櫻大戰のあとしまつ〜汝、誤報の流布を止めろ〜
「ざっけんなあぁぁぁぁぁ!!」
ヒーローズアースの広大な宇宙のどこかに「異世界へと渡る為の|超機械《オーパーツ》」が存在するという噂を聞きつけ、ラグランジュポイントから果てのない旅へ出ていたエル・ティグレは手に持っていた新聞をビリビリに破り捨てていた。
「誰がいつ恐喝だの脅迫だのしたんだ、どいつもこいつも嘘っぱちじゃねぇか……!」
その紙面にはエルに対する事実無根のスキャンダルが書かれていた。
確かにあわよくばこの宇宙を制服してやろうという気概はある。確かにあるが……この記事に書いてあるようなみみっちい真似は断固としてやった覚えがない。
いったいどこの馬鹿がアタシを騙ってこんなちっせぇ悪事を重ねてんのか、と地面に落ちた新聞の切れ端を何度も踏みつける。
「おい、あいつは……!」
「間違いない、エル・ティグレだ!」
衝動と怒りによる荒い息を繰り返すエルの姿に気づいた群衆がざわめき出す。
「こっからさっさと出ていけ、犯罪者が!」
「おまわりさんあいつです! また何かする前に捕まえてください!」
「誰か! ヒーローを呼んでくれ!」
「おい嘘だろ、こんな二流三流の新聞もどきを信じるなんて……」
何者から投げつけられた飲み物の入ったタンブラーが跳ねて、エルの足元を転がっていく。
わなわなと震え出したエルはどこからともなく取り出したサッカーボールを群衆へ突きつけた。
「お前達! このアタシが真っ白なこと、サッカーで証明してやるよ!!」
「うるせぇ、肌が真っ黒なくせに!」
「そこは今関係ねぇだろ!?」
「これらの新聞は全てヒーローズアースのラグランジュポイント周辺で流通しているゴシップ紙です。それらが先日ほぼ一斉にエルさんに関する記事を出したんですが……どれもこれもエルさんに対するヘイトスピーチとなっております」
ルウ・アイゼルネ(滑り込む仲介役・f11945)はそう言って猟兵達が囲むテーブルの中央に大量の新聞を置く。その中身を開けばエルが一般市民に対して脅迫や恐喝を行った、などの記事が明らかに隠し撮りだと分かる画角のエルの写真付きで大きく掲載されていた。
「どの会社も共通しているのは自社の記者が取材して執筆した記事ではなく『外部のジャーナリストの寄稿』である、という点です。皆様を集める前にその素性について問い詰めてきたのですが寄稿者のプライバシーを守るだの何だので逃げられました。他人のプライバシーを踏み躙って食い物にしていている連中が何を言ってるんだかと思いましたが」
苦々しい表情で吐き捨てつつ、ルウは肩をすくめる。
「エルさんは何だかんだ言っても立派なフォーミュラ様なのでその辺のオブリビオンが束になってかかってきても軽く一掃できるのですが……この悪い噂を放置していれば、間に受けてしまったご当地のヒーローと衝突してしまう可能性があります」
「正義の反対は別の正義」なんて言葉もあるが、素性不明のジャーナリストの口車に乗せられて不要な戦いが起きてしまうことはなるべく避けたいところである。
「……ということで、皆様にはエルさんの悪評がどこから発生しているのかを突き止めていただきたいです。その道中で事実無根の記事を信じてしまった人々やヒーロー、混乱に乗じて動き出したオブリビオンの妨害に遭うこともあるでしょうが、エルさんは全てサッカーで解決しようとします」
自分に降りかかってきた火の粉は全部シュートやドリブルでぶっ飛ばす。それがサッカー・フォーミュラたるエル・ティグレの流儀。
「その流儀に共感して|共闘《サッカー》するも良し、別行動を取って広く情報を集めるも良し、どのように対処するかはお任せいたします。……それでは皆様、この騒動の収拾をつけに参りましょう!」
平岡祐樹
もし間に合っていたら「さっきまでオラオラ系だったのに猟兵達が来た瞬間に姿勢を正して丁寧語をしゃべり始めるエルに目を白黒させるイザナミ」というオープニングを計画してました。無念。
お疲れ様です、平岡祐樹です。
今案件では全章通じて「サッカー・フォーミュラ」エル・ティグレが登場します。
共闘することをプレイング内で明記された場合、エルは猟兵が発動したユーベルコードと同じ属性のバトル・オブ・オリンピアで披露したユーベルコード(タグ「サッカー・フォーミュラ『エル・ティグレ』」参照のこと)を必ず使用します。
またエル・ティグレはアスリートアースでの戦いに負けたことで、猟兵達に対してはものすごい丁寧語で接してきます。
逆に別行動をする場合はそのことを明記してください。
以上の情報を元に、皆様プレイングをお願いいたします。
第1章 集団戦
『善意に辟易する愚民衆』
|
POW : 我々は守られるべき一般市民だぞ
自身が【敵意】を感じると、レベル×1体の【警察もしくは治安を守る者】が召喚される。警察もしくは治安を守る者は敵意を与えた対象を追跡し、攻撃する。
SPD : おまわりさん!あいつらです
戦闘力のない【善意に辟易する愚民が警察等の治安を守る者】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【自身が召喚した警察等が上層部の支援や圧力】によって武器や防具がパワーアップする。
WIZ : ば、化け物だ!早く捕まえてください
【警察及び治安を守る者を召喚し彼らの攻撃】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
イラスト:もりさわともひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
リダン・ムグルエギ
お困りのようね!
アスリートには無縁なタイプの手合いだし対処に困るのも理解できるわ
――試合の場を整えるのは任せて?ティグレさん
不満あるヒト、是非ともコレを着て頂戴!
