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泥濘の夢は絡繰る糸先

#ダークセイヴァー #戦後


 もう少し、あと少し。
 少女は嬉しそうに囁きながら、血溜まりの中へ瓶口を浸してゆく。ゆっくりと血液を吸い込みながら、こぽり、こぽりと空気の泡を吐き出して、瓶の中を満たしゆく──それはまるで、血を飲み込んでいるかのよう。

「きっと、もうすぐよ」
 少女は囁き、たっぷりと満たした瓶を掲げ微笑んだ。
 愛しい兄様、可哀想な兄様。あの吸血鬼は、百の清らかな美しい乙女の鮮血で蘇ると言っていた。けれど、殺されてしまった兄の左目に、注いだ血の数を少女は覚えてはいない。
 少女の兄はまだ蘇らない──だからきっと百には足りないけれど、これまでたくさん注いだから、きっともうすぐ。
 満ち満ちた期待と血の香りに、少女は幸福と高揚を覗かせる。
 ──だから・・・。吸血鬼の眷属が、鮮血に染まった少女の瞳が求めるものは、よりいっそうの血の饗宴。

「ドールたち!」
 少女が声を張り上げれば、暗がりからいくつもの人形が釣り下がり落ちてくる。

「なあにアマリリス。僕らにご用?」
「どうしたのアマリリス。私たちと遊びましょう!」
 人形たちは劈く声でカタカタ笑うと、次々に少女へ手を伸ばす。少女が煩わしそうに振り払えば、人形たちの腕はあらぬ方向へ吹き飛んだ。

「お前たちが遊ぶのは外。糸をあげるから、たくさんたくさん、遊んでいいわ」
「遊んでいいの!殺していいの!」
「たくさん遊ぶよ!壊してくるよ!」
「キレイな女の人を見つけたら、私にちょうだいね」
「わかったよ、アマリリス!ありがとう、アマリリス!」
 人形たちは劈く声でカタカタ笑うと、暗闇を飛び降りて遊びに出かける。遊びと称するだけの殺戮は、人形たちの欲望と少女の高揚を満たすだろう。それはきっと、兄も喜ぶだろう。
 壊れた少女はスカートを払って立ち上がる。兄が帰ってきたら、たくさん楽しいお話ができるように。人形たちの遊ぶ饗宴ままごとを見物する為に、少女は『お出かけ』の支度をはじめた。

「楽しみね、兄様」
 少女は微笑み瓶に囁く。血液で満ちた瓶の中身は、虚ろな眼差しを覗かせていた。

 ●

「ヤアヤア、猟兵の皆々サマご機嫌よう!今回は血なまぐさァい話になるよ」
 バロン・ドロッセルはいつもと変わらぬ挨拶と笑顔を携えながら、それでいて早々と言葉を並べはじめる。

「舞台はダークセイヴァー。オブリビオン・フォーミュラが倒れても尚、かの世界でオブリビオンが未だ厳然たる支配者である事は、皆々サマもご存知の通り。
 暴虐の支配者に脅かされるのは、霧深い地に沈み寂れた村だよ。殆どの村人たちはまだ生きているけど…安心してほしいとは、とてもじゃないが言えない状況でねェ。
 何せ、オブリビオンが求めているのは娯楽であり、余興であり…虐殺だからね」
 緊迫する空気を軽薄な笑みで混ぜ返しながら、バロンはどこか落ち着き無く手元のステッキを持ち替えた。村人たちの命の猶予はさほど残されてはいない…だがそれでいて、娯楽として消費しようとしているからこそ、まだ時間は残されている。

「血なまぐさい娯楽の内容は、実にシンプルな『鬼ごっこ』だよ。
 ただし、村には所狭しと、鋭利な『糸』が張り巡らされている。恐慌状態で逃げ惑う村人たちがどうなるのかは…想像に難くないよねェ」
 鋭い糸は容易く村人の命を脅かす『虐殺道具』であり『トラップ』だ。一度でも捕まれば…或いは逃げ惑うだけでも、村人の体から鮮血は散るだろう。

「最初の『鬼』は恐怖を煽る人形たちだよ。
 皆々サマが遊んであげる必要はないからねェ。気付かれないうちに、速やかに殲滅すると良い。
 ただし注意がひとつ。鬼に追われている方…村人たちは既に恐慌状態で、情緒が不安定だ。皆々サマが救済者だと気付けないし思えない。助けるならば、過度な接触は禁物だ」
 敵に利用されるリスクもあるが、行動不能にするのもひとつの手だろうか。村人をどこかに隔離できれば、一時的に安全を守ることも可能だろう。鬼にも糸にも捕まらないよう、迅速に助けることが必要だ。

「何をするにも、村中に張り巡らされた糸と、村人たちの状態にはお気を付けてね。
 マァ、猟兵の皆々サマなら逆に利用してやる事も可能だろうけどねェ」
 バロンは最後に忠告と期待を口にすると、パチンと指を弾く。光り輝くグリモアが呼び出す扉を仰々しく差し出した。
 ゆっくりと開く扉が吐き出すのは、霧深く沈んだ村の淀んだ空気──人形たちの笑い声が、劈くように響いていた。


後ノ塵
 後ノ塵です。はじめまして、あるいはこんにちは。
 ダークセイヴァーでの二章構成のシナリオとなります。
 一章のプレイングはオープニング公開後から受け付けております。二章のプレイング受付開始はタグとマスターページでお知らせ致します。ちょっぴりのんびりで進行予定です、ご了承ください。

 一章は集団戦です。プレングボーナス:村の状況を利用する。
 村に張り巡らされた鋭利な糸を利用する等、村の状況をうまく利用するとプレイングボーナスです。
 二章はボス戦です。
 吸血鬼の眷属にされてしまった悲劇の少女アマリリスとの戦闘です。
 どちらの章でも、戦闘時に村人が付近にいると、敵は人質や盾に利用しようとします。対策するか、或いはうまくお使いください。

 皆様のプレイングお待ちしております。奮ってご参加のほど、どうぞよろしくお願いします。
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第1章 集団戦 『ダペルトゥット・ドール』

POW   :    感情暴走の呪詛
【対象の強い感情や欲求が増幅され続ける呪詛】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    お返しの呪詛
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【普段は存在が隠蔽されている巨大な繰り手】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    人形化の呪詛
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【運搬及び自衛用の人形】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
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 夜闇を埋める深い霧。陰鬱な空気が重く立ち込める村には、劈くような笑い声と共に磁器が打つかる音が反響している。

「サァ、時間だよ村の仲間たち!」
「遊びましょう、今日は楽しい鬼ごっこよ!」
 霧の中に浮かび上がるのは幾つもの人形──呪術師ダペルトゥットが作成した呪詛人形。ダペルトゥット・ドールたちは、繰り手が居ずとも甲高く喋りだす。

「逃げ切れたら君たちの勝ち、逃げ切れなかったら僕たちに仲間入り!」
「十を数えたら始めましょう。隠れん坊は引き摺り出してあげる!」
 どれほど一方的な言葉であれど、それは村人たちが拒否できるものではない。この世界の支配者に従わない事、それは即ちただ死があるのみなのだから。

「──ユイット、ヌフ…ディス!」
「サァ、始めるよ!」
 甲高いカウントが終わりを告げて、村人たちは恐怖に駆られ逃げ出し始める。
 支配者オブリビオンに従ったとて、余命がほんの少し伸びるだけだと知りながら。
フリル・インレアン
ふええ、鬼ごっこですか。
罠を仕掛けた状態で鬼ごっこなんてズルいですね。
とりあえず、村人さん達が罠にかかりにくくしましょう。
お菓子の魔法で村人さん達や人形さん達の動きを遅くしてしまえば、時間が稼げます。
その時間で村人さん達を助ければよさそうです。
ふえ?罠の中に入っている私がどうやってって、それは……。
そういうアヒルさんはどうするんですか?
アヒルウィングは武器だから糸を切っていくって、私を置いて一人で行かないでくださーい。
ふええ、一人残された私が襲われたらどうするんですかー!!
こうなったら念動力で糸をどかして逃げるしかありませんね。
ユーベルコードは使ったらアヒルさんの餌食ですから大丈夫でしょう。



