怠惰な裁判長にモーニングコールを!
●予知:このサイバースペース。何か変!
「あー……このワールド、居心地がいいっスね~。あと百年くらいはのんびり過ごせそうっス~」
帝都櫻大戰が終わり、しばらく経ち……。
救援のためにサイバーザナドゥのサイバースペース内部に送り込まれた魔界裁判長『ジャッジメントガール』は、帰還することなく悠々自適なバカンスを満喫していた。
電子情報で満たされたサイバースペースでは、魔界から持ち込んだパソコンでハッキングを仕掛けることで望むデータを好きなだけ収集することができる。
そして裁判長権限によりメガコーポを目を掻い潜って様々な嗜好品を入手することができていた。
カタカタッターンとキーボードを叩けばデリバリーが注文でき、スイッスイッとマウスを動かせばサイバーザナドゥの動画やゲームといったエンターテインメント・コンテンツを堪能できる。
柔らかなベッドを構築して寝そべりながら、ハッキングしたメガコーポの電子マネーで通販購入した茶菓子を食べて、茶を頼んで、おかわりを発注して……。
ジャッジメントガールは、サイバースペースを十分に悪用していた。
「―――しかし、そろそろ帰らないとマズイ気がするっスね……」
そう。
神王サンサーラを撤退させるという役目を果たした以上、他の世界に長居し過ぎると猟兵たちから「いつまでいるんですか?」という白い目を向けられかねない。
ブルーアルカディアとかいう世界で大いに活躍していたスーパーカオスドラゴンとは違って、キャンピーくんに連れてこられたジャッジメントガールはまだ一件の騒動でしか働いていない。
権威ある(?)魔界裁判長としては、威厳を保つために帰った方がいいっスよね、でもここは結構エンジョイできるくつろぎ空間……。え? アイスエイジクイーンさんは帰られたっスか? やべ……。
そんな風に職務怠慢と勤労精神を天秤にかけて悩んでいたジャッジメントガールは、ふと思いつく。
「そうだ、猟兵さんたちを言い訳に……ゴホン。
……そう、自分が用意した|悪魔王遊戯《デビルアトラクション》をクリアされたから仕方ないと、無理強いされたので仕方ないと、送り返されるなら仕方ないと! それなら踏ん切りがつくっスね! ヨシッ!」
何がヨシッなのかさておき。
ジャッジメントガールは座布団に座ると、凄まじいリソースを(メガコーポのデータバンクから勝手に)消費して強固なプロテクトを組み立て始める。
手始めに自身の領域として制圧したサイバースペースに囲いを作り、幾重にもセキュリティを施した扉を創造する。
物理的・魔術的・技術的・数値的に破壊も除去も分解も不可能な耐久力!
十重二重三重以下略のファイアウォールを展開することでハッキング対策も万端!
ウイルス対策に自己増殖する数十種類のサイバーモンスターを門番に配備して迎撃態勢も万全!
各メガコーポから徴収して確保して勝手に改良した十二機のサーバーを利用することでエネルギー供給は絶えることなくシステムは稼働し続ける!
あらゆるアイテムを想定してカウンターシステムを配置し、あらゆる技能を考慮してそれらを上回る物量網を敷き、あらゆるユーベルコードに対処できるよう冤罪裁判システムを設置した!
まさに、完璧で究極な防護障壁である扉を作り出したのだ!
なんでこんなところに全力を出すんですか?
「ヨシッ! | 《これで当分、合法的ごろごろできるっスね》。
さあさあ、緊急特番、ジャッジメントガールの|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》!
このエンドレスドアーをクリアできる猟兵さんを待ってるっス!」
クリアさせるつもりは毛頭ないとばかりに全力を尽くしたジャッジメントガールがいい汗をかいたとばかりに再びベットに寝転がり、大義は得た(得てません)とばかりに怠惰を再開する。
何ということでしょう……。しかし、ジャッジメントガールの怠惰が活路を残していた。
「ちわー。サードリバー屋でーす。注文の合成茶菓子を届けに来ましたー」
「あ、どーもどーも! ありがとうっス!」
勝手口を開けてジャッジメントガールの領域に入るのは、サイバー・チャドーのデリバリー業者だ。
ネットショップで購入した物資の搬入のために、勝手口は必要不可欠だったのだ。
突破口は見えた。
「お疲れーっス! ……さあて、猟兵さん! いつでも挑戦は待ってるっスよ! はっはっはー!」
●招集:完璧で究極なドッアー! 裏口は除く。
「ということで、ジャッジメントガール殿を魔界に送り返すミッション発令デース!」
グリモアベースにて、バルタン・ノーヴェは猟兵たちに声をかける。
ジャッジメントガールはエンシェント・レヰス『神王サンサーラ』との戦いに参上した。
サンサーラが広げる世界の法則を曲解・こじつけ・拡大解釈で書き換えた彼女がいなくては苦しい戦いになっていたことは間違いない。
それはそれとして用は済んだのでお帰りいただこうというのが今回の目的である。
「ガチデビルがやらかしたように、『悪魔契約書』を利用すれば悪魔を「別の世界に送り込む」ことが可能!
そこで悪魔契約書を作ってジャッジメントガール殿を強制送還したいところデスガ……悪魔契約書を作ることができるのは、魔界の悪魔オンリー!
悪魔契約書は悪魔インクで書く必要があるため、これを絞り取らなければなりマセーン!」
デビルキングワールドの悪魔が悪魔契約書を書くためには、インクの素材が必要となる。
そしてインクの素材は悪魔によって異なり、ジャッジメントガールの場合は『|悪魔王遊戯《デビルアトラクション》がクリアされた時に発散されるパワー』が材料となるのだ。
「そのため、ジャッジメントガール殿のルールに応じつつ領域に踏み込み、|発散させ《ボコボコにす》る必要があるのデスネー!」
ジャッジメントガールは帰るつもりはあるんですよ? というパフォーマンスを見せるべく難攻不落な悪魔王遊戯……|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》エンドレスドアーを作り出した。
プロジェクターにて投影された予知情報の通り、非常に強固な扉は破壊も解除も困難だ。
それでもこれに挑戦し、クリアしなければ前提条件を叶えることもできない。
だが、ジャッジメントガールはミスを犯した。
快適な生活のための勝手口を作ったことで、そこのセキュリティが脆いという弱点が生じたのだ。
「正攻法で挑むのは非常にデンジャラス! 具体的には、パーフェクトプランで挑んでも成功することはベリーハード!
デスガ……この勝手口を上手く使えば、簡単に突破できそうであります!」
勝手口は一般配達員が利用するので攻撃性はなく、強度もそこまで無い。
ハッキング対策もエンドレスドアーにばかり集中しているので解錠の手間もかかりそうにないし、……配達員のフリをすればジャッジメントガールが自ら扉を開ける可能性も高い。
そう。どれほど正面が無敵でも、裏面がスカスカであれば突破は容易いのだ。
「それではエブリワン……仕事を終えてのんびりしているジャッジメントガール殿にモーニングコールをお願いしマース!」
バルタンがグリモアを起動して、サイバースペースに通じるゲートを展開する。
ただ、忘れてはならない。
悪魔王遊戯の仕上げには、ジャッジメントガールとのバトルが待っているのだ……。
リバーソン
こんにちは。リバーソンです。
マスターとして皆様に喜んでいただけるよう、つとめさせていただきます。
今回の舞台はサイバーザナドゥ。サイバースペース内に領域を展開して自由気ままなスロウスライフを送っているジャッジメントガールを叩きのめし、『悪魔契約書』を作らせることが目的です。
第一章:ジャッジメントガールの作り出した電脳悪魔王遊戯、エンドレスドアーへの挑戦です。
この扉には凄まじいセキュリティが幾重にも施されており、そう簡単には開きません。
猟兵が死力を尽くして全力を費やせば、破壊して侵入したりセキュリティを解除したり、できるでしょう。
ですが勝手口はザルです。そちらを利用する方が消耗を避けられるのでオススメします。
あるいはジャッジメントガールに勝手口を開けてもらうことで突破できるでしょう。
プレイングボーナスは、『勝手口を利用する』ことです。
第二章:ジャッジメントガールとの戦闘です。
エンドレスドアーを突破されたジャッジメントガールは、悪足掻きすることが予知されています。
パソコンを使って領域を巨大な競技場に変換し、スリリングな仕掛けが満載のギミックを臨機応変に設置してきます。
ジャッジメントガール自身も最強クラスの悪魔ですので、全力で戦わなければならないでしょう。
プレイングボーナスは、『悪魔王遊戯の仕掛けを避けたり、逆に利用する』ことです。
第三章:叩きのめしたジャッジメントガールが悪魔契約書を書きます。
悪魔王遊戯を完全攻略できれば、契約書を書く為のインクがある程度絞り取れます。
「悪魔契約書は悪魔を異世界に送り込む力を持つっスが、内容に抜けがあると召喚対象の悪魔が契約書のパワーに耐え切れずに死ぬっス」とのことなので、かなりの量のインクが必要になります。
だから容赦なく叩きのめす必要があったわけですね。
ジャッジメントガールが悪魔契約書を書く間、見晴らしがよくなったサイバースペースの領域でジャッジメントガールが頼んだお茶やお菓子でチャドーを堪能して待ちましょう。
多少なら、ジャッジメントガールを休憩に誘っても構いません。
プレイングボーナスはありません。
オープニング公開後の断章はなく、すぐにプレイング受付開始となります。
プレイングの受付期間はタグにてお知らせいたします。
皆様、よろしくお願いいたします。
第1章 冒険
『アジトの扉を開け』
|
POW : 扉や建物の一部を破壊して侵入する
SPD : ハッキングしてセキュリティを解除する
WIZ : 営業マンのフリをして交渉し、受付スタッフに扉を開けてもらう
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フリル・インレアン
ふええ、ジャッジメントガールさんからの挑戦状です。
他に挑戦者の方が見当たらないようですが、一人ずつなのでしょうか?
