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キラキラ☆ライブステージ~俺にバラードは似合わない!~

#アイドル☆フロンティア

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#アイドル☆フロンティア


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●バラードなんて糞喰らえ!
 あれは中学生の時に見た光景だった。
 ギラギラと照らされたステージ、噴き上がるスモークに、燃え盛る炎。
 だが、その中心に立つちっぽけな男が、そのどれよりも輝いていた。

 程なく俺はギターを握り始めた。
 ガムシャラに弾いて、ガムシャラに歌って、ただあの背中に追いつきたくて。
 まだ足りないとピックを減らし、まだまだ遠いと喉を枯らして。
 気付けば仲間が出来ていて、気付けばスポットライトの下にいた。
 小さなライブハウス、少ない観客、小さい拍手。
 俺はまだまだこんなもんじゃねぇ。そうやって叫んで、叫んで、叫んで……。

 それから何年経っただろう。
 今の俺の指が叩くのはチマチマとしたキーボードで、口から出るのは情けない謝罪とお世辞の言葉。
 結局俺たちは『芽』が出なかった。年を食えば現実が見えてきて、生活の為だとか色んな事情を言い訳に、選択肢を一つに絞ってゆく。そうして残ったのは、解散だった。
 長らくギターに触れていない。かつての仲間達にも会っていない。最後に顔を見たのは、5年位前にドラムのあいつが『結婚した』とか言って送ってきたタキシード姿の写真くらいだ。
 それでも、あの男の姿、あの影は今も俺の脳に焼き付いて、離れてくれない。離しちゃくれない。

 ――だから、辛い。

 あの輝きはどこへ行った。
 あの熱狂はどこへ消えた。
 あの背中は何故追えなくなった。

 中年男の悲哀だとか、そんな|慰めの歌《バラード》はいらない。
 俺が欲しいのは、迸るロックだ。
 俺が欲しいのは……!!

●アイドル☆フロンティア!
「皆様! 新たな世界、アイドル☆フロンティアで事件ですわ!」
 猟兵たちに向かって、エリル・メアリアル(|孤城の女王《クイーン・オブ・ロストキャッスル》・f03064)が揚々と叫んだ。
 新たな世界、アイドル☆フロンティア。人の心の闇に巣食う「骸の海」が溢れ出すことによって現れるオブリビオンを退治する『アイドル』達が戦う世界だ。
 溢れた骸の海の影響を受ければ、その人物は大きな奇行や凶行に走ってしまうのだ。
「皆様には、そんな不幸な人を助けて頂きたいんですの!」
 エリルはそう言うと、早速事件の詳細を語り始めた。

「今回オブリビオンになってしまうのは、元ロックシンガーだった男性。名前は|岩田《いわた》・|光男《みつお》というそうですわ」
 エリルが見せたその人物、光男の写真は、どこか骨ばった顔つきをした男であった。
 きっちりと整えられた髪にピシッとしたスーツ姿で、とてもロックシンガーだったとは思えない出で立ちだ。
「彼は、今は所謂サラリーマンですの。生きていくために仕方ないと割り切っていたつもりが、心の奥にはずっと現状への不満が溜まっていたんですのね。それが、骸の海を溢れ出させるきっかけになったようですわ」
 エリルはやれやれといった風に首を振りつつ、話を続ける。
「今回は予知が早かったおかげで、骸の海が溢れ出す前に現場に辿り着けるのだけれど……」
 エリルが少し首を傾げ、申し訳なさそうな顔をした。
「現場は、野外ライブステージを中心としたお祭りをやっているんですの。だから人がとっても多くて……」
 つまり、その男が会場内の『どこ』にいるかまでは判明しなかったのだという。
「なので、皆様はまず岩田様を探してくださいますかしら?」
 エリルがそう言うと「そうそう」と一つ付け加える。
「まだ事件は起きていないのだから、探しながらお祭りを楽しむくらいは出来るかもしれませんわね」
 ステージでは飛び入り参加歓迎のライブイベントが開かれているらしい。屋台には定番の店の他にキッチンカーも出ているので、グルメを楽しむことも出来るだろう。
「そして、岩田様を見つけたら早速流れ星にお願いをして、アイドルステージを作り上げ、オブリビオンと戦ってくださいませ!」
 この世界ではオブリビオンは『アイドルステージ』の上でしか具現化しない。その分、他の世界に比べて強力なのだという。
 だが、猟兵たち――いや、アイドル達もまたステージ上でパフォーマンスを行い、観客からの応援を受けることで、その力を何倍にも増やすことが出来るのだ。
「オブリビオンは岩田様の他に、骸の海の影響を受けてしまった人たちもいると予知しましたわ。皆まとめて救ってあげて下さるかしら!」
 と、そこまで説明をしたところで、エリルは再び猟兵たちに向き直る。
「絢爛豪華、そしてキラキラ……皆様にふさわしいステージを彩って、岩田様を救ってくださいまし!」
 そして、グリモアが輝く。

 ――いざ、アイドルステージへ!


G.Y.
 こんにちは、G.Y.です。
 アイドル☆フロンティアが始まりました!

 キラキラ輝くステージパフォーマンスで、華やかなアイドルバトルをぜひお楽しみください!

 第1章は日常です。
 野外特設ステージを中心にしたお祭り会場です。今回の目標『岩田・光男』さんを探してください。
 ステージ上では飛び入り参加歓迎のライブイベントが開かれています。
 目標を探すついでで、イベントも楽しんでしまいましょう。

 第2章は集団戦です。
 無事目標を見つけても、骸の海が溢れ出すのは止められません。
 アイドルステージを作り上げてオブリビオンと対決しましょう!
 まずは骸の海の影響を受けた不幸な人達が相手です。
 華麗なパフォーマンスで軽く撃退してあげてください。

 第3章はとうとうボス戦です。
 岩田さんは強力なオブリビオンと化しています。
 観客の応援を力に変えて、ド派手に撃退しましょう!
 また、敵味方ともにパワフルなパフォーマンスをすることが出来れば、応援の力はより増す他、岩田さんの心をより一層救うことができるかもしれません。

 それでは、皆様のキラキラなプレイングをお待ちしております!
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第1章 日常 『お祭り☆フェスティバル』

POW   :    出店を巡って楽しむ

SPD   :    ゲームやレクリエーションの企画に参加する

WIZ   :    ライブステージを見物する

イラスト:ぽんち

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

心の闇から生まれた敵を浄化するのがアイドル!
アイドルが迷える人を救うならば騎士道の権化たるベルト・ラムバルドも
アイドルに相応しい男だよな!
夢破れた男、岩田を救う為に騎士道を往くのよ!行くぞ!

おぉ~賑やかだな
歌手にアイドルか…平和な光景だなぁ…羨ましい限りよ
ここのどこかに岩田がいるのか…だが見当がつかん
しゃーない…こうなりゃこいつらにお願いするか!

UCでモーラット連中を召喚!
すまんがお前たち、野生の勘で岩田を探し出してくれ!
後で屋台で奢るから…何?先に奢れ?んも~モキュモキュ我儘な奴らめ!
わかったわかった!奢るからさっさと探してくれ!

