ピルグリメイジの鎮魂
●リポーズ
多くの生命が失われた過去がある。
それはもう変えようのないものであり、贖いようのないものである。
大罪を犯した者は、如何にして贖うべきなのか。
それは尽きぬ命題である。
死せる者が納得することを、というのならば死者の声を聞く者があればこそである。しかし、その言葉が真に正しいものであるのかを証明する手立てはない。
何故ならば、死せる者は決して回帰しないからだ。
しかし、ここに過去の化身なるものがいる。
オブリビオンとも呼ばれ、また嘗ては百獣族と呼ばれた者である。
「……なるほど。今を生きる人類は、己が祖先の行いを酷く恥じていると見える」
荒野に立つは、『獣騎ドレイク』。
眼前に見やるのは、人類の拠点であるキャメロット城。
単身、単騎。
かの獣騎以外の姿は何一つ見えず、さりとて現れたる『獣騎ドレイク』の姿に俄にキャメロット城は騒然とするだろう。
かの百獣族が如何なる用向きでもって、この人類の拠点、キャメロット城へと現れたのか。
それを知るべく勇気ある騎士の一人が場内より歩みだす。
その騎士の名は『ヘルヴォル』。
年の頃合いは青年とも言えるであろう若さ。
しかし、体躯に秘められたる鍛錬は一目で知ることができよう。
彼は、手にした盾に描かれた……六枚の羽が円を描くような家紋らしきものを示して『獣騎ドレイク』の前へと生身単身でもって相対するのだ。
「その体躯、古の百獣族の方とお見受けする。キャメロット城に如何なる用向きであろう。伺ってもよろしいか!」
されど、と円卓の騎士『ヘルヴォル』は返答の前に言葉を挟む。
「今は、嘗て在りし我らが祖先が犯せし大罪の犠牲となった百獣族の鎮魂の儀式たる催事を行っている。大罪の犠牲となりし魂が、安らかなるを慰める儀式だ」
「理解している。故に汝らに聖なる決闘を求める。そして、汝らが酷く過去の……祖先の行いを恥じていることも。承知の上で再度言わせていただこう。聖なる決闘にて、過去より紡がれし因縁の決着を求める!」
その言葉にキャメロット城はどよめくだろう。
相対する騎士『ヘルヴォル』もまた同じでった。
問答無用に、それこそ怒りに任せて迫るとばかり思っていたが、しかし『獣騎ドレイク』の武人たる佇まい、その品性というものを様々と見せつけられたのだ。
しかし、彼もまた円卓の騎士。
年若いとは言え、ここで呑まれるわけにはいかぬ。
「……なれば、俺が……いや、私がお相手いたそう。我が名は『ヘルヴォル』、恐縮ながら『鉄壁』と称される騎士である。私では力量足らぬか!」
「……良い騎士だ。だが、我が求めるは真の強者との雌雄を決するための決闘。そして、此度は決闘の挑戦状を届けに参ったのみ」
『獣騎ドレイク』は『ヘルヴォル』の前にて構えるでもなく、ただ言葉を紡ぐ。
「若き騎士よ、汝の清廉さに我が名を持って応えよう。百獣族が一、ドレイク族の『ゼクス』! 我が決闘の挑戦に応えるのならば、呪われし大地を踏み越えて我が眼前に立つがいい。我は待つ。一騎打ちでもよい。多勢に無勢でも構わぬ。我に相対する強者よ、試練の大地を乗り越え、我が眼前に参れ!」
その言葉を最後に『獣騎ドレイク』は凄まじい跳躍力でもってキャメロット城の前から忽然と姿を消す。
その凄まじき脚力と身に讃えた重圧に若き騎士『ヘルヴォル』は立っているのがやっとだった。
『鉄壁』だなんだと持て囃されたところで、彼は未熟な騎士。
先輩騎士たちのようにはうまく行かぬ。
けれど、彼は深い深い息を吐き出し、ケロッとした顔をして、胸の内を吐露した。
「……こっわ! 怖すぎだろ。迫力ヤバい。なんだよあれ、めちゃくちゃ怖いじゃん――!!」
●バハムートキャバリア
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。バハムートキャバリア、人類の拠点、キャメロット城に単騎で獣騎が聖なる決闘に寄る決着を求めて挑戦状を届けに来た、ようです」
その姿はあまりにも正々堂々たる佇まい。
オブリビオン、そして百獣族でありながら、武人然としたふるまいはキャメロット城に大きな衝撃を与えたことだろう。
名を『獣騎ドレイク』の『ゼクス』と名乗った百獣族は、今まさにキャメロット城が百獣族の魂を慰撫する鎮魂の催事を執り行っていることを理解し、呪われし大地を超えた先にて単騎で待つと告げたらしい。
「『獣騎ドレイク』の語る所の聖なる決闘は、一騎打ちでの戦いではなく真正面からの戦い……彼自身は単騎ですが、こちらが軍勢で挑むことを否定しません。ただ、真正面から正々堂々たる戦いを行うこと。しかも、彼は呪われし大地の情報さえもキャメロット城にもたらしているのです」
なんとも豪胆と言うべきか、剛毅と言うべきか。
しかし、そのような決闘を望むのであれば、こちらもそれ相応に対応しなければならない。
まずは鎮魂の儀式を執り行っているキャメロット城へと趣き、『獣騎ドレイク』に応対したという騎士『ヘルヴォル』から話を聞くのもいいかもしれない。
そうでなくても鎮魂の儀式である。
猟兵たちも儀式に参加し、死せる百獣族たちの魂を鎮める手伝いをしてもいいだろう。
「怒りに我を忘れている獣騎の多い中、怒りを抑えながらも聖なる決闘での決着をあくまでも求める獣騎……彼と戦い、この決闘を制しなければなりません。確かに騎士道に則り、正々堂々戦うのがバハムートキャバリアでのならわし。ですが、皆さんが必ずしも、これを守る必要はありません」
ナイアルテは、各々の判断を持って戦いに望んでいるようだった。
確かに、と思う。
戦いとは非常なものだ。
だが、多くの猟兵がそうであるように、百獣族が辿った歴史は凄惨なもの。
これを抑えて正々堂々たる戦いを求める『獣騎ドレイク』に応えたくなる者もいるだろう。
ナイアルテは、そんな猟兵たちが各々に抱く思いを否定せず、バハムートキャバリア、キャメロット城へと送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
新たなる世界バハムートキャバリア、その人類の拠点であるキャメロット城へと単騎で聖なる決闘を申し込む『獣騎ドレイク』。
百獣族の魂を慰撫する鎮魂の儀式を執り行い、また『獣騎ドレイク』の待つ呪われし大地を超えた先へと向かい、正々堂々戦うシナリオになります。
※全ての百獣族(獣騎)は、例えスライムのような異形種族でも、会話によるコミュニケーションが可能です。彼らはいにしえの聖なる決闘に則り、正々堂々と戦いを挑んできます。
●第一章
日常です。
キャメロット城内では、百獣族の魂を慰撫する鎮魂の儀式が執り行われています。
まずはこれに参加し『獣騎ドレイク』に応対したという騎士から、その時の様子や『獣騎ドレイク』のことを聞き出すのもいいでしょう。
また、鎮魂の儀式に参加するのもいいでしょう。
●第二章
冒険です。
決闘の場となるのは、呪われし大地を超えた先です。
ですが、この呪われし大地は嘗て一体の強大な百獣族から呪いを受け、今も尚、呪いに汚染されたままの大地です。
その強大な百獣族の呪いは凄まじく、みなさんを汚染するばかりか、大地より獣騎のような鋼鉄の巨人をはいださせ、襲いかかってきます。
これを殲滅することはできないため、選択肢のいずれかでもって、この呪われし大地を突っ切る他ありません。
●第三章
ボス戦です。
キャメロット城に挑戦状を送った主、『獣騎ドレイク』との決戦です。
彼は正々堂々と真正面から戦いを挑んできます。
無論、単騎でキャメロット城に来たことからも、相当な強者であることは言うまでもありません。
この決闘を制するため、戦いましょう。
それでは過去の大罪に怒りを持ちながらも、それを律する獣騎と聖なる決闘を行う皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
第1章 日常
『鎮魂の儀式』
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POW : 舞踊や武芸を奉納する
SPD : 灯火や花を祭壇に捧げる
WIZ : 死者の魂の安寧を祈る
イラスト:ハルにん
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
人類の拠点、キャメロット城。
その城下において今行われているのは鎮魂の儀式であった。
百獣族の失われし魂を鎮めるための儀式であり、また同時に人類の祖先が冒した罪を忘れぬための儀式でもあった。
誰もが恭しく儀式に挑み、舞踊や武芸を奉納し、また灯火や花を裁断に捧げる。
膝をつき、手を合わせ、使者の魂の安寧を祈る人々の横顔は真摯なる想いがあったことだろう。
誰もが生命を大切に思う。
己の、親しき者の、誰かの生命を思う。
それは尊いものだろう。
だが、そんな尊き思いを抱く人間には騎士道で抑えねば、律さねば、容易く凶行に走る凶暴性がある。
故に人々は祈り続ける。
過去は変えられぬ。だからこそ、今生きる己たちが、死せる生命に祈りを捧げることでしか、その咎を注ぐことができぬのだと。
そんな人々を横目に円卓の騎士、若き『ヘルヴォル』は息を吐き出す。
「……わかってはいるんだけどさ」
そう、わかっている。
これは己たち人類の業。
けれど、その時己は生きていない。生まれていない。
身に覚えのない罪をどう贖えというのだ。
笑って生きているだけではいけないのか。祈りを捧げることもまた大事なことだとは思う。
けれど、笑うのも人の生き方じゃあないのか。
そんな思いを秘めながら『ヘルヴォル』は鎮魂の儀式を見守るのだった――。
エリアル・デハヴィランド
●WIZ
キャメロット…ここに戻るのは諸邦巡礼の旅に出て以来か
旅先の決闘でわざと敗れて形だけの人質の身に置いているが、身代金の請求をしていないのが功を奏して話は来ていないようだ
私としてはどちらでも良いのだが、鎮魂の儀式への出席に戻っただけであって見識を深める諸国巡礼の旅を続けていると話を合わせておこう
しかし、儀式まではまだ時間がある
ヘルヴォル卿と面談して卿が悩みを聞くとしよう
言われなき罪か…
確かに貴殿が申されるのは最もだが、我々の祖先は大罪を犯した
その原罪を償うべく、私はこうして円卓の騎士に列する事が出来たのかもしれない
いずれ卿にも分かる時が来よう…私も生まれながらの原罪を背負っているのだからな
懐かしきはキャメロット城。
その城門を見上げて、エリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は懐かしい気持ちになったかも知れない。
自身の出自、そして諸邦巡礼の旅、いくつかの理由で円卓の騎士でありながらエリアルはキャメロット城に常駐せぬ騎士であった。
いくつかの理由のうちには、旅先の決闘に敗れ、形だけの人質の身分というものもある。
しかし、己を人質とした盗賊騎士は身代金の要求をキャメロット城に求めていないようである。
それが功を奏して己は堂々とキャメロット城に足を踏み入れている。
風の噂でも、このキャメロット城に届いていたのならば、どの面を下げてと謗られる覚悟であった。
「まあ、私としてはどちらでも構わぬが」
そう、エリアルにとって体面とは大した理由ではない。
此度、キャメロット城に帰還を果たしたのは、鎮魂の儀式に出席するためである。
儀式が終わればとんぼ返りする約束を己を人質としている盗賊騎士に確約している。あくまで己は見識を深める諸国巡礼の旅を続けているのだという体で他の騎士とは話を合わせようと腹に一物抱えながらエリアルは周囲を見回す。
「しかし、此度の儀式も滞りなく準備が進められているようだな」
城下町のあちこちでは、花が備えられている。
時には百獣族に捧げる歌や、舞踊といったものが行われている。
盛大な、というには少し異なるだろうが、しかし、そこには鎮魂の意志が見えるようであった。
「……はぁ」
そんな中に合って溜息を一つこぼした騎士の姿を認め、エリアルは近づく。
若い騎士だ。
確か名は……。
「『ヘルヴォル』卿」
「……これは、デハヴィランド卿。巡礼にでられているのでは」
「無論、まだ旅の続きである。が、鎮魂の儀式の時期と知って一時帰還を」
「そうでしたか。旅が順調のようで」
堅苦しい挨拶だ、とエリアルは思った。
己を前にして緊張しているのかも知れない。加えて言うなら、この儀式事態にも心を固くしているようにもエリアルには見受けられた。
「固くなっているようだな」
「それは……わかります?」
「ああ、卿の顔を見れば。なにか憂うところがあるようだが」
「いやまぁ……そりゃあ、青少年ともなれば悩みの一つや二つや三つ?」
「鎮魂の儀事態に疑問を抱くこと事態が、すでに悩みか?」
「……お見通しですか。まあ、そうですね。過去の祖先の大罪、なんて言いますけど、今生きている俺等がしでかしたことじゃあないでしょ。なら、悲しむばかりじゃあいけないって思うんですけど」
そう、人は笑って生きていいと彼は思っているのだ。
悔いることも必要かもしれない。
けれど、それ以上に、人は笑ってこそなのではないかと。
百獣族の怒りも尤もであるが、いわれなき罪なのではないかと。そう、彼は思っているようだった。
「確かに貴殿が申されるのも尤も。だが、我々の祖先は大罪を犯した。原罪とも言うべきものだ。私が円卓の騎士として叙されたこともまた……いずれ、卿にも分かる時が来よう」
「そう、ッスかね……」
肩を落とす『ヘルヴォル』の肩をエリアルは軽く叩く。
今は悩むばかりかもしれない。
けれど、エリアルは彼の懊悩こそが人の原罪と向き合うために必要なものだと考えるのだ。
「……私も生まれながらの原罪を背負っているのだからな」
聞こえぬつぶやきは鎮魂の祈りに溶けて消えていく――。
大成功
🔵🔵🔵
ユキムラ・ゴルティエ
●SPD
よっす、ヘルヴォルパイセン。
先駆けお見事。流石は我ら円卓の鉄壁。名に恥じぬ大立ち回りだったと聞いたぞ。
…どした?まだビビってるわけでもあるまいに様子が変だなヘルヴォル卿。鉄壁の名が泣くぞ?
ま、難しく考えんなって。(花を捧げつつ)
こんなもん、『俺たちは反省できるだけマシな生き物なんです』って思い込んで今を生きる人々が楽になるだけのポーズだ。
なのに当時の被害者たちが復活し出したから建前が本当になっちまったと勘違いしてる連中が多すぎる。
俺たちの使命は単純だ。円卓の最強を証明し続ける。
円卓が盤石であればこそ危機の中でも民は安心して生きていける。
俺たちが最後の砦だ。揺らいでる暇なんてないんだよ。
若き騎士『ヘルヴォル』は溜息を吐き出す。
先輩騎士の言葉は、薫陶。
されど、心に蟠りはまだあるようだった。
「よっす、『ヘルヴォル』パイセン」
気安い声に『ヘルヴォル』は振り返った。その視線をわずかに下げる。
そこにいたのは、ユキムラ・ゴルティエ(円卓の面汚し・f44834)であった。
「先駆けお見事」
「嫌味かよ。別に俺がただ一番最初に気がついたってだけの話だ。別に見事も何もないよ」
彼の言葉にユキムラは、それもそうかもと思った。
「いやいやさすがは我ら円卓の『鉄壁』。名に恥じぬ大立ち回りだったと聞いたぞ」
「見てたんじゃないのかよ」
「又聞きってやつだな」
ユキムラは笑う。
対して『ヘルヴォル』は微妙な顔をしていた。
彼にとって、あの百獣族との問答は大したことではなかったようである。見事な、とユキムラが伝聞にて知るところであるのならば、もっと胸を張ってもよいではないかと思ったのだ。
「……どした? まだビビってるわけでもあるまいに様子が変だな『ヘルヴォル』卿。『鉄壁』の名が泣くぞ?」
「ビビってねーよ! ……いや、まあ俺にだって悩みってものはあるんだよ」
その言葉にユキムラは大げさに肩をすくめてみせた。
手にした花を催事……百獣族の魂、その慰撫のための儀式にて組まれた祭壇に捧げる。
キャメロット城の城下町では多くの人々が献花と鎮魂の儀式たる舞踏を披露している。
その雑踏めいた光景をユキムラは右目で流し見る。
「ま、難しく考えんなって。こんなもん、『俺達は反省できるだけマシな生き物なんです』って思い込んで人々が楽になるだけのポーズだ」
「そんなことは」
ない、とは言い切れないが『ヘルヴォル』だった。
そう、彼にとってこの鎮魂の儀式は皆、神妙な顔をしていることがどうにも違和感を覚えるものであったのだ。
笑って良いのではないか。
笑うこと事態が悪し、と言われるような空気感に彼は抵抗を覚えているのかも知れない。
騎士道とは関係ないところで、だ。
「なのに当時の被害者たちが復活しだしたから建前が本当になっちまったと勘違いしている連中が多すぎる」
「……いいや。本気で思う人はいるさ。誰もがそうであるとは限らないだろ。俺みたいな」
「不誠実な、とでも?」
「そうじゃあないか? 少なくとも俺は」
「そう思うんだろうな。真面目だな『ヘルヴォル』卿、貴殿は。だが、俺達の使命は単純だ。円卓の最強を証明し続ける」
「力を示し続ける、なんてことは……人が笑うより大事なことなのか?」
「円卓が盤石であればこそ危機の中でも民は安心して生きていける。貴殿の言う笑うこともまた、その中に含まれている。わかるはずだ」
ユキムラは献花の祭壇から視線を外して『ヘルヴォル』を見やる。
「俺達が最後の砦だ。揺らいでいる暇なんてないんだよ――」
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
|百獣族《バルバロイ》の霊を慰める鎮魂の儀式ね。一方で祀り、もう一方で蘇った百獣族を討滅する。酷い矛盾を抱えた世界だわ、ここは。
あたしは騎士ではないけれど、献花をさせてもらってもいいかしら?