とにかく、頑張っていきましょうね、アヒルさん。
ふえ?アヒルさんの姿も見当たりません。
一人で心細いですが、頑張っていきましょう。
叩けば治るの魔法でどんどんセキュリティをカットしていきましょう。
ふええ、冤罪も何も実際に有罪てすので、裁判から逃げましょう。
増殖するサイバーモンスターさんは縄張り争いが起きるように逃げて、ドサクサに紛れて逃げ切りましょう。
あれ?なんでアヒルさんがゴールにいるんですか?
勝手口からきた?
どういう事ですか?
ふええ、説明はちゃんと聞けって、怒らないでください。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
まあ、あの世界の方ですから「怠惰に居残るというワル」を実行されているのかもしれませんねぇ。
とは言え、そろそろお帰り願いましょう。
【豊饒宿霊】を発動し[幻影使い]を指定、幻で『正面から猟兵が来た』という状況に見せかけますねぇ。
技能への対策も有る以上短時間で排除されるでしょうが、定期的に姿を変えて挑む形にしておけば「囮」には十分ですぅ。
その様に「正面の猟兵」に意識を引いた状態を招いた上で『うーぱーいーつ』を名乗り、裏口からお料理を届けましますねぇ。
実際に、良い香りのする「ピッツァ」辺りを[料理]して持っていけば、疑われる可能性も低いですので、裏口が開いた処で突入しましょう。
皐・芽衣
嘘をつくのは性に合わんが、なんとか開けてもらいたい……
仕方ない。サードリバー屋じゃったか?
自分でサードリバー屋に注文した茶菓子や
他諸々を持って、勝手口から伺おうかの。
念のため、角も尻尾も消して、人型になって。一般人を装って。
「お荷物お届けに参りましたー、サードリバー屋の合成茶菓子ですー」
「お世話になってますので、少しオマケしておりますー」
中に入ったら、普段の半人半獣姿に戻ろうか。
入れてくれてありがとうのぅ!
ん? 嘘はついとらん。わしが買った茶菓子を、わしが届けに来たんじゃ。
神王サンサーラ戦では世話になったから、ちょっと良いの買ったんじゃよ?
後で食べると良い。ただし、インクを絞りきってから、の!
●なんて的確な状況判断なんだ!
「ふええ、ジャッジメントガールさんからの挑戦状です」
先陣を切った、アリスラビリンスに迷い込んだアリス適合者の少女。
フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)はサイバースペースに到着すると、独りで正面玄関にそびえる荘厳な扉……電脳悪魔王遊戯、エンドレスドアーの前に立つ。
この扉を突破して内部に入ること、それが今回の悪魔王遊戯の試練である。
ただしグリモア猟兵が予知したように、この扉を使う必要はないのだが……。
「他に挑戦者の方が見当たらないようですが、一人ずつなのでしょうか?
とにかく、頑張っていきましょうね、アヒルさん。……アヒルさん?
……ふえ? アヒルさんの姿も見当たりません」
フリルが辺りを見渡すが、いつも一緒にいるアヒルちゃん型のガジェットの『アヒルさん』の姿が見当たらない。
それもそのはず、『アヒルさん』は勝手口に回っているのだから。
しっかり情報を聞いていた『アヒルさん』が裏口に移動していたことに、話を聞いていなかったフリルは気づいていなかった。
そのことに気づけず、そびえ立つエンドレスドアーを前にフリルは両手を握り締めて勇気を振り絞る。
「一人で心細いですが、頑張っていきましょう」
フリルが選んだ選択は、なんと正攻法。
《電子機器に止めを刺す叩けば治るの魔法(セキュリティカット)》でセキュリティをカットして、エンドレスドアーを突破しようという試みだ。
もうだめですね。
「斜め45度から叩けばいいんですね?」
「おおっと! 来たっスね猟兵さん! いらっしゃいませっス!」
フリルの電子的に干渉するサイキックの平手打ちが、エンドレスドアーに直撃する。
その瞬間に発動する多重防壁プログラムの数々。
ジャッジメントガールが手塩にかけて数分で構築したサイバーモンスターの群れがフリルの前に出現する。
『あなたを訴えます理由はもちろんおわかりですね!』『不法侵入と器物破損未遂です!』
「ふええ、冤罪も何も実際に有罪ですよ?」
「これが自分の|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》エンドレスドアー! とっくり堪能してもらうっスよ!」
そしてフリルと、セキュリティガードモンスターによる壮絶なる戦いが始まる。
強制収容用捕縛網が飛来し、正座で足が痺れる感覚を与えるビームが降り注ぐ。
フリルは《電子機器に止めを刺す叩けば治るの魔法》を駆使して懸命に応戦するも、カットした端からセキュリティが再生する無限ループに青ざめて遁走を開始する。
そして出現するセキュリティガーディアン、サイバーモンスターたちからも、逃げて、逃げて、逃げ回る。
『御用だ! 御用だ!』「ふええ!」
|閑話休題《それはさておき》。
「まあ、あの世界の方ですから『怠惰に居残るというワル』を実行されているのかもしれませんねぇ。
とは言え、そろそろお帰り願いましょう」
童顔且つ小柄ながら桁違いに発育の良い体型をした、『豊饒の女神』の使徒。
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)はサイバースペースに到達すると、フリルが悲鳴を上げて逃げ惑う様子を眺めていた。
陽動をかってくれたのだろうと好意的に判断して微笑みを向けながら、るこるは悪魔王遊戯の中で待っているだろうジャッジメントガールに思いをはせる。
そろそろ帰郷の時だとお帰りいただくために、エンドレスドアーに挑むべく一手を打つ。
「フリルさんを少々手助けしますねぇ。大いなる豊饒の女神、古の使徒よりの豊かなる恵みをお貸しくださいませ」
るこるが発動するのは、《豊乳女神の加護・豊饒宿霊(チチガミサマノカゴ・ホウジョウノミタマ)》。
技能名「【祈り】」及び「指定した一つの【スキル】」の技能レベルを、自分のレベル×10に変更して使用することができるユーベルコードだ。
該当するスキルを取得した、かつての『豊饒の使徒』の魂を降ろして技術を借りることで、今では1620レベルという技量を奮うことができる。
るこるは今回【幻影使い】のスキルを指定することで、ジャッジメントガールに『正面から猟兵が来た』という状況に見せかける幻を展開する。
「技能への対策も有る以上短時間で排除されるでしょうが、定期的に姿を変えて挑む形にしておけば「囮」には十分ですぅ」
フリルと一緒に逃げ惑う猟兵(外観は臨機応変)の幻は、フリルの生存時間を大いに伸ばす効果を発揮した。
猟兵(幻)を餌もとい身代わりに縄張り争いや手柄の奪い合いが起こるように立ち回っている。
ジャッジメントガールもフリルと猟兵(幻)が四苦八苦している様子を見せられて、ご満悦のようで室内でスシを食って寛いでいるようだ。
ジャッジメントガールの意識が正面に向いて、油断しているその隙にるこるは裏口に回り込む。
「嘘をつくのは性に合わんが、なんとか開けてもらいたい……仕方ない。
おーい、そこの。サードリバー屋じゃったか?」
「? はい、なんでしょう?」
そこには、配達を終えたサイバー・チャドーのデリバリー業者に声をかける小柄な少女がいる。
嘘を見抜き、角で裁きを与える|獬豸《カイチ》の瑞獣、皐・芽衣(金色一角のメイメイ・f35724)だ。
芽衣は仙術を駆使して角も尻尾も隠蔽して人型になり、出前帰りのサードリバー屋の配達員に自分で茶菓子や他諸々を注文してジャッジメントガールを惑わす策を講じていた。
すなわち商品を手にサードリバー屋の一般人を装うことで、堂々と入り込む作戦だ。
出来立ての合成茶菓子と温かいお茶を受け取って、勝手口で佇んでいた。
るこると芽衣は目を合わせ、軽くアイサツを交わす。
「それでは参りましょうかぁ」「よろしくのぅ」「ぐわっ」
るこると芽衣、そして『アヒルさん』は準備を済ませて、誰ともなくインターホンを鳴らす。
「はーい? どなたっスかー?」
「こんにちはぁ。『うーぱーいーつ』ですぅ。ピッツァのお届けですぅ」
「おー! どうもどうも、待ってたっスよ!」
「お荷物お届けに参りましたー、サードリバー屋の合成茶菓子ですー」
「お? おかわりっスか? 迅速っすねー」
「ぐわっ!」
「……? アニマルデリバリー……? 新鮮な試みっスね!」
「お世話になってますので、今回は少しオマケしておりますー」
「おお! そんな特典があったとは! ささ、どうぞっス!」
るこるは美味しそうな良い香りのする『ピッツァ』を料理して持ち込み、芽衣は本物の合成茶菓子を持っている。
『アヒルさん』は、……しれっとサードリバー屋と『うーぱーいーつ』のマスコット面をしているようだ。
三人とも完璧に宅配の人として扮しているため、疑われる可能性も皆無であった。
ジャッジメントガールが勝手口の扉を自ら開く。
るこると芽衣は無防備に開かれた勝手口から、内部へ突入していく。
「ふええ……あれ? なんでアヒルさんがゴールにいるんですか?」
「……ぐわっ」
「勝手口? どういう事ですか?」
ちょうどその時である。
裁判セキュリティから逃げ回っていたフリルが疲労困憊してサイバースペース領域の裏側に辿り着いた。
ドサクサに紛れて何とかサイバーモンスターを振り切った先で、開かれた勝手口から入る猟兵たちの姿と、彼女たちに続いて行く『アヒルさん』を目撃する。
『アヒルさん』は呆れた様子でフリルを一瞥すると、二人に続いて堂々と進入を果たす。
「……え?」
ガチャリ、と。
再び勝手口が閉められ……そこには呆然としたフリルが残された。
「……………………え?」
|閑話休題《それはさておき》。
「それでは失礼しますぅ」
「入れてくれてありがとうのぅ!」
「なっ!? あなたたちは、るこるさんに芽衣さん!? 猟兵じゃないっスか! デリバリー業者じゃなかったっスか!?」
中に入ったるこると芽衣はジャッジメントガールと対峙する。
るこるはピッツァを手近なテーブルに乗せてから『祭器』の展開を始め、芽衣は普段の半人半獣姿に戻って調子を整える。
万全の状態で現れた二人の姿にジャッジメントガールが驚き慄く。
「だ、騙したっスか! 身分査証とは大それた悪事っス!」
「ん? 嘘はついとらん。わしが買った茶菓子を、わしが届けに来たんじゃ」
「わたしもピッツァのお届けは真実ですので」
「わぁ、美味しそうっスね!」
追い詰められたジャッジメントガールに、芽衣は笑顔で手にした茶菓子を差し出す。
「神王サンサーラ戦では世話になったから、ちょっと良いの買ったんじゃよ?
