ピルグリメイジの宣誓
●妖精族
過ちは消せない。
過去が消せないのと同じように、起こってしまったことは覆らない。
例え、その過ちを認め贖罪したのだとしても何一つ変わることなく償いがたき罪として顕然するのみである。
溢れた杯の水をかき集め、同じように注いだとしても、以前のそれとは全く別物であるのと同じように、だ。
だからこそ、過ちは繰り返してはならないのだ。
であれば、かつて人類に憐憫の情を抱き、|人造竜騎《キャバリア》の鍛造を手助けしたことは罪であった。
「……わかっている」
その瞳に映るのは城下町から離れたある人間の村。
かつては百獣族の住まう大地であった土地は、言うまでもなく人間が百獣族を滅ぼして得た土地である。
となれば、復活した百獣族が己が土地であると主張するところに正統性があることは言うまでもないことだ。
だから、これは仕方のないことだ。
百獣族が正しい。
無為に奪われたのだから、奪い返す。
当然のことだ。
これが因果だ。
行われた非道には報いがあってしかるべきだ。
「……」
その村に常駐する騎士はいない。
辺境の土地であるし、今は収める辺境伯が投獄されているがゆえに混乱の渦中にある。
騎士の派遣が追いつかないことも知っている。
だが、それがどうしたというのだ。
自業自得だ。
例え、過去に虐殺を行った人間が一人もいないのだとしても、その因果は未来に受け継がれた、それだけのことだ。
「いざや、『聖なる決闘』を! 我が名は『獣騎ヘカトンケイル』! 奪われし大地の奪還を懸けて、我らと『聖なる決闘』を行わんとする者たちはいないか!」
「わ、私達には、そんな戦う力など……」
「否! お前たちは人間であろう。かつて我らを尽く屠ったはずだ。その血族であるというのならば、かつての雪辱を今、ここに灌がねばならぬ!」
「し、しかし……」
「かつての我らは、お前たち人類の人造竜騎の数の前に敗れた。それ自体は戦いの結果だ。その過程がどれだけ残虐非道であろうとも、敗北を喫した我らに問題がある。我らは雪辱の機会を得た! であれば!」
『獣騎ヘカトンケイル』は、その無数の目と六腕でもって人間たちの村にて『聖なる決闘』を申し込んでいるのだ。
だが、従えた配下である『獣騎ソルレオン』たちは唸り声をあげていた。
「卑劣なる人類に粛清を! 数で取り囲み圧倒するなど騎士の戦いではない! かつて、我らが一族が受けた仕打ち、今ここに果たさせて頂く!」
彼らの恨みは強烈なものだった。
わかっている。
それほどまでのことを人類はかつて百獣族にしたのだ。
これは因果だ。
仕方ないことだ。わかっている。当然のことだ。
「けれど」
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は亜麻色の髪を揺らして黒い瞳に映る、ニンゲンの村を前にして踵を返すことができなかった。
自分には関係ないことだ。
縁もゆかりも無い。
過去、妖精族が冒した過ちは拭い難いものだった。
この身に湧き上がる情のままに動けば、また過去の過ちの繰り返しだということもわかっていた。
「……いいや、人間族には関わらない。もう決めたことだ。彼らに与する理由になってない」
頭を振る。
踵を返す。
振り返らなければ良い。忘れれば良い。見て見ぬふりをすればいい。
だが、体は、意志は、そう決めたのだとしても。
心が振り返っていた。
戦いに際しては心に平和を。
なら、その心は何も間違えなかった。
例え、己の行動のすべてが過ちであったのだとしても、この心だけは間違いではなかったのだと信じたかったのだ――。
●バハムートキャバリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。バハムートキャバリア、辺境の地、さらにその辺境にある村に百獣族が襲来し『聖なる決闘』を挑んでいます」
それ自体は大して珍しいことではなかっただろう。
だが、その『聖なる決闘』を挑まれた辺境の村には騎士が常駐していないのだ。
加えて、この辺境は辺境伯が投獄されるなどの混乱が未だ収束しておらず、援軍も望めない。元々、この村は決闘で戦う戦力などないのだ。
だが、復活した百獣族は、かつてこの土地に住まう者たちであった。
であれば、奪われた土地を奪い返そうとするのは当然の帰結。
「問題は、その襲来に妖精族『セラフィム』の『フュンフ』と呼ばれる少年が一人、単身で百獣族と決闘を挑むことを決めてしまっているのです」
それは無策無謀である。
元々、妖精族は過去の罪により獣騎への変形能力を喪っている。
勝ち目のない戦いなのだ。
「放っておけば、決闘を挑まれた村の人々も、それを助けに入った妖精族の少年も百獣族に返り討ちにあってしまうでしょう」
だから、とナイアルテは頷く。
そう、猟兵の出番だ。
「転移後、すでに百獣族と妖精族の少年の戦いは始まっています。たった一人で戦いを挑んだ割には善戦していると言っても良いのですが……」
やはり多勢に無勢であろう。
彼を助けるためにもさっそうと助太刀に入って村を護らねばならない。
ナイアルテは猟兵たちを見やる。
「確かにバハムートキャバリアの人類はかつて、許されぬ大罪を冒したのかもしれません。ですが、私達はどちらも見捨てることはできないのです」
大罪も過去の存在、オブリビオンに世界を明け渡す理由に放っていないからだ。
故にナイアルテは心苦しい戦いになることを承知の上で猟兵たちへと頭を下げ、送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
バハムートキャバリア、辺境の地、その村にて復活した百獣族が『聖なる決闘』を挑むことが予知されました。
しかし、辺境伯投獄などの事件により、この辺境の地は混乱しています。
常駐している騎士なく、そして混乱故に援軍もない辺境の村。
当然、このままではまともな戦力なく百獣族たちに敗北するでしょう。
そして、この村を見捨てられなくなった妖精族の少年が駆けつけます。ですが、彼一人ではどうすることもできません。
そんな彼らを救うシナリオになっております。
※全ての百獣族(獣騎)は、例えスライムのような異形種族でも、会話によるコミュニケーションが可能です。彼らはいにしえの聖なる決闘に則り、正々堂々と戦いを挑んできます。
●第一章
集団戦です。
転移後、すぐに村で百獣族と戦う妖精族の少年と合流することができます。
颯爽と駆けつけ、助太刀しましょう。
●第二章
ボス戦です。
軍団を率いていた頭目である獣騎との決戦となります。
前章にて妖精族の少年を助けることができていれば、彼の援護を受けて戦うこともできるでしょう。
ですが、『獣騎ヘカトンケイル』は過去の経験から多数対一の戦いに慣れています。
数の不利はまったくないと言っても過言ではありません。
●第三章
日常です。
百獣族を退け、平和を取り戻しました。
せっかくなので、過去を知る妖精族の少年と交流を行ってもいいですし、この土地に過去あった伝説や言い伝え伝承などを探ってみてもいいでしょう。
それでは過去より連なる因縁、その線が描く因果たる戦いに挑む皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『獣騎ソルレオン』
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POW : ハンティング・コンビネーション
【仲間】と連携し、【手斧】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD : ジャグリング・トマホーク
【高速で投擲する手斧】を【味方間で投げ渡し合っての連携】で加速し攻撃する。装甲で防がれた場合、装甲を破壊し本体に命中するまで攻撃を継続する。
WIZ : バルバロイ・ゲッシユ
【たてがみから発する閃光】で触れた対象に「制約:【卑怯な行い(ソルレオン基準)を禁ずる】」を宣告する。制約を破るたび、激痛を与える【遮蔽を貫通する天罰の光】が対象に降り注ぐ。
イラスト:聖マサル
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「妖精族か! 此度も人間に与するか!」
その言葉に亜麻色の髪を揺らして、妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は胸が締め付けられているかのように苦々しい顔をしていた。
過去。
そう、許されぬ大罪。
人類が行った凶行。
百獣族の大虐殺。
それらは己たちが憐れに思った人間族に人造竜騎鍛造の手助けを行ったから引き起こされたと言っても過言ではない。
だからこそ、過去から自身を謗る声を前にして目を背けることは許されなかった。
『獣騎ソルレオン』の恨みは尤もだ。
申し開きもない。
だから、何も言えなかったのだ。
「……わかっている」
「いいや、何も分かっていない。お前たちがただ憐憫のみにて人間に与したがために引き起こされた惨劇を。知りながら今再び人間の側に立っている! その事実が許せぬ!」
「……それは」
黒い瞳が揺らぐ。
そうだ。
何故、と思う。関わらないと決めたはずだ。
なのにどうして己は獣騎への変形能力を喪ってなお、彼らの前に立ちふさがり、人間の村を護ろうとしているのか。
「答えられぬか、妖精族! 申し開きもできないというのならば!」
振るわれる一撃を受け止めて、『フュンフ』の体躯が吹き飛ぶ。
地面を転がりながら、立ち上がる。
血に塗れ、息が切れる。
彼らの言う通りだ。
だが、それでも。
「俺の……僕の心が、見捨てられなかったんだ――」
エリアル・デハヴィランド
●POW
…妖精族には色々と思うところがあるが、彼らの中から聖なる決闘に挑む者が現れたのは正直驚いた
決闘は正当性のみで決まらず
罪咎の懺悔のみで決まらず
ただ、結果のみが真実
しかし、見捨てられなかったか…ならば私も、決闘に挑む意思と行動を示した貴君を見捨ては出来ない
我が名はエリアル・デハヴィランド
円卓の騎士の末席にして、此度の聖なる決闘に挑みし者なり
既に妖精族が貴君らとの聖なる決闘に挑んでいるが、微力ながら助太刀する!
人造竜騎召喚…レナード!
剣を捧げて立てる『騎士道の誓い』は妖精族に対する『赦し』
…私も変わったものだ
盾で手斧を打ち払い、一刀の下に切り抜けよう
フュンフと言ったな
その念いを決して忘れるな
百獣族の大虐殺。
それは過去に起こりしことである。
忘れてはならない。忘れられてはならない。
そういうものだ。
贖罪すべき者もなく、ただ祈りを捧げることしかできない。人の背負った業というものは、いつまでも許されない罪である。
だからこそ、だ。
「……」
思う所がある。
妖精族。
彼らはかつては憐憫の情にて人間族に与し、人造竜騎の鍛造を手伝った。
それが事の始まりかと言えば、そうではないのだろう。
全ては人の身に宿る激情を見誤ったが故ではなく、あくまで人の制御できぬ残虐性故である。
「正直な所、驚いた」
エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は、血に塗れ転がりながらも立ち上がった妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の前にたち、そう告げた。
そう。
決闘は正当性のみで決まるものではなく。罪咎の懺悔もまた加味するところではない。故に聖なる決闘は、その結果のみを真実とするのだ。
見上げる『フュンフ』の黒い瞳がエリアルを映し出す。
そこに希望はあったか。
「……騎士か。なら、僕はもうお役御免だ」
「確かにそうだろうな。だが、しかし、見捨てられなかったと言ったな」
「……言っていない」
「いいや、聞こえたさ。だから私は、決闘に挑む意志と行動を示した貴君を見捨てられぬと駆けつけたのだ」
何を意固地になっているのか。
その背後に迫るのは『獣騎ソルレオン』たちであった。
「人間族か! ならば、聖なる決闘だ! 我らが恨み、積年の恨み、ここで晴らさせてもらう!」
「いいだろう。我が名はエリアル・デハヴィランド。円卓の騎士の末席にして、此度の聖なる決闘に挑みし者なり」
「よい名乗りだ! 人間族! よかろう!」
「ありがたい。貴君らと彼との間に割って入った非礼は詫びる。だがしいかし、これなる決意を見て助太刀せぬは義に悖る。故に!」
「喚ぶがよい、貴様の人造竜騎を!」
「寛大なことだ……ならば、『レナード』!」
剣を捧げ、騎士道の誓いを立てる。
それは赦しであった。
妖精族に対する赦し。かつてはそのように思うこともなかった。
だが、召喚されしは、騎士道精神を象徴する架空の生物『ライオン』を象りし、最新のして最後の人造竜騎。
黄金の輝きは、その騎士道精神の発露。
『獣騎ソルレオン』の前に立ちふさがりしは、『レナード』であり、乗り込むのは忌み子であるエリアル。
「いざ!」
振りかぶられる斧の一撃を盾で打ち払い、一刀を叩き込む戦いぶりは勇猛果敢そのもの。
「『フュンフ』と言ったな。その|念《おも》いを決して忘れるな」
エリアルは振り返ることなく背後にいる『フュンフ』に告げる。
それはきっと己が掲げた騎士道の誓いに背かぬためのこと。
そして、それがエリアルの邁進すべき道。
故に彼は己が瞳を背後には向けないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
シャナ・コリガン
…かつて、憐憫の情を抱き協力したのは事実です。
残虐性を、見誤った。
なればこそ、私はここにいるんです!
ええ、一度与したのが事実でしょう?ならば、今回は手を貸さないとか…卑怯にもほどがありましょう。
いうなれば、これが私、シャナ・コリガンの騎士道…「一度手を貸したのなら、最後まで」です。
『聳弧』、行きましょう。
ソルレオンたちは強い。だからこそ、追尾式の雷も使わなければ、勝てません!
言っときます。「聳弧」が攻撃した『20秒後』に雷が来て、麻痺とダメージを与えます。
それを避けられないように、双剣での攻撃を数多く。そして、その『20秒後』が間断なくいくように。
過ちは正さねばならない。
過ちを過ちのままにすることが、真の愚者である。
「これは聖なる決闘である。人間族よ。我らと戦え。正々堂々たる戦いを! 貴様たちの人造竜騎を出すのだ!」
『獣騎ソルレオン』たちは恨みに瞳が濁るようだった。
だが、それでも彼らがあくまで聖なる決闘にこだわったのは、彼ら自身が騎士であるがゆえである。
あらん限りの力を持って敵と相対する。
騎士であるというのならば、例え勝ち目無くとも立ち向かわねばならない。
それを辺境の村に住まう人間たちに強いたのだ。
「しかし、我々は……た、戦う力が、ないのです。あなたがたの怒りは、恨みは、尤もなこと……! ですが! どうか!」
村人たちの言葉に『獣騎ソルレオン』は頭を振る。
「ならぬ! 我らは女子供に至るまで、ただの一人も残さず殺されたのだ。他ならぬ人間族、お前たちに!」
「確かに」
その通りだ、とシャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)は乗騎である麒麟キャバリア『聳弧』を駆り、村人と『獣騎ソルレオン』との間に割って入った。
「妖精族か! 今更姿を現したところで!」
「……かつて、憐憫の情を抱き協力したのは事実です。残虐性を、見誤った」
「ならばなんと言う!」
「なればこそ、私はここにいるんです!」
「居直ったか!」
「ええ、一度組みしたのが事実でしょう? ならば、今回は手を課さないとか……卑怯にもほどがありましょう」
「であれば、その罪過を背負って我らと戦うか!」
『獣騎ソルレオン』のたてがみがユーベルコードに煌めく。
それは法。
卑怯なる行いを禁じる法のユーベルコード。
戦場に満ちるユーベルコードの力は、卑怯なる行いを決して許さない。
だからこそ、シャナは己が『聳弧』の仲で頷く。
「元よりそのつもりです。いうなれば、これが私、シャナ・コリガンの騎士道……『一度手を貸したのなら、最期まで』です」
「その罪過と共に沈め、妖精族!」
迫る『獣騎ソルレオン』の手斧の一戦。
振るわれた一撃を受け止め、機体のフレームが軋む。
一撃の重たさは、恨みの積み重ねか。
それほどまでに『獣騎ソルレオン』の一撃は苛烈だったのだ。打ち合う双剣と手斧。
火花が散るさなかに『聳弧』のアイセンサーが煌めく。
「『聳弧』、麒麟伏雷剣です!」
呼応するように『聳弧』のジェネレーターが唸りをあげ、『獣騎ソルレオン』を押し返す。
「くっ、やるようだが、この程度の剣戟、凌げぬとでも思ったか!」
「いいえ、本命は、ただ一つです! 言っときます」
「何を!」
「20秒後、雷が貴方を打ち据えるでしょう。間断なく迫る剣戟と雷。凌ぎ切れますか!」
20秒後。
そう、『聳弧』の放つ剣戟の遅れること20秒後に雷が走る。
潜伏した雷は、双剣の閃きと共に手数で『獣騎ソルレオン』へと襲いかかる。
「ぐっ、おおおっ!! この手数、馬鹿な……これほどのものなのか! 人間族の人造竜騎は!」
「これが私の覚悟です。人間族の罪、妖精族の罪。その全てを贖うその時まで、私は!」
戦うのだ。
シャナのユーベルコードに煌めく瞳。
そして、万雷のごとく降り注ぐ攻撃に『獣騎ソルレオン』は呻きながら圧倒されるしかなかったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
百獣族……あなたたちの憤怒は、正しい
この世界は、あなたたちを救わなかった
……けれど――
自らの罪を引き受け、それでも独りで立ち向かおうとした声と姿が、私の心を動かした
受け止めましょう、『猟兵』として
――私もまた、罪を背負う者だから
薄翅・静漓。そして『セラフィム・クレッセント』
この聖なる決闘、私も受けさせてもらうわ
キャバリアを召喚し騎乗する
卑怯な振る舞いはせず、真剣に戦うわ
溢れるオーラを光の矢へと変えて、静かに、迷いなく射つ
その魂に宿る、灯をともせ
それは、かつて滅ぼされた者たちへの答礼であり
今を生きようとする者たちへの、祈り
贖罪のために生きる者が、再び過ちを繰り返さぬように
鋼の咎は血に塗れている。
これまでバハムートキャバリアにおいて紡がれてきた人間族の歴史は血路そのものであった。
例え、過去の罪過が今を生きる者たちにとって、ただ重くのしかかる謂れなきものであったとしても、それを捨てられぬのが人間だ。
だからこそ『獣騎ソルレオン』たちは咆哮する。
「剣を取れ、人間族。我らと戦うのだ。かつて在りし日のようにはいかぬ」
彼らはかつての己たちの大地を取り戻さんとしている。
正統性というのならば、その通りであったことだろう。
「百獣族……あなたたちの憤怒は、正しい」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は『獣騎ソルレオン』の閃光のように棚引くたてがみを前にして人と百獣族の間に立つ。
「この世界は、あなたたちを救わなかった……けれど――」
彼女が見るのは、揺れる亜麻色の髪。
血に塗れ、獣騎への変形能力を喪った妖精族に、この戦いをどうにかできるわけがなかった。
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は、それでも見捨てられなかったのだ。
独りでも立ち向かおうとした声と姿が、静漓の心を動かしたのだ。
彼がいなければ、ここにはいない。
彼の勇気が、彼の情が、こうして多くの猟兵たちを引き寄せたのだとすれば、彼の行ったことは無駄ではなかったのだ。
「受け止めましょう、『猟兵』として――私もまた、罪を背負う者だから」
「ならば、名乗れ」
「薄翅・静漓。そして」
虚空より現れるのは、白銀の装甲に走る青のサイキックキャバリア。
「『セラフィム・クレセント』。この聖なる決闘、私も受けさせてもらうわ」
「よかろう。ならば、我らが怒り、その切っ先を受ける覚悟ありと見た。いざ!」
アイセンサーが煌めく。
互いに意志を宿した光は、交錯した瞬間に攻防が始まる。
『セラフィム・クレセント』の腕部が弓状へと変形し、光の矢を放った。光は空を駆けて一気に『獣騎ソルレオン』へと迫る。
手斧の一閃が光の矢を切り払い、距離を積める。
「『獣騎ソルレオン』は!」
『フュンフ』の声が聞こえる。
その声に呼応するように静漓は『セラフィム・クレセント』のコクピットの内部で頷く。
『獣騎ソルレオン』の猛進は凄まじい。
まともに打ち合ってしまえば、力負けすることは見えていた。
だがしかし、それでも静漓は真正面から見据える。
「その魂に宿る、灯火をともせ(トモセ)」
静漓の瞳がユーベルコードに輝く。
迸るオーラが『獣騎ソルレオン』を飲み込み、その駆体を押し流していく。
「クッ……押し流される!? パワー負けする、だと!?」
「これは……」
その迸るオーラは、『獣騎ソルレオン』を押し流し、同時に『フュンフ』の傷ついた体躯を癒やしていく。
それは、かつて滅ぼされた者達への答礼であり、今を生きようとする者たちへの、祈りだた。
人は過ちを繰り返す。
仕方のないことだ。
過去の罪もいつかは忘れ去られてしまう。
けれど、と思うのだ。
「贖罪のために生きる者が、再び過ちを繰り返さぬように」
そうやって生きていくしかないのだと。
何度間違えても、何度過ちを前にしても、それでも――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
機神搭乗
…セラフィム…フュンフ…此処でも…なのか
「セラフィムは数多の世界に広がってるぞ☆」
…そうみてーだが…知っちまった以上は…やるしかねぇか!
