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【旅団祭・紬姫】夏は終わり、白無垢映えし秋紅葉

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●注意
 当依頼は、PBWアライアンス『コイネガウ』からのシナリオです。
 PBWアライアンス『コイネガウ』の詳細を以下でご確認お願いします。
 公式サイト:(https://koinegau.net/)
 公式総合旅団:(https://tw6.jp/club?club_id=4737)

 また、当依頼は『コイネガウ』の旅団シナリオです。
 旅団「染物屋:紬姫」の団員と友好だけが採用される全1章「日常」の構成です。
『第六猟兵』の旅団シナリオとは違いEXPとWPが貰えます。

 旅団シナリオのハウスルール解説:(https://tw6.jp/club/thread?thread_id=117680&mode=last50)


 慌ただしく『幻夜の南瓜祭』が過ぎ去って、|希《こいねがい》|島《じま》には再び昼が訪れていた。
 神秘的で不思議な常世の南瓜祭は、多くの人にちょっぴりの、そして一部の人にはいっぱいの不思議な思い出を残している。
 そして……。
 いま『染物屋:紬姫』は大忙しだった。
 アルバイトでお手伝いをしているソフィア・アマティスタ(ポンコツな私立探偵・f41389)も式場の手配に出席者へ出欠席の手紙の送信と、書類に追われている。
 そんな店内で、『染物屋:紬姫』のオーナーである斑染近・紬姫(女帝の分身・f29077)は扇を一振りして気合いを入れる。
「みんな、もうひと頑張りよ! 染物屋:紬姫プレゼンツ・ブライダルフェア冥婚! 成功させましょう!!」

 紬姫もフェアリーの小さな身体でアクセサリーや服の制作に追われ布や針に埋もれている。
 けれどこの仕事はやりがいがあると紬姫は思っていた。
(希島はこの一年でたくさんの不思議な事が起きてきたわ。どんどん新しい種族も増えてきたし、幽霊的な人もこれから増えて来るはず。幸いにも、うちは幽霊でも触って着替えられる服がある)
 いちど亡くなって自分の幸せを諦めざるを得ないかった人たち。そんな人たちを自分の服で幸せにできることに、やりがいを感じている。
 しかも競合が殆ど居ないとなれば、商売の観点からもやりがいが出て来るというものだ。

 そんな染物屋を黒雪騎・|実夢《みゆ》(希島国警察所属のクーデレ私立探偵・f38169)が訪れる。
「式場の候補……決まった? 警備や、日程の話……もうすこし詰めたいから、ね?」
「はいー、神前式で、今はここの予定です~」
「希島の神社、ね。確かに……ここなら、広さもある、わ」
「由緒は不明な神社ですけれど、昔からある場所ですし、神主さんの許可もOKでした!」
 神前式とあれば挙式は白無垢、披露宴では色打ち掛けと染物屋の布地が映えるだろう。

 さてさてではこの結婚式は誰のものなのか。
「それはもちろん、ヘレナさんとパトリックのよ」
 誰に向かっての言葉なのか、紬姫はそう呟くやフフリとほほ笑む。

 幻夜の南瓜祭のその続き。
 夏が終わり、残されたのは、新しい希望だった。


ウノ アキラ
 注:今回の依頼は、【旅団祭】の共通題名で括られる連動シナリオのシリーズです。
 コイネガウ暦20X4年11月と12月における旅団シナリオのお祭りの物語となります。
 なお、各MSによるシナリオはどれも内容が独立している為、重複参加に制限はありません。
 ただし、各旅団シナリオへのご参加は基本的にその旅団の旅団員向けとなっております。

●依頼について
 旅団シナリオです。ご指名とリクエストありがとうございます。
 幻夜の南瓜祭で実体化した彼女はたぶん新世代ゴースト(希島バージョン)だと思います。
 種族になったヘレナさんは普通にものが触れます。

 さて、幻夜の南瓜祭が終わったあといろいろあって結婚式が始まるようです。
 幻夜の南瓜祭の影響を受けたのは果たして彼女だけなのかどうか……。
 いろいろと紛れ込む結婚式になるかもしれませんね。人ならざる何かの気配を感じるのもありかもしれません。
 特にネタ振りが無ければ、つつがなく結婚式が進みます。

 以上となります。
 よろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

イラスト:YoNa

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

有山・優音
アドリブ連携歓迎やで!

神社での結婚式!めっちゃええやん~!
召喚物(海の幸)に見張らせたい所やけど、磯臭くなったらかなわんし自力で見張るわ!ってああ~勝手に出て来とる~!
(意思ある海産物の群れが「見張りは任せろ!」と神社の階段横の茂みに紛れ込む)

ま、まぁその辺やったら磯臭いのも多少は何とかなるやろか……?あまり出しゃばらんといてね!ねっ!
でも何かあったら跳ねて教えるんやで!

さーて、あたしはしれっと会場の警備してよっと!
変なもん来てたらどないしよ……とりあえず叫ぶのは場違いやし、皆の肩ポンポンして教える感じでいこか!

妖怪やったら手懐けた事あるから楽なんやけどなぁ(ぼそっ)


西行寺・銀治郎
【銀夢】

メインとなる結婚式があって、
俺と実夢さんがスタッフとしてその手伝いをするのを描写して欲しい。
ソフィアちゃんとか、他の参加者とも絡めたら一緒に参加したいぞ。

南瓜祭はお疲れ様だったぜ!
其々の熱い活躍の後には、結婚式のお祝いでおめでたいぜ!

おう、結婚式のスタッフなら俺も染物屋でバイトするぞ?
来客の案内とか任せてくれよ?
入学案内の時みたいに希島の果てまで連れて行かないように気を付けるぜ!
今度は間違ってあの世の果てまで行かないように努力は怠らない!

今回のバイトは中々ハードだな? 一歩間違えれば、あの世行きか!?
だが、給料は良いはず! 年始は遊ぶぜ!

