メイクアップ・バレンタイン
●とあるお菓子の国の、大ピンチ
その国の煉瓦造りの街並みは普段から絵本めいて可愛らしい。雪降る日々を重ねて純白を纏えばころりとした愛らしさはより増して、バレンタインシーズンを迎えれば甘い彩りが国を染めていく。
スポンジやクッキー、チョコレート。スイーツの香りは愉快な仲間達が腕によりをかけ作りあげた、バレンタインのとっておき。国のどこを歩いても目に入る、見た目も味も素晴らしいバレンタインスイーツだ。
完成したスイーツに住民は誇らしげに笑い合い、彷徨う中で訪れたアリス達は目を輝かせ、住民からの厚意と勧められるまま、ひとつふたつと食べていく。それは皆が皆、バレンタインの美味しい贈り物に包まれる夢のようなひととき。
そんな日々が今年もやって来る、筈だった。
こんなスイーツを作ったんだ、今度はこういうものを作りたいなとお喋りしていた愉快な仲間達は自分の店や工房、家に閉じこもって「どうして」と泣きながら体を震わせる。
甘くて、ビターで、フルーティで、美味しくて、幸せ。そんなスイーツで彩っていた国はオウガによって恐ろしいビジュアルに変えられてしまい、作っていた時の楽しさや嬉しさ、これから来るバレンタインへのワクワクはすっかり暗闇の中。
ああ。
あのスイーツ達を、オウガの目を盗んでこっそり|直せ《救え》たら。
そう思っても、彼ら愉快な仲間達はガタガタと震えて泣くしか出来ない。
なぜなら。
●メイクアップ・バレンタイン
「今話したのは、ボクが住んでる国とは別のお菓子の国で起きてるコトなんだけどね。そこに住んでるみんなは、恐いものがすっごい苦手なんだ。だから、ずっと泣いてる」
自分の住む国とは違う『お菓子の国』を覆うオウガの横暴に、ミルフィローズ・ドラジェ(薔薇彩シュガー・f43259)の長い耳は普段よりしょんぼりと下がっていた。
とあるお菓子の国に住む愉快な仲間達が作ったバレンタインスイーツの全てが、骸骨や悪魔、ゾンビに蜘蛛にといった恐ろしいモンスターや死の象徴に作り変えられてしまった。
スイーツ作りへの想い。情熱。バレンタインが楽しみという、気持ち。
スイーツと共にそれらも無惨に弄られてしまった愉快な仲間達は、何とかしたくても出来ない悲しみと恐怖に囚われてしまっている。
「スイーツも愉快なみんなも、どっちも助けてあげてほしいんだ。恐くされちゃったスイーツは何でかどれも美味しいから、食べちゃえばいいと思う。お菓子作りやお料理が得意ってひとがいたら、恐くないようにしちゃうのもいいかも」
可愛いお砂糖や綺麗なお砂糖ならいっぱいあるよと、ミルフィローズは手にしていた大きなスプーンをくるり。何も乗せていなかったスプーンに薔薇形の砂糖をいくつか現した。
お菓子の国をまるっと恐ろしくしたオウガ達が不在の今がチャンスだ。猟兵達が食べて手を加えてと国の様子を元通りにしていけば、気付いて現れるだろうけれど――それもまた、とっておきのチャンスだ。
「オウガ達をやっつければ、あの国のみんなもスイーツも、もう恐い目に遭わないハズだもん。 だから、お願い」
そう願った、愉快な仲間で魔女で王子様な娘のグリモアが煌めいた。
東間
やめろー! そうじゃないバレンタインスイーツをグロ方向にいじくるもんじゃない! 俺とバレンタインスイーツエンジョイバトルで勝負だ!!(もぐもぐむしゃむしゃ!!)
という感じのシナリオをお届けに来ました、|東間《あずま》です。
●受付期間
タグと個人ページ、X(https://twitter.com/azu_ma_tw)にてお知らせ。
オーバーロードは受付前送信OKです。
●1章
恐ろしい様に変えられてしまったバレンタインスイーツを、
・食べる(ちゃんと美味しい、あった場所には後で愉快な仲間達が力作を用意してくれる)
・手を加えて「恐い」から「綺麗」や「可愛い」=恐くない見た目にする
のどちらか、または両方の行動が取れます。お好きな方でどうぞ。
愉快な仲間達は悲しくて恐くて外に出られませんが、猟兵がドアを叩けば中に入れてくれますし、手を加えるのに必要なものも全て借してくれます(持参もOKです)
●2章
VS お菓子の国の変化に気付いたオウガの大群。
1章でスイーツ達のメイクアップが出来ていた場合、『国』がスイーツ的不思議パワーでオウガを攻撃したり、バフ効果のあるスイーツで皆様を支援してくれます。美味しいプレイングボーナスです。
詳細は開始時に。プレイングで「こういうスイーツでこんな風にパワーアップ!」と好きに指定されるのもOKです。
●グループ参加:3人まで、オーバーロードは人数制限なし
プレイング冒頭に【グループ名】をお願いします(【】は不要)
送信タイミングは同日であれば別々で大丈夫です。
日付を跨ぎそうな場合は翌8:31以降だと失効日が延びてお得。
グループ内でオーバーロード使用が揃っていない場合、届いたプレイング総数によっては採用が難しい場合があります。ご注意下さい。
以上です。
皆様のご参加、お待ちしております。
第1章 日常
『ショコラフェスタ』
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POW : チョコレートで像を作る
SPD : 愉快な仲間たちとチョコレートを作る
WIZ : チョコレートのお花を摘む
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●レスキュー・バレンタイン
「あそこはチョコレートローズの花壇だったんだ」
恐れるあまりそちらを見る事も出来ない真っ白ネズミのパティシエが、ぷるぷるガタガタしながら指した先――店の外、花壇を占拠している『花』は何種類かあった。
眼窩や口から真っ赤な血を滴らせ、激しいヘドバンをしながら「バレンタインをぶっ壊せ」とデスボイスで歌う骸骨達。様々なポーズを取った、嗤い顔の悪魔達。つるりとした邪悪な薔薇に近寄るとほのかに香ったこれは――チョコレート!
つつけばシャボン玉のようにぱしゃんと消えて、少し待つと元通りになるガラスケース。そこにあったマカロンやシュークリームのタワー、パフェにホールケーキは行方不明真っ最中。
代わりにそれぞれのケースに収まっているのは、乱雑に積み上げられたつやぷる目玉ゼリーのタワーや、怒りや苦悶に満ちた顔が浮かんで喋る人面マカロンと。
「あ、あれは、ケーキやパフェだよ。一度近くで見たからわかるもん」
ヤマアラシの針のような歯をびっしり生やしたお化けネズミに、今にも襲いかかってきそうなガーゴイル。牙を向いて唸る犬や猫の頭に、緑色の肌をした溶けかけゾンビ、でろでろとしてリアルな歯を生やしたスライムなどなど。
そう言ったリスのお嬢さんは、勇気を出して目視した直後に気絶したという。
何かを囁きながら、ひょろ長い獣の足でスピーディにちょこまかカサカサ動き回る宝石箱があった。
「あれと全く同じデザインの宝石箱があったんじゃ。中はクッキーじゃったりチョコレートじゃったり、プチケーキじゃったり……じゃが、生えていた足は丈夫なゼリーじゃったんじゃよ。あれの中身が何かは……こ、恐いやつじゃないといいんじゃがのう……ヒィン……」
心底申し訳無さそうに頭を下げるライオンお爺さんの耳はペッタンコで、尻尾もくるりと足の間に引っ込んでいる。窓の外では宝箱が――びよよーんっ。右上左上とめちゃくちゃに跳んでいた。
「チョコレートドリンクが流れていてネ、時間帯で味が変わったのサ。ビター、ストロベリー、ミルク、バニラ、ピスタチオ、オレンジ……ハァ……」
ブリキの青年が悲しげに語った噴水は今、ボゴボゴ泡立つ緑色の液体が巡り、不気味に満たしている。ボゴボゴ泡と音にきめ細やかな泡と『シュワシュワ』という音が混じっているそれは、ソーダに違いない。
あちこちから、液体ではない丸型かつリアルタッチの目がついた何かが浮上しては引っ込んでいるけれど。
住民達を恐怖と悲しみのどん底に突き落とした、バレンタインスイーツに成り代わった何か達。それらはバレンタインらしからぬビジュアルで――そしてどうしてだか、グリモアベースで聞いていた通り、ちゃんと食べられるものだった。
神臣・薙人
月灯
お菓子が絡むとなれば
葛城さんに助けを求めない訳には行きませんでした
はい、私も全力対処です
オウガ許すまじーです
確かに愉快な仲間達の皆さんが作ったものを
食べずにいるのは勿体ないですね
私もお手伝い出来る範囲でいただきます
宝石箱を捕まえて中身をもぐもぐ
葛城さん
こちらの心臓マカロンも美味しいです
私も周りに聞こえるよう
声はなるべく大きく
葛城さんがおすすめされるからには
本当に美味しいのでしょうね
血色のぷりんから頂きます
美味しい…幸せ…
怖いものをあらかた食べ終わったら
葛城さんと一緒に手直しを
私に超速はありませんので
横からお手伝い
少しでも皆さんに笑顔が戻ったら嬉しいですね
ふふー
オウガの悔しがる顔も見たいです
葛城・時人
月灯
ダチに話聞いた時点でガタッ!
行くよ
「全力対処!行こ、神臣!」
オウガ許すまじ
俺は超甘党でUCもある
だから直しもするけど
「今あるの勿体無いじゃん?」
元は愉快な仲間達が一生懸命作ったんだし
食べない選択肢ない
だから片端から
「いただっきまーす!」
血と臓物ブチまけたみたくな
ホラーケーキをぱくっ
…って、わ!
「マジで美味しい!」
普通に声出たよ
超リアルお化けクッキーも
血色のプリンも
マジ骨格のアップルパイも
「旨!神臣もこれ食べてみて!」
声は彼らに届くよう大きくね
特にヤバそうなの二人で食べて減らしてから手直し!
アイシングデコやバタクリの薔薇にアラザンとかを
UCも使って急いでGO
「俺達でオウガ悔しがらせてやろ!」
アリスラビリンスに数多ある不思議な国のひとつ。お菓子の国からトキメキ溢れるバレンタインスイーツを奪ったオウガ達による、恐ろしいスイーツ侵略の話。
お菓子という単語がこれでもかと絡む依頼を聞いた瞬間、神臣・薙人(落花幻夢・f35429)の脳裏には1人の姿が燦然と浮かんだのである。
これこれこういうわけなんですがと助けを求められたその人である葛城・時人(光望護花・f35294)は、話を聞いた時点で椅子を勢いよく鳴らして立ち上がっていた。『これこれこういうわけなんですが』への返事はひとつしかない。
「全力対処! 行こ、神臣!」
「はい、私も全力対処です」
オウガ許すまじ
2人が抱いた想いはチョコレートを湯煎いらずで溶かすほど。そんな2人はバレンタインのバの字を激しく遠ざける様に眉をしかめてすぐ、行動を開始した。
「さすが葛城さん。準備万端ですね」
「全力対処だからな」
チョコペンやアラザン、カラースプレーといったデコレーション系から、スイーツ作りに必要な食材と、時人が用意したものはスイーツ達を救うのにぴったりなものばかり。そして超甘党の時人だからこそ、ぺろりと舌を覗かせた顔はとても楽しげだ。
「今あるの勿体無いじゃん?」
オウガ達がどのようにして恐ろしい様へ変えたのかは不明だけれど、目の前のスイーツ達を『食べない』なんて選択肢はハナからなかった。薙人は時人が意味するものを即座に察し、ふんわりと微笑む。
「確かに食べずにいるのは勿体ないですね。私もお手伝い出来る範囲でいただきます」
「そうこなくちゃ」
ぱちん。
両手を合わせ、視線は並ぶホラーでグロテスクなケーキ――の、端から端までをなぞって。
「いただっきまーす!」
時人は血と臓物をブチまけたようなホラーテイスト溢れるケーキを、大きめスプーンでもりっと一口掬ってぱくっ。頬張った瞬間に、わ、と目を瞠る。
「マジで美味しい!」
意識するより早く飛び出した声にガタタと被ったのは、薙人が宝石箱ビーストを捕獲した音だ。有無を言わさず回すだけの鍵をカチャリと開ければ、やかましく動き回っていた宝石箱がぴたりと停止する。
「成る程。こうすれば無効化できる、と。そして中身は……これは、ゼリー?」
カップを満たすゼリーが綺麗に並んでいる。ただし紅色ゼリーの中には脳味噌らしき白い物体があった。これを愉快な仲間達が見たら何度目かの気絶をしてしまうだろう。早速ひとつ食べると、ゼリーはぷるつやな喉越しと苺香るもので、脳味噌部分はバニラ風味のゼリーだった。
(「完成していた脳味噌ゼリーを、苺ゼリーに落として作ったんでしょうか?」)
「旨! 神臣もこれ食べてみて!」
「ありがとうございます。随分とリアルな、お化けのクッキーですね。こちらは……」
「血色のプリンだ」
見た目が恐ろしくても本当に美味しいのだろう。他ならぬ時人が勧めてきたものだからこそ予想出来、薙人は迷わず受け取って微笑んだ。
旨いなとご機嫌な時人は血色をしたプリンも満面の笑みで食べ、実物がこうなったのではと思うほど精巧な骨格アップルパイにもフォークをぶすり。遠慮なく食べて「旨い」と知ったそれらを、周りに届くよう大きな声で薙人へ勧めていった。その薙人からどうぞと差し出されたのは、それはもう鮮やかな紅色をした――。
「葛城さん、こちらの心臓マカロンも美味しいです」
薙人のいつもよりも大きい声でのお勧めに、にっと笑って受け取り食べれば、サクサク軽やか歯応えとベリーソースの甘酸っぱさが贅沢に広がっていく。
「こっちもマジで美味しい!」
「美味しい……幸せ……」
時人お勧めスイーツからまずプリンを食べた薙人も、ほう、と感想をこぼし、味も香りも余さず楽しんでいく。
そうして特に恐ろしいものを食べて減らしてから、2人は顔を見合わせデコレーションパーツを手に頷きあう。アイシングデコレーションでメルヘンさを足し、バタークリームの薔薇にアラザンをちりばめ綺羅びやかに。時人の頼もしいユーベルコードも合わされば、スイーツ達の返信スピードは実に鮮やかだ。
横から手伝っていた薙人は恐怖の『恐』の字もなくなった様を見て、柔らかに目を細める。その手がさらさらと落としていくのは、新たな薔薇を得たホールケーキの縁を彩るカラースプレーだ。
「少しでも皆さんに笑顔が戻ったら嬉しいですね。……ふふー」
「どうした?」
「オウガの悔しがる顔も見たいと思いまして」
「ああ、そうだな。もっと手直しして、俺達でオウガ悔しがらせてやろ!」
愉快な仲間達の笑顔へと近付いていく、手直し作業。
それはオウガ達の歯ぎしりも同時に引き寄せる、素敵な素敵なメイクアップだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ、せっかくのお菓子の国がホラーになってしまってます。
ふえ?ここになら私の扉があるかもしれないって、そんなのは嫌ですよ、アヒルさん。
でも、この状況はどうにかしないといけないんてすよね。
そうです、元がおいしいお菓子なら、ホラーな効果はお洗濯の魔法で落としてしまえばいいんですよ。
そうすれば、素敵なお菓子の国に元通りです。
可愛いくて、綺麗で、ゆるふわで――愉快な仲間達が腕によりをかけて作ったバレンタインスイーツがその真逆、恐ろしいものやグロテスクといった方向に変えられてしまった。
事前に聞いていたそれをフリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は忘れていない。忘れていないけれど。
「ふええ、せっかくのお菓子の国がホラーになってしまってます」
現地で実物を見たらフリルという少女は当然の如くビックリせずにいられなかった。
愉快な仲間達作のバレンタインスイーツがあった時は、きっともっと素敵で楽しい光景が広がっていたに違いないのに――。すると、けろっとしていたアヒルさんがフリルの手をツンツンする。
「ふえ? ここになら私の扉があるかもしれないって、そんなのは嫌ですよ、アヒルさん。……でも、この状況はどうにかしないといけないんてすよね」
元々は素敵なビジュアルの美味しいスイーツでいっぱいの国だ。自分の扉はこの国になくていいのだけれど、この状態をどうにか出来れば、ここに扉があったアリスの助けにもなるだろう。
フリルは恐ろしいスイーツをあまり見ないようにしながら、うーん、うーんと考えて――ピコンッ。ひらめいた。
「そうです、元がおいしいお菓子なら、ホラーな効果はお洗濯の魔法で落としてしまえばいいんですよ。そうすれば、素敵なお菓子の国に元通りです」
『グワグワ!』
よしそれだ! アヒルさんの鳴き声にフリルはこくんと頷いて、目の前のホラースイーツへと手を伸ばす。ぱしゃんと弾けた不思議なガラスケースの先、頭蓋骨ケーキがバウバウガウガウ、猛犬じみた吠え方をし始めた。
「ふえっ! あ、でもケーキだからジャンプできないんですね……えいっ」
しゅぱぱぱっ。両手で交互に叩いた頭蓋骨から恐ろしさが溶けるように消え――ニャア。可愛らしい白猫ケーキに早変わり。フリルはすぐ他のケースに向かい、ホラーもグロテスクも、綺麗に落としていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
絵面が!エグい!!