……おめーらがどう主張しようと…おめーらは過去の人類がやった事と変わらねーよ
既に此奴らはおめーらを潰した奴らじゃねぇ
おめーらは結局の所…奪われたものを暴力で奪い返す…それだけでしかねぇ
だから…これからおめーらが暴力で蹴散らされるって事は…勿論覚悟の上って事だよなぁ!
【属性攻撃・念動力・弾幕】
UC発動
凍結弾を乱射して各敵機を凍結させる
基本的に無力化させる
…例えてめーらが此奴らを殺しても恨みは晴れねぇ
もう…おめーらが恨みを晴らす相手もいねぇんだよ…
「……おめーらがどう主張しようと……おめーらは過去の人類がやったこと変わらねーよ」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は『メルクリウス』のコクピットの中から辺境の地、人間の村を襲う百獣族たちを認めて、そう呟いた。
彼らには正統性がある。
奪われたから、奪い返す。
ただそれだけのことなのだろう。
わかっている。これが鋼の咎。人類が冒した大罪である。
だがしかし、だ。
それは過去のこと。水に流せとは言わない。言わない、が。
「既に此奴らはおめーらを潰したやつらじゃねぇ」
「だったら何だと言う。罪無きとでもいうか? 我が血族の骸の前でも、同じ言葉を吐くことができるか!」
『獣騎ソルレオン』たちは咆哮する。
どこまでも怒りに塗れていた。
どこまでも悲しみに塗れていた。
喪ったものが大きすぎる。
だが、だからといって奪って良い理由にはなっていない。
「おめーらは結局の所……奪われたものを暴力で奪い返す……それだけでしかねぇ」
「ならば、どうすれば取り戻せる。暴力で奪われたものを如何にして贖うというのだ、貴様は」
取り戻せるわけがない。
生命が回帰しないのと同じように喪ったものは戻らない。
どう足掻いても、戻らない。
生命とは、そういうものだからだ。
残るのは過去のみ。
重さに歪んで世界に滲み出るオブリビオンのみ。
「暴力には暴力で返すしかなくなるんだよ。そうやって堂々巡りを続ける。そうやっていつまでもたっても終わらない戦いに身を置くしかなくなる。そういうのが御免だと思うから、そんな連鎖を断ち切らないとならねーんだよ。だからよぉ」
『メルクリウス』のアイセンサーが煌めく。
展開する念動弾が機体の周囲に無数に浮かぶ。
ユーベルコードによる魔弾の生成。
カシムは見据える。
「これからおめーらが暴力で蹴散らされるってことは……覚悟してもらわにゃならねーんだよ!」
放たれる魔弾。
凍結の属性を伴った弾丸が『獣騎ソルレオン』へと迫る。
閃光のたてがみを揺らしながら、『獣騎ソルレオン』は弾幕溢れる戦場を疾駆する。
「覚悟! 覚悟と言ったか!」
「そうとも、我らに覚悟があるのだ!」
「なら、受けろよ!」
弾幕溢れる中、『獣騎ソルレオン』と『メルクリウス』は交錯する。
振るわれる手斧を躱しながら、カシムは言う。
「……例えてめーらが此奴らを殺しても恨みは晴れねぇ。もう……おめーらが恨みを晴らす相手もいねぇんだよ……」
遣る瀬などない。
だが、それでも過去に世界を明け渡すことはできない。
ただ、その一念のみにおいて、カシムは『獣騎ソルレオン』たちを相手取るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャリス・ルミエール
私には百獣族の怒りを否定する権利などありません
人々に鋼の咎を背負わせる切掛となった妖精族なのですから
けれど、そんな一方的に痛ぶる戦い方では、あなた達も鋼の咎を背負ってしまう
私にはこれを見過ごす事は許されません
聖杯もそう告げています
聖杯の乙女、シャリス・ルミエール
アリコーンと共に騎士道を果たします!
相手は数が多く連携も取れている…
百獣族の相対した人間達も、このような戦いをしていたのでしょうか?
アリコーン!大地を駆け抜けて!(ユニコーンモード)
ブライトフェザーで目眩しを
手斧の投擲の狙いを逸らすのです
そしてソルレオンからソルレオンへと突進し、ルミナスシューで蹴り付け、セイントホーンで突き上げます
妖精族はかつて大罪を冒した。
人の残虐性を見通すこともできず、ただ憐憫の情にて人造竜騎の鍛造に力を貸したのだ。
引き起こされる虐殺。
それを止めることもできぬ身。
その光景を見た妖精族は、もう二度と過去の過ちを繰り返させはせぬと誓ったことだろう。
だからこそ、である。
シャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は『獣騎ソルレオン』たちの怒りの咆哮を前にして、それを否定する権利を持ち得ていなかった。
切っ掛けはどうであれ。
虐殺の口火を切ったのは、人造竜騎の存在である。
言うなれば、鋼の咎は妖精族の咎でもあるのだ。
「けれど」
そう、シャリスは『アリコーン』の内にありて祈るように手を合わせた。
『獣騎ソルレオン』たちはかつての己たちの大地に住まう人間族を、己たちがそうされたのと同じように焼き払おうとしている。
とめどない怒りが、理性を失わせていると言っても過言ではないだろう。
「そんな一方的にいたぶる戦い方では、あなた達も鋼の咎を背負ってしまう。私にはこれを見過ごすことは許されません。聖杯もそう告げています」
聖杯の乙女たるシャリスにとって、戦いとは気高きもの。
力ある者と力ある者との間にしか存在しないものだ。
「許されないと? 我らの行いが、人間族の非道を、ただ受け入れてしまえと、そういうのか!」
『獣騎ソルレオン』たちが一斉に『アリコーン』へ迫る。
「聖杯の乙女、シャリス・ルミエール。『アリコーン』と共に騎士道を果たします!」
「騎士道だと? 人間族に与した妖精が! どの口でほざく!」
『獣騎ソルレオン』たちは加速し、『アリコーン』を取り囲むように戦場を駆ける。
手にした手斧を投げ放ち、互いが互いの武装をジャグリングのように入れ替えながら『アリコーン』を翻弄せんとしているのだ。
それは連携と呼ぶに相応しい戦い方であったことだろう。
『獣騎ソルレオン』の攻勢を前にして『アリコーン』は何もできないのか。
否。
『アリコーン』の姿が一角馬を思わせる形態へと変貌し、『セイントホーン』が煌めく。
その煌きは、『アリコーン』の翼であるグロリアスウィングから放たれ、『獣騎ソルレオン』たちの視界を真白に塗りつぶすのだ。
「グ……目眩ましなど!」
「『アリコーン』! 大地を駆け抜けて! かの憤怒に駆られし者たちを止めるのです!」
呼応するように角を戴く天馬(アリコーン)は戦場を駆け抜ける。
加速し、蹄が大地を蹴りつける。
得られた加速によってセイントホーンの一撃が『獣騎ソルレオン』の体躯を切りつけ、更に背後に迫った『獣騎ソルレオン』を蹴り上げる。
翻った翼が放つ光は、粉雪のように周囲に舞い散り、その瞬きの合間に『獣騎ソルレオン』を打ち倒すのだ。
「馬鹿なっ……我らの動きが、見透かされる、だと!?」
「怒りに駆られた瞳では視えぬものもありましょう。だからこそ、私は、あなたたちを止めなければなりません」
シャリスは祈る。
オブリビオンとなって今に滲み出した百獣族たち。
彼らの怒りは慙愧の念を呼び起こす。だからこそ、過ちは繰り返してはならないのだ。
シャリスは、その祈りと共に『獣騎ソルレオン』たちの怒りを受け止めるように『アリコーン』と共に戦場を疾駆するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
……過去を知らないボクには、あなた達に伝えられる言葉は無いのかもしれない
けれど、あなた達がその怒りと憎しみに身を焦がすというのなら
鋼竜石の妖精アルマ・フィーリアと、人造竜騎ドラグリヴァーレが、あなた達の相手をする……!!
リヴァーレの首…『ドラグヘッド』から|魔法の刃《『ブレイド』》を出して相手と打ち合う!
鈍重だし、自己修復もできるから多少の被弾は承知の上!
それに…ただ攻撃を受けているだけじゃないよ!…【ドラグ・サーヴァント】!
こっちからの攻撃、もしくは被弾して鋼竜石の装甲が剥離するたびに、そこから鋼竜石の狼や鷹を生み出し、30秒後の時間差攻撃で畳みかけるよ……!
記憶がないということは過去がないということではない。
確かに過去が存在したはずなのだ。
けれど、アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は人造竜騎『ドラグリヴァーレ』と出会った後の記憶しか持ち得ないのだ。
だからこそ、妖精族でありながら彼女は『獣騎ソルレオン』たちの怒りを前にして果敢なる瞳を向けていた。
「……ボクには、あなたたちに伝えられる言葉はないのかもしれない」
けれど、とアルマは『ドラグリヴァーレ』のコクピットの中で思う。
彼らの瞳には怒りと憎しみとがあった。
それしかない、と言ってしまえるほどの怒り。
彼らは過去から滲み出した存在だ。
その怒りすらも過去の体積は歪ませてしまう。オブリビオンとはそういうものなのだ。
だからこそ、その怒りと憎しみに身を焦がし続ける『獣騎ソルレオン』に憐憫の情を向けただろう。
それはかつて人間族に妖精族が向けた感情と同じだった。
「ならば黙れ、妖精族! 貴様たちの咎罪! それを忘れぬためには!」
奪うしかないのだろう。
やり場のない怒りをどうにかするためには、奪われたから奪うしかないのだ。
けれど、それは悲しいだけだ。
どこまで連鎖していくだけだ。
だから、アルマは瞳にユーベルコードの輝きを灯しながら告げる。
「鋼竜石の妖精アルマ・フィーリアと、人造竜騎『ドラグリヴァーレ』が、あなたたちの相手をする……!!」
人間には手を出させない。
それがアルマの意思だった。
「邪魔立てをするのならば!」
閃光のようにたてがみが迸り『獣騎ソルレオン』たちが一斉に『ドラグリヴァーレ』へと襲いかかる。
振り降ろされた手斧の一撃をドラグヘッドから生み出したブレイドで受け止める。
火花が散り、互いのアイセンサーが交錯する。
「異形の人造竜騎! おぞましき姿よ! それこそが人間族の残虐性の証明と何故わからない!」
「それでも!」
振るわれる手斧の手数は圧倒的だった。
装甲が削られ、傷がつく。
だが、自己修復能力を盾にアルマは踏み込む。
「ドラグ・サーヴァント! 装甲にはこういう使い方もあるんだよっ!」
砕けた装甲の破片。
それが剥離する度に徐々に形を変えていくのだ。
恐るべきことに、その装甲の破片じたいが自律兵器となって狼や鷹の形を伴って、一斉に『獣騎ソルレオン』へと襲いかかるのだ。
「鋼の狼だと……!?」
「畳み掛ける!」
その言葉と共にアルマは『ドラグリヴァーレ』の多頭と己の装甲から剥離して自律兵器と化した鋼の狼、鷹と共に『獣騎ソルレオン』へと襲いかかる。
「だが……! 何?! 駆体が、動かぬ、だと?」
そう、自律兵器は『獣騎ソルレオン』の体躯を麻痺させる。
その間隙こそアルマの望んだものであり、ブレイドの一閃が『獣騎ソルレオン』を斬り裂くのだ。
「謝らない……けれど、その怒りと憎しみはこれ以上燃やしてはならないものなんだ」
だから、とアルマは怒りに塗れた『獣騎ソルレオン』たちを下し、さらに戦場を征くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
ま、恨みも判るけどね……
それでもフュンフだって正統な「挑戦者」なのだし…
不利を承知で挑戦してきたのだから少しは敬意を持っても良いんじゃないかな…
ま…そういう訳で…フュンフに加勢するよ…
…手斧の投擲による連携が厄介だけど……【汝、意のままに動く事能わず】を発動…
投擲のモーションを改竄する事でフュンフと共に手斧を回避するよ…
…連携が緻密だからこそ…そこを崩せば明確な隙になる…
…斧が明後日の方向に飛んだり味方に当たったりしてるところに重奏強化術式【エコー】で強化した術式の剣を飛ばして撃破するとしようか…
聖なる決闘。
それは獣騎へと変形して行う戦いである。
全てを決定するための戦いであり、そこには誇りがあった。
だがしかし、これは本当にかつて在りし聖なる決闘であっただろうか?
