外は要らぬ。弱者であることを誇るような生命など、この宇宙には必要ない。永遠不滅こそが、真の強者であるがゆえに」
 その言葉にジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、確かにそうかも知れないと思った。

「無限の進化か」
 確かに彼女は日々剣を振るっている。
 技を磨き、五体を磨く。
 それは練磨と呼ぶものであった。それを進化と呼ぶのならば、そう捉えられることもわからなくはないとジークリットは己の肉体の内にある熱を自覚して思っただろう。
「……だが、ひとつだけ言わせて貰う」
 ジークリットの瞳にはユーベルコードの輝きが灯っていた。
「我らは、人類は、自らの意思であらゆる困難を乗り越えるべく進化してきた」
 そう、その歩みが技である。
 伝えられ、磨かれ、また伝えられる。
 連綿と紡がれてきた轍の先にジークリットは今、立っているのだ。

 だからこそ、彼女は己のゾディアックソードを掲げてみせた。
「グラビティ・チェインに頼り、他者から奪うことで進化と名ばかりな突然変異を繰り返してきた化け物とは違うとな」
「愚か。愚かであり醜い。進化を拒絶するか」
「そうだ。故に、私は貴様が仄めかす進化を拒絶してやるさ……」
「如何にしてだ、醜い生命よ」
「決まっている……我が剣でな!」
 迫るは神経樹の槍。
 空一面から迫る槍の雨は、ジークリットの意志を挫くべく放たれている。
 切り払い、走る。
 だが、その走る足元からも生えるようにして神経樹の槍がジークリットに迫る。鎧を穿ち、その身に突き立てる槍。
 痛みを無視してジークリットは走る。

 戦いは加速していく。
『進化』を拒絶し、ジークリットは大地を踏みしめる。
 建造物からも生える神経樹の槍は彼女の道行きを茨のように覆い隠すだろう。だが、ジークリットは鞘型アームドフォートを己が進むべき道に向ける。
「できるものか、脆弱なる生命よ。進化を拒絶するは、歩を止めることと同義。であれば、滅びは必定。滅びを受け入れろ、弱者」
「強者は権利を持つが、弱者は可能性を持つ。そういうものだ、『神経樹グラビティピラー』……お前は強者を選定する立場故にわからぬのさ、可能性というものを」
 砲撃が己を覆い尽くさんとする神経樹の槍を薙ぎ払い、『神経樹グラビティピラー』を見据える。

 まっすぐに進む。 
 ただそれだけだと言うようにジークリットはエアシューズの推力を最大にし、迫る神経樹槍を薙ぎ払いながら、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「可能性など、ただの揺らぎの名でしかない。不確定、不定形、不明瞭。そんなものに」
「わからないからこそ、進むべき道を照らすものがある。それが勇気というものだ」
 ジークリットは斬霊刀を振りかぶり、迫る神経樹の槍ごと『神経樹グラビティピラー』へと絶空斬の一撃を叩き込む。
 膨れ上がる力は、未知なる暗闇の荒野の如き未来を切り開く一閃となって『神経樹グラビティピラー』の巨体に刻まれるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐東・充
【真の姿】は
使役する|UDC《ヨマンダ》に身体の主導権を明け渡した状態
薬剤精製に特化した研究者然とした女性人格

フフフ、生命が醜いというのは同意だね
でもその醜さゆえになかなか面白いもんだよ

コイツの装備する二丁銃をUCで変化させる
ボクもそんなに戦闘向きではないんだけども
人間の無意識のリミッターを外して常に全力を維持する事くらいはできるからね
攻撃重視で立ち回ろう

霧は敢えて吸い込んで体内で分析
瞬時にこれを無力化・或いは軽減させる作用の薬を精製
別にコイツの命が削れようが構わないんだけどさ
さっきも云った通り、ボクは案外人間が好きなんだ
遊べるオモチャが減っちゃうのは悲しいでしょう?
偶には優しくしておかないと



 グラビティ・チェインは猟兵に『進化』を促す。
 鮮烈に。強烈に。激烈に。
 こみ上げる力を前にして、これを拒絶することも受容することもまた猟兵の意志によって決定するものであった。
 戦う力を保たぬものは無力であり醜悪であると十二剣神『神経樹グラビティピラー』は言う。
「絶命せよ、生命」
 その醜き姿は宇宙には必要ない。
 真理とは美しいことを言う。
 真に到達したものは、全てが美しく、揺らぐことはない。揺らぐということは不変性がないということだ。
 人はそれを可能性と呼ぶが、その可能性こそが醜悪なのだ。
 変わらぬこと。
 永遠不滅であることこそが、美しいのだ。
 故に、絶滅させる。
「宇宙に貴様たちは必要ない」
「フフフ、生命が醜いというのは同意だね」
 佐東・充(オルタナティブ・f21611)はエレクトリック・ブルーそのものたる体躯と共にグラビティ・チェインが雨のように注ぎ、また霧のように立ち込める戦場に立っていた。
 身の内より発するネオンブルーの光は、ユーベルコードの輝き。

 鋼鉄の腕に収められたUDCが充の声帯を持って声を発する。
 同意。
 そのとおりだ。
 生命は醜い。完全でもなければ完璧でもない。
 彼の体の主導権を握った、いや、明け渡された状態において、本来ならば機械腕の裡に秘されし|UDC《ヨマンダ》は、しかし笑う。
「でも、その醜さゆえになかなか面白いもんだよ」
「愉快不愉快など意味をなさない。それは完璧ではない。完全ではない。不滅ではない。永遠ではない。ただそれだけで滅ぼす理由には値する」
 満ちる高濃度のグラビティ・チェインの霧は、そこにいるだけで人体に重篤な害を為し得るものであった。

 息を吸い込む。
 まるで準備運動に備えるように充の体をもって『ヨマンダ』は重濃度のグラビティ・チェインを体内に取り込む。
 即座に分析し、無力化……血清を生み出す。
 自身の血液を代償にして機械腕に秘されしUDCの封印を解き放つ。
 変化した二丁拳銃は殺戮捕食態――即ち、ブラッド・ガイストへと変貌する。
 まるで巨大な腕。
 裡に秘めたネオンブルーの輝きは、明滅するように『神経樹グラビティピラー』へと走る。
「醜いと知りながら、その裡に囚われている者の戯言など」
「フフフ、手厳しい」
「その肉体の生命は消えゆく。削れていく。ただ吾に相対しているだけで」
「だろうね。別にコイツの生命が削れようが構わないんだけどさ。さっきも云った通り、ボクは案外人間が好きなんだ」
 こともなげに言い放つ。
 美しいを好むは理解できる。
 だが、醜いを好むは理解できない。
 故に『神経樹グラビティピラー』は、その裡なる『ヨマンダ』を侮蔑するように言う。

「無意味だ。壊れる。崩れる。消えゆく。それはいずれ訪れる必定だ。それを惜しむ感情をこそ、貴様は惜しんでいる。理解に苦しむ」
 霧の中を走る残光はネオンブルー。
 飛び出すように充の体躯が跳ね上がり、巨体たる『神経樹グラビティピラー』へと迫る。
 人間が無意識に肉体への負荷を抑えるようにかけたリミッターすら外し、常に五体の全ての出力を最大にする。
 骨身が軋む。
 筋繊維がちぎれる。
 だが、それでも『ヨマンダ』は意に介さない。

「ほら、こんなことになってしまうと遊べるオモチャが減ってしまう。壊れてしまうことすら愛おしい。そして、そんな愛おしさが悲しみを呼び込む。まるで万華鏡だ。覗き込むだけでも勝手に形を変えてくれる。時が生命を勝手に転がしては、極彩色にも似た輝きを放ってくれる。ただ、一色しか色を発せない完璧さより、よほど面白いじゃあないか!」
 だから、と『ヨマンダ』はネオンブルーの光湛えた巨大な腕を振り下ろす。
 巨大な爪痕を『神経樹グラビティピラー』に刻み込みながら、笑っていうのだ。

「偶には優しくしておかないと」
 その光景は見られない。
 醜くもおもしろきこと。
 そんな愚かしいオモチャ。
 その様を飴玉を口内で転がして味わうように、できるだけ長く、と『ヨマンダ』は望むのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レン・トリチルヒスト
進化ねえ……ガチでやり合えるってんなら受け入れるぜ、俺は。
何せスケールも想像できないほどデカイ相手……十分やばそうでゾクゾクするじゃん(にたり)

真の姿は尾が2つになって、それもそれぞれが口と牙を持つって姿だ。

という訳で【悪食ファイアウォール】発動、っと。集団包囲攻撃? やるならやれよ。その分喰らって【焼却】してやるからよ。

暴走させられても知らねえな。従う道理もないし? 【欲望開放】して【捕食】したい衝動のままかぶりついたり燃やしたりするぜ。神経ってズタズタにされたらやばいだろ? そうしてやるよ。

欲望ってのは際限ないもんだ。
どこまで行けるか見てみるか?



