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来た年、ふたりの初詣

#サムライエンパイア #ノベル

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仇死原・アンナ



ベルト・ラムバルド




 新しい一年のはじまりの日、元旦。
 当たり前のことであるが、今日は一年に一度だけしかない特別な日といっても、全く過言ではないだろう。
 そしてそんな大事な日を愛しのマドンナと一緒に過ごして、これからの一年をスタートさせることができるなんて。
 ベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)にとってそれは、またとないくらいに幸せな2025年のスタートを切れるというわけであり。
 そんな状況に、もちろんテンションが上がらないわけはなくて。
 最高な一年の門出に、めっちゃ調子に乗って、初日の出にも負けないくらい後光が射してもおかしくないほどにうきうきであった。
 何せ、そう――元旦に約束しているのは、初詣デート!!
 それに今日足を運ぶ予定の行き先は、サムライエンパイアにある有名な神社。
 和を思わせる世界に、正月という季節の行事、格式ある神社に初詣に赴くのだから。
 いつもはぼんやりしている彼女も、もしかしたら、綺麗な振袖とか着てくるかも。
 一年のはじまりのお出かけに、少しわくわく心の中ではしているかもしれない。
 ロマン主義者な彼は、うきうきるんるん……要は、新年から早速張り切っていたのだ。
 そう、待ち合わせ場所に現れた、仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)の姿を実際に目にするまでは。
 いや、愛しのマドンナである彼女と会えるだけでも、やはりそれだけでテンションも一気に上がるのだけれど。
 普段から、敵前とかではない時の彼女は、確かにちょっとぼんやりしている。
 テンションが高くて元気いっぱいな自分と違って、処刑人としてヒャッハーしている時以外は、ぽやっとは確かにしているのだけれど。
 新年早々うきうきと、デートだと張り切っているベルトの眼前にある現実、それは。
「……寒い……」
 まず、新年に聞いた彼女の第一声はこれ。
 そう――ぼんやりどころか、いつもよりテンションが激低なアンナの姿。
 むしろ、寒いし眠いしで、少し不機嫌ですらあったのだった。
 それでも、やはり会えて嬉しさいっぱいのベルトには違いないから。
「明けましておめでとうございます、アンナさん!」
 だって元旦なのだし、まずはそう元気良く、新年の挨拶をすれば。
「元旦? このノベルが完成してる時はもう元旦なんて過ぎ……」
「!? いやっ! アンナさん今日は元旦! 元旦といったら元旦なんです!!」
 あまりにもテンションが低くて、ついうっかりメタい事まで口にし始めたから。
 慌てて言ってはいけないあれそれを口止めしつつ、あくまで元旦だと言い張ります!
 いや、これは、2025年の元旦の時の|思い出《メモリー》みたいな……そんな感じでひとつお願いします……!
 とはいえ、こんなにめちゃめちゃテンションが低いにもかかわらず、彼女はこうやって此処に来てくれたのだ。
 そう考えればまた、ベルトは元気になれるし、前向きに考えて。
「今年もよろしくお願いします、アンナさん! サムライエンパイアでも有名な神社だけあって、人で賑やかですね」
「あけおめ、ことよろ……人で賑やか? 帰って寝たい……」
「えっ!? 折角ここまで来たんですから、初詣に行きましょう、アンナさんっ。ほ、ほら……神様にご挨拶してから寝たら、いい初夢が見れるかもしれませんし!」
「確かに、それはそうかも……」
 頑張って一生懸命励ましながらも説得すれば、アンナも頷いてくれたから。
 心底ホッとして、そしてやはり調子に乗りつつも、ベルトは彼女と一緒に参拝へ。
 とはいえ……今日は元旦、しかも、サムライエンパイアでも有名な神社。
「人が多い……」
 普段ならばすぐ到着する拝殿も、人の波のさらに遥か向こう。
 歩みも少しずつしか進まず、さすがの混雑具合である。
 そして相変わらずテンションが低いアンナに、ベルトは常に元気に声を掛けて。
「人が多いと多少風も凌げますし……! あっ、参拝者に配っている甘酒、アンナさんの分も貰ってきますね!」
 相変わらず寒そうにしているアンナと自分の甘酒をふたり分いそいそと貰って来て。
「あったかい……」
 あたたかな甘酒を両手で持って、ぼんやりほっこりしている彼女姿を見れば、ほんの少し機嫌も上向きになったかもしれないと。
 ベルトはそう思えばまたちょっぴり調子に乗って、甘酒をぐいっ。
「これを飲んだら、芯からあたたまりそ……あつっ、熱っ!?」
 確かに、身体があたたまるだけでなく舌が火傷しそうなくらい、めちゃ熱々です!
 それに人がいっぱいいるのは確かに前向きに考えれば風除けにもなるし、歩みもゆっくりで時折止まることもあるけれど、テンションがずっと高いベルトの隣でその間、うとうともできるし。
 寒くて眠いことには変わりはないのだが、アンナもぼんやり参拝の列に彼と並んで。
 来たばかりの時よりは、多分初詣を楽しんでいる……ような気はします、きっと。
 それから、ようやく拝殿へと辿り着けば。
 ふたり並んで、作法に倣って、神様へ新年のご挨拶を。
 まだちょっぴり眠たいから、さくっと手を合わせ終わったアンナを横に。
 何だかめちゃ一生懸命に祈っているベルト。
 その内容は……色々と状況的にわかりやすい気もするけれど、一応、人に願った詳細を話したら叶わないって言われているし、秘密です!
 というわけで、無事に参拝も済ませて。
 賑やかな境内をくるりと巡って、社務所のお守りを見たり、おみくじでお揃いで大吉をひいたりして。
 ベルトもますますテンションも上がりつつ張り切って、初詣デートを楽しんで。
「アンナさん、次は温かい蕎麦を食べにいきましょう!」
 そんな彼の提案には、アンナも素直にこくりと頷く。
 どうやら、由緒正しい神社の近くにあるだけあって老舗で美味しいらしい、サムライエンパイアでも有名な蕎麦屋さんのようだし。
「蕎麦といえば、大晦日に蕎麦を食べるとは聞きますけれど、アンナさんは年越し蕎麦食べましたか? 年越し蕎麦もいいですけど、こうやって年明けにアンナさんと食べる蕎麦も最高ですね!」
 相変わらずうきうきデートのつもりなベルトに、エスコートされるがままに。
「あったかい蕎麦、おいしそう……」
 寒くて眠くて少しおなかもすいてきたし、何より、あたたかそうだし。
 年越し蕎麦ならぬ年明け蕎麦を、早く食べてあたたまりたいと思いながらも。
 ベルトと共に蕎麦屋へと、新年の冬空の下、アンナはぼんやり並んで歩き出す。
 彼に誘って貰わなかったら、おそらく寝正月だっただろうし。
 寒がりながらも、アンナも一年のはじまりを有意義に過ごせた……はずです、きっと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年02月16日


挿絵イラスト