闇の際に日は昇る
真宮・響
神城麗奈(f44908)と同行ノベル希望
麗奈本人には絶対言えないが、麗奈とはじめて出会ったのはすでに死体になってた。瞬の保護にやっとで弔いもできなくてね。律のように魂人として還ってくるとはね。うん、瞬に似て頭がよくて冷静な人だった。瞬は出会った時からなんでも自分でできる子でね。麗奈の教育が行き届いてたんだろう。奏のやんちゃに手を焼いた身としてはコツを伝授してもらいたいところだ。
年上だけど、呼び捨てでいいと言ってくれてね。家族が増えた分食器が足りなくなったので麗奈と買いに来た。母親同士、掃除の苦労や洗濯の大変さや家族の毎日の食事つくりの話がはずむはずむ。麗奈は私よりも家事のコツを心得ていてね。新しい料理のレシピも教えてもらってる。
店でメンチカツとシベリアを買って公園でベンチでならんで食べる。まあ、アタシは力で突っ込むタイプなので知性的な麗奈がいてくれると助かる。ああ、お互い子供は一人前だが母親としてはまだまだまもってやりたいよねえ。まだ小さい子二人もいるし。
ああ、これから時間はたっぷりある。瞬も二度と麗奈と離れたくないみたいだし。アタシも麗奈を守るよ。これから助けてもらうことたくさんあるからよろしく頼むよ。
追加のホットコーヒー飲みながら盟友と楽しくすごすよ。アタシも、肩を並べるに値する人と出会えて嬉しいよ。
神城・麗奈
真宮響(f00434)と同行ノベル希望
まあ、私が最後にみたのは呆然とした血まみれの6歳の瞬だった。不意に目を覚まして瞬に再会したら21歳になっていて見違える様に立派になって可愛いお嫁さんまで貰っていた。まあ、成長過程をみれないのは残念だったけど、子供が4人に増えて響という盟友ができた。奇跡のようだよ。
厳しくしすぎたかもしれないが、瞬には自力で生きれる様に躾けたからね。元々戦士の里にいたし瞬の種族の関係もあったしね。でもここまでたくましくなったのは響が鍛えてくれたからかと。
ああ、主婦同士だからねえ。掃除洗濯料理の話がすごく盛り上がる。食器選ぶだけでも響となら楽しい。使い心地とかは私はアドバイスできるけど買うの決めるのは響だからね。私は力仕事はさっぱりだから響がいつも先に立ってくれてたすかるよ。
メンチカツとシベリアを買って響と公園のベンチに座って食べる。ここまで瞬を育ててくれてありがとう。これからは同じ母親として響の足りないところを補わせてくれ。
律のことは聞いているよ。響も辛いおもいしたんだね。そうだね、これから瞬との時間はたっぷりある。教えてやりたいこともあるし。
盟友か。一流の武人である響に認めてもらえて誇らしい気分だ。追加のホットコーヒーを飲みながら盟友とゆっくり過ごす。これからだね。わたしたちは。
●同じくするもの
他愛のない日常というのは、穏やかなる時間の事を言うのだろう。
争いばかりの日々の中で、安らぎを感じたのはあの子のぬくもりを腕の中に感じていたときだけだったと神城・麗奈(天籟の氷華・f44908)は、幻朧桜の花弁が散るサクラミラージュの公園のベンチにて、そう思い出していた。
親子の別離は、酷く凄惨なものであった。
それは、この世界とは異なる世界での出来事である。
忘れることはできないが、忘れてもいいことだと思う。
辛い思い出を抱えて生きる必要なんてない。
少なくとも、我が子にはそうであって欲しいと思うのは、親心というものだろう。
忘れても良かったのに。
厳しく接したのは、そうしなければ常闇の世界では生きていけないからだ。
強くなければ、ただ生きることもままならない。
他の世界でも同じだとは思うが、しかし、それでも人の命は一山幾らにもならないのが、あの世界だった。
死すのだとしても、気がかりだったのは、血に塗れたあの子の顔ばかりであった。
「まあ、奇蹟だよね」
「何がだい?」
「この出会いが、邂逅が」