後で食べると良い。ただし、インクを絞りきってから、の!」
「ぐ、ぐぬぬぅ……! あ、ちょっと待って他にもデリバリーが来たみたいっス」
そして、次に訪れるだろう猟兵たちの活躍を見届けるべく、るこると芽衣はスペースの隅に移動して待機するのだった。
公判(後半)に続く!
なお。
この後、勝手口から悪魔王遊戯の内に入ってきたフリルは二人に合流し、『アヒルさん』にお説教を受けるのだった。
「ぐわーっ!」
「ふええ、説明はちゃんと聞けって、怒らないでください」
「ピッツァ食べますかぁ?」
「アヒルさんも食べるかのぅ?」
「いただきます」「ぐわっ」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
嶺・シイナ
【ペポ】
電脳のことはわからないから、一緒に来たハーゲルに任せる。僕は【怪奇ヘビ人間】でハーゲルがピンポンダッシュした隙に勝手口から中に入る。
無数の小さいヘビに分かれられるので、それでジャッジメントガールのパソコンなり何なりのケーブル?のいくつかを噛む。断線は機械にとって致命的、くらいなら僕も知ってる。
感電しないよう、噛むのは僕の一部であるヘビの「竜胆」にやってもらうけど、竜胆ばかりに負担はかけられないから僕も噛むよ。
侵入後はハーゲルが外で派手にライブするみたいだから、僕は隠密を徹底。断線成功したら、脅かすくらいはしてもいいかな?
あの、ハーゲル、じゅるって、何?
アドリブ、連携○
ハーゲル・アポステル
【ペポ】
さいばんちょー、あんまり面白いことしてるとライブ始めちゃうぞ?
シイナもいるし、二人で頑張る!
まずホロドレスでサイバー・チャドーの制服姿になって勝手口のインターホンを鳴らす。
出てくる前に隠れて勝手口が開いたらシイナの出番だよ!
シイナの侵入がバレないようにオレは電脳悪魔王遊戯の真正面で『コール・アンド・レスポンス』発動、ライブ開始! 内容は「電脳悪魔王遊戯解体ショー」!
世界侵食サーバーのリミッター解除してハッキング。もちろんファイアウォールもカウンターハック。プログラミングでウィルスつくって送り込むよ!
あ、シイナの蛇が何匹か焦げて……じゅる。
アドリブ、連携◯
●今回、エンドレスドアー死す! ライブスタンバイ!
「さーて、あのでっかい壁……ドアだっけ? どうしようねー」
「電脳の詳しいところは僕にはわからないから、ハーゲルに任せる」
「はーい! シイナもいるし、二人で頑張ろう!」
我武者羅に短命の運命から逃れようともがき戦うことを選んだ文豪と、ハッキングで活動資金を稼ぎつつ路上ライブ配信で周囲を魅了しているバーチャルキャラクター。
嶺・シイナ(怪奇人間の文豪・f44464)とハーゲル・アポステル(歌って踊れる天才ハッカー・f37296)は、ジャッジメントガールがサイバースペース内部に構築した|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》エンドレスドアーの前に到着する。
ジャッジメントガールに悪魔契約書を作らせてデビルキングワールドに強制送還するべく、このアトラクションをクリアしてインクの材料を搾り取る必要がある。
そのために、二人は協力して挑戦するのだ。
「勝手口から入って、だけだとこの後もエンドレスドアーが残るかも?」
「それなら僕が隙間から潜り込んで、サーバーの配線とか滅茶苦茶にしてみよう」
「オッケー! それじゃあオレはせっかくだし、シイナの仕事が発覚することを遅らせるために真正面から解体ライブするかな!」
電脳悪魔王遊戯そのものをメチャクチャにするため、シイナとハーゲルは行動を開始する。
シイナは怪奇人間として発揮できるユーベルコード《怪奇ヘビ人間》を利用して無数の小さいヘビに分かれ、勝手口の隙間から入り込む準備を始める。
その間にハーゲルは、デザインも色も変幻自在の煌くホログラムを実体化させた『ホロドレス』でサイバー・チャドーの制服姿に変装してインターホンのカメラを欺く仮装を済ませる。
シイナの準備が整ったことを確認してから喉の調子を整えると、ハーゲルは勝手口のインターホンを鳴らす。
「はいはーい?」
「サイバー・チャドーです!」
「はーい、今開けるっスね!」
デリバリーに扮したハーゲルはインターホンを鳴らしてすぐ、ジャッジメントガールが出てくる前にその場を離脱する。
ピンポンダッシュを敢行したハーゲルの陰で、隠密に徹したシイナは勝手口が開かれる時を待ち、開いた瞬間を逃さずシイナは静かに這って侵入を果たす。
そしてシイナが気づかれないように、ハーゲルは堂々と電脳悪魔王遊戯の真正面に回り込んでエンドレスドアーの前に立ち、堂々たる《コール・アンド・レスポンス》を発動する。
「あれ? いない。どこに行ったっスか?」
「みんなー! オレのゲリラライブ、一緒に楽しまない?」
「なにごと!?」
《コール・アンド・レスポンス》は、ゲリラライブを見せた対象全員に「こっち見て踊って!」と命令するユーベルコードだ。
ライブを見ながら踊る対象はテンションアゲアゲ、命令を破った対象はやる気が半減するのだ。
エンドレスドアーの状況を確認するためにジャッジメントガールは慌てて室内に戻り、セキュリティカメラ越しにライブを目撃することになる。
「さいばんちょー、あんまり面白いことしてるとライブ始めちゃうぞ?」
「なんと、ライブの押し売りっス? いいワルっスね!」
ハーゲルはライブパフォーマンスを披露すると同時に、世界を書き換えるプログラムを走らせる為の自作のサーバーマシン『世界侵食サーバー』のリミッターを解除してハッキングを開始する。
プログラミングでウィルスつくって送り込み、サイバーモンスターを自己崩壊させていく。
もちろんファイアウォールもカウンターハックで対応だ。
ハーゲルのハッキング技術が、カウンターハックが、エンドレスドアーに介入を始める。
「ライブ開始! 内容は『電脳悪魔王遊戯解体ショー』!」
「よろしい! やってみるっすよハーゲルさん! イッツショータイム!」
だが、即座にエンドレスドアーの各種セキュリティが爆発するように稼働する。
障子紙のように吹き飛んでいくファイアウォールは、しかし|雨後の筍《バンブー・アフター・ザ・レイン》のように新たに現れる。
サイバーモンスターもすぐにウイルスに抗体を有し、朽ちていく端から世代が更新されていく。
凄まじいセキュリティ強度に、ハーゲルは目を見開く。
「やるね! 流石はさいばんちょー!」
「さあさあ楽しい冤罪の時間っスよ! どんな罪状がお好みっスかー!」
相手はジャッジメントガール。魔界でも屈指の実力者であり、職務怠慢のために費やしたリソースを正面突破するには、猟兵といえど容易いものではない。
だが、派手なライブにジャッジメントガールはノリノリで踊っており、それ故に対応は文字通り片手間になる。
リアルタイムのハッキングとクラッキングの応酬は、両者拮抗しつつあり……。
正面のライブに夢中になっていたジャッジメントガールは、背後に回り込んだ毒蛇に気づかなかった。
「断線は機械にとって致命的、くらいなら僕も知ってる」
シイナは蛇に変異したまま、ジャッジメントガールのパソコンなり何なりの機材を物色すると、ケーブル? サイバーファイバー的な何か? ともかく配線の類に近づいて……シイナの髪のメッシュの部分が変化したヘビ『竜胆』に噛ませる。
比喩表現ではない、物理的な|噛む《Byte》である。
感電しないよう注意しながら、かむかむタイムだ。
「ん? 突然画面が……って、キャアアアア!? 断線してるぅぅぅ!?」
「竜胆ばかりに負担はかけられないね」
せっかくのサイバーセキュリティが内部から崩される衝撃的展開にパニックに陥るジャッジメントガール。
どれほど精密なシステムも、どれだけリソースのあるプログラムも、根本のハードウェアが物理的に寸断されてはどうしようもない。
無線的な配線もユーベルコードである《怪奇ヘビ人間》の毒性で噛み千切られていく。
また感電対策とはいえ『竜胆』ばかりに噛ませるのは負担がかかると、ヘビになったシイナもいっしょに噛む噛むしていくので加速度的断線がジャッジメントガールを襲う。
結果。エンドレスドアーは機能不全を起こした。
「こ、これはいったい……! この部屋、何か変っス!」
「断線成功したら、脅かすくらいはしてもいいかな?」
「ぬきゃー!?」
そして、仕事を果たしたシイナたちヘビの群れがジャッジメントガールに跳びかかり、ドッキリを成功させる。
脈絡も無く蛇が襲い掛かって来ては、流石にジャッジメントガールといえど平静ではいられない。
ジャッジメントガールのコントロールが完全に離れたことで、エンドレスドアーはクリアされてしまった。
なんということでしょう。
ライブを済ませたハーゲルが扉を開けて中に入って来る。
あとは、ジャッジメントガールからインクの材料を搾り取る時間なのだ。
「そ、そんな、自分の完璧で究極の電脳悪魔王遊戯が……プロットが……!」
「お邪魔しまーす。あ、シイナの蛇が何匹か焦げて……じゅる」
「あの、ハーゲル、じゅるって、何?」
香ばしい匂いを察知したのだろう、食欲をそそられたハーゲルの視線を浴びて。
シイナはちょっと距離を取り、警戒の眼差しを返すのだった。
……ここはひとつ、他の猟兵が持ち込んだ料理で落ち着かれることを願う。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『魔界裁判長『ジャッジメントガール』』
|
POW : 証拠品押収!