アドリブ歓迎。
NPC交流歓迎。
NG無し。


黒雪騎・実夢
【銀夢】

メインとなる結婚式、あって、
銀治郎とあたしが、スタッフとして、その手伝いするの、を描写希望。
ソフィアさんとか、他の参加者、絡めたら一緒に、参加希望。

先日の、南瓜祭での幽霊の件、お疲れさま、よ。
無事に解決できて、良かった、わ。
今回は、後日談? めでたく、結婚式ね、がんばる、わ。

そう、ね? あたしは、式場の警備やろう、かしら?
元々、探偵や、警官とか、だし。
略奪愛の突撃とか、変な事件、起きたら、困るし、ね?
って、可笑しな、事件、もし起きたら、即対応、よ。
HCも、アイテムも、全力で、撃退する、わ。
皆の、日常を、護り切れ! と、愛と平和を、叫び、ながら。

アドリブ歓迎。
NPC交流歓迎。
NG無し。


鍋方・稚微
&&&
紬姫同行

式場潜入成功です。
搦め手よりも正攻法が一番の時もあります。(染物屋:紬姫会員証チラチラ)
人の思いが集まる場所には、人の思いが籠もった物の宝庫。
人の思いが籠もった物は妖怪の力を強めるアーティファクトです!
いただいて帰りましょう!
狙い目は花嫁の投げるブーケです。和式だから投げ無いとでもお思いですか?こっそり頼んで投げてもらいましょう。できるだけ人目につく場所で。たくさんの思いが一箇所に集まりますよ。

ことりといっしょに結婚式の行われる神社に来たはずですが、ことりには「綾音さんを見かけた」とか言われて置いていかれてしまいました。
ことりとて、本気でこっち側に引きずり込もうとは思っていないはずですが、それでも気に成ってしまうものなのでしょうか?

ヘレナさんの控室を探してさまよう途中で紬姫に見つかる、『にゃーん』猫のフリ作戦即看破『こゃ~ん』…。(捕まりました。以降は紬姫さんと行動します)

頼んでブーケキャッチして持ち帰り。

友子が歌い。綾音は差し出された小鳥の手を取る。今日は新たな門出の日。


斑染近・紬姫
&&&
稚微同行

あーしは、ヘレナさんの支度手伝いよ。主に裏方から、あれこれ手配するわ。
入り用なら、なんでも言ってね。

HCで取り出せないものは、ひとっ飛びで借りてくるわ。

迷い込んだ稚微さんを、ひと目見た時気づいたわ。(こいつはすごく使える逸材だって)

狐化・影使い・力持ち・適度にポンコツ。申し分ないわ。
何だ猫か、とはならないわよ?
(綾音ちゃんの所に居た猫は白かったもの。)

ちょうど手伝いが欲しかったのよ。
ヘレナさんに用が有るんでしょう?

カマかけでポンと名前を聞き出して以降、稚微を連れ歩きます。

ヘレナさんに神前式の手順の最終確認をするわ。
予行練習の通りで変更はないから大丈夫なはずよ。

巫女舞は、友子と綾音ちゃんで…、二人とも断ってきたって?戦舞はお祝いごと用じゃ無いからって。

…稚微、いま半歩引いたわね?何を知ってるの?

そう、さっき捕まえた時も薄々察してはいたけど。
巫女舞には、稚微さんを使うわ!

稚微の話を要約するとこうよ。
刀技のお師匠さんが神社で舞巫女をしてた過去があって、何故か舞の方も教えられた。と


銀龍家・朝露
&&&

朝ですわ~。今日は、ご主人の(大切な幽霊さんの)結婚式ですわ~。
神様を理解らせに行くのですわ~。

モノノケ変化で18歳の人間態に、これで両手が空くのですわ~。

境内に入ってからは、ご主人に正体がバレないように(白昼夢で見る)『鈴之音』とでも偽名を名乗っておくのですわ。
白髪アホ毛の本好き美少女なのですわ~。

まずは箒で境内のお清め、神前式では神酒を配って、披露宴会場では食器を運んで、音響機材の設置ですわ~。
何役もこなす鈴之音は、完璧ですわ~。(余が全部の帳尻合わせをしてたのじゃ~。パト殿の一世一代の式が大惨事に成っては大事なのじゃ。)

猫に九生あり、必ずご主人の元に生まれて同じ時を生きるのですわ。


相沢・友子
いよいよだね。

神前式も終わり、披露宴の会場に移る前に、急遽紬姫さんが用意したウェディングのブーケトス!

案内の栞には乗ってなかったけど。

紬姫さんが神速で組み上げた餅まき台の上では、白無垢姿のヘレナさんが現れて。渡された花束を軽く降って見せたあと、後ろ向きで投げる。

私の怪奇人間の跳躍力を持ってすれば、空中キャッチできる。

ブーケに託された思いは、次の花嫁さん。
取れれば、私が最愛のお父さんのお嫁さんに…

眼の前を横切る黒い影。



眼の前から消えているブーケ。



『取れました!』

ブーケを手にしていたのは、巫女服のまま走り込んできた少女で。

あとから紬姫さんに聞いたんだけど、その女の子は、お世話に成っている妖怪のお姉さんに花嫁のブーケをあげるんだって。

それはきっと、私とは違う形の特別な思いで。

私の知らない所で、誰かの特別な物語が進んでいる。

そこに私は…(いましたか?)



ブーケは取れなかったけど、気を取り直すよ。

スタッフ枠の余興担当、相沢友子!

ヘレナさんとパトリックさんの新たな門出を祝って。
心を込めて歌います。




 銀龍家・朝露(ペルシャ猫のモノノケ・f40765)の朝は早い。
 日の出とともに起きて毛づくろいをしたら朝の散歩を行って、帰宅するや再び毛づくろいをしてからご主人に食事をねだるのだ。
 しかし今朝の朝露は一味も二味も違う。
 何故ならば、使命があるのだから。
「にゃ~ぅ(神様を理解らせに行くのですわ~)」
 意味深なことを言った朝露は、朝ご飯を自分で勝手に食べて家を出た。

 朝露の見立てでは、ご主人は大切な幽霊さんの結婚式には出られない。だから朝露がかわりにお手伝いをしようという訳だ。
 朝露はご主人の為の|交渉猫《ネコシエーター》なのだからして、これは自分の役割なのだとやる気満々だ。
 朝露は周りにご主人が居ない事を確認すると、18歳くらいの人間の姿に変身する。
「これで両手が使えるのですわ~♪」
 現れたのは白髪アホ毛で青い瞳の女性、姿を変えた朝露は早速と家を出る。
 このとき、ひとりにさせると心配なののじゃ~、と一匹の|レオパードゲッコー《ヤモリ》が肩に乗って来たけれど、朝露は構わず我が道を行く。
「あら、手伝ってくれますの?」
 そう微笑む朝露に対して|レオパ《ヤモリ》はぺしぺし叩いて不満を伝えてゆくが、どうやらレオパの思いは朝露には通じていないようだ。

