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特別なクリスマスはエスコートと共に

#UDCアース #ノベル #猟兵達のクリスマス2024

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#猟兵達のクリスマス2024


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ロラン・ヒュッテンブレナー



チェリカ・ロンド





 UDCアースのクリスマスの夜は、薄く降る雪に包まれていた。
 その中でも確かな光を放つ建物を見上げつつ、チェリカ・ロンド(聖なる光のバーゲンセール・f05395)は瞳に光を反射させる。
「わぁ、あれがコンサートホール……」
 故郷ではあのような綺羅びやかな建物は見られないし、例えUDCアースに来ている時でもなかなか縁のない場所かもしれない。
 そんな場所へ来ることになったのは、大切な親友からのお誘いがあったから。チェリカは周囲に視線を巡らせ、その親友の姿を探す。
「……あ、ロラン! お待たせ、寒かったわよね?」
「ううん、ぼくもさっき来たばっかりだから大丈夫だよ」
 チェリカに声をかけられ駆け寄るのはロラン・ヒュッテンブレナー(人狼の電脳魔術士・f04258)。彼こそがチェリカをここに呼んだ親友だ。
 今日の目的は、このホールから始まるクリスマスデート。今までも2人で色んな場所へと出かけてきたが、今日のお出かけはいつもより大人っぽいものになりそうだ。
 2人が着ている衣服も、いつもよりも上品なもの。服装から背伸びしているようで、ちょっとドキドキしている。
 ロランはチェリカに手をそっと差し出し笑顔を浮かべる。その笑顔もいつもより大人っぽく見えるのは場所の影響だろうか、それともロランの気持ちが滲み出ているからだろうか。
「チェリカちゃん。今日はぼくにエスコートさせてね」
「ありがとう。こういう場所ってあんまり来たことないから、ロランにお任せするわね」
 チェリカも差し出された手を取ると、明るい笑顔を向けた。表情はいつも通り明るくとも、その手は緊張でどこか強張っている。
 でもきっと大丈夫。初めての場所だって2人でたくさん行ってきたのだ。だから今日のお出かけだって、変わらず楽しい思い出が作れるはず。
「それじゃあ、行こうか」
「ええ、行きましょう!」
 場の雰囲気に影響されてか、2人の足取りもいつもよりどこか優雅だ。
 軽く言葉を交わしつつ、並んでホールに入っていって。きらきら輝く調度品とクリスマス飾りが、2人を快く歓迎してくれていた。


「ここが私達の席なの?」
 ロランに連れてこられた席に向かうチェリカの顔は、先程よりも分かりやすく緊張の色に染まっていた。
 案内されたのは3階の個室席。仕切りに区切られた範囲の中に他の客の姿は見えない。
 少し顔をあげれば、煌めく照明が目に入る。あまりこのような場に詳しくないチェリカでも、ここが特別な席なのは感じ取れていた。
 強張ったチェリカを落ち着かせるよう、ロランは緩く微笑みを浮かべる。
「ここで大丈夫なの。ぼく、用事があるからちょっと行ってくるね。演奏が始まってもチェリカちゃんには気にせず楽しんでいて欲しいの」
「あら、そうなの? 分かったわ、じゃあ待ってるわね」
 チェリカが席に腰掛けたのを確認すると、ロランは静かにホールを出る。そのまま彼が向かったのは楽屋の方向だ。
 1人残ったチェリカは、改めて周囲を見遣る。気付けばコンサートの準備が進み、演者達がステージの上に並び始めていた。
 彼らが手にする楽器は照明の光を受け、調度品に負けないくらい煌めいて見えていた。
 気付けば緊張は薄れていて、ワクワクする気持ちが胸を満たす。一体どのような演奏が始まるのだろう?
 次第に周囲の明かりは弱まって、演者達だけが眩い光に包まれる。かと思えば、少し離れた位置を照らすスポットライトも目に入った。その光の元にいたのは――。
「……ロラン!?」
 光に照らされた親友の姿を見つけ、チェリカは思わず声をあげてしまう。いけない、いくら個室席といえど大声はご法度だろう。チェリカは慌てて口元を押さえつつも、視線はステージに釘付けになっていた。

