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蓬莱島決戦〜複製妖狐と転生災厄〜

#シルバーレイン #月よりの使者 #決戦

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 女禍。
 宇宙空間を自在に移動する能力を持つ、大陸妖狐の長「金毛九尾」の尾の1つでありながら、地球に戻ってくる過程で浴びた万色の稲妻によってゴーストに変容し、蓬莱島にて銀誓館学園と大陸妖狐、月光の魔女・ルナエンプレスの連合軍に討たれた「九大災厄」の一柱。
 帝竜女禍。
 帝竜ヴァルギリオスが「再孵化」を行うことで誕生した、知性ある生命体全てを殺す光を放つ宝珠を抱く、群竜大陸から大地へ無限の水を落とす領域で討たれた帝竜の一体。
「銀誓館学園の記録に残されていた姿と我々が知る物とは差異がありますが……『同一の存在』だと断定して良いそうです」
 ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)は厳しい表情を浮かべながら小笠原諸島周辺を記した地図の上に線を走らせた。
「機密性が高い情報なので一般に市販されている地図には記載されていないのですが、小笠原諸島からさらに進んだ先に今回の戦場となる『蓬莱島』がございます。この地には|月帝姫《ルナエンプレス》の伝承と彼女らを守り支える使命を継承している『月光の魔女』の集落があります」
 帝竜「女禍」は今、かつてシルバーレインの地球に降り立った時と全く同じように蓬莱島への進軍を開始しているという。
「今回は再孵化前の物と区別をつけるのためにあえて帝竜の冠をつけて説明させていただきます。帝竜『女禍』が率いるオブリビオンは極めて数が多く、短期間での殲滅はまず不可能でしょう。そしてこのオブリビオンは見た目こそマヨネーズですが、その中身を直に浴びたり食わされたりした方の体は肥大化してしまいます」
 現在帝竜「女禍」軍はこのマヨネーズ軍団が大きく先行しており、帝竜「女禍」は蓬莱島に住まう月光の魔女達を醜い姿にしてから無惨に殺す腹積もりらしい。
「もちろん猟兵も例外ではなく……気になる方は後でこのオブリビオンと接敵した際の被害報告書を教えるので自分で確認してください」
 対する月光の魔女達はあの時と同じく避難は不可能だと早々に判断し、籠城作戦に打って出ている。だが貧狼のような絶対的な防御力をもっているわけではない彼女達の防備はどこか1つが崩れた瞬間に一気に瓦解してしまうことだろう。
「で、ここからがある意味本題です。かつて女禍が地球へ帰還した時、ある人物を伴っておりました。……それが妖狐七星将の1人である『巨門』さんです」
 今でこそ猟兵に対してもそこそこ協力的な態度を示している、気まぐれなお調子者のイメージが強い彼であるがその根っこは無邪気に殺戮と蹂躙を楽しむサイコキラーである。
 銀誓館学園による本気の|教育《オハナシ》によってかつて自分が行ってきた非道を「償いがたい罪」だったと認識したためにこの一面は一応鳴りを潜めているが、その前科があまりにとんでもない内容であるため警戒する銀誓館学園の卒業生は未だ大勢いる。
「前回大陸妖狐が駆け付けたのも狂った女禍を処分するためではなく巨門さんの身柄を早急に確保するためだったと記録されております。……そんな狂暴だった頃の巨門さんを模した複製体が帝竜『女禍』のそばに付き従っています」
 この緊急事態を受けて、他世界から戻ってきたばかりの妖狐七星将の面々も尾や部下を率いて蓬莱島へ向かっているという。———当然、オリジナルも。
「では、今回の作戦の概要についての説明に移らせていただきます。一つ目は上陸した地縛霊型ゴーストによる侵攻を食い止め、月光の魔女達が戦闘不能の状態になることを防ぐこと。二つ目は妖狐七星将『巨門』の複製体を討伐すること、前回は大陸妖狐陣営から生け捕りが厳命されていたそうですが今回は手加減なしで押し潰して構いません。そして三つ目……復活した帝竜『女禍』の討伐です。最初の接触から色んな経験を積んできた我々ですが、相手の動きから先手を取られることはほぼ確定していると認識しております。知性ある生命体全てを殺す光を浴びないよう、細心の注意をもって対応してください」


平岡祐樹
 お疲れ様です、平岡祐樹です。当方、蓬莱島も女禍も完全初見となりますご容赦ください。

 当シナリオはシルバーレインの「決戦シナリオ」です。

 今シナリオの第1章・第2章では大陸妖狐「妖狐七星将」とその尾の助力を受けることが出来ます。プレイング内で言及されていれば誰か1人は必ず助けに来てくれます。
 各々の力量や特性は彼らの名前のタグのついたシナリオで確認することが出来ます。お手隙でしたらご確認ください。

 また第3章で対峙する「帝竜『女禍』」は「必ず先制攻撃を行います」。
 そのため『敵のユーベルコードへの対処法を編みだして』防御し、反撃するかがプレイングの成否に大きく関わります。
 また第2章までの戦いで蓬莱島に住む月光の魔女達と何事も無く合流しており、彼女達の支援を受ける旨がプレイングに書かれていた場合、月光の魔女達による支援を受けることが出来ます。(その代わり大陸妖狐の面々は参戦しません)

 なお、彼らの力を借りずにオブリビオンと対峙しても構いません。呼ぶことに囚われず、自由にお考えくださいませ。
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第1章 集団戦 『カロリー二万倍マヨネーズワサビ味』

POW   :    マヨネーズ粘性装甲
【自在に蠢くワサビマヨネーズ】を纏わせた対象1体に「攻撃力強化」「装甲強化」「敵対者に【超高カロリーで身動きできない程の超肥満化】を誘発する効果」を付与する。
SPD   :    オールレンジワサビマヨネーズ乱舞
自身が装備する【マヨネーズ型浮遊砲台】から【超高カロリーワサビマヨネーズ】を放ち、レベルm半径内の敵全員にダメージと【止まらない超肥満化】の状態異常を与える。
WIZ   :    道連れ自爆マヨネーズ
自身が戦闘不能となる事で、【最も肥満化させた対象の体重を十倍加させ】敵1体に大ダメージを与える。【マヨネーズに対する愛と欲望と肥育願望】を語ると更にダメージ増。

イラスト:麻風

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

儀水・芽亜
妖狐七星将の方々にご助力いただけるとは心強い。
それでは、巨門様、ご一緒しませんか? 自分のことは自分で片をつけたい。そうではありません?

巨門様は『尾』でしっかり敵を追い払ってくださいね。私も、削りを入れます。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」で蝶霊跋扈。
黒揚羽は普段は火をつけないのですが、相手がカロリーの塊なら、着火したら燃えるでしょう? ついでに仮初めの自我も奪い取ってくれます。

ああ、この術を使うと若返ってしまって。巨門様には恥ずかしい限りです。あの頃はよく平気だったものですわ。

このまま共に制圧領域を広げて、マヨネーズの包囲を突破しましょう。
ところで……巨門様はマヨラーなんですか?



