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ケルベロス・ウォー②〜情熱のゴッドペインター

#ケルベロスディバイド #ケルベロス・ウォー #ゴッドペインター

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●全世界決戦体制
 如何なる思惑か。
 デウスエクスの統括者たる『十二剣神』、その六柱は地球に対して総力戦を仕掛ける。
 彼らの最大の目的は、特務機関DIVIDE本部『東京タワー』の地下に渦巻く『地球の精髄』である。
 これを奪われれば、地球は遠からず崩壊を迎える。
 無論、これを阻止せねばならない。
 だが、十二剣神は無敵の『永遠回廊』で防護し、如何なるユーベルコードをも阻む。
「そこで、だ。『ゴッドペインター』諸君!」
  湾岸の決戦都市の責任者である亜麻色の髪の女性『エイル』博士は、集まった『ゴッドペインター』たちを前にして両手を広げて見せた。

『ゴッドペインター』――現実世界を絵画のごとく塗り替える彼らの能力。
 それは艦橋操作能力と言っても差し支えないほどの圧倒的な力である。
 そんな彼らが集まっていたのは、十二剣神を護る永遠回廊をも塗り替え、無効化せんと試みているからだ。
 だが、問題はある。
「やっぱりダメかい?」
「うん、なんかこう……インスピレーションが沸かないっていうか……パッションが足りないっていうか……」
「革新性がないっていうか……なんていうのかなぁ、激しいキラメキ! そういうビビっと来るものがないっていうか!」
「ほう、つまり?」
「ときめかない!」
『エイル』博士の言葉に『ゴッドペインター』たちは口々に不満を漏らした。

 そう、永遠回廊はあまりにも強固な霊的防護。
 これを塗り替えるためには並大抵のグラフィティでは叶わないのだ。
「困ったな……私には君たちに新たな『ときめきと閃き』を与えられそうにない……しかし!」
 そう、『エイル』博士には宛がある。
 世界の外から思いも依らぬ革新性を伴い、並々ならぬ発想を持ち得る存在に!
「彼らならば、君たちに『ときめきと閃き』を与え、諸君らが見たこともないような『パッション溢れるアート』を披露してくれることだろう! 待っていたまえ――!」

●ケルベロス・ウォー
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)であった。
 何故かダブルピースをしている。
 なんで?
「おまたせいたしました。世界の巨匠と言われた私の出番……あ、違いますか」
 はぁ、とでっかい溜息をついてノインは猟兵たちに向き直る。
 何だその態度、と思わないでもない。
 が、ノインというグリモア猟兵は、だいたいこんな感じである。

「ケルベロスディバイド世界にてケルベロス・ウォーが勃発したことは聞き及んでおられますね? ですが、にくいあんちくしょーこと『十二剣神』たちは、『永遠回廊』にて護られているのです。いかなるユーベルコードをもってしても破壊することができないとかチートですよ、チート。チーターです」
 許すまじ。
 確かに恐るべきことである。
 だがしかし、これを打ち破る方策があるのだ。
「そうです。世界の人々が建造する『決戦配備』。ですが、今回は『ゴッドペインター』さんたちによる『究極のグラフィティ』でもって永遠回廊を塗り替え、無効化しようとする試みが行われているのです」
 つまり、とノインはダブルピースを突き出した。だからなんなの。

「そう、ハイパー・アート・フェス! です!」
 ばーん。
 口で言った。
「『ゴッドペインター』さんたちは、その環境操作能力に長けた方々。ですが、それを持ってしても永遠回廊は強固。これを破りうるものは、圧倒的な完成度、革新性、パッションを兼ね備えた『究極のグラフィティ』なのです。ですが、芸術家とは気難しい生き物。彼らは今、堅牢な永遠回廊に、ちょっとテンサゲ状態なのです」
 つまり?
 そう、『ゴッドペインター』たちに激しく煌めく『ときめきと閃き』が必要なのだ。

「ハイパー・アート・フェスに皆さんで飛び込み、『ゴッドペインター』の皆さんが今まで見たこともないような『パッション溢れるアート』を披露し、ときめきと閃きを与えてあげましょう。そして、今、私の手元にあるのが、皆様のナマモノ同人誌……あ、これは発禁ですか? え、そんな。修正が足りてない? 現実の人物を題材にするのはNG? そんなー」
 ノインは残念そうにせっせと夜なべして執筆した猟兵たちのナマモノ同人誌を、そっとしまって何事もなかったかのように一礼する。
「では、がんばってください」
 よろしくでーす、とこれまで見たこともないほどのテンサゲ状態で猟兵たちを送り出す。
 もっと真面目にやれ、と猟兵たちはきっと思ったに違いない――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『ケルベロス・ウォー』の戦争シナリオとなります。

『十二剣神』を守る『永遠回廊』を破るためには『決戦配備』が必要になります。
 今回は凄まじ環境操作能力を持つ『ゴッドペインター』たちの能力によって、これを無効化する試みを支援するために、ハイパー・アート・フェスに飛び入りし、彼らに『ときめきと閃き』を与えるパッション溢れるアートを示しましょう。
 アートは自由であり、爆発であり、パッションの解放なのです!!

 ※プレイングボーナス……ゴッドペインターに新たなときめきと閃きを与える。

 それでは、狙われた地球を守るために戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『ハイパー・アート・フェス!』

POW   :    最高の情熱を込めて作品を作る

SPD   :    極めつくした技術で作品を作る

WIZ   :    異世界の知識や思い出を込めて作品を作る

イラスト:del

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

紫・藍
あやー。
そうでっすねー。
当然、職業やお仕事という側面もありまっすがー。
芸術とは必要に迫られて描くものではない、という方々もいらっしゃるでしょうし。
それが突発的かつ期間が短いともなれば尚更でっすよねー。
ではではではでは!
いっとき、そういった諸々を忘れるようなライブへとご招待なのでっす!
描くために聞くのではない、聞きたいから聞く歌をお届けしちゃうのでっす!
一緒に歌って踊って、楽しんじゃいましょう!
楽器演奏はコラボ先の皆様なのでっす!
それでは皆様、ご一緒に!
藍ちゃんくんでっすよー!

あ、ちなみにせっかくですので藍ちゃんくんの同人誌、お見せくださいなのでっす。
作ってくださったのを死蔵はもったいないので!



 クリエイティヴな仕事というものは、常に葛藤の中を揺蕩うようなものである。
 故に人の心は柔らかくがゆえに葛藤に傷つけられやすいものでもあるのだ。
『ゴッドペインター』たちも同様であったことだろう。
 如何に凄まじい環境操作能力を有していたとしても、どうしたってやる気、テンション、インスピレーションというものが左右されてしまうものなのだ。
「あやー」
 紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、ハイパー・アート・フェス会場にて、どうにも筆が乗らぬ『ゴッドペインター』たちを認めて、なるほどなーと思っただろう。
 職業や仕事という側面もあるが、芸術というものは必要に迫られて描くものではない、という者が『ゴッドペインター』の中には多く見受けられるように感じられたのだ。

「やる気が出ない……」
「なんかときめかない……」
「もっと、こう……パッションがほしんだよね!!」
 そんな彼らを認めて藍は深く頷いた。
 この全世界決戦体制は、極めて突発的であり機関も短い。
 そんな中で強固な霊的防護を誇る永遠回廊を塗りつぶすほどの『究極のグラフィティ』を描けと言われて、はいできました、とはならないのだ。
 わかる。
 とてもわかる、と藍は頷いた。
「ではではではでは! いっとき、諸々の問題を忘れるようなライブにご招待なのでっす! さあ、藍ちゃんくんコラボステージへようこそ!」

 藍の瞳がユーベルコードに輝き、絢爛たるステージがハイパー・アート・フェス会場にせり上がっていく。
「な、なんだなんだ!?」
「ライブ!? なんで!? よくわかんないけど、なんかすごいな!」
「はいなのでっす! 描くために聞くのではない。聞きたいから聞く歌をお届けしちゃうのでっすよー! 皆々様ー! 一緒に歌って踊って、楽しんじゃいましょう! かもんっ、コラボ先のバックオーケストラの皆々様ー!」
 ぱちん、と指男鳴らせば、ライブ会場に多くの共演者たちが立ち並ぶ。
 荘厳であり、賑やかであり、心が弾むような音楽が音響から放たれ、『ゴッドペインター』たちの体躯を揺らす。

 腹の底にぶち当たるような音に彼らは徐々に足踏みをし始める。リズムを取り始めていると言ってもいいだろう。
「それでは皆様、ご一緒に! 藍ちゃんくんでっすよー!」
 藍は歌う。
 いつだって歌う。
 教だって縁が育まれ、逢ったのだ。
 なら、教から始めよう。今から始めよう。いつだって始めるには遅くない。
 だから!