 朝焼けで白む空は、黒から白へと光に満ちて、やがて色彩を取り戻してゆく。
 本日は晴天なり。風も穏やかで雲もなく、とても良い天気と言えよう。
 朝露は神社につくと早速、「巫女のお仕事を手伝いますわ~!」と社務所に突撃していった。
 これには神主さんもびっくりしたけれど、レオパが【染物屋:紬姫】の会員証を口に加えて取り出したなら。
「ああ、染物屋さんのところの方でしたか。こんなに早くいらっしゃるとは思わなったのでびっくりしました。どうぞ、お手伝い用の巫女装束はあちらにあります。ええと……お名前を伺っても?」
「『|鈴之音《すずのね》』ですわ~」
 朝露はしれっと偽名を使うのだった。

 斯くして会場となる神社では、誰もが知らぬ謎の巫女が早朝から箒で掃除をしていたのだった。


 太陽が昇り日が高くなってくるころ、時間にして結婚式が始まる3時間くらい前。
 この頃になると準備や警備のための人員が集まって来る。
「みんなおはよう~! 神社での結婚式! めっちゃええやん~! お昼過ぎからやよね? それまで会場に変なもんがないかとか調べとくわ」
「ええ、おはよう。他のみんなは、もう少しあとに来ると思う、わ。警備担当の私達は、事前の安全の確保、ね。略奪愛の突撃とか、変な事件、起きたら、困るし、ね?」
 先ず来たのは有山・優音(あまはん・f39297)と黒雪騎・|実夢《みゆ》(希島国警察所属のクーデレ私立探偵・f38169)の二人。
 特に実夢は探偵業と警官を兼任していることもありこの手の仕事には慣れている。実夢自身の伝手もあって、警備の人出はそれなりに確保できており、実夢の指示を中心に周囲の確認が始まった。

 この時、優音はもう少し人手が欲しいなと考えた。
「海の仲間たちに手伝わせたいところやけど磯臭くなったらかなわんからなぁ……」
 そう優音が思った時に周囲から海産物あちがぽんと現れる。
「……見張りも含め、自力で頑張るわ! ってああ~勝手に出て来とる~!」
 それらは様々な海産物に手足が生えたような存在。かれらは現れるや「見張りは任せろ!」と手振り身振りでアピールした後に神社の階段近くの茂みなどへ入ってゆく。
 └🐠┐三三3。
 └🐙┐三三3。
 └🦑┐三三3。
 └🐚┐三三3。
 元気に駆け出してゆく海の仲間たち……。その背中に、優音はこう声をかけていくのだった。
「ま、まぁその辺やったら磯臭いのも多少は何とかなるやろか……? あまり出しゃばらんといてね! ねっ!」
 とにかくこれで人手は良し! 気を取り直した優音もまた、あたりに危険物や不審人物がいないか確認を開始した。

 このとき巫女のひとりが実夢の目に留まる。
 警備のために事前に入手していた、神社の関係者やスタッフの名簿に無い顔があったのだ。
 それは、駆け出す海産物たちに反応した朝露が挙動不審になったタイミングでもあった。
 レオパにぺちぺち叩かれて正気にもどった朝露は、慌てて優雅に取り繕ってしゃらんらと箒で落ち葉を掃きなおす。このとき実夢に声をかけられた。
「あなた、見ない顔、ね。どういった関係の者、かしら?」
「は~い、朝露は『|鈴之音《すずのね》』ですわ~♪ ご主人の代わりにお手伝いをしに来たのですわ~」
「ご主人????」
 要領を得ない回答に訝しむ実夢。このとき再びレオパが慌てて【染物屋:紬姫】の会員証を取り出した。
「紬姫さんの所のお手伝い、かしら? よく見れば、このレオパは見た事あるわ、ね……。うーん……」
 明らかに怪しいのだが、実夢の探偵としての勘と警官としての勘はこの人物に悪意も嘘もない事を告げている。
 悩んだ末、実夢はこの怪しげな巫女はそのまま神社に置いておくことにした。

 実夢の職質を回避した紬姫はすまし顔のまま内心でドヤる。
 そして、肩のレオパは再び抗議をするように彼女の顔をぺちぺち叩くのだった。


 こうして安全が確保されたころ、他のスタッフも続々と集まって来る。
「みんな! おはようだぜ!」
 西行寺・銀治郎(国立希島学園の一般的な残念男子学生・f38167)は到着早々に元気に挨拶を行った。
「おはようさ~ん」
「ええ、おはよう」
「|南瓜祭《ハロウィン》はお疲れ様だったぜ! 其々の熱い活躍の後には、結婚式のお祝いでおめでたいぜ!」
「そうね、|南瓜祭《ハロウィン》での幽霊の件、お疲れさま、よ。無事に解決できて、良かった、わ」
「あたしは商店街の時からやね。あの時は姿がちゃんと見えへんかったけど、今回はちゃんと晴れ姿で見られるんやなぁ、楽しみや」
 和気藹々と思い出の話が始まってゆく。思えばこのお祝いは幽霊事件から繋がっているのだ。
 そうこうと話をしていると、紬姫がヘレナとパトリックを連れてやってきた。
「来たわよ、問題はない?」
「おう! 問題ないぜ!」
 銀治郎が元気に答えると、優音はヘレナの姿にテンションが上がっていく。
「わあ~、こうして会うのは初めてやね! あたしは有山・優音。よろしゅう! お姉さん、商店街でカレー食べたの覚えとる? そういや七不思議の話もしたなぁ」
 この前のめりの挨拶に、ヘレナもその時の事を思い出した。あの頃はまだ存在が不安定で、記憶はぼんやりしているけれど、確かに誰かと食事をして話をした記憶はある。
「あの時の……。あの時は、付き合ってくれてありがとうございます。今日もお手伝いありがとう」
「お姉さんの事忘れへんって、友達宣言したからね!」
 優音も間違いなく、この事件の解決のために動いた一人。そのことに新郎のパトリックも頭を下げる。
「皆さんのお陰で今日という日があります。感謝します。そして今日の事もありがとう。この感謝の気持ちはどう返せばいいやら……」
 そんな恐縮した空気になりそうなところを、紬姫がフラットに塗り替えた。
「そういうのは、二人が幸せになってくれたらいいのよ。二人にはあーしらが主催する冥婚のモデルケースになってもらうんだから、思いっきり成功事例になってもらわないとね」
 そして、紬姫はこれからやる事を並べてゆく。
「特に問題が無いならこのまま準備の残りを進めていくわ。披露宴は近くのホテル、けれど神前式の結婚式はここでやるから必要なものは持って来たわ。当日の流れの確認もするわよ」
 だってまだ終わりではない。これから、何もかもが始まるのだから。


