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お惚け|狂戦士《バーサーカー》|777《スリーセブン》

#サイキックハーツ #プレイング受付中 #単独参加OK!

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●お馬鹿さんは誰だ☆
「予兆が発生したのかな? 場所は皆さんご存知の『サイキックハーツ』だよ。でも、今回の敵はどうやら相当狡猾みたいだね。それに……僕自身の『予知』もあやふやで何とか現場は押さえたけれども敵の親玉はその姿は愚か……痕跡すら無い状態なんだよね」

 場所はグリモアベース。これにはグリモア猟兵のパズクルス・ヴィリーヴ(初心忘るべからず……な放蕩者・f45022)も頭を抱えた。正にお馬鹿さんはだ~れだ♪ とでも言いたげに敵のボスはその姿を煙に巻いたのだ。

 しかし、コイツは一体何がしたいんだ? その気配を辿ればきっと答えは見えて来る筈だし、超人類のエスパーとは言え関係の無い一般市民をこの奇妙な事件に巻き込む訳にはいかない。その為、『グリモアベース』にて|猟兵《イェーガー》達を緊急招集した。

 問題なのは『サイキックハーツ』の過去に存在した――『バベルの鎖』。

 ダークネスや|灼滅者《スレイヤー》の情報伝達を阻害する『バベルの鎖』がかつてあった時代にはダークネスが残虐な事件を大規模に引き起こしても、人類に黒幕が誰なのか? 気付かれる事はなかった。
 だが、現在。『バベルの鎖』は存在せずに一般市民にダークネスや|灼滅者《スレイヤー》の所在は正しく認識される。オブリビオンに蘇ったダークネス。云わば今回のボスはこの事を重々承知して、巧妙にその姿形を隠し潜伏している筈だ。

 ……唯、その狙いはやはり謎だ。

 だが、地元の住民からも一応それなりに不安の声が広がっている。

 『大した事ないボス気取りを退治して欲しい』
 『放置プレイもありだけど……事態が悪化する前に不安の種は根絶するに越した事は無い』

 困った人達を助けるのが|猟兵《イェーガー》の(?)仕事だ。
 それにもしかしたら今回の敵はかなりヤバい奴なのかもしれない。その懸念が拭えない以上、この事件に関与する必要はある。そして、そいつがどんな野郎なのか調べるのも仕事の内。

 情報は全くない訳ではない。そいつは自称『勇者』を語る|狂戦士《バーサーカー》。

 その名も『|777《スリーセブン》』!

 その名の通り。全て運任せで、ある種のアンブレイカブルなクレイジー野郎だ♪
 ギャンブル依存症のパズクルスにも少し分かる。コイツはどこかお惚けな|賭博師《ギャンブラー》……!
 まあ、兎も角。そいつが何か良からぬ事を企んでいて、こっちに喧嘩を吹っ掛けて来るのだったら仕方がない。
 売られた喧嘩は買うだけだ。

 すべき事はまず、情報取集。主に武蔵坂学園を中心に『勉強会』をして『|777《スリーセブン》』の弱点や特徴を勉強しよう。もちろんオブリビオンが潜伏している街へ行って『|777《スリーセブン》』が密かに進めている作戦に繋がる『最近の変な噂話』を聞き込み調査するのも忘れずに。

 大体敵の正体が掴めて来たらお次はダークネス。『|777《スリーセブン》』の居場所を突き止めて乗り込みましょう! だが、そこには『跋扈する眷属』なる障害が待ち受けています。
 恐らく『|777《スリーセブン》』により眷属に変えられた動物・無機物・エスパー等がボスの思うがままに動かされています。事件の元凶。その歯車を止める為にも、これを解決に導こう!

 最後はボス戦。何かを企んでいたダークネス。自称『勇者』を語る|狂戦士《バーサーカー》。
 やっとこさ『|777《スリーセブン》』との対決だ。
 |猟兵《イェーガー》達との戦いの舞台を整える為に挑戦状を叩き付けた奴に現実を見せてフルボッコにしてやろう。

 ――お馬鹿さんは……お前だ☆


ふーもん
 皆様、お久しぶりです。ふーもんと申します。今回の世界はサイキックハーツの出来事をちょっと捻ってコメディーチックにしてみました。勇者を名乗る謎の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』を撃破するのが主な目的です。

●第一章『勉強会をしよう』(日常)
 敵であるダークネス(オブリビオン)の情報収集が主な目的です。武蔵坂学園にて勉強に励んで敵の特徴や弱点を学び、戦闘前の作戦を練りましょう。
 また、この時現地で一般人に聞き込み調査してその敵――|777《スリーセブン》なるダークネス(オブリビオン)が秘密裏に企む作戦。それに繋がる『最近の変な噂話』を聞いて下さい。

●第二章『跋扈する眷属』(冒険)
 敵の正体に近付いたらダークネス(オブリビオン)の潜伏場所を目指しましょう。途中、ボスの思うまま眷属に変えられた動物や無機物、エスパー等がお邪魔虫と化します。
 こいつ等を蹴散らす事が出来なければ『|777《スリーセブン》』の思うつぼです。

●第三章『勇者『皇・銀静』』(ボス戦)
 これまでの流れからボスの特徴は情報として得られている筈です。
 自称『勇者』の|狂戦士《バーサーカー》――『|777《スリーセブン》』との決戦に立ち向かう為、良く考えてプレイングを書き込みましょう。

 ボスは狡猾で戦闘中も自分が有利になる好機を窺っています。
 因みにボス攻略における指標は――危険度&難易度【★】の『戦術級』です。通常のオブリビオン事件と大差ないと解釈して貰って構いません。
 ウケ狙い歓迎! 皆様のご参加ご活躍を期待しています!
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第1章 日常 『勉強会をしよう』

POW   :    気合で資料を丸暗記する

SPD   :    基礎から丁寧におさらいする

WIZ   :    講師役となり、他の人に勉強を教える

イラスト:ハルにん

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お馬鹿さん調査☆
 『サイキックハーツ』に|瞬間移動《テレポート》した|猟兵《イェーガー》達は早速、その敵。
 ダークネス(オブリビオン)――『|777《スリーセブン》』とか言うふざけたボス(本名かどうかは謎)の情報を得るべく行動を開始した。

 一人は武蔵坂学園に赴き、敵の特徴・弱点・今回の事件の目的を調べる。
 一人は現地にて一般人に聞き込み調査。奴、『|777《スリーセブン》』の謎の企みを暴く為に動く。

 果たしてそこでお馬鹿さんの『|777《スリーセブン》』に繋がる『最近の変な噂話』を聞く事は出来るのか……?
バルタン・ノーヴェ(サポート)
「オー! ワタシはバルタン・ノーヴェ、デース!」
日常を満喫しマショー! アドリブ連携歓迎デース!

普段の口調:片言口調(ワタシor我輩、アナタ&~殿、デス、マス、デショーカ? デース!)
得意な技能:【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】デスネ!

たぶん戦闘はないと思いマスガ、バトルの時は元気に暴れマスネー!
料理が得意ですが、奉仕や救助活動(介護や子守り含む)といったメイド・アクションも可能デース!
にぎやかしとしてワイワイはしゃいでもOK!
こっそり裏方で労働に勤しんでもOKデース!

他の猟兵の方々と楽しめるように努めてマース!
公開UCやバルタンズ、アイテムの使用も問題なくOKデスヨ!
よろしくデース!



「オー! ワタシはバルタン・ノーヴェ、デース! HAHAHA! よろしくお願いシマース! エブリワン、レッツパーティ!」

 場所は武蔵坂学園。とある教室。そこに勢い良く出現したのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)だ。

「……あ~。バルタン・ノーヴェ……さん? あなたも『|777《スリーセブン》』対策の講義を受けに来たのかね?」

 何やら壮年の男性教諭が少し混乱気味にバルタンに応対。元気よくバルタンはニコリと応じた。

「そうデスそうデース! 『|777《スリーセブン》』の事を調べに来たのデース! 他の猟兵の方々と楽しめるように努めて参りマース!」

 |猟兵《イェーガー》にも色々いるからな……壮年の男性教諭はそれだけで納得したのかウンウン頷いた。

「にぎやかしとしてワイワイはしゃいでもOK! 日常を満喫しマショー! アドリブ連携歓迎デース!」

 教壇の上を自身の|舞台《ステージ》として、そこにいた皆にアピールするバルタンを皆は拍手喝采で出迎えた。

「はっはっは! いいぞ~姉ちゃん! もっと言ったれ~♪」
「その調子で一緒に『|777《スリーセブン》』解明してぶっ潰しましょ~!」

 退屈だった皆も彼女。バルタンのノリが即効性の薬の様に効いたのかパッ♪ と、明るくなり笑い合う。

「……これはこれは。とんだイレギュラーの登場ですね」

 思わず壮年の男性教諭は吐息を吐いた。まあ、さっきまで堅苦しかった雰囲気が和らぐのならば……少しくらい良いだろう。そもそもその雰囲気を作ったのは自分のユーモアの無さが原因だ。
 皆、退屈な自分の『|777《スリーセブン》』講義に内心でウンザリしていたに違いない。
 それに目の前のバルタン・ノーヴェと言う女性はユーモアに長けている。ここは彼女を見習い任せよう。

「たぶん戦闘はないと思いマスガ、バトルの時は元気に暴れマスネー!」

 ハッハッハッハ♪ と、皆のテンションも高くなってくる! 元気で明るいちょっぴりお調子者なバルタンのお陰だ。このまま楽しい勉強会で、皆の集中力がアップすれば良いが。
 しかし、得てしてそれを快く思わない輩もいた様で……。

「……フ! バルタン・ノーヴェとか言ったかい? 失礼だが我々はここに遊びに来た訳じゃない。ダークネス(オブリビオン)『|777《スリーセブン》』の調査をしに来たのだが?」

 壮年の男性教諭は思わずハッ! となる。今回の勉強会においてやたらと『|777《スリーセブン》』研究に熱心な男の|猟兵《イェーガー》がいたのを忘れていた。

 インテリ眼鏡を掛けた美男子――その名も『プリンス・塚宝』!

 思いきり嫌味をかますそいつ。それでもバルタンは自分に非は無い事をちゃんと分かっていた。

「オー! コレは失礼しましたデース! あんまりデシャバラズニ、ワタシこっそり裏方で労働に勤しんでもOKデース!」

 それだけに苦い顔をするその男|猟兵《イェーガー》。
 何せバルタンの所謂『バルタンジョーク』にウケていたのが教室の中にいる|猟兵《イェーガー》の大半を占めていたのだから。

「は~い! バルタンちゃんはもし『|777《スリーセブン》』を見つけたら何が出来るの? てゆーか、何が得意なの?」

 一人の女猟兵が興味津々でバルタンに質問した。バルタンはニコリと笑顔で、それに応じる。

「料理が得意ですが、奉仕や救助活動(介護や子守り含む)といったメイド・アクションも可能デース! 具体的に得意な技能は【奉仕・料理・掃除・裁縫・救助活動】デスネ!」

 まるで講師役。他の人に勉強を教える要領で賢いバルタンはどこまでも明るく、楽しく、元気よく答えた。

 ヒュ~♪ バルタンちゃんやるじゃん! 場はもっと盛り上がって来た。

「皆さん、今日はよろしくデース!」
「……ちょっと待ちたまえ!」

 バルタンが席に着こうとする……が、そこに当然『プリンス・塚宝』が関所の門番の様に立ち塞がる。

「オー! アナタはさっきの……ワタシ、何かしましたデショウカ?」

 インテリ眼鏡男『プリンス・塚宝』はバルタンのIQを推し測っていた。本当に今回の事件――『|777《スリーセブン》』退治に相応しき|猟兵《イェーガー》なのかを。

「一つゲームと行こうじゃないか。バルタンさん」

 ――ゲーム?――

 そこでようやくこの目の前にいるインテリ眼鏡君が自分の事をあまり快く思っていない事に気付くバルタン。

「それは……我輩に対する貴殿の挑戦状。そう受け取っても宜しいのでありますか?」

 バルタンの口調が真面目モードに変わる。それに対し、インテリ眼鏡君はニタリと笑う。

 オオオオ……! 何が始まるんだ? これまで周囲でバルタン側に付いていた連中がそのまま野次馬と化した。

「まあ、そんな所だ。君は余程今回の事件に自信を持っている様だから……その頭脳を示して貰おうか」

 インテリ眼鏡の縁を押し上げて、キラッ☆ と、レンズを光らせる『プリンス・塚宝』――何効果だよ。

 謎めいた頭脳戦。何だか妙な展開になって来た。それでもバルタンはマイペースにいつものノリでいた。

「面白そうデスネ~♪ 一体どんなゲームをするのデショウカ?」

 ――インテリ眼鏡の美男子『プリンス・塚宝』との対決は『スロット神経衰弱』!――

「何、簡単なゲームさ。トランプを使った『神経衰弱』は知ってるだろう? それを僕なりに少し工夫したのが『スロット神経衰弱』だ」

 ルールは次の通り。

 本来ならば二枚同じ『数字』を揃えるだけのゲームだが、これは配布役のディーラー『プリンス・塚宝』と参加者であるバルタン・ノーヴェが対面して行われる。
 揃える数字は3枚。ディーラーである『プリンス・塚宝』がランダムでテーブルに並べて表を伏したカードを配布するので、その中で3つ同じ数字を揃える。
 但し、時間制限があり1ターン『1分』。それまでに数を揃えられなければディーラーの『プリンス・塚宝』が強制回収してしまう。そしてスロット(シャッフル)します。
 逆を言えば、1ターン『1分』の間だけ同じ数を3つ揃えていけばいくらでもカード奪取は可能。
 ディーラー『プリンス・塚宝』は時々『イカサマ』である|罠《トラップ》を仕掛けます。
 |罠《トラップ》とは手元にカードを回収した際に100%数字が3枚揃わない様に仕向ける事です。
 つまり、|罠《トラップ》である『イカサマ』をしたらテーブルに並べたカードをいくらめくっても同じ数字が揃わずに詰みとなります。
 唯、この時途中で『イカサマ』に気付いたら『STOP!』を掛けて『イカサマ』を暴く事も可能です。

 勝敗は主に『イカサマ』である|罠《トラップ》をディーラー『プリンス・塚宝』が仕掛けた時に決まります。

 『イカサマ』を見事に暴くか、そのまま詰むか? 時間制限ありの記憶力・心理戦・2枚ではなく3枚揃える。駆け引きが勝敗を左右します。
 因みに揃えたカードは自身の『ライフ』として保有できます。
 『ライフ』は駆け引きを暴けなかった時(『イカサマ』してないのに『STOP!』宣言した等)や単純に|罠《トラップ》に引っ掛かり詰んだ時に一組消費して再勝負出来ます。
 バックアップ出来る『ライフ』が無くなり、更に駆け引きに負けたらゲームオーバー。

 『プリンス・塚宝』はバルタンの頭脳を試しています。その為初回でいきなり『イカサマ』を使う事はありません。

「……『スロット神経衰弱』ですか。分かりましたであります。我輩、その挑戦状。受けて立ちましょう!」
「フ! そう来なくちゃな。バルタン・ノーヴェ、君は僕との頭脳戦を制する事が出来るか……?」

 ワアアアアア!

 教室内の野次馬は大騒ぎ。こうしてゲームは開始した。

 *

 まず最初のターン。適当にスロット(シャッフル)したカードをテーブルに並べるディーラー『プリンス・塚宝』。

「……うむむ! コレは結構緊張しマスネ! とりあえずこのカードをめくってミマショウカ」

 出た数字はスペードの『3』。絵柄を合わせる必要は無いので次に狙うのは『3』である。

「1ターンの制限時間は『1分』だ。まずは小手調べと行こう。まだ最初なので、サービスとして教えよう。僕は『イカサマ』を使っていない」
「貴殿、それは……本当でありますか?」
「ああ。神に誓って本当だ」

 『プリンス・塚宝』は真っ直ぐにバルタンを見据えた。その眼鏡越しの瞳は決して笑っていない。

「ならば、我輩。時間がある限りビシバシカードをめくって行きましょう。こちらが正解でありますか?」

 出た数字はダイヤの『5』。さすがにいきなりリーチとはいかない。そして伏せたカードの位置を覚えておくバルタン。

「こっちはどうでありますか?」

 出た数字はクローバーの『3』だ。そしてさっきのスペードの『3』の位置を暗記していたバルタンはそちらをめくり、リーチとなる。更に次にめくった数字が『3』ならば『ライフ』一組確定である。
 やや緊張してめくった数字はハートの『5』。残念……だが、『5』ならさっき同じ数字をめくっていた事も忘れていないバルタン。位置を確認してすぐにダイヤの『5』をゲット♪ 再びリーチとなる。

「……残り30秒」

 まだ時間は残されている。バルタンは慎重に祈りながら当たりを付ける。めくったカードは……クローバーの『5』!

 おお~♪ 固唾を呑んでゲーム『スロット神経衰弱』を見守っていた観衆(野次馬)から小さな歓声が沸く。

「やりましたデース! 『ライフ』一組ゲットデスネ!」
「フフン! やるなバルタン・ノーヴェ。そして今ちょうど『1分』経過だ。スロット(シャッフル)するぞ」

 器用にカードを切って、次のターンに移る。そしてその後、運の良いバルタンは『ライフ』を更に二組ゲットした。計三組である。

 そして5ターン目。中々、持ち札である『ライフ』が増えない。いくらカードをめくっても……精々リーチが限界だ。これはもしかして……。

「はい、時間切れ。そう。僕は『イカサマ』である|罠《トラップ》を仕掛けていた。よって君の『ライフ』一組を消費する」

 ああ~……。観衆(野次馬)から落胆の悲鳴がした。

「オー! コレは参りましたデース! デスガ勝負と言うものは常に楽しむモノデスネ。次のターンに移りマショウカ?」

 このバルタン・ノーヴェとか言う女猟兵……中々勝負運に恵まれている。『ライフ』を一組失ったとは言え彼女にはまだ二組残っているし、これまで見た所記憶力も優れている。
 もしかして普段お茶目な振る舞いをしているのは演技か? 成る程。頭の良い者ほど実力を隠したがるしな。コイツは危ない危ない……直ぐに決着を付けるか。

 そんな事を内心で思いながら彼女バルタン・ノーヴェのIQ選定はまさかの『A』評価。『プリンス・塚宝』は確信し、思わぬ強敵に冷や汗を掻いた。
 そしてバルタンを警戒し、一番見抜かれない連続『イカサマ』と言う禁じ手を使う……!

 そんな中、当の本人。バルタン・ノーヴェはと言うと――

 ――ア~お腹が空いたデスネ……帰りにファストフード店に寄ってLサイズのハンバーガーセットを買って食べて行きマショウカ。

 全く別の事を考えていた。

「……そうだな。それではスロット(シャッフル)したカードをテーブルに撒くぞ。6ターン目開始だ♪」

 自分の焦りを覚られない様に極力楽観的に身振り手振りを装うインテリ眼鏡の美男子『プリンス・塚宝』。しかし、彼の運もここで尽きた。

「オー! それはダメ! 『STOP』デース!」

 何だと!? 一体自分のどこに非があったと言うのだ? 僕の演技は完璧だった筈なのに……! やはり、バルタン・ノーヴェ。侮れん!

