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ピルグリメイジの軌跡

#バハムートキャバリア #潔斎者たち #熾盛

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#バハムートキャバリア
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#熾盛


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●マッドネス
「お考え直しください、『ラーズグリーズ』伯!」
 悲痛なる叫びであり訴えであった声は凶刃の前に消えゆく定めであった。
 滴る血潮が血河へと変わる。
 まずは一人。次は二人。更に次は四人。
 生贄という名の屍山が築かれるのにさしたる時間はかからなかった。
 それほどまでに辺境を収める領主たる『ラーズグリーズ』辺境伯は、横暴にして悪逆無道なる振る舞いを行うものであった。
 以前は、そのような振る舞いをする領主ではなかった。
『騎士道』――このバハムートキャバリアにおいて最も尊ばれる生き方を体現する者であったのだ。

 領民からの敬愛を一身に受けた名君。
 辺境伯でありながら、その在り方に感銘を受けた騎士たちも多かった。
 だが、そんな『ラーズグリーズ』辺境伯が急変したのは、彼の息女が神隠しにあってしまった頃からであった。
 無論、領民たちは敬愛する『ラーズグリーズ』辺境伯の唯一の息女の探索に力を入れた。
 細君を早くに亡くし、彼の心の拠り所であった息女の神隠しに仕える騎士たちは胸を痛めた。
「お気持ちは、お気持ちは痛いほどに……!」
「誰が私の気持ちなどわかるのか。私の生きる理由。私の愛おしきあの子の行方が知れぬ……しかし、私はついに見つけたのだ。あの四角錐の如き体躯をした神の存在が確かなものであるという証明を! 後はかの神に生贄を以て我が望みに答えてもらうだけなのだ。それを邪魔立てするか!」
 狂気に染まった瞳。
『ラーズグリーズ』辺境伯は、すでに心狂わされている。
 在りもしない神の姿を幻視し、その神の啓示を得ようと領民の幼子たちを秘密裏に生贄に捧げているのだ。

 それは騎士道にもとる悪そのもの。
 人類は嘗て犯した大罪を深く懺悔しながら生きることを是としている。
 それ故の騎士道。
 これに反することは、はるか昔に己たちが祖先が起こした悪逆と同じである。
 あのような過ちを繰り返さぬために、己たちは自身を強く律せねばならぬ。
 騎士として、己は己が子孫に恥じぬ行いをしなければならない。
 例え、己の忠言が聞き入れられぬのだとしても。死ぬのだとしても、命を賭しての言葉でなければ『ラーズグリーズ』辺境伯には届かぬだろう。
「御息女のこと、お悔やみ申し上げます。ですが、それであたら若い幼子の命をというのであれば!」
「神が言うのだ! 我が娘を今一度身に抱くためには! その我が娘を亡き者と、弔事を述べるというか!」
「もう居ぬ者のために、今ある生命が奪われること。これこそが我らが騎士道においては誅すべき」
 忠言の騎士の声はそれ以上続かなかった。
『ラーズグリーズ』辺境伯にとって苦言にも満たぬ言葉を吐く騎士は首より上はいらぬといわんばかりに、騎士の首が転がっていた。
 血は流れ、血河へと合わさり、これからもまた血が多く辺境の地にて人知れず流れ続けるであろうことを予感させた――。

●誠
 許せぬ。
 やはり人間とは野卑たる種族である。
 かつて犯せし大罪。
 どれだけの時が過ぎようとも、鋼鉄の咎持つ人類は許されざる大逆人である。
 百獣族たちは理解する。
「この恨み晴らさずにはおられぬ」
「されど、この恨みよりも人道にもとる行いを成す人間を許さじという怒りが我らを突き動かす」
「然り。されど我らが示さねばならぬ。上に立つ者には責務がある。如何なる怒り、悲しみさえも凌駕する優しさこそが救いなのだ」
『獣騎ゴブリン』たちはみなぎる怒りを持ちながら、しかし、義心持ち得る者たちであった。
 彼を率いる『獣騎トロウル』は、バハムートキャバリアの辺境……『ラーズグリーズ』辺境伯が収める大地を見やる。

 今も、存在しない神を幻視した凶行に走る悪しき領主を誅さねばならない。
 彼等は過去の人類の所業に怒り、憎しみを抱く者。
 されど、騎士道にもとる者を許しておける道理も無し。
「征こうではないか、友らよ。悪を討ち、真にこの世界が誰がためにあるのかを知らしめねばならぬ――」