というわけで持ってきました。我が社のロゴ入りユニフォーム
精神的に余裕を持って言いくるめ、不満あるヒトにコレを着せることで
彼らをコードの力で強化するの
「戦闘力のない」コトを前提としたコードを無効化した上で
強化された彼らに「いい試合」をしてもらい
理解し合ってもらおうって寸法よ
会場・審判さんとかは現地のコネや売上金を有効活用
宴会の準備取引は任せろー
試合を撮影できたらその時点でアタシの業務的には勝ちね
で、よければその噂の出所…教えてくれない?
「お困りのようね!」
威勢のいい声に、ヒーローが来たのだと期待に輝いた目を人々が一斉に振り返る。
その先には腰に手を当てて堂々と仁王立ちするリダン・ムグルエギ(宇宙山羊のデザイナー・f03694)の姿があった。
「あんたは……猟兵だろ! どっかの雑誌で見たことあるぞ!」
知らない相手だが、少なくともエルの加勢ではないと判断した人々が盛り上がる一方で、エルは顔を引き攣らせていた。
猟兵が大々的に取り上げられたことのあるヒーローズアースの人々と違い、エルはリダンとは全くの初対面。しかし敗者の掟として、たとえ初対面の相手だろうと遜る必要があるのだ。
どう対処すべきか迷っている中、リダンは人々の声援を受けながらエルに近付いてくる。
「は、はじめまして猟兵さん! エル・ティグレと言いますっ! よろしくお願いします!」
とりあえずはまず挨拶だと、エルは直立してから頭を下げる。自ら近づいてきたその肩に軽く触れてからリダンは耳元で囁いた。
「アスリートには無縁なタイプの手合いだし対処に困るのも理解できるわ――試合の場を整えるのは任せて? ティグレさん」
そして不意に人々に振り返り、右手を挙げた。
「不満あるヒト、是非ともコレを着て頂戴!」
その言葉に反応するように、GOATiaヒーローズアース支社の従業員がGOATiaのロゴが入ったユニフォームを両腕いっぱいに抱えてやってきた。
「サッカーの試合時間分は下手な猟兵よりも強く速く動けるコードを編み込んだウチの新商品よ!」
騒つく人々に向けて余裕たっぷりのリダンはさらに畳み掛ける。
「この子がサッカーで戦って負けたら改心するというなら、それに乗っかるべきよ! サッカーに自信がある子はそれを着て、そのまま倒してもいいし、ヒーローが来るまでの時間を稼ぐのもいいと思うわ!」
「ちょ、ちょっと待ってください!?」
間に入ってくれたかと思えばどんどん煽るリダンの姿にエルは目を白黒させる。リダンは再びエルの耳元に口を寄せた。
「不満あるヒトにコレを着せることで彼らをコードの力で強化するの。『戦闘力のない』コトを前提としたコードを無効化した上で、強化された彼らに『いい試合』をしてもらい、理解し合ってもらおうって寸法よ」
ユニフォームを手に取ってまじまじと眺める人々には見えないようにほくそ笑んだリダンは真顔に戻ると再び人々に向き直る。
「会場・審判さんとかは現地のコネや売上金を使って確保しているわ。あと、試合が終わった後の宴会の準備取引は任せろー」
「あの、このままだとあなたが大損じゃないですか……? あのユニフォームも売らずにあげてしまうんですよね?」
いくらユーベルコードで強化された猟兵並みに強化された一般人相手でも遅れは取らないと自負するエルは焦った様子でリダンに話しかける。
「試合を撮影できたらその時点でアタシの業務的には勝ちね」
しかし界外支店長であるリダンが何のプランも練らずにこんな大盤振る舞いをするわけがなかった。
「今世間を賑わせている話題の人物が出るなんて宣伝文句がついたなら、生放送にしろ動画にしろ間違いなく伸びるわ。そうしたら一定の広告料は期待できるし、ステルスマーケティングでウチの新商品の宣伝になる。それを見た視聴者がサイトで商品をポチッとしてくれたら最高。勝つことが分かってる先行投資に賭けない商売人はいないわよ。……でも、あっさり負けないでね?」
そうプレッシャーを軽くかけてからリダンは野次馬に声をかける。
「で、よければあの子の噂の出所……教えてくれない?」
「噂も何も、ネットの記事でいっぱい出てきてますよ」
市民はそう言ってスマートフォンで検索サイトのニュース欄を見せる。そこにはエルの悪業を記した記事の見出しが大量に羅列されていたが、どれもこれもルウの言う通りのゴシップ誌由来の物。
一般メディアの中に紛れ込んでさもゴシップ誌じゃないように振る舞う様は、ユニフォームを着てフォーミュラに立ち向かおうとする一般人に少しだけ重なって見えた。
大成功
🔵🔵🔵
田丸・多摩
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。
芸能事務所の事務員。
いかにもビジネスウーマン然とした、礼儀正しい口調で人と接する。大抵のことはそつなくこなすが、激辛好きで味覚が終わっているため料理だけは下手。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。
戦闘になると急に元ヤンめいた荒っぽい口調になり、態度もふてぶてしくなる。
真紅のフルカウルスポーツバイク『レッドサビナ350』を乗機兼凶器として使用。喧嘩殺法じみた格闘攻撃も使い、場合によってはサイキッカー由来の念力攻撃を使うこともある。
台詞例
「我々が来たからには、もう安心ですよ。ふふふ♪」
「上等だよ……掛かってきな!」
時にインタビュー記事やコラム執筆などの仕事をくれ、時に知られたくない事柄を引っ張り出して公に晒す……ゴシップ誌を扱う出版社と芸能事務所は切っても切れない仲である。
「でも今回の件はちょっとおイタが過ぎましたね」
ラグランジュポイントの一角を駆ける宇宙バイクに跨っていた田丸・多摩(謎の裏方お姐さん・f09034)は、とある一角に差し掛かったところでブレーキをかける。
