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|ギャザリング・ガチャ・オラクル《GGO》

#ゴッドゲームオンライン #バグトリガー #憂国学徒兵

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#バグトリガー
#憂国学徒兵


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●[GOD.GAME//ONLINE]
 トリリオン、それはゴッドゲームオンライン上における通貨、つまりは電子通貨である。
 ゲーム内は無論のこと、現実でも通用する電子通貨は貴重なものであった。
 現実でも通用することから考えても、その重要性は言うまでもないだろう。
「いいのか! そんなにトリリオンを使って!」
『ドライ』と呼ばれるゲームプレイヤーの言葉に『フィーア』と呼ばれたゲームプレイヤー……彼らはクラン『憂国学徒兵』に所属している。
 今は『学園』と呼ばれる拠点に居を構えている。
 そんな彼らが今何をしているのかというと、クリスマス限定のガチャを回している最中なのだ。

 それ自体は別に構わないことであった。
 ゴッドゲームオンラインにはガチャ機能が存在している。
 当然、使用にはトリリオンの消費が必要だ。
 だが、何故そんなにガチャを回すのかということは、ゲームをしない者たちからすれば疑問に思うところであっただろう。
 何せ、トリリオンは現実でも通用する電子通貨。
 ゲーム上のデータでしかないアイテムを得るためにトリリオンを消費することは馬鹿らしいことのように思えるかもしれない。

 だが、クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤー達はもれなく廃人プレイヤーである。
 廃人プレイヤーとは何もゲームをやりこみ過ぎて、一周回ってチートプレイヤーをも凌駕する技量を持つ者のことを指す。
 そして、廃人とは別にゲームの技量のことだけを示すものではない。
 そう、ガチャ廃人。
 それが『フィーア』と呼ばれるゲームプレイヤーの持つ側面であった。
「ダメよ。こんなところでやめたら、今までのトリリオンが無駄になってしまうわ。それに次は出るわ。はい、出た。はい、ダメでした。はい次」
 ガチャ演出をスキップする『フィーア』。
 その目はちょっと尋常ではなかった。
 正直言って、すでにガチャに投じたトリリオンの金額は、ちょっと想像できない額である。

 それだけの額を持ってしても目当てのアイテムが出ないというのは、ガチャの底しれぬ恐ろしさを知らしめるには充分であったことだろう。
「もうそろそろ……」
「諦めたらそこでガチャ終了ですよ」
「それ、試合の場合だろ」
「いいえ、出るまで回せば出るんです。そういうものなんです。ガチャを回せることに感謝しながら、今までのハズレは|業《カルマ》が溜まっていたから……ええ、今の私は|業《カルマ》を濯ぎきった身。であるのならば、ほりゃ!」
 もはや『フィーア』のゲームプレイヤーとしてのロールプレイというか、化けの皮は剥げつつあった。『アイン』や『ツヴァイ』も最早呆れるしかなかった。
 ぽちっと押したガチャボタン。
 空に浮かぶ|日暈《ハロー》が回転し、虹色に輝く。

「来た! 来ました! 虹演出! 確定演出! SSR!」
「わかった、わかったから」
「いや! だがまだだ!『フィーア』が狙っているのは、クリスマス期間限定の『サンタバニーガール・ビキニエディション』だ!」
「なんだそのアホが考えたみたいな防具!」
「盛ればいいと思っているところが、浅はかですね」
「だが! それがいいのだ!」
 男の子ってさぁ……と『アイン』と『ツヴァイ』は半眼になる。
 そんな三人を他所に虹色日暈の回転が収まり、排出されたアイテムの結果を告げる。
 運命の結果は如何に!
「き、来ましたー!! お目当ての『サンタバニーガール・ビキニエディション』――!!」

●ゴッドゲームオンライン
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。皆さんはガチャ、お好きですか?」
 ガチャ。
 そう、今どきガチャのないゲームなどない。
 それくらいに浸透した文化とも言うべき機能であった。
 当然、ゴッドゲームオンラインにも存在している。
 今回は、そのガチャ機能にバグプロトコルが目を付けたのだ。

「私も好きです。ガチャをガチャガチャしている時、幸せを感じるのです。もはやアイテムのレアリティは関係な……くもないですが、SSR演出を見た時などは、頭の奥がじんわりするのです」
 猟兵達は思った。
 ナイアルテも大概だな、と。
 しかし、今回の本題はそこではない。なかなかナイアルテが本題に入らない。じれる。はよしろ。
「はっ……! すいません! つい。今回バグプロトコルが目をつけたのは、まさにこのガチャ機能なのです。排出される激レアアイテムに危険な『バグトリガー』を植え付けてしまったのです!」
 許すまじ! とナイアルテは拳を握りしめている。
 ギリギリと音が響くほどであるから、よっぽど悪辣な行為なのだろうと予測できる。

「その『バグトリガー』は文字通り、『致命的なバグの引き金となるプログラムの狂い』なのです。そして、そうとは知らずにゲットしたアイテムを装備したゲームプレイヤーさんが、トリガーを仕掛けたバグプロトコルのいるエリアに踏み込むと『自分だけ被ダメージの計算が大幅におかしくなる』のです。その結果は言うまでもないでしょう」
 つまり、キャラクターがバグに見舞われて死亡し、遺伝子番号が焼却されてしまうのだ。
「幸いに、『バグトリガー』を仕掛けたバグプロトコル本人を撃破すれば、このバグを取り除くためのパッチアイテムがドロップされるようなのです」
 つまり、と猟兵達は理解する。
 己たちの今回の仕事は、ゴッドゲームオンラインにて、『バグトリガー』つきの激レアアイテムをゲットしてしまったゲームプレイヤーを護ることになるのだ、と。

「そのとおりです。そして、ゴッドゲームオンライン上で皆さんの強力な味方となってくれる可能性のある廃課金廃人プレイヤーさんを護ることは、きっと未来に皆さんの助けになることでしょう」
 なるほど、まずは何をすればいいのか。
 そう問いかける猟兵達にナイアルテは深く頷いた。
「ガチャをガチャガチャ回すのです――!」
 なんで?
 猟兵達は心底思った。
 だが、それが必要な行為なのだ。
『バグトリガー』を仕掛けたバグプロトコルは手っ取り早く廃課金廃人プレイヤーを殺そうと『バグトリガー付きの激レアアイテムを持った人のいる方へ』いどうしてくるのだ。
 つまり、猟兵たちが激レアアイテムを手に入れたら?
「そうなのです。皆さんの方に寄ってきます。そして、そこをボコすのです!」
 シャドーボクシングを見せるナイアルテ。
 これだから腕力おバカはよぉ……と猟兵達は思ったかもしれない。
 だが、それは良い考えのように思えたのだ――!


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はゴッドゲームオンラインにおいて、『バグトリガー』付き激レアアイテムを持つ廃課金廃人プレイヤーを狙うバグプロトコルの企みをぶっちのめすシナリオになっております。
 回せ、ガチャを!

●第一章
 日常です。
『バグトリガー』を仕掛けたバグプロトコルは『バグトリガー付き激レアアイテムを持った人のいるほう』へと移動してくることが予知されています。
 なので、最新ガチャ……今のシーズンであればクリスマス限定ガチャをじゃぶじゃぶ回し当て回して回しまくりましょう。
 該当する激レアアイテムは武器・防具・装飾品といくつか存在しているようです。
 ガチャ回すトリリオンはどうするのかという問題ですが、簡単です。
 足りなくなったら、ゲーム内でモンスターを狩って稼げばいのです。
 とにもかくも回しまくるのです。

●第二章
 ボス戦です。
 前章で引き当てた問題の激レアアイテムを持ってクエストエリアに突撃し、のこのことやってきたバグプロトコルをボコしましょう。
 もちろん、激レアアイテムを装備していると致命的なバグに見舞われます。
 基本的に『自分だけ被ダメージの計算が大幅におかしくなる』バグに見舞われますが、それ以外のバグもあるでしょう。
 知恵と工夫で乗り切りましょう。

●第三章
 集団戦です。
 無事に元凶であるバグプロトコルを撃破し、データのバグを解消するパッチアイテムも奪取できました。
 危険なバグさえ解消したのなら?
 手元にある激レアアイテムは、単なる現環境Tier最上位の激強アイテムです。
 せっかくなので、これを利用して拠点『学園』周りのバグプロトコルも狩り尽くしておきましょう。
 立つ鳥跡を濁さずっていうじゃあないですか。

 それでは、致命的なバグにも負けず激レアアイテムをゲットしてバグプロトコルをぶっ飛ばす皆さんの物語の一片となれますように、たくさんがんばります!
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第1章 日常 『アイテムガチャ』

POW   :    目当てのアイテムが出るまでガチャを回す

SPD   :    ガチャのおまけスタンプの景品をもらう

WIZ   :    他のプレイヤーとガチャ産アイテムを交換する

イラスト:yakiNAShU

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 期間限定。
 それは甘き囁きであろう。
 どんな人間だって数が、手に入れられる期間が限られているのならば、それを欲するのは当たり前であった。
 行列と見ればとりあえず並ぶ、みたいな心理である。
 もしかしたら、無料ガチャチケット一発で激レアアイテムが退けてしまうかも知れないし、という射幸心もあることだろう。
 人間は皆、幸運というものを夢見る。
 しかし、それは時に破滅への入口でもあるだろう。

 今回の事件も似たようなものである。
 激レアアイテムは人の感覚を麻痺させる。
 これだけ注ぎ込んだのだから、と後に退けなくもなってしまうだろう。
 故に人は回す。
 破滅にひた走ると知らずに。

 だが、今回は違う。
 猟兵達はガチャをじゃぶじゃぶ回す。
 そう、これは廃課金廃人プレイヤーを救うための戦い!
 ガチャを回す理由は我にあり!
 回せ! 回して世界を回せ――!!
リトルリドル・ブラックモア
オメーら年末にナニやってんだ!?
ってウワーー!
クリスマス限定激レアガチャだー!
クックックッ…このまおーサマがぜってーひいてやるぞ
UCで無限増殖させたカネがあるもんねー!

エッ?
トリリオンじゃないからダメ?
わ、詫び石もあるもん!
無課金でコツコツためた詫び石ならヘーキだろ!
エッ?
コレもブルーアルカディアのだからダメ?
なんでだよー!
よくわかんねーケドなんかリフジンってヤツだぞ!
運営でてこーい!(問い合わせる

グヌヌ…しかたねーカラ
他のモノをザコモンスターにぶつけて
マジメにトリリオンかせぐぜ…
超激ワルのオレサマがガマンしてがんばったんだぞ
チョーつよくてワルカッコいい武器なんかでろー!
まおーサマソードとか!