ゾンビ退治に悪霊祓いのエクソシスト稼業やってるけど、これは流石に良くねえわ
ハロウィンのお菓子のがまだ大人しいっての
だがこうなっちまった以上、この冒涜系スイーツを食って本懐を遂げさせるしかねえな
在り様を狂わされた存在に祈りを捧げ、デスボ骸骨を聖書の背表紙でばちこーん!
弱ったチョコに追撃は不要だな
弱ったチョコって何だ?と思いつつ髑髏にかぶりつく
へー、血みたいなのはラズベリーソースか…割とイケる
うすら笑いの悪魔は書の角で黙らせる
ついでに薔薇も叩いとく
さーて、こいつらはどんな味だろうな?
…ん、悪魔を食らうエクソシストってのも大概アレな絵面か?
それ言われたら、ぐうの音も出ねえな
「絵面が! エグい!!」
元・チョコレートローズの花壇。
元・スイーツ展示ロード。
元・ぽよぽよ歩くスイーツ宝石箱。
元・チョコレートドリンクの噴水。
どこもかしこも『元』がついて原型を留めていない様に、ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は心底げんなりした。サングラスでも隠しきれない表情に『花壇』がギャハハと下品に笑う為、ギュスターヴのげんなりメーターは更に上昇した。
「ゾンビ退治に悪霊祓いのエクソシスト稼業やってるけど、これは流石に良くねえわ。ハロウィンのお菓子のがまだ大人しいっての」
けれどゆで卵が生卵に戻らないように、こうなってしまったら元通りには出来ない。
「この冒涜系スイーツを食って本懐を遂げさせるしかねえな」
『デキルモンナラヤッテミロ、神ノ手下ガヨォ!』
『次ノ曲行クゼェ! “今年ノチョコモ母親カラ”!』
「アーメン!!」
『ギエーーーーッ!!』
デスボ骸骨達を分厚い聖書の背表紙が張っ倒した。張っ倒す前にちゃんと在り様を狂わされた存在へと祈りを捧げたからセーフだし、デスボ骸骨は揃ってすぽぽんと茎から外れて薔薇の茂みの上に落ちた為、3秒ルール面でもセーフだった。
「よし、っと。弱ったチョコに追撃は不要だな……弱ったチョコって何だ?」
日常ではまず使わない言葉に覚えた引っ掛かりは、摘み上げた髑髏チョコを前に消えた。すっかり静かになった髑髏に歯を立て、ぱきり。割れたそこから赤い液体が溢れ出す。チョコと一緒に味わった風味は――甘酸っぱい。
「へー、血みたいなのはラズベリーソースか……割とイケる」
愉快な仲間達には刺激が強いだろう。ギュスターヴは粛々と腹に収め、薄ら嗤っていた悪魔にも聖書ビンタで沈黙というものを教え、邪悪な薔薇もついでに同様の対処で摘み取っていく。
「さーて、こいつらはどんな味だろうな?」
あ、と頬張って味わってから、待てよと僅かに首を傾ぐ。
「……ん、悪魔を食らうエクソシストってのも大概アレな絵面か? それ言われたら、ぐうの音も出ねえな」
しかしそれもこれも無辜のもの達を救う為。
ならばきっと、神もチョコレートを片手にお許しになるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
ガスパール・アーデルハイド
アリスラビリンス…初めて訪れたが
普段はこんな雰囲気ではないのだな
…そうか。オウガとは恐ろしい敵だな(スイーツを見る
おれに出来ることを頑張ろう
お菓子そんなに詳しくないのだった…と
ひとまず噴水の前に訪れて
ソーダみたいな緑色は毒沼よりはマシのような…
此れもダメなヤツだったのか。…そうか
好奇心から掬って飲んでみた味、
シュワシュワとパチパチには
吃驚して毛も逆立ちそうだが
食べられない訳ではないのは本当だな
チョコみたいな甘い味には変えられないにせよ
小分けにした容器に掬った分を凍らせたりで
シャーベットやゼリー風にしてみたり
丸型のヤツは飾りに添え…ても怖そうだな
仕方ないから、おれが食べておこう
おいしい
「これが、アリスラビリンス……」
ガスパール・アーデルハイド(護森狼・f44874)がぽつりとこぼした声へ、妙に乱暴な旋律と詩で出来た歌声が重なった。そちらへと狼耳が向いたのは数秒で、獣の耳も静かな眼差しも、初めて訪れた世界と国を襲うものをきちんと捉えていた。
「普段はこんな雰囲気ではないのだな」
4本ある獣の足でバラバラに路地を叩いて動き回る宝石箱。その宝石箱をケースの中からけたたましく威嚇する猫の頭部形ケーキ。ここ以外にあったスイーツも、同じように変貌させられ蠢いているのだろう。
「……そうか。オウガとは恐ろしい敵だな」
おれに出来ることを頑張ろう。誓うように言葉を紡ぎ――はた、と気付く。
「お菓子そんなに詳しくないのだった……」
けれど出来る事はある。ひとまず向かったそこでは、ぶくぶくぼごぼご、シュワシュワワ。大小様々な泡が絶えず芽吹く緑色。噴水を満たすにはあまりにも鮮やかで、毒沼にしては透明度がある。
「毒沼よりはマシのような……ん?」
ソーダの水面の一部がふいにまあるく盛り上がる。そこにはどう見ても目玉にしか見えない物体が2つくっついていて、それはガスパールの方を向いていた。間違いなく、こちらを認識している。
「此れもダメなヤツだったのか。……そうか」
けれど毒沼でない事は確かで――ならば、と好奇心が顔を覗かせる。
掬って口元に寄せた時に覚えた匂いは不思議と甘い。ではその味はと口に含んだ瞬間軽快に炸裂した刺激、炭酸らしさ溢れるシュワシュワパチパチに耳も尾も勢いよく逆立った。それは非常にゆっくりと収まった。
「食べられない訳ではないのは本当だな。……ふむ」
味をチョコレートのように変える術は持たないけれど、これを容器に移して凍らせればシャーベットやゼリー風味になるだろう。いざ実践と取り組んだそれは、愉快な仲間が魔法の冷凍庫等を借してくれたおかげであっという間だ。
ひんやりとして、きらきら。出来上がったシャーベットの中には、丸いナニカ付きもある。飾りとして添えておけば愉快な皆も食べられ――。
「……でも、怖そうだな。仕方ないから、おれが食べておこう」
シュワパチソーダから生まれたシャーベットのお味は、しゅわりと爽やかで甘い。
「おいしい」
立派な尾が緩やかにふさりと揺れ、唇が弧を描く。
スイーツは、こうでなくては。
大成功
🔵🔵🔵
ティル・レーヴェ
【春梟】
美味しいお菓子が怖くなるのも
愉快な仲間達が悲しむのも
黙って見てはいられないわ!
なんて、意気込んではみたけれど
お、思ったよりおどろおどろしいのね……
だだだ、大丈夫よ!あなたと一緒、だもの
言いながら
ぎゅ、とぴったり腕にしがみついて
ほんとう?怖くなくして下さる?
わ、妾も頑張るわ!
だって、そのために来たのだもの
皆の為にがんばる
……でも、この手と心をぎゅうとしていて?
お花を咲かせば
少しでも怖く無くなるかしらと
地に放つ羽根で花の陣を敷いて
わぁ、可愛い子
影と洋墨の黒も大切ないろ
そこに甘い彩増した今も幸せ
彼の友達に
彩りなおす甘やかな様に
怖いも薄れて一緒に彩直し
へへへ
やっぱりあなたは魔法使いね
ライラック
ライラック・エアルオウルズ
【春梟】
とりどりの想い籠もる菓子たち
あまやかで素敵であった景を
恐怖の色で塗り潰すだなんて
全くもって、ナンセンスだね
ああ、すっかり台無しに――大丈夫?
君を怖がらせるのも許せないことだね
かわいい、とも思うのは心に秘めて
どうにもゆるむ気持ちも引きしめて
君のためにも彩をかえよう
うん、愛らしくしてみせるとも
そうして味わうほうが本望だろうから
努める君に頬はゆるむのは御愛敬
震える心ごと、やわらかに繋いで
――気が逸れたって、離しはしないよ
親愛なる影の友達を喚ぶ
熊の菓子職人たち、手伝って
影や洋墨の黒ばかりではない
君が教えてくれた甘い彩で
素敵な菓子に変えて、戻して
そうだよ、僕は魔法使いなんだ
君のためだけの、ね?
愛や恋心や、友情や、親愛。好きという気持ち。
バレンタインスイーツに籠められたとりどりの想いは、日々目にし、感じるもののように豊かで――何より、目に出来なかった彼らはきっと、あまやかで素敵だったのだろう。
「その景を恐怖の色で塗り潰すだなんて。全くもって、ナンセンスだね」
「美味しいお菓子が怖くなるのも、愉快な仲間達が悲しむのも、黙って見てはいられないわ!」
奪われた幸せを取り返そう。ライラック・エアルオウルズ(机上の友人・f01246)とティル・レーヴェ(福音の蕾・f07995)は強く意気込み、不思議の国へと羽ばたいた。
のだけれど。
髑髏。悪魔。ゾンビ。モンスター。内臓モチーフまである。
どれも美味しいスイーツと聞いていても、変えられてしまったスイーツ達の出で立ちにティルの翼がちょっぴり縮こまった。
「お、思ったよりおどろおどろしいのね……」
「ああ、すっかり台無しに――大丈夫?」
こうしてくっつく事は当たり前だけれど、ぎゅ、とぴったり腕にしがみつくティルの空気がどういうものか。彼女の事ならいつだって敏いライラックに、ティルは慌てて自分を案じる顔を見上げた。
「だだだ、大丈夫よ! あなたと一緒、だもの」
「君を怖がらせるのも許せないことだね」
かわいい、とも思った事は心の中に綴じて。ライラックは同時に、どうにもゆるむ気持ちも引き締めた。
「君のためにも彩をかえよう」
「ほんとう? 怖くなくして下さる?」
「うん、愛らしくしてみせるとも」
そうして味わう方が、愉快な仲間達も彼らが作った本当のスイーツ達も本望だろう。
するとティルの表情がきゅっと引き締まり、勇気の彩が覗く。
「わ、妾も頑張るわ! だって、そのために来たのだもの」
皆の為にがんばる。その想いはライラックとおんなじで。
「……でも、この手と心をぎゅうとしていて?」
努めようとするその姿にライラックの頬はどうしたって緩んでしまうけど、それは御愛嬌。
「――気が逸れたって、離しはしないよ」
震える心ごとやわらかに繋いでの言葉はティルの笑顔をたちまち招いた。
咲った瞳は何度見てもおどろおどろしいスイーツを控えめに映し、けれど、しっかり繋いだ大きな手が一番星のように安心をくれるから、大丈夫。
「お花を咲かせば少しでも怖く無くなるかしら?」
ぱさりと背の翼を鳴らせば、柔らかな花吹雪のように羽根が舞う。そこからくるりと見えない旋律に乗ったかのように躍った羽根は花の陣へとカタチを変え、満ちていくやさしい空気に、シャボンガラスケースの中にいたケーキ達がざわざわし始める。その中に、わざとより恐ろしい顔をしてみせたスイーツもいて。
「へ、平気よ、だってあなたがいるもの」
ぎゅうっ。自分の手を握る柔らかな手をライラックがすぐに握り返し、もう片方の手で包み込む。眼差しを交わして喚ぶのは、恐ろしい彩を変えるに相応しい友人達。
「熊の菓子職人たち、手伝って」
回る水面に落ちて広がる洋墨のように、親愛なる影の友達が次々に現れる。その姿形に、ティルの双眸は笑顔と共にきらきら輝いた。
「わぁ、可愛い子」
職人である彼らは、ぺこりとお辞儀だって欠かさない。
さあ、何から始める? そう尋ねる仕草に、ではまずこのケーキからとライラックが笑んで示したのは、先程ティルに恐い顔をして見せたケーキだ。
この蝋燭お化けなケーキから『こわい』を無くすなら?