そう呟いた麗奈の言葉に同じく公園のベンチに腰掛けて、メンチカツにかぶりついていた真宮・響(赫灼の炎・f00434)は首を傾げていた。
端から見れば、二人は仲の良い友人同士に見えていただろう。
事実そうである。
響にとって麗奈は良き友人である。
同時に義理の息子の母親でもあるのだ。そう、奇妙なことに、めぐり合わせで彼女は死した後、魂人となって蘇ったのだ。
義理の息子からすれば、死んだはずの母親と再び出会えたことは代えがたい喜びだったことだろう。
「必然とも言うのんじゃあないのかい?」
「そういうもの?」
「そのほうがずっといい。不幸せになるために人間が生まれてきたんじゃないんだって実感できる」
響は実のところ麗奈のことを魂人として復活する前から知っていた。
いや、言えることではない。
彼女の死した姿を響は、見ていた。
義理の息子の保護に手一杯だったと言い訳することもできる。
だが、死した骸を弔うことができなかったのは、響からすれば悔やまれることである。
人は死ぬ。
どうあっても死んでしまう。
生きたのだから、死ぬのは当然だと言えるだろう。
どんな生命にだって終わりは来る。
死という終着点が来る。
けれど、弔いはまだ生きているものたちの死者への手向けだ。それができなかったことは、今生きている響にとっては後悔の一つだったのだ。
己の夫のように、彼女は魂人として戻ってきてくれた。
「そうは思わないかい、麗奈さん」
「呼び捨てでいいと言ったでしょう? 響」
「ああ、すまないね、麗奈。でもよかったのかい? 食器はあれで」
「買ってくれるのは響でしょう? そりゃあ、使い勝手のよいものがいいけれど」
「いいじゃないか。だって、新しい料理のレシピだって教えてもらえるんだから」
二人は歳近いこともあってか、話が合う。
平和な世界に生きるからこそ、多くのことは摩耗していくものとして捉えることができる。
けれど、家族のためとなるのならば別だ。
掃除や洗濯といった家事炊事は主婦にとってはまた別の戦いであるといえるだろう。
「これからは同じ母親として足りないところを補わせてもらえたらって思っているんだから」
「ああ、これから時間はたっぷりある。それにさ、あの子も二度と麗奈から離れたくないみたいだよ」
「大きくなったのにね。あんなに可愛いお嫁さんをもらっているのに」
「母親としては嬉しい言葉だけれどね。でも、あの子がそう思える、甘えられるっていうのは、アタシにとっては嬉しいことなんだ。あの子は頭が良いし、あの頃からずっとなんでも自分で、できる子だったんだよ。手を焼いたことなんて一度もない。そういう意味では……うちの子は大変だった」
「ふふふ、あの子が?」
「そう、大変だった。本当に。コツを教えてもらいたい」
「充分によいお嫁さんに育てているじゃあないか」
「そうかねぇ……まあ、あの子達もまだまだこれからだ。アタシも麗奈を守るつもりだけれど、これから助けてもらうこともたくさんあると思う」
「ええ、まずは家事からね」
その言葉に響は笑うしかなかった。
世界の危機だとか、そんなこととは縁遠い戦いの日々。
主婦の戦場を共にする事のできる盟友を得られたことが誇らしくも嬉しい。
「それに楽しいこともね」
「ええ、これからだね。わたしたちは」
互いに微笑む。
それじゃあ、と響が立ち上がる。
「ひとまずは、一服しよう。コーヒーでいいかい?」
「それって、このしべりあ? という食べ物に合うんでしょう?」
「勿論さ。保証する。きっと気にいるよ」
手を取る。
引き上げるのではなく、引き上げられるのでもなく。
ただ対等な友人として肩を並べることができるこの喜びを二人は琥珀色のコーヒーに溶かすのだった――。
成功
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