 雨を一滴も身に落とすことなく歩むことができるだろうか。
 傘をさせば解決である。 
 だがしかし、もしもである。
 もしも、雨防ぐ傘さえ透過してしまう雨があったのならば?
 有り得ぬことであるし、また傘があったとて大地に跳ねる雨粒が足を汚すだろう。
 そういうものだ。
 これはそういうものだ。
 拒絶しようとして拒絶できるものではないのだ。
 グラビティ・チェインは降り注ぐ。
 凄まじい量が一斉に頭上から身に。
「進化ねえ……ガチでやり合えるってんなら受け入れるぜ、俺は」
 レン・トリチルヒスト(悪食の裂き狐・f40054)は刺激を求めている。
 スリルを求めている。
 この進化が不可逆なのかそうではないのかなんて、刹那的に考えてどうでもいいことだった。考えるまでもないことだった。
 これはガチだ。
 ガチの十二剣神との喧嘩だ。

 目の前には何もかもスケールが違いすぎる巨体。
 枝と根とが絡み合った人型。
 しかし、それは己に知覚できる限界の姿であるという。
「……あれで末端だっつーんだから、十分やばそうでゾクゾクするじゃん」
 身の内側から食い破るような力の衝動が『進化』する。
 尾が枝分かれ二股へと変貌する。
 恐るべきか、おぞましきことか、その尾には口裂と牙が生まれていた。
「醜き生命よ。消えよ。その醜悪さは、宇宙には必要ない。絶対強者こそが、この宇宙には相応しい。即ち、デウスエクスならぬ身である汝らは、生命を根絶し、己をこそ真の強者である永遠不滅なる存在にならなければならないのだ」
『神経樹グラビティピラー』は言う。
 だが、レンは笑って返した。
 にたりと笑って返した。
 獰猛に笑って返した。

「知るかよ。俺は、今腹ペコなんだ。この空腹っつー最高のスパイスで、諸悪の根源っつー最高の贖罪を喰らい尽くしたくてたまらねーんだ」
「無駄なことを」
「仕留めにくい相手こそ燃えるってわけよ」
 そうだろ、とレンの瞳がユーベルコードに輝く。
 同時に知覚力の進化によって『グラビティピラー軍団』を認識する。
 空を埋め尽くし、大地を埋め尽くす無数の存在。
 迫る攻撃はレンの身を打ち据える。
 だが、レンは牙を剥く。
 衝動が炎へと変化し、己が身に刻まれた傷から流れ込む神経侵食の力。
 そして、己が身を暴走させる力。

「デウスエクスへと進化せよ。生命などという醜悪な殻は、一つ残らず此処ではぎ落とせ」
「ハッ、知るかよ。従う道理なんてないし? 俺は、喰らいたいように喰らうし、燃やしたいように燃やすだけだぜ。なあ、神経ってずたずたにされたらやばいだろ? そうしてやるよ」
 燃え上がる衝動はレンの身より噴出し迫りくる『グラビティピラー軍団』を燃やす。
 それは再現のない欲望の衝動たる炎の噴出。
 燃え盛る『グラビティピラー軍団』を前にレンは、構えた。
「欲望の最果て、どこまで行けるか見てみるか――?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

イクシア・レイブラント
十二剣神。デウスエキス。…永久不滅と唄うけれど。
あなたという供給源を頼りにして守ろうとする彼らの行動は、私たちと違いはない。
だけど、相容れない敵対関係であることに変わりはない。
鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する。

相手が宇宙全体の概念であるのなら、この刃を届かせるまで。
【バハムートの聖剣】を起動。
|進化《アップデート》を受け入れ、拡大した知覚で無数の敵と味方の座標を認識して、
味方に被害を出さないように[戦闘演算、武器巨大化、なぎ払い]。

敵の攻撃に対してはデコイドローンで[変わり身]シールドビットで[盾受け]しつつ、
[瞬間思考力、推力移動、空中機動]で潜り抜け、適切なレンジの武器で迎撃する。



 霧が立ち込める。
 重濃度のグラビティ・チェインが霧となって戦場に満ちていく。
 十二剣神『グラビティピラー』のユーベルコードなのだと、イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は理解しただろう。
 圧倒的なグラビティ・チェイン。
 雨のように降り注ぎ続けている。無論、イクシアにもだ。
 抗い難い。
 身の内側から引きずり出されるようにして『進化』が始まっている。
 我が身が自分のものではないような感覚。
 まさしく殻を脱ぎ捨てるような感覚。

「十二剣神。デウスエクス……永遠不滅と謳うけれど。あなたという供給源を頼りにして守ろうとする彼らの行動は、私達と違いはない」
「いいや。違いはある。お前たちはまだ不安定だ。安定していない。可能性に満ちている。それは醜いことだ。美しさとは即ち、変わらぬことである。故に永遠不滅たるデウスエクスこそ、静寂の宇宙に相応しいのだ」
『神経樹グラビティピラー』の言葉にイクシアは、やはり相容れない。
 であれば、やることは変わらない。
 相手が星団よりも大きく宇宙を覆う神経そのものであるというのならば、イクシアはもう躊躇わなかった。
 己の身の内側から溢れ出る力。
 それを受け入れる。
 そう|進化《アップデート》を受け入れ得る。
 拡大した知覚力は、一瞬で己の敵が、この地球を埋め尽くす『グラビティピラー軍団』であると知っただろう。

「見えるだろう。これが永遠不滅に到達すべき理由である。醜き可能性に、騒々しい生命の音なき静寂の世界は、やはり正しいのだ」
「ならば、その正しさに刃を届かせるまで。鎧装騎兵イクシア、交戦を開始する」
 手にするのは、思念の刃、バハムートの聖剣(リアライズ・エクスカリバー)。
「イクシアハート、フルドライブ」
 唸る。
 力が唸る。
 真の姿を開放して荒れ狂う心魂機関は、出力を開放する。
 迫る『グラビティピラー軍団』の数は尋常ではない。さらにイクシアは重濃度のグラビティ・チェインに侵食されている。
 だが、構わない。
 受け流すにも猶予はない。
 ならばこそ、イクシアの瞳はユーベルコードに輝いたまま、己がサイキックを噴射せながら、サイキックスラスターの加速でもって飛ぶ。

 理論上。
 その手にした思念の刃は、射程の意味を成さない。
 彼女の思念が膨れ上がれば上がるほどに無限にも届きうる刀身を形成する。
 即ち、絶対切断。
「我が決意は因果の地平に達し、すべてを断ち斬る刃となる」
 振りかぶった思念の刃をイクシアは躊躇うことなく振るう。
 光の柱が大地に叩きつけられ、直線上の全てを切断貫通する。そう、『グラビティピラー軍団』のみならず、『神経樹グラビティピラー』すら切断する斬撃は、閃光のように迸るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皇・絶華
おお…おおおお!!
グラビティピラー…まるでピラーの塊のような樹だな!それがこの世界に来たと言うことは…私は理解したぞ!
お前はぜっちゃんチョコの食材になりにきたのだな!
宇宙をぜっちゃんチョコで見たし!宇宙に圧倒的なパワーを与える為に!
「ぴょぇぇえ!」
進化受入
おお…!ピラーが一杯だ!お代わり作り放題だ!
【戦闘知識・第六感・見切り】
周囲の状況と軍団達の動きを解析し見切り
【空中機動・念動力・弾幕・切断・バーサーク・薬品調合・爆破】
UC発動!
飛んだり避けたり念動弾幕や刃で迎撃!
そして降り注ぐ邪神植物!
さぁ!圧倒的なパワーに酔いしれるがいい!
全てのピラーに襲いかかり…ちゅどーん

ちゃんと採集もするぞ!!



「おお……おおおお!!」
 皇・絶華(影月・f40792)は、目の前の光景に唸っていた。
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』。その威容は凄まじいものであった。
 今まさに視界に知覚できるものですら末端。
 その本来の姿は星団すらも越える巨大さ。
 だが、絶華は驚愕に震え、そおして喜びに震えていた。
「……私は理解したぞ!」
 降り注ぐグラビティ・チェインは絶華の身の内側から力を引きずり出すようであった。
 身が裂ける。
 そう思わせるような強大な力が荒れ狂っている。
 制御できるのか。制御しようと思ってできるものなのか。
 わからない。
 
 だが、今はどうでもいいことだった。
「お前はぜっちゃんチョコの食材になりにきたのだ! 宇宙をぜっちゃんチョコで満たし! 宇宙に圧倒的なパワーを与えるために!」
「満たすものはない。あるのはグラビティ・チェインを吸い上げデウスエクスにわたすことだけだ。それだけだ。それだけでいい。永遠不滅こそが美しさの真だ。圧倒など意味がない」
「そうかな! 私は思わないが!」
「無意味な問いかけだ。永遠不滅ではないのならば」
「ならば私は圧倒的なパワーを! ぜっちゃんチョコで宇宙を満たす! それを使命に生きよう! これが原初宇宙系チョコパティシエアイドル! 見よ、カカオ濃度一億%チョコ邪神植物を!」 
 絶華は進化を受け入れ、その知覚力によって空を見上げた。
 無数の『グラビティピラー』軍団。
 空を埋め尽くす存在。