 チェリカの見た通り、ステージの上にはロランが立っていた。彼はいつのまにか燕尾服に着替えていたようで、ふわりとした髪も上品に纏められている。
 手には煌めくトロンボ―ンが握られて、他の演者達に負けない輝きを放っていた。
 ロランは自分の席につくと、トロンボーンを構える。彼の様子を確認し、指揮者が大きく腕を上げれば――クリスマスを祝う荘厳な曲がホールの中に響き渡った。
 今日のロランはソリストだ。曲の中でも象徴的なフレーズを担当し、朗々と音を奏でている。
 そんな親友の様子を前にしてチェリカは小さく息を吐いていた。
 オーケストラの奏でる重厚な音色も、懸命に楽器を奏でる親友の姿も、全部が眩しくて。
(これがロランの見せたかった光景なのね)
 きっと今日のために、ロランはたくさん練習して準備してきたのだろう。その気持ちも嬉しくて、チェリカは無意識に微笑みを浮かべていた。

 そうして演奏は続き、あっという間に前半のプログラムが終わっていく。
 ロランの演者としての出番はここまでだ。たくさんの拍手に見送られつつ、ロランは舞台を後にする。これから暫くは休憩時間だ。
 そのまま急いで楽屋に帰って、大事な楽器を片付けて。ロランは早足でチェリカの待つ席へと向かった。
 戻ってきた親友の姿を見つけ、チェリカは満面の笑みを浮かべる。
「ロラン! お疲れ様、凄かったわね!」
「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。どうだったかな?」
 耳と尻尾をピンと張った状態で、チェリカの顔を覗き込むロラン。そんな彼に対し、チェリカは変わらず明るい表情を向けていた。
「格好良かったわ。こんなサプライズがあるなんて思っていなかったし」
「そう思ってくれたら嬉しいの……!」
 ロランの表情が解れると同時に、尻尾はぱたぱたと嬉しそうに揺れる。同じく弾むような足取りで、腰掛けるのはチェリカの隣だ。
「後半はぼくも一緒に聞くね。ここ、小さな声ならおしゃべりしても大丈夫なんだ」
「そうなのね。それじゃあ後半は一緒に見ましょうか」
 せっかく個室の席を取ったのだ。楽しむなら、その利点も活かしたい。
 2人で前半プログラムの感想を語り合っていれば、再び照明が落とされる。ブザーの音と共に、後半プログラムの始まりが告げられた。

 後半の曲目はクラシックが多めのようだ。曲の合間に、ロランはチェリカに耳打ちする。
「この曲はね、途中のフルートの独奏が綺麗なの。ダークセイヴァーの曲とかでも使われてる技法でね……」
 ロランの教えてくれる解説や聞き所に、チェリカはこくこくと頷いて。
 専門的な話は分からずとも「ここが綺麗」や「こういう由来がある」と聞くのは楽しいものだ。
 それに、話をしている最中のロランはとてもイキイキしている。勉強熱心な彼らしい姿に、チェリカの顔も思わず綻ぶ。
「クラシックとか音楽って奥が深いのね」
「うん。だからぼくも好きなんだ」
「私も今日一日で、前よりこういう音楽が好きになった気がする!」
 弾むような笑顔を浮かべるチェリカに、ロランはこっそり安心していた。
 でもクリスマスはまだ終わりではない。ここから先のことも思い、ロランはしっかり背筋を伸ばす。
「あ、この曲で最後なんだよ」
「もう終わっちゃうのね……それならしっかり聞いておかないと」
 最後の曲目にも耳を傾け、雷鳴のような拍手で演者達を送り出して。
 照明が再びついたのなら、2人もホールを後にする。素敵な音楽に心を満たされたなら、今度はその世界にもっと深く飛び込む番だ。