「あ、ちなみに藍ちゃんくんの同人誌、お見せくださいなのでっす。作ってくださったのを死蔵してはもったないでっすよー!」
 なんかライブ会場から届く声にどっかのグリモア猟兵は、ダブルピースして見せていた。意味はあんまりない。了承という意味ではないようだが、なんとなく、まあいいじゃあないですかとごまかすようななんとも言えない笑顔で藍の求めをさり気なく躱す。 
 それを許さぬと言わんばかりに藍は『ゴッドペインター』たちをぶち上げ、沸かせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンジェリカ・ディマンシュ
成程、ではこのような物語はいかがでしょうか

宇宙からの不死身の侵略者デウスエクス
それを弑せる者達、ケルベロスが立ち上がった
然し、その不死身を突破して死をデウスエクスに与えられる能力…それはどこから手に入ったのか
それは、一度やり直す前の地球にて、踏み躙られた地球生命の怒りが…三頭首の獣を生み出した
それこそが原初のケルベロス
絶望の空に叫ぶ獣ですわ

ですが…巻き戻した後、原初のケルベロスは現れず…代わりに、人と人を救うケルベロスが現れたのですわ
その果てに、宇宙を完膚なきまでに救いながらーーそう、彼らの名こそ…
例えるなら、こう呼称しましょうか
『希天剣ケルベロスブレイド』、と



 なかなかやる気がでない。
 情熱が足りない。
 モチベーションが底をついた。
 制作の手が止まる理由というのは、いくつか考えられるものだろう。だが、そのいずれもが決定的なものではない。
 何かを作る、何かを描く、ということは常に前のめりなのだ。
 それをしようと考えた時、すでに走り出しているものなのだ。
 だからこそ、『ゴッドペインター』たちは己たちを突き動かす何かが足りていないと思わずにはいられなかったのだ。
「何か、こう……とんでもない出来事はないだろうか」

 そんな彼らを前にしてアンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)は成る程、と頷いた。
「では、このような物語はいかがでしょうか?」
「物語?」
「ええ、宇宙からの不死身の侵略者デウスエクス」
 その言葉に『ゴッドペインター』たちは居住まいを正す。
 謳いだしとも言える言葉は、彼らにとっても馴染み深いものであったからだ。

「それを弑せる者達、ケルベロスが立ち上がった。然し、その不死身を突破して死をデウスエクスに与えられる能力…それはどこから手に入ったのか。それは、一度やり直す前の地球にて、踏み躙られた地球生命の怒りが……三頭首の獣を生み出した」
 その物語は魂の根幹を揺るがすものであったかもしれない。
『ゴッドペインター』たちはアンジェリカの言葉に聞き入る。
 覚えがない物語。
 けれど、怒りとは人間の感情の中で最も強烈な感情である。
 燃え上がるような鮮烈さと、苛烈なる熱。
 それをともなった感情。

 人は激情のままに生きられない。
 けれど、刹那には生きられるものだ。
「それこそが原初のケルベロス。絶望の空に叫ぶ獣ですわ」
 アンジェリカは訥々と語る。
 物語は、自らが経験したことか、それともはたまた別の誰かが語るものだったのか。
「ですが……巻き戻したあと、原初のケルベロスは現れず……代わりに人と人を救うケルベロスが現れたのですわ」
 一息をいれる。
「その果てに、宇宙を完膚なきまでに救いながら――そう、彼らの名こそ……例えるなら、こう呼称しましょうか」
 誰かの物語。
 語られ続けることなのか、忘却の彼方にあるべき物語なのか。
 いずれにせよ、アンジェリカの胸の中に、その名前がある。

「『希天剣ケルベロスブレイド』と」
 その物語が『ゴッドペインター』たちの胸にいかなる感情を去来させただろうか。
 絶望の最中から希望が生まれるのか。
 それとも闇の中で光がひときわ輝くと示したのか。
 いずれにせよ、灯された火は紡がれていかねばならない。
 筆を執る手に力が籠もるのならば、きっと絶望すら塗り替えることができる。
 それが『ゴッドペインター』なのだと示して欲しい。
 アンジェリカは語り終えたあと、そう思うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リリエッタ・スノウ
むぅ、次はこっちのお手伝いって聞いてやってきたけどデウスエクスをやっつける任務じゃない?
リリ、戦い以外はあまり得意じゃないけど、任務はやりとげるよ。

んっ、ゴッドペインターの人のお手伝いをすればいいんだね。
それじゃあ、リリもお絵かきするからリリの絵から何か感じ取ってくれるといいな。

極めつくした技術(幼稚園児レベル)で一緒にいるマシンナノナノや以前見かけたかわいい生き物・モーラットのイラストを描いてみた。
感情が薄いなりに愛が込められたイラストにゴッドペインター達も何か感じ取ってくれる……はず!

※アドリブ連携大歓迎



 ハイパー・アート・フェス。
 それは『ゴッドペインター』たちが集うアートの祭典。
 しかし、世界すら塗りつぶして見せる彼らの筆はピタリと止まっていた。
 如何に環境操作能力を持ち得るのだとしても、その原動力は彼ら自身の胸の内側から湧き上がる感情であった。
 その感情が走らないのならば、筆も走らぬのは当然と言えば当然であった。
「なんだか筆が乗らない……」
 彼らは意気消沈していた。
 どうしてなのか。
 言うまでもない。
 十二剣神を護る永遠回廊が絶大なる霊的防護を持っているからだ。あまりの強固さに『ゴッドペインター』たちもたじろぐしかなかった。
 だが、彼らの能力があれば強固な守りである永遠回廊ですら塗り替えることができる。

 問題は、やはり『ゴッドペインター』たちのモチベーションとインスピレーションであった。
 刺激が欲しい。
 こう、ガツンと魂を揺さぶるような、そんな刺激が。
「むぅ、次はこっちのお手伝いって聞いてやってきたけど……」
 どういう状況なのか、とリリエッタ・スノウ(ちっちゃい暗殺者・f40953)は訝しむ。
 てっきりデウスエクスをやっつける任務だと思っていたリリエッタは、『ゴッドペインター』たちと同様にがっくり肩を落としていた。
 戦い以外は得意じゃあない。
 けれど、彼女は腹に力を込める。
 そう、どんなに不得意であっても任務ならやり遂げなければならない。

 筆の止まってしまった『ゴッドペインター』たちを奮起させるためだというのならば、リリエッタは周囲においてあったペンキ缶に突っ込まれたままのブラシを勢いよく引っこ抜いた。
「お手伝い、するね」
 散るペンキの飛沫。
 壁面を前にリリエッタは気合をいれる。
 何を描こうか。
 考える。いや、考える前にリリエッタはペンキブラシを壁に叩きつける。
 考えなくていい。
 自分が描きたいものはもう決まっている。一緒にいるマシンナノナノや、可愛い生き物を描きたい。
 どうせなら、そういうものがいい。
 描きたい物を描きたいように。ただそれだけでいい。やらなければならないことなんて何一つない。
 現実に残るのはやったことだけなのだ。

「だったら、迷っている暇も、考えている暇もないよ。自分の心に素直になってしまえばいいんだよ。リリは可愛いものが好き。だから」
 感情は薄い。
 けれど、自分の胸の奥から湧き上がるのは、そうした欲求だ。
 描く技術は拙い。
 言ってしまえば、幼稚園児レベルかもしれない。
 けれど、そこに技術や技法といった小手先はない。ただただ己の情動からダイレクトに伝えられるタッチが荒々しくもリリエッタの思う可愛さを表現する。
 それはきっと愛と言う名のパッション!
「お、おおお……これは、僕らには、絶対もう描けないグラフィティだ。忘れてしまったわけじゃあないけれど、もう二度と描けない絵……そうだ。僕らは」
「そうだよ。描かなきゃダメなんてそんなことない。自由に描いていい。好きなように、ね」
『ゴッドペインター』たちは気がついた。
 やらねばならないから描いたんじゃあない。
 描きたいから描いてきたんだ。
 それをリリエッタのグラフィティから彼らは感じ取って、リリエッタと共に壁面に思うままに色を叩きつけるように乗せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸
「アートは正直よくわからないですけど、いっしょうけんめいがんばります!」
緊張しながらも何か動物の絵でも描こうとするものの、
「うえっ!? あ、ごめんなさい!」
【怪力】【奇跡のドジ】で筆や刷毛を握りつぶしてしまう
「こ、こうなったら手で直接!」
手にペンキをつけて石壁に直接描こうとして、うっかり石壁を破壊
「アートは、絵だけじゃないですよね!」
今度は石壁の残骸を削ったり毟ったりしながら動物の形を作る
「で、できました!」
失敗した残骸に囲まれながも猫っぽい形にも見える石像を作り上げて、掲げる
UCの頑張りオーラでゴッドペインターさん達に何かインスピレーションを与えられればいいな