 一度解散したらそれぞれが、この後の段取りや準備の続きを開始した。
 そんな中、実夢が一度紬姫を呼び止める。
 内容は、朝からいる正体不明の謎の巫女の事。見れば確かに、白髪アホ毛で青い瞳の女性が当然のようにそこに居て、のんびりと掃除を行っていた。
 しかし誰もが彼女を知らないというのだ。
 けれど幸いにも紬姫が何処かで見たことがあるという。
「綾音ちゃんの関係者かしら? 彼女、見た事あるわ。それにほら肩のレオパが綾音ちゃんの所のじゃない?」
 すこしだけ正体が見えてきた。けれどやっぱり、相変わらず正体は不明である。しかし紬姫はその事を問題とせずこんな無茶振りを言い出した。
「手伝ってくれるなら問題ないわ。それに何かあっても、警備が何とかしてくれるんでしょ?」
 それは警備チームへの信頼だ。迷いつつ彼女を無害と判断した実夢の勘への、信頼でもある。同時に丸投げにも近しい言葉であり、実夢は軽く頭を抱えた。
「はぁ……。そう、ね。きっと彼女は悪いことはしない。一応見張ってはおくけれど、ね」
「ええ、そうして頂戴。じゃあ彼女はうちでスタッフとしてこき使うから。一応、警備しやすいよう配置は伝えておくわ」
「ええ、お願い、ね」
 こうして朝露こと『|鈴之音《すずのね》』は、本人の預かり知らぬところで正式なスタッフになっていた。

 この頃、相沢・友子(水使いの淡水人魚・f27454)とソフィア・アマティスタも神社に着いてみんなに合流する。
「皆さんおはようございますー!」
「おう! ソフィアちゃんと友子ちゃんもおはようだぜ!」
「おはよう。いよいよだね」
 そう言った友子はすでに巫女服に着替えていて、ふんすふんすとやる気モードだ。
 そしてソフィアの方は、紬姫と何度か書類の確認をやり取りをした後に。
「それじゃあ私は、披露宴の会場の準備を始めていきますねー。会場の最終確認や、料理の手配の受取サインとか、いろいろありますので!」
 と披露宴の最終準備のために去ってゆく。
 しかし友子の方は、実際の式まで巫女としての手伝いは特にない。
 今しばらくは、当日のイベントのしおりを読んで復習をしつつ神社を箒で掃いて落ち葉を片付けるくらいしか仕事が無かった。
「それじゃあ、始まるまでお掃除手伝ってくるね」
 と朝露の方に行く友子。
 ときどき猫のような目でじっと見てくる朝露をちょっと不思議に思いながら、友子は箒で落ち葉を片付けていくのだった。

 すでに人ならざるものが紛れ込み始めている境内。
 当日の準備が次第に進むなか、優音は一抹の不安をふと口にする。
「変なもん来てたらどないしよ……妖怪やったら手懐けた事あるから楽なんやけどなぁ」
 ぼそりと呟くその言葉に、一匹のレオパがぶるりと身震いをする。
 その一方で、朝露のほうはのんきに境内を綺麗にしていくのだった。


 そのとき、同様に寒気を感じて身震いする狐が神社の外に一匹。
「ひぇ……何ですかいまの気配は……!?」
 鍋方・|稚微《ちび》(幼い妖狐(もふ子狐)・f36338)はぶるりと身を震わせあたりを見回した。
 けれど特に危険そうなものはない。
 というか神社の中に入れてもいなかった。
 何人かの|探偵や警備員《プロのひとたち》が辺りを見回りつつ、人の目が届かないところには手足の生えた海産物が見張っている。
 搦め手はどうやらダメであるらしい。
 しかし稚微には策があった。
「……ならばあの手を使いましょう」
 そう言って取り出したのは、【染物屋:紬姫】の会員証。これをつけてスタッフですよ? という顔で正面から入ろうという訳だ。
 とはいえ関係者に会ってしまえば知らない人物だとバレてしまう。
 そのため、稚微は慎重にタイミングを見計らっていた。

(搦め手よりも正攻法が一番の時もありますからね。そして目的はもちろん花嫁の投げるブーケです。人の思いが集まる場所には、人の思いが籠もった物の宝庫。つまり人の思いが籠もった物は妖怪の力を強めるアーティファクトです! そして花嫁の投げるブーケもそれに該当するというわけです!)
 |南瓜祭《ハロウィン》に引き続き、妖怪には妖怪の目的がある。
 今回の稚微は、どうやらブーケが欲しい様だ。
 しかしどのように和式でブーケトスをさせるかはノープランで、こっそり頼めばきっとやってもらえます! と思っている。
「そういえば――」
 ここで稚微はふと、一緒に来たはずの仲間がいない事に気が付いた。
「いっしょに結婚式の行われる神社に来たはずですが、置いていかれてしまいました……」
 稚微が思い浮かべるのはコトリバコのヤドリガミ。どうも彼女は、稚微と違う目的で来ている様で……。
(|南瓜祭《ハロウィン》でハスキー犬を連れてた少女が気になる様でしたね)
 稚微は彼女の言葉を思い返す。
 あの時は確か、『現人神って言う人間の体を持つ子、とても人の中では生きづらいよね』と言っていた。
「確かに、あの子のほうがこっち側に来そうな|適性《・・》がありましたけれど……」
 稚微は「本気でこっち側に引きずり込もうとは思っていないはずですが」と思う。