ヘルメットを外し、自分の体よりもはるかに大きい建造物を見上げる。その前には入居している会社の名前が記されており、その半分がラグランジュポイントで大きなシェアを占める出版社の物だった。
釣り針入りの餌と知らずに何も考えずに食いついたのだろうが、それによって生じた傷口は放置していれば世界に混乱を巻き起こす。その落とし前をつけさせねばならなかった。
建物の表玄関から眼鏡の男性が出てくる。多摩は手元の画面に映していた写真と男性を見比べてから駆け寄った。
「すみません、週刊オータムマンの記者さんですよね?」
「ん? なんだ?」
取材相手にアポなしで突撃することに慣れていても、されることにはなれていない様子の記者は多摩に不審そうな目を向ける。
「先日御社が報道したエル・ティグレ氏の記事についてお聞き」
「俺は知らないな、他をあたっ!?」
多摩を適当にあしらって立ち去ろうとした記者が突然背を伸ばし、体を細かく震わせてから倒れる。
「知らないわけがねぇよな、グレイ|編集長《・・・》」
先程まで億尾にも出していなかった抜き身の刃のような気配、そして自分の名前と素性を知られていることに、記者―――グレイは倒れ伏したまま目を見開く。
「あの記事のせいでこっちは大変なことになってんだよ、このラグランジュポイントがめちゃくちゃになったらどう落とし前つけてくれんだ? ああ?」
ヒーローズアースでどれだけ暴れようと、UDCアースの事務所に迷惑はかからない。普段の勤務の鬱憤を八つ当たりの如くぶつけながら多摩はグレイの顔を覗き込んで問い詰める。
そんなこと知らない……とは麻痺した口から伝えることは出来ない。何より、あの記事が原因でラグランジュポイントが危機に晒されるという提示にグレイの頭は混乱していた。
「つけられねぇよな、荒らすだけ荒らして間違ってたらお詫び記事をページの隅に適当に乗っけて素知らぬ顔をしてるてめぇらじゃ。……あの記事を持ってきたジャーナリストの名前を大人しく教えやがれ。代わりに何とかしてくるからよ」
成功
🔵🔵🔴
川上・和
潜航で新聞社の床下に潜って情報を持ってきているというフリーランスの記者が来るのを待つわ。
来たらそのまま地面の下を泳いで付いていって相手の居場所を特定するわ。
こういった潜入・偵察は軍にいた頃から得意だから。
この手の記者は記事を売って金を稼いでるから必ずまた来るはず。
相手の正体と居場所さえ見つけてしまえば後でいくらでも料理できるから。
「知ってるか、オータムマンの編集長が猟兵に〆られたって」
「マジかよ。まぁ、最近スクープを取りまくってて調子に乗ってた節があるからいい気味だな」
商売敵に起きたアクシデントを笑う競合他社の記者達の会話を、川上・和(義勇兵・f40601)は薄い床の中に埋まって聞いていた。
普通なら人が床に沈むことなんてありえない。しかし衣食住に不自由しない、という売り文句に惹かれ、どんな材質の物だろうと潜れるように体を改造された和にとってはお茶の子さいさいであった。
「にしても、あの……エル・ティグレだったか? 猟兵と一緒に侵略者? と戦ってたからイイ奴だと思ってたらとんだ悪党だったとはな」
「そうだな、あのフリーランス……とんでもないスクープを持ってきてくれたもんだ。他のところにも別の情報を売り込んでたのは気に食わねぇが」
「だな。ウチの独占で連載に出来ればもっと大売れだったろうに」
「こんちはー」
扉が開かれる音と共に挨拶の声が響く。すると椅子のキャスターが動く音がした。どうやら話をしていた記者達が立ち上がったらしい。
「これはこれはファレルさん、お疲れ様です!」
「またあの女の続報ですか?」
女、とぼやかしているが十中八九エル・ティグレのことだろう。どうやら今回の諸悪の根源たるジャーナリストの名前は「ファレル」というらしい。この手の記者は記事を売ることで日々の生活費を稼いでるから必ずまた来るはず、という読みは当たったようだ。
「ああ、フットサルに乱入してプレーしていた一般人を吹っ飛ばしまくった様子を撮ってきたよ」
「暴力事件じゃないですか!」
記者達の声色が変わる中、鞄が開かれて中に入れられていた書類が出される音が頭上から響いてくる。
競り合いでマッチした相手を倒してしまったり、シュートされた球をブロックしようとしてその球威に押し負けて吹っ飛ばされるのはサッカーで普通に起こり得る行為だ。
しかし状況や背景を排除して悪意を持った切り取り方をすれば、いくらでも人を貶める内容に変えることが出来てしまう。
本来なら複数人から事情を聴いて、一方向からの意見だけで物事を判断しないように努めるべきなのだろうが……膨大な売り上げ額とアクセス回数、正義の拳を振るう快感の前に倫理観などゴミ箱に捨てて、頭から受け入れて糾弾しているのがこのゴシップ誌の編集部の現状なのだろう。
「これで原稿は全部だ、なんか落丁とかないかな?」
「ええ、もちろん! 原稿料は先日の口座に振り込めばいいですよね?」
「ああ、それじゃあまたいいネタを捕まえたら来るよ。じゃ」
「お待ちしております!」
さっきまで不満をタラタラと流していた人と同じとは思えない愛想の良さで記者達はファレルを見送る。和は記者達のデスクの下からエレベータホールへ平泳ぎで移動を開始した。
観葉植物の影に隠れるように頭だけ床から出す。ファレルはエレベータの呼び出しボタンを押して、手元のスマートフォンを弄っていた。変なところから監視されているとは心にも思っていない様子だ。
しかしここでは襲い掛からない。和はファレルが乗ったエレベーターが下り始めたのを見届けてから壁の中を直滑降してその後を追う。
急いては事を仕損じる。相手の正体と居場所さえ見つけてしまえば後でいくらでも料理できる。
まずは退路を完全に断ってしまうことが大事だという海軍時代の上官の教えを胸に、和はファレルの行動範囲をどんどん絞っていった。