 熊ヶ谷・咲幸(チアフル☆クレッシェンド・f45195)は正直な所、アートというものがわからない。
 なんとなくすごいなぁ、綺麗だなぁとは思う。
 けれど、難しいところはわからない。
 何かアートについて語れと言われたら、きっとまごまごしたまま口ごもってしまうことだろう。
 だから、ハイパー・アート・フェス会場に来てもいまいちピンと来ていなかった。
「でも、あたし、がんばります! いっしょうけんめい!」
 そう、『ゴッドペインター』たちの環境操作能力があれば十二剣神を護っている永遠回路を塗りつぶすことができるかもしれないのだ。
 可能性があるのならば、諦めない。
 それが咲幸というアイドルのあり方であり、根幹でもあったのだ。

「え、えっと……こ、ここに描いていいんですよね?」
「うん、構わないよ~壁という壁が僕らのキャンバスだからね~」
『ゴッドペインター』の言葉に咲幸は緊張しながらも頷く。
 はい、とペンキと刷毛を手渡される。
 手が震える。
 どうしよう。どうしたらいいんだろう。
 周囲をキョロキョロと見回す。
 緊張で心拍が上昇する。他の人はどんなものを描いているのだろう。ああ、でも描きやすいのがいいのかな。それとも好きなものがいいのかな。
 どうしよう。
 何を描こう。
「好きなものでいいんだよ~上手い下手は関係ないからさ~リラックスして、リラックス~……」
「は、はい……!」
 べきんっ!

 べきん?
 え、と思った瞬間彼女の手の内にあった刷毛の柄がへし折れていた。いや、握りしめて圧壊させられていた。
「そんなことある~!?」
「うえっ!? あ、ご、ごめんなさい! あっ!!」
 思わず握りつぶしてしまった刷毛が地面に落ちて、慌てて彼女が手を伸ばせば、足がズボンとペンキ缶の中にはまり込んでしまう。
 そうなってしまえば、バランスを崩して咲幸はずっこけてしまう。
 その場で一回転。
 足に嵌まったペンキ缶は宙を舞い、その中身をぶちまけてしまう。
 更にそこに手をついてしまえば、咲幸の掌はペンキまみれになってしまう。
「だ、大丈夫~?」
「は、はい……で、でも刷毛が……こ、こうなったら手で直接!」
「ちょ、ちょいちょい!」

 待って、落ち着いて、と言うより早く咲幸の手が壁面に叩きつけられる。
 まるで手形である。
 お相撲さんが張り手をしたように壁面には彼女の手形と亀裂が走る。
 ペンキが滴り、壁面に走る亀裂は、それだけで何かのメッセージ性を伴うものであった。
「えい、えい、えい!」
 構わず咲幸は次々と壁面にペンキを伴った手形を叩き込む。
 それはとんでもない光景であった。
 壁面を削ったりむしったり……むしる!?
 とんでもない力で彼女は次々と動物の形に壁面を描くように、こねるように作り上げるのだ。
「で、できました!」
「こ、これは……ぜ、前衛的な……!」
「ね、猫ちゃん、です……」
「猫!?」
 それはとんでもない前衛芸術。
 そのあまりにも凄まじい出来栄えに『ゴッドペインター』たちは雷に打たれたような衝撃を受けたように身を震わせた。
「あ、あの……?」
「こ、これだ!!! これがパッションなんだ!!!」
「え、ええ……?」
「ありがとう! 僕らはまだやれる気がしてきたよ!」
 咲幸は、いいのかな? と思いながらも『ゴッドペインター』たちがやる気になった姿に微笑むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
僕は絵について詳しくないけど

足元に大き目のアート用の頑丈なパネルを設置
描かれているのはシンプルな草原だけ
その上に素足で乗ったら
ライブパフォーマンスしてみます

即興で紡ぐ明るい歌唱に合わせてダンスしながら
足を付けたパネル上に植物魔力で本物の花を咲かせていく

大小様々な花達を
蝶の代わりにバタフライフラワーを
最後に端の方に一輪だけ向日葵を

魔力量を調整することで向日葵以外の茎の長さは短めに揃えつつ
向日葵だけ突出させることで、横から見たら太陽にも見えるように
立体アートってやつかな?

まぁ全部ってわけにはいかなくても
太陽や蝶を花で表現する
この別のものに置き換えた表現とか、参考にならないかなーって
どうかな?



 何をキャンバスとするのか。
 それはアートを為す際に考えることの一つだろう。
 モチーフだって必要だ。
 考えることは多い。
 けれど、そうした思考はいつだってアートのノイズになり得るものだった。
 人の心の象形がアートに昇華するのならば、そうしたノイズが排除されればされるほどに芸術性の純度は上がっていくものだろう。
 だが、同時にこうした思考すらも不純物であるとさえ思えた。
 だから鉄を練磨するように不純物は火花と散らさなければならない。
 その光景が如何に美しいのだとしても、わき目もふらずに鎚をふるい続けなければならない。それが宿命。

「とは言ってもね」
 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は地面にパネルを設置した。
 そのパネルは草原を思わせるような緑色。
 澪は、その前に靴を脱ぎ捨てて裸足で立っていた。
 何をするのだろうかと『ゴッドペインター』たちが集まっている。
「じゃあ、始めるね?」
 にこ、と微笑んで澪はスマートフォンをタップする。
 スピーカーから流れるのは軽快な音楽。
 リズムが刻みやすいアップテンポ。
 パネルの前で軽く踊りながら、跳ねるようにして躍り込む。

 緑のパネルの上で踊る澪は、まるで草原を駆けているようにも未メタだろう。
「パフォーマンスなのかな? でもそれにしてはありきたりっていうか」
「だよな。まだ全然ビビっとこない」
『ゴッドペインター』たちの言葉は澪にとっては予想の範囲だった。
 だが、次の瞬間澪がステップを踏んだパネルから流し込まれた植物魔力によって本物の花が咲いていくのだ。
 ぽん、ぽん、と。はたまた芽吹き、茎が伸び葉をつけ、蕾を生み出す。
 大小さまざまな花たちが澪のステップの後に芽吹いて咲いていく。
 花弁が開き、澪の周囲に青いバタフライフラワーが羽ばたくように風に揺れていた。
「おお……ステップごとに花が咲いている」
「綺麗だな……」
 最後に澪が足を強く踏みつければ、そこから一輪の向日葵が周囲の花々よりも一層高く伸びるのだ。

 いわば、立体アート。
 草原のキャンバスに生み出された花々。
 それは澪の創意工夫だった。
 どんな場所にだって花は咲く。
「例え、永遠回廊だって、花畑にだってできるよね? できるって思えたら、きっとできるんだよ。できないことなんて僕らにはないんだから」
 だから、と澪は手を差し伸べる。
 この太陽のような向日葵のように、皆の明日を『ゴッドペインター』たちに明るく塗りつぶして欲しい、と。
「それがきっとあしたの希望に繋がるはずだから」
 澪はそう微笑んで、さあ、一緒にと『ゴッドペインター』たちに手を差し伸べるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

陰海月が思いついたことがあるようで。
今回、私は助手です、助手。
何やってるかというと、調色ですー。陰海月曰く、『びゅーびゅーおじーちゃん』が一番上手い、と…。


陰海月「ぷきゅ!」
やるのなら、徹底的に!
今回作るのは、いろんなキットを合わせた『とある湾岸決戦都市』のディオラマ。しかも製作を生披露!
ぼくは組み立てていくから、おじーちゃんに調色任せてるんだ。『びゅーびゅーおじーちゃん』、色彩すごいんだよ!
色を吹き付ける時は、結界で区切って、天候操作で換気OKにしてるよ!
じゃじゃーん!これが、ぼくの、ぼくたちの閃きからくるもの!