「妖狐七星将の方々にご助力いただけるとは心強い。それでは……」
 蓬莱島に降り立った儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)はゴーストと接敵する大陸妖狐達の中から目当ての人物を見つけると小走りで近づいた。
「巨門様、ご一緒しませんか?」
「あ?」
 巨門は怪訝な表情を浮かべながら振り返った。
「自分のことは自分で片をつけたい。そうではありません?」
「そりゃそうさ。でもいいのかい?」
「何がです」
「僕が『僕』を見つけたら……君達を巻き込まないように戦わないのはムリだよ」
 悪戯っぽくふざけて言いながらもその目に笑みはない。対する芽亜は鼻で笑った。
「あなたが言うところの七星将でない|雑魚《・・》の方々ならともかく、私達がそんな流れ弾を食らって倒れるような不覚を取るとでも?」
「ははは! それもそっか!」
 巨門は目を丸くすると大声で笑い出す。その声に反応するように、大陸妖狐の尖兵を肥えさせて転がしたゴースト達がにじり寄ってきた。
「巨門様は『尾』でしっかり敵を追い払ってくださいね。私も、削りを入れます」
「言われなくとも! 餓魔王ー? 防備薄いよどうなってんの〜?」
 呼ばれた餓魔王は最後に見た時よりも肥大化した体で声を発しつつ、粘液を飛ばしてゴーストの体を腐らせていた。元々巨体ではあったものの、やはりゴーストの毒にしっかりと蝕まれているらしい。
『漆黒の会堂に我は求めん。濁世に満つる、罪に染まりし汚れた生魄どもを喰らい尽くし、栄光なる清浄な世界へと導かんことを!』
 黒揚羽の群れが噴き出すように現れ、芽亜の体を覆い隠す。そして口からマヨネーズを吐き散らすゴーストに張り付いた。
 普段ならいくら炎の魔力が含まれていても黒揚羽がくっついたくらいで発火はしない。
 しかし相手はカロリーの塊。油分が多分に含まれた物体はその熱に反応した。
「着火したら燃えるでしょう? ついでに仮初めの自我も奪い取ってくれます」
 容器も石油で作られた存在に似せられていたのか、ゴーストの体はあっという間に炎に包まれてどんどん溶けていく。
 だが芽亜の視線はゴーストではなく黒揚羽を顕現させた代償として小さくなった体躯に合わせるように勝手に着替えさせられたゴシックロリータの服に向けられていた。
「ああ、この術を使うと若返ってしまって。巨門様には恥ずかしい限りです。あの頃はよく平気だったものですわ」
 赤らめさせる頬に手を当てて首を振る。その様を巨門は冷めた目で見ていたが、芽亜が気づくことは幸運にもなかった。
「このまま共に制圧領域を広げて、マヨネーズの包囲を突破しましょう。ところで……巨門様はマヨラーなんですか?」
「マヨ〜?」
 気を取り直した芽亜からの質問に反応しつつ、巨門は黄金の龍の気を迸らすことで遠方のゴーストの容器じみた体を爆散させた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラタマ・ミコト
其の様な妨害は無駄でございます。
荒魂鎮神命の歩みを妨げる事は叶わないのでございます。
……あらたまちゃんの邪魔は許されないのです!
これは全て全員にお返しなのです!!



「わぷっ!?」
 マヨネーズ型浮遊砲台から放たれたワサビが混ぜ込まれた液体を顔面に浴びた大陸妖狐の尖兵がひっくり返る。
 その辛さに悶絶する体のシルエットはどんどん膨らんでいき、自力では立つことの出来ない肉塊と化した。
 強引に力任せにどかそうとしても、その体に付着したマヨネーズが触れた物の体を肥大化させて新たな障害物に変えてしまう。
 ゴースト達は尖兵達を肉の壁とすることで自分達を倒せるだけの実力がある七星将や猟兵、銀誓館学園の面々との接触をなるべく避けようという腹づもりなのだろう。
「其の様な妨害は無駄でございます」
 しかしアラタマ・ミコト(極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935)は構わず尖兵の巨体を脚で押した。
「荒魂鎮神命の歩みを妨げる事は叶わないのでございます」
 体を左右に振るわせて何とか退こうとしていた尖兵の体にそれで勢いがつき、ようやく転がった。そして閉ざされていた道が開かれるとそこには大量のマヨネーズの容器が立ち並んでいた。
 その口から一斉に中身が放出され、アラタマの体を押し潰すように隠した。
 乳白色の洪水の中から青白い肌が、脂肪が増えるにつれてどんどん露出する面積を増していく。即身仏となったことで成長しなくなったはずの体は上にも横にも大きくなったが、こういう成長はお断りである。
 マヨネーズが尽き、中身は全てアラタマや大陸妖狐の体に吸収された。
「……あらたまちゃんの邪魔は許されないのです! これは全て全員にお返しなのです!!」
 しかし苦しそうに叫んだ瞬間、アラタマの体が元の体躯に戻る。そしてゴースト達の体が急激に膨張した。
 見た目は大きくなっても|中身《マヨネーズ》が補充されるわけではない。代わりの|脂《モノ》を押し込まれたゴースト達は浮力を失ってその場に落ちて、大陸妖狐達と同じように動けなくなった。
「あの、僕の、これは……」
 鼻を鳴らして仁王立ちするアラタマにまだ丸々としている大陸妖狐が恐る恐ると言った声音で問いかける。
「あらたまちゃんの邪魔をしたのをお返ししただけですから。妖狐殿は妖狐殿でお返しくださいませ」
 アラタマはきょとんとした表情を浮かべ、さも当然のように答えて大陸妖狐の淡い期待を粉砕した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ連携可

微力ながらお手伝いさせてください。
お茶をお求めでしたらば街中でも森の中だろうと戦場であろうとも赴きましょう。
もちろん多少は荒事の心得も持ち合わせております。あまり得意ではありませんが、出し惜しみはいたしません。

どの章、どの世界(アライアンス世界も可)で採用されても問題ありません。
ユーベルコード公開している物でしたらば自由にお使いください。
ただし、他の猟兵に迷惑をかける行為や、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はいたしません。