 ホールを後にしてから、2人はクロークに荷物を預け別々の場所へ向かう。
 それぞれが向かっているのはダンスホールに隣接した更衣室だ。
 それから暫くして、先に更衣室を出たのはロランだった。身に纏うのは落ち着いた赤色のスリーピースだ。
 襟には緋色のブローチを留め、髪も似た色合いの飾りで纏めている。先程の燕尾服の時よりも、よりクールな印象で仕上げてもらっていた。
 衣装に見合うよう背筋を伸ばし、ロランはチェリカの到来を待つ。
「ロラン、お待たせ!」
 明るい声につられて視線の向ければ、そこには鮮やかなドレスに身を包んだチェリカが立っていた。彼女の姿を見遣り、ロランは思わず目を見開く。
 色合いはロランの赤とは対象的なアクア色。Aラインシルエットのオフショルダードレスは上品な雰囲気でチェリカを彩っている。
 髪留めも同じように青色で、チェリカの長い髪をハーフアップに纏めていた。胸元で輝く黄金色の紅葉のブローチもまた、落ち着いた印象を与えてくれている。
 2人で並んでホールに入りつつ、語るのは衣装の感想だ。
「ロランの選んでくれたドレス、とっても素敵ね! ありがとう! ロランの衣装も格好いいわ」
「良かった、チェリカちゃんにとっても似合ってるの。それじゃあ……」
 ロランはチェリカの前に跪くと、そのまま手を取る。チェリカは特に抵抗することなく、ロランの様子を見守っていた。
「今度もぼくがエスコートするね」
 そう言って、ロランはチェリカの手の甲にキスを落とす。なんとも不思議な感覚とくすぐったさに、チェリカは思わず笑っていた。
「ふふ、不思議な感じ。エスコートよろしくね」
「任せて欲しいの」
 ロランはチェリカの手を取ったまま、ホールの中を進んでいく。

 既にホール内では何組かの男女がダンスに興じているようだ。彼らの邪魔にならないよう、まずは隅で練習しよう。そう考えたロランは、チェリカの身体を支えつつ簡単なステップを例示する。
「今度はこうやって……」
「う、うん」
 チェリカも教えてもらった通りに足を運ぼうとするが、なかなか上手くいかない。どうしてもたどたどしくなってしまう。
 それでも何度かステップを踏んでいけば、なんとか形にはなりそうだ。
「そろそろ本番に行っても大丈夫かな?」
「そうね、ずっと練習してても終わらないし……」
「チェリカちゃん、身体を動かすのが得意だからきっと大丈夫なの。行ってみよ?」
「……ええ!」
 2人で顔を見合わせて頷きあえば、自然と気持ちも前向きになる。
 ロランはチェリカをエスコートしつつ、人々の輪へと加わった。そうしていざステップを踏み出そうとする間際、ロランはチェリカの顔を覗き込む。
「チェリカちゃん、足下じゃなくてぼくを見て。社交ダンスはダンスを通して相手を知る事が目的なの。顔を合わせて、相手を感じて。ぼくたちなら楽しく踊れるから」
 ロランが浮かべるのは優しい笑顔。一方ふわふわの獣腕は、頼もしくチェリカの背を支えていた。
 その温かな感触を感じつつ、チェリカはロランと握っていた手に力を籠める。
「ロランのことを感じる……分かった、やってみる」
 思い出すのは先程のコンサート。格好良く演奏するロランを、優しく解説してくれたロランを思い出し、チェリカは改めて目の前の親友を見た。
 ここにいるのは、さっきと同じ頼もしい親友。彼と一緒に音楽に身を委ねれば、それはきっと楽しいだろうから。