●バハムートキャバリア
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。新たなる世界バハムートキャバリア……その辺境を収める人間の領主が、オブリビオン……百獣族の襲撃を受けるという予知があります」
 猟兵たちはその言葉に窮地に陥るであろう領主を救援しなければならないのだと察するだろう。
 だが、そんな猟兵達とは裏腹にナイアルテは頭を振る。
「いいえ、この領主は悪政を密やかに強いる『騎士道にもとる悪人』という噂がございます。これが真であるのかは、私の予知では判別できませんでした。ただ、百獣族が辺境を襲撃するという予知だけなのです」
 つまりは、この襲撃しようとしている百獣族は、その噂を聞きつけ義心でもって襲ってくるということなのか?
 猟兵たちは困惑するかもしれない。

 もしも、領主が『訳あってそう振る舞わざるを得ない善人』であったのならば、百獣族から助けない理由はないだろう。
 だが、もしも噂が本当であったのならば。
「いずれにせよ、領主の本性を確かねばなりません。時に悪徳領主と呼ばれる人物の土地には、大概の場合義賊として暴れまわっている盗賊騎士が存在するようです。まずは、この騎士と接触し、領主の人となりを聞き出し確かめなければなりません」
 その盗賊騎士の名は『ブリュンヒルド』。
 女性の騎士であるらしい。
 彼女は騎士の儀礼として生身の戦いを求めているようである。
 正々堂々と剣をもって相対すれば、信を得ることもできるかもしれない。
 そのうえで領主の人となり、その噂が真かを知ってからでも遅くはないだろう。

「騎士『ブリュンヒルド』との対話によって噂が嘘であるのならば、騎士道に則り百獣族たちを正々堂々と戦って退け、領主を守るべきでしょう。ですが……」
 もしも、噂が真であったのならば、百獣族の襲撃のどさくさに紛れて領主の罪状を暴き、地位を簒奪すべきであろう。
 いずれにしても、猟兵たちは、この地方に渦巻く嘘か真かを見定めねばならないのだ――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 新たなる世界バハムートキャバリアにて起こる百獣族の襲撃と悪徳領主の真偽を確かめ、如何なる物語の結末を迎えるのでしょうか。

 ※全ての百獣族(獣騎)は、例えスライムのような異形種族でも、会話によるコミュニケーションが可能です。彼らはいにしえの聖なる決闘に則り、正々堂々と戦いを挑んできます。

●第一章
 冒険です。
 辺境の土地に義賊として暴れまわっている盗賊騎士『ブリュンヒルド』との接触を果たし、実際にこの土地にて悪徳領主として悪名高い『ラーズグリーズ』辺境伯の噂が真なのかを知らねばなりません。
 ですが、彼女は剣での対話を望んでいます。
 生身での剣の応酬こそ、人は偽りを載せられぬと彼女は信じているようです。
 まずは彼女と生身で戦い信を得て、噂の真偽を定めましょう。

●第二章
 集団戦です。
 前章にて『ラーズグリーズ』辺境伯』の人となりが理解できたことでしょう。
 ですが、噂の真偽にかかわらず百獣族の軍勢が迫っています。
 襲来の報が皆さんに届いた頃には、すでに領地へと百獣族が踏み込んでいます。
 これらをかき分けて『ラーズグリーズ』辺境伯の元へと向かいましょう。

●第三章
 ボス戦です。
 第一章の結果によって展開が変わります。

 それでは新たなる世界、鋼鉄の咎を持つ人類への復讐と抱いた義心が誅たる刃とする獣騎たちとの戦いとなることでしょう。そんな戦いに赴く皆さんの物語の一片となれますように、いっぱいがんばります!
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第1章 冒険 『剣よ、誇り高くあれ』

POW   :    正面からぶつかる

SPD   :    剣技にて応じる

WIZ   :    騎士道を見せる

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 荒野に一人の騎士が立っている。
 見つめる先にあるのは辺境の大地である。
 彼女が生まれた時、この辺境は敬愛に値する心と技を持つ騎士『ラーズグリーズ』辺境伯によって治められ、辺境地方ながらに人々の暮らしは豊かなものであったという。
「……私にとっては知らぬことだってのによ」
 父は死んだのだという。
 騎士同士の刃傷沙汰。
 それによって父の栄誉は無き者となった。
 だが、果たして本当にそうなのかという疑念がある。