「月光の魔女の集落にも変わったお茶があるといいんですが」
 地図上に表記がないのは防衛の意味合いが強く、実際は本土との行き来が少しはあることを知っていてもなおディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)は淡い期待を抱きながら蓬莱島の地を踏む。
 普段は物静かな場所なのだろうが、マヨネーズが噴射される音や大陸妖狐の悲鳴によって辺りは非常に騒がしいことになっていた。
 たとえ自分が微力でもゴースト達の侵攻を少しでも止めるためにディルは瓶の蓋を開けた。
「こ、こんなところでお茶会をするなんて……正気ですか!?」
 誘われた大陸妖狐達は目を丸くしながらも大人しく席に着く。その前にディルはしっかりと蒸らした紅茶を注ぎ入れた。
「ええ、ここはまだ本当の最前線ではありませんから。迫り来る出番に備えて気を張るのも大事ですが……ちょっと固くなりすぎているように見えましたので」
 悪戯っぽく笑うディルに毒気を抜かれた様子で、大陸妖狐達も格好を崩して匂いと味を楽しみ出した。
 その最中、ディルは不意に優雅な空間の外に視線をやる。
『――失礼』
 防衛線を抜け出してきたマヨネーズを模ったゴーストが大陸妖狐達に気づかれる前に、何もないところから広がった巨大なテーブルクロスに覆い被さられる。
 その下で蠢いていたが脱出出来ないことを察したゴーストはその場で膨らみ出して爆散し、中身を無差別にばら撒こうとしたがそれすらもしっかりとテーブルクロスの中に受け止められてひとまとめに包まれていった。
 しかしすでにゴーストの魔の手にかかり、肥大化していた大陸妖狐の体が新しいマヨネーズをかけられていないのにさらに膨らんでいくのが見える。
 緑茶はカテキンによる脂肪燃焼促進、烏龍茶やプーアル茶はポリフェノールによる脂肪の吸収抑制でダイエットに効果的ではあるが、あくまで効果的に留まる。飲めば簡単にあっという間に痩せられる魔法の飲み物では残念ながらない。故にすでに毒牙にかかって戦闘不能に陥った若き大陸妖狐達を救うことは出来ない。
 だけれどもまだ猟兵の知らない世界にはそんな効能のある夢のようなお茶があるかもしれない……だからこそディルは世界を渡り、その地に住まう人々の話を聞いているのである。
「すいません、おかわりいいですか?」
「ええ、一緒にスコーンもいかがですか?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルベナ・ラウンドディー
成程あれが巨門さん、ですか
"本場の"黄龍拳への興味は尽きないが先ずは当初の目的を果たしますか
月光の魔女達は絶対的な防御力は無い、とグリモア猟兵は言った
なら先行猟兵とは別ルートで【偵察・索敵】の技能から合流を急ぐ
防備の崩壊を防ぐことが狙いです


突入ついでに敵戦線とっ散らかし、手負いを現地戦力が仕留めてくれればいい
ユーベルコード使用【元気・ぶん回し】の技能から生命力で螺旋状の衝撃波…
これを【結界術】と呼べるほどに周囲に展開、敵を弾くのでなく絡めとります
高速ミキサーにかけたマヨネーズは遠心分離しますからねえ

…さて、無事でしょうか
次はマヨネーズでなく巨大な竜が相手です
魔女たちの準備をお願いします



「成程あれが巨門さん、ですか」
 楽しげに笑いながらゴーストを気か風で挟み込んで圧縮しつつ、返り血ならぬ返りマヨを避ける巨門が扱う"本場の"黄龍拳への興味は尽きないが、先ずは当初の目的を果たすべく、ベルベナ・ラウンドディー(berbenah・|∂《ラウンドディー》・f07708)は先行する猟兵達とは別ルートで魔女達との合流を急ぐことにした。
 月光の魔女達は絶対的な防御力は無い、とグリモア猟兵は言っていた。
 猟兵や七星将が関与している戦線は完璧に押し返しているが、そこから少しずれれば反撃を食らって身動きが取れなくなった大陸妖狐の隣をドット絵めいた浮遊砲台が悠々と通り抜けている。
 そこから防備の崩壊が始まらないようにベルベナは自身の生命波動を籠めることで熱と光を放つ螺旋状の衝撃波を、結界術と誤認させる勢いで展開させた。
『今の私は危険ですよ』
 そう注意しながらも従って退避される前に大挙して押し寄せているゴースト達の元へ飛び込む。
 衝撃波は敵を弾くのでなく絡め取り、投げ飛ばさず豪快にぶん回す。
 穴から自由自在に蠢いていたワサビマヨネーズは油と卵液、そしてワサビのペーストに段々分かれていった。
「高速ミキサーにかけたマヨネーズは遠心分離しますからねえ」
 とはいえ触れただけでも大陸妖狐を太らせる代物。分離出来たからといってその性質も消滅したとは限らない。
 しかし体の中に詰まった原材料を元のように扱えなくなったことを確認したベルベナは自分の手でトドメを刺さずに後退し出した。
 ベルベナはあくまで防備の崩壊を防ぐことが狙い。崩れそうだったところをとっ散らかして、手負いになった敵を現地戦力が仕留めてくれればいい……その想いを組むように代わりに前に出た大陸妖狐が操る尾がゴーストの体を食い破った。
「……さて、無事でしょうか」
 ベルベナは最前線から一転して静かな坂道を駆け上がり、その先にあった魔女達が立てこもっている建物を覗き見る。
 壁はマヨネーズで汚れず、ガラス製の戸や窓が割り破られている気配もない。どうやら完全に突破してきた個体はいないらしい。
 とはいえ確信を得るためにぐるぐると建物の周りを巡っているとその様子を偶然見つけたのか、恐る恐るといった様子で魔女の1人が玄関に出てきた。
 ベルベナはそのまま鍵を開けようとする魔女を制しつつ、万が一に備えて二の矢三の矢になら得る存在を番えた。
「次はマヨネーズでなく巨大な竜が相手です。皆さんも準備をお願いします」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『妖狐七星将『巨門』』

POW   :    黄龍の風
レベルm半径内を【吹きすさぶ風】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【突風】で加速、もしくは【逆風】で減速できる。
SPD   :    黒腕伸撃
【伸縮する黒き手甲】で攻撃する。命中すると【敵の返り血】を纏い、レベル分間[伸縮する黒き手甲]の威力と切断力が上昇する。
WIZ   :    震脚大破壊
【震脚で起こした衝撃波】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。

イラスト:みずの瑚秋

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「あはは、哀れだねぇ? ずーっと鍛錬してきたのにほんの一瞬で肉だるまになるなんて」
 笑い声のした先へ巨門は潰しかけのゴーストを気を使って投じる。
 その勢いでマヨネーズが辺りに撒き散らされる中、声の主は吹きすさぶ風でそれらを全て海に落として無傷で退けた。
「あれ? 僕がいるね? そっか、キミが例の今の『僕』か! 銀誓館に牙を抜かれてすっかり弱くなったって噂の!」
 ゲラゲラと笑うかつての自分に、巨門の眉間に皺が寄る。
「何こいつ、我ながらすっごいムカつくんだけど」
「それ、常日頃私達が貴様に感じている物だからな」
 軽く釘を刺され、巨門はマスクの下で口を尖らせる。しかしここで逆ギレしてぶん殴りにいかないくらいには分別がつくようになった……目の前の過去とは違って。
「歳とって弱くなった僕も、肥えて醜くなった後輩も、いけ好かない同僚も、銀誓館も魔女もみんなみんなぜーんぶ僕が殺してあげるよ。ボストンティーパーティーならぬ蓬莱ブラッドパーティーの始まりだ!」
儀水・芽亜
あら、世界史にお詳しいんですね。それとも、自由独立闘争にご興味でも?
もっともそのブラッドパーティーと茶会事件には毛ほどの共通点もありませんが。

まるで赤手のような手甲ですね。そしてどうやら、私たちの力は似通っているらしい。
巨門様、私があれの懐に飛び込むためのご支援、お願い出来ますか?