 2人は意を決し、軽くステップを踏む。鳴り響く音楽は先程と多少経路は違うけど、優雅な音楽であることには変わらない。
 今の曲はバイオリンが印象的。次の曲はトロンボーンを使っているのかな。
 そんな風に曲にまで意識を向けられるのは、楽しかったコンサートのおかげだろう。
 けれど今度は2人とも客ではなく、ダンスを踊る演者。
 ただ目の前の相手と視線を合わせ、意識と呼吸と合わせて踊る演者なのだ。
 次第にチェリカの足取りは軽くなり、合わせてロランのステップも優雅に洗練されていく。
 ふとお互いの顔を見れば、よく知った、けれどいつもと違う表情が見えた。
 今日のチェリカはいつもより大人っぽく見えて、彼女を支えるロランの手にも力が入る。
 今日のロランはいつもより大きく見えて、チェリカも安心して背中を任せられた。
「次はね、もうちょっと大きな動きに挑戦してみよう」
「くるっと回ったりするのよね? やってみるわ!」
 交わす言葉はいつも通り。笑顔を向け合うと、その印象は良い意味でいつも通りのものに戻る。
 きらきら光る照明の下、2人は優雅に踊り続ける。
 まだ幼さを残しつつも華麗なダンサーの姿には、周囲の人々も暖かな視線を向けていた。
 そうして音楽もどんどん盛り上がり、いよいよダンスはフィニッシュへ。
 2人は視線だけで合図を送り合い、大胆なステップを踏む。
 そして曲の終わりに華麗にポーズを決めれば――拍手が2人を包みこんでいた。


 社交ダンスが終わっても、クリスマスの夜は終わらない。
 ロランとチェリカはダンスホールを後にすると、ドレスコードはそのままに上階のレストランへと向かっていた。
「チェリカちゃん、どうぞなの」
 ロランがエスコートしたのは個室席だ。立派な円形テーブルに横並びに案内されれば、大きな窓が目に入る。
「今日はね、この景色も見せたかったの」
「わぁ、すごい……キラキラしてる!」
 促されるまま窓の外を見れば、チェリカの目は大きく見開いた。
 そこに広がっていたのは、暖かなライトアップに照らされる夜の風景。所々にクリスマスの意匠も見えて、どこか楽しい雰囲気も纏っている。
 それらを淡く雪が包み込み、幻想的な夜景を作り上げている。初めて見るような夜景に、チェリカの笑顔も弾むようなものになっていた。
「もうすぐ食事も運んできてもらえるから、待っててね」
「そうね、動いたからお腹空いたかも……ん」
 夕食を意識したことで、チェリカの視線はテーブルへと移る。その上に並べられたカラトリーを前にして、チェリカの表情が少し強張った。
 このような場所ならばマナーも大切になるだろう。それは知っているけれど――実際のマナーとはどのようなものなのだろうか。
 そんなチェリカの様子に気付いてか、ロランは柔らかく言葉を紡ぐ。
「チェリカちゃん、まず座る時はね、椅子の左側から座るんだよ」
「そこから決まってるのね……ありがとう」
 ロランに教えてもらった通りに、そっと椅子に腰掛ける。けれどまだまだ安心は出来ない。今度はどうすればいいのだろう?
 焦るチェリカをサポートするのは、やはりロランの声だ。
「もうすぐ最初のドリンクを運んでもらうから、そうしたらナプキンを膝の上に広げるの」
「ナイフとフォークは外側から使うんだよ」
「物を落とした時は店員さんを呼べばいいの」
 ロランの言葉に対し、チェリカは頷きで答える。動きはロランの見様見真似になるけれど、それでもすぐに対応出来るのはチェリカの柔軟さ故だろう。

 いよいよドリンクが運ばれたことを確認し、2人はそっとグラスを手に取る。中身はシャンメリーのようだ。
「それじゃあ、クリスマスに乾杯なの」
「素敵なコンサートとダンスにも乾杯ね」
 グラスを合わせれば、心地よい音が周囲に響く。甘めのシャンメリーは2人の喉をよく潤した。
 それから料理を待つ間、チェリカの表情は再び強張る。ロランと二人きりならまだしも、店員さんの姿を見るとどうしてもマナーを意識せざるを得ないのだ。
「……あのね、チェリカちゃん」
「な、なにかしら?」
 ふいにロランに声をかけられ、チェリカはぴくりと肩を震わせる。その様子からも、緊張と動揺が見て取れた。
「マナーって、相手の為の行動なんだよ。敬意や厚意を示す手段なの」
「相手の為……」
「そう。スマートな所作って気になりにくいでしょ? お話や料理を味わうのを邪魔しないようにする、それがマナーなの」
 ロランの言葉の真意を噛みしめるよう、チェリカは少しだけ顔を伏せる。直後、上げられたチェリカの顔には、いつもの笑顔が戻ってきていた。
「分かった。ロランのおかげで、出来そうな気がする」
「チェリカちゃんなら大丈夫なの。それに……」
 まだ店員が周囲にいないことを確認し、ロランはそっとチェリカの耳元に顔を寄せる。
「ちょっとくらいなら、型を破っても大丈夫だよ。お客さんはぼくとチェリカちゃんだけだし、リラックスもして欲しいの」
 そう言うロランは少し悪戯っぽい笑みを浮かべている。その様子に、チェリカもほっと安堵していた。
「そうよね、緊張したままだとお料理も楽しめないし……出来る範囲でやってみるわね!」
 マナーを守る紳士淑女になるのも大切だが、一番大切なのは思い出を作ること。
 だから相手を尊重するようにマナーは重視するけれど、縛られすぎないようにも意識して。
 2人の気持ちが合わさった頃に、最初の料理が運ばれてきた。