 わからない。
 知らぬことが多すぎる。
 だからこそ、彼女は知るためにこうして盗賊騎士として『ラーズグリーズ』辺境伯の悪政に抵抗している。
 討伐に差し向けられた騎士たちは悉く打倒した。
 剣を交えれば、騎士たちは清廉潔白なる者たちであると知れる。
 そんな彼等を数しれず打倒した身代金で今、盗賊騎士『ブリュンヒルド』は日々の糧を得ている。
 だが、解放した騎士たちが二度と彼女の元を訪れることはなかった。
 それが何を意味しているのかを知るのに随分と時間がかかった。
 故に彼女は辺境の、さらに片隅にて義憤を募らせながらも下手に動けぬ。
 己が打倒した騎士たちは、きっと『ラーズグリーズ』辺境伯によって処されたのだと容易に想像できる。
「許されることじゃあねえよな……けどよ。どんな理由があろうとも優しさを忘れちゃあ騎士道も何も意味をなしゃしねぇ……何が『戦いに際しては心に平和を』だ……死んじゃあ意味ねぇんだよ――」
ジークリット・ヴォルフガング
●SPD

親の心子知らず子の心親知らず…ともなれば、王の心民知らず民の心王知らず、か
善政を振るおうともそれが良い政治であるとは限らない
時には難局を乗り越える為に厳しい政策を取らねばならない時もあるのだが、それが実を結ぶまで民の負担になるのもだ

当時を生きる者からすれば悪王だろうとも、未来で結んだ実の恩恵に与る者からすれば名君と呼ばれるのは仕方ないさ
だからこそ、その蟠りを幾ばくか解す事が肝要でもある

では、その真偽をこの目と手で確かめるとするか
言葉ではどのように取り繕うとも剣は嘘を吐かぬ物だ
UCも剣に宿りし重力も封じ、剣に生きる者は剣の腕で己の素性を語るのみ

異邦よりの傭兵騎士として手合わせを願おう



「親の心子知らず、子の心親知らず……ともなれば、王の心民知らず、民の心王知らず、か」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は溜息を言葉に混じらせた。
 バハムートキャバリア。
 鋼鉄の咎を人類が抱く世界である。
 そしてオブリビオンとして復活した百獣族が恨み抱き、世界を人類から取り戻さんとしている世界でもある。
 種族が異なれば争いが起きるのは必定である。
 そして、人というものは互いを互いに理解しきれぬ生物でもある。
 故に争いがある。
 しかしながら、人は社会という集合体を持って弱者ながらに生きながらえてきた。
 嘗て、この世界で起こった百獣族の虐殺。
 これもまた人間が社会というものを獲得し得たからこそであろう。
 個々はか弱くとも、社会という獣になった人間は歯止めが効かない。己よりも弱きを食い物にするのに理由はいらなかったのだ

 故に彼等は己が祖先の行いに後悔を持って懺悔する。
 それは潔斎の道行きである。
 しかし、深く恥じたとて失われた生命が戻るわけもなく。
「それで、あんたは何が言いたいんだ」
 眼の前には荒野にたつ一人の盗賊騎士の女性『ブリュンヒルド』。
 彼女の瞳はジークリットを見ていた。
「善政を振るおうともそれが良い政治であるとは限らない。時には難局を乗り越える為に厳しい政策を取らねばならぬ時もあるのだが、それが実を結ぶまで民の負担になるものだ」
「なあ、あんた。そう理屈を立てるのは勝手だが。それが詭弁と言われたのならば、そうではないと示す手立てはあるのか」
「ないな」
 ジークリットはきっぱりと言い放つ。

 確かに予知でこの辺境に百獣族が悪評立つ『ラーズグリーズ』辺境伯を討たんと迫っているのだという。
 しかし、その悪評が嘘か真かを猟兵たちは未だ知れていない。
 人の評することは時代によって変化する。
 歴史を語る者たちからすれば、それもまた人間の見せる一側面でしかないというだろう。
 後年、評価の反転する者だっているのだ。
 今現在が劣悪な環境であるからと言って、未来の土壌にならぬとは限らぬ。
「だが、蟠りを幾ばくか解す事が観葉だということも知っている」
「なら、どうする」
「知れたこと。真偽を、この目と手で確かめる。言葉ではどのように取り繕うとも剣は嘘を吐かぬものだ」
「奇遇だな。私もそう信条として掲げている」
 ジークリットの瞳が盗賊騎士『ブリュンヒルド』を見つめる。