「HAHAHA! その顔はズボシの様デスネ? 『イカサマ』を使いアナタはワタシに見抜かれたのデース♪」

 ……と、言う事は?

「え~ゴッホン! 勝者……バルタン・ノーヴェ!」

 なぜか知らんがその時だけ武蔵坂学園、壮年の男性教諭がバルタンの右腕を取りそのまま勢いよく掲げた。

 ワアアアアア――――! 凄い……凄いよ! バルタンちゃ~ん! 野次馬大爆発! 今日一番の皆の歓声が大沸騰!

「く……! まあ、負けは負けだ。バルタン・ノーヴェ。君が今回の事件『|777《スリーセブン》』退治に相応しい|猟兵《イェーガー》だと素直に認めよう。それで? どうやって奴に挑む気だ?」
「ソレはデスネ……|UC《ユーベルコード》『秘密のカビパン&バルタンズ』(シークレット・カビパンサービス)やバルタンズを駆使したり、アイテムの使用も問題なくOKデスヨ!」
「ふむ……そうか。ならば、この情報を持って行け。最近耳にした変な噂話なんだが……『|777《スリーセブン》』は存外にナルシストな様でな、等身大の『鏡』に弱い。との事だ」
「『鏡』に弱いのデスネ?」

 バルタンは敵――『|777《スリーセブン》』に関する『最近の変な噂話』をゲットした!

「ソレデハ、ワタシはコレで! 皆さんマタドコカデお会いしまショーウ!」

 颯爽と教室を出て行くバルタンに皆は呆気に取られた。

「……何だったんだあいつは? まるで台風の目の様に去って行ったな」

 ――武蔵坂学園の|玄関口《エントランス》から出た敷地の一区画にて。

 ぐうぅぅぅぅぅ~♪

「ふぅ~危ないアブナイ。コレだけセイダイニお腹が鳴ってるのを誰かに気付かれたら……大恥をかくトコロデシタ!」

 余りにもお腹が空いていたのか……バルタンは自分のお腹を撫でて半泣き顔。

「デモ、結果オーライデース! カードゲームのバトルには勝てましたし、『最近の変な噂話』もゲットしました。コレで今日はハンバーガーを食べるだけデース♪」

 そう……バルタンは強かった。それは間違いない。唯、その勝負強さは『運』に集約されたものだった。
 あの時、『プリンス・塚宝』がコイツはただ者ではない……! と、感じたのはその『運』の良さ故。それを見誤って解釈してしまったのだ。
 そして同時にバルタンはお腹が空いて腹の音を皆に探られない為に勝負に出た。
 結果として策士策に溺れたのはバルタンではなく『プリンス・塚宝』の方だ。

 こうしてルンルン気分でバルタンはファストフード店へ向かったのであった♪

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーガン・クイン(サポート)
 はぁい♪
サキュバスの魔女、ミーガン・クインよ。

 私のユーベルコードの拡大魔法や縮小魔法、
アイテムの巨大化薬や縮小薬で色んなものを大きくしたり小さくしたり。
きっと楽しいことが出来るわね♪

 ミュールフォンは無口で無表情だけど従順で私を守ってくれる、
剣と盾で戦う天使ちゃん。
戦闘面はこの子にお任せ♪
巨大化で蹂躙しちゃいましょう♡

 サポートに不思議な魔法の力はいかがかしらぁ?
私のことを好きに使ってみてね♡



「はぁい♪ 皆さん、初めまして……かしら? サキュバスの魔女、ミーガン・クインよ」

 場所は武蔵坂学園。ミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)はドアを開けて、軽く挨拶した。
 ある教室をそのまま『|777《スリーセブン》』対策会議の場所として間借りして、そこには老若男女問わず幾人かの|猟兵《イェーガー》で溢れていた。

「あ、すみません。ミーガン・クインさん……で、合ってますか? こちらの名簿に記名よろしくお願いします。一応、規則ですので」

 一人の男がミーガンの前にやって来て、名簿を手渡す。ミーガンはクスリと笑い、自分の名前と軽いジョークを書き足した。

『サポートに不思議な魔法の力はいかがかしらぁ? 私のことを好きに使ってみてね♡』

「ありがとうございま~す……って、余計な事を書かないで下さいよ!」
「何よあなたこれくらい。それとも冗談が通じないのかしら?」
「……はぁ~。分かりましたよ! もう。名前さえあればOKです。一応、規則ですので」

 何気なく辺りをキョロキョロして適当の席に座る。偶々窓際だ。外は晴天で窓から来る隙間風が心地良い。

「……え~と。皆さん揃いましたか? それではこれから武蔵坂学園勉強会『|777《スリーセブン》』対策会議を始めま~す」

 ……は~い。

「何よコレ? ここにいる皆、本当に『|777《スリーセブン》』を倒す気あるのかしら?」

 五月病にでも殺られたのか? 思わず疑うミーガン。そこで彼女は良い事を思い付いた。自分が講師役となって、他の人に勉強を教えてはどうだろうか? あんな事やこんな事を……♡ その方がやる気が出て、少しは賢くなるというものだ。

 そうとなれば話は早い。善は急げ。司会進行役の『一応、規則ですので男』が教壇の真ん中に立っていたので、その前を遮る様にミーガンは移動した。

 これには意表を突かれた他の|猟兵《イェーガー》達。ザワザワとざわつき何が始まるのか見守る。

「皆、私はミーガン。ミーガン・クインよ~♡ 宜しくね♪」
「ちょ、ちょっと! 誰かと思えばさっきの……何する気ですか?」
「……ここは私に任せて? きっと楽しい授業をお約束するわ♡」

 大きな胸を軽く揺らして、ミーガンは妖艶にウインク♡
 講師役の代理を率先して引き受けると、顔を真っ赤にした『一応、規則ですので男』は引き下がるしかなかった。

「え~と……。本日は皆、良く集まってくれたわね? 堅苦しい挨拶は抜きにして、お互い羽を伸ばしたい……そうは思わないかしら?」

 男猟兵達はミーガンの巨乳に悩殺されてウンウン頷く。逆に女猟兵達は嫉妬の憤怒で苛立つ。まるで対照的だがそんな事構わずにミーガンは話を続ける。

「私のユーベルコードの拡大魔法や縮小魔法、アイテムの巨大化薬や縮小薬で色んなものを大きくしたり小さくしたり。きっと楽しいことが出来るわね♪」

 おおお……! なるほど~! 一体何を大きくしたり小さくするのかなぁ~? 男猟兵連中は妄想して全身が沸騰。見悶えていた。
 ??? 女猟兵達は最初全く理解が追い付かずにいた。但し、男達が下ネタで苦しんでいるのだけはよ~く理解出来た。

「……え~と。一体何をおっぱじめる気ですか? ミーガンさん?」
「ちょっとあなたは黙ってて。せっかく盛り上がって楽しくなってきたのよ? それに私は出鱈目に講義するその辺の安っぽい講師じゃないの。ちゃ~んと『|777《スリーセブン》』対策を講じるから、ここは任せなさい!」

 ……とは言え『一応、規則ですので男』は今一ミーガンが何をするのか分からずにいた。薬を使って大きくしたり小さくしたり? 何の事やらサッパリだ。

「皆……私の|UC《ユーベルコード》と薬を使って、大きくなったり小さくなったりしたくないかしら? 多数決で決めましょう♪」

 は~い……! と、スケベ男達は元気よく挙手。それとは相反して色仕掛け効果の効かない女達は全く一人とて挙手する気配はない。シ~ン……と静まり返る。
 正に二つに分かれた。真っ二つだ。しかも同じ人数。

 ――さて、どうしたものかしら? ミーガンは思案を巡らす。その時だ。遂に一人の女|猟兵《イェーガー》が痺れを切らして座っていた席から勢いよく立ち上がる……!

「ちょっとあなた良いかしら? 私はロジーナ。ロジーナ・フィンダーよ。今まで何とかして耐えていたけれど……さすがに我慢の限界が来たわ」

 何やら女性陣の中でも一際異彩を放つ人物が怒りを露わにする。その名はロジーナ・フィンダー。
 黒いゴシックアンドロリータ……所謂ゴスロリファッションをしたモデル体型のクールビューティーだ。
 その妖艶さは講師役を買って出たミーガン・クインに引けを取らない。唯一つ負けている所と言えば……胸の起伏に乏しい。

「あらら? 困った子猫ちゃんの登場ね? トイレなら廊下を出て真っすぐ行った突き当りの所にあるわよ♪ 男女兼用だけどね♡」
「そうじゃないわよ! 何で、そっちの『一応、規則ですので男』に代わってあなたが講師をしてるのって事! 意味が分からないわ」
「い……一応、規則ですので男?」

 ガビーン! と項垂れる『一応、規則ですので男』を尻目に(放置プレイ?)、それでもミーガンとロジーナはバチバチとお互い火花を散らし睨み合う。

 良いぞ~やったれ! ミーガンちゃん♪
 負けるなロジーナ! 女の意地みせろ~!!

 気付けば彼方此方で声援とブーイングの大合唱。唯、男の中でもロジーナ派がいたり、女の中でも退屈嫌いなミーガン派に分かれたりと大忙しだ。

「良いわ……あなた。ロジーナの言いたい事は凄く良く分かる。私に講師が務まるのか……そう言いたいんでしょう?」
「その通り。ミーガン、あなたは講師に向いてないわよ。少なくとも私は『一応、規則ですので男』のやり方の方が正しいと思うわ」

 それともう一つ。その邪悪な胸の露出を控えなさい。少なくとも私の見える範囲では……。ボソッと呟いたロジーナは忌々し気にミーガンの胸を見据える。

「ん? 何か言ったかしら?」
「い、言ってないわよ! 何でもないわ! それよりミーガン、あなたどうやって講師として相応しいのか証明するつもりよ?」

 顔を真っ赤にしながら、語気を荒げて話の続きへと急かすロジーナ。それに対し、ミーガンはニタリと笑う。

「今日は快晴よ♪ 時節柄気候も温暖だし、私が講師に相応しいかは外に出て決めましょう♡」
「一体、何をするつもりなの?」
「決まってるでしょ? 『|777《スリーセブン》』との戦いに向けた模擬戦よ♡ 私の|UC《ユーベルコード》を使って大きくしたり小さくしたり。それとも止める?」

 キッ! と犬歯を剥き出しにしてロジーナはその美貌を歪ませた。

「上等だわ……私だって|猟兵《イェーガー》の端くれ。ミーガン・クイン、あなたみたいなふざけた|猟兵《イェーガー》に負ける訳にはいかない。逃げるなんて以ての外よ!」

 こうして二人の美女の戦いは武蔵坂学園の校庭で行われる事に……。周囲の群衆も熱くなる。まるでフーリガンだ。

「あの~僕の事忘れてないですか? 校庭で戦われると困るのは僕なんですけれど……。これでも一応、規則ですので」

 *

「巨大化で蹂躙しちゃいましょう♡」
「邪悪な魔女には断罪が必要ね」

 ミーガン・クインとロジーナ・フィンダー。女同士。二人の戦い(模擬戦)は周囲の群衆で埋め尽くされ、白熱する。

「それでは、『|777《スリーセブン》』対策の一環として、ミーガン・クインとロジーナ・フィンダーの模擬戦を始めま~す。両者、前へ」

 おいおいさっきまでの『一応、規則ですので男』はどこ行ったオイ? 模擬戦の審判として指揮するのは――『一応、規則ですので男』もとい『単なる規則違反男』だ。

「それでは……模擬戦開始!」

 脱兎の如く飛び出たのはロジーナだ。彼女はスピードを活かした先手必勝を狙いに短期決戦を望む。
 一方、全く微動だにせずその場で直立不動。余裕の表情をしているのはミーガン。彼女の手には掌サイズの何かが握られていた。
 『ミュールフォン』だ。ミュールフォンは無口で無表情だけど従順で私を守ってくれる、剣と盾で戦う天使ちゃん。

「戦闘面はこの子にお任せ♪」

 かつては天にも達する程巨大な姿だったらしい。美しき女型の天子です。そのかつての姿を再現し取り戻すべく、ミーガン・クインは|UC《ユーベルコード》を唱えた。

「はっ!? もしかして……」

 相手であるサキュバスの魔女。ミーガン・クインのさっきの言葉の意図をようやく理解したロジーナ・フィンダーはすぐに立ち止まり警戒して身構えた。

 ――私の|UC《ユーベルコード》を使って大きくしたり小さくしたり――

「おおきくなぁれ♪」

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『拡大魔法』(マキシマムスペル)を発動!

 空中あるいは地形に【魔法陣】の紋章を描く。紋章の前にいる任意の対象に【拡大魔法】を放ち【巨大化】効果を与える。

 すると、手にしていた掌サイズの剣と盾で戦う天使。『ミュールフォン』が大きくなってくる。その雄姿は正に天にも届く程の巨大な天使!

「あ……あああ!」

 その『ミュールフォン』のあまりの大きさに腰が引けて地面に手を付いたロジーナ。格が違う。正に規格外の魔女の御業である。

「スト~ップ! これ以上は止して下さい……! 模擬戦の範疇を超えていますよ!」

 『単なる規則違反男』が『一応、規則ですので男』に戻った。ミーガンは思わず苦笑する。

「それに、ミーガン・クインさん。あなたの強さはよ~く分かりました。あなたこそ『|777《スリーセブン》』対策の講師に相応しい……! ねえ、そうでしょう? ロジーナ・フィンダーさん」

 腰砕けになって地面に両手両足が付いて少しだらしない格好になっているロジーナ・フィンダー。とんだ負け戦。でも、相手が如何に強いのかは理解した。

「……まさか、これ程までに巨大化させるとはね。全く太刀打ちできないじゃない! でも、負けは負けね。良いわ! あなたの勝ちよ。それと……」

 その胸も……|UC《ユーベルコード》のお陰かしら? とはさすがに口が裂けても言えなかったロジーナ・フィンダー。どうやらミーガン・クインの胸が気掛かりで仕方なかったらしい。

「ふぅ~。ようやく認めてくれたわね♪ でも、ここからは『|777《スリーセブン》』と戦う女|猟兵《イェーガー》同士。仲良くしましょうね♡」

 ミーガンは未だ座り込んでるロジーナに手を差し伸べた。初めてニコリと笑って、その手を取るロジーナ。

「実力を疑って悪かったわ。所でミーガン。あなたがここに来る前に『|777《スリーセブン》』に関する『最近の変な噂話』があるんだけど……聞きたい?」
「『最近の変な噂話』? ええ。もちろんよ」
「どうやら『|777《スリーセブン》』はお色気に弱いらしいわ。ある意味、あなたと相性が良い相手ね? ピッタリだわ」
「ちょっと、それってどういう意味よ? ロジーナ」

 ミーガン・クインとロジーナ・フィンダー。二人は少しの間顔を見合わせて笑い合った。他の外野陣。野次馬連中も拍手で出迎える。

「今日は楽しかったわ。あなたみたいな女猟兵がいるのも悪くないわね。『|777《スリーセブン》』退治。お互い頑張りましょう?」
「こっちも楽しかったわ♪ ロジーナ、良い情報提供。感謝するわね♡」

 こうしてミーガン・クインは己の実力を証明してみせた。
 その後、彼女は『|777《スリーセブン》』対策会議でその自慢の胸を揺らしながら講師として熱弁を振るったのだが、誰一人として文句をいうものはいない。

 唯一人。あの『一応、規則ですので男』が二人の女猟兵が武蔵坂学園の校庭を勝手に使って、模擬戦を行った事で関係者のお偉いさんにこっぴどく叱られた以外には……。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ(サポート)
普段はぼんやりですが敵前では獄炎操る処刑人と化します

鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物どれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

ぼんやりしつつ日常を楽しみます。一人で楽しむ事も苦じゃないみたいです
ダークセイヴァー出身なので複雑な機械の操作はかなり苦手ですがキャバリアの操縦はそこそこ(本職に比べたら劣る)
流行には疎いけどまぁそんなモノもあるんだと認識する感じです



「……敵の目的・正体は依然として詳細不明。分かっているのは『|777《スリーセブン》』という名前のみ。一体何をしたいのか……。調査が必要ね」

 そう思って仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)は武蔵坂学園に足を運んだ。
 武蔵坂学園は『サイキックハーツ』の世界をかつて救った|灼滅者《スレイヤー》達の拠点。未だに機能してるのも今回の様な事件が絶えないからだろう。
 そして『|777《スリーセブン》』に関する秘密作戦会議が行われている会場に仇死原は辿り着いた。場所は体育館ホールだ。

「……ふむ。そろそろ始めようか。私は獄門・鉄也。この世のありとあらゆる『拷問器具』に詳しい云わば拷問のスペシャリストだ。なぜそんな人物が『|777《スリーセブン》』対策の講義に参加してるのかって? それは私が一番聞きたい」

 会場にいた皆から軽い笑いが生まれる。ウィットの効いたオヤジギャグ。マイク片手に何だか厳めしい顔付きの男が|壇上《ステージ》の中央で喋る。
 その容姿は黒スーツにサングラス。何だか裏社会の世界の人……という印象を受けるが、仇死原はぼんやりしつつ日常を楽しみます。流行には疎いけどまぁそんなモノもあるんだと認識する感じです。
 そんな事よりも気掛かりな事が一つ。この世のありとあらゆる『拷問器具』に詳しい……との事だが、仇死原は処刑人でもある。

 普段はぼんやりですが敵前では獄炎操る処刑人と化します。

 もしかしたらあの壇上の男。獄門・鉄也とは相性が良いのではないか――そんな事をふと思ったが……そもそも初対面の男を意識する程、仇死原はその手の話に興味はない。一人で楽しむ事も苦じゃないみたいです。

「さて、本題に入ろう。今日この体育館ホールに皆を呼び集めたのは他でもない。『|777《スリーセブン》』がここに現れたと仮定しての訓練! 言うなれば……奴をどうやって倒すか? その一点だ」

 ……??? そこにいた皆は頭上に『?』マークが浮かんだ。唯一人。仇死原は違う。奴――『|777《スリーセブン》』をどうやって処刑するのか。その脳内シミュレーションは100通りはある。

「もしも、この中で『|777《スリーセブン》』を倒せると自負する者がいるのならば挙手を願いたい。その拷問……とくと披露して欲しい。ここに集った同志。|猟兵《イェーガー》軍団の士気を高める為にも……!」

 ……シーンと、静寂が辺りを包み込む。誰一人として挙手する者はいない。そもそも『|777《スリーセブン》』の力量が分からない以上、対応のしようが無いのではないか? そう思う者が大半だ。

「おいおい。まさか自分じゃ『|777《スリーセブン》』を倒せない……なんて考えてる訳じゃないよな? 君達は選ばれし者。|猟兵《イェーガー》だろう? もっと自信を持って良いんだぞ?」

 獄門・鉄也が焦り、急かした。これは想定外の事態だ――とでも言わんばかりに。仇死原は少しの間悩んだ。あまり目立つような事はしたくないが、状況が状況だ。ゆっくりと手を挙げる。

「……おお! そこの女性。偉いぞ君! 今、スタッフがマイクを渡すからちょっと待っててくれ」

 スタッフである黒子がせかせかと仇死原の前にやって来てマイクを手渡した。

「奴、『777《スリーセブン》』限定と言う訳じゃないけれど……鉄塊剣『錆色の乙女』、妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います」
「ほ~う? 鉄塊剣『錆色の乙女』は【鉄の処女】をモチーフにした、鉄塊の如き巨大剣。妖刀『アサエモン・サーベル』は伝説にある首斬り処刑人の名を冠した呪われしサムライブレイドの事だな?」
「はい……大方その様な解釈で間違いないです」

 ザワザワ……。何だかマニアックな『拷問器具』の取説してるぞあのオッサン。胡散臭いとは思ってたけどガチだったとは……それとそれに余裕で応じるあの女|猟兵《イェーガー》……何者だ?