複製体が振るう手甲を「受け流し」距離を詰め、「瞬間思考力」で攻撃を「見切り」、「早業」で「カウンター」の薄刃奇譚。裁断鋏を複製体の身体に突き刺し「傷口をえぐる」事で、負の感情を吸い上げ裁断鋏を強化します。
今ならそのご自慢の手甲も切り落とせますよ。試してみます?
例え妖狐七星将の複製体といえど、過去の残滓には負けません!



「あら、世界史にお詳しいんですね。それとも、自由独立闘争にご興味でも?」
 ゴスロリ姿の芽亜が話しかけたのは過去だけでなく、今の巨門に対してだったのかもしれない。どちらにしても、答えは返ってこなかった。
「もっともそのブラッドパーティーと茶会事件には毛ほどの共通点もありませんが」
 ならばと1人でさっさと話を畳み、過去の巨門を見遣る。
「まるで赤手のような手甲ですね。そしてどうやら、私たちの力は似通っているらしい」
「黄龍拳をやってるにしては何もないみたいだけど……猿真似程度は出来るってとこかな?」
 流派は違えど拳法を究めている同胞と芽亜の体を見比べ、口先だけだと判断した過去の巨門は鼻で笑う。
 なら実際にその身で味わってもらうのが早いかと芽亜は今の巨門へ呼びかけた。
「巨門様、私があれの懐に飛び込むためのご支援、お願い出来ますか?」
「あいあい」
 気乗りしてない声が返ってくる。
 おそらく周りから視線による圧をかけられていなければ悦び勇んで過去の自分に突貫し、他の人物が対峙するのを許したくなかったのだろう。ただ態度には出すが行動に移さなくなったのは進歩と言うべきだろうか。
「よそ見してて僕に勝てる気?」
 過去の巨門が伸ばした手甲の切先の軌道を芽亜は瞬間思考力で見切り、受け流して距離を取り直せば代わりに今の巨門が前へ出る。
 深い呼吸によって黄金の龍の気をほとばしらせた両者の手甲は激しい音を上げて交錯し合った。
 過去の自分がやりそうなことは今の自分が一番分かっていると言わんばかりに、四方八方に伸びようとする突起に先回りしていた棘や爪がぶつかり合って火花を散らす。
「あはは、血が吸えないから切れ味が増せないねぇ! どうだい衰えてるはずの未来の僕に全部読まれてるのは!」
 高笑いを上げる今の巨門に過去の巨門は歯軋りを上げる。その影に隠れて、巨門の服と同じくらい真っ黒なフリルがはためいた。
「例え妖狐七星将の複製体といえど、過去の残滓には負けません!」
 意識が別の方に行っている間に詰め直した芽亜の手に握られていた裁断鋏が突き出される。
 過去の巨門は自由な左手でその切先を一度は弾き、すぐに追撃を叩き込もうとする。しかし体半分を別の相手に使っている現状で満足に動き切れるわけがなく、素早く避けられた上にカウンター気味に裁断鋏の刃を差し込まれた。
 服に血を滲ませ始めた傷口を広げるために芽亜はそのまま手首を返しつつ微笑む。
「今ならそのご自慢の手甲も切り落とせますよ。試してみます?」
「つっ……調子乗らないでよね、無理な格好しやがってるおばさんが!」
「ほお……」
 冷え冷えとした声が芽亜の口から漏れ、息を呑んだ今の巨門の目には確かに芽亜の平常心を崩すには最適なワードだけどさあ!? というのがありありと浮かんだ。もし後ろを振り返っていたら、きっと過去も今も関係なくまとめて八つ裂きにしていたことだろう。
『どこから切りましょう? 小指から指を一本ずつ? 動脈を丁寧に? それともやっぱり、首かしら』
 苦痛や怨嗟など負の感情を血と一緒に吸い上げた刃を、まるでケバブの肉を削ぐように過去の巨門から抜いた芽亜は目標を一点に絞って次の攻撃を仕掛けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!
顔なじみの破軍さんと組んで戦うよ

へぇ~、結構な自信なんだね~
あたしみたいなか弱い妖狐じゃ、一発で吹っ飛ばされちゃうかな~
なーんて、怯えたふりをして、加虐心を煽っちゃおっか

無論、そのまま攻撃を食らう気もないから【オストアトル・ポーズ】で相手の黒腕をガード
完全防御していけば返り血を奪われる事もないし、そっちがじり貧で負けるのは確定だよね
あらら、さっきまでの自信はどこに行ったのかな?あたし一人を簡単に一蹴できないで、あんな大言吐いてたのぉ?

あ、正面以外の攻撃は当然危険だけど、今回は破軍さんと一緒だからね
他の角度はカバーしてもらえれば死角は無しって事
今はあたしを盾にしてくれていいよってね



「複製体とはいえ七星将の1人と首領の尾が出てきたら流石に総出になっちゃうよねぇ」
「いや、全員は出張ってない。伯爵が暴れたりした時に取り返しがつかないからな」
 サエ・キルフィバオム(突撃!社会の裏事情特派員・f01091)が破軍とそんな世間話をしていると過去の巨門は手甲を地面に叩きつけてから巨大化させ、まるで棒高跳びのようにして芽亜の執拗な攻撃から逃れてきた。
「ったく! 図星つかれたからってこんな滅多刺しにしなくたっていいじゃんねぇ! この手甲は僕の血が欲しいんじゃないんだよ!」
「……あんだけ刺されてたのに随分余裕そうだね? さすがは七星将ってとこ?」
「いや、多分負け惜しみだろう」
「あそこまでブチ切れるなんてユーモアがないよ! そう思わないかい破軍!」
 サエ達の前に着地した過去の巨門が賛同を求めるが、破軍は肩をすくめた。
「いや、ズタズタにされて然るべきだと思ったぞ私は」
「はー、いつまで経っても生真面目だね破軍は? でも僕の手甲の糧になるにはいいかもね?」
「へぇ~、結構な自信なんだね~。あたしみたいなか弱い妖狐じゃ、一発で吹っ飛ばされちゃうかな~」
 未だ余裕そうな過去の巨門を前にサエは怯えたふりをして加虐心を煽ってみる。すると過去の巨門は相好を崩した。
「言ってくれるじゃん、一発でやられる気なんて更々ないくせにさ?」
 そう言って放たれた攻撃に容赦はない。一撃で狩ってやろうという気概が感じられる切先を、サエの服に擬態していたUDCが受け止めた。
「ああ、やっぱりね!」
 過去の巨門はそのまま食らいつこうとするUDCの牙を弾き返すと背後からの追撃を警戒してか、常に動きながらサエの体を叩き出す。
「あらら、さっきまでの自信はどこに行ったのかな? あたし一人を簡単に一蹴できないで、あんな大言吐いてたのぉ?」
 サエは常に巨門を正面に捉えられるように体の向きを変えていく。完全防御していけば返り血を奪われる事もない。この状況が続けば過去の巨門がじり貧で負けるのは確定だ。
「うっさいなぁ、さっきからその場から動けてないくせに! 動く必要がないんじゃなくてその変な服が邪魔で満足に動けないんだろ! なら……」
 過去の巨門は再び地面に手甲を叩きつけてサエを飛び越え、振り返り切られる前に裏拳を叩き込もうとする。
「その服が止める前に叩けばいい」
 過去の巨門の推測は正しく、今正面以外から攻撃を受けることはサエにとって即死に等しい事態だ。
 だけど今は。
「今回は破軍さんと一緒だからね」
 間に割って入った破軍の腕がぶつかり、手甲の一撃を食い止める。そしてあちこちに伸びる突起が伸びて肌を傷つける前に破軍は特大の火柱を上げて過去の巨門を引かせた。
「他の角度はカバーしてもらえれば死角は無しって事♪ 破軍さん、今はあたしを盾にしてくれていいよっ」
「盾というよりは壁だな」
 破軍はサエの背中に自分の背中を合わせ、お互いの死角を塞ぐ。これでよほど素早く側面をつかれない限りは完封する構えが出来たと言えよう。
「破軍〜、狡い手を覚えちゃったね? 朱雀拳の華麗さが影も形もないよ?」
「勝手に言ってろ」
 その様に過去の巨門は文句を言うが、破軍は意に介さず一蹴した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラタマ・ミコト
荒魂鎮神命が命じるのでございます。
神器よ施されし封印を解きその力を示すべし!
荒魂鎮神命の無双をご覧に入れるのでございます。

