ザブールは交響する生命か
●憂国学徒兵
「なんで、どうして戦ってくれないの、『フュンフ』兄!」
『ズィーベン・ラーズグリーズ』の悲痛な声が戦場となった小国家『グリプ5』に響く。
彼女が駆る『簡易型レーギャルン』は損傷を受けて擱座しているようだった。
その眼前に背を向けて立っているのは、二人羽織の赤いキャバリア『熾盛・改』。
僚機と言っていい機体は動かなかった。
彼女の言葉通り、炎に包まれる『グリプ5』の市街地にあって『熾盛・改』は動こうとしなかった。いや、動けなかった、というのが正しいのかもしれない。
妹である『ズィーベン・ラーズグリーズ』の懇願に近い声を聞いてなお、コクピットに座す嘗ての『フュンフ・ラーズグリーズ』……今は『サツキ・ラーズグリーズ』と呼ばれる少年は、亜麻色の髪を額に張り付かせる汗を拭うこともできず、ただ立ち尽くすしかなかった。
「征かないのか」
平坦な声が響く。
それは二人羽織のキャバリア、羽織のように変形したもう一騎のキャバリアのコクピットから響いた。
『パッセンジャー』と名乗る黒髪の青年は、その翡翠の瞳で『サツキ・ラーズグリーズ』を見つめていた。
「……駄目だ。ここから先は」
「地獄だとでも言いたいのか。だが、違うな。アンタは勘違いをしている。もうずっと地獄だ。ここまでも、これからも。アンタの征く道に平穏なんてない。わかっていたことだ」
「それでも、何かの間違いなのかもしれない」
「見たはずだ。しあわせなゆめはもう見れない。何故なら、アンタは目覚めたからだ」
その言葉に『サツキ・ラーズグリーズ』は歯を食いしばる。
小国家『グリプ5』を取り巻く状況は最悪だった。
二度に渡るファーストヒーロー『ザ・スター』の襲来。
大いなる戦い『帝都櫻大戰』においてエンシャント・レイス『イザナミ』より溢れる冥府の蛆獣たちの出現。
これらの事件によって『グリプ5』の内情はかき回され、内部に存在していた『憂国学徒兵』を僭称するテロ組織が活発化したのだ。
テロ組織である『憂国学徒兵』は、混乱の乗じて小国家の市民を急速に取り込んでいった。それを内政を以て留めることは可能であったはずだ。
だが、多くの事件の勃発の影に隠れて彼らは勢力を秘密裏に増し、今回蜂起したのだ。
小国家内部、市街地のあちこちのモニターには、蜂起したテロ組織『憂国学徒兵』の主導者らしき男が演説を続けている。
「市民たちは知らねばならない。嘗て百年前、この小国家の興りとされる九人の英雄、『憂国学徒兵』の真実を。彼らは救国の主ではない」
そう宣う男は拳を握りしめた。
「彼らは嘗ての『サスナー第一帝国』を滅ぼした勢いのままに周囲の小国家のみならず、大陸外の国家にまで侵略行為を働いたのだ。それは徒に戦禍を撒き散らすだけではなく、百年後の今も禍根を残すに至った。『バンブーク第二帝国』も然り! 『シーヴァスリー』、『プラナスリー』に連なる戦いの火種もまた、彼らの手によって蒔かれ、今の芽吹いたものなのだ」
その言葉に市民達は動揺しているようだった。
鎮圧に出たキャバリア部隊は全滅。
首相である『ツヴァイ・ラーズグリーズ』と補佐を務める『アイン・ラーズグリーズ』が友好国家である『フルーⅦ』に赴いた隙をついての決起。
これによって対応が後手に遅れた『グリプ5』は、小国家の中枢を制圧され、『ヌル・ラーズグリーズ』を拘束されているのだ。
「百年前の英雄は、生ける伝説でもなければ救世主でもない! その生き証人がここにいる『ヌル・ラーズグリーズ』である。彼女の凶行を知る者もいるだろう。彼女は友好国家『フルーⅦ』との休戦協定の場にてキャバリアを駆り、混乱をもたらした。何故か? 理解出来ぬものもいるだろう。平和への礎とも言うべき、互いの保有するキャバリアを同時に遺棄する祭典で、凶行に至ったのは!」
男は示す。
表示されるのは、百年前の|『憂国学徒兵』《ハイランダーナイン》の『ヌル・ラーズグリーズ』と百年後の『グリプ5』にて生きる『ヌル・ラーズグリーズ』が同一人物であるという証明であった。
示される画像は、まったくの同一人物。
遺伝子照合の結果も、全てが同一。
「彼女が再び我らを戦禍に引きずり込むためである。『ラーズグリーズ計画』によって嘗ての『憂国学徒兵』たちのクローンを作り上げ『エース』を量産しようとしたのも、全て。過去の焼きましにすぎないのだ!」
更に表示される多くのデータ。
嘗ての『エース』たちのクローンである子供たちの画像。
現首相である『ツヴァイ・ラーズグリーズ』もまた、クローンであることが白日のもとにさらされる。
多くの状況が、多くの事実が小国家『グリプ5』を混乱に突き落とす。
人々は猜疑の目を互いに向ける。
己たちの求めた平和は、本当に平和なのか。
誰かの掌の上で踊らされているのかも知れないという疑念が膨れ上がっていく。
そんな不安を呼び水に、一騎のオブリビオンマシンを背後にした男は宣言する。
「我らは『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』……このキャバリアの意志に従い、百年前の禍根を正す者である――!」
●次なる者
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのは、グリモア猟兵ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)であった。
「皆さん、カルト宗教団体『憂国学徒兵』はご存知でしょうか? かつて、『フュンフ・エイル』のクローンを誘拐しようと目論んだ組織です。一度は皆さんの活躍で壊滅したのですが、虎視眈々と蜂起の時を狙っていたようですね」
彼女の言葉に、その事件を知る猟兵たちもいたかもしれない。
今まさに小国家『グリプ5』はテロ組織『憂国学徒兵』たちによって制圧されようとしている。
しかも、悪いことには。
「はい、猟兵である皆さんに私が予知したことをお伝えする、ということは」
即ち、オブリビオンマシンに関連した事件である、ということだ。
「彼らは『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』と一騎のオブリビオンマシンを崇め奉っているのです。かつて封神武侠界を脅かした自律型オブリビオンマシン『哪吒』を想起させるものがありますが、詳細は不明です」
ノインは何故かダブルピースをしていた。
何故。
「ダブルパンチという意味ででのダブルピースです」
まったくもって意味不明である。
「すでに『グリプ5』も制圧に動きましたが、後手に回ってキャバリア部隊は壊滅状態。急行しても、小国家の中枢を掌握した『憂国学徒兵』たちをすぐさま排除はできないでしょう」
まずは、小国家に趣き、テロ組織『憂国学徒兵』の擁するオブリビオンマシン軍団に近づかなければならない。
そして、これを撃破し、『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』と呼ばれるオブリビオンの一騎を打倒しなければならないのだ。
「言うまでもなく、とても大変な事件です。ですが」
それでも征かれるのですね、とノインは頷き、猟兵たちを送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、小国家『グリプ5』において起こってしまった重大な事件。
これを解決するシナリオになっております。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
冒険です。
小国家中枢を制圧したテロ組織『憂国学徒兵』たちが破壊したキャバリア、そして『簡易型レーギャルン』、さらには破壊はされていませんが、何故か戦うことを放棄して佇む二人羽織のキャバリア『熾盛・改』がいます。
彼らの残骸を越えながら、敵機の情報を収集しなければなりません。
また『熾盛・改』を駆るパイロットに呼びかけても良いでしょうし、『簡易型レーギャルン』のパイロットから事情を聞いてもいいでしょう。
●第二章
集団戦です。
『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』を崇めるテロ組織『憂国学徒兵』のオブリビオンマシンが、これを守護するように展開してします。
●第三章
ボス戦です。
『憂国学徒兵』はすでにカルト教団めいた様相を呈しています。
教祖と思われる首謀者である男を載せた強大なオブリビオンマシン『|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』との決戦になります。
このオブリビオンマシンは『殲禍炎剣』に酷似した『高速飛翔体への無差別砲撃機能』を搭載しており、何故か本物の『殲禍炎剣』の影響をうけることなく、高速飛翔しながら一方的に攻撃してきます。
これに対処しなければならないでしょう。
それではついに白日のもとになった百年前の英雄たちの再生計画。そして芽吹く火種。これらを前に立ち向かう皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 冒険
『キャバリアの墓場』
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POW : ●『現場を調べる』:現場をくまなく歩いて、何か異常が無いか調べる
SPD : ●『キャバリアを調べる』:武装やシステムなどを調べ、キャバリアに何があったか知る
WIZ : ●『キャバリアの声を聴く』:物言わぬといえど、ひょっとすると…
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「『ラーズグリーズ計画』の発起人は、『ヌル・ラーズグリーズ』。そして、彼女はこの世界の人間ではない。彼女は異世界より訪れた異邦人にして異端者。この世界に火種をもたらすためだけの存在だったのだ」
『憂国学徒兵』の男の声がモニターから響き渡る。
市民たちは、その声に疑問をいだくだろう。
異世界よりの来訪者と言われても、にわかに信じがたい。
むしろ、荒唐無稽であるとさえ言えた。
だが、事実彼女は『ラーズグリーズ計画』とよばれる、嘗ての英雄たちのクローンによる再生計画を発案していたし、責任者でもあった。
全ては彼女と『フュンフ・エイル』の血族である、真の実子である『フュンフ・ラーズグリーズ』――『サツキ・ラーズグリーズ』の存在をひた隠すためであった。
それは狂気の計画だった。
人道に悖るし、倫理にも反する。
彼女の何がそこまで駆り立てることになったのかはわからない。
が、彼女はどんな言い訳をしようとも事実、一種の凶暴性とも言える猛進でもって計画を主導してきたのだ。
それは事実だ。
だからこそ、民意は彼女を許しはしないだろう。
赤い二人羽織のキャバリア『熾盛・改』が動けなかったのは、恐らくそのためだろう。
だが、それでも猟兵達は征かねばならない。
この小国家を取り巻く状況が如何なるものであったとしても、そこにオブリビオンマシンの蠢動があるのならば――。
村崎・ゆかり
『グリプ5』、せっかく平和になったと思ってたのに。
とにかく現状把握よ。「式神使い」で黒鴉召喚。黒鴉たちを市内に放って、敵の進軍路を把握し、目的地を割り出す。同時に破壊されたキャバリアがどう倒されたのかも観察したいわね。
『熾盛・改』は他の人に任せましょう。
まだ無事な体制側キャバリアを黒鴉で呼び集め、最後の部隊を編制するわ。
あなたたちはもう戦力になれない。だから、悲惨な状況になってる市内で人命救助に従事して。
『憂国学徒兵』はあたしたちが絶対に叩き潰す。
敵の演説なんか気にしない。あなたたちは『ラーズグリーズ』家の皆がこの国を盛り立てるためにどれだけ働いてきたかを知ってるはずでしょ。
さあ、行動開始よ。
クロムキャバリアにおいて平和という言葉は、あまりにも虚実。
どこまで言っても虚のようなガワだけのハリボテでしかない。
例え、それが真の平和のように思えたとしても、書割の向こう側には戦禍の種火がくすぶり続けている。
一度つけば、燃え盛り、平和というものが如何に虚しいものかを突きつける現実しかない。
そういうものなのだ。
だからこそ、仮初であっても人は平和という安寧にひたりたいと思う。
それが得られたのだと思い込みたい。
誰かがもたらしてくれるのだと期待しているのだ。
自分ではない誰かが、地獄のような道を歩んでいたとしても謗ることをやめられない。
人間というのはそういうものだ。
どうしようもない悪性を持ち得てしまうものなのだ。
「けれど」
そう、けれど、だ。
どうしようもない悪性の反対側にかけがえのない善性がある。
悪性に傾くのは簡単なことだ。
下流に水が流れていくのと同じくらいだ。
人の善性とは、その水の流れに抗うこと。
「現状把握をしなくてはならないわね。一体どれだけのキャバリアが残っているかしら」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、小国家『グリプ5』の惨状が如何なるものかをユーベルコード、黒鴉召喚(コクアショウカン)によって飛ばせた鳥型の式神でもって情報を得ようとする。
市街地のあちこちでキャバリアが破壊されている。
その中の一つに『簡易型レーギャルン』があった。また、殆どのキャバリアが稼働状態ではない。
であるのに、対するオブリビオンマシンと思わしき機体は、そこかしこに残っている。
砲戦仕様とでもいうのか。
機体の背面部から肩部にかけて伸びる砲身。
これをもって、市街地戦を行ったとなれば、敵……即ち、オブリビオンマシンによってもとより狂っていた思想をさらに捻じ曲げられたカルト的テロ組織『憂国学徒兵』は、民間人への被害など考慮しない戦いを行ったと見えた。
「……あれは『熾盛・改』……何故、動かないの?」
ゆかりは見える赤い二人羽織のキャバリアが立ったまま動かないのを認める。
だが、今自分がしなければならないことは、彼らの声を掛けることではない。
「やっぱり駄目ね。どのキャバリアも稼働できそうな機体状況じゃない……」
ゆかりはキャバリアから這い出した軍人たちに式神を通して伝える。
「あなたたちはもう戦力にはなれない。だから、人命救助に尽力をしてちょうだい」
「ですが、我々だって……!」
「キャバリアもないのにどう戦うっていうの。それよりもやらないといけないことがあるでしょ。『憂国学徒兵』はあたしたちが絶対に叩き潰す」
「……そもそも、本当に奴らの言うことは間違っているのか?」
キャバリアを動かしていた軍人たちもまた、『憂国学徒兵』の流したモニターの演説を聞いたのだろう。
疑心に苛まれている。
それを一喝するようにゆかりは告げる。
「あんなの気にしない。あなたたちは『ラーズグリーズ』の子たちがどれだけ、この国の為に働いてきたのかを知っているはずでしょ!」
それが全てだ、とゆかりは告げ、未だ多くの民間人たちが取り残されている市街地へと軍人たちを式神の先導で導くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルド・エルネイジェ
正しさが救いになるとは限らない
真実もまた同じか
ヌル・ラーズグリーズが狂気を飲み込んだにせよ、人の道から外れたにせよ、そうせざるを得ない理由があったのだろう
或いは…世界がそれを求めたのかも知れんな
そして人は秩序無くして生きてはいけない
例えそれが、秩序という掌の上であったとしてもな
二人羽織のキャバリアは立ち尽くすだけか?
民の声を振り切ってまで戦う気にはなれんと見える
しかし代わりに猟兵が戦うだけだろうがな
それとも矜持が必要か?
正しさが人を救うとは限らないのなら、誤りが人を苦しめるとも限るまい
焼き尽くして浄化するのも悪手とは言わん
だがそうではないのだろう?
何をなすべきか…既に分かっているのではないか?