 けれど、今その件の二人がどこで何をしているのかを誰も知らなかった。
 何処にいて、何をしているのか。誰も知らないのだ。

(あ、今がチャンスですね……!)
 境内に中心人物が誰も居ないタイミングを見つけると、稚微は人の姿をとって参道から堂々と中に入ってゆく。
 胸には【染物屋:紬姫】の会員証をつけ、関係者ですよ? という顔をして。


 さてこちらは拝殿の中。
 お昼をお弁当で済ませたあと、ここには主な関係者が一通り集まっていた。
 披露宴を除けば式そのものは家族のみが参加する形になるのであまり規模は大きくない。
 必要な道具と座席を用意した後に全体の流れを神主さんと紬姫で確認しあえば、後はその内容を紬姫が全員に伝えてゆく。
「神前式の手順の最終確認をするわ。予行練習の通りで変更はないから大丈夫なはずよ」
 そう言って紬姫はホワイドボードの前をひらりと飛びまわった。

 まずは鳥居から改めて入り、御手水で手と口を清めたら境内を進む。
 ここで友人たちから祝いの言葉を受け、そのまま拝殿に入って座席に着席。
 着席後は神主が祓詞を唱えて参列者を祓い清め、その後に、員起立して一礼。
 そして神主が祝詞を唱えることで、神様に結婚を報告していく形になる。
 祝詞が終われば次は新郎新婦がいろいろ行う番だ。
 新郎新婦で契りを結ぶために盃を交わし、誓いの言葉を述べてゆく。巫女によるサポートはここで行われる。
 これらが終われば、いよいよ後半。神様により祝福していただくための神楽舞いが巫女によって行われるのだ。
 神楽舞いが終われば再び新郎新婦の出番となる。二人が玉串の奉納をして、指輪を交換していよいよ最後だ。
 最後は出席者でお神酒を頂いて、神前に供えた食べ物を下げたら神主に合わせて全員起立し一礼。
 これで神前式は終了だ。だいたい30分程度で終わるらしい。
 このあとは披露宴の会場へ移動して、食事とともに皆で祝い合う時間となる。

「――以上が全体の流れね。そしてこの神楽舞いだけど、友子と綾音ちゃんで……」
 ここで友子が挙手。
「それ、この前断った気がするの」
「……へ?」
 連絡の行き違いがあったのか、断ったことが紬姫まで伝わっていなかったようだ。
「ど、どうして……?」
 と紬姫が聞くと、友子はこう答える。
「私のは戦舞。お祝い事用じゃないの」
 加えて綾音も来ていないとあれば神楽舞いの担当者が居ない形となってしまう。
 これは、紬姫の痛恨のミスだった。
「まだ時間があるし、ちょっと代役を探してくるわ!」
 紬姫はひらりと飛び出した。
 とりあえず向かうのは披露宴会場だ。何故ならソフィアが巫女のアルバイトも何度かしていて、神楽もちょっと出来ると言っていたからである。
 あの私立探偵は、アルバイトの経験が豊富過ぎてだいたいのことは何でもできる。……いっそ探偵をやめてピンチヒッターの何でも屋として動いた方が儲けられるかもしれないくらいには何でもできるのだ。


 そんな急ぐ道すがら、社務所の付近でドアを開け閉めする音がした。
(警備の人を除けば、スタッフや新郎新婦はみんな拝殿の方に居たはず……?)
 不思議に思った紬姫が覗いてみれば、黒い狐の尻尾がちらりと見える。
「誰かいるのかしら……?」
 そう声をかけると、社務所の奥からは「にゃーん……」と聞こえた。けれど紬姫は「何だ猫か、とはならないわよ?」と切り返す。
 すると「にゃ~ん……」と鳴きつつ黒い狐がとぼとぼと出て来た。
「今から大声を出して警備にすっ飛んできてもらうのと、あーしを手伝うの、どっちを選ぶ?」
「にゃにゃ~ん……」
「……優音が妖怪を手懐けるの得意って言ってたかしら。それとも実夢に引き渡して牢屋に入る?」
「にゃ……」
 すぅーと紬姫が息を吸って大きな声を出す準備をすると、稚微が慌てて土下座をした。
「待ってください人を呼ばないでごめんなさい!!」
「何が目的なのかしら」
「結婚式があるって聞いてですね……お祝いをしたいなぁ~って……」
 はぐらかそうとする稚微に対して、紬姫は再びすぅーと息を吸って大きな声を出そうとした。
「待ってください違うんです花嫁が投げるブーケが欲しいんです! 人の思いが籠った物は妖怪の力を高めるから、今回はブーケがそれでっ!!」
「妖怪の力が高まる事はあーしにはどうでもいいとして、ブーケトスはとても良いアイディアね。きっと式も盛り上がるわ。ところであなた、踊れるのかしら」
「巫女舞いですか……? 結婚式のあれは、ちゃんと舞える巫女じゃないと神様を満足させられないですよ……私じゃ練習不足……」
「おーけー、『練習不足』。つまり舞えるのね? というか、あーし何も言ってないのに『巫女舞』って分かったのね。それに『踊る』って行ったのに『舞い』って直した。つまり詳しいわね?」
「いえそんなことは……ただちょっと刀技のお師匠さんから何故か教えられたというか……」
「つまり舞えるのね?」
 紬姫は圧をかけて自分のペースに持ち込んでいく。
「じゃあ通報するのは勘弁してあげるからあーしを手伝いなさい、不審な狐A」
「稚微です~!」
(狐化・影使い・力持ち・適度にポンコツ。申し分ないわ。こいつはすごく使える逸材ね)
 こうして紬姫は、神楽を舞う役者および新規スタッフをひとり確保した。

 ちなみにこの神社は縁に関するご利益があるらしい。
 この急な舞い手の確保成功も、ここの神様が何かして縁が結び直された結果なのだろう。
 残りひとりも披露宴会場からソフィアを連れ戻して確保。式に必要な準備は整った。
 あとは結婚式を進めるだけだ……。
 とうとうついに! 『染物屋:紬姫プレゼンツ・ブライダルフェア冥婚』の記念すべき第一回目が始まるのだ……!