……あらたまちゃんのらいふを削っているのです!
高れああいてむや素材をどろっぷするのです!!



「荒魂鎮神命が命じるのでございます。神器よ施されし封印を解きその力を示すべし!」
 苛つく過去の巨門の脇腹へ八咫鏡が激突する。
 体を強制的にくの字にされたことと血が流れ続けている傷口への追撃による痛みを堪えながら、殺意に満ちた視線を向ける。その結果、そしてほぼ同時に切り掛かっていたアラタマの天叢雲剣の切先を手甲で止めることが出来た。
「あらたまちゃんのらいふを削っているのです! その手甲みたいな高れああいてむや素材をどろっぷするのです!!」
「そんなん知ったことじゃないね!」
 四方八方から飛んでくる八尺瓊勾玉やダイカタナへ過去の巨門は手甲を長く伸ばしてしならせて、まるで鞭のように振り回してアラタマへの牽制もしつつ1つ残らず叩き落としていく。
 アラタマは近接攻撃では落ちないと察するや否や即座に天へ翳す。すると空に浮かんでいた雲が黒さを増していき、轟音と共に雷が過去の巨門めがけて落ちた。
「小細工やって……つまんないねぇ!!」
 過去の巨門が吠え、手甲を振り下ろす。風切り音を立てて落ちてきた金属の塊の直撃を剣を両手で持って受け止めたアラタマの足元で水飛沫が舞った。
 手に走る衝撃と圧にアラタマの表情が曇る。過去の巨門はそのまま天叢雲剣を押し切ろうと体重をかけるが、【神器解放】によって封印を解かれた刀身は鞭の一撃でへし折られたダイカタナと違ってその形を維持し続けた。
 過去の巨門は手甲を先から伸ばし、アラタマを背中から突き刺そうとする。だが突然間に割って入ってきた赤と金の影がそれを受け止めた。
「言ってることは相変わらずわけ分からないけど……助太刀に来てくれてる子を見殺しにするのは玄武拳士の名が廃るからね」
「感謝するのです。……せっかくですから間近で荒魂鎮神命の無双をご覧に入れるのでございます」
 フリスビーのように戻ってこようとしていた八咫鏡が再び落ちた雷によって粉砕され、細かく鋭利な複数の刃となって過去の巨門に降り注ぐ。
 それによってもたらされた痛みと、手甲を貧狼に捕まえられたことで生じた隙へアラタマは体を屈めながら突っ込み、剣を平行に薙ぎ払った。
 漆黒の装束がずれて露わになった肌に赤い線が入り、寸分入れずに赤い液体が迸る。
 決して浅くはない新たな傷が増えても、過去の巨門は息を荒げることはない。しかし細かいことを考えられないほど頭が沸騰していることは、その血走った目から容易に想像がついた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ベルベナ・ラウンドディー
黄龍拳は己と自然を合一させる(ジョブ説明
私はそんな喧嘩術の使い手で、その教えを請いに来たつもりですよ


【化術・影使い・功夫】
複製体が写す影の動きに化けて攻防のタイミングを一致させます
自然との合一とはこういう拳法だと踏んでましたが違いました?
互角に運びたいが練度の差は、敵の油断を引き出す差は認めます
そこが狙いですから

UCは相手の震脚に合わせて打ちます
衝撃も自然現象の1つですよ?敵の衝撃波に体を合わせ、跳躍力に変換して殴ります
震脚とは踏んだ力の流れを威力に変える技法ですよね
力の流れを利用して此方は衝撃波ではなく体術の力でブン殴ります

技法体法の勝ちは譲り、此方は心法で勝ちに行くのです



「全員吹っ飛べぇ!!」
 過去の巨門が勢いよく振り下ろした脚から生じた衝撃波によって海面が大きく波打つ。
 その直撃を避けるため猟兵達や大陸妖狐達は跳んで距離を取り、取り残された肥満児達は頭から被ってあまりの塩味にむせた。
 そんな中、逆に飛び込んでいく影が1つ。
「いいねぇ、その無鉄砲さ! 殺し甲斐があるってもんだ!」
「黄龍拳は己と自然を合一させる……私はそんな喧嘩術の使い手で、その教えを請いに来たつもりですよ」
 衝撃波で揺らぐ影の動きに自らを化かすことで影の正体———ベルベナは過去の巨門の攻防のタイミングを一致させる。
 まるで鏡合わせの相手と戦っているような錯覚を感じた過去の巨門は苛立ちの声を上げた。
「ずーっと真似っこしやがって!」
「自然との合一とはこういう拳法だと踏んでましたが違いました?」
「少なくとも目の前の相手と同じ動きをし続けるのは違うなぁ!!」
 ベルベナは涼しい顔をして右のハイキックを右のハイキックで受け止めるが……その脹脛には痺れが走っていた。
 動きを自ら合わせている以上、互角に勝負を運びたい。しかし長年培ってきた練度の差は、どうしようもない。
「ぐっ……」
 左の裏拳を左の裏拳で返したベルベナは思わず片膝をついて、顔を顰めさせた。
「ははっ、そんなヒョロいくせして僕の動きについていこうとするからそうなるんだよ!」
「そうですね……確かに無謀だったかもしれないです」
 素直に差を認めれば、過去の巨門は勝ち誇るかのように鼻を鳴らして大きく右脚を振り上げた。だが振り下ろすのは満身創痍のベルベナの頭頂部ではなく海面だった。
 どうせなら直接手は下さないで、海に飲まれて足掻いて死ぬ様を見たい———そんな欲こそがベルベナの狙いだった。
『せぇの!』
 水面を震わす衝撃に体を合わせて、ベルベナは高々と跳躍する。
「はぁー!?」
「衝撃も自然現象の1つですよ?」
 震脚とは踏んだ力の流れを威力に変える技法。その力の流れを利用したベルベナは衝撃波ではなく体術の力で、その顔面をブン殴った。
 引力に合わせて振り下ろされた拳に過去の巨門の足元がふらつき出す。これまで蓄積していた傷口の痛みが、今の一撃によって活性化したのである。
「技法体法の勝ちは譲りましょう。ですが此方は心法で勝ちに行くのです」
「ふざ、けんな……」
 朦朧とする意識で恨み節を吐いた過去の巨門は糸が切れた人形のように倒れ、海に沈んでいった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『帝竜女禍』