ん、ありがとう。
『ヘルヴォル』卿、実際に相対した百獣族はどうだった? 彼らは、人類が罪を悔やもうと、被害者だという錦の御旗を振りかざして攻めてくる。
笑って生きるのも結構。でも、その笑いを決して嘲笑に変えぬこと。誇り高き円卓の騎士ならば、ああ、自分は生命を正しく使い尽くしたと、笑って死ねるくらいの生き方をなさいな。
生は死への一里塚。騎士という生き方を選んだのなら、覚悟も引き受けなさい。それが円卓の騎士でしょ?
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は人類の拠点、キャメロット城へと足を踏み入れる。
城下町では百獣族の失われし生命、魂を慰める鎮魂の儀式が執り行われていた。
「一方で祀り、もう一方で蘇った百獣族を討滅するのね」
それは彼女にとって矛盾だった。
人類は嘗ての祖先の行いを恥じている。
今を生きる者たちにとって、それは過去であるが楔のように彼等の心を律し続けている。
逆に言えば、そうしなければ人間は欲望のままに振る舞い、その凶暴性を発露して互いに滅ぼし合うだろう。
そう確信させるだけの行いは過去の歴史が証明している。
故に、この鎮魂の儀式は行われなければならない。
今の罪ではなく、過去の罪を思う。
人は過去からしか学べないように、失敗からしか学べない。
成功から学べることなど多くはない。
「だからって、やっぱり矛盾を抱えているように思えるわ、ここは」
ゆかりは息を吐き出して花を一輪、手に取る。
鮮やかな花。
花が失われた魂を慰撫するものであるかはわからない。
けれど、想いは花に込めることはできるだろう。
「あたしは騎士ではないけれど、献花をさせてもらってもいいかしら?」
「ええ、レディ。是非とも」
騎士『ヘルヴォル』の言葉にゆかりは頷いて、花を添える。
色とりどりの花。
それ今を生きる人間の思いの全てであったことだろう。
「あなたは『ヘルヴォル』卿ね。百獣族に応対したっていう」
「ああ……お耳が早い。そうです、俺がいみじく、とはいきませんでしたが務めさせて頂きました」
「彼等は人類が罪を悔やもうと、被害者だという錦の御旗を振りかざして攻めてくるわよ?」
その言葉に『ヘルヴォル』の貼り付けた笑みがこわばるのをゆかりは見ただろう。
実際に相対したからこそ、彼はゆかりを張り付いた笑みではない表情で見つめる。
「……そうでしょうか。少なくとも、そうであるのならば、彼はキャメロット城に踏み込んできたでしょう。そして、俺を容易く打倒した。其れが出来る武人でありましたよ、レディ」
「そうであるのならば、何故あなたはそんな顔をしているの?」
『ヘルヴォル』は答えなかった。
答えられなかったのかも知れない。
「笑って生きるのも結構。でも、その笑いを決して嘲笑に変えぬこと。誇り高き円卓の騎士ならば、ああ、自分は生命を正しく使い尽くしたと、笑って死ねるくらいの生き方をなさいな」
ゆかりの言葉に『ヘルヴォル』は頭を振る。
「死ぬのに笑えと」
「生は死への一里塚。騎士という生き方を選んだのなら、覚悟も引き受けなさい。それが円卓の騎士でしょ?」
『ヘルヴォル』は一礼をもって、ゆかりの前から辞していく。
彼には彼の。
そして、騎士道があるのだろう。
ゆかりは、添えた花を見やる。
そこにあるのは、傷ついた魂を慰める鮮やかさだけ。
死せる者は笑うこともできない。
だから、最期には笑わなければならないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
アストレア・テスタメント
●SPD
また新たな決闘が幕を開けるようだな。
このアストレア・テスタメント、天秤の妖精の約定に従い此度の決闘を見定める必要がある。
決闘をつつがなく執り行うため、この私が立会人として見届けよう。
まずは献花を。
この身は円卓の騎士ではないが、我々妖精も咎を背負いし者。
かつての人類種に竜騎を授けたのは我々なのだから。故に、今は彼らの魂の安寧を祈るとしよう。
……さて、ヘルヴォル卿。まずは一人の猟兵として訪ねよう。
貴公はその目でしかと見届けたはずだ。ドレイク族が勇士「ゼクス」を。彼から何を感じた?
そして、次の問いは天秤の妖精、決闘の裁定者として尋ねる。
貴公は此度の決闘に、魂の|天秤《リーブラ》に何を賭ける?
人類の拠点、キャメロット城に単騎現れたという百獣族、『獣騎ドレイク』。
その到来は、鎮魂の儀式が執り行われているキャメロット城を震撼させたことだろう。
「また新たな決闘が幕を開けるようだな」
アストレア・テスタメント(神出鬼没の裁定者/放浪の竜騎鍛冶師・f44773)は、聖なる決闘が行われんとしていることを知り、天秤の妖精として見定めねばならぬとやってきていたいた。
聖なる決闘はただの決闘ではない。
両者の騎士道の激突。
他者と他者とが存在するからこそ、争いが生まれる。
しかし、それは正しく行われなければならない。
「決闘をつつがなく執り行うため、この私が立会人として見届けねばならぬ」
献花台の花をアストレアは見やる。
花の美しさはやさぐれた心を落ち着けてくれる。
そして、きっと失われし魂の悲しみさえも慰めてくれることだろう。だから、人は鎮魂の儀式にて花を捧げるのだろう。
そして、妖精族であるアストレアも同様である。
「この身は円卓の騎士ではないが、我々妖精も咎を背負いし者」
かつての虐殺。
その発端の一翼を担ったのが妖精族である。
人造竜騎。
信仰持たぬ人類に授けたのは、他ならぬ妖精族である。
もしも、妖精族が人造竜騎を人類に与えなければ。
もしもの可能性ばかりが罪悪と共に心の中を駆け巡っていくだろう。
だが、歴史にもしもは空想でしかないのだ。
「失った生命は回帰しない。故に、今は彼等の魂の安寧を祈るとしよう」
花を添えてアストレアは若き騎士『ヘルヴォル』を探す。
彼は『獣騎ドレイク』と直接相対した騎士であるという。彼に猟兵として訪ねばならないのだ。
騎士『ヘルヴォル』の姿は直ぐに見つかった。
彼も円卓の騎士である。
この鎮魂の儀を執り行うために、城下町にいると踏んでいたが、直ぐに捕まえることができた。
「『ヘルヴォル』卿。貴公は、その目でしかと見届けたはずだ。ドレイク族が勇士『ゼクス』を」
「ええ。ですが、どうしてそれをお尋ねに? 妖精族のレディ」
「畏まる必要はない。私が知りたいのは、貴公が彼から何を感じたか、だ」
「申し訳ありません。であるのならば」
「忌憚なき言葉を。貴公の違えぬ所感を」
「随意に……俺にとって彼は、武人のように思えました。高潔な武人。そして同時に弱者を相手にしないことも。あくまでキャメロット城に訪れたのも、挑戦状を届けるためでしょう。呪われし大地……あの大地を渡ることのできるほどの強者を彼は求めている、と」
『ヘルヴォル』の言葉にアストレアは頷く。
では、と更に言葉をつなぐ。
「次なる問を。天秤の妖精、決闘の裁定者として尋ねる。貴公は此度の決闘に、魂の|天秤《リーブラ》に何を賭ける?」
その言葉に『ヘルヴォル』は押し黙る。
決闘。
己もまたゆかねばならぬという事は理解している。
けれど、何を賭けるのか。
言うまでもないことだ。
己の騎士道、その誇りである。
しかし、彼は心の何処かでそれではない、と思っているのかも知れない。
「……生命、と言えたのならばよかったのですが、レディ。しかし、俺は死ねません。年若いからではなく。容易く賭けられる生命ではない。いいや、他の誰の生命とて容易く賭けることはできませぬ」
故に『ヘルヴォル』は告げる。
「であれば、俺は『名』を賭けましょう」
その言葉にアストレアは何を思っただろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
※非戦闘時はキャバリアに搭乗していません。
鎮魂、か。
わたしも祈らせてもらってもいい?
両手を組んで、ぎゅっと瞳を閉じて祈るように…。
後はお花をささげて、再度祈りをささげていくよ。
あとは、騎士ヘルヴォルさんにご挨拶かな。
こんにちわ。
あなたは、今回の決闘相手と会ったって聞いたんだけど…。
率直に、どんな印象の相手だったの?
なんでこんなことを聞くって?
わたしもその獣騎さんに挑みたいから、じゃダメかな?
小さいからってことで心配するなら問題ないよ。
こう見えても実戦経験はあるしね。
まぁ、騎士の剣の戦いってわけじゃなくて、魔法でわたしは勝負するけどね。
真っすぐな相手には敬意は払うよ。
真っすぐさでは負けないっ!
失われし生命を鎮めるための儀式。
鎮魂の儀式は、今を生きる者にしか行えぬことである。
死せる魂に対して向き合うための行いでもあったことだろう。
バハムートキャバリアの人類の祖先は許されざる大罪を冒した。その悔恨こそが今の騎士道を形作っている。
心を律し、己が奥底に秘める凶暴性を押さえつける。
かつては、その凶暴性において百獣族を悉く殺し尽くした。
供える花は、せめてもの手向け。
「わたしも祈らせてもらっていい?」
シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は祭壇の前にて騎士『ヘルヴォル』に問いかける。
無論、と言うように『ヘルヴォル』は頷く。
「レディ、どうぞ花を」
そう言って手渡される花。
シルは手を合わせて祈る。
瞳閉じ、祈る。
それはどんな時代、文化であろうとも見えぬ者に対するポーズであったことだろう。
故に世界が違っても、その姿は通じるところがあったはずだ。
手渡された花を献花台に備えてシルは『ヘルヴォル』に向き合う。
「こんにちわ。お花、ありがとう」
「いいえ。失われし百獣族の霊も、レディのひたむきな祈りに慰撫されたことでしょう」
「あなたは、今回の決闘相手と会ったって聞いたんだけど……」
「お耳が早い。ええ、俺……いや、私が応対を務めさせていただきました」
「率直に、どんな印象の相手だったの?」
「レディ、どうしてそのようなことを?」
『ヘルヴォルは年若いシルが、そのようなことに興味を示すとは思っていなかったのだろう。
シルは笑っていう。
簡単なことだと。
「わたしも、その獣騎さんに挑みたいから、じゃダメかな?」
「いえ、しかし」
「小さいからってことで心配するなら問題ないよ。こう見えても実戦経験はあるしね」
「……なるほど、魔法使いの類、でしたか。これは失礼を。しかし、『獣騎ドレイク』は恐るべき力量の武人であります。彼の高潔なる思想は、我らに対する怒りを抑え込んでおりました。怒りがないわけではないのです。怒りあれど、それを支配しているように思えました」
つまり、と彼は言う。
怒りは瞬発力だ。
体躯に秘められし力を爆発的に引き出す。だが、かつての人類がそうであったようにコントロールができない。
けれど、『獣騎ドレイク』は、それを完璧に支配していた。
「なるほど。真っ直ぐな相手なんだね」
「はい、畏敬に値するほどに」
「うん、なら、わたしも真っ直ぐさで勝負するよ。負けないよっ!」
その言葉に『ヘルヴォル』は恭しく一礼する。
シルの瞳を見れば分かるのだろう。
彼女のひたむきさこそが、彼女の最大の武器であることを。
故に彼はシルを止めない。
彼女の道は、彼女が真っ直ぐと決めた先へと続いているのだから――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
【WIZ】
ボクは儀式からは距離を置いて、ヘルヴォル卿から色々と話を聞くよ、相手の事とか。
妖精だし乗騎の事もあるから、こういう儀式には公的にはあんまり深くかかわらない方が良いかな、っていうか……こういう空気とか雰囲気が苦手とかはないからね?……ないからね!?
うーん……ボクじゃその悩みには助けになれないかも……
正直、ボクも妖精で色々とある訳なんだけど、記憶がないし
ただ、「ボク自身が彼らに対しどうしたいか」は決まってるから、過去の罪が実際にはどうだったんだとしても、そのきもち…というか湧き上がるこの感覚に従うと思う、かな……
ごめんなさい。やっぱりうまく言葉にできなかったね……
キャメロット城は人類の拠点である。
その城下町では今、鎮魂の儀式が行われている。
失われし百獣族の霊を慰撫するためである。多くの花が備えられ、舞踊は祈りが込められている。
誰もが己が祖先の非道を悔いている。
懺悔によって己が心を律するのが、バハムートキャバリアにおける騎士道であるというのならば、彼等はまさしく今こそが最も強く過去の咎に伏しているのだ。
そんな彼等の姿を遠巻きにアルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は見やる。
彼女は妖精族だ。
バハムートキャバリアの歴史を紐解くうえで妖精族の存在は欠かせぬ。
人造竜騎。
信仰持たぬ人間が得た鋼鉄の巨人。
これによって、人類は百獣族を悉く滅ぼした。
その虐殺の元をたどれば、妖精族が聖なる決闘に参加できぬ人間を哀れ、人造竜騎鍛造を手助けしたからにほかならない。
人の奥底にある凶暴性。
それがどれほどのものであったのかを妖精族は見誤ったのだ。
故に彼等は獣騎への変形能力を剥奪され、咎人となったのだ。
「……」
アルマはそういう経緯も手伝って、このような雰囲気が苦手であった。
そう問われたのならば否定をするだろうが、事実彼女は鎮魂の儀式を遠巻きに眺めるばかりであった。
「騎士『ヘルヴォル』……」
「私になにか、レディ」
アルマは若き騎士『ヘルヴォル』の元へと歩み寄る。
彼は息を吐き出していた。
彼もまたこういう雰囲気を好ましくは思っていないのだろう。
「いや、なにか悩んでいるように思えたものだから」
「麗しきレディを前にして如何にして粗相のないようにすべきか、と私は今悩んでおりますが」
にこ、と笑う『ヘルヴォル』にアルマはしどろもどろに首をふる
「そ、そういう悩みじゃボクは助けになれないかも……」
「いえ、お心遣い痛み入ります。見たところ妖精族の方とお見受けいたしますが」
「ああ、うん、そう。ボクも妖精族。でも、記憶がないから……妖精族と人類の、咎や罪といったものには、少し慣れていないんだ」
そう語るアルマに『ヘルヴォル』は頷く。
「正直なところ、私……いや、俺もです。この日ばかりは笑ってはいけないと言われても、何故、と思うところです」
小声で彼は言う。
「うん。ただ、『ボク自身が彼等に対してどうしたいか』は決まってるから、過去の罪が実際どうだったんだとしても、その気持……というか、湧き上がるこの感覚に従うと思う、んだよね」
「ええ、人はもっと自由でいいと思うのです。泣くなとは申しません。悔いるなとも。ですが、どうせなら、そんな感情は少ないほうが良い」
「そうだよね……ええと、うん、ごめんなさい。やっぱりうまく言葉にできない……」
「いえ、その心の発露、吐露こそ人であること。どうか」
そのお心持ちを大事になさって、と『ヘルヴォル』は頷く。
心が感じることに偽りはない。
誰かが間違っていると言っても、その心にあるものは誰にも正せないのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
あのワイバーンはアハトと名乗った
「そして今度はゼクス君だね☆」
此処でもセラフィム…かな?