 これだけの数をどうにかしようなど無理な話に思えてならなかった。
 だが、注ぐはシャイニングチョコ☆ギャラクシィ(ゼツボウトジゴクノウタゲ)の光だった。
「ぴょぇぇえ!」
「おお……! ピラーがいっぱいだ! 食材になるかな? ならないかな? いや、なんだこれは! 本当にただの神経なのか?」
 動く邪神植物が『グラビティピラー軍団』と絡み合うようにして激突する。
 そのさなかを絶華は飛翔し、見下ろす。
「これが圧倒的なパワーというやつだ! しかし、『グラビティピラー』……これは本当に『そう』なのか?」
 絶華は『神経樹グラビティピラー』が文字通りの存在であると知るだろう。
 そうであるのならば、この戦いは。
「まあ、構わないだろう!」
 いずれにしても、倒すことに代わりはない。
 諸悪の根源と名乗る者なのだ。
 倒してならぬ道理などない。ならばと絶華は降り注ぐチョコ邪神植物と共に戦場を埋め尽くすような無数の『グラビティピラー軍団』とい苛烈なる戦いを繰り広げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

柊・はとり


俺は自分が夏海箱音だった事に気づいてしまった
あいつはもう居ない

まぁお前の言う通りだ
人間は醜いよ
俺達探偵は厭になるほどそれを見てる

残酷な真実を受け入れ
突きつけることが進化だってなら
幾らでも強く
幾らでも孤独になってやる
お前さ、邪魔

UC使用の上で挑発
グラビティピラー軍団って…
お前他の自分の存在は許容してんの?ダサ
俺より殺すべき奴すぐ隣にいんだろ
お前ら同士で殺し合って
お前ら同士で癒やし合って
勝手に宇宙最強でも決めてろ馬鹿が
全てが矛盾したクソみてえな奴だな
犯人として告発するにも値しないわ

人は醜い
でも俺はなけなしの勇気と覚悟で
負の感情を堰き止め侵食と暴走に抗う
醜さに寄り添えない奴は探偵なんかやめてんだよ



 |ワトソン《助手》のいない探偵は孤独だ。
 凍てつくような孤独が身を苛む。
 けれど、探偵が助手で、助手が探偵なのならば、どうだろうか。
 二人で一人の『名探偵』の『真の姿』は、その意味を示す。
 骨子と血肉。
 それぞれが肉体を駆動させる。
 それを人は衝動と呼ぶのだろう。

 身に降り注ぐグラビティ・チェインが柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)の内側から本来ならばあり得ない……いや、真の意味で『真の姿』を引きずり出す。
 それは。
「俺は自分が『夏海・箱音』だったことに気づいてしまった。あいつはもう居ない」
 それは歪さの証明であった。
 肉体と魂の乖離。
 それを自覚した瞬間に、はとりは理解した。否、名推理であると彼女は言うだろうか。名探偵のお株を浮かぶように、そのとおりだよ、と笑うだろうか。

「醜悪である。なんと醜い。生命とは、脆く、崩れやすい。あまりにも。それは真の美しさである永遠不滅より程遠い」
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』の声が響き、はとりは見上げた。
『夏海・箱音』の瞳で見上げた。
「まぁお前の言う通りだ。生命、その中でもとりわけ、人間は醜いよ」
 厭になるほど、それを見てきた。
 この姿を直視する。
 落とした視線が己の手を見る。残酷な真実とやらが、そこにはあった。突きつけられている。刃のように『あいつ』はもう居ないという現実を。
 これが『進化』なのだという。
 なら、その力は、はとりを強くするが、孤独にするだろう。

「だから、お前さ、邪魔」
 生命をなんだと思っている。
 それで宇宙に渡る神経だなんだとのたまうのか。
 これはもう猟兵としての役目ではない。個人的な感情に突き動かされての行動だった。
 第十の殺人『常黄泉病棟』(トコヨミビョウトウノサツジン)以来の激情が、はとりを突き動かす。
 胸のヴォルテックスエンジンが唸りを上げる。
 目の前に広がるのは、無数の『グラビティピラー軍団』。
 だからなんだ。
 意味あるのか、それは?
 鋭い眦が釣り上がり、検を帯びた視線が走る。

「お前、他の自分の存在は許容してんの? 永遠不滅を、強者を求めておきながら、自分以外にそれを求めてんの? ダサ」
 吐き捨てる。
 そのあり方は許容できない。
「俺より殺すべき奴すぐ隣にいんだろ」
 そのユーベルコードは汚染する。
『グラビティピラー軍団』すら汚染し、理性無き犯人へと変貌させる。
 此処にいるのは『名探偵』。
 なら、犯人が行うのはなにか。
 当然、殺人である。故に無数の『グラビティピラー軍団』は互いに同士討ちを始める。直ぐ側にいる者を殺す。無差別殺人だろうとなんだろうと、犯人は人を殺す。『名探偵』がいるのだから、そうなる。
「勝手に宇宙最強でも決めてろ馬鹿が。全てが矛盾したクソヤロウ共が。犯人として告発するにも値しないわ」

 人は醜い。
 だが、それでもはとりは己が身に湧き上がる力をせき止める。
 膨れ上がる負の感情を抑え込む。
 それがどうしようもなく醜い感情であろうとも、はとりはもう二度とあの崩壊した教室から目を逸らさない。
 どんなに己の心を突き刺す真実だとしても、だ。
 それが醜いと謗られようと。
 醜さに寄り添うこともできないで、探偵などできようはずもない。
 だから、己は。
「探偵なら事件現場で死ぬ。もう人が死ぬのは許さない。お前が生命を根絶するってんなら」
 その前に、この|『事件』《ケルベロス・ウォー》を終わらせる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

阿波里・泪
えー、そうやって支え合うから楽しいこと気持ちいいこともいっぱいなのに。
強ければいいなんて、そんなの人生…神生?損してるってモンだよ。

進化を受け入れ、真の姿に。髪と毛色が白金色になった神狐の本領発揮な姿。

で、周りを見ればグラビティピラーがいっぱい。
でも、これだけいるけど本質的には一人。感覚器官は人数倍。
なら…「見る」ことで起きる効果は人数倍されて、一人で受けるコトになりそうだね?

秘術・神来光。
後光と煌めく霞を纏った真体へと変身。
今のわたしを見て感じる多幸感と恍惚感はどんなモノだろうね?
ほら、もっと熱くなっちゃえ…♪
(「花鳥風月」から炎を放ち【焼却】)



「何故、支え合う。何故、触れ合う。何故、癒やし合う。その全てが脆弱。その全てが醜悪。生命は、永遠不滅ではない」
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』は、その身を揺るがしながら言う。
 この宇宙は静寂で満ちているべきだ。
 生命の持つ可能性などという騒々しくも醜いものが蔓延ってよい訳が無い。
 真理とは美しさだ。
 美しさの中に真がある。
 どんなものにだってそうだ。
「えー、そうやって支え合うから楽しいこと、気持ちいいこともいっぱいなのに」
 阿波里・泪(美し杜の守り狐様・f33265)は、空を見上げるように『神経樹グラビティピラー』を見上げていた。
 あれでまだ末端なのだという。
 大きすぎてスケール感が狂うなー、と彼女は嘆息した。

「強さこそ絶対である。そこに楽しさ、快楽など不要。無駄なものだ。要らぬ。そんなものなど美しさには必要ない」
「えー、強ければいいなんて。そんなの人生……えっと、十二剣神だっていうんだから、神生? 損してるってモンだよ」
 泪は注ぐグラビティ・チェインを身に受け入れる。
 進化によって真の姿が引きずり出される。
 白金の色が彼女の全てだった。
 神狐としての威光。
 それを示すように彼女は、まばゆい輝きと共にあった。
 後光を背負う。
 霞纏う神狐の真体は此処にあり。
 これぞ、秘術・神来光(オキツネサマノゴコウリン)。

 同時に彼女は見ただろう。
「わー、なんかいっぱい! これぜーんぶ『グラビティピラー』だっていうの?」
 だが、泪は笑っていた。
 何故なら、今の彼女はしあわせだった。しあわせがあるから、誰かにこれを分け与えたいと思うのだ。
 それが精神汚染であると言えば、その通りであったが、しかし悪意はない。悪意がないことは善意であるというわけではない。
 それ故に泪のユーベルコードの輝きは、夥しい進化によって圧倒的な精神汚染でもって『グラビティピラー軍団』を侵食していく。
「これだけいるんだもの。感覚器官は人の数倍でしょ!」
「吾は神経。宇宙にグラビティ・チェインを配る神経。であれば」
「ほら、しあわせになっちゃいなよ♪」

 それは忘我の領域のことごき多幸感と恍惚。
 感情を『グラビティピラー軍団』に流し込む。
「もっと熱くなっちゃえ……♪」
 多幸と恍惚。
 この二つこそが泪が他者に分け与えるもの。
 誰かがいるから膨れ上がっていく。
『神経樹グラビティピラー』は否定した。分け合うこと、支え合うこと、癒やし合うことを。
 それは泪にとっては根幹的なものだったのだ。
 だからこそ、彼女の炎は膨れ上がって『神経樹グラビティピラー』を侵食するように幸福と恍惚で埋め尽くすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒沼・藍亜
(真の姿:UDCとの同調同化が進み、本人の手足や髪先、服の裾からも黒い粘液が滴りだす)

……そういう上から目線の神様気取りの救いの手とか大嫌いなんすけどもね
まあ今は甘んじて受け取ってやるっす

即UCで28m程の粘液濡れの|三つ首の獣《ケルベロス》の如き姿に変身。
攻撃は飛翔し、UDCの触腕なども盾にして回避を試みる。
こっちを視認した時点で攻撃開始、「精神」へと干渉し蹂躙、催眠術でその意識に恐怖や自殺衝動を刻み込んでやる。勿論、「ボクを視認した敵全員に」っすよ?