「……それと。ダークセイヴァー出身なので複雑な機械の操作はかなり苦手ですがキャバリアの操縦はそこそこ出来ますよ。まあ、奴。『|777《スリーセブン》』を叩くのはUC《ユーベルコード》頼りになるとは思いますが」
「君、『拷問器具』(処刑道具)の扱いに長けてるだけでなくキャバリアの操縦も出来るのか」
「はい……まあ、本職に比べたら劣るとは思いますけれど」

 獄門・鉄也は……クックック! と、肩を揺らして笑い出した。火山地帯。鉱山の発掘作業でパワーストーンの|黒曜石《オブシディアン》の中にダイヤモンドの原石を発見した時の様な気持ちの高まり。

「気に入ったぜ。名前は何と言うんだ? 黒髪のねーちゃん」
「アンナ・アンダルシャナ……いえ、仇死原・アンナよ」
「仇死原・アンナ、君の|UC《ユーベルコード》を是非とも見てみたい。ここにいる|猟兵《イェーガー》達に『|777《スリーセブン》』と戦う模範を示してくれ」

 仇死原は少し思案顔。それに気付いた獄門・鉄也はニッコニコ笑顔で応える。

「何、ちょっとくらい暴れた所で心配ない。ここは武蔵坂学園の体育館ホールだぞ? 頑丈に出来てる。何なら……」

 そう言った獄門・鉄也は|壇上《ステージ》の後ろにある何かの格納庫をリモコンで開いた。

 ウィーン……! そこにあったのは少しコンパクトサイズのキャバリアだ。

「まさか……そのキャバリアの|操縦席《コックピット》に乗れとでも言うの?」
「そのまさかだ。更に……お手本とは言え|UC《ユーベルコード》を使うには相手が必要だろう? その敵。『|777《スリーセブン》』役はこの私。獄門・鉄也がお相手しよう♪」

 更にリモコンを操作すると体育館ホールの天井が開いた。解放感抜群。これならば外だろうが中だろうが、近接・中距離・遠隔――どの戦闘スタイルも発揮できるというもの。

「本気なの? あなた、獄門・鉄也。私は戦闘で敵と判断したら炎獄の執行人になるわよ」
「せっかくやるなら標的がいる方が実戦経験を積めるだろう? それに私も|猟兵《イェーガー》だ。遠慮は要らない。本気でかかって来い……!」

 ここに集いし|猟兵《イェーガー》達の代表として仇死原は謎の|猟兵《イェーガー》。獄門・鉄也と対決する事になった。

 *

「致し方ないわね。私としては……少し不本意だけど、あなたがそのつもりなら戦うわよ」

 そう思って前を向いた仇死原。しかし、そこに敵対する筈の獄門・鉄也の姿が無い……!

「まさか、戦闘開始の合図でも待っていたとでも言うのか?」

 耳元で奴――獄門・鉄也の囁き。仇死原は自身の身体能力を最大限に活かし、反応。横に反転して敵のボディーブローを最小限のダメージに止める。
 相手――獄門・鉄也の攻撃を相殺したままの姿勢を保っているのは既に危険信号。仇死原が再び前を向くとそこに獄門・鉄也はいない。
 戦闘中の視界は基本的に180度。首を振る事で上下左右に敵の姿・距離・速度・戦闘体勢を読み取る事は可能。だが、そこに対象である標的がいないとなると……。

「おいおい。俺を失望させる気か? 『炎獄の執行人』さん。戦闘は始まったばかりだぜ」

 答えは背後だ。但し、次の攻撃は煙幕を仕込んだアッパーカット!
 辛うじてそれを避けると前髪に少し攻撃が掠る。次の瞬間、容赦なく煙幕が仇死原の全身を包み込み、自分の視界は完全に塞がれた。

「獄門・鉄也……貴様が唯の|猟兵《イェーガー》じゃない事は理解出来た。私も本気でいかせて貰う!」

 遂に獄門・鉄也を敵と認識した仇死原。炎獄の執行人としてその口調が変わる。
 それは獄門・鉄也も同じだった様で一人称が『私』から『俺』に切り替わっている。

 視界は未だ煙幕の中を映し出している。このままでは不味い。仇死原は『鉄壁10』により守りを固めて敵が攻撃してくるのを待つ。
 更に『気配感知10』により、視界が煙で塞がれてもある程度|索敵《サーチ》出来る様にする。敵だけではなく、キャバリアの位置も把握しておく。
 そして自身の動きをわざと外部に分からせる特殊な歩き方をして敵の攻撃を誘う。
 そのまま歩いてキャバリアのある場所へと移動。

「……可笑しい。どうして攻撃してこない?」

 奇妙な違和感を覚えつつ……キャバリアに乗り込んだ。煙が晴れると同時に、目の前にもう一台のキャバリアが突っ込んできた!

 ガッシャ―ン……!!!

 警戒していた仇死原は『鉄壁10』を極力解かない様にしていたので、肉体にダメージはほぼ皆無。だが、まさか相手もキャバリアで攻めて来るとは予想外だった。
 自身のキャバリアは崩壊。またしても素の自分に戻る。敵――獄門・鉄也はキャバリアを操縦し容赦なくこちらに向かって来る……!
 だが、煙幕が晴れた事で漸く仇死原は本領発揮する。

 ――仇死原・アンナ、君の|UC《ユーベルコード》を是非とも見てみたい――

 脳裏に奴、獄門・鉄也の声が蘇る。既に敵はキャバリアを操縦し自分を潰そうと本気で叩きに来ていた……!

「やってやる……! 覚悟しろ獄門・鉄也!」

 |UC《ユーベルコード》(POW)『ペイル・ライダー』(シヲモタラスダイヨンノキシ)発動!

 【己の身長の2倍の全身に蒼い炎を纏う骸骨馬】を召喚する。騎乗すると【空中を走る事も出来る黙示録の騎士】状態となり、【不死】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。

「貴様等に死を齎しに来た……死から逃れる事は出来ぬぞ……!!!」

 周囲から喝采が沸いた……! 今まで獄門・鉄也にやられっぱなしだった仇死原に|声援《エール》を送る者が大多数。

 骸骨馬に騎乗した黙示録の騎士。仇死原・アンナは地上にいるキャバリアに搭乗した獄門・鉄也と空中から一騎打ちに挑む……! 手にしているのはもちろん鉄塊剣『錆色の乙女』だ。
 技能――『武器変形10』『武器受け10』『重量攻撃20』『装甲破壊10』『鎧砕き80』『吹き飛ばし10』その武器の特性を最大限に活かして、処刑を敢行する。

「……ぐおおおおお!」「ああああああ……!」

 キャバリアの右腕で受け止めた剣戟! その威力は右腕を完璧に破砕。|操縦席《コックピット》に乗っている獄門・鉄也の肉体をも容赦なく抉りにいった……!

 最終的に獄門・鉄也はその威力を支えきれず、大きく後方に吹き飛んだ。何と、|UC《ユーベルコード》を使ったとは言え、仇死原は武器だけでキャバリアの装甲を破壊。中にいた獄門・鉄也の体までダメージを貫き通す。

「さて……これ以上続けると本当に死ぬ事になるぞ。獄門・鉄也」

 蒼炎の骸骨馬に跨り、宙から舞い降りて来た黙示録の騎士。仇死原・アンナは最後の言葉を投げ掛ける。
 体ごと吹き飛んだ獄門・鉄也は体育館ホールの壁に派手に打ち付けられて、鈍い音と共に全身を強打。口から血を吐いて壁に亀裂が走る。

「……カハッ! ぐ! ふ……ふふふふ! 降参だ。まさかこの『|777《スリーセブン》』との戦いの事前授業で、偶然発掘した女性|猟兵《イェーガー》にしてやられるとはな♪」

 その言葉を聞いて、仇死原は|UC《ユーベルコード》を解き、剣も鞘に仕舞う。

「私に勝つ気でいたのね。あなた……獄門・鉄也」
「その通り。だが、これで良い。仇死原・アンナ、君はもっと強くなる。今回の事件の貴重な戦力だ」

 獄門・鉄也は強い。それを肌で感じ取っていた仇死原は納得して溜め息を吐いた。

「それでは私はこれで。今日は面白い戦いが出来た。一応、礼だけは言っておくわね」
「『|777《スリーセブン》』に拷問は効かないぞ?」

 ――!――

 その言葉に仇死原は立ち止まる。周囲にいる他|猟兵《イェーガー》達も動揺を隠し切れないで異様な空気となった。

「この情報を教える為に私はここに来た。実戦を行ったのは拷問好きな輩……その|猟兵《イェーガー》を叩いて現実を見せる事だ」

 だが、一人の女|猟兵《イェーガー》の存在で予定が変わってしまった。他でも無い仇死原が獄門・鉄也を圧倒したからだ。

「最近入手した妙な噂話でね。……とは言え本当に拷問が効かないならば、仇死原・アンナ。君にとって有益な情報になる筈だ」

 『最近の変な噂話』――『|777《スリーセブン》』は拷問耐性持ち――を仇死原は入手した。

 こうして仇死原は体育館ホールを静かに去って行った。有益な情報は手に入れた。これ以上ここにいる理由はない。

 もしも、『|777《スリーセブン》』に拷問が効かないならば、確かに何かしら対策を練る必要はあるかもしれないが。

「私は処刑人だ。奴とは違って|拷問好き《サディスト》ではない。敵が始末に負えないのならば……断罪するまでだ」

 獄門・鉄也と激突した後、思わぬ皮肉に苦笑した仇死原なのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『跋扈する眷属』

POW   :    力ずくで実行犯を止める

SPD   :    罠を仕掛け、眷属を捕縛・無力化する

WIZ   :    事件の内容から、黒幕の思惑や弱点を推測する

イラスト:みささぎ かなめ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂った戦士事、|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』の潜伏先を突き止めろ☆

 武蔵坂学園にて情報収集し、自らを勇者と名乗る『|777《スリーセブン》』の『最近の変な噂話』を調査した|猟兵《イェーガー》達。
 『|777《スリーセブン》』の特徴・弱点はもう頭の隅っこに|記憶《インプット》した。

 ――のだが……肝心の動機が未だに謎だ。こうなれば奴の|潜伏先《アジト》目指して直接勇者『|777《スリーセブン》』に聞くしかない。

 その|潜伏先《アジト》まで辿り着くには奴が放ったであろう『眷属』に変えられた敵が邪魔してくる筈だ。

 その先に……ボス。狂った戦士事、|狂戦士《バーサーカー》であり自称『勇者』の『|777《スリーセブン》』が待ち受けている。

 ここでの|猟兵《イェーガー》達の活躍で場面は大きく変わるだろう。

 全部運任せなアンブレイカブルお惚け『|777《スリーセブン》』の思惑とそのギャンブルの行方は如何に……?
飯綱・杏子(サポート)
狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?

ジビエ|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす
ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす

リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす
どんなに癖のある|肉《ジビエ》でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす

悪魔だから|毒は利かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす
あと|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす

シナリオや同行者の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ
白子もミルクも大好きっす



「むむむ……! 自称『勇者』を名乗る『|777《スリーセブン》』め! 絶対に居場所を突き止めて……このわたし。飯綱・杏子が喰らってやるっすよ」

 飯綱・杏子(悪食の飯テロリスト・f32261)は戦うと言うより食べる事に集中する。

 どんな敵が出て来ようとも、彼女の両眼には食材に映りいつの間にか胃袋の中へGOしてしまうのだから恐ろしい。

「でも、『勇者』と言うのなら『|777《スリーセブン》』はヒト型っすね。ヒト型の食材を料理するときはこちらがヒト型を辞めるのが|マナー《マイルール》っす」

 ほほ~う♪ 我等が勇者。『|777《スリーセブン》』様を食べる気でいるのですね? そこの|猟兵《イェーガー》……。

「……何奴っすか!?」

 場所は『サイキックハーツ』にある武蔵坂学園からそう遠く離れていない繁華街の路地裏。和食、洋食、更に中華と様々な料理店がひしめき合っていて、どこからともなく香ばしい匂いが漂って来る。
 己の性分か、ボス『|777《スリーセブン》』の潜伏しているアジトを探す為に向かっていたのはやはり料理店がひしめき合っている『食』の激戦区。

「我は師である『|777《スリーセブン》』様に眷属に変えられた双子忍者の片割れ! 『甲賀・シロ』!」
「我は師である『|777《スリーセブン》』様に眷属に変えられた双子忍者の片割れ! 『甲賀・クロ』!」

 ま~た面倒臭い輩が現れたもんだ。飯綱は声に出さず余裕綽々でそう思った。

「……え~と。取り敢えず狩った獲物は持ち帰ってもいいっすか?」

 え~!? 今時双子忍者の眷属なんて結構珍しいのにそこスルーします? てゆーかどこまでも食べる気でいるのねこの女……!

「『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』……! わたしを邪魔する『|777《スリーセブン》』の眷属に変えられた可哀想な人達っすね。でも、どんなに癖のある|肉《ジビエ》でも濃い味付けにすれば食えない肉はないっす」
「ふっふっふ~♪ 我等は二人で一つの忍びの者!」
「ふっふっふ~♪ 食べられるものならこちらから喰らってやるぞ!」

 フードファイトで負ける訳にはいかない……! そう思って戦闘モード(食事モード)に気合いを入れる飯綱。
 だが、ここは和洋折衷の『食』の激戦区! 周囲には一般人のギャラリーがスマホ片手にこの事態を激写していた。彼等彼女等に万が一の事があれば……ヤバい!
 飯綱の頭の中には既に危険信号が鳴らされている。だが、この事態を引っ繰り返し、更に自分の胃袋を満たす妙案が思い付いた。

「本気で言ってるっすね? このわたし飯綱・杏子に『食』で対決しようと……ならば、フードファイトで勝負するっす!」
「「フードファイト?」」ポカ~ンとして双子忍者『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』は口を揃える。
「ここは、『食』の激戦区として名高い繁華街。その料理店がひしめき合う中で爆盛りドデカメニューを食い荒らし、先に完食した方の勝ち。それでどうっすか?」

 例えどんな料理が出たとしても、自分が負ける訳にはいかない! 好き嫌いは無いし、ジビエ|食材《オブリビオン》がヒト型でなければ料理して喰らうっす。

 眷属に変えられた双子忍者『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』は顔を見合わせ何やらひそひそと会議して、その後ニヤァ~と不気味に笑う。

「良いだろう! そなたの条件を呑んだ」
「精々我等に負けない様に……貴様の胃袋を空っぽにしておくんだな♪」

 こうして今夜の|献立《メニュー》は決まった。

 *

 第一の関門――和の食文化『直径1.5メートルお化け鰻の蒲焼き』!

「フフフ♪ これぞ爆食のスタート地点に相応しいっすね」

 飯綱は余裕綽々で箸を持ちいただきます。

「ちょ……デカ! キモ!」
「こんなんどこに生息してるんだ? 最早テロ事件だろ」

 逆に双子忍者『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』はその脅威の大きさに既に戦々恐々としていた。

「因みにこのお化け鰻にはテトロドトキシン(フグ毒と同じ)がそのままにしてあるので、常人が食べたら死にますよ♪」とはニッコリ笑顔で店員さん談。
「「怖え――!」」

 双子忍者は同時に悲鳴を上げる。

「ふぅ~。ごちそうさまっす!」

 そんな中、一瞬でその云わば『化け食』を退治したのはもちろんの事――飯綱だ。

「そ……そなた、もう食べたの? てゆーか毒は?」
「悪魔だから|毒は効かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす」
「き、貴様――――! 大食いを利用して最初から謀ったな?」

 軽くまず一勝♪ だが……この時既に双子忍者の企みは始まっていたのだ。

 第二の関門――中華の食文化『どこまでも続くお城炒飯』♪

「どこまでも続くかどうかはわたしの胃袋次第っす」

 飯綱は余裕綽々でレンゲを持ちいただきます。

「こちらは私の祖国にあるお城をモチーフにした炒飯アルネ♪ 炒飯の周囲を囲うのはモノホンの石垣だから硬いヨ♪」とは中華料理店の店長さんの談。
「いや、それ食べ物じゃないから」
「炒飯で出来たお城なんて初めて見たよ……!」

 双子忍者は石垣の部分が食えずにそのまま詰んだ。

「ふぃ~。ごちそうさまっす!」

 そんな中、またしても一瞬でその云わば『化け食』を退治したのはもちろんの事――飯綱だ。

「そ……そなた、もう食べたの? てゆーか石垣は?」
「わたしに食べられない物はないっす。リビングアーマーや宇宙船の類だってきっと貝類みたいに美味しい可食部があるし、食器としても活用するっす」
「き、貴様――――! またしても我等をハメやがったな?」

 こうして二勝♪ そろそろ双子忍者は音を上げる頃だろうか?

 第三の関門――イタリアンの食文化『大盤振る舞い全メニューの|協奏曲《コンチェルト》ピッツァ』☆

「コチラはネーミング通り、うちの全メニューをテンコ盛りにした豪華なピッツァデ~ス♪ モチローン、デザートも一緒くたにサレテマスヨ?」とはイタリアン店長さんの談。
「へぇ~。美味しそうっすね」
「いや、『へぇ~』じゃないから。やり過ぎだから……!」
「ワタシもやり過ぎだとは最初思いマシタ~♪ デモ、途中で面白くなって止められなかったんデスネ。……テヘ☆」
「笑って誤魔化すな!」

 双子忍者はデザートが入ってる時点でアウト。うぇ~! と嘔吐しそうになり色々とありがとうございました。

「ふぁ~。ごちそうさまっす!」

 そんな中、もうお約束の一瞬でその云わば『化け食』を退治したのはもちろんの事――飯綱だ。

「そ……そなた、もう食べたの? てゆーかデザートピザ美味しかった?」
「もちろんっす! 例えるなら……アップルパイみたいな感覚っすね。それにこちとら白子もミルクも大好きっす」
「もう、何か清々しい。我等に勝ち目はないよ!」

 まさかの敗北宣言! こうして三勝♪ 双子忍者は負けを認めた。

 *

「さてと大食い勝負はわたしの全勝っす。好い加減自称勇者。『|777《スリーセブン》』の居場所を教えて貰うっす!」

 飯綱が眷属に変えられた『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』に詰め寄る。
 だが、しか~し! この時を待っていたのは『甲賀・シロ』と『甲賀・クロ』の方だった。

 その時だ。飯綱の目は虚ろになり……全身が火照って来た。これはまさか……。

「ふっふっふ! そうはいかない! 実は我等が大食い対決に賛成したのはこの時を待っていたからだ」
「ふっふっふ! その通り。これぞ忍びの者の策略♪」

 ……この時? 何の事だろうとふらつく全身で思考を働かせる飯綱。

「い、一体どういう意味っすか?」
「強がるのは止めた方が良いんじゃないか? もう貴様の胃袋はいっぱいいっぱい精一杯♪」
「その動きの鈍った体で我等を止めるのは最早、不可能!」

 合点がいった。奴等の狙いは自分に大食い対決でわざと勝たせて全て平らげさせた後、お腹いっぱいで動きの鈍った所を叩きのめす策略……!
 だが、そこには大きな落とし穴があった。

「……そう言う事っすか」ふらつく体を何とか支えて……その場で直立不動。どうやら飯綱にも限界が来た(?)らしい。

 ガッキーン! 双子忍者の容赦ない連携攻撃が炸裂する。ドサッ……! と、倒れる飯綱。まさかの……展開。

「ふぅ~。中々手強い相手だった」
「そうよね。爆食メニューが出て来た時は……正直どうなるかと気が気じゃなか――」

 双子忍者『甲賀・クロ』と『甲賀・シロ』が勝利を確信した直後。何者かがガブリ! と、『甲賀・シロ』の左肩を噛みちぎった!