…くそ~予想外の出費だ…頼むんじゃなかったなくそ~



 とある街の、緑豊かな大きな公園。そのど真ん中に建てられた特設ステージを中心に、屋台やキッチンカーがずらりと並び、多くの人がわいわいと行き交う。
 今日はお祭り。ライブパフォーマンスも行われる盛大で賑やかな催しが開かれていた。

 そんな会場を眺めて、自信たっぷりに胸を張る男がいた。
「心の闇から生まれた敵を浄化するのがアイドル!」
 その男の名はベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)。
「アイドルが迷える人を救うならば騎士道の権化たるベルト・ラムバルドもアイドルに相応しい男だよな!」
 ビシィッ! と自身の胸に親指を突き付けて自信たっぷりに笑うと、その勢いのまま会場内へと歩き出す。
「夢破れた男、岩田を救う為に、騎士道を往くのよ! 行くぞ!!」

 ざわざわ、わいわい。
「おぉ~、賑やかだな」
 思った以上の賑わいを感じて、ベルトが感心した。道行く人々は皆楽しそうにキラキラと笑っていて、そこかしこからやたらと良い匂いが立ち込めている。
「歌手にアイドルか……平和な光景だなぁ……」
 オブリビオンの脅威がありながらも、これだけ平和な世界が維持されているというのも、きっとアイドルのおかげなのだろう。
「羨ましい限りよ」
 そう呟きつつ、ベルトはキョロキョロと周囲を見渡す。
「ここのどこかに岩田がいるのか……」
 だが、ベルトには彼がどこにいるのか、皆目見当もつかない。
「しゃーない……こうなりゃこいつらにお願いするか!」
 そう言うと、ベルトが『ピーっ』と指笛を吹く。
「モキューっ」
「モキュピー!」
「キュッピピー!」
 現れたのは、野良のモーラット達。以前保護した縁で、こうやって駆けつけてくれるのだ。
「すまんがお前たち、野生の勘で岩田を探してくれ!」
「モキュ?」
 モーラットに尋ねられ、ベルトが眉間に皺を寄せる。
「後で屋台で奢るから……」
「モッキュピ!」
「何? 先に奢れ?」
 そう言われると、ベルトは腹立たし気に唸る。
「んも~、モキュモキュ我儘な奴らめ!」
「モキュモキュ!」「モッキュ!!」「モキュキュー!」
 そんな態度に、モーラット達がそっぽを向いた。それにはベルトも参ったか。
「わかったわかった! 奢るからさっさと探してくれ!」

 というわけで。なんだかんだ通じ合っているベルトはモーラット達に屋台料理を奢ってあげると、モーラット達は満足したのか、颯爽と人ごみの間を抜けて散ってゆく。
「……くそ~……」
 一人になり、ため息を一つ。
「予想外の出費だ……頼むんじゃなかったなくそ~……」
 軽くなった財布を恨みつつ、ベルトは一人肩を落とす。そんな時。
「むっ」
 ベルトの前を通り過ぎたその男に、ふと目が留まった。
 休日のはずの今もスーツを着込んでいて、目はどこか血走っていたような。
 そんな男の背中を何気なく見送ったその直後。
「もっきゅ」
 戻ってきたモーラットがその男の頭上で合図をした。
「そ、そ、そいつか~~~っ!」
 人ごみに消えてゆく岩田らしき男を、ベルトは急いで追うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

六連星・輝夜
SPD : ゲームやレクリエーションの企画に参加する
新人アイドルとしてじゃんけん大会を開催するのであります。
公式オフの最後にやってるようなやつ(メタ発言)で、勝ち残ると一緒にチェキが撮れるみたいなのでありますよ!
これでどうやってロックな人を炙り出すかというと「じゃんけんぽん!」のときにロックなハンドサインをしてしまう人が必ずいるのであります。
それはもーTVだと指先にモザイクかかるような手つきを!
なぜなら生き様がロックだからであります!
そーゆー人はそこで敗退でありますが、jojoっぽくいうと「だが……マヌケは見つかったようだな!」であります。



 特設ステージを中心にして開催されているお祭りは、大盛り上がりの様相だった。
 飛び入り参加も許されているステージでは、腕に自信のあるパフォーマーたちが次々と技を披露し、観客たちもそれを眺めて笑顔を見せている。
『さぁ、続きましては……期待の新人アイドルの登場です!』
 MCの女性が元気な声で観客の注目を集める。続けてMCはステージ袖に手をかざして呼びかける。
『どうぞー!!』
 華やかな音楽とともに、一人の少女がステージに現れた。
 ゴスロリと車掌制服を組み合わせたような衣装に、流れる長い黒髪。くりっとした大きな瞳をパチンとウィンクさせて、少女は『キラッ☆』としたポーズをとる。
「みなさん、よろしくであります!!」
 そう言って挨拶をしたアイドルの名は六連星・輝夜(機関車の精・f04075)。彼女の周囲にはキラキラが舞い散り、観客たちを喜ばせた。
「ここからは観客の皆さんにも参加していただくでありますよ!!」
 そう言うと、輝夜が右手を高く掲げる。
「勝ち抜きチェキ争奪! じゃんけん大会を開催するのであります!」
 わっと歓声が沸き上がる。観客達も非常にノリが良い。
「ルールは簡単、わたくしにじゃんけんで勝った人だけが生き残り、最後の一人になるまで続けるのであります! 公式オフの最後にやってるようなやつであります!」
 公式オフというのが何かは分からないが、観客は何となくノリで『イェーイ!』と湧き上がって理宇。
 しかし、果たしてこれで岩田を見つけるのだろうか?
「安心するであります」
 輝夜が自信たっぷりに笑う。そうして、じゃんけん大会の幕は開かれたのであった!

「じゃーんけーん……」
 輝夜がぐぐっと腕を曲げて……。
「ぽん!」
 勢いよく突き上げた!
 観客達も一斉に手を天に翳した。それを輝夜がざっと見回してゆく。
 しかし、じゃんけんをしたはいいが、岩田らしき姿は見えない。それどころか、観客が手を上げたことで、顔が隠れてしまう。やはり、この方法で岩田を見つけるのは難しかったのではないか?
 見えるのは、掲げられた手……グー、チョキ、パーの手ばかり。
「それ以外の手を出した人はもちろん敗退なのであります!」
 輝夜が一点を見つめ、指をさしながら告げる。
「だが……マヌケは見つかったようだな! であります!」
「はっ!!?」
 輝夜が指さした先。掲げられた手はグーでも、チョキでも、パーでもない。
 モザイクがかかるタイプのハンドサインである!
 そう、輝夜はじゃんけん大会をすることで、ロック魂を持つ、やっちゃいけないハンドサインをついついやってしまう男を炙り出したのだ。
 その、やっちゃった男こそ、岩田光男、今回のターゲットだ!
「見つけたであります!」
「チッ!!」
 人ごみに紛れ、逃げてゆく岩田。
 だが、何人もの猟兵に発見されたその男の逃げ道など、もう僅かしか残されていなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・久遠
拝啓 愛しの我が子らよ
パパこの世界で戦う時、アイドルにならなあかんのやって(遠い目
でもちょっと分かる気ぃするな……岩田さんの気持ち
ボクもロックを愛する者やからね
目立つんはクッソ恥ずいけど、同志のためにも覚悟するしかあれへんかねぇ

まずは岩田さんを探さんとね
ロック魂が燻ってるんなら、やがてライブに引き寄せられるはず
ダメ押しで岩田さんから来てもらおっか
飛び入り参加でUC使いギター演奏、激しいロックからバラードへ繋いで嫌でもボクに視線向けさせる
更に気功法+気配感知でステージ上からライブに似つかわしくない岩田さんの陰の気を探し……
っはは、ギラギラ飢えたええ眼しとるやないか!
ボクとセッションしーましょ?