 ゴッドゲームオンライン。
 それはゲームの世界であり、現実とは異なる仮想世界だ。
 しかし、現実と地続きであることを実感させるのが電子通貨であるトリリオンである。
 ゲーム内での使用はもとより、統制機構が支配する現実でもリアルマネーとして使用することができることからも、その重要性は語るべくもないだろう。
「オメーら、年末にナニやってんだ!?」
 他にもやることあるだろ!
 例えば、大掃除! 年賀状ハガキの投函! 年末年始のご挨拶の準備! おせち! エトセトラエトセトラ!
 リトルリドル・ブラックモア(お願いマイヴィラン・f10993)は、『学園』と呼ばれる拠点に集まっているクラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちを前にして説教をしてやるつもりだったのだ。

「ってウワ――! クリスマス限定激レアガチャだー!」
「そうだよ。毎年恒例のってやつ」
『アイン』と呼ばれるゲームプレイヤーが頷く。
 そう、期間限定ガチャ。
 それは正しく年一でしかお目にかかれない限定アイテム目白押しの、それはそれは大変にレアなガチャなのだ。
 とっても頭の悪い説明で申し訳ないが、そういうもなのである。
 期間限定。
 良い響きである。
 心が踊るであろう。
 それは、リトルリドルも礼がいではない。

「お前もやんの?」
「クックックッ……このまおーサマがぜってーひいてやるぞ、激レア装備ってやつをな!」
 意気込みだけは魔王級である。
 しかしながら、軍資金は如何ほどなのだろうか。
 前例を見てみるに、相当な額を突っ込まねば、猟兵の求める所の『バグトリガー付き激レア装備』は手に入らない。
 となれば、軍資金が心もとないと……後は本当に運試しということになる。
 だが、リトルリドルは高笑いをあげた。
「ふはははー! 見よ、これがオレサマの軍資金! 見やれや、このカネの山を!」
 CHEAT CODE(ムゲンゾウショク)、ユーベルコードによって増殖されたカネである。
 紙幣の山。
 それは全てが『まおー銀行』の証明印が打刻されている。

 紙幣の価値を証明する『まおー銀行』。
 それはデビルキングワールドにおいても、それなりの……いや|『D』《デビル》が流通しているので、あんまり価値はないかも知れない。
 が、おカネには変わりない。
 であるのならば、この潤沢な資金を持ってリトルリドルはガチャを回して、回して、回しまくろうっていうのだ。
「なあ、これ多分ダメだぜ」
「エッ?」
「トリリオンじゃねーだろ。ガチャってトリリオンじゃないと回せないんだぜ?」
『アイン』と呼ばれるゲームプレイヤーは肩を竦める。
 紙幣じゃなーと彼女は首を傾げている。
 いやつーか、どこのだこれ、としげしげと眺めている。
「な、なら、わ、詫び石があるもん! 無課金でコツコツためた詫び石ならヘーキだろ!」
「詫び石? いや、だからトリリオンだってば。きれーだけどさ」
「エッ?」
「だから、トリリオン。ないのか?」
 そう、リトルリドルが持ち込んだ軍資金。その全てが他世界において価値あるものばかりであった。

「な、なんでだよー! よくわかんねーケド、なんかリフジンってやつだぞ! 運営でてこーい!」
「多分無理。まあ、トリリオンがほしけりゃ、手っ取り早くモンスターを狩るんだよ。わかるだろ?」
「グヌヌ……しかたねー」
 リトルリドルはしょんぼりしてしまっていた。
 しゃーねーなーと『アイン』と呼ばれるゲームプレイヤーはリトルリドルの頭にポンと手を置く。
「ンナッ、何すんだオメー!」
「手伝ってやるつってんの」
「マジか! オメー良いやつだな! さあ、チョーつよくてワルカッコイイ武器のためにトリリオン、ゲットにしにいこーぜ!」
 そう言ってリトルリドルと『アイン』はそこら辺のモンスターを狩りに狩ってトリリオンをかき集め、ガチャをぶん回す。

「ちょーワルカッコイイのでろ! まおーサマソードとか!」
 なんかでろ、なんかでろ、とリトルリドルの物欲センサーは働きに働き、チョーつよくてカッコイイ武器『セイントクルセイドクロス』は出たものの、リトルリドルはこれじゃない……とはたまたしょんぼりしてしまうのだった。
「ソードじゃないし、槍だし! ワルじゃなくて、なんか正義っぽいし! なんでだ――!!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
まあね、またガチャを回すことが目的になっちゃってる連中が増えちゃってますねぇ…。
ていうか、いくら人権を抹消するためとはいえ、オブリビオンも手の込んだ真似をしやがりましたねぇ…(【世界知識・情報収集】)。

――では早速、UCでSSR出現確率を底上げして…え、予算はどうするかって?当然、ネットワークに【ハッキング】して、現実世界で金持ってる連中から巻き上げてやりますよ(ぉぃ)(邪魔があるなら【カウンターハック】からの【データ攻撃・ジャミング】で撃退)。
で、出てきたのは――(なんかOPで示されたやつ)…ほかにないですか?例えばXマスっぽい装飾の銃火器とか(ぇ)。

※アドリブ・連携歓迎



 ガチャ。
 それは魅惑の果実。
 そこにある、とわかれば回さずには居られないのが人間というものである。
 わかっている。
 10連回しても、お目当ての激レアアイテムはでない。
 が、SNSで激レアアイテムが出たスクリーンショットを見たら、なんか今なら自分も手に入れられるかも知れないという謎の射幸心がむくむくと込み上げてくることを誰が咎められようか。
「まあね、またガチャを回すことが目的になっちゃってる連中が増えちゃってますねぇ……」
 シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は期間限定ガチャを前にしてため息を吐く。

 そう、今回の事件において最も重要視されるのは『バグトリガー付き激レアアイテム』である。
 これを持つ者の元へとバグプロコルはやってくる。
 確かに手っ取り早いと言えるだろう。
 バグトリガーは、バグプロトコルが近づくまで普通に強いアイテムでしかないのだ。
 故に、その時までバグトリガーが仕掛けられているとゲームプレイヤーは気が付かない。
「ていうか、いくら遺伝子番号を焼却するためとはいえ、バグプロトコルも手の込んだ真似をしやがりましたねぇ……」
 ハッキリ言って大迷惑である。
 だが、この事件を解決しなければ、対バグプロトコル戦において味方をしてくれるかもしれない廃人廃課金プレイヤーが喪われてしまうのだ。

 面倒くさくてもやらねばならない。
「では、早速」
 シャルロッテの瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、ここに天賦の才は煌めく。
「激レアアイテムを引く確率が0%でなければ、最低成功率は60%になる……まさにガチャを引くためだけに生まれたようなユーベルコードですね」
 いや、絶対違う。
 が、こと今回においては最高のユーベルコードであるかもしれない。

「とは言え、60%を越えるだけで絶対はないんです。加えて、すり抜けっていうこともあります。目当てのバグトリガー付き激レアアイテムを引き当てるのは……さらに確率が下がるってことです」
 加えて、軍資金のこともある。
 トリリオン。
 このゴッドゲームオンライン上と統制機構が支配する世界において使用される通貨である。
 これをシャルロッテは持ち合わせていなかった。

 だが、簡単なことである。
 ここがゴッドゲームオンラインというオンライン上に存在しているのならば。
「ハッキングしました」
 しれっと彼女のゴッドゲームオンライン上のトリリオンクレジットの数字が、ちょっとした財産くらいあるのだ。
 動やったのかは、企業秘密である。
 大丈夫、あるところにはあるのである。
 おそらく、動きのない口座を狙ってトリリオンを引っ張ってきたのだろう。
 詳しく言うと、あれなので伏せておくが非合法である。
 通報されたら言い訳のしようがないが、しかし、シャルロッテがそんな下手をうつとも言えない。

「さてさて、心置きなく引きましょう……と、これは?」
「わー! 一発で!?」」
 シャルロッテがガチャを引く様子を見ていたクラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤー『フィーア』が泡を吹いて倒れ込む。
「え」
 シャルロッテは倒れ込んだ『フィーア』を見て焦る。
 まあ、気持ちは解らないでもない。
 結構な金額をぶち込んで漸く手に入れた者をシャルロッテが一発で引いたのだから。
 そう、シャルロッテは彼女が望んだ銃火器系アイテムではなく『サンタバニーガール・ビキニエディション』という属性特盛アイテムを手に入れたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
『学園』のクリスマスも煌びやかね
そういえば『水月模型店』を建てたのもこの時期
訪れた人が楽しく過ごせる場所になっているかしら

『激レアアイテム』を手に入れる為には
ガチャをじゃぶじゃぶするのね
ならば、去年手に入れた
『無料100連分ガチャチケット』を使うわ

……100回じゃ足りないかもしれない?
つまり運との勝負という訳ね
この先の戦いへ進むためにも、負けられないわ
知らないものへの挑戦に心がうずく
オーラを滾らせて、ガチャに挑むわ
なにが出るかしら



「煌びやかね」
 目の前の模型店はクリスマスの電飾で輝いていた。
 きっと誰かが飾り付けのエッセンスを行ったのだろうことは見て取れた。
 明滅する電飾を見ていると、それだけで心が踊るような気がしたのは、きっと気の所為ではないのだろうな、と薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思った。
 一年というのは早いものである。
 この拠点『学園』に『水月模型店』を建てたのも、この時期だったと思い出す。
 きっと訪れた者たちが楽しく過ごせる場所になっているのは、この電飾を見ればわかる。

 ゴッドゲームオンラインというゲーム上のことであっても、嬉しいと静漓は思ったことだろう。
 眺めていた模型店の賑やかさを目の端において彼女は振り返る。
 そこにあったのは日暈回るガチャ。
 そう、今回は此方が目的なのだ。
「バグトリガー付き激レアアイテムを手に入れるためには、ガチャをじゃぶじゃぶするのね」
 そう、バグプロトコルが今回ゲームプレイヤーを狙っているのだ。
 それもじゃぶじゃぶトリリオンを惜しみなくガチャに打ち込めるだけの廃人廃課金プレイヤーを、だ。
 無論、廃人プレイヤーであれば、致命的なバグもどうにかできてしまうかもしれない。が、もしもできなかったら?
 言うまでもない。
 遺伝子番号は焼却され、人権を剥奪される。
 そうなれば、もしかしたら今後猟兵たちに味方してくれるかもしれない貴重な廃人プレイヤーが喪われるということになるのだ。
 これは捨て置けない。

「去年手に入れた、『無料100連分ガチャチケット』を使うわ」
「うわっ、それ去年のやつじゃん」
『アイン』と呼ばれたゲームプレイヤーが背後から静漓の手にしていたチケットを見て目を丸くする。
「物持ちがいいっていうか、よく今までガチャ我慢できたな……」
「機を逸していただけ、とも言えるわ」
「でもまあ、100連かぁ……」
「……足りない?」
「かもしんない。『フィーア』もクリスマス限定のガチャをぶん回してたけど、そりゃもう、ちょっと……生活大丈夫か? となるくらいの金額を出して漸く、だったからなぁ……」
 遠い目をしている『アイン』。
「大丈夫。いざとなれば、空気を調味料にしてパスタを茹でればいいだけのことだから」
『フィーア』は『サンタバニーガール・ビキニエディション』に身を包みながら、なんとも益体もないことを言っている。
 本当に大丈夫なのか?
 心配になる。

「それに、こういうものは物欲センサーが働いているもの。なら、無欲、無心で回せば」
「運との勝負、というわけね、つまるところ」
「そういうことです」
「なら……この先の戦いへ進むためにも、負けられないわ」
 静漓の中で静かなる闘志が湧き上がる。
 そう、静漓はガチャというものを知らない。
 排出率が如何ほどかも知らない。
 だが、クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちこぞって欲しがる『サンタバニーガール・ビキニエディション』。
 それがどんなものなのかを知りたいと思ってしまうのだ。
 漲るオーラ。
 これ、ガチャを回すだけですよね? と誰もが思ったかも知れない。

 が、今の静漓には関係ない。
 一念発起、乾坤一擲、気合一閃。
 あ、ぽちっとな、と静漓は100連分のガチャチケットを使用し、ガチャを回す。
 そのオーラは凄まじいものであった。
「お、おおおっ!?」
 日暈が虹色に輝く。
 いきなりである。
「これがそうなの?」
「一発目からかよ!」
 悲鳴が上がる。それは歓喜の悲鳴である。

「何が出るかしら」
 本当に物欲センサーってやつがあるのかもしれない。静漓は虹色の輝きから排出されるアイテムを見やる。
 それは『サンタプリンセス・メイドエディション』であった。
 もう何がなんだかわからん具合である。
 サンタで? お姫様で? メイド?
 属性盛ればいいってもんじゃないって、誰もが思ったかも知れないし、静漓もまた背景が宇宙になるくらいであった。
「これは、つまり……どういうこと?」
 それは誰にもわからん――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!
しますけど、エイル様どこ!?
まさか、皆さんの出した外れ(なお、性能が悪いとはいっていない)に埋もれていたりしませんか!?
私の救出を待っているお姫様はどこ!?
気絶していたら人工呼吸しますね
誰がやべーメイドですか!!