 フリル・インレアンはアヒルさんガジェットを伴って、劈く笑い声が響く村の中へと恐る恐る足を踏み入れる。

「ふええ、鬼ごっこですか。罠を仕掛けた状態で鬼ごっこなんてズルいですね」
 支配者と被支配者…ただでさえ公平さに欠けるこの遊びは、オブリビオンの趣向によってよりいっそう均衡を傾けていた。

「とりあえず、村人さん達が罠にかかりにくくしましょう」
 まずは村人たちをこの残虐な仕掛けから救出しなければ。フリルはさっそくお菓子の魔法の準備。手作りお菓子を取り出した。
 敵の動きを遅くする魔法があれば、時間を稼いでなんとかなるだろう。けれどアヒルさんは首を傾げてフリルの肩を突く。

「ふえ?罠の中に入っている私がどうやって助けるのかって、それは……」
 罠が危険なのはフリルだって同じこと。フリルは言い淀むも、のんびりしている時間はない。霧を引き裂くように聞こえてきたのは、人非ざる『鬼』の劈く笑い声と、恐怖に震える村人の悲鳴。

「あっちです、アヒルさんっ!」
 アヒルさんを先頭に急いで声の元へと向かえば、今まさに村人たちへと飛び掛ろうとしているダペルトゥット・ドールたちの姿があった。

「ヤァ、男の子だよ!遊んで良いよね!」
「小さな女の子もいるわ!殺しましょう!」
 歓喜の笑い声を上げる幾つもの人形たちへ、間髪入れずにアヒルさんは飛び出してゆく。
 不意打ちを食らって吹き飛ぶ人形たちを尻目に、フリルは急いでお菓子を給仕する。

「あ、あの、お菓子を作ってきたんです。よかったら、おひとつどうぞ!」
「ひっ、い、いらないよぉっ!」
「助けて、パパ!ママ!」
 子供たちは恐怖でお菓子どころではない。フリルのお菓子を乱暴に払って、悲鳴を上げながら逃げ出そうとするも──その動きは驚くほどに緩慢だ。給仕されたお菓子を楽しまない村人はその行動速度が5分の1へと変化する。

「これで時間を稼げますね」
 村人たちがすぐさま糸の罠にかかることはないだろう。けれど人形たちはそうもいかない。吹き飛ばされた人形たちは、体をカタカタ揺らして再び立ち上がると、フリルとアヒルさんの姿に嬉しそうに劈く叫び声をあげる。

「ワァ、新しい仲間とオモチャがきたよ!」
「アヒルさんだわ!私にちょうだい?」
「お、オモチャじゃないし、あげません。代わりにお菓子をあげますっ」
「ウフフフ!オママゴトね、食べてあげる」
「アハハハ!変なの、僕たち人形なのに!」
 少女の人形はお菓子を口元で押し潰して、少年の人形はお菓子を掴むと放り捨てた。お菓子を楽しまない人形に魔法はかかり──けれどそれも、人形のお返しの呪詛によって無効化される。お菓子を持たぬ巨大な繰り手はお返し損ねて姿を消したが、人形たちは構わず甲高い声をあげる。

「ネェ、猟兵だよ!アマリリスにあげようか!」
「そうね、キレイな女の人だもの!アマリリスにあげましょう!」
 人形たちが非ぬ方向へ腕を振れば、キラリと光る糸が新たに張り巡らされ、撓る糸はそのままフリルたちへと襲いかかる。

「ふええ、ど、どうしましょうアヒルさん!」
 フリルがオロオロと助けを求めれば、アヒルさんはアヒルウィングで糸を凌ぐ。そのまま子供たちを庇うようにササッと抱えると──糸を掻き分けるように逃走した。頑丈な武器のアヒルウィングで包むように守ってあげれば、どんな罠の中でもへっちゃらだ。

「ふええ、私を置いて一人で行かないでくださーい!」
「アハハハ!鬼ごっこだ!」
 今度はフリルが悲鳴を上げて、人形たちは劈く笑い声をあげる。人形たちはふた手に別れて一方はアヒルさんを追いかけ、もう一方は再び糸でフリルを取り囲む。こうなったらもう、念動力で糸をどかして逃げるしかない。

「どいてください!」
 念動力で人形ごと糸をかき分けるとフリルは霧の中を走ってゆく。

「ウフフフ!逃げていいのよ、捕まえるから!」
 不気味な人形たちは劈く笑い声をあげながら、フリルの背中を追いかけていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…相変わらず悪趣味な奴らだ
…人形共め…だが…まずは村の人達を護らねば…いざ行かん…私は処刑人…!

己の腕に妖刀斬り付け出血させ地獄の炎を吐き出し
範囲攻撃で炎を操り広げてめぐらされた糸を炎で包み込んで村の人達の行動を…
申し訳ないが拘束し動きを制限させよう…我慢してくれ…すまない…

さて…人形共には首飾りによる呪詛耐性と邪心耐性の加護を得て冷静に相手しよう

人形よ…悪戯は終わりだ…いう事聞かねば…こうだッ!
【巨人力】の怪力で人形共を掴み地面に叩きつけたら
炎纏う糸に投げつけて敵を次々に斬り裂き燃やしてやろう…!

…鬼ごっこだ…次は貴様等が逃げ惑う番だ!逃がすまいぞ…私は…処刑人だッ!!!



「…相変わらず悪趣味な奴らだ」
 仇死原・アンナは息を隠して潜みながら、我が物顔で跋扈する人形たちオブリビオンに渋面を作る。村人を楽し気に虐げようとする人形たちの姿を見れば、アンナの胸に激しい炎が湧き上がる。けれどだからこそ、地獄の処刑人アンナは優先順位を見誤らない。

「…人形共め…だが…まずは村の人達を護らねば…いざ行かん…私は処刑人…!」
 アンナは強い決意を口にすると静かに妖刀を抜き払い、そのまま己の腕を斬り付けた。流れ落ちる鮮血と共に、吐き出されるのは地獄の炎。燃え盛る紅蓮を繰り広げれば、立ちどころに糸を飲み込み、その脅威を明らかとする。

「ひ…っ!」
 そうして、夜霧の中に浮かび上がった紅蓮の炎は、村人の目にはとりわけ不気味に映るもの。近くに息を潜め隠れていた村人のひとりが、恐怖に喉を引き攣らせて悲鳴をあげた。…恐怖に震える村人たちは、もはや人形も猟兵も区別など付けられず──そして、鬼が巡らせた糸にも気付ける筈がない。

「行かせんッ!」
 細い路地へ走る人影に向かって、アンナは大きく腕を振り払う。紅蓮の飛沫は村人たちの頭上を越えて、彼らの進行方向に仕込まれた糸を瞬く間に飲み込み燃え盛る。

「ああ…嫌だ死にたくない…!」
「クソッ!こっちだ、早く!」
 燃え盛る炎は村人たちを制限する道標。村人たちは炎を避けようと逃げ惑う。容易く安全な袋小路に追い詰められた村人たちは、恐怖に引き攣りながらボロボロの農具を突き付ける。

「来るな、来るなぁっ!」
「…我慢してくれ…すまない…」
 アンナは振り絞るように謝罪を口にしながら、頼りのない武器をいなしてゆく。鮮血の滴る腕で拷問器具をばら撒けば、暴れ踊る鎖はあっという間に村人たちを拘束した。村人たちは尚も恐怖の中で、うわ言を繰り返し啜り泣く。
 一刻も早く、彼らを解放しなければ──処刑人の地獄の炎は燃え盛る。

「誰が糸を燃やしたの!?アマリリスに怒られる!」
「村人がいない、いないよ!アマリリスに叱られる!」
 そうして、人形たちは駈けずり悲鳴を上げる。貰った糸おもちゃは炎に飲まれ、村人たちおもちゃは捕まえられない。支配者は饗宴ままごとを楽しみに遊びに来るのに!
 そんな焦りを滲ませ悲鳴を上げる人形たちの前に、地獄の処刑人は姿を現す。