 さていよいよ始まった、ヘレナとパトリックの結婚式。
 それは【染物屋:紬姫】が企画してサポートする、『染物屋:紬姫プレゼンツ・ブライダルフェア冥婚』!
 つまり死してなおこの世に生きる、魂だけの人々や新しいタイプのゴーストの方々を対象にした結婚である。
 この結婚の目玉は幽霊でも着られる服だ。
 これこそが【染物屋:紬姫】が開発した生地による服で、テレキネシス的な力や姿の変身などの力を訓練せずとも生前と同じように服を着替える事ができる。
 そして実際にヘレナが着る白無垢も、【染物屋:紬姫】によるものだ。

「そろそろ花嫁行列が来るぜ! みんな参道を空けて両端に寄ってくれ!」
 銀治郎が参加者たちへ声をかければ、紋付羽織袴と白無垢の男女が参道に入って来た。
 そのあとには二人の両親が続いていて、この行列は神社の拝殿まで歩くのだ。
 これが俗にいう花嫁行列。この行列は神前式の目玉と言えるだろう。
 参道を進む途中では、この結婚を祝う人々から祝いの声がかけられる。
 その参道の途中、スタッフ側の面々もお祝いの言葉を投げかけた。
「おめでとう」
「おめでと~」
「おめでたいぜ! 末永く幸せにな!」
「おめでとうございます!」
「おめでとうございます~」
 そして参道から境内へ入るところでは、警備のために立つ二人からそれぞれ祝いの言葉がかけられる。
「おめっとさん~!」
「おめでとう、ね」
 こうした言葉に包まれて行列は拝殿へ。
 その途中で、白髪の謎の巫女こと朝露、もとい|鈴之音《すずのね》もにこやかに新郎新婦に手を振っていた。

 ここから披露宴までは主に身内のみの儀式となる。
 時間にして30分程度だが、ここが最も大事なところ。
 スタッフの面々、とくに巫女役は拝殿へと集められた。
 警備の二人も身を引き締め、一方で銀治郎は披露宴の受付と案内のために移動を開始してゆく。
「次の披露宴までもうちょっと先だけど、受付はすぐ始めるぞ! 場所が分からない人がいたら今から案内するからついてきてくれ!」
 案内役も兼ねており、受け持つ銀治郎もやる気十分だ。
(入学案内の時みたいに|希《こいねがい》|島《じま》の果てまで連れて行かないように気を付けるぜ! 今度は間違ってあの世の果てまで行かないように努力は怠らない!)
 とても、とってもやる気に満ちていた。


 ここからは儀式通りに事が運んだ。
 神主によって祝詞が奏上され、|鈴之音《すずのね》が注いだお神酒で新郎新婦が盃を交わし、誓いの言葉を交わしてゆく。
 そして神への舞いはソフィアと稚微が担当した。紬姫の目に狂いはなく、ピンチヒッターの二人は問題なくこなせたようだ。
 神楽が終われば友子が玉串と指輪を持って来て、新郎新婦による玉串の奉納と指輪交換まで行われてゆく。
 そしてこの間、紬姫はこの場に居なかった。
 何か急いで作るものがあるとかで外に出ていたのだ。
 ……彼女が何をしていたのかは、式が終わり披露宴へと移る頃に判明する。

「あら……みんな披露宴の会場に先に行ってたんじゃ……」
「本当だ、どうしたんだろう……?」
 拝殿を出ると、境内には人が多く残っていた。
 困惑するヘレナとパトリックの間に紬姫が現れて説明を開始する。
「ブーケトスよ! さあ、餅まき台を作ったからヘレナさんは登って。はい、これブーケの花束ね」
「え、ええ……?」
「さ、いってらっしゃい」
 有無を言わさず流れに乗せる紬姫。
 当然これは最初の予定にはなかった催しで、稚微の話を聞いた紬姫が急遽ねじ込んだ催しである。『ブーケトスはとても良いアイディアね』と言ったあの時点で、もうやる事を決定していたのだ。
 これには友子も思わず、「案内の栞には乗ってなかったけど」と口にする。
 この餅まき台も当初の予定にはもちろん無くて、紬姫が神速で組み上げたものだ。フェアリーの小さな身体で行ったと思うとこれはとてつもない技で、それだけ紬姫がノリノリだったことが伺える。

 もちろんこれは銀治郎にも寝耳に水で、彼は「おっとここでサプライズの企画だ!」とブーケトスの案内を行うと、会場の受付の代理を急いで探しつつ、まだ披露宴会場に着いてない人たちが二度手間にならないようにと走り回っていた。
 その結果、境内のベンチには息も絶え絶えな銀治郎が燃え尽きかけて座っている。
(今回のバイトは中々ハードだな? 一歩間違えれば、あの世行きか!? だが、給料は良いはず! 年始は遊ぶぜ!)
 しかし彼の目の闘志は消えていない。この身が保つ限り、心折れぬ限り、銀治郎は最後まで案内をやり遂げるつもりだ。

 そしてこの流れは、ブーケトスを最初に口にした稚微にとって願っても無い事。
(いい感じです……! これならたくさんの思いが一箇所に集まりますよ)
 怖くてちっこい人に捕まって、こき使われたと思ったら、目当てのアーティファクトを手に入れるチャンスが巡って来たのだ!
 稚微はいつでもキャッチできるようにと身構えた。


 突然の予定変更にはびっくりしたけれど、友子は同時にわくわくとした興奮も感じていた。
(神前式も終わり、披露宴の会場に移る前に、急遽紬姫さんが用意したウェディングのブーケトス!)
 表情にはあまり出て居ないものの、もし犬のような尻尾があればぶんぶんと振られていることだろう。
(ブーケに託された思いは、次の花嫁さん。取れれば、私が最愛のお父さんのお嫁さんに……)
 友子は是非ともキャッチしたいと考える。これを手にしたら、自分にも特別な物語が訪れる。そんな気がするからだ。
 それに友子は自分の跳躍力にも自信があった。
 取れる。そして今度は私の番。
 白無垢姿の花嫁が、花束を振って見せてから後ろを向いた。
 ――取る!!!