こわいお顔をぽかぽか笑顔に変えよう、いいねいいね、恐い牙は可愛い八重歯にしようよ――菓子職人達の提案に、ライラックも人差し指を立て「こういうのは如何かな?」と笑う。
そうしてお化けケーキに足されてゆく、影や洋墨の黒。そこに加わった新たな彩は――ティルが教えてくれた甘い彩。黒を見て目を細めていたティルの表情が、それに気付いて幸せいっぱいの笑顔を咲かせた。そこにはもう、おどろおどろしいスイーツ達への恐怖はない。
「とうても素敵。ね、ここにお花を飾るのはどうかしら?」
「いいね。……春の花にしようか?」
チョコレート梟も2羽追加で! とは職人達の案。『恐ろしい』を『素敵』へと彩り直す時間は、すっかり楽しいスイーツ作りへと変わっている。
さあ、次のスイーツを生まれ変わらせよう。2人は手を繋いだまま隣のケースに移り――へへへ、と笑ったティルがライラックにぴとりとくっついた。甘えるようなそれに、名前通りの目が和らぐ。
「どうしたの?」
「やっぱりあなたは魔法使いね。ライラック」
「そうだよ、僕は魔法使いなんだ」
君のためだけの、ね?
そう囁いた言葉が、今日いちばんの彩となってティルの心を染め上げる。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
パウル・ブラフマン
【邪蛸】
ハロウィンの国…?(小首傾げ)
オレも案外好きだけど、住民さん達が泣いてるのはよくないよね!
往こうジャスパー、レッツ・レスキューバレンタイーン♪
第一怖いの発見後、速攻粛清開始。
こわいのは全部胃袋にしまっちゃおうね。
ジャスパーの反応を凝視しながら、おいし~!とにっこり。
琥珀糖に感動を覚えつつ
ぽんぽんの付いた流星モチーフのリボンで更におめかしを。
花壇の外来種をぷちぷちもぐもぐ。
代わりに植えるのは…そだ!
毛むくじゃらのお花の頭左右を三角に整えて猫耳風にしてみよう。
ネコチャン!ネコチャンはかわいいねぇ!
キミ達今日からネコチャンのお花になるなら活かしてあげる。
この場で喰われるか好きな方を選びなよ☆
ジャスパー・ドゥルジー
【邪蛸】
これはこれで俺好みではあるけど
お菓子の国に相応しくないのは確かだな
安心しろ、ぜーんぶ俺らの腹に収めてやる
宝石箱をふんづかまえて中身を強奪
わぁ、こりゃあの爺さん中身を見なくて良かったな
こわいやつらは全部ナイナイ
うん、美味い
代わりに詰めるのはジャスパー様お手製の琥珀糖
俺とパウルの瞳色をキラキラきっちり並べ
こええ花も引っこ抜いて
それにしても活きのいい奴らだな
ライブハウスにでも植えといたら賑やかしに役立ちそう
ま、オウガの息がかかってる以上
やっつけるしかねえけどな(もしゃぁ)
こいつの代わりには何を植えようか…?
ふは、ネコチャン可愛いじゃねえか
無事でいたけりゃちゃんとニャーニャー可愛く鳴くんだぜ
髑髏に悪魔にゾンビにモンスター、蜘蛛の巣に骨、などなど。
『ハッピーバレンタイン(はぁと)』とは程遠い光景をけろりとした表情で眺めていたパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)の首が、こてん、と僅かに傾ぐ。
「ハロウィンの国……?」
「そういうビジュアルにされちまってるよなァ。これはこれで俺好みではあるけど。しかも全部食えンだろ?」
ジャスパー・ドゥルジー("D"RIVE・f20695)の疑問にパウルも少し驚いたような表情をして、ねー、と同意しながら脱バレンタインされてしまったスイーツ捕獲に向け歩き出した。
「オレも案外好きだけど、住民さん達が泣いてるのはよくないよね!」
「お菓子の国に相応しくないのは確かだな」
「往こうジャスパー、レッツ・レスキューバレンタイーン♪」
本日のツアーはこちらと語る笑顔に、ジャスパーもニッと楽しげに笑い――可愛らしい店構えのスイーツショップ、そこの窓からおずおずと覗いたイカ耳状態の猫スタッフにぱちりとウインクして告げる。
「安心しろ、ぜーんぶ俺らの腹に収めてやる」
パウルが「あっ」と声を上げたのは、『第一怖いの』という速攻粛清対象を発見した時だ。
ひょろりとした獣の脚を生やした宝石箱。箱に対し脚の長さが合っておらず、不気味感マシマシのそれ目掛け、ジャスパーも同時にブーツで石畳を蹴る。
お互い言葉を交わさず、けれど意思疎通は常に抜群。宝石箱の前後を2人でおさえれば、どちらも塞がれた宝石箱がカートゥーンアニメのように4本脚をバタつかせ右往左往。前後が駄目なら上だとびよよんジャンプすべく脚を踏ん張って――ガッ。ジャスパーの両手が宝石箱部分をばっちり捕獲する。
「おっと! 行かせねえよ」
「さっすがジャスパー! 早速開けちゃおっか?」
「だな。さてさて中身は……わぁ、こりゃあの爺さん中身を見なくて良かったな」
蓋を開けた途端獣脚は力をなくして消失し、代わりに残った宝石箱の中を埋めていたのは、ひとつずつ表情が違う苦悶顔チョコレート付きビスケットだった。しかもリアルな。開けた瞬間ふわっと上ったチョコとビスケットの香りは、実に美味しそうではある。パウルは歯を食いしばっているビスケットを摘んでしげしげ眺め――ジャスパーとニッコリ笑い合った。
「こわいのは全部胃袋にしまっちゃおうね」
「こわいやつらは全部ナイナイ」
あーん、と口に放り込めばチョコ部分はパキッ、ビスケットの歯応えがサクッと刻まれる。
お味はというと。
「うん、美味い」
「ね。口の水分も持ってかれないし、何枚でもいけちゃわない?」
「なー」
ひょいひょいパクパク、サックサク。美味い美味いと食べていくジャスパーの尾もご機嫌に揺れていて、彼の反応を凝視していたパウルも「おいし~!」の声を笑顔で響かせる。
仲良く2人で味わい尽くした続きは、空になった宝石箱を違うお宝で満たすという一仕事。そのお宝とは――。
「ジャスパー様お手製の琥珀糖を詰めてやろ」
「わあっ、凄いよジャスパー! 本当の宝石箱になってる!」
並ぶ色は自分達の瞳色。感動で目を輝かすパウルがぽんぽん流星なリボンを足せば、宝箱のおめかし度はより上がる。
花壇を地獄ライヴ会場にしていた恐ろしい花も、テキパキぷちぷちからのもぐもぐでお片付け。引っこ抜かれる瞬間までデスボイスを響かせていた髑髏を、ジャスパーは掌で転がしカラカラ鳴らす。
「それにしても活きのいい奴らだな。ライブハウスにでも植えといたら賑やかしに役立ちそう。……ま、オウガの息がかかってる以上やっつけるしかねえけどな」
あ、と歯を立ててパキッと砕き、もしゃぁと腹の中へ収めたジャスパーの目が花壇に向く。外来種の代わりに何を植えようか。一緒になって考えるパウルの頭に、天啓が閃いた。
「そだ! この毛むくじゃらのお花の頭左右をこうして……」
『グギャー!? ヤメロォー!?』
すぐそこでお仲間が頂かれる様を見ていた外来種2号の絶叫は、パウルの耳を右から左へ。それはもう綺麗に流れていった。
「ジャジャーン☆ 三角に整えて猫耳風にしてみたよ♪」
「ふは、ネコチャン可愛いじゃねえか」
『ネ、ネコチャンダトォ!? フッザケ、』
「ネコチャン! ネコチャンはかわいいねぇ!」
ガッッ。絶妙な力加減で掴まれた『ネコチャン』が黙る。
うんうんイイコ。パウルは笑顔で頷き、ほんのちょっぴり力を強めた。
『ヒイ』
「キミ達今日からネコチャンのお花になるなら活かしてあげる。この場で喰われるか好きな方を選びなよ☆」
「無事でいたけりゃちゃんとニャーニャー可愛く鳴くんだぜ」
ジャスパーもにたりと笑えば、かわいい『ネコチャン』はとっても素直になる。
こうしてダミ声ニャーニャー合唱団は誕生し――お菓子の国の歴史に、その名が刻まれたとかどうとか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
うーん何ともひどい横暴。
この甘ーい季節に見た目だけホラーにされるのはねえ。ハロウィンならまだ需要はあるかもだけど。
兎に角想いを無下にされるのもよろしくないし、ちょっとばかり手助け頑張るね。
妖精猫だからあんまり多くは食べられそうにないし、基本は手を加えていい感じにする方向で。
怖いモチーフもデフォルメとかで印象は変えられるよね。
寧ろ怖さをワンポイント、全体を綺麗めな方向に引き立てる方向で愉快な仲間のキッチンお借りして料理の腕を振るうよ。
砂糖菓子の小物とかふんわりと雪のようにクリームで彩ったり…味自体はいいらしいから口に入るまで抵抗ない見た目にできればよし?
完成したら試食もね。
※アドリブ絡み等お任せ
「うーん何ともひどい横暴。この甘ーい季節に見た目だけホラーにされるのはねえ」
ハロウィンならまだ需要はあるかもだけど、と灰色尾を揺らしたクーナ・セラフィン(雪華の騎士猫・f10280)の目には、バレンタインとハロウィンシーズンを間違えたかのような――ここは地獄のバレンタインですと言われた方がまだわかる、そんな有り様が映っている。
「兎に角想いを無下にされるのもよろしくないし、ちょっとばかり手助け頑張ろうか」
妖精猫である自分に、何をどれほど出来るかはわからない。
しかしそれが文字通り猫の手サイズという『ちょっとばかり』だとしても、この国と愉快な仲間達、そしてバレンタインスイーツにとっては紛れもなく大きな希望だ。
「うーん……カサコソしてて邪魔だったから止めてみたけど」
蓋を開けた瞬間に獣脚が消失した宝箱の中身に、よくまあここまでやるねと呆れてるという意味で笑みが滲む。元々は箱にぴったりのスイーツが詰まっていた筈だが、今はどう見ても悪魔召喚に使われそうな本――真っ黒で重厚感溢れる装飾と表紙を抑える骨だけの手というチョコレートケーキが詰まっていた。
「いい匂い。チョコレートを贅沢に使ったのかな。けどこれを全部食べるのは……ちょっと骨が折れるし。うん、決めた」
基本方針。手を加えて、いい感じにする。
その為に貸してもらった愉快な仲間のキッチンで、クーナはケーキを暫し見つめた後、迷わず砂糖菓子を手に取った。
「この小さい砂糖菓子の花を骨の手の薬指に、と」
花の指輪をこさえた次。よく見れば髑髏がびっちり並ぶ額縁めいた装飾には、クリームによる雪のようなふわふわとした彩りを。骨の手の周囲はパステルカラーの甘い花とリボンで飾り、元々の怖さをワンポイントとした形に仕上げていく。
「……こんな感じかな?」
漆黒の骨の手。薬指を飾る花の指輪。雪と花と、リボンの飾り。これは間違いなく、綺麗め方向かつ、口に入るまで抵抗ない見た目に出来た筈だ。
完成したら当然試食を――の、その前に。
「ねえ。よかったら一緒にどうかな?」
もう大丈夫だよの言葉と共に、このキッチンを貸してくれた愉快な仲間へ試食会のお誘いを。
大成功
🔵🔵🔵
榛名・真秀
お菓子の国、そんな場所もあるんだね
大好きなスイーツが大ピンチとあらば
駆けつけないわけにはいかないよ
元の可愛くて美味しい国を取り戻すんだ!
わたしはスイーツ大好きだし
たくさん食べられるから任せて!
この辺りならハロウィンぽくてまだ可愛げがあるかな
んー美味しい!!
でも目玉ゼリーや人面マカロンにに見つめられたら
さすがに引くよね…
ダメダメ、この国を助けなきゃ!
そういうのは目を瞑って食べるよ
やっぱり味は最高!!
そうだ、見た目がアレなやつには
生クリームとかジャムとかかけちゃお
ふふーこれで美味しく食べちゃうもんね
料理は得意じゃないけど
デコレーションなら出来るから
この要領で可愛くできるかな?
いろいろ試してみるね!
その国が存在するのも、不思議な国でいっぱいのアリスラビリンスだからこそ――か。
お菓子の国があると聞いて最初に「そんな場所もあるんだね」と感じた榛名・真秀(スイーツ好き魔法使い・f43950)の心は、次の瞬間には大好きなスイーツが大ピンチという。それを聞いたら、駆けつけないわけにいかなかった。
「元の可愛くて美味しい国を取り戻すんだ!」
スイーツが大好きで、たくさん食べられるわたしにお任せあれ!
元々の姿とはかけ離れた姿のスイーツがシャボンガラスケースに収まる、スイーツロード。それを真秀はふむふむと見つめ――こくり。
「この辺りならハロウィンぽくてまだ可愛げがあるかな」
つん。指先で触れたケースがぱしゃんと割れて、中にいた人面マカロンが一斉に『誰の許可取って開けてんのさ!』『苦しい苦しい許さない』と騒ぎ出す。
「この賑やかさはちょっと可愛げがないかも。でも、スイーツはスイーツだもんね! それじゃあ早速!」
『アッ』
ひょいっと摘まれたマカロンの最後の声は、ぱくっと頬張られて続きが発せられる事もなく。表情に反して可愛いピンク色をしていたマカロンは、サクッと軽い生地に色も味も鮮やかなジャムが甘酸っぱくて――、
「んー美味しい!! こっちの目玉ゼリーは? わわ、ぷるっとしてフルーティ! ……でも」
目玉ゼリーや人面マカロンに見つめられたら、さすがに引く――と思ったそこで首をブンブンブンッ。
「ダメダメ、この国を助けなきゃ!」
引っかかった部分には目を瞑ってもう1つぱくり。
「やっぱり味は最高!!」
そう声を上げてしまうくらい美味しいマカロンとゼリーをひょいパクひょいパク。流れるように味わいながら、ふと思いついた。見た目がアレなら生クリームやジャムをかけちゃえばいいのでは?