 賑わいを増すお祭り会場で、遠い目をする男性が一人。
 銀の美しい短髪に細く切れ長の目。彼はそれをコンプレックスと言うが、それはすれ違う人を思わず振り返らせた。
 だが、彼は妻帯者。その名を劉・久遠(迷宮組曲・f44175)といった。

 拝啓 愛しの我が子らよ――。
 パパこの世界で戦う時、アイドルにならなあかんのやって――。

 恥ずかしすぎて涙が出そう。けれど、これも猟兵としての仕事なのである。
「でも、ちょっと分かる気ぃするな……岩田さんの気持ち」
 舞台袖、ケースから出したギターを調律しながら、久遠はステージの上を見やる。ギラギラとしたライトで照らされた|そこ《・・》は何もかもが眩しくて、そこに立つ自分の未来さえ輝かしく思わせるのだろう。
「岩田さんには、それが心に焼きついとるんやろなぁ」
 目立つのは恥ずかしい。けれど久遠はそんな『同志』のために覚悟を決めて歩きだす。

『続けて、飛び入りロックミュージシャンの登場です!!』
 MCの女性の声が会場内に響いた。
 人ごみの中で、男の耳がピクリ、と揺れた。

 ワァッとした歓声に受け止められて、久遠がライトの下に躍り出る。
 ぎゅぃん、とギターを鳴らして、にぃっと笑う。
「さぁさぁ、今日も楽しんでいっとくれやす!」
 そう言い、久遠が弾き始めたのは激しいロック。
 魂を揺さぶるようなビートに乗せた熱いリフは、スピーカーの大音響とともに観客を熱狂させてゆく。
(「さぁて……」)
 曲を終え、久遠は気配を探る。この音が彼に届くと信じて観客席を見渡した。
 多くの視線が久遠に集まっている。その中から僅かに向けられた感情を感じ取る。それは――。

(「――怒り」)

 久遠がギターを鳴らす。これまでの激しいリズムから一転、ゆったり、静かに、感情を乗せて。久遠はバラードを奏で始める。
 直後、ぐさりと刺すような感情に、久遠が楽し気に口角を上げた。
「っはは、ギラギラしたええ眼しとるやないか!」
 ジャァン、とギターを鳴らしながら、久遠がステージを降りる。人ごみをかき分け、その男――岩田・光男のもとへ。
「……!」
 久遠が向かって来ることに気が付いた岩田が背を向ける。だが、その背には既に、彼を追ってきた猟兵たちの姿があった。
「うっ……く……!」
 焦る岩田に、久遠が告げた。
「ボクとセッションしーましょ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『オブリビオン・ロッカー』

POW   :    反逆の薔薇
【エレキギター】で楽曲「【反逆の薔薇】」を奏で、曲に込められた【社会への憎悪】に圧倒された対象全員にダメージと畏怖を与える。
SPD   :    闇のイバラ
【演奏によって具現化した「闇のイバラ」】を最大でレベルmまで伸ばして対象1体を捕縛し、【骸の海】による汚染を与え続ける。
WIZ   :    バイオレンス・ロック
【エレキギターの激しい演奏】で【闇色の爆発】を発生させ、レベルm半径内の対象全てを攻撃する。連続で使うたび命中力と攻撃速度が上昇。

イラスト:nitaka

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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「お、俺に近づくんじゃない!!」
 スーツ姿の男、岩田が激昂した。
「畜生、畜生、畜生!!」
 岩田の心の奥から、骸の海が溢れ出した。
「うぉああああああっ!!」
 溢れた怒りのエネルギーが、骸の海を伝って観客へと伝播してゆく。

 ステージが生まれれば、観客達もオブリビオンと化し、襲い掛かってくるだろう。
 彼らは、岩田が本来なりたかった姿を模したもの……オブリビオン・ロッカーとなる。

 さぁ、今こそ流れ星に願いを込めて「アイドルステージ」を生み出す時!
 オブリビオン化してしまう彼らを、アイドルの力で止めるのだ!
六連星・輝夜
キラキラのカードを手に、流れ星に祈ってスターライト☆アイドルにコーデチェンジであります!
ちなみにこのカードは気分をアゲるためで、ないとアイドルになれないとかじゃないのであります。
今日のコーデはスターライト☆ギャラクシーコーデ!
濃紺に星を散りばめた銀河柄のドレスコーデでありますよ!(アトリエで発注済)
カモン、アイドルステージ! 超銀河シンデレラ輝夜ちゃんのキラキラのライブスタートであります!
じゃんけん大会に集まってくれた人たち応援ヨロシクでありますよ!
知らない人には「ご存知ないのですか!?」って教えてあげてほしいのであります。
「キラッ⭐︎」のところで皆でポーズしてキラキラを降らすのであります!



 骸の海の溢れる気配。オブリビオンの現れる前兆だ。
 いまこそアイドル・オンステージ! 輝夜はキラキラのカードを掲げて叫ぶ。
「スターライト☆アイドルチェーンジであります!」
 その声に応じて、空からキラキラの流れ星が降り注いだ。
 すると、輝夜の足元から星空へと続く螺旋階段が現れる。
 それを笑顔で駆け上れば、流れ星が輝夜を追うように舞い踊る。流れ星のキラキラの軌跡は輝夜にくるくると巻き付き、、輝夜の身体を包んでゆく。
 パンっ、とスカートが弾けて、輝夜の衣装が濃紺のワンピースに変わってゆく。
 そこにしゃらんと流れ星がひと撫ですると、まるで銀河のようにキラキラと美しいラメが入る。
 続けて足元、腕、髪飾り……と衣装を変えてゆき、階段を駆け上ったそのてっぺんで、胸元にリボンが出来上がる。
 手にマイクを持って、輝夜はパチンとウィンクする。
「今日のコーデはスターライト☆ギャラクシーコーデ!」
 超銀河シンデレラの誕生であった。
 ちなみ輝夜が掲げたキラキラカード、別になんてことないただのキラカードなんだとか。

「カモン、アイドルステージ!」
 その呼びかけに応じて、流れ星が大地に落ちた。その中心から一気に輝きが広がって、色とりどりのサイリウムに見守られたアイドルステージが誕生した。
 輝夜はその中心に駆け寄って、手を振りながら元気に告げる
「超銀河シンデレラ輝夜ちゃんのキラキラのライブスタートであります!」
 わぁっと観客から歓声が上がる。特に先ほどまで輝夜とじゃんけん大会をしていた人々の無意識が、彼女を応援してくれているようだ。
 だが、まだ彼女への応援が足りない人達の存在を感じ取る。
「皆さん! 知らない人には教えてあげてほしいのであります!」
 観客達に向かって、輝夜が懇願する。すると徐々に、応援の輪が広がってゆく。
「ハッ!!」
 そんな輝夜を尻目に、オブリビオンとして具現化したオブリビオン・ロッカーたちがジャガジャガと鋭い音を立て始めた。
「アイドルなんてくだらねーぜ! このステージは俺達のもんだ!!」
 反骨心旺盛なギターリフは闇のイバラを具現化させ、びゅんとしならせる。
「来たであります!!」
 輝夜がイバラを避けながら、観客達に更なる応援を求める!
「応援って言ってもなぁ……」
 サイリウムとなった観客(あくまで無意識です)が首(?)を傾げた。
 すると、その隣にいるサイリウム(こっちも無意識です)が首を突っ込んでくる。
「ご存じないのですか!?」
「えぇっ……!?」
 観客席でそんな応酬が繰り広げられる中、闇のイバラは輝夜を追い詰めてゆく。
 それでも笑顔の輝夜が、大きく手を掲げた。
「さぁー、皆さんご一緒に!」
 観客達が一斉にサイリウムを天高く伸ばす。
 そして、輝夜を中心にして、皆で一斉に同じポーズをとった。
「「「「「キラッ☆」」」」
 直後、天から無数のキラキラが降り注ぐ!!
「な、なにぃぃぃ~~っ!」
 ステージを埋め尽くすほどのキラキラが、闇のイバラごとオブリビオンたちを圧し潰したのだ。
「ろ、ロックだぜぇー!!」
 押しつぶされたオブリビオンたちが叫びながらキラキラの中に消えてゆく。
 目覚めたときには、きっと骸の海の支配から解放されていることだろう。
 だが、敵はまだ残っている。観客に向けて、輝夜が再び場を盛り上げる。
「さぁ、まだまだライブは続くでありますよー!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

あれが岩田の心の闇!?
…あーんな派手な恰好とメイクしなくてもいいのに!
あぁそうだ!願うんだったなお星様に!アイドルアイドルアイドル~!