 花束が宙を舞うと、そこを目掛けて友子は跳んだ。
 けれど目の前を黒い影が横切って、友子の手は空を泳ぐ。
「あ」
 すると「取れました!」という声が聞こえて、見れば舞いを代わりに舞った稚微という巫女服の人がゲットしていた。
「あ……」
 取れなかった。
 友子は自分の手を見下ろす。けれどその手にはやっぱり何も無くて、握りしめても、何もない。
 すると紬姫と稚微の会話が聞こえて来た。
 その会話の内容によると、その巫女服の子はお世話に成っている妖怪のお姉さんにブーケをあげるのだという。

 そこにも、特別な物語と特別な思いがあるのだ。
 友子の胸に一抹の虚しさが過る。
 寂しいような羨ましいような。そんな空っぽな感覚だ。
 あの巫女服の子にも、きっと、私とは違う形の特別な思いがあって。
 私の知らない所で、今日も誰かの特別な物語がいっぱい進んでいる。
 その物語の中に、私は……。

 もやもやしたものを感じたところで、友子はいちど深呼吸をして気持ちを切り替えた。
(ブーケは取れなかったけど、気を取り直すよ)
 この後は披露宴。まだまだお祝いは続くのだから。

 この後の披露宴もトラブルらしいトラブルは無かった。
 スタッフ役も仕事を尽くして料理や飲み物は問題なく補充されてゆく。
 ソフィアと友子はもちろんのこと、稚微も引き続きこき使われて、謎の巫女の|鈴之音《すずのね》も働いていた。
 朝露、もとい|鈴之音《すずのね》は自分の働きをクールに自画自賛する。
「何役もこなす鈴之音は、完璧ですわ~。ご主人は来られなかったけれど、鈴之音が代わりに出て手伝ったのでバッチリなのですわ~」
 最も|鈴之音《すずのね》の仕事ぶりに関しては、音響機材の設置ミスのフォローから落ちそうな食器のキャッチまで、一緒に居るレオパのほうが人一倍働いていた……。
 そして優音と実夢も警備として披露宴の会場へと移動して、案内をやり遂げた銀治郎は会場の隅で燃え尽きている。
「スタッフ枠の余興担当、相沢友子! ヘレナさんとパトリックさんの新たな門出を祝って。心を込めて歌います」
 ステージで行われた友子の歌も好評で、歌い終われば拍手が巻き起こった。
 これらすべてがとても素敵で、最高の披露宴だ!

 今日は新たな門出の日。新しい何かが始まった日。今日も、誰かの特別が始まっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

銀龍・綾音
&&&
小鳥さんと同行


綾音は聞いて回る、綾音の傍らには一羽の野の蝶々、手の平と同じくらいの大きさ希島の気候だと珍しくないのかもよく見かける。

きみはいつもみたく飾られた華に誘われた?

綾音は聞いて回る、「けっこんって何?」
綾音は『結婚』というものが有るとしってショックを受ける。→なぜなら、綾音が生まれたときから父は父で母は母で兄弟たちは兄弟たちだったから。→でも本当は、誰一人、好きではなかった事に気づいてしまう。→もし選べるなら…みんな居ないほうが良いと。→綾音にもし心が在ったなら。きっと、それこそが本当の…本心からの願い。

誰にも言えないよ!綾音はみんなのこと大好きじゃないといけないから!ずっとずっと何があってもどんな時もわたしが、好きで居なくちゃいけないの!

披露宴の会場からは、友子の歌が聞こえる。それが祝の歌だとわかるけど。綾音は行けない。行けるはずがなかった。そのはずだった。

歌には心が籠もる、それはずっと傍らに居た蝶々に掛かった魔法も溶けるように。


真宵蛾・小鳥
&&&
綾音さんと同行

目的地は神社だね。
封印される側の小鳥としては、用事がなければ近づかないよ。
ヘレナさんの結婚式なんだね。今日もこの先も幸せなものだと良いね。

ちびさんには、行かなければならない理由があるんだね。

小鳥は蝶々の姿で、綾音ちゃんの所に行くよ。

ヘレナさんはそっちには居ないね?

綾音が、探してるものは何かな?

幸せの定義は、自分に素直で居られることだよ。ヘレナさんの望みが叶ってると良いね?

ヘレナさん達がいる場所はあっちだけど綾音ちゃんも気になる?
それとも、こっちに居たい?

目を塞いで。耳を塞いで。そこには綾音を悲しませる者なんて居ないよ。
はじめてかな?どんな綾音も本物の綾音だったね。
今なら綾音の本当の願いに触れられるよ。

歌が聞こえるね。

小鳥は蝶々の姿から人の姿に変わるよ。もう隠す必要もなくなったね。

綾音、目を開けてみて?

歌に身を任せて、小鳥の手を取って歩き出せるよ。
歩調は歌に合わせたステップで、ヘレナさんに伝えに行こう。

綾音の本心からの願い。




誰よりも、幸せになって!って。




 どうするべきか、どうしたいか。
 どう望まれるか、どう望むのか。
 これらは全部びみょうに違っていて、|うまくかみ合って《・・・・・・・・》いる者と、|うまくかみ合わない《・・・・・・・・・》者がいる。
 そしてこのズレがおおきいと、それは悩みや苦しみを呼ぶのだ。

 みんなを大好きじゃないといけないのに、そうじゃない。
 そのことに気付いた銀龍・綾音(地球人のモノノケのご主人さま・f41081)の思いは揺れていた。
 それは|南瓜祭《ハロウィン》の夜からだった。
 あの日の綾音は、『|けっこん《・・・・》』について周りに聞いて回っている。
 はじめはただの好奇心。けれど聞けた答えは愛と好きと、家族について。
 「好きだから一緒になるんだよ」。それが、綾音にはよくわからなかった。

 だって、『|かぞく《・・・》』はうまれたときからそうだったもので、そこに太陽や空気があるように、|仕方なく《・・・・》あったものだったから。
 けれど、どうやら多くの人にとってはそうじゃなかったらしい。
 この概念が綾音にとってショックで、綾音はさらに聞いてまわる。

 だってだって、好きだから一緒になるのが『けっこん』で、その結果が『かぞく』なら、みんな好き同士ってことにならない?
 このとき綾音は初めて、自分は『かぞく』が好きなのだろうか? と考える。
 その結論が、『選べるなら居ないほうが良いもの』だった。
 綾音にとって『|かぞく《・・・》』とは、恐れるもの。避けるもの。いつかは前世の時のように自分を殺しに来る存在。それほどまでに銀龍という血族は――。