「人形よ…悪戯は終わりだ…」
 地の底から這い上がるアンナの声に、人形たちはこぞって体をカタカタ震わせる。村人が糸を燃やせる筈はなく、村人が立ち向かってくる筈は無い。磁器の躰が擦れ打つかり、人形たちの内側で呪詛が膨らんだ。

「お前かああァァア!!」
 劈く咆哮と共に人形の呪詛が弾けて吹き出せば、襲いかかるのは感情暴走の呪詛──生物を死へと誘う歪んだ欲望だ。けれどそれは、アンナには通用しない。
 アンナの白い指先が、オニキスを飾る闇色のチョーカーへと触れる。呪詛と邪心を阻む魔除けの加護は、アンナに冷静さを与えてくれる。

「いう事聞かねば…こうだッ!」
 アンナは無差別な攻撃を掻い潜り、人形たちの冷たい手足を次々に掴み取る。ユーベルコードを発動すると、神話の巨人が如き脅威で地面に叩きつけ、そのまま炎の糸へ投げつけた。

「ギャアアァッ!」
 巨人の怪力による勢いは人形の躰を容易く斬り裂き、今度は劈く絶叫が響き渡る。砕け裂かれ零れ落ちる人形の破片に、今度は人形たちが怯える番だ。

「猟兵だよ、アマリリス!アマリリス!」
「アァ、ダメよ、壊される!」
 掴んでは投げ、叩き付ければまた投げる。砕け裂けては燃える人形を尻目に、人形たちは散り散りに走り出す。

「…鬼ごっこだ…次は貴様等が逃げ惑う番だ!逃がすまいぞ…私は…処刑人だッ!!!」
 アンナは紅蓮の炎を繰り広げ、大地を蹴って人形たちを追随する。地獄の処刑人は、人形の一体たりとも逃したりはしない──!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ブラミエ・トゥカーズ
人形風情が人に逆らうとは愚かの極みであるな。

吸血鬼に虐げられし人間達よ。
余が祝福してやろう。
一時ではあるが従者風情、恐れることは不要であるぞ。

村人達をダークセイヴァーの吸血鬼とは異なる特定の手段以外では殺し切れないUDCアース準拠の吸血鬼に変容《感染》させ、人外の暴威を振るわせる

村人たちは戦場で死亡あるいは気絶をしなくなる
特定の対処方法以外では死ねない不死性を与え、村人達にて人形を破壊させる
なお、UDCアース準拠の吸血鬼対処方法ではダメージを受ける(大蒜、日光、流水、空気清浄、消毒用アルコール等)

本来、赤死病に感染すれば狂乱の末、衰弱死であるが猟兵として村人は死なない程度に症状を抑える



 人形たちに追われ、村人たちは霧の中を逃げ惑う──。

「アハハハ!逃げてもムダだよ!」
 劈く歓声は四方八方から迫り寄り、戯れに離れては村人たちの恐怖を煽る。視界も悪い霧の中でいつ襲われるかわからない恐怖は、村人たちの足をたちまち竦ませる。そうして足がもつれて転べば途端に霧の中には鮮血が香るもの。

「あああぁっ!」
「嫌ぁッ!」
「引っ掛かった、引っ掛かった!」
 村人たちの痛みと恐怖の絶叫に、人形たちはしきりに喜び劈くように耳障りな歓声をあげて回る。
 ──眼前に広がる狂乱の饗宴。ブラミエ・トゥカーズはその端正な面立ちに、憐憫と憤慨を滲ませた。

「人形風情が人に逆らうとは愚かの極みであるな」
 人形とは、本来ならば人の友であり遊び道具だろう。それが逆転する事はおろか、嗜虐者となろうなど笑止千万。忌々しげに言葉を吐き捨てたブラミエは、けれどその唇に薄い笑みを浮かべた。

「吸血鬼に虐げられし人間達よ。余が祝福してやろう」
 そうしてブラミエは片手を開くと、細く息を吹きかける。吐息と共に噴出し空気中に広がるのは、ダークセイヴァーの吸血鬼とは異なる吸血鬼の病魔ウイルスだ。

「目を瞑った光景、焼き尽くした記録、口を封じた伝承よ。此処に再演しよう。赤き夜を、紅の騎士達を、血に飢えた侵略を」
 ブラミエの諳んじる唄声は霧の中へ厳かに響き、泡沫の祝福は村人たちへと注がれる。いくつかの人形がブラミエの声に頭を上げたが──それは、目の前に転がる村人たちおもちゃへの嗜虐を止める理由にはなりえない。

「ウフフフ!捕まーえたーァ!」
 人形たちは劈く声を歓喜に彩り、鋭利な糸を村人たちへ撓らせる──けれどその歓喜は次の瞬間、にわかに色を変えた。

「ギャアッ!」
 村人のひとりが農具を大きく振り上げれば、それは人形の頭を打ち据え弾き飛ばした。磁器の頭は大きな音を立てて砕けると、そのまま物言わぬ人形となる。
 人形たちは呆気にとられて、転がる仲間の躰を眺め見る。あり得ない光景に動きが止まった人形たちの後ろで、幾人もの村人がゆらりと立ち上がり、勢い良く農具を振り下ろした。

「アッ…」
 今度は悲鳴すらなく、人形たちの躰が容易く割れて、砕け散る。糸に身体を切られ恐怖に引きつり啜り泣いていた筈の村人たちは、いつの間にか流れる血が癒えていた。
 立ち上がる村人たちは瞬きの間に数を増し、皆一様に頼りのない武器を取る。

「征くが良い、紅の騎士達よ。余の祝福は今、花開いた」
 大地へ降り立ったブラミエは村人たちを率いて満足げに微笑む。赤死病、それはこの世界ではない世界の吸血鬼に変容感染させる転移性血球腫瘍ウイルス──ブラミエ・トゥカーズの名であった。

「従者風情、恐れることは不要であるぞ」
 ブラミエが囁やけば、村人たちはもはや逃げ惑うことなどない。自らを奮い立たせる咆哮を上げると自ら人形たちに飛び込み、人外の暴威を振るってゆく。異世界の伝承に準える不死性には気絶も死亡もなく──鋭利な糸の罠すら、もはや脅威とは呼べなかった。

「どうして、どうしてぇッ!」
 どれほどの獲物も盾も物ともせずに、次々に襲い迫るのは異世界の吸血鬼。人形たちはなす術無く、砕ける躰に劈く悲鳴をあげる。
 ブラミエの与えた不死性は絶対ではない。けれど、大蒜も、日光も、流水も、殺菌も、このダークセイヴァーの寂れた村では用意できるものではなかった。

 そうして異世界の吸血鬼たちの狂乱はふいに終わり、村人たちは糸が切れたように倒れ伏す。あれほど恐ろしかった人形たちの、その骸の上に膝を付く村人たちは、荒い呼吸の中で困惑を掻き分けていた。
 …本来、赤死病に感染すれば狂乱の末、衰弱死。村人が死なない程度に症状を抑えることは、猟兵のブラミエとしての嗜みだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
こんにちは!とシエナは『兄姉』に挨拶します。

自身の『兄姉』が見つかったと聞き意気揚々と突入したシエナ
『兄姉』と仲良くなり現在の『兄姉』の所有者について知る為に『兄姉』の鬼ごっこに混ざります

至る所に張り巡らされた邪魔な糸を[シエナの特性お手入れセット]の鋏で断ち切り、『兄姉』に捕まればシエナはユーベルを発動させながら宣言します。

次はわたしが鬼だね!とシエナは宣言します。

鬼役となったシエナは[怪力]や[激痛耐性]任せに糸を引きちぎり『兄姉』により暴走した親愛と好意に身を任せ逃げる者達を捕らえます
遊戯が終われば遊戯により古い体が壊れた『兄姉』達を『お父様』が待つスカートの中の人形世界へと仕舞います



 シエナ・リーレイは霧の中をズンズン突き進む。意気揚々と村の中を進むシエナの歩みは、まるでピクニックに向かうように楽しげなスキップだ。
 ああだって、シエナの『兄姉』が見つかったのだから。シエナは『兄姉』と仲良くなりたいし、現在の『兄姉』の所有者について知りたいのだから。シエナは村人を救済しにきたわけでも、オブリビオンを懲らしめにきたのでもない──『兄姉』の鬼ごっこに、混ざりに来ていた。