先に穢したのは、人間族だ。
獣騎への変形能力を保たぬ人間族が人造竜騎を得て行った蛮行は、拭い難い鋼の咎。どんなに言い換えようとも、その罪が消えることはない。
そして、その止めどない残虐性故に人間族は百獣族の女子供が最後の一人まで殺し尽くした。
その結果が、現在である。
辺境の地。
その大地にあって妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は単身、『獣騎ソルレオン』たちに立ち向かっていた。
過去のことからも二度と人間族に関わるべきではないと理解しながら、しかしその情は彼を突き動かしていた。
「ま、恨みも判るけどね……」
メンカル・プルモーサ(星導の魔女・f08301)は頷く。
試作型術式騎兵『ツィルニトラ』に搭乗し、『獣騎ソルレオン』たちと対峙する。
「判るだと? 我らの怒りが、憎しみが、恨みが、判るだと? いいや、わかるまい、人間族!」
「……そうだとしても、不利を承知で挑戦してきたのだから、少しは敬意を持っても良いんじゃないかな……?」
妖精族は獣騎への変形能力を喪っている。
それが咎であることは言うまでもない。
だが、それと戦う戦わないは問題を別とするところであった。
「敬意など、我らが怒りを前にしては意味などない!」
吠える。
『獣騎ソルレオン』たちは、一斉に咆哮し迫るのだ。
怒りに駆られ、ただ目の前の敵を屠るためだけに彼らは手斧を投げ放ち、高速でこちらを取り囲むようにして疾駆する。
「お前たちから生命を奪うことこそが、生命奪われた我らが同胞の生命に贖う最大にして唯一の術なのだ、それを!」
分かれ、と言うように投げ放たれる手斧。
凄まじい連携攻撃である。
一部の隙もないほどの『獣騎ソルレオン』同士による緻密な連携。手斧を互いの間で投げ放つことで、その斬撃は苛烈さを増していくのだ。
「『フュンフ』……見えるよね?」
メンカルの言葉に『フュンフ』は頷いた。
「攻撃の隙……本来ならばあり得ない。けれど」
「……そう、これは」
汝、意のままに動く事能わず(モーション・ハッキング)。
メンカルのユーベルコードが『獣騎ソルレオン』たちが攻撃を放つ前から、彼らの動作を改ざんすることによって隙を見つけ出し、投げ放たれる手斧の軌跡の予測を可能としていたのだ。
それは恐るべきことに伝えられた『フュンフ』にも理解できるところであった。
「……連携は緻密であればあるほどに、一度動作を誤れば、大きく崩れる……」
メンカルの言葉通りだった。
『獣騎ソルレオン』たちは練磨された連携とは裏腹に噛み合わぬ己たちの行動に投げ渡された手斧を受け取り損ない、互いに同士討ちの様相を呈しているのだ。
「ガッ、グッ……!?」
「馬鹿な……これは、一体どういうことなのだ……!?」
理解する間もなく『ツィルニトラ』を駆るメンカルが放った術式の剣が『獣騎ソルレオン』を斬り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルディン・ホワイトストーン
因果。ああ、この世界の持つ、鋼の咎って奴か。
百獣族は誰もが獣騎になれる、だから非戦闘員って考えが薄いんだろう。
当時の人間族は、それで女子供まで殺したのかもな。
……さて。俺も行くか。
メルセデスに乗り駆けつけて、フュンフと合流する。
助太刀に来た。ああ、妖精族も人間族も、過去のいざこざも関係ない。
今、ここにいる連中を助けに来たフュンフ。あなたを助けに来たのさ。
四季紅葉を発動して、ソルレオンに対峙。
正々堂々と名乗りを上げる。
卑怯卑劣は嫌いだろう? 正々堂々と戦いたいなら、相手になるぜ。
フュンフを癒しつつ、程よく気合いを高めてアイスレイピアで手斧と切り結ぼう。
決闘に高揚を抱いて、村に向かわないようにな。
結局のところ、これは因果の話なのだ。
過去に消えた百獣族。
贖罪すべき者なき咎。
人間族が抱えたのは、そうした鋼の咎であった。故に、人間族は己たちの過ちを二度と犯さぬために騎士道精神にて心を律する。
例え、それが残虐性をひと時抑え込むことしかできぬものであったとしても、だ。
「我らが同胞の怒りを! 悲しみを! 苦しみを! 決して忘れてはならないのだ!」
『獣騎ソルレオン』たちが吠えている。
彼らの怒りは尤もだ。
正統性だってある。
けれど、とジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)は思う。
かつて、人間族が百獣族を女子供の最後の一人まで殺し尽くしたのは、誰もが獣騎に変形することができる特性を恐れたからだろう、と。
だから、殺し尽くした。
ただ一人も残さず。
それが大きな後悔を生み出すのだと知っていてなお、だ。
止まれなかった。
止まることができなかった。
「……さて。俺も行くか」
ジェラルディンは『メルセデス』と共に戦場に降り立つ。
亜麻色の髪が揺れ、己を見上げている。
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』。
彼の黒い瞳に己は如何なるように映っていただろうか。
「君は……」
「助太刀に来た。俺にとっちゃ、妖精族も人間族も、過去のいざこざも関係ない」
「ならば、己が闖入者以外の何物でもないという理解はできていような!」
『獣騎ソルレオン』の言葉にジェラルディンは頷く。
そう、どこまで行っても己は闖入者でしかない。
過去も関係ない。だが、ジェラルディンには『今』こそが必要だったのだ。
「ああ、ただ今ここにいる連中を助けに来た。『フュンフ』、あなたを助けに来たのさ」
「助太刀は、ありがたい、けれど……」
関係ない、というのならば尚更ではないか。
そう告げようとする『フュンフ』の前にジェラルディンは立ち、『獣騎ソルレオン』に向き直る。
「ジェラルディン・ホワイトストーン。卑劣卑劣は嫌いだろう? 正々堂々と戦いたいなら、相手になるぜ」
「よくぞ言った。ならば、ここで朽ち果てるも同意とみなす!」
踏み込むのは、閃光の如きたてがみを揺らす『獣騎ソルレオン』。
手にした手斧の一閃は強烈であった。
『メルセデス』の手にしたアイスレイピアの一閃が手斧を受け流し、半身となって『獣騎ソルレオン』の背後へと回り込む。
「巡れ。色付く秋の東雲のように。高まれ、上がれ、暖まれ」
四季紅葉(エンハンス・エキサイトメント)。
それはユーベルコード。
癒やしの力であり、また敵対者に高揚を与える力。
「オオオオオッ!!!」
「こっちを見な。お前たちの敵は俺だ。この俺なんだ。だから、その怒り、憎しみも、全部俺にぶつけるんだな」
風を切る音がしてアイスレイピアの切っ先が走る。
掲げた刃は、己こそが『獣騎ソルレオン』の敵であると示すようであり、彼らの怒りの矛先が他者へと向かわぬためにこそ振るわれるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
コラーッ!
虐殺はよくないよー虐殺は―
そう虐殺は…よくないかな?体面的に?
えー?あっちが先に?やったの?
じゃあしょうがないかー
●かふくはあざなえるなわのごとし
良いことと悪いことってのは交互にくるものさー
そう食べ過ぎて幸せになったら次にはお腹が痛くなるように!
いやこれは自業自得でインガオホー?
まあいいや!やっちゃえやっちゃえー!
っていつもならやるとこなんだけどー
オブリビオンじゃしょうがないかー
【第六感】で察知して[球体]くん斧をガード!からの
UC『神撃』でドーーーーンッ!!
けっきょくのとこ彼らは恨みを果たすことのできる『死者』ですらない
もしそうだったらって?
知りたい?
『獣騎ソルレオン』たちにとって、これは復讐である。
因果というものがあるのならば、報いがなければならない。そういうものだ。
例え、それが過去の化身として蘇ったのだとしても、だ。
世界を壊すことになるのだとしても、百獣族は止まらない。止まれないのだ。
だからこそ、彼らは怒りに染まる眼でもって辺境の地、人間族の村を睨めつける。
「我らが同胞の怒り、無念を思い知るがいい!」
「復讐するは我らにあり!」
彼らの怒りは正統性を持つ。
けれど。
「コラーッ! 虐殺はよくないよー虐殺はー! そう虐殺は……よくないかな? 対面的に?」
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、ちょっと待ったと言わんばかりに『獣騎ソルレオン』たちの目の前に現れた。
「そうとも。虐殺は悪しき行い。だが、人間族が行ったのだ。それを!」
「えー? あっちが先に? やったの? じゃあしょうがないかー」
ロニは、うんと頷く。
その怒りに理解を示したからだ。
だがしかしである。
相手はオブリビオン。
例え、正統性があるのだとしても、彼らを放置すれば世界は滅ぶ。
それは猟兵として止めねばならないことだ。
「ま、仕方ないよね。良いことと悪いことってのは交互にくるものさー。そう、食べすぎて幸せになったら次にはお腹が痛くなるように! いや、これは自業自得でインガオホー?」
ロニはうんうんと頷く。
「邪魔立てするというのならば、童よ」
「我らが斧の錆となるがいい!」
『獣騎ソルレオン』たちが一斉に手斧でもってロニへと迫る。
「えーと、こういうのって何ていうんだっけ? まあいいや!」
本来ならば問答無用でぶっ飛ばしているところである。
しかし、百獣族の言い分もわかる。わかる。わかるのだが……オブリビオンである以上、どうしようもない。
出現した球体が『獣騎ソルレオン』の一撃を受け止める。
「ヌッ……! これは、どこから!」
手斧を球体が受け止める。
押し込まれそうなほどの連撃。『獣騎ソルレオン』はそもそも複数機による連携を主に得意とする獣騎。
その連携から繰り出される連続攻撃の苛烈さは言うまでもない。
「ド――ンッ!!」
振りかぶったロニの拳が神撃(ゴッドブロー)となって『獣騎ソルレオン』を吹き飛ばす。
駆体が宙を舞う。
その一撃は強烈にして苛烈であった。
「けっきょくのとこ、彼らは恨みを果たすことのできる『死者』ですらない」
振り抜いた拳の先で砕ける『獣騎ソルレオン』の駆体。
彼らの怒りは正統性しかない。
だが、それでも彼らが存在している事自体が世界を破滅に導くのだ。
なら、やはり猟兵としてできることは一つだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!
メイド颯爽と登場
エイル様どこ!!(探索の意味)
亜麻色の髪の少年『フュンフ』
獣騎フィーア様の言葉を借りるなら数字は序列
フュンフ様は5番目……ですが
序列が百獣族全体に散っているのは何故?
まさか全体での序列??
というか、妖精族のエイル様ポジションはセラフィム様では!?
これは……初の2人パターン!?
どちらかというとフュンフ様の方がエイル様の香りが強い気がしますが!
このフュンフ様はエリクシルによって分かたれた末の存在?
いえ、何か違う気がします
ああ、もう!世界毎に情報が出てきてさすがに大混乱なのですが!!
ともあれフュンフ様を助けることに異論はありません!
ならば!ケルーベイム!!
百獣族からすれば行為は正統
されどこの地に息づくは人の生命
善も悪も立場が変われば捉え方が変わるならば
私は変わらず生命を謳いましょう讃えましょう
【テフィラー】
フュンフ様
たとえ貴方の中の正義が新たな戦いを呼び込むのだとしても
その心に従う限り|メイド《私》はお仕えしますよ!
数字は序列を意味する。
ならば、その名前に意味はあるのか。
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁぁぁぁすっ!!」
メイドは戦場に颯爽と登場する。
「『エイル』様どこ!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は周囲を見回していた。
空気が読めていないとかそんなレベルではない。
戦場の空気が凍りついた様であったし、時が止まったようでもあった。
その瞳が亜麻色の髪の妖精族『セラフィム』の『フュンフ』を捉える。
序列を意味する名前。
5番目を意味する名前。
しかし、これまでの例にならえば、この序列とは如何なるものに起因しているのか。
「なんだ、あれは」
「わからぬ。皆目検討も付かぬ」
『獣騎ソルレオン』たちは戸惑っているようだった。
無論、『フュンフ』も同様であった。
急に戦場に割って入ってきたメイドこと、ステラの雄叫びは強烈であったからだ。
そんな視線を受けながらステラは知ってか知らずか、戦闘を一時停止させていたのだ。
「そもそも妖精族の『エイル』様ポジションは『セラフィム』様では!? これは……初の2人パターン!? どちらかというと……」
くんくんとステラは鼻を鳴らす。
その鼻先が向かうのは『フュンフ』であった。
「どちらかというと『フュンフ』様の方が『エイル』様の香りが強い気がしますが!」
「な、何を言っているんだ?」
「いえ、こちらの話でござまいます!」
彼女が求める主人様の情報。
それが彼女の中で錯綜しているがゆえであった。
大混乱のさなかのハイテンションとは、他者を常に圧倒するものである。
だが、ともあれ、だ。
「助太刀いたします!『ケルーベイム』!!」
彼女が駆るは、一騎のキャバリア。
『ケルーベイム』と名付けられた機体は『獣騎ソルレオン』と対峙し、その双眸を輝かせる。
「戦うために来たというのならば、そう言えばよいものを!」
「貴方がたの行いは正統でしょう。。されど、この地に息づくは人の生命」
「だが、それは我らから奪ったものであるがゆえである!」
迫る『獣騎ソルレオン』。
手斧の一閃を『ケルーベイム』が躱し、翻るようにして紫白の装甲板が舞う。
「ええ、その通りでしょう。ですが、善も悪も立場が変われば捉え方が変わるように!」
ユーベルコードに煌めく瞳。
『ケルーベイム』のアイセンサーが呼応するように輝く。
「ですが、私は変わらず生命を謳いましょう。讃えましょう」
輝く生命が在る限り、音は鳴り止まぬ。
生命の歌は、鼓動。
注ぐは青き雷。
降り注ぐ一撃が『獣騎ソルレオン』たちを射抜く。
「『フュンフ』様」
「……!」
視線を向ける。
そこには星写す黒い瞳があった。
「例え、貴方の中の正義が新たな戦いを呼び込むのだとしても」
そう、平和を願うからこそ争いを呼び起こす者がいる。
争い無くば平和はない。
平和無くば争いはない。
その因果の中に囚われた者がいる。だが、それでも。
それでも、と手を伸ばさずにはいられない者がいる。
『フュンフ』が危機に陥った人間族の村を守るために獣騎に変形できずとも『獣騎ソルレオン』たちに立ち向かったように。
「その心に従う限り|メイド《私》はお仕えしますよ!」
それが己の宿命。
そう告げるようにステラは微笑んで、讃美歌と共に戦場を雷で塗りつぶすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
新たな!!推しの予感!!
ショタ萌え!!これはアレですか!
おねショタですか!!わたくし妹ポジションですけども!!
年齢も向こうの方が遥かに上ですけども!!
この何ひとつ見た目に合わない感じ、最高に萌えますが!?!?
くっ、ですが踊り子に触ってはいけないのが推し事の基本……
至近距離から見るのは許されるのでは?
あっはい戦います
ティタニア!
飛翔形態で戦場へ
空で変形して騎士形態で殴り込みですわ!!
フュンフ様、初めまして、へんた……じゃなかったファルシータと申します
微力ながら助力いたしますわ!
【フェアリー・リング】!!
此れよりは妖精の領域
踏み込み、害を為そうとするならば
わたくしを倒してからにしてくださいませ!
予感があった。
何の予感かと言われたのならば、ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)はきっと声高々に宣言しただろう。
「新たな!! 推しの予感!!」
これである。
彼女にとって推しとは、おかしなテンションのスイッチの一つである。
故に彼女が今回見つけ……妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は琴線に触れるものがあったのだろう。
「ショタ萌え!! これはあれですか! おねショタですか!! わたくし、ポジションは妹ですけども!! なんなら妖精族ということで年齢も向こうの方がはるかに上ですけども!!」
何を言っているんだ。
戦場となった辺境の地にて在りし者たちの全てがそう思っただろう。
ハッキリ言って挙動不審な上に言っていることが全部わからない。
「な、何を……」
「この何一つ見た目に合わない感じ、最高に萌えますが!?!?」
「いや、本当に何を」
「くっ、ですが踊り子には障っていけないのが推し事の基本……」
ファルシータは頭を振る。
一線はわきまえている。
そう、わきまえているのだ。
自分はそこらの迷惑で厄介なファンとは違う。違うのだ。
「至近距離から見るのは許されるのでは?」
「ひ」
ずい、とファルシータは『フュンフ』の顔を見つめる。
うーん、顔がいい。
これは見ているだけで健康になるやつであるとファルシータは思っただろう。
だが、そんな彼女の背後に影が落ちる。
無論、言うまでもなく『獣騎ソルレオン』たちである。
「貴様、一体何をしにきたのだ!」
本当である。
「あっはい戦います」
「巫山戯た物言いを!」
「『ティタニア』!」
ファルシータは己が乗騎へと飛び込み、騎士形態へと変形して『獣騎ソルレオン』と打ち合う。
「わたくしの名はファルシータ。へんたいじゃあありませんよ、『フュンフ』様、はじめまして!」
「先にそれを言うべきじゃなかった?」
本当にそう。
手斧とシールドランスが弾かれつつ、『獣騎ソルレオン』と距離を取る『ティタニア』。
「それはそうですわね! ですが、微力なが助太刀いたしますことは真でございますから!」
いや本当に、とファルシータはユーベルコードに輝く瞳と共に『ティタニア』を前進させる。
「真正面から来るか!」
「ええ、此れよりは妖精の領域。踏み入れるには相応の代償をいただきますわよ!!」
振るわれるシールドランスの横薙ぎ。
それは一閃でありながら、一撃のもとに迫らんとした『獣騎ソルレオン』たちを薙ぎ払う。
「此方より速い、だと!?」
「これは守るための力。であれば、誰かを害そうとする者はすべからく排除する力。もしも、これより先に踏み込み、害為そうとするならば、わたくしを倒してからにしてくださいませ!」
ファルシータは『ティタニア』と共に立ち塞がる。
つくづく思う。
前半がなかったらなぁ、と――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『獣騎ヘカトンケイル』
|
POW : 嵐のように突く者
【無数に生える腕が所持する無数の武器】から高威力の【レベル数×2回の攻撃】を放ち、レベルm半径内の【自身に恐怖の感情又は敵意が】ある者全員にダメージを与える。
SPD : 神の如き強き者
【堅牢巨神】に変身する。変身の度に自身の【腕と所持する武装】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
WIZ : 多くの眼と腕を持つ者
回避力5倍の【百眼】形態か、攻撃対象数5倍の【百腕】形態に変形し、レベル×100km/hで飛翔する。
イラスト:星月ちよ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「仇死原・アンナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「我が配下を退けるか。なれば、良し。聖なる決闘に挑むだけの力ありし強者と見た。であるのならば!」
『獣騎ソルレオン』たちを退けた猟兵達の前に一際長大なる跳躍と共に躍り出たのは、六腕の獣騎であった。
辺境の地を襲った百獣族の中でも一際強力な力を持つ百獣族。
その名は『獣騎ヘカトンケイル』。
「この雪辱の機会を与えし天に感謝しよう。お前たちと戦い、これを下すことで、我らは我らの奪われしものを贖うことができる。いざや、聖なる決闘!」
彼は咆哮する。
そこにあったのは奪われたものへの贖いの想い。
かつて奪われたのは己達に力がなかったからだ。
仮に人間族が人造竜騎を得たのだとしても、聖なる決闘に至るのならば、これを真っ向から打ち倒すべきだった。
それができなかった時点で『獣騎ヘカトンケイル』は己が未熟を恥じるばかりだった。
だが、今ここに雪辱の機会は来たれリ。
「さあ、どこからでも来るが良い。以前のように数を頼みにした戦いなど、今の我には通じぬ!」
過去、『獣騎ヘカトンケイル』は人造竜騎による集団戦法によって敗れた。
オブリビオンとなった今その経験があるのだ。
であれば、これを覆す力があると言っても良い。
数の不利など承知の上。
これを覆してこそ、強者。
故に『獣騎ヘカトンケイル』は己が六腕と、三対の眼でもって己に敵対する遍く全てを打倒さんと、その武器を振るうのだった――。
シャリス・ルミエール
●桐嶋技研
あの船はワダツミ!?
完成したのですか?
アリコーンは武器の少なさ故に、戦いに適した人造竜騎ではありませんでした
けれどこの新たな装いなら!