アンタは所詮、別次元の超越者でもなんでもなく、単にでかくて多くてしぶといから駆除しづらいだけの、宇宙に蔓延る雑草に過ぎないんすよ。



 もとより、というのが正しいのか。
 それとも、これからというのが正しいのか。
 黒沼・藍亜(に■げ■のUDCエージェント・f26067)の身に降り注ぐグラビティ・チェインは彼女のUDC――『昏く暗い黒い沼』を面にひり出すようだった。
 内側から滴り落ちる黒い粘液。
 足を伝い、手を伝い、頬を伝う。
 彼女の胎に潜む『それ』は黒い粘液と共にグラビティ・チェインによって外へと現れる。
 服の裾からも蠢くようにして触手が這い出し、彼女の黒髪すらも黒い粘液へと変わりだす。
「醜い。醜悪。如何に邪神の欠片を宿すのだとしても、それでも生命は永遠不滅にはなりえない。醜悪だからだ。美しくないからだ。強くないからだ。全ては、強さに集約される。強くないから変わる。変わってしまう」
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』は、その巨躯から藍亜を見下ろすようにして言った。
 その物言いに藍亜はカチンと来ていた。

「故にグラビティ・チェインが必要なのだ。永遠不滅を体現するためには、強さを持ち得るためには、強者であるためには」
「……そういう上から目線の神様気取りの救いの手とか大嫌いなんすけどもね」
 だから、己達にグラビティ・チェインを注ぐのか、と藍亜は気がついていた。
 はっきり言って胸糞が悪い。むかっ腹である。
 それでも今は甘んじて『進化』を受け入れる。
 受容したグラビティ・チェインは、彼女の粘液塗れの体は魔獣の如き姿をかたどっていく。
 その姿は異形の獣。
 何の因果か|三つ首の獣《ケルベロス》。
 迫るは濃密なグラビティ・チェインの霧。
 周囲に立ち込める霧を切り裂くようにして藍亜は大地を蹴って空へと飛ぶ。
 霧であるというのならば、地上に沈み込む。逃れるには空しかないだろう。払うようにして振るわれた触手が空を切る。
 いや、違う。

 進化した知覚力によって藍亜は『グラビティピラー軍団』を認識していた。
 此方が認識して初めて、敵対者と認めるようにして迫る無数の『グラビティピラー軍団ん』。空を埋め尽くすかのような光景に藍亜は覚悟を決める。
「……ボクの大事なものを護る為なら、誰であっても殺すし、どんな化け物だろうと利用するだけっすよ」
 瞬間、彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
『グラビティピラー軍団』を一体一体相手にする時間はない。 
 だからこそ、ここは雑に行く。
「わたしというばけもの(アイア・フェノメノン)を見るといいっす」
 それは精神の蹂躙。
 そして自殺衝動の植え付け。
 条件は己を認識した瞬間、即ち、『グラビティピラー軍団』は一瞬にして藍亜を認識し、それが故に自殺衝動にかられて己が五体を引きちぎり始めたのだ。

「無駄だ。末端がどれだけ痛むのだとしても、吾に意味はない。吾は、この星団よりも巨大なのだから」
 届かないと言う。
 だが、藍亜はだからどうしたと笑った。
「ハッ、アンタは所詮、別次元の超越者でもなんでもなく、単にでかくて多くてしぶといから駆除しづらいだけの、宇宙に蔓延る雑草に過ぎないんですよ」
 だったら、引っこ抜くだけだと藍亜は、己の姿を晒し、迫る『グラビティピラー軍団』を除去し続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
その声は……まるで命を蔑むために響いているよう
『神経樹グラビティピラー』
永遠を生きるあなたには、命の営みが醜く見えるのかもしれない

けれど私は、傷つき、迷い、時に愚かでも
それでも懸命に笑おうとする命が、好きよ

……覚悟はとうにできているわ
進化――これは私の意志
恐れず、抗わず、受け入れてみせる

(真の姿は悪魔の竜)
(翼が開き、尾が唸り、四ツの瞳が閃く)

空、地、建物から放たれる――無数の連撃
一撃は軽くとも、命を奪うには十分
目を逸らさず、知覚したすべてを見切る
早業で立ち回り、連撃を凌ぐわ

滅ぼす者ではなく、守る者として
燃えるような咆哮で、命の矜持を伝え、魂の声を轟かせる



「醜悪な生命よ、根絶せよ。お前たちは弱者だ。この宇宙の静寂に騒音をもたらすだけの存在だ。そんな存在は必要ない。上に絶命せよ。真の強者たるデウスエクスへと宇宙を明け渡せ」
 そう、どこにも弱者に居場所はないのだと言うように十二剣神『神経樹グラビティピラー』は告げる。
 巨大なる体躯。
 しかし、それでもまだ末端である。
 生命の知覚領域の限界が、その巨大さなだけであって『神経樹グラビティピラー』は星団よりも巨大であるのだという。
 恐るべきことだ。
 この地球に迫る脅威であっても末端。

「その声は……まるで生命を蔑むために響いているよう」
 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は我が身に鳴動する鼓動の意味を知る。
 グラビティ・チェインが降り注ぎ、己の真の姿を引きずり出そうとしている。
 それを『進化』であると『神経樹グラビティピラー』は言うだろう。
 だが、果たして本当にそうか。
 わからない。
 けれど、静漓はユーベルコード輝く瞳を、その青い瞳で『神経樹グラビティピラー』の巨体を見上げていた。
「『神経樹グラビティピラー』、永遠を生きるあなたには、生命の営みが醜く見えるのかもしれない」
「当然だ。生命は醜い。可能性という不定形に変わり、不滅ではない。永遠こそが圧倒的強者。変わらぬことこそが、真理なのだ」
「そうなのかもしれない。けれど、私は」
 見てきた。 
 知ってきた。
 何も知らない己が世界を見てきた。人を見てきた。生命を見てきた。
 その道程にあったものが、本当に醜悪だというのならば、己は目を向けることはなかっただろう。

「傷つき、迷い、時に愚かでも。それでも懸命に笑おうとする生命が、好きよ」
 好きになってしまった。
 数多の生命があった。
 誰もが懸命だった。生きようとしていた。ならば、この身の内側から溢れるような力に恐れはない。
 真の姿を晒すこと。
「……覚悟はとうにできているわ。『進化』――これは私の意志。恐れず、抗わず、受け入れて見せる」
 裡より溢れるは力の象徴。
 悪魔の如き力。竜の如き象徴。
 折りたたまれた翼が広がり、衝撃が遊ぶ。尾がうねり大地を叩く。
 開かれた四つの眼光が鋭くひらめき、夜と月と星とを映し出す宵闇の翼が羽撃いた。

 瞬間、迫るは無数の神経樹の槍。
 天より、地より、そして天地乖離する空よりも迫る。
 またたく間の槍衾。
「弱者には選ぶことすらできぬのが運命だ。強者は運命すらねじ伏せる。永遠不滅とは死すら退ける力のことを言う。その力なきものを」
「滅ぼす者ではなく、守る者として私は」
 羽ばたく翼が星の瞬きと共に静漓の体を走らせる。槍の間隙を縫うようにして飛翔し、一気に『神経樹グラビティピラー』へと迫る。
 眼前にはあまりにも巨大な存在。だが、構うものではない。
 己の胸にあるのは数多の人の連なり。
 醜悪といった生命の可能性。その可能性が彼女の心を走らせる。
「あなたを超えていく。もっと速く。もっと強く。もっと、もっと、もっと――」
 燃えるような咆哮は生命の矜持を伝え、魂の声を轟かせる。
 激しい咆哮は迫る『グラビティピラー軍団』をも退け、強烈な衝撃となって『神経樹グラビティピラー』を揺るがすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あやー、進化すると認識し合えちゃうのでっすかー。
つまりつまり、注目を集めてるということでっすねー!
藍ちゃんくんでっすよー!
藍ちゃんくんをぐるりと取り囲むピラーの皆様にダンスを披露するのでっす!
するとなんと!
ピラーさんも釣られて踊りだしちゃうのでっす!
え、だからどうした?
いえいえ、ダンスはダンスでもブレイクダンスなのでっしてー!
藍ちゃんくんは地上で踊っておりまっすがー。
ピラー軍団さんは宇宙、なのでっすよね?
星やデブリにごっつんこー!
星程度はなんてことないやもでっすが、包囲網を作ってたくらいでっすからねー!
ご自身たちならどうでっしょかー!
強度は互角!
矛盾なのでっす!
あとあと、神経とのことでっすし、ぐるぐるしたら酔いませんかねー!
互いの枝や根っこが絡まり合って引きちぎれたり!
無論、回復なり、藍ちゃんくんを汚染なり狙うでしょうがー。
視界内の任意の対象、なのでっすよね?
視界、移り変わりまくりでっすよー?
選ぼうとしたら見えてるものが変わりまくる状況では発動できないのではないでっしょかー!