「早速、っと……うんうん、いい感じに隠せてる♪ ふふーこれで美味しく食べちゃうもんね。あ、生クリームでマカロンを縁取っちゃおうかな?」
料理は得意じゃないけれど、こういうデコレーションなら自分にも出来る。
キラキラしていく紅茶色めいた視線は他のスイーツへと向かう。
真秀によるメイクアップの波は、楽しく美味しく、そして素敵に広がっていった。
大成功
🔵🔵🔵
セリオス・アリス
【双星】
アドリブ◎
お菓子を怖くないようにね
ふふんと得意顔
こっちにはアレスがいるんだぞ
アレスの作るもんは美味しいし見た目もきれいなんだ
アレスの代わりにドヤッとしながらお菓子をみる
それからハッとして
…俺、もしかして動かないほうがいい?
いやこのままでも美味しいならできる限りで食っちまえばいいだけなんだけど…
視界の端にうつるアレスが整えたあとのお菓子はことさら美味しそうで
もったいない気がする…
ちょっとつまむにしてもアレスが作ったやつがいいなって
思って悩んでたらアレスからの指令が
この…クリームを!
投げるだけならできる!
渡されたボールを片手に周辺のお菓子にクリームを投げ(塗り)まくる
それをアレスが整えたら…
おお〜〜うまそう〜!
ふわふわでうまそうな最強のくまが生まれた
…と同時になるお腹
なぁ、ちょっとだけでもアレスが整えたやつ食っていい?
ちょっと…いやたくさん…
やっぱでかくてかっこいいヤツが最強じゃん?
食べたいな〜っと上目遣いでおねだり
俺用にかわいいじゃなくてかっこいいにしてくれたら
残さず食べるぞ!
アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎
人々が笑顔の為に作ったであろうお菓子達をこんな形に…
(誰かの料理に手を加えるのは…とは言ってられないね
それに、)
君にそう言ってもらえると僕も自信がつくな
ああ。…お菓子達には悲鳴ではなく笑顔を作り出す魔法がある事を思い出させてみせるよ
エプロンを付け、料理鞄から材料や調理器具を取り出し
【満星の料理番】を駆使しよう
目玉ゼリーや人面マカロンはチョコレートでコーティングし
フルーツや砂糖の花で飾るよ
…セリオス?
(このまま食べるか、僕のお菓子を待つか悩んでる…?
作る側としては嬉しく感じるが
待たせてしまうのも…そうだ)
良ければこのクリームをお菓子に塗ってくれるかい?
思い切り、やってほしいんだ
ここからはふたりで
お菓子がクリームに怯んでる隙に
テディベア風立体ケーキに整えていこう
次は…ん?
(…お腹の音とおねだりは反則…)
…特別、だよ?
セリオス用に作るのは
格好良くを意識した大きなチョコレートのドラゴン
…張り切りすぎたな
(彼に甘くなったのは甘い香りのせい…にはならないか)
どうぞ召し上がれ、勇者殿
腕のあるパティシエなオウガによるものなのか、それともユーベルコードによる何やかんやなのか。心ときめくバレンタインから大きく変貌させられたスイーツに、アレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)は悲しげに眉を寄せた。
「彼らが笑顔の為に作ったであろうお菓子達をこんな形に……」
「しかも全部こんな風にされてんだろ? ……このお菓子を怖くないように、ね」
ハロウィンであれば違和感がないだろうスイーツ郡に、セリオス・アリス(青宵の剣・f09573)に瞳に星がきらり。
「こっちにはアレスがいるんだぞ。アレスの作るもんは美味しいし見た目もきれいなんだ」
シェフ・アレクシスの腕前を誰よりも知るからこそ、ふふんと浮かべた得意顔はキラキラ付きだ。向けられた言葉と絶対的で揺るがない信頼に、アレクシスの憂い顔はふわりと笑顔に変わる。
「君にそう言ってもらえると僕も自信がつくな。ああ。……お菓子達には悲鳴ではなく笑顔を作り出す魔法がある事を思い出させてみせるよ」
「頼りにしてるぜ、アレス」
ぐっと作った拳にアレクシスも拳をこつんと当て、ひらりとエプロンをつけるとすぐに鞄から材料や調理器具を取り出していく。そんなアレクシスには、一つでも多く『魔法』を届ける為のユーベルコードもある。ワクワク見守るセリオスの前でつるりとした目玉ゼリーや人面マカロンがくるりとチョコレートで包まれる様は、魔法のようだ。
「うーん、そうだな……ここに花を飾ろうか」
「お、フルーツ! そっちの花は砂糖か?」
「ああ。どちらもチョコレートとの相性は抜群だよ」
「へー!」
どんどん美味しそうになっていくスイーツ達。これは完成が楽しみで仕方ない――けれど。
(「俺、もしかして動かないほうがいい?」)
料理担当は、アレスだ。
俺は――何ができる? 食べる事には自信がある。
目の前にはシェフ・アレクシス未着手のスイーツがわんさかあるけれど、それらを楽勝で平らげられるだろう。
(「いやこのままでも美味しいならできる限りで食っちまえばいいだけなんだけど……」)
視界の端に映るスイーツ――アレクシスが整えた後のものは、ことさら美味しそうだ。
視界の端におさめただけで心そそられるものを口にしたら、どれだけ満たされるだろう?
(「もったいない気がする……ちょっとつまむにしてもアレスが作ったやつがいいな」)
アレクシスの料理の腕を知るからこその悩みは、なかなか出口が見えない。どうしたものかと悩みながら、カサコソびょんびょん通過しようとした宝石箱を問答無用で捕獲し、90度回すだけの鍵をパチンとやって蓋を開ける。
中に詰まっていた、ひんやりとした淡いピンク色――腸形アイスクリームケーキを見ても悩みは解決されなかったし、アイスの下がどうなっているかの興味も湧いてこない。うーんうーんと心の中で悩む気配にアレクシスが気付く。
(「……セリオス?」)
セリオスの表情。眉間の皺。空気。――もしかして。
(「このまま食べるか、僕のお菓子を待つか悩んでる……?」)
真剣に悩む姿を見ていると、作る側としては嬉しいものの待たせてしまうのは心苦しい。けれど瞬き1回の時間で終わらせる事はさすがに不可能――あ、そうだ。
「セリオス」
「な、何だアレス?」
一瞬だけ跳ねた肩には気付かないふり。アレクシスの笑顔と指が、ボウルの中でくるりと纏まっている白色を示す。
「良ければこのクリームをお菓子に塗ってくれるかい?」
セリオスの表情がハッと明るくなった。
これは! シェフ・アレスからの指令!
「この……クリームを!」
「そう。思い切り、やってほしいんだ」
「投げるだけならできる!」
んっ? 投げる?
泡だて器を振ってクリームを投げつけヒットさせるセリオス――問題なく想像出来た。
結果、アレクシスの停止は即刻解除されて。
「それじゃあ、ここからは」
「ああ、ふたりで!」
アレクシスはスパチュラを手に、セリオスは渡されたボウルをしっかり片手で抱え、泡だて器を装填した。きらきらとした視線が交差し――それぞれが挑むものへと明るく向けられる。
「いっくぜぇ!!」
ゾンビのケーキ、悪魔のケーキ、凶悪な獣のケーキ目掛け、セリオスはクリームをたっぷり抱えた泡だて器をブンッ! ヒットしたクリームは時に目潰しとなり、時に口を塞ぎ、時に顔面を真っ白に塗り潰す為、やられたケーキ達は土台の上でもごもごするしかない。
アシスタント・セリオスの豪快で元気いっぱいのクリーム塗りに、くすりと笑ったシェフ・アレクシスも負けていられない。モンスターなケーキ達が怯んでいる隙を、スパチュラで表面を滑らかに整え、正面にひとつ、その上部ニ箇所にクリームをもりっと絞ってまたまた形を整えて――。
「おお〜〜! ふわふわで最強にうまそうなくまだ!」
「テディベア風の立体ケーキにしようと思ってね。次は……」
ぐぅー
「ん?」
「あ」
セリオスの歓声に入ったお腹の虫による合いの手で、2人の目は揃って瞬く。ついでに天使も通っていった。その後に続いたのは、お腹の虫の主による「なぁ」と窺う声。
「ちょっとだけでもアレスが整えたやつ食っていい? ちょっと……いやたくさん……やっぱでかくてかっこいいヤツが最強じゃん?」
範囲が増えている。けれどお腹の音とおねだりは対シェフ・アレクシスにおいて反則級に効果的だった。
「……特別、だよ?」
「やった!! あ、俺用にかわいいじゃなくてかっこいいにしてくれたら残さず食べるぞ!」
なんて。
アレクシスが作ってくれたものなら、残す事はまずないだろうけれど。
無邪気な笑顔にアレクシスが笑みをこぼし、それじゃあセリオス用にと作り上げたものにセリオスの目がまあるくなる。材料はチョコレート、色は蒼黒、表面にはスプレーでふわっと星屑めいた小さな煌めきを宿したそれは、大きくてカッコよさバッチリのドラゴンだ。
(「……張り切りすぎたな。彼に甘くなったのは甘い香りのせい……にはならないか」)
けれど。
「どうぞ召し上がれ、勇者殿」
その瞬間輝いた笑顔の前では、そんな憂いも甘く蕩けていく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
冴島・類
【白夜】
ありす達の為に!と
つくりあげたおもてなし
楽しみに満ちてた心が
怖いや悲しいで満ちるなんて
うん、リティ
負けないぞ!と奮起できるよに
出来る手伝いを頑張ろうね
しかし…思った以上に気合い入ってるな
花壇に広がる光景と
満ちるがなりの合唱に遠い目
香りは甘いし食べられるだろうね
リティの恐れはない様子に
僕の魔女さんは頼もしいねと笑み
どう手を入れ、活かせるか見回し
曲は周りの雰囲気に影響大きいし
骸骨さん達は食べちゃおうか
悪魔さんや薔薇さんは
おめかしでだいぶ変わる気もするんだ
歌うお顔をぱちん刀で剪定し齧ってみよう
ん、味はいける…赤はべりーかな?
ひとかけリティにも
美味しいよ、あーん
とは言え全ては食べられない
彼女が吸収してくれたら
はしたないなんて過ぎりもしないが
胸焼けしてないか気にし
無理ない範囲でねと、お茶で一息もしよう
ここからはおめかし時間かな
楽しげな歌に作りましょ〜♪と鼻歌重ね
僕も花型のお砂糖さんで空いた場を賑やかにしたり
赤いそーすが散った先は粉糖で覆って
この国の子達の好きな歌とかあったら
聞けたら良いねぇ
城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ
感謝と想いを伝える素敵な日
住民さん達も色んな方法で準備してたのかな
再び喜びの景色が花咲くよう
類、お手伝いしようね
花壇さんを訪れたら
歌う骸骨さんの大合唱
まぁ、賑やか…!
このコ達も全部食べれるのかしら…?
お菓子作りは出来るコト限られるから
住民さんが外に出れるようにしたいね
怖、グロ系には特に驚くコトは無いから
取り除いた方が良い所は類に見てもらい
お庭仕事の摘心のように、普段通り整えるキモチで
旦那さんの絶ち捌きも流石で
戦でも剪定でも頼りになるの
あーんに大きく口を開けて
本当、甘酸っぱさが美味しい!
意地悪さんでもその技術は凄いの一言だわ
抓めないのは茨で覆って
生命力吸収で頂きます!