ミサイル…?
あの…そういった武器はあまり好ましくないのですが…
アリコーン・パラディン!
鋼の咎に向き合いましょう!
より大きくなって腕の数も増えた!?
グロリアスウイングを広げ、天馬の如く宙を駆けます(ペガサス形態)
フレアとブライトフェザーを放出して目を眩まし、ハイパーブースターで槍の間合いに飛び込みます
無尽の腕から繰り出される攻撃を潜り抜け、盾で受け流します
装備で増えた重量を乗せた、この速さでの突撃なら、巨大なる獣騎にも届くはず
ホワイトランスの一撃を!
桐嶋・水之江
●桐嶋技研
ギリギリ間に合ったようね
シャリスちゃん、例のブツが完成したわよ
ワダツミに帰艦なさい
すぐに換装するわよ
そこの六本腕さん?
まさか女の子のお着替え中に手を出すなんて破廉恥な行いはしないわよね?
説明しましょう
例のブツとはアリコーンの新装備の事よ
背中に増設したサブアームに大型突撃槍と大型盾を装備
前足にはマイクロミサイルランチャーを搭載
全備重量が増加して運動性は落ちたけれど、後ろ足に搭載した大型ブースターで機動力は向上しているわ
名前はアリコーン・パラディン
まさに聖騎士って感じでしょう?
ミサイルは嫌?
我儘ねぇ
ならフレアに換装しとくわ
さあ存分に戦いなさい
私は戦わないわよ?
セコンドの乱入は反則よね?
『獣騎ヘカトンケイル』――その姿はまさしく阿修羅のようであった。
だが、その言葉は正しくはないだろう。
その威容は獣騎へと変形して、さらに他者を圧倒するものであったからだ。まるで異形の化け物。見るものを恐怖に叩き落とすかのような威容を前に『アリコーン』に騎乗するシャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は思わず呻いていた。
「なんと圧倒的な姿……『獣騎ヘカトンケイル』!」
「そうとも! 強者を求める聖杯の乙女よ。お前が我の前に立ち塞がるというのならば、臆することは許されぬ!」
戦うしかない。
これはもとよりそういう戦いなのだ。
怒りと憎しみ、そして悲しみ。
それを身に背負うことこそが鋼の咎。
シャリスは、それを痛感していた。だが、『アリコーン』は武装が少ない。そもそも戦いに適した人造竜騎ではないのだ。
あの戦うためだけに己が多腕を振るう『獣騎ヘカトンケイル』と比べるべくもないだろう。
だが、そんな両者の間に割って入る声が響いた。
「ギリギリ間に合ったようね」
戦場の空に出現したのは、巨大な輸送艦であった。
堅牢な装甲を有する船体が空に煌く。
「あの船は『ワダツミ』!? ということは……!」
「そういうことよ、シャリスちゃん。例のブツをお届けってわけ」
『ワダツミ』と呼ばれた巨大輸送艦から響くのは、桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)の声であった。
「完成したのですか?」
「ええ、『ワダツミ』に帰艦なさい。すぐに換装するわよ」
「戦いのさなかに割って入ってきたと思えば、勝手なことを!」
『獣騎ヘカトンケイル』の言葉に水之江は言う。
「水入りって言うでしょ? あ、この場合は違うか。まあ、どっちだっていいじゃないのね」
「話をすり替えるな」
確かにその通りである。
だが、水之江は余裕綽々であった。
「まさか女の子のお着替え中に手を出すなんて破廉恥な行いはしないわよね?」
「もう少し言い方に気を使っていただいてもよいでしょうか……? いえ、『獣騎ヘカトンケイル』、しばしの暇を頂きたく存じ上げます。これは聖なる決闘。なれば、互いの全力を出し切っての戦いのはず。今より行うは敵に背を向けるのではなく、この『アリコーン』の力を引き出すための装いを改める行いです」
「……構わぬ」
「なーんか、私のときと態度違うんじゃない?」
「これが礼儀というものです」
シャリスの言葉に水之江は、はいはい、と肩を竦める。
帰艦した『アリコーン』に『ワダツミ』内部のサブアームが一斉に取り付く。
背の装甲を外し、次々と取り付けられていく基部。
本来、『アリコーン』は戦うための人造竜騎ではない。その『アリコーン』に新たなる装備を取り付けるとなれば、専用のアタッチメントが必要になるのだ。
その作業自体は恙無く。
背のアタッチメントに増設されたのはサブアーム。
懸架されるは大型突撃槍と大型槍。
雄々しき姿、まさしくそれは|『聖騎士』《パラディン》と呼ぶに相応しき装いであったことでしょう。
「この新たな装いなら!」
シャリスは装備された武装に力強く頷き、飛び出そうとするも、サブアームに止められる。
「何故止めるのです!?」
「まだだからに決まってるじゃない。はい、次でおしまい。前足にマイクロミサイルランチャー、っと。まあ、全備重量が増加して運動性は落ちちゃうけど、後ろ足にも、はいっと搭載した大型ブースターで機動性は向上しているから安心して頂戴な」
「み、ミサイル……? あの……そういった武器はあまり好ましくないのですが……」
「わがままねぇ。ならフレアに換装しとくわ。さあ、名付けるのならば『アリコーン・パラディン』! さあ、存分に戦いなさい」
水之江は『ワダツミ』から飛び出す『アリコーン・パラディン』のグロリアスウィングが光を放ち『獣騎ヘカトンケイル』へと向かう背中を見送る。
無論、彼女は戦わない。
なぜなら、彼女はセコンドだからだ。
聖なる決闘に水を差すつもりなどない。まあ、契約範囲外だから、というほうが尤もな理由であろうが。
「ならば、我も装いを新たにさせていただこう!」
『アリコーン・パラディン』の眼前で『獣騎ヘカトンケイル』の姿が大きく変わりゆく。
その巨躯はさらなるものとなり、加えて六腕はさらに二倍に。
「より大きくなって腕の数も増えた!?」
「左様。これが我が全力! 受けてみせよ、聖杯の乙女!」
振り抜かれる武装の数々。
まるで嵐のようであったが、しかし角を戴く天馬(アリコーン)のアイセンサーが煌めく。
「駆けて、『アリコーン』! この『アリコーン・パラディン』なら、できます!」
前足のマイクロミサイルランチャーから放たれたフレアが金属との熱反応で光を放ち、さらにブライトフェザーから放たれる光が『獣騎ヘカトンケイル』の視界を塗りつぶす。
だが。
「我が目を前にして視界を塗りつぶすこと能わず!」
無数の眼球が瞬き、光を射抜くようにして『アリコーン・パラディン』へと正確無比なる一撃を叩き込むのだ。
その一撃を大盾で受けることなく『アリコーン・パラディン』は『獣騎ヘカトンケイル』の間合いに飛び込む。
後ろ足に配されたハイパーブースターの瞬発力。
それによって加速した大型突撃槍の一撃が閃光のように走った。
「巨大なる獣騎、私の全てを載せた一撃! 届け!」
届くはず。
できるはず。
シャリスは祈ることしかできない。だが、それでも思うのだ。
彼らの無念を晴らすためには、復讐という手段を選ばせてはならない。なればこそ、シャリスは己が一撃を信念と変えて、その巨体へと奔るような眩き一撃を打ち込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●POW
過去の雪辱を果たすべく、か
その申し出、受けて立つ…どうした、フュンフ?
…一対一では負けるか、確かにそうだろう
だが、私はそれでも聖なる決闘に挑まねばならない
百獣族への非道を懺悔し、自らの残虐性を戒めるべく新たに信仰した|架空の生物《ライオン》の騎士道精神を顕すべく建造された、贖罪への未来を願う人造竜騎…ライオンキャバリア
獣に非ず、人に非ず、騎士道を弛まぬ求道する半妖精の意思を今…示そう
リミッター解除、バックパックより増設鎧展開および装着完了
…これがレナードの真の姿という訳だ
私も貴殿もこれで悔いなく決闘を挑める訳だ
助太刀をしても良いが…貴殿はまだ未熟
我らの戦いをしかと刮目し、聖なる決闘の立会人として勝負の行く末を見届けよ
待たせて済まない
では、始めよう
翼の展開でレナードの機動性はより増したが、多眼六腕による隙の無さと嵐のような攻撃は敵ながら流石としか言えまい
ならば、私も示そう…『獅子雄叫』による獅子の咆哮を
私が獣機に抱く感情は恐怖に非ず、敵意に非ず
騎士の敬畏をもってしてこれを打ち破らん
「過去の雪辱を果たすべく、か」
エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は、『獣騎ヘカトンケイル』の威容を認め、その在り様について理解した。
そう、これは雪辱戦なのだ。
確かに嘗て百獣族は人間族に滅ぼされた。
敗北を喫した。
けれど、それを己が力の無さであると『獣騎ヘカトンケイル』は悔いていた。故にオブリビオンとして蘇って尚、その雪辱を晴らすことをこそ、聖なる決闘に求めたのだ。
「受けよ、人間族……否、人間と妖精の間に生まれし子よ」
『獣騎ヘカトンケイル』の巨躯は、猟兵の一撃を受けてたたらを踏みながら、しかし、文こらえていた。
なんたる力か。
エリアルは頷く。
「駄目だ、一人では」
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の言葉にエリアルは振り返る。
確かに、と思う。
一対一で『獣騎ヘカトンケイル』に挑むのは無策そのものであった。確かにその遠檻だ、とエリアルは頷いた。
「だが、それでも聖なる決闘に挑まねばならない」
忌子として生を受けた己に大して、『獣騎ヘカトンケイル』はあくまで誇りある騎士として対峙したのだ。
であれば、それに向くなければならない。
大罪を持って生まれながら、それでもなお騎士の誇りをこそ『獣騎ヘカトンケイル』は重んじたのだ。
であれば、円卓の騎士末席とは言え、その誇りを前に応えねば恥である。
いや、それだけではない。
「死んでしまう! それでは意味がないだろう! 生まれた意味だって……!」
「いいや。百獣族への非道は消えない。懺悔しても何も贖えない。ならばこそ、自らの残虐性を戒めるべく新たに信仰した|架空の生物《ライオン》の騎士道精神を顕すべく建造された、贖罪への未来を願う人造竜騎……ライオンキャバリア」
黄金の人造竜騎の瞳が輝く。
そう、これは贖罪の標である。
人間の残虐性は変えようがない。だが、それを御することができるのもまた心なのだ。奪ってしまった生命に贖うことは、もはやできない。
埋めることのできないものであっても、それを埋める努力を放棄してはならない。
だからこそ。
「獣に非ず。人に非ず。騎士道を弛まぬ求道する半妖精の意志を今……示そう」
示すは超克。
己を越える。克己せよと、黄金の意志が煌めくようにして人造竜騎『レナード』の背面に増設された鎧が展開し、駆体に覆われていく。
「これが『レナード』の真の姿というわけだ。これで悔いなく決闘が挑める訳だ」
「ならば、応えよう。我の渾身を持って!」
異形の体躯へと応じるようにして変形する『獣騎ヘカトンケイル』。
互いに見える姿は、まさしく力の発露。
「ばかな! 生きてこその生命だ! そんな無謀な賭けをさせるために俺は……僕は!」
「『フュンフ』、貴殿は私より長く生きているようだが、まだ未熟だな。確かに人の生命とは貴殿らからすれば儚く短いものだろう。まさしく虹の煌きのように短く儚いものだらおう。だからこそ、刮目せよ」
『レナード』と共にエリアルは踏み出す。
「聖なる決闘の立会人として勝負の行く末を見届けて欲しい――またせて済まない」
「いいや。決闘とはすなわち、尋常なる勝負。であれば」
「そうか。では、始めよう」
瞬間、『レナード』の駆体が黄金の奔流となって駆ける。
それは高速の踏み込み。
一瞬で踏み込み、その展開された背面の翼によって得られた機動力のままに『獣騎ヘカトンケイル』へと剣を届けんとしたのだ。
だが、迫るは『獣騎ヘカトンケイル』の嵐の如き無数の腕部による斬撃。
此方の一手に放たれる斬撃は十二を越える。
敵ながら流石としか言えない。
だが、エリアルは負けるつもりはなかった。
彼が獣騎に抱くのは、恐怖でもなく、敵意でもない。
あるのは、騎士の敬畏のみ。
「吼えろ、『レナード』! 雷音の如く!」
吼え猛るは黄金のオーラ。
ライオンの紋章が閃光のように放たれ、嵐の如き斬撃を押しのけていくのだ。
「我が斬撃を押しのける、とは」
「獅子雄哮(ライオン・ブレイブ)。これが雄々しく猛る我が信仰……貴殿への敬畏の顕れ……そしてッ!」
押しのけた無数の斬撃の間に見えるは、一筋の光明。
それは己が切り開いた騎士道。
踏み込み、飛ぶ。
それは閃光のように放たれた一撃であり、『獣騎ヘカトンケイル』の頭部を斬り裂く一撃。
「『獣騎ヘカトンケイル』、貴殿の壮絶なる武勇を打ち破らん――」
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
聖なる決闘は、憎しみではなく、
尊敬の中にあるべきものだと『クレッセント』が教えてくれる
無数の腕を掲げるその姿はまさに巨神
……でも、怖れはしない
あなたは、かつて誇り高く戦った者
ならば、私たちも誇りを持って応えるわ
襲いくる猛撃を、『クレッセント』の俊敏な機動でかわしながら
動きに合わせて弓を構え、光の矢を連射する
受け止めても、弾かれても、構わない
何度でも、怯まず、逸らさず、誠実な一射を
世界は残酷で、奪い合いこそが生命の本質なのかもしれない
希望と絶望を、ただ繰り返すだけの存在なのかもしれない
それでも私は、人に宿る光を、信じていたい
あの閃光の中に、その導(しるべ)を見つけたから――
聖なる決闘には弱者は存在しない。
互いに強者と認めるからこそ、その誇りを以て戦う。勝者にはすべての権利が与えられるのは、そうした誇りが弱者を虐げることをしないからだ。
だからこそ、百獣族がオブリビオンとして蘇り、今生きる人類に対して嘗ての虐殺の咎を、というのならば、それは嘗ての誇りを穢すものであった。
「そう……そうよね。『クレッセント』」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は己が乗騎『セラフィム・クレセント』のコクピットの中で頷く。
教えてくれる。
白銀に青走るサイキックキャバリアは言う。
戦いに必要なのは憎しみではないと。
これが聖なる決闘だというのならば、尊敬の中にあるべきものであると。
故に彼女は『獣騎ヘカトンケイル』の姿を見やる。
恐るべき姿。
無数の腕を振るう姿は、嵐そのものであった。
獣騎以上の巨体。
煌めく眼光。
その鋭さは、嘗ての雪辱を果たすために燃えていた。
「人造竜騎……! お前たちの嘗ての戦術は確かに見事だった。我が眼を真っ先に潰し、取り囲む! それに屈した嘗ての我が弱かったことが全ての敗因!」
響く声は恐ろしげであった。
しかし、静漓は恐れない。
「あなたは、かつて誇り高く戦った者。ならば、私たちも誇りを以て応えるわ」
「よくぞ言った! 受けるがいい! 我が剣戟の嵐を!!」
咆哮と共に放たれる巨大なる体躯の斬撃の嵐。
無数の腕は、『セラフィム・クレセント』の挙動を捉えるようであった。
斬撃が大地に叩きつけられる度に衝撃が舞う。
衝撃は風となって周囲に吹き荒れ、さらに破壊の渦へと飲み込むだろう。まるで引きずり込まれるようだった。
しかし、静漓と『セラフィム・クレセント』は光の翼を噴出させながら風に乗って、斬撃を躱す。
「世界は残酷で、奪い合いこそが生命の本質なのかもしれない」
だから、人間はどこまでも残虐になれる。
「希望と絶望を、ただ繰り返すだけの存在なのかも知れない」
希望を抱くが故に絶望する。
だが、絶望するが故に希望を抱くことができるのだ。
静漓は、その光を見た。
だから、信じたいのだ。
「私は、信じていたい」
あのひとに宿る光を。
「如何にして信じる! 人間族の残虐性は、その生命としての未熟ゆえ! 遠くない未来に絶望が追いつくぞ!」
「なら、追いつけないほどの光の速さで。私は」
そう、見たのだ。
「あの|光《閃光》の中に、その|導《しるべ》を見つけたから――」
放たれるは炎をまとった光の矢。
はやく(ハヤク)、と願った矢の一撃は一瞬で『獣騎ヘカトンケイル』の頭部へと走り、その眼球の一つを射抜く。
そう、人が生きるのには導が必要だ。
静漓もまたそれを見つけたのだ。
なら、止まらない。光は、何処までだって駆けていく――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
……解りました。それがあなたの望むものなら……
アルマ・フィーリアとその乗騎ドラグリヴァーレ、その決闘……お受けします!
行くよ、ドラグリヴァーレ!!
通常の攻撃へは自己修復による継戦能力や『ミラースケイル』での魔力防御で耐え、
近距離での打ち合いだったらこっちもいくつかのリヴァーレの首から延ばす魔力刃『ブレイド』を使って応じるよ!
そして相手のUC、百の眼でこっちの攻撃を見切るというのなら……こっちも切り札を切る!
リヴァーレの鋼竜石の装甲を増殖して730の竜の首…「ドラグヘッド」を展開!全ての首からの魔力砲撃の一斉発射、【ドラグブラスター】で、真っ向から迎え撃つ…!