「痛い……何!?」
「き、貴様、八つ裂きにした筈なのにどうして……!?」

 そこに立っていたのは他でもない飯綱だ。しかし、少し様子がおかしい。さっきまでと雰囲気が違う。

「勘違いしないで欲しいアルヨ、アナタ達。ワタシの動きが鈍ったのはお化け鰻の毒が回って、酔ったからでアル」

 ――悪魔だから|毒は効かない《【毒耐性】持ち》っす。酔うけど。腐敗も発酵もわたしには一緒っす――

「な……! 何だと!?」
「チッ! 油断してたわね」

 動揺する『甲賀・クロ』。
 苛立ちを隠せない『甲賀・シロ』。

 ここからが本当の戦いだ。

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『フードファイト・狩猟モード』(フードファイト・ハンティングモード)発動!

 【適切な調理道具】で対象の【おいしそうな部位】を攻撃する。自身が対象に抱く【食欲】の感情が強い程、[おいしそうな部位]への命中率が上昇する。

「いただきっす」|UC《ユーベルコード》を発動した反動からか酔いから目覚める飯綱。

 ま――

「まだ食べる気か~!?」「まだ食べる気なの~!?」

 『甲賀・クロ』『甲賀・シロ』――忍びの者の大絶叫が繁華街に響き木霊する。

「せめてもの情けっす。今回の事件。同行者のあなた達の都合で、ヒト型を性的な意味で食い散らかしてもいいっすよ。あとわたしは|八つ裂きにされても死なない《【切断部位の接続】持ち》っす」

 ……ギャ――――!!

 こうして双子忍者『甲賀・クロ』と『甲賀・シロ』は美味しく飯綱にいただきますされました♪ けれどもそこは我慢して情報収集する為に眷属の二人組の意識を残し、軽く味見するだけに止めて置いた。

「食べられたくないなら『|777《スリーセブン》』の居場所を吐くっす!」

 力ずくで実行犯(双子忍者『甲賀・クロ』と『甲賀・シロ』)を止めた飯綱はこの二人組に脅しを仕掛ける。

「……う! 仕方ないわね」「……我等が主はこの先の古い洋館。今は誰も住んでいない『カラクリ屋敷』にひっそりと潜んでいる」

 ようやっと今回のボス。自称勇者『|777《スリーセブン》』の居場所を突き止めた。

「安心するっすよ。『|777《スリーセブン》』を倒せば眷属に変えられた忍者コンビさんの意識も元に戻るっす」

 まあ……兎にも角にも今日は――ごちそうさまでした♪

 新たな『食』を求め、飯綱は敵の|潜伏先《アジト》へと足を運んだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

弓落・高寿(サポート)
・平安育ち故、他文明…特に機械?など、進んだ文化には滅法弱い
しかし、まあなんだ。どうにかなるだろ。知らんが

・困った奴は助けるが、自業自得な奴は…若干説教したくなるやもしれん。



「しかし、まあなんだ。どうにかなるだろ。知らんが」

 甘党のヤンキー、弓落・高寿(平安京異邦人・f44072)は武蔵坂学園にてある程度『|777《スリーセブン》』の情報を得てから、奴の居場所を探していた。
 道行く人達に『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》を聞き込み調査していたが……あまり芳しくない。
 有力な情報は得られずに今は廃墟と化したテーマパークの一区画で小休憩を取っていた。誰もいない。

 そこはかつて栄えていたであろう場所。この辺りの地域活性化に一役買っていた小規模だが、緑豊かな自然と人の手が入った建物で賑わいを見せていた観光地。

 平安育ち故、他文明……特に機械? など、進んだ文化には滅法弱い弓落だが、ここがかつて栄華を誇り人々の行楽地として機能していた事は何となく理解出来た。

「……ふん。こんな所に『|777《スリーセブン》』がいる筈ねえか」

 正直、この廃墟が幾つも並んだ建物の群れを見た限り奴――『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》としては打って付けなんじゃないかとも思ったが……余計な詮索はしない。

「な~んか怪しいが……。奴がいるとしたらそれが確信に変わる筈だろ」

 この時、まだ弓落はその微妙な違和感の正体に気付けずにいた。
 ここはその昔流行っていたテーマパークの跡地。
 そしてここに『|777《スリーセブン》』が放った敵。
 『眷属』に変えられた刺客が弓落を待ち受けている事を……。

「……誰が怪しいって?」
「ここはアタイ達二人の縄張りだよ。余所者にはお仕置きが必要だね!」

 昼間のテーマパークの跡地。そろそろ休憩も済んだ。立ち去ろうとして……背後から何者かの凄んだ声がした。思わず振り返る弓落。

「誰だ? てめぇ等。我に何の用だ」
「ヒュ~♪ これまた|思春期《not素直》ですか~姉ちゃん。『ハニー』どうするコイツ?」
「そうだねぇ……『ダーリン』。アタイ達の縄張りに入って来た罰だよ。ちょっくら可愛がってやろうか」

 『ハニー』に『ダーリン』……一昔前のナンセンスなギャグでも披露してるのか疑いたくなるのも無理はない。
 何せその『ダーリン』はリーゼントに学ラン。『ハニー』はロンタイ(ロングタイトスカート)姿だ。今ならまだ間に合う。誰かアニメのコスプレだとフォローしてくれ。
 無論、アニメ文化に疎い弓落にその格好が通用する訳がない。それよりもその異様な姿。『眷属』に変えられた可哀想な人達だと直ぐに得心がいった。

「『ダーリン』と『ハニー』……か。てめぇ等『|777《スリーセブン》』の手駒か? まあ良い。困った奴は助けるが、自業自得な奴は……若干説教したくなるやもしれん」
「……んだとコラァ! なめてんじゃねーぞ」
「センコー面すんじゃねえ! メスガキ」

 話の通じない『眷属』もいたもんだ――そう顔に書いてある弓落。とっとと『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》を聞き出して、事が大事に至る前に片付けよう。

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)禁術召喚『刻目鬼』(ヤベエヤツ)発動!

「……じゃあ、帰るか」

 次の瞬間、弓落の姿が『ダーリン』と『ハニー』の視界から消えた……!

「どこ行きやがった!?」
「『ダーリン』……下、下を見な!」

 すると割と小柄な体躯をした弓落が、屈んでいる状態で攻撃態勢に入っているのが目に焼き付いた。
 全身を丸めた状態で『ダーリン』の懐に入り込んだ弓落。既に全体重を地面に預け、右拳を放つ……!

「な……に~!?」

 戦々恐々としてその姿を見つめる事しか出来ない。『ダーリン』は鳩尾に強烈な弓落のアッパーを喰らう。

「こ……の野郎~! 『ダーリン』に何す――」

 次に『ハニー』が『ダーリン』の仇を取る為に復讐を敢行するも、そこに弓落はいない。

「……え? キャアア!」

 『ダーリン』の懐から攻撃し、一瞬で移動。『ハニー』の背後に回り軽く足払いする弓落。『ハニー』は派手に引っ繰り返った。

「なんだ、中々可愛い声もだせるんじゃねえか。改心して本物の『女』として生きてみたらどうだ?」

 実力差は明白だった。そしてそこから更に……過酷な試練が待ち受けていた。

「あ、アタイは『ダーリン』の事、何とも想っちゃいないんだからね……!」
「『ハニー』……そっちこそ勘違いすんな! お、俺だって同じ想いだ! 余計な詮索すんなよな」

 |UC《ユーベルコード》禁術召喚『刻目鬼』(ヤベエヤツ)――攻撃が命中した対象に【|友達以上恋人未満《知らない人》】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【ラブコメめいた展開】による追加攻撃を与え続ける。

「あ~あ~お熱いねぇ。……それで? 『ダーリン』と『ハニー』。『|777《スリーセブン》』の居場所はどこだっけか?」
「ちょっ……! 邪魔すんなよな、オメー。今、良い所なんだから……!」
「ちょっと! 『ダーリン』、人の話聞いてんの? アタイの事どう想って……大体テメーが邪魔するから!」
「……|777《スリーセブン》の居場所はどこだっけか?」

 念を押してもう一度聞く弓落。からかい半分、本気半分。

「「……チッ! ここから先の北西に位置する古い洋館。今は誰も住んでいない『カラクリ屋敷』にいるよ!!」」

 こうして『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》の情報をゲットした弓落。

「……じゃあ、本当に帰るか」

 それにしても『|777《スリーセブン》』に眷属に変えられた『ダーリン』と『ハニー』は元に戻ったら本当に恋仲同士だったりして。

 ……等と要らぬ事を考えながら弓落はその場を立ち去った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミーガン・クイン(サポート)
 はぁい♪
サキュバスの魔女、ミーガン・クインよ。

 私のユーベルコードの拡大魔法や縮小魔法、
アイテムの巨大化薬や縮小薬で色んなものを大きくしたり小さくしたり。
きっと楽しいことが出来るわね♪

 ミュールフォンは無口で無表情だけど従順で私を守ってくれる、
剣と盾で戦う天使ちゃん。
戦闘面はこの子にお任せ♪
巨大化で蹂躙しちゃいましょう♡

 サポートに不思議な魔法の力はいかがかしらぁ?
私のことを好きに使ってみてね♡



「私のユーベルコードの拡大魔法や縮小魔法、アイテムの巨大化薬や縮小薬で色んなものを大きくしたり小さくしたり。きっと楽しいことが出来るわね♪」

 武蔵坂学園にてロジーナ・フィンダーとの対決から『最近の変な噂話』――『|777《スリーセブン》』はお色気に弱いという情報を入手したミーガン・クイン(規格外の魔女・f36759)。
 今、彼女はある新型アウトレットショッピングモールにて異色のファッションショーに出演していた……!

「はぁい♪ サキュバスの魔女、ミーガン・クインよ。皆、シッカリと私の服を見ていらしてね~♡」

 ボス『|777《スリーセブン》』の居場所を探していたミーガン。そんな彼女に目を付けたのはまさかの『眷属』に変えられたエスパー。
 だが、この『眷属』に変えられたエスパーは余程アパレル業界に精通していたのか……『眷属』に変えられても尚、自分の事業拡大の為に奔走していた。

 その一つが今、目の前で行われている新型アウトレットショッピングモールのファッションショーである。

 『眷属』に変えられたエスパーの名は……『ファッション・ゴリ男』。その品の無い名前とモノゴツイ筋肉質な肉体から、繊細なファッション業界とは一見無縁に思えるが……実はこのゴリ……人。
 若い頃はファッション業界の革命児とも呼ばれ、主に裏方で活躍。数々の美人モデルを発掘してあらゆる賞を総なめにし、現在はアパレル・ファッション業界でその名を知らない人はいないと言われる程の有名人なのだ。
 スタイル抜群なミーガンのボディーを一目見て、このゴリ……いや、『ファッション・ゴリ男』の中で稲妻の如き天啓が閃いた。

 ――彼女ならば今回のファッションショー。大成功に導ける……! 正に磨けば輝くスターの原石!――

 そんでもって、偶然このアウトレットショッピングモールに通りかかったミーガンをスカウトしたのだ。

「私はこういう者よ。年齢は秘匿情報だけど」
「……『ファッション・ゴリ男』? 私に何の用かしら? あなたもしかしてジムのお誘い?」

 ミーガンは怪訝な目付きで『ファッション・ゴリ男』を見た。さすがに彼女の目から見ても、とてもアパレル・ファッション業界に精通した超有名人には見えない。

「先に言っておくわね? 実は私。こう見えても『|777《スリーセブン》』の『眷属』に変えられたエスパーよ」
「……! それ本当?」

 だが、この時ミーガンは半信半疑だった。『|777《スリーセブン》』の『眷属』だとしたら……もしかして何かの罠かしら? そう見当を付ける。

「ええ。誓ってね。でも、私のファッション愛には『|777《スリーセブン》』の力も半分程度にしか及ばなかった。少なくとも自我は残っているわ。特にアパレル・ファッションに関して自分がどういう立場にいるのかだけは忘れてないわ」
「それで? その半分『眷属』さんが私に何のスカウト? もしかして今言ったアパレル・ファッション業界の手助けをしろって事?」

 『ファッション・ゴリ男』は嬉しそうに頷いた。コクリと。

「正直、今のあなたからはファッションの『ファ』の字も思い浮かばないんだけど……。まあ、良いわ。その言葉を信じて良いのかしら?」
「ええ、もちろんよ♪ あなたにはこの新型アウトレットショッピングモールにてこれから行われるファッションモデルとして働いて貰います。報酬は『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》を教えるって事で良いかしら?」
「……悪くない条件ね。良いわ、私の美貌をこの世界『サイキックハーツ』に広める良い機会♪ ファッションモデルの仕事引き受ける事にするわ。報酬の件は忘れないでね♡」

 ニンマリと笑う『ファッション・ゴリ男』。こうして『|777《スリーセブン》』の『眷属』に変えられたエスパー。『ファッション・ゴリ男』との商談は成立した。

 *

『さあ、お次はファッションモデル達による演舞です。美しくも儚い奇跡のミュージカルと、その煌びやかな衣服をご堪能あれ……!』

 異色のファッションショーは何でもありだ。だが、それに順応するのがミーガン・クインなのである!

「皆が着ている服のサポートに不思議な魔法の力はいかがかしらぁ?」

 軽やかにダンスを踊りながら煌びやかな衣装を身に付けて、ミーガンは妖艶に微笑んだ。大きな胸を揺らした規格外の魔女は既にこのファッションショーの主役だ。

「ミーガンちゃ~ん! こっち向いて~♡」
「素敵だよ~♡ ミーガンちゃん!」

 カメラのフラッシュと既にミーガンのファンとなった男連中の声援を浴びてミーガンは優しく微笑んだ。
 今回のファッションショーの一番の盛り上がりを魅せるミュージカルも佳境に入ると、ミーガンはアイテムの『ミュールフォン』を取り出す。
 『ミュールフォン』は美しき女型の天使です。かつては天にも達する程巨大な姿だったらしい。

「ミュールフォンは無口で無表情だけど従順で私を守ってくれる、剣と盾で戦う天使ちゃん。戦闘面はこの子にお任せ♪ 巨大化で蹂躙しちゃいましょう♡ ……でも、その前に」

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『サイズドレイン』発動!

「ちいさくなぁれ♪」

 他のモデル達とアイコンタクト。タンゴの様にタップを踏みながらさり気なくハイタッチ♪ 次から次へとモデル達が小さくなっていく。

 『サイズドレイン』は【素肌】に触れた対象の【身体の大きさ】を奪ったり、逆に与えたりできる。また、ドレインと言いつつ大きくする事もできる。

「あらら~? 皆、どうしちゃったの~? 可愛い小人さんになっちゃったわぁ~♪」

 客席からどっと笑いが起きる。それでもミーガンの演劇は終わらない。一度カーテンの奥に姿を隠して、ドレスチェンジ。
 その間に『ミュールフォン』と小さくなったモデル達との戦いの演舞が巻き起こる。会場からは拍手が沸く。

「争いはおやめなさい……! 私、ミーガン・クインが許さないわよ」

 そこで純白のドレスを着た大天使。ミーガン・クインが舞台裏から登場。これまでで一番の大喝采。

「……ですが、姫様。私達は無力なのです。貴女の様に強く大きくはないのです……!」
「ならば、私の力をお貸し致しましょう……大きくなぁれ♪」

 もう一度小人となったモデル達とハイタッチして、元の姿に戻すミーガン。さり気なく『ミュールフォン』も回収して……大団円!

 他のモデル達と手を繋いで一斉に掲げる。
 紙吹雪がパアン♪ と、豪快にステージの両脇から飛び出して宙を舞う。
 数々の衣装をミュージカル形式に披露して、その中心にミーガンは微笑んで皆と共にお辞儀。

 こうして異色のファッションショーは無事に閉幕した。

 *

「見事だわ、ミーガン。あなたモデルとしてだけでなくミュージカルの才能もあるのね」

 『ファッション・ゴリ男』はミーガンの異色のファッションショーの演舞に満足している様だ。思わずニンマリ笑う。

「……それで? 約束よ。肝心の『|777《スリーセブン》』の|潜伏先《アジト》を教えてね」
「ええ、もちろん。私も奴の事は許せないわ。『|777《スリーセブン》』はここから西の方面に位置する今は誰も住んでいない『カラクリ屋敷』に潜んでいるわ。是が非でもアイツを倒して頂戴ね」
「ありがとう。それでは私はこれにて失礼するわね。今日は楽しかったわ♪」

 踵を返して『カラクリ屋敷』に向かう、ミーガン。ちょっと待って! と、それを呼び止める『ファッション・ゴリ男』。

「何かしら? 『ファッション・ゴリ男』。まだ、何かあるの?」
「さっきの言葉の続き。『|777《スリーセブン》』を許す事は出来ない。けれど……」
「……けれど?」
「でも、出鱈目かもしれないけど奴の計画のお陰であなたと言う最高のモデルに出会えた。それだけは感謝しなくちゃね。これが私の真摯な気持ちよ」

 『眷属』に変えられたエスパー。『ファッション・ゴリ男』の眼差しに濁りはない。ミーガンはくすりと微笑んで、そして言った。

「また機会があったら……私のことを好きに使ってみてね♡」

 『ファッション・ゴリ男』もくすりと微笑んで頷く。

 こうしてミーガンはちょっと変わったアパレル業界の有名人と別れを告げ、一風変わったファッションショーを終えた。

 向かうべき先は、ここから西に位置する『カラクリ屋敷』。

 『眷属』に変えられたエスパー。『ファッション・ゴリ男』の為にも『|777《スリーセブン》』を倒すと覚悟を決めて、ゆっくりと歩き出す。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネッド・アロナックス(サポート)
めずらしい そざいはある?
なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!
(※セリフはひらがな+カタカナ+空白で話します)

探し物や調べ物は楽しくて得意だよ
"くらげほうき"や"ゆきソリ"で空を飛んだり泳いだりしてヒトや物も運ぶよ

戦闘はサポートに回ることが多いかな
手強い敵は基本隠れながら隙を作って逃げる!
"クリーピングコイン"で物をひっかけて飛ばしたり
"しろくじら"の歌で余所見をさせたりね

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
よろしくおねがいします!