 身に注ぐグラビティ・チェインは、己の肉体の内側にあるものを引きずり出す。
 窮地に陥らねば猟兵は『真の姿』をさらさない。
 だが、今はどうだ。
 グラビティ・チェインが『真の姿』を引きずりだそうとしている。
 圧倒的な力。
 これが『進化』だというのならば、果たして正しい言葉なのだろうか。
 永遠不滅を望む『神経樹グラビティピラー』。
 変わらぬことが強者であるという。
 滅びることのないのが強者であるという。
 即ち、弱者こそが醜悪なのだ。可能性を寄す処として喚き立てるだけの騒々しさ。
 静寂の宇宙に騒音を撒き散らす存在。
 それが生命。

 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は見上げた。
 空には無数の『グラビティピラー軍団』。
 進化を受容したがゆえに今の藍には彼らの姿が視えていた。同時に彼らからも藍を認識されることになったのだ。
 迫るは無数のユーベルコードの雨。
「あやー! 進化すると認識しあえちゃうのでっすかー」
 脅威というほかない。
「脆弱な生命の歌など、歌わせぬ。この静寂の宇宙には不要。それは美しくない」
「あやー、でも、皆々様、藍ちゃんくんを視ているのでっす。注目を集めているということでっすねー!」 
 ぐるりと藍を取り囲む『グラビティピラー軍団』。
 なら、ここはもうステージの上でしかない。

 藍ドルにとって、戦場はステージ。ステージは戦場。
 なら、異いつも通りだ。
「それでは皆様、ご一緒に! レッツ・ダンシングなのでっすよー!」
 ステップを踏む。
 振り付けに体が揺れる。
 自然と頬は緩んで笑みを浮かべる。
 とびっきりのパフォーマンスは、いつだって最初からエンジン全開だ。ユーベルコードに輝く瞳は、爛々と輝いて星を散らすかのように額から汗が飛ぶ。
 熱が上がる。
 身の内側から走るは力。
 グラビティ・チェインが藍の肉体から力を引きずり出していくのだ。

 一層入り込んだ熱を発散させるように藍は激しく体を揺らして、五体の全ての駆動域を活用するように動かす。
 ブレイキングダンス。
 それは激しくも地上の星のように煌めく。 
 注ぐユーベルコードの雨すら藍は躱しながら、ステージにて立つ。
 まるで『できるか?』と挑発しているようだった。
『グラビティピラー軍団』は、その動きに追従するように踊りだす。
 異様な光景であった。
 あり得ない光景だった。だが、現実だ。
 何故なら、今『グラビティピラー軍団』は藍ちゃんくんと愉快な観客達!(リー・アー・アイチャンクーンッ)なのだから。
 オーディエンスもまたダンサーなのだ。
 変わらない。それはどんなに進化しようとも変わらぬ事実であった。

 互いに激突しあう『グラビティピラー軍団』。
「これはなんだ」
『神経樹グラビティピラー』は困惑していた。
 己が身は宇宙に広がる神経。
 今まさに知覚されているのは、生命が知覚できる限界領域。それゆえに人型に視えているだけなのだ。
 なのに、踊っている。
 神経の一つ一つ、末端に至るまで踊るように跳ねているのだ。
 互いに絡みつき、構わず跳ねるのものだから、寸断されてはちぎれていく神経。
「さあ、もっともっとあげていきましょうでっすよー!」
 熱狂の渦に巻き込む。
 誰も追いつけないのではない。追いつけるかも、と思わせるような速度で藍は踊り続ける。
 くねるようにして『グラビティピラー軍団』は絡まりあり、散り散りにちぎれていく。
 ただ、踊るだけだ。
 それだけでいい。
 醜悪であるとか美しいものであるとか、強いとか弱いとか。
 そんな次元で藍はパフォーマンスをしていない。
 何故なら。
「藍ドルでっすからねー!」
 そう、それが己なのだ。
 例え、宇宙の中心にいても、銀河の最果てにいたって変わらない。
 これが藍の中の永遠不滅なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・慧
またしても生命を否定する存在が相手ですか……。
生命を根絶しようとするのであれば、
生命の輝きでもって抗いましょう。
これまでもそうしてきましたからね。

進化を受容します。
エンジェリックウイングで飛翔して闘気による【オーラ防御】を展開。
敵の放つ霧は【衝撃波】の【乱れ撃ち】で【吹き飛ばし】ましょう。
汚染を受けた場合は【リミッター解除】した【浄化】の力で対応。
「それだけの力を持ちながら、それだけの数を揃えながら
随分手こずっているじゃあないですか」と挑発。
そして相手の敵意・悪意が強まった所を見計らって
【宿星零光陣】を放ちます。

生命はあなたが思っている以上に強いのですよ。



 生命の否定者。
 それは幾度目かの邂逅であった。
 幾度となく、山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)はそうした否定者たちと戦ってきた。
 生命の根絶。
 静寂の宇宙。
 可能性という騒音を奏でるのが生命であると言うのならば、それは己達生命にとっては戦うに値する理由だった。
「絶命せよ、生命。吾にとっての永遠不滅はデウスエクス。宇宙には、永遠不滅こそ真。であれば、可能性などと歌う生命は、必要ない。静寂こそが、変わらぬことであるからだ」
 生命の旋律は静寂を破るもの。
 故に耐えられない。
 生命の醜悪さに。
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』は言う。

 その否定を慧は頭を振って真っ向から打ち返す。
「ならば、生命の輝きでもって抗いましょう。これまでもそうしてたように」
 注ぐグラビティ・チェイン。
 進化を受容した瞬間、己が背に天使の翼が輝きながら羽ばたく。
 大地を蹴って慧は『神経樹グラビティピラー』を目指す。だが、それを阻むようにして『グラビティピラー軍団』が迫る。
 無数。 
 空を埋め尽くすような数を前にして慧は一気に飛び込む。
 溢れるは霧。
 吸い込めば、暴走してしまう。けれど、慧はオーラを展開し、阻みながら衝撃波でもって吹き飛ばす。
 しかし、それも完全ではない。
『グラビティピラー軍団』もまた同じようにユーベルコードを放っているのだ。
 霧が周囲を包み込む。
 汚染が己の体を蝕む。

「無駄だ。生命。その生命を抱えている限り、真の永遠不滅には至れない。その醜さは、それ自体が罪だ」
 生まれたこと事態が罪である。
 原罪というのならばそうなのかもしれない。存在している事自体が、この宇宙にとって害悪であるというのかもしれない。
 けれど、慧の瞳はユーベルコードに輝き、己が限界を越える。
 浄化の力が溢れ、霧を吹き飛ばす。
「それだけの力を持ちながら、それだけの数を揃えながら……お前の言う生命根絶は未だなっていないじゃあないですか。随分と醜悪とのたまう生命を相手に手こずっているじゃあないですか」
「可能性に縋る醜悪。愚劣愚昧極まる」
 その言葉に呼応するように『グラビティピラー軍団』が慧に殺到する。

「ならば、抗えますか? この光の奔流にッ!」
 掲げるは宿星剣。
 煌めくユーベルコードの輝きが刀身に集まり、己に向かう悪意と敵意とを受けて、さらに鮮烈に煌めくのだ。
 大いなる原初の光。
 それを湛えた、宿星零光陣(シュクセイレイコウジン)の一撃。
 迫る『グラビティピラー軍団』をも切り裂きながら『神経樹グラビティピラー』へと叩き込まれる。
 傾ぐ巨体。
「生命はあなたが思っている以上に強いのですよ」
 これが生命の輝き。
 醜悪と呼ばれながらも、鮮烈に煌めく極光の輝きであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

幸・鳳琴
無数の『グラビティピラー軍団』
認識できないだけで、確かに「いる」というなら
それを砕き、地球を守りましょう
進化を受容し、真の姿へ

「ブレイド」での暴走の姿ですか!
(10歳前後の、紅蓮の髪の少女)
己が心の翼と共に、全力で戦います!

気功法で練り上げた気をレーザー射撃状で手より放出、
軍団をなぎ払ったなら間合いを詰め
攻防一体のUC《幸家・亢龍》で勝負ッ!

いかな十二剣神でも
それが軍団となっているといえど、
戦闘ならば攻撃はするでしょう

鍛え上げた功夫は、真の姿の今なら
その全てを蹴りで受け、拳で返す
それが《幸家・亢龍》の構えです!