 最早言葉はいらなかった。
 手にした剣から重力が消え失せる。
 此処にあるのは互いの剣の技量のみ。踏み込むと同時に剣戟の音が響き渡る。
 激しい刃と刃の激突によって火花が散る。
 互いに信を掛けて振るう剣に加減はいらない。
 ジークリットは『ブリュンヒルド』の剣の疾さを知っただろう。
 打ち込まれる一撃は鋭く速い。
 逆に『ブリュンヒルド』はジークリットの剣の重さを知った。
 恐ろしく重たい一撃。
 受け流さねば、そのまま剣で押し込められて己が剣でもって脳天を割られるであろうとさえ思えたのだ。

 異邦の騎士。
 世は広いと思った。
「……見慣れぬ剣技。あんたのそれは実戦を知っている者の剣だ。紡がれてきた歴史の重さが剣の重さというわけか」
「そういうお前は全てが我流だな。だが、練り上げられている」
 互いに剣を振るうのならば、到達点は同じである。
 故に二人は剣を手にしながら笑う。
「わかった。あんたは騎士だ。であるのならば、私も礼節を持って応じなければな」
 そう言って『ブリュンヒルド』は剣を治めてジークリットに握手を求めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ランスロット・グレイブロア
悪徳領主、か……
そして、ヒトは悪に落ちる時……『輝くもの』を失っている
だからと言って、悪逆が許されるはずがない
許されてはいけないのだ
だけども、こういう理論も然りとある
――贖いを示すなら、行きつく先を見て断罪するかを決めろ、と

真実だ、正義の裁きには真実がいる
だからこそ、相手を深く知り……その上で、裁きの内容を決められる様に立ち回る
それが『悪役』のやるべき事ではないだろうか

剣を重ね合わせ、裁きには『真実』と『理解』が必要だと持論を述べる
『悪役』は、それを暴き曝け出す為に存在するのだから



 悪徳領主。
 それは人の世であれば、常に現れるものである。
 人の上に人が立つのだ。
 当然の成り行きであろう。
 如何に清廉潔白にして騎士道を重んじるバハムートキャバリアの人間であろうとも、悪逆無道に堕す理由がないとは言い切れぬ。
 人の心は悪性と善政を持つ。
 天秤のように揺れ、しかし一度バランスを欠けば、転がり落ちるように傾くものである。
 人はそれを転落と呼ぶであろう。

 この辺境を治めている『ラーズグリーズ』辺境伯も同様であっただろう。
 一つのつまづきが、彼の天秤を傾けたのかもしれない。
 手にしていた『輝くもの』を喪ってしまうのならば、悪に落ちる。
 それはバハムートキャバリアの歴史を顧みても同様であった。
「だからといって、悪逆が許されるはずがない。許されてはいけないのだ」
 ランスロット・グレイブロア(姫騎士は悪役に思いを馳せる・f44775)は、己の血脈を振り返る度にそう思う。
 己とは無関係とは言えない。
 当時を生きていなかったとしても、百獣族を女子供に至るまで虐殺したおぞましき人の性というものが、己が人間である以上血潮に流れていることを自覚する。

「だけども、こういう理論も然りとある――贖いを示すなら、行き着く先を見て断罪するかを決めろ、と」
「それで」
 どうしたいのだ、と盗賊騎士『ブリュンヒルド』は剣を掲げて見せた。
 悪逆を認め、償いを欲しても償うべき相手がいないのならば如何にするのだと。
「真実だ、正義の裁きには真実がいる」
 相手を知らねばならない。 
 深く、深く、その奥底まで洗いざらい知らねばならぬとランスロットは剣を構える。
 最早、言葉はいらない。
 剣を持って語る他ない。 
 それを『ブリュンヒルド』も理解しているし、望んでいる。
 故に彼女たちは剣でもって打ち合い、剣戟こそを言葉とするのだ。