POW   :    抗体霊波光線
【宝珠から、知性ある生命体全てを殺す光】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD   :    金毛九尾の尾
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【抗体ゴースト】が出現し、指定の敵だけを【抗体兵器『惨殺剣』】と【抗体兵器『鏖殺剣』】で攻撃する。
WIZ   :    災厄の嵐
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:佐々木なの

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ありゃーただの気絶だね。息吹き返したらすぐに戻ってきそう」
「分かってるならそうなる前にどうにかしろ、貴様」
「はーいはい」
 急かされた今の巨門は軽く肩を回すと目から光を消して後を追う。そして口を真一文字に締めたまま豪快に手甲を振り翳して自らの過去を八つ裂きにしてみせた。
「はい、一丁あがりー。じゃあ僕の出番は終わりだねー」
 余韻に浸らずさっさと浮かび上がってきた巨門はびしょ濡れの体を洗うためにシャワーのある建物の奥に引っ込もうとし出す。
「おい、貴様!?」
 反射的に止めた破軍に巨門は眉を顰めながら言葉を並べる。
「だってー、女禍のやつはもう猟兵がボコりまくったことあるんでしょ? そんな弱い相手を僕達まで混ざって嬲るのってつまんないじゃん。だから僕はもうアーガーリ。それに、そういう破軍だってメタボになった子達がうっかり餌食にならないように避難させるのにつきっきりなるわけじゃん? 同行してないわけじゃん?」
 指差した先では廉貞と貧狼の支持を受けつつ、無事だった大陸妖狐達が自らの脂肪に潰されて動けなくなった犠牲者達の搬送に当たっていた。
「だから僕達はここで大人しくのんびり猟兵と、月光の魔女さん達が女禍の首をとってくるのを待ってりゃいいよ。それに……万が一突破されたとしても僕がそんなONOFFきかない奴だと思ってる?」
 破軍から反論が返ってこないのを確信すると、巨門は今度こそ建物の中に消えていった。
ベルベナ・ラウンドディー
黄龍拳の使い手は「動物を友とする」(ジョブ説明
成程、あの黄色の龍は先程の彼に似合う性格してます

槍を構え【結界術・ジャストガード・天候操作】
でかい凸レンズ状結界を生成、光を一点に集めて関係ないトコに落とします
太陽光を虫眼鏡で集めて紙燃やす遊びの応用ですよ
遊ぶなら巨門さん相手の方がよかった…もとい偵察専門の私があんなのとマトモに戦えるかバカ

…なので、撤退戦としてUC活用【護衛・時間稼ぎ・団体行動】
月光の魔女達は負傷妖狐の撤退補助で七将さん達の戦線復帰に協力願います
どなたかまともな戦力連れて来て下さい
結界である程度の光攻撃は防げますし
なんなら複数レンズを使って光の焦点をアイツに向けて時間稼ぎますから


サエ・キルフィバオム
アドリブ歓迎!

そういえば、この竜は元々妖狐の尾だったんだよね
なら、ま、暴れる力に手綱を付けるのも妖狐の仕事なのかなって♪

とんでもないパワーで先制されて暴れられるけど……、その莫大な力をあたしが少し頂いちゃおうかな
【チューブドワイヤー】でその体力を少しずつ頂いちゃおうか
なにせこのワイヤーで繋がってる間はあたしだけを殺すことはできないから、どれだけ暴れようと知性体を殺す力を振るおうと、無意味だね
その隙に月光の魔女さん達に攻撃してもらって、少しでも多くダメージを与えてもらおうか
それで適度に力を吸い上げたら、そこで切り上げかなー