大成功
🔵🔵🔵
佐藤・和鏡子
デマの発信源の記者がファレルという女性のフリーランス記者で定期的にネタを売りに来ている、という所までは掴めたので新聞社の前で張り込んで彼女が来るのを待って診断で彼女の個人情報を読み取ります。
診断なら話しかけなくても視界に入れさえすれば大丈夫ですから。
救急車や普段のセーラー服にスクール水着と看護帽は目立つので普通の私服を着て現場には電車や歩きで来て救急車は使わないようにします。
デマの発信源が「ファレル」というフリーランスの記者で、現在も定期的にエル・ティグレに関するネタを売りに来ている、という所まで掴めた猟兵達は各々で実際に記事として出した出版社や新聞社への張り込みを開始する。
佐藤・和鏡子(リトルナース・f12005)もまた、スマートフォンを弄りながら新聞社の近くで待ち構えていた。
救急車がビジネス街に現れること自体はおかしなことではない。しかし病院や消防署に行くことなくひたすら特定の個人を追いかけ続けているというのは怪しんでくださいと言っているようなものだ。
故に今回はいつものセーラー服にスクール水着と看護帽といった装いから普段使いの私服に変え、ここまで徒歩と電車を組み合わせて訪れ、誰かと待ち合わせをしているかのように振る舞っていた。
視線を画面から上に向ける。すると赤い尻尾を機嫌よさげに左右に揺らすファレルが雑居ビルの中から出てきていた。
「へっへっへ、数字は正義だね。ちょっと煽ってやったくらいでここまでいくなんて、ほんとボロい商売だね」
そう呟くファレルのポケットの中身が震え出す。
「はいお疲れ様ですファレルです、どうかしました? エル・ティグレの続報なら……え、違う?」
エル・ティグレ関連の連絡ではなかったようで、何世代も前のスマートフォンを耳に当てたファレルはあからさまに残念そうに声音を下げた。
「ならなんです? ……ああ、あれですか。確かこの間自殺未遂をして搬送されたとか」
自殺未遂、という言葉を検索欄に乗せる。すると週刊誌で一般人との熱愛報道をスクープされ、所属チームから謹慎処分を受けた男性ヒーローが自殺未遂をして搬送されたという記事が一番上に出てきた。
「それがどうかしました?」
鼻で笑ったファレルは電話相手の言葉に訝しげに目を細める。
「反論記事が出てきたぁ? ……知りませんねそんなの。……もしたとえ付き合ってなかったとしても、その日に初めて会った相手だったとしても、女性と会っていたという事実に変わりはないわけで。翌日記憶に残らないレベルで酒でも引っ掛けて勢いでデリヘル嬢でも呼んじゃったってことでも、どれにしても内規違反でアウトですよ。だからチームから謹慎処分を食らってるわけでしょう?」
そしてスマートフォンを持ってない掌の親指と中指を音を立てるように何度も合わせた。
「どうせファンガールが推しを擁護したいがあまりに勢いででっち上げた記事でしょう、適当にあしらって堂々としてればいいんですよ。……はい、はい! そうですそうです。それでいいんです。……とはいえ亀のように黙り込んでいるのもシャクなので、件の女性が何者か調べて、分かったらまたお渡ししますよ。ええ、その時はまたお願いしますー、はい、ではー」
そう言って電話を切ったファレルはずっと堪えていた物を爆発させたかのように大声で笑い出した。
「いやー、自分で考えないで何でも鵜呑みにする馬鹿どもの相手は楽ですねぇ。|どっちも僕が書いた《・・・・・・・・・》記事だっていうのに」
さてさてどんなことを言ってやろうかな、と嬉々として歩くファレルの後ろ姿を和鏡子はじっと見つめる。【診断】なら話しかけなくても視界に入れさえすればいいのだから。
「そうですか、最初から全部でっち上げですか……」
件の記事の真相をも開示してしまった和鏡子はスマートフォンを握る手の力を思わず強めてしまった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『扇動記者・ファレル』
|
POW : フェイクニュースメーカー
【対象を悪と断じる嘘の中傷記事を信じた民衆】から【暴言や陰口、投石など】を放ち、【精神的ダメージや疎外感、虚無感】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ゴートリック・ゴシップ
【触れた人間が敵味方を認識できなくなる記事】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ : マスコンダクター 65
【ヒーローズアースでの対象の社会的地位失墜】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【嘘情報で民衆を洗脳し、対象を攻撃する暴徒】に変化させ、殺傷力を増す。
イラスト:いぬひろ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「リダン・ムグルエギ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「よぉ、記者さんよぉ……!」
ファレルの前に髪を逆立てたエルが立ち塞がる。
「おやおや、暴れん坊のフォーミュラさんじゃないですか。しがないフリーランスの記者の僕に何の用ですか?」
「すっとぼけてんじゃねぇ! お前のせいでアタシは酷い目にあってんだ、この借りワンサイドゲームにして返してやる!」
「おお怖い怖い、あの週刊誌の記事の通りだ。どなたかー、このひ弱な僕を助けてくださーい」
ファレルの呼びかけに答えるように四方八方からエルに不信感を抱く人々が集まる。その中にはヒーローや警官の姿もあった。
「どいつもこいつも簡単に踊らされやがって……! でもサッカーをやればこいつの記事が嘘っぱちだって分かんだろ! 全員まとめてかかってこい!!」