ぞろりと生え揃ったのは無数の腕。
『獣騎ヘカトンケイル』の巨躯から溢れ出したのは、百腕と形容されるのが正しい無数の腕部であった。その全てが武装を手にしている。
「まだだ……我はまだ倒れてはおらぬ! 聖なる決闘は、我が生命が尽きるまで続くのだ……!」
猟兵たちの攻勢を受けて『獣騎ヘカトンケイル』は傷ついている。
だが、それでも戦うことをやめないのは、彼にとってこれが聖なる決闘の続きだからだ。
過去より紡いできた戦いの軌跡。
だからこそ、止められない。
アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は『ドラグリヴァーレ』のコクピットで静かに頷いた。
「……解りました。それがあなたの望むものなら……アルマ・フィーリアと、その乗騎『ドラグリヴァーレ』、その決闘……お受けします!」
「いざや!」
互いの瞳が交錯する。
守りは必要ない。
互いにそれはわかっていた。
敵を打ち倒すために必要なのは、いつだって矛である。盾ではない。
自らの命を守る盾は、自らの肉。
故に踏み出す。
「行くよ、『ドラグリヴァーレ』!!」
アルマには覚悟があった。
しかし、その覚悟ごと粉砕するかのように『ドラグリヴァーレ』に打ち込まれるのは『獣騎ヘカトンケイル』の苛烈なる一撃。
「……ッ! 装甲が、砕けるッ?!」
「守りを捨てたことは褒めよう。だが、それで我の一撃をどうにかできると思った思い上がりが……!?」
振り抜かれた斬撃。
だが、それを『ドラグリヴァーレ』は自己修復によって塞いでいたのだ。
無数の首から飛び出したブレイドが『獣騎ヘカトンケイル』の攻勢と打ち合う。
百腕に形容される無数の斬撃は、『ドラグリヴァーレ』と言えど防ぎきれない。だからこそ、自己修復機能を頼みにしたのだ。
それでもアルマは『獣騎ヘカトンケイル』の攻撃能力が凄まじいことを悟る。
「それがそっちの切り札だっていうのなら、こっちも切り札を切る!『ドラグリヴァーレ』!!」
アルマの瞳がユーベルコードに輝く。
装甲から飛び出すのは無数の竜の首。
それは『獣騎ヘカトンケイル』を象る百腕と同じ光景……否、それよりも数が多い。
「ヒュドラだとでもいうのか……!」
「鋼竜石の装甲を増殖して生み出した730の竜の首……『ドラグヘッド』展開! いっけぇ! ドラグブラスター!!」
「う、オオオオッ!!?」
「これがボクの全力です……!!」
放たれるは魔法の破壊光線。
千に届かずとも圧倒的な数の竜の首から放たれた破壊光線は束ねられ、その苛烈なる一撃が『獣騎ヘカトンケイル』の体躯を打ち据えた――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
わたくしから『萌え』語りを取ったら何も残りませんのよ!?
これ、全てでファルシータなのですわ
というわけで諦めてくださいませフュンフ様(ずずいと至近距離)
はふぅ、顔が良い
あの、よろしければ『おねえちゃん』とか呼んでみませんか?
戦いが終わった後で構いませんので!!
というわけでお待たせしました
ティタニア! ファルシータ参りますわ!
戦いの前にお名前を伺っても?
戦いに卑怯はあったとて残されるのは結果のみ
勝てば官軍負ければ賊軍
ならばこそわたくし達はあなたの決闘を受けないわけにはいきません!
我が人造竜騎が抱くは妖精の技
【フェアリー・スピア】!
被弾しても真正面からぶち抜きますわ!
ええ、この一撃にかけますわ!
『萌え』を語ること。
それがファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)の全てであった。
スイッチをいれる、ということはそういうことなのだ。
だからこそ、『萌え』語りを取ってしまったら、何も残らないのだと彼女は言う。過言ではないだろうか?
「いいえ、これ全てでファルシータなのですわ」
「いくらなんでも暴論が過ぎないのでは?」
「いいえ、『フュンフ』様。それは違います!」
いつのまにか『ティタニア』から降りていたファルシータは、妖精族『セラフィム』の『フュンフ』に至近距離まで近づいていた。
「はふぅ、顔が良い」
困惑しかない。
ここ、戦場なんだが。
「あの、よろしければ『おねえちゃん』とか呼んでみませんか? 戦いが終わった後でかまいませんので!」
かまいませんので! じゃあない気がする。
どう考えても構う気がする。
困惑しきりな『フュンフ』をおいてファルシータは事後承諾と言わんばかりに『ティタニア』へと乗り込む。
「というわけでおまたせしました。『ティタニア』! ファルシータ参りますわ!」
いやいや。
ムリムリ。
そんな流れで、はい聖なる決闘、といけるわけがない。
いくらなんでも無茶。
だが、ファルシータは一向に構わなかった。
「『獣騎ヘカトンケイル』、戦いの前にお名前を伺っても?」
「我は『獣騎ヘカトンケイル』、それ以上でも以下でもない」
「さすれば」
ファルシータは『ティタニア』と共に踏み出す。
嘗ての戦いの結果は言うまでもない。『獣騎ヘカトンケイル』は人造竜騎による複数戦闘で敗れた。
数を頼みにした人間族の物量に圧倒されたのだという。
確かに、戦いにあって卑怯はあったとて残されるのは結果のみ。
勝てば官軍負ければ賊軍。
歴史が証明している。
「わたくしたちはあなたの決闘を受けないわけにはいきません! 我が人造竜騎が抱くは妖精の技!」
「来やれ、その尽くを我が凌駕してみせん!」
振るわれるは嵐の如き斬撃。
『獣騎ヘカトンケイル』から繰り出される無数の腕部による斬撃は強烈にして苛烈であった。
それが嘗ての複数の人造竜騎に取り囲まれての敗北を喫したことによる対策であることは言うまでもないだろう。
だからこそ、ファルシータは『ティタニア』のシールドランスを構え、嵐の斬撃に飛び込む。
羽より噴出する魔法の妖精光を背に受けてファルシータは『ティタニア』と共に飛ぶ。
斬撃がシールドランスを打ち据える。
駆体が傾ぐ。
それでも加速する。
「一撃に懸けるか!」
「ええ、この一撃でッ、正面からぶち抜きますわ!」
被弾など厭わぬ一撃。
それは痛烈な一撃となって『獣騎ヘカトンケイル』の巨大な体躯を貫くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルディン・ホワイトストーン
ああ。次は俺が聖なる決闘に応じよう。
雪辱を果たすのはいい。未熟を恥じて立ち上がったのも立派だろう。
だが、ヘカトンケイル。オブリビオンになって復活したアンタに届くかわからないけどな……。
大事なことを見失ってないか?
アンタにとって一番大切なものは、何だ?
それを忘れてるんなら、いくら戦っても満足できやしないだろうさ。
戦闘は空中機動を活かしたスピードで翻弄を試みる。
巨大化、武装の増数、大いに結構。
ただそれも、当てられないなら怖くはないね。
頃合いを計ってUCを使用、100m以上伸ばした炎の鎖で捕縛して攻撃し続ける。
魔力の鎖だからな、引っ張られてもこっちの動きに支障はないさ。
この術、真っ向から破れるかい?
ユーベルコードの光の中に『獣騎ヘカトンケイル』はいた。
猟兵たちとの力と力とのぶつかりあい。
その光の余波は戦場を飲み込むほどに苛烈であった。傾ぐようにして上体が揺れながらも『獣騎ヘカトンケイル』は倒れなかった。
踏みこらえていた。
眼球を潰されても、穿たれても、尚である。
「これしき……まだ、倒れぬぞ。あの日の雪辱を果たすまでは!!」
膨れ上がる巨躯。
『獣騎ヘカトンケイル』は、その堅牢なる巨神のごとき体躯でもって他を圧倒する。
「次だ。次なる決闘者は何処!!」
「ああ。次は俺が応じよう」
ジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)は一歩前に踏み出した。
『ティタニア』は巨神へと変貌した『獣騎ヘカトンケイル』を見上げる。
「雪辱を果たすのはいい。未熟を恥じて立ち上がったのも立派だろう」
だが、とジェラルディンは言う。
「だが、『獣騎ヘカトンケイル』。オブリビオンになって復活したアンタに届くかわからないけどな……大事なことを見失ってないか?」
「大事なことだと? 見失う? 雪辱を果たす以上に重要なことが、どこにあろうか! これは誇りの問題なのだ」
突きつけられる刃。
その切っ先の剣呑さは『獣騎ヘカトンケイル』の、いや百獣族全てに共通するものであり、根幹であったことだろう。
それを真っ向から受け止めてジェラルディンは面を上げた。
「アンタにとって一番大切なものは、何だ? それを忘れているなら、いくら戦っても満足できやしないだろうさ」
「我が心中を語るか!」
叩き落されるような一撃が『メルセデス』に走る。
大地が砕け、衝撃が舞う。
『メルセデス』の駆体が飛翔し、衝撃の中を飛ぶ。
「なら見せてやるさ。形成するは火の鎖。焼いて、結んで、捕らえて、燃やせ――爆炎縛鎖(エクスプロシブ・バインド)!」
走るは炎の鎖。
それは『獣騎ヘカトンケイル』の巨躯へと絡みつき、その百椀をも絡め取るのだ。
「ぬぅ! 縛鎖か! だが!」
ギリギリと音が響くようにして『獣騎ヘカトンケイル』の体躯が軋む。
だが、彼女のユーベルコードはそれだけではない。
「魔力の鎖だ、引っ張られてもこっちの動きに支障はない。なら! この術、真っ向から破れるかい?」
「ぐっ……!」
絡みついた縛鎖が小規模の爆発を繰り返す。
魔力であるがゆえに切れぬ鎖。
しかも爆発が巻き起こり続けているのだ。巨体であるがゆえに、その蓄積は『獣騎ヘカトンケイル』を消耗させていくことだろう。
「思い出せ。本当にお前の誇りだったものを」
ジェラルディンは思う。
真に『獣騎ヘカトンケイル』が敗北から立ち上がることができたのは、誇りのためだったのか、と。
真は、違ったのではないか、と。
だからこそ、ジェラルディンは縛鎖でもって『獣騎ヘカトンケイル』を縛り、その身に今一度問いかける時間を作り出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
(試作型術式騎兵【ツィルニトラ】に搭乗)
ふむ、なるほど……最初からそういえば……いや、強者を倒さないと意味ないのかな…
…その決闘、星導の魔女メンカル・プルモーサが受けて立つよ…
策を練っても良いのだけど…小細工は無しだね…言い訳出来ないように正面から相手した方が気も晴れるだろう…
…【夜空を別つ月閃の翼】を発動
負傷を回復する異常半端な攻撃は無意味か…
…まずは光の羽根を射出して牽制しつつ速度を生かしてヘカトンケイルに急接近…
…月の翼で武装による攻撃を防いで懐に潜り込んで…そのまま体当たりで体勢を崩すよ…
…その後は月の翼で斬撃…更に手に持った杖から魔力の刃を形成して連続攻撃を加えて打ち倒すとしよう…
誇り。
それは聖なる決闘に挑む者にとって得難きものである。
もとより、聖なる決闘には強者しかいない。弱者には戦う権利すらないからだ。だがしかし、決闘とは常に勝者と敗者とに分かたれるもの。
そこに誇りがあるからこそ、敗者を思うことができる。
嘗ての人間族にはそれがなかった。
なかったからこそ、溢れる残虐性のままに百獣族を女子供に至る全てを殺し尽くすことになったのだ。
「……最初からそういえば……いや、強者を倒さないと意味ないのかな」
メンカル・プルモーサ(星導の魔女・f08301)にとって、『獣騎ヘカトンケイル』の言葉は不合理であったかもしれない。
そう伝えていれば、という過不足無き伝達があればとも。
だが、時に誇りとは不合理の極みでもあったことだろう。
だからこそ、メンカルは試作型術式騎兵『ツィルニトラ』と共に『獣騎ヘカトンケイル』の前に踏み出す。
すでに猟兵たちの攻勢によって、その体躯には傷が刻まれている。
消耗して尚、その体躯は巨神のごとき威容を誇っていた。
「……その決闘、星導の魔女メンカル・プルモーサが受けて立つよ……」
「いざ、来やれ。我は逃げも隠れもせぬ」
その言葉にメンカルは頷く。
小細工を弄してもいい。だが、それはなしだ。
これが決闘だというのならば、過去の遺恨を未来に残してはならない。故にメンカルは『獣騎ヘカトンケイル』を認め、踏み出したのだ。
「満ち欠ける光よ、放て、羽ばたけ。汝は月晄、汝は照翼。魔女が望むは闇夜に輝く月灯り
詠唱と共に『ツィルニトラ』の全身から放たれるのは、翼状に形成された高密度の月の魔力。
月光そのものの如き魔力の発露を持って、『ツィルニトラ』の性能が倍増するのだ。
「おお、これぞまさしく、夜空を別つ月閃の翼(アルテミス・ウイング)か!」
『獣騎ヘカトンケイル』は、その威容を前にして眩き月光を瞬きすることなく見据える。
「……生半可な攻撃は無意味……なら」
光の羽が翼より放たれ、『獣騎ヘカトンケイル』を襲う。
だが、『獣騎ヘカトンケイル』とて安易な相手ではない。
迫る光の羽を無数の腕部で切り払い、さらに『ツィルニトラ』へと踏み込んで来ては斬撃を叩き込むのだ。
「受けよ、我が一撃!」
振り降ろされた斬撃が光の翼と激突して火花を散らす。
熾烈な衝撃が周囲に破壊をもたらし、『ツィルニトラ』の駆体、その脚部が大地に沈む。
しかしそれでもメンカルは踏み込むように機体の出力を上げ『獣騎ヘカトンケイル』に体当たりのように激突し、体勢を圧し崩すのだ。
「くっ……!」
「……その威容、たしかに脅威……だけれど……」
月光の翼が『獣騎ヘカトンケイル』を打ち据え、さらに魔力の刃形成されし杖の一撃でもって『獣騎ヘカトンケイル』の体躯へと傷を刻み込のだ。
「倒せない敵じゃあない……――」
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
納得がしたかったのかな?
悔やんでも悔やみ切れない?
あるいは単純にもっと戦いたかった?勝ちたかった?
何にせよそれを決闘で拭おうっていうなら相手になってあげないとね!
虐殺はダメだけれど!
●どんな攻撃も当たらなければどうということはない
とは言うけれど!
手数が多いとそれも大変!
でも一度で出る攻撃は限られてる潜り抜ける隙間はあるものさ!
と【第六感】の感じるままに攻撃のかいくぐりや頑丈な[球体]くんたちでの防御なんかしながら接近してからの…
UC『神撃』でドーーーンッ!!
まあこれで気が晴れるってこともないだろうけれども
少しはこの世界のみんながキミたちのことを思い出しはするといいね!
過去は変えられない。
それが常である。
過去は歪む。
それがオブリビオンである。
なら、その変えられぬ過去を変えようとすることは愚かなことだっただろうか?
「オオオオッ!!」
咆哮が轟く。
猟兵たちのユーベルコードが明滅するように『獣騎ヘカトンケイル』を打ち据えていた。
その煌きの中、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、その巨躯を見上げる。
「納得がしたかったのかな? 悔やんでも悔み切れない? あるいは単純にもっと戦いたかった? 勝ちたかった?」
言葉は意味を保たない。
これは聖なる決闘だからだ。
勝者と敗者とに分かれる決闘。
これをもって全てを決定する約定。
なら、とロニは踏み出した。
「何にせよ、それを決闘で拭おうっていうなら相手になってあげないとね! 虐殺はダメだけれど!」
「いざ、来たれ。我が決闘はまだ終わらず」
「アハハハ、すごーいね!」
嵐のような斬撃を前にロニは笑う。
巨体から繰り出される斬撃の凄まじさは言うまでもないだろう。
苛烈であるし、また猛烈なる突風ように斬撃が襲い来るのだ。
「けど、どんな攻撃も当たらなければどうということはない。とは言うけれど!」
手数がそもそも違いすぎる。
なにせ、腕の数がそもそも違う。
『獣騎ヘカトンケイル』の最大の特徴は、その百腕とも形容される無数の腕部から繰り出される嵐のような斬撃である。
「けれど、網目に隙間があるようにさ、どんな攻撃にだってくぐり抜ける隙間はあるものさ!」
第六感が命ずるままに斬撃の嵐の中にロニは飛び込む。
球体を盾に、足場にしてロニは飛ぶようにして『獣騎ヘカトンケイル』の眼前に飛び込む。
「ちょこかまかとよく動き回る!」
「体格差っていうものがあるからね! 仕方ないね!」
「だが、だからと言って!」
振り抜かれる斬撃。
その一撃をロニは拳でもって応対する。
刀身に亀裂が走り、砕け散った破片の中から、新たなる斬撃が飛ぶのをロニは見ただろう。
何処まで行っても戦いばかりだ。
「まあ、これで気が晴れるってこともないだろうけれども。少しはこの世界のみんながキミたちのことを思い出しはするといいね!」
振りかぶったロニの拳が神撃(ゴッドブロー)となって『獣騎ヘカトンケイル』へと叩き込まれる。
その一撃は衝撃となって地面を穿ち、天にその威力の凄まじさを知らしめるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シャナ・コリガン
妖精族の一人として、かつて鋼の咎に加担してしまったものとして。
受けることが許されるのならば、その決闘を受けるが私。
罪過を背負ったまま、戦うのです。
こちらがもたらすは、ただの【回転斬り】ですが…ええ、これがこの『聳弧』の得意戦術なんです。最初から、一対一を想定したものですよ。
あなたがどれだけ変身しようが、それは変わらない。竜騎用更始威徳でバリアを張り、その武装による攻撃を受け流し、さらに回転斬りを。
…その念はもっともで。でも、今を生きる人々に害を与えるわけにもいかず。
だからこそ、私はここに。
奔るは衝撃。
天を穿たんばかりの衝撃だった。
しかし、それでも『獣騎ヘカトンケイル』は立っている。まさしく巨神の如き威容を誇り、百腕と形容された異形を以てしてなお、立っていた。
まだ倒れない。
倒れられないというのが正しいのか。
彼を踏み堪えさせているのは、一体なにか。
シャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)には、それが何かを知らなかったかもしれない。
「妖精族の一人として、かつて鋼の咎に加担してしまったものとして」。受けることが許されるならば、その決闘を受けるが私。罪過を背負ったまま、戦うのです」
「贖罪を放棄するか、妖精族。咎を受けながら、その身の血潮を流し続けながら往くはただの血路ぞ」
「承知の上です」
互いの眼光が交錯する。
もはや、言葉は要らないだろう。
互いにあったのは決闘という舞台のみ。
そして胸に抱くのは咎と誇り。
相対して尚、互いに相容れることはない。何処まで行っても平行線なのだ。
ならば、言葉は要らない。
ただ、その結末がもたらす未来こそが求められるものであったからだ。
「いざ」
『獣騎ヘカトンケイル』が踏み出す。
巨神のごとき威容。
その巨体から繰り出される百を越える斬撃は、まさしく嵐。
『聳弧』と激突する斬撃は、しかし強力なバリアによって阻まれる。火花が散るようにして放たれた斬撃が弾かれる。
だが、それ以上に早く百腕の斬撃が叩き込まれるのだ。
砕けるバリア。
装甲に刻まれる傷。
受け流すように駆体が周り、ユーベルコードにアイセンサーが煌めく。
赤い光が残光となって渦を巻き、流れるような双剣の閃きがユーベルコードの光を受けて、更に輝きを増していくようだった。
雑念はない。
そこに一切の呵責などない。
復讐の念も、雪辱を果たさんとする重いも、全てが『獣騎ヘカトンケイル』に正しさがある。
けれど、シャナは思う。
今を生きる人々に害を与えていいわけではないのだと。
それがどんなにか滅ぼされし百獣族たちの魂を傷つけることになるのかなど言うまでもない。何処まで行っても、それは今生きている者たちの理屈であり、道理でしかないからだ。
「だからこそ、私はここに」
回転斬り(カイテンギリ)は加速していく。
百腕と打ち合う高速回転の双剣は、振り降ろされる斬撃を弾き、砕き、そして己の咎を濯ぐのではなく、ただ雑念なく一心不乱に振るわれ続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
引き続きケルーベイムで
フュンフ様はご無事でしょうか?
