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ハッピー・ホリデーズ・フリレーション!

#ヒーローズアース #ノベル #猟兵達のクリスマス2024

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笹乃葉・きなこ



ラピーヌ・シュドウエスト




「おおぉぉぉ……」
 2024年12月26日。ヒーローズアース、フロリダ州、マイアミ、とある観光ホテル。
 いや、正確に言えば、とある『超高級』観光ホテル。年明けまでの短いクリスマス休暇でここを訪れた笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)はその凄まじい威容に、思わず唸るような声を漏らした。
 自分ひとりだったら、絶対こんな場所には来ない。なら、何故来たのかと言えば――。
「やぁ、時間には性格だね」
 少々気取った態度でそう声をかける、ラピーヌ・シュドウエスト(叛逆未遂続きの闇執事ウサギ・f31917)に誘われ待ち合わせていたから、である。
 きなことラピーヌとは、遊び友達兼悪友と言った間柄。今回もその流れで誘われたのだが、いつもの遊び場とはかなり違うその凄まじい威容には、流石に緊張気味だ。
「お、おぅ、もちろんだべ」
「うむ、良い事だ。では行こうか。レストランの予約にも、遅れてはいけないからね」
 きなこが周囲を物珍しげに見回す一方で、ラピーヌは所作に余裕がある。服装もビシッと決まっており、こちらも慣れないドレスコードに緊張気味のきなことは対照的だ。
「失礼、予約していたシュドウエストだが」
「お待ちしておりました。どうぞこちらに」
 店員と会話し、席についた後は流れるように注文を。極めて慣れた様子のラピーヌに、目をぱちくりさせるきなこ。
(「え、こいつもしかしてセレブだべ?」)
「ん? 何か顔についているかな?」
 素直に思った事を口に出すのはなんだか癪なので、首を横に振って応じる。まあ、ふふふと笑うしたり顔を見るに、皆まで言わずともバレている気はするが。
 そうしてきなこが黙り込めば、料理が来るまでの間、しばし沈黙が広がって。それを打ち破るように、話題を切り出していくラピーヌ。
「それにしても……こっちは仕事、そっちは連れ合いとのクリスマスとなったね」
「ん? そうだったべなぁ」
 話題が変わった事で、きなこも普通にその会話に応じていく。その主な話題は、婚約、あるいは結婚の話。なんだかんだと気の置けない悪友ではあるので、そういった事を話すのに抵抗はない。
(「けど、なんでそんな事聞くんだべか? まあ、別に良いけども」)
(「とか思ってるんだろうなぁ」)
 内心ではそれを特に深く考えていない者と、意味ありげな表情で会話を広げる者と。モノクルの向こうでラピーヌの目が輝くのを、きなこは全く気づいていない。
 そうこうしているうちに、料理がやって来た。話題が話題なのでワインこそ開けていないが、後はちゃんとしたフルコースだ。
「……おっと、料理が来たね。冷める前に頂こうか」
「おお、いただきますだべ」
 ここまで慣れない高級ホテルに目を回し気味だったきなこだが、フードファイターだけあって、料理の事ならそれなりに分かる。
 見たことのない料理でも見ればなんとなく調理法が分かるし、仮に目で分からずとも鼻で嗅ぎ分け、舌で味わって。
「むぅ……流石にいい素材使ってる……それに、味付けも丁度良いべ」
「ふふ、楽しんでいるようで何よりだ。しかし確かにこれは美味しいね」
 そうやって舌とお腹もそこそこ満たされて来た事で、きなこの緊張も大分解けて来た。まあ、普段あまり服に頓着せず肌を露出しているだけに、堅苦しい服だけはまだ落ち着かないけれど。
 それでも最近はお洒落勉強中な事は、ラピーヌも知っている。目を細めてきなこを見つめながら、運ばれて来るコースの隙間で、歓談を続けていく。
「ボクのクリスマス休暇と君の予定の都合が合って良かったよ」
「ん、おらも年末ぐらいはゆっくりしたかったから、丁度良かったべ」
 そんな言葉の裏にも一切気づかず、当たり前のように頷くきなこ。ラピーヌもそれにもう1度頷きながら、話題を進めていく。
 仕込みは済ませた、後は本命の話題に踏み込むだけ。ヴィラン『プレデトリー・ラビット』の策は、すでに完了している。
「さて、休暇の間はどう楽しもうか。フロリダにはいろいろあるからね」
「むむむ……」
 もちろん、そう問われた所できなこは、フロリダの事など全く分からない。その反応を予想していたラピーヌは、予め用意していた案内を口にして。
「ビーチやテーマパークは勿論、クルーザーをレンタルしてクルージングとかね」
「おお……すごいべな」
 あまり想像はつかないが、何やら凄いと言う事は理解して、目を丸くするきなこ。それを見たラピーヌは、くすりと微笑み、そして。
「なんなら……1日中ヤッても良いんだよ?」
「お?」
 その微笑みを、とても悪いものに変えると、テーブルの上に部屋の鍵を置いた。きなこの目が、別の意味で丸くなる。
「えっ……と?」
「分からない? いや、分かるよね?」
 それはまあ、分かる。この悪友とは、『そういう事』を何度もして来た。けれどなんで今、と戸惑いつつも視線を向ければ、ラピーヌは悪い笑みのまま、言葉を重ねて来る。
「そちらのお相手が愛妾を許すのなら、今まで通りの関係と続けようじゃないか」
「おぉぉ……」
 そこまで聞けば、鈍いきなこでもいい加減に分かる。どうしてさっきからラピーヌが、あんな話をしていたのか。どうして今、こんな話をしているのか。
「むむむ……」
「ボクはキミでしか満足できない身体にさせられたんだ。責任は取ってくれるよねぇ?」
 どう応えれば良いのだろう、と真面目に悩むきなこへ、ラピーヌはそんな風に囁きかける。まさに元ヴィラン、まさに悪女と言うような、黒い笑みと共に舌なめずり一つ。
「それとも、ボクとはもうお終いかな?」
「それはっ……ラピーヌとは、まだ、一緒にいたいべ……」
 突っぱねるようなその言葉に含む策略を、きなこは気づかないか、あるいは気づいていても目を背けているか。そんなきなこの躊躇う様子に笑みを深めたラピーヌは、テーブルの上のきなこの手を握ると、部屋の鍵の上へと置いていく。
 そしてきなこは、それに抗う事はない。
「じゃあ、責任……取ってくれるんだね?」
「えっと……求めてくれるから……求めてくれるなら……責任は、取るべ」
 きなこのその言葉に、ラピーヌは自分の口元をそっと覆い隠した。流石にこの笑みを見られたら、流石のきなこだって自分の悪巧みに気づいただろう。
 まあ気付かれた所で、強引に押し切れそうではあるけれど。そこまで求める必要は、今はない。
「ありがとう。それじゃあデザートを食べたら、早速行こうか」
「わかったべ……」
 デザートのアイスも上等なものだったが、きなこの鋭敏な味覚でも、味は良く覚えていない。そのまま約束通りに連れ立って、レストランを後にする2人。
 向かった先はスイートルーム。部屋を手配したのはもちろん、ラピーヌだ。
 ――だって、この休暇の大半を、この部屋で過ごすのだから。上等な部屋であるに越したことはないのは、当然だろう。
「じゃあ、楽しもう、たっぷりと、ね」
「分かったべ……!」
 略奪愛を目論む悪女と、覚悟を決めた純真な少女は、連れ立ってその部屋の中に入っていく。高級ホテルのスイートともあれば防音性にも優れており、中でどれほど声を上げようと外に漏れる事はない。
「んっ、はぁ……あっ、あっ……ラピーヌ……っ!」
「……んっ……は、あっ……ああっ……!!」
 どれほど激しく慰め合おうと、どれほど激しく狂おうとも。それは全て、スイートルームの中に秘められるのだ――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年03月18日


挿絵イラスト