 シエナのスキップがふいに、ピタリと止まる。視線の先にあるのは、ピンと張られた鋭利な糸だ。至る所に張り巡らされた糸は、どうみても鬼ごっこには邪魔なもの。シエナは特製の道具箱から大きな断ち切り鋏を取り出すと、チョキンと糸を切ってゆく。

 チョキン、チョキン、と霧の中に刃音が響く。ひとつひとつ丁寧に、丁寧に。シエナはただ遊びに来ただけだけれど──その行動は村人たちの逃げ道を作っていくもの。となれば当然、人形たちにとってはシエナが『邪魔』となるのも当然だろう。

「糸を切るのは誰なの!?」
 チョキン。刃音の後に聞こえてきたのは、怒りに滲む人形たちの劈く声と磁器が打つかる荒々しい音。途切れた糸を辿って辿って、シエナの『兄姉』はシエナの元へと辿り着いてくれたのだ。

「こんにちは!とシエナは『兄姉』に挨拶します」
 だから、シエナはお行儀よく鋏をしまうとニッコリ微笑み挨拶をする。

「わたしはシエナ、あなた達の『妹』だよ!とシエナは名乗ります」
 スカートの端をつまんでシエナはお辞儀を一つ。けれど見慣れぬ人形シエナに、ダペルトゥット・ドールたちは躰をカタカタ揺らして再び怒りを顕にする。だってシエナが断ち切ったのは、所有者アマリリスに与えられた大事な遊び道具なのだから。

「最悪だよ!アマリリスがくれたのに!」
「信じられない!楽しく遊ぼうと思ったのに!」
 人形たちは次々にシエナへ怒りを向けて、怒りのままに鋭利な糸を撓らせる。あっという間に糸はシエナの手足を絡めとって、あっという間にシエナは捕まった!
 けれど、これは鬼ごっこ。

「次はわたしが鬼だね!とシエナは宣言します」
 『兄姉』の『好意』を受け取って、シエナはニッコリと微笑んだ。楽しい遊戯はいつだって、順繰りに役目が回るものなのだから。

 シエナのスカートの中から呪詛の影がぞろりと溢れ出し、人形たちはピタリと動きを止めてガラスの瞳を大きく見開いた。『兄姉』だと、『妹』だと、シエナがそう名乗った訳を──ダペルトゥット・ドールたちは、その身を持って知る事となる。

 シエナが怪力任せに糸を引けば、人形たちは慌てて拘束を強めて引き絞る。縛る糸の力は益々強まり、音を立てて体に食い込みを砕こうと締め付けるが、シエナは構わず引き千切った。溢れ出した影が蠢き、シエナの瞳が爛々と狂気に輝く。

「あなたの想いとっても素敵!わたしの想いもどんどん強くなっちゃうよ!とシエナは気分を高揚とさせます」
 そうしてシエナは、膨れ上がる親愛と好意の高揚のままに人形たちへと襲いかかる。

「ヒッ、ギャッ」
 抱きしめて潰して、掴んで引きちぎって、突き飛ばして叩きつける。人形たちがシエナに抗おうと呪詛を撒き散らす程に、親愛と好意はよりいっそう深まり凶行の勢いは増すばかり。

「楽しいね!とシエナは喜びます」
 次々に『兄姉』たちを捕らえて握り潰して、シエナはただ無邪気に微笑む。捕まえて捕まえて捕まえて捕まえて捕まえて…気が付いた頃には、シエナは近くの『兄姉』を全て捕まえていた。
 静けさの中でシエナはスカートを払う。鬼ごっこで誰かを捕まえたら交代するものだけど、『兄姉』は遊戯ですっかり体が壊れてしまった。壊れた体は整備しなくちゃいけなくて、何より遊戯が終わればお片付けをするものだ。シエナはお行儀良くスカートの裾を摘んで持ち上げる。

「お父様、兄姉たちだよ!とシエナは仕舞います」
 溢れ出す影は人形たちを掴んでずるずると飲み込んでゆく。スカートの中の人形世界では、『お父様』が『兄姉』たちを待っている。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
敵も吸血鬼の被害者か
何とも胸くそ悪い話だね

邪神の玩物を自分に使用
人形になった体を硬化させて防御強化
もし糸に触れても体が切れないし
遠目にはダペルトゥトドールか
人形化された村人に見えるだろうし

村人を見つけたらこっそり目立たないように近づき
邪神の玩物を使用

あれは同じ年頃の女の子かな
怪我しないうちに保護しよう
テレパシーで救済者と伝えて落ち着けばよし
無理なら心身支配で少しの間操り人形になって貰おう

敵を見つけたら人形のふりをして近づき
強化した格闘や拳銃で砕くよ

糸の罠で体は切れないけど服は無理か
肌を晒して恥ずかしいと思う事ができないあたり
心も人形化の影響受けてるんだよね
邪神の力だし便利でも気をつけないとなぁ



 このダークセイヴァーにはいつだって、胸糞悪い話ばかりが転がっているものだ。
 霧の中の村へ足を踏み入れた佐伯・晶は忌々しそうに表情を歪めて、振り払うように頭を振った。胸糞悪い話に苦々しい思いはあれど、まずは村人の救済が最優先だ。

 邪悪な人形が跋扈するこの村で、晶が選ぶユーベルコードは邪神の玩物。躊躇いもなく自分の体に使用すれば、あてもなく出現した操り糸が肌に触れて繋がった。たちまち関節は球体に、肌は磁器に硬化して、あっという間に晶の体からは生物の滑らかさが失われる。
 晶は身体硬化した冷たい指先で、近くの糸を軽く弾いた。糸は存外澄んだ音色を出すだけで、硬化した肌には一つの傷もない。これで晶の体は切れないし、遠目にはダペルトゥト・ドールか──或いは、人形化された村人にしか見えないだろう。いよいよ準備が整った晶は、慎重に村の中を進んでゆく。

「アハハハ!」
 霧の中に潜み村人たちの捜索を進めてゆく中でも、人形たちの劈くような笑い声はそこかしこで幾重にも反響していた。
 恐怖を煽る人形たちに、張り巡らされた糸の罠──命を脅かされる中で、追われる村人たちの心中は察するに余りある。晶は逸る気持ちを抑えながら、耳をそばだてる。
 人形たちの気配に混ざって、忍ばせながら走る音を聞き咎めれば、晶もまた目立たぬように慎重に近付いてゆく。

「あれは…同じ年頃の女の子かな」
 年は十二、三歳だろうか。やせ細った華奢な背中は何度も後ろを振り返りながら、惑うように足を急がせている。だがそれも、恐怖に逸ればすぐさま糸の餌食だろう。晶は急いでユーベルコードを発動すると、テレパシーで自分が救済者であることを伝える。

「ひ…っ!?」
 だが、頭の内側から聞こえ始めた声に、少女は恐怖に顔を引き攣らせ足を止めた。すぐさま頭を抱えると、錯乱したように周囲を見渡す。常時であれば落ち着くのを待つこともできようが──接敵する危険を避けることが優先だと、晶は素早く行動を切り替える。
 今度は少女の心身を支配し、そのまま操り糸を手繰り寄せる。頭をガクリと項垂れた少女は、再びフラリと顔を上げて晶の元へと辿り着く。晶の体と同じように身体硬化を与えれば、怪我をする心配もないだろう。
 そうして村人たちを一人、また一人と保護していけば、霧の中は徐々に人形たちの苛立ちが大きくこだまする。

「村人はどこ?どこにもいないよ!」
「どこにもいない!遊べないじゃない!」
 戯れのようだったダペルトゥト・ドールはいよいよ忙しなく走り回り始めていた。晶はそんな人形たちの裏をかくように、人形化した村人たちを物陰に誘導すると、人形たちの狩場へ一人躍り出る。
 かしましい人形たちの動きを倣いながら、素早く近付きその躰を次々に硬化した拳と拳銃で砕きゆく。

