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女子「推しピにアタックしようとしたら出鼻を挫かれた件」

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日生・鉄斗




 ――某大学、休み時間の講義室内でのこと。
 一人の女子大生が眠たげな顔で受ける授業の講義室を訪れ、手頃な席を探している。

「(あっ!ラッキー)」

 その中である青年の隣の席が空いてるのを見つけると、眠気が吹っ飛ぶぐらいにはテンションを上げて小走りにその席へと座る。

「日生くーん!隣座っていーいー?」
「ん?いいよー」
「(ぃよっしゃー!!)ありがとー!」

 青年――日生・鉄斗がにこやかに答えると、女子は全く遠慮せずにその隣に座る。
 その時のしぐさがやけに、やらせかというぐらいにあざといのだが全く気にする様子はなく講義に使う資料に目を通す青年の横顔。
 ああ、やっぱりカッコいいなあ……と彼が見ていないのをいいことに思わずにやける。
 ここまでくれば周りが見れば言うまでもなくわかることであるが、この女子は鉄斗のことを内心狙っていた。
 誰にでも明るく笑顔で優しい彼は、誰に対しても分け隔てなく接してくれる。
 怒ったところなど見たこともないし、相手が落ち込んでいても笑顔で笑い飛ばして肩を貸してくれるような懐の広さ。
 そして何より顔が良い!!!!!!
 人間外見より中身と言うが、外見のファーストインプレッションというのは中身と同じぐらい大事だ。
 誰にでも優しいイケメンなんて、狙わない女子がいるだろうか!――とこの女子は当然思っているが、大分過言であることは一応注釈しておこう――。

「えへへ、嬉しい~日生くんの隣よく誰かいたから一番乗りできてラッキー♪」
「あはは、いやあそれは大袈裟だって」
「そんなことないよぉ、だって日生くんの周り常に誰かいるもん!だから隣に座れてすっごく嬉しい~!テンションあげぽよ不可避~!」

 いやいやいや、と笑う鉄斗の笑顔はそれはもう眩しくて眩しくて、女子はますますうっとりせずにはいられない。
 しかしそれだけに中々壁も高い。
 もともと女子はキャピッキャピのあざとさ全開なタイプで何かと上目遣いしたりそれとなーく男子がきゅんとくるような仕草を混ぜたりする。
 今までそれで落ちなかった男子はいないと自負していた中、唯一彼だけは本気でそれに靡くことがないのである。
 だからこそ余計に惚れたからにはその座を掴み取りたいと強く思うワケであり。
 ああ、この屈託のない笑顔!最高に素敵!とか思いながら今日も女子は彼にアタックを続けていた。

 ――が、この日をきっかけにすっぱりと諦めることになる、のである。


「てか今日の講義ダルくなーい?寝落ちしそうなんだけどぉ」
「まーそうだな、昼飯食った後は眠くなるし」
「ホンそれ~!でも聞いとかないと後々レポだるいんだよねえ」
「わかるわー、俺もそれで一回やらかしたから」
「日生くんも?マー?意外とみんな結構やらかしてる感じっぽいよねー。でも留年になる方がもっとダルいから頑張んなきゃ。日生くん後でちょっと教えて欲しいな~!」
「しょーがないなあ、ちゃんとメモは取っとかないとダメだぞ~?」
「わぁい!ありがと~~!!!」

 あざとさ前回でキャッピキャピに、上目遣いで責めても脈があるように見えないのがこの日生・鉄斗のニクいところである。
 女子キラーにも程があるのだ。どっちの意味でも。
 しかしそれでも女子はめげずにあざとさ全開にしてあれやこれやアタックをしている中――

「あれっ、そういやペンケース変えた?めっちゃいいじゃん!どこの?」

 ふと鉄斗の卓上にあるペンケースが新しいものになっていることに気づいて声をかけると、鉄斗は嬉しそうに笑ってこう言ったのだ。

「ああ!これ恋人から誕生日にもらったんだ!あんまり汚さないように気をつけて使わないとって思ってさあ」
「(ん!?!?!??!)」

 女子の思考が固まる。
 大学には噂好きの女子が山のようにおれど、鉄斗に恋人がいるだなんて話は一つも聞いたことがない。
 それぐらい、あれだけモテるのに、あれだけカッコいいのに!!!あれだけ人を殺せる魅力をしているのに!!!!!
 とエクスクラメーションマークをつけてもつけたりない程浮いた噂を聞いたことがない鉄斗に、恋人がいたという事実に思考が思わずフリーズせざるを得なかったのだ。

「えっ、恋人?????いるの????」
「ああ。凄く可愛いんだよ。これも凄く必死に悩んで選んでくれてさあ~」

 そこからは恋人に関係する話を振ってもらえたのが嬉しかったのか、鉄斗は恋人の可愛いエピソードを話してくれたのだがまあ見事なまでにぞっこんと言うしかない。
 言葉の節々から、表情から、身振り手振りとあらゆるところから伝わってくる「恋人LOVE」の文字。
 中には中々メンヘラなエピソードもあるがそれすらもポジティブに受け止めて考えるのは最早才能の域と言っても過言ですらないかもしれない。
 定期的に嫌な夢見たって起こされて一緒に寝直すとか、迷子の子供を送り届けるのも嫉妬されたりとか、ちょっとでも反応なかったら鬼電鬼メッセとか、その他諸々etc……
 それらを全部ポジティブに受け止められるってどういうメンタルをしているんだと考えれば考えるほど背後に召喚された宇宙が深淵と化し、そして砂糖吹雪が吹き荒れていた。
 甘い。甘すぎる。あまりにも。

「(ああ――こりゃダメだわ。狙えないわ)」

 間に挟まっちゃダメだ、というか多分挟まれようとしたら刺されるわ。
 女子は直感した。普段のあーしがかんがえたちょうあざとかわいいモードのスイッチが思わず切れるレベルで確信した。

「日生くんって、結構愛情重めな子が好きなんだね……」
「え、そんな重いか?可愛いけどなあ」

 ようやっと絞り出した感想もあっさりと首を傾げられて終わり、彼の精神構造が逆に気になってしまいながらもそこから先は丁度担当教授がやってきて講義が始まった為聞くのをやめた。
 講義が終わると軽く挨拶だけして女子はすぐに講義室を出て携帯を取り出し、

『うわ―――――ん振られた――――!!いや告ってないけど振られるの確定した――――――!!!!』

 ……と、友達にLINEを送り散らかしていたとか、どうとか。


「……っくち」

 一方その頃、鉄斗がめちゃくちゃノロケまくっているとは露知らず当の恋人本人は「風邪かな……」と鼻をすすっていたそうな。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2025年01月16日


挿絵イラスト