「二人羽織のキャバリア、立ち尽くすだけか?」
その言葉に赤い二人羽織のキャバリア『熾盛・改』は動かなかった。
聞こえてはいるのだと思うこともなかった。
ただ声を発する。
己が声を世界が聞き届けないことがないように、『熾盛・改』に搭乗するパイロットが己の声を聞かぬわけがないという自信がジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)にはあった。
絶対なる自信がどこから来るのかはわからない。
が、彼は極めて冷静あった。
「正しさが救いになるとは限らない。真実もまた同じか」
「そうだ。正しいだけの力に意味なんてない。正しさが全てを救ってくれるのなら、何故過ちなんてものがある。僕等は、どうしてこんなにも過ちを繰り返し続ける」
発する声にジェラルドは然り、と頷く。
「それもまた真実だ。故にお前を救いはしない。さらなる地獄へと叩き込むことだろう」
彼の駆る『サラマンダー』は、一歩前に踏み出した。
「『ヌル・ラーズグリーズ』が狂気を飲み込んだにせよ、人の道から外れたにせよ、そうせざるを得ない理由があったのだろう」
それが何故か。
ジェラルドは知らない。
知らないが、その瞳には確信があった。
「或いは……世界がそれを求めたのかもしれんな。どちらにせよ、彼女はやめなかっただろうよ。人とはそういうものだ。邁進する時、多くのものを取りこぼす。それを犠牲と呼ぶであろうし……」
「その犠牲を他に強いる。どこにも正しさなんてない。どんな言葉で言い逃れようと」
例え、実子を護るためであったとしても。
そこに正しさは一欠片しかないだろう。
世界のすべてを敵にまわしてでも、我が子可愛さに多くを犠牲にするなど許されるはずがないと、真っ当な倫理を持ち得たがゆえに『サツキ・ラーズグリーズ』は頭を振る。
「許されない。そして、これから起こることは、きっと罰だ」
「罪と罰とがあるのは、人は秩序なくしては生きていけないという理由があるからだ。例え、それが秩序という掌の上であったとしてもな」
ジェラルドは、荒廃した市街地の中に立ち尽くす『熾盛・改』の真横を『サラマンダー』と共に通り過ぎていく。
進むことを肯定しなければならない。
時は待ってはくれない。
絶えず時は、己達を前に進まえる。否応なくだ。
「民の声を振り切ってまで戦う気になれのは、そんな理由ではないはずだがな」
ジェラルドは『サラマンダー』のコクピットから身を出して告げる。
「どのみち、猟兵が代わりに戦うだけだ。それとも矜持が必要か? 正しさが人を救うとは限らないのなら、過ちが人を苦しめるとも限るまい」
これより起こるのが地獄であるというのならば、人を焼く炎は罪を濯ぐ煉獄。
それもまた良しとも思う。
浄化とは常にそういう側面があるからだ。
だが。
「そうではないのだろう? 己が何をなすべきか……すでにわかっているのではないか?」
「……僕は、行き着く先を知っている。終焉を見た。だから」
「理由になってない」
そう告げたジェラルドは前に進む。
待ち受ける未来がどんなものであるのかを知ってなお、進む心を人は持ち得るのだとジェラルドは知っているからだ。
「ならば、俺の背中を見ろ――」
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……とりあえずプロトミレスは隠しておいて、
【ARC-05 フェルム・アニマリア】を呼んで索敵するわ
周囲のキャバリアについては…破壊された味方側については攻撃痕などから「敵」の攻撃手段や戦法について少しでも情報を得ておく。それと、味方機の位置についても。
こっちには【機界新生】という手段もあるし…最後の手段だけど。
……百年前の英雄の真実がどうとかはどうでもいいわ。政にロクに関われなかった私だって
小国が生き残るという事が綺麗事ばかりじゃないのは知ってるし。
第一、オブリビオンマシンに乗せられ、殲禍炎剣の代行者なんてふざけた名を名乗るような連中、最初から黙って見過ごす気はないのよ。私も、ドラグレクスも。
ARC-05 フェルム・アニマリア(フェルム・アニマリア)――それは、観測用自律機械だった。
小型の動物に偽装する機能を持つ自律機械。
それが小国家『グリプ5』の市街地を走り抜ける。
伝わる情報を受けて、アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は頷く。
情報が必要だと思ったのだ。
テロ組織『憂国学徒兵』はすでに小国家の中枢を制圧しているようだ。
なら、と対応にでていたキャバリアが殆ど壊滅しているのは、圧倒的な戦力差か、もしくは技量差……ないし、一方的に攻撃された理由があると思ったからだ。
市街地の瓦礫に隠した『プロトミレス』の影でアルカは収取される情報に目を走らせる。
『グリプ5』側のキャバリアの殆どが砲撃に寄る損壊を受けている。
一方的だったのは、恐らく市街地を盾にされていたからだろう。
そもそも、小国家内部にテロ組織が勢力を増していた時点で詰んでいたとも言える。
「砲撃タイプが多数、というわけね」
けれど、グリモア猟兵の予知からすれば、テロ組織『憂国学徒兵』は「|殲禍炎剣《ホーリー・グレイル》の代行者』と呼ばれるオブリビオンマシンを崇めているのだという。
であるのならば、そのオブリビオンマシンの一体さえ打ち倒せば、テロ組織は瓦解するだろう。
何せ、テロ組織の連中が拠り所にしているのは、所詮オブリビオンマシン一体なのだ。
「とは言え……あの赤い二人羽織のキャバリアは動かないのね」
アルカは戦場に立ち尽くすキャバリアの一騎を見やる。
あの『熾盛・改』だけが『グリプ5』に残された最後の戦力だ。なのに、あの機体は動かない。
如何なる事情があるのかはわからない。
が、アルカ未だ状況が最悪だとは思っていない。
「いざとなれば……最終手段がある」
もっとも、それはあまり好ましくない手段である。
己が嘗て用いた手段は、結果的にオブリビオンに利することになったこともある。
それに人々にはまだ疑心が残っている。
「百年前の英雄の真実がどうとかなんてどうでもいいことだわ」
どんなに醜悪な真実が残されているのだとしても、アルカにとって人が生きることは綺麗事ばかりではないことを知っている。
それに、と彼女は空を見上げる。
今も見える空に座す暴走衛生。
『殲禍炎剣』。
あれがある限り、人の心にある疑心は拭えない。
「第一、オブリビオンマシンに乗せられ、『殲禍炎剣』の代行者なんて巫山戯た名を名乗る連中、最初から黙って見過ごす気はないのよ。私も、『ドラグレクス』も」
アルカは例え、己だけが戦うことになってもオブリビオンマシンとの戦いを止めるつもりはない。
オブリビオンは惨劇の主。
であるのならば、悲劇を繰り返さぬために戦い続けるだけなのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の香りがしまぁぁぁすっ!
緊急時に付き、短縮形!
さて、残念ながら目新しい情報がないようです
いえ、ヌル様について確証が得られた、というところですか
私のおっかけも捨てたものではなさそうですね
ならば、熾盛・改のAIは……まさか人造竜騎のもの?
乗騎は『ケルーベイム』で
この機体ならどんな状況でも対応できますし
ナイス昔の私
サツキ様、パッセンジャー様……エイル様
メイド参上しました
ご要望はございますか?
ヌル様、ラーズグリーズ計画、熾盛……そして潔斎行路
様々な要素がお二人?お三方?の前にはあるのでしょう
ですが今から介入するのはメイドで猟兵です
出来る事に限りは在りますが
『主人』の要望に応えるのがメイドの役目
ぜひ遠慮なく申しつけくださいませ
それでは【バトラーズ・ブラック】にて
今の私を止めることは難しいと知りなさい!
戦いに際しては心に平和を
ええ、平和の中にあって戦いを生み出す……
ノイン様の様な存在を私は見逃すわけには!
ましてや『憂国学徒兵』を名を騙るなど
その黒幕しっかり見極めさせて頂きますよ!
「|『エイル』様《主人様》の香りがしまぁぁぁすっ! 緊急時に付き、短縮形!」
本当に短縮できているだろうか。
声量を抑えた方がよかったのではないだろうか。
そんな微妙な空気が小国家『グリプ5』の市街地に響く。
叫ぶ紫メイドことステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。別名やべーメイドである。
そんな彼女にとってテロ組織『憂国学徒兵』たちが齎した情報は目新しいものではなかった。
「いえ、『ヌル・ラーズグリーズ』様について確証が得られた、というところですか」
ステラは他世界にわたって多くの『エイル』痕跡を追ってきた。
その蓄積によってテロ組織『憂国学徒兵』が齎した情報以上のことを彼女は知り得ていた。
自ら追っかけてきたのも捨てたものではないのだという自負があった。
『ヌル・ラーズグリーズ』が異世界からの来訪者であるというのならば、きっと神隠しによって転移してきたのだろう。
それが百年前。
そして、今に生きているということは寿命ではなく、実子である『サツキ・ラーズグリーズ』と共に冷凍装置で眠りについていたからだ。
そんな彼女の出自にステラは思いたる点があった。
「なら、『熾盛』のAI……つまり、『エイル』――『ヴィー』様は……まさか」
人造竜騎『エイル』に宿ったものか、それとも変遷を遂げて至る何か。
「『サツキ』様、『パッセンジャー』様……『エイル』様。メイド参上しました」
彼女は己が乗騎『ケルーベイム』と共に赤い二人羽織のキャバリアへと近づく。
背を向けたまま動かない機体。
二人羽織の装甲。
アイセンサーが『ケルーベイム』を認めたのをステラは理解した。
「ご要望はございますか?」
「……ないですよ。どの道、あなたたちは、あなたたちのやるべきことを成すのでしょう。だったら」
自分の要望など関係ない、と『サツキ・ラーズグリーズ」は言う。
「そうですね。今から介入するのはメイドで猟兵ですから。とは言え、できることには限りがあります。それでも『主人』の要望に答えるのがメイドの役目」
「それは、僕じゃあない」
告げる『サツキ・ラーズグリーズ』の言葉には険しさがあった。
「あなたが『主人』だというのは、父でしょう。僕は違う。そう言われる謂れもない」
「御子息であれば、権利はあるはずですが?」
「……僕は父の残した……撒き散らした戦禍の火種をなくさなくちゃあならない。けれど、此処から先は地獄だ。どこまで言っても」
「確かにその通りなのでしょう。潔斎航路は遠く、長く続くものでございますから。ですが、『戦いに際しては心に平和を』。ええ、平和の中にあって戦いを生み出す……確かに地獄に見えるのでしょうね」
未来も。
過去も。
そして、今も。
延々と続く地獄だ。
だが、それをなんとかしたいと思うのが人の良心だ。
悪性と善性を持ち得るがゆえに揺れる心を良心と呼ぶのならば、例え行く先が地獄であっても、それでも前に進むのが人なのだ。
最悪の未来に負けられないと、歯を食いしばって進むものがいるのなら。
「今の私は止まりません。『ノイン』様のような存在を私は見逃すわけには! ましてや『憂国学徒兵』の名を騙るなど」
ステラは『ケルーベイム』でもって市街地を進む。
この先は地獄だと言った。
それは『サツキ・ラーズグリーズ』にとっての地獄であり、彼女にとっての地獄でもある。
しかし、それでも歩みを止めない。
己を己にするのは、いつだって自分自身なのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
…またわけわからんねー事になってるな
「今回はわんわん君はいなさそうだぞ☆」
ノインあたりが居ればとっ捕まえたかったがな
「こうなったら幼女祭で須らく更地にしちゃうのがいいんだぞ☆」
してたまるかぼけぇ!こっちでいけ!
UC発動
「「わーい☆」」
【属性攻撃・迷彩】
メルシー軍団に光水属性を付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
メルシー軍団
【情報収集・視力・戦闘知識】
「「ひゃっはー☆」」
旋回して飛び回りながら敵機のデータと構造とその陣形と隠れた位置も捕捉し情報共有
後は色んな人から事情を聴くぞ☆
カシム
よぉフュンフ…またサウナ行きたかったんだがなぁ…
とりあえず…うごけねー理由を教えて貰いたいが…応えられるか?
「……またわけわかんねーことになってるな」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、小国家『グリプ5』の市街地の荒廃した状況を見やり、呟く。
状況が飲み込めていないのだ。
テロ組織『憂国学徒兵』がオブリビオンマシンを崇め、『殲禍炎剣の代行者』を名乗るのは理解できた。
が、この小国家を巡る状況は目まぐるしく、また同時に多くの糸と意図とが絡みつくような様相を見せていた。
これを一つ一つほどいていくには、カシムに情報が足りなかったのだ。
『今回はわんわんくんはいなさそうだぞ☆』
『メルシー』の言葉にカシムは頷く。
「『ノイン』あたりがいれば、とっ捕まえたかったがな」
周囲を見回しても、関与はすれど姿はない。
そもそも、あの小国家『シーヴァスリー』の国土そのものたる超巨大要塞『ベヘモット』の影がない。
であれば、今回の事件は『グリプ5』の内部から起こったものだと言えるだろう
それが百年前からくすぶり続けた火種が炎を噴出させた結果だ。
『こうなったら幼女祭りで更地にしちゃうのがいいんだぞ☆』
「してたまるかぼけぇ!」
外典帝竜眼「パラダルク?」(ジショウヲシハイセシリュウノオウッポイノ)を開眼させ、カシムは『メルシー』の暴挙を止める。
いや、彼のユーベルコードはそもそも『メルシー分身体』を呼び出していた。
さして変わらないのではないかと思う。
『わーい☆』
一斉に飛び出す『メルシー分身体』たち。
『ひゃっはー☆』
「ひとまず、戦力はこれで十分だろ。しかし……」
カシムは市街地の状況を見やる。
随分と一方的にやられたようである。キャバリアの性能差とで片付けられる問題ではない。恐らく、市街地や市民を盾にとられて一方的に砲撃を受けたのだろう。
キャバリアの残骸から見ても頷けるところであった。
「一応、光学迷彩で隠蔽しとくがよー……ったく、なにをぼんやりと立ち呆けしてるんだか」
カシムは赤い二人羽織のキャバリアへと近づく。
『熾盛・改』と呼ばれるキャバリア。
それに乗っているのは『フュンフ・ラーズグリーズ』……嘗てそう言われ、今は『サツキ・ラーズグリーズ』と名乗る青年へと呼びかける。
「よぉ」
「……」
「またサウナでも行こうかと思ってたんだがなぁ……そういう状況じゃねーみてーだし」
「それは、そうでしょうね」
答える彼の言葉に苛立ちがあるのをカシムは見てとっただろう。
動かない理由は多くあるのかもしれないが、己の答えはシンプルだ。
「動けねー理由があるんだろ。応えられない理由が。けどよ、時は待ってはくれねーぞ」
待ち受けるのが地獄だと知っている。
「終焉を知っているからこそ、動けない。人間っていうのは、そういうものでしょう」
「そうかな」
カシムは首を傾げる。
『サツキ・ラーズグリーズ』が何に対して、そんなことを思ったのかはわからない。
けれど、カシムは笑い飛ばすような声色で言う。
「少なくとも、終焉を見ても、地獄を見ても前に進むやつはいるぜ」
簡単なことなのだとカシムは告げ、立ちつくす赤い二人羽織のキャバリアを背にするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
私は彼らの事情を知らない
ただ、彼らの秘密が悪意によって暴かれた事実だけは解る
画像に見知った面影を見つけたとき、胸の奥が少し震えた気がする
『熾盛・改』へ、ユーベルコードの輝きを送るわ
それは『無限』の可能性の一端であり、ただの『夢幻』かもしれない
生まれた理由に囚われる必要はない
人は誰しも自由で、数多の可能性を持っている
その気持を風に乗せるように、そっと語りかけましょう
『サツキ』、この先に何かがあるのね
進むことを躊躇わせるほどの何かが
その苦しみを和らげる力が私にあればいいけれど
私たちには戦うことしかできない
だからせめて――
これから訪れる未来を、一緒に受け止めるわ
「ここから先も地獄。今までだって地獄だった。それは変わらない。変えられない。のなら……」
『サツキ・ラーズグリーズ』は赤い二人羽織のキャバリア『熾盛・改』の中で懊悩するようだった。
コクピットの中でうずくまる。
身を固くして、顔を覆う。
何も見たくない。
未来に何があるかなんて知りたくもない。
知り得てしまったものを、見なかったことにしたい。
そうすれば、動けたはずだ。
何も知らないままでいたかった。
地獄であると認識もしたくなかった。もうずっと、彼の人生は地獄だった。
苦難に満ちていたし、けれど、前に進めたのは。
「未来を識らなかったから」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、赤い二人羽織のキャバリア『熾盛・改』の前に立ち、見上げていた。
あのコクピットの中では、訪れる未来を知るがゆえに懊悩する幼い心がある。
変わっていない。
他世界で見た幼い彼らの姿と、今の青年の姿の彼とで姿は何一つ静漓にとっては変わるものではなかった。
己は彼らの事情を知らない。
ただ、今の小国家『グリプ5』の状況は彼らにとって最悪なのだろう。
悪意によってさらされた秘密。
暴かれた真実。
静漓は、その暴かれた真実を見やり、己の胸の奥が少し震えた気がした。
だからこそ、彼女は『熾盛・改』の前に姿を現し、その瞳ユーベルコードの輝きを宿す。
それはむげん(ムゲン)の可能性。
彼女という可能性から生まれたもう一人の静漓。
揺らめくように、羽衣人の体躯を『熾盛・改』のコクピットへと回せる。
触れる鋼鉄。
冷たいと思う。
それは『無限』の可能性の一端であり、ただの『夢幻』かもしれない。
「生まれた理由に囚われる必要はない。人は誰しも自由で、数多の可能性を持っている」
「……けれど、その可能性が人を殺す。そうであったのならばと願って、そうでない自分を呪い続けてしまう。どこまで言っても、可能性は可能性のまま、枝葉のように別れても、いずれ集約していく。終焉に、集約していくじゃあないですか!」
コクピットハッチが開く。
『サツキ・ラーズグリーズ』が開いたのではない。
『熾盛・改』に搭載されているAI『エイル』が、そうしたのだろう。
「……『サツキ』」
名前を呼ぶ。
もう一人の静漓がコクピットの中に踏み出す。
見上げる『サツキ・ラーズグリーズ』の顔を見た。
己がそうなのだ。
可能性そのもの。故に、と静漓は風に乗せるように己の気持ちを伝える。触れた頬の暖かさと涙の感触に微笑む。
「この先に何かがあるのね。進むことを躊躇わせるほどの終焉が」
「誰にだって、どんな存在にだって、それはあるでしょう。それを」
「私に、その苦しみを和らげる力はないけれど、それでもね。私たちができることは戦うことしかない。運命だとしても、終焉だとしても、抗って戦うしかない」
だからせめて。
これから訪れる未来を静漓は受け止めると額を合わせる。
流れるのは、破滅。
降り注ぐ無差別砲撃。
戦禍に消えゆく生命。数多の生命は失われ、炎が世界を包んでいく。
それは彼の母親も、兄弟たちも同じだった。
立ちすくむしかない赤いキャバリア。
これが、と静漓は思っただろう。これが終焉。これより訪れる『殲禍炎剣の代行者』がもたらすかもしれない未来――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
オー。
事件を未然に防げなかったのは痛恨デスガ、まだリカバリーは効きマース!
ドーモ、サツキ殿!
いろいろと暴露されたようで大変デスナ!
あいにくワタシには政治はわかりマセーン……ソルジャーはただ戦うオンリー。
なのでワタシも暴露しマショー!
何を隠そうバルタン・ノーヴェのノーヴェは数字の9!
つまり九体目の個体というナンバリングデスネ、HAHAHA!
いえ不幸自慢をする訳ではないのであります。
人道とか倫理とか、そういうセンシティブなイメージを重視するのは|知って《わかり》マース。
しかし。我輩たちや御身の|感情《エモーション》!
製造元や民意のことではない、アナタ自身の想いをパッション!
それも大事でありマース!