「どうしたの?何が起きてるの?」
 磁器が打つかり砕ける音に、この世界にあらざる発砲音。異変に気付いた人形たちが、己の身を守ろうと呪詛を使おうとも──それは対象がいてこその話だ。気絶した村人などはどこにも居らず、晶に砕かれた他の人形だってもはや盾になりはしない。人形たちが縋るように糸を撓らせても、晶の硬い体は糸を容易く弾いてしまうだけ。

「アァ、イヤよ、アマリリス!」
 劈く悲鳴が霧の中に響き渡り、砕け壊れる音を最後に沈黙した。晶はようやく深い息を吐き出して、体に引っ掛かった糸を力任せに引きちぎった。

「うわ、破れてるや」
 その拍子、鋭利な糸は服を裂いて磁器の肌を露出する。硬化した体は切れずとも、布は容易く割かれるものだった。そのひとつひとつは小さくとも、糸で裂かれた服はあちこち傷だらけだ。晶は指先で頬をかく。
 こうして肌を晒しても、恥ずかしいと思う事ができないあたり──晶の体だけではなく、心も人形化の影響受けていた。

「邪神の力だし、便利でも気をつけないとなぁ」
 人の心を失わぬ為に必要なのは自制心だろう。小さな自戒を胸に止めて、晶は再び霧の中へ戻っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

建依・莉々
アドリブ・連携大歓迎♪

うん。パニックになったら、そりゃ聞こえないよね。

「むぅ じゃあ、追っかけてみる♪ 」

化術で人形に化け、村人を追いかけ回します。逆方向に、糸から離れるように。隔離場所があるなら、追い込みましょう。うふふ♪ なんかこれ、楽しい?

そのうち人形が叱りにくるだろう。そしたら「場所忘れた」とか言って、糸の密集しているとこまで連れてってもらい・・・どん。糸に向かって突き飛ばします♪ キレるかな? 切れるかな? わたし? わたし水溜まりだもの、切れないの♪

残った人形は猫パンチで各個撃破♪ これ、真似てもあなたには意味ないでしょ♪ うん、やっぱりこれ楽しい♪

「うふふ♪ 次は何して遊ぶ?」



 猟兵たちの速やかな活躍によって、村に跋扈する人形たちは静かに数を減らしていた──けれどそれは、状況を冷静に見れる猟兵たちしか気が付きようのない話だった。

「あ、いたいた。おーいっ♪」
「ひいぃッ!」
 建依・莉々は村人たちを見つけた端から声をかけるも、怯えきった村人たちはすぐさま逃げ出してしまっていた。
 いくら莉々が好意的に彼らを救済しようとしていたって、命を脅かされてパニックとなった村人に、冷静な判断力を求めるのは難しいもの。莉々はむうっと拗ねると唇を尖らせて、けれどすぐさまに笑顔を作る。

「じゃあ、追っかけてみる♪」
 逃げられるならばいっそのこと、逃げさせれば良い──莉々がぽんっと化術で化けるのは、ダペルトゥット・ドールの女の子。莉々は人形たちとは逆に、村人を糸から離れさせる為に怯える背中を追いかけてゆく。

「うふふ♪ なんかこれ、楽しい?」
 ついつい追いかけっこを楽しみながらも、莉々は目ざとく周囲を見渡し、張り巡らされた糸の位置は見逃さない。
 磁器の体をわざとらしくカタカタ揺らして村人たちを追い立て追い込み、誘導するのは少し離れた資材倉庫。周囲に糸はなく、人形たちの気配も遠い…隔離場所にはうってつけだ。

「ウフフ、逃げても無駄だよ♪ もう取り囲んでるんだから!」
 莉々が人形たちの声を真似て村人たちを脅せば、怯えた村人は隠れる場所を求めて、我先にと小屋の中へ。一時凌ぎはこれで充分、莉々はスキップで村の中へと舞い戻る。
 そうして莉々がひと気の失せた霧の村へ戻ってくれば、本物の人形たちは苛立ちのままに劈く声で喚いていた。

「村人がいないよ!鬼ごっこにならないよ!」
「最後に鬼をしていたのは誰!?」
「わたしだよ、わたしだよ♪」
「なんですって!?この役立たず!!」
「だって、糸の場所を忘れたの」
「アァ、なんて頭が悪いんだ!」
 すぐさま人形たちの劈く罵倒が次々に飛んできて、莉々はわざとらしく肩を竦ませる。演じるのは無能な人形。体をカタカタ揺らしながらしおらしく振る舞えば、人形たちは憤慨しながら糸の先へと案内してくれる。

「ここだよ!こっちだよ!」
「うふふ♪ ありがとう」
 そうして辿り着いたのは、凄惨な遊びを楽しむ為の舞台装置。人を刻む糸の袋小路を前に、莉々は人形たちのように楽しそうに微笑んだ。

「それじゃあ、どーんっ」
「アッ?」
 莉々は躊躇いもなく一体の人形を怪力任せに突き飛ばす。前触れもなく訪れた衝撃に人形は抗えもせずに、鋭利な糸に刻まれた。
 磁器の破片が崩れて砕けて、呆気にとられた人形たちには、一瞬で憤怒が広がる。

「何するの!!」
「キレるかな? 切れるかな?」
 莉々が愉快に茶化せば、怒りに染まった人形たちは感情暴走の呪詛を放ちながら、お返しのように莉々の体を突き飛ばした。激しい攻撃の勢いで倒れて転んで、今度は莉々が糸の中へ──けれど、ブラックタールの体は糸に刻まれることなどない。

「わたし水溜まりだもの、切れないの♪」
 スルリと糸を抜けて、莉々は素早く猫パンチをお返しする。肉球のスタンプを貼り付けられた人形たちが警戒して離れようとしても、莉々が猫の手に作った片手を招けばあっという間に引き寄せられる。

「んー、にゃーお♪」
「ギャアッ!」
 倍増した怪力の一撃は砕けさせて、人形たちは次々に悲鳴を上げる。どれほど呪詛を放とうとも、莉々の感情は『楽しさ』が膨らむばかり。

「うふふ♪ 次は何して遊ぶ?」
 猫が玩具に戯れて遊ぶように、莉々の怪力は次々に人形たちを破壊していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『囚われ続ける姫君『アマリリス』』

POW   :    血の饗宴
速度マッハ5.0以上の【貫手 】で攻撃する。軌跡にはしばらく【血で出来た強固な糸】が残り、追撃や足場代わりに利用できる。
SPD   :    血吸いの化け物
攻撃が命中した対象に【自らの血液の使い魔 】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【吸血】による追加攻撃を与え続ける。
WIZ   :    血の楔
見えない【血の糸 】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
👑11
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 猟兵たちの手によって、人形たちは一体、また一体と村から姿を消してゆく。
 村の中には壊れた人形のパーツが無造作に転がり、村中に響いていた劈くような笑い声は──ふと気が付けば、耳に余韻が残るばかり。

「なんだ…?どうなってるんだ…?」
「人形が襲ってきて…それから…」
 恐怖にかられ逃げ惑っていた村人たちは、憑き物が落ちたように、今は困惑を吐き出していた。正気に戻れば猟兵たちの姿も目に留まる。ようやく状況を飲み込めた村人たちは、猟兵たちに安堵の表情を向けた。

「あんたらが助けてくれたのか…ありが──うわッ!?」
 ほっと胸を撫で下ろして、感謝の言葉を向けかけたひとりの村人に、胡乱な気配が強襲する。既の所で猟兵がかばえば、撃ち落とされた血色の蝙蝠は血に伏し弾けて消えた。

「ねぇ、どうして人形がいないの?」
 可憐な声でそう言いながら、霧の中から現れたのはゴシックドレスの少女。僅かに生き残るも猟兵たちに敵わぬと、息を潜めていた人形の頭部が、少女の姿を見るなりヒビ割れた声で喋りだす。

「アマリリス!ここに居るよ!」
「猟兵たちにいじめられたよ!アマリリス!」
「悪い奴ら!嫌な奴ら!」
 猟兵たちを非難する人形の声に少女──アマリリスは眉間を寄せて手を振った。

「アッ」
「うるさい、役立たず」
 血色の糸が素早く撓って、人形たちの頭部を砕く。不快を露わにしたアマリリスはけれど、猟兵たちへ向き直ると微笑んだ。

「猟兵まで来てくれるなんて、嬉しい。猟兵の血があれば、兄様も還ってきてくれるわよね?」
 アマリリスはうっとりとテディ・ベアに語り掛け、虚ろな眼球が浮かぶ瓶ごと抱きしめる。新たな獲物を見出した少女は、ただ壊れた笑顔を浮かべていた。

「あなた達の血を、兄様にちょうだい!!」
 血色の糸を携えて──ヴァンパイアの妄言に囚われ続けるアマリリスは、猟兵たちへと襲いかかる。
ブラミエ・トゥカーズ
人形ども相手では余の腹も膨れぬし、貴公が居って安心したぞ?