 ロランが頼んでいたのはクリスマス料理のコースだった。
 冬の野菜を使った前菜に、暖かなスープ。魚料理はポワレで、肉料理は大きなチキン。
 2人はマナーを守りつつも、運ばれる料理をどんどん堪能していく。
「すごい、こんな料理初めて食べる……! ちょっと不思議な味ね、美味しいわ!」
「アクセントは野菜のソースだと思うの。ハーブもいっぱい使っているね」
 料理の感想なんかも語らいながら食べ進める2人の様子は和やかそのもの。
 最初の緊張はもう消え去って、食事の美味しさや会話の楽しさが2人の胸を満たしていた。
 チキンまでしっかり食べ終われば、残すはデザートだけだ。
 2人の元へと運ばれたのは――クリスマス飾りに彩られた可愛らしいケーキだった。


 上品な甘さのケーキを食べ終われば、どこか名残惜しい気持ちが胸を過る。
 ロランとチェリカは夜景を見下ろしながら、コーヒーや紅茶を片手に一服していた。
 ほっと落ち着いた空気が流れる中、話を切り出したのはチェリカだ。
「ロラン、今日は本当に楽しかったわ。なんていうか、大人のデートって感じで!」
 そう語るチェリカの顔には満面の笑みが浮かんでいる。つられてロランの尻尾もぱたぱたと揺れていた。
「そう思ってくれたなら何よりなの」
「ロランのエスコートのおかげね。私1人だったら、こんな風に過ごせなかったもの」
 チェリカの言葉を受けて、ロランは少し目を閉じる。
 確かにトロンボーンの練習も、マナーやエスコートの勉強も、今日のために頑張ってきたのは間違いない。その結果が結びついた実感もある。
 けれど――自分1人の力ではなし得なかったというのは、ロランも同じだ。
「……ぼくだけじゃないの。チェリカちゃんが楽しもうとしてくれたから、ぼくも頑張れたんだよ」
「私も?」
「うん。チェリカちゃんの前向きな姿が、本当に素敵だったの」
 そう言ってはにかむロランに、チェリカも笑顔を返す。
「ありがとう。それじゃあ、またロランに色んなことを教えてもらいたいわ。ロランにエスコートしてもらえば、どこだって行けそうな気がするの」
「分かった。また別のデートコースも考えてみるの」
 言葉を重ねている内に、ロランは自然にチェリカの手を取る。チェリカも抵抗することなく、ロランの手を握り返していた。
「こういうデートでもいいし、もっと別の場所でもいいわよね。私が案内するのも楽しいと思うわ!」
「それも良いね。チェリカちゃんと一緒なら、きっとどこでも楽しいよ」
「私も! ロランとなら、なんだって楽しめそう!」
 そうやって交わす言葉は無意識。『次』もきっと楽しめる。そんな確信があるから、自然に『次』の約束が出来るのだ。
 2人の友情は、クリスマスが終わっても変わらないまま――いいや、もっと素敵なものになっていくはず。

 大人の階段をのぼりつつも無邪気に笑う2人の姿を、夜景と雪が柔らかく照らしていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年03月06日


挿絵イラスト