ともあれ、今回はガチャ
お任せください
こんなこともあろうかと物資(トリリオン)はバッチリです
ええ、エイル様との結婚に繋がる(?)ならば!
足りないなら万難を排してモンスターを駆逐しましょう
あと結婚準備金も全投入
あとでまた稼ぎますので!
気にしないでエイル様!
そしてサンタ婚する為のクリスマス限定グッズを手に入れます!
ええ、私の願望の為に!!



 ゴッドゲームオンラインに響き渡る絶叫。
 それはいつものやつであったし、想像して折られる通りのものであったことだろう。
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁぁすっ!!」
 それは、やべーメイドこと、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びであった。
 拠点『学園』に響き渡る雄叫び。
 誰もがビクッと体を震わせたことだろう。
 それくらいに凄まじい声量であったし、それだけの声量であったのならば、確実に叫び倒した名前の主は反応をしたことだろう。

「『エイル』様どこ!?」
 ステラは鼻をスンスンと鳴らしていた。
 メイド・ノーズに嗅ぎ分けられぬ匂いなどない。警察犬も真っ青な感度でもってステラは拠点『学園』の中にあるガチャの前に急行していた。
 やばすぎる精度である。
「まさか、皆さんの出したハズレに埋もれていたりしませんか!?」
「そこにいなければ居ないですね」
「そんな何処かの百均みたいなことを言わないでくださいませ!」
『ツヴァイ』と呼ばれるゲームプレイヤーが肩をすくめている。
 クラン『憂国学徒兵』のメンバーである彼女は、『フィーア』の出したガチャアイテムの整理整頓を行っていた。

「私の救出を待っているお姫様はどこ!?」
「話、聞いてました?」
「気絶していたら人工呼吸しますね!!!」
「ヤバいですね」
「誰がヤベーメイドですか!!」
「こわぁ……」
 さしもの『ツヴァイ』も困惑するしかない。実のところ、『エイル』が何処にいるのかを彼女は知っていが、これは言わないほうがいいな、と思った。
 そう、『エイル』は亜麻色の髪の少女NPCであり、この拠点の冒険者ギルドの受付も兼任している。

 だから、ガチャの周りにはいないのだ。
 けれど、そう言えばステラはきっと凄まじい勢いでギルドに突っ走るだろう。
 それはちょっと混乱の下なのでやめておいたほうがいいな、と『ツヴァイ』は冷静だったの。
「あの、ガチャをしにきたのでは?」
「ハッ! そうでした! 今回はガチャ。お任せください。こんなこともあろうかと物資と言う名のトリリオン、バッチリです! ええ、『エイル』様との結婚に繋がるのならば!」
「なんて?」
『ツヴァイ』は困惑しきりであった。
 なんで結婚?
 だが、ステラはまるで構わなかった。

「期間限定アイテムを詰めば、さしもの『エイル』様の心も揺れ動くことでしょう。足りないなら、万難を排してモンスターを駆り尽くしてしまえばいいのです。あと、結婚準備金も全投入です!」
「そんなことして大丈夫なのですか?」
「大丈夫です! お金なんてまた稼げばいいのです! お気になさらずに『エイル』様!」
 何処にいるかわかっていないのに、ステラは取らぬ狸の皮算用的なことを言っている。
 これが本当にヤベーってことなのだな、と『ツヴァイ』はアイテム整理しながら、思った。

「さて、それではサンタ婚するためのクリスマス限定グッズを手に入れいます! ええ、私の願望のために!!」
 そんな物欲センサーに反応すること言っていいのか?
 言うまでもないが、ステラは大いにトリリオンをブッパした。
 それはもう、盛大な爆死ってやつであった。
 不思議なくらい激レアアイテムが出ない。
 理不尽なくらいに、だ。
 そして、そんなステラはマジで結婚準備金にまで手を出し、さらに爆死を重ねる。
 ゴッドゲームオンラインのガチャに天井なんてない。
 あるのは際限なく続くガチャ坂のみ。

 そう、ステラがクリスマス限定『ダブルセイント・ガンシューター』なる二丁拳銃の激レアアイテムを手に入れるまで、彼女のトリリオン貯金は0を更新し続けるのであった。
 そう、言うまでもなくガチャ爆死地獄の始まりでもあったのだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
陰海月「ぷっきゅ!」

…陰海月語を翻訳します…

わかった!ガチャ引けばいいんだね!
おじーちゃんたち、ここのお金も使い切れないっていってたからね。
でも、それが『予算』!できるだけ、予算の範囲内で当てたいね!
(お小遣いやりくり精神)

よーし、引いちゃうぞー!
うーん、どれもかっこいいけど…SSRな全部盛りっていうかっこいいのがこないー!(SSRサンタ全身鎧のこと)
で、でも、予算の範囲内でやらないと…!こーい!

(自分も極彩色にぴかーっ)
!やった!これだよね、例のSSR!
(ぼかして具体的なことは察させないようにしている)



「ぷっきゅ!」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)と合体を果たした『陰海月』はゲーミングカラーに輝いていた。
 それはガチャ演出の日暈が虹色に輝く確定演出にも似た色合いであったことだろう。
 拠点『学園』のゲームプレイヤーたちは、そんな『陰海月』にご利益があると、スクリーンショットを取ったり、拝んだりとなんだかよくわからない人だかりができていた。
 ポージングを取っているところが、ファンサらしい。
 それでいいのかな、と思わないでもなかったが、『陰海月』が得意満面の様子であったので、特に言及することはなかった。

 が、本題を忘れてはならない。
 そう、今回猟兵たちに求められているのはガチャを回すことなのだ。
「きゅ!」
『陰海月』もそれはわかっている。
 そのための軍資金という名の予算、おこづかいはすでに持ってきているのだ。
 というか、その金額がすごい。
 ちょっと、その、子どもの小遣いにはあれな金額であった。
 だが、構わない。
 トリリオンは、このゴッドゲームオンラインと統制機構に支配された現実にて通用する電子通貨。

「まあ、私達の住んでいる世界では無用の長物ですからね」
 うん、と合体した悪霊達は頷く。
 言ってしまえば、メダルゲームのメダルである。 
 遊ぶのに必要ではあるが、現実のお金としては使えない。換金もできず、遊び続けるしかないというのならば、メダルはかさばる。
 それと同じ理屈でトリリオンもまた彼らにとっては必要のないものだったのだ。
 であれば、使う機会があるというのなら、盛大に使ってしまおうというのだ。

「それではどうぞ~」
「きゅ!」
『陰海月』はトリリオンを消費して、ガチャを回す。
 期間限定のガチャ。
 それはクリスマス限定のアイテムが目白押しである。
 今回狙うのは、その中でもさらに排出率が激渋な激レアアイテムだ。レアリティは言うまでもなく最上位。
 加えていうのならば、常に排出される可能性のある期間限定ではない激レアアイテムも含まれているので、さらに渋い具合になっているだろう。

 だからこそ、バグプロトコルは、その点に目をつけたのだ。
 バグトリガーを仕込んだ限定アイテム。
 それを手に入れた廃人プレイヤーを容易く撃破できるバグトリガー。これによってバグプロトコルはすぐに此方に近づいてくる。
 そこを猟兵たちでボコにしようっていう話なのだ。

「カッコイイのが出るといいですね~」
「きゅー!」
 ぐるぐると回る日暈。
 銀色だったり、金色だったり。
 しかし、目当てなのは虹色なのだ。しかし、なかなか演出が始まらない。
 これがガチャ!
 ラッキーパンチなど許さぬという激渋具合。
 何度回しても虹色演出がでないのだ。本当に出るのこれ? と『陰海月』が訝しんだ時、ようやくにして虹色の日暈が演出される。

「ぷきゅ!」
 これだ! と『陰海月』がはしゃぐ中、排出されたアイテムを見やる。
 クリスマス限定の……これは、何?
 一見すると、ただのぬいぐるみである。それもトナカイとサンタのワンセット。
「……きゅ?」
「ああ、これは……おそらく爆弾のアイテムですね。爆発したら復元されて戻って類の」
 それはそれで面白い性能である。
 中々激レアアイテムをゲットできないというガチャの洗礼を受けた『陰海月』であったが、しかし無事にバグトリガー付きの激レアアイテムはなんとか確保できた。

 後は、このアイテムを使って、ノコノコとやってきたバグプロトコルをボコすだけだ――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
『回せガチャを~風車の如く~』
クレイドル。なんの歌ですかそれは?
『即興ガチャ歌!ねぇねぇ奏者!何かする度にさ、ガチャを回した時の音を再現したらさぁ、楽しそうじゃないかい?』
邪悪そうな思いつきを話さないでほしいであります。
『えーそうかなぁ?人生が豊かになるんじゃないかなぁ?』
まったく、リソースを無為に費やすなど正気の沙汰ではありません。
『いやいや無駄を楽しんでこその人生ってものだろう?音楽が生きるに必要ないっていわれちゃったら私悲しいぜ~』

騎兵刀でモンスターを狩り稼いだトリリオンでガチャを回します。
戦闘で使えるモノが出るといいのですが。
『演奏関連でも好いね!』こればかりは試行回数と運であります。



『回せガチャを~風車の如く~』
 謎の歌声が拠点『学園』に響き渡る。
 それは、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の有する魔楽機『クレイドル・ララバイ』の声であった。
 なんとも悠長な歌声に調子が狂ったように小枝子は目深に被ったキャップがずり落ちるのを直しながら問いかける。
「なんの歌えす、それは?」
『即興ガチャ歌!』
「余計にわからなくなる返答は止してもらえませんかね」
『えっ!? この上なく簡潔なタイトルだと思ったんだけれど!?』
 小枝子にとって、ガチャとはよくわからないものであった。
 一応、グリモアベースで説明は受けてはいるものの、何が面白いのかわからない。

 人が熱中するほどのものなのだろうか?
『ねぇねぇ奏者! なにかする度にさ、ガチャを回した時の音を再現したらさぁ、楽しそうじゃあないかい?』
「それ、何が面白いのですか?」
『いや、だってねぇ。ガチャの音っていうのはある特定の人種にとっては、生きがいみたいなところがあるんだよ。娯楽のためなのに、基盤となる生活を削ってまで回したいなんて、退廃の極みだとは思わないかい!』
「わかりかねますが、クレイドル、あなたが邪悪な思いつきをした、ということはわかるであります」
『えーそうかなぁ? 人生が豊かになるんじゃないかなぁ?』
 人によっては爆死の過去がほじくり返されるだけである。
 そういうところが悪辣なのだと言わんばかりに小枝子は『クレイドル・ララバイ』の弦を指で弾いた。

「まったく、リソースを無為に費やすなど正気の沙汰ではありません」
 小枝子は拠点『学園』周囲のモンスターを適当に狩って得たトリリオンを見やる。
 ゲームの中で現実でも通用する電子通貨が手に入るのは、どういう理屈なのだろうと思う。
 そもそも、このトリリオンの価値を保証しているのは、誰なのだろうか。
 ちょっといろいろ考えてしまうが、小枝子は頭を振る。
 今の己にできることは、まずガチャを回すことだ。
 一にも二にもなく、だ。
『いやいや、無駄を楽しんでこその人生ってもんだろう? 音楽が生きるのに必要ないって言われちゃったら、私悲しいぜ~』
 小枝子は息を吐き出す。
「はいはい、そうでありますね。とは言え、ガチャで出てくるものが戦闘で使えるものであればいいのでありますが」
『まぁた、奏者はすぐにそういう事言う~。むしろ、此処は演奏関連でもいいなって思う所だよ~』
「こればかりは自分がどうこうできるものではありませんから」
 小枝子はそう言って、トリリオンを手にガチャの前に立つ。

 日暈が天に瞬いている。
 ふむ、と一つラインナップを見てみる。
 激レアアイテムは言うまでもなく、レアリティの最上位だ。
 そのクリスマス限定のアイテムは、槍であったり銃であったり、防具であったりといずれもがクリスマスに即したものだ。
 いや、防具が一番意味わからんが。
 なんだ『サンタバニーガール・ビキニエディション』だとか、『サンタプリンセス・メイドエディション』だとか。
「よくわからないでありますな」
 だが、回さないことには始まらない。
 こればかりは運なのだ。
 トリリオンを消費してガチャを回す。