…旦那さんに窘められるかな
ふふ、はーい
私もきょうだいバラ達も
香りがチョコにならない程にね
摘み取った所を
お砂糖さんとリボンやハートさんで飾ろう
創造魔法で飾りを編みつつ…
違うお歌なら
皆も気になって出て来てくれるかな
♪Bonボンボン~
ポンっと お花も顔出す程の
想いのショコラを作りましょう~
さあ、みんなで 一緒に♪
バレンタイン。国や地域によっていくらかの違いはあれど感謝と想いを伝える点はお揃いで、城野・いばら(白夜の魔女・f20406)にとっては『素敵な日』だ。いくつもの感謝や想いが花開く、年に一度だけの日。バレンタインデー。
「住民さん達も色んな方法で準備してたのかな」
材料を集めて、レシピを考えて、試作して――完成したスイーツで国のあちこちを彩って、その日に備えていた筈だ。けれどいばらと冴島・類(公孫樹・f13398)が聞いた国の現状は、それとは正反対だった。
「ここには、彼らが『ありす達の為に!』とつくりあげたおもてなしが在ったんだね」
楽しみに満ちていた心が『怖い』や『悲しい』で満ちている。
御伽噺には意地悪な継母や魔女、王様女王様が登場するものだけれど、オウガ達は彼らに負けていないと嫌でもわかった。
「類、お手伝いしようね」
「うん、リティ。『負けないぞ!』と奮起できるよに、出来る手伝いを頑張ろうね」
いばらは両手をぎゅっと。類は片手をぐっと。拳を作って視線を合わせ、しっかり頷きあった夫婦はスイーツ達の現状を見て――目をぱちくりさせた。
『アァーン!? カップルガ来テルゾ、オイ!』
『俺達ノ十八番ヲ聴カセテヤロウゼェ! ワンツースリーフォー!』
ギャーギャーヤーヤー、ヴォウヴォウヴォオヴォオ。骸骨チョコレートによるがなりを効かせたデスボイス大合唱は、バレンタインの空気に凄まじい耳鳴りを添えるよう。悪魔チョコレートはそれにゲラゲラ嗤って大喝采だ。
「思った以上に気合い入ってるな」
「まぁ、賑やか……!」
けれど何と歌っているのだろう? サムライエンパイアとアリスラビリンス生まれの2人には少々聞き取りづらく、バレンタインを壊してやるぞと意気込んでいる事だけはふんわりとわかった。
「このコ達も全部食べれるのかしら……?」
「香りは甘いし食べられるだろうね」
恐ろしい見た目のチョコレートで、よくわからないけれど歌っている内容は穏やかじゃない。けれど恐れた様子のない妻に「僕の魔女さんは頼もしいね」と咲えば、いばらも嬉しそうに咲った。
「お菓子作りは出来るコト限られるから、住民さんが外に出れるようにしたいわ」
「そうだね。どう手を入れて、活かすか……」
元々はチョコレートローズの花壇だった。怖くないものにするだけでなく、この場所にも合うものにしたい。類は周囲を見て、未だ響く合唱をに意識を傾けてみた。聞き慣れないけれど、やはりこれは。
「曲は周りの雰囲気に影響大きいし、骸骨さん達は食べちゃおうか。悪魔さんや薔薇さんは、おめかしでだいぶ変わる気もするんだ」
「お食事とおめかしでの、お庭仕事ね」
この国の日常が戻って来るように。
日々我が家の庭でしているように、普段通り整えるキモチで。
やる気を宿した花緑青の視線に、骸骨達はいばらに恐れられていないのだとようやく気付いた。俺達ミタイナノッテ、女ハ大体苦手デハ――? アレレといった様子で自分を見る彼らが何に驚愕しているのかわからなくて、いばらはきょとりと首を傾げた。
「お歌はもういいの?」
『チキショウ、負ケルカ! 2曲目行――アッ』
ぱちん。類の刀が流れるように髑髏をひとつ剪定し、摘まれたての髑髏は歯を立てられてパキッ。気持ちの良い音を刻んで類の口に収められる。
「ん、味はいける……赤はべりーかな? リティ、美味しいよ。あーん」
流石の絶ち捌きに目をきらきらさせていたいばらは、差し出された一欠片へ大きく口を開け、ぱくり。口元へ寄せられた時に感じた香りが頬張った瞬間に花開き、花緑青色がぱあっと煌めく。
「本当、甘酸っぱさが美味しい! 意地悪さんでもその技術は凄いの一言だわ」
その美味しい意地悪さんのもとでぱちんぱちんと剪定の音が刻まれる度、彼らの数が減っていく。けれど彼らは、まだまだまだまだいるワケで。全て、は難しいかなと類が考えながら1つ頬張り、口内でぱきんと割った時だ。髑髏や悪魔達がしゅるるんと茨に覆われ、静かになっていく。すっかり見慣れた、彼女の茨だ。
(「窘められるかな」)
甘い美味しさと一緒に頂きながら隣の旦那さんをチラリと見れば、いばらと目が合ってぱちり瞬いた目が優しく綻んだ。
「無理ない範囲でね。たまにはお茶で一息もしよう?」
この量だ、胸焼けしていないか気にはなったけれど「はしたない」なんて過ぎりもしなかった。差し出された優しさにいばらも笑い、手にした温もりにくすくす笑う。
「ふふ、はーい。私もきょうだいバラ達も、香りがチョコにならない程にね」
剪定が進んで髑髏の数が減っていくうち、「次ハ自分達ノ番デハ?」と察した悪魔達の口数が減り、態度も大人しくなっていく。けれど彼らも、この国のバレンタインに割り込んだお邪魔虫。夫婦の柔らか笑顔を向けられ一斉にビクゥッ!とした彼らも、ひとつ残らず綺麗に摘み取られた。
「ふう……お仕事ひとつ、おしまいね。お疲れ様、類」
「うん、リティもお疲れ様。ここからはおめかし時間かな」
「お砂糖さんと、リボンやハートさんの出番ね!」
ふわり。宙を躍った魔法の糸で編む形は、この国のバレンタインにピッタリの甘く可愛らしい飾り達。ふわりくるりと編み上げていく糸の動きに、ルンルン楽しげな歌声が寄り添い出す。
♪Bonボンボン~
ポンっと お花も顔出す程の
想いのショコラを作りましょう~
さあ、みんなで 一緒に♪
「作りましょ〜♪」
「ふふ!」
いばらの歌に類の鼻歌も重なって、恐ろしい花壇から空っぽ花壇になっていたそこが砂糖の花々で賑わい始め、色とりどりのリボンとハートでおめかしされていく。赤いソースが散った先は、粉糖をふあふあと。
「わあっ、雪みたいだ!」
元気いっぱいの声――は、自分達じゃない。ハテナを浮かべ振り返った2人は、お店の窓から顔を覗かす白ネズミパティシエと目が合った。丸い耳も、白いおヒゲもぴんっとしている。小さな目もキラキラだ。
「よかったら一緒にいかが? お砂糖さんもリボンとかも、いっぱいあるの」
「え、いいの?」
「勿論」
この国のバレンタインを一緒に取り返そう。
メイクアップのお供は楽しいお喋り――この国で流行っている、歌の事。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『はらぺこねこばるーん』
|
POW : I’m Hungry
【食欲】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
SPD : I’m Angry
【口から刺し貫く棘】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : I’m Lonely
【犠牲になったアリス】の霊を召喚する。これは【武器】や【呪い】で攻撃する能力を持つ。
イラスト:透人
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ファイナル・メイクアップ
「凄い凄い! あんなに怖かったのが、ひとっつも残っちゃいないわ! ありがとう!」
「ほお~、こりゃあ見事な腕前じゃ……良かったらどうやったのか、ちょぴっとでいいから教わりたいのう……」
「見てみなよこのエレガントなデザイン……恋が始まると思わないかい……」
「ほんとねえ~。あっちにも凄く可愛いのがあって、なんだか元気と食欲が出てくるわ~」
店から、工房から、家から。愉快な仲間達が笑顔で飛び出し、新しい姿を得たバレンタインにきゃあきゃあと大はしゃぎ。中には職人魂が刺激されて、熱心にスケッチを取る者もいた。
お喋りの花もどんどん咲いて、広がって、国全体をぽかぽかと包みこんでいくようで――そのあたたかさに、遠くでぷかぷか漂っていた『猫』が耳をぴくりとさせ、大きな牙が並ぶ口からぽたぽた、ぽたぽた。ヨダレを垂らしてやって来た。
『Why? Why?』
『Where? My sweets! Hey,My sweeeeets!』
変えたものを変えられた。ぼくのおかしがない、どこなのと幼い声が怒り出す。
けれど腹ペコで怒りん坊な猫達は、目新しいケーキにすぐ興味を抱いた。
食べちゃえ、あれもこれもそれも、全部ぜーんぶ食べちゃえ。お腹が空いたお腹が空いた。食べたい食べたい。食べられないなんてやだやだ! 全部ぼくのだわたしのだオウガのものだ。
貪欲さをぎらぎら浮かべ、反発し合う磁石のように顔面上をめちゃくちゃに動く目。愉快な仲間達は真っ青になってそれぞれの店や家へ慌てて飛び込ん――で、箒や椅子を掴んでまた飛び出してきた。
「も、もうあんた達にはひとつもやらないわ!」
「そそそそそそうダッ! まッ、ままっけなイぞォ!!」
けれど怖がりな彼らにはそれが精一杯。
だから『国』が、動き出す。
吹き込んできた温かい風――焼き上がっていくスポンジやクッキーの香りでいっぱいの風は、吸い込めば力が湧いてくる。
パキパキと聞こえ始めた音の正体は、メイクアップを施された花壇達の蔓や蔦や茨達。透き通ったそれはフルーティな飴で、彼らは悪い猫達を囲って捕まえてと、抜群の頼もしさで加勢してくれる筈だ。
チョコレートの噴水からは騎士や魔法使いがざぱあと現れ、ファイティングポーズをびしり。ゼリーの脚を取り戻した宝石箱もやって来て、ゼリーの脚で地面を強烈に叩いている。彼らの一撃はスパイスが効いたスイーツのように鋭いだろう。
ひゅるると飛んできたカラフルなチョコレートビーンズの群れは、猟兵達へ寄り添うように翔け続けている。猟兵の目が――意識が敵へ向けば、彼らも一斉に翔けていくに違いない。
バレンタインとこの国を取り戻す最後の仕上げが、今、始まる。
神臣・薙人
月灯
折角取り戻した暖かな光景
オウガに奪わせる訳には行きません
ここでお帰り頂きましょう
私も力を尽くします
愉快な仲間の皆さんや
お菓子の皆さんも
一緒に戦って下さい
開戦と同時に白燐桜花合奏使用
可能な限り多くの仲間が
回復の範囲に入るよう位置を取ります
癒しはお任せ下さい
私も葛城さんを信じていますから
アリスの霊が現れた際は
速やかに花吹雪へ巻き込み撃破を試みます
…貴方達の命も
これ以上踏み躙らせませんから
可能な限り蟲笛の演奏を継続しつつ
お菓子の国の皆さんへ攻撃が向いた際は
斜線上に立って妨害します
大丈夫
この音色が響き続ける限り
誰も倒れはしませんからね
回復の必要が無ければ敵に近付き
積極的に花吹雪へ巻き込んで行きます
葛城・時人
月灯
祭をこれ以上滅茶苦茶にさせないよ
愉快な仲間達も傷つけさせない
「凄い助かる!任せた!」
ダチの桜の守護は鉄壁
立ち上がった皆を絶対に護ってくれる
俺は安心して攻撃に専念できるね
甘い香りを胸いっぱい吸い込むと
俺も力がみなぎるよ
「お菓子は、元気と勇気と癒しをくれるもの!」
特に俺には効果覿面だよ
「一緒に戦って!」
チョコの騎士や魔法使い、飴の蔦たちに声を
周辺に被害が出そうな範囲攻撃は今日はご法度だね
彼らが溶けたりも俺が悲しいし
ならこれだ
「喰らえ!」
白燐剣光大神楽を詠唱
呼び出されてしまったアリスには申し訳ないけど
高速・多重詠唱で対処
バルーンも一寸可愛いとは思うけど
「悪さは此処までだよ!」
皆と最後まで闘おう!
『All my sweets! All my sweeeeets!!』
癇癪を起こした子供のように叫び、両目は顔の上をぎゅんぎゅんでたらめに動き回る。それを大量の『はらぺこばるーん』が一斉にするものだから、愉快な仲間達から次々に悲鳴が上がった。それでもその場に踏み留まった彼らが少しでも安心出来るよう、薙人と時人は愉快な仲間達の前に出て、自らを壁とした。
「折角取り戻した暖かな光景……オウガに奪わせる訳には行きません。ここでお帰り頂きましょう」
「ああ。祭をこれ以上滅茶苦茶にさせないよ。愉快な仲間達も傷つけさせない」
スイーツ作りの楽しさ。出来上がったスイーツの可愛さや綺麗さ、美しさ。食べた瞬間生まれる『美味しい』の喜びと幸せ。そして、この国と、彼らを守る為。
「私も力を尽くします。愉快な仲間の皆さんやお菓子の皆さんも、一緒に戦って下さい」
薙人の言葉に甘く香ばしい風がくるりと躍り、髪や衣を遊ばせる。言葉を持たない風から伝わるのは温かなものばかりで――その風も薙人の言葉と共に届いたのだろう。愉快な仲間達の顔にあった緊張感はいくらかほぐれていて、彼らの目に蟲笛を構えた猟兵が映っていた。
風と共に蟲笛の音が翔けていく。なんだなんだと訝しむようにジグザグと飛び始めたばるーん達は、次の瞬間眩い桜吹雪に覆われ悲鳴を上げた。桜吹雪の勢いはざあざあと音を響かせるほど荒々しい。けれど。
「凄い助かる! 任せた!」
時人には、立ち上がった愉快な仲間達も守ってくれる『ダチ』からの鉄壁の守護だからこそ、安心して敵だけを見ていられる。胸いっぱいに甘い香りを吸えば、薙人からの守護に並ぶ力も漲ってきた。
『Uhhhhh!』
「そんな風に唸っても意味はないぞ! お菓子は、元気と勇気と癒しをくれるもの!」
特に超がつくほど甘党である自分にとって『お菓子』は効果覿面だ。
「一緒に戦って!」
『!!』
白燐蟲ククルカンを現した時人の溌剌とした声にチョコの騎士と魔法使い達がザッと獲物を構え、飴の蔦もシュシュンッと機敏に動く。多分今のは蔦なりのファイティングポーズだろう。時人はくすりと笑って即、ばるーん達に視線を戻した。
『I’m......I'm Lonely!!』
ばるーん達が声を重ねた瞬間、遠い遠い彼方から悲痛に満ちた音が響き渡った。波のように押し寄せたそれが悲鳴と泣き声の塊だと理解した瞬間、それらがひとつひとつ形を持って現れる。
「あっ!」
少年少女。青年。成人。もっと年上の、男女。いつどこで犠牲になったかわからないアリス達に、愉快な仲間達がぎゅうっと辛そうな顔になった。お菓子の騎士達も甘い体を強張らせる。
(「あれは」)
「!」
薙人は眉根を寄せ、時人もハッと息を呑む。
けれど笛の音は止まらず、時人も傍らの白燐蟲ククルカンを消しはしない。一呼吸より短い詠唱に応え光剣になったククルカンの柄を、時人はしっかり握り締めた。犠牲になった上、こうして召喚されてしまった彼らに申し訳ないけれど――だからこそ。
「喰らえ!」
剣舞のように足を運びながら迷わず放つ太刀筋は、ひとつで終わらない。次々に見舞われる光り輝く衝撃波にばるーん達がたまらず目を瞑り――風船の体を縮こまらせたそこへ桜吹雪が覆い被さった。
「……貴方達の命も、これ以上踏み躙らせませんから」
薙人が僅かな間だけ蟲笛から唇を離して伝えた想いと、光剣を揮い続ける時人の真っ直ぐな視線。喚び出されたアリス達の悲しみに歪んでいた顔が、その姿が光と桜吹雪に包まれて消える直前。ほろりと安堵を浮かべていた。
『I’m Lonely,I’m Lonely,I’m Lonely!!!』
「アリス達にひどいことしないで! これ使って!」
叫んだ愉快な仲間がシュッと投げた物をパシリと受け取った時人は破顔した。
「フルーツグミだ! ありがとう! うわ、美味しい!」
「笛を吹いて下さってるあなたにはこちらを」
「!」
はらりひらり。チョコの香りが、と気付いた薙人の周りを甘い花弁が舞い続ける。守られているとわかって、薙人は軽い会釈で感謝を伝え、蟲笛を奏で続けた。
(「大丈夫。この音色が響き続ける限り、誰も倒れはしませんからね」)
彼らも。友人も。
向けられた視線に時人も明るく頷き返し、騒ぐばるーん達を見つめ光剣を構える。
一寸可愛いとは思うけれど、それはそれ、これはこれ。
「悪さは此処までだよ!」
皆と最後まで闘って――お菓子が生む幸せを、守り抜く。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
おおー…これは「お菓子の国」って名に恥じない決戦模様だな…!