【ジャッジメントハンマー】が命中した物品ひとつを、自身の装備する【証拠品入れ】の中に転移させる(入らないものは転移できない)。
SPD : 全会一致裁判官
X体の【絶対冤罪裁判官】を召喚する。[絶対冤罪裁判官]は自身と同じ能力を持つが、生命力を共有し、X倍多くダメージを受ける。
WIZ : ジャッジメントエコー
戦場内に【ハンマーで台座を叩いた音】を放ち、命中した対象全員の行動を自在に操れる。ただし、13秒ごとに自身の寿命を削る。
イラスト:ちゃろ
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●断章:電脳悪魔王遊戯は死にました。
「ぐぬぬ……! よくも、魔界から自前で持ち込んだパソコンの配線を……!
自分の完璧で究極の|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》が、崩れていく……!」
ジャッジメントガールの電脳悪魔王遊戯エンドレスドアーはクリアされた。
勝手口から侵入された時点でクリア判定されていたところを、猟兵の作戦によりケーブルやコードが噛み千切られたことで機能不全に陥ってしまたのだ。
リソースを費やした分、それが崩壊すれば修復は難しい。
これはジャッジメントガールも年貢を納めるしかあるまい。
「……いや! まだっス!
まだ見たいドラマが残ってるっス! 寿司のネタもタブレット菓子も、まだ食べ足りないっス!
屁理屈をこねてでもサイバースペースの世界法則を我が物顔で変換開始っス!
電脳悪魔王遊戯はまだまだこれからだぁー! っス!」
ジャッジメントガールの悪足掻き。
パソコンをワイヤレスモードに切り替えると、ウィーフィー的サムシングで室内領域を巨大な競技場に変換する。
本来ならばサイバースペースが広大なスポーツフィールドに切り替わり、四方八方から笑顔が爽やかな選手たちが出現して様々な技量で猟兵たちを襲撃するというスリリングな仕掛けが満載されている……はずでした、プロットでは。
「……あぁ、マウスのコードも噛み切られてるっス!? これじゃギミックを動かしにくいっス!!」
サイバースペースのハッキングに必要な大事な重要な配線が切られたせいで、リアルタイムで臨機応変することが難しくなってしまったのだ。
ジャッジメントガールが戦闘中にタイピングだけでできるのは、広くなった競技場に四角いキューブや階段を作って高低差を作ることまで。
高いところから《ジャッジメントエコー》を放ったり、絶対冤罪裁判官を召喚したり、ジャッジメントハンマーを上から振り下ろしたり、という優位性を得ることであった。
可哀想に、憐れんであげましょう。
「チクショウメッ! ええい、しかし自分も魔界の悪魔! ギミックが使えなくとも、ただでは屈服しないっス!
悪魔王遊戯の仕上げは、頂上で待ち受ける自分との一騎打ち! 全力でかかって来るっス猟兵の皆さん!」
小細工が使えなくなったジャッジメントガールを叩きのめすのは、猟兵たち全員で一と見做す一騎打ち。
最強クラスの悪魔である彼女はそう簡単にはやられないので、容赦なく全力で当たってもらいたい。
やぶれかぶれになったジャッジメントガールが、競技場の頂上で戦いのゴングを鳴らすのだった。
※ジャッジメントガールとの戦闘です。
悪魔王遊戯の仕掛けは事前に破壊されたので、回避判定になります。
そのため、参加者全員にプレイングボーナスが適応されます。
|決定的成功《FATALITY》……!
それはそれとしてジャッジメントガールは素の状態でも強いので、お気を付けください。
よろしくお願いいたします。
皐・芽衣
おっ、まだ足掻けるくらいには世界法則に干渉できるんじゃな。
悪魔インクのためじゃ、まだまだ徹底的に絞り上げんとのぅ!
ワイヤレスで操作しとるんじゃろ?
なら、それも邪魔してやろう!
【神羊拳・纏雷】で雷を纏い、[電撃・範囲攻撃]をばら撒きつつ近接[功夫]で攻める。
宙を走る電撃も、雷を纏うわし自身も、ワイヤレス電波との相性は悪いじゃろ?
全会一致裁判官もジャッジメントガールも、纏った[電撃]の[マヒ攻撃]で動きを鈍くしてからの[功夫・2回攻撃]で対応。
[部位破壊]でのタイピングの邪魔も、積極的に狙っていこう。すまんな、お主のインクの為じゃ。
さぁ、送還の判決はもうすぐじゃ!
覚悟を決めておかんとのぅ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
少々可哀想なことになっておりますが。
そろそろ宜しいです?
『FAS』により飛行、『FLS』で|各『祭器』《未装備含》を召喚しまして。
『FPS』で彼女の動きを探知、『FMS』のバリアと『FES』の結界で守りに備えますねぇ。
【押収】は『FIS』で回避するか、防御後に回収された『祭器』を『FLS』の召喚で呼び戻せば良いですぅ。
そして【拿禦】を発動、彼女の|制御下から外れた《誰も制御していない》『電脳悪魔王遊戯』を制御下に置きますねぇ。
[切断]された箇所は、彼女が操る為必要な部分以外を『操作』して繋げても良いですし。
後は『予定の仕掛け』と共に『FRS』の[砲撃]を重ね叩きますぅ。
嶺・シイナ
【本強】
はじめまして。僕は嶺・シイナ。
え?損害賠償?ナニソレオイシイノ?
美味しいならハーゲルにあげて。
裁判官は鮫剣でなぎ払って進む。ハーゲルは物理攻撃手段が乏しいから、僕が請け負うよ。
ジャッジメントガールのところに着いたら、二人で文庫本出して【無心打擲】するから、それまで文庫本を使った攻撃はしない。
【精神攻撃】で【傷口をえぐり】【傷口を広げる】。舌戦でも圧倒し、足腰立たなくしてやる。
ワルであることが法の世界に生きる輩が悪いことを裁くなんて片腹痛い。
それならお前の怠惰を先に罰してやろう。法は正しく行使されるべきだ。なあ、裁判官?
ハーゲル・アポステル
【本強】
はーいさいばんちょー、ライブは楽しんでくれたかな?
でもライブはまだまだ続くよ? 今回のお題は「さいばんちょーはいつまでてっぺんにいられるか!?」
オレはどっちかというとライブパフォーマンス専門だからね、歌って踊って☆精☆神☆攻☆撃☆
裁判官が何人来てもオレの歌と踊り、時々ホロドレスをいじってネタコスチュームをお見せするよ!
ネタコスチュームの時は裁判官のハートにダイレクトアタック☆ 笑い転げたところをシイナに捌いてもらう。
シイナの動きに合わせて踊りながらさいばんちょーに近寄って『|無心打擲《ノベルズ・スタッカアト》』を脳天にお見舞いだ!
皇・絶華
神機の主発動中
おお!お前が偉大なる悪魔のジャッジメントガールか!
「生意気なやつだな!と言うか…働け!」(黒髪少女)
まぁそう言うなさっちゃん
これよりお前を救って見せる!
【戦闘知識】
敵の動きを解析
【空中機動・念動力・弾幕・オーラ防御】
UC準備開始
音を届かせないためのオーラ念動障壁展開
飛び回りながら念動光弾乱射
【二回攻撃・切断】
TCで切り刻み
【爆破】
UC発動
ジャッジメントガールよ!お前がそのようになっているのは深刻なパワー不足だ!だが安心しろ!お前に圧倒的なパワーを与えよう!
このバルタンもまっしぐらなぜっちゃんチョコでな!
「わ、わぁ…!」
お菓子好きの様だし食べ放題だ!
圧倒的なパワーで喜び叫ぶがいい!
フリル・インレアン
リバーソンマスターにおまかせします。かっこいいアヒルさんをお願いします!
『グワッ、グワー』
アヒルガジェットのアヒルナイト×ガジェット本鳥、です。
普段の口調は「優雅なアヒルさん(ぐわ、ぐわわ、ぐわわわ、ぐわ、ぐわ、ぐわわ、でぐわわ?)」、戦闘の時は「勇敢なアヒルさん(グワッ、グワワ、グワワ、グワ、グワ、グワワ、グワワ?)」です。
ユーベルコードは指定した物を勇敢に使用し、多少の怪我は厭わずフリルがどうなろうと積極的に行動します。他の猟兵(フリルを除く)に迷惑をかける行為はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
……って、なんて事を言ってるんですかアヒルさん!!
●全選手ッ! 入場ッ!
四角いキューブのタワーの上で胸を張るジャッジメントガールを猟兵たちは見上げ、総員で殴り掛かろうとしていた。
ジャッジメントガールをデビルキングワールドに帰すために必要なことなので、何も後ろめたいことはないのだ。
「はじめまして。僕は嶺・シイナ」
「出たっスね、器物破損の現行犯!! 損害賠償を請求するっス!!」
ヘビから普段の姿に戻った嶺・シイナを見て、ジャッジメントガールは激怒した。
シイナが配線を切断し、|電脳悪魔王遊戯《サイバーデビルアトラクション》を崩壊させた張本人であると決めつけているのだ。
事実だから冤罪ではないのだが、その証拠は報告書にしかないので実質冤罪。
「え? 損害賠償? ナニソレオイシイノ? 美味しいならハーゲルにあげて」
「シイナさんに贈呈するんじゃなくて、シイナさんから徴収するんッスよっ!!」
「はーいさいばんちょー、ライブは楽しんでくれたかな?