 ぐるりと回る日暈。
 そして、その日暈が銀色から金色に輝き、さらに色を返る。
『おっ、いわゆる昇格演出ってやつだね!』
「そうなのですか」
『情緒~もっと喜ぼ!』
「よくわからないであります」
 虹色の日暈より落ちてきたアイテムが小枝子の手の上にある。
 いやに軽い。
「……なんでありますか、これ」
『なになに? 真っ赤なマフラーたなびく、『サンタヒーロー・スイミングウェア』?』
 なんだいこれ、と『クレイドル・ララバイ』はがっくりする。
 楽器関連がよかった。
 だが、小枝子は思った。
 今、真冬なのに、水着? と――!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『契約の大天使メタトロン』

POW   :    第一の試練
【戦闘の意志】を見せた対象全員に「【指定する行動を禁止(時間経過で指定変更)】」と命令する。見せている間、命令を破った対象は【全ての能力】が半減する。
SPD   :    第二の試練
【大鎌による強力な斬撃】を放つ。他のユーベルコードと同時に使用でき、【第一の試練の】効果によってその成功率を高める。
WIZ   :    第三の試練
【光輪から無数の光線】を放ち、レベルm半径内の指定した対象全てを「対象の棲家」に転移する。転移を拒否するとダメージ。

イラスト:えな

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は約・契です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『契約の大天使メタトロン』 は瞳を開く。
 そう、ようやくにしてバグトリガー付き激レアアイテムを引き当てたものが出たことを感知したのだ。
「どうやら、網にかかったようね。容易いことだわ」
 彼女は笑む。
 そう、確かに激レアアイテムは最高性能を誇る凄まじいアイテムだ。
 だが、致命的なバグが仕込んであるのだ。
 それも、己というバグプロトコルと相対せねば発動しない、まず事前に察知できぬもの。

 仕掛けられたバグは『自分だけ被ダメージの計算が大幅におかしくなる』、だ。
 防具系のアイテムであれば、なぜがグラフィックが破れたりして大変なことになったりするバグまでおまけ付きである。
 ちなみにであるが、武器の激レアアイテムも同様である。
 一体なんのためにそんな仕様なのかはわからない。
 わからないが、そういう伝統なのである。
 バグなんだから仕方ない。
「ふっ……これがお約束、契約というものよ」
 しかし、彼女は知らない。
 そんなに不敵な笑みを浮かべて、大物感出しているが、今から彼女が向かう先は、正しく猟兵たちが待ち受けている場所なのだ。

 ノコノコと、それこそバグがあるから大丈夫と高を括っていると、痛い目にあうのは……言うまでもなく『契約の大天使メタトロン』なのだ――!
リトルリドル・ブラックモア
チキショー!
オレサマはゲーマーとしてすり抜けをゆるさねー!
おいオメー!オメーがボスだな!
すげーセイントでホーリーナイトってツラしてるぞ!

しかもドサクサでネーチャンたちをビキニサンタにして
コイツとんでもねーワルだぜ…!
除夜のカネで108連ガチャしてボンノウタイサンってか!?
ウマいコトゆーなし!

目立ってるのもゆるせねー
オレサマもUCでSSRになるもん!
セイントクルセイドクロスを装備して
ホーリーナイトまおーサマ・†聖騎士†スキンで
8頭身のイケメンに…グハーッ!(吐血
爆死したヤツらの怨念がスゴイ!

オレサマGGOは初心者なんだぞ
てかげんしろー!
アインたすけてくれー!集団戦術だ!
連携演出とか…なんかでろ!



 ガチャのすり抜け、というものがある。
 確かに排出されるレアリティは高ければ高いほうがいいのは、語ることでもないだろう。
 高レアであればあるほど嬉しい。
 まあ、当然である。
 だが、稀に。そう稀によくあることなのだが、ガチャにおいては高レアリティがでてもがっかりすることがある。

 そう、狙っていたものとは違う高レアリティアイテム、だ。
 この場合、『セイントクルセイドクロス』だ。
 確かに期間限定の激レアアイテムだ。
 ちゃんとバグトリガーもついている。だが、ダメ……っ!
 リトルリドル・ブラックモア(お願いマイヴィラン・f10993)が欲しいなーって思っていたのは、『サタンサンタソード』であった。
 めちゃくちゃ禍々しいサンタクロースの帽子を象った剣。
 あれがめちゃくちゃ欲しかったのだ。
 だが、出たのは『セイントクルセイドクロス』と呼ばれる聖なるパワーを秘めた十字槍だったのだ。
 それを抱えてリトルリドルはべそべそしていた。

「チキショー!」
 許せない。
 すり抜け許せない。絶対すり抜け許さない大明神になりそうになっているほどの気迫で持ってリトルリドルは怒り狂っていた。
「オレサマはゲーマーとしてすり抜けをゆるさねー! おいオメー! オメーがボスだな!」
「な、なぜ、猟兵がいる……!?」
 ノコノコとバグトリガー付き激レアアイテムの反応に寄ってきたバグプロトコル『契約の大天使メタトロン』は、何故かいたリトルリドルの姿にたじろいでいた。

 おかしい。
 彼女の予定では、『サンタバニーガール・ビキニエディション』に身を包んだゲームプレイヤーがいるはずだったのだ。
 だが、いたのはブラックタールの魔王であった。
「オメーで間違いねーな! すげーセイントでホーリーナイトってツラしてるぞ! しかもドサクサでネーチャンたちをビキニサンタにして、コイツとんでもねーワルだぜ……!」
「いや、それは防御力を紙にする方便で」
「うっせー! 見ろ! コイツラの顔を!」
 ほれ! とリトルリドルの背後にいたのは、クラン憂国学徒兵の女性ゲームプレイヤーたちであった。
『アイン』、『ツヴァイ』、『フィーア』が手に入れた『サンタバニーガール・ビキニエディション』を着込んでいる。

 正直リトルリドルのハーレムに見える。
 これで札束のバスタブに浸かっていたら、月刊誌の謎の品物の広告ページにでれそうなくらいのワルな絵面であった。
「除夜のカネで108連ガチャしてボンノウタイサンってか!? ウマいコトゆーなし!」
「い、言いがかりだ。そんなつもりではなかった……!」
「ウルセー! 結果的にそーなってんだろうがよー! つーか、普通にド派手な感じでm立ってんのもゆるせねー!」
 リトルリドルはビキビキしていた。
 背後に『!?』という謎のエフェクトまででていた。正直ちょっと合わないな、と思わないでもなかった。

 だが、彼の背後には輝くホログラム加工のキラキラが煌めい、なんかすごいエフェクトでリトルリドルがちょっと動けば、立体的に見えるようだった。いや、もとより立体なので、何言ってるか意味わからんと思うが、そういうあれなのである。
 そして、その壮大な背景と共にリトルリドルは衣装をまとい、『セイントクルセイドクロス』を構え、決めポーズを取るのだ。
「これが! これこそが、オレのホーリーナイト・まおーサマ・†聖騎士†スキン、Ver.八頭身、だー! ってグハーッ!?」
 ごはっ! といきなりの吐血。
『契約の大天使メタトロン』は戸惑うばかりであった。

「え、何もしてない。何もしていないぞ、私は!?」
「くっ……これが爆死したヤツらの怨念か……スゴイ!」
「待て待て待て。何してないぞ!?」
「オレサマ、ゴッドゲームオンラインは初心者なんだぞ。てかげんしろー!」
「え、えぇ……」
 勢いに圧倒される『契約の大天使メタトロン』。
 何もしていないのに、なにかしたような雰囲気にされてターンエンドである。

「『アイン』たすけてくれー! クラン『憂国学徒兵』のビキニサンタねーちゃんたちも!」
「いいけど、それやめろ。なんか恥ずかしい!」
「いや、どう見ても装備している方が恥ずかしいゾ」
 核心を突くワル。
 凄まじい一撃である。
「いいから、連携演出のカットインとかあるだろ! なんかでろ!」
 そういうアレ! とリトルリドルはクラン『憂国学徒兵』たちと共に、謎の言いがかりに負けてターンエンドしてしまった『契約の大天使メタトロン』に理不尽なる四人同時攻撃をぶち込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
『サンタプリンセス・メイドエディション』を装着
最初は戸惑ったけど、よく見ると綺麗な服
欲しくなるのもわかるわ、無理をするのは心配だけど

『しるべ』を発動し、接敵
高速移動で斬撃を躱したいけれど
くっ……掠めただけなのに、バグのせいで防具が破けてしまう
これがお約束の力……?
こんな辱めを、あの子達にするつもりだったの
えっち、悪い子

挑発し、敵を引き付けるわ
『憂国学徒兵』に攻撃させないよう気をつける

戦意……?
いいえ、これは『プレゼント』よ
悪い天使には光の矢をあげるわ
受け取りなさい



 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、『サンタプリンセス・メイドエディション』を装備した。
 メッセージウィンドウにおそらくそう云う文言が記されていることだろう。
 ステータス上昇。
 各種スキルレベルアップ。
 主にイニシアチブの数値が高いことが理解できるだろう。
 確かに破格の性能である。
 プリンセスらしい清楚なドレスアップにメイドの奉仕精神が根付いたようなデザイン。
 そこにサンタの意匠とカラーが加われば、正しく『サンタプリンセス・メイドエディションん』というしかない姿に静漓は早変わりしていた。

 文字列だけみたら、ちょっとよくわかんないあれである。
 静漓の戸惑いも理解できるところである。
 しかし、全ての人類は感謝するだろう。
 ここに爆誕せしは、『サンタプリンセス・メイドエディション』を着込んだ静漓である。
「圧倒的美女感……っ!」
「ビキニスタイルが恥ずかしくなります……っ!」
「いや! そこは普通に最初から恥ずかしいだろう!」
「ま、負けたーっ!!」
 クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは、静漓の圧倒的美女オーラにがっくり膝をついてうなだれていた。
 いや、『ドライ』は男の子なので、ツッコミ役である。珍しいこともあるもんである。

「そう? よく見るときれいな服ね。欲しくなるのもわかるわ、無理をするのは心配だけど」
「気配りまでされては、もう敗北を認めるしかないわね」
「ええ、圧倒的でした」
「目もくらむ程の美女……!」
 別の意味で『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは使い物にならない。

 しかし、バグトリガー付き激レアアイテムにつられてよってきたバグプロトコル『契約の大天使メタトロン』は健在である。
「ええい、邪魔立てばかり!」
 彼女の見立てでは、廃人廃課金プレイヤーを打倒するのは容易いはずだった。
 だが、その目論見は猟兵たちの出現でご破算となっていたのだ。
 振りかぶった大鎌。
 その軌跡を静漓は見ただろう。
「遅いわ」
 静漓は大鎌の斬撃を紙一重で躱す。
 行ける。
 これはかなりステータスがアップして敵の攻撃など容易く躱すことができる。
 が、しかし。

「ふっ、どんなにステータスアップしても、私の仕掛けたバグは!」
 そう、『自分だけ被ダメージの計算が大幅におかしくなる』のだ。僅かにかすめただけでも静漓の着込んだ防具『サンタプリンセス・メイドエディション』が裂かれてしまう。
 そう、僅かな衝撃だけでも、その防具は破れてしまうのだ!
 なんてことだ!
 大変! ピンチが危険!
「くっ……掠めただけなのに」
「アハハハ! 確かに激レアアイテムのステータスアップの恩恵はすさまじいわ。けれど、その防具は紙装甲なのよ! これで!」
 破けた静漓の胸元やら腰やら、スカートやら。
 破け具合が、そのなんていうかですね。

「……すんごい」
『アイン』たちは同性の目から見ても静漓が今大変に大変なことになっているのを見て、目を丸くして頬を赤くする。
『ドライ』は鼻血が出てる。出てるし、出してるし、出しすぎている。
「これがお約束の力……?」
「えっ、なにそれ、知らないわ」
「しらばっくれて……こんな辱めを、あの子達にするつもりだったの」
「ち、違、それは、ただの紙装甲だっていう表現で」
 しどろもどろの『契約の大天使メタトロン』。
 さっきもにたよなやり取りをしたような気がする。

「えっち、悪い子」
 静漓の言葉は、クリティカルだった。
 まるで脳天に雷が直撃して全身に電流が走り抜けるようだった。
 静漓からすれば、それはただの挑発であった。挑発の語彙が、そのちょっと少ないところもまたすごかった。何がって言わないが、すごい。
 こんなに万人の胸を射抜くことある?