佐藤・和鏡子
サッカー場の電光掲示板に診断で読み出したファレルの正体を流して彼女がデタラメを垂れ流していた事を群集の皆さんに教えようと思います。
これで彼らが帰ってくれれば良いのですが。
もし、帰らずにファレルと一緒に向かってきたら彼女と同罪と見なして対処するだけですが、戦う人数が少ないにこした事は無いですから。
ハッキングで電光掲示板のシステムを乗っ取って単に文字だけではなく、画像や音声付きで流そうと思います。
情報は武器になりますが、それが自分に向けられた事は今まで無かったみたいですね。
エルとファレル達が睨み合いをする通りと交差する道に一台の救急車が停車し、運転席から仕事着の和鏡子が降りて声をかける。
「皆さん、スタジアムにお連れ致します。車内の空いてる座席にお乗りください」
「はっ、わざわざあちらさんのホームに行く気なんて更々ありませんね。どうせ何か僕達が不利になるような仕掛けでも仕込んでいるんでしょう?」
ファレルの指摘に周囲の人々も同調するように非難の声を上げる。するとエルは足で踏んでいたサッカーボールを蹴り上げて手でキャッチした。
「心配ありません。サッカーは野球と違ってちゃんとしたスタジアムじゃなくても……このような街中でも出来るスポーツですから!」
「……分かりました」
一目で面識のない和鏡子を猟兵だと見抜いたエルの敬語に、大人しく引き下がる。
ちなみにファレルの不安通り仕込んではいた。だがリカバリーは効くどころかもっと大々的に出来るかもしれない、と気を取り直す。一方で和鏡子からファレルに視線を戻したエルは怒りと憎しみを込めた声音で語り掛けた。
「でもGOATiaさんの特別なユニフォームはないから下手すりゃ骨折するかもなファレルさんよぉ? まぁその時はあの救急車で病院に担ぎ込んでもらいな!」
「その時は暴行の現行犯で逮捕してもらいましょう。この時は上手く逃げ切ったようですが」
そう言ってファレルは肩かけ鞄から取り出した原稿を高々とばらまく。風に乗って和鏡子の手元まで飛んできたそれにはエルが「フットサルの試合に乱入して、プレイヤーを負傷させた」という内容が記されていた。
「なんてやつだ!」
「許せねぇな!」
群衆から憤慨の声が上がり、和鏡子の心の内にもエルに対する不信感が過る。しかし【診断】で見てしまったファレルの裏側に関する知見がそれをスルーさせた。
和鏡子が原稿を両手で握り潰すと救急車に戻り、中に置いていたUSBメモリを取り出す。そして救急車のカーナビに差し込み、それを起点として保存していた映像データを一斉に送信した。すると街のあちこちにあるあらゆるビジョンに砂嵐が走り、別の映像が流れだした。
『この髪型……この間ひと暴れしてたエルなんちゃらに似てるわね。上手く加工すればそれっぽく見せられるかも。……あの変な刺青を作るのはめんどそうだけど』
「誰が変な刺青だゴラァ!?」
『競り合いで負けたところは撮れたから……負けた方が試合後に骨折してたことにしましょう。試合の中継を見ている人はいてもその後の一般人の動向まで知ってる人はそうそういないしね』
『この時の写真と、この写真を合わせたら……女性を部屋に招き入れるヒーローの図の完成。恋愛禁止なんて変な掟を作ってるから僕みたいな奴に食い物にされちゃうのよ』
『銀行強盗の覆面をちょちょいと弄れば……お祭りのために自分の仮面を作らなきゃこんなことにも使われなかっただろうに』
『いやー、自分で考えないで何でも鵜呑みにする馬鹿どもの相手は楽ですねぇ。どっちも僕が書いた記事だっていうのに』
「何、何よこれ!」
ファレルの懐にあるスマートフォンがけたたましく震え出す。しかしそれを取ることなく、ファレルは顔を引きつらせながら周囲のビジョンをただただ見回すだけ。
「情報は武器になりますが、それが自分に向けられた事は今まで無かったみたいですね」
今ならAIによる合成映像や音声を使って作られたフェイクニュースをインターネットに流して捏造することが容易に出来てしまう。それを声高々に訴えればまだ、周囲の人々を誤魔化すことは出来ただろうに。
「おい、どういうことだあんた!」
「この記事も同じでっち上げだったりしねぇだろうな!」
サッカーどころじゃなくなった群衆に取り囲まれ、ファレルは顔を引きつらせて首を振る。
「違う、違うよ! 僕の記事はちゃんとした取材の元に書いたんだから!」
「ちゃんと取材してんなら……その大きな鞄にその取材の内容が書かれたメモ帳やらノートやら入れてるよな、ファレルさんよぉ。記事だけしか入ってないなんて……言わねぇよな?」
エルの指摘を聞いたせっかちな男がファレルの鞄を掴んで開けようとする。しかしファレルは素早く抱え込んで避けると大声で叫んだ。
「誰でもいいからとにかく、あのサッカーしか能がない暴力女を止めなさいよ!」
大成功
🔵🔵🔵
田丸・多摩
連携歓迎。
公序良俗に反する行動、利敵行為、過剰に性的な描写はNG。
芸能事務所の事務員。
いかにもビジネスウーマン然とした、礼儀正しい口調で人と接する。大抵のことはそつなくこなすが、激辛好きで味覚が終わっているため料理だけは下手。
民間人への被害を嫌い、救助活動などには全力を尽くす。
戦闘になると急に元ヤンめいた荒っぽい口調になり、態度もふてぶてしくなる。
真紅のフルカウルスポーツバイク『レッドサビナ350』を乗機兼凶器として使用。喧嘩殺法じみた格闘攻撃も使い、場合によってはサイキッカー由来の念力攻撃を使うこともある。
台詞例
「我々が来たからには、もう安心ですよ。ふふふ♪」
「上等だよ……掛かってきな!」
ファレルの命令に、取り囲んでいた群衆の顔から表情が抜け落ちる。そして緩慢な動きでエルに向き直った。
「……何かしましたね」