…まぁ…僕からすれば立派だと思うがな
大抵の国や文明は自分達を正義とする
そうして歴史を捻じ曲げるもんだ
実際やりあった獣騎も…オブビリオンとは思えねーほどだ
いや…そういう奴は多いけどな
だから…自らの過ちをこうしてずっとつなげていくのは本当にスゲー事だと思うがな
「そうだね☆メルシーの素晴らしさがジャパニアでは伝わり切ってないぞ☆」
あれは完全に事実陳列してるだけだろ阿呆!
という訳でヘルヴォルに色々と聞いてみる事にするぞ
ゼクスってどんな感じの顔立ちだったとか立ち振る舞いとか
後…セラフィムって獣騎とか人造竜騎とかないか
『アハト』と名乗るワイバーン族がいた。
そして、此度キャメロット城にて迫った百獣族はドレイク族の『ゼクス』と名乗った。
「そして今度は『ゼクス』君だね」
「此処でも『セラフィム』……か? いや、どっちなんだ? これは、後なのか? 先なのか? それともまるで関係がないのか?」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は首を傾げる。
キャメロット城の城下町は鎮魂の儀式が執り行われている。
人々は花を供え、祈りを下げている。
舞踊は慰撫のため。
彼等の祈りが百獣族に届いているかどうかはわからない。
それほどまでに生者と死者とを隔てるものは深く、そして遠い。
「……まぁ……僕からすれば立派だと思うがな」
カシムは息を吐き出す。
彼がこれまで見てきた世界の歴史を思えば、己が祖先とは言え、その罪を悔恨し、懺悔を持って己達を律するというのは言葉通り立派だと思ったのだ。
「大抵の国や文明は自分たちを正義とする。そうして歴史を捻じ曲げるもんだ」
オブリビオンとして蘇った百獣族にしてもそうだ。
怒りに我を忘れる者あれど、その根底には騎士道が流れていた。
「だから……自らの過ちをこうしてずっとつなげていくのは本当にスゲーことだと思うがな」
「そうだね☆ メルシーの素晴らしさがジャパニアで伝わりきってないぞ☆」
「あれは完全に事実陳列してるだけだろ阿呆!」
カシムは『メルシー』を小突く。
とは言え、ここで儀式を眺めているだけにも行くまい。
今回の事件、キャメロット城に迫った『獣騎ドレイク』と相対した若き騎士『ヘルヴォル』に当時のことを聞かねばならないのだ。
そう思って周囲を見回す。
すると『ヘルヴォル』は祭壇に花を供えに来た者たちを案内している途中であった。
「よぉ、あんたか、騎士『ヘルヴォル』ってのは」
「そうですが、そちらは」
「カシムさんだ。まあ、ちょっと聞きたいことがあってな」
「百獣族、ドレイク族のことについて、でしょうか」
察しが良いな、とカシムは思った。
いや、おそらく自分より前に猟兵たちが幾度か訪ねてきたのだろう。おそらく、そういう話題だと彼自身が感じ取っていたのかも知れない。
「彼……『ゼクス』と名乗った百獣族は、高潔なる武人と言うべき人物でありましょう。我らへの怒りを覚えながらも、それをコントロールしていたようにも見受けられました。何より、我らが鎮魂の儀を行っていることに理解を示しておりました」
殺し尽くされた者からすれば、何をと思うのが真であろう。
だが、『獣騎ドレイク』は怒りに呑まれていなかった。
いや、確かにそこに怒りはあるのだろう。
「怒りを発露すべきは今ではない、と?」
「そのように私には感じられました」
「で、あんたにちょっと聞きたいんだが……『セラフィム』って獣騎とか人造竜騎はないか?」
「我が家紋に語られる架空の生物である、ということは存じ上げております。が、獣騎、人造竜騎となりますと」
『ヘルヴォル』は頭を振る。
そっか、とカシムは頷く。
数字を冠した者。戦乙女の名を持つ者。
交錯しているのか、それとも分かたれたのか。
いずれにしても、カシムは『獣騎ドレイク』の待つ呪われし大地を目指すほかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁすっ!!
はい、毎度のメイドですっ!!(きりっ)
さて
此度はヘルヴォル様、そしてゼクス様ときましたか
それに鉄壁と……あの羽根は……セラフィム?
やはりこの地には憂国学徒兵の所縁が多すぎる
後は前か、後か……後だと思うんですけどねえうーむ
どう思いますかルクス様……ルクス様?
どうしてそっちに行きました??
いえ、流れは良しとして何故自分の出番と思いました??
ええいっ!ピアノを出すなーっ!!(めいどいんたーせぷと)
ルクス様ステイ
まずはヘルヴォル様のお話を聞きましょう
名乗りを上げた時の信条とか相手の雰囲気とかカラーリングとか
その盾についてもききたいですね
ルクス・アルブス
【ステルク】
わっかりました!全て理解しましたよ!
その役目、このわたし、奏勇者たるルクスが謹んでお受けしましょう!
え?なんの話って。
鎮魂の儀式と言うからには鎮魂歌が必要ですよね。
その演奏をわたしにお願いしたいってことですよね?
そして儀式を終えてから、
『獣騎ドレイク』さんを倒すってことでいいんですよね?
悲劇に散った魂を鎮めるのも勇者の役目の一つです。
もちろんおっけーですとも!(ピアノどーん)
あっあっあっ、ステラさんなにするんですか!?
ピアノ返してくださいよぅ。演奏できなくなっちゃいますよぅ。
『ヘルヴォル』さんでしたっけ?
あなたも早く儀式を終えて対決に臨みたいですよね?
なんとか言ってくださいー!
鎮魂の儀はしめやかに行われていた。
この日ばかりはキャメロット城の城下町とて賑やかさとは程遠い雰囲気に包まれている。
死せる者の魂を鎮めるのだから、厳かに、静寂に包まれていなければならないのだろう。
しかし、そんな静寂を打ち破るような叫びが轟く。
「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁぁすっ!!」
そう、いつものやつである。
「はい、毎度のメイドですっ!!」
キリっとしたステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の姿に人々はぎょっとしたし、儀式の際に巡回をしていた若き騎士『ヘルヴォル』は大慌てで駆け寄ってくるではないか。
元より、彼に用があったステラからすれば、出向く手間が省けたものであったが、彼の表情を見れば自分がやらかしたことに気がついただろう。
「ちょ、ちょ、ちょい! あんた何を……! あ、じゃない。レディ、どうかお静かに願えませんか……?」
失礼、とステラは居住まいをただす。
だが、その背後からまたけたたましい声が響く。
「わっかりました! 全て理解しましたよ!」
それは、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)の声だった。
静寂に響く二人の声。
騎士『ヘルヴォル』は頭痛がするような思いであった。
急になんかテンションのおかしい二人組が出現したのだから、そうだろう。
今日は厄日なのか? と彼は思ったかもしれない。
『獣騎ドレイク』にせよ、この二人組にせよ、あたりが良すぎではないだろうかと思ったのだ。
「鎮魂、その役目、この私、奏勇者ルクスが謹んでお受けしましょう!」
「ルクス様、お静かに。それに何をそんなに」
「だって鎮魂の儀式というからには鎮魂歌が必要ですよね。その演奏をわたしがするってことですよ!」
「ルクス様、どうしてそのような発想になってしまったのです。その流れはよしとして、何故自分の出番だと?」
「だって、鎮魂の儀式ですよ? みんなしょんぼりしています。だったら、悲劇に散った魂を鎮めるのも、今を生きる人たちを元気づけるのも、勇者の役目の一つです」
もちろん、オールオッケー! とルクスはグランドピアノを取り出す。
「ええいっ! ピアノを出すなー!」
ステラは即座にルクスを羽交い締めにする。
見事なインターセプトであった。
ここで演奏させてみてでもしたら、即座に騎士たちに取り押さえられるであろうことは想像に容易い。
破壊音波が静寂をぶち破って儀式をぶち壊しにでもしたらことである。
「あっあっあ、ステラさんなにするんですか!? 演奏できませんよぅ!」
「させないのですよ!」
「あの、レディ……?」
騎士『ヘルヴォル』の言葉に二人は漸くにして本来の役目を思い出す。
「いえ、取り乱しました。その盾に配された家紋……どうやら『鉄壁』、『ヘルヴォル』様とお見受けしますが」
ステラは『ヘルヴォル』の盾を見て、恭しく一礼する。
家紋。
六枚の羽が円を描くような紋章である。
騎士は『ヘルヴォル』。百獣族は『ゼクス』。
『憂国学徒兵』を示す名が多すぎる。所縁と言うべきか。
これが前か、後か。
どちらなのかわからない。
が、確実に関係していることをステラは感じ取っていた。
「『ヘルヴォル』さんでしたっけ? あなたも早く儀式を終えて対決に挑みたいですよね?」
なら演奏させてくださいー! ルクスとジタジタしている。
「ええい、ルクス様ステイ!『ヘルヴォル』様、お相手の雰囲気は……」
「高潔な武人、と呼ぶのが相応しいでしょう。俺は、そう思えました」
「演奏ー!」
「ああもう! 最後に一つだけ……その盾は」
「我が家名に連なるものが持つものです。架空の生物を印章にと」
ステラは聞きたいこと聞けないとルクスの大暴れに四苦八苦しながら、『ヘルヴォル』の苦笑いに大いに焦るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
今回の推しはーーー!!
ヘルヴォル様!!
いいですわいいですわ!そのギャップヘタレ、萌え!!
彼の鉄壁を崩す(意味深)……あっはい静かにいたします
迷惑はかけないタイプの変態ですので
わたくしのことはさておき
今回の獣騎さんは正々堂々に重きをおいているようで
その時の事を聞きたいと思いますの
いえ、何もおかしな事だとは思わないですが
やはり応対したヘルヴォル様の私見が一番信頼をおけると思うのです
ヘルヴォル様の力量ではなく
ヘルヴォル様の何かを感じ取って
獣騎さんはかの対応だと思いまして
何か気になるところはありまして?
どんな些細なことでも構いません
何も無ければ、わたくしの言動に対する感想でも可
え?関係ない?
凛然とした騎士としての振る舞い。
されど、プライベートはヘタレたような子犬系騎士。
若き騎士『ヘルヴォル』を見やるファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は今回の事件における推しを見つけて、ハスハスしていた。
「『ヘルヴォル』様!! いいですわいいですわ! そのギャップヘタレ、萌え!!」
どこからどう見ても不審者である。
ファルシータは口元を拭う。
ちょっと乙女とは思えない顔をしていたが、まあ、キャメロット城は今、鎮魂の儀式の最中である。
騒ぎ立てなければ、注目されることもない。
が、ファルシータの興奮は冷めるどころか盛り上がりを見せていた。
「彼の『鉄壁』を崩す(意味深)……」
ごくりんこ。
本当に意味深である。何が『鉄壁』なんですかねぇ……って感じである。
ファルシータの妄想は止まらない。
正直言って喉がさっきから何度も鳴っている。
「あの、レディ?」
眼の前にいるのは、それこそファルシータが推しと定めた若き騎士『ヘルヴォル』である。
「あっはい静かにいたします。迷惑をかけなタイプの変態ですので」
「え、へ? なに?」
「いえ、こちらのことでございます。わたくしのことはさておき」
ファルシータは誤魔化すように咳払い一つして『ヘルヴォル』の頭の先からつま先まで見やる。
若いながらに鍛えられた騎士であることは言うまでもない。
「百獣族と相対なさったというのは、貴方様でございますわね?」
「は、それは、私のことですね」
多くの猟兵たちが彼の元を訪れたせいか、彼は応対に慣れているようだった。
「それが一体なにか。レディが気になさるところがある、と?」
「いえ、何もおかしなことだとは思わないでくださいませ」
騎士の武勇伝というものは吟遊詩人が伝えるところであるが、伝聞よりも相対せし者に直接聞きたいと思うのもまた乙女の思うところであったことだろう。
「『ヘルヴォル』様の力量ではなく、『獣騎ドレイク』はあなた様のなにかを感じ取っていたのではないでしょうか?」
「私の?」
「ええ、あなたに『獣騎ドレイク』は何かしらの因縁めいたものを感じていたのではないでしょうか?」
「……私のような若輩にあるとは思えませんが」
「なにか気になるところはありまして?」
「いえ、私にとって彼は……高潔な武人である、と。そう思えました。しかし、同時に彼の力量は私を遥かに上回っている、とも」
「ご謙遜を。『鉄壁』と称される騎士が、そんな」
ファルシータの言葉に『ヘルヴォル』は頭を振る。
事実、そうなのだというように『ヘルヴォル』は憂いに顔を陰らせるが、それもわずかであった。
「そうですか。あ、わたくしの言動に対しては如何?」
「え? レディの、ですか? どこかのご令嬢でしょうか?」
しかし、彼の好みとは違うようだな、とファルシータは思った。
きっと彼が好むのは『迅雷』のように苛烈でありながら凛とした女性だろうともファルシータは解釈を深めていく。
その表情は、『あっちょっと関わりたくないですねー』という感情を与えるに充分だった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『呪われし大地』
|
POW : 気合と根性で呪いの汚染に耐える
SPD : 最短経路で呪いの地を突破する
WIZ : 聖遺物を用いて土地に染み付いた呪いを弱める
イラスト:みささぎ かなめ
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
猟兵達は若き騎士『ヘルヴォル』の案内で『獣騎ドレイク』が待ち受けるという、決闘の場へと向かうために荒野を往く。
眼の前に広がるのは、呪われし大地。
かつて、一体の巨大な百獣族により呪いを受け、今も尚、呪いに汚染された大地である。
「これより先には嘗て、騎士を学徒とする施設がありました。ですが、出現した百獣族の呪いにより滅ぼされたと言われております……現れた百獣族の名は失伝しておりますが」
しかし、確かに此処には呪いが満ちているように思えただろう。
この大地を突っ切った先に『獣騎ドレイク』が待ち受けている。
そして、猟兵たちの気配を感じとったのだろう。
大地より黒いシミのようなものが浮かび上がり、体高5mはあろうかという影の巨人たちが立ち上がる。
その瞳らしき輝きが煌き、一斉に猟兵たちに襲いかかってくるのだ。
「……呪いの巨人! これは際限なく湧き上がって参ります。全てを相手取るのは得策ではございません。ここは突っ切るほかないでしょう!」
『ヘルヴォル』の言葉に、そうするしかないだろうと猟兵たちも理解する。
圧倒的な物量。
呪いの巨人たちは咆哮を上げ、さらに大波のように猟兵たちに迫りくるのだった――。
ユキムラ・ゴルティエ
面倒臭えなあ…同胞たち、力を貸してくれ。
あ?こんなとこに喚び出すなって?
いいだろ別に!代わりに俺の力も貸すんだからイーブン!どうせ俺の用件が済んだら人里降りて賭け事で馬鹿勝ちするんだろ!?俺が貸した幸運と眼を使って!!っていうか何回目だこの話!いいからさっさと力貸せ!!
召喚した妖精たちに貸した停止の魔眼光は目から放つ光が当たった対象が攻撃行動を取れなくなる能力。
それで巨人たちの動きを封じながら一気に駆け抜ける。先頭にも妖精を立たせて先導にしながら。召喚した妖精は幸運にもなってるから、それでルート取りもなんか上手いこといくようになるはずだ。
あー。こういう時、心から思うわ。マジで人造竜騎欲しい…!