「だ、だけど、私に敵対するのなら……!」
「いいえ、これは『プレゼント』よ」
 静漓は光の矢を構える。そう、これはプレゼント。
 フォーユー。
 静漓の唇が言葉を紡いだ瞬間、放たれるは光の矢。
「悪い天使には光の矢をあげるわ。受け取りなさい」
 それはしるべ(シルベ)。
 放たれた矢は吸い込まれるようにして『契約の大天使メタトロン』の胸と全人類のときめきハートをぶち抜くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
『サンターヒーロー、此処に推参!不逞な輩め覚悟しろ!』
サンタヒーロー、ばかみたいな恰好と言ってよろしいですか?
『めっ!なんてこと言うの奏者!似合ってるよ!!』

『サンタヒーロー・スイミングウェア』を身に纏い
[揺籃の子守唄]発動。
ドロモス・コロスを大量展開し魔法の超音波【衝撃波】で攻撃。
そして【催眠術】相手が命令をしこちらの行動を禁止してくるのなら、その発言を超音波で歪め、書き換えます。躱すな避けろに、戦うなは戦えという様に、命令の内容が正しく相手に届かねば試練は無効だ!
『面白可笑しく改竄してやろうか!』

騎兵刀に【斬撃波】を纏わせ、衝撃波で体勢を崩した敵の懐へ踏み込み、
【切断】攻撃を抉り込む!



 バグプロトコル『契約の大天使メタトロン』はよろめいた。
 猟兵たちのユーベルコードによって、でもあったが、なんていうか自分が破廉恥な感じになっているような気がしないでもない。
 バグトリガー付き激レアアイテムに施されたバグは『自分だけ被ダメージ計算がおかしくなる』、というものだった。 
 どんな些細な攻撃も、掠めただけで防具が破損してしまう。
 そういうバグなのだ。
 まあ、防具が破損して、ちょっとグラフィックが大変なことになってしまうのは、副産物であった。
 がしかし。
 それが猟兵たちの逆鱗に触れた!

 触れた? かな?
『サンタヒーロー、此処に推参! 不逞な輩め、覚悟しろ!』
 響く声。
 見上げる先にあったのは、たなびく赤いマフラー。
 そして、季節柄冬景色のマップに立つのは、『サンタヒーロー・スイミングウェア』――即ち、水着姿の朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)であった!
 モミの木の頂上に産前と輝く肌!
 ベツレヘムの星よりも燦然と輝く白い肌!
 時と場合が合致すれば、ありがとうございます! と拝む者たちが続出したであろう光景である。

「サンタヒーロー、ばかみたいな格好と言ってよろしいですか?」
『めっ! なんてこと言うの奏者! 似合ってるよ!!」
『クレイドル・ララバイ』の言うとおりであった。
 似合っている。
 というか、これ以上にないくらい似合っているのではないか。サンタカラーなので、このままプレゼント配達してもいいのではないか。
 そう思えるものであった。
 だがしかし。
 その見下ろす視線もありがとうございます! という連中がきっと出たであろう小枝子の視線が向けられているのは『契約の大天使メタトロン』であった。
 ちょっとビクっとしている。
「激レアアイテムのデザインをしたのは私じゃあないわ!? なんで私がデザインしたみたいな雰囲気になっているのよ!」
「本当でありますか?」
 めちゃくちゃ疑わしい、と小枝子はモミの木の上から猜疑の視線を向ける。

「ほ、本当よ! だ、だから!」
「バグプロトコルである以上、見逃す理由などないのであります。『ドロモス・コロス』」
 その言葉とともに空に展開するのは大量の子機たちであった。
 そして、小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
 敵が此方に命令を下すというのならば、それを覆す。
 放たれる音波は催眠術音波。
「な、えっ……こ、これはまさか、真逆のことを言ってしまう催眠術!」
「そうであります。躱すな避けろに、戦うな戦えというように命令の内容が正しく相手に届かねば試練は無効だ! 貴様のユーベルコードはここに敗北したのだ!」
『もっと面白おかしく改ざんしてもよかったんじゃないかなぁ』
「もっと、というと?」
『宴会芸を披露しろ、とか?』
 それは滑るやつである。

「それもいいですが……ここは単純に行かせてもらいます!」
 モミの木より飛ぶ小枝子。
 翻るは赤いマフラー。
 しかし、スイミングウェアである。 
 格好いいのに。これが夏だったら、バッチリだったのに。
 季節は冬。
 それもクリスマスマップ!
 場違い感半端ないし、浮かれた若者感満載な格好の小枝子は、自分が今何をしているんだろうなぁ、と僅かに正気に戻ってしまう。
 だが、やるべきことは決まっているのだ。

「バグプロトコルは壊す! それだけだ!」
 手にした騎兵刀。
 放った斬撃の衝撃が『契約の大天使メタトロン』の体躯を揺らし、体制を崩す。
「くっ……こんな、こんな、馬鹿みたいな格好の敵に……!」
「自分たちにこんな格好をさせておいて、その言い草!」
 小枝子は渾身の力を込めて騎兵刀を振りかぶり、『契約の大天使メタトロン』を袈裟懸けに切り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風

…気に入ったのか、陰海月がぬいぐるみを離さないんですよねー。
なのでまあ、私はいつもの武器で行きますねー。

というわけで、UCつきで漆黒風を投擲しましてー。
その斬撃は、スレスレを見切っていきましょうかねー。見切りを禁止されても、まあ四天霊障で武器受けはしますけどね?

本当に。致命的なバグ仕込んでくるのなんて、手が込んでますよ。
まあ…それを猟兵に嗅ぎつけられればどうなるかは、自明ですが。


陰海月「ぷきゅう」
大事にぬいぐるみ持って踊ってる。つまり、バグの効果が及ぶのは…



 どんな激レアアイテムだろうと、環境ぶっ壊し性能のアイテムだろうと、使わなければ何の効果も発揮しない。
 それがゲーム世界であるゴッドゲームオンラインにおいても変わらぬことであった。
 アイテムとは装備して使って見て初めて効果を発揮するのだ。
 それはバグプロトコルが仕掛けた致命的なバグを引き出すバグトリガー付き激レアアイテムであっても変わらぬ事実であった。
 そう、使わないと効果を発揮しない。
 持っているだけではまるで意味がない。
 そういうもなのだ。

 だから、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)には何のバグも起こっていなかった。
「な、なぜだ。なぜお前はバグトリガー付きの激レアアイテムを持っていない!?」
「いえ、なぜと申されましてもー」
『疾き者』は困ったように己の背後を示した。
 そこにいたのは巨大なクラゲであった。
『陰海月』は、激レアアイテムであり、また爆弾として機能するサンタぬいぐるみを大事に持っている。
 触腕でヒシっ、と抱きしめている。
 これを取り上げることは『疾き者』たちにはできなかった。できようはずもなかった。
 故に、今の彼らに致命的なバグは起こらない。
 が、同時に激レアアイテムによるステータスアップの恩恵もまたないのだ。

「気に入ったのか、離してくれないんですよねー」
「な、なら! 力押しで!」
 倒せる!
 そんなふうにバグプロトコル『契約の大天使メタトロン』は思ったのだろう。
 だが、そうは問屋が卸さない。
「ですが、まあ、激レアアイテムがなくてもよいといいますか、いつもの武器で充分といいますか。慣れている武器の方がよかった、といいますかー」
 静かに構えた棒手裏剣の一射が『契約の大天使メタトロン』へと投げ放たれる。
 その速度は、一秒を百以上に裁断した時間よりも早い。
 圧倒的な速度で放たれた棒手裏剣は『契約の大天使メタロン』へと突き立てられる。

 だが、止まらない。
「ハッ、その程度でこの私が止まると思ったか!」
「その大ぶり、見切ることは簡単でしてー」
「その見切りは禁止だ。受けろ、我が大鎌の一撃!」
 振りかぶられた一撃はたしかに強烈だった。
 霊障で受け止めてもなお、骨身が削れるようなものだった。しかし、今の彼らにバグはない。
 そう、本来ならこれで此方のHPゲージが消し飛んでいるはずなのだ。
 だが、『自分だけ被ダメージ計算がおかしくなる』というバグがない以上、それはただの攻撃に過ぎなかったのだ。
「本当に。これが激レアアイテムを持っていたのなら、致命的だったと思うと、手が込んでますよ」
「クッ……凌がれるのか、これを」
「ええ、あなたがどれだけ手の込んだ仕掛けを施していたとしてもですねー」
 握り込んだ棒手裏剣の切っ先が煌めく。
 ユーベルコード、四更・風(シコウ・フウ)の煌き。
 それは『契約の大天使メタトロン』にとっても、致命的であったことだろう。

「まあ……それを猟兵に嗅ぎつけられればどうなるかは、自明ですが」
 振り抜いた一撃は『契約の大天使メタトロン』を貫き、その体躯を吹き飛ばす。
 その後ろではあいも変わらず『陰海月』がぬいぐるみを持って踊り続けているのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
なるほど……つまりこの武器を装備して戦って被弾すれば
エイル様を悩殺できるって寸法ですか??
鉄壁のメイド服が破れる魅惑感と
それを気にせず戦う私の勇姿
完璧ですね、エイル様がどこにいるかわからないことを除けば!!
そういえばあんまりメイド服って破れてるイメージ無いですよね

というわけで脳筋なメイドをご覧あれ!
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます!
防御も銃でやるわけですが
なんかこう、飛ばされてもめげない!
私の(エイル様への)愛を受け止めるがいい!
そして結婚してエイル様!



 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、じっ、と手にした二丁拳銃武器であり、クリスマス限定ガチャから出たバグトリガー付き激レアアイテムを見つめた。
『ダブルセイント・ガンシューター』。
 言うまでもなく性能は凄まじい。
 連射速度、リロード、いずれをとってもゲームバランスが不安になるレベルの威力と速射性を持っている。
 雑魚モンスターの一掃から、ボスモンスターへのダメージの集約まで何でもござれである。
 もう全クエスト、このアイテムがあればいいんじゃないかなって思えるほどの性能だったのだ。

 だが、ステラが注目していたのは、激レアアイテムの性能ではない。
 彼女が注目していたのは、致命的なバグ……『自分の被ダメージ計算がおかしくなる』というバグ……でもなく、それに付随した被弾した際の防具グラフィックの変化、である。
 はっきり言って、そのバグはおまけ程度のものであったし、特に気にしなければ問題ないものであった。
「なるほど……つまり、この武器を装備して戦って被弾すれば、『エイル』様を悩殺できるって寸法ですか??」
 あ、ヤバい。
 このメイド、思考が一周回っている。
 ツッコミ不在において、彼女の暴走を止められる者は存在しない。
 非常に不味い事態である。

「鉄壁のメイド服が破れる魅惑感と、それを気にせず戦う私の勇姿。完璧ですね」
 うん、とステラは頷く。
 これならば、間違いない。何がどう間違い無いのかわからないし、なんなら間違いが起こってもいとさえ思っている顔であった。
 だが、その理論には欠点がある。
 そう。
「『エイル』様がどこにいるのかわからないことを除けば!」
 いや、いる。
 冒険者ギルドの受付をしている!
 だが、今のステラにはそういう事に思いたる余裕すらなかった。