いつの間にか隣にいた多摩の言葉にエルは視線を下げながら困惑の表情を浮かべる。
「何かって、何ですか」
「恐らくは意識を失わせて操り人形にする系統の洗脳です。先程の告発であちらもなりふり構えなくなったようですね」
未だに流されている映像が半ば事実だと認めているような行動だが、ここで関係者を全員黙らせることをまずは優先したらしい。ファレルの言いなりになった民衆は近くにあった幟や立て看板をおもむろに持ち上げて投じてきた。
「サッカーで勝負だって言ってるだろうが!?」
全身から光を放つギャラクシィエンプレスに変異しつつ、エルは投じられた物体を軽い足取りで避ける。例え自分の手が届かないところからのダメージが全て100分の1になるとしても、痛い物は変わらず痛いのだ。
一方で多摩は小柄な体格を武器にその下を掻い潜ると投げ終えて隙だらけになっていた男の体に掌を押し付けた。
「認められていない危険な武器を持ち込んでたら退場になんだよ」
バチン、という大きな音と共に男の体が跳ねるように震えるとそのまま仰向けに倒れるが、正常な判断力を失っている群衆は反射的に多摩に掴みかかろうと手を伸ばす。しかし逆に掴み返されて地面に叩きつけられると再び鳴り響いた雷鳴を聞きながら気絶していった。
「すごい静電気でしたね」
涼しい顔で痺れが走った手を撫でる多摩はじっくりと周囲に転がった群衆を見回してから、結果的に怒れる民衆の包囲から逃れたファレルを見る。
「さてファレルさん、今のは私の正当防衛でよろしいですよね?」
ファレルは答えず顔を引きつらせるだけ。その様子を後ろから見ていたエルはつま先に乗せていたサッカーボールを軽く打ち上げた。
ゆっくりと落ちてきたボールは徐々に後ずさりしていたファレルの退路を塞ぐように、その背中に掠った。
「しかしどうしましょう、サッカーが出来る方が減ってしまいました。エルさんいかがされますか?」
「元々こんな所で22人走り回れるとは思ってなかったので……最悪1対1でもPK戦で決着はつけられるかなと」
そう言ってからエルは転がっていくボールを止めるため、ファレルの後ろに駆け足で回り込む。挟み撃ちをされた形相になったファレルは助けを求めるように周囲を見回すが、スピーカーから流れる自分がかつて発した独り言と着信音以外の音は耳に入ってこなかった。
大成功
🔵🔵🔵
印旛院・ラビニア(サポート)
・境遇的なものもあり、思考や嗜好は成人男性のものです(恥ずかしいので自分からは喋らない)
・基本的にはヘタレで気弱、強者にビビるし弱者に慎重な面もありますが、物事がうまくいったり周りに煽てられるとイキって墓穴を掘ることもあります
・なんだかんだで人がいい
・やり込みゲーマーで現状を学ぶ【学習力】と自分のプレイに【チューニング】できる応用力が武器
・キャバリア・劫禍との関係はUCの秘密設定あたりで察してください
UCは活性化した物をどれでも使用し、例え依頼のためでも、公序良俗に反する行動はしません。えっちな展開はコメディ目であれば許容
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
「サッカーが出来る人がいない? それなら僕に任せてよ」
声がした方を一斉に向けば、そこには印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)の姿があった。
「あ、お疲れ様です!」
挨拶として頭をものすごい勢いで下げたエルの表情は渋い。バトル・オブ・オリンピアでこちらがギャーギャー言えないことをいいことに盛大にイキられたことが尾を引いているのだろう。
「召喚! 戦乙女の行進シリーズ!」
特に何の説明もしないまま、ラビニアはシャッフルしていたデッキからドローしたカードを次々に召喚していく。すると目前にはサッカーのユニフォームを身に着けた戦乙女達が20人降臨した。
すでに見知っているエルは平然としていたが、初見のファレルは目を見開いて戦乙女達を凝視する。
「な、な、な……!?」
「どっちかが不公平になっちゃわないように全員同じパロメータの子にしといたよ。瞬時に適切なカードを選択できる僕って最強過ぎるよね」
「ありがとうございます、これで普通の試合が出来ます」
「いやいやいやいやちょっと待ってよ」
ふふん、と自慢げに胸を張るラビニアに礼儀として感謝を述べるエルに対してファレルは顔を引きつらせて食い下がる。何が不満かとラビニアはきょとんとした顔を向けるとファレルは泡を食いながら声を荒げた。
「20人って、2チームに均等に分けたら10人になっちゃうじゃないか! まさか僕もプレイヤーとして出るんじゃないだろうね!? 無理に」
「え? そのまさかだよ? そうじゃなかったら対戦にならないじゃん。監督として出ることなんて……エルさんはそれを許してはくれないだろうね~」
NPCの能力が全く一緒なら、勝敗はPCの腕前と運に左右される。そしてギャラクシィリーグ最強のプレイヤーであるエルと文系一筋デスクワーカーなファレルのサッカーの腕前は天と地の差がついている。結果がどうなるかなんて、やる以前に火を見るよりも明らかだ。
「じゃあ……やろうか、ファレルさんよぉ」
エルは顔を真っ青にして言葉を失ったファレルを見て、餌を前にした腹ペコの野獣のように舌なめずりをした。
成功
🔵🔵🔴
川上・和
この調子なら不利を悟ってじきに逃げ出すはずだから、潜航で姿を隠しながら追いかけて人気の無いところに来たら地面を液状化させて逃げ足を封じてから魚雷で片付けるわ。
オブリビオンとはいえ表向きは記者だから大っぴらに消せないし(表だって手を出したらそれこそ記事のネタにされるから)、ガセネタをでっち上げて稼いでいた事がバレて逃げ出した、という事にして誤魔化すわ。(言いくるめでもっともらしく伝えておけば新聞社の反応から見て同業者から好かれてなさそうだし、ライバルの失脚を嬉しそうに報道してくれるはずだから)