眼の前に広がるのは呪いの大地。
辛気臭い上に面倒くさいとくれば、ユキムラ・ゴルティエ(円卓の面汚し・f44834)は騎士としてあるまじき辟易した表情で大地を見やる。
嘗ては騎士を要請する学徒の園があった場所だという。
しかし、眼の前の大地にその面影はない。
あるのは百獣族の呪いばかりである。
「面倒臭えなあ……同胞たち、力を貸してくれ」
ユキムラの右目がユーベルコードに輝く。
召喚されしは妖精たち。
幸運の属性を持つ妖精たちがユキムラの周囲を飛ぶ。
「――……」
「あ? こんなとこに喚び出すなって?」
ユキムラが妖精との契約(ヨウセイトノケイヤク)によりて彼等を呼び付けた場所は百獣族の呪いに満ちている。
妖精たちにとっては、忌避すべき場所なのだろう。
それはわからないでもない。
だが人造竜騎を持たぬ騎士であるユキムラにとっては、迫る呪いの巨人たちは如何にかせねばならないのだ。
しかも、これらを単純に打倒しても即座に形をなして襲い来るというのだ。
「ゴルティエ卿、行けるのか」
「やらないでどうするよ。『ヘルヴォル』卿はお優しいこって。自分の心配しろよな、まず」
騎士『ヘルヴォル』は橙色の人造竜騎を駆り、ユキムラの眼前に迫っていた呪いの巨人を大盾でもって吹き飛ばしていた。
「だが」
「大丈夫だって。こいつらに力を貸してもらうから!」
な、とユキムラが妖精たちに呼びかけるが、彼等は、呪いに近づきたくないとばかりに渋っている。
「いいだろ別に! 代わりに俺の力も貸すんだからイーブン! どうせ俺の要件が済んだら人里降りて賭け事で馬鹿勝ちするんだろ!? 俺が貸した幸運と眼を使って!! というか、何回目だこの話! いい加減にしろ!」
このやり取り事態がもう何度目かも知れない。
常態化したやりとりであり、いつもの、というやつなのかもしれない。
けれど、切羽詰まった状況では何も楽しくはない。
「いいからさっさと力を貸せ!!」
その言葉と共に迫る呪いの巨人にユキムラは向き合う。
「ゴルティエ卿! こいつらは」
「わかってる!」
妖精たちが宙に翻り、その瞳から光を解き放つ。
それは鎖のように呪いの巨人に絡みつき、その動きを封じるのだ。
呪いの巨人は軋む光の鎖を引きちぎらんともがいている。
打倒するほどの力はない。
が、この呪いの大地を駆け抜けるには充分だ。
「さっさと行くぞ。ルートは……先導しろよ! そこまで働き分だろ!」
妖精たちがぶーたれるような様子を見せるが、ユキムラは彼等のおしりを蹴っ飛ばすようにして道行きを示させる。
「こっから先だ。どうせ先に進んでも、こいつらなんかよりずっと手強いやつがいるんだ……あー。こういう時、心から思うわ。マジで人造竜騎欲しい……!」
「先を往く。ゴルティエ卿は後に」
「いーや、先に行くに決まってんだろ!」
そんなやり取りをしながらユキムラと『ヘルヴォル』は呪われし大地を突っ切ろうとするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●POW
この地に染み付き呪いの巨人か…
ゼクスと名乗った百獣族に言わしめれば、この程度の試練を乗り越えねば自身の相手として相応しくないと言えよう…ならば、推し通るのみ
人造竜騎召喚…レナード!
ヘルヴォル卿、貴殿はゼクスとの聖なる決闘に立たねばならぬ身
ここで果てては約定を果たせぬ故、微力ながら助太刀致す
【騎士道の誓い】をもって宣誓する!
呪いの巨人よ
貴殿らの無念、恨みはしかと受け止めた
だが、我らはこの先で待つ獣騎との聖なる血統に挑まねばならぬ身
全てとは言えないが、気高き魂を汚染せし呪いを浄罪の聖槍より滾る浄炎をもってお相手致す!
ヘルヴォル卿、貴殿も血路を拓く我々に続いて推して参られよ!
「この地に染みつきし呪いの巨人か……」
それはまるで人型の獣騎のようであった。
影の如き呪い。
それが形作るのは、百獣族の呪いの巨人だった。
強すぎる怨念が形を成せば、このような形になるのだと示すような威容。
それを前にエリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は恐れよりも揺るがぬ意志を宿した瞳を持って見据える。
「あの百獣族……『ゼクス』なるドレイク族に言わしめれば、この程度の試練を乗り越えることのできぬ者は相対するに値せず、ということか……ならば、押し通るのみ!『レナード』!」
エリアルの背後に立つは、人造竜騎『レナード』。
最新にして最鋭たるライオンキャバリア。
騎士道精神を象徴する『ライオン』を顕す黄金の巨人。
エリアルは一足で飛び、そのコクピットに収まる。
「『ヘルヴォル』卿」
「デハヴィランド卿。轡を並べる栄誉、若輩ながら務めさせていただきます」
「構わない。貴殿は『ゼクス』との聖なる決闘に立たねばならぬ身。ここで果てては約定を果たせぬ。それは貴殿の騎士道に反するものか否か」
エリアルの言葉に橙色の人造竜騎を駆る『ヘルヴォル』は盾を掲げて見せる。
「正直、御免被りたい、というのが本音。されど」
そう、されどである。
ここで退くは騎士道に非ず。
であるのならば、『鉄壁』との勇名持つ身としてあるのは前進のみ。
「我が家名を賭けるのです。征かねば、あの勇士に申し訳が立ちません」
「であれば、微力ながら助太刀致す!」
エリアルの瞳が輝くのと同時に『レナード』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「騎士道の誓いをもって宣言する! 呪いの巨人よ、聞け!」
エリアルは迫る呪いの巨人たちを前に告げる。
「貴殿らの無念、怨みはしかと受け止めた。だが、我らはこの先で待つ獣騎と聖なる決闘に挑まねばならぬ身」
フレームが軋むようにして『レナード』が大地に力を込める。
手にした『赫槍プルガトリウム』の切っ先が呪いの巨人たちに向けられた。
「全てとは言えぬが、気高き魂を汚染せし呪いを浄罪の聖槍より迸る浄炎を持ってお相手致す!」
瞬間、踏み込んだ『レナード』が黄金の軌跡を描いて呪いの巨人たちの体躯を一撃のもとに貫いていく。
それはまるで夜空に軌跡を描く流星のようであった。
「おお、あれがデハヴィランド卿の一騎駆けか……!」
「『ヘルヴォル』卿、貴殿も血路を拓く我々に続いて推して参られよ!」
「頼もしきことこの上なく。ですが、守りはお任せよ。我が『鉄壁』たる所以、おみせいたしましょう!」
その言葉と共に背より現れるのは4つのサブアーム。
腕部と合わせて6つの腕を持つ『ヘルヴォル』の人造竜騎は、その手に盾を構え『鉄壁』たるを示すようにエリアルが駆る『レナード』を護るように随伴し、呪われし大地を疾駆するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
呪われた大地ね。機甲式『GPD-331|迦利《カーリー》に乗って、「呪詛耐性」と「環境耐性」で抜けさせてもらうわ。
呪いが解けていないってことは、この地を呪った百獣族もどこかで健在ということ。いつか相対することもあるかしら。
呪いが形を持ったような巨人達か。まともに相手していられない。
「全力魔法」重力の「属性攻撃」「範囲攻撃」で盤古幡。
重力は百倍くらいでいいかしら。それで崩れなければ千倍に上げる。
『ヘルヴォル』卿、ついてきてるわね?
呪いの巨人が湧いて出ない今のうちに先へ進みましょう。いくら倒しても湧いて出る相手には、時間をかけるだけ無駄。
|聖なる決闘《トーナメント》の為に体力を残しておかなきゃ。
広がるのは呪われし大地。
嘗て在りし光景はすでになく、あるのは荒廃した大地のみ。
呪いは満ちて、影のように濁っている。
眼の前で呪いは形を得て巨人へと変貌する。
まるでキャバリアのようだと村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)には思えただろう。
己のキャバリアとは異なる人型。
いや、自分のキャバリア『GPD-331迦利』がそもそも特殊なのだ。
逆三角形の姿。
人型ですらないキャバリアがゆかりを乗せて飛ぶ。
「ここまで強烈な呪いだなんて……これが百獣族の呪い……」
大地すら呪う強烈な呪詛とでも言えば良いのだろうか。
そして、彼女はこの大地の呪いが減衰どころか解けていない所を見るに、この地を呪った百獣族が何処かで健在なのだろうかと考える。
いつか相対する時があるのかもしれないと可能性を頭の隅にて追いやる。
まずは、この呪いの巨人たちを如何にして躱すかである。
「どこまでも湧いて来ます。お早く!」
若き騎士『ヘルヴォル』が駆る橙色の人造竜騎のサブアームに懸架された盾が呪いの巨人を抑え込む。
「まともに相手はしていられないってわけね。なら……深き闇の底にて分かれては絡まる原初の力よ。現世に顕現し、全てを捕らえ大地に縛り付けよ! 疾!」
ゆかりの瞳がユーベルコードに輝く。
身に持つ霊力をもって、盤古幡(バンコハン)の封印を解く。
周囲に浮かぶは黒球。
分子を模した力は重力を解き放つ。
「……!? 呪いの巨人の動きが鈍った……いや、止まった?」
「そう、重力を百倍にしたの。崩れないところを見るに、これでもまだ出力が足りないい……んじゃないわね、これ」
ゆかりは理解する。
敵、呪いの巨人は確かに人型を保っているが、鋼鉄の巨人のように打倒して崩すことができない不定形なのだ。
故に重力で押しつぶしても、たわむだけなのだ。
崩すことができない。
「ええ、おかげで動きやすくはなっておりますが」
「今のうちに先に進みましょう。いくら倒しても湧いて出る相手には、時間を掛けるだけ無駄」
「でしょうな。しかし、すさまじい」
「そう? まあ、まだ余力は残しているから」
ゆかりはそう言って『ヘルヴォル』の人造竜騎を先導するように飛ぶ。
「あなたもそうでしょう? |聖なる決闘《トーナメント》の為に体力を残しておかなきゃ」
まだ余裕がありそうな、ゆかりを見やり『ヘルヴォル』は頼もしさを覚えたのかも知れない。
自身の力量というものを理解しているつもりであったが、しかし、劣るものではないと思っていた。
それ故に、ゆかりの言葉に『ヘルヴォル』は己の未熟さを知る。
「であれば、急ぎましょう」
「ええ、そうね」
ゆかりは、頷き呪われし大地の先を見据えるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
シル・ウィンディア
※サイキックキャバリアのレゼール・ブルー・リーゼに搭乗。
呪いの巨人さんか…。
キャバリア並みの全長で、しかも大量に…。
それだけ恨みが強いんだろうね。
でも、わたし達、ここで立ち止まっている場合じゃないんだ。
ヘルヴォルさん、隙間は作るから…。
だから、出来た道を全速力で駆け抜けてね。
ユーベルコードの詠唱開始。
狙いは、最短の直線ルートを射線に選んでいくよ。
使うは、最大火力のヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!
詠唱をじっくりして…。
貫通攻撃を乗せて一気に撃ち抜くっ!!
直線状に道が出来たら、スラスターの推力全開で直線移動を行うよ。
さ、ヘルヴォルさん、今のうちに進むよっ!!
次が出ても同じように撃つから!
サイキックキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』は青き空戦機である。
キャバリアが存在する世界……クロムキャバリアにおいては、無用の長物であったことだろう。
なにせ、あの世界では空に蓋をされている。
暴走衛生による砲撃が飛翔体に打ち込まれるためである。
だが、このバハムートキャバリアにおいて空とは自由である。
シル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)は、呪われし大地を空より見下ろす。
「呪いの巨人さんか……」
眼下にあるのは呪いに汚染された大地より滲み出るようにして現れ続ける影のような巨人である。
「こんなに……それだけ恨みが強いんだろうね」
百獣族の呪い。
それは積年の恨みとも言うべきものであった。
でも、とシルは『レゼール・ブルー・リーゼ』のコクピットの中で呟く。
「わたし達、ここで立ち止まっている場合じゃないんだ」
そう。
この試練として立ちふさがる呪われし大地を突っ切らねばならない。その先に『獣騎ドレイク』が待っているのだ。
かの武人の如き『獣騎ドレイク』と戦うのに回り道はできない。
彼はこの呪われし大地を踏み越えてきた者しか、きっと相手にしないだろうからだ。
「『ヘルヴォル』さん、隙間は作るから……だから、出来た道を全速力で駆け抜けてね」
「レディ、しかし、それでは」
若き騎士『ヘルヴォル』の橙色の人造竜騎が呪いの巨人を盾で押しやっている。
きっとシルのやろうとしていることを理解しているのだろう。
「ありがとう。でも、大丈夫」
シルの瞳がユーベルコードに輝く。
そう、彼女が狙っているのは最短の直線ルート。
それは厳しく険しい道であったことだろう。
けれど、これ以上時間をかけてはいられないのだ。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ……。六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ! ――ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!」
シルは『ヘルヴォル』の人造竜騎の盾から飛び出して、巨大な魔力砲撃を解き放つ。
詠唱時間は彼が稼いでくれた。
充分に上がった威力の砲撃は一直線に呪われし大地に光条を描く。
「……なんと」
「道が出来たよ! 長くは持たないから!『ヘルヴォル』さん!」
「ハッ……レディに道を拓くならば、いざ知らず。されど感謝を!」
「大丈夫、次が来ても同じように撃つから!」
「次!?」
『ヘルヴォル』が驚いたのは、シルの魔力の無尽蔵さであろう。
呪いの巨人たちは容易く吹き飛ばせるものではない。
あの一撃もそうだ。
なのに、シルはなんでもないことのように言ったのだ。
その規格外さに『ヘルヴォル』は世界の広さを知るだろう。
「大丈夫大丈夫、行くよ!」
シルの駆る青きキャバリアが飛翔し、彼女の魔力砲撃の痕を一直線に飛ぶ。
その軌跡は美しく、どこまでも伸びていくようだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
こう見えても人造竜騎、ドラグリヴァーレだって飛べるからね!
それじゃあ、行こう!ドラグリヴァーレ!
効くかどうかはわからないけれど、やってみる!
『鋼竜装ドラグヘッド・バレト】を展開!…いくよ、【|■■■-07D 竜騎咆哮《ドラゴニックロアー》】!!
これであの鉄騎が少しでも止まってくれるならいいけど、ダメなら『バレト』の竜首から魔法砲撃を浴びせて道を拓き、飛んで突破するよ!
……もう誰のものかもわからない呪い、本当ならどうにかしたいけど……
今は、優先すべきものを間違えちゃいけないから。
(……そういえば、なんで今ボクはあれを「獣騎」でも「人造竜騎」でもなく……「鉄騎」って呼んだんだろう…?)