でもライブはまだまだ続くよ? 今回のお題は『さいばんちょーはいつまでてっぺんにいられるか!?』だよ!」
「いいっスよ、それなら自分は頂上で勝ち誇ることに幻朧帝イティハーサの魂を賭けるっス!」
元気に笑顔を向けるハーゲル・アポステルの提案に、ジャッジメントガールは嬉々として応じる。
双方同意のため企画は成立したものの、ベットされた魂はもはや二度と復活しないので踏み倒すつもり満々である。
魔界裁判長、実にワルである。
「おっ、まだ足掻けるくらいには世界法則に干渉できるんじゃな。
悪魔インクのためじゃ、まだまだ徹底的に絞り上げんとのぅ!」
「むむむ……デビルキングワールドへの帰還に協力してくれる、そのお気持ちはありがたいっスが……。
このジャッジメントガールには|夢《欲望》があるっス! そう簡単に絞り出させはしないっスよ!」
自信たっぷりに笑みを向ける皐・芽衣がジャッジメントガールを見上げ、ジャッジメントガールもまた芽衣を見て戦意を表す。
言われて素直に応じるような良い子では、魔界裁判長の座を数百年維持することはできないのだ。
「少々可哀想なことになっておりますが。そろそろ宜しいです?」
「あ、もうちょっとお待ちを。あとお二人の前口上が終わったら開始の宣言をするっス」
「わかりましたぁ。それでは準備をしておきますねぇ」
夢ヶ枝・るこるはおっとりとした様子で、しかし熟練の猟兵として隙を見せることなく戦闘準備を整えていく。
ジャッジメントガールが他の猟兵と言葉を交わしている間に、札型祭器『フローティング・リンケージ・システム』を展開して、所持している多数の『祭器』の召喚と完全制御を行った。
三対のオーラの翼型祭器『フローティング・エアロフォイル・システム』で飛行して頂上にいるジャッジメントガールにいつでも強襲できるようにしつつ、各種探知能力を有する162個の浮遊する涙滴型の水晶型祭器『フローティング・プローブ・システム』で競技場内の情報を収集。
162枚の円盤型祭器『フローティング・ミラーコート・システム』と162枚の布型祭器『フローティング・エレメンタル・システム』による様々な属性の結界とバリアを展開して、守りも備えていた。
そしてしれっとユーベルコードも発動して、完封の布石を打っている。
「おお! お前が偉大なる悪魔のジャッジメントガールか!」
「そうっスよ! そういうあなたは……初めましてっスね!」
そして、増援として馳せ参じたのはケルベロスブレイドなる世界出身の螺旋忍者。
チョコ作りに凝っているチョコ好きの猟兵、皇・絶華(影月・f40792)だ。
そこ傍らには、彼が目覚めた時から一緒にいる下僕たる連環神機『サートゥルヌス』こと『さっちゃん』も伴っている。
『サートゥルヌス』はジャッジメントガールに胡乱なものを見る視線を向けている。
「生意気なやつだな! と言うか……働け!」
「まぁそう言うなさっちゃん。これよりお前を救って見せる!」
「ほほう。ならばこう言わせてもらうっス。……黙れ小僧! お前にジャッジメントガールが救えるかっス!」
それぞれがジャッジメントガールへの戦意を昂らせ、戦いが始まるゴングが鳴る時を待っている。
そんな中。
「グワッ、グワー」
「えっ」
アヒルガジェットのアヒルナイト×ガジェット本鳥、『アヒルさん』が優雅な雰囲気でジャッジメントガールに対峙する。
その鳴き声は勇敢さを感じさせ、後ろにいる付き添いのフリル・インレアンはきょとんとして立ち尽くしている。
「多少の怪我は厭わずフリルがどうなろうと積極的に行動します。他の猟兵(フリルを除く)に迷惑をかける行為はしません?」
「グワッ、グワワ」
「……って、なんて事を言ってるんですかアヒルさん!!」
「よろしい! それではフリルさんはこっちで預からせてもらうっス!」
「えっ???」
フリルの意気やヨシッ、とジャッジメントガールが先制攻撃的にユーベルコードを発動する。
戦場内にハンマーで台座を叩いた音が放たれ、フリルは《ジャッジメントエコー》によりジャッジメントガールによって自在に操られる。
仲間の猟兵たちが見守る中、だいたい12秒くらいでジャッジメントガールの隣まで浮き上がっていった。
「ではフリルさん! 宙に浮くっス!」
「は、はい、フリル、浮きます……」
「ふ、フリルーッ!?」
「おやぁ。やはり……」
「愉快なことになっておるのう」
そしてそのまま、ひょいっと証拠品入れへとボッシュート。四畳半のスペースに放り込まれ、捕獲された。
なんと悪辣なことか! ジャッジメントガールは、フリルを囚われのお姫様ポジションに仕立てあげたのである!
「ふええ!?」
「と言う訳でフリルさんを返してほしければ、この魔界裁判長ジャッジメントガールを打ち倒してみせるっス!」
「そういうことなら容赦はいらないよね」
「うん! 大義名分はオレたちにあり! さいばんちょー、お覚悟ー!」
悪魔らしい演出をアドリブで添えながら、ジャッジメントガールは高らかに笑い戦いのゴングを鳴らす。
ジャッジメントガールを倒す動機が一つ増えた今、心置きなく叩きのめすことができるだろう。
―――決戦が、始まる。
「どうして、アヒルさんこんなことを」
「グワッ」
「お茶でも飲んで待ってろって、ここには何もないですよ。お菓子まで届きません」
●猟兵たちの常軌を逸した連鎖戦。
「グワ、グワ、グワワッ!」
「ふええ、ちょっとこの評価厳しくありませんか? それに何でこんなことまで評価されるんですか?」
『アヒルさん』が懸命に競技場をよじ登っていく最中、虜囚のフリルはユーベルコードを行使している。
それは《猟兵文庫『ドキドキ私の戦績表』(ビブリオフリル・ドキドキマイリザルト)》。
戦闘力のないフリル自身の、戦績表を召喚するユーベルコードだ。
フリルが活躍や苦戦をする度、戦績評価され、それを見た『アヒルさん』の機嫌によって武器や防具がパワーアップする。
「グワッ、グワワ? ……グワーッ!」
「ああ。アヒルさんがすごくパワーアップしてます」
「なるほど。アヒルさん、自らをパワーアーップ! させるためにあえてフリルさんを苦戦の中に叩き込んだと。策士っスね!」
「叩き込んだのはジャッジメントガールさんでは?」
《 ジャッジメントエコー》の効果を再び発動させてフリルを正座させておきつつ、ジャッジメントガールが眼下から迫る猟兵たちへの攻撃を開始する。
「ならばまずは《全会一致裁判官》! 出でよ、絶対冤罪裁判官たち!」
ジャッジメントガールがジャッジメントハンマーを振り上げると、数体の【絶対冤罪裁判官】を召喚される。
絶対冤罪裁判官たちは生命力を共有し、数倍多くダメージを受けるリスクがあるが、いずれもジャッジメントガールと同じ能力を持つ。
ジャッジメントハンマーを担いだ絶対冤罪裁判官たちが、猟兵たちを見下ろして判決を下す。
「有罪!」「有罪!」「有罪!」「有罪!」「有澤!「有罪!」「誰だ今の」
「来ますねぇ」
「あれらはわしらが対処しようかのぅ」
「グワッ」
高所から飛び降りてくる絶対冤罪裁判官たちに、まず最初に芽衣が応戦する。
芽衣は機敏にキューブを駆けあがって『アヒルさん』を追い抜きつつ、《神羊拳・纏雷(シンヨウケン・テンライ)》を発動する。
「さぁ、暴れようかのぅ!」
「ギャアアアア!?」「ろ、漏電!」「いや感電では!?」
「え、あちょ、通信状態が悪化するっス!? 電撃はやめてっス!!」
芽衣が仙術で練り上げた闘気により作られた電撃が広範囲にばら撒かれ、ジャッジメントガールのパソコンから発せられるハッキングが妨害される。
同時に芽衣は帯電させた闘気を纏った状態で絶対冤罪裁判官たちに接近すると、次々に電撃を浴びせて功夫による連続攻撃を叩き込んでいく。
一体が浴びた電撃は他の絶対冤罪裁判官にも共有されるが故に、感電のバッドステータスは叩き込むほどに浸透して深くダメージを刻んでいく
「ワイヤレスで操作しとるんじゃろ? なら、それも邪魔してやろう!」
「おのれぇ、我らが裁判長の邪魔をするなんて、電波法的サムシングで有罪!」
「二重の意味で、きかぬのぅ!」
怒り心頭の絶対冤罪裁判官がハンマーを振り下ろすも、芽衣は功夫による受けで的確にパリイする。
《神羊拳・纏雷》の効果により多少の攻撃は効かず、冤罪による判決も聞かないのだ。
芽衣は反撃とばかりに電撃をばら撒きながら、部位破壊の要領でジャッジメントガールのタイピングの邪魔も積極的に狙っていく。
「ああああ指先に痺れがっ! 電子機器になんてことをするっスか!」
「ははっ! 宙を走る電撃も、雷を纏うわし自身も、ワイヤレス電波との相性は悪いじゃろ?」
そして、芽衣の後に続いて二人の猟兵もキューブを上がって行く。
シイナが前に立って鮫の牙のような無数の刃が生えた呪剣『鮫剣』を振るい、ハーゲルはその後ろで歌って踊って援護する。
絶対冤罪裁判官たちは痺れながらも明確に凶器を握るシイナを警戒し、その背後で動きを見せるハーゲルに意識を逸らされている。
「ハーゲルは物理攻撃手段が乏しいから、僕が請け負うよ」
「オレはどっちかというとライブパフォーマンス専門だからね」
「ほう、キレのある動き」「そして始まるウルトラソウルッ!」「ぶふぉっ!?」
そして不意にネタコスチューム。
ハーゲルが『ホロドレス』を利用して、金ぴかの和服でコサックダンスという|パフォーマンス《精神攻撃》を披露する。
突然明るいハーゲルを直視した絶対冤罪裁判官たちのハートにダイレクトアタック。
思わず吹き出し笑い転げた絶対冤罪裁判官を、すかさずシイナが捌いていく。
「その姿でサンバじゃないのかっ!?」「演歌だよ」「マンボッ!」「どっち!?」
そうして芽衣とシイナが絶対冤罪裁判官たちをなぎ払って突き進み、競技場の頂上に立つジャッジメントガールのもとへ辿り着く。
二人の後ろで|金色《ゴールド》に輝くハーゲルを見据え、ジャッジメントガールはシリアスにジャッジメントハンマーを構える。
「よくぞここまでたどり着いたっス! ……ところでハーゲルさん、あの、版権的な話になんスけど、それって松だいr「すまんな、お主のインクの為じゃ」アバババッ!」
芽衣は《神羊拳・纏雷》で纏った電撃を活用して話の途中のジャッジメントガールを痺れさせて動きを鈍くする。