因果の中に囚われてなお、『それでも』と手を伸ばされるならば
その手を届かせましょう
平和でも願いでも
ここはメイドにお任せください
ならばこそ
獣騎『ヘカトンケイル』様、貴方を通すわけにはいきません
メイドのステラ、参ります!
しかし、六腕に複眼……まるで青の『セラフィム・エイル』?
まさか……御名はエイル様だったりしますか?
いえ、これまでは獣騎が数字の名で
騎士が憂国学徒兵の姓でした
ならば、フュンフ・エイルは……このフュンフ様と人造竜騎のエイルで完結するはず
ああもう、本当に情報が多すぎますね!?
いえ、こちらの話です失礼いたしました
では、参りましょう!
ケルーベイム! 【ヘレヴ】でいきます!
ヘカトンケイル様の攻撃はケルーベイムの圧倒的な速度で振り切るしか
小細工では対抗できません!
ならばこそ速度で押し通る!
内蔵武器はフレアソードで代用
祈りも讃美歌もあって、それでもなお戦いが避けられぬならば
天使とて剣を取ります
熾火よあれ
コール! プロメテウスバーン!
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は、それでもと言った。
鋼の咎を背負いながらも、贖わねばならないものだと。
そして、もう二度と過ちを起こさぬために人間族には手を貸さない。嘗てありし大罪は、何処まで行っても情故であったからだ。
その情が大罪を呼び、虐殺を引き起こしたというのならば、此度は静観しなければならなかったのだ。
しかし、彼はそれができなかった。
情が大罪を呼んだのなら、人を救ったのもまた情であったからだ。
「因果の中に囚われてなお、『それでも』とあなたは」
「違う。俺は……僕は」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、『フュンフ』を見やる。
やるせないことだろう。
それを理解できるとは言わない。
けれど、彼が手を伸ばしたのならば、それを届けるのが己であるとステラは規定している。
「平和でも、願いでも。届けましょう。このメイドが。お任せください」
『奉仕者』――『ケルビム』。
その枝葉の一葉が戦場に立つ。
「『ケルーベイム』! ならばこそ、メイドのステラ、参ります!」
ステラと共に『ケルーベイム』が飛ぶ。
目指すは『獣騎ヘカトンケイル』。
その巨躯は異様であった。百腕と形容される異形。その斬撃の嵐は凄まじく、衝撃荒ぶ戦場にあってなお、ユーベルコードの数々の明滅を持ってして尚、未だたち続けているのだ。
「『獣騎ヘカトンケイル』様、貴方をこれ以上!」
「いざ来やれ! 我が雪辱たる聖なる決闘は……まだ決着を見ておらぬ! 我が雪辱のために! お前たちを打倒さねばならぬというのならば! 受けよ! 我が百腕の斬撃!」
振るわれるは凄まじき斬撃。
だが、ステラは知っている。
六腕複眼。
その手は遍く全てを破壊するために。
その瞳は遍く全ての敵を見通すために。
嘗て、鋼鉄の戦乱渦巻く世界にて相まみえし、赤き鋼鉄の巨人。
想起される。
これまで彼女が遭遇した獣騎たちはいずれも数字の名を冠していた。それは序列を示すものであったし、またそれが如何なる意味を持つのかをステラは知り得ない。
だが、騎士たちは戦乙女の名。
「|『憂国学徒兵』《ハイランダー・ナイン》……この名に覚えは」
「『超越者』を語るか!」
振るわれる斬撃を『ケルーベイム』はスラスターの加速で持って踏み込み、躱す。
斬撃の衝撃を殺す間もなく、さらなる斬撃が次から次に襲いかかってくるのだ。
苛烈なる攻め。
強烈無比たる攻撃を前に『ケルーベイム』は躱すことしかできなかった。
小細工などもはや無用。
「躱してばかりでは!」
「押し通らせていただきます!」
斬撃を切り上げるはフレアソード。炎まとう刀身が翻り、『獣騎ヘカトンケイル』の斬撃を弾き飛ばす。
「願いは祈りに昇華する。人間族の願いは、いつだって戦いを呼ぶ。その身に秘めたる残虐性が、如何なる結果を生み出すのかなど知らずに!」
「ですが、それでも生命は讃えられるべきです。生きているのならばこその祈りでございましょう。貴方様は、どこまでいっても……過去の化身。であるのならば、わかるはずです! その駆体に生命の鼓動はないと!」
「だが、与えられた雪辱の機会は果たさねば、過去の同胞たちに申し訳が立たぬ! その命を奪ったのが人間族なのならば、なおのこと!」
フレアソードが弾かれ、宙を舞う。
振るわれた斬撃を『ケルーベイム』の両腕が受け止め、ひしゃげる。
フレアスカート型のスラスターの全噴射がなければ、そのまま駆体ごと押しつぶされていたであろう。
「この勝利こそが、我らが穢された誇りに贖うための――!」
「いいえ。祈りと讃美歌ありて、それでも争いを避け得ぬのならば。天使とて剣を取ります」
謳え『ケルビム』。
その熾火を以て。
「コール!『プロメテウスバーン』!」
胸部砲口が展開し、放たれるは苛烈なる熱線。
その一撃が勝利を確信した『獣騎ヘカトンケイル』の胸部を貫き、膨大な熱量と共に爆散するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『在りし日の伝説』
|
POW : 所縁のある場所を探索してみる
SPD : 資料や文献を手当たり次第に漁る
WIZ : たくさんの人から話を聞いてみる
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
この辺境の地において、多くの伝承が残っている。
曰く、人造竜騎を鍛造するために、妖精族の人身御供が必要であった。
曰く、かつては百獣族の聖堂が存在していた。
曰く、汎ゆる戦士たちの記憶を内包する宝珠が眠っている。
曰く、……。
それは多くの因縁が絡み合う大地である証左でもあった。
「……礼は、言わせてもらうよ」
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は亜麻色の髪を揺らして、僅かにバツが悪そうな顔をしていた。
もう二度と人間族には関わらないとしいていながら、情に走ったことを恥じているのかもしれない。けれど、彼の情があったからこそ救われた生命もあるだろう。
「それで、君たちは」
これからどうするつもりなんだ、と彼は言う。
確かにそのとおりだ。
百獣族の脅威は去った。後は猟兵たちの思うままである。
この地に眠る伝承を探ってもいいだろう――。
シャナ・コリガン
同じ妖精族として、礼を言います、フュンフさん。
情で動いたからこそ、私たちが間に合ったんですから。
……私は怪しくないですよ!?
ところでフュンフさん。フュンフさんは、何故ここに来たんですか?
私は、『依頼を受けた』のもありますが…『一度手を貸したなら、最後まで』という『私の騎士道』から来たのですが…。
何であれ、私たちもこのまま背負って生きていくしかないのです。背負ってどう生きていくか…は、その人次第です。
だから、私は私の騎士道をそうしたんです。
もちろん、竜騎鍛冶師としては百獣族の依頼を受けたりもしますよ。そこは、腕を見込まれたうえでの仕事ですから。
「同じ妖精族として、礼を」
シャナ・コリガン(どこまでも白く・f44820)は、妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の前に立ち、そう告げた。
彼女は妖精族であるが、恐らく氏族が違うのだろう。
面識はない。
だからこそ、きちんと面と向かって礼を言うべきだとシャナは思ったのだ。
「俺は……僕は何も。できていなかったことは、君たちが一番理解しているだろう? 結局、なにかできたわけじゃあない」
「いいえ。情で動いたからこそ、私達が間に合ったんですから」
「そうは思えないな。どのみち、君たちは駆けつけていたはずだ。そういうものだろう、君たちは」
すげなく、そう『フュンフ』は言う。
どうやら、人間族に関わらない、という自ら律したことを破ってしまったことを後悔しているようっだった。
「それに……君のそれは、随分と」
「……私は怪しくないですよ!?」
シャナの姿を見て、『フュンフ』は頭を振る。
どう見ても怪しいじゃあないかと言わんばかりの顔であった。
「無理がある」
「そんな!」
そんなやり取りの後にシャナは話を切り出す。
『フュンフ』が辺境の地にやってきていたのは、百獣族の復活と合わせてタイミングが良すぎているように思えてならなかったのだ。
「何故ここに来たんですか?」
「そんなの……捨て置けなかっただけの話だ。それだけのことだよ」
「なら、『私の騎士道』と似通った理由ですね。『一度手を貸したのなら、最後まで』」
「そう簡単に割り切れるのなら、よかったけれどね」
「なんであれ、私達もこのまま背負って生きていくしかないのです。背負ってどう生きていくか……は、その人次第です」
「その結果、また過ちを冒すことになってもかい?」
「だから、私は、『私の騎士道』をそうしたんです」
なら、と『フュンフ』は頷いた。
それを貫くのも強さの一つだろうと。
その貫いた先にあるものが、例え幸いでなかったのだとしても、シャナは止まらないのだろうと容易に想像できたからだ。
そこに善悪はない。
決めるのは、彼女と、相対する者だけだ。
「なら、邁進するといい。僕と君との道は別々だ。君と僕とが別々の存在なのと同じようにね」
「ええ、もちろん」
これからも竜騎鍛造師としてシャナは人間族からも百獣族からも依頼を受けていくだろう。
善悪で隔てることなく平等に。
己の価値観を支点にするならば、すぐに揺らぐのが善悪。
けれど、『私の騎士道』が支点となるのならば、揺らぐものは常に誰かの善悪。
「それが仕事ですから――」
大成功
🔵🔵🔵
シャリス・ルミエール
フュンフ様、あなたも私と同じ……鋼の咎を背負う妖精族なのですね
申し遅れました
私はシャリス・ルミエール
聖遺物『聖杯』の乙女です
こちらはアリコーン
聖杯の乙女の守護者たるタイタニアキャバリアです
あちらの方(水之江)は…気にしないでください
悪い人ではありません
善い人でもありませんけど
あなたの戦いを見届けさせて頂きました
力無き者のために強大なる敵に立ち向かう
これはまさに騎士道の模範そのものです
聖杯の乙女の名の元に、神酒を味わう事をここに許しましょう
聖杯を満たす神酒は、あなたのような真の騎士にこそ相応しいのです
ささ、どうぞ遠慮せず
え?
いらない?
そんな…!
真の騎士に聖杯の神酒を振る舞う事が私の使命なのに…!
桐嶋・水之江
アリコーン・パラディンの実戦投入はぶっつけ本番だったけれど案外上手くいったわね
この辺境の地には色々な伝承が残ってるらしいわね
曰く、人造竜騎を鍛造するために、妖精族の人身御供が必要であった…とか
長老なり村長なりに話しを伺うわ
いやね、本当にそんな事が出来るのか気になってね
別にシャリスちゃんを材料にしようとか考えてないわよ?
本当よ?
気にしてるのはこっちのハイドラ・クインリィよ
シャリスちゃんが言うには、とんでもない怨霊が取り憑いてるらしくてね
伝承が本当なら、ハイドラ・クインリィの原材料にも妖精族が含まれていて、精神が残留してるかもって
因みに戦いが終わるまで格納庫で暴れ回ってたわ
今は大人しくなったけどね
「『アリコーン・パラディン』の実戦投入はぶっつけ本番だったけれど案外上手くいったわね」
強襲揚陸艦『ワダツミ』の艦橋で桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は、ホクホク顔であった。
顧客の満足に応えるのは商売人として当然であるが、研究者としての彼女からすれば得られる実戦データこそが重要だったのだ。
無論、顧客の安全性は即ち自らの将来の安全性にも繋がるものであるからだ。
データが集まれば最適化ができる。
最適化ができるということは、更に発展性があるということである。
余白を埋めていく作業ではあるが、これを怠るほど水之江は愚かではなかった。
微々たる空白が全てを瓦解させることだってあるのだから。
「それにしても、この辺境の地にはいろいろな伝承が残っているらしいわね。興味があるわね」
曰く、人造竜騎を鍛造するために妖精族の人身御供が必要であった……。
その言葉を思い出す。
艦橋のモニターには、貨物ブロックではない一つのドッグが映し出されていた。
それは惨憺たる破壊の痕。
今回の戦闘に『ワダツミ』は参加していない。
なのにどうしてこのような破壊の痕が刻まれているのか。
それを見やり、水之江は息を吐き出す。
「辺境の村ってことは、それなりに長老なり村長なりいるわけでしょ。私も降りる準備をしましょっと」
一つ伸びをして水之江はデータの収められたタブレットをシートに投げ捨て眼下の辺境の村に降りるのだった。
一方、戦いを終えたシャリス・ルミエール(聖杯の乙女・f44837)は、『アリコーン・パラディン』から降り、妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の前に立っていた。
「『フュンフ』様、あなたも私と同じ……鋼の咎を背負う妖精族なのですね」
「……君と俺は……僕は違うよ、『聖杯の乙女』、シャリス・ルミエール」
「私の名をご存知であると?」
「そうだ。そっちは『聖杯の乙女』の守護者……タイタニアキャバリアだろう」
亜麻色の髪が揺れている。
黒い瞳には星が映されているが、シャリスを認めるものであった。
それよりも、と彼は宙に浮かぶ『ワダツミ』を見上げていた。
シャリスからすれば、水之江の存在はなんと説明していいものかと躊躇するものであった。
「あちらの方は……気にしないでください。悪い人ではありません。善い人でもありませんけど」
「中庸とでも?」
「立場と状況とで善悪がすぐさま反転するような方なのです」
「……」
『フュンフ』が気にしていたのは水之江ではないようだった。
彼が気にしていたのは、『ワダツミ』の中にある『モノ』だった。けれど、彼は頭を振った。関係ない、と自らに言い聞かせているようでもあった。
「いやね、そんな言い方するなんて。私はちょっと勤勉な商売人なだけじゃあないの」
そうしていると『ワダツミ』から降りてきた水之江が現れる。
シャリスは身構えた。
が、水之江は『フュンフ』を見て尋ねる。
彼女の関心事は今、そこではないからだ。
「ちょっと小耳に挟んだのだけれど、人造竜騎の鍛造に妖精族の人身御供が必要っていうのは本当なのかしら?」
その言葉に空気がヒリつくのを感じたかも知れないが、水之江はあえて無視していた。
空気が凍ったくらいで知的好奇心は止まらない。止まるようならそれはもう知的好奇心とは言わない。
「……どうしてそう思う」
「いやね、本当にそんなことができるのか気になるだけじゃないの。別にシャリスちゃんを材料にしてどうにかしようなんて考えてないわよ? 本当よ?」
「なんということ!」
「冗談だってば。それで、できちゃうの? どうにもね、こっちの暴れん坊というか聞かん坊というか、『ハイドラ・クインリィ』が大暴れして大変だったんだから」
そう、『ワダツミ』の格納庫の一つが惨憺たる有り様だったのは水之江が『ワダツミ』に収容していたハイドラキャバリアが内部で暴れていたからだった。
「シャリスちゃんが言うには、とんでもない音量が取り憑いているらしくてね。この辺境の地の伝承が本当なら、[ハイドラ・クインリィ』の原材料にも妖精族が含まれていて、精神が残留しているかもって思ってね」
「……それは推測ではないだろう。あなたは、確信を持っている」
「確証もないのに? そんなことするわけないじゃない。伝承があるのなら、真意というものを見てみたいものじゃあない?」
「やめておけ。あれは、ずっと『ズレ』ている。かけ間違い続けていると言ってもいい。そんなものは時間すらも解決の糸口にはならない。痛い目を見る前に捨てるべきだ」
「いやよ」
「堂々巡りだ」
水之江は、『フュンフ』の言葉に確証を得る。
『そう』なのだ、と。
決定的なことは語らずとも、『フュンフ』は『そう』だと言葉の端で肯定していた。捨てろと言ったのが、証左である。
そんな二人のやり取りのあと、シャリスは一歩踏み出す。
こほん、と咳払いしてみせた。
「『フュンフ』様、あなたの戦いを見届けさせていただきました。力なきもののために強大な敵に立ち向かう。これはまさに騎士道の規範そのものです」
「『聖杯の乙女』、俺は……僕はそんなんじゃあない」
「いいえ。『聖杯の乙女』の名の元に、神酒を味わうことを許しましょう。聖杯を満たす神酒は、あなたのような真の騎士にこそ相応しいのです。ささ、どうぞ遠慮せず」
ずい、とシャリスは『フュンフ』に迫る。
手にした聖杯。
それは天上の花園の如き香りを放っていた。
誰であれ、その甘やかな香りに惹き込まれることだろう。
だが、『フュンフ』は頭を振ってシャリスの肩を掴んで押しのけた。
「俺は……僕は、『聖杯』にふさわしくない」
「そんな……! 真の騎士に聖杯の神酒を振る舞うことが私の使命ですのに……!」
「それでも、だ」
「なら、私がもらっていいわよね? いらないんなら」
「だめー!!」
水之江が顔を出して伸ばしてくる手にシャリスはぺちんと叩いて叫ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
薄翅・静漓
百獣族との決闘は終わった
けれど、それで終わりではない
積み重ねられた因縁がこの地にあるというのなら
……少し、ここに残ってみようかしら
まだ何も知らない。けれど、知りたい思う
かつての記憶や想いを、辿ってみたい
けれどその前に、一つだけ
『フュンフ』……そう呼んでも、いいかしら
怪我は大丈夫? 後で、ちゃんと治療したほうがいいわ
妖精族が抱える葛藤は、きっと私の想像より遥かに深く重い
だからこそ、静かにその瞳を見つめ、そっと言葉を託しましょう
もし、『人造竜騎エイル』を知る妖精族に会うことがあったら、伝えてほしいの
『人造竜騎エイルは、旅立った』と……
因縁と因果が連なるのならば、導き出されるものはなんであっただろうか。
戦い終われど、それで終わりではない。
百獣族は滅びたが、しかしオブリビオンである。
いつまた過去から滲み出すかはわからない。
時間が過去を排出して未来に進むのなら、今もまた過去になるだろう。体積した過去は、その質量ゆえに歪むのだから。
「積み重ねられた因縁がこの地にあるというの……?」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、辺境の地に降り立つ。
まだ何も彼女は知らない。
けれど、知りたいと思うのだ。
彼女の乗騎『セラフィム・クレセント』は、この地で生まれた。
いや、生まれ直したというのが正しいのだろう。
朽ちゆく定めであった人造竜騎から分かたれた存在。
輪廻から解脱した世代認定されぬ番外の『セラフィム』。この世界で呼ばれる妖精族『セラフィム』とは異なる存在。
嘗ての記憶や想いをたどる事ができるのは、当時の人間ではない。
いつだって歴史を知る事ができるのは、後世の者のみである。
「『クレッセント』、あなたもそう思うの?」
見上げる機体のアイセンサーが僅かにきらめいたような気がした。
「そう……けれど、その前に一つだけ」
静漓は風に揺れる亜麻色の髪を見た。
妖精族『セラフィム』の『フュンフ』。
「『フュンフ』……そう呼んでも、いいかしら」
彼の前に静漓は踏み出して、呼びかけた。
「……構わない。もとより、その名前しか俺には……僕にはない」
「ありがとう。怪我は大丈夫?」
「君たちのおかげでね。大事ないよ」
「でも、後でちゃんと治療した方がいいわ」
傷を確かめるように伸ばした手を『フュンフ』は僅かに身を引いて躱した。
人に長く触れ合うことなく過ごしてきたのだろう。静漓が伸ばした手に、僅かにためらいを見せていた。
それが己の負った鋼の咎であるとも言うようであった。
「あなたが抱える葛藤は、きっと私の想像より遥かに深く重いのね……」
「考えすぎだ」
「いいえ。だからこそ」
静漓の瞳が『フュンフ』を見つめていた。
黒い星写す瞳が静漓を見返していた。
視線は交錯するのではなく、真正面からぶつかるようだった。
「もし、『人造竜騎エイル』を知るのなら」
「……あれは、僕の最大の失敗だった」
「どうして?」
「もしも、僕があれを造らねば今に連なる悲劇も起こらなかった。君は知るだろう。僕よりも後にあれにであった君は、人の善性こそが、時として最も最たる悪性に転じるものだと」
「それでも」
そう、静漓は告げる。
その悲劇を知っている。
だからこそ、だ。
「それでも、『人造竜騎エイルは、旅立った』のよ」
その旅路が余人には知れぬものだったとしても、進んでいったのだ。
なら、と静漓の瞳が言う。
その道行きに、潔斎行路に幸あれ、と――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
【POW】
……ありがとうございました、フュンフさん!