護るべき人々がいる限り
ケルベロスは、猟兵は負けません
何度でも限界突破し、勝利を掴むッ



 進化を受容せぬ猟兵には『グラビティピラー軍団』は知覚できない。
 知覚するには進化せねばならない。
 しかし、知覚すれば『グラビティピラー軍団』による一斉攻撃が待ち受けている。
 どちらにせよ、往かねばならないことだけが真実だった。
 例え困難な道が目の前にあるのだとしても、幸・鳳琴(精霊翼の龍拳士・f44998)には躊躇う理由などなかった。
「認識できないだけで、確かに『いる』というのなら、それを砕き、地球を守りましょう」
 その決然たる意志だけが彼女の歩みを進めさせる。
 いつだってそうだ。
 意志が生命を前に進ませる。
 時が運ぶのではない。
 自らの意思で歩みだすからこそ、時の存在すら人は忘れることができる。

 そうやって前に進むからこそ可能性に手を伸ばすことができる。
 永遠不滅の中に揺蕩うようにしてとどまっているだけでは出せぬ輝きがそこにはあった。
 受容した進化と共に彼女の体が変わる。
 身の丈は縮み、年の頃は十歳前後。
 紅蓮の髪が立ち上り、己が翼が羽ばたく。
 炎の権化の如き力を持って、彼女は迫りくる『グラビティピラー軍団』を睨めつける。
「無駄だ。生命は永遠不滅ではない。変わりゆく。それが如何に醜悪かを知らぬのが生命の罪悪。弱者のままでいいなどと」
「そうなのかもしれません。ですが」
 彼女の瞳が煌めく。
「輝け! 私のグラビティ!」
 気功法によって練り上げられた気が彼女の突き出した手のひらより放たれ、『グラビティピラー軍団』へと放たれる。

 一閃と共に放たれた一撃が横薙ぎに払われ、さらに鳳琴はひた走る。
「私は、己が心の翼と共に、全力で戦います! それが私の使命! 私の運命! 私の道!」
「醜悪。己が定めた運命が、どれほど永遠不滅でないかを知るがいい」
「ならば、勝負ッ!」
 神速の拳が『グラビティピラー軍団』へと叩き込まれ、龍の如き闘気を纏う強靭な蹴りでもって吹き飛ばす。
 さらに満るは濃密な霧。
 溢れ出すようにして放たれる重濃度のグラビティ・チェインは、彼女の臓腑を侵食するだろう。
 だが、練り上げられた気功は体外へとグラビティ・チェインを吐き出し、更に燃やす。
 闘気溢れ、その姿は炎の龍へと変じる。
 繰り出す蹴りが一閃となって『グラビティピラー軍団』を引き裂き、振りかぶった拳は神速の一撃となって巨大な『神経樹グラビティピラー』へと叩き込まれる。

「何故、戦う。永遠不滅でもない。ただただ老いては朽ちゆく定めの生命よ」
「護るべき人々がいるからです。だから、ケルベロスは、猟兵は負けません。例え、あなたがどれだけ強大なソオン座位であろうとも! 何度でも己が身の限界を突破し、勝利を掴むッ! その時まで!」
 諦めることも退くこともない。
 それが愚直であるというのならば、そのとおりだろう。
 だが、いつだってそうだ。
 愚直であっても進むものにこそ得られるものがある。進まぬものが、進むものを笑う。だが、それでも振り返らずに邁進するものにこそつかめるものがあると知る彼女の拳は、巨大なる『神経樹グラビティピラー』へと叩きつけられ、輝く闘気が炸裂するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日野・尚人
進化は受け入れるぜ。
とはいえこれを「進化」だなんて欠片も思わないけど。
だってこんなのただの力だろ?
因みに俺の真の姿は見た目殆ど変化無し・・・地味で悪かったな!

グラビティピラー軍団の集団包囲攻撃を<気配感知>と<心眼>で<見切り>、<ダッシュ>で回避。
逃げ回るふりをして<おびき寄せ>・・・UC≪狂乱暴嵐領域≫!
激しく渦巻く嵐に巻き込み一掃する!

あんたが何を美しいと思い何を醜いと思うかは勝手だけどさ。
俺はあーちゃんやシェイ、ポーラ・・・それに仲の良い連中と一緒に居るのが幸せだし・・・
それにデウスエクスもあんたが言うほど永遠とか不滅とかそんなご大層な存在じゃないと思うぜ?
勿論あんたも含めてな!



 グラビティ・チェインが身の内側から溢れ出すようだった。
 体が傾ぐ。
 膨れ上がる。
 受容した進化は、日野・尚人(あーちゃんの早朝襲撃に断固抵抗する会終身(?)会長・f01298)の中で暴れ狂い、力の発露として噴出するようだった。
 姿形は変わらない。
 変化はない。
 ただ、己の力に振り回されることがないことを示すように尚人は、その瞳をユーベルコードの光に輝かせながら巨大なる『神経樹グラビティピラー』と空を埋め尽くす『神経樹グラビティピラー』を睨めつけていた。
「これが『進化』だなんて、欠片も思えないな。だってこんなのただの力だろ?」
「力を貶めるか。力なき者。生命よ。その醜悪な思考こそが、吾を苛立たせる。強者こそが、この宇宙に相応しいのだ」
「へっ、そんなこと言われてもな。地味だろうがなんだろうが、そういう考え方に真っ向から立ち向かうのが、本当に強いってことだろ!」

 迫る『グラビティピラー軍団』。
 そおの猛攻は苛烈であった。さらに立ち込める霧。
 重濃度のグラビティ・チェインは、ただそれだけで体を侵食していくようだった。
「数を頼みにしたってな!」
 尚人は出力の上がった体でもって迫る霧を引き離すように駆け抜け、降り注ぐユーベルコードの輝きを避ける。
 だが、苛烈なる光は、尚人の背中に迫っていた。
 身を打ち据える、と思った瞬間振り返り、尚人の身を包み込むのは渦巻く嵐の如き風であった。

「狂乱暴嵐領域(フリオースス・テンペスタース・レギオ)……ここが俺の領域だ。全部、ふっとばしてやるぜ!」
 轟々と遊ぶ風。
 嵐の如きユーベルコートが、周囲の汎ゆる物質を巻き込みながら、破壊をもたらし、更に勢いを増して荒ぶ風でもって打ち据える。
『グラビティピラー軍団』さえも巻き込み、加速する尚人は反転して戦場を走る。
「醜悪なことだ。抗うこと、もがくこと、その全てが美しくない」
「あんたが何を美しいと思い、何を醜いと思うかは勝手だけどさ」
 尚人は『グラビティピラー軍団』を躱して、風と共に飛ぶ。
 眼前には巨大なる『神経樹グラビティピラー』。

「俺は……」
 多くの仲間達と一緒にいるのが幸せだ。
 多くの大切な者たちがいる。
 それがかけがえのないものだと分かっている。
 誰一人として同じ人間などいない。誰も彼も自分と違うし、違いすぎる。おんなじになんてなれないし、完全に理解し切ることなんてできないのかもしれない。
 けれど、だから幸せを感じるのだ。
 その喜びが胸にある限り、どれだけ謗られようともへいちゃらなのだ。
「この幸せが喜びだって知ることができたのは、みんな完全じゃないからだ。永遠不滅じゃなく、変わっていくから知れた喜びだ。それに! デウスエクスだってあんたが言うほど永遠とか不滅とかそんな存在じゃないと思うぜ?」
 勿論! と尚人は迫るユーベルコードを減速させる氷の力を伴って風の力で加速した我が身を『神経樹グラビティピラー』へと叩きつける。
「勿論、あんたも含めてな!」
 そう、永遠不滅などない。
 それを示すように尚人はユーベルコードの輝きを戦場に灯すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
眼前に、この宙に、敵が居るというのなら!その全てを壊す為ならば!!
喰らうのみ!!神経樹!!!

空戦型外殻ユニット装着ディスポーザブル03【操縦】
宙へ上がりながら進化を受容し、暴走デウスエクスと化し、
その敵を壊さんとする【闘争心】の暴走狂気を以て03【エネルギー充填】
内蔵ビーム砲台無差別【一斉発射範囲攻撃】『禍戦・灰塵刹』発動。

壊せ!壊せ!!燃え尽きて還れぇええエエエエえええ!!!!!

あらゆる物質が燃え盛り戦塵と化す灰塵壊滅世界を展開、グラビティ・チェインを得てデウスエクスと化した己が生命ごと戦場内の神経樹グラビティピラー、グラビティピラー軍団を纏めて【焼却】燃やし、その戦塵を以て【継戦能力】戦塵の悪霊として戦闘続行。

ォォォォォォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!

|燃え盛る黒炭の如き真の姿《オーバーロード》と化した03のハイペリオンランチャー・ハンドユニットに【呪詛】を、あらゆる物質を灰燼と化さしめるエネルギーを集約し、照射【砲撃】神経樹グラビティピラーを燃やし尽くす。



 躊躇う理由などない。
 そう、躊躇わない。それは己にはふさわしくない感情であった。
 その暇すらないのを戦場ではよく理解している。
 目の前に敵がいる。
 そして、己が戦場に立っている。
「自分は全てを壊す! 眼前に、この宙に、敵が居るというのなら! その全てを壊すためならば!! 喰らうのみ!!『神経樹グラビティピラー』!!!」
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は我が身に注ぐグラビティ・チェインによって進化を受容する。
 だが果たして、死せる悪霊に進化などあるだろうか。
 だがしかし、全てを小枝子は飲み干す。
 重濃度のグラビティ・チェインだろうとなんであろうと、そもそも器が壊れた虚であるがゆえに、小枝子は我が身が永遠不滅に近づくのだとしても躊躇わなかった。
 意味がない。
 それには意味がない。
 小枝子にとって永遠不滅など破壊すべき一つの概念に過ぎないからだ。

 それは。
「狂気。やはり醜悪にこそ狂気が宿るものだ。その狂気が全てを破壊し、台無しにしていくのだ。それがわからぬからこそ、生命は脆弱なまま強くあろうとする。弱者でありながら強者を食い物にせんとするのだ。それはもう弱者と呼ぶに値しない唾棄すべき存在だ」
『神経樹グラビティピラー』は吐き捨てるように、その巨体を揺るがし、無数の『グラビティピラー軍団』を小枝子に差し向ける。
 あれは壊さねばならない。
 消し去らねばならない。
 存在させてはならないものだと理解しているからこそ、一斉にユーベルコードの光が小枝子に降り注ぐ。
「壊せ! 壊せ!! 燃え尽きて還れぇええエエエエエええええ!!!!!」 
 強烈な咆哮と共に暴走する狂気。
『ディスポーザブル03』の巨体がエネルギーを満たし、内蔵されしビーム砲から無差別に一斉射撃が行われる。