 テーブルがハイパー・アート・フェスの会場に設置されていた。
 その卓上には何もおかれていない。
 何が始まるのかわからない。
 けれど、何か期待させるようなものであったに違いない。
 ふわりと『陰海月』の体が揺れて、卓上の前にいくつかの箱がおかれる。
「プラモデルの箱?」
『ゴッドペインター』たちの中には、造形物を嗜む者もいただろう。
 あれはプラモデルの箱だと幾人かが気がついたようだった。

「ええと、私は助手です」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は集まってきた『ゴッドペインター』たちに頭を下げた。
 主役は『陰海月』である。
 卓上の前に積み上げた箱をあけると、そこからパーツを切り出していく。
 なんだなんだ、と『ゴッドペインター』たちは卓上を取り囲む。
「ぷきゅ!」
「ははぁ、なるほど。ディオラマだな?」
「きゅ!」
 その通り、と『陰海月』は頷く。
 そう、彼が作ろうとしているのは様々なキットを組み合わせたディオラマ。
 いわゆるキットバッシュというやつである。

 それで何を作ろうとしているのか。
「これは、町並みか?」
「ええ、『とある湾岸の決戦都市』の情景を、と『陰海月』が言っています」
 制作を生で披露しつつ、『疾き者』が『陰海月』から手渡されたパーツを彩色していくのだ。筆捌きは筆ムラ一つ作らぬ見事なものだった。
 触腕が踊るようにパーツを組み合わせて、決戦都市の町並みを作り上げていく。
『疾き者』に彩色を任せたのは、四柱の中で一番センスがあるからだ。
 そう言われては悪い気はしないというものである。
「これって換気はどうしているんだろう?」
「ああ、それはですね。結界で区切ってー風で換気をしています。塗装ブースなしでもできるんですねー」
「普通の人はできないな、それ」
「はは、確かにですねー」
 そんなやり取りをしながら、次々と組み上げられていくパーツを彩色していく『疾き者』。
 乾燥したパーツから『陰海月』はディオラマ台座に組み込んでいく。
 それは彩色と相まって無骨な決戦都市をカラフルな色合いへと変えていく。

「ぷきゅ!」
 完成! と『陰海月』は出来上がったディオラマを披露する。
「見慣れた筈の決戦都市も、こんなに自由に色を変えることで見方が変わるものなんだなぁ」
「色使いが面白いな。組み上げる手順も見ていた楽しかった」
「そうだよな。自由でいいんだよな。こうじゃなきゃ駄目だなんてことは何一つないんだから」
 その出来栄えに『ゴッドペインター』たちは口々に自分の中の芸術に対するスタンスを思い出していた。
 評価を受けるばかりがアートじゃあない。
 己の心の中を外に出すのもアートなのだ。
 自由でいい。
 想起させられたインスピレーションは、きっと『ゴッドペインター』たちを走らせるだろう。
 作りたい。
 その思いが、いつだって世界を回すのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
……筆が、止まっているのね
焦らなくても大丈夫よ
思い描く気持ちは、無理やり呼び出すものじゃないわ
けれど――もし、誰かの言葉が、あなたの心を揺らせるなら
……その『誰か』に、私を選んでくれないかしら

(一歩、距離を詰めて囁く)
ねえ
あなたの中にある光、それがどれほど眩しいか……私、知っているわ
(柔らかな仕草で、指が頤を持ち上げる)
あなたの色で、私を――世界を、染めてちょうだい
きっとそれこそが『永遠』を揺るがす力になるわ
(声には、かすかに甘い響きがこもる)
あなたにしかできない奇跡を、解き放って――

(流出した謎の同人誌『恋は筆先から♥静漓のトキメキアート講座!』より抜粋)



 何かを生み出すことは苦しむこともでもある。
 それが例え愛であっても生み出す苦しみはつきまとうものである。
 とりわけ、アートともなればなおさらのことであっただろう。
 自らの胸の内を現実に表現する。
 それは最も美しい形を知っているからこそ、生み出されたものの形が異なることに苦しむものなのだ。

 つきものである。
 わかっている。
 けれど、それでも筆が止まってしまう。この苦しみだって前に進むための痛みだってことはわかっている。
 けれど。
「……筆が、止まっているのね」
『ゴッドペインター』の女性は一人懊悩していた。
 全世界決戦体制。
 世界の危機に一般人であれど、立ち上がったのだ。だが、義務感と責任感が彼女の腕をがんじがらめにしていた。
 それを見てとった薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は優しく、その手を取った。
「焦らなくても大丈夫よ」
「でも……!」
「思い描く気持ちは、無理やり呼び出すものじゃないわ」
 その言葉にハッとする。
 知っていたことだ。けれど、世界の危機に『ゴッドペインター』は焦っていたのかも知れない。誰かに言葉にされて初めて気がつくことだってある。

「けれど――もし、誰かの言葉が、あなたの心を揺らせれうなら……その『誰か』に、私を選んでくれないかしら」
 一歩、静漓は『ゴッドペインター』に踏み出していた。
 距離が縮まる。
 物理的な距離が縮まれば心の距離だって縮まるもなのだ。
 けれど、目の前の女性、静漓はあまりにも美しかった。
 まるで青い月だ。 
 現実的じゃあない。幻想的であるとしか言いようのない美貌が眼前にある。
 胸が高鳴って痛いくらいだった。

「ねえ」
 囁くような声すら自分の耳の中だけにとどめておきたいとさえ思えてならなかった。
「あなたの中にある光、それがどれほど眩しいか……私、知っているわ」
「え……」
 柔らかな仕草で、静漓の指が『ゴッドペインター』の頤部を持ち上げていた。
 自然と、逆らう気持ちにならなかった。
 見つめる青い瞳が射抜くようでもあったし、柔らかな笑みが自分の全てを包み込むようであった。
「あなたの色で、私を――世界を、染めてちょうだい。きっとそれこそが『永遠』を揺るがす力になるわ」
 甘やかな声。
 響く声に蕩け落ちそうになるのに、心音だけが激しく叩きつけるように響いていた。
 殺し文句だ。
 こんな事言われて、奮い立たぬ者なんていない。

「あなたにしかできない奇跡を、解き放って――」
「や、やりまぁす!!!」
 ときめき!
 それはきっと世界を塗りつぶす極彩色。
 全てを凌駕するような心のときめきを静漓は『ゴッドペインター』から引き出し、彼女をやる気に満ち溢れさせていた。
 止まっていた筆は走る。走る。走る!
 ときめきが止まってくれない!

 そんな『ゴッドペインター』の背中を見やり、静漓は袖から取り出した一冊の冊子を開く。
「……すごいわ。これ」
 その冊子のタイトルは、どこからか流出したか、もしくは闇ルートを経て静漓に渡った謎の同人誌『恋は筆先から♥静漓のトキメキアート講座!』であった。
 そう、静漓は、この同人誌の中から抜粋して行動しただけに過ぎない。
 筆が止まっていた『ゴッドペインター』をその気にさせてしまうほどのトキメキアート講座。受けたい! 受けたすぎる!
 しかし、静漓はあくまでこれは同人誌の力なのだろうな、と思っていた。
 いや、絶対絶対、静漓のミステリアスな魅力のおかげ――!!

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
(ナマモノは)それ以上いけない

革新性が欲しいって言ったよな?ならば人の革新を見せねば
拙者の相棒流体金属君を取り出して…これから貴様らに流体金属をぶち込むでござるがかまいませんな?
拙者のUCだからって拙者が合体せんでもええやんけ、他人にぶちこんでやるぜ!
それにただちに影響はないでござるよ多分
という訳で適当に一番近くにいた|ゴッドペインター《犠牲者》をキャプチャーして…流体金属君やっておしまい!

どうだ世界が明るくなっただろう?|理解《わか》ってきたな
知覚野が大幅に拡張されまさしく|革新的《イノベイド》でござるよ!もしかしたらキラキラが見えるかもしれんでござるな
他から見たら人間やめてる感あるけどな!