テロ組織『憂国学徒兵』の台頭によって起こる事件を未然に防げなかったのは、それだけ彼らが用意周到だったということであり、小国家『グリプ5』を取り巻く状況が全て彼らに利するところであったということもである。
それをなしたのが何者であれ、起きてしまったことは最早変えようがない。
「まだリカバリーは効きマース!」
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、そう思っていた。
いや、できる。
グリモアの予知。
今ならば、間に合う。
世界の破滅を阻むことができると輝いたのだ。
確かに起こってしまったことは痛恨の極みであろう。だが、それでも覆すことができると信じて前に進まねばならないのだ。
「ドーモ、『サツキ』殿! 色々暴露されたようで大変デスナ!」
バルタンは、『熾盛・改』の前にやってきていた。
開放されたコクピット。
そこに彼がいる。
「あいにくとワタシには政治はわかりマセーン……ソルジャーはただ戦うオンリー」
ひょい、とキャバリアの装甲をとっかかりにしてコクピットにバルタンは登る。
そこには蹲るような体勢の『サツキ・ラーズグリーズ』がいた。
顔を上げれば、そこに涙の跡があるのを知るだろう。
悲しみだけがあった。
けれど、バルタンは笑う。
「HAHAHA!『サツキ』殿! 笑顔デース! 苦しい時、悲しい時、しんどい時ほど、笑うのデース!」
己がそう言われたように。
笑え、と。
笑えば前向きになると。いやでも、と言われたことを思い出す。
確かに己達は戦うことしかできない。
けれど。
「それでも生きているのデスから、笑わないとデース! なので、ワタシも暴露しマショー!」
「……笑えないですよ」
「笑えマース! 人はそういうものデース! 殺されてしまうかも知れませんが、負けるようにはできていないのデース! ワタシ、バルタン・ノーヴェも、数字を冠する名! ノーヴェ、即ち数字の9! つまり九体目の個体を現すナンバリングデスネ、HAHAHA! いえ、不幸自慢をするわけではないのであります」
傷の舐めあいがしたいわけでもない。
人道、倫理。
それは人が生きる上で必要なものだ。いや、唯生きるだけならば必要ないものだ。
けれど、人は社会性の獣。
正しさを愛するが故に、それを必要とするのだ。
「正しさのためなら、他のいろんなものを犠牲にできるのも|知って《わかり》マース。しかし、我輩たちや御身の|感情《エモーション》! 製造元や民意のことではない、アナタ自信の想いをパッション! それも大事でありマース!」
何故なら、とバルタンは笑う。
嘗て己がそうしてもらったように、笑いかければ笑えるようになるものだ。
どんなに悲しみが心に蓋をするのだとしても、笑顔はいつだってバールで感情をこじ開けてくる。
涙に溢れていたとしても、蓋を開けば、溢れて乾いていく。
「行きマショー! どんな終焉を見るのだとしても、それを決めたのはアナタではないはずデース。そして、決められたものではないと知ることだってできるのデース!」
バルタンはそう言って『サツキ・ラーズグリーズ』に手を差し出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
…うーん、こんな世界だし使えるなら何でも使うべきと思っては居るんだけど
思った以上に倫理観がある!
倫理倫理〜
とりあえずパイロットから情報収集かな
情報収集する時は、スーツを来て眼鏡をかけてオールバック…はちょっと難しいから綺麗にセット
指を立てて聞き込みをする、アンダーシーダー右京流
最初からもう一つ宜しいでしょうか?とか言いながら、ガンガン聞き込み
レールジャンからパイロットを救出しつつ、何が起きたか聞いとこう
アリバイは?第一発見者は?被害者との関係は?
…違ったわ
戦場でどんな事が起きたのかとか
敵がどんな動きをしてたのかとか
まあ、雑談レベルで聞いとこう
だってどんな敵だって、最後に斬れば良いだけだし!
クロムキャバリアは戦乱の世界である。
いくつもの小国家が乱立しては滅んでいく。互いに潰し合うだけの争いだというのに、人々は互いに抱いた猜疑を払拭できぬままに泥沼の戦いに沈んでいくしかない。
そんな世界であるからこそ、我が身を守る為に手段を選ばぬのは、当然のことだった。
倫理など無意味なものであった。
だからこそ、と月夜・玲(頂の探究者・f01605)は思うのだ。
こんな世界だからこそ使えるもの何でも使うべきだ、と。
それが嘗ての『エース』の再生であったとしても、人道に悖るのだとしても、生き残るためには必要なことだと割り切ることだってできたはずだ、と。
だが、人は正しさを愛する。
己の中にある正しさこそが絶対だと言い張りたいものだ。
故に、己の中にある正しさと相反するものを持ち得る者を糾弾する。そうやって排斥して、最後には己自身もまた排斥されるのだとしても、正しさを愛するが故に、他者を攻撃し続ける。
「思った以上に倫理観がある! 倫理倫理~」
玲は前髪を掌で抑え、かきあげる。
撫でつけた髪はすぐに重力にしたがって落ちてきた。
「やっぱりちょっと難しいかな。うん」
スーツに身を包んでいるのは一体どういうことなのか。
よくわからない。
「もう一つよろしいでしょうか?」
え、なに、と急に始まった玲の問いかけに『簡易型レーギャルン』から這い出した『ズィーベン・ラーズグリーズ』は怪訝な顔をした。
場違いなスーツ。
そして玲。
この『グリプ5』において玲は有名だった。
勇名を馳せた、と言ってもいい。
過去幾度となく現れた超常の人。
「何が起きたのか。アリバイは? 第一発見者は? 被害者との関係は?」
「え、え、え、なに、何が?」
「……違ったわ」
玲は息を吐き出す。
そう、違った。
これは違う。完全にドラマの見すぎであった。でもまあ、仕方ない。聞き込みと聞くと玲の中ではあんぱんと牛乳くらい定番なのが、このスタイルであったからだ。
「ごめんごめん。一体何が起こったのかなって思って」
「テロ組織が、中枢を制圧して盾にしたんです。それで……」
「手も足もでなかった、と。でもさ、対応できない感じでもないんじゃない?『エース』ならさ」
「それは」
『ズィーベン・ラーズグリーズ』はまだ少女といっていい。
恐らく、盾にされたのは彼女たちの母親である『ヌル・ラーズグリーズ』だったのだろう。
「まあ、人質取られたら動けないよね。状況を見るに、砲撃を一方的に受けた感じかな」
「敵のキャバリアは砲撃戦仕様ばかりで……」
彼女は二人羽織の赤いキャバリアを見る。
動かなかった兄。
それがどうしても彼女には理解できなかったのだろう。
「まあ、何が見えているのかはわからないけれど、大丈夫じゃない? ほら」
玲は指差す。
赤い二人羽織のキャバリア『熾盛・改』が動き出している。
「足を止めなければ、いつかはたどり着くよ。そういうもんだし」
それに、と玲は『ズィーベン・ラーズグリーズ』を立ち上がらせて笑む。
これから先にどんな敵が待ち受けているのだとしても、彼女のやることは変わらない。
どんな敵だろうと、困難だろうと。
「最後には斬れば良いだけだし――!」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『ガーディストーム』
|
POW : 不退転突撃
予め【EPメガスラスターで直進し続ける】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 砲火弾幕
【EPメガスラスター】を用いた戦闘時に、一点を貫く【RSキャノン砲】と広範囲を薙ぎ払う【RSガトリングガン】を一瞬で切り替えて攻撃できる。
WIZ : 浸撃弾雨
【集団による砲撃弾雨】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を更地にし】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「『フュンフ』兄!」
「ごめん、『ズィーベン』。僕は行くよ。今更って言われるかも知れないけれど」
『サツキ・ラーズグリーズ』は、未だにその名で自分を呼ぶ、妹をキャバリアから見つめて眦の涙を拭う。
確かに彼がみた終焉は、変え難いものだったのだろう。
けれど、それでも前に進まなければならない。
時は待ってはくれない。
どんな時でも時は停滞せず、前に進むために過去を排出して進んでいく。
「腹は決まったか」
『パッセンジャー』の言葉が響く。
「ああ。終焉を決めたのが誰なのか知らないけれど。それでも戦わない――」
「――理由になってない」
「だね」
そういって『サツキ・ラーズグリーズ』は、二人羽織のキャバリアを分離させる。
二騎の赤いキャバリア。
それを感知したように市街地へと砲撃が降り注ぐ。
そう、それはテロ組織『憂国学徒兵』の操るオブリビオンマシン『ガーディストーム』による砲撃であった。
重装甲を持ちながら、メガスラスターの推力で持って重火器を用いた不退転の直進加速を可能としたオブリビオンマシンである。
その攻勢は名の通り、正しく嵐。
砲火の嵐の中、猟兵達は進まねばならない。
どんなに地獄の如き未来が待っているのだとしても、それでも進まねば時は必ずや己たちを終焉に追いやるであろうから――。
バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎
グッド! 良い表情デース、サツキ殿!
さあ、殲禍炎剣の代行者をブレイクしに参りマショー!
パッセンジャー殿、共闘よろしくお願いしマース!
レッツゴー、スコール!
マイキャバリアに搭乗して砲火の嵐を踏破しマース!
四足歩行形態で降り注ぐ敵機の射撃砲撃を潜り抜けて、UC展開!
「六式武装展開、煙の番!」
界渡り途中に再会した一番目であるマイシスター、忍者をしてる|海野《ウーノ》・バルタンから教わった忍術擬きの煙幕でかく乱し、パイルバンカーで重装甲ごと吹き飛ばしていきマース!
不退転の直進加速では、煙幕の中を縦横無尽に駆け回るスコールを捉えられるとは思わないことデース!
オープンセサミ!
バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、戦うと決めた男の顔を見た。
『サツキ・ラーズグリーズ』。
彼の体は前に進み始めている。
どんなに絶望が目の前に横たわるのだとしても、終焉が必定なのだとしても、それでも前に進めた男の覚悟を、その横顔に見た。
「グッド! 良い表情デース、『サツキ』殿!」
「ありがとう。でも、これからだ」
迫るはオブリビオンマシン『ガーディストーム』の砲撃の嵐であった。
加えて、あのオブリビオンマシンの本領はメガスラスターによる不退転の突撃。
重装甲であることを傘にきた突進は侮れないであろうし、直進を続けることで攻撃力がましていく。
まるで特攻そのものだ。
「さあ、『殲禍炎剣の代行者』をブレイクしに参りマショー!『パッセンジャー』殿、共闘よろしくお願いしマース!」
「ああ」
短く答える赤い二人羽織のキャバリアが分かたれた、もう一騎にバルタンは告げる。
であれば、と彼女は己がキャバリアを呼び寄せる。
「レッツゴー、『スコール』!」
獣の如き体躯のキャバリアが戦場を疾駆する。
砲撃の嵐など、狼の疾駆を捉えることはできはしない。四足歩行形態による悪路走破。それは『スコール』の独壇場であったことだろう。
「六式武装展開、煙の番!」
噴出する煙。
「……煙幕、スモークディスチャージャーか! だが、その程度で我らが進路をぉ!!」
阻めるものか、と『ガーディストーム』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』たちは、砲撃とともに直進を続ける。
その苛烈なる砲撃の爆発の中を『スコール』は瓦礫を蹴って三角飛びのように跳ね、鋼鉄の獣たる俊敏性でもって側面を取るのだ。
「これこそマイシスター! 忍者の|海野《ウーノ》・バルタンより教わった忍術! そしてこれが!」
踏み込む『スコール』。
そのアイセンサーが煙幕の中にてきらめいた瞬間、『ガーディストーム』の頭部を撃ち抜くのは鉄杭の一撃だった。
パイルバンカー。
その鉄杭打ち出し機による一撃は、超高速である。
故に加速した『ガーディストーム』の装甲など相対速度によって、大威力の一撃と変貌し、重装甲であろうと容易く撃ち抜いてしまうのだ。
「ば、馬鹿な! この速度を煙幕の中で捉えるばかりか、重装甲を撃ち抜く、だと!?」
「HAHAHA! 不退転では足りないのデース!」
そして、とバルタンは笑いながら煙幕の中を『スコール』とともに走り抜ける。
「この縦横無尽に駆け抜ける『スコール』を捉えれるとは思わないことデース! オープンセサミ!」
開けごま、といって開く道ならば容易い。
が、それでも征くと決めたものの道を阻むものをバルタンは許さない。
打ち込まれた鉄杭の一撃とともに走る『スコール』は、吠えたけるように、その暴威をオブリビオンマシンの狂気に当てられたものたちに示すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『サツキ』も腹が決まったか。なら、今からでもしっかり戦ってもらいましょ。
あたしはあたしの戦いをするまで。
「式神使い」で機甲式『GPD-331|迦利《カーリー》』を足場に、「空中戦」。
「全力魔法」雷の「属性攻撃」「貫通攻撃」「電撃」「仙術」で雷公鞭。
迦利の起動で時間を稼ぎながら、雷公鞭に十分な詠唱を込めていく。ある程度溜まったら、電撃を解放するわ。範囲内の敵機は、これで焼き切れるはず。
雷公鞭の威力なら、そこまで詠唱を込めなくても大丈夫かしらね。とにかく、目に付くところから焼き払う。
牽制は『迦利』の「レーザー射撃」で。それで時間を稼ぐ間に詠唱を完成させる。
約束したのよ、あなたたちを叩き潰すってね。
荒廃した市街地を前にして『サツキ・ラーズグリーズ』は、その二人羽織のキャバリアの性能を発揮する。
羽織のような装甲であったものはもう一騎のキャバリア。
分かたれたことで、一騎のキャバリアから二騎のキャバリアに変じたのだ。
「『サツキ・ラーズグリーズ』も腹が決まったか。なら、今からでもしっかり戦ってもらいましょ」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、市街地を征く機体を見やる。
どうやら猟兵たちの言葉を受けて彼も戦うことを選んだようである。
如何に終焉が定まっているのだとしても、その終焉を前にして何もしないのと抗おうとするのとでは、結果は同じであっても過程が違う。
過程が違えば、細部が異なる。
終戦のその先があるのだとすれば、決して終焉は終焉のままに終わるものではないのだと言えるだろう。
だからこそ、その道行きの先が如何なる結果になるのだとしても。
「あたしもあたしの戦いをするまで――『迦利』!」
ゆかりの背後に出現する逆三角形の無人キャバリア。
その背に乗り、ゆかりはその瞳をユーベルコードに輝かせる。
「飛翔するキャバリアだと!? この空にあって『殲禍炎剣の代行者』様以外の存在が空を飛ぶなど、許されぬ! その不遜、ここで潰させてもらう!」
オブリビオンマシン『ガーディストーム』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』たちは一斉に叫び、その背面に装備された砲門をゆかりに向ける。
「消し飛べ!」
瞬間、砲弾が雨のようにゆかりへと注ぐ。
爆発が巻き起こり、凄まじ爆風がゆかりを襲う。
それをオーラで防ぎながら、ゆかりは『迦利』と共に飛翔する。
確かに『ガーディストーム』の砲撃は苛烈だ。
だが、狙いを付けていない。
「まさか、ここを更地にするつもり!?」
「全て滅ぼさねばならぬ! 煉獄の炎こそが、人の罪を、罪過を浄化するものなのだ!」
「アハハハッ! 燃えろ、燃えろ! 戦禍の火種、『悪魔』の痕跡を全て一掃するのだ!」
彼らの声を聞きながら、ゆかりは歯噛みする。
「めちゃくちゃやって……! 例え、それであたしたちを排除できたとしても、その後に暮らすことや生活するなんてこと……考えてもいないのね! これだからオブリビオンマシンっていうのは!」
ゆかりは、詠唱を続ける。
詠唱を続けることで、彼女の雷公鞭(ライコウベン)は威力を底上げされていくのだ。
「なら、あたしは約束を果たさせてもらうわ! 其は空を裂き、地を穿ち、森羅万象を灼き尽くす天雷なり。――全てを滅ぼせ、疾!」
走るは雷撃。
天より降り注ぐ紫電はプラズマ化している。
苛烈無比なる雷撃は一瞬で『ガーディストーム』を打ち据え、その重装甲を無意味のものとするように、電装の尽くを焼き切っていく。
「馬鹿なッ、何だというのだ、この光は!」
「約束したのよ、あなたたちを叩き潰すってね」
ゆかりは『迦利』の上に立ち、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
破壊と破滅をもたらすもの。
その尽くを許さぬというように彼女は、苛烈なる紫電が迸る中にて、結んだ約束のためにこそ力を振るうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
ガーディアンストームの進路を[情報収集戦闘演算]で特定し、
妨害するように【削り抉る電磁嵐】を展開して[時間稼ぎ]。
諦めて進路を変えた時は、逐次誘導弾を操作して妨害する。
悪いけれど、ここは通行止めよ。
私自身も[推力移動、滑空]で敵の側面を狙って接近、
大型フォースブレイドで[武器巨大化、なぎ払い]。
[変わり身]機能付きのデコイドローンを囮として残して[おびき寄せ]、
その隙に他の機体も撃破していくよ。
メガスラスターの噴射光が廃墟となった市街地に明滅する。
ただ只管に直進。
それがオブリビオンマシン『ガーディストーム』の戦法だった。
ややもすれば、それは愚昧なる行軍そのものであった。
しかし、その重装甲と重火力である。放置すれば、例えようのない蹂躙力となって並み居る敵の尽くを退ける力となることは言うまでもない。
「進め! ただ只管に直進だ。敵がいるのだとしても、重火器の集中を持って撃破すればいい!」
オブリビオンマシンのもたらす狂気によってテロ組織『憂国学徒兵』たちは、愚直な全身でもって破壊を撒き散らしていく。
その姿を捉えたイクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)は、その背にあるサイキックウィングを広げ、サイキックスラスターの噴射でもって跳ねるように廃墟となった小国家『グリプ5』の市街地を駆け抜ける。
「目標範囲確定。対象……捕捉。FCS、オールグリーン。全弾射出!」
それは一瞬の決断だった。
敵の進路を情報収集し演算でもって算出したのだ。
それによって彼女は『ガーディストーム』の進路上に飛び出し、その瞳に輝くユーベルコードの発露でもって足止めしたのだ。
「パワーダウン!?」
「こんなときに、どういうことだ!?」
彼らが動揺するのも無理ないことだった。
イクシアのユーベルコードは、削り抉る電磁嵐(エレクトロ・スラッシュ・サンダーストーム)。
電子機器をダウンさせる強力なプラズマを宿した追尾誘導弾でもって『ガーディストーム』の伝送を破壊したのだ。
「悪いけれど、ここは通行止めよ」
イクシアはさらに滑空しながら『ガーディストーム』たちの側面を追撃するように大型フォースブレイドを振るう。
その斬光は一瞬にして『ガーディストーム』の重装甲を切り裂き、脚部を両断してみせるのだ。
「な、生身……!? 一体、どういう武器なんだ! 状況を知らせろ!」
「ダメだ、こっちのモニターは死んでる! 動けない!」
「混乱しているね。この隙に……!」
イクシアはデコイドローンを射出して、異変に気がついた後続の部隊が追いついてくる前におびき寄せ、さらに『ガーディストーム』をプラズマ追尾誘導弾でもってダウンさせる。
「クッ……一体何が起こっている!」
理由もわからずに撃破されていく『ガーディストーム』。
それをイクシアは視界の端に捉えるばかりだった。
サイキックスラスターの噴射光と共に戦場となった市街地を駆け抜けるイクシア。
「ここはこのくらいで大丈夫かな。敵はやっぱり小国家の中枢に集まっているみたいだし……後は」
そう、『殲禍炎剣の代行者』と呼ばれるオブリビオンマシンを撃破するだけだ。
必ず、そのオブリビオンマシンは中枢にいるはずだ。
イクシアは、その元凶を討つために『ガーディストーム』の部隊を蹴散らしながら、奥へと進んでいくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルド・エルネイジェ
動くか、二人羽織
全ての火はやがて消える
だがそれでも火は熱を灯す事を止めない
火が火であり続ける限りな
人もさして変わらんのだろう
生き続ける限り、戦い続けるのだ
幾多の骸を踏みしめてな
征くぞ、サラマンダー
敵に花を持たせてやる状況でもあるまい
炎竜迅駆で間合いを詰めるぞ
正面から向かい来るか?