呪われし大地を埋め尽くすのは呪いの巨人。
影のようににじみ出てくる巨人は、猟兵たちの道を阻むだろう。
際限などない。
この地に足を踏み入れる者を全て排除せんとするように呪いの巨人たちは咆哮にも似た音を立てながら狭る。
まるで大波のようであった。
「でも、『ドラグリヴァーレ』だって飛べるからね! 行こう!『ドラグリヴァーレ』!」
アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は、己が乗騎に乗り込み飛翔する。
とは言え、迫る呪いの巨人たちの数に圧倒される。
大地を埋め尽くす、と形容したのは大げさではない。
しかし迂回もできない。
キャメロット城に迫った『獣騎ドレイク』は、この呪われし大地を試練だと言った。
この大地を踏破出来ぬ者は相対する価値などないと言い切っていた。
ならばこそ、超えねばならないのだ。
「効くかどうかはわからないけれど、やってみる!」
「レディ、呪いの巨人は不定形。いくら吹き飛ばしたところで……」
若き騎士『ヘルヴォル』は橙色の人造竜騎を駆り、アルマに告げる。
確かに呪いの巨人たちはどれだけ吹き飛ばしても、形をなしてまた襲い来るだろう。
けれど、この大地を踏破するためには呪いの巨人は避けては通れない。
避けられぬというのならば、道を作るまでである。
「吼えて!『ドラグリヴァーレ』!! ■■■-07D 竜騎咆哮(ドラゴニックロアー)、展開!」
いくよ、とアルマの呼気が漏れた瞬間『ドラグリヴァーレ』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
装甲より展開された竜の首の顎が拓く。
瞬間、放たれるのは魔力を込められし咆哮。
それは呪いの巨人たちを吹き飛ばしながら、道を作り上げるのだ。
「なんという咆哮だ……だが、これならば」
「あの鉄騎は止まった……いけるよ!」
アルマの言葉に『ドラグリヴァーレ』が飛翔する。
眼下には呪いの巨人たち。
その光景は、まさに海原のようであった。
そう、どれだけ海原を切り裂くのだとしても、いずれ海面が元に戻るように呪いの巨人たちもアルマのユーベルコードによって吹き飛ばされても、また大地より滲み出してくるのだ。
もたもたしていたら、また呪いの巨人たちは己の道を塞ぐだろう。
「……もう誰のものかも解らない呪い、本当ならどうにかしたいけど……」
アルマは呪いの巨人たちの咆哮が怨嗟のものであることを知る。
踏み込むものに呪いを。
近づくものを無差別に呪う黒い影たち。
救いたい。
そう思えるが、優先すべきことを間違えられない。
「行きましょう、レディ」
「うん……」
けれど、とアルマは思う。
己はあの呪いの巨人たちは鉄騎と呼んだ。
獣騎でもなく人造竜騎でもなく。
鉄騎。
何故、と思う心あれど、それに答えてくれるものはなく。
アルマは『ドラグリヴァーレ』と共に呪いの大地を往くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
呪いの地、そして呪いの巨人……なるほど!
わたし今度こそわかりましたよ!
儀式での演奏をステラさんが止めたのはこういうことだったんですね!
ここで全力の演奏をするために止めてくれたんですね!
もちろんご期待に応えますとも!この地を浄化して見せますとも!
こういうのも勇者の役目ですからね。お任せあれです♪
さぁ、こんどこそ渾身のレクイエ……なんでですかー!?
いま演奏しないでいつするんですか!?
『ヘルヴォル』さんもそう思いますよね?
ここの呪い、鎮めたほうがいいですよね?
ね?ね?ね?ね?(嫌とはいわせない勇者オーラ)
ほらー、『ヘルヴォル』さんかもらもおっけーでましたし、
ステラさんも諦めてください!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
騎士を学徒とする……?
ますます憂国学徒兵との繋がりを疑ってしまう……
ええ、そもそも|かの世界《クロキャ》に学徒という言葉はあるのでしょうか?
まぁ考察は後に……って何故にここでセラフィム!?
人造竜騎に名付けられたエイル様といい
この世界にどんな関りがあるというのです?
ともあれ……ルクス様ステイ!!
言ってることも方針も全て正しいですが
|やろうとしている事《演奏》はノーセンキューです!!
今でしょ! ではなくて 永遠に機会は訪れませんから!!
負けないでヘルヴォル様!耐えて!
くっこういう時だけ無駄に勇者オーラが!
ええい仕方ありません
相殺する方向で【アウルム・ラエティティア】!
まいります!!
呪われし大地は嘗て騎士を学徒として養成する土地であったという。
しかし、呪いによって誰も近づくことはできなくなってしまっていた。
残されているのは嘗ての名残ではなく呪いばかりである。
大地より染み出し続ける呪いの巨人たちによって完膚なきまでに破壊され尽くしているのだ
破壊するものなどもうないというのに呪いの巨人たちは、今も尚この地にとどまり続けている。湧き出し続けている。
猟兵たちがこの大地を突っ切るために吹き飛ばしても、後から後から湧き出し続けるのだ。きりがない。際限がないと言ってもいいだろう。
「騎士を学徒とする……?」
騎士『ヘルヴォル』の言葉にステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は疑念を抱く。
学徒。
そう聞いてステラが連想するのは『憂国学徒兵』であった。
他の世界にもまたそう呼ばれるものたちが嘗てはいた。今は象徴となって、しかもテロが名乗る言葉になってしまったが、確かにあったのだ。
考察は後にしなければならない。
けれど、ステラの目を引いたのは呪いの巨人たちである。
黒い体躯。
体高5mはあろうかという巨人である。
ステラには、その形が『セラフィム』と呼ばれる戦術兵器に見えてならなかった。
「人造竜騎に名付けられた『エイル』様の名といい、この世界にどんな関わりがあるというのです?」
考察。
けれど、ステラの考察を断ち切る声が聞こえる。
「呪いの地、そして呪いの巨人……なるほど!」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、ぽむ、と手を打つ。閃いた、と言わんばかりの顔であった。
「わたし、今度こそわかりましたよ! 儀式での演奏をステラさんが止めようとしたのはこういうことだったんですね!」
何が、とステラは思ったかもしれない。
「ここで全力の演奏をするために止めてくれてたんですね!」
「違います」
「いいえ、わかっておりますとも。もちろん、ご期待に応えますとも! この地を浄化してみせますとも!」
そう、これもあれもそれも全部勇者の役目である。
お任せあれ♪ とルクスがウィンクしている。
「確かに方針も全て正しいですが、|やろうとしていること《演奏》はノーセンキューです!!」
「なんでですかー!? 今こそ渾身のレクイエムを演奏しようと思っているんですよ! ほら!」
眼の前に迫る呪いの巨人たちをルクスは指差す。
大波のように迫ってきている。
それはいうなれば、ライブ会場に殺到するファンのようであったことだろう。幻覚である。
「今演奏しないでいつするんですか!?」
「いまでしょ! ではなくて! 永遠に機会は訪れませんから!!」
「そんなことなですよ!『ヘルヴォル』さんもそう思いますよね?」
「確かに呪いに鎮魂歌は有用でありましょう」
「ほら!」
ルクスの言葉に『ヘルヴォル』は頷く。
彼はわかっていないのだ。
ステラは思った。まだルクスの演奏を知らぬものは、そういう真っ当な判断をするだろう。わかっていたことだ。
けれど、ステラは頭を振る。
「いけません! それは破滅へのプレリュードですよ!」
「ここの呪い、鎮めたほうがいいですよね? ね? ね? ね? ね?」
ルクスの圧。
それに『ヘルヴォル』は嫌な予感を覚えたのかも知れない。
「そ、そうしていただけると……」
「あー!!」
「ほらー、『ヘルヴォル』さんからもおっけーでましたし、ステラさんも諦めてください!」
「諦めるわけには参りません! こうなれば!!」
ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
ルクスの演奏が開始するのと同時に響くのは、アウルム・ラエティティア(アウルム・ラエティティア)。
そう、ステラのユーベルコードはある特定の破壊音波を相殺する。
なんでそんな事になっているのかと言うと、彼女の鼓膜がこれまで犠牲になった回数だけのドラマがあるからだ
とは言え、ルクスのノリノリのレクイエムとステラのユーベルコード。
そのせめぎ合うような拮抗に触れて呪いの巨人たちは押しのけられているのだから、あながち……そう、あながちルクスの演奏がまったくもってあらゆるものを破壊する音波だったとは……言えないのかもしれないのである――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
残念、ヘルヴォル様の好みではありませんでしたか
いえ、推し事には影響ありませんのでご安心を
むしろ振りますが?
さておき
呪いの巨人といいながら意志あるような動き
そして際限なしとは厄介すぎて
というよりこの巨人、どこかで見たような……?
あ、あの青い人造竜騎でしょうか?
ともあれ駆け抜けるしかないようですわね
【タクティカル・トランスフォーム】で
アームドフォートを変形
状態異常抵抗率を強化しましょう
あとは自分の足を信じて
ヘルヴォル様のヘタレをご褒美に
突っ切るのみ!!
ええ、ヘルヴォル様もっとヘタレて!!
推させて!!
ちょっと土壇場でカッコつけるくらいじゃないと
意中の女性は振り向かないと思うのです!!
え?いますの?
若き騎士『ヘルヴォル』。
青年であり、公私をわきまえた者である。
故に、プライベートと騎士として振る舞う公務にて見せる顔は2面性。
しかし、そのギャップこそがファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)の癖に刺さったのかもしれない。
そんな彼の女性の好みを聞き出したファルシータは、己が彼の好みに合致しないことに少し残念……。
「いえ、むしろ振りますが? わたくしになびくのではなく、わたくしになびかないのが推しですから?」
別に相思相愛になりたいわけではないのかもしれない。
言うなれば、壁のシミになりたいというやつなのかもしれない。
うーん、何処まで言ってもこのムーヴなのだろうか?
それはさておき、ファルシータは眼の前に広がる呪われし大地を見やる。
呪いの巨人たちが立ち上がり、迫る者を悉く滅ぼさんとしている。
「呪いの巨人といいながら意志があるような動き。そして、際限なしとは厄介過ぎて…・…というよりこの巨人、どこかで見たような……?」
ん? とファルシータは目を細める。
黒い影。
不定形であり、輪郭がぼやけているが、シルエットだけ見れば彼女の知る青い人造竜騎にも似ているように思えたかも知れない。
だが、それが何を意味するのかまではファルシータにはわからない。
「ともあれ駆け抜けるしかないようですわね」
彼女のアームドフォートが変形する。
展開する装甲。
迫る呪いの巨人たちは打倒しても、すぐに形を取り戻して襲い来る。
ハッキリ言って打倒している暇はない。
むしろ、それよりも駆け抜けるほうが得策である。
「『ヘルヴォル』様のヘタレをご褒美に、突っ切るのみ!」
「レディ、一体何を仰っているので?」
「いえ、それは前フリですわ、『ヘルヴォル』様!」
何が、と『ヘルヴォル』は思っただろう。
ファルシータという女性の言うことが徹頭徹尾わけわからんのである。
いや、わかるほうが稀とも言える。
「しかし、レディ。これ以上は危険です。どうかお下がりを」
「うーん、騎士然とした振る舞い百点ですわ! でも、この後に迫る脅威を前にしてヘタレる『ヘルヴォル』様は5000兆点の予感ですわ!」
「本当に何を仰っているので!?」
「いいえ、ヘタレてくださたらご褒美なので! 推させてくだしまし! ああ、でも! ちょっと土壇場でカッコつけるくらいじゃないと、意中の女性は振り向かないと思うのです!!」
「いきなり何を言ってんの!?」
「言葉遣いのギャップ頂きましたわー!」
そんなファルシータのテンションアップに呼応するようにしてアームドフォートの出力が上がっていく。
こんなんで上がるのかと思わないでもないが、上がるのである。
「え? というか、おりますの? 意中の女性」
「今、その時じゃないでしょ!」
『ヘルヴォル』の崩れた言葉遣いにファルシータはにっこり。
これはもう良い推し事ができると言わんばかりの笑顔で、彼女は呪いの大地を突っ切っていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アストレア・テスタメント
【突破中にジェイミィを追跡】
ほう、ゼクスめ、対峙する相手が決闘に相応しいかを見定めるか。
全く、律儀なことだ。
良かろう、貴公の挑戦と受け取った。
(妖精獣騎へと身を変じ飛翔)
退け、雑兵ども! 我らの道行きを阻むな!
邪魔立てすると言うならば、この天秤の妖精、
アストレア・テスタメントが裁定を下す!
(ジェイミィを発見)
……む? あれは異界の人造竜騎? 猟兵の機体か……?
……ほう、面白い。かの|人造竜騎《キャバリア》は竜騎でありながら、
意思を持ち、自律した行動を行うか。その有り様は獣騎にも似ているようだ。
「彼」を見定めるのも悪くない。
(ジェイミィの機動力に追随する。互いに会話はない)
ジェイミィ・ブラッディバック
【アストレアから追跡される】
(TYPE[JM-E]に搭乗)
うーむ。
販路拡大のためにこの世界に来てみたものの、
コネが無いとどうもダメですね。
互換性があるとは言え、我々が知るキャバリアと、
この世界の人造竜騎ではやや勝手が違うようで。
竜騎鍛冶師の方もなかなか見つかりませんし……困りました。
この世界での人々の信頼を勝ち取るため、今回の依頼をお受けしましたが……ひとまずここ、突破しちゃいましょうか。
(UC発動)
流石に超音速で飛行するこの機体を捉えることはできますまい。
(追跡するアストレアを確認)
……!?
私に追随可能な機体!?
この世界の機体にあんなものが……一体何者だというのですか!?
(互いに会話はない)
アストレア・テスタメント(神出鬼没の裁定者/放浪の竜騎鍛冶師・f44773)は眼の前に広がる呪われし大地を見やる。
『獣騎ドレイク』、『ゼクス』は強者との対決を求めている。
数に任せても構わないのかもしれないが、しかし、心の奥底にくすぶる怒りを支配するのは、強者との決闘に向ける意欲であったのかもしれない。
「ほう、『ゼクス』め。対峙する相手が決闘に相応しいかを見定めるか」
アストレアにとって、それは律儀なことであった。
弱者をいたぶることもできただろう。
怒りに任せて。
けれど、それを『獣騎ドレイク』は望んでいなかったのだ。
「良かろう。貴公の挑戦と受け取った」
裁定者たる己をも試すのならば、これを乗り越えられずして何が、という意志が胸の奥から溢れ出す。
その意思はユーベルコードに代わり、光と共にアストレイアを妖精獣騎の姿へと変貌させる。
迫るは呪いの巨人たち。
妖精獣騎の姿に呼応するようにして大波のように迫ってきているのだ。
恐るべき呪いの集大成。
多くの呪詛を取り込み、大地さえも飲み込まんとしている呪いが巨人の源であるというのならば、なんという恐ろしさであろうか。
だが、アストレイアは裁定者である。
罪を裁くのに、どうして恐れる必要がある。
「退け、雑兵ども! 我らの道行きを阻むな! 邪魔立てするというのならば、この天秤の妖精、アストレア・テスタメントが裁定を下す!」
その言葉と共にアストレアは妖精獣騎の姿と共に大地を疾駆する。
だが、その視界の端に己と同じく凄まじい速度で飛ぶ鋼鉄の巨人を見つける」
「……む?」
それは、ジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/Mechanized Michael・f29697)の駆るクロムキャバリアであった。
彼は販路拡大のために、バハムートキャバリアを訪れてみたものの、どうにもこの世界の商売というものとノリが合わないように思えていた。
確かに人造竜騎とキャバリアの互換性は存在している。
しかし、銃火器を忌避するきらいのある騎士たちを相手に、如何に戦術的に優れた兵器を説明しても反応は芳しくなかったのである。
やはり、この世界の人造竜騎と己のキャバリアとの勝っての違いというのは、容易く埋まるものではないように思えたのだ。
それならば、と竜騎鍛冶師と呼ばれる存在を見つけようと方方を回ってききたところに、呪いの大地を突っ切ろうとする猟兵たちの一団を見つけたのだ。
ここでこの世界の人々の信頼を勝ち取るために助力すれば、己の商機というものが転がり込んでくるかも知れない。
「如何に呪いの巨人とは言え、超音速で飛行するこの機体を捉えることはできますまい」
そう、呪いの巨人たちは大地から滲み出すばかりである。
ならば、ユーベルコードによって加速した機体を容易く捉えることはできないだろう。
だが、機体のアラートが響く。
「……!?」
レーダーに反応するのは、己の後方。
追尾するようにして飛翔するものがあるのだ。
「あれが異界の人造竜騎というやつか。いや、猟兵の機体と見るのがよいか……」
アストレアだった。
妖精獣騎の姿を取り戻したアストレアの視界に映るジェイミィの機体。
加速度は申し分ない。
「……私に追随可能な機体!?」
アストレアは、ジェイミィを見やる。
面白い、と思ったのだ。
人造竜騎でありながら、意志を持ち、自律した行動を行う鋼鉄の人型。
そのあり方は獣騎に似通ったところがあるとアストレアは思ったのだ。
「見定めるのも悪くない」
「この世界の機体にあんなものが……一体何者だというのですか!?」
ジェイミィはこちらに呼びかけることもせず、ただ追従するアストレアに驚愕しながらも、呪いの大地を突っ切るために飛翔を続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
カシム・ディーン
……学徒の施設か…滅したとか言う奴は何者だろうな
「どんな名前だろうね☆」
【戦闘知識・情報収集・視力】
周辺情報を把握
呪いの巨人の性質分析
特に周囲の呪いは可能な限り解析
【属性攻撃・弾幕・念動力・浄化】
ルーン魔術発動
w喜び
y死と再生
s太陽
UC発動
浄化と喜びのルーン込めた光と浄化属性をメルシー達に付与
巨人達を浄化する
倒しても再生するってのは互いに無限地獄だしよぉ
この方がお前らも楽だろ
呪い続けるってのは苦しいだろうからな
基本110人が巨人達の浄化
残りは学徒の施設を可能な限り調べ尽くす
今回とは関係ないかもしれないが…それでも分かることはあるかもしれねーからな
「探索は盗賊の基本だぞ☆」
そういうこった
「此処がそうなのか?」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は眼の前に広がる大地を見やり呟く。
呪いに冒された大地。
何処を見ても荒野であり、かつて此処が騎士を学徒として集めていた施設があるとは到底思えない思えない有り様であった。
「……学徒の施設か……滅したとかいう奴は何者だろうな」
カシムは徹底的に破壊され尽くした大地の広がりようを見やる。
呪い。
嘗て強大な呪いの主よって滅ぼされたという。
どれほどの呪いであったのかは、立ち上がる呪いの巨人たちの数を見えれば、おのずと知れることであっただろう。
「どんな名前だろね☆」
「さーな」
『メルシー』の言葉にカシムは肩をすくめるしかなかった。
しかし、ここで悠長にしている時間はない。
カシムたちは、この呪われし大地を突っ切って『獣騎ドレイク』の元へと向かわねばならないのだ。
「さて、ちっとは情報が得られるんかね」
『メルクリウス』のアイセンサーから呪いの巨人の性質を見極める。
全てが呪いで構成されている。
大地に染み付いた呪いがある限り、呪いの巨人たちは打ち倒そうとも次々と湧き出してくるのだろう。
まるで際限がないように思えてならない。
「どこもかしこも呪いばっかりかよ」
「発生源がわかんないくらい濃いんだね☆」
「なら、やるしかねーな」
「かしこまり☆」
カシムの言葉に『メルシー』が応える。
「万物の根元よ…帝竜眼よ…万象を支配せし竜の王の…っておい!?」
「ひゃっはー☆」
カシムのユーベルコードと共に現れたのは『メルシー』の分身体たちであった。
何故か『ドラグナー』のコスプレをしている。
加えて、カシムが手にしたルーン魔術が付与されているのだ。
カシムにとっては、それは予想していないことだったのだろう。
「なにやってんだおめー!」
「数は戦いの基本だよ、ご主人サマ☆」
「だからってお前!」
しかし、浄化の力は太陽のように降り注ぐ。
百を超える『メルシー』たちの分身体によって呪いの巨人たちは浄化されていく。
だが、次から次に呪いは形を作っていく。
「おい、本当にキリねーぞ!」
呪い続けることは苦しみであろう。
浄化されれば楽になれるはずだ。
なのに、滾々と湧き出す呪いは如何なることか。
本当にこれがただ一人だけの呪いであるのか?