ボクは記憶がないから、妖精族の過去が~って言われても実感がないんだけど、それでも、乗騎も無しに百獣族の前に立ってくれたことは重大なことだって思うし、あなたのおかげで彼らに…最後の一線を越えさせずに済んだんだと、ボクは思うから
(なおアルマ本人も「本来騎士でもない記憶喪失の妖精が魂を蝕むという人造竜騎を駆り戦って」いる訳ですが当人は全くそれに疑念を持ってません。騎士道とか義務感と言うよりそれ以前の「前提」みたいな感じです。
あと時折、何故か「記憶にないんだけど「セラフィム」ってこんな感じのだっけ?」みたいな妙な反応を見せます。リヴァーレも。)
持ちえないはずの記憶が頭の端で音を立てているような気がした。
暗闇の中に亀裂が奔るような、そんな音。
パキパキと音を立てるばかりで何かが生まれる気配はない。
記憶は記憶でしかないからだ。
けれど、アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)はどうしてだろうと疑問ばかりが頭の中に渦巻くのを感じていた。
妖精族『セラフィム』。
その名を聞いた時から違和感があったのだ。
彼女は『セラフィム』を知らない。
同じ妖精族ではあるが氏族が違うのと同じように、遠い祖先が違うのだろう。それはわかる。
けれど、そこではないような気がしてならないのだ。
『セラフィム』。
その名を聞く度に、頭の端が音をたて続けている。
「……ありがとうございました、『フュンフ』さん!」
しかし、アルマは違和感よりも先に『フュンフ』に頭を下げた。
亜麻色の髪が揺れて、困惑したような表情を『フュンフ』は浮かべていた。
当然と言えば当然だろう。
彼にとって、自分がやったことは礼を言われるようなことではなかったからだ。
「何故、礼を」
「だって、あなたのおかげで彼らに……最後の一閃を越えさせずにすんだと、ボクは思うから」
そう、アルマには記憶がない。
妖精族の犯した大罪というものについても、実感がない。
けれど、それでもだ。
百獣族が辺境の地に来週した時『フュンフ』が乗騎も保たずとも立ち向かったことで自分たちが駆けつけることができた。
結果、辺境の地は救われたし、百獣族も越えてはならない一線を越えずにすんだのだ。
それはアルマにとっては喜ばしい結果であったからだ。
「結局は、君たちのやったことだ。俺は……僕は、何もしていない」
「そんなことないよ。だから、ありがとうございました!」
「君は……いや、言わないよ。君には君の事情があるのだろうからね」
『フュンフ』はアルマと『ドラグリヴァーレ』を見やる。
ハイドラキャバリア。
搭乗者の魂と精神を蝕む人造竜騎。
その悍ましさは、人の精神性と同じだ。残虐性を秘することすらできず、制御もできない。人間族が聖なる決闘に参加できなかった理由の全てが、そこにはある。
「君は疑問に思わないのか」
「? 何を?」
「……いや、いい。忘れてくれ」
『フュンフ』は、アルマの特異性を言葉にしなかった。
妖精族である以前の話だ。
騎士道で縛られるでもなく、義務でもなく、その魂に宿る前提のみにて戦い続ける少女を前にして自分が言える事は何もないと思っていたのだ。
そんな『フュンフ』にアルマは首を傾げる。
その違和感の正体に、アルマは気がつくことなく歪なままの前提を抱えていくのだたった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
UC常時
くそー…対決は間に合わなかったかー…
「タイミングが悪かったね☆」
取り敢えず…メルシー…おめーは此処の伝承を探って来い
僕は此処のフュンフとダベってるぞするぞ
取り敢えずやるとするなら自己紹介か
僕は最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ!しくよろ!
つかフュンフか…その名前って意味があるのか?過去の勇者の名前とか色々さ?
まぁ…知り合いと同じ名前だから気になったってだけさ
後…妖精族のセラフィムについて色々教えて欲しいな
そいつも僕の聞いた名前なんだ
まぁ…キャバリアの名前でもあったわけだが
フュンフはキャバリア持ってねーのか?
それこそ…セラフィムのスゲーのが在りそうな気がしたんだがな…
戦いの終わった戦場は静けさを取り戻していた。
百獣族は退けられ、辺境の地は救われたと言ってもいいだろう。
結局、百獣族たちは何度でも現れるだろう。
彼らが過去である限り、人間族が冒した罪が消えぬし、贖えないのだ。
鎮魂の祈りのために捧げられる騎士道精神すらも、慰めにはならない。彼らが過去である以上、時を経てまた歪みながら現れる。
堂々巡りだ。
何度でも、何度でも、今日のような日が繰り返される。
それが鋼の咎だというのならば、人間族の贖罪はきっと終わらないのだろう。
「とりあえず『メルシー』、おめーはここの伝承を探って来い」
『えー☆ やだやだ☆ メルシーもお話するー☆』
「おめーが居たって役に立たねーだろうが!」
ほらいけ、とカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は『メルシー』を追いやるように手で押しのけて妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の前に歩む。
「よう、僕は最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ! しくよろ!」
「……長い」
「なんでだよ!」
名乗りが長い、と『フュンフ」は亜麻色の髪を揺らして頭を振った。
覚えらんない、と言うかのようであった。
「なら、カシムでいいよ! ったく、つーか、『フュンフ』とかって言ったな? その名前って意味があるのか?」
「名前に意味がないなんてことがあると思うかい? 君の名前にも意味があるように、名前には意味がある。そういうものだろうに」
「煙に巻くような言い方しやがってよー。過去の勇者の名前とか、色々あんだろー理由ってもんがさ! つーか、あれだ! 知り合いと同じ名前だから気になっただけだっつーの!」
カシムは、憤慨するようだった。
その様子に『フュンフ』は一つ息を吐き出した。
「別に珍しい名前ではないだろう。序列の数を名前にすることなど」
「序列?」
「数字が意味することなど、それ以外にあるかい?」
「そりゃそうかもだが、妖精族『セラフィム』ってのはなんだよ。他の妖精族とは違うのか?」
「氏族というだけだ。祖先が異なる。君たちだってそうだろう?」
「偶然か、こりゃあ?」
カシムは、その言葉にますます首を傾げる。
数字を意味する名前。
『セラフィム』という名前。
ある世界では、人型戦術兵器の名前である。奇しくも、このバハムートキャバリアと同じキャバリアの名を持つ世界に存在しているのだ。
「つーか、なんでオメーは生身で戦ってたんだよ。人造竜騎くれーもってねーのか?」
「持っていたのなら、使ってたし、そもそも……」
戦うつもりなどなかったのだと彼は言う。
「ほーん、それこそスゲーのもってそうだと思ったんだけどな」
「過ぎたる力など無意味だよ」
その言葉にカシムは、そういうもんか? と思ったかもしれない。
いずれにせよ、彼の中ではさらなる謎が深まるばかりであった――。
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
…どうするのかと言われれば……宝の山(伝承)のどこから手を付けようか…と言うところだけど…
…真偽は別にして伝承を記した書物があれば見せて欲しいかな…
……書物や言い伝えを付き合わせれば「確からしい」伝承の形が見えてくるはず…
…そのあとはその推測が正しいかを確認するための実地調査だね…(推定)聖堂跡とかに何か見つかるかな…
宝珠なりなんなりが見つかったならフュンフに渡して妖精族で管理して貰うとしようか…
…伝承の真偽を確かめたかっただけで宝珠はその証明みたいなものだからね…必要なときにだけ見せて貰えばそれで構わない…
「ハッキリ言って……」
メンカル・プルモーサ(星導の魔女・f08301)にとって、辺境の地というのは、何処から手を付けて良いかわからない宝の山であった。
伝承は無数に存在し、それが真偽不明なものも多い。
加えて史跡めいたものまで存在しているのだ。
彼女の知的好奇心はとめどない。
知らないということ、未知があるということが彼女の道しるべになるのだ。
辺境の地にある村にメンカルは歩みだす。
質素な暮らしぶりである。
それもそのはずだろう。ここは辺境の地であるから、当然物流なんてものは末端も末端であろう。
節約と倹約ではなく、ただ実利でもって生活が回るような有り様であったからだ。
「嘗ては、人造竜騎鍛造の場として用いられていた、と聞き及んでおりますが……」
メンカルは尋ねた村の長老とも言うべき年長者にヒアリングを行っていた。
彼が言うには、百獣族が存在した時代において、ここは鍛造場であったらしい。
史跡の残滓は、その名残であろうということ。
さらにそれ以前には百獣族の聖堂があったのではないか、ということも聞き及んでいた。
「……鍛造場の前が聖堂?」
どうにも繋がらない。
古来より、屠殺、鍛造の類は川を隔てて行われるものである。
住居と仕事場をわけるという意味合いもあっただろうが、いずれもが不浄を水に流すという意味での合理的な判断でも川を挟むことはどの文化圏に置いても見受けられることであった。
なのに、聖堂。
百獣族の聖堂であった、という伝承が残っている。
「……時系列を考えれば……百獣族を倒した後、この地を奪ったということになるわけだから……聖堂を破壊して、鍛造という不浄によって百獣族を貶める意図があった……?」
そこまでするだろうか、とメンカルは長老に伝えられた史跡に足を運んでいた。
殆どが瓦礫の山だ。
元は鍛造場であったそうだが、聖堂であった名残もほとんど見受けられないほどに風化劣化によって失われていた。
「……考えすぎかな」
メンカルは、確か宝珠がある、という言い伝えもあったな、と頭に思い描く。
宝珠。
そうした大した宝の類であれば、不心得者などがでてきてもおかしくないはずである。
ともあれ、フィールドワーク自体は嫌いではない。
足を運んで自分の目と手で確認する。
これは大切なことだ。
「ふむ……ここで嘗て何が行われていたか、は……わからないけれど」
確かにここで何かが鍛造されていた。
もし、汎ゆる戦士の記憶を内包する宝珠というものがあったのならば、それはきっと眉唾なのかもしれない。
そんなふうにメンカルは息を吐き出して周囲を見回す。
静かなものだ。
遠目に見えるは、湖。
美しい湖である。
「水場はあったけど……うん。こうも荒らされていてはね」
メンカルは嘗てあったであろう聖堂の姿に思いを馳せるのだった――。
大成功
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ジェラルディン・ホワイトストーン
ふう。人心地はついたか。
フェンフも無事でよかったよ。あなたがいなけりゃこの村の人は間に合わなかっただろう。
そしてあなたが倒れていたら……きっと、傷つく奴がいただろうさ。
情に走ってしまうのは、まあ感情があるんなら仕方ないことさ。
悪いことばかり記憶に残ってるのかもしれないけど、それで善いこともあったはずさ。
んで、これからどうするか。
んー。直帰する前に猶予があるなら、せっかくできた縁だしな。
この辺りの妖精からいろいろ話を直接聞いてみるか。
伝説伝承が残ってるっていても、時間を経てニュアンスが変わったり、途絶えたり、誤解されたり……。
そう言う話を聞いて合わせて、今後のすれ違いを防げれば、いいだろうね。
「ふう」
息を吐き出す。
ひと心地ついた、というやつだな、とジェラルディン・ホワイトストーン(シャドウエルフのタイタニアキャバリア・f44830)は戦い終わった辺境の地にて降り立つ。
肩をぐるりと回せば、骨が鳴る。
「『フュンフ』も無事でよかったよ」
「俺は……僕は、何もしていない」
「そんなことあるかよ」
ジェラルディンは笑って、妖精族『セラフィム』の『フュンフ』の肩を叩いた。
ぐ、と呻くように『フュンフ』は顔をしかめた。
「あなたがいなけりゃ、この村の人は間に合わなかっただろう。そしてあなたが倒れていたら……きっと傷つくやつがいたろうさ」
「……だが、人間族には関わらない。そう決めた自分の決まり事すら守れなかったんだ。何かできたかなんて言えない。プラスかマイナスかで言えば、きっとマイナスだ」
「情に走ってしまうのは、まあ感情があるんなら仕方ないことさ」
ジェラルディンは、何をそんなに難しく考えているのだと、また再度『フュンフ』の背中を叩いた。
彼ら妖精族にとっては、嘗ての過ちは拭いがたいものであるのだろう。
贖罪したくとも、贖うべき相手はもういないのだ。
そんな取り返しのつかぬ大罪を冒したのが、情によるものであるというのならば、これを律するのが贖罪の一つであったはずなのだ。
だからこそ、『フュンフ』は今回のことを誇る気にはなれないのだろう。
「悪いことばかり記憶に残ってるのかもしれないけれど、それでも善いこともあったはずさ。情ってやつは、そういうもんだろう?」
「……そう割り切れたら良いのだけどね」
「割り切ったら意味ないだろ。受入れんだよ。そうやって飲み込んで飲み干して生きていかないとな!」
ばしっ、とまた『フュンフ』の背中をジェラルディンは叩く。
う、と呻く『フュンフ』はしかし、心做しか表情が軽くなるようだった。
「そう、だろうか」
「そううだよ。そういうもんだ。なあ、そう言えば、この辺境の地には伝承が多いんだってな? 伝説伝承ってもんは、時間を経てニュアンスが変わったり途絶えたり、誤解されてたらりするもんだけど……」
ジェラルディンは興味本位で『フュンフ』にそう尋ねる。
ついで、というような気安さであった。
「人間は忘れる生き物だ。ずっとは覚えていられない。覚えていたとしても、記憶を精緻に覚えていることはできない。どこかぼやけていたり、取り繕った跡がみえたりするものだよ」
「まあ、そうだけどよ。百獣族はまた来るだろ? そういう時にさ、昔あったことを合わせて教訓にしていけばいいだろ。今回みたいなすれ違いだって防げるかもしれない」
「それは」
希望的観測かもしれないことはジェラルディンにもわかっている。
けれど、だからといって手を伸ばさない理由になっていない。
いつだってそうだけれど、小さな一歩も歩みださねば始まらないのだ
「……わかったよ」
ジェラルディンに『フュンフ』は辺境の地の過去を語るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ふぅ、終わりましたか
フュンフ様お怪我はありませんか?