「ふ、ふざけるな! 無理に決まっているだろう! こんな負け試合やろうとする価値もないね!」
エルやラビニア達に自らが書いた記事を叩きつけるように投げて視界を晦ましたファレルは暗い路地に向かって全力で駆け出す。この動きは和にとって想定の範囲内であった。
「この調子なら不利を悟ってじきに逃げ出すはず」と読んでいた和はこの場に初めからいながらも【潜航】で金属製の路面に潜り込んでいた。故に先程の記事による妨害からも回避出来た。
ファレルは体力の続く限りがむしゃらに曲がり角を見つけるたびに曲がっていく。万が一追いかけられてしまった時に追手の目線を切りたかったのだろう。しかし地中にいる和は惑わされることなくひたすらに最短距離で進んでいく。
「はぁ、はぁ、はぁっ……」
人気の無いところに来たところでファレルの足が止まり、膝に手を付けた。完全に動きが止まったのを見て和は対象範囲を広げてファレルが立っているところまで液状化させる。
「う、うわ、何だこれぇ!?」
突然失った足場と底なしの恐怖にファレルは慌てだす。臀部から伸びる魚のような尾はどうやら見た目だけだったらしい。
頭部まで沈み込ませることで助けを求める声も発せず、逃げ足も完全に封じたところで和は魚雷を発射させる。
オブリビオンとはいえ表向きは記者だから大っぴらに消すことは出来ない。表だって手を出したらそれこそ今回の騒動に関わった週刊誌の下劣な記事のネタにされてしまうだろう。
だから爆風も遺体も見せないし残させない。宇宙空間に浮かぶラグランジュポイントの床の中、という完全なる密室でファレルは爆散した。
「さてあとは、ガセネタをでっち上げて稼いでいた事がバレて逃げ出した、という事にして誤魔化すとしますか」
新聞社で見た記者達の反応からして、ファレルは同業者から好かれてなさそうであった。
言いくるめでもっともらしく伝えておけば、泥船から一刻も逃げ出したい各社は全力で嬉々として乗っかってファレルに全ての罪を押し付けることだろう。
「まぁ、こうしてもエルさんとか他に報道されていた人の名誉回復とはいかないんだけどね」
週刊誌は誤った記事を出そうとも「それを何で報じてしまったのか」を検証することもそれによって損なわれた被害者の救済をすることもなく、1ページの片隅に適当な謝罪文を乗っけて終わらせる。裁判沙汰になったとしてもその記事を報じた冊子で稼いだ売り上げ以上の金銭が賠償金として請求されることはない。ペンはどんな剣よりも強い……強くなってしまったのだ。
「でもあたしに出来ることはこれでおしまい。あとは頑張ってね」
そう呟いて和はその場からゆらりと離れていった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『猟兵突撃インタビュー! inキマフュー』
|
POW : おだてて気分よくなって答えてもらおう!
SPD : 巧みな話術で言葉を引き出してみせよう!
WIZ : 深い洞察力で鋭く切り込んでみよう!
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「で、とにかく質問にどんどん答えていけばいいんですね……」
所在なさげにエル・ティグレはインタビューを受ける現場を見回す。
今回のインタビューの目的、それはファレルが流した悪しき噂への対処とオーパーツの情報提供を求めるためである。
エルのインタビューと各種報道の言い訳を見聞きして「エルって悪い奴じゃなかったんだな」と思ってもらえたらベスト、「本人の言うことなんて信じられるか」という人に対しては「オーパーツがあればこの世界から去ってくれる」という餌を吊らして積極的に捜索に協力してもらう、という二段重ねの策である。
自分でインタビュアーを務めるのか、それとも誰か知り合いの記者を呼びつけるかは猟兵達の自由である。
佐藤・和鏡子
記者の一人として会見に参加します。
ファレルの件もありますので、会見の流れをリードして変な方向に持って行かれない様にします。
女性物のスーツをきちんと着たりカメラを持っていくなど記者っぽく見える様にします。
診断でエル・ティグレの情報を読み取って質問しやすい様にします。
猟兵が記者にいるとばれると面倒そうなので会見の前に私も普通の記者と同じ様に接して欲しい、とエル・ティグレに伝えておきます。
私はお膳立てはできますが、実際に答えるのはあくまでもあなた自身なので、ここからはあなた次第です。
頑張ってください。
「ではこれより、エル・ティグレ氏によるここ数日の間に報じられました各種記事に関する記者会見を始めさせていただきます」
司会が呼び込みを行うとエル・ティグレはスーツに身を包まず、そのままの姿で登壇した。謝る気がないのでは、と一部の記者は察してどよめきを起こす。
そしてその予感は的中した。
「この会見はファレルとかいうよーわからん変な女記者がアタシについて事実無根の記事を書き、それを各報道機関がまるで本当のことのように取り上げたことに対する抗議であり、謝る気はさらさらねぇから。覚悟しとけ」
そう言ってエルは当事者である出版社の腕章をつけていた記者を睨みつけた。どうやら真っ向から喧嘩を売っていくスタイルで臨むらしい。
「つまり一連の報道は全て虚偽であると!?」
「ファレル氏が寄稿した物だとは確定していませんが、その断言はいささか暴論ではないでしょうか!」
「実際にあなたと関わったことで負傷したと証言している方がいることについてはどう反論するおつもりで!」
「静粛に、静粛に! 質問のある方は挙手をしてください! 1人ずつ指名いたします!」
売り言葉に買い言葉、加熱しかけたところに司会の注意が入ったことで一旦押し黙った報道陣からパラパラと手が挙がり出す。