人型の状態では敵攻撃は回避しないし、血もまき散らす
周囲の血の糸が飲みごたえのある量になった段階でまき散らした血と自身の残る人型を霧化する
血の糸を吸血する
相手の足場を奪い、地に落とす

吸血鬼相手に血を用いるのは悪手であるぞ?

UDCアース生まれ伝わる妖怪・吸血鬼として周囲の住人も巻き込み恐怖をまき散らす
自身を見る者達が怖がるのであれば、再度人型に戻って再生能力や不死身振りを顕示する

貴公の願う通り、吸血鬼であれば血によって蘇るのはお約束であるが、
さて、余の血でそれは叶うかな?
余の血は行儀が悪いのでな?

アドリブアレンジ色々歓迎



 妄執に囚われたアマリリスが猟兵に向けるのは、強い敵意と確かな殺意。華奢な少女の見た目をしていようとも、その手に秘める力は確かな脅威だ。けれどそんなオブリビオンを前にしても、ブラミエ・トゥカーズは余裕の表情を崩さず不敵に微笑む。

「人形ども相手では余の腹も膨れぬし、貴公が居って安心したぞ?」
「…ふふっ、うふふっ!おままごとじゃ満足してくれないのね」
 ブラミエの挑発的な言葉に、アマリリスは酷くおかしそうな声を上げて破顔する。ああだって人形遊びは、子供の遊び。少女はまるで淑女のように、ドレスの裾を両手で摘むとお辞儀をするように姿勢を下げた。

「それじゃあ、あなたから殺してあげる!」
 アマリリスは苛烈な言葉を吐き出すと大地を強く蹴った。目にも止まらぬ速度で繰り出すのは音速の貫手だ。目の前から少女が消えて、訪れたのは軽い衝撃。その瞬間、ブラミエの口元からは鮮血が溢れ出す。
 視線を下げれば、少女の華奢な手がずるりと引き抜かれる。鮮血が吹き出す風穴には、操り糸のような血の糸が残っていた。

「ねえ、私と一緒に踊りましょう!」
 アマリリスが糸を引けば、ブラミエの体が大きく傾ぐ。次に訪れた衝撃は右腕に。糸の軌跡に肘が引っ掛かり持ち上がれば、ブラミエの姿はまるで繰り糸にぶら下がる人形のよう。次いで左足に、右胸に。途切れることなく貫手は繰り出して、アマリリスは獲物をいたぶるような攻撃を続けていく。音速の攻撃にブラミエは成す術なく──きっと、そう見えるだろう。
 けれど、始めこそ楽し気だったアマリリスの表情はふいに陰りを見せる。むざむざやられる猟兵など、あまりにも手応えがなさすぎる。幾度も攻撃を繰り返す度に血の糸に釣り上げられたブラミエが、まき散らした血液だってもうとっくに致死量だろう。けれど彼女は今も、糸の上に立っていた。

「ふふ」
 ブラミエがにわかに微笑み、アマリリスは瞬時に距離を取った。もはや繋がっている程度でしかない右腕が、ぶら下げた糸を掴むとブラミエの腕が、身体が崩れて掻き消える。
 ──この場に満ちる血の糸はもう、充分に飲みごたえのある量だった。まき散らしていた鮮血も紅の霧と化し、災厄の伝承は周囲を満たす。
 弄んでいた玩具を見失ったアマリリスはしきりに周囲を見渡すも、ただ紅の霧が纏わり付くばかり。

「吸血鬼相手に、血を用いるのは悪手であるぞ?」
「…っ!?」
 耳元で聞こえたブラミエの声に振り返り貫手を放つも、アマリリスの手は霧を貫くだけだ。崩れた態勢を整えようと、とっさに跳躍するつま先には、既に強固な足場は無く。吸血されて痩せ細った糸は、少女の体重も支えられずに途切れて落ちる。

「ぐぅっ…!」
「貴公の願う通り、吸血鬼であれば血によって蘇るのはお約束であるが、さて…」
 墜落したアマリリスの手元から、目玉の瓶がこぼれ落ちて転がっていく。ブラミエが己の蘇りを顕示するように、再び人の姿を現し爪先でそれを弄べば、アマリリスは血走った目で貫手を放った。

「兄様に触れるなァッ!」
「余の血で、復活それは叶うかな?」
 ブラミエは再び霧と消え、アマリリスの攻撃は空振りに終わる。慌てて瓶を拾い抱えた少女はそのまま、喉を抑えて膝をついた。少女は既に、病魔の手中。赤死病の霧はオブリビオンすら毒し病ませ、狂乱の死へと手招きしていた。飢餓と狂乱に染まった瞳はますます暗がりに濁りゆく──。

「余の血は行儀が悪いのでな?」
 伝承の吸血鬼はただ緑の瞳を細め、鷹揚な笑みを浮かべていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

建依・莉々
アドリブ連携大歓迎!

「ごめんね。わたし、血も涙もないの♪ 水溜まりだから♪」

だから吸血も血の糸も通じないんだけど、マッハ貫手はヤだな。衝撃波で身体飛び散っちゃっうのは、ものすごーく困る! でも早くて捕まんない! 捕まえられない鬼ごっこって、楽しくないよね?

そこで一工夫。貫手の後に残る血の糸に似せて、細く伸ばしたアホ毛を忍ばせます。貫手の度に何本も仕込んでおいて・・・一本にでも触れたらアウト♪ 猫パンチ発動です!

「ふふ♪ 捕まえた♪ 鬼は変わらなくていいよ。わたしがずっと鬼で、タッチし続けるから♪」

 あ、村の人たちのこと、忘れてた。んー、このまま村の外れまで連れていっちゃえ。なんとかなるでしょ♪


仇死原・アンナ
アドリブ歓迎

…哀れな娘
忌まわしき闇の一族の言葉に惑わされ…
もはや何も言うまい…ただ貴様をここで屠り…救済を齎そうぞ!
私は…処刑人だッ!

地獄の炎纏い【闇を狩る復讐鬼】を発動し自身の身体能力を瞬間強化
敵による村の人達への攻撃を気配感知と探知力による情報収集で察知し
鉄塊剣による武器受けでかばい救助しよう

愚かな小娘…残念だが貴様の兄は戻ってはこまいよ…もう二度と…永遠に!

敵を挑発し攻撃を自身に集中させ、攻撃を見切り鉄塊剣で攻撃
血の糸の軌跡を鎧砕きと怪力で粉々に破壊し敵を追い詰めよう

妖刀を素早く抜き振るい敵の腕を斬り落とし部位破壊
鉄塊剣による重量攻撃を叩きつけて潰してやろう…!