悪くない
賭けるか?どちらが打ち砕かれるか
ストライクバックラーを構えて加速する
奴よりも速くな
俺とサラマンダー、二つの火を束ね、スマッシャーテイルを叩きつける
纏う煉獄を諸共として焼き砕こう
打撃時に行った急旋回で進路を変え、次なる標的に再加速する
突進して喉元に食らいつこう
この程度で退いてくれるな
まだまだ駆け抜け足りないのでな
二騎に分かたれた赤い二人羽織のキャバリア。
『熾盛・改』は、その羽織のような装甲が一騎のキャバリアに変じたのと同時に戦場たる廃墟を疾駆する。
「動くか、二人羽織」
ジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)は戦場先征く騎士だった。
『サラマンダー』に遅れながらも、その加速についてこられるだけの性能を引き出していることを驚愕はしなかった。
それは当然であると思ったからだ。
できて当然だとも彼は思っていた。
「全ての火はやがて消える」
「わかっている。必ず燃え尽きる。そういうものだ」
羽織が変じたキャバリアから『パッセンジャー』の声が届く。
「だがそれでも火を熱を灯すことをやめない。火が火であり続ける限りな。人もさして変わらんのだろう」
ジェラルドは笑む。
あの『サツキ・ラーズグリーズ』が動く気になったというのならば、その胸に熾火が灯されているからだ。
泣いて。
悔やんで。
嘆いて。
それでも人は歩むことをやめない。
時が背中を否応なしに背中を押すからではない。
火が火であるように。人が人であるがゆえに前に進み続けるのだ。
「生き続ける限り、戦い続けるのだ。幾多の骸を踏みしめてな」
ジェラルドは『サラマンダー』が加速する圧を感じながら、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「征くぞ、『サラマンダー』」
迫るは嵐の如き砲火。
オブリビオン『ガーディストーム』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』たち。
その狙いはついていない。
圧倒的な火力と加速、そして重装甲にかまけた突進めいた攻撃だった。しかし、それを侮ることはない。
事実、機体の性能というのはパイロットを生存させるためにあるのだ。ならば、純粋な火力で押し切ろうというのも理解できるところであった。
「やれるか」
「敵に花を持たせてやる状況でもあるまい。道を阻むならば、焼き尽くすだけだ」
赤熱する赤き装甲。
奇しくも、ここにあるのは赤きキャバリアが三騎。
その中でも『サラマンダー』は赤熱する装甲より紅蓮の炎を噴出させながら加速する。
「炎竜迅駆(ブレイズドライブ)――我が道を阻む者はなし」
ブースト加速。
イオンブースターより噴出した推力が『サラマンダー』を更に加速させ、砲弾のように『ガーディストーム』を弾き飛ばす――否、轢く。
正しくそう表現するしかない。
『サラマンダー』は『ガーディストーム』の重装甲すら物ともせずにただ加速して直進しただけでオブリビオンマシンを弾き飛ばしたのだ。
「な、あ――!?」
『憂国学徒兵』は戸惑うしかなかっただろう。
何が起こったのかもわからぬ一瞬。
その一瞬で『サラマンダー』は一騎を轢殺し、さらに手にした盾を左右の『ガーディストーム』へと叩き込む。
弾かれた機体を見ずに『サラマンダー』は踏み込む。
回転するように脚部が沈み込み、唸るようにして尾たるスマッシャーテイルの一撃が打ち込むのだ。
まるで嵐。
「正面から向かい来るのならば、打ち砕かれると知れ。この俺と『サラマンダー』、いずれも臆することはない。我が身に纏う煉獄、お前たちの狂気を濯ごう」
何より、とジェラルドは笑う。
「この程度で退いてくれるな。まだまだ駆け抜けた足りないのでな――」
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ああ、サツキ様も戦場に……
|私《メイド》の立場では奮い立たせることはできませんでしたが
共に戦うことはできそうですね
なんだかんだでサツキ様とパッセンジャー様、良いコンビですね
『新たな|絆ぐ者《セラフィム》』と感じた私の勘はすごいのでは?
さて|ケルーベイム《奉仕者》の本領お見せしましょう!
露払いはお任せくださいませ!
フローリスからフェリーレを装備
空から降るミサイルもまとめて対象に
【クーストース】、全力で行きます!!
撃ち漏らした敵のお任せします、パッセンジャー様!
サツキ様は今は力を温存してくださいませ
この先の、|いやな予感《地獄》が私にも何となくわかってきました……
サツキ様が見た終焉……地獄の様相
もし先日のアスアスでの予兆にも似たあの感じがソレならば
……この戦いは熾烈を極めるはず
第18世代――パイロットを必要としない、ヒトの手から離れてしまった機体
技術の円熟を迎えたかの機体が敵に回れば……
いえ、いかな状況とて我がメイド道は崩れませんので!
そして終焉は覆せるものだと知って頂かなければ!
戦場に立つ赤い二人羽織のキャバリア。
羽織のような装甲がもう一騎のキャバリアに変じる。
それは『サツキ・ラーズグリーズ』が覚悟を決めた瞬間でもあった。
アイセンサーが煌めいている。
『熾盛・改』は二騎で一騎のキャバリア。
そして、『エイル』というAIによって三位一体を体現する。ならば、とステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は一礼する。
恭しく。
己が仕える主人の子息が、今まさに自らの足で立って歩むことをこそ喜ぶのだ。
そう、『フュンフ・ラーズグリーズ』――『サツキ・ラーズグリーズ』の道のりはこれまでも、これからも苦難が満ちていることだろう。
どうしようもないことだ。
例え、地獄であっても進むことを決めたのならば。
「お供いたします」
「……さっきは、すみませんでした。あんなこと、いうことじゃなかった」
『サツキ・ラーズグリーズ』の言葉にステラは微笑んだ。
「いえ、私はメイド。であるのならば、差し出がましいと一喝されて然るべき言動でございました。ですが」
「はい。目が醒めました。もうしあわせなゆめは見ない。夢は夢です。だから」
「征かれるのですね」
ステラは、赤きキャバリア二騎が戦場を征くのを見て己がキャバリア『ケルーベイム』へと乗り込む。
「……『新たな|絆ぐ者《セラフィム》』と思うのは、私の勘の冴えわたるところだったのかもしれませんね」
ステラはなんだかんだで二騎の赤いキャバリアを駆る『サツキ・ラーズグリーズ』と『パッセンジャー』の連携が取れていることに笑む。
だが、メイドとして遅れを取るわけにはいかない。
「|『ケルーベイム』《奉仕者》の本領をお見せしましょう! 露払いはお任せくださいませ!」
「頼みます」
「それでは、参ります」
『ケルーベイム』の装甲板が跳ね上がり、展開される武装を取る。
それは左右一対のトンファー。
迫りくるは、空よりの砲撃。
まさに雨のような砲撃は『ガーディストーム』の放ったものだった。
眼前に迫るそれにステラは『ケルーベイム』と共に踏み出すあ。
「主は御座にありて……何人たりとも先には行かせません!!」
アイセンサーが煌めく。
『ケルーベイム』は、『セラフィム』の前にて煌めく。
その速度は瞬間移動とも見紛うほどの一瞬。
刹那、空に舞うは爆発の光。
放たれた弾丸の尽くが空中で爆散したのだ。
「全弾消失!? 何が起こった!」
『憂国学徒兵』たちは、己たちの放ったミサイルや砲撃の尽くがレーダーから消えたのを見て慄く。
だが、次の瞬間『ガーディストーム』の駆体が揺れる。
「がっ……! キャバリア!? いつのまに!?」
「露払いでございます」
振るわれるトンファーの殴打が『ガーディストーム』の頭部を叩き割る。
さらに掌の中で回転したトンファーが遠心力を得て砲身をへし折るのだ。
「討ち漏らしは……」
「終わった」
『パッセンジャー』の駆る赤いキャバリアが一瞬で『ガーディストーム』を無力化していた。
「『サツキ』様は、今は力を温存してくださいませ。この先の、|いやな予感《地獄》が私にもなんとなくわかってきました……」
「わかっています。でも、どのみち止められないのなら、僕は!」
駆け抜ける赤いキャバリア。
ステラは、その背中を見送る他ない。
ステラの知る地獄。
『サツキ・ラーズグリーズ』の見た終焉が、地獄そのものなのならば。
「……この戦いは熾烈を極めるはず」
「終焉は、この先より、ずっと後のことだ」
『パッセンジャー』の言葉にステラは振り返る。
そこにあったのは、コクピット越しでも感じる翡翠の瞳の輝き。
その瞳が言っている。
「言っただろう。もうずっと地獄だ、と。変わらない。例え、第18世代を越えてなお、人の歩みは止まらない。例え、それが『セラフィム』から『バイスタンダー』へと名を変えてもだ」
「それは」
「アンタが『過去』を見たのならば、それはもう確定したことだ。アンタが見た、それ以上があいつには起こり得る。それが終焉。それでも」
「ええ、いかな状況とて我がメイド道は崩れませんので! そして!」
ステラは笑む。
自信たっぷりに。
それこそ、己が邁進する道に間違いなど何一つないのだと言うように。
「終焉は覆せるものだと知っていただかなければ!」
そう、終焉を知ってなお諦観に塗れなかった者がいる。
なら、とステラは微笑んで、征くのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
トラスト・レッドライダー
鳥羽(f43670)と
出遅れたか……介入する!
俺が敵機の注意を引く!鳥羽、まかせたぞ
亡国の主【操縦】『大空の機神』発動。
主と融合し【肉体改造】巨大な巨神へと変じ、その【存在感】で敵機の注意を引きつける。
敵機の攻撃はアンガーブレードで【武器受け】
【継戦能力】ナノマシン性追加装甲による防護と修復で耐え、
【天候操作】空に雲を作り、雲と己が体から、機械を塵に還す【神罰】の雷を放ち【制圧射撃部位破壊】
直接塵に還せば、搭乗者が危ないか。狙うは機動の要たるEPメガスラスター、それに武装や四肢だ。雲から降らす雷でスラスターを、躯体から放つ雷で武装や部位を塵にし無力化し、敵の注意を更に引き付けよう。
鳥羽・弦介
トラスト(f43307)と
やってやるさ!!いくぞおらぁ!!!
【遊撃】回点号【操縦】
トラストを注意を引いてる間に、『エレクトロスケアリー』を発動!
電撃とサイキックシールドを展開【オーラ防御】
トラストの雷に紛れつつガトリングや砲撃を【シールドバッシュ】パリィで逸らし、ウィングブースター・メガスラスターで【推力移動】
高速で距離詰めて双剣変形フォースサーベルで【早業】
サイキックの刃で装甲ごと【切断】ガーディストーム共を無力化だ!
なーにが不退転だ、殲禍炎剣の代行者だ!
バカみてぇにテロって武器とご高説を他人に圧し付けて気持ち良くなりやがって!
どいつもこいつも、斬り捨ててやらぁちったぁマシになるかああん!?
小国家『グリプ5』は戦場になっていた。
市街地は廃墟と化していたし、ところどころに砲撃の爆発が起こっている。
それもこれもオブリビオンマシンの蠢動とテロ組織『憂国学徒兵』が小国家内にて勢力を台頭させたためである。
どこまでいっても、こんな光景がクロムキャバリアには広がっている。
平和を願いながら、平和を知らず。
戦いの中でしか生きていくことを許されていない。
そんな人々の心は慟哭。
ならば、その慟哭に応える者たちがいる。
「やってやるさ!! いくぞおらぁ!!!」
鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)の瞳にはユーベルコードの輝きが満ちている。
キャバリア『回点号』。
それは弦介のサイキックを受けて、その光を噴出させる。
「俺が敵機の注意を引く! 鳥羽、まかせたぞ」
「誰に言ってやがる! さっさとやれってんだよ!!」
「お前は口が悪いな」
「アンタだけだよ、トラスト!!」
二騎のキャバリアが戦場を疾駆する。
弦介の相変わらずな荒々しい言葉にトラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)は苦笑いをこらえる。
いつだって変わらない負けん気。
だからこそだとトラストは思っただろう。
「ならば、遠慮なくやらせてもらうぞ――空をこの手に、心を地に着けろ、変身」
ユーベルコードに煌めくトラストの体躯。
瞬間、戦場に現れるのは 大空の機神(ウーラノス・マシン)と雷であった。
吹き荒れるような雷降り落ちる光景にオブリビオンマシンを駆る『憂国学徒兵』たちは、乗騎である『ガーディストーム』を思わず停止させていた。
これ以上先に行けば、己たちがどうなるのかを本能的に察知したのだろう。
だが、その本能を押し込めるのが狂気である。
オブリビオンマシンは目の前に破滅があるのだとしても、パイロットをその先へと押し出す。
そうやって、これまでも多くの人々を、小国家を戦禍に巻き込んできたのだ。
「お前たちのやろうとしていることはわかっている。だから、俺達が来た……」
砲撃を受け止める駆体。
大空の機神へと変じたトラストは、その砲撃を受けながらナノマシン装甲による防護と修復で一歩も退かなかった。
嵐のような砲撃を前にしても、彼は一歩ずつ悠然と前に進むのだ。
「撃て! 撃て撃て撃て!!」
「なんで、止まらねぇんだよ! なんで壊れねぇんだよ!」
狂乱するような声が『ガーディストーム』のパイロットたちから上がる。
それほどまでにトラストの存在は規格外であったし、彼らにとっては理不尽そのものであった。
「お前たちが、それに乗っているからだ。だから俺は戦える」
掲げる掌。。
天候操作によって生み出された雷雲。
煌き、空を割るのは雷撃。
迸る雷は、神罰そのもの。
打ち据える一撃に『ガーディストーム』のメガスラスターが爆砕され、擱座する。しかし、それでも砲撃は停めない。
「やるならしっかりやれよな! おらぁ!!」
弦介の瞳がユーベルコードの発露とも共に雷を放つ。
それがサイキックによる電撃そのものであり、『回点号』より発せられる。
「き、機体の制御が……!」
「だろうなぁ! その鬱陶しい砲撃はぁ!!」
弦介は『回点号』と共に戦場を疾駆し、擱座した『ガーディストーム』の砲撃装備を尽く切り裂いていく。
凄まじい推力移動。
加速と急転換。
まるで戦場を走る雷のように弦介と『回点号』は駆け抜けていく。
「なーにが不退転だ、『殲禍炎剣の代行者』だ!」
弦介は吐き捨てる。
どんなに取り繕うとしても、敵はオブリビオンマシン。なら、壊せば動けなくなる。パイロットがいなければ何もできない。
恐れるに足りない。
「バカみてぇにテロって武器とご高説を他人に押し付けて気持ちよくなりやがって! どいつもこいつも、斬り捨ててやらぁ! ちったぁマシになるかああん!?」
「鳥羽、言動を」
「わーってるよ! だが、こうでも言わねーとコイツらだってしまらねーだろうがよ!」
トラストの言葉に弦介はこめかみをビキビキとさせながら、苛立つままに戦場を駆け抜けていく。
その姿を認めながらトラストは、やれやれと息を吐き出し、小国家の中枢……そこに座す『殲禍炎剣の代行者』たるオブリビオンマシンの元へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……勝手にしなさい。こっちも勝手にやるし、邪魔はしないわ
出なさい、プロトミレス!!
こっちもメガスラスター『コルヴィルクス』を装備、ほどほどの高度を維持、
極力攻撃を地面より空中に向けさせるわ
こっちからは『ステララディウス』での牽制弾幕、『ルーナグラディウス(斬撃モード)』での近切り込み切断、『ツインGランチャー』での重力弾で体勢崩しと拘束を仕掛け、動きを鈍らせる
そして、あなた達の位置は「見えて」いるのよ!
【ルクス・ソリス】で|上から《・・・》撃ち抜く……!
「殲禍炎剣の代行者」とやらが、「空から降る光」に撃ち抜かれる
……あなた達が煽動しようとした人々からは一体「どう見える」のかしらねッ!!