 流出する謎の同人誌。
 それはあるグリモア猟兵が夜なべして作った猟兵の数だけあるナマモノ同人誌であった。
「それ以上いけない」
 エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は頭を振った。
 いや本当にまずいでござるよ! と思っていたかも知れないし、いいぞもっとやれ、と思っていたかもしれない。
 きっと「それ以上いけない」というのも定型文であったかもしれないのだ。いや、そんなことはないでござる。本当にやめろって意味かも知れなかったが、まあ、この際どっちだってい。

 問題は、ハイパー・アート・フェスである。
「ううん、どうにも革新性が足りないんだよなぁ。前衛的であればあるほどいいとはいわないけどさぁ……」
『ゴッドペインター』たちは、強力な霊的防護を持つ永遠回廊を前にして、己たちの環境操作能力が太刀打ちできない現実にへこたれていた。
 これを塗りつぶすためには、完璧なグラフィティを生み出さなければならないのだ。
 けれど、その方法がわからない。
 暗中模索とも言う状況に彼らは陥っていたのだ。
 それを見かねたようにエドゥアルトは、『ゴッドペインター』の肩をぽむ、と叩く。

「今、革新性が欲しいって言ったよな?」
「え」
 言った。言ったけれど、エドゥアルトのただならぬ雰囲気にたじろいでしまうのは無理なからぬことであった。 
 実際ちょっと怖い。
「であれば、人の革新を見せねば」
 エドゥアルトはよろしい、と頷く。嫌な予感しかしない。
「拙者の相棒、かもん! 流体金属君!」
 オウガメタルと呼ばれる流体金属生命体が、ぼよんと跳ねる。
「そ、それは?」
「これから貴様らにぶち込む流体金属生命体でござるが、かまいませんな?」
「いや、かまうわ! どういうこと!?」
「つまり、拙者のユーベルコードだからって拙者が合体せんでもええやんけ、他人にぶちおこんでやるぜ! ということでござる!」
「いや、よくないよくいない! 絶対よくない感じがしてる!」
「ええい、問答無用でござる! それにただちに影響はないでござるよ多分!」
「今多分って言った! それ以前にただちにってことは後々影響出るかもってことでしょ!?」
「……流体金属君やっておしまい!」
「悪役のムーヴ!」
「もがぁ!?」
 エドゥアルトの問答無用なユーベルコードに『ゴッドペインター』がメタルな黒ひげになってしまう。

「どうだ、世界が明るくなっただろう?」
「これが世界……拙者たちは、ワカり会えタ……判り合ウことがデキた……可愛い女の子いいよね!」
 うわー!
「|理解《わか》ってきたな。これが知覚野が大幅に拡張されまさしく|革新的《イノベイド》でござるよ!」
 やばいやつじゃねーか!
 メタル黒ひげとなった『ゴッドペインター』の目もなんか極彩色にキラキラしていた。
「キラキラしている!」
「そうでござろうそうでござろう」
 うんうん、とエドゥアルトは頷く。
 それこそが革新性。それを永遠回廊にぶつければいいのだ。
 いや、いいのかもしれないが、そのなんていうか、メタルな体になっているのはいいのか。
 他所からみたら絶対人間やめてる感があるが。
「永遠回廊塗りつぶせればそれでヨシ!」
 ヨシ! か?
 本当に、大丈夫なんか?
 おい、答えろエドゥアルト――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
自分が持つアートといえば、やはり演奏。しかし……
クレイドル・ララバイ『不安かい奏者?でも大丈夫!パッション、つまり熱意こそが大事!奏者もできる筈サ!!』
熱意。……であれば形式にとらわれず、想いの丈をぶつけましょう……!
いきます!!
『よぉしゴッドペインターの皆さん!!ちょいと聴いてってくださいな!!!』

クレイドル・ララバイで【楽器演奏】『幻想太陽曲』
想い描くはこの戦争に命を賭して臨まんとする民間人達と猟兵達の|戦意《【闘争心】》
覚悟と苛烈さ、そして、彼らの|利他精神《【優しさ】》それへの感謝を陽光になぞらえ、
この演奏に込める!!

『伝えきれない想いは陽光が伝えてくれる!だから安心して奏で給え!!』



 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は思い悩んでいた。
 やってきていたのは、ハイパー・アート・フェスである。
 ここには悩める『ゴッドペインター』たちいがごまんといる。彼らの環境操作能力があれば、十二剣神を護る永遠回廊を塗りつぶすことで突破できる可能性があるのだ。
 だが、強固すぎる永遠回廊を前に『ゴッドペインター』たちは自信喪失していた。
 筆が止まっているのだ。
 彼らの筆を走らせるためには、己達猟兵が刺激となって彼らのインスピレーションやらモチベーションやらを励起させなければならないのだ。

 しかし、だ。
 小枝子ができる芸術活動というのは、やはり演奏しかなかったのだ。
 が。
『不安かい奏者? でも大丈夫! パッション、つまり熱意こそが大事! 技術の上手い下手っていうのは、些細な問題さ! むしろ、演奏技術なんてのは、パッションの前には小さじ程度にも役に立たないものなのさ! いや、小さじが役に立たないってことではないよ?
 一体何処の方面に配慮しているんだって物言いかもしれなけれど、まあそういうことさ。奏者が今抱えている不安なんていうのは、それくらいのものさ。だからさ! 奏者でもできる筈サ!!』
『クレイドル・ララバイ』の喧しい物言いに小枝子はげんなりしていた。
 確かに熱意が大事だということはわかる。
 けれど、なんていうか、そんなふうに言われて、はいがんばります、とはならんのである。

「……やらねばならないことであります。熱意が全てだというのなら、形式に囚われず、思いの丈をぶつけましょう……!」
『その意気さ、奏者! さあ、思いっきりやろう!』
「いきます!!」
『よぉし、ゴッドペインターの皆さん!! ちょいと聴いてってくださいな!!!』
「ちょ、やめるであります!」
 小枝子はあくまで自分の演奏を、と思っていたのだ。 
 耳目を集めたいわけではなかった。
 だが、『クレイドル・ララバイ』は構わず『ゴッドペインター』たちを呼びかけ、小枝子の周りに人だかりを作ってしまったのだ。
「ええい、自棄であります!! いくでありますよ! 世を照らせ、幻想太陽曲(サン・ファンタジア)!!」
 かき鳴らすは、ギターの弦。

 思い描くは、闘争心。
 全世界決戦体制は、世界の人々全てが決戦に挑む覚悟の現れ。
 生命をとしてでも誰かの明日を守りたいと願う者たちの歌を歌う。
 覚悟と苛烈さ。
 そして。
「優しさが!」
 歌う。
 歌う。それが尊いものだとわかっているから、小枝子は感謝する。
 その感謝の心は陽光。
 まばゆい輝きに照らされて、自分は今道を歩んでいる。間違えることなく、破壊することができる。
 いつだってそうだ。誰かの思いが道を照らしている。
 例え、己の中に破壊しあkないのだとしても。それでも感謝する。自分の破壊が、誰かのためになっていると思わせてくれる。
『伝えきれない想いは陽光が伝えてくれる! だから安心して奏で給え!!』
 その言葉も小枝子には届かなかった。

 歌う。歌う。
 高らかに照らされる陽光を見ろ。
「あれが、あれこそが! 皆様の思いなのです! だから!」
 塗りつぶせ。
 この世界を破壊せんとする者達の思惑を。
 小枝子は高らかに歌い上げ、『ゴッドペインター』たちの魂を震わせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

(『エイル』さんに耳栓すぽっと)
ふっ。ステラさんの音響攻撃にも耳栓は有効!

そして『2回も』って……ずっとやらかしてますよね?
なんでいままでのカウント、リセットしてるんですか!?

いえ、芸術はたしかにわたしの得意分野ですけど、
音楽と違ってアート系は音楽ほどは得意ではないんですよ。

それでもまぁ……風景画とか人物画ならいけるかなって思いますけどね!

あ、それじゃわたしも『エイル』さん、描いてみましょう。
さらさらさらっ、、、と。

うん。なかなかいい感じにできたと思います!
鉄板の質感とかよく描けてると思いませんか♪(褒められどやぁ)

ステラさんのはその……パッション溢れすぎてR18っぽく……。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁぁぁすっ!!
はい、メイド参上ぱーと2!
グランドロンロボでは欲望を重視し過ぎましたが
お任せくださいメイドたるもの2回もやらかしません
え、ほんとですってばぁ!