 彼女の瞳に映すのが、全て敵。
 宙を埋め尽くすは『グラビティピラー軍団』。
 壊すべき存在がこの星よりも巨大であり、果ては星団一つよりも大きいのだとしても。
 小枝子にとっては、ただ的が大きいという以外の意味離さなかったし、壊すことの手間など考えもしなかった。
 壊し尽くすまで動くだけだ。
 それだけのことなのだ。
「禍戦・灰塵刹(デッドオーバー・エンバーズ)――ォォォォォォォオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!」
 煌めくユーベルコードが『ディスポーザブル03』よりほとばしる。
 汎ゆる物質が燃え盛り、戦塵へと帰す。
 それが灰塵壊滅世界。
 この世界に在りて、如何なる存在も燃え盛る。
 何故なら、悪霊そのものであるからだ。

 死して尚、道行く存在。
 生命が脆弱だというのならば、その魂昇華せし悪霊は脆弱か。
 否である。
 決して否である。
 肉体の器失ってなお、その衝動は迸るようにして戦場を戦塵に変えていく。
 無論、『グラビティピラー軍団』とて例外ではない。
 呪詛を込める。 
 生命を醜悪と謗る者への怒りを、呪詛を。あの煌きを醜悪と言った不遜を。己とは違う煌きを放つ光を、生命を、醜いなど。
 その怒りが小枝子の呪詛を加速させる。
 破壊する。 
 そう宣う『神経樹グラビティピラー』を破壊する。
「自分は貴様を破壊する! 破壊し尽くす! 永遠不滅の灰色を、刹那の虹色に! 貴様もまた永遠ではない。不滅ではない。自分は知っているぞ」
「馬鹿なことを。吾は諸悪の根源にして、永遠。滅びなど」
「ないと思うか! その驕りが貴様を滅ぼす、壊す! 燃やし尽くすゥゥゥゥ!!!」
 咆哮と共に小枝子は集約したエネルギーを『神経樹グラビティピラー』へと叩き込み、その凄まじき熱量と共に、その巨体を焼くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月隠・新月
永遠不滅のデウスエクス、それも十二剣神と感性が合うはずもありません。
重要なのは地球を害する者かどうかです。

『進化』は受容しましょう。受容しなければグラビティピラー軍団を迎撃できないのであれば、致し方ありません。

グラビティピラー軍団は牙や爪で【引き裂き】数を減らしたいですね。
グラビティピラーは【猟犬縛鎖】で攻撃しましょう。毒が十二剣神相手にどれだけ効くかはわかりませんが、神経を伝って麻痺させる、一番強いものを用意しましょう。
奴の攻撃はなるべく回避したいですね。幸い、進化の影響で知覚力は上がっていますから(【野生の勘】【気配感知】)

【真の姿】では影からもうひとつの頭が顔を出す。双頭の魔犬。



 そもそも、と月隠・新月(獣の盟約・f41111)は宇宙に浮かぶ巨体を見上げる。
 永遠不滅のデウスエクス。
 それも十二剣神。
 己を諸悪の根源と宣う存在。
 彼らの言葉と別の存在である己たちの感性が合うわけがない。
 彼らの理屈は己たちにとっては屁理屈でしかない。
 生命が脆弱であることは認めるところであるが、醜悪だとは思わない。 
 可能性が静寂をかき乱す騒音だということも、静寂の宇宙が美しいとも思わない。

 それもこれも、全てただの理屈でしかないし、言葉に過ぎないのだと新月は理解していた。
 原獣オルトロスたる体躯が唸りを上げる。
 そう、新月にとって重要なのは『地球を害する者』か、そうでないかの大別のみ。
 それ以外は瑣末事である。
 故に新月は、注ぐグラビティ・チェインを受け入れた。受容した。
 これを『進化』と宣う『神経樹グラビティピラー』を前にして、さらに立ち塞がる『グラビティピラー軍団』を睨めつける。
「これはただの手段。致し方ないがゆえに受容するもの」
 影より這い出る首が現れる。
 原獣オルトロスの名に相応しい双頭。
 魔犬は吠える。

 力のうねりに耐えかねたのではない。
 地球を害する者に対する怒りでもって吠えたのだ。
「進化とは受容するものではない。永遠不滅へとひた走るものだ。醜悪なる者よ。それが貴様たちとデウスエクスの違いよ。そこに美しさはない。醜悪なままだ」
「語るまでもない」
 無意味だ。
 何一つ有意義なものは生み出されない。無為故に新月は、にべにもなく突っ返すように牙で『グラビティピラー軍団』を噛みちぎり、詰めで引き裂き。
 疾駆し、新月は『神経樹グラビティピラー』へと迫る。

「殖え、絡め、滲む。神をも縛り、神をも侵す」
 奔るは、猟犬縛鎖(オルトロス・チェイン)。
 巨大な存在であろうと、それしか知覚できないのであろうと、そこに『在る』のならば、己が縛鎖は『神経樹グラビティピラー』の体躯を締め上げるだろう。
 注がれるは神殺しの毒。
 汚染がこれまで積み重ねてきた猟兵たちのユーベルコードによって刻まれた傷口から浸透していく。
 どれほどの効果が見込めるかはわからない。
 だが、構わない。
 己たちは永遠不滅の如くただ一人で到達する存在ではないのだ。
『神経樹グラビティピラー』の言うとおりだ。触れ合い、支え合い、癒やし合う。そうやって歴史を紡いできたのだ。
 その営みこそが、生命の最たるもの。
 それ故に新月は、降りしきる神経樹の槍を躱しながら、戦場を走り、鎖でもって『神経樹グラビティピラー』を押さえつけ続ける。
 双頭が吠え猛る。
「これが生命だ」
 ともにあること。
 たった一つの停滞の如き永遠不滅ではなく、不確定な未来に手を伸ばす可能性なのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第三『侵す者』武の天才
一人称:わし 豪快古風
武器:黒燭炎
真の姿:橙色の狼獣人

進化は受け入れよう。武人として、許せぬことはある。
支え合うことこそ、強みというのがわからんのか。こやつ。

霧が多重、構わぬ。四天霊障に炎属性を纏わせ、さらにその霧すら蒸発させてやろうぞ。
で、炎属性+UC付きで黒燭炎を横薙ぎに。樹というのなら…そのまま燃えるがよい。
なんで四天霊障でそうやらぬか、だと?簡単よ。
こやつに直接攻撃を与える…というか、殴った感覚には、黒燭炎が最適だったからな!



 如何に武人が力の練磨に邁進する存在なのだとしても。
 許せぬ道理というものがある。
「グラビティ・チェインを受け入れていながら、その醜きことは変わらぬか」
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』は言う。
 見下ろし、いや、見下す。
 その醜悪さ直視に耐えぬというように、橙色の体毛持つ狼獣人――馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『侵す者』を睥睨していた。
 悪霊たる身。
 それを四つ束ねた存在。
 真にいびつであり、異物。
 静寂の宇宙こそが正しく美しいと言う『神経樹グラビティピラー』にとっては、それは醜悪な異形でしかなかった。

「支え合うことこそ、強みというのがわからんのか、こやつ」
「無意味だ。支えて何になる。自立こそを尊びながら、都合よく寄りかかっているだけではないか。そうでないと何故言い切れる。他者をが己と真に違う存在であると理解していながら、そうではないという矛盾を抱えて、堂々巡りで立ち止まる。そして、それさえも変わっていくものの何処に美しさがある。真理がある」
 膨れ上がる霧。
 重濃度のグラビティ・チェインは、さらに身を侵食するだろう。
 だが、膨れ上がるように霊障から炎が噴出する。
 グラビティ・チェインの霧を燃焼させ、『侵す者』は踏み出す。
「違うからこそ、であろう。徒に互いを傷つけ、それを練磨と呼ぶのはただのおこがましさでしかないであろうな。だがしかしだ、傷つかずにいられないのが生命だ。時に、それは生命を殺すやもしれぬ」
「それ故に醜いと言ったのだ」
「その醜さを知らぬのならば美しさも理解できぬものであったことだろうに」
 そう、美醜は相反する。
 相反するものがないのであれば、それすら理解することはできない。

 生があるから死がある。
 そのいずれか片方しか存在しないのであれば、確かに不変となるだろう。
「だが、それでは立ち止まっているのと同じである。弛みなく歩み続け、変化し続けること。変わらぬことが正しいのではない。変わることが正しいのでもない。変わり続けることこそが、生命の煌きそのものよ」
 ユーベルコードの輝き宿す槍が迫る『グラビティピラー軍団』を焼き払うように薙ぎ払う。
「それがわからぬというのならば、そのまま燃えるがよい」
 槍に伝わる感触。
 踏み出し、飛ぶ。
 霊障で跳ね、『グラビティピラー軍団』を躱して『侵す者』は眼前の巨大なる『神経樹グラビティピラー』へと己が槍の一撃を叩き込む。
 それは火のように(シンリャクスルコトヒノゴトク)、巨体に突き立てられ炎が噴出する。
 燃え上がる炎は、一層煌々たる輝きを放つだろう。
 悪霊たる身にこれから先はない。
 だが、灯火を示すことができる。
 何も無意味な存在などない。ただ、己たちの前を多くの生命が通り過ぎていくのだとしても、道行きを照らすことができるのならば、それもまた本懐。
 それが支え合うことだというようにユーベルコードの炎が巨体から噴出するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

語るに落ちたり!
または落ちを語りたり?