 ランスロットが己に求めているのは役である。
 担うべきであると考えるのは『悪役』である。
 そうでなければならない。そうでなければ、贖うことができない。
 悪を裁くのが人であるというのならば、『真実』と『理解』とが何より必要だ。
 あの悪評立つ領主『ラーズグリーズ』辺境伯は真に悪政敷くものであるのか。その『真実』がいるのだ
 そして、『理解』がいる。
 何故、そこに至ったのか。
『善役』だけが、真実を詳らかにするものではない。

 打ち込まれた剣の重さにランスロットは膝が揺れるのを自覚しただろう。
 その剣の主、『ブリュンヒルド』が抱えているのは、復讐心であろうか。
 彼女はおそらく気がついている。
 己が父である騎士を処したのもまた『ラーズグリーズ』辺境伯であると。
 盗賊騎士に身を落としても尚、悪政に抵抗するのは、真に復讐心のみなのか。いや、違うとランスロットは思っただろう。
 真の騎士道を掲げるのならば、彼女は。
「……『理解』した」
「損な役回りを望んでやりたいって奴の気はしれねぇが、あんたがそういう奴だってことあは理解したよ」
 剣を収める両者。
 相互理解によってランスロットは確信を持つ。
『ラーズグリーズ』辺境伯は限りなく黒に近いのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

如月・夏目
やあ、こんにちは。
……おっと、別にナンパをしに来たわけじゃないよ。ちょっとね、ここの領主について聞きたいことがあってね。だけど、それには君のお眼鏡にかなう必要がありそうだから、正々堂々お願いしようかと思ってね。

武器は違うけれども、よろしく頼むよ。
バルバードによる【ランスチャージ】の技能で、上手く位置取りしながら向かおうか。

僕は悪を嗅ぎ分けることができるんだ。でも、それだけで判断したくはない。臭いは感じ取れても、その奥にある事情や背景までは分からないもんだからね。
だからこそ、直接知っておきたいんだ――どんな経緯で、どんな覚悟で君が領主に立ち向かっているのかをさ。



「千客万来だな。一体これはどうしたことだ?」
 辺境の地、さらにその片隅にて居を構える盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、次から次に現れる猟兵たちに困惑の感情を浮かべていた。
 己の討伐を命ぜられた……というわけではないことは先んじて剣を交えた者たちから理解している。
 眼の前の蒼い半身鎧を纏う如月・夏目(デモノイドヒューマンの武装警官・f44353)のなんとも気安い雰囲気からしても、そうであることは確信できるものであった。
「やあ、こんにちは……おっと、別にナンパをしに来たわ訳じゃないよ」
「それは見れば分かるが、それと見紛うような態度であるという意識があんたにはあるんだな」
「手厳しい。いや何、ちょっとね」
 それは職務質問をするような雰囲気であった。
 事実、夏目は嘗ては警官として職務に就く者であった。その癖、というものがでたのかもしれなかった。

「ここの領主について聞きたいことがあってね。だけど、それには君のお眼鏡にかなう必要がありそうだから……」
 構えるのは長柄の得物。
 俗に言う戦斧。ハルバードである。
 まさか得物が異なるがゆえに断られるであろうと夏目は思わなかった。
 彼女の佇まいは、盗賊騎士と呼ばれていても、そうした些事に目くじらを立てるようなものではなかった。
 戦場のあらゆる場面において、言い訳不要というような強者の雰囲気が佇まいから放たれているようだった。
「正々堂々お願いしようかと思ってね」
「言葉は不要。互いの得物が違えど、語るべきは刃と刃の音にて聞こえてくるだろう。騎士道の一端を理解するのなら、あんたもわかるだろ?」
「そういうことだ。よろしく頼むよ」

 夏目が一歩踏み込む。
 その仕草と共に手にしたハルバードの刃が宙に弧を描く。
 刃の軌跡はまるで半月のようだった。
 美しいとも言える刃の軌跡が『ブリュンヒルド』へと迫る。長柄の長所は言うまでもなく、そのリーチである。
 剣を持つ『ブリュンヒルド』が如何に疾かろうが、長柄による踏み込みを潰す斬撃の一撃は彼女の頭上より降り注ぐ。
 だが、その一撃は彼女を捉えることはなかった。
 横か、それとも後ろに飛び退ったか。
 夏目は瞳を見開く。
 横でも後ろでもない。
 彼女は前進してきている。
 放たれたハルバードの一撃で粉塵舞う中、『ブリュンヒルド』の剣が翻り、夏目は柄でどうにか受け止める。