「というわけで脳筋なメイドをご覧あれ!」
「自分で言っていいのかな、それ」
「むしろ、それ悪口では」
「うむ! 普通に悪口だな!」
「むしろ、どうしてそれを誇らしげに言えるのかしら」
 クラン『憂国学徒兵』たちの言葉が刺さるも、しかし、彼女の鉄壁メイド服を貫くほどじゃあない。
「むしろ、ご褒美です!」
「やばぁ」
 ステラのにこやかな顔に四人は戦慄した。
 マジでこのメイドヤバい、と。前から思っていたが、それに拍車がかかっているように思えてならない。

「くっ……どうして私が此処まで追い込まれて……」
 バグプロトコル『契約の大天使メタトロン』は膝をつきながら、己が立てた作戦が尽く失敗に終わるという屈辱に震えていた。
 というか、猟兵達に嗅ぎつけられた時点でもう詰んでるようなもんなのである。
「私の(『エイル』様への)愛を受け止めるがいい!!」
「何言ってるの、この猟兵!?」
「ええい、私の恋路を邪魔するものは何であろうと許しはしません! むしろ、結婚して『エイル』様!」
 むちゃくちゃである。
 はちゃめちゃである。
 言うまでもないが、言ってることは無理難題である。
 だが、今のステラは、その無理難題をゴリ押しできるだけの装備があるのだ。

 構えた『ダブルセイント・ガンシューター』から放たれる弾丸は、ユーベルコードを上乗せされて、とんでもない威力に引き上げられている。
 そのすさまじい集弾性能と速射性でもって『契約の大天使メタトロン』は言葉を発する間もなく、その弾丸によって馬鹿みたいなダメージ量をカウントされてしまうのだった――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
まあね、何の目的かは大体わかりますが、随分と手の込んだ真似をしてくれたものですねぇ…。
では問題のアイテムは装備せずにインベントリに――って、強制装着ですか?(嫌そうな表情をしつつ【覚悟】を決めて)

では早速UCで強化(防御力重点)して――え、ルール無視のデスペナルティ?んなもんを帳消しにするくらいの強化をしてやりますよ?(【限界突破・リミッター解除・高性能を駆使する】)
で、バグった被ダメージを【(各種)耐性・オーラ防御】でこらえつつ、光線銃を撃ちまくってやりますか(【レーザー射撃・乱れ撃ち・捨て身の一撃】)。
(で、戦闘終了後に衣装がとんでもないことになってるのは仕様です(ぇ)

※アドリブ・連携歓迎



 バグプロトコルがバグトリガーを激レアアイテムに仕掛けた目的は、よくわかる。
 俗に言う廃人プレイヤーは、バグプロトコルにとっては脅威だ。
 理不尽な要求にも嬉々として挑むし、チーターが現れれば玩具を得た子どものように逆に遊び倒してしまう。
 そういう人種なのだ。
 ハッキリ言って、バグプロトコル側からしても、ちょっと常軌を逸した存在なのである。
 そして、そこに廃課金という要素が加わったのならば手が付けられなくなる。
 少なくともクラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは、そういう人種であった。
 故に排除せんとするのは理解できるところであった。
「まあね。でも。随分と手の込んだ真似をしてくれたもんですねぇ……」
 シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は深く頷く。

 確かに手が混んでいる。
 期間限定という罠。
 そしてガチャのアイテム、それも廃課金プレイヤーをあぶり出すためにわざわざ高レアリティアイテムだけにバグトリガーを仕掛けている。
 あまりにも回りくどいやり方だ。
 だが、それだけに猟兵に嗅ぎつけられなければ、確実に廃課金廃人プレイヤーの遺伝子番号を焼却することができるのだ。
「だから、私は此処までがんばったのに!」
 猟兵達にボコにされつつ『契約の大天使メタトロン』は涙目であった。

 だが、シャルロッテは頭を振る。
「あのですね」
 そう、彼女もまたバグトリガー付き激レアアイテムを手に入れた猟兵なのだ。
 シャルロッテからすれば、そういう危険な、それこそ致命的なバグが作動するアイテムなど危なっかしくて装備する気になれなかったのだ。 
 インベントリに打ち込めばいいとさえ思っていたのだ。
 が、強制装着である。
 悲しいかな。
 覚悟を決めてもらうしかないのである。
「なんですか、このデザイン。このデザインもあなたがしたんですか」
 シャルロッテは『サンタバニー・ビキニエディション』に身を包んでいた。
 バニーガールの証、それはうさみみ!
 サンタの証、それは赤白緑のカラーリング!
 そんでもってビキニエディションとは?
 そう、ゴールドビキニである!!

 謎のデザインの説得力。アイテムフレーバーに謎の熱量を感じてしまう。
 そう、つまり、シャルロッテは今まさにそういう姿をしているのだ! 素晴らしいことこの上ないが、シャルロッテはものすごく嫌そうだ。
「ち、違う! 私はデザインしていない!」
「そうですか。でも、このアイテムにバグトリガーを仕込んだ時に、思わなかったんですかね? これ装備する人いるのかって」
 いるじゃん、と『契約の大天使メタトロン』は思った。
 が、強制的に装着されているだけなのだ。言い訳二しか聞こえない。

「ま、致命的なバグも帳消しにできるなんてことは――できるんですよねえ」
 シャルロッテの瞳がユーベルコードに輝く。
 PROGRISE:INSTALL(プログライズ・インストール)。
 そう、彼女の能力にかかれば、致命的なバグによって被った『自分だけ被ダメージ計算がおかしくなる』という効果も反転させることができる。
 そう、『自分だけ与ダメージ計算おかしくなる』という結果に!
「えっ」
「は、そういうことです」
 カッ! とシャルロッテが引き金を引いた光線銃が凄まじい熱量をブッパする。
 その一撃は『契約の大天使メタトロン』を消し飛ばし、さらにはシャルロッテの『サンタバニーガール・ビキニ』さえもぶっ飛ばす。
 爆煙が晴れ渡った後、シャルロッテの姿は大変に危険でピンチなことになるのは、、もはや言うまでもないことであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 集団戦 『バグドロイビーコン』

POW   :    ハイパー・ハイブリッド・ラーニング
【戦闘演算】と【瞬間思考力】と【学習力】を組み合わせた独自の技能「【ハイパーハイブリッド・ラーニング】」を使用する。技能レベルは「自分のレベル×10」。
SPD   :    ブレイド・ブレイク&ヒート・ビート
【顔部の単眼砲から照射される追尾熱線ビーム】が命中した敵を【大型アームブレイド】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[大型アームブレイド]で受け止め[顔部の単眼砲から照射される追尾熱線ビーム]で反撃する。
WIZ   :    クローキング・ダミーテクスチャ
自身と武装を【偽装テクスチャデータ】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[偽装テクスチャデータ]を飛ばして遠距離攻撃も可能。

イラスト:Hispol

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちは諸々大変な目にあったり、あわなかったりしながらバグトリガー付き激レアアイテムを仕掛けたバグプロトコルを打倒することに成功した。
 倒されたバグプロトコルからドロップしたパッチアイテムは人数分あるようで、ようやく致命的なバグを修正することができるのだ。
 しかし、グラフィックは特に変わらない。
「なんでだよ!」
 紙装甲を表現するためのビキニスタイルではなかったのか。
 そう思わないでもないが、デザイナーの趣味である。バグプロトコルにとっては冤罪極まりないあれであったが、まあ、破けグラフィックのバグは想定外だったのだろう。仕方ない。仕方ない。

「でも、パッチアイテムでバグを修正した、ということは……」
「……ただの現環境Tier最上位の激強アイテム……ってこと?」
 そうなのだ。
 猟兵たちが手に入れた防具も武器も、全てが環境最上位。
 であるのならば?
 やることは一つである。
 拠点『学園』周りのバグプロトコルを一掃し、狩り尽くして、年末最後の大掃除と行こうではないか――!
朱鷺透・小枝子
『いえーい勝利!此処は景気よく勝利の演奏会を始めよう!
サンタヒーロー今年最後のお仕事ってね!』
冬季限定ヒーローとは、期間短くないでしょうか?
来年には型落ちなのでしょうか?少し哀しいですね?
『細かいことは気にしなーい!!!』

【楽器演奏】[揺籃の子守唄]継続発動。
学園全体にクリスマスらしい?軽妙で明るくも厳かな演奏を流しつつ、
ドロモス達でバグプロトコルへ【衝撃波】攻撃を加え、ビームを反射防御です。

『さぁさぁ!年末年始はまた新しいイベントが来るかも!
今のうちにトリリオンを溜め込んで、ガチャに備えよー!!』

クレイドルが『憂国学徒兵』のプレイヤー達に発破を掛ける。
もたもたしていたら自分が狩り尽くします。



 バグトリガー付き激レアアイテムを仕込んだバグプロトコルの打倒によってフィールドに散らばるのは、バグトリガーの修正パッチアイテムであった。
 これで致命的なバグは修正されることになるだろう。
『いえーい勝利!』
『クレイドル・ララバイ』の陽気な声がフィールドに響き渡る。
『ここは景気よく勝利の演奏会を始めよう!』
「始めません」
 きっぱりと朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は、修正パッチアイテムを拾って眺めながら言い切った。
『そんなぁ、奏者ぁ! ここはサンタヒーロー今年最期のお仕事をしないとさぁ!』
「冬季限定ヒーローとは、期間短くないでしょうか?」
 小枝子の言うところも尤もである。

 今彼女が扮しているのは『サンタヒーロー・スイミングウェア』である。
 赤いマフラーたなびくスイミングウェア。
 冬とはミスマッチな、むしろ真逆の意匠である。いやまあ、期間限定アイテムの中には同じく『サンタバニーガール・ビキニエディション』もあるので、とやかく言えるところではない。
「クリスマス限定なのでしょう、サンタというものは。来年には型落ちなのでしょうか? 少し悲しいですね?」
 本当に悲しいのかはわからないが、小枝子は『クレイドル・ララバイ』が演奏したいという言葉を断る方便として使っているようだった。 
 だが、諦めない。
 演奏! そう、クリスマスソングって大切なことである。
 いつだって子供たちには夢と希望いっぱいであってほしいのだ。

『そんな悲しさをぶっ飛ばすのが演奏なのさ。型落ち? 来年には新しいサンタアイテムがでる? そんなの関係ないさ。いつだって楽しいって気持ちは、そんな不条理を越えていくものさ!』
 さあ! と『クレイドル・ララバイ』が歌う。
『細かいことは気にしなーい!!!』
「はぁ……わかりました。仕方在りませんね」
 小枝子が折れる形で魔楽機を奏で始める。

 どこか軽快テンポ。
 スキップしたくなるような音色だった。
 子機の『ドロモス・コロス』たちが一斉に飛び出し、拠点『学園』の周囲にはびこるバグプロトコル『バグドロイビーコン』へと衝撃波を放つ。
 その威力はちょっと通常のそれとは異なるものであった。
『わお、爽快だねぇ』
「ステータスアップの恩恵があるからでしょうね」
『このまま本当に狩り尽くせるかもしれないねぇ……なら、ちょっと発破をかけようか。さぁさぁ! 年末年始はまた新しいイベントが来るかも! 今のうちにトリリオンを溜め込んで、ガチャに備えよー!』
 その言葉にクラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーは頷く。
 わかっている。
 そうなのだ。
 クリスマスイベントが来たら、次は年末年始イベント。それが終われば、バレンタインデー。
 冬はイベント目白押しなのだ。
「絶対福袋ガチャとか来るしなぁ」
「なんでありますか、それは」
「福袋、知りませんか? 一年を締めくくった期間限定アイテムのごった煮ガチャ、とも言われていますが」
「ほう。であれば、トリリオンは貴重ですね?」
 小枝子は凄まじい勢いで子機『ドロモス・コロス』たちが『バグドロイビーコン』たちを衝撃波でぶっ飛ばし続けるさまを指差す。

「もたもたしていたら、自分が狩り尽くしますよ」
「あ! それは困る!」
「ですよね。であれば、がんばりましょう」
「なんて年末年始の大掃除だよ! ま、来年もよろしくな! って言えるようにがんばるか!」
 そう言ってゲームプレイヤーたちと小枝子は競うように『学園』周辺の大掃除という名のバグプロトコル一掃に精を出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リトルリドル・ブラックモア
ヤダーッ!
光属性を使うまおーもカッケーって気が
マジチョット一瞬だけしたケド
オレサマサタンサンタソードがいーっ!