「……勝手にしなさない。こっちも勝手にやるし、邪魔はしないわ」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は『プロトミレス』のコクピットの中で『サツキ・ラーズグリーズ』の言葉を聞いた。
そうだ。
己はこの小国家にとっては傭兵めいたものなのだ。
モニターの計器を確認して、アルカは視線を走らせる。外部カメラから伝わる情報を見やり、一つ頷くと『プロトミレス』のアイセンサーが煌めく。
「出なさい、『プロトミレス』!!」
メガスラスター装備である『コルヴィクス』のスラスターが噴射光を放つ。
機体が浮かび上がった瞬間、廃墟となった市街地へと鈍色の機体が疾駆する。
地面より僅かに浮かび上がった滑空とも言うべき疾駆でもって『プロトミレス』は戦場を征く。
そこに叩き込まれるのはオブリビオンマシン『ガーディストーム』の砲撃であった。
火砲による砲撃は苛烈であった。
正しく嵐。
そう形容するのが正しいほどの火砲の爆発は『プロトミレス』に迫り、その装甲を熱するようだった。
「旧式の装備で何ができる! 叩き潰せ!」
テロ組織『憂国学徒兵』たちは、アルカの駆る『プロトミレス』が持つライフルが旧式であることに侮り砲火によって、これを撃墜せんとする。
だが、アルカの操縦技術は古めかしいものではなかった。
見事な操縦。
滑走めいた動きで廃墟などものともしない『プロトミレス』は、さらに戦場をかきまわすように砲火の中を走る。
「何故だ、何故当たらん!?」
「技量不足、ということでしょう」
牽制の射撃で『ガーディストーム』たちは、その機動力を封じられている。
重装甲であるのならば、それにかまけて直進すればよかったはずだ。だが、そこに切り込む『プロトミレス』の動きと時折放たれる重力弾によって思うように加速できていないのだ。
「そして、あなた達の位置は『見えて』いるのよ!」
ユーベルコードに煌めく瞳。
アルカの瞳はモニター上の『ガーディストーム』を見据えていた。
空間座標の認識。
そして、量子通信による誘導。
それによって放たれるは、機竜『ドラグレクス』:による超精密砲撃の一撃。
「砲撃、だと!?」
「いったい何処から……!」
彼らには理解もできなかっただろう。
どこから放たれているのか、など。
「『殲禍炎剣の代行者』とやらが、『空から降る光』に打ち抜かれる……あなた達が扇動しようとした人々からは一体『どう見える』かしらねッ!!」
アルカは、皮肉を込めて叫ぶ。
撃破されていく『ガーディストーム』を横切り、さらに小国家の中枢を目指す。
その先に戦禍を拡大させ、破滅へとひた走らせようとする元凶がいる。
「オブリビオンマシン……! もう悲劇は繰り返させない――ッ!!」
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
残酷な未来に立ち向かう、その勇気が
終焉を終焉させる
そうでしょう――『セラフィム・クレセント』
召喚したキャバリアに騎乗し、翼を広げる
砲撃を【結界術+オーラ防御】で受け止め
なるべく被害を食い止めつつ、疾駆
放つオーラで敵機を退け、負傷した人々を癒やす
人質を保護しなくては、『クレセント』
微かな縁を辿るように、探し求める
まるで誰かの悲願がそうさせるのだというように
例えその光が小さく揺らいでいても
そのしるべを、きっと見つけてみせるから
『ともせ』――その魂に宿る灯を
どんな未来が待ち受けているのだとしても、それから逃げることはできない。
忌避しても、回避しようとしても、それは必ずやってくる。
終焉というのは、そういうものだ。
だから、人は終焉を見れば諦観を抱く。
どうしようもないことだ。
けれど、と薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思う。
「残酷な未来に立ち向かう、その勇気が」
彼女の背に現れるサイキックキャバリアが白銀の光を放つ。
「終焉を終焉させる。そうでしょう――『セラフィム・クレセント』」
軽やかな舞を思わせるような所作で静漓は白銀に青色が走る装甲持つ『セラフィム・クレセント』のコクピットに飛び乗る。
アイセンサーが煌めく。
それは確実なる意志を見せるようであった。
「またキャバリアか! 構わん! 撃て!」
オブリビオンマシン『ガーディストーム』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』たちが、現れた『セラフィム・クレセント』へと苛烈なる砲火を叩き込む。
然し、その砲撃をオーラで『セラフィム・クレセント』は防ぐのだ。
爆風の中にアイセンサーの輝きが灯る。
「これ以上はさせないわ」
迸るオーラが爆風を吹き飛ばしながら『ガーディストーム』を打ち据える。
彼女は蟻害を食い止めようとしていた。
戦場を疾駆するのは、いち早くオブリビオンマシンの脅威を排除するためであり、また市街地に残されていた人々の傷を癒やすためだった。
「ともせ(トモセ)――その魂に宿る、灯を」
そのオーラはオブリビオンマシンを打ち据え、人々を癒やす。
破滅の元凶。
戦禍の種火。
そうした悪意あるものを退けるようにほとばしるのだ。
「……そう、『クレセント』、わかっているのね。できなかったことを。あなたの意志が、そう求めていることを私は理解している」
静漓は、小国家の中枢を見やる。
そこには揺らめくような縁がある。
僅かなものだ。
けれど、確かにそこにある。『まだ』あるのだ。
「そうね。これはいつかの誰かの悲願。例え、その光が小さく揺らいでいても、そのしるべを、っきっと見つけてみせるから」
行きましょうと静漓は小さく言葉をこぼした。
『セラフィム・クレセント』の白銀の装甲に走る青色が広がっていく。
嘗ての姿を取り戻そうとしているのではない。
嘗て願われたことをなそうとしている。
時を経て、世界を越えて、想いを運ぶ。
結実させなければならない。
例え、それが終焉にある地獄によって阻まれるのだとしても。
「人の狂気が、凶暴性が、争いを生むのだとしても。それでも人は同じように育むことができると、知ったから」
だから、征くのだと静漓は『セラフィム・クレセント』と共に戦場を駆け抜けた――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
動き辛いから普段着に着替えよ…
爆発爆風の嵐なんて風情が足りないね
嵐じゃなくてこれじゃ荒らしだなHAHAHA
…
……滑ったとか言うな!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
本物の嵐がどういうもんか、見せつけてやろう
【剣技・嵐流剣】起動
剣を構えて疾走
当たらなければ、ってやつで敵の砲撃を躱しながらガーディストームを狙おう
威力を上げた『斬撃波』で砲塔を狙って破壊していき、攻撃性能を奪った機体のスラスターと脚部を斬撃で破壊
スラスターは剣を突き刺し『串刺し』に、脚部は関節を狙って『なぎ払い』切断していこう
足下に『オーラ防御』でシールド展開
足場にして空中も走って狙いを付けさせないようにしよう
戦場となった市街地は廃墟そのものだった。
仮にこの事件を解決するのだとしても、小国家『グリプ5』はまた戦禍から立ち上がらねばならない。
それがどんなに大変なことなのかを月夜・玲(頂の探究者・f01605)は知っている。
が、それが何の問題になるのだと言わんばかりにスーツを脱ぎ捨てた。
何度だって立ち上がればいい。
人というのはそういうものだ。
どんな絶望が、どんな破滅があったとしても乗り越えていくことができる。
諦観など抱えても、投げ捨てて前に進む。
そういうものだ。
人間は殺されてしまうかも知れないが、負けるようにはできていない。
例え、オブリビオンマシンにあっても、だ。
「爆発爆風の嵐なんて風情が足りないね。嵐じゃなくてこれじゃ、荒らしだなHAHAHA」
緊張感などなかった。
オブリビオンマシン『ガーディストーム』の放つ砲撃の凄まじさは言うまでもない。
こちらが生身単身であっても関係ない。
ただ破壊をもたらす破滅的な行動。
それがオブリビオンマシンに乗る、ということだ。
「……」
玲は、そんな中にあっても己の言葉に対する反応を待っていたが、返ってくるのは砲撃の嵐ばかりいであった。
渾身ではなかったし。
ジャブみたいなジョークだし。
別に滑ってないし。
「……本物の嵐がどういうもんか、見せつけてやろう」
抜刀されるは、蒼き刀身。
模造神器の二振りがユーベルコードの煌きをほとばしらせる。
「別に滑ってないし。滑ったとか言われてないし。だから滑ってないし。無反応なのは、ジョークだって認識できていないあっちが悪いだけだし。私は別に滑ってない!」
玲のユーベルコードが発露する。
滑った滑ってないという論議の全てを吹き飛ばすかのような蒼嵐が線女王に吹き荒れる。
「なんだ……この風……いや、これは!」
「生身単身……! こいつ、あの蒼い超常者か!」
「撃て! 火力を集中させろ! 人間だと思うな!」
テロ組織『憂国学徒兵』は玲のことを認識していた。
幾度となく『グリプ5』に現れた生身単身でキャバリアを打倒する超常の人。
それが玲だ。
故に、彼らは玲を人間だと思っていなかった。
キャバリアに向ける兵器を当然のように彼女に向けて放つ。その狂気は言うまでもないだろう。
だが、玲は砲火の嵐の中を疾走する。
「当たらなければ、ってやつだよね!」
「クソッ、的が小さすぎる!」
「なら、全部ぶっ飛ばせばいだろうが!」
苛烈なる砲撃の嵐の中を玲は一気に踏み込んで、体高5m級の戦術兵器へと飛びかかる。
「ご自慢の砲塔から! そんでもってスラスターを切り裂けばぁ!」
一瞬で蒼い刀身が煌き、『ガーディストーム』の砲身とスラスターを切り裂く。
爆発が起こり、その光の中を玲はさらなる敵を切り裂いていく。
関節部を切りつけて、機体自体を爆散させないやり方は、パイロットの命を奪うものではなかった。
命のやり取りのさなかにあって、命を奪うことのない戦い方。
それは圧倒的な技量があればこそ。
玲はオーラでシールドを作って、その上に立つ。
「ま、こんなものだよ。さあ、次は」
小国家の中枢を見やる。
本命本丸。
『殲禍炎剣の代行者』。
オブリビオンマシンの出現を予見するように彼女は、その蒼き刀身の切っ先を向けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
よぉフュンフ
やる気は出たみたいだな?
「君は何を見たのかな?グリモア猟兵みたいに見たのかな☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の陣形や動きを冷徹に把握
武装と構造も捕捉
【属性攻撃・空中戦・弾幕・念動力】
飛び回りながら念動光弾と共にUC発動
凍結ミサイルを敵機の武装や四肢に打ち込みその動きを停止させ
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で手足と武装を切り刻み行動不能にしてから金目のものやエネルギーインゴット諸々の根こそぎ強奪
そういや此奴ら何何だっけ?
「カルト教団らしいぞ☆」
どんな世界でも訳わからん邪教は増えるもんだな
「皆メルシーを崇めればいいんだぞ☆」
おめー自分の国民にもボコられてたじゃねーか!
「どうやらやる気は出たみたいだな?」
戦場を疾駆する赤い二騎のキャバリア。
その一騎を駆る『サツキ・ラーズグリーズ』――嘗ては『フュンフ・ラーズグリーズ』と名乗っていた青年の姿にカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は、ひとまずの安堵を覚えたかもしれない。
しかし、未だ戦場に吹き荒れるるのは戦禍の炎。
砲撃の嵐は凄まじく、オブリビオンマシン『ガーディストーム』は健在なのだ。
『君は何を見たのかな?』
『メルシー』の言葉に『サツキ・ラーズグリーズ』は応える。
「終焉を」
彼は言う。
「終焉を識ったのです。だから、僕は」
諦観にまみれていた。
だが、それを今振り払って彼は戦場を征く。
「なら、やるっきゃねーだろうな!」
カシムは己の乗騎『メルクリウス』を駆り、戦場飛び出す。
迫る砲撃を躱し、念動光弾の乱舞でもって『ガーディストーム』を打ち据え、さらには己が瞳をユーベルコードに輝かせる。
「万物の根源よ…帝竜眼よ…魔弾となりて我が敵を討て!」
加速する念動光弾。
竜眼魔弾(リュウガンマダン)と呼ばれるユーベルコードは、生み出した念動光弾を加速させ、『ガーディストーム』の駆体を打ち据える。
重装甲であろうとも、その衝撃を前にしては如何に堅牢であったとしても、中のパイロットは震動によって体躯を揺らされ三半規管にダメージを与えられるだろう。
「さあ、けったいなオブリビオンマシンはだるまにしてやろうな」
振るう鎌剣が『ガーディストーム』の四肢を両断し、さらにエネルギーインゴットを引きずり出す。
「金目のものは全部僕のもんだ。こう見えて盗賊なんでな……そいや、此奴らなんなんだっけ?」
『カルト教団らしいぞ☆』
「ま、どおんな世界でもわけわからん邪教は増えるもんだな」
『皆、メルシーを崇めればいいんだぞ☆』
「おめー自分の国民にもボコられてたじゃねーか!」
『やーん、ばらしちゃやー☆』
そんなやり取りと共にカシムと『メルシー』は戦場を征く。
この先にオブリビオンマシンがいる。
彼らがカルト教団と言ったテロ組織『憂国学徒兵』。
嘗ての救国の戦士たちの名を僭称し、今再び戦禍を撒き散らさんとしている『殲禍炎剣の代行者』を戴く者たち。
彼らの暴挙が今の惨劇を生み出したというのならば、これを排除しなければならないのが猟兵なのだ。
「さあ、どんなのが出てくるかな。ま、どっちにしたって僕は容赦しねーがな――!」
大成功
🔵🔵🔵
皇・絶華
おお、あれがエースという凄い人らしいぞさっちゃん
名前もサっちゃんと言ってよさそうだな
「何で俺と同じ呼び方にしてるんですか主様!?」
それはそうと…何やら恐ろしい未来が見えているようだが大丈夫だ
あれだ
悲しき|終焉《エンディング》は圧倒的なパワーがあれば破壊できる!
(サツキは未来を視るかもしれない。破滅を超える地獄を!)
「ぴぇ!」
UC発動
【バーサーク・薬品調合】
さぁ!未来を超える為に圧倒的なパワーを宿すのだ!
サツキ達と自分とさっちゃんに容赦なく飲ませ
「あっちょんぶりけぇぇぇえぇ!?」
という訳で圧倒的なパワーを宿し敵をぼこぼこにするぞ
手足を引きちぎりパイロットを引きずり出して狂気から回復させるためにチョコドリンクを流し込むぞ
そんな感じで暴れまわり
乗ってる人を救う為に切り裂いてはチョコを飲ませたり食わせたり
うむ!バレンタインも近いしこれはもはや早めのバレンタインデーでは?