「一撃で決まると思ったが」
「いやはや、なんとも」
 柄で剣を押し返しながら夏目は石突でもって『ブリュンヒルド』へと突きを繰り出す。
 その一撃を剣の腹で受け止めながら、彼女との距離が離れる。
 この距離は夏目の距離だ。
 振るうハルバードの斬撃が如何に疾かろうが『ブリュンヒルド』を寄せ付けない。距離を詰められば負けると理解していた。
 夏目は思う。
 眼の前の盗賊騎士は、名の通りのものではない。
 盗賊騎士に身をやつしながらも、確かに反骨精神をもって悪逆に抗おうという匂いがする。
 そう、夏目は悪を匂いで嗅ぎ分ける。
 だが、それだけで判断したくはない。
 悪には悪の事情がある。そこに堕した理由が。
 匂いではわからないものが、そこにあるのならば。
「それを知りたいと思うんだ」
 強い反骨は、復讐だけではない。
 嘗て、彼女の父が成そうとした何かを引き継ぐ者であることを夏目は彼女に見ただあろう。
 命をかける覚悟。
 その強烈な意志が夏目は受け止める剣から伝わるのを感じただろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「剣に写る姿が己の心…ってやつか。」
まあ趣味じゃないが、理解はできる。
理解できるが、不器用だとも思うがな…。


【行動】

判定:POW
さて、一服したし。
一手お相手願うぞ。

オレも真実ってのは知りたいものさ。
『ラーズグリーズ』辺境伯…あんたの知ってることを教えてほしい。
オレ達の正義のためにもな(苦笑)
百里神剣に『覇気』と『勇気』を込めて切り結ぶぜ。
時に『怪力』で押し込み、時に『受け流し』剣戟を通じて誠意を見せるぜ。
噂の真偽にかかわらず百獣族の軍勢が迫ってるの変わりねぇ。
変わるのは…この地と民衆の未来だな。一手間違うと守ってはいけないものを守って民衆が苦しむ…
さすがにそれは後味が悪すぎるさ。



「剣に映る姿が己の心……って奴か」
 趣味ではない、と黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は思っただろう。
 だが、同時に理解はできるとも思ったのだ。
 言葉は偽ることができる。
 人間とは理性を持つ生き物である。
 理性は時に本能を律するものであるが、心まで偽るものでもあるのだ。
 故にむき身の剣による剣戟の音は、偽ることはできぬ。
 眼の前の盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、あまりにも不器用な女だと名捨は思った。

「オレも真実ってのは知りたいものさ」
「誰だってそれが尊いものだと知っているからな。現実の多くが揺らぐものだ。視点を変えれば、偽りにもなることばかりで、真が何処にあるのかと思い悩むもんだ」
「だから一手お相手願おうってわけよ」
「ならば、此処からは言葉は不要だ」
 そうだろう、と『ブリュンヒルド』は剣を向ける。
 彼女の知る真実というものを求める者たちがいる。言葉で説明するのは簡単なことだ。
 だが、その言葉が真であるのかを証明する手立てはどこにもない。
 彼女が偽りを猟兵たちに語る可能性だってあるのだ。

 彼女がそれを望まないのだとしても、その可能性は払拭できない。
 だからこそ、言葉ではない手段で互いの信を得なければならないのだ。
「だよな。行くぜ」
 手にした百里神剣に覇気を籠め、勇気を持って名捨は踏み込む。
 剣戟の音が響き渡る。
 膂力は名捨が上であった。
 だが、怪力をもってしても盗賊騎士たる『ブリュンヒルド』を押し込むことができない。その速度が膂力を底上げしているのだ。
 ならば、と名捨は受け流し、技巧を持って『ブリュンヒルド』と打ち合う。
 互角。
 己にできることは多くはない。

 戦うことと、誠意を見せること。
 即ち、名捨は己が剣戟にこの地に訪れた真意を込める。
「……己が欲望のため、というわけじゃあなさそうだな」
「ああ。俺達が確かめたいと思っている真偽の程なんていうのは、本来ならばどうでもいいことだ。俺達が守らねばならないことは」
 迫る百獣族たちの襲来である。
 彼等もまた正々堂々を望む騎士道を持つ者たちである。
 だが、戦いとは常に弱者が虐げられるものである。
「一手間違うと守ってはいけないものを守って民衆が苦しむ」
 己が籠めたのは、誠意に基づく信念であった。