こーゆー時はワルの必殺!リセマラなんだぜ
目当ての武器をひくまでUCでガチャやりなおし!
偽装テクスチャ?うるせー!しらねー!
攻略本に解除する裏技とか書いてあるぜたぶん!

グヌヌ…またアノ槍!
槍だけにヤリなおしじゃねー!
次は…サンタチャイナミニスカポリス!
属性盛ればイイってモンじゃねーぞ!
サンダーサタンソード…は恒常!
コレは…サンタビキニアロー!
意味わかんねー武器〜!!

すり抜けで出た装備を敵にぶつけてたら
オレサマきづいたぜ
ガチャに必勝攻略法はねーって…
出るまで回す!
コレがワルのリセマラ道…!



 ちょっとした希望的観測があった。
 バグトリガー付き激レアアイテムは、名の通り、致命的なバグが存在している。
 なら、バグプロトコルを倒したことでドロップした修正パッチアイテムを施せば、なにか変わるのではないか、と。
 そう、例えば。
『セイントクルセイドクロス』も何かの間違いで属性が反転したよな、禍々しい外見になるのではないかと。
 リトルリドル・ブラックモア(お願いマイヴィラン・f10993)は、ちょっと期待していた。
 だが。
「ヤダーッ! 修正パッチ当てても変わんねー!!」
「そりゃそうだろ」
 クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤー『アイン』はリトルリドルの言葉にあっさりそう返した。
「いいじゃん。光属性を使う魔王ってのも」
「そうかも」
「だろー?」
「やっぱヤダー! 光属性を使うまもーってのもカッケーって思ったけど、マジでチョット一瞬だけしたケド、オレサマ『サタンサンタソード』がいーっ!」
 リトルリドルは地団駄を踏んだ挙げ句に、地面に寝転がってじたばたもだもだした。
 子供かよ、と思ったが見た目を考えたら子供か、と『アイン』は思った。

「しゃーねーだろ」
「ヤダー! あ、そうだ。こーゆーときはワルの必殺! リセマラだ!」
「リセマラ?」
「しらねーのか! リセットマラソンだ! 出るまで回せば出る! そういうわけで!」
 あそれ、と何処からか出現したリセットボタンをリトルリドルは、ぽちっとな、とやる。
 気軽にリセットボタンでやり直せる。
 それがリトルリドルのユーベルコードだ。
 今のはチョットミスったから、でやりなおせるな規格外のユーベルコード。
 しかも必勝攻略本まである。

「たしか、二時の方角を向いて五体投地しながら角でボタンを推すと激レア出るってかいてた!」
「嘘だろ、おまえ」
「いけるいける! オレサマなら引ける!」
 そいや! とリトルリドルは角でガチャボタンを押す。
 日暈がぐるりと回転し、虹色に輝く。
「マジかよ」
「マジだよ!」
「でもさ、偽装テクスチャって手もあるんだけど。スキンって言って」
「うるせー! しらねー! オレサマがほしいの本物の『サタンサンタソード』なんだー! 虹色でてるから出る! 来い! 来い!『サタンサンタソード』!!」
 しゅぼん、とでてきたのは、『セイントクルセイドクロス』であった。

「グヌヌ……またアノ槍! 槍だけにヤリ直しじゃねー!」
「上手いこと言うなよ……」
「はい、リセットボタン!」
 やりなおし! そして、また回る日暈。虹色の輝き。
 いつもなら心躍るのだが、確定で虹色が出るってわかっているので、なんか有り難みがない。
「なんだこのサンタチャイナミニスカポリスってのは! 属性盛ればイイッてモンじゃねーぞ!」
 いいじゃん! サンタチャイナミニスカポリス! むしろ、見てみたいまである!
 だがリトルリドルにとっては関係ない。
 狙うのは、『サタンサンタソード』一択なのだ。

 そいや!
 もう何度目かわからないリセットボタンである。
「サンダーサタンブレード……は、恒常のヤツ! 紛らわしい!」
「むしろ、それが元ネタなんだろーな」
「次はサンタビキニアロー! なんだ意味わかんねー武器~!」
 そんなふうにリトルリドルはリセットボタンを押しては出てきた激レア武器をバグプロトコル『バグドロイビーコン』にぶん投げてぶつけ続けては、トリリオンを回収していく

「……ハッ! オレサマ気がついたぜ……出てきたすり抜け武器をバグプロトコルにぶつけて倒してトリリオンを手に入れたら、ガチャを回す……これって永久機関じゃねーの!?」
 そうかも。
「それにわかっちまったんだぜ、オレサマ。ガチャに必勝攻略法はねーって……」
「ですよね。わかりました?」
「ああ、出るまで回す!」
『フィーア』と呼ばれるゲームプレイヤーの言葉にリトルリドルは元気よく頷く。
「コレがワルのリセマラ道……!」
 もうリセットボタンとかしゃらくせー! 
 そういう強い気持ちでバグプロトコルを狩る大掃除と共にリトルリドルは念願の『サタンサンタソード』を手に入れるまで、根気強くリセマラ道っていうか、ただの廃課金道を邁進するのだ。

「来年は良い年になれー!」
 そして、手に入れた『サタンサンタソード』からほとばしる闇のオーラをもって、初日の出に、ぴょいんと跳ねるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
お掃除を始めましょうか――ご主人さま
なんて、メイドのように言ってみましょうか

『学園』の周りに、まだバグプロトコルがいるなら
隠れていても、逃さない
オーラを放ち、一気に攻撃するわ
さすが激強アイテム
力が引き出されて、とてつもない威力が出るわね

三人の装備も強いようね、バグが直ってよかった
サンタうさぎ、おそろいでとても可愛いわ
あと……『ドライ』は血が出てたけど、大丈夫? 治療する?



「お掃除を始めましょうか――ご主人さま」
 なんて、と薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は『サンタプリンセス・メイドエディション』に当てた修正パッチアイテムによって底上げされたステータスのまま、拠点『学園』周囲にはびこるバグプロトコル『バグドロイビーコン』の前にて立つ。
 そのさまは、正しくメイドであった。
 クールな所作。
 視線の美しさを称えるようなメイドエディション。
 サンタなのかお姫様なのかメイドなのか。
 もはや定かではない。
 が、そんなこと些細な問題である。むしろ、そういう細かい所を気にしているようでは、静漓の『サンタプリンセス・メイドエディション』姿の速度についてこれない。
 おいていくぞ。

 それくらいの魅力であった。
「負けたー!!」
 何故かクラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは、項垂れていた。
 何がって諸々全部である。
 普段の静漓を知っているのならば、なおのことである。
 クールな眼差しなのに、何処かソワソワしているような言動。
 クリスマスだから? イベントだから? 浮かれているのか?
 ギャップに足がハマって抜け出せない! 沼なんてもんじゃあない。この美女!

「どうしたの?」
「クールメイド美女とか……そんなの勝てねぇよぉ」
「スタイル良し、愛嬌良し……加えて性格も良し、ですか……大したものですね」
「炭酸抜きコーラよりずっとすごいです……」
 クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたち、というか、三人の女性ゲームプレイヤーたちは圧倒的女子ちからを発露する静漓を前に敗北を悟った。
 勝てねぇ。
 こんな美女がいたら、大抵の男はコロッと行くやつである。
 まるで合コンに呼んではならないコンプセットみたいな人なのだ、静漓は。

「わからないけれど」
 とにかく、と静漓は『学園』周辺をうろつくバグプロトコル『バグドロイビーコン』を一層戦とユーベルコードに瞳を輝かせる。
 己の内に灯るもの。
 それをほとばしるオーラとして解き放つ。
「ともせ(トモセ)――その魂に宿る灯を」
 激レアアイテムによる防具ボーナスによって、凄まじいステータスアップを果たした静漓のユーベルコードは、尋常んじゃない範囲攻撃となって『バグドロイビーコン』たちを一掃していく。
 それはもう蹂躙というか、掃き掃除みたいなものだった。
 静漓がオーラを発する度に『バグドロイビーコン』はホコリかなにかかというくらいに宙を舞い、ぶっ飛ばされていくのだ。
 次々と落ちていくドロップアイテムやトリリオンを回収するほうが余程掃除らしいとも言えただろう。

「さすが激強アイテム。力が引き出されて、とてつもない威力が出るわね」
「しかも奥ゆかしい!」
「謙虚!」
「一歩下がってアイテムを立てる淑女!」
 ゲームプレイヤーの三人は、静漓に負けを認めるbotみたいになっていた。
 だが、静漓は首を傾げる。
「三人の装備も強いようね、バグが治ってよかった」
 背中から光が満ちるようだった。
 今の今まで静漓のことを合コンに絶対来て欲しくないコンプセットとか思っていたのが恥ずかしい。いや、恥じるしかない。

「サンタうさぎ、おそろいでとても可愛いわ」
 三人は思った。
 一番可愛いのは、静漓だと。
「あと……『ドライ』は血が出てたけど、大丈夫?」
「あ! いや! これは、その、そういうあれではないので! 大丈夫だ!」
 ドバドバ出てるけど、と静漓は首を傾げる。
『ドライ』には刺激が強いのだろう。
 ビキニサンタが三人とメイドサンタが一人。
 この世の絶景である。致し方ない。鼻血だって出るし、出さねば無作法ってもんである。
「そう? なら、お掃除がんばりましょうね」
 そう言って柔らかく笑む表情に四人は、一番強いのはやっぱりこの人だな、と静漓を謎の尊敬の念でもって見やるのだ。

「あ、来年もよろしくな!」
「今年もお世話になりましたから」
「うむ! いつも助けてくれてありがとう!」
「良いお年を迎えられますように」
 そう四人は静漓に頭を下げる。
 そうか、と静漓は思い出す。もう年末。すぐに年始だ。
 彼らの言葉に静漓は頷き、来る年を迎えるためのバグプロトコル大掃除を終えて、カーテシーを優雅に決めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月、本当にご機嫌ダンスしてましてー。まあ、私たちもそれを楽しんでます。
ですが…相手は楽しんでいないようで。
そこへ漆黒風を投げて…ああ、UC効果でゆっくりですねー、相手。
さらに、陰海月がダンスで手(?)が滑って…。ええまあ、すごい威力ですね、あのぬいぐるみ爆発…。
そして…陰海月、戻って来るなら、と投げ始めましたね。それに紛れるように、漆黒風投擲しましょうかー。


陰海月「ぷっきゅ〜」
ぬいぐるみを抱いていたが、手(?)が滑った。
うわー、爆発だーっ!でも、ぬいぐるみは戻ってきた!?
なら、投げちゃうぞー!