●|ガウタマ・シッダールタ《釈迦》の手
キミがいくら自分のビッグボディを自慢したって
ボクたちを手のひらの上に乗せてそこからすら出られまいって嘯いたって
それってつまり…
もう触れられるってことだよねー!

そうこの星が宇宙に広がる大きな大きなキミの小さな小さな結節点
いわば根っこってことだね!

って解釈を元にUC『神罰』でスーパーギガプラネットサイズまでサイズアップした[餓鬼球]くんたちに根っこを噛み噛みしてもらおう!
その間【第六感】で手数は多いけど正確さに欠けてそうな攻撃を避けてよう!
進化だって?ボクはこのままやりたいことがたっくさんあるの!



 巨体がかしいでいる。
 しかし、それが宇宙に広がる神経のように星団よりも巨大であるという。
 十二剣神『神経樹グラビティピラー』は、生命が知覚できる限界である巨体を揺らし、その体躯でもって生命を睥睨する。
「醜悪。この静寂の宇宙をかき乱す。生命の鼓動は、騒々しい。煩わしい。変わらぬこと、不変たることが、真の美しさであり、真理であるというのに」
「アハハ、語るに落ちたり! また落ちを語りたり?」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は進化を拒絶しながら、見上げていた。
「キミがいくら自分のビックボディを自慢したって、ボクたちを手のひらの上に乗せてそこからすらでられまいってうそぶいたって」
 ロニは笑い続けていた。
 見上げて指差す。
 巨体は確かに恐ろしいほどに圧倒的だった。
 それが末端であると理解すれば、根源的な恐怖さえ込み上げてくるものだっただろう。
 
 だが、ロニは|ガウタマ・シッダールタ《釈迦》の手にありながら、笑い飛ばしたのだ。
「それってつまり……もう触れられるってことだよねー!」 
 そう、巨大であるがゆえ、ではない。
 この惑星が。 
 この地球が、グラビティ・チェインを吸い上げて宇宙に運ぶ神経の接合点。
『神経樹グラビティピラー』にとっては、ただの小さな接合点にすぎないのだとしても、此処が根であることに変わりはない。
 ならばこそ、ロニはユーベルコードに輝く瞳で『神経樹グラビティピラー』を見上げた。
「なら、こうするのさ!」
 球体が膨れ上がっていく。
 地球よりも巨大な球体が影を落とす。
 太陽の光すら覆うような巨大な球体。
 最大経をさらに百万倍した球体を振りかぶる。いや、振りかぶるという表現もおかしい。
 ただぶつけるだけでいいのだ。

「宇宙に広がる神経そのものだっていうのなら、どうやったってかじりつけるよね!」
 神罰(ゴッドパニッシュメント)は此処にある。
 させぬとばかりに降り注ぐ神経樹の槍に、大地から生える槍。まるで槍衾である。
 圧倒的な物量の中をロニは駆ける。
 どんなに強大な力であろうとも、受容することはない。
「進化なんていらないよ。ボクはこのままやりたいことがたっくさんあるの!」
 だから、これでいい。
 ここがいい。
 このままでいい。 
 それだけのシンプルな理由。 
 ロニは掲げた球体と共に『神経樹グラビティピラー』を噛みちぎらせながら、笑うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
「……ッ」

悍ましいほどの勢いで流れ込むグラビティ・チェインに背筋が凍る。
開かれる進化の扉。
具現化する不可知の可能性。
……そして、その果てに自ずと見出される、自分たちの行く末。

怖い。恐い。コワイ。
直視してはいけないのに目が離せない。
記憶してはいけないのに脳裡に焼き付いて消せない。
肯定してはいけないのに魂が抗うことができない。

だけど。
戦いに臨んで、■■を■■したおれ。
その可能性、その姿を垣間見た刹那、猛烈な嫌悪感が湧き上がって――。

「ふざけんな―――!」

真の姿を解放。

何も姿は変わらない。力は湧き上がらず、こみ上げる恐怖は消せず。
ただ瞳が、魂が、琥珀ではなく黄金の輝きを放つ。

――そんな一足飛びに進化して嬉しいもんか。
|倒《こけ》つ|転《まろ》びつ。何度も壁にぶち当たって。何度も失敗して。何度も無力さに涙して。
それでも一歩一歩、いろいろなものを積み重ねて、おれはここまで走ってきた。
その積み重ねを、その振る舞いを、けれどあの|神経樹《グラビティピラー》は否定した。
そんなの、認められるもんか――!



 背筋が凍りつく。
 凍りついた体は、一歩も身動きできなかった。
 体の震えすら凍りついた。
 悍ましささえ感じさせるグラビティ・チェインの奔流。
 嫌だ、と拒絶してもなおこじ開けられるは進化の扉。
「……ッ」
 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、どうしておれは、と思った。
 本来ならば知覚できぬ不可知の可能性。
 具現化したそれは、瞼を閉じて尚、彼の視覚を侵食していく。
 可能性。
 それが生命の持つ価値であるというのならば、確かに十二剣神『神経樹グラビティピラー』が告げた生命の醜悪さは正しいのだろう。

 可能性が見せるのは常に希望か。
 否である。
 希望があるから絶望がある。
 永遠ではないのならば、必ず果てがある。
 それ故に見出してしまう。
 可能性を見るがゆえに、その可能性に嵐は己の心が殺されるのを感じただろう。
 突きつけられるような可能性という刃。

「怖い。恐い。コワイ」
 込み上げてくる可能性の幻影。
 直視してはいけない。目が離せない。
 記憶してはいけない。脳裡に焼き付く。
 工程してはいけない。魂が抗えない。
 それは幻視と呼ぶにはあまりにも現実味を帯びた可能性の一欠片であった。
 戦いに挑んで、■■を■■した己。
 その可能性を、その姿を垣間見た刹那、こみ上げるのは力ではなく嫌悪だった。
「ふざけんな――!」
 受容したつもりはない。
 けれど、否応なしに、その反応は引き起こされてしまった。
 真の姿。
 猟兵が必ず持ち得る真の姿。
 法則性はなく、ただただ混沌の如く多種多様、千差万別に存在する姿。
 
 だが、嵐の姿は変わらなかった。
 何も変わらなかった。
 力が湧き上がることもなければ、こみあげる恐怖を消せたわけでもない。
「可能性を否定しながら、それでも永遠不滅に踏み出さぬ愚劣愚昧。それこそがお前が醜悪である証明である」
『神経樹グラビティピラー』の言葉に嵐は見上げる。
 迫るは『グラビティピラー軍団』。 
 空を埋め尽くすかのような圧倒的な物量。
 降り注ぐユーベルコードの光。
 何もかもが圧倒的だった。

 しかし、地にあってなお、嵐は己が恐怖を消せぬまま琥珀の瞳ではなく黄金の輝き放つ眼差しでもって『神経樹グラビティピラー』を見上げていた。
 何も変わらぬ真の姿。
 されど、本当に何も変わらないだろうか。
 ただ瞳が、魂が、その黄金の輝きとともにあった。
「――そんな一足飛びに進化して嬉しいもんか」
「永遠と不滅。それを否定しながら、己が姿すら変えぬのならば、それはただの弱者だ。心弱き者よ。それは真の弱者のなすことだ」
「だからなんだ! |倒《こけ》つ転《まろ》びつ。何度も壁にぶち当たって。何度も失敗して。何度も無力さに涙して」
 そうやって生きてきたのだ。
 それは己の生き方であったし、道程でもあった。
 変えられないものだ。変わらないものだ。
 これから咲き、どんな未来が待ち受けるのだとしても、過去は変わらないし変えられない。
 過去の自分のことが好きかと言われたら、きっと好きとは言えないだろう。だが、嫌いだとも言えないかもしれない。
 それはきっと己自身だからだ。
 変えられなくても、それでも一歩一歩、いろいろなものを積み重ねて走ってきた結果が今なのだ。
「それが愚かしく醜悪なのだ。力を欲しながら、力を恐れる。その愚かしさを己で否定しながら、肯定を求めるなど。真の弱者のすることだ。その醜悪さ、やはり見るに耐えぬ。絶命せよ」
 それでも嵐は奔る。
 己は此処まで走ってきたのだ。
 積み重ね、何度弱者と嘲られようとも、だ。

 確かに褒められたことではないのかもしれない。
 けれど、その積み重ねを、振る舞いを否定される謂れなどない。
 弱さを肯定しながら超えていく意志なくば、その有言は宿らない。
「そんなの、認められるもんか――!」
 幻想虚構・星霊顕現(ガーディアンズ・ファンタズム)は、黄金の嵐を生み出す。
 膨れ上がるユーベルコードの光は、暴走しながらも『神経樹グラビティピラー』を飲み込む。
 数多の猟兵たちの重ねたものが『神経樹グラビティピラー』を更に打ち据える。
 嵐は己を否定する『神経樹グラビティピラー』の言うところの永遠不滅にこそ立ち向かうように、こみ上げる嫌悪感を飲み干してユーベルコードによって生み出した黄金の嵐の渦中にて叫びをあげるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月14日


挿絵イラスト