「さがしものや シラベモノハ たのしくて トクイダヨ」

 開口一番にそう答えたのはネッド・アロナックス(ガムゴム人の冒険商人・f41694)である。
 人類遺跡のガラクタ素材屋さんであり、|猟兵《イェーガー》でもある彼は今、海沿いの浜辺にあるオンボロ海の家『コスタオーラ』の主人。
 その名も『コスタ・オーラ』から仕事の依頼を受けていた。

「お前、オレと同じ商売人だろ? なら……ちょっくらオレの悩みを聞いちゃくれねえか?」
「まあね デモ あなたの ウミノイエ そうとう ネンキ はいってるよね」

 痛い所を突かれたコスタ・オーラ。思わず苦笑して、自分の海の家『コスタオーラ』からほんの少し離れたもう一つの海の家『ベイラルゴ』を指差した。

「あそこにある海の家『ベイラルゴ』の主人『ベイ・ラルゴ』はオレの親友でね……最近喧嘩してそれっきり口を聞いちゃくれねえ」

 ネッドはコスタ・オーラが指差した先にあるもう一つの海の家『ベイラルゴ』を見つめた。そちらの方は恐ろしく綺麗でお洒落な木造建築物だ。
 まるで海の家『コスタオーラ』とは月とスッポン。お世辞にもこちらの方が綺麗だとは言い難い。
 海の家『ベイラルゴ』が瀟洒な有料コテージだとすると、海の家『コスタオーラ』は廃墟で幽霊でも出てきそうだ。

 もう少ししたら海開きする時節。海の家『コスタオーラ』の主人コスタ・オーラは意気込んでネッド・アロナックスに頼み事をした。

「……頼む! お前の力を貸してくれ! 一緒にこの海の家『コスタオーラ』を改築して奴――ベイ・ラルゴよりも多くのお客さんを呼び込むんだ。商売人のお前なら……やるべき事は分かるだろ?」
「『くらげほうき』や 『ゆきソリ』デ そらをとんだり オヨイダリシテ ヒトやものも ハコブヨ」
「そりゃあ……助かる! なら、OKだよな?」
「しかたないね オナジ しょうばいにん トシテ このじょうきょう…… ダマッテ みすごすわけには イカナイナ!」
「よ~し! 決まりだ。『ベイラルゴ』よりも豪華な海の家『コスタオーラ』にしてやろうぜ……! ナイス判断! ネッド♪」

 こうして、ネッドは海の家『コスタオーラ』の再建に協力する事になった。

「でも ドウシテ しんゆうと ケンカ したのかな?」

 何気ない疑問がネッドの脳裏に過ぎった。これにはコスタ・オーラも顔を顰める。

「……正直、オレにも良く分からないんだ。数日前……あいつに声を掛けたら、様子がおかしかった。それでふとした事がきっかけになって大喧嘩。今じゃ商売敵になっちまった」

 ……様子がおかしい? もしかして――ネッドの思考は更に加速。事件の内容から、黒幕の思惑や弱点を推測する。

「確か、あいつは何かブツブツ呟いていたよ。ここで得た資金を……『スリーなんたら』様とか言う人物に献上するんだ! とか何とか」

 賢いネッドはそこで合点がいった。間違いない。その『スリーなんたら』とは『|777《スリーセブン》』の事だ。
 そして、今。ベイ・ラルゴは『眷属』に変えられた別人に成り果てている。それが原因でコスタ・オーラと喧嘩になった。
 資金とは海の家『ベイラルゴ』で得る利益の事だろう。だとすれば尚更この勝負。負けていられない。

 取り敢えずやるべき事はこの海の家『コスタオーラ』のリフォームだ。木製家屋の内部。そのほとんどがカビや潮風によって傷んで腐食が進んでいる。

 アイテム『てぶくろ』(厚手の手袋。グリップ力に優れ、細かい作業もしやすい愛用品)を装備していたネッドは主人のコスタ・オーラと共に商売道具の機材――冷蔵庫やガスコンロ等――を外に出して、本格的にリフォーム作業に入る。
 更にネッドは技能。『やり込み246』と『運搬1』を駆使して木材を海の家『コスタオーラ』内部に運び込む。
 新しい木材は事前にコスタ・オーラが軽トラックに積んで持って来ていた。なので木材は十分。大量にある。
 ここからは建物の基礎、土台、柱、梁などに気を付けて慎重にカビや腐食した箇所を解体していく。当然、そこに新たな木材を釘で打ち込み固定。時間は掛かるが丁寧に作業する。
 段々と海の家『コスタオーラ』の内装が出来上がって来た。新たな木の温もりと独特の香りがする。そこにDIYの要領でテーブルやイスを幾つも作り出す。
 更に天井にはお客さんがリラックス出来る様にゆったりと風の流れを誘い込む、シーリングファンを四つ程設置。新たな蛍光灯も取り付けた。

 ネッドが海の家『コスタオーラ』をリフォームしている最中、主人のコスタ・オーラは最初に外に運び出した機材に錆び落とし剤の入った容器でスプレーし、布巾で丁寧に拭う。
 更に内装がほぼ完成した途中からネッドもそれを手伝った。錆び落としが終わったピカピカな機材に錆び止めスプレーを更に重ねてかけて、潮風の中長く使える様に予防措置。
 後は機材をリフォームした海の家『コスタオーラ』の中へ運び込む。指定位置に設置した後、観葉植物や店内の雰囲気を盛り上げる音響効果のあるスピーカーを所々に設置する。

 こうして内装は無事に完了した。ついでに外観にも手を加える。特に屋根には気を付けて、瓦の代わりとなる古い木の板を一枚ずつ剥がしては新しくて頑丈な物に取り換えていく。
 こちらは屋根なのでややシックな赤の色合いで見る者を魅了し、尚且つ風雨対策もバッチリな木材を使用。壁は内装のついでに済ませていたので、ペンキで塗装した後ニスを塗り完了!

「海の家『コスタオーラ』の――」
「――かんせい ダネ!」

 思わずハイタッチ♪ 歓喜する主人のコスタ・オーラとネッド・アロナックス。手造りながらもそれぞれが満足する仕上がりだ。

 向こう(海の家『ベイラルゴ』)がゴージャスな高級ホテルなら……こちらは木の温もりが漂うレトロモダンな落ち着く海の家。
 材料費では劣るが、見栄えは悪くない。人によっては海の家『コスタオーラ』の方が好みだと思う人もいるだろう。

「助かったぜ! ネッド、お前凄いよ。これならばベイ・ラルゴと対等に商売出来る!」
「これぞ ショウバイニンノ たましいの ケッショウ だね!」

 その時だ。遂にこちらの状況を察したのか、ベイ・ラルゴが現れた。

「……へぇ~。コスタ・オーラ、キミの海の家『コスタオーラ』も随分と様変わりしたもんだね。まあ、オレの海の家『ベイラルゴ』には敵わないだろうけどな!」
「何だ? お前。俺の海の家『コスタオーラ』に難癖付けに来たのか」
「いやいやいや。そんな野暮な事はしない。どうせお客さんはうちに流れて来るだろうし、キミの悪足掻きがちょいと気になったまでさ」
「お前……!」
「しょうぶは ヤッテミナケレバ わからない」

 その言葉で初めてネッド・アロナックスという助太刀がいる事に気付いたベイ・ラルゴ。

「ほ~う。キミが海の家『コスタオーラ』に魔法をかけた救世主だな? 見た所|猟兵《イェーガー》の様だけど……戦いが専門じゃないのか」

 皮肉を言うベイ・ラルゴ。だが、そんな事意に介さず正直に答えるネッド。

「せんとうは サポートニ まわることが オオイカナ てごわいてきは キホンカクレナガラ すきをつくって ニゲル!」

 それを聞いたベイ・ラルゴはクツクツと喉の奥で笑う。

「これまた大した|猟兵《イェーガー》だな。逃げるが勝ちって訳か。まあ、オレの海の家『ベイ・ラルゴ』に災難があったら助けてくれ」
「……誰がお前の手助けをするってんだ! 残念ながら|猟兵《イェーガー》のネッドはこちら側だ。云わばお前とは商売敵だな」

 すると、ベイ・ラルゴは『眷属』としての本性を現した。

 高く哄笑して蔑んだ瞳で海の家『コスタオーラ』とその主人コスタ・オーラ。
 そして|猟兵《イェーガー》のネッド・アロナックスを見つめる。

「勝負はもう付いてると思うけどね……! まあ、精々頑張るんだな。その逃げ腰の|猟兵《イェーガー》さんと共にね」

 そうしてベイ・ラルゴは去って行った。

「あの野郎……。ネッド! 絶対に今回の勝負……勝とうぜ!」
「……うん」

 でも、あなたの親友は一時的に『|777《スリーセブン》』の魔手によって『眷属』に変えられた被害者の一人……とは、口が裂けても言えないネッド。少なくとも今は……。

 *

 そんな中、海の家『コスタオーラ』と同じく海の家『ベイラルゴ』は開店した。何でも海開きする少し前に客寄せをして海水浴場の固定客をこの時得るんだとか。
 つまりこの時の接客サービス、お店の雰囲気、商品(主に食べ物)の値段や味、店内の利便性と顧客が気に入るデザインなどが|戦《いくさ》の勝敗を分ける。

 遂に客商売の戦いは始まった……!

「へい、いらっしゃいませ~♪ 海の家『コスタオーラ』へようこそ! 店内は改装したばかり! きっと気にいる事間違いなし」
「いらっしゃいませ。抜群の居心地の良さを提供する海の家『ベイラルゴ』! 一生の思い出になる事を約束しますよ」

 まず出だしは双方共に順調。一進一退の攻防で客取り合戦していた。実力はほぼ互角……!

「やきそばに ラーメン ふるーつぱふぇの ゴチュウモンデゴザイマスカ? しょうしょう オマチクダサイ」

 ネッドは商売柄、接客サービスも得意。暫く順調に進み客が最も多く、一番忙しい昼のピーク時を何とか乗り切った。
 唯、そんな中……海の家『ベイラルゴ』に不穏な影が。最も警戒していたネッドは客が空いてきた時間を上手く利用して、コスタ・オーラに少しばかり店番を外す事を告げた。

「……? まあ、良いが……どうしたんだネッド?」
「なあに チョットシタ いぇーがーの モウヒトツノ しごとだよ」

 ??? コスタ・オーラは全く訳が分からなかったが、ネッドが海の家『ベイラルゴ』に向かったのだけはさり気なく見ていた。

「敵さんのお店に何の用があるんだ?」

 思わず仕事をしながらぼやくコスタ・オーラ。

「……時間だ。資金調達は完了出来たか? ベイ・ラルゴ」
「あ、あの~もう少しだけ待って貰えますか? 出来れば今回の商売が成功するまで――」
「ふざけんな! 誰の為にこの海の家『ベイラルゴ』を高い金払って提供したと思ってるんだ……!」
「で、ですからそれはこれからここで資金を調達する手筈でして……」

 何やら海の家『ベイラルゴ』で事件発生。野蛮な客がお店を荒らしている。

「あなたが クロマクデアル すりーせぶんの テシタナノカナ?」

 そこに近付いてきたネッド。その一言に敏感に反応する謎の刺客。

「……あん? 何だテメーは。どこで『|777《スリーセブン》』様の事を……まあ良い、こちとら仕事中だ! 邪魔するなら――」

 その時だ。ネッドの頼りになる相棒。ソリや仲間も運べちゃうパワフルで歌が大好きな『しろくじら』(本当はシロイルカ)を使って敵対する人物の注意を引く。
 『しろくじら』の歌で余所見をさせたりね。

「何だ? その白い……クジラ? いや、イルカかな? って、んな事どうでも良い! 歌が耳障りだ! さっさと――」

 次に飛んできたのは『クリーピングコイン』だ。スコーン♪ と、子気味良い音と共に敵さんの頭目掛けて次から次へと飛んでくる!
 もちろんこれもネッドの仕業だ。『クリーピングコイン』で物をひっかけて飛ばしたり。
 主人と認めた者に従い戦う、意志ある『空飛ぶ金貨』の大群です。

「痛い! 痛い! いたたたた……! 何の真似だテメー!」

 敵さんが襲い掛かって来るのも想定内。

 ネッドは|UC《ユーベルコード》(SPD)『猫の悪戯』を発動!

 【猫魔力】を纏ってレベル×5km/hで跳び回り、触れた物品や対象の装備を破壊、あるいは使用不能にする。

「あ~! 何だこの猫め! 俺のピストルを破壊しやがって……! 畜生、今日はもうずらかるぜ。覚えてろよ! このクラゲ人間!」

 そうして野蛮な輩はどうにか撃退した。キョトンとしているのは他でもないベイ・ラルゴ。

「と、取り敢えず礼だけは言っておこうか。ありがとう……ネッド。助かったよ。さっきは逃げ腰の|猟兵《イェーガー》なんて言って悪かった」

 今回の事件の黒幕『|777《スリーセブン》』の配下が去って行った事で少しだけ『眷属』の呪縛から解かれたベイ・ラルゴは素直に礼を言った。

「もしかして……キミ。オレが『|777《スリーセブン》』に操られている事を最初から知っていたのか?」

 ベイ・ラルゴの問いにコクンと頷くネッド。そして言った。

「めずらしい そざいはある? なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!」
「ふ! しょうがないな。自我を取り戻せた今だけ、とっておきの情報を教えよう。『|777《スリーセブン》』はここから真っすぐ北の方角に位置する古い洋館。今は誰も住んでいない『カラクリ屋敷』にいるよ」

 ネッドは満足して頭を下げた。唯、その一部始終を見ていたのは野次馬連中だけじゃない。

「その話は本当か? ベイ・ラルゴ。お前、あの時から『|777《スリーセブン》』の『眷属』として操られてたのか」

 そう。他でもないコスタ・オーラだ。

「……ああ、本当さ。コスタ・オーラ。キミには迷惑を掛けた。誤解を招く様な真似をしてオレは――」
「いや、良いんだ。ベイ・ラルゴ。そもそも『眷属』に変えられてたんだから、お前のせいじゃない。その事に気付かなかったオレにも責任はある」

 こうしてネッドのおかげで和解した二人。

 コスタ・オーラとベイ・ラルゴの友情は元に戻りその後、二つの海の家『コスタオーラ』と『ベイラルゴ』はこの海岸を賑わす主要な観光地として賑わったんだとか。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『勇者『皇・銀静』』

POW   :    四門開門
全身を【己の潜在能力を解放させる黄金のオーラ 】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
SPD   :    超・艦隊斬り
自身の【愛刀である霊剣『Durandal AG』】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【無限に伸びた光の刃による薙ぎ払い】を放つ。
WIZ   :    四門閉門
【天より飛来し戦場の四方を囲む四神の巨門 】から、戦場全体に「敵味方を識別する【火・土・水・風の属性に属する攻撃】」を放ち、ダメージと【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を与える。

イラスト:内藤ゆう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はバーン・マーディです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●カラクリ屋敷の主

 『サイキックハーツ』の各地で情報収集して、更にボスである『|777《スリーセブン》』に『眷属』に変えられた人物達からその|潜伏先《アジト》を聞き出す事に成功した|猟兵《イェーガー》達。
 場所は繁華街の先、廃墟と化したテーマパークの北西、新型アウトレットショッピングモールの西、二つの海の家が並ぶ海水浴場から北にある。

 今は誰も住んでいない古い洋館。その『カラクリ屋敷』にひっそりと潜んでいるのが自称『勇者』の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』だ。

 さあ、奴の居場所はもう分かった。後は決戦に備えて奴を倒すだけ……!

 |猟兵《イェーガー》達よ。戦う覚悟は良いか……!?
白匣・覚醒(サポート)
 怪奇人間の猟奇探偵×四天王、35歳の男です。
 普段の口調は「シロベヤ(私、君、呼び捨て、言い捨て)」、演技時は「KP(私、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)」です。

存在が密室です。白い部屋です。
KP時の口調でお願い致します。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「ここが件の『カラクリ屋敷』ですか? それで、アナタがまさか……『|777《スリーセブン》』?」

 そう問い質したのは白匣・覚醒(密室探偵・f22856)だ。目の前には赤い絨毯が床に敷いてあり、少し先に十字を描く様に交差している。
 その先には大きな玉座があり、まるで白匣を招き入れる様に何者かの影があった。
 そいつは分厚い書物を暫く広げて見つめていたが……やがて閉じて、如何にも君の言う通りだ――とやや気取った口調で答えた。

「今回の事件。『サイキックハーツ』での出来事をアナタが起こしたのでしょう。何が目的なのか知りませんが……許す事は出来ません」
「ほほう! そいつは傑作だ……! 私は勇者。『|777《スリーセブン》』だ! だとすれば君はこの世界『サイキックハーツ』で私の『|物語《ストーリー》』の立役者。詰まる所、敵だと言うべきだね?」

 何だか面倒臭い事を語り出すこの館。『カラクリ屋敷』の主。その名も『|777《スリーセブン》』。だが、結論だけ言わせて貰えば間違いではない。

 存在が密室です。白い部屋です。そんな怪奇人間の猟奇探偵――白匣は『|777《スリーセブン》』の居座るこの『カラクリ屋敷』の中を何気なく見つめた。

 一階は中央の床に赤い絨毯がクロスしていて、その奥に何様か知らないが巨大な玉座。その両脇に弧を描く様に階段が左右対称に連なり、二階、三階へと続いていく。
 驚きなのはこの無駄に豪奢な西洋風のお屋敷にて、壁全体を覆うかの様に仕舞われている数々の本。分厚い物から手に取り易い文庫本サイズの物まで多種多様にある。

「中々、良い部屋です。アナタには勿体ないくらい」
「ふむ。私は勇者。『|777《スリーセブン》』! 敵ならば致し方あるまい……私の『|物語《ストーリー》』の一部として成敗してくれる!」

 腰にある両手剣を抜刀した『|777《スリーセブン》』は戦闘態勢に入る。
 思わず溜め息を吐く白匣。このまるで西洋風の図書館の様な佇まいは気に入ったが、如何せんその所有者である相手が『|777《スリーセブン》』である以上放置してはおけない。

「分かりました。アナタの本性を暴く為にも……戦いは避けられないのでしょう」

 ジリジリと距離を詰めていく両者。白匣と『|777《スリーセブン》』はお互いに睨み合う。段々と近付いていき、二人は不敵に微笑んだ。
 それが戦闘開始の合図となり、この『カラクリ屋敷』の一階で跳躍する……!

 ――白匣 VS 『|777《スリーセブン》』――

 本で満たされた謎の館。『カラクリ屋敷』は吹き抜けの空間設計になっている。
 普通、室内での跳躍程やり辛いものはないがここでは条件が違っていた。階段の手摺り、内廊下、天井、光を取り入れるステンドグラス。そのどこにでも足場に出来る広さが戦いをより派手なものにする!

「……喰らえ! 『超・艦隊斬り』!」

 お互いの跳躍力と足場の確保。その一瞬の判断力が命取りになる。そんな素早さ勝負が戦いの肝となり、まず敵である『|777《スリーセブン》』が先手を取る!

 『超・艦隊斬り』は奴自身の【愛刀である霊剣『Durandal AG』】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【無限に伸びた光の刃による薙ぎ払い】だ。
 ボス『|777《スリーセブン》』が愛刀を遠距離から振るう。すると、そこから光の刃が伸びて白匣を捉えた!