…死しても兄には逢えまいよ



 猟兵の力に侵されるアマリリスの表情が痛苦に歪む。それでも、そのオブリビオンが止まる事はない。殺意と敵意に瞳を染める少女は、最初から狂気に囚われ続けているのだから。

「…哀れな娘」
 仇死原・アンナは静かな憐憫を向ける。忌まわしき闇の一族の言葉に惑わされ、叶うはずもない儚い望みに縋り続ける。それだけならば良かったのに…少女の両手はもう後戻りができない程、血溜まりに染まっていた。

「もはや何も言うまい…ただ貴様をここで屠り…救済を齎そうぞ!」
 語る言葉など、羅列する罪状などもはやいらない。アンナが我が身を引き裂けば、彼女の決意に呼応するように地獄の炎は吹き上がる。恐怖を象徴する漆黒の甲冑を身に纏い、真紅の瞳を剣呑に輝かせる今のアンナは恐怖の処刑騎士。

「私にも…血をちょうだい!」
 燃え盛る処刑騎士を目の前に──負傷し毒され飢えたオブリビオンは大地を蹴った。音速で繰り出す貫手が狙うのは、猟兵ではなく怯え竦んだ、か弱い村人。

「私は…処刑人だッ!」
「ひいぃっ!」
 だがアンナは研ぎ澄まされた探知力で、それを素早く察知する。村人へ迫る音速の一撃を鉄塊剣で受け止めれば、甲高い衝撃が鳴り響いく。貫けぬ鉄塊に僅かに怯んだアマリリスの元に、素早く割り込むのは建依・莉々だ。

「ごめんね。わたし、血も涙もないの♪ 水溜まりだから♪」
 アンナとは相反する軽快さで、莉々は軽やかに猫パンチを繰り出した。アマリリスはからくも回避すると、今度は貫手による鋭いカウンターを繰り出す。莉々はブラックタールの水溜り──ただの物理攻撃ならばへっちゃらだが、音速の衝撃までは油断ができない。莉々もまた体をしならせ回避するも、掠めた音速の一撃は彼女の身体を僅かに飛び散らせた。

「ちょっと飛び散っちゃった♪」
「私が相手だ…小娘ッ!」
 今度はアンナが挑発して大きく踏み込めば、攻守は絶え間なく入れ替わる。その度に血の糸の編み目が縦横無尽に広がれば、アンナの鉄塊剣が絶えず砕き引き千切った。

 そうして、その素早さに衰えを見せぬアマリリスに、莉々は唇を尖らせる。処刑騎士と化したアンナは巧みに音速の貫手を見切り対応していれど、莉々はなかなかそうもいかない。捕まえられない鬼ごっこも、眺めてるだけの鬼ごっこも楽しくないものだ。
 だから莉々はひと工夫。アンナに目配せしたら、貫手に合わせて細く伸ばしたアホ毛を幾つも忍ばせる。アンナの攻撃に追い詰められたアマリリスが、糸と見間違えたアホ毛に触れれば、即座に肉球スタンプが獲物を捉えた。

「ふふ♪ 捕まえた♪ 鬼は変わらなくていいよ。わたしがずっと鬼で、タッチし続けるから♪」
 莉々が招けば少女の足が引き寄せられて傾く、その隙をアンナは逃さない。
 アンナは妖刀を素早く抜き振るい、鋭い一撃はアマリリスの片腕を切り落とす。

「ああああっ!!」
 華奢な腕は大きく宙を舞い──怯え竦む村人たちの目の前へと落っこちた。

「うう腕が、ひいぃっ!」
「あ、村の人たちのこと、忘れてた」
 腕に怯える村人たちに、莉々はどこか呑気に呟いた。痛みに絶叫するアマリリスの視線が再び村人へと泳ぐのを見るが否や、莉々もまた再び手招きする。よろめく背中がアホ毛に触れれば更に招いて、無防備な背中に怪力の一撃を繰り出せば、華奢な体はもんどり打って村の外へと吹き飛んで行った。

「ぐ、うぅうっ!」
 やせ細った木々を折り倒した先で、アマリリスは残った片腕で体を支えて立ち上がる。哀れな少女のその姿がどれほど痛ましく見えようも──その凶行に向ける刑罰はたった一つだった。

「残念だが貴様の兄は戻ってはこまいよ…もう二度と…永遠に!」
 地獄の処刑騎士は淡々と言葉を吐き出すと、鉄塊剣を振り上げる。忌まわしき罪に囚われたオブリビオンに慈悲を向けるのは──錆色の乙女だけだ。
 アマリリスが残った腕で貫手を放つも、凄まじい推進力で押し潰さんとする鉄塊剣を貫くことはない。

「…死しても兄には逢えまいよ」
 切なげに吐き出されるアンナの言葉と共に、燃え盛る炎は解けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フリル・インレアン
ふええ、私の血が欲しいってあげる訳にはいきませんよ。
ふえ?アヒルさんにはそんな攻撃は効かないって……ガジェットさんだから血は流れていないでしょうけど、私は血を吸われてしまいますよ。
こうなったら、美白の魔法です。
使い魔さんが私にくっついても滑り落ちてしまえば、血を吸われる心配はありません。
スキンケアですべすべなお肌を守りましょう。
あとは血を吸われる心配のないと言っているアヒルさんで攻撃です。



「ふえ…終わったんでしょうか?」
 フリル・インレアンはやせ細った木から覗き込むように倒れ伏すアマリリスを眺めて呟く。猟兵たちとの戦いによって与えられた負傷の数々は、人間ならばとっくに致命傷だろう。
 けれど相手はオブリビオンだ。アヒルさんはフリルに油断しちゃ駄目だよなんて言いながら、その背中に隠れながらグイグイ嘴で押していた。

「あの…普通は逆だと思うんです、アヒルさん」
 武器でありガジェットである、アヒルさんの後ろにフリルが隠れるものだろう。フリルの主張も、アヒルさんは知らんぷりだ。
 フリルとアヒルさんがそんなやり取りをしていたら…血溜まりに投げ出された指先が、ふいにピクリと動いた。あっと声を上げる間もなく、華奢な手のひらは勢い良く地面を叩き付け──そのオブリビオンは血塗れの体で立ち上がる。
 けれど虚ろな眼差しはフリルもアヒルさんも映すことなく、大事に抱えた目玉の瓶を取り出した。

「ああ…兄様に、血を注がなきゃ」
 アマリリスは掠れた声で囁いて、瓶の蓋を開けようとする。けれど片腕を失っている彼女はそれすら達成できずに、滴る己の血を擦り付けてうわ言を繰り返す。

「血をちょうだい…兄様に血を、血を、私に血を、兄様に、私に…お前の血を!」
 アマリリスは弾かれたように虚ろな顔をフリルに向けると、地面を蹴って飛び上がる。大事な瓶を振りかぶる少女はもはや、僅かな正気すら失っているようだった。

「ふええ、私の血が欲しいってあげる訳にはいきませんよ」
 迫りくる殴打をフリルが必死で避ければ、血塗れの瓶による一撃は、やせ細った木に直撃する。容易く折れた木に付着した血は蛭となり、か細い木に集っていた。
 さらにアマリリスが途切れた片腕を大きく振れば、その出血が蝙蝠となってフリルに襲い掛かってくる。
 攻撃が命中したら、蝙蝠たちはフリルの血を貪るだろう──ま、アヒルさんはガジェットだから、そんな攻撃は効かないけどね!なんてアヒルさんは言うけれど、生身のフリルにはたまったもんではない。

「こうなったら、美白の魔法です。スキンケアですべすべなお肌を守りましょう」
 フリルがユーベルコードを発動すれば、膨れ上がるように蒸気が溢れだす。丹念に全身へ纏わせスキンケア、そうして飛び込んできた蝙蝠たちは、吸血する暇も得ることなくつるっと滑り落ちた。

「あとは、血を吸われる心配のないアヒルさんが攻撃です!」
 びしりとフリルが指差せば、アヒルさんはやれやれ仕方ないな、と両翼を開いて──フリルにダッシュ!突撃されたフリルはぐえっと体勢を崩すも、アヒルさんは美白の魔法で滑って加速する。目にも止まらぬアヒルさんの攻撃は、アマリリスに強烈な一撃を食らわせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シエナ・リーレイ
●アドリブ絡み歓迎
無事に『兄姉』達を回収する事が出来たシエナ
『お友達』候補が血を求める事を知ると喜んで血を分けてあげようとします
だけどシエナの仮初は[ジュリエッタ・リーレイ人形]死骸人形
その身に流れる血も実態は[呪詛]であり『お友達』候補を蝕みはしても復活の糧に出来るかは怪しいです
更に『お友達』候補が中の目玉を家族といっている事からある可能性に至ってしまいます

身体がないから復活できないんだよ!とシエナは原因を特定します。

シエナは『お父様』を呼び出せば共に呼ばれた『兄姉』であった『弟妹』が周囲の者の感情を暴走させ『お父様』が周囲の血の糸やそれを妨害する者を素材に新たな『弟妹』を作り始めます