その隙に功夫の連続攻撃を叩き込むものの、ジャッジメントガールは巨大なジャッジメントハンマーを駆使して辛うじて凌いでいる。
ジャッジメントガールも最強クラスの悪魔。純粋な技量は猟兵に比肩する。
だが、この戦いは一騎討ちではない。
芽衣がジャッジメントガールと打ち合っている隙に、シイナとハーゲルはジャッジメントガールの背後に回り込むことがかなう。
そして、二人それぞれが持つ『文庫本』を取り出すと、互いに呼吸を合わせてジャッジメントガールの脳天に文庫本をお見舞いする。
「ペンは剣よりも強いってこと、今から身をもって思い知るといい」
「ペンは剣よりも強いってこと、今から身をもって思い知ってみる!?」
「にばいっ!?」
二人が行使したものは、《無心打擲(ノベルズ・スタッカアト)》。
『文庫本』を使って「どのように攻撃するか」を予想できなかった対象1体に、角による打擲の一撃が必ず命中するユーベルコードだ。
ジャッジメントガールの頭頂部に『亜桜研究所』と『或ル音楽家ノ死ニ咲ク櫻』が突き刺さり、悪魔インクがちょろっと零れだす。
「な、なんて酷いことをするっス……! 後ろから本で殴るなんて文化的な!」
「悪魔なのに甘いことを言うんだね」
物理面で痛撃を与えたシイナは、精神面でも追い打ちを仕掛ける。
傷口をえぐり、傷口を広げる言葉を叩きつけ、舌戦でも圧倒して足腰立たなくしてやろうというのだ。
「ワルであることが法の世界に生きる輩が悪いことを裁くなんて片腹痛い」
「じ、自分が独断と偏見で一方的に裁く……それはとてもワルではないっスか?」
「いや、ただの我儘だ。職務を放棄して他所の世界に迷惑をかけるのは、ワルではなくダメだと思うよ」
「ぐぅ……! そ、それは……」
反論を封殺し、アイデンティティをクライシスさせる攻め口。
シイナの切れ味の良い舌鋒がジャッジメントガールの心を傷つけた。
そして芽衣と共に現実で突き刺した。
「それならお前の怠惰を先に罰してやろう。法は正しく行使されるべきだ。なあ、裁判官?」
「さぁ、送還の判決はもうすぐじゃ! 覚悟を決めておかんとのぅ! 仕事に戻る時間じゃろ!」
「い……嫌っス! その判決は棄却っス! 自分まだ、堕落たりないっスー!」
心を傷つけられたジャッジメントガールは、駄々をこねてジャッジメントハンマーを遮二無二に振り回す。
ジャッジメントハンマーが命中した物品ひとつを自身の装備する証拠品入れの中に転移させるユーベルコード《証拠品押収!》を警戒して三人が距離を取る。
フリルがハラハラと見守る中、拮抗仕掛けた戦況へ絶華と『サートゥルヌス』が切り込んでいく。
「押収っス~!」
「魔力リンク開始……さぁ……その力……振るってもらうぞ、さっちゃん!」
「わかったが、いいか、”あのユーベルコード”は使うんじゃないぞ……?」
「わかった、ユーベルコード発動!」「おい!?」
絶華の魔力で強化された神機『サートゥルヌス』を放つユーベルコード、《神機の主(キシンタチノアルジ)》は各能力を駆使して戦ったり絶華と連携援護効果によって、同時に使用する他のユーベルコードの成功率を高める効果がある。
”あのユーベルコード”を発動しつつ、絶華は『サートゥルヌス』と連携してジャッジメントガールの動きを制限する戦法を取る。
すなわち遅滞戦闘。
絶華と『サートゥルヌス』は芽衣とジャッジメントガールの戦いを解析して動きを見極めており、シイナとハーゲルの《無心打擲》を参考にしてジャッジメントハンマーが命中しない距離を確認していた。
「さあドンドン行くぞジャッジメントガール」
「押収、押収! 全部押収するっスー!!」
ジャッジメントガールが跳びかかって来ても対処できる間合いを維持して飛び回りながら、威力を抑えた念動や光弾を乱射する。
絶華は四方八方から降り注ぐ弾幕をことごとく証拠品入れの中に転移させ「ふえええ!?」フリルが酷い目に遭うことで『アヒルさん』がさらにパワーアップするというマッチポンプを兼ねつつ、ジャッジメントガールが冷静さを取り戻さないようかく乱し続けるのだ。
そうして、およそ三分後。
「熟したな。ジャッジメントガールよ! お前がそのようになっているのは深刻なパワー不足だ!
だが安心しろ! お前に圧倒的なパワーを与えよう!
この|グリモア猟兵《バルタン》もまっしぐらなぜっちゃんチョコでな!
「わ、わぁ……!」
「押収! 欧州! 応酬! ……おや?」
ついに”あのユーベルコード”が発動する。
それは、《ぜっちゃんとチョコの神々(チョコニオセンサレタカナシキジャシンタチ)》!
このユーベルコードは、宣言から161秒後に161体のカカオ濃度1万%の漢方チョコ邪神植物が出現し、指定の敵1体だけを対象として選び、その口の中に飛び込んで内側から圧倒的なパワーと地獄のような味で味覚と肉体共々破壊する事で攻撃するのだ。
栄養満点ですさまじいぱわーを誇る漢方チョコ邪神植物の群れが、蠢きもがき視線を対象に向ける。
すなわち、ジャッジメントガールの口の中に”ソレら”が入り込もうとする。
「我がチョコを食する事で圧倒的なパワーを得る事が出来る! 遠慮なく食すがいい!!」
「おお! つまり栄養満点な新しいお菓子っスね、いただきまー……辛苦!!?」
甘いチョコレートだと思い喜んで漢方チョコ邪神植物を口内に迎え入れたジャッジメントガール。
そんな甘い話はなく、地獄のような味に目を白黒させる。
そして、咀嚼、嚥下。
「もう、地獄味ならそう言ってくれれば。もぐもぐ」
「た、食べてる……!?」
「フッフッフ。お菓子好きの様だし食べ放題だ! 圧倒的なパワーで喜び叫ぶがいい!」
「ありがたくいただきまっス!」
「ありがたくっ……!?」
相手はデビルキングワールドの魔界裁判長。
地獄のような味のカカオ濃度1万%の漢方チョコ邪神植物たちもちょっと変わった味付けのチョコレートと相違ない様子で、美味しそうに食べている。
体内で元気に暴れ回るチョコもジャッジメントガールの胃袋は消化可能なようだ。
『サートゥルヌス』が尋常ではない存在を見る眼差しを送り、ジャッジメントガールが漢方チョコ邪神植物を平らげていく時間。
そうして絶華が時間を稼いだことで、るこるが展開していたユーベルコードの効果がついに衆目に晒される。
「大いなる豊饒の女神の名に於いて、その祈りを届けし聖壇の理をここに」
「もぐもぐ……おや?」
ジャッジメントガールが異変に気付いた時には、時すでに遅し。
るこるは、ジャッジメントガールの数々の攻撃を『フローティング・ミラーコート・システム』と『フローティング・エレメンタル・システム』で防ぎつつ、《豊乳女神の加護・拿禦(チチガミサマノカゴ・サシオサエシリョウユウ)》を行使していた。
《拿禦》は、半径162m以内に存在する敵が制御していない装備や設備を自身の制御下に置き操り、概念的に『祭器』と接続するユーベルコードだ。
るこるは機械類以外に限らず操作や接続ができるこのユーベルコードで、ジャッジメントガールの|制御下から外れた《誰も制御していない》『電脳悪魔王遊戯』を制御下に置いていたのだ。
ジャッジメントガールが絶華たちとの戦い(?)に夢中になっている間に、るこるは秘かに静かに奪い取った電脳悪魔王遊戯を操作して、四角いキューブや階段を床の高さにまで下げていたのだ。
るこるが高所で飛行して見下ろしており、ジャッジメントガールの目と鼻の先には、さも頑張って登攀しましたと言わんばかりに『アヒルさん』が待ち構えている。
「な、なあ!? 自分の電脳悪魔王遊戯が!? あれ、パソコンからの指示を効かない!? ナンデ!?」
「ええ。芽衣さんの電波で妨害されていた間……制御されていませんでしたから」
「グワ、グワッ」
そしてるこるは、切断された箇所も操作して接続することで機能不全に陥っていたエンドレスドアーまでも制御する。
難攻不落を謳いつつ突破されて崩壊したエンドレスドアーだが、そのシステム自体は健在だ。
数多のサイバーモンスターも、多重のファイアウォールも、メガコーポの十二機のサーバーから送られて来るエネルギーも、全部るこるの手の内に収まった。
「の、|NTR《乗っ取り》っス~! 犯罪ーっス!」
「それでは、重ねて叩きますぅ」
そして、仲間たちが見守る中。
るこるは悠々と、『予定の仕掛け』と共に電脳悪魔王遊戯機能を『祭器』として振るう。
浮遊する161台の球体と対になる一対の腕輪で構成された、砲台に変形して砲撃が可能となる祭器『フローティング・レイ・システム』を筆頭に、各『祭器』による一斉発射を放つ。
砲撃、爆撃、範囲攻撃の追撃。
個人に向けるには過剰と思える火力が、逃げ場のないジャッジメントガールに殺到する。
「そ、そんなまさか……! このジャッジメントガールが……! このジャッジメントガールがー! っス!!」
ジャッジメントガールは150発ほどをジャッジメントハンマーで防ぐも、ほぼ同時に放たれる飽和攻撃に対処しきれず爆発に飲み込まれた。
個人に向けるには過剰でも、ジャッジメントガールには適正だったようです。
しばらくして爆風が納まった後。
床に突っ伏し倒れるジャッジメントガールの上に立ち、堂々と勝利のポーズを取る『アヒルさん』が雄姿を見せてくれていた。
「グワッ」
「あの、結局アヒルさんは何もしてないような」
「グワワ」
おそらくガッツとか食いしばりとかそういうものでジャッジメントガールのHPが1で耐えたところにくちばしでトドメを刺してくれたのでしょうきっと。
これにて戦闘、完勝! それでは戦後処理に移行します。
大成功
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第3章 日常
『AOZORAサイバー・チャド―』
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POW : 合成茶菓子に舌鼓を打つ
SPD : スゴイワザマエで茶を立てる
WIZ : チャド―の空気を楽しみつつハイクを詠む
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●怠惰な裁判長に書類仕事を!