 ごきげんなダンスが続いている。
 ゆらゆらと揺れるのはいつものことなのかもしれないが、それでも、そのゆらめきからごきげんな感情が伝わってくるように思えた。
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、『陰海月』が1680万色に輝きながら、ダンスをずっと披露しているのを見て楽しいと思ったのだ。
「きゅっきゅっきゅ」
 クイック、クイック、スロー。
 とは行かないだろうが、それでも揺れる姿は心を癒やすものであった。

「本当にごきげんですねー」
『疾き者』は、それだけ激レアアイテムのぬいぐるみが嬉しかったのだろうと思った。
 まあ、激レアアイテムの性能を一切発揮することがなかったのは、惜しいような気がする。
 だが、ぬいぐるみ型爆弾である以上、リポップすると説明しても『陰海月』は承知しなかっただろう。
 なら、これでよかったのかもしれない。
 幸いにしてバグトリガーを仕掛けていたバグプロトコルは撃破することができたのだ。
 修正パッチアイテムもすでに当てたあとだ。

 あと己たちがしなければならないことは、拠点『学園』周辺のバグプロトコルの一掃だけだ。
「……」
 揺らめくようにして『バグドロイビーコン』たちが現れる。
 1680万色に輝く『陰海月』の姿に惹かれてきたのかもしれない。
 光にたかる羽虫のようでもあったが、今回は都合がいい。
「あの踊りを楽しめないのであれば、来るだけ無駄だと思うんですがねー」
 手にした棒手裏剣を振り返りもせずに投げ放つ。
 その一投は狙い過たずに『バグドロイビーコン』の頭部に突き刺さり、ぐらりと駆体が揺れて崩れ落ちる。
『陰海月』のゆらゆらダンスは、それだけでユーベルコードなのだ。
 彼の踊りを楽しめないものは、その行動速度を減ぜられてしまう。
 そうなっては、己の速度に敵がついてこれるわけもない。

 もとより素早さをこそ信条としているのだ。
 そこに速度が遅延すればどうなるかなど言うまでもない。
「きゅっ!?」
 そして、『陰海月』が共に踊っていたぬいぐるみが、その触腕からスっぽ抜けてしまう。
 くるり、くるりと宙を舞うぬいぐるみ。
 あ、と『疾き者』も思っただろう。
 やけにスローモーションに見えた。

 そして、地面にぬいぐるみが触れた瞬間、吹き荒れるは爆風であった。
 凄まじい爆発。
 いや、強烈な威力。
 炸裂するは激レアアイテムの本領であった。
 漸く真価を発揮することができたのを喜ぶみたいに、ぬいぐるみは『バグドロイビーコン』を容赦なくぶっ飛ばし、一撃で消し飛ばしてしまうのだ。
「ぷきゅ~!?」
 目を白黒させるように『陰海月』が鳴く。
 そして、手元にぬいぐるみが戻ってきているではないか。爆発したんじゃないの!? と驚愕しているが、漸く己たちの説明を理解したようである。

 なら、と『陰海月』も意気揚々とぬいぐるみを投げ放ち続けるのだ。
「ぷっきゅ!」
 これはいい、といわんばかりに投げ放ち爆発を巻き起こすぬいぐるみ。 
 それは『バグドロイビーコン』にとっては悪夢そのものであったことだろう。強烈な爆風の中で『疾き者』は思った。
 フィールドのテクスチャがえぐれるほどの威力。
 これは大掃除が大変そうだ。
「きゅ~!」
「まあ、あの子が楽しそうならいいですかねー。年の瀬は慌ただしいもの。どちらにしたって、こうなるのは運命だったのかもしれませんねー」
 なんて、管理者の雑務がまた一つ増えたのを年末だから、と悟りきった顔でうなずう。
 まあ、終わり良ければ全て良し。
 来年という年がやってくるのだ。
 なら、と『疾き者』たちは巻き起こる爆発の中で、新年を迎えるために今一度バグプロトコルを一層せんと大掃除に励むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロッテ・ヴェイロン
まあね、いろいろな意味でひどい目に遭ったですよ…(ここで衣装を通常状態のに戻した。あと、問題のアイテムはインベントリにしまった)。
つか、あの手のガチャの目玉アイテムって、使う人を選ぶんだなーって思うのですよ(【世界知識・戦闘知識】)。

(で、新たに現れた敵を見て)
――ああ、そうでしたね。こいつらも片付けなきゃでした。では早速UCで巨大化!(なぜか3等身)そのまま一気に【蹂躙】しちゃいましょう!
偽装テクスチャ?まあ、範囲内を【焼却】しちゃえば問題ないってことで(ぇ)(【属性攻撃・全力魔法・零距離射撃・捨て身の一撃・覚悟】)

※アドリブ・連携歓迎



 ひどい目にあった、とシャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)は深い、深いため息を吐き出していた。
「まあね、本当にいろいろな意味でね」
 彼女のため息の理由は、バグトリガー付き激レアアイテムを仕込んだバグプロトコルとの戦いの結末にあった。
 最後にぶっ放した光線銃。
 その一撃がステータスタップで底上げされて、彼女が思う以上に威力が出ていたのだ。
 それはそれは凄まじい一撃だったのだ。
 激烈にして苛烈。
 その余波で防具アイテムのテクスチャ表示が、ちょっと大変なことになったのだ。

 故に今の彼女は通常のふりふりのものであった。
 例の『サンタバニーガール・ビキニエディション』はインベントリに収納ずみだ。
 修正パッチアイテムをあてれば、バグは最早存在しない。
 だが、シャルロッテからすれば、ああいう衣装というのは使う人を選ぶものなのだ。
 確かに。
 似合わないわけではない。
 似合うか似合わないかで言ったら、似合う。似合わないわけがない。 
 だがしかしである。
 どんな世界にも常識ってものがあるのだ。モラルって言ってもいい。
 故にシャルロッテは、いつもの服装のまま、そういうモラルを持って行動する猟兵なのである!

「……」
 そんな彼女の目の前に現れたのは、拠点『学園』周辺をうろついていたバグプロトコル『バグドロイビーコン』たちであった。
 まだバグプロトコルがいたのか、とシャルロッテは思い出す。
「――ああ、そうでしたね。こいつらも片付けなきゃでした」
 そう、今年のことは今年の内に。
 綺麗さっぱりにしてから、新年を迎える。
 それが年末の大掃除。
『学園』付近にはびこるバグプロトコルを放置していては、必ずゲームプレイヤーに害を成すだろう。
 まったくもって百害あって一利なし。
 なら、ここで全て排除しておくべきなのだ。

「では、ちょっと巨大化、いってみますよ!」
 シャルロットテの瞳がユーベルコードにきらめいた瞬間、彼女の体躯が光と共に巨大化していく。
 見上げるほどの巨体。
 だが、その頭身がちょっとおかしかった。
 なんか……頭でっかくね?
 三頭身……?
「このまま一気に蹂躙しちゃいましょう!」
 ずむん、と彼女の巨大化した体躯が足を振り上げる。いや、三頭身なので、微妙に味が短い!
 が! その巨体から繰り出されるキックの一撃はフィールドを偽装テクスチャごとぶっ飛ばし、『バグドロイビーコン』ごと宙へと蹴り上げるのだ。
「さらに、ぱーんち!」
 足も短けりゃ、手も短い!
 だが、そんなの関係ない!
 シャルロッテの巨大化した拳は、蹴り上げた[バグドロイビーコン』を見事に捉え、空中で粉砕してみせたのだ。

「よし、何も問題なしですね。年末年始の忙しい時期にこんなにバグプロトコルが湧いてるんです。全く面倒な連中ですよ」
 だが、シャルロッテは粉砕したバグプロトコルたちから落ちるトリリオンを回収シテ笑む。
「まあね、ちょっと早いけどお年玉ってやつですよね、これは」
 そういうことになるだろう。
 シャルロッテは、ならと年末最後の大掃除に気合を入れ、その巨大なるマスコットキャラめいた頭身でもってバグプロトコルたちを一掃する。
「来年も良い年であればいいですね」
 きっとよい年になる。
 何せ、お年玉のトリリオンも、しっかり手に入れたのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
グラフィックは変わらない……つまり、エイル様への悩殺OKということですか!?
そのまま奪ってしまっても構わないのだろう、ってやつですか!
はっ、受付に突撃すればイケる気がします!!
エイル様と結婚式をあげよ、っていうクエスト無いですかね!?
誰がやべーメイドですかお前もヤバいにしてやろうか!!

とまぁ想いを迸らせたところで
この超高性能な|二丁拳銃《トゥーハンド》
なるほど、殴れということですね?(違います
わかりました
メイドの力お見せしましょう!
【スクロペトゥム・フォルマ】にて突撃しまーす(はぁと)
全て狩り尽くして
エイル様への|手土産《納品》とします
素材置いてけよ!!
出るまで狩るので出なくても問題ないです!



 手にした修正パッチアイテム。
 それは致命的なバグを修正するものであり、バグトリガー付き激レアアイテムを、ただの現環境最強アイテムにするものであった。
 しかし、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)にとって重要なのはそこではなかった。
「グラフィックは変わらない……つまり、『エイル』様への悩殺OKということですか!?」
 どういうことですか!?
 クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは皆、そう思った。
 何をどう解釈したら、そういうことになるのだろうか。
 というか、悩殺って何するつもりなのだろうか、このメイド。

「本当、この人、黙ってたら普通に美人なメイドさんなのにな……」
「喋りだすと残念なことになる人って本当に実在しているんですね」
「悩殺! というのが穏やかではないが!」
「むしろ逆張りすればいけるのでは?」
 そんな好き勝手な言葉を背に受けてなお、ステラはにこりと笑む。
「そのまま奪ってしまっても構わないのだろう? ってやつですか!」
「誰も言ってないよ?」
「はっ、受付に突撃すればイケる気がします!!」
「いや、あそこの施設、馬鹿みたいに硬いから突撃してもダメだと思う」
「『エイル』様と結婚式をあげよっていうクエストないですかね!?」
「話聞いてた!?」
 ステラの暴走具合がヤバい。
 隣に誰かいないと、誰も止められないのだ。
 それくらいにステラのメイド超特急の一直線具合はやばかった。

「やっぱヤバいなこの人」
「誰がヤベーメイドですかお前もヤバいにしてやろうか!!」
 こわ。
「それより、ほらあっち」
『アイン』は冷静だった。
 あっち、と示した先にあったのはバグプロトコル『バグドロイビーコン』たちである。
 彼らは拠点『学園』周辺に点在するバグプロトコルだ。
 これを放置しておけば、ゲームプレイヤーたちに害をなすことは言うまでもない。
 ステラは頷く。
 全て理解したのだ。え、いまので?

「この超高性能な|二丁拳銃《トゥーハンド》。つまり、なるほど、殴れということですね?」
「違うけど? いや、広義では合ってるけど、合っていなよ!?」
「構いません。どちらにせよ、バグプロトコルを『学園』周辺から一層すれば、それだけ『エイル』様もフリーになる、ということ。であるのならば!」
 わっ狩りました!とステラの瞳がユーベルコードに輝く。
 気合がヤバい。
 ステラを誰も止めない。止められない。誰か来てー! 勇者とか!

「メイドの力お見せしましょう!」
 ステラが構えた激レアアイテム『ダブルセイント・ガンシューター』の馬鹿みたいな性能が炸裂する!
 更に彼女のユーベルコードによって、銃撃、体術、銃を使った打撃を駆使した超近接戦闘の型によって、爆発的な攻撃力を発揮し、『バグドロイビーコン』たちが何か行動を起こそうとした瞬間を潰すのだ。
「最早、何もさせはいたしません。どんな行動であっても、瞬時にイニシアチブを取って潰してしまえば、何もできないのと同義」
 あまりの速射性能に弾丸が1発分しか聞こえない。
 それほどまでの速射性能なのだ。
 打ち込まれた弾丸は複数発。いや、数えるのもできないほどの集弾性能によって『バグドロイビーコン』の上半身が消し飛んでいた。

「……えっぐ」
「怖いです」
「ヤバいな!」
「ぶっ壊れ性能でナーフまったなしね」
 クラン『憂国学徒兵』のゲームプレイヤーたちは引いた。めちゃくちゃ引いた。
 確かに激レアアイテムの性能はヤバい。
 だが、それ以上にやばかったのは。

「全て狩り尽くして、『エイル』様への|手土産《納品》とします。あ、結納金はまた別ですから、素材おいてけよ!!」
 首狩族ならぬ素材狩り族と化したステラは、それはもう悪鬼羅刹の如き戦いぶりで『学園』周辺のバグプロトコルを狩りに狩り尽くし、焦土と化すのだ。
 それは大掃除っていうメイドの領分を超えた凄まじい狩り方。
 廃人ゲームプレイヤーたちが引くって余程である。
 山程素材を抱えたステラは、ホクホク顔で『学園』を訪れて言うだろう。

「本年度もお勤め大変ご立派でした。来年度もよろしくお願い致します。さあ、これが納品物です。これだけあれば、充分ですよね」
 な、何が?
 そりゃ、諸々である!
 新年を前にして受付をしていたNPC『エイル』は大量の素材の仕分けに年末進行の本領を見て、悲鳴を上げるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月30日


挿絵イラスト