「おいおいどういうこった……? 本当にこれ」
「一人でこんなに何かを呪い続けることができるものなのかな?」
「わからねーが」
カシムは浄化してもなお、湧き出し続ける呪いを見やり、喉を鳴らす。
わからないことが多い。
けれど、それでもこの大地は。
「しゃーねー。突っ切るぞ」
浄化によって得られた道筋をカシムは往く。
呪いは、どこまでも溢れ出し続ける。
まるで世界そのものを呪うように――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『獣騎ドレイク』
|
POW : 竜爪猛襲脚
【強靭な脚力を活かした目にも止まらぬ爪撃】で装甲を破り、【鞭のような靭やかさを持つ竜の尻尾】でダウンさせ、【急所を狙い澄ました突き刺し】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD : 変竜裂破
回避力5倍の【獣の如き俊敏なる地竜】形態か、攻撃対象数5倍の【拳士】形態に変形し、レベル×100km/hで飛翔する。
WIZ : 翼刃閃
【退化した竜翼を象った肘の翼刃】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【真空波】を射出できる。
イラスト:純志
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠サブリナ・カッツェン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
呪われし大地を突っ切った猟兵達を待ち受けていたのは、百獣族『獣騎ドレイク』であった。
彼の佇まいは静謐そのもの。
怒りに胸を焦がしながらも、しかし、その炎に呑まれることなく正々堂々たる決闘を望むように武人のように立っていたのだ。
「よくぞ、呪われし大地を駆け抜けてきた。汝らの行い、まさしく勇者のそれである。なればこそ、勇者に相応しき決闘を我はなさねばならぬ」
静かに構える『獣騎ドレイク』。
その構えに一部の隙もない。
あるのは重圧のみ。
相対するだけで周囲の空気が重たくなったように思えただろう。
若き騎士『ヘルヴォル』は橙色の人造竜騎を駆り、告げる。
「勇士たる百獣族よ。試練を乗り越えた賛辞を受け取ろう。だが」
「如何なるか」
「何故、我ら人間に相対する。復讐であるというのならば、あの時にでも出来たこと。しかし、何故」
そう、何故決闘にこだわったのか。
嘗て人類の大罪は、彼らの魂を、誇りを、矜持を傷つけた。
その傷の応報を受けるのは、今を生きる己達の咎である。
「知れたこと。もしも、今を生きる汝ら……清廉なる騎士『ヘルヴォル』よ。汝が嘗ての人類と同じように『迷う』こともなく、ただ脇目もふらずに邁進する者であったのならば、いずれ汝らが祖先と同じ過ちを犯すであろうから、我が怒りにて滅ぼしてくれようと思うたであろう」
だが、と『獣騎ドレイク』、『ゼクス』は言う。
「汝は迷い続けていた。己の正しさと、己の思いとを常に問いかけ続けていた。その懊悩こそが、未だ幼年期である人類にとっての幸いであり可能性。であるのならば」
己をも乗り越えてみせよと『獣騎ドレイク』は構える。
「いざ、尋常に勝負」
これより先にあるのは、聖なる決闘。
かつてはただ虐殺するか、滅ぼすかなかった選択肢。
良心というゆらぎを得たからこそ、今の人類は前に進んでいけるという確信を真にするために『獣騎ドレイク』は、己を壁として、試練として立つのだ――。
シル・ウィンディア
※キャバリアに継続搭乗中。
猟兵、シル・ウィンディア、行かせてもらいます。
尋常に勝負、だね。
相手のUCは真空波ってことは見えないんだよね…。
それなら、第六感を信じて回避行動を。
自分の直感を信じるだけっ!
左手にビームセイバーを保持させて、推力移動でゼクスさんへ突撃っ!
すれ違いざまに斬撃を行ってすり抜けるよ。
すり抜けた後は、空中で機体を反転させて、背中と両腰部、合わせて4門のカルテッドキャノンで攻撃をっ!
攻撃行動中に詠唱開始。
今回は全力全開。
多重詠唱で魔力溜めを限界突破まで行って、同時にUCの詠唱も行うよ。
使うは全力魔法のヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!
わたしの全力遠慮せずもってけーーっ!
構える『獣騎ドレイク』。
その所作はまさしく武人のそれであったことだろう。
相対するは、青きキャバリア『レゼール・ブルー・リーゼ』である。
駆るはシル・ウィンディア(青き流星の魔女・f03964)。
「名乗られよ」
『獣騎ドレイク』の有無を言わさぬ言葉の圧にシルは頷く。
されど、圧倒されるわけではない。
「猟兵、シル・ウィンディア、行かせてもらいます」
「ドレイク族が一、『ゼクス』、いざ」
「尋常に勝負、だね」
その言葉が戦いの始まりを告げる言葉であった。
一瞬の内に『獣騎ドレイク』はシルの駆る『レゼール・ブルー・リーゼ』へと肉薄してきていた。
退化したと言われる竜翼。
これを象った肘の一閃が『レゼール・ブルー・リーゼ』へと叩き込まれる。
肘鉄の一撃。
されど装甲で受け止めた一撃は、その鋭さ以上の切断力を有していなかった。
何故ならば、その肘の一撃は任意のタイミングを持って虚空より斬撃を放つことができる。
故に、必殺の一撃は二撃にて完結する。
「見えない斬撃波のような一撃……どこから、来るの! ……ううん、違う。踏み込まなきゃ!」
シルは意を決する。
見えもしない攻撃に怯えて二の足を踏むなんて、らしくない。
それに、とシルはビームセイバーを手にして交錯した『獣騎ドレイク』に向き直る。
反転した機体。
推力を持って機体を飛翔させるシルは『獣騎ドレイク』の背中を完璧に捉えたと思ったことだろう。
放たれるカルテッドキャノンの砲撃。
しかし、その砲撃を『獣騎ドレイク』は地面に着地した瞬間に、歩法一つもって爆風の範囲から逃れたのだ。
恐るべき脚力。
獣騎へと変形する百獣族のちからは、その鍛え上げられた変形する百獣族そのものの力である。
故に彼の、『ゼクス』の鍛え上げられた肉体は瞬時にシルの砲撃を躱してみせたのだ。
「飛び道具……されど。我が練磨されし体躯には届かじ」
再び踏み込まれる。
そして、虚空より放たれる斬撃波が『レゼール・ブルー・リーゼ』の装甲を撃つ。
背面の翼が寸断され、地に落ちる機体。
「くっ……でも!」
「取った。その翼では最早飛べるまい」
踏み込まれた一撃。
けれど、シルの瞳はユーベルコードに輝く。
そう、これまでの攻撃はどれもが時間稼ぎ。
シルは、今までずっと詠唱を続けてきていたのだ。
「闇夜を照らす炎よ、命育む水よ、悠久を舞う風よ、母なる大地よ、暁と宵を告げる光と闇よ…。六芒星に集いて全てを撃ち抜きし力となれっ! ヘキサドライブ・エレメンタル・ブラスト!!」
「ぬ……!」
それは確実に躱さねばならない一撃であった。
詠唱時間に応じて無限に威力を上昇させるユーベルコード。
6つの属性を複合させた魔力の砲撃。
それは如何に俊敏たる脚を持つのだとしても完全に躱すことのできない膨大な光条の一撃。
直線上に走る砲撃は大地をえぐりながら『獣騎ドレイク』を吹き飛ばし、シルは己が乗騎の中で笑む。
「これがわたしの全力だよ!」
そう、互いの全力を持って相対する。
それこそが聖なる決闘。
『獣騎ドレイク』が望んだ、待ち望み続けた過去よりの望み――。
大成功
🔵🔵🔵
ユキムラ・ゴルティエ
貴殿の理屈は分かった。
だが俺は迷わん。また歴史を繰り返すことになろうと人類の存続には変えられん。
貴殿は違うが…過去を知らぬ今の民に怒りを向ける百獣族に情けをかけられるほど、弱い俺に余裕はないのでな。
眼帯を外し妖精眼から魔眼光を照射。俺の前に立つ限り貴殿は攻撃ができない。俺に攻撃するには俺の背後を取り背中から刺すしかない。
しかしどこから攻撃してくるか分かっていれば【武器受け】【怪力】で防ぐことは難しくない。防ぐと同時に視線をやれば連続攻撃も止められる。
さらに受けるたびに【魔力吸収】で敵の魔力を奪い弱体化させ、ある程度弱らせたら吸収した魔力を込めた【魔力撃】で【叩き割り】。
悪いな。こちらも必死だ。
荒ぶは光条の一撃。
大地を抉り、空を割るかのような猟兵のユーベルコードを受けて『獣騎ドレイク』はわずかによろめく。
装甲が融解しているが、元より『獣騎ドレイク』にとって装甲はそこまで重要なものではなかった。
「後半歩。遅ければ、我が骨子にまで届くか……素晴らしき力である。だからこそ」
己が蘇った意味があると彼は言う。
その言葉にユキムラ・ゴルティエ(円卓の面汚し・f44834)は獣騎を前にして人造竜騎に乗り込むことなく相対する。
「乗騎は如何なされたか」
ユキムラは頭を振る。
彼には人造竜騎はない。
故に生身単身でもって獣騎へと相対する。
それは戦場の花形たる体高5m級の鋼鉄の巨人と比べるべくもないことであった。
「貴殿の理屈はわかった。だが、俺は迷わん」
「それが貴公の成すべきことか」
「然り。また歴史が繰り返すことになるのだとしても、人類の存続には変えられん」
ユキムラはこれまで相対してきた百獣族と『獣騎ドレイク』――『ゼクス』と名乗る者とは違うという感触を抱いていた。
確かに怒りを宿しているのだろう。
水に流す事のできない大罪が人間にはある。
「貴殿は違うが……過去を知らぬ今の民に怒りを向ける百獣族に情をかけられるほど、弱い俺に余裕はないのでな」
「自身を弱き身であると悟る騎士よ。一つ知るが良い。己を弱きと知るのならば、その身は百戦危うからず。強き者は、弱き者を知らぬ。かつては、どんな生命もまた弱き者であったのだ。故に」
「ああ、故に」
ユキムラは生身の己に一つも侮ることなく構える『乗騎ドレイク』を見上げる。
どんなに己が生身で頼りなく、弱々しく見えるのだとしても、眼の前の『獣騎ドレイク』は侮らない。
全力で向かってくるkとおを知るのだ。
「小さき勇士よ。今一度、己が身を知るがいい。そして越えよ」
その言葉にユキムラは己が眼帯を外す。
現れるのは赤き瞳。
妖精眼。
その輝きは、光を持って走り『獣騎ドレイク』の動きを止める。
「……これは」
「そうさ。その誇りに相対するは邪法。貴殿は俺に越えろと言ったな。だが、違うぞ。その誇り高き志で守って、この邪法を貴殿が超えられるというのならば、越えてみせろ」
魔眼光によって動きを止められた『獣騎ドレイク』。
だがしかし、『獣騎ドレイク』の脚部が大地を踏み抜くかのようにして弾ける。
飛ぶ。
そう、まさしくそう形容するに相応しい『獣騎ドレイク』の踏み込みにユキムラは目を見開くだろう。
己が魔眼光を浴びて尚動く。
その脅威なる力に敬意すら抱くかも知れない。
が、だからこそである。
己には正面から攻撃できない。仮にできたとしても、全てが無効化されてしまうのだ。
「……それが弱者としての戦いであると」
「ああ、そうだ。悪いな。こちらも必死なんだ」
打ち付ける拳。
その度に『獣騎ドレイク』は己が力が吸収されていくのを感じたことだろう。
「否。それは汝が力。己が力の全てを用いて戦う。これもまた聖なる決闘なり」
「なら、受け止めてみせろよ」
みなぎるは魔力。
それは『獣騎ドレイク』より得た魔力である。
弱き身であるからこその方策。されど、眼の前の武人は、それさえも力の内だと言ったのだ。
ならばこそ、ユキムラはその一撃を持って応えるのだ。
それがたとえ円卓最弱の騎士であると言われようとも、無辜の民を護るためならば騎士道に背いてでもという意志あればこそ。
その一撃を真と言わずしてなんという。
放たれた魔力の拳は『獣騎ドレイク』の胸部装甲に亀裂を走らせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
『獣騎ドレイク』、『ヘルヴォル』卿の手助けをさせてもらうわよ。構わないわね?
「召喚術」「仙術」で金蛟剪から|黄金竜《ゴールデンドラゴン》を召喚!
さあ、黄金竜、思うままに「空中戦」を繰り広げなさいな。
エネルギー体の黄金竜は、幻のようなもの。少々傷つけても、すぐに傷口はふさがるわ。
その特性を活かして、『ヘルヴォル』卿の人造竜騎の盾になり、時に攻撃を誘導して、|聖なる決闘《トーナメント》の趨勢を傾けていく。
騎士と騎士の信念のぶつかり合いね。獣騎ドレイクはオブリビオンになっても心が歪んでいない。
百獣族とはそんなに心強い種族だったのかしら。
だけど現世を譲るわけにはいかない。もう少しよ、『ヘルヴォル』卿!