「……ぴゅ」(怖いよぉ…!バレンタインが怖いよぉ…!(がくぶる))
さぁ!早めの幸福をその身に受けよ!(破滅を超える地獄があった
あれがそうなのかと皇・絶華(影月・f40792)は、二騎に分かたれた赤いキャバリアの疾駆する軌跡を認める。
「『エース』という凄い人らしいぞ、さっちゃん。名前もサっちゃんと言って良さそうだな」
『なんで俺と同じ呼び方にしてるんですか主様!?」
『サートゥルヌス』の言葉に絶華は頷く。
「『サツキ・ラーズグリーズ』だからな。名前が長い。それに愛称があれば、すぐに仲良くなれる。そういうものだ」
そういうもんかなぁ、と思ったが反論はしなかった。
反論してまたひどい目に合うのはわかっていたからだ。
「それはそうと……何やら恐ろしい未来が見えているようだが、大丈夫だ。あれだ。悲しき|終焉《エンディング》は圧倒的なパワーがあれば破壊できる! さあ、これを飲むといい!」
絶華と『サートゥルヌス』は『サツキ・ラーズグリーズ』の駆る『熾盛・改』に追いつき、コクピットハッチを開いて何やら差し出した。
それは心が籠るバレンタインチョコドリンク(キョウキトアクムノジゴクドリンク)というやつであった。
『ぴぇ!』
慄く『サートゥルヌス』。
「さぁ! 未来を超える為に圧倒的なパワーを宿すのだ!」
「遠慮しておきます」
『そんな! まて! おい待てこら! そんなことしたら、こっちが全部飲まなくならなく……て、あっちょんぷりぇぇぇぇぇえぇ!?』
どぼどぼ飲み込まされる漢方と虫配合の狂気の超高濃度カカオ汁。
圧倒的なパワーとオーラ。
『サートゥルヌス』の駆体に漲る力は、それだけで他者を圧倒するものであった。
「さあ、さっちゃん、オブリビオンマシンからパイロットを引きずり出すのだ!」
機体に宿したパワーと共に『サートゥルヌス』は圧倒的スピードで『ガーディストーム』へと組み付く。
軋む装甲。
「な、なんだこいつのパワーは! ふ、振りほどけない!?」
「当たり前だ。今のさっちゃんは汎ゆる攻撃、即死、強化解除、ユーベルコード解除に対する耐性を持ち得ているんだぞ! 並のキャバリアで振りほどけるものか!」
そこからはもう大暴れであった。
天下無双というより、天下御免の大立ち回り。
『ガーディストーム』たちの砲撃の尽くを躱し、爆風のさなかを駆け抜け、組み付いて斬撃と共にコクピットハッチを引き剥がすのだ。
「ひっ!」
「さあ、飲め! このチョコドリンクを飲めば、破滅的思想、狂気、そんなものなどうでもよくなるほどの圧倒的なパワーを得ることができるぞ!」
「がぼぼぼっ!?!」
絶華の無体は、もはや暴威そのものだった。
問答無用で流し込まれるカカオ汁。
チョコドリンクなんて可愛げのあるものではない。
「救うという行為は大変なことなのだ。うむ! バレンタインも近いし、これはもはや早めのバレンタインデーでは?」
『……ぴゅ』
怖い。
バレンタイデーが怖い、と『サートゥルヌス』は思った。
だが、それを口に出すことは、憚られる。
しかし、どうしようもないことだ。
どう足掻いてもバレンタイデーはやってくるのだ。
「さぁ! 早めの心福をその身に受けよ!」
破滅を超える地獄を撒き散らしながら、絶華は戦場を確実にカカオ汁で侵食していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ジェネラル・キャバリア』
|
POW : キャッスルウォール
自身の身長の2倍の【後方からの攻撃を無効にするオーラの背後霊】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD : ジェネラルホース
【|機械馬《サイキックキャバリア》】を召喚する。騎乗すると【人馬一体】状態となり、【灼熱】属性とレベル×5km/hの移動力を得る。
WIZ : トラクションニール
【棘から電磁パルスを発振】【RXハルバード】による近接攻撃の軌跡上に【引力】を発生させ、レベルm半径内に存在する任意の全対象を引き寄せる。
イラスト:イプシロン
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「廿鸚・久枝」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「忌々しい……! どこまでも『殲禍炎剣の代行者』様のお手を煩わせるとは……! 許しがたい!」
その声と共に小国家『グリプ5』の中枢から飛び出す一条の光。
光の柱が空を射抜き、その中に一つの影があるのを猟兵達は見ただろう。
人型。
鋼鉄の巨人。
堅牢なる鎧めいたアーマー。
それが『殲禍炎剣の代行者』と呼ばれるオブリビオンマシンであると理解できた。
「……母さん!」
『サツキ・ラーズグリーズ』は、見た。
己の見た終焉。
そこにあったのは、今と同じ光景だった。
『殲禍炎剣の大移行者』――『ジェネラル・キャバリア』のマニュピレーター。そこに握りしめられているのは、『サツキ・ラーズグリーズ』の母、『ラーズグリーズ計画』の主導者でもあり、かつてオブリビオンマシンの狂気によって小国家『フルーⅦ』と停戦条約締結の場にて猛威を振るった人物――『ヌル・ラーズグリーズ』であった。
「私には構わないでください。処断されず、こうして今まで生きてきたこと自体が間違いだったのです。ですから」
彼女は百年前、この世界に神隠しでやってきた。
少女であったし、何も知らない世間知らず。
だからこそ、二つ名は『令嬢』。
圧倒的な力を持ち得た超越者――|『憂国学徒兵』《ハイランダーナイン》の一人に列せられていながら、過去の記述に現れることの極端に少なかった人物、その人である。
彼女が異界からの来訪者であることは、テロ組織『憂国学徒兵』たちによって明かされた真実である。
「ですから……もう」
楽になりたい。
ここで死すべき運命なのだと『ヌル・ラーズグリーズ』は理解していた。
これまで永き時を揺蕩うことになった運命を呪っては居ない。そして何より、己という存在が息子である『サツキ・ラーズグリーズ』の足かせになることを拒んでいる。
なら、死ぬべきなのだ。
自死こともできない。
未練だ。何処まで言っても。今も体は生きることを決意と裏腹に望んでしまっているのだ。
「黙れ。戦禍の種。貴様はもっと惨めたらしく死なねばならない。百年前より我らをたばかってきた罪過、ここで濯がせてもらう!」
テロ組織『憂国学徒兵』の教祖とも言うべきパイロットは言う。
恨みに満ちた視線だった。
平和を求めながら、今なお平和には程遠い現状。
それを作ったのが、百年前の『憂国学徒兵』たちであると謗るのだ。
「『フュンフ・エイル』などを国父として崇めた時点で、この小国家は間違いだったのだ!」
「今まで国が、人が、苦難に満ちても生きてこれたのは! 過去の人たちがいたからでしょう! 平和を思う人がいたから!」
「その平和を齎したが『フュンフ・エイル』なら、その平和を脅かす種を蒔いたのも『フュンフ・エイル』なのだ! 我らは許さぬ! この百年の偽りの平和を! 偽りのままに、戦禍へとひた走らせた人間の業を! 故に我らは頂く! この『殲禍炎剣の代行者』様を! 見よ!」
その言葉と共に『ジェネラル・キャバリア』は飛翔する。
それは脅威であった。
『殲禍炎剣』の感知を受けず飛翔し、さらには『高速飛翔体への無差別砲撃機能』を有した小型衛生による砲撃。
猟兵達は知るだろう。
敵は空を自在に飛翔できるというアドバンテージを持ちながら、さらに無差別砲撃を己たちに観光し、ユーベルコードに寄る攻撃を行ってくるのだと。
苛烈なる攻撃は言うに及ばず。
その手には『ヌル・ラーズグリーズ』という人質。
多くを救うために、多くに手を伸ばさなければならない戦いが、始まる――。
村崎・ゆかり
空を自由に飛ぶ上に人質か。二重に厄介な。
こちらも『迦利』で空に上がる。殲禍炎剣の攻撃条件に踏み込まないよう要注意。
「オーラ防御」と「結界術」で攻撃を防ぎながら、金蛟剪から七頭の|虹色の龍《レインボードラゴン》を召喚。
騎乗した敵機にエネルギー体の身体を絡みつかせて、装甲をとかして行きなさい。
そして最大の狙いは、『ヌル』を掴んでいる方の手。一統に肘の辺りを集中攻撃させ、食い千切らせる。後はあたしが落下前にキャッチ出来ればいいけど、上手くいくかな。
虹色の龍たちは、もうしばらく時間を稼いで。
贖えない罪なんてない。生きていれば、やり直しだって出来る。冥府は逃げ込む場所じゃなく、精一杯生きた人の行く所よ。
オブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』は『殲禍炎剣の代行者』であるという。
テロ組織『憂国学徒兵』の教祖とも言うべき男は、狂気に囚われた瞳で言う。
「見よ、これが代行者たる証! 空に在りて、『殲禍炎剣』に打ち抜かれることもなく、こうして存在している。これこそが、貴様たちになく、我らにあるもの。我らは許されているのだ!」
その言葉と共に現れた機械馬を駆り『ジェネラル・キャバリア』は疾駆する。
あのオブリビオンマシンのパイロットの技量は高くはない。
高くはない、とは言っても『エース』たちに比べればの話だ。
「でも、空を自由に飛ぶ上に人質か」
二重に厄介だ、と村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は思っただろう。
己の無人キャバリア『迦利』は、暴走衛生の感知にかからぬビルの上程度に浮かぶことくらいしかできない。
だが『ジェネラル・キャバリア』は、そのような制限などお構いなしな上に、砲撃を空から行い、また自在に空を駆け抜けて炎を噴出させているのだ。
「くっ……!」
「馬鹿め! その程度しか動けぬ機体で何ができる!」
吹き荒れる炎の中をゆかりはなんとかオーラと結界術でもって熱を防ぎながら、己の鋏型宝具を振るう。
帯びる霊力を代償にして放たれる七体の|虹色の龍《レインボードラゴン》を召喚し、なんとか敵の動きを封じようとする。
しかし、空を自在に駆け抜ける機械馬を追うのが精一杯だった。
「フン! 見え透いているわ!」
そう、ゆかりは『ジェネラル・キャバリア』のマニュピレーターに囚われている『ヌル・ラーズグリーズ』を救出することに重きをおいていた。
とは言え、敵の動きに死角はない。
七体の龍を機械馬が空を自在に駆け抜けることで躱しているのだ。
「うまくいかない、か……でも!」
「もうやめてください。私が足かせになるのならば……!」
その言葉にゆかりは頭を振る。
彼女は確かにオブリビオンマシンの狂気、それ以前に人間の持ち得る凶暴性を持って、人道に悖ることをしたのだろう。
しかし、ゆかりは思うのだ。
「贖えない罪なんてない」
罪は罪。
されど、それを越えていくことができる。
なんのための贖罪か。
「生きていれば、やり直しだって出来る。冥府は逃げ込む場所じゃなく、精一杯生きた人の行く所よ」
「笑わせる! その罪過でもって一体どれだけの人間が!」
「人は生きていれば、誰かを傷つける。そんなの慣れっこなんていいたくない。でも、それでも皆精一杯生きているからでしょ! それを!」
贖うのもまた人の道だ。
死ぬことで許されることなんてない。
だから、とゆかりは七体の虹色の龍と共に『ジェネラル・キャバリア』を追い立て、『ヌル・ラーズグリーズ』の救出のために戦う猟兵にバトンを渡すように、その瞳をユーベルコードに輝かせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
イクシア・レイブラント
そこまでよ。
禍根に囚われ終わらせることしか目的がない、あなた達こそ戦禍の種よ。
翼を広げて見栄を切り、教祖に対して【虹霞心爆翼】。まずは人質への危害を封じるよ。
さあ、黙らせたいならかかってきなさい。
ジェネラルホースで加速する敵機の機動を「加速する景象」の[戦闘演算]で見切り、
[推力移動、空中機動]で飛翔しながら敵機の攻撃を回避。
こちらも[弾道計算]を行いエクスターミネイターの[レーザー射撃]で攻撃し、敵機からの[注目を集める]。
さあ、今の内よ。連携のためサツキ機へ[情報伝達]。
コズミック・スカイソードで敵機をサツキ機の方向へ[吹き飛ばし]をして、
協力して人質の救出を試みるよ。
「無駄だ!『ヌル・ラーズグリーズ』を救出しようというお前たちの動きなど!」
オブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』は機械馬を駆り、大空を疾駆する。
その度に炎が噴出して猟兵を寄せ付けない。
そればかりではない。
この大空は他の猟兵、キャバリアにとっては不可侵領域だ。
何故なら、空に暴走衛生が存在しているが故である。ある一定の高度を超えた瞬間、『殲禍炎剣』による砲撃が打ち込まれるのだ。
そうなっては、小国家は砲撃にさらされ、取り返しのつかないことになるだろう。
加えて、暴走衛生のごとき砲撃と共に人質を取っているのだ。
追い立てることができない。
が、それでも此方を排除しようというのならば空から近づかねばならない。
「百年前の禍根を、浄化の炎でもって粛そうと――」
「そこまでよ。禍根に囚われ終わらせることしか目的がない、あなた達こそ戦禍の種よ」
そう言ったのは、イクシア・レイブラント(翡翠色の機械天使・f37891)だった。
彼女のサイキックウィングが広げられ、その噴出するサイキックエナジーの光は『ジェネラル・キャバリア』に認められる所であっただろう。
「生身単身風情が、何を!」
「そうでしょう。だって、あなたのやっていることは生きることじゃあなく、罪を正すことでもなく、罰したいだけのことだもの。そんな輩に戦禍だの火種だの言われる筋合いはない。今のあなた達のやっていることこそが、更に百年先の遺恨にしかならないということを!」
理解しろとイクシアは己が姿を晒すことで持って『ジェネラル・キャバリア』の矛先をむけさせたのだ。
「この『殲禍炎剣の代行者』の前で、よくもほざいた!」
一気に加速する機械馬。
噴出する炎の苛烈さは言うまでもない。
その砲弾のような光景をイクシアは見つめる。
推測する。
計算する。
演算でもって軌道を算出る。
見切る、というのならば、それは己を取り巻く状況の汎ゆる数値を取り込み、そして導き出す、ということだった。
「空にある限り、地上にある私を攻撃するためには、必ず下降しなければならない。なら、演算なんて!」
簡単なことだとイクシアは迫る『ジェネラル・キャバリア』の突進をを回避する。
「チッ! ちょこまかと!」
だが、『ジェネラル・キャバリア』のパイロットは気が付かないだろう。
何故、こうまでして己は、生身単身の猟兵にこだわるのかを。
そう、それは彼女が目障りだからでも脅威だからでもない。
イクシアの広げたサイキックウィング。
それこそが、すでに彼女の術中なのだ。。
「私の翼を見たのなら、もう他に目を向けさせないよ」
虹霓心縛翼(ウイング・オブ・レインボウ)――そう、彼女の広げた極彩色の虹の翼、これこそがユーベルコードなのだ。
彼女の翼を見たものは、その翼にしか注目できない。
自分で攻撃したと思っていても、その実イクシアによってコントロールされているのだ。
「さあ、今のうちよ!」
イクシアの言葉に『サツキ・ラーズグリーズ』の赤いキャバリア『熾盛・改』が動く。
「はい!」
「くっ……させるか!」
「よそ見はしない!」
イクシアは手にした『コズミック・スカイソード』の斬撃の一撃でもって『ジェネラル・キャバリア』を打ち据え、『熾盛・改』へと吹き飛ばす。
その腕へと伸ばされるマニュピレーター。
だが、かすめるにとどまるばかりだった。
「くっ……まだ、届かない!」
「諦めないで! チャンスはまだ巡ってくる! あなたが諦めなければ、どんな終焉だって!」
砕くことができる。
イクシアはそう告げ、己がユーベルコードでもって『ジェネラル・キャバリア』を惹きつけ続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ジェラルド・エルネイジェ
奴の義憤、どこまでがオブリビオンマシンの所業なのだろうな
いずれにせよ国が百年続いた事実は変わるまい
それが偽りの平和であったとしてもな
その結果が答えだ
殲禍炎剣の代行者とは伊達ではないらしい
砲撃と灼熱の猛攻を受ける羽目になるな
しかも相手は殲禍炎剣の審判の外にある
戦いは一方的だ
だが…サラマンダーは炎を喰らう
敵の炎が苛烈であるほど、我が炎はより強く燃え上がる
砲撃を避け、灼熱を受け、奴が攻めあぐねるのを待つ
撃ち合いでは埒が明かないと思わせればいい
機械馬を駆るならば一撃離脱を狙ってくる可能性はあり得る
反撃するのはその刹那だ
炎竜絶刃で腕を切り落とす
そんなものを抱えたままでは、互いに戦い難いだろうからな
オブリビオンマシンのもたらす狂気は、一体何処までがオブリビオンマシンに寄るものなのか。
狂気たる思想を植え付けるというのならば、それはオブリビオンマシンを破壊すれば終わることだ。
だが、それがもしも、その心根にあるものを増幅させた上で捻じ曲げたというのならば、テロ組織『憂国学徒兵』の言う言葉が義憤なのだろう。
人の心理というものは実に厄介だ。
一抹の真実が虚実の中に入り交じる。
判然としない。
一側面から見れば正しくもあり、また誤っても見える。
そうした、真実と虚実のないまぜが現実であるうというのならば、っきっとその通りなのだ。
「どこまでがオブリビオンマシンの所業なのかはさておき。いずれにせよ国が百年続いた事実は変わるまい。ならば、それが偽りの平和であったとしてもな」
ジェラルド・エルネイジェ(炎竜皇子・f42257)はそう告げる。
「仮初の平和など、平和ではない。戦乱よりも劣るものだ! そうとも! そんな中で生きることなど人は求めていないのだ!」
噴出する炎と共に機械馬を駆るオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』のコクピットにて、テロ組織『憂国学徒兵』の教祖とも言うべき男は口角泡を飛ばすかのように叫んだ。
狂気が彼を走らせたというのならば、ジェラエルドは理解する。
「ならば、その結果が答えだ」
「それを正そうというのだよ!」
空を疾駆する『ジェネラル・キャバリア』。
それはクロムキャバリア世界においては、あり得ない光景だった。
空を高速飛翔する。
それがどれだけ自殺行為であるのかを、この世界に生まれ、戦場に生きてきたジェラルドは知っている。
「『殲禍炎剣の代行者』とは伊達ではないらしい」
「その通りよ! 故に、この焔で持って全てを浄化するのだ! 百年前の穢れた超越者ともどもな!」
『ジェネラル・キャバリア』のマニュピレーターには、『サツキ・ラーズグリーズ』の母であり、百年前の『憂国学徒兵』である『ヌル・ラーズグリーズ』が囚われている。
しかも、空を飛びながら暴走衛生のごとき砲撃までもがジェラルドの駆る『サラマンダー』に降り注いできているのだ。
猛攻と呼ぶに相応しい攻撃。
その最中をイオンブースターを噴出させた『サラマンダー』が疾駆する。
「ふむ」
一方的な砲撃を受けながらジェラルドは未だに冷静だった。
ありえぬ空からの砲撃の最中であれば、絶望しかないはずだ。なのに彼は冷静そのものだった。いや、醒めていると言ってもいい。
どれだけ砲撃が前のように注ぐのだとしても、ジェラルドの心は静かな熾火を灯していた。
「だが……我が『サラマンダー』を前にしては無意味だ」
「なに!?」
そう、砲撃を躱し、更に迫る『ジェネラル・キャバリア』が噴出する炎を『サラマンダー』の装甲が吸収していくのだ。
一体何故、と『ジェネラル・キャバリア』を駆る教祖は理解できなかった。。
もしも、彼が『エース』の如き技量を持っているのならば、理解できたかもしれない。だが、彼はそうではないのだ。
理解できぬままに『サラマンダー』に炎を噴出し続け、その尽くを吸収されていくのだ。
「気が付かぬか。我が『サラマンダー』は炎を喰らう。炎が苛烈であればあるほど、我が炎はより強く燃え上がる」
「バカな! 何故炎が効かない! 何故だ! 何故!」
「そう喚くな」
砲撃さえも躱し、炎すら吸収する『サラマンダー』にじれた『ジェネラル・キャバリア』が空よりに強襲でもって迫る。
「それを、待っていたのだ」
瞬間、ジェラルドの瞳がユーベルコードに輝き『サラマンダー』のアイセンサーが煌めく。
刹那といっていい僅かな交錯。
その一瞬にて、迸るは炎竜絶刃(ブレイズエッジ)たる一撃。
切り裂かれたのは『ジェネラル・キャバリア』の腕部だった。
「そんなものを抱えたままでは、互いに戦い難いだろうからな」
「き、貴様……! まさか、このために!」
「そうだ、と言っておこう」
ジェネラルはそう告げ、これまで紡いできた猟兵たちの軌跡を継ぐように両断された腕部に囚われていた『ヌル・ラーズグリーズ』を『サラマンダー』のアームから赤いキャバリア『熾盛・改』の片割れたる赤いキャバリアに預け、炎の壁を生み出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
あほらしい…狂って暴走したぽんこつ衛星なんぞ崇めるとか頭イってんなおめー
このイケメン最強無敵の(自称)天才魔術盗賊のカシムさんを崇めろよぼけ
「ジャパニア創世神のメルシーを崇めてもいいんだぞ☆」
しかし…ヌル…令嬢が掴まれてるとか
「このままじゃ握り潰されて首飛んでサっちゃんがこれ…母さんですって事になっちゃう!」
つまりここで助けてヌルからエロいお礼を受け取らなきゃな!
「ひゃっはー♥」
つー訳で助けるから体を洗って待ってやがれ!
UC起動
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で熱源隠蔽
【念動力・弾幕・盗み攻撃・盗み・切断・電撃】
竜眼魔弾
わたぬき同時発動
飛び回りながら念動光弾を叩き込みつつ
風属性の超高速ミサイルを乱射
その無差別砲撃をミサイルに向けさせ
わたぬき発動
腕を切断してヌルを強奪と共に機体の内臓システムの強奪にかかる
そもそも人をぶっ殺しな時点で何一つてめーに正義はねーよ!
結局てめーらも戦火を広げてるだけじゃねぇかぼけぇ!
せめて非暴力非服従ぐらい見せてみろやぁ!