サイバースペース領域内に、サイバーザナドゥではめったに見られない青空が広がっている。
猟兵たちが電脳悪魔王遊戯をクリアしたことで、ジャッジメントガールが怠惰にゴロゴロ有意義な余暇を過ごすために整えていた快適なサイバースペースが、何ということでしょう。
壁や天井や防衛用設備といったリソースが雲散霧消したことで、透き通るような空気に包まれた見晴らしの良い状態になっていた。
……電脳空間に空気……?
「うう……びっしりしっかり書かなきゃいけないのが苦行っス……あれ、ここは乙と丙どっちだったっスかね」
何はともあれ、現在サイバースペースにはジャッジメントガールから溢れ出た大量の悪魔インクが漂っている。
悪魔王遊戯をクリアされ、フルボッコにされたことで契約書を書くに十分な量が集まったのだ。
あとはジャッジメントガールが悪魔契約書を書く作業を完遂するまで、それを監督すればいい。
「ちわー、サードリバー屋でーす」
「あ。猟兵さんたちが来る前に頼んでた物が届いたみたいっス。……」
納品された合成茶菓子やお茶も、猟兵たちが持ち込んだ飲食物もある。
ジャッジメントガールが契約書を書き終えるのを待つ間、それらに舌鼓を打ったり、ティーセットを使って茶を立てたりしてもいいだろう。
あるいは、このチャドーの雰囲気を楽しみハイクを詠んでみるのも良いかもしれない。
「まいどー。またのご利用お待ちしてまーす」
「チラッ……チラッ……」
悪魔契約書の内容に抜けがあると、召喚(送還)に耐えきれずにジャッジメントガールは死ぬ。
そのため、ちゃんと悪魔契約書を書き終えるまでミスがないか見張る必要はあるのだが……。
多少なら、ジャッジメントガールの休憩も許容されるだろう。
もちろん本末転倒にならないよう、サボタージュにならない範囲で。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
悪魔の方ですから、腱鞘炎等はそうそうないとは思いますが。
集中力が切れる可能性は有りますし、休憩は入れて置いた方が良いでしょうねぇ。
『茶道』と『チャドー』のお茶の味は、どの様な違いが有るのですかねぇ?
『合成茶菓子』も有りますし、折角ですから飲み比べ/食べ比べてみても良いかもしれません。
『FLS』で召喚した『FTS』から材料や道具を取出し【豊饒宿霊】を発動して[お茶会]を強化、[料理]と合わせて『チャドー』の方の品と同系統の、元々の『茶道』に使われる『お抹茶』と『お茶菓子』をご用意しますねぇ。
後はガールさんの様子を見つつ、必要そうなら休憩をお誘い、ゆっくり食べ比べましょう。
フリル・インレアン
さぁジャッジメントガールさん、悪魔契約書を書いてくださいね。
ふえ?アヒルさん、この紙はなんですか?
ふええ!?これは私の反省文を書く紙って、なんでですか?
ふえ?あれだけの事をしてれば当然って…………ふええ。
アヒルさんが二人共しっかり見張ってるから、しっかり書くようにって、私もお茶菓子いただきたかったのに。
皐・芽衣
ちゃんと集中せんと、と言いたいところじゃが
隣で遊んでいるのを尻目に書き続けるのも苦行じゃろからのぉ。
じゃが、わしが居れば心配無用じゃ。
【獬豸ノ慶雲】を纏い、ジャッジメントガールの近くにいよう。
わしが認めた裁判官であるお主は強化され、仕事がはかどる。
更に誤字脱字等の不利益になる行動も、わしが感知して止められる。
合間に休憩を挟んだりしても、完璧に執筆できること請け合いじゃ。
どれ、わしもチャと茶菓子をいただこうかの。
買ったときから気になってたんじゃ。
——これは美味い!お主も一緒に食べよう、ジャッジメントガール!
サードリバー 茶菓子とカフェイン 実際美味い
チャドーの場はポエットになるのも、納得じゃな!
嶺・シイナ
茶の湯……そういえば、あの人に教えてもらったな。
(何故かスゴイワザマエでお茶を立て始めるシイナ)
最後にのの字をかいて……はい。どうぞ。
久しぶりにやったけど、懐かしかったな。
今日の話を文庫本に書き込んでおこう。
文字を書くのは好きだけど、悪魔契約書を代筆するわけにもいかないし。なに?これにサインしてって?やだよ。冤罪の賠償請求なんて。
ほらほら、いらないおてがみは山羊さんに食べてもらおうね。(ユーベルコードで「クロヤギとシロヤギの歌」を書いたらしく山羊がいる)
お茶は全員分立てるよ。俳句?うーん……
梢にて 鶯鳴くは いつなるか
まあ、好きに批評するといいよ。
アドリブ、連携○
ハーゲル・アポステル
はーいさいばんちょー、契約書作成お疲れさまー☆
みんなしっかり見張ってるしオレはさいばんちょーの応援でもするかー
え、ライブはしないよ? 気が散るし書き損じしちゃってさいばんちょーがちゃんと戻れなかったら大変だし。
だからオレはおやつでも食べながらさいばんちょーがサボらないように……と。
あ、この合成茶菓子おいしいね。ほら、さいばんちょーも糖分必要だろうから、あーん。
うーん、(第1章で焦げた)シイナの蛇もおいしそうだと思ったんだけど、アレUCで出た奴だから消えちゃったんだよね、ちぇー……
ま、その分ここのおやついっぱいもらうね!
あ、チャドーも面白そうだからオレも茶を立ててみていい?(ばしゃー)
●裁判長は勤勉になったようです?
「さぁジャッジメントガールさん、悪魔契約書を書いてくださいね」
「完膚なきまでに悪魔王遊戯をクリアされたっスからね……従うっスよ!」
「グワッ!」
「ふえ? アヒルさん、この紙はなんですか?」
フリル・インレアンがしっかりとジャッジメントガールの監督をしようとすると、『アヒルさん』が何かの紙を手にフリルへ声をかける。
それは、反省文を書くための原稿用紙だ。この場にいる作家の方から400文字縦書き5枚を貰って来たのだ。
「グワッグワッ」
「ふええ!? これは私の反省文を書く紙って、なんでですか?」
『アヒルさん』の眼差しが語る。今回の件で、フリルが何をしてきたのか。
グリモア猟兵の説明を聞き流して電脳悪魔王遊戯に正面から挑んだ上に突破できず逃げ惑い、ジャッジメントガールとの戦いで早々に操られて囚われのお姫様になった。
このままお茶と茶菓子とピッツァを飲み食いして帰るだけなのかと、つぶらな瞳でじっと見つめている。
「ふええ……あれだけの事をしてれば当然って…………ふええ」
「グワッ」
『アヒルさん』の眼差しが語る。しっかり見張ってるから、しっかり書くようにと。
それまでお茶菓子は我慢するのだと。
「ふえええ、私もお茶菓子いただきたかったのに」
「それじゃあフリルさん、一緒に書くっスよ」
しかしジャッジメントガールにとってこれは良いことになる。
書かされるのが自分一人だけではないという状況は安心感を得られる。
一緒に苦行に付き合ってくれる仲間がいることは心理的重圧を緩和できると、テニス・フォーミュラの宮本武蔵も言っている。
「ちゃんと集中せんと、と言いたいところじゃが。隣で遊んでいるのを尻目に書き続けるのも苦行じゃろからのぉ」
「悪魔の方ですから、腱鞘炎等はそうそうないとは思いますが。
集中力が切れる可能性は有りますし、休憩は入れて置いた方が良いでしょうねぇ」
皐・芽衣と夢ヶ枝・るこるも、ジャッジメントガールがしっかり悪魔契約書を書き終えるのを見届けるために待機している。
書き損じがあってはジャッジメントガールが死ぬので見張りを怠ることはないが、気力が削がれないように工夫を考えている様子だ。
「じゃが、わしが居れば心配無用じゃ。お主を守護しよう!」
「それでは私はお茶会の用意をしますねぇ。合成茶菓子もありますし、折角ですから飲み比べや食べ比べをしてみても良いかもしれません」
るこるは各『祭器』による探知機能を監視装置として応用しつつ、『茶道』と『チャドー』の違いを比べようと支度に入る。
そしてジャッジメントガールの傍らに留まる芽衣の周囲に、多色の模様がまだらに見える雲が浮かび、ぼんやりと発光する。
それは芽衣のユーベルコード、《獬豸ノ慶雲(カイチノケイウン)》。
慶雲を纏った芽衣が瑞光を体内から放出している間、周囲半径152m以内にいる芽衣が認める者を強化し、その者が不利となる行動をすべて感知するのだ。
「わしが認めた裁判官であるお主は強化され、仕事がはかどる。
更に誤字脱字等の不利益になる行動も、わしが感知して止められる。
合間に休憩を挟んだりしても、完璧に執筆できること請け合いじゃ」
「おー! ありがたいサポートっス……! それじゃあ頑張るっスよ!」
こうして芽衣は、気に入っているジャッジメントガールへのサポートに専念する。
なのでフリルへの強化は行われないし不利となる行動は感知されないのでご了承ください。
そして、文庫本攻撃を叩き込んだ二人もジャッジメントガールの応援に協力する。
「ふうん。道具はいいものが揃ってるね。メガコーポから|奪《もら》って来たの?」
「うーん、シイナの蛇もおいしそうだと思ったんだけど。アレってユーベルコードで出た奴だから消えちゃったんだよね、ちぇー……」
「……」
「ま、その分ここのおやついっぱいもらうね!」
ハーゲル・アポステルが気が散らないように配慮しつつジャッジメントガールを見張り、嶺・シイナはハーゲルから少し距離を取りつつ茶器を見分してからるこると共にチャドーの支度をしている。
ハーゲルは手始めに、直近に届けられたサードリバー屋の合成茶菓子を試食して、ジャッジメントガールが契約書を書きながらでも口に含むことができる小さなマンジュウやヨーカンを選別する。
粉が零れたり汁が溢れたりして、契約書を汚さないようにする細やかな配慮だ。
「あ、この合成茶菓子おいしいね。ほら、さいばんちょーも糖分必要だろうから、あーん」
「あーん!」
ハーゲルが茶菓子一つ摘まむと、ジャッジメントガールの口に放り込む。
程よい甘味のアンコがジャッジメントガールの血中を駆け巡り、糖分による精神沈静作用が働きかける。
魔界裁判長たる悪魔であってもこの美味しさに中毒に陥るのも無理はない。
合法なので違法性はない。実際安心安全だ。イイネ?