「……くっ! アナタ、この『カラクリ屋敷』を壊すつもりですか? 気に入りません! せっかくのお部屋が台無しでしょう!」
「確かにここは私の唯一無二の空間! で……あるならば、ここを守る為にも外敵の排除は厭わない! 多少の犠牲は仕方ないと言うもの……!」

 何て奴だ……! と、白匣は思った。それは自身が白い部屋の密室であればこそ。部屋への愛情と愛着心が白匣の心を揺さぶり、それを台無しにする『|777《スリーセブン》』への憎悪が沸く。
 敵――自称勇者『|777《スリーセブン》』の攻撃を紙一重で避けたものの、それが原因で足場を失い、高所から落下。グラグラと『カラクリ屋敷』全体が揺れて、たくさんの書物が床へと落ちる。

「フン! 何とも他愛のない……!」
「まだ闘いは始まったばかりですよ。戦闘中にお喋りですか?」

 落下を受け身で何とか最小限のダメージに抑え、反撃。技能『催眠術1』で『|777《スリーセブン》』の精神状態を錯乱させ様とする白匣。

「むむむ……中々ややこしい手を! 洗脳ですか? だが、数多のエスパーをも『眷属』に変える私が君のマインドコントロールに引っ掛かるとでも?」

 どうやら敵、『|777《スリーセブン》』に洗脳系の技能スキルは余り通用しない様だ。少なくとも奴の弱点はこれではない。だが、白匣はあくまで前向きだ。

「失敗は成功の母。『|777《スリーセブン》』! アナタの弱点を探るのには好都合でしたよ」
「ハハハ! 強がるのは止したまえ! 今にも君は反撃の|手札《カード》が無くなりそうじゃないか! |猟兵《イェーガー》らしく|UC《ユーベルコード》を使ってみたらどうだ?」

 再び跳躍してこの『カラクリ屋敷』の床、壁、天井を蹴り積極的に敵との間合いを詰めに行く白匣。まだ|UC《ユーベルコード》は使わない。使ったら奴の思うつぼだ。

 そんな中、自称勇者『|777《スリーセブン》』は再び攻勢に打って出た。さすがは|狂戦士《バーサーカー》。アクセル全開でまるで躊躇が無い。

「それとも|UC《ユーベルコード》無しでこの私を倒すつもりか? ……『四門開門』!」

 次に奴が繰り出して来たのは『四門開門』……!

 全身を【己の潜在能力を解放させる黄金のオーラ】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る力技だ。

 『四門開門』により更に動きが素早くなり、戦闘力が増した『|777《スリーセブン》』。

 このままだと不味いな――さすがの白匣にも焦りが生じる。

 敵は超絶な素早さを誇り、『カラクリ屋敷』内部を地上から空中全域に縦横無尽。目で追うのもやっとだ。

「仕方がないです……これ以上、この『カラクリ屋敷』の景観を損なうのは耐えられません。私がアナタに部屋の大切さ。尊さを教えて上げます!」
「……部屋の大切さだと? 一体どういう意味だ」

 敵。自称勇者『|777《スリーセブン》』は虚を突かれ、一瞬動きが鈍る。

「君達は目覚めた。ここは真っ白な部屋だろう」

 |UC《ユーベルコード》(POW)『怪奇密室人間探偵シロベヤメザメ』(シロベヤメザメ)を発動した白匣!

 肉体の一部もしくは全部を【ユウデヱシイ蔓延ル白イ密室】に変異させ、ユウデヱシイ蔓延ル白イ密室の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。

「な、何じゃこりゃああああ……!」さすがの自称勇者『|777《スリーセブン》』もキャラが崩壊。

 それもその筈。いきなり敵である白匣の姿が千変万化。彼曰く『白い密室』が、突如として出現し自称勇者『|777《スリーセブン》』を覆い飲み込んだのだ。

「こ、これが君の……!?」
「そうです。怪奇白い部屋人間――私の|UC《ユーベルコード》。密室が本体。棲み憑いた怪物は迷い込んだものを啜る」
「ギャア――――! 怖い!」
「そんな事を謂うけどね、君ぃ、私にも貌は必要だと思うのだよ。一応はキャラクタアなのだから!」

 これでも白匣は怪奇人間の猟奇探偵×四天王、35歳の男です。

 真っ白い部屋。その密室の中、謎の奇怪な怪物と対峙しているのは他でもない自称勇者の『|777《スリーセブン》』だ。さすがにこれは想定外だろう。
 明らかに混乱と恐怖で膝が笑っている。それでも一応勇者なのだからその|誇り《プライド》を守る為に手持ちの両手剣を振るう……!
 さっきまでの勢いはどこへやら。剣を振るう力も心なしか自身なさ気で、一般人が見ても――あいつ何のチャンバラしてんの? と、思わせる腰砕けっぷり。
 そして襲い来たる棲み憑いた怪物にガクブルになりながらも、戦う。何とか戦う。

 もう勝負は着いた――そう思わせる出来事。だが、白匣が少し油断していたそんな時に敵。自称勇者『|777《スリーセブン》』の最後の|反撃《カウンター》が始まる!

「ぐぬぬぬ……! だが、勇者は諦めない。ここは『四門閉門』だ!」

 『四門閉門』――【天より飛来し戦場の四方を囲む四神の巨門】から、戦場全体に「敵味方を識別する【火・土・水・風の属性に属する攻撃】」を放ち、ダメージと【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を与える。

「……ぐっ!」

 |UC《ユーベルコード》の『怪奇密室人間探偵シロベヤメザメ』(シロベヤメザメ)が強制解除され、元の『カラクリ屋敷』に戦場が戻って仕舞った……!

 『火』の業火! 『土』の土砂崩れ! 『水』の津波! 『風』の竜巻! 各属性の強力な攻撃が敵味方を識別。主である『|777《スリーセブン》』を守護し、敵と認定した白匣を襲う。

 それと同時に効果が解除された|UC《ユーベルコード》を封印する状態異常が付加された。
 こればかりはさすがの白匣も参ったと言わざるを得ない。密室が本体であるが為に強力な一撃を見舞われたのだ。

「……ハッハッハッハ! これにて『|物語《ストーリー》』は終幕だよ! だが、敵ながら天晴れだ! まさか君自身が部屋。|UC《ユーベルコード》の一部になるなんてね……! 予想外の展開だ! これで新しい『本』がまた書ける!」

 良いネタを有難う! と、心から感謝している自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』も既にボロボロだ。
 装備している銀色の鎧は所々凹み、紫色のマントは破け、穴が開いていた。
 しかし、何よりも『|777《スリーセブン》』は勝ちを確信し、どこからでも無防備な状態で勝利の余韻に浸っていた。それが敗因になる事等、露程も思わずに……!

「……『本』ですか? なるほど、そう言う事ですね。この館に埋め尽くさんとしてある書物はアナタの言う『|物語《ストーリー》』が書き記してあるのでしょう。これまで戦い倒して来た|猟兵《イェーガー》との記録。『|777《スリーセブン》』の武勇伝。自称勇者を名乗るのもそう言った経緯があったからでしょう」
「な、なぜそれを……! どこに隠れている?」
「アナタの真後ろです」
「!?」

 時刻は日が昇る正午を過ぎた辺り。天井の壁伝いにあるステンドグラスの窓から中に入り込んでくる日の光が、自称勇者。
 『|777《スリーセブン》』の姿を影絵の様に床に晒した。悲劇の主人公の最期の時を報せる|舞台《ステージ》の様に。

 自称勇者『|777《スリーセブン》』が振り向く前に技能スキル『マヒ攻撃1』で首筋に手刀を放つ白匣。

「……ぐ!? ぬぬぬ! ど、どういう――」

 麻痺には耐性が無く『|777《スリーセブン》』の動きが鈍くなる。

「――どういうトリックか……ですか? 簡単な事です。あの天井付近に飾り付けられる様にしてあるステンドグラスの日の光。そこからアナタに出来た影を利用させて貰ったんです」

 その言葉通り。白匣は最後の技能スキル『闇に紛れる1』で『|777《スリーセブン》』が勝ちを確信した直後。奴の背後に出来た影に隠れた。

「密室の部屋人間は最初に部屋を熟知してるんです。アナタの様に自分の武勇伝を『|物語《ストーリー》』として『本』のネタにする様に。お互いナルシストですね」

 わざと敵を誘き寄せて戦い、それをネタに『本』にしてしまう。

 それにしても……これが『カラクリ屋敷』に住まう自称勇者。|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』の目的だったとは……。

「くっ……! 仕方ない。認めよう……負けは負けだ。唯、二言三言私の愚痴を聞いてくれないか? 優秀な|猟兵《イェーガー》よ」
「どうぞ」
「私の本名は勇者『皇・銀静』だ。それと……よっぽど君の方が『カラクリ屋敷』だよ」

 それを聞いた白匣は思わず苦笑した。

成功 🔵​🔵​🔴​

中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)

裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。性格は享楽的な戦闘狂
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す
ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します

あと、虫が苦手



「すぐに終わってしまってはもったいないですわね」

 『カラクリ屋敷』の扉を開けて入った途端、戦闘モードになったのは中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)だ。
 今は副人格のシルヴァーナで行動します。裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。性格は享楽的な戦闘狂。

「……ほう。またしても私の『本』のネタとして『|物語《ストーリー》』を継承する者が現れたか」

 目の前には豪奢な玉座。そこに居座っているのは他でもない。自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》。その名も『|777《スリーセブン》』!

「あなたが『|777《スリーセブン》』さん? 随分と古い洋館に住んでるのですわね。それに何ですの? この『本』の数。やたら読書が好きなのですわね」
「私は特別読書好きなのではない。これらの『本』は君と言う来客者を出迎える度に増えていった……云わばコレクションの一つだ」

 そう言うと、自称勇者は立ち上がった。奴は|狂戦士《バーサーカー》。そしてシルヴァーナは多重人格者の殺人鬼×竜騎士。
 お互いの意図は明確だ。それは――戦う事……!

 ――シルヴァーナ(中村・裕美) VS 『|777《スリーセブン》』――

 先手に打って出たのは……シルヴァーナ! 戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す。

「ふむ……中々の技能の使い手だと見た。だが、いつまでそれが続くかな?」

 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』はシルヴァーナの華麗なステップから瞬時に『惨殺ナイフ』の『早業』が飛んでくる位置を予測!
 『残像』で幾人かに見えるシルヴァーナの分身にも惑わされない立ち位置を先取りして、紙一重でそれを避けていく。

 スパッ! と、シルヴァーナが放った惨殺ナイフ『 Zanne di squalo』の鋭い先端が『|777《スリーセブン》』の頬を掠めた。一筋の線から血が滴る。

「『本』がコレクション? わたくしとしては、この戦い。出来るだけ長く楽しみたいのですわ。例えるなら、どこかの庭園。秋の陽光にまったりと浸りながら、紅茶の入ったティーカップ片手に優雅な読書を楽しむ様にね」
「お喋りがお好きなようで何よりだ。次は私から行くぞ? 『四門開門』……!」

 次に打って出たのは『|777《スリーセブン》』だ。

 『四門開門』は全身を【己の潜在能力を解放させる黄金のオーラ】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

 古い洋館。『カラクリ屋敷』は二階、三階へと続いていく吹き抜けの空間設計になっている。狭い様で広く意外と戦闘に適している構造だ。

 『四門開門』により黄金オーラを纏った『|777《スリーセブン》』。戦闘力が増強され、そのまま飛翔した! その高さは一瞬で三階の天井にまで達する。
 蜘蛛の巣が張った周囲をステンドグラスの窓で張り巡らされた天井を足場にして、バネ仕掛けの要領でこちらに飛んでくる。

「ふふふ♪ そう来なくっちゃ……ですわね!」

 こちらに急加速で飛翔してくる『|777《スリーセブン》』に対し、微笑んで出迎えるシルヴァーナは武器をドラゴンランス『覇空竜スカイフォール』に持ち替えた。
 ドラゴンランス『覇空竜スカイフォール』は黒い槍に変身する身長30cm程の黒い小型の竜です。変身後も裕美の動きを補助します。
 空中から徐々に距離を詰めて近付いて来る敵の近影! そんな場面でもシルヴァーナは冷静だった。

「さて、ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】にするか……悩み所ですわね」

 そして敵の『|777《スリーセブン》』は手にしていた両手剣を宙で構えて接近! シルヴァーナにそのまま攻撃を仕掛けて来る。

 ガキーン! と、剣と黒い槍のぶつかる衝撃音が激しく響き合う。牽制したシルヴァーナはその直後相手を押し出す事に成功。
 一瞬の隙が出来た所でドラゴンランスを竜に変化。『ブレス攻撃』が容赦なく敵の『|777《スリーセブン》』に降り掛かった!

「……ぐっ! ぬぬぬ!」

 予想外の攻撃。それでも『|777《スリーセブン》』は何とか耐えている……!

「さすがですわね。それではこちらに切り替えますわ」

 『ブレス攻撃』から黒い槍の形状に戻したドラゴンランスで『串刺し』攻撃に切り替えるシルヴァーナ。

「ぐはぁ! ぐっ……! くそ!」

 シルヴァーナの冷徹な連続攻撃。
 『ブレス攻撃』で全身が焼け爛れ、更に『串刺し』によって床に血だまりが出来る程のダメージを受けた自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』。
 それでも戦う意思は消えていない。何か策があるのか……? 思わず勘繰ってしまうシルヴァーナは後退し身構える。

「……喰らえ! 『超・艦隊斬り』!」

 『|777《スリーセブン》』の戦闘意欲は消えていない。寧ろ増したと言って良い。これが『|狂戦士《バーサーカー》』の由来と言っても過言ではない。

 『超・艦隊斬り』により自身の【愛刀である霊剣『Durandal AG』】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【無限に伸びた光の刃による薙ぎ払い】を放つ……!

「まだ戦う意思はあるのですわね。これは面白くなりそうですわ」
「黙れ! 君は私の『本』の中身。その『|物語《ストーリー》』に過ぎない……!」

 射程無限の光の刃による薙ぎ払い。それを最初の攻撃の時の様な流麗なステップで避けるシルヴァーナ。
 『|777《スリーセブン》』はしつこく薙ぎ払いを繰り返してくるが、全て空振りに終わる。

「実に単調な攻撃。芸がないですわね。そろそろ今回の事件を終えますわ」

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『瞬きの殺人鬼』(アッサシーナ・モメンターニオ)を発動するシルヴァーナ!

「な、何だと……!?」

 驚愕。まさかこれ程までに鮮やかに自分の攻撃をかわされ、そこからまた敵であるシルヴァーナは|UC《ユーベルコード》を発動したのだ。『|777《スリーセブン》』は忌々し気に歯軋りをした。

「わたくしから逃げられるとでも思いまして?」

 『瞬きの殺人鬼』は【シルヴァーナの殺戮本能】を一時的に増強し、全ての能力を6倍にする。ただし、レベル秒後に1分間の昏睡状態に陥る。
 昏睡はシルヴァーナの人格だけが眠るので、後の後始末は主人格の裕美任せ。
 全ての能力が6倍に急上昇したシルヴァーナの本性が露わになり、『惨殺ナイフ』での攻撃は止まらない……! 正に殺人鬼だ。

「がはっ! ぐはぁ! ……つっ!」

 甲冑を纏っている部分はシルヴァーナの攻撃を首尾よく弾いたものの……それ以外の部分。腕や足の関節部位を完璧に捉えに来たシルヴァーナの攻撃に悶絶する自称勇者の『|777《スリーセブン》』。
 全身が黒に近い真っ赤な血の色で染まり、その場に座り込んだ。まるで女王陛下の御前。跪き忠誠を誓う聖騎士の様に。

「アハハハハ! いい色をしていますわね!」

 もう勝負は着いた。そう思った時、予期せぬ出来事が起こる。
 スイーと、何かが天井から降りて来て……彼女。シルヴァーナの眼球に映る。何だコレ? と、思った時にはもう遅い。
 答えは糸を引いた巨大な女郎蜘蛛。そうだった……天井の隅には蜘蛛の巣が張ってあった。
 次に叫び声を上げたのは言わずもがなシルヴァーナだ。戦闘が早く終わり退屈するのももどかしい……が。あと、虫が苦手。

「キャア――――!!!!!」

 そして『瞬きの殺人鬼』の昏睡状態が発生した。
 くたり……とシルヴァーナの肉体は横たわり、意識がぶっ飛ぶその直後電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します。
 【もうひとりの自分】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー。

「……フ! フハハハハハ! まさか家の住人に助けられるとはな……! ここが古い洋館であった事に感謝。これにて形勢逆転だな」
「……何を言ってるの? ……あなた。シルヴァーナの攻撃で……自分こそ傷だらけじゃない」

 もう一人の自分。中村・裕美が現れ、ぶつぶつと呟いた。そして……その手に持っているのは惨殺ナイフ『principessa di tagliatore』だ。

「黙れ」額に青筋を浮かべたのは自称勇者。|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』の方だ。

 『四門閉門』――【天より飛来し戦場の四方を囲む四神の巨門】から、敵全体に「敵味方を識別する【火・土・水・風の属性に属する攻撃】」を放ち、ダメージと【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を与える。

「これにて『|物語《ストーリー》』はフィナーレだ。私の『本』の一部となれる事を誇りに思っても良いのだぞ?」

 絶体絶命のピンチ。しかし、敵は知らなかった。中村・裕美が手に持つ惨殺ナイフ『principessa di tagliatore』の効果を。

「わたくし達に立ち塞がる者は、すべて切り裂いて差し上げますわ」

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『切裂姫』(プリンチペッサ・ロ・スクァルタトーレ)が発動!

「何!? 君は確かにさっき気絶した筈の……!」

 そこにいたのはシルヴァーナだ。

 中村・裕美が手に持っていた惨殺ナイフ『principessa di tagliatore』は裕美が別人格『シルヴァーナ』に変わりやすくなる、心理的なキーとなる道具です。

 一瞬、敵『|777《スリーセブン》』は怯んだ。そして、先手の攻防を制したのは――シルヴァーナ!

 【惨殺ナイフ】による素早い一撃を放つ。また、【シルヴァーナの人格に切り替わる】等で身軽になれば、更に加速する。

「女郎蜘蛛の仕返しですわ!」

 シルヴァーナが得意とするナイフ殺法。的確に急所や傷口を狙う。

 『四門閉門』なる最後の切り札をシルヴァーナのナイフでの連続攻撃で肉体的に封じられた自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は倒れた。

「……ぐ、は……ははは。完敗だ。まさか私自身が『本』の『|物語《ストーリー》』に仕立て上げられるとはね。……けほっ! 君は実に優秀な|猟兵《イェーガー》だ」

 中村・裕美。シルヴァーナが冷徹な視線を向ける。これが『|777《スリーセブン》』の終章。

「大方、『|777《スリーセブン》』さんの目的は分かりましたわ。ですが殺す前に……一応、聞いて置きますわね? 何か言いたい事はありますの?」

 床が血の池で真っ赤に染まる中、敵への情け。情の様な感情がほんの少し芽生え、シルヴァーナは冷笑した。

「勇者である私の本名は『皇・銀静』だ。ここに誘い呼び込んだ|猟兵《イェーガー》達と戦い、その『|物語《ストーリー》』を『本』にするのが目的。だが……」
「……だが?」
「|狂戦士《バーサーカー》と呼ばれる私よりも……余程君の方が戦闘狂だった様だ」

 最後にシルヴァーナは今回の事件の元凶。

 ボス『|777《スリーセブン》』の胸元に『惨殺ナイフ』の刃を突き立て……そして刺した。

成功 🔵​🔵​🔴​

アメリア・イアハッター(サポート)
【サポート】
他の猟兵の行動が成功するようにサポートに徹し、下記のような行動をとります。
・機動力が必要であれば宇宙バイク「エアハート」に仲間を乗せる。
・仲間の攻撃が当たるように、敵の行動をUC「風の友」で読んだり、氷系のUCを使って敵の機動力を封じる。
・仲間の攻撃を強化するために支援系UCを使ったり、鼓舞をする。
・敵の注意を逸らすため、宇宙バイク騎乗や空中にて囮となる。

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!