「ああ…兄様、兄様…血が足りないの…」
 猟兵たちとの戦いでボロボロになった体を引き摺りながら、アマリリスは失った血を…そして失った兄を求めていた。
 ──だから、シエナ・リーレイはニッコリと微笑む。
 シエナも『兄姉』に会いに来て、兄姉を無事に『回収』することができた。自分の目的をひとつ達成したシエナが、『お友達』候補アマリリスの望みを叶えてあげて、『仲良く』なろうとするのは当然のことだった。

「血が欲しいんだね。わたしの血をどうぞ!とシエナは喜んで血を分けてあげます」
 シエナはアマリリスの元へ軽快に歩み寄ると、そのまま腕を差し出し、己の皮膚を引き裂いた。降り注がれる浅黒い血にアマリリスは驚くもすぐさま微笑みを浮かべて座り込み、片手でなんとか蓋を開けると目玉の入った瓶を血に浸してゆく。

「ああ、兄様…嬉しいわ…新しい血がこんなに血がたくさんの血が…」
 けれど──シエナの仮初は、[ジュリエッタ・リーレイ人形]死骸人形。その身に流れる血も、その実態は呪詛であった。叶えようのない復活の糧にできる筈もなければ、それどころか呪詛の血は少女を蝕むものだった。

「兄様…兄様、兄様…兄様…どうして還ってこないの?どうして戻ってくれないの?どうして撫でてくれないの?どうして…どうして血が足りないの…血が足りない、足りない足りない足りない!!」
 呪詛に蝕まれる少女はいよいよ瓶を取り落とし、転がる瓶の口から兄の目玉がこぼれ落ちた。少女の狂気は呪詛に蝕まれ増幅し、オブリビオンの瞳はもう兄の目を見てもいなかった。
 アマリリスが片手を大きく振りかぶると、見えない血の糸がしなって痩せた木々を引き倒し、木々の塊がシエナへと襲いかかる。

「どうして復活しないんだろう?とシエナは考えます」
 シエナは背後から迫る木を避けながら、左手のひらを頬に当てうーんと首を傾けた。それから少しして手を打つと、『お友達』候補アマリリスの言葉からある可能性に辿り着いた。そもそも──。

「身体がないから復活できないんだよ!とシエナは原因を特定します」
「ああああああッ!!」
 場違いなほど快活なシエナの声を、狂気に蝕まれるオブリビオンの慟哭が塗り潰す。勢いを増した攻撃に見えない血の糸は数を増し、避けきれなくなったシエナへ糸が巻き付けば、まるで操り人形のように宙へ浮かんだ。血の糸が木々を纏めて括り、シエナの頭上に大樹を作ると糸を手放した。
 乱雑な重量による攻撃が迫る中、シエナはなんにも気にせず両足をぶらりと揺らした。好意を向けてくれる『お友達』候補アマリリスに、最大の好意と親愛を返してあげるべく、召喚するのは呪術師ダペルトゥットの霊。

「わたしの『弟妹達』を見せてあげて!とシエナは『お父様』にお願いします」
 シエナのスカートからずるりと這い出るように現れる『お父様』ダペルトゥットと、共に並ぶ人形たち──さっきまでは『兄姉』であった『弟妹』だ。
 『弟妹』はケタケタ笑いながら地面へ飛び降りるとアマリリスへ向かって行って、『お父様』は巨大な操り手で血の糸も木々も残らず人形の素材に変えてゆく。
 そうして人形たちと操り手は、愉快な喜劇を踊るようにそのオブリビオンを蹂躙してゆく。…それが親愛の踊りだと知っているのは、シエナだけだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
凶行は許せないけど
原因を考えるとやるせないね

村人達は逃げて貰おう
危険なら邪神の玩物で保護

ガトリングガンで蜂の巣にしたくなる相手でもなし
邪神の傀儡を利用し格闘と状態異常で抑えこもう

相手の貫き手は纏った神気の防御で減速したり
マヒ攻撃のように体の自由を奪ったりしつつ
硬化した体の曲面を活かして滑らせ逸らそう
心が人形化の影響受けてるから
威力が凄まじくても衝撃や糸で服が破れても冷静に捌けるね

逸らしたら腕を取って体勢を崩して投げ飛ばすよ
UDC組織の職員から護身術を習ってるからね
地面に叩きつけて身動きできぬ間に
神気で思考を鈍らせつつ人形化を試みるよ

狂気を癒せそうにないなら
せめて人形として静かに封印したいけどね



 命からがらアマリリスは逃げ出していた。猟兵との戦いの中でどれほど傷を追おうとも、オブリビオンが口ずさむのは──兄を願う囈言ばかり。
 佐伯・晶はその背中を追いかけながら、軽く唇を噛むと首を振った。

「原因を考えるとやるせないね」
 重ねた凶行を許せる筈がなくとも、その原因も鑑みれば彼女もまた被害者だった。晶の胸にはやるせない気持ちが湧き上がり…けれど、それがどんなに胸へ燻ったとしても、彼女を逃がす事はできなかった。──アマリリスが逃げ出し向かう方角には、村人たちが居るのだから。
 晶はアマリリスを追いながら声を張り上げる。

「オブリビオンがそっちに向かってるよ、早く逃げて!」
 鋭く警告すると素早くガトリングガンを取り出し、足元を狙って引き金を引いた。即座に鳴り響くけたたましい音は村人たちに警告を、敵に行動制限を強いるもの。幾つもの気配が逃げ惑い、アマリリスは忌々しげに舌打ちすると地面を蹴った。

「そこをどけぇッ!」
 すぐさま方向転換し接近してきた華奢な片腕が、晶に向かって音速の貫手を放つ。初撃を回避するも貫手は晶の服を引き裂き、血の糸の軌跡はガトリングガンの銃身の邪魔をする。

「…このまま蜂の巣にしたくなる相手でもなし」
 だが、取り回しのきかなくなった武器に拘ることはない。晶は躊躇いもなく武器を手放すと、すぐさま邪神の力を喚び起こす。停滞を齎す神気で体を覆えば、晶の皮膚は硬化し関節は見る間に球体へと──アマリリスの貫手による追撃は、晶の体に直撃するその寸前で神気の防御に絡めとられて減速する。

 驚くアマリリスの貫手を、晶は硬化した体の曲面で滑らせ逸らすと、そのまま懐へと滑り込む。すぐにステップで距離を取られても、晶の球体関節の体は逃避をやすやすと許すほど遅くはない。尚も一歩踏み込めばアマリリスが血の糸の軌跡を引き絞り、しなった糸は晶の体を打ち据える。だが、引き裂かれるのは衣服だけだ。服如きが引き千切れても、人形のように冷える晶の心は目的だけを見据えていた。

 もう一歩踏み込み懐へ飛び込むと同時に、晶が高速で放つのは超硬度の掌底。硬い手のひらがアマリリスの腹部へめり込めば、その攻撃はマヒを与えたかのように自由を奪う。衝撃に痺れて力の抜けたカウンターを晶がやすやすと受け止めると、足を払ってアマリリスの体勢を崩して──UDC組織の職員仕込みの護身術で投げ飛ばした。
 地面に叩きつけて後ろ手を抑え込むと、晶は身動きのできない少女に邪神の神気を与える。

「せめて。…静かに眠っていいんだよ」
 どんな儀式を何度繰り返しても、彼女の兄は蘇らない。けれどそれが無為だと気付くことすら叶わぬならば、せめて人形としてでも安らかに。──それが、晶が哀れな少女してあげられる、唯一のことだった。

「う、あ…兄、様…」
 虚ろな声が兄を呼び、狂気に染まった思考が止まる。少女の体が音を立てて、陶磁の人形へと硬化してゆく──冷たい感触に晶が手を離せば、ボロボロの体は大きな音を立てて亀裂が走った。
 膝の下で崩れ落ちる人形はもう、少女の姿を取ってはいない。晶が散らばる破片を両手で掬えば、砕けて砂と零れ落ちた。
 最後に──眠りは訪れただろうか。晶はただ、静かに目を伏せた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月05日


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#ダークセイヴァー
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#戦後


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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は久遠・翔です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト