星海のナイトクルーズとヤドリギの祝福
2024年のクリスマス、ミニスカサンタ姿のわたしは|愛しの婚約者《アンカー》の腕に抱き抱えられて、都市の輝きが煌めく美しい夜景の空を飛行していた。
いわゆるお姫様抱っこというやつで背中と膝の裏をしっかりと彼の手が支えてくれている。
抱えられている女の子からもぎゅっと抱きつくと抱えやすいらしいので、わたしも彼の首に両手でしっかりと抱きついているところだ。
実際にはそんなこと言われなくても大好きな彼に抱きつくのが大好きなのでわたしは大喜びで彼にぎゅっと抱きついていたことだろう。
そもそもどうしてミニスカサンタ姿でお姫様抱っこされながらクリスマスに夜空をクルージングしているかというと、サイキックハーツ世界が第六猟兵世界の一つになりわたしも|UC《ユーベルコード》で箒飛行ができるようになったことで一緒に空を飛びたいと彼に話したら「ミニスカサンタ姿の千星をお姫様抱っこで」と言われてしまったのだ。
その瞬間、彼にお姫様抱っこされているわたしを想像して……とても嬉しくなってしまったけど、このまま素直に頷くのは恥じらいが足りないかもなんて思って渋ったら、案の定、彼はわたしを抱きしめながらミニスカサンタ姿のわたしは絶対可愛いだの見てみたいだのわたしの心を喜ばせる言葉を囁いてきた。
抱きしめられて逃げられないし甘い声の囁きで心は蕩けていくだけ。まあ逃げる気もないんだけど。
もうこうなるとわたしの陥落は時間の問題なので、苦し紛れに彼もスーツを着るって条件を出したら二つ返事でOKされたのだ。
こうしてわたしは聖夜の夜空に愛しの婚約者の腕に抱き抱えられている。
これまでも彼の箒飛行に同乗させてもらったけど、エスパーだから墜落しても死なないとはいえ墜落したら死ぬほど痛いから彼もわたしを気遣ってわたしの安全第一で飛行していたと思う。
でも今夜はわたし自身も飛べるとあって彼も気兼ねなくわたしと楽しんでくれているみたい。
彼に守られているのはとても嬉しいけれど守られっぱなしは心苦しいから、この世界の変化はわたしとしては歓迎かな。
気兼ねなく楽しんでくれているのは嬉しいんだけど、背中から支えている手が脇腹を超えてオーバーランしていたり、膝裏を支えているほうの手が明らかに落ちないように持ち替え以外の目的で動いていたりしていて、もうしょうがないなーって感じ。
膝裏から伸びる彼の左手薬指にはわたしとの約束の証、プラチナの婚約指輪がはまってて、不意に視界に入るたびに彼への愛おしさが溢れてきちゃうもの。
それに、クリスマスの夜の|夜景飛行《ナイトクルーズ》の|終着点《スイートルーム》に着いたら、こんなんじゃ済まないのもわかってるしね。
とっくに覚悟もしてるけど、そうやって意識してるわたしを見て彼は絶対に楽しんでるでしょ。
そうやって楽しまれてるのは、実は嬉しいけれど、やっぱり悔しいから夜景に目を向けてその綺麗さを一緒に眺めようって誘ってみても。
「千星が一番綺麗だよ」
なんて、わたしの顔を見ながら言うものだから幸せな気持ちでいっぱいになっちゃう。でもわたしは自分が十人並だと思っているからついつい謙遜の言葉が出てしまうけど、彼は優しい声でわたしがいかに綺麗か反論してくる。
その度にさらに心が幸せで満たされていってしまって彼の腕の中で綺麗だよ可愛いよと甘く囁かれたらとうとうわたしは謙遜もできなくなってしまった。
こうして惚けさせられたわたしが次に何をされるかはもう今まで何度も経験してきたことだ。彼が優しく微笑んでわたしの瞳を見つめながら顔を寄せてきたら、自然と少し顔を上に向けて両目が閉じてしまう。
この素敵な夜景飛行のエスコートのお礼はいつも通りにキスでお返しをしなきゃね。
屋外でキスなんて、みんなが見てるよって恥ずかしがってみたけれど、こんな空の上なんて誰も見てないわけで、ちゃんと誰も見てないよって律儀に教えてくれてわたしを安心させてくれる彼がわたしは大好きだ。
それに彼の首の後ろに回っているわたしの手が握っているのは『ヤドリギ』。クリスマスにヤドリギの下でキスを求められたら女の子は拒めないのだ。そして恋人同士がヤドリギの下でキスをしたら、その愛は永遠に守られてヤドリギの祝福が受けられる。彼とはとっくに婚約しているけれどこういう恋人同士のジンクスはいくらあっても足りないくらい。
もうすぐ夜景飛行の終着点、独身最後の聖夜も忘れられない想い出になりそう。
来年はいよいよ結婚だけれども、それまでも、そして夫婦になってからも、二人の想い出がもっともっとたくさん増えるといいな。
そんな気持ちを込めて両手をぎゅってしたら、彼もわたしをぎゅって抱きしめて、ヤドリギの下でキスをしてくれた。
もうこれでわたしたちの愛は永遠だね。
こんなわたしだけれど、これからもよろしくお願いします。
成功
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