争いとは常に無為である。
というのならば、汎ゆることが無意味になるだろう。
全てを取り払ってなお、残るものがある。
それが人によって異なるだけだ。
だから、人は社会性の獣でありながら、個を尊ぶ。そうであったのならばいいと思うのだ。しかして、個があるかぎり他者を理解しなければならない。
理解しなければならないが、理解しきれるものではない。
理解というものが、他の全てを奥底まで一切合切知り得ることだというのならば、それが到底不可能であることはクロムキャバリアの歴史が証明している。
他者を信じきれないから、齟齬が生まれる。
距離が離れれば、それだけ心の距離も分かたれる。
溝は埋まらない。
埋めるものを持ち得ていないからだ。
例え、埋まるように見えたものであっても無為無実。
時と共に風化する。
何度繰り返しても人は争いの輪廻から解脱することはできない。
故に、このクロムキャバリアの世界は暴走衛生『殲禍炎剣』がなくとも戦乱の歴史を繰り返しただろう。
この世界において絶対たる裁定者は『殲禍炎剣』のみ。
そう『殲禍炎剣の代行者』を戴くテロ組織『憂国学徒兵』たちは言う。
「あほらしい……」
一言で言えば、そういうことだった。
オブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』の腕部は切り裂かれ、『ヌル・ラーズグリーズ』は救出されている。
切り裂かれた片腕を目にしたテロ組織『憂国学徒兵』の教祖は、コクピットの中で目を見開く。
「な、な、なん、ということを……!『殲禍炎剣の代行者』たる玉体をッ、傷つけるとは!」
「頭イってんなおめー」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は乗騎『メルクリウス』のコクピットの中で辟易した顔をしていた。
これまで多くの、この手合を見てきた。
いずれもが理はない。
理屈などない。
あるのは感情だけだ。
だったら、この手合に相対する時に示すべきは理ではない。
感情だ。激情だ。
「このイケメン最強無敵の(自称)天才魔術盗賊のカシムさんを崇めろよぼけ」
『ジャパニア創世神のメルシーを崇めてもいいんだぞ☆』
「ヌルはすでに救出されたってんなら!」
『これ……母さんですってフラグは回避したってことだよね!』
「ああ、なら遠慮はいらねーってことだ!」
「抜かせ! 玉体を傷つけた罪、贖うがいい!」
『ジェネラル・キャバリア』の肩部スパイクから迸るのは、電磁パルスであった。
荒れ狂う電撃の嵐の中、『メルクリウス』が駆け抜ける。
「速さだけが取り柄のキャバリアなど!」
手にしたハルバードが振るわれた瞬間、『メルクリウス』の機体が引き寄せられる。
「チッ! 引き寄せのユーベルコードかよ」
「至近距離ならぁ!!」
放たれる斬撃を『メルクリウス』は水の障壁で受け止める。
光学迷彩であろうと、敵のユーベルコードは雷撃による範囲攻撃で『メルクリウス』を認識して引き寄せるのだ。
しかし、引き寄せられるとて、ただで転ぶわけではない。
「わざわざ引っ張り寄せてくれてありがとうよ! たまぬき(ソウルスティール)!」
放たれる掌。
高度に練り上げられた技能による、内部機構を引き抜く一撃。
だが、その一撃を『ジェネラル・キャバリア』は手にしたハルバードで払う。
「何をするつもりかわからんが、させるものか!」
「だよな! だったらぁッ」
更に煌めくユーベルコードの輝き。
そう、神機解放機構『界導神機』(メルクリウスフルバースト)は、その一瞬にてユーベルコードを同時に二種放つことができる。
つまり、カシムの一撃はブラフ。
故に『ジェネラル・キャバリア』は周囲を取り囲む無数の魔弾を躱すことはできいない。
展開された光の弾が一斉に『ジェネラル・キャバリア』へと殺到し、その装甲を打ち据える。
「そもそも人をぶっ殺しな時点で何一つてめーに正義はねーよ。結局てめーらも戦禍を広げてるだけじゃねぇかぼけぇ! せめて非暴力非服従くらい見せてみろやぁ――!」
大成功
🔵🔵🔵
皇・絶華
おお…なんと言う事だ!
過去の御令嬢を握りつぶすのと頭のおかしくなった衛星を崇めるとか…!
そうか!
判ったぞ!お前は脳髄にパワーが足りず頭がおかしくなってしまっているのだな!
だが安心しろ!お前とサっちゃんのお母さんを救う為に二人に圧倒的なパワーを授けよう!
見よ!我がぜっちゃんチョコの効果を!(きりっと飲ませた被害者達を魅せる
「「わぁ…!」」(今回はころちゃん(幼女)も参加
UC発動
【戦闘知識】
敵機の構造と動きとヌルの位置も把握
【空中機動・念動力・弾幕・薬品調合・バーサーク・二回攻撃・切断・貫通攻撃】
さっちゃん
巨神の王
チョコの神々同時発動
ころちゃん
拳闘の神
チョコドリンク同時発動(但し幼女の姿
チョコドリンクは全員服用
「「ぴょげぇ!」」
超絶速度で飛び回り念動光弾を叩き込み空からとかのビームは次元転移で躱し
ヌルにはチョコドリンクを流込
「すまん…朕は主様に逆らえぬっ!」
鎌剣で切り刻み幼女は拳を叩き込み
さぁ…お前を正気に戻す時が来た!
チョコ邪神が襲いかかり乗り手にチョコを容赦なく捻じ込む此の世の地獄発生!
「おお……なんということだ!」
頭がおかしくなってしまったのか、と皇・絶華(影月・f40792)は戦場を見つめ、呟く。
コクピットの中で見やる戦場。
それはクロムキャバリアにおいては稀有というより、あり得ない光景であった。
空をキャバリアが飛んでいる。
暴走衛生『殲禍炎剣』がある限り、それはあり得ないことだった。
だがしかし、絶華が驚愕していたのは、そこではない。
「人質をとり、さらに頭のおかしくなった衛生を崇めているのか……!」
爆発の中からオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』が飛び出す。
あれだけの魔弾を受けてなお、装甲はガタつく程度であった。
堅牢な装甲こそが、あのオブリビオンマシンの性能を物語っているようでもあった。
「この空にありて、争いを監視しているのが『殲禍炎剣』なのだ。なら、君臨する裁定者こそがァッ」
怒り狂うテロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロット。
パイロットとしての技量は高くはない。『エース』と比べるべくもない。
だが、空を自在に飛翔し、さらには降り注ぐ砲撃が技量不足を補って余るのだ。一方的に空から攻撃を加えることができるという点は、それほどに凄まじいアドバンテージなのだ。
「そうか! 判ったぞ! お前は脳髄にパワーが足りず、頭がおかしくなってしまっているのだな! だが安心しろ! お前を救うために圧倒的なパワーを授けよう!」
「わけのわからないことを!」
「わぁ……!」
絶華は、自信満々だった。
どこから来るのかわからない自信だった。
彼が示すのは、特製チョコドリンクを飲ませた被害者たちであった。
テロ組織『憂国学徒兵』のパイロットたち。
「見よ! 我がぜっちゃんチョコの効果を!」
彼らは茫然自失であった。
うー、とか。
あー、とか。
そんな言葉というか声しか上げられない様子であった。
「貴様、何をッ!」
「無論パワーを与えたのだ! お前にも与えてやろう! さあ、さっちゃん!」
「任せろ主様!」
「朕達神機の恐ろしさ…今こそ見せてやる!」
ユーベルコードが煌めく瞬間、神機解放機構『連環神機・輝光神機』(サッチャンコロチャンフルバースト)が発露する。
ユーベルコードの輝きが明滅する。
戦場の空を満たすは、念動光弾。
そして、チョコドリンク。
「い、いやだ! それは!」
「それだけはぁ!」
「いいや、飲むといい。さあ、パワーアップしたさっちゃんたちの力をミセルがいい!」
「わけのわからぬことを!」
迸る雷撃。
肩部スパイクから放たれる雷撃は戦場を満たす。
苛烈なるエネルギーの奔流の中を幼女の姿へと変じた機械神たちが疾駆する。
引き寄られたとて、人間の等身大である。
如何にオブリビオンマシンの性能が高かろうが、『エース』の技量なきパイロットには無意味なことだ。
「くっ! なぜ、当たらぬ!」
「さぁ……お前を正気に戻す時が来た! コクピットハッチを開けぬというのならば、チョコをねじ込むまで!」
それはこの世の地獄だった。
『ジェネラル・キャバリア』の装甲に叩きつけられるチョコ。
それは甘いはずなのに、どこか毒々しい匂いを発し、コクピット内部まで染み込むようだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……常に有力な後ろ盾でもないとまともに動けなさそうねあいつ。
組織名も「憂国学徒兵」や「殲禍炎剣の代行者」…要は「力ある誰か」の関係者の騙りだし。
なら人質を失えば取り返そうとするか、衛星等での市民への攻撃を匂わせてくる可能性は高い。
だからUC【殲滅の引き金】でその可能性、そして場合によっては衛星そのものを先に潰させてもらう…!!
後はアンダーとオーバー、空戦装備の『ルーナエ』を装備したプロトミレスで低空に滞空・滑空し、遠距離からの『ステララディウス』の弾幕、
『ルーナグラディウス(砲撃モード)』の砲撃、『ツインGランチャー』での重力弾砲撃、コルヴィルクスL装備のミサイルポッドでの射撃戦を挑む!!
「なんたる不敬、なんたる愚弄、なんたる冒涜かッ。この『殲禍炎剣の代行者』の玉体に対しての無体、許してはおけぬ!」
テロ組織『憂国学徒兵』の教祖たるパイロットは半狂乱になりながら、猟兵に寄る攻勢を前にして怒りを発露し続けていた。
パイロットとしての技量は『エース』に届くべくもない。
ハッキリ言って、凡庸な技量であると言っていい。
だが、その凡庸な技量を底上げしているのは、空を自在に飛び、また衛生よりの砲撃、そして……。
「……人質。でも、人質はもう開放された……なら」
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は『プロトミレス』のコクピットの中で敵が次なる一手を如何にして繰り出してくるのかを理解する。。
結局、だ。
あのテロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロットは、虎の威を借る狐そのものだ。
「……常に有力な後ろ盾でもないとまともに動けない。どんなに口が回るのだとしても、行動が伴っていない」
組織の名も過去の英雄たちの焼きましである『憂国学徒兵』。
そして、奉るのは『殲禍炎剣の代行者』。
「……要は『力ある誰か』の関係者の騙りだし。みっともないわね」
「ぬかせ!『ヌル・ラーズグリーズ』を取り返したところで、貴様らにはぁ!!」
オブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』より現れるのは、巨大なオーラ。
それは『ジェネラル・キャバリア』を巨大化させた形をしていた。
振りかぶるハルバード。
その一閃が『プロトミレス』へと砲撃と共に襲いかかるのだ。
「降り注げ、裁きの光、そして……欠片も残さず、葬られなさい、光すら逃げられない闇に!!」
アルカの瞳がユーベルコードに輝く。
砲撃が止む。
ピタリと、それこそ夕立ちが雨が振ったことなどなかったかのように止むのと同じように。
けれど、知るがいい。
夕立ちは、降りしきる瞬間もまた突然なのだ。
そして、それは『ジェネラル・キャバリア』の頭上から注ぐ、機竜『ドラグレクス』より放たれる超精密狙撃。
超重力が発生し、『ジェネラル・キャバリア』の機体が地面に落ちる。
「ば、バカな……! この『殲禍炎剣の代行者』が、地に失墜するなど!」
「殲滅の引き金(ルクス・オブスキュリタス)を引いたのは、あなたでしょう」
失墜し、重力に縫い止められた『ジェネラル・キャバリア』に肉薄するのは、低空を滑空して迫る『プロトミレス』であった。
放たれるキャバリアライフルの弾丸。
装甲に弾かれるのをアルカは見やり、やはり重装甲であることを理解する。
「フッ、バカめ! この重装甲はァッ!」
「なら、こうするまでよ! 砲撃モード!」
「う、オオオオッ!?」
腰部のビームランチャーとツインGランチャーから放たれる砲撃、そしてミサイルポッドより放たれるミサイルの雨。
降り注ぐ爆発の中に『ジェネラル・キャバリア』は沈むように飲み込まれていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
バルタン・ノーヴェ
アドリブ歓迎
神隠し。平和のために戦い、戦禍の要因として排される。
……そこはかとなく親近感! ヌル殿の経歴がワタシの重なってシンパシー!
過ごした年月は桁が違いマスガ……ヌル殿もサツキ殿も、このまま終わるのはとてもバッド!
生き残って、余生を模索する余裕をプレゼントしなくては!
駆けてくだサーイ、スコール!
スコールに空を飛翔するジェネラル・キャバリアの注意を引いてもらい、静かに離脱!
必殺のUCを使う時はここデスナ!
骸式兵装展開、争の番! そしてカモン、ビッグ・バルタン!
オーバーロード! ジェットストリームアタックを仕掛けマスヨ!
ビッグ・バルタンのグレネードランチャーやガトリングガン、スコールのミサイルポッドにキャバリアライフル、そして我輩の鉤爪から放出する超電撃と真空波!
HAHAHA! ワタシたちの連撃は近接のみにあらず! 射撃の弾幕もあるのデース!
背後霊が後ろのバックを無効化しようと、三方向から袋叩きすれば無問題!
ヌル殿は先陣の猟兵仲間が奪還しているから遠慮なく砲撃できるというものであります!
猟兵のキャバリアによる砲撃。
その爆発は確かにオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』を飲み込んだ。
しかし、その爆発の中から空に飛び出す影があった。
言うまでもない。
『ジェネラル・キャバリア』は、その重装甲を歪めながらも、未だ健在であった。
とは言え、である。
消耗していることは言うまでもないこと。
膨れ上がる巨大なオーラ。
それは巨大化した『ジェネラル・キャバリア』そのものであるように思えただろう。
「許さぬ! 断じて!『殲禍炎剣の代行者』に対する不敬! 決して許しはせぬ!」
テロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロットの技量は決して高いものではない。
だが、何故ここまで猟兵たちが苦戦するのか。
空からは砲撃。
加えて、空に蓋された世界にありながら『ジェネラル・キャバリア』のみが空を自在に駆けることを許されているのだ。
上空からの一方的な攻撃。
これが戦場においてどれほどのアドバンテージを有するかなど言うまでもないことだった。
「消え失せろ!」
巨大なオーラによるハルバードの一撃。
それは市街地を分断するかのような一撃だった。
その一撃の中を獣の如き姿である『スコール』が疾駆する。
「邪魔立てするものは、すべてェ!」
振るわれる一撃は苛烈そのものであった。
しかし、『スコール』の中にバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)はいなかった。
「神隠し。平和のために戦い、戦禍の要因として排される……そこはかとなく親近感! ヌル殿の経歴がワタシに重なってシンパシー!」
バルタンは『ヌル・ラーズグリーズ』の辿ってきた道のりを思う。
過ごした年月など意味をなさない。
そこには母子の感情があるというのならば、全てがこのまま終わってしまうことなどあってはならない。
「生き残って、余生を模索する余裕をプレゼントしなくては! そのためには!」
バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。
敵は『スコール』に釘付けであろう。
だからこそ、バルタンは己がユーベルコードという切り札を今こそ切るべきなのだと理解したのだ。
「骸式兵装展開、争の番! そしてカモン、ビッグ・バルタン!」
放つは超克の輝き。
満ちる光の中でバルタンは『ビッグ・バルタン』、『スコール』、そして己が変貌した『鉤爪之男』の力を発露して疾駆する。
「ジェットストリームアタックを仕掛けマスヨ!」
「数などッ!」
放たれる雷撃とハルバードの一閃。
振りかぶった腕部に叩き込まれる『ビッグ・バルタン』のグレネードランチャーの一撃。
そして、ガトリングガンの弾丸が嵐のように注ぐ中『スコール』が疾駆し、ミサイルポッドから放たれたミサイルの爆風で『ジェネラル・キャヴァリア』の視界を覆うのだ。
「っ、クッ! 弾幕などはァ!」
「HAHAHA! ワタシたちの連撃は接近のみにあらず! 弾幕とはこうやるのデース!」
「だからと言って!」
巨大な『ジェネラル・キャバリア』のハルバードの横薙ぎの一閃が迫る。
これを躱してバルタンは笑う。
「HAHAHA! 無駄デース! どんなに巨大なオーラを見せつけても、虚仮威しデース! なら、三方向からの攻撃ハ!」
必ず『ジェネラル・キャバリアを追い込むだろう。
「これこそが、ジェットストリームアタックデース」
荒れ狂う気流のように迫る砲火が『ジェネラル・キャバリア』の重装甲を削り、さらに爆風の中に押し込められるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
やーいやーい
人質取らなきゃまともに戦えない何か情けないやーつ
雑魚雑魚おじさん!
頭スカスカ!
髪の毛スカスカ!
…いや、メスガキエミュは流石に辛いものあるなあ
年齢的に
いやまあまだね?
まだまだね?
古くからの諺曰く
生きていたからLUCKYだ…と
…諺じゃねーや
つまり、最終的に生きていれば多少は無茶しても良い!
【断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉】起動
ヌルと私を繋いで命を共有
これでまあ、簡単には死なんやろ
EX:I.S.T[BK0001]に騎乗
射程外に逃げられないよう最大加速
まあ切れたらまた繋ぎ直そう
繋いだその炎で、ジェネラル・キャバリアを燃やしながら追っかけていこう
飛翔して飛び回ってくれるなら、本体にも当てやすいしね
吹き荒れる爆風。
三方向からの砲撃にオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』は、その重装甲を傾がせていた。
すでに隻腕となっているのは、人質を猟兵が救出したからである。
「やーいやーい、人質取らなきゃまともに戦えない何か情けないやーつ」
そんな『ジェネラル・キャバリア』のコクピットに響くのは、月夜・玲(頂の探究者・f01605)の声であった。
「……ッ! ……ッ!!」
「雑魚雑魚おじさん! 頭スカスカ! 髪の毛スカスカ!」
声のイントネーションからして、神経を逆撫でする声色だった。
所謂、メスガッキムーヴというやつである。
玲がそれをしたのである。
敵を煽る、挑発するためでもあったし、また現状において人質を取り返された『ジェネラル・キャバリア』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロットには、事実効いていた。
「……巫山戯た物言いを!」
「怒るってことは図星ってことだよね~ざ~こ、ざ~こ。お空に陣取ることしかできないなんて、降りてきてタイマンしろ!」
玲はもう後半、演技とか関係ない感じになっていたが、流石に途中からこれは無理があるな、辛いな、と思ったのかも知れない。
年齢的に。
「いやまあまだね? まだまだね」
はい。
「こうなれば、貴様ごと!」
『ヌル・ラーズグリーズ』を、と迸る雷撃。
しかし、その雷撃を受けてなお玲は傷つくことはなかった。
彼女から伸びる鎖は『ヌル・ラーズグリーズ』に伸びていた。
「これは……二度目、ですね」
「そういうこと! 古くからの諺曰く、生きていたら幸運だ……と」
諺ではない。
ギリギリである。
なんとか諺っぽい雰囲気にしてあるが、葉っぱで大事なところだけを隠している人たちが脳裏にちらつく。やったー!