それじゃあ平和なバレンタインを取り戻す手伝い、総仕上げといくか
お菓子でできた彼らが前線を支えてくれるなら、こっちは術で畳みかけるだけだ
さあ、空腹も、執着も、ここで終わりにしようか
【祈り】を主へ捧げ、ねこばるーんに示すのは――欲からの解放を
甘美な誘惑に熱をあげるのではなく、ただ穏やかに満たされる安らぎを示す
聖句を紡いで、術を放つ
狙うはオウガたらしめる欲望そのものだ
お前が何もかもに満たされず、ただ暴れ続けるというのなら…その力を振るう理由ごと、ここで終わらせるまでだ
出来立てスイーツ香る風。チョコレート噴水から現れた騎士や魔法使い。飴の蔦。そして、元気を取り戻した愉快な仲間達。輝きを取り戻した国の様にギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)が浮かべる笑みは、サングラス越しでもよくわかる。
「おおー……これは『お菓子の国』って名に恥じない決戦模様だな……! それじゃあ」
ニヤリ。不敵な笑みは、不機嫌を露わにする『はらぺこばるーん』達へ。
「平和なバレンタインを取り戻す手伝い、総仕上げといくか」
その言葉を後押しするように風がひときわ強く吹いた。それに押されたばるーん達が目をぎゅるぎゅる移動させ、おなかがすいたんだと叫びだす。一塊になってぐわんと響いた叫声に愉快な仲間達が「わあっ」と跳び上がるも、こっちに来たらこうだぞと箒や椅子を構える姿は頼もしい。それに。
『――!』
噴水から騎士達が飛び出し、その周りを素早く伸びた飴の蔦がカバーする。ばるーんが空へ逃げようものなら騎士が跳び、蔦が伸び、噴水に留まっている魔法使いからもチョコレートの矢が雨となって降り注ぐ。
前線を任せられる頼もしい仲間達に、ギュスターヴの笑みはもっと明るくなった。
『Hungry! Hungry!! Hungryyyyyy!!!』
「さあ、空腹も、執着も、ここで終わりにしようか」
何もかもを食い尽くそうとする欲からの解放を。その為の道標《術》はここにある。必要なものは主への祈りと聖句、オウガをオウガたらしめる欲望そのものをしっかりと捉える目。そしてお菓子な仲間達もいる今、敵から攻撃を受ける心配がない。つまり、祈り放題だ。
1、2、3、4――ばるーん1体ずつへ向けた祈りと聖句が清らかな光となり、黒猫風船の体を次々に貫く度に癇癪を起こしていたばるーんが途端に大人しくなって、萎んでいく。ふにゃふにゃと地面に落ちたばるーんはそのまま空気に溶けて消え――、
「お前が何もかもに満たされず、ただ暴れ続けるというのなら……その力を振るう理由ごと、ここで終わらせるまでだ」
ギュスターヴの目が次のばるーんを捉え、新たな光が紡がれる。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふえ?ホラーなお菓子は全部元に戻ったはずなのに、まだホラーなねこさんが残ってますね。
まだこんなにホラーが残ってるじゃない、何をやってるんだいって、
アヒルさん、それはいじわるな継母さんのつもりですか?
ふええ、仕方ありません。
もう一度お洗濯の魔法でしつこいホラーは落としてしまいましょう。
あと、アヒルさんもわざわざホラーを探さないであのオウガさんを倒してくださいね。
一見すると、可愛い黒猫風船だった。
アンバランスな目の配置とギザギザ歯の口。聞こえる声は子供のもの。
可愛い、と言える黒猫風船に見える。
けれど『おなかがすいた』『ぜんぶぜんぶじぶんたちのおかしだ』と重なる声や、ヨダレを垂らして集団で漂う様はフリルが知っている『可愛い』とはかなり遠い。大きな目は驚きでまん丸になっていた。
「ふえ? ホラーなお菓子は全部元に戻ったはずなのに、まだホラーなねこさんが残ってますね」
『ガアガア、グワワ、ガア』
するとアヒルさんが首を左右に振って翼でやれやれジェスチャーの後、ぺちりと叩いてきた。まだこんなにホラーが残ってるじゃない、何をやってるんだい。そう言ったアヒルさんは、動きといい喋り方といい、何だか――。
「アヒルさん、それはいじわるな継母さんのつもりですか?」
『グワ! グワワッ、ガアガア!』
正解だよ! ほらっ、さっさとおし! 意地悪継母モードはまだ続くようで、クチバシでもツンツン叱咤されたフリルは慌てて駆け出した。
「ふええ、仕方ありません」
チョコレート噴水から現れた騎士や魔法使い、飴の蔦も加勢してくれている。出来立てクッキーやケーキの香りを纏った風も、背中を押してくれる。フリルは両手にユーベルコードを集中させながら、騎士達と一緒にはらぺこばるーんへと向かい――その足元を、素早くついてくるアヒルさんを見て「あっ」と声を上げた。
自分を置いていくのではなく、ついて来てくれるのはいいのだけれど。
さっきからキョロキョロしている理由は、もしかして。もしかして。
「あと、アヒルさんもわざわざホラーを探さないであのオウガさんを倒してくださいね」
『グワ~』
仕方ないな~とアヒルさんが走りながらやれやれポーズをした。継母モードからいつものアヒルさんになっている。フリルは困ったように溜息をついて――おなかがすいたと、体を大きく膨らませたばるーん目掛けジャンプした。
「もう一度お洗濯の魔法です。しつこいホラーは落としてしまいましょう」
大成功
🔵🔵🔵
クーナ・セラフィン
好評なようでよかったよかった。
後は…欲張りオウガを叩きのめしてやらないとね。
ふむ、これはなんとも素敵な援護だ。
お菓子の皆の力を借りて黒猫を叩きのめす。
刺し貫く棘を放つなら私を見る筈、そこに視線を合わせてUC起動、攻撃タイミングと軌道を見切りひらりと回避しよう。
もし味方を狙う軌道になりそうなら横からオラクルで切り払い逸らして守る。
ひらりひらりと黒い風船の間を駆け抜けわざと派手に立ち回り敵の注意を惹き付けて…チョコの騎士や魔法使いさん達が包囲する時間十分稼いだらさあ、攻撃の時間だ。
彼らの攻撃に乗じて銀槍でオウガの風船貫いて一気に仕留めにかかろうか。
これで平和は守られた、かな?
※アドリブ絡み等お任せ
オウガ達によって変えられていたスイーツ達は、無事にバレンタインの輝きを取り戻した。クーナと一緒に試食を楽しんでから外に出た仲間達も、恐ろしさのなくなったバレンタインスイーツに声を弾ませ笑顔を咲かせてと、すっかり元気になった様子にクーナは目を細め尾を揺らした。
(「好評なようでよかったよかった」)
後は――。
「欲張りオウガを叩きのめしてやらないとね。数は多いけどまあ問題ないかな……おっと」
全身をふんわり撫でていった香りは、紛れもなく出来立てスイーツの温かな香り。チョコレート噴水の騎士や魔法使い、飴の蔦も現れれば、クーナの口からはくすくすと楽しげな笑みがこぼれた。
「ふむ、これはなんとも素敵な援護だ。それじゃあ……一緒にあの黒猫を叩きのめそうか」
白雪と白百合の銀槍を構え、敵へと掲げれば、騎士達もそれぞれの得物を手に勇ましく呼応する。その空気にはらぺこばるーん達がギザギザ歯を露わに叫びだした。
『I’m Angryyyyyy!!!』
それは機嫌を損ねた幼児の猛烈な叫びに似ていた。けれど黒猫達の怒りっぷりをクーナは「ご機嫌ななめだね」とさらり躱し――とんっ。軽やかに跳んだ次の瞬間、自分がいたそこに突き刺さった棘を空中で一瞥してすぐ、黒猫の目を見ながら風のように駆け続ける。
『No! No!!』
にげちゃだめと怒られても、それを聞いてあげる理由はない。彼らの機嫌も、視たものも、ひらりひらり。彼らの間を駆け抜け躱し、時には大きく跳躍し黒猫達の視線を釘付けにし続ける。自分の顔のすぐ横を棘が掠めてもクーナは顔色ひとつ変えず――黒猫達の周りに出来上がった『チョコレートの壁』に、ニッコリ。
「さあ、攻撃の時間だ」
チョコの剣や魔法の矢が一斉に黒猫達へ向かうのに合わせて迫る。甘く美味しい風も受けたそのスピードは、黒猫達が幼い怒声をあげるより速い。剣と魔法の矢と、そしてクーナが駆けた軌跡をなぞるように黒猫風船が次々破裂し、その音は追いかけるのも大変な旋律のよう。その音が終わった後、癇癪の声も黒猫風船も、随分と収まっていて。
「これで平和は守られた、かな?」
仲間達の歓声が、わっと咲く。
大成功
🔵🔵🔵
城野・いばら
【白夜】
愛称:リティ
国の皆が負けないって、芽吹き立った姿
なんて立派なのかしら
大切で…在り方で
うん、奮い立つこころを育てるお手伝いを
飴の蔓茨さん達、護りはお任せしても良い?
飛出たネコさんをチクってしたり捕縛してくれたら、
私達は安心して前に出れるわ
今日のリティも全力前進
茨に変えた手で、大きなお口に茨鞭をおみまい
お腹減ったコからいらっしゃいませ?
トゲトゲで良ければ差し上げるって、
棘で串刺したら食欲の勢いも落ちるかな
怪力籠めた鞭で吹き飛ばしたり
命中や回数重視で集中攻撃
数で押されそうになっても大丈夫
周りを良く見てくださる類と黒曜、
護り上手な飴花さん達と一緒だもの
最後はハイタッチで
皆、とっても立派だったよ
冴島・類
【白夜】
住人さん達の負けないぞ!の気合いと共に
甘くて香ばしい風…
応援してくれる姿と勇気に嬉しくなるね
気持ちが奮い立てば
国の力も増す
不思議の世における
こころの大事さがよくわかる
リティ、お花さん達と一緒に
怒りん坊さんにお還りいただこうか
彼らが猫さんの邪魔をしてくれるなら
攻撃に集中できそうだ
リティの全力前進!な鞭の鋭さに怯んだら
勢いも弱まりそうだ
僕は彼女と花達と連携し駆け
薙ぎ払いで攻撃しつつ…
数だけでなく、溜め込んだ食欲で膨れ
強化されてしまったら
黒曜の刃で解除し斬り崩して
欲で膨れた分を、頼むよ
崩れた隙は、守護の茨が見逃さないさ
平和を取り戻せたら
リティと住人さん達とはいたっち!
頑張ったねと労い合えたら
愉快な仲間達が構えているものは、武器というにはあまりにも日常的な物ばかり。けれど彼らが見せた『負けないぞ!』という気合は吹き込んできた甘く香ばしい風――この国が現したものと同じ。眩いほど芽吹き立った彼らの姿と勇気に、類といばらは揃って表情を綻ばせた。
「嬉しくなるね 」
「なんて立派なのかしら」
彼らがいだく『大切』と『在り方』、奮い立った気持ちが甘い香りと共に届き続ける。
「不思議の世における、こころの大事さがよくわかるね。リティ、お花さん達と一緒に、怒りん坊さんにお還りいただこうか」
「うん、奮い立つこころを育てるお手伝いを」
芽吹いたものを乱暴に摘み取らせはしない。
すると、目にきらりと宿る想いを互いに映す2人の周りに飴の蔓茨が伸びてきた。あちこちを器用に曲げて――力こぶを形作ってきた彼らの漲るやる気に、くすっと笑みがこぼれる。
「飴の蔓茨さん達、護りはお任せしても良い? 飛出たネコさんをチクってしたり捕縛してくれたら、私達は安心して前に出れるわ」
ぐっ! しゅっしゅっ!
今度は拳の形を作ってシャドーボクシングと、『チクッ』では済まなそうな気配に類は小さく吹き出した。攻撃に集中出来る予感が今にも確信に変わりそうだ。そしてそれは、はらぺこばるーん達が響かせる『I’m!! Hungry!!』でも吹きとばせないだろう。
「……随分と成長したね?」
一気に大きくなった分、火のついたような怒声が不気味な重たさを孕む。しかし類は彼らが爆発させた食欲も合わせて受け流し、いばらも「まあ」と目を丸くしてすぐ、ふんわり笑って駆け出した。
「全力前進、お手伝い開始!」
伸ばした手を茨に変えて――えいっ! 元気に払った勢いそのままに、茨鞭は大きくなった黒猫ほっぺを思い切りベチンッと鳴らした。そこから隣の黒猫風船とぶつかって、それが周りにどんどん広がってと、ぼいんぼよんと大きな黒色がぶつかり合っては悲鳴を上げる。
『Uhhhh!!!』
「お腹減ったコからいらっしゃいませ? トゲトゲで良ければ差し上げる」
怖いお顔をしてみせても、お菓子はもうあげないわ。
今度は大きな口に、ベチンではなくしっかり串刺しにした瞬間黒猫風船がパンッと割れて消える。その勢いで髪をふわっと躍らせながら、いばらはくるりとターンして次の黒猫へ。『怒りん坊さん』は、まだまだまだまだいるけれど。
(「大丈夫!」)
ぱぁん、ぱぱんっと続く音と、その間を縫うように踊るように戦ういばらの姿。止まらない全力前進にはらぺこ達が怯んだ時。飴の蔦や茨を伴った類が鮮やかに飛び込み、煌めく甘い仲間達と共に薙ぎ払った。
『Noooo! Nooooo!!』
こんなのはだめ、こんなのはやだ。食べられない苛立ちを欲望と共に爆発させた黒猫の体は、どの黒猫風船よりも大きい。類や飴の蔦達に丸い影がどんよりと被せた黒猫風船は、ひときわ大きな体を得てニタニタ笑う。
その、顔面へ。
「欲で膨れた分を、頼むよ」
類の落ち着き払った声。
ひゅ、と走った黒曜の軌跡。
きゃー、と響いた幼い悲鳴はぼひゅんっと萎んだ黒猫風船のものか。それとも。
確かなのは、黒曜の刃が斬ったそこから、黒猫風船自身も忘れていた『過去』を一瞬で掬いあげ、そっくりそのまま『呪い』として還した事。
元の大きさへと戻されて、動きも酷く鈍らせた黒猫を『今だ!』と蔓や蔦、茨がこぞって叩く。激しい音の向こうから、ぱあんっ、と破裂音がしたのはすぐだった。
いばらが止まらないように、類も、飴の蔦達も止まらない。
黒猫風船の間を、共に護り共に闘ってくれる甘い仲間達と駆け抜ける。時折2人の視線が交差するのは、周りと――互いを気に掛けるからこそ。
周りいっぱいにあった黒がだいぶ減ったと感じたのは、それから少しして。
ふう、と一息ついた類といばらは笑顔で互いの手をパチンッと合わす。
「お疲れ様、リティ」
「類、あなたも!」
それから。
ぱっと向いた先は、共に戦った仲間達。
「皆、とっても立派だったよ」
「頑張ったね」
甘い仲間も、スイーツ作りに情熱宿す仲間も。
みんなみんな、花丸満点。
パチン、パチンッ。
甘い香りが満ちる中、響くそれは祝いの音色。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ジャスパー・ドゥルジー
【邪蛸】
パウル見ろよ、あっちにも「ネコチャン」がいるぜ
ありゃ是非遊んでやんねえとな
軽口叩きつつ呑気な調子で接近
果敢にオウガに立ち向かう頼もしい“国”の中に
さっきのダミ声ネコチャンはいるかな?