ならば良かった
お礼と言うのであればちょっとエイル様成分を私に補充
ええ、私気付きました!!
このフュンフ様のサイズ、空の世界でお会いしたエイル様と同じでは!?
つまりここで抱き着けば疑似エイル様成分を補充できるのでは!?
アッハイ落ち着きます
あの、普通に聞きたい事もありますのでそんなに引かないで頂けますと……
『エイル』――かつてあなた方セラフィムが造り出した人造竜騎のひとつ
おそらくアルヴィトル様のケルビム・ツヴァイもそうなのでしょうが
ヘカトンケイル様は『超越者』と呼称したそれらの源泉?
元にある伝説や言い伝え等があればお聞かせいただければ
……人造竜騎エイルがどのように造られたかは聞かない方がよさそうです
その後はまったりピクニックなどいかがですか?
人とは交わらない……貴方さまの心が平和を求めるが故に周囲を戦いに巻き込むのだとしても
袖振り合うも他生の縁
ほんのひと時、安らぎを共有するのは悪い事ではないはず
そういえば、フュンフ様のお名前はどなたから?
「ふぅ、終わりましたか。『フュンフ』様、お怪我はありませんか?」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は損傷激しい己が乗騎『ケルーベイム』を見上げ、息を吐き出す。
既の所であった。
獣騎ヘカトンケイルとの戦いは苛烈であったが、しかし勝利を収める事ができた。
『ケルーベイム』の腕部はひしゃげ、装甲のあちこちに亀裂が走っている。
『奉仕者』の名に相応しい姿であるかと言われたら、まさしくであったことだろう。
痛々しい姿をさらす『ケルーベイム』に妖精族『セラフィム』の『フュンフ』は沈痛なる視線を向けていた。
「俺……僕にはないよ。それよりも、君の」
「ならばよかったです。お礼というのであればちょっと『エイル』様成分を私に補充――」
「何を言っているんだい?」
ステラはにこりとしていた。
嫌な笑顔である。
『フュンフ』は思わず身構えていた。
「ええ、私気が付きました! この『フュンフ』様のサイズ感! お空の世界でお会いした『エイル』様と同じ背丈!!」
「だから、何を言って……」
本当である。
ステラはジリジリと『フュンフ』へと迫る。にじり寄っていると言ってもいい。
完全に獲物を狙う目であった。
「つまりここで抱きつけば、疑似『エイル』様成分を補充えきるのでは! と私気がついてしまったのです!」
「本当に何を言っているんだい、君は!? まずは落ち着いてくれ」
「アッハイ落ち着きます」
「急に言う事聞く……」
なんなの、このメイド、と思わないでもない。
むしろ、よく根気強く此処まで話を聞いてくれたものである。
「あの、普通に聞きたいこともありますので。あ、そんなに距離を取らないでいただけますか?」
「それは無理」
きっぱりとした物言いであった。仕方ないね。
ステラはコホンと咳払い一つして仕切り直す。
「『エイル』――かつてあなた方『セラフィム』が造り出した人造竜騎の一騎でございましょう」
「……言ったが、あれは僕にとっては最大の失敗だった」
「何故、でしょうか」
「あれが引き起こした争いは、十や百では足りないからだ」
「では、『アルヴィトル』様の『ケルビム・ツヴァイ』もそうなのでしょうか?」
「あれは『エイル』を模倣しているだけだ。それ以上にはならない……」
「『獣騎ヘカトンケイル』様は、『超越者』と称したのは」
ハイランダー。
それが『超越者』である。
何故、そう呼んだのかはわからない。能力故か、それとも出自故か。
いずれにせよ、『超越者』が呼び込むのはいつだって争いばかりだ。どの世界にあっても、そうした存在が生み出すのは平和ではない。
「言葉通りだろう。超越とは、即ち対比すべき存在がなければ成り立たないものだ。わかるかい。必ず、超越者の近くには、対比されるべき存在が踏みつけにされているものだ。踏みつけられる側にとっては、たまったものじゃあないことは言うまでもないだろう?」
「それは」
まるで『超越者』ではなく。
「彼らが征服者であるような物言いではありませんか?」
「言葉の通りだよ。事実、そうだろう?」
『フュンフ』は辺境の地、湖を背にして手を広げた。
この大地とて、征服して手に入れた場所にすぎない。百獣族から。
「ですが、それは」
あまりにも悲しすぎる考え方ではないのか、とステラは思ったかも知れない。
人とは交わらない。
過去の過ちが消えないのならばこそ、孤独の痛みすら贖罪に変えるというのならば、安らぎすら必要ないと『フュンフ』は言っているのだ。
袖振り合うも多生の縁という言葉すら、『フュンフ』には届かない。
「そういうものだよ。他者との摩擦が軋轢を生む。軋轢は誤解を生む。誤解は争いに発展する。だから」
『フュンフ』は物憂げに笑って、ステラの手を取らなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
聖なる決闘、完!!
つまり!ここからは|フリータイム《趣味の時間》!!
え?戦闘中からフリーダムだったと?
だって、萌えがそこにいるんですもの
推さないとかあり得ないですわ
推しは毎瞬推せ、と言いますでしょう?
あれでも我慢した方
そして限界です
さぁフュンフ様!(がばっ
お触りはしないのでぜひ『おねえちゃん』と!
その一言の為にわたくし戦ってきましたので!
さぁさぁさぁ!
アッハイ落ち着きます
ところでフュンフ様はこれまでどのようにお過ごしに?
いえ、人々の危機に介入できる『距離』にいたのでしょう?
かつての罪――人造竜騎をこの地にもたらした事があってなお
おねえちゃんがダメなら少しだけその心境お聞かせ願えれば嬉しいですわ
「聖なる決闘、完!!」
ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は、自身の乗騎から降り立ち、息荒く歩みだしていた。
速歩きと言っても良い。
心拍はどんどこどんである。
どんどこどん?
なんで? 言うまでもない。
百獣族を打倒し脅威は去ったのだ。
であれば!
「つまり! ここからは|フリータイム《趣味の時間》!!」
フリーダムではなく?
やりたい放題という意味での。
「それはそれ、これはこれですわ!」
結構便利に使うなぁ、その言葉。だが、ファルシータは構わず、ずんどこどんと妖精族『セラフィム』の『フュンフ』めがけて一直線に歩んでいた。
正直言って怖い。
めっちゃ怖い。
「な、なんだ……?」
「さぁ、『フュンフ』様!」
がば、と壁があったのならば、手足を使ってドンしていたところである。それくらいの勢いでファルシータは『フュンフ』に迫っていた。
「お触りはしないので、ぜひ!『おねえちゃん』と!」
「これはもう実質触っているようなものではないのかな!?」
「いえ、『フュンフ』様が人里の危機に介入できる距離感にいたのと同じ距離でございますよ! そうでしょう? そうでなければ!」
「それは、人間族の過ちが……」
「寂しかったからでございましょう、わたくしにはわかりますとも! 人肌に飢えることもございましょう! ええ、わかりますとも!」
「えぇ……」
困惑である。困惑しかない。むしろ、よく困惑以外の感情を浮かべなかったものである。恐怖したって仕方ないくらいの雰囲気でファルシータは迫っていたのだ。
だが、ファルシータはためらわない。
なぜなら、そこに萌えがあるから。
推さない理由などない。
推しは毎瞬推せ、と言うものであるから。そうかなぁ、と思わないでもないが、そういうもんなのである。これでもファルシータはだいぶ我慢した方であるらしい。末恐ろしいがすぎる。
「その一言のためにわたくし戦ってきましたので!」
「え、え、いや」
「さぁさぁさぁ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いて」
「アッハイ落ち着きます」
うわ、すぐに落ち着いた。情緒どうなってるの?
「……『おねえちゃん』」
ゴッ! と音がしたのはきっと多分ファルシータの幻覚であったし、幻聴であった。
それくらいの衝撃であった。
恥じらいながら見上げる黒い瞳。
揺れる亜麻色の間から見える赤ら頬。
落ち着くを通り越して涅槃である。広がる大宇宙であった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
すやぁ…すやぁ…
村で歓待を受け美味しいものをたくさん食べてすっかりごきげんになったボクはすっかり…
すやぁ…すやぁ…
ハッ!今何時!?
ていうかここどこ?
そうボクが目覚めたのは…えーここどこー?
お酒は飲んでないよねえ?コンプライアンス的に
そうつまりボクは運命に導かれた勇者的なあれでここに…
寝ぼけて徘徊してただけだなんてそんな
そんなことはない
ないったらない
そうこれはボクの【第六感】でここになんかあるとか思って無意識にここに来たてきやつな!
なんで寝てたのかって?そりゃあ食べたら眠たくなるでしょ?
そうそこでロニ探検隊が見たものは…!
過去の幻像とか遺跡とかなんかそれっぽいもの!
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はすやすやと寝息を立てていた。
「すやぁ……すやぁ……」
辺境の地を救った英雄として村にてささやかなながら歓待を受けたロニはすっかりごきげんになっていた。
あれやこれや進められるままに食事をし、騒いで、笑って、歌って、踊って。
それはもう夜を徹しての宴であった。
そんなものだから、こんなにも穏やかに眠っているのである。
やったことは暴風みたいなことであったが、まるで遊び疲れたように今は眠っているのだ。
「すやぁ……すやぁ……」
だが、ちょっと寝すぎなのではないだろうか?
寝息があんまりにも穏やかなので忘れてしまいそうになるが、完全に寝坊っていうやつである。
「ハッ! 今何時!?」
がば、と飛び起きてロニは周囲を見回す。
見覚えがない。
え、ナニコレ夢の続き?
「なんだろ、湖……? え、というかここどこ?」
まったく見覚えがない。見覚えがあったとしてもしっかり忘れている。
キョロキョロと湖を見やるが、全く覚えがない。
何がどうなってこんな場所までやってきているのか。
「まさか、ボクは運命に導かれてた勇者的なあれでここに……」
いや、多分普通に寝ぼけて徘徊していただけなのである。
偶然にも村から外れて湖までやってきていたのだろう。
やっていることは完全に夢遊病者とか、徘徊老人とかのあれである。
「そんな。そんなことはない。ないったらない! そうこれはきっとボクの第六感でここになんかあるって思って無意識に、此処にきてたてきたやつな!」
ならなんで寝てたんだよという話である。
まあ、食べたら眠たくなるのだから仕方ないというものである。
「ふあー……あ、っと」
一つ伸びをしてロニは湖を眺める。
第六感。
ピンと来ない。
いや本当に来ない。まさか、本当にただ寝ぼけて此処までやってきたってことなんてありえないとロニは頭を振る。
「いいや! ロニ探検隊はこれからこれから! 過去の幻像とか遺跡とかなんかそれっぽいものを見つけるまで帰れないぞ、これは!」
うん! とロニは自らに発破をかけて湖周辺をずんずか歩いて見て回る。
けれど、周囲には何もない。
びっくりするくらい何もないのだ。
「……ま、いっか!」
ロニは気にしない。何もなくても、単純に村で楽しいひと時を過ごしたという時間が得られていればそれでいいのだ。
だって、あんなにも楽しかったから……。
「ハッ! つまり、あの村での歓待の楽しかった時間が本当の宝物って、コト――!?」
大成功
🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●WIZ【半妖精】
礼はいらない
騎士として当然の事をしたまでだ
しかし、この地に眠る伝承か…
私とフュンフのみでは少々人手が足りないと思うので、宿題を課した貴公を呼んだという次第だ
そんな恨む目で睨むな
表向きは人質の身なれど、これも円卓の騎士としての務めであるのでな
さて、ザビーネの提案で村の小さな酒場へ足を運ぶか
ところで、フュンフ
今後はどうするつもりだ
妖精族もまた過去の贖罪で人間族と関わらない掟であれば、それを破った貴殿もそう簡単に戻れまい
貴殿が自由の身となったのであれば、この村に滞在しても見聞を広める旅に出るのも良いだろう
…私とこの女は恋人か何かかと?
ふ、同志と呼んで貰おう
しかし、恋人とはまた傑作だ
ザビーネ・ハインケル
●WIZ【半妖精】
辺境伯乱心の混乱がここまで尾を引いてるってか…
ま、この騒ぎを聞きつけた|盗賊騎士《ブリュンヒルド》が何とかすんだろよ
んで、人を領主勉強させといて助けを請われて呼ばれた訳だが、良い気分転換になっから良いぜ
お前がフュンフだってな?
へっ、腰抜けの妖精にしてはいい目をしてんじゃねぇか
気に入ったぜ
人間に関わらねぇ禁忌を破った罪で追放されても、うちに来たら面倒を見てやるぜ
さてと、情報収集だが…ここは定番の酒場だな
酒場の親父や常連、場末の吟遊詩人が何かしら知ってるだろうよ
あン?
気兼ねなく喋ってるから、もしかして恋人とか…って誰がこんなスカした野郎と!?
てめぇも笑ってねぇで反論しやがれ!
辺境の地は、辺境伯『ラーズグリーズ』の乱心の影響を未だ色濃く残している。
悪辣なる者へと堕した辺境伯は今は牢獄に繋がれていても、その爪痕は深い。
「辺境の地であればこそ、まだまだ尾を引いているってわけか……」
ザビーネ・ハインケル(Knights of the Road・f44761)は自分を呼び立てた者を探して、辺境の地を見回した。
そこかしこで戦いの跡があった。
どうやら百獣族との戦いを制することができたらしい、ということは傍目にもわかることであった。
「ま、この騒ぎを聞きつけた|盗賊騎士《ブリュンヒルド》がなんとかすんだろ。さて、んで? 人に領主勉強をさせておいて呼びつけるやつは何処に嫌がるんだ?」
まあ、善い気分転換になるだろうということはザビーネにもなんとなく理解できるところであった。
そんな彼女の視界に映るのは、二人の男であった。
一人は美青年。一人は少年。
半妖精と妖精。
ははん? とザビーネは眉根を寄せる。
「礼はいらない。騎士として当然のことをしたまでだ」
「そういうものかい。だが」
「よぉ、きてやったぜ」
「遅かったな」
ザビーネの言葉にエリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は振り返って、その姿を認めたが、遠方から遥々やってきた知人に対するにはぞんざいな扱いであったように思えただろう。
「お、こいつが『フュンフ』か。へっ、腰抜けの妖精にしてはいい目をしてんじゃねぇか」
「腰抜け、という点においては否定もできないな。だが」
「わかってるって。人間に関わらねぇって決めてたんだろ。だが、それを反故にしちまったのはなんでだよ? ハッ、わかってんよ。体が動いちまったってんだろ?」
ザビーネは『フュンフ』の肩を叩いてから体を引き寄せて肩を組む。
「その罪で追放されるってんなら、うちに来いよ。面倒見てやるぜ」
「……面倒を懸けるつもりはないよ」
「そうかい」
ザビーネは体を離して笑う。
見込みに間違いはないな、とザビーネは理解して、エリアルを睨む。
「んで、おめーは」
「そう睨むな。確かに私は表向きは人質の身なれど、これも円卓の騎士としての務めであるのでな」
「ハッ、お堅いこって! んで、なんだってんだよ。何をやれってんだ? 情報収集っていってもここいらにゃ酒場一つねーじゃねーか!」
ザビーネの言う通りであった。
此処は辺境の地。
村に酒場はなかった。
「湿気た村だぜ。ったくよー」
「そう言うな。だが、この辺境の地の伝承を集めることは、今後にも繋がる。地道に一軒一軒家を回ろうと思っている」
「どんだけ係るんだよ、時間!」
「だから人手がいるというわけだ」
「騙された!」
エリアルの言葉にザビーネは頭を抱える。
しかし、こうした情報収集はいつだって地道な作業の連続でしかないのだ。
悪態つくザビーネとエリアルを交互に見て『フュンフ』は、ふむと何か得心が言ったような顔をした。
「どうした『フュンフ』。ザビーネも言ったが、今後はどうするつもりだ?」
「どうもしないよ。いつもの暮らしに戻る。掟、とは言えど、元々は自ら律していたものだ。それに俺は……僕はいつだって一人だ。その方がいいからね」
「貴殿は」
「それ以上はいいよ。円卓の騎士。君にとって俺は……僕は、手を差し伸べるべき者に見えるかも知れないが、君が差し伸べる手は、他の誰かのためにとっておいてくれ。そう、例えば、彼女に、とかね」
そう言って『フュンフ』はザビーネを指差す。
「ザビーネ? 何故だ」
「何故って、恋人ではないのかい?」
「誰がこんなスカした野郎と!?」
ザビーネの素っ頓狂な声が響く。
「ふ、同志と呼んでもらおうのが正しかろうな。しかし、恋人とはまた傑作だな」
「てめぇ、笑ってねぇで反論しやがれ!」
なんだ違うのかと『フュンフ』笑う。
それは初めて見せる見目姿にあった笑い方だった。
「悪いね。そんなつもりじゃあなかったんだけれど、だが、いや。うん。君たちの道行きが善きものであることを、願うよ」
そう言って『フュンフ』はエリアルとザビーネのやりとり、その間に挟まれながら、その騒々しいやり取りを諌めるのだった――。
大成功
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