「つまり、最終的に生きていれば多少は無茶して良い!」
そういうものかな、と『ヌル・ラーズグリーズ』は思ったかも知れない。
が、そういうものである。
「何故、生きている!? 人体など沸騰する雷撃だぞ!?」
テロ組織『憂国学徒兵』の教祖のごときパイロットは驚愕し、呻く。
そう、これはユーベルコード。
断章・焔ノ血〈焔ノ絆〉(フラグメント・ファイアブラッド・リザレクション)にて繋がれた玲と『ヌル・ラーズグリーズ』は命を共有している。
同時に死なぬ限り、死ぬことはないのである。
故にどれだけの雷撃が迫るのだとしても、今の玲と『ヌル・ラーズグリーズ』を殺すに至らないのだ。
「さあ、行こうか!」
エキゾーストパイプから排気音が唸りを上げる。
特殊バイクにまたがった玲は自身から伸びる鎖を鳴らしながら『ジェネラル・キャバリア』へと全てを燃やし尽くす蒼炎と共に迫る。
「こんな、こんな……!」
「語彙力すくなっ! ちょっと動揺した程度で、そんなんになるんなら、はじめから勝ち目はなかったよね!」
玲は膨れ上がる蒼炎と共に特殊バイクの加速で『ジェネラル・キャバリア』の周囲に円を描く。
斬りつけるように回転したバイクから放たれる蒼炎は、その駆体の装甲を融解させていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
出てきましたか『殲禍炎剣の代行者』!
自分だけが空を自由にしつつ、ヌル様を人質とは
乗っている人が矮小なのでしょう
いえ、怒らせるつもりは
それにヌル様は私の天敵……ええ、私の!エイル様を!夫にした女!!
子供まで作って!!どういうことなの!!羨ましい!!
ちょっとビンタさせなさい、30時間くらい!!(サツキの前でする事じゃない)
……ですが
それは『私の手』で直接やって意味があるもの
ええ、貴女様もまた『今』を生きていい方なのです
というわけで私の八つ当たりを受けて頂く為にも
なかなか無茶な展開ですが……無茶も支えてみせましょう!
『ケルーベイム』! 【テフィラー】でいきますよ!
撒くは歌声
サツキ様!パッセンジャー様!
治癒によって回復させます!多少の無茶も通せるはずです!
もちろんヌル様も回復させてますよ、死なれては困りますので
派手に歌いましょう
敵の目が私に向けさせるのが目的です
いいじゃないですか、呼び寄せてくれてありがとうございます
ヌル様を避けて、いけっ!
コール! プロメテウスバーン!!
サツキ様!お願いします!
「乗っているパイロットの矮小さが透けて見えるようです」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、オブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』を駆るテロ組織『憂国学徒兵』の教祖のごときパイロットの技量を見抜いていた。
『エース』に届くべくもない。
矜持もない。
あるのは狂気のみ。
そんな相手を前にして負ける理由など何一つない。
例え、空を自在に飛翔することができるのだとしても、あのような思想も矜持も、技量もないパイロットなど問題にはならないのだ。
「この私を矮小だと!?『殲禍炎剣の代行者』に選ばれた私が!」
「いえ、怒らせるつもりはなかったのです。事実ですから」
すっぱりとステラは言い放つ。
それに、とステラは救出された『ヌル・ラーズグリーズ』を『ケルーベイム』のコクピットから見やる。
彼女は己の天敵である。
不倶戴天とまで行くかはわからない。
が。
「私の!『エイル』様を! 夫にした女!!」
蛮族かよ、といいたくなるほどの言い草であった。
まだ、この泥棒猫! とか言うほうが可愛げがあった。
「子供まで作って!! どういうことなの!! 羨ましい!!」
本音それじゃん、と多くの者たちは思ったかも知れない。しかし、今は戦いの場なのだ。取り残された『ジェネラル・キャバリア』は、その重装甲を融解させられ、ガタついているのだ。
ここで攻め込まねばならない。
「ちょっとビンタさせなさい、30時間くらい!!」
「罰は、受けます」
「そんなしおらしい態度を取られたら、やりづらいです!」
そういう問題でもない気がする。
が、ステラは笑む。
「ええ、貴女様もまた『今』を生きていい方なのです。だから、生きていただかなくては。私の八つ当たりを受けて頂くためにも」
「……わかりました」
「はい言質取った! というわけで、『サツキ』様、『パッセンジャー』様!」
「わかってます! 征きます!」
「無論だ」
赤いキャバリア二騎が戦場に疾駆する。
「バカめ、空を飛べぬキャバリア風情が! この『殲禍炎剣の代行者』たる機体をどうにかできると思ったか!」
注ぐ砲撃。
さらに肩部スパイクから迸る雷撃が吹き荒れる。
たとえ、相手が『エース』の技量を持ち得るのだとしても、『ジェネラル・キャバリア』の性能があれば圧倒できる。
二騎の赤いキャバリアが左右から『ジェネラル・キャバリア』を打ち据える。
融解した装甲でありながら、まだ同時攻撃をいなすだけの力があるのだ。
「空を飛べぬキャバリアなぞはなぁ!!」
しかし、歌が響く。
「賛美を歌う……祈る者こそが起源なれば……聖なるかな」
『ケルーベイム』のアイセンサーが煌めいている。
響くは歌声。
奏でるは祈り。
天より注ぐは青き雷。
「此方の出力を上回る雷、だと!? あのキャバリアか!」
「ステラさん!」
「構いません!」
瞬間、『ケルーベイム』の機体が『ジェネラル・キャバリア』の眼前に引き寄せられる。
振り上げられたハルバートの切っ先が振り下ろされんとしていた。
躱せない必中の間合いだった。。
「いいじゃないですか、呼び寄せてくれてありがとうございます!」
もう人質はいない。
すでに猟兵に救出されているからだ。
なら?
遠慮はいらないということだ!
「コール!」
『ケルーベイム』の胸部装甲が展開する。
「な――ッ」
「プロメテウスバーン!!」
配された砲口より迸るは、極大なる熱線の一撃。融解した重装甲をも穿つ苛烈なる一撃。
それはステラの怒りでもあったのだ。
「『サツキ』様! お願いします!」
「争いを生むだけが目的なら! ここで、斬ります!」
その熱線の輝きを縫うようにして二騎の赤いキャバリア『熾盛・改』が飛ぶ。
振るわれるプラズマブレイドの一閃が、肩部の雷撃放つスパイクを切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
……『ヌル・ラーズグリーズ』
そう、彼女がそうなのね
ならば示しましょう、『クレセント』
父が子に教えるように
どれほど苦しくても命を投げ出さず
罪と向き合い、茨の道を歩む
『騎士道』と呼ばれる生き方を
――我が名は、薄翅・静漓。そして『セラフィム・クレセント』
名誉を傷つけられた友のために
生きていていいのだと
生きていてほしいのだと
償えきれぬ罪を背負いながらも明日を生きよと
彼女のために祈り、願った誰かのために
その憎悪を受け止め
あなたに、決闘を申し込むわ……!
巨大な敵を前にしても怯まない
『クレセント』が持つ可能性の一つ、真の姿を解放し
心のオーラを滾らせ、弓を構える
限界を超える早業で、刹那の動作から光の矢を放ち
正々堂々、終焉を穿つ一矢を見舞ってみせるわ
白銀の装甲に走る青色が、増していく。
鳴動する機体は、それ自体が声を上げているように薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)には思えてならなかった。
「……『ヌル・ラーズグリーズ』。そう、彼女が『そう』なのね」
彼女の声はコクピットの中に響いた。
肯定するように乗騎である『セラフィム・クレセント』のアイセンサーが煌めく。
「ならば示しましょう、『クレセント』」
静漓は一歩を踏み出す。
目の前には肩部スパイクを切り裂かれたオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』。
すでに『ヌル・ラーズグリーズ』は猟兵達によって、かのオブリビオンマシンの手から救出されている。
二騎の赤いキャバリア――『熾盛・改』が、雷撃放つスパイクを切り裂いているのだ。
そう、静漓は示すだけだ。
この戦いが終わっても『ヌル・ラーズグリーズ』には暴かれた真実によって地獄を見るだろう。
苦しみもあるだろう。
中傷もあるだろう。
だが、静漓は示すと決めたのだ。
父が子に教えるように。どれほど苦しくても、命を投げ出さず罪と向き合い、茨の道を歩むことを。
「『騎士道』と呼ばれる生き方を」
静漓の瞳がユーベルコードに輝く。
そこには決然たる意志があった。
「――我が名は、薄翅・静漓。そして『セラフィム・クレセント』」
知ったことかとばかりに『ジェネラル・キャバリア』の背後に浮かぶ巨大なオーラがハルバードを振りかぶる。
しかし、静漓は動こうとしなかった。
立ち向かわねばならない。
戦わなければならない。
決闘だ。
これは、そうなのだ。
「名誉を傷つけられた友のために、生きていていいのだと。生きてほしいのだと、償いきれぬ罪を背負いながらも明日を生きよと、彼女のために祈り、願った誰かのために」
汎ゆる憎悪を受け止める。
その結果が今ならば、静漓は告げる。
「あなたに決闘を申し込むわ……!」
「古臭い物言いをしたところで! 敗者に語る言葉はないわ!!」
振り下ろされる巨大なオーラの斬撃。
叩きつけられて市街地が分断される。
然し、そこに『セラフィム・クレセント』の姿はなかった。
「……手応えがない……どこだ!」
周囲を見回す『ジェネラル・キャバリア』。
それを駆るテロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロットは見つけることはできなかった。
技力なく。矜持なく、誇りもない。
ただ強者の名を騙り、己が姿を大きく見せることだけに腐心する者には視えぬものがある。
それを示すように『セラフィム・クレセント』の白銀の装甲が青く染まっていた。
その姿は、嘗て。
「あれは、お父様の……!」
『ヌル・ラーズグリーズ』は見ただろう。
その姿。
真の姿。
青き人造竜騎『エイル』の姿、真の姿を示す月光の輝きを。
「そう」
これが、そうなのだと示すように青き光を放つ『セラフィム・クレセント』は、その本当の願いを叶えるように戦場を疾駆する。
しかし、その踏み込みは静謐そのもの。
音一つなく、『ジェネラル・キャバリア』の眼前に立っていた。
「――っ、なっぁ!?」
驚愕するしかないだろう。
腕部が展開し、弓へと変わった瞬間、ゼロ距離で放たれる光の矢が『ジェネラル・キャバリア』の頭部を撃ち抜く。
「これがせつな(セツナ)に終焉を穿つ一矢」
頭部を穿った一矢は空を切り裂くようにして天に消えゆく。
青き色に染まった装甲が白銀に戻っていく。
狂気の果に失われたものは、きっと取り戻されたことだろう。
そして、静漓は終焉が砕かれようとしていることを知ったのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
トラスト・レッドライダー
鳥羽(f43670)と
人質は解放されたか。
……代行者、テロで、暴力で一体何が変えられる。
それは本当に正しい行いと言えるのか?
『劫火の翼翔』劫火の天使へと再変身。メガスラスター【推力移動】
殲禍炎剣に引っ掛からない高度を飛び、燃え盛る超巨大翼を広げ【武器受け】灼熱の砲撃を翼で受け止め、その熱を翼に吸収【エネルギー充填】
炎の羽根を飛ばし鳥羽と共に【制圧射撃】
赦しや、信念を問うているのではない。理を、意味を問うている。
壊し、殺し、火で焼いて、それで、次は何を為す!
超巨大翼を【なぎ払い】背後霊と打ち合い、アンガーブレードを【怪力】で振るい、代行者の機体としのぎを削りながらその行動の理を問い続ける。
鳥羽・弦介
トラスト(f43307)と
過去の事で好き勝手御託並べて!
殲禍炎剣に引っ掛からねぇのをいいことにふんぞり返ってテロとか、
やる事がしょっぱいんだよ!!
『回点弾』威力増強、【念動力】で弾道変化
地上からパルスマシンガンの【制圧射撃】やウィングキャノンの【レーザー射撃】を曲げて前方、横合いから攻撃叩き込んでやる。俺は馬を重点的に撃つ。
後トラスト!ごちゃごちゃ話が長ぇしうるせぇ!!
野郎が地上近くまで降りてきた瞬間を狙い、
メガスラスター【推力移動】野郎の正面から接近、
同時使用UC『タイムカットインセイン』発動。
その狂気、精神エネルギーのみをRX退魔刀で|【浄化】する《斬り祓う》!!
黙って寝てろ!!
頭部を打ち抜かれ、砕かれたオブリビオンマシン『ジェネラル・キャバリア』の駆体が揺れる。
しかし、テロ組織『憂国学徒兵』の教祖の如きパイロットは狂気と共に叫んだ。
己が選ばれた者であるとう自負がある。
この「オブリビオンマシンは『殲禍炎剣の代行者』だ。
天の裁定者たる暴走衛生『殲禍炎剣』に、空を自在に飛ぶことを許された存在なのだ。
他とは違う。
己は他とは違う。
ならば、特別なのだ。
己こそが戴かれるべき存在にして頂点なのだ。
「ならばこそ、貴様たちの行いは天につばする行為! それを誅するのがァ!!」
迸る雷撃。
肩部スパイクは両断されているが、無理矢理に出力したことで肩部装甲が弾け飛ぶ。それでも放たれる雷撃は凄まじいの一言であった。
荒れ狂う雷撃の中をサイキックの輝きが一条の閃光となって走る。。
「勝手に言ってろやぁ!!」
鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)の駆る『回点号』だった。
迸るサイキックがコクピットから溢れて、機体を覆っている。
如何に雷撃が凄まじいのだとしても、弦介の放つサイキックが阻んでいるのだ。
そして、追従するように劫火の翼翔(ブレイズ・ウィング)の如き勢いでトラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)が劫火の天使へと変じて飛び込む。
巨大なオーラが眼前にある。
『ジェネラル・キャバリア』が頭部を失いながらもコクピットを開いて、目視でもって迫るトラストへと巨大ハルバードの一撃を叩き込んだのだ。
「アハハハッ! 小さい! 私より小さい者はァ!!」
だが、パイロットは見ただろう。
目の前で振り下ろされた巨大ハルバード。
これを受け止める炎の巨大な翼を。
「……テロで、暴力で一体何が変えられる。それは本当に正しい行いと言えるのか?」
「邪魔を……! 正しいに決まっている。正しいと認められた私が行うことは、全てぇッ!」
トラストはハルバードの一撃を受け止めた炎の翼を広げて、弾き返しながら、そのユーベルコードの輝きが満ちる瞳でもって開け放たれたコクピットの奥にあるパイロットの顔を見た。
そこには狂気しかない。
「赦しや、信念を問うているのではない。そこに理は、ない。意味もない。壊し、殺し、火で焼いて、それで、次は何を為す!」
「粛清だよ! 穢れた命は全て! 煉獄の炎にて濯がねばなァ! 穢れた者たちを英雄と奉るような小国家はァ! 滅びて当然! 焦土にして、まっさらにしなければ!」
それは過去の出来事に対する贖罪であったのかもしれない。
平和を知らず、平和の意味もわからず。
けれど、平和というかけがえのないものを求めて戦い続けた者たち。
その行いは、確かに戦禍を広げるだけにしかならなかったのだろう。
事実、争いは百年経っても終わりを見せない。
いつまで戦えばいいのかもわからない。
それは飽くなき闘争の輪廻。
「過去のことで好き勝手御託を並べて! 棚ぼたで手に入ったような力をいいことにふんぞり返ってテロとか、やることがしょっぱいんだよ!!」
炎の翼の中から飛び出すのは、弦介の『回点号』だった。
瞬時に引き寄せられ、『ジェネラル・キャバリア』のハルバードの一撃が弦介を襲う。
だが、『回点号』の機体は在りえぬ軌道を描いて……それこそ、直角に折れるよにしてハルバードの一撃を躱す。
凄まじい慣性エネルギーが弦介の臓腑に負荷を掛けて、中身が込み上げてくるような嫌な感覚を教える。
「トラスト! ごちゃごちゃ話が長ぇしうるせぇ!!」
「それは、今言うことか?」
「そう思ったんだから、俺が正しい!」
無茶苦茶だな、とトラストは思った。
だが、弦介の。その真っ直ぐさが今、必要なのだ。
直情的であると言われるだろうが、それでも己の感じるままに言葉を発する。
そこに駆け引きや、侮り、嘲り、謀るというものは一切含まれていない。。
人と人の距離が誤解や齟齬を生むのならば、心と発する口の距離が短ければ、人の心に偽りが混じる余地はない。
だからこそ。
「回れ!!!!」
メガスラスターの噴射光とサイキックが螺旋を描きながら『回点号』は、トラストの炎の翼に溜め込まれたエネルギーと共に『ジェネラル・キャバリア』へと突撃する。
「させる、かぁぁぁッ!!!」
振るわれるハルバードの一撃。
だが、捻れるようにして巻き込んだエネルギーを『回点号』の手に押した退魔刀が集約させる。
「お前に理念はない。矜持もない。だからこそ、そこまで己の自尊心のためだけに力を震えるのだな」
故に、とトラストの手にしたアンガーブレードが『ジェネラル・キャバリア』のハルバードを手にした腕部を貫く。
もはや、弦介を阻むものはない。
その二重らせんのエネルギーを携えた退魔刀が振りかぶられる。
「黙って寝てろ!!」
振り下ろした一撃が狂気を切り裂く。
誰もが心に悪性と善性を宿す。
それが良心と呼ぶものであろう。
正しさを愛するが故に、堕落の道はただ一歩横道にそれるだけで、心を蝕む狂気となる。
誰にでもあることだ。
起こり得えることだ。
だからこそ、善性は悪性に染まりきらない。
負けてはならない。
人間は殺されてしまうかも知れないが、己の中にある悪性に負けるようにはできていない。。
ただそれを示すように振り下ろされた一撃はオブリビオンマシンの狂気を切り裂き、揺れ続ける良心の輝きを示すように、その駆体を破砕させるのだった――。。
大成功
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