よーしアイドルになったぞ!アイドルで騎士のベルト・ラムバルドが相手だ!行くぞ!

…んな~!煩ーい!私の存在感でもさすがに大音量の音には敵わん!
社会が憎いだと~個人の怨みをここまで広げやがって!
心が痛いけど…社会への反逆の薔薇は摘んでやるぞ!

レイピア振るいUC発動!
サイバーザナドゥから武装警官達を召喚し集団戦術と大軍指揮で
彼等を鼓舞して派手なロッカー連中を圧制して排除してやる!

見よ諸君!酷い事するとこんな痛い目にあっちゃうぞ!
くそ…圧制者になっちゃった…



 キラキラと舞い散る流れ星。
 猟兵達の願いによってアイドルステージが生まれるのに伴って、骸の海に影響を受けた人々がオブリビオンと化してゆく。
「あれが岩田の心の闇!?」
 ベルトはその姿に驚愕した。派手でパンクなゴリゴリのロックシンガーになってしまったからである。
「あーんな派手な恰好とメイクしなくてもいいのに!」
 というが、このアイドルステージでは誰もがアイドルにならなくてはならない。
「あぁそうだ! 願うんだったなお星様に!」
 両手を組んで、ベルトはざっくり祈る。
「アイドルアイドルアイドル~~!」
 ぱぁっとベルトの衣装が光り輝いて、流れ星が周囲を回った。
 ブーツが、ジャケットが、一つ一つ丁寧に、変身バンクの如くクローズアップされて、星が弾けるのと同時にベルトの服装はアイドルらしいキラキラしたものになってゆく。
 気が付けば、ベルトはすっかり華やかな姿へと変わっていたのであった。
「よーしアイドルになったぞ!」
 バシッとポーズも決めつつ、ベルトはレイピアをオブリビオン・ロッカーたちに向ける。
「アイドルで騎士のベルト・ラムバルドが相手だ! 行くぞ!」
 そう言ってベルトが駆け出した瞬間。オブリビオン・ロッカー達が一斉にギターを掻き鳴らし始めた。
「行くぜェ、テメェに聴かせるナンバーは『反逆の薔薇』!」
 ギュィィィイイン、とギターの音が響き渡る。その音に、ベルトは思わず耳を塞いだ。
「んなぁ~~~!! うるさーい!!」
 大人数でのギター演奏だ。しかも社会への反逆をテーマとしている楽曲はぎゅいぎゅいぎゃいぎゃい、かなり破天荒なのだ。
「社会が憎いだと~! 個人の怨みをここまで広げやがって!」
 意を決し、ベルトが再びレイピアを構える。
「心が痛いけど……社会への反逆の薔薇は摘んでやるぞ!」
 ばっレイピアの切っ先を天に掲げて、叫ぶ。
「武装警察の皆さ~ん! 出番ですよ~~!!」
 その呼びかけに応じて、サイバーザナドゥの武装警官たちが、アイドルステージに現れた!
 きらっきらのステージに無骨な体制側の武装警官達。そこに反逆の薔薇を歌うシンガーなど、完全にディストピアの一幕である。
「ご苦労様です!」
 ベルトはビシッと敬礼して、レイピアをオブリビオン・シンガー達に振り下ろす。
「よーし正義は我にあり! 反逆を企てる逆賊はそこだ~~!」
「へ、へへっ! そんなので俺らのロック魂が……ぎゃぁああっ!!」
 多勢に無勢、オブリビオン・ロックシンガーはいともたやすく制圧されてしまう。
 そんな様子に、ベルトはワハハと大きく笑う。
「見よ諸君! 酷いことするとこんな痛い目にあっちゃうぞ!」
 そうやって、オブリビオン・シンガー達を威圧する。しかしベルトは内心悔しく思っていた。
(「くそ……圧制者になっちゃった……」)
 現状の立ち位置は、このあと手痛い反逆に遭う側である。
 そうならないか、ちょっと心配なベルトなのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

劉・久遠
おっしゃ対バンやったろやないの
湧き上がる羞恥を根性で捻じ伏せ流れ星サンにお願い
今からボクはロック系アイドル今からボク(己に言い聞かせ

まずはギターバトルでファンを沸かせよか
楽器演奏+ダンス+パフォーマンス
ロックを熱演しつつ、声援には視線と共に軽いステップや回転で応えたり
縦横無尽に走り回りながら「もっとノってきぃや」とファンを煽ったり

敵のUCは負けん気+シャウトで振り解く
社会の理不尽に反逆するロッカーが他人を縛るん?
それはロックやのうてただの暴力や、はき違えんな!
竜脈使いで強化したUCを展開し、その雷鳴すら演奏に取り入れ
ファンに「SPARK!」と掛け声させUC攻撃
轟音と稲光でラストは派手に飾ろか!



 流れ星が落ちて、きらきらと輝くアイドル☆ステージが出現した。同時に、骸の海に侵された人々がオブリビオンと化す。
 様々な制約があるせいか、この世界のオブリビオン達は強い。だからこそ、猟兵達も彼らと対等に渡り合える『アイドル』に変身しなくてはならない!
「しゃ、しゃ~ない……!」
 ここまで来た以上、久遠も覚悟を決める。だから本当はここでの戦いは避けたかったのだが……顔から火が出そうになるのをこらえて、流れ星に願う。
 しゃらん、と流れ星が久遠を囲み、衣装を変えてゆく。豪奢できらめく衣装……ではない。黒をベースに、シルバーの装飾が輝く『カッコいい』衣装となった。
 変身を終えると、ステージを囲むサイリウムが歓声とともに激しく揺れた。きっと彼らはさっきまで久遠達のステージを見ていた観客達であろうか。
 そうなればより一層羞恥心は増してしまう。が。
「今からボクはロック系アイドル今からボクはロック系アイドル今からボク……」
 久遠は何度も何度も自分に言い聞かせて、縮こまりそうになる身体を根性で反りかえらせる。
 そしてギターを構えれば、突如現れたスタンドマイクを握って叫ぶ。
「おっしゃ対バンやったろやないの!」
「おぉおおっ!!」
 岩田から溢れた骸の海に侵されて発生したオブリビオン・ロッカー達が、ギターをぎゅぃいいんと鳴らして返答すると、ドラマーがスティックを打つ。
 直後、まるで爆発が起こったかのような音の嵐がステージ上で巻き起こった。
 大歓声が久遠達を包む。
「ひゅぅ!」
 オブリビオン・ロッカー達から飛び散る汗がライトに反射して煌めく。
「ええやんええやん」
 なるほど、岩田はこの光景を望んでいたのだ。彼らは岩田ではないが、だからこそしがらみもコンプレックスもなく、ひたすらに音楽を楽しめるのかもしれない。
 そんな、音楽での対話が続いてゆく。そんな彼らとともに久遠は楽しげに音を掻き鳴らしながら、ステージ前へと躍り出ると、声援に応えるように視線を向けてステップを踏む。
「もっとノッてきぃや」
 走り回りながら、久遠が観客を煽る。サイリウムはその都度激しく揺れて、久遠の力になってゆく。

 そして、一回目のセッションが終了した。割れんばかりの拍手とともに、オブリビオン・ロッカーはにやっと笑う。
「それじゃあこっからのナンバーは……!」
「おぅ、来ぃや」
 ギターの構えは解かずに、久遠が挑発する。
 そう、彼らは猟兵とオブリビオン。再び演奏が始まると、ステージより『闇のイバラ』がせりあがってくる!
「いくぜぇっ!!」
 激しい演奏とともに、闇のイバラがしなり、久遠へと伸びる。
 だが、久遠もギターを鳴らしながらのシャウトでそれを退けた。
「社会の理不尽に反逆するロッカーが他人を縛るん?」
「うっ……!」
「それはロックやのうてただの暴力や、はき違えんな!」
 怯むオブリビオン・ロッカー。今度はこちらの番と、久遠は周囲に狛犬たちを呼び寄せる。
 闇のイバラを委縮させるような、激しい雷が鳴り響く。観客達の応援が、大地の龍脈と呼応して強大な力を呼び、ギターの音色と野性的な雷鳴が心を揺さぶるハーモニーを奏でる。
「ラストは派手に飾ろか!」
 久遠が観客に向かって大きく手を上げた。
 観客達も一斉にサイリウムを振り上げる。それに呼応するように、上空でゴロゴロとした音が鳴り響く。
「SPARK!!」
 またたく閃光とともに、轟音が鳴り響く!
 闇のイバラ、その根源たる骸の海を飲み込んで、激しい稲光がステージ全体に広がってゆく。
「うぉおおおおおおっ!!」
 オブリビオン・ロッカーが崩れ落ちた。闇のイバラとともに、体内で広がった骸の海が打ち払われたのだ。
 ほんの一瞬の沈黙、そして……怒涛のような大歓声が広がった。

 ステージから消えてゆくオブリビオン・ロッカー達はみな、どこか清々しい顔をしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

熊ヶ谷・咲幸
連携アドリブお任せ⭐︎

「その心のトゲトゲ、あたしが何とかしてみせます!」
流れ星に願いを込め、変身コンパクトをこじ開け変身!
「掴め、希望の元気星!チアフ……うわった!」
衣装のリボンが絡まって転倒。叛逆の薔薇にさらされるも
「うまくいかない事があるの、私にも分かるよ。だから、自分の悪意に負けないで!」
リボンを解いたら、【君だけの⭐︎アイドル】で歌を歌いながら徐々に近づいてゆく。まだアイドルとして技術もないので、気合と根性で圧倒されないよう気合いで突き進む
「今は、あたしを見て!」
至近距離まで詰め寄ったら、【希望の力】【怪力】で悪意の象徴っぽい闇のイバラを引き抜き、その心を【こじ開け】る



「まだまだ俺達はやれるぜぇ!!」
 岩田の骸の海に侵されたオブリビオン・ロッカー達が、それぞれの楽器を奏で始めた。
 ズシンと響くドラム、パワフルなベースに鋭いエレキギターがステージを支配する。
 それはまさしくバイオレンス・ロック。
 破壊的なメロディが、闇の力を増幅させてゆく。

 ――ばんっ!

 その時、ステージの端にスポットライトが照らされた。
「その心のトゲトゲ、あたしが何とかしてみせます!」
 どどんと現れたのは、どことなく素朴な印象のある少女であった。しかしその表情は決意と使命感に満ちていて、力強い笑顔を見せていた。
 彼女の名は熊ヶ谷・咲幸(チアフル☆クレッシェンド・f45195)。彼女の強い思いが流れ星を呼び寄せ、スポットライトを辿るように咲幸に舞い降りる。
 しゃらんと星屑が飛び散る中で、咲幸がおもむろにハート形のコンパクトを取り出した。星々の輝きに反射してキラキラときらめくコンパクトの蓋を、咲幸が掴む。
「ふんっぬ」
 コンパクトを力づくでこじ開けると、中の鏡からリボンが溢れ出す!
 リボンは咲幸の全身にくるくると巻き付いて、彼女をドレスアップしてゆく。
 足に巻き付けばブーツに、腰に巻き付けばフリルスカートに、次々と衣装を変えていった後、開いたコンパクトは腰におさまる。

 そうして現れたその姿はまさしくアイドル。咲幸はにこっと笑って宣言した。
「掴め、希望の元気星! チアフ……うわった!」
 べしーん。衣装のリボンが思い切り絡まって、咲幸が盛大にすっ転んだ。もちろんスポットライトはそんな咲幸をも思い切り照らしていた。
 ステージに突っ伏したままの咲幸。その様子に、周囲のギャラリーはオロオロと戸惑う雰囲気を見せていると、その隙を逃すまいと、オブリビオン・ロッカー達はギターを再び掻き鳴らす。
「ははっ! テメェら呆けてるんじゃねぇぞ! いくぜ、反逆の薔薇!」
 ぎゅぅぅーん、とギターが唸る。激しいビートが社会への憎悪を刺激し、観客達を圧倒する。
「……うまくいかない事があるの、私にもわかるよ」
 咲幸が涙目で起き上がった。鼻が赤くなっているのは、きっとステージの床に顔面を強かに打ち付けたからだろう。
 それでもその瞳は上を向き、決して諦めていない。
 咲幸はリボンを解いて立ち上がると、マイクを手にする。
「だから……自分の悪意に負けないで!!」
 そう言いながら、咲幸が元気に歌い出した。そのナンバーは『君だけの☆アイドル』。
 オブリビオン・ロッカー達の演奏で音楽は無い。それでも咲幸は大きな声で歌いながら、一歩一歩近付いてゆく。
「……っ!?」
 オブリビオン・ロッカーが驚いた顔をする。自らが弾いているギターの音が、歌に合わせて軽快な音色に変わり始めていたのだ。
「……あの歌のせいか!?」
 耳を震わせる歌声が、リズムが、場を支配し始めていたのだ。
 歌も踊りもまだまだ粗削り。ステップを踏めば何故か足元が陥没してよろけるし、何度解いても絡まってくるリボンで二、三度は転んでいる。
 表情だって、今にも泣き出しそうだというのに、その歌だけは、心にズキュンと響いている。
「う、おおおっ」
 軽やかなリズムに明るいメロディ。反逆の薔薇はいつしか、咲幸の歌う曲へのアドリブセッションと変わっていた。
 そして気付けば咲幸は目の前にいた。
「今は、あたしを見て!」
 ステージから生えていた闇のイバラを引きちぎり、咲幸がオブリビオン・ロッカーへと指先を向けた。
「あ、あぁあっ……!!」
 もはや咲幸しか視界に入らない。そんな咲幸から発せられる希望の力が、彼らの心を侵した骸の海を浄化してゆく。

 じゃぁーん……。ステージ上に余韻が響く。
 奏でられた音楽は反逆なんかとは程遠い、希望の歌となっていた。

「いい、セッションだったぜ……」
 そう言い残して消えてゆくオブリビオン・ロッカー達。
 観客達は、盛大な歓声で咲幸を讃えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ブチギレサラリーマン』