「なんという……」
騎士『ヘルヴォル』が駆る橙色の人造竜騎。
彼が見やるのは猟兵と『獣騎ドレイク』の戦いである。
ユーベルコードの光が明滅し、その度に凄まじい戦いの衝撃波が迸る。
大地を抉り、空を穿つかのような光条。
拳を受け止めきってから放つ、生身単身の一撃。
そうした戦いぶりを見やり『ヘルヴォル』は驚嘆していたのだ。
「騎士『ヘルヴォル』よ。汝は来ないのか」
「これは聖なる決闘。であるのならば」
互いに一騎打ちではないかと『ヘルヴォル』は言う。
だが、『獣騎ドレイク』は構わぬというように構えた。
それを見やり、村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は告げる。
「『獣騎ドレイク』、『ヘルヴォル』卿の手助けをさせてもらうわよ。構わないわね?」
「無論。我が望むは聖なる決闘。されど、真に死力を尽くした戦いでもある。
「なら、遠慮なく! さあ、『ヘルヴォル』卿、行くわよ!」
「……レディ、御身は我が『鉄壁』たる異名を持って御守りいたしましょう」
構えるは六枚の盾。
橙の人造竜騎と『獣騎ドレイク』が激突する。
放たれる拳。
それは苛烈にして激烈であった。
六腕の盾で受け止めて尚、衝撃がゆかりに走る。
なんという力であったことだろうか。
だが、ゆかりは己が手にした華麗なる鋏型宝貝を掲げる。
帯びる霊力によって金蛟剪(キンコウセン)は輝くを解き放ち、一体の黄金竜を召喚せしめる。
「さあ、黄金竜。思うままに空を駆けなさい!」
その言葉と共に疾走る黄金の竜。
『獣騎ドレイク』は、その姿を見上げ感嘆の声を上げる。
「おお……なんという神々しき力。黄金の輝き……なればこそ、我が拳は!」
激突するユーベルコードとユーベルコード。
力の本流が周囲の地面を打ち砕き、破片が散る。
エネルギー同士の単純な激突。
如何にユーベルコード同士とは言え、力負けしたほうが押し返されるのは道理である。
そこに『ヘルヴォル』の乗騎が盾による殴打の一撃を叩き込むのだ。
「……騎士と騎士の信念のぶつかり合いね」
ゆかりは黄金竜が舞う最中に激突する二騎を見やる。
その戦いぶりは鮮烈であったことだろう。
「あなたはオブリビオンになっても心が歪んでいない。其れは何故?」
百獣族の全てがそうではないのだろう。
怒りに我を忘れた百獣族だっている。
だが、『獣騎ドレイク』は聖なる決闘を望んでいた。正々堂々。かつての決闘と同じように、だ。
その高潔なる魂のあり方は、個々に寄るものなのか。
「鍛錬があればこそである。強き者を求め、戴くべき王のために力を振るう。それこそが我が望み! であればこそ、我が魂は怒りに燃えれども、他者を焼く炎ではないことを知るのだ!」
打ち合う拳と盾。
そのさまを見やり、ゆかりは頷く。
「わかったわ。だけど現世を譲るわけにはいかないのよ、死者に! だから、もう少し堪えて『ヘルヴォル』卿!」
「我が身に代えても」
空を舞う黄金竜が天に昇り、そして落雷のように鋭きエネルギーの奔流となって『獣騎ドレイク』を打ち据え、その駆体の真芯にまで轟音を響かせるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルマ・フィーリア
なら、その思いに恥じないようにしなくちゃね
……ボクはアルマ・フィーリア、駆るは人造竜騎『ドラグリヴァーレ』!
ドレイク族の戦士『ゼクス』、いざ……勝負っ!
足回りで勝負するのは困難……けどドラグリヴァーレは頑丈なんだよ!
回避よりも『ミラースケイル』での防御と、2種類の『ドラグヘッド』での迎撃を軸にするよ!
あと、多分真空波は時間差攻撃か本体との挟撃に使うものとみるよ
だから……あくまで意識は獣騎本体に向けたまま、真空波はドラグヘッド何本かを犠牲に威力を削いで、最後はミラースケイルの魔法防御で耐えて、そして鋼竜石の力で再生したドラグヘッドを全基展開!反撃の【ドラグブラスター】を撃ち込むよ!
人の可能性を信じる。
その言葉は原罪に咎を重ねるバハムートキャバリアの人間にとっては、期待と取れる言葉であったことだろう。
人は過ちを犯す。
それも一度や二度ではない。
けれど、過ちを繰り返さないという意志こそが肝要なのだ。
故に『獣騎ドレイク』、『ゼクス』は騎士道にて心を律しながらも揺れる心を持つ者をこそ、真に信じている。
其れを証明するために聖なる決闘を望んでいるのだ。
「なら、その思いに恥じないようにしなくちゃね」
アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は真の騎士道精神を宿す百獣族を前にして頷く。
光の奔流受けて尚『獣騎ドレイク』は構える。
「名乗られよ」
「……ボクは、アルマ・フィーリア、駆るは人造竜騎『ドラグリヴァーレ』! ドレイク族の戦士『ゼクス』、いざ……」
「勝負!」
二人の声が重なる。
踏み込みは一瞬。
されど、その踏み込みによって生まれる衝撃波は、大地を轟かせるようであった。
速い、とアルマは思っただろう。
どうあがいても、あの培われた『獣騎ドレイク』の速度に追従することはできないだろうと判断せざるを得なかった。
事実、『獣騎ドレイク』の竜翼が退化した爪の如き肘の一撃は鋭く重たい。
躱すことは至難。
「けれど!」
「……強靭なる装甲を頼るか」
肘の一撃を『ドラグリヴァーレ』の『ミラースケイル』が受け止めていた。
だがアルマは理解している。
彼の肘の一撃はただのユーベルコードではない。
『ミラースケイル』で防げる程度のものがユーベルコードであるはずがない。
故に、虚空より現れる斬撃波は時間差攻撃。
「『ドラグヘッド』!」
交錯した竜の首が斬撃の一撃を受け止める。
首が大地に落ちた。
「鋭い……! でも、防いだ!」
「だが、攻撃の手段も失ったのは如何にする!」
「舐めるなぁ! 竜首、展開……!」
アルマの瞳がユーベルコードに輝く。
同時に切断された竜の首が再生し、その顎をもたげる。
「なんと……!」
迫る追撃の一撃。それを装甲で受け止めながら交錯するようにして無数の竜の首が口腔に湛えた魔法の光線を解き放つ。
「いっけぇ! ドラグブラスター!!」
放たれた一撃は『獣騎ドレイク』の装甲を溶解させていく。
その強烈なる一撃にたまらず『獣騎ドレイク』は吹き飛ばされ、膝をつく。
「く……!」
見事、と『獣騎ドレイク』はアルマと『ドラグリヴァーレ』を見上げ、その力を讃えるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
なるほど。
これは『試練』ということですね。
であれば!
試練にはパーティで立ち向かうのが勇者のお約束。
ならわたしたちが加勢しても、何の問題もないですね!(りろんぶそう
でもどこにでもいますよね、試練とかいって立ち塞がるキャラ。
それって与える方は自己満足でいいですけど、受ける方になんのメリットあるんです?
これ乗り越えたら、なにしてくれるんです?
こっちの仲間になってくれるんでしょうか?
せめてそのくらいの報酬はないと困るんですがー。
あ、ステラさんの質問になんでも答えてくれる権とかどうでしょう?
聞きたいことあるみたいですし、けっこういいと思うんですけど!
と、いうことで、全力全開いっきまーす!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
誰が為に戦う、か
未だ幼年期……|どこかで聞いた《ヴィー様のような》話ですね?
|青《善性》と|赤《悪性》の間を揺らぐ良心こそが
人の可能性ならば
この地は未だ赤と青が混じった|紫《混沌》の時代なのでしょうか
なんか今回ルクス様と息合わないんですけど??
どうしました勇者?
可愛いだけでは不満ですか?
まぁ話が聞けるなら
ヘルヴォル様にゼクス様
憂国学徒兵……この名に覚えがあるのなら
この邂逅は祝福ですか?呪いですか?
ではフォル!いらっしゃい!!(鳥型キャバリア呼び寄せ)
ヘルヴォル様が耐えている間に一気に決めましょう!
【アン・ナンジュ・パス】で仕掛けます!
セラフィムには敵いませんが
死の天使を存分に!
「誰がために戦う、か」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は『獣騎ドレイク』の語るところの意味を考えていた。
未だ幼年期。
その言葉は、このバハムートキャバリアとは違う鉄騎が戦場を駆け抜ける戦乱の世界にて聞いた言葉である。
何処かで聞いたような、と思ったのはそのためである。
人が悪性と善性を持ち揺らぐのが良心であるとするのならば、其れこそが可能性なのだ。
「この地は、未だ赤と青が混じった|紫《混沌》の時代なのでしょうか」
ステラの心に去来するのは、そのような困惑であったかもしれない。
掴んだものが手の内から、するりと抜け落ちていくような感覚。
「なるほど」
だが、そんなステラの心持ちとは裏腹にルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は一人納得していた。
「これは『試練』ということですね。であれば!」
彼女は得心が行った顔をしている。ステラにはよくわからなかった。
「試練にはパーティで立ち向かうのが勇者のお約束。なら、わたしたちが加勢しても、何の問題もないですね! これってりろんぶそうってやつですよね!」
「どうしました勇者? 可愛いだけでは不満ですか?」
「え、何がです!?」
「急に頭良さそうな単語を使って知性アピールしているので」
「どういうことです!?」
ルクスはステラの言葉に憤慨した。
いつだって勇者はクレバーなのだ。勇気と愛嬌だけではやっていけないのが冒険の旅ってもんである。
過去、古今東西、多くの勇者を語る英雄譚にな謎掛けや知性を試す冒険がつきものである。
であるのならば、ルクスにだってそうなのだ。
「でもどこにでもいますよね、試練とか言って立ちふさがるキャラ。それって与える方は自己満足でいいですけど、受ける方になんのメリットがあるんです? これ乗り越えたら、なにしてくれるんです?」
急にリアリスト。
「まぁ、お話が聞けるんじゃないですかね?」
「いーえ、こういう時に限って時間切れで大したこと聞けないまま終わるやつです! せっかうなら仲間になってくれるとか、それくらいの報酬がないと困ります!」
「思った以上にルクス様、業突く張りですね」
「そうでなくても、ステラさんの質問になんでも答えてくれる権とかでもいいですよ!」
急に幼い子の発想である。
「勇者の問いかけには答えねばならぬ。そういうものだ」
『獣騎ドレイク』は猟兵たちのユーベルコードによって、その装甲を融解させていた。
フレームがむき出しになりながらも立つのは、武人としての生き様があればこそであろう。
「であれば、聞かせて頂きましょう!」
「レディ、ここは私が」
『ヘルヴォル』の橙の人造竜騎が二人の前にて盾を構える。
その盾も数多の攻撃を受けてボロボロである。
しかし、未だ『鉄壁』は健在。
「お任せいたします! フォル!」
飛翔する『フォルティス・フォルトゥーナ』。
空中で高速旋回からの急速な切り返し。
如何に『獣騎ドレイク』が大地を俊足のごとく駆け抜けるのだとしても、地を這う獣騎であることに違いはない。
故に『フォルティス・フォルトゥーナ』は空を加速する。
そして、ルクスのユーベルコードが煌めく。
「全力全開の! フラワー・オブ・スコットランド!」
放たれるバグパイプの音色というより衝撃波。
その一撃が一瞬で『獣騎ドレイク』を捉え、打ち据える。
「ぐっ……なんという音……だが!」
「『セラフィム』には敵いませんが、死の天使を存分に!」
ステラの言葉と共に放たれるのは『フォルティス・フォルトゥーナ』の全武装。
急加速からの突撃。
その勢いに全ての武装を叩き込む一撃は一気に『獣騎ドレイク』を打ち据える。
「『憂国学徒兵』……この名に覚えがありますか」
「ない。我が記憶には、そのような言葉はない」
「であれば、この邂逅は祝福ですか? 呪いですか?」
「祝福でも呪いでもない。今はまだ。これを如何なるものかにするのは……」
人間が知ることだと『獣騎ドレイク』は苛烈なる一撃のうちにて、そう語るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ファルシータ・フィラ
吹きすさぶ風すら不要ですか
夢見て走るは死の荒野
ですがそこに躍るのが生命の輝きならば
此処から生まれるものもあるのでしょう
どうやらわたくしの推し事すらお邪魔になる様子
撃は最大の防御と申しますが、逆もまた真なり
防御こそが最大の攻撃!
ヘルヴォル様、防御はお任せしても?
その代わり攻撃はお任せくださいませ
二機一体、息くらい合わせてみせますわ!
ヘルヴォル様の速度に合わせて移動
立ち位置は真横から少し後ろ
牽制はファータ・バラージで!
ゼクスさんが仕掛けてきたら一歩下がって
ヘルヴォル様の防御を頼ります
狙いはドレイクさんの隙
たとえ針の穴のように狭くとも
【フェアリー・スピア】ならば!
そこです!捻じ込みますわ!
猟兵と『獣騎ドレイク』の戦いは苛烈極まるものであった。
ユーベルコードの光が明滅する度に、聖なる決闘の場は衝撃に揺れ動く。
その中を『獣騎ドレイク』は俊足たる動きでもって駆け抜ける。
「吹きすさぶ風すら不要ですか」
「左様。我が体躯は未だ動いている。であるのならば」
踏み込む『獣騎ドレイク』の一撃を『ヘルヴォル』の駆る橙の人造竜騎の盾が受け止める。
「幾度打ち込んで尚、未だ破れぬとは、まさしく『鉄壁』よ!」
「私に……俺に出来ることは!」
これくらいだと咆える『ヘルヴォル』にファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は己が乗騎『ティタニア』のコクピットの中で後方プロデューサー面をしていた。
「夢見て疾走るは死の荒野。ですが、そこに躍るのが生命の輝きならば、ここから生まれるものもあるのでしょう」
ファルシータは、己が推し事をすることは邪魔になりかねないと思っていたのだ。
しかしまあ、言ってる場合でもない。
『獣騎ドレイク』と『ヘルヴォル』の戦いは苛烈であった。
互いに主軸とするものが違いすぎた。
片や俊足を活かした高速攻撃。
片や盾を持っての防御一辺倒。
しかし、ファルシータは笑む。
「攻撃は最大の防御と申しますが、逆もまた真なり。防御こそが最大の攻撃!」
「不撓不屈。まさしく、それを体現する騎士よ!」
「お任せいたしますわ、『ヘルヴォル』様、そのかわり攻撃はお任せくださいませ」
「無論、レディ!」
その言葉にファルシータは『ヘルヴォル』の人造竜騎の盾の背後に合わせて動き、エレメンタルキャノンの砲撃でもって『獣騎ドレイク』を牽制する。
「牽制など、この鋼鉄の体躯に通じると思ったか!」
踏み込み、『獣騎ドレイク』の強烈なる爪撃の一撃が盾の一枚を切り裂く。
「……くっ! なんという!」
「むしろ、よくここまで一枚も盾を脱落させなかった!」
残った盾、サブアームが脱落した盾を補うようにして動く。
その一瞬の隙に『獣騎ドレイク』は踏み込んでいた。
鞭のようにしなやかに動く尾の一撃。それが『鉄壁』たる『ヘルヴォル』の人造竜騎の防御の合間を縫うようにして放たれたのだ。
だが、その瞬間こそがファルシータの好機であった。
「そこです!」
ファルシータの瞳がユーベルコードに輝く。
構えたシールドランスの一撃。
それだけでは勢いが足りない。速さも足りない。
であるのならば、如何にするか。
言うまでもない。
『ティタニア』の羽より迸るは魔法の妖精光。
噴出された光に背を推され、加速した『ティタニア』の手にしたシールドランスの一撃が尾の一撃を正面から迎え撃ち、これを砕く。
「砕くか!」
「いいえ、ねじ込みますわ!!」
加速した『ティタニア』の軌道が跳ね上がり、そして空中でさらにもう一度方向転換する。
『獣騎ドレイク』の直上より迫るは、シールドランスの一閃。
その一撃が『獣騎ドレイク』胸部を鋭く切り裂き、大地を激震させるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
…僕は昔の人類がやった事を否定しねーよ
生きる為なら…自分達の未来を拓く為なら…手段を選んでなんぞいられねー
自分に力が無ければ自分が出来る事を尽し全力を尽くす事
そいつが生きる為なら…どんなに卑劣だろうが卑怯だろうが…やり尽くすのも強さの一つだ
それでも今のこの世界の奴らが悔いているというなら…それだけの余裕を持つ強さを持てたって事だろ
…何、此奴は僕の想像にすぎねーよ
それに…今やるべきは…聖なる決闘とやらだろう?