「汝に力あらば、そのおぞましき肉や意思を捨て、オブリビオンとなることもできよう。下らぬ児戯を辞め、潔く死を受け入れよ!」
 黄龍拳の使い手は「動物を友として修行をする」という。
 成程、あの女禍という黄色い竜は過去の巨門に似合う性格をしている、とベルベナは思った。
「どうせ遊ぶなら巨門さん相手の方がよかった……もとい偵察専門の私があんなのとマトモに戦えるかバカー!!」
 挨拶がわりに飛んできた知性ある生命体全てを殺す光を、ベルベナは構えた槍からレンズ状に展開した結界の屈折で海に受け流す。太陽光を虫眼鏡で集めて紙燃やす遊びの応用である、その先に魚や深海在住一般人がいようと知ったことではない。
「どなたかまともな戦力連れて来て下さい!」
 悲痛な叫びに応えるようにベルベナが呼んできた月光の魔女達が肥満体と化した大陸妖狐の搬送に加える。
 避難が早く終われば現時点で指示に大忙しな廉貞や貧狼、破軍がこちらに加勢してくれるかもしれない。そんな一縷の望みにかけてベルベナが新たな結界を生成する中、その下をサエは掻い潜って駆けていった。
「そういえば、この竜は元々妖狐の尾だったんだよね……」
 サエは初見の面持ちで女禍を見遣る。
 ……そう。ここにいる者はあの時群竜大陸で、女禍と対峙|していない《・・・・・》面々だった。
「なら、ま、暴れる力に手綱を付けるのも妖狐の仕事なのかなって♪」
 気楽に呟きながら近づいてくるサエすらも宝珠の光で消滅させられない状況に女禍は一計を案ずる。
 結界は透明でこちらからは見えず、|竜人《ベルベナ》の思い通りに動かせる。そして宝珠の光ではその結界を壊さず、逸らされる。
 ならまずはその結界を壊してしまえばいい。そして結界は常に固定されているわけではない。そうでなければ竜人が槍1つだけで的確に防御など出来ないから。
 だからといっていきなり自分自身が突進を仕掛けるのは違う。あれが実は囮で、近づいたところで隠されていた本命を出されて嵌められば群竜大陸の二の舞になると。
 まずは様子を見るべき、そう断じた女禍が体をくねらせれば空に暗雲が立ち込めて、あっという間に嵐が巻き起こる。
 雷鳴が鳴り響き、強い風が服ごと人を押し退け、大きな津波は波打ち際にのしかかり、女禍への接近を阻む。
 とんでもないパワーで結界同士がぶつかり合い、ヒビが入る。雨音の中でも聞こえる衝突音で期待通りにいっていることを確信した女禍はベルベナの修復が行われる前に撃ち込もうと再び宝珠を前に出す。
「その莫大な力をあたしが少し頂いちゃおうかな」
 しかし宝珠に巻き付いている神経めいた触手に微かな光を発する糸が巻き付いた。
『奪うも上げるも自由自在ってね♪』
 糸の通ずる先にいたサエを捉えた女禍はすぐに宝珠の光を発する。
 崩壊した結界は守り切ることが出来ず、サエの体は糸よりもはるかに太い光に飲み込まれる。
 しかしその姿が塵となって消し飛ぶことはなかった。
「無駄無駄ぁ♪ なにせこのワイヤーで繋がってる間はあたしだけを殺すことはできないから♪」
 どれだけ暴れようと知性体を殺す力を振るおうと、女禍と運命共同体となっている今は無意味。
 その副産物として好感度を上げるか体力を奪うか選べるが……もちろん選択するのは後者である。
「何故、抗う。生命よ。偉大なるヴァルギリオスの「再孵化」によりて、我は全てを理解せり。我らオブリビオンこそが、この世界の真なる主。過去と死は、既に確定したものであるが故に、絶対の概念である。未来や生命のように、世界をおぞましき不確定要素で汚す事など無い」
「どこがおぞましいんだか、だからこそ面白いんじゃん?」
 せせら笑うサエを助けるべく、加勢してきた月光の魔女達による月光の刃が辺りに飛び交う。
 猟兵に覚醒しておらず、時間も日中。さらに黒雲に空が覆われている状況でその切れ味は微々たる物。それでも女禍の集中力を削るには十分だった。
「ここで切り上げかなー」
 適度に力を吸い上げたところでサエは糸の接続を絶って回収する。あの糸こそが不死身の要因だと、経験則から知っていた女禍は即座に宝珠の光を発する。
 しかしサエに気を取られている間に再構築がなされたレンズ状の結界は光を受け止めると屈折させて、反射させて、撃った女禍自身に降り注がせた。
 くぐもった悲鳴が轟く。しかし光の柱の中心にある姿が消えることはない。
「知性ある生命体全てを殺す光と聞いていたのですが、死なないということは知性がないんですかね。というか大陸妖狐さんの避難はまだかかるんですか!?」
「は、はい! 太りすぎてて避難所の中に入らなくて……!」
 物理的な理由に、叫びたくなる衝動をグッと堪える代わりにベルベナは頭をかかえる。一方で生きているようで死んでいるオブリビオンたる女禍は収縮していく光の柱から殺意に満ち満ちた視線を蓬莱島全体に向けていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

儀水・芽亜
白面九尾の九大災厄を、「弱い」とはよくも言ったものです。
まあ、あちら側の話はあちら側に任せましょう。今は帝竜女禍を討滅するのが優先。
『帝竜戦役』の頃はまだ世界が繋がっていませんでしたから、実質初顔合わせですね。相手に不足はありません。参ります、帝竜女禍!

生命を嫌悪するその在り方は、抗体ゴーストそのもの。放置するわけにはいきません。
「全力魔法」「歌唱」「楽器演奏」「歌魔法」「音響攻撃」で幻朧舞踏鎮護曲。
幻朧蝶の群で抗体ゴーストの群を制圧し、帝竜女禍も巻き込んでその身体を崩れさせてやりましょう。
滅ぶのはあなたの方ですよ、帝竜女禍。このまま骸の海へ送り返します。

これで、大陸妖狐に貸し一つ。



「白面九尾の九大災厄を、『弱い」とはよくも言ったものです」
 芽亜は巨門の消えていった建物とぐぬぬとなっている破軍の背中を見ながら肩を竦める。
 よくよく考えてみると蓬莱島の戦いで対峙した女禍は銀誓館の学生100人以上が束をなして突撃してようやく討ち取れた存在。対して帝竜の冠がついた女禍は少人数の|猟兵《せいえい》に何度もボコボコにされたと聞く。
 そんな武勇伝を話半分に聞いていたら、再孵化やら何やらで復活したがめちゃくちゃ弱体化したのだと受け取られても仕方なくはないであろう。
「まあ、あちら側の話はあちら側に任せましょう。今は帝竜女禍を討滅するのが優先」
 たとえ弱体化してようと、嵐を生み出す力や生きとし生ける物全てを消失させる光は健在。甘く見て手を抜けば大火傷するのは確実だ。ならば本人の意向通り手を出されない方がいい。
「生命を嫌悪するその在り方は、抗体ゴーストそのもの。放置するわけにはいきません。『帝竜戦役』の頃はまだ世界が繋がっていませんでしたから、実質初顔合わせですね。相手に不足はありません。参ります、『帝竜』女禍!」
 竪琴を小脇に抱えながら海上に向かおうとすれば、海岸線にいくつも靄がかかり始める。
 そしてそこから、二足歩行の抗体ゴーストが何十体もゆらりと出てきた。
 その手に握られているのは見覚えのある抗体兵器———惨殺剣と鏖殺剣だった。
「なるほど、あのマヨネーズ部隊で打ち止めだとは誰も言ってませんでしたね」
 突如出現した敵軍を前にしても芽亜は落ち着き払って竪琴の弦に指を添えた。
『〽もういいの あなたは十分頑張った それは誰にも 否定させない だから心安らかに 逝きましょう』
 そして高らかに歌えば鴇色の炎の翅を生やした幻朧蝶の群れがどこからともなく現れて、抗体ゴーストの軍勢へ飛んでいった。
 抗体ゴースト達はまるで鱗粉のように舞う火の粉に身を焦がされながらも、二刀を持って蝶を蹴散らそうとする。しかしその風圧によって飛ばされているかのようにひらりひらりと蝶は避ける。
 そしてそうやって時間を無駄に費やしているうちに視界を覆い隠さんばかりの蝶の群れが新たに加わって、抗体ゴースト達の姿を完全に飲み込んだ。
 鴇色の塊の中から聞こえていた声にならない声がどんどん小さくなっていく。そして蝶の群れが全て海上に到達する頃には、波打ち際に陣取っていた抗体ゴースト達の痕跡が影も形も残っていなかった。
「これで、大陸妖狐に貸し一つ」
 蝶達は降り頻る嵐の中を突っ切り、まるで夜の街灯に群れる虫のように光の柱の中から出てきた女禍へ向かっていく。
「滅ぶのはあなたの方ですよ、帝竜女禍」
 女禍の体に鴇色の炎がまとわりつき出す。時折噴き出した光に一部が吹き飛ばされるが、その損害を埋める勢いで蝶達は集まっていき、女禍の体を焼き焦がしていく。
 このまま骸の海へ送り返してしまえ、と想いを込めて芽亜はまた弦を鳴らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディル・ウェッジウイッター
アドリブ連携可