納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから11年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!

あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ

商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません

あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします



「布を被ってから11年が経ちましたわ。普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと……って、勉強中なんですわ!」
「あら、ピンチンちゃん。関西弁が話せるのね? その布姿。素敵よ」

 古い洋館。『カラクリ屋敷』の前に女同士の世間話を楽しみながらやって来たのは、納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)とアメリア・イアハッター(夢想空流・f01896)だ。

「話せると言うか……。まあ、取り敢えず礼を言っておきますわ。アタシの布姿を褒めて下さったアメリアさん」
「い~のい~の♪ 今日はお互いの友好を深める為に来たのもあるんだし。ピンチンちゃんのサポートは任せてね」

 『カラクリ屋敷』の大扉は目の前にある。事前に得た情報によれば……ここに自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』がいる!

「あくまでお仕置きをしに来ているからあまり殺伐とした戦い方はしませんわ。頼りにしてますわ、アメリアさん」
「了解よ。『|777《スリーセブン》』をコテンパンにのしちゃってね、ピンチンちゃん。私も頑張るから今回のボスの目的と事件の全貌を暴きましょうか」
「ほないっちょ、よろしくおねがいしますわ。アメリアさん」
「出た! 関西弁!」

 そんなこんなでこの|二人組《コンビ》は重い大扉を押し開けた。

「今日の来客者は……二人ですか」

 そこに待っていたのは言うまでもなく自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』!
 彼は吹き抜けになっている古い屋敷内の一階。一番奥の玉座が置かれた場所で座って待っていた。まるで、ここに来た|猟兵《イェーガー》達を招き寄せるかの様に……。

 アメリアと納花はお互いに顔を見合わせ頷いた。まずは穏便に事を済ませるように交渉してみる。

「あなたがじしょ……あ~。いや、勇者の『|777《スリーセブン》』くんね。ねえ? 私達と取り引きしない?」
「取り引き……とは?」玉座に足を組んで座ったまま、『|777《スリーセブン》』は身じろぎ一つしない。
「小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると色々話してくれるんですわ」

 納花は商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです。
 これは事前に決めていた事。血を流さずに事件を解決出来ればそれが一番の策だ。だが……やはり、そうはいかない。

「……ふん! くだらないな。私の『|物語《ストーリー》』の中では、君達は勇敢に戦って来るものだと思っていたがとんだ期待外れだった様だ」

 そう言って、今回の事件のボス『|777《スリーセブン》』は立ち上がり両手剣を抜刀する姿勢に入る。あっさりと二人の和平交渉は拒否された。

「ふ~♪ そういう事なの? なら、仕方ないわね。私達も自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』くんを止めなければいけないのよ。残念ながら」
「交渉決裂。残念ですわ」

 アメリアと納花も武器を構え、これから起こる戦いに備える。
 抜刀した『|777《スリーセブン》』はニコリと笑い、徐々に距離を詰めて来る。一階から三階まで吹き抜けになっているフロア。
 ステンドグラスの窓。外から光が差し込み、幻想的な空間を魅せる。そこに浮かび上がったのは『|777《スリーセブン》』の狂気に満ちたにやけた顔と甲冑にマント姿。

「そうだ……それで良い。それでこそ私の『本』の内容であり、真の|猟兵《イェーガー》たる姿だ!」

 ――アメリア&納花 VS 『|777《スリーセブン》』――

 次の瞬間。そこに『|777《スリーセブン》』の姿は無かった。消えた……?

「アメリアさん!」
「分かってるよ!」

 アメリアは納花の行動が成功するようにサポートに徹する! 敵がいないのは視界から死角に移動した為。つまり……跳躍。

「フハハハ! さあ、『|物語《ストーリー》』の始まりだ! ……私を失望させないでくれ! |猟兵《イェーガー》諸君!」

 機動力が必要であれば宇宙バイク「エアハート」に仲間を乗せる。空を駆けることを夢見るバイクの後部座席に納花を乗せて、レッツゴー♪ その黒い流線形はツバメの如く。
 空中戦を制する様にアメリアはアクセル全開で、『カラクリ屋敷』内を縦横無尽に滑走する! 時には壁伝いに、時には階段の手摺りに、時には天井を逆さになって駆け抜ける。

「喰らえ……! 『超・艦隊斬り』!」

 素早さを活かした攻撃。『超・艦隊斬り』を繰り出してくる自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』。
 敵は空中。対してアメリアと納花はその周囲を宇宙バイク『エアハート』で駆け抜ける攻防……! 

 自身の【愛刀である霊剣『Durandal AG』】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【無限に伸びた光の刃による薙ぎ払い】を放ち、情け容赦なく斬りかかって来る『|777《スリーセブン》』!

「そう来なくっちゃね♪」
「『|物語《ストーリー》』? 何のこっちゃ……ですわ」

 敵の剣戟。その巨大すぎる剣閃を宇宙バイク『エアハート』に跨り、紙一重で避けて操縦。滑走していくアメリア。
 後部座席には今日の戦いの|相棒《パートナー》。ブギーモンスターの勇者×殺人鬼である納花が必死こいて捕まって乗っている。
 敵の注意を逸らすため、宇宙バイク騎乗や空中にて囮となる。

「そらそらそらそら! どうしたんだ? |猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》! 逃げてばかりじゃ、私と言う最強勇者を永遠に倒せないぞ?」

 次から次へと愛刀である霊剣。『Durandal AG』で薙ぎ払いを放ってくる『|777《スリーセブン》』。

「その通りよ……! だけど、私達は逃げてばっかりじゃないのよね?」
「『|777《スリーセブン》』さん? 最強勇者は……自称ですわね? ブギーモンスターの勇者はここにいるのですけれど!」

 そこで、アメリアは仲間の納花の攻撃を強化するために支援系UCを使ったり、鼓舞をする。

「そっちは通れないって? じゃあ、通っちゃお!」

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『Air Maneuver』(エアマニューバ)を発動するアメリア!

 【宇宙バイク「エアハート」】を操縦中、自身と[宇宙バイク「エアハート」]は地形からの激突ダメージを受けず、攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する。

 敵『|777《スリーセブン》』は跳躍から床に着地。それでも攻撃の手を緩めず、寧ろ加速した。無限に伸びた光の刃がアメリアと納花が乗っている宇宙バイク『エアハート』を襲う……!

 ガッキ~ン!!!! 金属音が宇宙バイク『エアハート』を確実に捉える。愛刀である霊剣『Durandal AG』が確かな手応えを主である『|777《スリーセブン》』に伝える。

「……他愛もない。もう終わりか」

 古びた洋館内部。吹き抜けになっている中は既に土煙で|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》の姿は見えない。しかし、そこから予期せぬ出来事が『|777《スリーセブン》』を待っていた。

 影だ。最初は小さかったが、一瞬で大きくなり土煙の中からその正体が飛び出して来た……!

 それは、無傷で宇宙バイク『エアハート』に跨ったアメリアと納花の|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》!

 まるで曲芸。先程発動したアメリアの|UC《ユーベルコード》『Air Maneuver』(エアマニューバ)が地形からの激突ダメージを無効化した。だが、それだけじゃない。
 無限に伸びた光の刃。『|777《スリーセブン》』が薙ぎ払った霊剣『Durandal AG』の刀身に宇宙バイク『エアハート』が乗って、駆け抜ける!

「……な、何の冗談だ?」悪夢でも見ているのかと自分の目を疑う『|777《スリーセブン》』。

「ピンチンちゃん無事~?」
「ノープロブレムですわ! アメリアさん」

 更にアメリアの|UC《ユーベルコード》『Air Maneuver』(エアマニューバ)は攻撃時に敵のあらゆる防護を無視する為、そこに乗っている納花の攻撃の援護にも繋がる。
 納花は『勇者の剣』――勇気に応じて輝きを増す選ばれし者にしか抜けない聖なる剣。花とリボンでデコ済🎀――で一気に奴『|777《スリーセブン》』の目の前にまで宇宙バイク『エアハート』で迫り、斬りかかる! かと、思えば武器も直前で刃を返して敵の頭をポカン♪ お間抜けに叩いたりしてみる。

「ちょっと~せっかくチャンス作ってあげたのに! 何やってんのピンチンちゃん?」
「ごめんなさい。アメリアさん……あまりにも美味しい|展開《シチュエーション》だったもので。つい、アタシとした事が」
「お約束って訳ね♪ プッ! 確かに」

 その光景はギャグになることが多いですわ。

 軽く頭を小突かれた『|777《スリーセブン》』は一瞬、ポカ~ンとしていたが……すぐに羞恥と怒りで、全身わなわなと震える!

「お・の・れ~……!!!! 私の『本』の中身の分際で、主役をコケにしたな!?」

 唯、要らぬ挑発になってしまった様だ。

「『四門開門』!」

 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は力技に打って出た。
 全身を【己の潜在能力を解放させる黄金のオーラ】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

「敵が本気出して来たみたいよ!」
「まあ! どうしますの?」

 自分の失態の筈なのにそこもボケに変換するんかい、ピンチンちゃん! と、心の中でツッコミ。苦笑して、アメリアは宇宙バイク『エアハート』の速度を緩めずに加速して、地上から空を駆ける様にまた手摺りや壁伝いに上へ駆け抜ける!
 更に敵は『四門閉門』も発動する気だ……これは不味い。危機察知能力がアメリアの頭脳に警鐘を鳴らす。

「黄信号が点滅……! これ、ヤバいんとちゃいますか? アメリアはん! ……これは、危ないですわ! アメリアさん!」

 納花の脳裏にも自分達がピンチだと言う合図が過ぎる。唯、そんな時でもなぜか関西弁もどき(?)なのはいかがなものか……。急いで修正するが、時すでに遅し!
 不利になるのを未然に防ぐ為にアメリアは氷系のUCを使って敵の機動力を封じる。

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『Ice Cloud』(アイスクラウド)発動!

「凍てつけ!」

 【Vanguard】――灯台を模った祭壇に火の神を祀る、道を照らす先駆けの光にして、未知を拓く旅人の腕――から【強烈な冷気】を放ち、【凍結させる】事により対象の動きを一時的に封じる。

 Vanguard、15の秘密のうちの1つ。本当に15個かどうかは不明。

 その対象は言うまでもなく……自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》。『|777《スリーセブン》』だ。『Vanguard』から強烈な冷気が迸り、『|777《スリーセブン》』目掛けて飛んでいく!

「ぐ……! くそ! 何だこれは? 体が言う事を聞かない……? もしかして氷の属性か!?」

 寒さで白い息を吐き、全身が震え、凍り付いていく『|777《スリーセブン》』。
 隙が出来た……が、それも一瞬の出来事。敵『|777《スリーセブン》』は黄金のオーラ。自分の【闘志】に比例し、強化した戦闘力を発揮し肉体に纏わりつく冷気を跳ね返す。
 シュ~……と、氷属性が蒸発する音が聞こえてくる。

「アメリアはん……! 今ですわ!」
「任せて! ピンチンちゃん!」

 そこから更に|UC《ユーベルコード》を重ねるアメリア。宇宙バイク『エアハート』に跨り加速しながら敵に接近!

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『風の友』(カゼノトモ)発動!

「風が教えてくれたわ!」

 【敵の動作から発生する僅かな風の流れを感じ】対象の攻撃を予想し、回避する。

「……フハハハハ! ここまで私を弄んでくれた事を後悔させてやる! 私は勇者『|777《スリーセブン》』だ……『四門閉門』!」

 『四門閉門』――【天より飛来し戦場の四方を囲む四神の巨門】から、戦場全体に「敵味方を識別する【火・土・水・風の属性に属する攻撃】」を放ち、ダメージと【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を与える。

「ピンチンちゃん! 一緒にラストスパート決めるよ……!」
「待ってましたわ! アメリアさん……!」

 宇宙バイク『エアハート』に乗っている|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》。これが最後の攻防になる事を各々が自ら察知する!

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『Dead Redline』(デッドレッドライン)発動!

「準備はいいよねエアハート。ラストギア、入れるよ!」

 正にスリル。【宇宙バイク「エアハート」に真紅の疾風】を纏いレベル×100km/hで疾走する。疾走中は攻撃力・回避力・受けるダメージが4倍になる。

 敵の『火』『土』『水』『風』の属性攻撃が宇宙バイク『エアハート』に跨り疾風の如く駆け抜けるアメリアと納花に|魔物《モンスター》の様に襲撃していく……!
 その隙間を縫う様にして物凄いスピードで走る宇宙バイク『エアハート』のアメリアと納花。ダメージを喰らったら最後。|UC《ユーベルコード》の効果が解除され封印の状態異常を引き起こされる!

 それでもアメリアが宇宙バイク『エアハート』で敵。自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』の姿を捕捉。
 その目前まで迫っていくと、今度は納花の|UC《ユーベルコード》が炸裂する。

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『ブギー・ブギーフェイス』発動!

 【知恵の布】を脱ぎ、【おぞましき異形の鹿】に変身する。武器「【長く伸び血を啜る肉の槍】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。

「へーんしんっ!! その煎餅寄こすまで追い回しますわ!」(※売店のおばちゃんは例外)
「な……んだと!?」

 目の前まで迫りくる宇宙バイク『エアハート』の|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》に唯、呆然と立ち尽くす『|777《スリーセブン》』は最早見ている事しか出来ない。

 アメリアの完璧な運転テクニックと仲間の攻撃が当たるように、敵の行動をUC「風の友」で読んだり、『知恵の布』を脱いで『おぞましき異形の鹿』に変身し、戦闘力増強を得た納花のラストアタック!

 二人の連携は功を奏し、敵――自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は力尽きて倒れた。

 *

「さて、ここまで面倒な事件を起こしてくれちゃった理由は何なのよ? 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》くん?」
「戦闘中に『本』がどうとか仰ってましたわよね?」

 『|777《スリーセブン》』は目を覚ました。だが、体は動きそうもない。既に力は使い果たした。
 今は赤い絨毯の敷かれた『カラクリ屋敷』の床に仰向けでいる事が精一杯だ。

「わ……わ、私の本名は『皇・銀静』と言う。この洋館に姿を隠していたのは|猟兵《イェーガー》達をここに誘き寄せる為だ。……そう。君達二人組みたいな優秀な|猟兵《イェーガー》を」
「え~? それだけなの?」
「んなアホな……! 『本』はどこに行ったんですの?」

 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』及び本名『皇・銀静』は口から血を流しながら最期に不敵な笑みを見せる。

「『本』……ここにある全ての『本』の『|物語《ストーリー》』は、これまで私が立ち向かって来た|猟兵《イェーガー》達を……返り討ちにして来た証。だが……」
「私達|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》に見事に返り討ちになっちゃった訳なのね」
「とんだお笑い……いえ、それは災難でしたわね」

 ……いや、これで良い。君達と戦えた事で……私も『本』の『|物語《ストーリー》』に|終止符《ピリオド》を打つ事が出来た。これこそ私が……|狂戦士《バーサーカー》の勇者『|777《スリーセブン》』が待ち望んでいた最高の幕引きだ……

 最期の台詞と共に自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は満足して頷き……彼の言う『|物語《ストーリー》』は終わった。
 それを見届けるアメリアと納花。何だか気持ちは分からなくはない。自分達もいつどこで|猟兵《イェーガー》としての彼の言う『|物語《ストーリー》』が終わるか分からないのだ。

「さて、私達も帰ってこの事を報告しに行かなきゃね」
「その前にお腹が空きましたわ」
「う~ん。何か食べていく? ピンチンちゃん」
「たこ焼き……なんてどうですわ?」
「出た! 関西人!」

 こうして今回の|猟兵《イェーガー》|二人組《コンビ》は古い洋館。『カラクリ屋敷』を後にした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マロン・ビネガー(サポート)
◎連携・アドリブ歓迎
知的好奇心旺盛で少し不思議+ひんやり系な性質の僕っ子。思考は理系寄り
戦場ルールと他者の意志は尊重する方
現地住民や先輩には「礼儀作法」で丁寧な対応を心掛ける

◆戦闘傾向
エキセントリック+トリックスター
属性魔法や精神攻撃/誘惑、地形の利用等で撹乱するタイプ

主な得物は蓬莱の玉枝orレイピア、弩

技能は主に「天候操作」、
特に雨・雪系を好む

攻撃系UCに合わせて「電撃」+「貫通攻撃」、
回復系UCに「浄化」を載せる等

勝利の為なら代償・取引系UCも躊躇いませんが
保護対象や共闘する方々を攻撃に巻き込む事は極力避けます
必要なら「結界術」等で防御、場所感知等
臨機応変に支援行動も可

後は基本お任せです


アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。



「今日は宜しくお願いします。アス・ブリューゲルトさん」
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」

 謎の古い洋館。その名も『カラクリ屋敷』にやって来たのはマロン・ビネガー(くりかぼちゃ・f37213)とアス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)だ。

 マロンは知的好奇心旺盛で少し不思議+ひんやり系な性質の僕っ子。その思考は戦場ルールと他者の意志は尊重する方で理系寄り。
 現地住民や先輩には「礼儀作法」で丁寧な対応を心掛ける為、今回の|相棒《パートナー》である年上のアスには敬語を使う。

 一方そのアスはいつもクールに、事件に参加する流れになる。
 最近では戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めている。なので息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともある。
 特に今回の事件の|相棒《パートナー》マロンの様な女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高い。

 そんなマロンとアスの男女|二人組《コンビ》は謎めいた古い洋館。
 今は誰も住んでいないと言われている『カラクリ屋敷』を拠点にした自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』との決戦を目前にしていた。

「ここが例の屋敷か」
「その様ですね。『|777《スリーセブン》』とか言うお惚け|賭博師《ギャンブラー》の根城……とでも言いましょうか」

 マロンとアスは準備万端。来たるべき戦いに備えて至極冷静に入り口の大扉を開けた。

 ギ~……バタン。昼時なのに中は薄暗い。二人の目に映ったのは……遠くに降り注ぐ木漏れ日。三階建ての古びた洋館。『カラクリ屋敷』内部は吹き抜けになっている。
 光の正体は天井のステンドグラスの窓から入って来る日の光だ。そして、ちょうどその日が差している場所に豪奢な玉座があり、謎の人物が居座っていた。

「……ようこそ。|猟兵《イェーガー》の二人組。今日の主役は君達だ。是非とも私の『本』の中身。その『|物語《ストーリー》』を盛り上げる為に、私を楽しませてくれよ?」

 赤絨毯の先。この『カラクリ屋敷』の奥に奴、『|777《スリーセブン》』はいた。周囲を多くの大小様々な『本』に囲まれた不思議で不気味な洋館だ。

「『本』だと? どういう意味だ」
「僕達は『|777《スリーセブン》』さん。君を退治しに来たんだよ?」

 ピリピリとした緊張感がマロンとアス。そして自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』との間で漂う。

「そうだ。それで良い。それでこそ私。最強勇者『|777《スリーセブン》』の敵。『|物語《ストーリー》』に相応しい」

 自分で最強勇者とか言っちゃってるよこの人は――ピリピリとした雰囲気の中なのでそんな事は胸の内にそっと仕舞って置く事にするマロンとアス。

「なるほどな。『本』から察するに……俺達は『|777《スリーセブン》』、自称勇者であるお前の『|物語《ストーリー》』の栄えある敵役で、そのシナリオでは俺とマロンは負ける事になっているのか」
「くっくく……さすがは|猟兵《イェーガー》様だ。物分かりが良くて助かる。これまでにもそう言った|猟兵《イェーガー》達が私の前で散っていった。それをネタにするのが私の趣味でね」
「……って、事はこの『カラクリ屋敷』にある膨大な量の『本』には『|777《スリーセブン》』さん。君と戦い負けていった|猟兵《イェーガー》の『|物語《ストーリー》』が綴られているのかな?」

 薄暗い館の中。歪んだ微笑みで首肯する自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』。

「そうだとすれば尚更……」
「……放っては置けないんだよね!」

 ――マロン&アス VS 『|777《スリーセブン》』――

「アハハハハ! さ~て、今日の敵は男女の|猟兵二人組《イェーガーコンビ》だ! どうやって料理してあげようか?」

 すると敵がするりと闇の中に消えた……! 正直、このフロアを熟知している『|777《スリーセブン》』の方が戦いは有利だ。

「それはこっちの台詞だ!」
「悪いけど僕達は負ける気はサラサラないんだよね!」

 消えた敵『|777《スリーセブン》』! まずは奴を見つける為に、マロンは必要ならば技能スキル「結界術」等で防御、場所感知等を使う!
 そこで更に自ら用意した主な得物は蓬莱の玉枝――「ほうらいのたまのえだ」。魔力を発する宝玉がいくつも付いた木の枝です――を構えた。
 マロンの戦闘傾向はエキセントリック+トリックスター。
 属性魔法や精神攻撃。そして誘惑、地形の利用等で撹乱するタイプ。

 アスは、今回の戦いではPOWメインで、状況に応じてSPD等得意な能力を使用する。
 何時どこで敵が襲撃を敢行してくるかも分からない。この状況によって、UCも使いやすいものを使う気だ。
 主に銃撃UCがメインになるだろうか?