いいぜ…付き合ってやる
僕は最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ。覚えておけ
「界導神機『メルクリウス』だよ☆よろしくね☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
ゼクスの能力と戦い方を冷徹に分析
【属性攻撃・念動力・弾幕・二回攻撃・切断】
UC発動
超絶速度でによる超速戦闘開始
念動光弾と光属性の弾丸の怒涛の弾幕を展開する
大抵は避けられるのは判っている
その回避パターンを解析し
距離を詰めての鎌剣での連続斬撃
不殺徹底
…これが僕にとっての聖なる決闘だ
殺し合いの時点でそんなもん聖なんぞあってたまるか
バハムートキャバリアの人類が過去に犯した大罪。
それは弱いものであるがゆえの抵抗であったのかもしれない。
王を戴くための聖なる決闘。
それに参加する資格すらなかった人類にとって、獣騎とは憧憬しかなかったのだろう。
力への渇望。
求めるが故に手を伸ばす。
その方法が間違っていたと語ることができるのは、のちに歴史となる過去を知るものだけであろう。
「……僕は昔の人類がやったことを否定しねーよ。生きるためなら……自分たちの未来を拓くためなら……手段を選んでなんぞいられねー」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)の言葉に『獣騎ドレイク』は頷く。
それが過去の人類と同じ考え方であったからだろう。
ためらいを持つのならば、百獣族は人類に敗北を喫することなどなかっただろう。
人間はためらわない。
その凶暴性にかられたとはいえ、一つもためらわない。
己が生存を得るためならば、騎士道など無視することができる。
怒りに塗れて尚、『獣騎ドレイク』が、それを抑え込むことができるようには、その一点においてのみすれ違い続けるのだ。
「自分に力がなければ、自分に出来ることを尽くし全力を尽くすこと。そいつが生きるためなら……どんなに卑劣だろうが卑怯だろうが……やり尽くすのも強さの一つだ」
「それが人類の秘めたる凶暴性。其れ故に人は大罪を抱えて生きねばならぬ」
構えるは拳士としての『獣騎ドレイク』。
あの脚部は、恐るべき速さを持ち得る。
猟兵たちのユーベルコードにさらされて尚、『獣騎ドレイク』は恐るべき速度を有していると見ていいだろう。
「それでも今のこの世界の奴らが悔いていると言うなら……それだけの余裕を持つ強さを持てたってことだろ……何、此奴は僕の想像にすぎねーよ」
「元より人間が持ち得ていたものだ。それを凶暴性を抑え込み、律することで揺れ動き続ける。天秤は揺らぎ続かねばならぬ。何故なら、そこに騎士道という揺るぎない支点を得るからだ」
「いいぜ……付き合ってやる」
互いに踏み込む。
一瞬だった。
『獣騎ドレイク』と『メルクリウス』のアイセンサーがユーベルコードに煌めく。
「僕は最強無敵の天才魔術盗賊のカシムさんだ。覚えておけ」
「界導神機『メルクリウス』だよ☆ よろしくね☆」
「『ゼクス』、今はただのドレイク族の戦士」
互いに打ち合うは拳と念動光弾。
放たれる念動光弾の全てを『獣騎ドレイク』は拳で持って撃ち落としていた。
凄まじ速度である。
だが、速度であるのならば、『メルクリウス』が遅れを取るわけがない。
「 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)、起動……いけ!」
カシムの言葉に応えるようにして『メルクリウス』が凄まじい超速度を得て、駆け抜ける。
牽制の念動光弾を避けられることはわかっていた。
そればかりか、拳で撃ち落として尚、こちらに攻撃を放つ余裕さえ『獣騎ドレイク』にはあったのだ。
「地を這うばかりと思ってくれるなよ」
「なるほどな。だが!」
敵の動きをカシムは観察し、読み解く。
鍛え上げられた、ということは、すでに『獣騎ドレイク』の中にて回避の行動パターンが決定されているということである。
それが、何百、何千、何万という修練の果てに練り上げられ、無駄を削ぎ落とした動きであることは言うまでもないだろう。
故に鎌剣の軌跡が疾走る。
「殺しはしねぇ。何故なら!」
カシムは『獣騎ドレイク』に致命傷を与えぬ剣閃でもって溶解した装甲を引き剥がすようにして鎌剣を振るう。
「これが僕にとっての聖なる決闘だ。殺し合いの時点でそんなもん聖なんぞあってたまるか」
振るう斬撃は装甲ばかりを引き剥がす。
フレームに傷は残さない。
それは聖なる決闘の決着を見ないやり方だったかもしれない。
けれど、それでもカシムが求め、手を伸ばしたのは、相対するものの生命を奪うことではない。
嵐のような鎌剣の連撃は『獣騎ドレイク』の装甲を悉く引き剥がし続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アストレア・テスタメント
【ジェイミィの決闘に介入】
(妖精獣騎形態は継続)
いよいよ決闘か。ならば、この私は使命に従うまで!
(ジェイミィとドレイクが対峙する場へ声を掛ける)
両者、待て!
決闘は正しく執り行う必要がある。
よって、この場は天秤の妖精の使命に従い……
このアストレア・テスタメントが立会人として預かる!
双方、向顔。魂の|天秤《リーブラ》に何を賭けるか、宣誓せよ!
(両者の宣告を聞き)
合意と見てよろしいな?
これより約定に従い、決闘を執り行う!
決闘方法は1対1の個人戦、勝敗は乗騎の行動不能によって決する!
騎士道精神に則った正々堂々たる戦いを期待する。
何人たりとも介入は許さぬ! 良いな!
両者、構え。……いざ、抜剣!!
ジェイミィ・ブラッディバック
【アストレアに介入される】
獣騎ドレイク……どこか私に在り方が近いように思えます。
私も自律行動可能なキャバリアと言えますしね。
(アストレアが割って入る)
……先程私を追跡した機体ですか。
なるほど、決闘の立会人……つまり中立の立場を取ると。
いいでしょう。
クロムキャバリアが一、ジェイミィ・ブラッディバック。
魂の天秤に我が名を賭けましょう!
いざ尋常に、勝負!
ランスモードのLONGINUSとTRINITY ANGEL BLADEを装備。
それ以外の射撃兵装はパージします。
爪撃は槍でいなし、龍の尻尾を剣で受けます。
突き刺しをかわして懐に潜り込み、槍を突き刺し……
上空から一気に地上へとダイブします!
装甲引き剥がされて尚、『獣騎ドレイク』の佇まいは変わらなかった。
手傷負わされてもなお、その身に立ち上るかのような闘志は依然変わらぬ。
其れだけの意志あればこそ、怒りを抑え込むこともできるのだろう。
まさしく、騎士道。
怒りに我を忘れることなく、その心一つを剣として振るうのならば、その手に剣なくとも騎士と呼ぶにふさわしい存在であったことだろう。
「『獣騎ドレイク』……」
どこか、とジェイミィ・ブラッディバック(脱サラの傭兵/Mechanized Michael・f29697)は、彼のあり方に己との近似値を感じ取っていた。
シンパシーと呼んでいいものであったのかもしれない。
しかし、共感を得てなお戦う。
それが聖なる決闘の定めであるというのならば、相互に理解しても尚、争いの道はひっていであったのかもしれない。
互いに言葉は多くなかった。
ジェイミィは己の乗騎をわずかに半歩踏み出そうとして、動きを止める。
「両者、待て!」
その言葉は空より降り注ぐ。
妖精獣騎。
「妖精族か」
『獣騎ドレイク』が見上げる。
その先にあるのは、アストレア・テスタメント(神出鬼没の裁定者/放浪の竜騎鍛冶師・f44773)が変じた獣騎であった。
「決闘は正しく執り行う必要がある」
「然り。されど、すでに戦いは始まっている。裁定者よ、汝が氏名は如何なるか」
「立会人として、このアストレア・テスタメントが預かる」
「……先程私を追跡した機体ですか」
ジェイミィはなるほどと頷く。
決闘の立会人。
あの機体は、猟兵でありながら中立を護るというのだ。
ならば、頷く。
「双方、向顔。魂の|天秤《リーブラ》に何を賭けるか、宣言せよ!」
「クロムキャバリアが一、ジェイミィ・ブラッディバック」
何を、とジェイミィは思考を走らせる。
魂の天秤に賭けるは何か。
言うまでもない。
魂に等しいものとは、すなわち己の存在である。
「我が名を賭けましょう!」
「ドレイク族が一、『ゼクス』……我が怒りを賭けよう」
つまり、それは、とジェイミィは頷く。
己たちが勝利すれば、その魂は怒りを忘れると言っているのだ。
「合意と見てよろしいな。これより約定に従い、決闘を執り行う!」
アストレアは間に立ち、両者を見やる。
望むは騎士道精神に則った戦い。
正々堂々たるを望むのだ。
そして、この瞬間飲みにおいて何人たりとて介入を許さぬ構えであった。
「両者、構え。……いざ、抜剣!!」
ジェイミィが手にしたのは剣と槍。対する『獣騎ドレイク』は、己が五体が剣であった。
交錯する視線。
最早待ったなし。
「いざ、尋常に、勝負!」
唸りを上げる駆体。
スラスターの超過駆動によって機体事態が鳴動するようでった。
一瞬でジェイミィの駆るクロムキャバリアが飛翔し、『獣騎ドレイク』の直上へと飛び立つ。
その凄まじさたるや、飛び立つ鳥のようであった。
しかし、その加速に跳躍して追いつくのが『獣騎ドレイク』であった。
迫るは爪牙の一撃。
振るう実体剣を跳ね除けるほどの強烈なる一撃。
装甲の殆どを失っているのに、未だこれほどまでに頑強なる一撃を叩き込まれる。『獣騎ドレイク』の地力が垣間見える攻防であった。
そして、その一撃を縫うようにして『獣騎ドレイク』の尾が尖く走り、ジェイミィへと迫る。
突き刺しの一撃に頭部のフェイスガードが砕ける。
頭部を穿たれなかったのは、ほとんど運だった。
だが、フェイスガードの奥のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
最後の貫手。
その一撃をジェイミィは実体剣を失った腕部で受け止める。
砕け散る腕部。
だが、それでも一手。一手ジェイミィが上回る。
遥か上空での応酬。
最後の一撃はジェイミィの手にした機甲槍の一撃。
空より共に落ちるようにして放たれた一撃は、『獣騎ドレイク』の腹部を貫き、その内に宿した怒りを禊をもって払うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エリアル・デハヴィランド
●SPD
人は懊悩煩悶しながら日々成長していくもの
だが、迷うが故…答えを急ぐ余りに過ちも犯す
だからこそ、我らは祖が犯した大罪を枷とし…今日に至るまで魂の修練を重ねてきた
果たして高潔なる貴殿に並ぶまでに至っているかはおこがましく申し上げれないが、その結果は聖なる決闘により示すものだ
相手は敏捷性に勝る
となれば、競うのではなく互いの持ち味を活かすべきか
ならば【城壁戦法】により『鉄壁』との勇名持たれる卿と共に獣の如き突撃を、拳士の連打を受け止める
ヘルヴォル卿よ
微力ながら加勢させて貰っているが、これは貴殿とゼクス殿との聖なる決闘でり、決着は貴殿に託す
それがゼクス殿へ手向ける鎮魂であり、最大の礼賛だからだ
怒り払う一撃。
それによって『獣騎ドレイク』の中より払われたのは、怒りであった。
だが、同時にそれは『獣騎ドレイク』が身軽になったということである。怒りは確かに力を湧き上がらせるだろう。
同時に枷でもあるのだ。
怒りに縛られる駆体は、さぞや重たかっただろう。
それを律しているのならば、なおのこと。
故に、今の『獣騎ドレイク』、『ゼクス』を縛るものは何一つない。
これより先にあるのは、百獣族としての戦いではない。
ただの、聖なる決闘だ。
「これが最後だ」
『ゼクス』の言葉にエリアル・デハヴィランド(半妖精の円卓の騎士・f44842)は頷く。
「人は懊悩煩悶しながら日々成長していくもの。だが、迷うが故に……答えを急ぐあまりに過ちも犯す」
「そうだ。揺れ動く悪性と善性を持ち得るのが人である。だからこそ、揺れ動く良心には支点が必要なのだ。揺るぎない支点が」
「それが騎士道。我が祖先が犯した大罪によって言えたもの。今日に至るまで魂の修練によってつむがれてきたもの」
エリアルは一歩前に踏み出すのではなく、下がった。
己が乗騎『レナード』に轡を並べるのは橙の人造竜騎。『ヘルヴォル』の駆る機体であった。
「果たして高潔なる貴殿に並ぶまでに至ったかは、おこがましくも申し上げることはできぬ」
「問はせぬ。それは聖なる決闘の結果により示されるものなれば」
「然り……であるが」
エリアルは盾を構えた。
だが、それだけだった。
己にとって、この聖なる決闘の決着とは、過去よりの因縁に基づくものであった。
轡並べる騎士。
若き騎士でありながら、清廉さと懊悩を持つもの。
誰かの笑顔のためにと願う心根があるからこそ、今此処に騎士『ヘルヴォル』は導かれたと言ってもいい。
「『ヘルヴォル』卿よ。これは貴殿と『ゼクス』殿との聖なる決闘であり、決着は貴殿に託す」
「しかし、デハヴィランド卿。それでは、貴方の功績が」
「構わぬ。元より我が身は巡礼の身。功績など荷が勝つ。それに」
エリアルは、その眼差しを持って『ヘルヴォル』を見やる。
「これが『ゼクス』殿へ手向ける鎮魂であり、最大の礼賛だからだ」
騎士として。
怒りはすでになく。過去の怨恨は晴らされ。
あるのは、どこまでも広がる青空。
こんなにも青い空の下にて続くは、怨嗟の塗れた黄昏であってはならぬ。
「どれだけの大罪を生きながらにして得ているのだとしても、それでも我らは示さねばならぬ。貴殿が『誰もが笑って生きて欲しい』と願うのならば」
彼を守るための城壁ではない。
ユーベルコードの輝きが示すのは、彼の背を押す城壁の如き力。
「……そうだ。俺は、きっと皆に笑っていて欲しい。罪を忘れろと言わない。怒りを捨てろとも言えない。けれどそれ以上に笑っていて欲しい。それが」
「それが汝の往く道であるのならば、茨の道。されど、いつだってそうだ。正しき道というのは、遠回りに見える。厳しく険しい道に見える。人を試すのは、いつだってそうした道なのだ」
構える両者。
もはや勝負は刹那。
踏み込んだ瞬間をエリアルは見ただろう。
『獣騎ドレイク』の一撃が『ヘルヴォル』の駆る人造竜騎の盾を一瞬で砕いたのを。
サブアームすらも粉砕する拳。
その凄まじき拳気は橙の人造竜騎を押し返すようであった。
だが、『ヘルヴォル』は止まらなかった。
「征け、『ヘルヴォル』卿。貴殿の清廉さが導いた結末だ。立ち止まるな。踏み出せ。その一歩こそが」
潔斎者たる一歩。
砕けた腕部を突き出す。
放たれた一撃は『獣騎ドレイク』の頭部をえぐるようにして天に掲げる。
橙の人造竜騎が膝をつくのとおなじくして『獣騎ドレイク』の駆体が傾ぐようにしてもたれかかる。
それは互いの戦いを称え合うようであり、エリアルは、そこに潔斎行路の果ての可能性を幻視するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