というわけで今回はルクス様の方が得意そうな場面が多いですが
アートが必要というのならば!
何でも出来るメイドにお任せください!
【ヴァレット・パープル】で変身っ
そう、ここで描くは『エイル様』一択!
ブルアカ時代のhshsできるエイル様がいいですね
絵心など微塵もありませんが、私の溢れるパッションを見るがいい!
あれ?絵にすら成ってないのナンデ!?
くっ、ルクス様が神様の様に崇められている!?
光の勇者強い!



 ずっぽしとルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、亜麻色の髪の女性『エイル』博士の耳に耳栓をはめ込んでいた。
 え、と『エイル』博士はびっくりした顔をしていた。
 だが、ルクスは頭を振った。
 いいから、と言うようであった。
 なんで? その疑問はすぐに氷解する。
「|『エイル』様《主人様》の香りがしまぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」
 簡単なことであった。
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びであった。
 鼓膜が破れるんじゃないかというくらいの叫び声がハイパー・アート・フェスに轟いていた。
『ゴッドペインター』たちは、その叫びに、ティキティィン! と何かひらめいたかもいれなかった。
 情熱。パッション。
 まさしくステラの叫びは、そういうものであった。

「はい、メイド参上ぱーと2! 前回は欲望を重視しすぎましたが、おまかせくださいメイドたるものニ回もやらかしません」
 いや、そもそもカウントがおかしい気がしないでもない。
「ずっとやらかしてますよね?」
 すぽっと『エイル』博士から耳栓を引っこ抜いて、ルクスはしれっとやらかしをリセットしているステラをジト目で見つめた。
「え、ほんとですってばぁ!」
「いえ、説得力ないでしょ」
「そんなことはありません! ですが、今回はルクス様の方が得意そうな場面が多いのではないでしょうか?」
「いえ、確かにわたしの領分かもですけど、音楽と違ってアート系は音楽ほど得意ではないんですよ」
「だがしかし、君たちならば彼らの心を震わせてくれるだろう?」
『エイル』博士は、『ゴッドペインター』達を示す。

「あれ?」
 すでに『ゴッドペインター』たちは、バリバリ創作意欲を刺激されているようだった。
 まさか、ステラの雄叫びで?
 まさか? え、本当に?
「……」
「そういうことでしたら、何でもできるメイドにお任せください!」
 ステラの瞳がユーベルコードに輝き、壁面にペンキで描き始めるのは人物がであった。
「ここに描くは英雄の肖像たる『エイル』様一択!」
「じゃあ、わたしも『エイル』さん描いてみましょう」
 さらさらっとステラのタッチとは裏腹にルクスは軽やかなタッチで壁面にブルーアルカディアにて邂逅した亜麻色の髪の少年を描いていく。
 あの冒険は楽しかったな、と思い起こされるようでもあった。

「絵心など微塵もなくとも、私の溢れるパッションを見るがいい!!」
 ステラは一筆入魂がすぎる勢いで壁面に筆を叩きつけていた。
「なんていうか、抽象画?」
『エイル』博士の言葉にステラは、え!? と驚愕する。
 なんか、思ってた反応と違う!
「逆にルクス君のはいいね」
「そうでしょう。鉄板の質感とかよく描けていると思いませんか♪」
「え、そっち?」
 ルクスが描いていたのは、青い鎧の巨人と亜麻色の髪の少年。
 ルクスがてれてれどやぁ、としていたのは、青い鎧の巨人のほうであった。
「くっ、光の勇者強い!」
「いえ、そのステラさんのパッションは、その……」
 なんていうか、レーティングがね、とルクスは思っていた。。それが抽象画としての現れなのかもしれなかったが、まだ人類には早い……――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

菫宮・理緒
【理ジェ】

アート!
これは久しぶりに捜索活動していいってことだね。
いつもは禁止されてるけど、依頼ならしかたないよね!

うふふふふふふ♪
いきますよやりますよぜんりょくいっちゃうよー!

……『希』ちゃん、なんで怯えてるの?
いくらなんでもそこまでひどくないよね!?

ま、まぁいいよ。
少しはいいもの作れるようになったところを見せちゃうんだから!

(べきぼりごりばき)
よしかんぺき!

サージェさん、これどうよ!
って、なんで後ずさるのかな!?

いやいやいや。風景画だからね!
ゴッドペインターさんたちも、『這い寄る混沌』とか『大いなる深淵』とか酷くない!?

ね、『希』ちゃん、前よりいいよね!
なんでアクセスエラーとかでるのー!?


サージェ・ライト
【理ジェ】
お呼びとあらば参じましょう
私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!

ええ、理緒さんが既にりおりおっておられる!!
ちょっと希さんアレ大丈夫ですか?
え?ほんとに?逃げない?

ともあれ依頼ならば仕方……ないのかなぁ?
理緒さんのセンスって独特なんですよね
まぁゴッドペインターさんたちにインスピレーションを与えるなら

そうなると私はどうしましょう?
どこにでもいる普通のクノイチ……存在感なんてなっしんぐ……
うん、目の前に全てを飲み込みそうなカオスが生まれていますが
アレに対抗できる術など私にはありませんっ!!
100歩譲って外見位で許してください
金髪エルフ耳オッドアイなクノイチです



 久方ぶりの創作活動に菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)は心躍る。
 何時もは禁止されている。
 なんで?
「うふふふふ♪ いきますよやりますよぜんりょくいっちゃうよー!」
 そんな理緒の様子にサポートAI『希』は怯えているようだった。
 しかし、そんな怯えとは裏腹にもう一人テンションが高い猟兵がいた。
 いや、いつも通りと言えばいつも通りなのだが。
「お呼びとあらばさんじましょう。私はクノイチ、胸が大きくて忍べてないとかそんなことないもんっ!」
 しゅた、とサージェ・ライト(バーチャルクノイチ・f24264)は理緒の元に降り立つ。
「ええ、既に理緒さんがりおりおっておられる!?」
 サージェは、なんていうかこういう場合、理緒が自分にツッコミを入れるのが様式美だと思っていた。
 だが、なんか今日の理緒は違った。
 りおりお状態なのである。
 有り体にいってテンションが高い状態というべきか。

「ちょっと『希』さんアレ大丈夫なんですか? え? ほんとに? 逃げない?」
「いくらなんでもその反応はちょーっと傷ついちゃうかなーって。いくらなんでもそんなに怯えられるほど酷くはないよね!?」
「そ、そうなんですか……? でも理緒さんのセンスって独特なんですよね」
 サージェは半眼であった。
 疑わしいというか、その独特なセンスがどこまで『ゴッドペインター』たちにインスピレーションを与えられるものなのかと目算しようとしてしきれないところがあったのだ。
「まあいいよ。少しはいいもの作れるようになったところを見せちゃうんだから!」
 理緒は意気揚々と刷毛やら筆やらを手に取る。
 にっこりと自信満々の笑顔であるところが余計に不安を煽る。

 べぎぼりごりばぎ。
 ずっと濁音が響いてるように聞こえるのは気の所為か?
 大凡、理緒が手にした筆や刷毛から聞こえていい音ではないことは確かであった。
「よし、かんぺき!」
 何が?
 え、何が完璧だったのか? 理緒の創作活動を見ていた『ゴッドペインター』たちは皆、一様にそう思った。
 何がどうなれば、そうなるのか、という出来栄えである。
「え、よくない?」
「こ、これはいったい……」
「ぜ、前衛的な、何か……?」
「極めて冒涜的な……?」
「いやいやいや。風景画だからね!?」
「いや、どう見ても這い寄る混沌」
「どっちかっていうと大いなる深淵……」
「酷くない!?」
 理緒は『ゴッドペインター』たちの総評に驚愕する。どう考えても、爽やかな草原と日差し、春の麗らかささえ感じさせる見事な風景画を描くことができたと思っていたのだ。
 だが、『ゴッドペインター』たちはふるふると青ざめて首をふるばかりであった。
 どう考えても混沌。 
 どう考えても深淵。
 見れば見るほどに引き寄せられるようになってしまうのは、それはそれで凄まじいものである。