「では手前の……青髪の女性から」
「はい」
指名された記者はメモとペンを携えながら立ち上がって、自らの身元を発した。
「バンロクタイムスの、佐藤と申します」
遡ること数刻前。
「今回私は記者の一人として会見に参加します」
司会とエルと猟兵による事前の打ち合わせの最中、和鏡子はそう宣言した。
「もし場が荒れそうになった時は私が緩衝材になります。ファレルの件もありますので、会見の流れをリードして変な方向に持って行かれない様にしますので」
「そうですね。ですが何度も指名するとえこひいきとか仕込みではないかと思われるので、一度だけお声がけする……恐らくトップバッターをお願いする形になるかと」
初めから質問という名目で頭ごなしな非難が行われるだろう、という司会の予想に和鏡子は了承の頷きを返す。
「分かりました。ですが会見が荒れそうでなければ別の方を指名して、発狂したり関係ない質問を長々と続けたりしてきた記者さんが来るまで待ってもいいと思います。それと事前に【診断】でエルさんの情報を読み取って、返しやすい質問をするようにします」
「はい、わかりました」
「エルさん」
背筋をピンと伸ばして応対するエルへ和鏡子は1つ注文をつける。
「今回の会見はエルさん側である|猟兵《わたしたち》が記者席にいるとばれると面倒そうなので、私も普通の記者と同じ様に接して欲しいです」
渋い表情を浮かべたエルに和鏡子はニッコリと微笑んだ。
「別に難しいことをやって欲しいとは思ってません。負けるまで私達に行っていたような態度で臨めばいいんですから。……あと私はお膳立てはできますが、実際に答えるのはあくまでもあなた自身なので、ここからはあなた次第です。頑張ってください」
(たしかに記者さんに対しても敬語でいくとは言ってませんでしたね……)
嫌がりの方向が、むかつく記者に対しても敬語でいかなきゃいけないのか……だと決めつけていた和鏡子は苦笑いを浮かべつつ、今回の報道を受けたことで身の回りで生じた悪影響についての問いを投げかける。
ぶっきゃらぼうに喋るエルの顔に汗が急激に滲みだしたのは……きっと暖房のせいだろう。
大成功
🔵🔵🔵
川上・和
あたしも記者会見をちょっと手伝うわ。
ファレルの取材メモも手に入ったし(盗み、情報収集)、そこから取捨選択したり脚色した物をサイバーリンクシステムで記者たちの端末などにエル・ティグレに都合の良い情報を流して上手く話の流れを動かせないかやってみるわ。
あたしは記者じゃないから実際のインタビューは記者に任せるわ。
オーパーツという宝探しは記者には良いネタになりそうだし、ファレルのインチキ記事に踊らされた、という記者たちに都合の悪い情報を押し流すにはちょうど良いしね。
記者も人間だから自分たちの都合の良い方に動くものよ。
記事で人々を動かしたように今度はあたしが情報であなたたちを動かしてあげる。
「あたしもちょっと手伝うわ」
ゆっくりと振られる和の手には一冊のメモ帳が握られていた。
「これ? ファレルの取材メモ」
骸の海に沈んでいく前に回収していたそれを中程の適当なところで開き、打ち合わせ中のテーブルの上に置く。紙には普通に読める文字で取材対象の行動範囲やスケジュールの情報が事細やかに記されていた。
このような研究の末にエルだけでなく、ヒーローや政治家のアリバイが作れない時間を見出して、虚偽の記事の内容がその時間帯に行われているとねじ込んできたのだろう。
「そこから取捨選択したり脚色した物を【サイバーリンクシステム】で記者たちの端末などにエル・ティグレに都合の良い情報を流して上手く話の流れを動かせないかやってみるわ」
オーパーツという宝探しは記者には良いネタになりそうだし、ファレルのインチキ記事に踊らされた、という出版社も自分達に都合の悪い情報を押し流すにはちょうど良いと飛びついてくれるだろう。
「記者も人間だから自分たちの都合の良い方に動くもの。あたしは記者じゃないから実際のインタビューは記者に任せるわ」
そう一方的に言ってトプン、と和は建物の床に沈みこんでいった。
エル・ティグレの会見を目当てにした記者達が会場のラウンジに集まってくる。そんな彼らが持っていた携帯が一斉に震え、通知画面にメールが来たことが表示される。
まだ会見が始まるまではしばらく時間があるから、と電源を切っていなかった者は何の気なしに確認する。そして差出人の名前を見てある者は怪訝な表情を浮かべながら、別の者は泡を食ったように慌ててタップした。
「やっぱり、有名人相手だと襟を正すのね」
彼らが見たメールを書いたのは差出人本人ではない。
和が床に直置きされたバッグの中にあった大物記者の携帯を拝借して自分の有線接続型電脳を接続し、参加する記者の中で事前に分かっているメールアドレスに対して、猟兵側でまとめた情報を|一斉送信《タレコミ》したのだ。
端末の本来の所有者は現在別の取材の真っ最中。電話が鳴り出すがマナーモードの状態ではこの場の誰も気づかないし、気づけない。ただ仕事終わりに大量の着信履歴を見たらひっくり返ることになってしまうから、後でメールごと消して証拠を隠滅しておく。
今記者団は真偽が分かる―――大物記者が電話に出るまで待っていたら会見に参加することは出来ない。先の映像で信用度が薄まったファレルの情報を信じるか、同業の偉大な先輩からの真偽不明の情報を信じるか、彼らは大仕事の直前で突然の岐路に立つことになったのだ。
果たして一般的に無名なフリーランスの記者の話でも部数が稼げそうなら信じる輩が、著名な記者から送られてきたタレコミを嘘だと一蹴出来るか。……絶対に出来ないだろう。
「記事で人々を動かしたように今度はあたしが情報であなたたちを動かしてあげる」
あとはエルさんが会議で大チョンボをしないことを祈るだけ、と和は思いっきり体を伸ばした。
大成功
🔵🔵🔵