微力ながらお手伝いさせてください。
お茶をお求めでしたらば街中でも森の中だろうと戦場であろうとも赴きましょう。
あまり得意ではありませんが、多少は荒事の心得も持ち合わせております。出し惜しみはいたしません。

どの章、どの世界(アライアンス世界も可)で採用されても問題ありません。
ユーベルコードは公開している物でしたらば自由にお使いください。

他の猟兵に迷惑をかける行為や、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はいたしません。



「愚かな愚かな愚かな! なぜ抗う、なぜ生に固執する!」
 奥歯を歯軋りさせ女禍は蝶の群れを真っ向から突っ切って蓬莱島の沿岸部にまで迫る。
 そこでは大陸妖狐達を見送り、後片付けをしていたディルの姿があった。
「おや、新しいお客様ですね。一杯いただかれますか?」
 銀誓館学園の卒業生であるディルが、相手が何者か知らないわけがない。本当に客だと思って声をかけた訳ではないだろうが、ディルは和やかに応対した。だが女禍はすげなく無視して、炭酸ではなく沸騰によって泡立つ水の塊を作り出して放射した。
「紅茶を煮出す水は熱すぎても冷たすぎても駄目なんですよ」
 しかしそれがディルの頭上で弾けることはなく、そのまま蒸発して消え失せた。
 だがそれによって生じた湯気が周囲の視界を塞ぐ。その目くらましに乗じて女禍はディルを轢き潰そうと駆けた。
 だが時間が経つにつれて加速していくはずの巨体は逆にどんどん鈍くなっていった。
「それにしても残念です。オブリビオンになって時間に余裕が出来ている物だと思ったのですが」
 皮肉めいた言い回しが出るとほぼ同時に女禍の動きは止まる。そこでようやく女禍はディルに対して口を開いた。
「確かにオブリビオンは有限ではない、永遠の時間を得ている。だが、それ故に汝のような時間に固執する者の食物など味わう気はない」
「ゆっくり待つ時間というのも紅茶の楽しみなんですよ? ……それと、私が断る最大の理由はそこです」
 ディルの言葉に女禍は怪訝な表情を浮かべた。
「今は亡き過去のお茶、冥界のお茶、確かに気になります。それにあなたの言う『無限の時間このがあればシルバーレイン……いや、グリモアベースに繋がる全ての世界のお茶を飲むことが出来るでしょう。しかし今あなたは言いました。『時間に固執する者の食物など味わう気はない』と」
 オブリビオンは「過去」のために生き、「今」を憎む存在。ならばオブリビオンになってしまったら「今」あるお茶を真っ新な気持ちで味わうことは不可能だろう。
「無限の時間を得た代わりに無限の時間を使ってやりたいことが嫌いになったら本末転倒ですから。だから、お断りさせていただきます」
 出来上がった紅茶をカップに注ぎ、長台詞で渇いた喉に流し込む。
 澄ました顔で明後日の方向を見れば、女禍を追いかけてきた|猟兵《なかま》の姿が近づいてきていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

クレア・フォースフェンサー
過去と死は既に確定したものであるが故に絶対の概念である――か。
なるほど、5年前と全く同じことを言うのじゃな。

ならば尋ねよう。
かつて群竜大陸において二十を超えて現れその全てに敗北したおぬしが、あれより5年を経たわしらに如何にして勝つのかを。
もしわしらに勝てると言うのならば、それはおぬしが変化した証し。
おぬし自身がおぬしの言葉を否定することになるじゃろう。

宝珠の光は、その発現のタイミングを見切って光そのものを剣で斬り裂き、余波は力場で防ごう。
完全戦闘形態へと移行し、全身の機能を強化。敵との間合いを詰めながら、最大長の剣で宝珠を攻撃。
光による攻撃を封じつつ、その身を斬り払おう。



「過去と死は既に確定したものであるが故に絶対の概念である――か。なるほど、5年前と全く同じことを言うのじゃな」
 クレア・フォースフェンサー(認識番号・f09175)はそう言って嗤う。
 女禍の記憶にはよく似た別人の姿が残っていた。しかしクレアは自分が聞いたかのように振る舞い、告げた。
「ならば尋ねよう。かつて群竜大陸において二十を超えて現れその全てに敗北したおぬしが、あれより5年を経たわしらに如何にして勝つのかを」
 存在が確定し、今ある状態が絶対の概念となった女禍が群竜大陸から蓬莱島に戦いの場を移し、変わった点は2つある。
 しかし援護する抗体ゴーストと巨門の複製体はすでに亡く、故郷という地の利を主張してもここはかつて銀誓館学園の連合軍に討たれた地。あまりに主張としては弱すぎる。
 にも関わらず本気で勝てると思っているなら。
「もしわしらに勝てると言うのならば、それはおぬしが『変化』した証し。おぬし自身がおぬしの言葉を否定することになるじゃろう」
「否、否! あの時は我に運が無かったのみ! ここでそれを証明する!」
 丁半博打やコイントスのようには済まされない認識を覆い隠さんとばかりに、女禍の宝珠が再び煌めく。
 知性ある生命体全てを殺す光が発現のタイミングを見切ってクレアはオーンブルから授けられた剣を抜き、甲冑や玉鋼、霊魂や概念すらも両断する技を持って割いた。
 |力場《フォースフィールド》で曲げ切れなかった割れた光の片割れが島を掠る。線上にあった木々は音も塵も残さず消失した。
「……これは、お主の言葉を借りるなら『運が良かった』のかのう」
 逸らし切れなかったことへの驚愕と悔恨の念を感じつつも、クレアは大陸妖狐や月光の魔女達がいる場所に流れ弾がいかなかったことにまずは安堵する。
 そして少し俯いて息を吐くと完全戦闘形態へと移行した。
「次は捉える」
 再び宝珠から光が放たれる。
 全身の機能を強化させたクレアは金色の瞳を瞬かせると剣が急激に伸び、光は発生源により近い位置で割れた。
 強さを増した力場によって光が湾曲して消えていく中、第一波よりも広がった空白地帯へクレアは無言で突入し、横薙ぎに剣を振るう。
 その切先は宝珠に届き、表面に傷を与えるどころか真っ二つに両断した。
 女禍は反射的に血管じみた指から伸びる爪で宝珠を押さえようと動く。しかし粘土のようにくっつき直すことはなく、ズレて落ちた。
 ここで宝珠を諦めて新たな抗体ゴーストを呼び寄せるか、強大な自然現象を起こすかしていれば、まだ勝機は微かに繋がっただろう。しかしその判断を女禍は「また」誤った。
 その間にクレアは 足掻かれようのない間合いにまで詰め寄っていた。
 見届けていた月光の魔女がつい瞬きした合間に鱗と鱗の間にある軟い可動域を見切られ、的確に断たれた体はバラバラになって宙を舞う。
「同じ愚は起こさぬよ。わしはまだ反省と改善が出来るからの、おぬしと違って」
 刃をしまったクレアがそう呟く前を口を開けた形で固まった女禍の生首が過ぎて、水飛沫を上げた。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年09月06日


挿絵イラスト