「目の前に全てを飲み込みそうなカオス……アレに対抗できる術など私にはありませんっ!!」
 サージェは諦めていた。
 早かった。まだ諦めるのは早いですよ! だが、サージェは無理、ときっぱり頭を振っていた。
 無理なもんは無理、と言いたげであった。
「金髪エルフ耳オッドアイなクノイチには、これくらいが関の山です。あれは無理」
「酷くない!? ね、『希』ちゃん前よりいいよね!? ……ってあれ、なんでアクセスエラーなの!? え、え? おーい、『希』ちゃーん?」
 理緒は理緒でアクセスエラーを吐き出し続けるタブレットをタプタプし続ける。
 生み出された混沌は、確かに刺激になっただろう。
 だが、深淵を覗く時深淵もまたうんちゃらである。
『ゴッドペインター』たちは、その深淵に魅せられるように、否、その混沌を目指すようになんかこう、尋常じゃない勢いで筆を走らせ始めていた。
「うーん、これが狂気」
 サージェは怖いですねぇ、と一人納得しつつ、理緒が生み出してしまった混沌芸術をどうしたもんかなぁ、と首をひねるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月隠・新月
永遠回廊を塗り替えるほどの力は簡単には発揮できない、といったところでしょうか。
俺には人間の『芸術』というのものはさして理解できませんが、協力しましょう。

思うに、作品だけでなく見る側も大事なのではないでしょうか。同じ景色を見ても何を受け取るかはそれぞれ違うでしょう。
「閃きを得たいですか」等と問いかけて、【魔獣群起】でゴッドペインターの皆さんに獣の五感を与えれば、今までとは違う景色がみえるでしょう。物理的に。
何かを得られるかは皆さん次第ですが。

そういえばアートを披露するのが趣旨でしたね……まあ、魔獣群起を発動した空間そのものが俺のアートということでどうでしょう。インスタレーションとか言うでしょう。



『ゴッドペインター』の持つ環境操作能力は文字通り、世界を塗りつぶすものである。
 その凄まじさは言うまでもない。
 だが、十二剣神を護る永遠回廊は、この力すら退けるのだ。
 その圧倒的な霊的防護を前に『ゴッドペインター』たちは、へこたれていた。
 いや、インスピレーションが湧いてこない、というのが正しいだろう。
 誰も彼もが半ば諦めるような心持ちになっていた。
「永遠回廊を塗り替えるほどの力は簡単には発揮できない、といったところでしょうか」
 月隠・新月(獣の盟約・f41111)は、そんな彼らの姿を認めてどうしたものかと思う。
 彼には人間の言うところの『芸術』というものが理解できていなかった。
 だが、理解できていないからといって何もしなくていいのかというと、それはきっと違うのだということも理解していた。

 何か協力できないか。
 新月は自分にできることはないだろうかとハイパー・アート・フェスの会場を見て回る。
 壁面には様々なグラフィティが描かれている。
 鮮やかな色もあれば、力強い色もある。
 その色の違いはなんとなくだが、新月にも分かる。だが、このグラフィティを描いた者たちの意図までは汲み取れない。
 芸術とは、そこにあるだけで発信力を持つものだ。
 人ならざる身ではあるが、そうした何かを感じ取ることはできるのだ。
「思うに、これはそういうことなのでしょう」
『ゴッドペインター』たちに新月は歩寄追って問いかける。

「というと?」
「作品だけではなく、見る側も大事なのではないでしょうか? 同じ景色を見ても何を受け取るかはそれぞれ違うものでしょう」
「確かにそうだね。だから芸術っていうのは奥深くておもしろいものなんだけれど……でも、今の僕らには」
 それを描く閃きがないのだ。
 新月は頷く。
「であれば、閃きをえたいですか?」
「それは、そうだけど……」
 瞬間、『ゴッドペインター』たちの視界が切り替わる。
 いや、塗りつぶされた、というのが正しいだろう。そればかりではない。触覚、嗅覚、聴覚、汎ゆる五感が人のそれではなくなっていた。
「こ、これは……!?」
「俺の感覚を与えました。これで今までとは違う景色が見えるでしょう。物理的に」
「これが、君の見ている世界、ということか?」

『ゴッドペインター』たちは、己たちの嗅覚が鋭くなり、さらに鋭敏化した感覚が風を掴むのを感じただろう。
「皆さんがアートを披露するのとは違うかも知れませんが……このユーベルコード、魔獣群起(オルトロス・センシズ)が俺が見ている世界です。この景色そのものが俺のアート、ということになるでしょうか。もしくは、インスタレーションとか言うでしょうけれど」
 そう、獣の感覚を体感すること。
 その経験こそが得難いものであるし、アートであると新月は示してみせたのだ。
 新たな刺激は、新たなる感覚を呼び覚まし、感性を研ぎ澄ましていくものである。
「たしかに……これは面白いな。普段とは違うってことは、自分を強く意識することができるってことだ。なら!」
 そう、その差異こそが他者とは絶対に埋め得ぬもの。
 その埋め得ぬを知るからこそ、描くことができる。埋め得ぬ溝は、ただ溝ではない。溝を模様として捉えることができたのなら、それきっと新たなアートになるであろうから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

聖・華蓮
つまりは絵画…ですね?
歌や楽器でしたら兎も角、其方の方面は疎い私ですが…
なにかお力になれることが、あるかもしれません。

そう考え、ゴッドペインターの皆様のもとをお尋ねしますが…何やら、私への視線が強く。
魅力的…ですか?あ、ありがとうございます…。
(元々の【愛嬌】+無意識に発動されたUCの効果で彼らに魅了効果を齎した模様)

それで、私にできることは…
え、何もしなくても良い?寧ろ此処にいるだけで仕事してる?
いるだけで【慰め】になる?
そ、そういうものなのですか…?

何やら、皆様の創作意欲が高まっておられるような気が致します…
まだ、何もしておりませんのですが…?



 桃の花のような清浄なる甘い香りがハイパー・アート・フェスの会場の一角に満ちていた。
 それはなんというか使命感を駆り立てるものであったが、『ゴッドペインター』たちは自覚すらなかった。
 彼らは確かに十二剣神を護る永遠回廊を塗りつぶすために駆けつけている。
 だが、今胸のうちから湧き上がる使命感は、それとは別のもののように思えてならなかったのだ。
 その原因を理解できぬまま、けれど、甘い香りに誘われるように『ゴッドペインター』たちは、その源流とも言うべき存在を目指してふらふらとした足取りで進みゆく。

「あの、もし……」
 甘い香りの源にいたのは、聖・華蓮(傾界幻嬢・f32675)はかすかに身を揺らし、困ったような表情で集まってきた『ゴッドペインター』たちを見やる。
 彼女はこのハイパー・アート・フェスに何か力になれるかもしれないとやってきていた。
 とは言え、歌や楽器であれば心得があるのだが、絵画方面に関しては疎いというほかない。
 けれど、それでもなにかお手伝いができればと思ってやってきていたのだ。
 だが、先程からジッと自分を見られているばかりなのだ。
 尋ねても、いいからそのまま、と手で制されてしまう。
 一体全体何が起こっているのか、華蓮にはさっぱりわからないものであった。それは彼女のユーベルコード、甘魅桃香(カンミトウコウ)に起因するものであったが、彼女は自覚がなかったのだ。

「どうか君の名前を教えて欲しい」
 一人の『ゴッドペインター』が華蓮の前に膝を折って恭しく乞う。
 まるで美しき女神に対するような態度であった。
「え、あ、聖・華蓮と申します……」
「なんと見目麗しいだけではなく、その名もまたあなたに相応しいものであるとは……なんと魅力的な方なのだろうか!」
「魅力的……ですか? あ、ありがとうございます」
 そんなふうに情熱的にアプローチされては、華蓮も照れてしまうのだろう。
 だが、それ以上に周囲から華蓮には視線が刺さる。
 それほどまでに強烈な視線を受けてしまえば、華蓮もどうにも居心地が悪い。全身をくまなく『ゴッドペインター』たちの視線がねぶるようであったし、その視線の強さが身を震わせるものだった。

「あ、あの、それで、私にできることは……」
 たまらず華蓮は、そう告げる。
 けれど、帰ってきた言葉は以外なものだった。
「いや、君はここにいるだけでいい。いや、何もしなくていい。立っているだけで素晴らしいのだから! むしろ、何処にも行かないで欲しい! 君という美しさは、ただそこに存在しているだけで、僕らの心を癒やしてくれるのだ!」
「え、ええ……? でも」
「いいんだ! いや、ぜひ!」
「そうだよ! ずっとここにいて欲しい! 護ってあげるし、絶対に嫌なことはしないから! だから、ここにいて!!」
「そ、そうだ! モデルになってほしい! 君という美しい人を僕らは描きたいと思っていたんだ!」
 口々に『ゴッドペインター』たちは、華蓮を引き留めようとする。
 その視線は更に燃え上がるようであった。

 何やら、自分の存在が彼らの創作意欲に火をつけたらしい、ということ華蓮は漸く気がついた。
 だが、自分は何もしていないのだ。
「で、でしたら……その、もう少し、だけ。本当に立っているだけで、いいのですか?」
 その仕草はどこか蠱惑的。
 無自覚であれど、そのたおやかな仕草は、『ゴッドペインター』たちの意欲を駆り立て、この美しさを表現しなければと走らせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紅葉・紅葉
はっはっはっ!
お困りですか? 紅葉です!
何かお手伝いできることがありましたら何なりとお申し付けください!