「美味しいっス!」
「どれ、わしもチャと茶菓子をいただこうかの。買ったときから気になってたんじゃ」
芽衣も、エンドレスドアーを攻略する際に購入した茶菓子を堪能する。
艶のある黒いアズキが輝くそれは……もち米を丸め、アンコをまぶした伝統的茶菓子、ボタモチだ。
極まった武装警官やヤクザウォリアーはハードなワーク中はおろか日常生活を送る上でもこれを欠かすことができないと言われるほど暴力的美味な茶菓子だ。
合法なので違法性はない。実際安心安全だ。イイネ?
「うむ―――これは美味い! お主も一緒に食べよう、ジャッジメントガール!」
「えへへ、それじゃあ一口。あーん!」
「つまみ食いはそれで終わり、後は書き終わってからだからね」
ボタモチの美味しさ芽衣の目も輝いている。
歯ごたえのある弾力と粒だったアズキの食感が心地良く、そしてアンコ。アンコの甘さが血管を奔り抜ける。
ジャッジメントガールも芽衣も笑顔を浮かべるが、同じように笑顔を見せるハーゲルがストップをかける。
試食程度で収めることで満足感を与えず、書き終えた後のご褒美として成立させる編集者テクニックだ。
これにはジャッジメントガールも意気を上げ、それを見せつけられたフリルも気力が湧いてくるだろう。
「わかったっス! もぐもぐ……美味しいっス!」
「ふええ、ずるいですよ私も食べたいです」
「ええ! 書き終わったら一緒に食べましょうフリル!」
つまみ食いにより英気を養い、やる気を取り戻したジャッジメントガールが素早く丁寧に契約書を書いていく。
強化された集中力によって、作業効率も高まっている。
進捗順調です。
「サードリバー 茶菓子とカフェイン 実際美味い。チャドーの場はポエットになるのも、納得じゃな!」
芽衣はボタモチを堪能しながら、見事なハイクを詠みあげる。
そして、しばらくして……。
「できたーっス! うん、抜け漏れミスなし、校了っス! あとは名前入れだけっス!」
「はーいさいばんちょー、契約書作成お疲れさまー☆」
「私も、できました」「グワワッ」
「お疲れ様ですぅ。こちらも用意はできてますよぉ」
猟兵たちの監視やサポートの成果もあり、ジャッジメントガールが悪魔契約書の束をおおよそ書き終える。
あとは仕上げのサインを記入すれば、帰還のための悪魔契約書が完成する訳だ。
フリルも反省文を頑張って埋めて、『アヒルさん』の添削を受けているところ。
書類仕事がひと段落したところで、最後の締めくくりを行う前に休憩フェイズに入る。
最後の最後で損なわないよう、気力と集中力を回復するためだ。
「大いなる豊饒の女神、古の使徒よりの豊かなる恵みをお貸しくださいませ」
るこるは、エンドレスドアーを突破した際に使用したユーベルコード《豊乳女神の加護・豊饒宿霊》を発動させていた。
強化したお茶会技能と自前の料理スキルを組み合わせ、『フローティング・リンケージ・システム』で召喚した『フローティング・トランスポート・システム』―――宝玉から放つ特殊な光線で物品を亜空間倉庫に収納する機能を有する輸送用の『祭器』から材料や道具を取出して、アース系列ジャパニーズの『茶道』に使われる『お抹茶』と『お茶菓子』を用意する。
「一休みの頃合いですし、ゆっくり食べ比べましょう」
「おお、おお……! 嬉しいっス! いただきまっス!」
「私も食べていいんですか? ありがとうございます」
ジャッジメントガールとフリルが喜びながら茶道の抹茶とお茶菓子を堪能する。
苦みに顔をしかめつつ、甘い菓子で和らぐ大人の風味。二人は表情豊かに楽しんでいる。
「うむ、実に深い、良い味じゃ」
「うん! とってもおいしー♪」
「茶の湯……そういえば、あの人に教えてもらったな」
芽衣とハーゲルもるこるのお茶を賞味する中、シイナは拵えた茶室スペースにてスゴイ・ワザマエでお茶を点て始める。
もしや彼女には、チャドーのココロエがあるのだろうか?
洗練された動作で茶碗に湯を注ぎ、器用な手つきでかき混ぜて、見事なお茶を用意した。
「最後にのの字をかいて……はい。どうぞ」
「おお、ありがた……いえいえ、結構っス、悪いっス!」
「そう言わずに」
「それではいただくっス!」
お茶を出された際、すぐに受け取る者は蛮族と見做され|ムラハチ《村八分》にされる。サイバーザナドゥ流のワビチャ・ココロエだ。
奥ゆかしいやり取りを交え、落ち着いてお茶を一服。ジャッジメントガールは残さず飲み切り、茶器を置く。
「ズズッ……(結構なお点前でっス)……」
「久しぶりにやったけど、懐かしかったな」
遠いものを見つめるシイナと、心中から賛辞を贈るジャッジメントガール。
一時、二人の間に穏やかな空気が流れてリラックスムードが漂う。
ワビ・サビ。
「あ、さいばんちょー! チャドーも面白そうだからオレも茶を立ててみていい?」
「私も試してみていいでしょうか?」
「どうぞどうぞ、こちらの茶器をどうぞっス」
ジャッジメントガールから提供されたチャドーのセットを受け取ると、ハーゲルはばしゃーっと茶器からお湯を溢したり、フリルが茶葉を入れすぎたりと、ワチャワチャ楽しみだす。
規則正しいチャドーも大事だが、ここは気位の高い場ではないので各々が賑やかに楽しむチャドーも、悪くはないだろう。
そんな様子を芽衣は微笑ましく見つめて、るこるとシイナは新しく茶を点てる。
「ふふっ。愛いものじゃのぉ」
「お茶菓子はまだありますので、いっぱい食べてくださいね」
「お茶は全員分点てるよ」
そうして、和やかにAOZORAの下でチャドーの時間が流れていく。
お互いの労をねぎらった休憩の後、ジャッジメントガールが仕上げのサインを記入する段階に入る頃。
シイナも原稿用紙を取り出し、執筆を始める。
「今日の話を文庫本に書き込んでおこう」
文字を書くのは好きだけど、悪魔契約書を代筆するわけにもいかないと持ち込んだ原稿用紙を用いて行うのは、《花実相愛(ダレカヘノアイラブユウ)》。
シイナが原稿用紙に文章を書いている間に効果を発揮するユーベルコードは、半径140m以内の対象にダメージか治癒を与え続ける。
バトルで負傷したジャッジメントガールの身体が癒されていく。
「あ、そうだシイナさん、ちょっとこれにサインをしてほしいっス」
「なに? ……請求書? 冤罪の賠償請求?」
頭部挫傷が癒されたことで思い出したのだろう。
ジャッジメントガールからシイナへと渡されたのは、パソコン周辺機器の請求書だ。
再序盤の蛇が配線を噛み千切ったため、破損したジャッジメントガールの私物の請求書だ。
それを一瞥したシイナは一蹴すると、原稿用紙にクロヤギとシロヤギの歌を書き記す。
請求書にダメージを与える山羊が具現してモッシャムモッシャム。
「やだよ。ほらほら、いらないおてがみは山羊さんに食べてもらおうね」
「むー。まあ仕方ないっスね……帰る前に、メガコーポから徴収して行くっスかね……」
「おっとジャッジメントガールよ、不利益が起こりそうじゃぞ。雑念は払い、今は執筆に集中すると良い」
「了解っス!」
傍に芽衣が佇むおかげでジャッジメントガールが書き損じることもない。
一方で反省文の誤字脱字を『アヒルさん』に指摘されたフリルは書き直している。「ふええ」
苦しむ友を横に、サラサラと契約書を仕上げていくジャッジメントガール。
今回の悪魔契約書で、ジャッジメントガールがデビルキングワールドに帰るために必要な分は80%くらい集まった。
きっと間もなく帰還を実行するだろう。
るこるとハーゲルが残った茶道とチャドーのお菓子を片付ける中、シイナは筆を止めてサイバースペースの空を見上げ、一句呟く。
「……。梢にて 鶯鳴くは いつなるか」
春の到来を感じさせる透き通った空の下、ジャッジメントガールが悪魔契約書の完成を告げる歓声を上げるのであった。
大成功
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