棘の無差別攻撃?甘いモンの後に味わうにはいいスパイスだな
パウルを心配させない程度に、適度に痛みを堪能しつつ
怖がりだけど勇気を振り絞る連中に棘が届きそうになったら
庇ったりナイフで弾き飛ばしたりするぜ
俺も自慢の棘を持ってんだよ
味わってみるか?
鞭のようにしなる尻尾で
キツい一撃をお見舞いするぜ
パウルの一撃と合わせて
これが俺ら流のおもてなしってやつ?
パウル・ブラフマン
【邪蛸】
ホントだぁ!ネコチャン!
イイ声で鳴きそうな的だね、ジャスパー♪
Krakeを展開し、ジャスパーや住民達の援護射撃を。
こっち側に寝返ってるネコチャン(ダミ声)にはフフッてなりそう。
住民達が被弾しそうな時はすかさず
Faustを使って庇うように立ち回りたいな。
ジャスパーに迫る棘は全部撃ち落とす気でいるけど
運良くお触りした触手には
オーバーキルめに撃ち込んじゃいそうだ。
ジャスパーがUC発動するタイミングに合わせて
オレも威力を底上げした四砲一斉発射を喰らわせに行くね。
狙いは棘を射出する咥内。
お腹いっぱい?ご冗談!
リコリスより苦く、強炭酸より刺激的。
オレ達の愛の謹製・バレンタインデザートを召し上がれ☆
「パウル見ろよ、あっちにも『ネコチャン』がいるぜ。ありゃ是非遊んでやんねえとな」
「ホントだぁ! ネコチャン! イイ声で鳴きそうな敵だね、ジャスパー♪」
特別怖がりな愉快な仲間達には怖い黒猫風船オウガでも、この2人から見た『オウガ・はらぺこばるーん』はどこからどう見てもネコチャンオブネコチャンだった。
そのネコちゃんの顔にある目が黒い表面をバラバラに上下左右ぎゅるぎゅる移動していても、ヨダレを垂らし続ける口に見える歯がノコギリを限界まで拡大したようにギザギザしていても。そして。
『This is my sweets!』
『Niiiiii!!』
猛烈にお怒り中の子供めいた金切り声が鼓膜を震わすほど響いても、がぱあと開けた口からは無数の棘が一気に放たれても、2人のトークも足取りもけろりとして軽やかだ。
「甘いモンの後に味わうにはいいスパイスだな」
「もー、ジャスパーったら!」
怒ってみせるパウルへ、ジャスパーはごめんねポーズとウインクのセットで気をつけますの意思表示。けれど皮膚を掠めた棘と、ご丁寧に刺さってくれた棘数本は自分の嗜好をいい具合につついてくれる。
(「スパイスレベルなら、まあこんなモンか」)
欲を言えばメインディッシュレベルが欲しい所なのだけれど。それは、愛しい青色の為に我慢我慢。
ジャスパーはぺろりと舌を覗かせながら、自分の後ろ――愉快な仲間達の方へと翔けゆくさなかの棘をナイフの腹で受け止め、弾き飛ばした。彼らかの『ありがとう』の声に背は向けたまま、ぴらりと手を振って応えて。つかさ、とパウルに言う。
「ちびっこって『こう』だよなー。イヤイヤ期とか親御さんはさぞ苦労してンだろうな」
「そうだねー。小さい子って感情のコントロールできないみたいだから。親御さんからしたら、そこが大変だけどカワイイとこなのかな……っと!」
鮮やかなブルーの触手を彩る固定砲台から轟かせた砲撃が、ジャスパーやチョコレート騎士達に群がろうとしていたばるーん達を退ける。タイミングばっちりの援護にさすがと笑ったのは、ジャスパーだけではなかった。
『兄貴達ヲ手伝ウゾ! デッケエ合唱、カマセェ!』
『ウオー!』
2人の手で素敵なネコチャンになったネコチャンズが、すうーっと深呼吸。からの、響いた『ミャー♪』はどこもかしこも濁点付き。しかしピタリと一塊になった合唱は極太ビームの如く、数体のばるーんをずばんと貫き破裂させた。
「フフッ、ホントかわいいネコチャンだね」
「ダミ声もチャームポイントだよな。素直になってるしよ」
カッ、カッ、カッ!
駆けるジャスパーの足元でピンヒールが軽快な音を刻む。
しかし大股で素早く迫られる側――ばるーん達からすれば、その音は軽快の正反対。こっちこないでと幼い英語をきんきんと叫んで、おこってるんだぞと怒鳴って、そしてギザギザ歯の蓋を開けて棘を次々放ってくる。
「コラコラ、そういう危ないことしたら『めっ!』だよ☆」
『ヒエッ』
パウルがばるーん達にかけた言葉と表情は明るい。しかし向けた砲口は全てという殺意の高さに、パウルの笑顔指導が芯まで染み込んだのだろうダミ声ネコチャンズが一斉に震え上がっていた。その震えっぷりは何重にもなった砲撃音で、特に目立つ事なく掻き消える。
パウルの『めっ!』にジャスパーはウンウン頷き――ほんの数本、自分の皮膚を浅く削った棘の置き土産である痛みをこっそり味わった。多分きっと後でバレるだろうから、今だけ。今だけこっそり味わっとこ。
――ああ、そうだ。
『味わう』といえば。
「俺も自慢の棘を持ってんだよ」
ピンヒールで地面を鳴らした瞬間に跳び、体をひねる。その勢いに乗せてしならせた尾はいつものように鮮紅に染まっていた。ひとつ、違うのは。
「味わってみるか?」
不敵に笑ったジャスパーの言葉に『イエス』と答えるのも躊躇うほどの、棘で彩られていた。
その尾が空気を裂きながら迫るのは、棘をふんだんにくれた大きな口の中。こっちもドーゾと、パウルからは威力底上げサービス付きの四砲一斉発射が遠慮なく届けられれば、燃えるような熱と衝撃がばるーん達の感覚と思考を塗り潰す。途端、破裂して消えゆくばるーん達から『No!』という|最期の言葉《コメント》が一斉に出たけれど。
「お腹いっぱい? ご冗談!」
「そうそう! 育ち盛りの子供なんだから遠慮しないしない!」
これはリコリスより苦く、強炭酸より刺激的。
「これが俺ら流のおもてなしってやつ? だからさ、」
「オレ達の愛の謹製・バレンタインデザートをもっともっと召し上がれ☆ 」
大成功
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榛名・真秀
よーし、みんなの力で怖いのはなくなって
愉快な仲間達も元気出てきたね!
せっかくみんなでデコレーションしたんだもん
腹ペコ猫さんには食べさせないよ
みんな、勇気を出してくれてありがと
一緒に戦おう!
わ、この国も一緒に戦ってくれるんだね
よーし、このお菓子の甘い香りで
わたしも力がみなぎってきたよ!
キャンディな蔓や蔦が腹ペコ猫さんを捕まえてくれてる間に
UCでキャンディケインの形をした魔法の矢を放つよ
この国のお菓子はあげられないけど
お菓子の攻撃ならあげる!
スイーツはみんなを笑顔にするもの
わたしにとっても大切な拠り所
騎士や魔法使いに宝石箱さんも頼もしいな!
この国と一緒に戦って
素敵なバレンタインを取り戻すんだ!
愉快な仲間達にとって、現れた黒猫風船オウガ『はらぺこばるーん』はやはり怖いらしい。けれど勇気を振り絞って生活雑貨や家具で武装するその姿が、真秀にきらきらな笑顔を浮かばせる。
みんなのチカラで怖いものはなくなった。愉快な仲間達も、元気が出てきた!
嬉しくて自然と握った拳は、ばるーん達が自分達のだと乱暴に言うスイーツを見て、より強く握り込まれた。
(「せっかくみんなでデコレーションしたんだもん。腹ペコ猫さんには食べさせないよ」)
それがこの国のバレンタインをめちゃくちゃにしたオウガなら、尚の事。
「みんな、勇気を出してくれてありがと。一緒に戦おう!」
ぱっと魔法の箒に跨って空へと翔けた真秀の後をばるーん達が風船らしからぬ速さで追って来るものの、それを出来立てスイーツの香りでいっぱいの風が押し返す。
「わ、この国も一緒に戦ってくれるんだね……!」
くるくると顔の周りを巡った風には勿論顔はなくて、けれど髪を遊ばせた温かさは『その通り!』と笑っている気がした。
「よーし、このお菓子の甘い香りでわたしも力がみなぎってきたよ!」
『Naaaaa!!』
「わっ」
なかなかスイーツへありつけない苛立ちをたっぷり込めたばるーんの怒声に、思わず目が丸くなる。しかし魔法の箒のスピードは全く衰えない。向こうが花火のようにぽんぽんと現した、少年少女達――二度と自分の世界へ帰れなくなったアリス達の霊に、明るかった表情が一瞬翳りはしたけれど。
ひゅんっと地上から伸びてきた飴の蔦や蔓が、彼らもばるーん達もくるくる、くるり。しっかり捕らえてくれたから、ばるーん達の抵抗でキシキシ鳴るものの、戒めはより強くなったようだ。
「ありがとう、みんな! 腹ペコ猫さん、この国のお菓子はあげられないけど、お菓子の攻撃ならあげる!」
瞬間、キャンディケインが空を埋め尽くした。一斉に降り注ぐそれはカラフルでキラキラで、そして食べれば甘くて幸せで笑顔になるような――。
「あのね。スイーツはみんなを笑顔にするものなんだよ。わたしにとっても大切な拠り所」
甘い騎士や魔法使い達。彼らも、この国も、何て頼もしいんだろう。
素敵なバレンタインを取り戻すその時まで。真秀は箒に乗って翔け、お菓子の矢もキラキラ甘く降り続く。
大成功
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セリオス・アリス
【双星】アドリブ◎
おいおい、全部ひとり占めしたいなんて…わがままなやつだな
おいしいものははんぶんこ
誰かとわけたり一緒に食べるからもっと美味しくなるんだろうが
そんな簡単なこともわかんねえやつにはきつーいお仕置きが必要だなぁ
歌で身体強化して
靴に風の魔力を送る
そのまま高く飛び上がって
浮いてる敵に一閃…って、デカくなりすぎだろ!
どんどん膨らんでく敵を見上げる
どうするアレスっ!?
アレスに視線をやり
攻略法を考えようって思ったら…その後ろから現れた
チョコレートドラゴン(齧りかけの姿)
ああ、そうだった
でかくて強くてかっこよく作ってもらったもんなぁ!
笑ってアレスと一緒に乗り移る
やっぱ…デカイのにはデカイのでキメねえとだよな!
アレスがドラゴンの上から放った攻撃がドラゴンブレスっぽくてテンションが上がる
上がったテンションのまま魔力をたっぷり練り上げて
行くぜアレス、これが…俺達の力だ!
【彗星剣・『熾天赤星』】withチョコレートドラゴンアタックを思いっきり敵にぶつけてやる!
アレクシス・ミラ
【双星】アドリブ◎
はらぺこ食いしん坊が此処にもいたようだね
ああ、僕も同感だ
誰かの為に作る楽しさも分け合い一緒に食べる喜びも、よく知っている
何もかも食い荒らそうとする悪い子達には骸の海にお還りいただこう
先征く彼を剣から光の衝撃波『光閃』で援護しよう
…っ!?これは…チョコレートの騎士殿、力を貸して欲しい!
僕が盾のオーラ『閃壁』を展開して膨らむ敵達を防ぎとめ
その隙に少しでも弾き飛ばしてもらおう
だが…いくらなんでも大きすぎる…!
って、わっ!?
君は…!先程僕が作ったチョコレートドラゴン(齧りかけの姿)!?…何だかさらに大きくなってないかい?
はは!自分が作ったお菓子の援軍とはなんと心強い
ああ、皆でこの国を守ろう!
セリオスとふたりで騎乗し
まずは君の派手な一発、格好良く頼むよ
怯ませるようにドラゴンくんに咆哮してもらい
それに合わせて僕も光属性を光線の如く放とう!
さあ、最後の仕上げといこうか
【彗星剣・『熾天赤星』】withチョコレートドラゴンアタック(…長すぎないかい?)
悲鳴のバレンタインはこれで終わりだ!
どんどん数を減らされても、猟兵やお菓子の国の住民、国そのものから容赦なく攻撃されても、はらぺこばるーんの食欲は一向に収まらないようだ。ほしいほしい、あれもこれもたべるんだ。同じ言葉ばかりを食欲と共に響かす様に、セリオスは整った顔立ちで思い切りげんなり顔をした。
「おいおい、全部ひとり占めしたいなんて……わがままなやつだな」
「はらぺこ食いしん坊が此処にもいたようだね」
ん? 『も』?