「マロン! 敵の位置は分かったか?」
「恐らく……ですが、吹き抜けになっているこのフロア全体を行き来しています。特に二階、三階と闇が濃くなる暗闇の中で機を窺っているものかと……!」

 敵――自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』はまるで背中に羽が生えた様に壁、天井、階段の手摺り、床を蹴り飛ばし闇の中を跳躍。

「隙を見つけ次第、俺が叩く! 援護は頼んだ」
「分かりました。私も出来る限りの事はします!」

 マロンとアスが背中をくっ付ける様にして構え、敵がいつ襲い掛かって来るのかこちらも好機を窺う。

 ジリジリとお互いの集中力を搾り取られる様な耐久戦。最初に攻撃を仕掛けてくるのは――やはり、この古い洋館の内部。『カラクリ屋敷』を熟知している『|777《スリーセブン》』だ。

「フハハハ! 今日は楽しめそうだ。二人の|猟兵《イェーガー》を同時に相手に出来るなんてな……?」
「アスさん……真上を見て!」

 マロンの掛け声に合わせて、アスは『ブルーブラスター』なる二丁の銃を構えた! 宇宙空間での使用にも適した熱線ビームを放てるアス愛用の蒼い色の二丁拳銃だ。

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『クイックドロウ』を発動! レベル分の1秒で【熱線銃(ブラスター)】を発射できる。

「隙を見せるとは……そこだ!」物凄い速度で|引き金《トリガー》を絞るアス。

 ズドドドドドド――――!!!!!!

「ぐはぁ~……!」
「もう終わりか?」
「ぐ……くそ! まだまだ! 『超・艦隊斬り』!」
「そう来なくっちゃな……!」

 敵は再び上空へ。闇の中に消える。上空とは言っても、この『カラクリ屋敷』は三階建てだ。吹き抜けのフロアは広いが、それは建物内部としては――の限定された空間だ。

「ふん、どこへ逃げた?」
「アスさん! 気を付けて! 強力な攻撃が来ます……!」

 臨機応変に支援行動をするマロンは保護対象や共闘するアスを攻撃に巻き込む事は極力避ける様に立ち回る。

 『超・艦隊斬り』――自身の【愛刀である霊剣『Durandal AG』】でレベル×100km/hで飛翔し、射程無限・直線上の全てを切断貫通する【無限に伸びた光の刃による薙ぎ払い】を放つ。

 巨大な剣閃。光の刃による薙ぎ払いが不意に油断していたアスの肉体を切り裂いた……!

「ぐっ!」
「アスさん! ……大丈夫ですか?」

 すぐさま回復系|UC《ユーベルコード》(WIZ)『雪まつり』(ユキマツリ)を発動し、そこに技能スキル「浄化」を乗せるマロン。

「包み込んであげる」

 対象を【雪洞】で包む。[雪洞]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【追尾能力を持つ氷柱】と、傷を癒やす【雪うさぎ】を生やす。

「……ふう。助かったマロン。唯、奴はまた同じ攻撃を仕掛けて来るだろう。数秒だけで良い。時間を稼いでくれないか?」

 傷が完全に癒えるまで、マロンに『|777《スリーセブン》』との戦いを託したアス。もちろん|相棒《パートナー》であるマロンは無言で頷いた。

「分かりました。何とかしてみせます」

 技能は主に「天候操作」特に雨・雪系を好むマロン。既に彼女の|UC《ユーベルコード》『雪まつり』は発動されている。

「敵の反撃が無い……。僕の【追尾能力を持つ氷柱】が功を奏した……のかな?」

 しかし、それは甘いと言うもの。そう思っていた瞬間に上空の闇から光がキラッ! と、輝いたのをマロンは見逃さなかった。
 無限に伸びた光の刃の切っ先だ。

「……来るぞ! マロン!」
「分かってます!」

 光の刃による薙ぎ払い。無限に伸びるそれを最後までシッカリと見定めてからその軌道を読み間一髪で反転。かわしたマロンはそのまま態勢を整える。
 再び、『天候操作』を使い雪から雨を降らせる。溶解する雪がそのまま冷気を帯びて『カラクリ屋敷』内部は凍結。

「これで、もう君の得意とする跳躍。その足場は使えないよね?」

 まるで冷凍庫の様に冷え切った館内。マロンは『|777《スリーセブン》』の『超・艦隊斬り』をこれ以上させない様に冷静に対処。

「……フン! 思ったよりもやるじゃないか。だが、戦いはまだまだこれからだ」

 マロンの読み通り。足場を失った『|777《スリーセブン》』が上空の暗闇から落下。しかし、直ぐに持ち直して両手剣を床に刺して着地した。その顔にはまだ余裕の微笑み。

「ふ~ん。じゃあ、次はこれだね……!」

 |UC《ユーベルコード》(WIZ)『氷雪地獄』(スノーストーム・ヘル)を発動するマロン。

 戦場全体に【猛烈な吹雪】を発生させる。敵『|777《スリーセブン》』にはダメージを、味方であるアスには【雪だるまアーマーの装着】による攻撃力と防御力の強化を与える。

「ああっと、爆弾低気圧が発生!」

 『氷雪地獄』(スノーストーム・ヘル)の【猛烈な吹雪】。その攻撃系UCに合わせて「電撃」+「貫通攻撃」を付与していくマロン。
 敵『|777《スリーセブン》』は一瞬でその『爆弾低気圧』。吹雪と雷が肉体を蝕み貫通する攻撃に飲み込まれていく……!

「……何だと!?」

 敵の姿がまたその場から消えている間にマロンは持っている獲物。『蓬莱の玉枝』からレイピア、弩に持ち替える。
 レイピアは『深雪六華』(冷気を帯びた細い剣です。常にひんやりしていて、触ると快適)。弩は『環天頂アーク』(逆さ虹の様な弧を持つクロスボウ。イングリッシュブルーベルの花が胴体に描かれている)だ。
 奴『|777《スリーセブン》』はこちらが遠距離攻撃に特化していると認識している間に、敵が近接攻撃に移る前の準備だ。

「助かったマロン。ここからは任せてくれ」

 ほぼ完全に傷が癒えたアスは更に【雪だるまアーマーの装着】で攻撃力そして防御力が上昇。この先の攻防ではそう簡単に倒れる事はないだろう。

「頼りにしてますよ。アスさん」

 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』が『氷雪地獄』(スノーストーム・ヘル)の中で大ダメージを受けている間にもマロンとアスはお互いに気を緩める事はない。

 その直後。敵『|777《スリーセブン》』の狂った様な声が『カラクリ屋敷』の中に響いた……!

「『四門開門』!」
「さて……お次は近接戦闘か。何をする気だ?」
「警戒はするに越した事はないですね」

 『氷雪地獄』の台風。「電撃」+「貫通攻撃」を加えたその中から一瞬で抜け出した『|777《スリーセブン》』……! 即座に二丁拳銃『ブルーブラスター』で威嚇射撃を行うアス。
 敵は宙に浮き、そのまま体を捻って回転! バク宙して銃撃を避ける。それでもアスは攻撃の手を緩めずに熱線ビームを敵目掛けて撃ちまくる!

 ズドーン! ズドーン! ズドーン!

 既に『|777《スリーセブン》』の肉体はボロボロ。甲冑には煤が付着、マントには穴が開いている。……だが、それでも戦う意思は萎えていない。
 ひらりひらりとアスの威嚇射撃を紙一重で避けていく。
 『四門開門』は全身を【己の潜在能力を解放させる黄金のオーラ】で覆い、自身の【闘志】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

「……フハハハ! そんな脅しに私が屈するとでも?」
「ならば、こいつはどうだ?」

 |UC《ユーベルコード》(POW)『ヴァリアブル・ウェポン』(ヴァリアブル・ウェポン)を発動!

 アスの【脚部に内蔵されたミサイルと弾丸】で対象を攻撃する。攻撃力・命中率・攻撃回数のどれを重視するか選べる。迷わずに命中率重視を選択したアス。
 その機械になっている両足のサイドから展開される弾丸やミサイルの『命中率』が上昇し、追尾機能を兼ね備える。そのまま幾つも情け容赦なく発射!

 ドドド――――ン!!! 強烈な爆風に爆発音が重なる。確実に獲物は仕留めた。だが、敵『|777《スリーセブン》』は再び闇に消える。

「貴様……逃さん!!」

 しかし、その直後。敵『|777《スリーセブン》』は技能スキル『残像』で自分の姿を複数に分身して見せる。闇と煙も囮として隠れるにはうってつけだとでも言わんばかりに。

「ハッハッハー! これがこれまで数多もの|猟兵《イェーガー》を『本』にしてきた|狂戦士《バーサーカー》と呼ばれる所以だ……!」

 確実にダメージは堆積している。それなのに『|777《スリーセブン》』はまだ戦う余力を残している。いや……寧ろ増している!

「さすが……とでも言うべきでしょうか? どこかお惚けな|賭博師《ギャンブラー》……!」
「チッ! 小賢しい奴だな。まるで幽霊だ。さっきの借りは返すぞマロン! ここは俺に任せておけ」

 武器を『フォースセイバー』(アスが愛用している、サイキックエナジーでできた光の剣。刃は青白く光り輝いている)に持ち替えて、敵『|777《スリーセブン》』を叩く為に自ら跳躍!
 アスの剣術は相手が幽霊っぽい相手に使う。戦いは空中での近接戦闘だ。

「お前が|狂戦士《バーサーカー》を名乗るのなら俺は|超戦士《スーパーウォリアー》だ。よ~く覚えておけよ?」

 ガキン! キン! キン……! と、幾度か剣を交えた後。敵『|777《スリーセブン》』を地上へ叩き落とすアス。

 ズドン……! 赤絨毯の床に叩き付けられた自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』。床は陥没し、またも土煙が舞う。

「そろそろ止めを刺す頃合いか?」
「だと……良いのですが」

 土煙が晴れたその時。またしても敵『|777《スリーセブン》』の姿はそこには無い。代わりにやって来たのは……。

 ガシャン! ガシャン! ガシャン!

 この『カラクリ屋敷』の奥。倉庫に格納された小型の二足歩行兵器。

「あれは……! まさかキャバリア?」
「どこまでもしぶとい野郎だな。マロン、俺も『アクア』に乗って応戦する。その間の援護は頼んだ」
「了解です!」

 相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリア(アクア)に騎乗して戦う。

 少し遠くにある格納庫。二つある片方のシャッターは閉じられたまま。だとすればもう一機あると考えるのが妥当だろう。
 そこへ技能スキル『忍び足6』を使いなるべく気配を殺して猛然とダッシュするアス。当然敵。キャバリアに搭乗してる『|777《スリーセブン》』がその姿を見逃す筈はない。

 だが、ここにきて勝利の為なら代償・取引系UCも躊躇わずにアスへ攻撃がいかない様に対処するマロン!

 |UC《ユーベルコード》(SPD)『サタニックビート』を発動!

 【常識を破壊する堕天使】の如き楽曲「【サタニックビート】」を演奏し、聞いて【怒り】を感じた対象全てを自身に殺到させる。

「ぐ……! このクソ|猟兵《イェーガー》が~! 私の『本』の中身。所詮貴様等は『|物語《ストーリー》』の一部に過ぎないんだよ!」

 獲物は海に放り投げた針に掛かり釣れた……! マロンは確信し、小型キャバリアで襲い来たる『|777《スリーセブン》』の囮として動く! なるべく格納庫から遠く離れて。

「頼むぞ……『アクア』。俺の言う通り動いてくれ!」

 無事に格納庫。もう一つあるシャッターを押し開け、アスが『アクア』と呼ぶキャバリアの|操縦室《コックピット》へと乗り込んで起動させる。
 そんな中、今にも敵『|777《スリーセブン》』のキャバリア越しの魔の手が|UC《ユーベルコード》『サタニックビート』を発動したマロンに伸びていく……!

「今です! アスさん!」

 もう一つの小型キャバリア。
 『アクア』に格納されたミサイルと機銃。ビーム砲があと少しでマロンに襲撃を敢行した敵『|777《スリーセブン》』の搭乗している小型キャバリアへ吸い込まれる様にして着弾!
 派手な爆発音と共にすぐにスクラップになった。

「待たせたな……マロン! よく頑張って囮になってくれた。感謝するぞ!」
「いえ、私は大丈夫です! そろそろお互いに最後の止めを刺しましょうか」

 マロンと『アクア』なるキャバリアから降りたアスは、もう一つの破損した小型キャバリアから全身傷だらけで出て来た自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』を確実に仕留める為、警戒を怠らない。

「うっ……グハァ! ハァ、ハァ、ハァ……『四門閉門』!」

 吐血して、今にも気絶してしまいそうな自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』はまだ足掻く。その執念は認めても良い。恐らくこれが最後の一手だ……!

 『四門閉門』は【天より飛来し戦場の四方を囲む四神の巨門】から、戦場全体に「敵味方を識別する【火・土・水・風の属性に属する攻撃】」を放ち、ダメージと【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を与える。

 ……そうはさせない! 意気込んだマロンとアスは今回の戦いで既に幾らか消耗している。【火・土・水・風の属性に属する攻撃】を喰らったら危険だ……!
 【ユーベルコード効果解除と封印】の状態異常を受ける前に……『|777《スリーセブン》』を叩く!

 |UC《ユーベルコード》(POW)『魔竜の業火』(ブラッディ・フレイム)を発動するマロン!

「これで、絶望を……焼き尽くす!」

 自身の【血液(約50ml~約600ml)】を代償に、【紅蓮の魔竜】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【戦場の敵と味方を識別する煉獄の業火】で戦う。
 血液(献血は16歳以上の方にお願いしております)を約300ml程代償にしたマロン。【紅蓮の魔竜】が召喚され、アスを巻き込まない煉獄の業火が炸裂する……!

 ゴオオオオオ――――! 煉獄の業火に全身を焼かれた『|777《スリーセブン》』の意識は飛んだ。『四門閉門』の効果が消滅。

 次に動いたのはアスだ。

 |UC《ユーベルコード》(POW)『クレセントスラッシュ』(クレセントスラッシュ)を発動!

「月影の前で罪を己の罪を嘆くがいい……と、もう遅いか」

 【フォースセイバー】が命中した対象を切断する。

 ズバァ――――!

 既に意識を失った『|777《スリーセブン》』。最後まで気を抜かずに仕留めるアス!

 男女の|猟兵二人組《イェーガーコンビ》の連携がピタリと嵌まり、敵。
 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は遂に倒れた……!

 *

「しかし、まさかとは思ったが……本当に奴はここに誘い込んで来た|猟兵《イェーガー》と戦い、『本』のネタにしていたんだな」

 自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』は既にいない。この『カラクリ屋敷』に残されたのは奴の言う『本』だけだ。そこから今回の事件の真相になる手掛かりを探す。

「……アスさん! ちょっとこれ見て下さい。ここにある『本』の最後のページ」

 沢山の『本』の山からマロンが一つの共通点を探り出した。彼女の言う通りアスは持っていた『本』の最後のページをめくる。

「ん? これは印鑑? 勇者『皇・銀静』だと? もしや奴は……」
「もしやじゃなくて、これが『|777《スリーセブン》』さんの本名ですよ! 自分の大切なコレクション。『本』には嘘を吐きたくなかったのでしょう」

 どの『本』にも最後のページに朱印が押されていた。そこには同じ勇者『皇・銀静』の文字がある。

「なるほどな。それが『|物語《ストーリー》』に綴られる過去の|猟兵《イェーガー》達への奴なりの敬意……と言う訳か」
「自称勇者の|狂戦士《バーサーカー》『|777《スリーセブン》』さんの行って来た事は許せるものでは無いですけど……彼はいつだって一人でその立ち向かって来る|猟兵《イェーガー》達を本気にさせました」
「確かにな。そこだけは勇者だと認めて上げても良いか」

 戦う前。最初の段階で奴『|777《スリーセブン》』――勇者『皇・銀静』の目的は明らかになっていた。奴を倒した今、物証はここ古い洋館の『カラクリ屋敷』にある大量の『本』だけ。

 勇者『皇・銀静』の願いを叶えると言えば聞こえは良いが、数冊くらい奴の『本』の中身。その『|物語《ストーリー》』を読んであげても良いか。

 ふと、静かにそんな事を思ってみる男女の|猟兵二人組《イェーガーコンビ》。

 こうしてマロンとアスの活躍もあり、事件は幕を閉じた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年06月19日


挿絵イラスト