(昨日と同様に芸術性の高いこの段ボールという飛び切りの閃きを提供いたします)
(ポーズや挙動、表情変化や中身の放出など、どんな無茶振りであろうとリクエストに合わせて行わせていただきます)
(また、物理的に燃えたり爆発もできるので、文字通り情熱を披露することもできます)
(いろいろなアレコレはおまかせします)

おまかせください!
はい、紅葉、空に浮きます!
超! エキサイティン!
!?(一瞬驚愕)ええ、できますとも!!(即快諾)



 困ったことがあればなんでも!
 それが紅葉・紅葉(歩く宅配便・f40976)という猟兵である。
『いつでもどこでも何をでも、お届けしましょう特急で!』
 それが彼のキャッチフレーズ。
 であるのならば、困っている『ゴッドペインター』にお届け物をしなければならない。
 つまり、創作意欲。
 もしくは、インスピレーション。
「はっはっはっ! なにかお困りごとですか? 紅葉です!」
 段ボールの駆体についた車輪を回して彼はハイパー・アート・フェスの会場にやってきていた。

『ゴッドペインター』たちは、強力な霊的防護を持つ永遠回廊を塗りつぶすために完璧なグラフィティを描かねばならない。
 だが、あまりに強力な永遠回廊は簡単には塗りつぶせない。
 その現実に打ちひしがれていたのだ。
 意気消沈している暗い雰囲気漂う『ゴッドペインター』たちを前にして紅葉は頷く。
「いや、ちょっと何も思い浮かばなくて……」
「なんと! それは大変ではありませんか! なるほど。私がお届けすべきは、インスピレーションというわけですね!」
「そういうのもお届け可能なの?」
「もっちろんです!」
 しゅば、と紅葉は段ボールの駆体を車輪で回転させる。
 それはまるで、カーテシーを決めるような所作であった。いや、段ボールなんだけど。

 だがしかし、その見事な所作は、段ボールの四角い駆体であるうとも、『ゴッドペインター』の本来豊かな感受性を大いに刺激するものであった。
 本当にただの段ボールなのだ。 
 だが、あまりに完璧な所作故に、『ゴッドペインター』たちは、紅葉が熟練の執事のように見てたのだ。
 無論、幻視である。
 錯覚である。
 だがしかし、みえてしまったもんは仕方ない。
「……ちょっとアンニュイな感じでいけるかな?」
「いけますとも!」
 いけるのか!? いや、どう考えても表情変わらな……いや、変わってる!

 にゅき、と段ボール描かれたロゴマークがアンニュイな感じになってる!
「すごい! え、じゃあ次は情熱的に!」
「できますとも!」
 燃え上がる段ボール。 
 燃えてる! 実際に燃えてる! 段ボールだからよく燃えてる! 本当jに大丈夫なのこれ!?
「どかんと爆発!!」
 文字通り爆発であった。
 芸術は情熱の爆発だと誰かが言った。文字通り、紅葉は己が段ボールの駆体を爆発させ、どんな無茶振りにも答えたのだ。
「はい、紅葉、空に浮きます!」
 本当に浮いたー!? どうなってんの!?
「超! エキサイティン!」
 燃えていた段ボールが新品に戻っている。 どうなってんの!?」
「ふふ、なんでもできますとも! 段ボールの可能性! とびっきりの閃きをご提供! 即日発想を発送いたしますとも! それが紅葉なのです!」
 もうなんでもありである。
 だが、そのなんでもありが『ゴッドペインター』たちの創作意欲を刺激したことは言うまでもない。
 そう、紅葉のキャッチフレーズに偽りなし!
『いつでもどこでも何をでも、お届けしましょう特急で』、なのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒋・飛燕
うーん、アート、アート…考えれば考えるほど、アートってなんだろうって堂々巡りしちゃうヨ
でも、アートは魂の叫びとか輝きとかって言うネ

なら、スレイヤーカードを取り出して、解除コードを詠唱ネ!

天が呼ぶ、地が呼ぶ、ご当地が呼ぶ!
悪を倒せとワタシを呼ぶ!
遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よネ!
武蔵坂駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』参上アルヨ!!

ワタシのアートは、滾る正義の炎の具現化!
アートは絵のように残すものもあるけど、歌のように形のないものもあるネ
ワタシのアートは炎!
一瞬の煌めきが皆の希望となって勇気になる…って言うと、自分でも恥ずかしくなってくるヨ!
勢いに任せて考えず…チョイヤー!



「うーん、アート、アート……」
 蒋・飛燕(武蔵境駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』・f43981)は、ハイパー・アート・フェスの会場で唸っていた。
 アートとはなんぞや。
 それは彼女にとっては大変難解なお題であった。
 どう考えても堂々巡りしてしまう。
 普段からアートと近しい環境にあったのならば、答えもでたのかも知れない。
 だが、彼女は日頃から武蔵境駅前商店街にある町中華『ジャン軒』にて忙しない毎日を送っている。

 頭の中は注文の羅列ばかりであるのだ。
 だから、アートというものを改めて考えると、どうにも考えが町中華の光景から飛び出していかないのだ。どうやっても日常に絡め取られてしまうのだ。
「うーん、わからないヨ。アートって結局何ネ?」
 わからない。 
 答えがでないまま、悶々としていると飛燕は、こういうまだるっこしいのが嫌いなのだと言わんばかりに、あーもー! と叫んだ。
 は、と叫んで気がついた。
「魂の叫びって、言うネ、アートって! なら!」
 飛燕は結局いつも通りでいいのだと思った。
 特別なことをするから特別になるんじゃあない。
 普通の延長線上にあるから特別であるし、なら、もとを辿れば普通たる日常こそが得難い特別なのだ。
 その特別なのを護るのが!

「天が呼ぶ、地が呼ぶ、ご当地が呼ぶ! 悪を倒せとワタシを呼ぶ!」
 なんだなんだ、と飛燕の叫びに『ゴッドペインター』たちが集まってくる。
「遠からんものは音に聞け、近くば寄って目にも見よネ!」 
 掲げたスレイヤーカードから叫ぶは解除コード。
 煌めく光と共に飛燕に身に纏う装束が変わっていく。
 真紅にはためく布地。
 煌めく瞳。
 そして何より、その鍛え上げらえれた体躯。そのしなやかさを示すように手足が振るわれる度に光が迸る。

「武蔵坂駅前商店街ご当地ヒーロー『緋天娘娘』参上アルヨ!!」
 拳を腰だめに構えた瞬間、炎の闘気が立ち上り、温められた空気が上昇し風を生み出す。
 翻る装束を正して構える飛燕は、まさしく滾る正義の炎の体現者であった。
「これがワタシのアートネ!」
 煌めく炎に『ゴッドペインター』たちは見上げるだろう。
 揺らめく炎は不定形。
 どんな形にもなるし、どこまでもも上がることができる。
 それはきっと、一瞬のきらめきだろうと皆の希望となり、勇気に変わる。
「……ちょっと恥ずかしくなってくるヨ!」
 恥じらいながらも飛燕は、ただ変身しただけでは物足りないだろうと思って演武を開始する。
 躍動する肉体。
 その美しくもキレある動きは、『ゴッドペインター』たちの創作意欲を駆り立てる。
 そう、炎に希望を見たものもいるだろう。
 または演武に心躍り勇気を得たもののだっているだろう。
 見るものによって意味が異なるのがアートだ。
 どれもが正しくて、どれもが間違っていない。
「チョイヤー!」
 飛燕は勢いに任せて何も考えていなかった。
 けれど、その懸命さがきっと諦めかけていた『ゴッドペインター』たちの創作意欲に火をつけることになるのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年05月07日


挿絵イラスト