キョトンとしたセリオスにアレクシスは優しい笑顔だけを向けた。この世の『はらぺこ食いしん坊』には2種類ある。良いものと悪いものだ。勿論『良い方のはらぺこ食いしん坊』であるセリオスはというと、まあいっかと明るく笑って両手をぱしりと合わせていた。
「おいしいものははんぶんこ。誰かとわけたり一緒に食べるからもっと美味しくなるんだろうが」
「ああ、僕も同感だ。誰かの為に作る楽しさも、分け合い一緒に食べる喜びも……よく知っているよ」
それを知ったのは、教えてくれたのは、どの星よりも一番近くで輝くきみだった。
「何もかも食い荒らそうとする悪い子達には、骸の海にお還りいただこう」
温かな朝空色の微笑にセリオスは「だよな!」と笑顔を咲かせ声を弾ませる。美味しいものを沢山作れるアレクシスからの――他の誰でもない、彼からの同意と言葉が嬉しい。だってお揃いだ。
「そんな簡単なこともわかんねえやつにはきつーいお仕置きが必要だなぁ」
出来立てスイーツ香る温かな風にくるまれながら、自分達をじわじわと囲っていく黒猫達へ好戦的に笑う。
唇から紡ぎ慣れた歌をえがけば、国の風も加わっていつも以上に力が湧いてきた。ちょっとスキップするくらいの力をつま先に込めて跳んだ瞬間、目線はばるーん達を軽々飛び越え、そのまま周囲に並ぶどの店よりも空に近付く。
目立つ動きに惹かれたばるーん達がぐん、とセリオスへ向かう。風船らしからぬ速さでも、そこを輝き纏った衝撃波がしっかりと抑え込んだ。空の星をやらせはしないと、明るく笑むアレクシスにセリオスもとびきり楽しげに笑い返す。
「おっし! このまま、」
一閃――と剣を構えた時だった。
『Ahhhhhh!!!! I’m! Hungry!! Hungry!!! Hungryyyyy!!!!』
叫声の音の高さ。声量。空気を伝って届いた怒り。
どれもこれも顔を真っ赤にして怒る子供とお揃いで、けれど叫ぶ度にぐわんぐわんと変わりゆく様はあまりにも『子供』と違い過ぎた。
「……っ!?」
「デカくなりすぎだろ!」
セリオスは空中で体を捻り、大口を開けて迫るばるーんをひょいひょい躱してアレクシスの傍へ戻った。その間もばるーん達はちょっと大きい風船から大型犬、大型犬から競走馬、そしてそして――と、どんどん膨らんでいく。
「どうするアレスっ!?」
「これは……チョコレートの騎士殿、力を貸して欲しい!」
『!!』
前へ構えた盾から鮮やかに広がった閃壁が、黒猫風船の波をどうんっと防ぎ止める。その直後を、チョコレート騎士達が勇猛果敢な突撃でもって弾き飛ばしてくれた。眼の前でみちみちしていた風船の黒色が引く。けれどそれも、一時的なものだとわかっていた。
「わがままでしかもしつこいな、こいつら!」
「それにいくらなんでも大きすぎる……! って、わっ!?」
背後から被さってきた影。すぐそこにズシンと下ろされた――大きな脚。そこから生える爪。色は――。
「君は……!」
「アレスが作ってくれたでっかくてかっこいいチョコドラゴン!?」
しかも齧りかけ。
だがそれは『食べられる』という運命を持つスイーツにとって名誉の印なのだろう。驚く2人へと両翼を広げてみせたチョコドラゴンは誇らしげだ。更に。
「……何だかさらに大きくなってないかい?」
あの後は特に何もしていない筈なんだけど。不思議になったアレクシスだが、ここがどこなのか思い出し破顔する。『奇妙』や『不思議』がいっぱいの世界、お菓子の国。こういう事が起きたって全然不思議じゃなかった。
「はは! 自分が作ったお菓子の援軍とはなんと心強い……!」
思わぬ援軍登場でばるーん巨大化への驚きや焦燥はすっかり消えていた。代わりに、今はチョコドラゴン誕生時の楽しさが温かに満ちている。ああ、そうだった。青い星空の目が無邪気に細められる。
「でかくて強くてかっこよく作ってもらったもんなぁ!」
「ああ、皆でこの国を守ろう!」
2人が背に飛び乗っただけでドラゴンはその意を汲み、ばるーん達を吹き飛ばすように空へと舞い上がった。ぎにゃあとした悲鳴を眼下にアレクシスはドラゴンの背を撫でる。つるつるとしていて、チョコレートの筈なのに不思議と溶ける気配がない。かっこよくて『強い』は伊達じゃないな、なんて笑いながら掌でトン、と優しく叩く。
「まずは君の派手な一発、格好良く頼むよ」
そのリクエストに返ったドラゴンの声は嬉しそうだった。空いっぱいに一度。その後に続いた音は更に大きい。空気をびりびり震わす咆哮に合わせアレクシスが放った輝きは、ドラゴンの火炎めいてばるーん達を薙ぎ払った。
チョコドラゴンの背から見た光景にセリオスは声を上げて笑う。アレクシスが言った通りの『派手』と『かっこいい』でいっぱいだ。気分がどんどん高揚して、双眸に押さえきれない煌めきが浮かぶ。
「やっぱ……デカイのにはデカイのでキメねえとだよな!」
艷やかな黒髪が、たっぷりと練り上げられた魔力で揺れる。膨大で、濃密で。けれど隣にいるアレクシスと彼らを乗せるドラゴンには、どこまでもキラキラと眩しく、心地よい。
「行くぜアレス、これが……俺達の力だ!」
「そうだね。さあ、最後の仕上げといこうか」
悲鳴のバレンタインはこれで終わり。
ドラゴンの背に立ち、それぞれの得物を構える。堂々と捉えるのは眼下に群がるわがままな黒猫達。剣と盾。ふたつの輝きにドラゴンの咆哮が重なった瞬間、それは全てを断つ一撃となってオウガ達を貫いた。
「いやー、|彗星剣・『熾天赤星』《メテオール・アンタレス》with チョコレートドラゴンアタックした時は最高だったなぁ」
「はは、そうだね。……ところで、長すぎないかい?」
「んー……けどチョコレートドラゴンアタックだったし、そこは削れないだろ?」
「……確かに……」
大成功
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ティル・レーヴェ
【春梟】
甘い香りに
奮い立つ子達
隣で笑むあなたにも
こんなに元気を貰えるのだもの
翼を縮こまらせて居られない
ぱたり背の真白を羽搏かせたなら
映し合う紫色に頷きで応え
繋ぐ手も握り返したなら
あなたの言葉に綻んで
ええ
ならば妾はその物語に明けを添えましょう
幸せなその先が晴れやかたるように
妾もメイクアップ、なんて
咲い纏う聖衣で癒しを皆に
皆のものを独り占めは良くないわ
怖がらせるのも以ての外……
まあ、あなたったら
ならこの一戦が終わったら
あなただけのかわいいを
沢山沢山引き出して、なんて
悪い子にはお仕置きよ
あゝけれど
その腹ペコは寂しさからも来るのかしら
悪しきを祓うこと出来たなら
お腹も心も少しは飢えずに済むかしら
蔦に囚わる風船猫達へ
皆の力で増えた手数分高速多重と詠唱重ね
放つは破魔と浄化の力
平穏の為と倒すとしても
眠りの先は晴れやかたれと
願うことも許してね
割れて弾けたその裡が自由な空へ還れるように
張り切るあなたも素敵で愛しい
添えることも
その先を共に見れるのも幸せで
めいっぱいにゆるんで見せて
でもそれは――妾だけの独り占め
ライラック・エアルオウルズ
【春梟】
追い風にのる甘い香りに顔が綻ぶ
怖がりな愉快な仲間達も
彩りかえた『国』も力を貸してくれる
勇気を出さずにはいられないね?
だろう、と似た色の眸を重ね
繋いだ手も離さずにいれば
僕にも更に勇気が満ちてゆくよう
作家として、君の魔法使いとして
素敵な国にハッピーエンドを添えよう
ああ、君の彩りはどれも素敵だね
添う明けも、聖衣纏う君も
『国』の菓子たちにも増して
きっと、とっても甘いのだろうな
さあ、独り占めの悪い猫め
大きくなれど恐ろしくはないよ
彼女を怖がらせた罪は償って頂こう
かわいいようすではあったけれど――
それを引き出すのは僕だけでないと
君は相変わらず優しいのだから
けれど、彼方にも幸いがあるのならば
そのほうが、ずっと、いいだろう
彩った菓子をひとつつまみ
とびきりを代償に『兄妹』を喚ぶ
食欲であれば彼らの鳥も大したものさ
飴の蔓に囚われる隙を突き
彼女の情で満ちる風船の身を
突いて、啄んで、割ってしまおう
共に戦うのも久しいもので
張り切ってしまうけれど
ハッピーエンドのあとは、ゆるめよう
そこからがバレンタインなのだもの
風が頬を撫で、髪を揺らし、服をはためかせる。足取りも心も軽くするその追い風に覚えた甘い香りは、日々の暮らしにもある幸せの彩と同じだった。一緒に作ったお菓子達。ちょっとだけの味見。共に咲いた笑顔。綻んだ顔は、あの時に浮かべたものと似ていたかもしれない。
「怖がりな愉快な仲間達も、彩りかえた『国』も力を貸してくれる。勇気を出さずにはいられないね?」
だろう。ぴとりと隣にいるティルへ似た色の眸を重ねて、繋いだ手も離さずに。たったそれだけなのに、裡で更に勇気が満ちていく気がした。
「妾もね」
今も髪や翼を撫でる風に宿る、甘い香り。武器には不向きだろう雑貨を手に奮い立つ、愉快な仲間達。そして何よりも。
「隣で笑むあなたにも、こんなに元気を貰えるのだもの」
『I’m Hungry』を繰り返すはらぺこばるーん達の体がどんどん大きくなっていても、翼が震える事はない。もうすぐ気球くらいの大きさになるのかしら、なんて考える余裕だってある。
温かく紡いだティルの、ライラックと似た色の眸がふんわりと綻んで――その目に宿った決意が、小さくも確かな輝きを見せる。
「だから、翼を縮こまらせて居られないわ」
ティルは背にある真白をぱたりと羽ばたかせ、映し合う大好きな色へ頷きで応えながら、繋ぐ手も握り返す。綻んでいた顔が、より綻ぶ様が紫の双眸に映った。
「作家として、君の魔法使いとして。素敵な国にハッピーエンドを添えよう」
「ええ。ならば妾はその物語に明けを添えましょう」
約束を綴ってくれた人へとティルも同じくらい綻んで――ふわり。裡から溢れた聖光に包まれたその姿が聖衣を纏った。
「幸せなその先が晴れやかたるように。妾もメイクアップ」
なんて、とはにかむ姿は花々にも包まれていて、愉快な仲間達から「わあ……」とうっとり心地の溜息が溢れる。新作ケーキのインスピレーションが湧くわ。愛しいひとが彼らのミューズになりつつあるのを感じながら、普段からミューズの恩恵を受けている男は緩やかに頷く。
「ああ、君の彩りはどれも素敵だね」
添う明けも、聖衣纏う君も。
『国』の菓子たちにも増して、きっと、とっても甘いのだろうな。
それを知るからこそ、はらぺこばるーん達に向いた眼差しに優しさや甘さ以外の彩が宿る。
「さあ、独り占めの悪い猫め。大きくなれど恐ろしくはないよ」
「皆のものを独り占めは良くないわ。怖がらせるのも以ての外……」
「そうだとも。彼女を怖がらせた罪は償って頂こう。かわいいようすではあったけれど――それを引き出すのは僕だけでないと」
愉快な仲間達の「わあ」、再び。チョコレートの騎士達も、胸に手を当てて頷きあったり少女めいた仕草で「わあ」を現していた。くすりとこぼれた音は、ティルの唇から。
「まあ、あなたったら。ならこの一戦が終わったら、あなただけのかわいいを、沢山沢山引き出して」
なんて。
お願いしていない時だって、あなたは沢山沢山引き出してくれる。
そんな幸せの日々へと2人一緒に帰る為。そしてこの国と、愉快な仲間達の為。
「悪い子にはお仕置きよ」
ティルの言葉に甘く艶めく蔓や茨が応えた。鞭のように一瞬で伸び、すっかり大きくなり過ぎたばるーん達の体や彼らの『食事』の名残がこびりつく紐に絡んで、ぎちぎちと締め上げる。『I’m Hungry!!!』の叫びがどれだけキンキンに響いても、彼らは砂糖ひとつまみ分すら緩めない。それでも繰り返される『おなかがすいた』の声に、ティルはふと思った。
(「あゝけれど。あの腹ペコは寂しさからも来るのかしら。悪しきを祓うこと出来たなら、お腹も心も少しは飢えずに済むかしら?」)
チョコレートの騎士を始めとした仲間達が負った名誉の勲章が、聖光と共にティルの力を高めていく。紡ぐ必要がある筈の詠唱は僅かで済み、それがミルフィーユのように重ねる事だって容易い。
「平穏の為と倒すとしても、眠りの先は晴れやかたれと願うことも許してね」
南瓜の馬車にも匹敵しそうなほど、尽きない食欲を宿していても。
この想いが彼らオウガの望むものでないとわかっていても、そう願わずにいられない。
「自由な空へ、還れますように」
きゅ、と。繋いだままの手が握られた。
見上げれば優しい紫色が見下ろしていて――ふ、と。ライラックは目を細め、少し前に彩った菓子をひとつ摘む。
(「君は相変わらず優しいのだから」)
君を怖がらせた悪い子なのに。
けれど。
(「彼方にも幸いがあるのならば……そのほうが、ずっと、いいだろう」)
オウガとして存在した彼らの物語。
その終わりの続きに、君が自由を願ったように。
「おいで。とびきりのお菓子をあげよう」
摘んでいるお菓子はひとつだけれど、大きなクッキーは半分こしたって十分なサイズ。賢き兄妹なら――ほら、思った通り。2人は仲良く分けて頬張って、ぺこりとお礼も欠かさない。そんな彼らを、ばるーん達がヨダレを垂らして見下ろすけれど。
「随分と腹ぺこのようだね。けれど、食欲であれば彼らの鳥も大したものさ」
ピィッ。
尾羽根を跳ねさせ鳴いた鳥が、ティルのやさしさが満ちる場をひゅっと翔けた。蔓達に巻き付かれ、動きもひどく鈍ったばるーん達はそれに反応出来ない。次の瞬間、ぱんッと割れた黒色ひとつ。その傍で鳥は尾羽根を上げ下げしながら、いつかの戦いで騎士や魔法使いから欠けたチョコを発見してご機嫌だ。
『Niiiiii!! I HATE YOU!!』
きらい。きらい。たべたい。おなかすいた。
ばるーん達が尽きない食欲を更に膨らませる。眼の前で大きくなる黒色に、ライラックの裾を引っ張った兄妹が何やら耳打ちをした。ああ成る程、確かにそれは名案だ。では。
「頼んでいいかな?」
とんっ。兄の方が胸を叩き、妹が掌で空中をくるりと撫でる。すると現れたのは、恐ろしい魔女をやっつけた竈の扉だ。今回は兄妹2人でノブを掴んで開けて――ごうっ。溢れた炎は、蔓達が見事なタイミングで引っ込んだ瞬間をしっかりと捉え、ばるーん達を煌々と呑む。
騎士と魔法使い。賢き兄妹。春梟のふたり。愉快な仲間達。
なおも甘いものを欲しがるばるーんは丁寧に、確実に還されて――その最中、これが最初で最後とビスケットが贈られる場面も挟んだ後。腹ぺこでわがままな悪い黒猫達は全ていなくなり、愉快な仲間達からわあっと歓声が咲いた。
それはこの国を覆っていた恐ろしいバレンタインストーリーの終わり。けれど「お疲れ様」と自分を見て笑うティルに、ライラックははたと気付き、空いていた手で口元を覆った。
「? どうしたの、あなた?」
「いや……君と共に戦うのも久しいもので、張り切ってしまったね」
ぱちり。笑顔をきょとりとさせて瞬く彼女に、んん、と小さく咳払い。
「けれどハッピーエンドのあとは、ゆるめよう。そこからがバレンタインなのだもの」
「あら。張り切るあなたも素敵で愛しいわ。添えることも、その先を共に見れるのも幸せよ」
先程とは逆に、今度はライラックがきょとりとする。
そんな様を見て、似た色の眸がふんわり和らいだ。
「だから、めいっぱいにゆるんで見せて。でもそれは――」
妾だけの独り占め。
腕を引かれ、耳元で紡がれた囁きの甘さはとびきりで、耳や目元に林檎色がほのかに灯る。
めいっぱいゆるむ姿は、思うより早く訪れそうだ。
大成功
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