 どうするべきか、どうしたいか。
 皆が祝うべきだという『|けっこん《・・・・》』がほんとうに祝うべきものなのか、綾音にはわからない。

 そうしているうちに、やがて幽霊さんの結婚式の朝が来た。
 ペットのペルシャ猫が「にゃ~ぅ」と鳴いて、ごそごそと動き出す。その猫が出掛けてしばらくあとに綾音もごそりと起き出した。
 いつもいるペットたちは朝から用事があったようで誰もおらず、珍しくひとりのお昼だ。
 綾音はお昼ご飯を食べると、少し気分転換に外に出てみた。すると日が昇った朝の空は青々と明るくて空気は清々しい。
 確かこういうのは、良い天気というのだ。みんなそう言うはずだ。
 そう考えて綾音が目を細めていると、蝶々がひらひらと視界に入って来る。
 その蝶々は手の平と同じくらいの大きさで、綾音を誘う様に周りをくるりと周って飛んでいた。
(|南瓜祭《ハロウィン》の夜に居た蝶々だ)
「……きみはいつもみたく飾られた華に誘われたの?」
 そう聞いてみたけれど、蝶々は何も答えない。
 そして、綾音はそんな無口の蝶々を追いかけた。
 何故なら、このまま家にいても結婚を素直に祝えない後ろめたさが残るから。そしてこの蝶々はあの|南瓜祭《ハロウィン》の夜のように、どこかへ連れて行ってくれそうな気がしたから。
 つまりは、逃げ出したかったのかもしれない。


 綾音は蝶を追っていく。それは幽世の蝶々、そして真宵蛾・小鳥(コトリと落ちた其の箱は・・・・f32483)自身でもあった。
 ヤドリガミである小鳥の身体を構成する、集められた幼い魂の蝶。それがひらひら飛びながら綾音をある場所へ連れて行こうとする。
 でもそれがあの神社の方向だったものだから、綾音はいちど立ち竦んだ。
 ――もし会ってしまったら、何か言わなければならない。祝うべきだと皆は言う。けれど綾音には『|かぞく《・・・》』が増えることを祝うべきには思えない。
 『|かぞく《・・・》』はよいもの? 好きになれる? みんなは良いものだという。けれど、わからない。
 好きではなくても好きじゃないといけない、『|かぞく《・・・》』。
 綾音は、何が正しいのかすっかりわからなくなっていた。
「誰にも言えないよ! 綾音はみんなのこと大好きじゃないといけないから! ずっとずっと何があってもどんな時もわたしが、好きで居なくちゃいけないの!」

 そんな綾音の様子を、蝶々の小鳥はひらひらと見守る。
 ――綾音が、探してるものは何かな?
 綾音はあれだけヘレナのことを気にしていたのに、どうやら今は結婚式を祝いたいわけではないらしい。
 気にはなるが行きたくない、祝いたいが祝いたくない、そんな気持ちで盛大に心が迷子であるらしい。
 コトリバコのヤドリガミはこの迷子な心を見守っていた。

 蝶々の姿の小鳥は、披露宴の建物の横の人気が無い植え込みのあたりへと綾音を誘導した。
 ここなら下手に関係者に会う事もないからだ。
 綾音は行き先が神社ではないと解ると、少し落ち着いた様だった。
 蝶々は再び綾音の周りをくるりと飛ぶ。
 ――ヘレナさん達がいる場所はあっちだけど綾音ちゃんも気になるかい?
 ――それとも、|こっち《・・・》に居たい?

 その時、不意に歌声が聞こえてくる。
 それが祝いの歌だと解ると、綾音はここが結婚のパーティー会場になっているのだと気付いた。
(わたしは行けない。行けるはずがない)
 そう思ったとき、知らないような知っている様な、そんな声が聞こえてくる。
「目を塞いで。耳を塞いで。そこには綾音を悲しませる者なんて居ないよ」
 驚いて周りを見たけれど、いるのは蝶々さんだけだった。綾音は不思議に思ったけれど、なんとなく信じられる気がして目を閉じる。
 歌に集中していくと、そこに籠る思いがなんとなく伝わって来た。
 それは、願い。
 幸せや不幸を決めつけるのではなく、未来を願った祈りだ。
 色んな気持ちを覆い隠して、それでもこうあって欲しいと祈る、そんなお祝い。……そんな想いが込められている様な気がした。


 蝶々さんの声がまた聞こえた。
「幸せの定義は、自分に素直で居られることだよ。ヘレナさんは彼と一緒にいたいと望んだんだ。彼女の望みが叶ってると良いね?」
 これも願いだ。蝶々さんもそうあってほしいと願っているのだ。
「こういう心の矛盾に当たるのは、はじめてかな? どんな気持ちの綾音も本物の綾音だったね」
 蝶々さんはこう言葉を続ける。
「今なら綾音の本当の願いに触れられるよ」
 綾音は自分の境遇と照らして、『けっこん』をしたヘレナさんたちも同じ事になると決めつけていたのかもしれない。……だったら『|かぞく《・・・》』を悪いものだと決めつけずに考える。
 考えるのは、二人にどうあって欲しいだ。
 あの二人が殺し合うだなんてことはきっとない、そうならないでほしいと願う。そして……。

 綾音が目を開けると、そこには知らない人が――いや、あの蝶々さんが人の姿でそこに居た。
「まだ吹っ切れてないみたいだけど、今朝よりは良い顔だね。さて、『願い』は見つかったかな? もしまだこのあとの結末が心配なら……その時はまた関われば良いんじゃないかな?」
 小鳥はそう言って手を差し出す。
 たかがお祝い、されどお祝い。
 けれどこの選択に至るまでの出来事は、人との関わりを避けがちな綾音にとって大きな一歩になるだろう。

 綾音が小鳥の手をとると、小鳥は手を握り返して歩き出す。
 向かう場所は披露宴の会場だ。
「ヘレナさんに伝えに行こう、綾音の本心からの願い――」
 ――誰よりも、幸せになって! って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2025年01月19日


挿絵イラスト