POW   :    ブチギレブラッドレイジ
自身に【無数のサラリーマンの怒り】を憑依させ、戦闘力と近接攻撃射程を3倍にする。ただし毎秒血液を消費し、枯渇すると死ぬ。
SPD   :    怒りの超連続パンチ
【真っ赤に染まった己の肉体】を最大駆動させ、【超連打拳】で対象の【顔面】を攻撃する。既にダメージを受けている対象には威力2倍。
WIZ   :    憤怒の化身
全身を【ドス黒いオーラ】で覆い、自身の【敵への怒り】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

イラスト:モツ煮缶

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「……ふん、いいセッションだったじゃねェか」
 扱う者のいなくなった楽器の間を抜けて、ステージ中央に歩み出る男がいた。
 その男スーツ姿で、ステージにはやや似つかわしくない姿に見える。
 彼こそが岩田・光男。オブリビオンになってもなお、その姿はサラリーマンの時の面影を残している。
「だがよ、これでも俺達は舞台に立ち続けることが出来なかった」
 消えていったオブリビオン・ロッカー達は、岩田の願望に大きく影響された存在だった。
 それだからか、彼らの演奏も往年の岩田の演奏に似ていて、だからこそ岩田は彼らの演奏が憎らしく思えた。
「腹が立つぜ……!!」
 ぼむっ、と肩の筋肉が肥大化して、腕が露わになる。
「諦めちまった……この俺によぉ!」
 肌がまるで鬼のように赤く染まってゆく。岩田の感情が怒りに染まってゆく。
「この怒りを! どこにやったらいい!! テメェか、テメェか、テメェか!!」
 猟兵達を睨んで叫ぶ。それでも骸の海に増幅された怒りはとどまるところなどなく、もはや、何に怒っているのかすら曖昧になっているのだろう。
「畜生! テメェらまとめてぶっ飛ばしてやる!!」
 岩田が猟兵達へと襲い掛かる。

 アイドルステージのスポットライトは、岩田と猟兵達を照らしていた。
 さぁ、最終決戦だ。岩田を救ってやれるのは、アイドルだけだ!
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

…岩田がムキムキに!?完全に頭に血ぃ上ってやがる!
我が騎士道がこんな夢破れた男を救えるか?いや救って魅せる!
行くぞ!ベルト・ラムバルドは騎士道の咲ける薔薇!

…痛い…げぶ…
キャバリアさえあれば勝てるのに…肉弾戦じゃ無理よ流石に…痛…ぐすん
…そんなに暴れて目立ちたいか~くそ~こうなりゃあ破れかぶれだ!喧嘩祭りじゃあ!

UCでサムライエンパイアっ子達を召喚!集団戦術で岩田と喧嘩合戦だ!
私は鼓舞して観客達を巻き込んで一斉に盛り上がってやる!
最後には岩田を神輿載せて担いで堂々と観客席横断じゃ~!

岩田!神輿が舞台だ!ステージの主役は今は貴様だ!ギターを響かせろ!観客を沸かせろー!怒りぶっ飛ばせ!



「……岩田がムキムキに!? 完全に頭に血ぃ上ってやがる!」
 岩田の姿を見たベルトが驚愕した。スーツを破って露出した筋肉は、どこか歪で異常に見えた。
 それが今の岩田を突き動かす『怒り』の形なのだろう。
「我が騎士道がこんな夢破れた男を救えるか……?」
 ベルトが僅かに悩む。だがすぐにキリッとした目つきで岩田を見つめて誓う。
「いや、救って魅せる!!」
 ばぁっ、とマントを翻し、ベルトが叫ぶ。
「行くぞ! ベルト・ラムバルドは騎士道の咲ける薔薇!!」
 うおおお、と雄叫びを上げてベルトが駆けた。

 そして。
「……痛い……げぶ……」
 数秒後、ベルトの顔にはボコボコに腫れあがっていた。
 真っ赤に染まった岩田の肉体から繰り出された超連打拳が、思いっきりベルトを打ち据えたのである。
 ベルトはクロムキャバリアの出身のキャバリア乗り。キャバリアに乗ってない時の戦闘力はまぁ一般的なのだ。
「肉弾戦じゃ無理よ流石に……」
 ぐすんと涙を零して、ぼこぼこになった顔をさする。だが、痛みがある程度麻痺してくると、今度は徐々に闘志……というか怒りが沸き上がってきた。
「そんなに暴れて目立ちたいか!」
 ごごごとベルトの背中から炎が上がる。そして拳を突き上げた。
「くそ~、こうなりゃあ破れかぶれだ!」
 どどん! とステージを強く踏みしめ、叫ぶ。
「喧嘩祭りじゃあ!」
 すると、突如ステージセットにいくつもの提灯がぶら下がりだした!
 どこからか軽い太鼓の音とともに、ぴーひゃららと甲高い篠笛の音が響き、チャカチャカ、チキチキと鉦鼓が盛り上げる。
 そして、スモークとともにせり上がってくるのは、褌一丁に半纏を羽織った強面の男達!
「うわー!? お祭り好きのサムライエンパイアっ子達が勝手に来た!?」
 サムライエンパイアっ子達は皆腕を組んでにやりと笑う。
「こうなりゃ自棄よ!」
 ベルトの足元のステージがせり上がって櫓になる。その上に置かれていた巨大な団扇を握ると、軍配代わりにそれを振り回す。
「喧嘩合戦だぁ!」
「おおおおおっ!!」
 エンパイアっ子達が岩田に向かって一斉に飛び掛かった!
「わっしょい! わっしょい!!」
「う、うおおっ!」
 流石の岩田の連続パンチも、屈強で大量のエンパイアっ子達が相手では歯が立たない。あっという間に揉みくちゃにされて、人ごみの中に消える。
 それを櫓の上から確認したベルトは、観客に向かって団扇を振るう。
「よぉーし! 一斉に盛り上がってやる!!」
「上げろー!!」
「おー!!!」
 エンパイアっ子達が掛け声を上げて、岩田を宙に浮き上げる。
 そして岩田が着地したところには……。
「……!!」
 それは、男達の担ぐ神輿の上であった。神輿の屋根にはエレキギターがぶら下がっている。
「岩田!!」
 呆然としている岩田に、ベルトが呼びかける。
「ステージの主役は、今は貴様だ!!」
 大歓声、大音量の掛け声を貫いて、ベルトは声の限り叫んだ。
「ギターを響かせろ! 観客を沸かせろー!!」
 その言葉に、岩田がピクリと震える。たらりと汗が流れ、瞳に炎が宿った。
「うおぉぉぉ!!」
 岩田がギターを握ると、ぎゅぅううんとギターの音を響かせた。
「いけぇぇ! 観客席横断じゃ~~!!!」
 ベルトの指示に、神輿が動き出す。岩田は揺れる神輿の上で器用にバランスを取りながら、想いの丈をギターにぶつけてゆく。
「怒りぶっ飛ばせ!!」
「おおおおおおおお!!!!」
 サイリウムが激しく揺れる。激しい音楽がステージ全体を揺らす。
 その音、その魂が岩田の心の奥にまで響き渡る。骸の海が震えて小さくなってゆく。
「まだまだ、叫んでやらぁぁ!!」
 岩田がそう宣言すると、観客は大歓声でそれを迎えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

六連星・輝夜
アイドルグループ3OUT'Sを結成してラスボス戦であります!
空飛ぶ機関車がステージに降りてきて走り去った後に、お揃いのチームコーデで立っている演出で登場。
今日のコーデはスターライト☆ギャラクシーアイオライトコーデ!
アイオライトは羅針盤に使われた伝説から進むべき道を示すといわれる濃紺の石であります!
アイドルのラスボス戦は、チームで初期OP曲を歌うのが最高にアガる展開であります!
みんな心にキラキラを持っているのであります! 輝きは消えないのであります!
最後にキラキラのカードをパキッと折って半分を岩田さんに渡すのであります。
トモダチの証であります。
みんなトモダチ! みんなアイドルであります!


熊ヶ谷・咲幸
【3OUT'S】
「岩田さんを助けるため、分かりました!協力します!」
コーデチェンジで3人でお揃いのコーデでまとまるよ。お揃いコーデなら、あたしは赤っぽいのでスターライト☆ギャラクシーガーネットコーデ!輝夜ちゃんとお揃いのデザインに、情熱の赤を込めたコーデだよ!
「それじゃ、行くよー!」
他のみんなと一緒に歌うよ。ユニット曲だし、辛いなら一人で苦しまないでみんなで乗り越えようって感じの歌を
「岩田さんに共感してオブリビオン化した人達だっている。岩田さんだけの悩みじゃないんだよ!」
最後に【希望の力】を込めた【チアフル⭐︎エンブレイス】で締め上げるよ
「骸の海よ、消え去れぇっ!!」
最後にチケット交換です


ハロ・シエラ
【3OUT'S】
ステージにコーデ……アイドルの世界の戦いに馴染みはありませんが、ダンスや歌唱なら少しは心得があります。
途中参戦ですが、お二人を真似しながらやってみましょう。
初期OPなる歌も学習力で頑張って覚えます!
衣装は輝夜さんとお揃いで黒のもの。 皆さんに倣ってスターライト☆ギャラクシーオニキスコーデ、とでも呼びましょうか。
本物のアイドルについていけるれば良いですが……やってみせます!

無責任かも知れませんが、まだ諦める必要は無いと思います。
その怒りのエネルギーはロックにぶつけてみては?
そうすればきっと、あなたもアイドルです!
チケットは……何だかよく分かりませんが、良ければ私も差し上げますよ。



 ステージは最高潮に盛り上がり始めていた。
 猟兵達の趣向を凝らしたステージは岩田の心を溶かし、観客をおおいに沸かせた。
 だが、未だに岩田の心から溢れた骸の海は収まらない。もっともっとパフォーマンスが必要だ。

 ――そんな時であった。

 ぼぉーっ……っと長い汽笛の音がステージに響き渡った。
 見上げれば空は星空で、まるで星屑でできた線路の上を、機関車が走っている。
 線路は螺旋を描いてステージへと続き、機関車が車輪の重厚な音ととも降り立つ。
 機関車の停車とともに、ぶわっと一際盛大なスモークがステージを包んだ。そして再び汽笛が鳴ると、機関車はゆっくりと空へと帰ってゆく。

 そのスモークに包まれたステージの中心を、三つのスポットライトが照らした。
 スモークの奥に、三つの影が照らされる。
「行くであります!!」
 その掛け声とともに、スモークが晴れてゆく。奥から現れたのは……。

 アイオライトの六連星・輝夜!
 熊ヶ谷・咲幸!
 そして、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)である!

 彼女らは3人組アイドルユニット【3OUT'S】。 お揃いのアイドルコーデに身を包み、ビシッとポーズを取った。
「今日のコーデはスターライト☆ギャラクシーアイオライトコーデ!」
 そう言って笑った輝夜がピシッと決める。
 輝夜のコーデはアイオライト。羅針盤に使われたという伝説から、進むべき道を示すとされる濃紺色に染まっている。
「あたしはスターライト☆ギャラクシーガーネットコーデ!」
 咲幸は彼女のパーソナルカラーでもある、情熱の赤を込めた色合いだ。笑顔とともにファンサをしようと改めてポーズをとると。
「……わぁあっ!?」
 かくっと足を踏み外して転びかける。
「咲幸さん、大丈夫ですか?」
 そんな咲幸を支えたのはハロ。彼女のコーデは黒に染め上げたクールな色合いだ。
「皆さんに倣ってスターライト☆ギャラクシーオニキスコーデ、とでも呼びましょうか」
 ハロは今回の戦いにはこれが初参戦。アイドルとして戦う経験は馴染みがない。
 だが、ダンスや歌唱になら多少の心得がある、それは自信にも繋がって、二人にも引けを取らないアイドルオーラを漂わせていた。
「ありがとう、ハロさん」
 助け起こされた咲幸は申し訳なさそうにしつつも、すぐに観客席に向かって笑顔を向ける。
「それじゃ、行くよー!」
 咲幸の呼びかけに、輝夜が続く。
「アイドルのラスボス戦といったら、これなのであります!!」
 じゃぁーん! と軽快なイントロとともに無数のスポットライトがキラキラ輝く。
 これは世にいう『初期OP曲』だ!
「うぉっ!?」
 突如、岩田にも一筋のスポットライトが当てられた。
「眩しい……!!」
 そう呟いた後、岩田が自嘲気味に笑い、そして怒りを込めて叫ぶ。
「この眩しさに俺達は耐えられなかったんだよ! 輝けなかったんだよぉ!」
 そんな叫びに、輝夜は歌いながら首を振る。
「みんな心にキラキラを持っているのであります! 輝きは消えないのであります!」
「うるさぁぁい!!」
 岩田が駆ける。拳を握りしめ、輝夜の顔面目掛けて振りかぶる。
「だめっ!!」
 それを止めたのは咲幸であった。持ち前の怪力で連撃を受け止め、まっすぐ岩田を見つめて言う。
「岩田さんに共感してオブリビオン化した人だっている。岩田さんだけの悩みじゃないんだよ!」
 そう叫びながら、咲幸がマイクを手に歌う。
「乗り越えよう、みんなで一緒に――!」
「ぐぁあっ!!」
 輝きが、歌声が岩田の心を浄化する。だが、それでも骸の海によって増幅された怒りは根深く、岩田の背中からどす黒いオーラが沸き上がる。
「イラつく……イラつくんだよ! 乗り越えろだぁ!? そうやって簡単に……!」
「無責任かもしれませんが、まだ諦める必要はないと思います」
 見様見真似ながらも綺麗なステップを踏みながら、ハロが言葉を遮った。
 手にはギターが握られていて、ハロはそれを岩田に差し出す。
「その怒りのエネルギーはロックにぶつけてみては?」
「……!」
 岩田が思わず手を出し、ギターを受け取った。
「そうすればきっと、あなたもアイドルです! 諦めないで!!」
「……アイドル……!!」
 スピーカーから流れる曲に合わせて、岩田がギターを奏でる。
 即興ながら、曲によく合ったメロディーが紡がれてゆく。

 キラキラで、眩しくて。若くて希望に満ち溢れて。
 諦めず、手を取り合い、顔を上げて――。

 ありふれた歌だが、弾けば弾くだけ元気が沸き上がる。
 ステージを見守る観客に目を向ければ、サイリウムは大きく揺れて大いに盛り上がっているのがわかる。

「……そうか、これが……!」
 骸の海の力が弱まった。三人は顔を見合わせ、頷きあう。
「貴方の骸の海、あたしが浄化します!」
 咲幸が岩田へと駆ける。
「ぎゃっ」
「ぐぇっ」
 ごつんとおでこ同士がぶつかった。だが咲幸はめげずに岩田をぎゅっと抱きしめる。希望に満ちた光を溢れさせながら、咲幸が力を籠める。
「骸の海よ、消え去れぇぇえっ!!」
「ぎゃあああああっ!!」
 ぼき、ばき、と嫌な音もハロと輝夜の歌にかき消される。
 断末魔の叫びとともに光がステージ全体を包み込んで――弾けた。

「ははは……いいもんを教わったぜ……」
 岩田は笑っていた。
 骸の海の力はまだ彼を侵食する。だがほんの一時、皆の歌の力で彼は正気を取り戻したのだ。
 その瞬間を見逃さず、輝夜がなにかを取り出した。それはキラキラと輝くカード……アイドルの描かれたチケットであった。
 それの上半分くらいをパキッと折って、岩田に差し出す。
「トモダチの証であります!」
「あたしのも!」
 咲幸もカードをパキッとすると、ハロもそれに倣う。
(「何だかよく分かりませんが」)
 と思いつつもこれがトモダチの証であるならば、とパキッと音を立ててチケットを折る。
「……はは、ありがとうな」
 それらのカードを受け取ると、岩田の身体から再び骸の海が溢れ出した。
 再び怒りに身を焦がす岩田。だが、その心の底には、確かに3人の見せた希望という光が刻まれていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

劉・久遠
やっぱりなぁ……
堅実に生きとる昔の仲間に、焦りや裏切りを感じたこともあるかもしれん
思い通りにいかん世の中に苛立ちもしたやろう
けど何より腹立つのは、今もギターに背を向けとる自分自身なんやろな
事情は違うけど、昔よぉ似た感情抱いたことがある
分かるだけに止めてやりたいな

攻撃を残像でいなしながらインカムで観客へMC
憧憬を追い走り続けて、現実を前に諦めたつもりが心の奥底では……皆にも経験あるんやない?
そんな心の闇を吹っ飛ばしてやりたいんよ
最後まで応援宜しゅう!!
スラップ奏法でギター掻き鳴らし
UCと応援の力でロックスターアイドルに変身
嫁さんの大好きな流し目&ウインクでファンサもしとこ
まぁ目の前でやられりゃ顔面ぶん殴りたぁなるやろな……悪いが狙い通りや
岩田さんのUCを見切り+カウンターでギタークラッシュの雨
渾身の力で振り上げ、心の闇ごと打ち砕くよう叩きつける!

理想と現実に折り合いつけるのは難しいな
きっと答えは十人十色
それでもいつか、岩田さんが再びギターを手にするならその時は
ボクとセッションしーましょ♪



 アイドル達の歌や言葉、盛大なパフォーマンスは岩田の心を大いに震わせた。
 だが、もう一歩。あと一歩。それを踏み出す前に骸の海は再び岩田を覆い、オブリビオンとしての力を維持し続けている。

「だから、次がラストナンバーや」

 ――ばん、とステージが暗転した。

 直後、暗闇の中からまるで鼓動のようなギターが響く。ゆっくりと言葉を紡ぐように、一音一音がステージを揺らしてゆく。
 ゆっくりと空から光が差し込むように、ギターを弾くスポットライトが久遠を照らした。
「やっぱりなぁ……」
 久遠が呟いた。その声色にはどこか憐憫の情が感じられた。
 岩田の怒り、叫び。その内に秘める様々な思いを想像しながら、久遠はギターを奏で続ける。

 ――おい、何で練習休んでんだよ。
 ――悪ぃ悪ぃ、バイトが忙しくてよ。

 闇の中、岩田は黙ったまま、眉をピクリと震わせる。
 なおも久遠のギターソロは続き、ゆっくりと岩田に距離を詰めてゆく。

 ――チケット、こんな余ってんのかよ……!
 ――くそ、練習ではあんなにうまくいってたのに!

 岩田は目を細める。久遠の、胸に響くような音を一身に受けて、拳を握った。

 ――正社員になることが決まったんだ。
 ――あのさ、実は彼女がコレでさぁ……。

 岩田の拳が震える。久遠は闇の中に佇む岩田の姿を見つめながら、まるで言葉を投げかけるように弦を弾く。
(「思い通りにいかん世の中に、苛立ちもしたやろう……けど」)
 久遠は目線を、岩田のその奥に向ける。
(「けど何より腹立つのは、今もギターに背を向けとる自分自身なんやろな」)
 久遠も、過去に似たような感情を抱いたことがあるだけに、その気持ちはよく理解できた。
 だから、柄でもない姿になって、恥ずかしい舞台に立ってでも、止めてやりたいと思うのだ。

「う、うおおおおっ!!!」
 岩田が走った。怒りに身を任せ、拳を振りかぶる。
「あかんで、アイドルは顔が命や」
 残像を生み出し、久遠がそれを避ける。そのまま岩田を素通りして、観客へ向け、インカム越しに呼びかける。
「憧憬を追い走り続けて、現実を前に諦めたつもりが心の奥底では……皆にも経験あるんやない?」
 パッと岩田にスポットライトが当てられた。
 岩田はハッとして辺りを見渡すと、久遠が岩田を見つめてにぃっと笑っていた。
「そんな心の闇を吹っ飛ばしてやりたいんよ」
 指先を巧みに操り、ド派手で弾けるような音が鳴り響く。
「最後まで……応援宜しゅう!!」
 その叫びとともに、ステージが一斉に輝き、スピーカーから爆音かのごときメロディが会場を支配した。
 その中心にいるのは勿論久遠。スラップ奏法で刻んだリズムが、場を盛り上げてゆく!
「吼えろLabyrinth Suite!!」
 手にした相棒とともに、久遠の姿が変わってゆく。己の道を貫き続ける演奏が観客の応援と重なり合い、彼をロックスターアイドルへと変身させたのだ。
 最高潮の盛り上がり。そのステージに一人立つ岩田は、久遠の演奏を聴きながら歯ぎしりをしていた。
 超絶技巧……久遠の演奏はまさしく圧倒的だ。しかし、岩田はその技術が生まれた『理由』こそが妬ましく、羨ましかったのだ。

 ――駄目だ、どうしたらあんな風になれるんだ!
 ――もっとこうしたら、ああしたら……。

 そんな記憶がよぎる中、久遠が観客に流し目とウィンクのファンサを披露して、喝采を浴びている。
「ちくしょぉおおっ!!」
 再び久遠目掛けて岩田が走る。先程以上に拳に力を込めて、赤く濁った筋肉が風を切る。
「悪いが狙い通りや」
 ふっ、と軽く身体を捻らせて久遠がその拳を避ける。岩田の拳が狙うのは顔面だ。それさえわかっていれば避けるのは容易い。そして――。
「いくで、岩田さん」
 ギターを振り上げ、久遠が告げる。しならせた身体をバネにして、渾身の力で勢いをつけ。
「心の闇ごと……打ち砕く!」
「う、おぁっ……!!」
 どぉん、という音とともにステージが揺れた。

 ステージに叩きつけられ、倒れ伏す岩田。
 その身体からは何かどす黒いものが流れ出し、霧散していく様子が見て取れた。
「う、うぅ……っ」
 仰向けになって、岩田は涙を流していた。
 その様子に、久遠はギターを担ぎなおしながら言う。
「理想と現実に折り合いをつけるのは難しいな」
 岩田はその言葉を無言で聞いていた。どうすることもできない憧れ、挫折。
 骸の海が消え去ったところで、全て解決出来たとはいえないだろう。だから久遠は付け加える。
「きっと答えは十人十色……それでも」
 そうして、久遠はもう一度岩田を見つめ返す。
「それでもいつか、岩田さんが再びギターを手にするなら、その時は……」
 にかっ笑って、久遠は岩田に手を差し伸べた。
「ボクとセッションしーましょ♪」
 岩田は、久遠の手をがっしりと握って笑うのであった。

「さぁアンコールにはゲストの登場や。その名も――」

 観客席が湧く。照明がギラギラとステージを彩る。
 これは夢かもしれない。目が覚めればきっと今まで通りの日常が始まるんだろう。
 けれど――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年04月09日


挿絵イラスト