 誰かが傷つくのは見たくはない。
 後味が悪い想いはしたくない。
 誰かに同じように思ってほしくない。故に名捨は、己が剣に信を乗せる。
『ブリュンヒルド』が、真に騎士道に殉じる者であるというのならば、受け継いできたものがあるというのならば、彼女の剣の重さが証明になる。
「……そうかい」
 名捨は剣戟の後に息を吐き出す。
『ブリュンヒルド』の剣は語る。
『ラーズグリーズ』辺境伯の悪評は真であると。
 眼の前の盗賊騎士が抗う理由こそが、その悪評を真実であると名捨は確信を得るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
まあ、権力ってのは厄介な物だ。これさえあればどんな悪徳も許される。アタシの故郷もそんな感じだった。タチが悪いのは普通に人間が過去の先祖の罪をそのまま背負ってる、てとこだ。厄介だねえ。

ブリュンヒルドは気持ちのいい奴だ。周りの意見に流されず、自分の信念に従う強さがある。後押しするよ。

まあ、アタシは剣じゃなくて槍だし、竜騎士だが。ランスを変化させて竜をだし、こういうタイプの騎士だと示した上で槍を構える。さあ、かかっておいで。アンタの信念、示してみなよ。

ブリュンヒルドの剣を受け止め、逸らした上で問いかける。なるほど、力強くて重い。攻撃に重点おいたタイプか。アンタの意志の強さ、受け取った。協力するよ。



 人というものは業の深き生き物である。
 豊かさを求めれば、金に行き着く。
 金を求めれば、権力に行き着く。
 そうして際限のない欲望の果てにあるのは、いつだって悪逆無道である。どんなに志高く嘗てあるのだとしても、金と権力は、志を、初志を貶めるものである。
 だが、それがなくば邁進することもできなかったのも事実であろう。
「厄介なものだ」
 真宮・響(赫灼の炎・f00434)は息を吐き出す。
 権力。
 それは誰もが求めるものである。

 初心に求めるものでなかったのだとしても、いつのまにか影のように張り付く。
 目的と手段が入れ替わっても、それを自覚することもできなくなるほどに目をくらませるものでもある。
 人は知るだろう。
 大きな力とは膂力だけではないのだと。
 権力に人はひれ伏す。
 時に善徳さえも悪徳が凌駕する。
「アタシの故郷もそんな感じだった」
「だったらどうするよ」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』は息を吐き出して、剣を鞘から抜いたままだった。
 猟兵たちと剣で語り合うがゆえである。
 肌には汗が浮いている。

 休憩をいれるか、とは野暮であった。
 彼女の佇まいを見れば響は即座に理解する。盗賊騎士である彼女が悪徳に抗う者であるということを。
 そう、彼女は語るべくもなく真の騎士道を貫くものである。
「アンタは気持ちのいい奴だ。だから、かかっておいで。アンタの信念、示してみなよ」
 響は槍を構える。
 言葉はいらない。
『ブリュンヒルド』を響は一目で気に入っていた。
 それは対する彼女も同様だっただろう。
 刃を交えるまでもない。
 だが、それではダメなのだということも互いに理解していた。
 言葉でわかり合うことができるのが人間であるが、しかし、刃で互いの信条をぶつけ合うのもまた騎士である。
 
 であるのならば、響く剣戟に己が思いを乗せる。
 示す。
 そうでなければならないという意志が互いの口唇を釣り上げさせる。
 速い、と響は思っただろう。
 疾さが重さを伴っている。剣戟を受け止める穂先が火花を散らし、彼女の視界を覆う。
 何者にも慮ることのない鋼鉄の意志。
 周りの意見に流されず、自身の信念に従うだけの強さが裏付けられている。
 響は思う。
 この強さを、この意志を後押ししたいと。
 そのために自分は此処に来たのだと真に思うのだ。

「……アンタの意思の強さ、受け取った」
「あんたは、一本気の通った女傑だ。女にしておくにはおもったいないとは言わないが」
 彼女は笑っていた。
 剣を収め、響に手を伸ばす。
 それは握手を求める手だった。
 響もまた笑うだろう。
「協力するよ。あの辺境伯は、アンタとは真逆なのだろう。アンタが抗うってことは、そういうことだ。悪評を信じるんじゃあない。アンタをアタシは信じるよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
なるほど、これはまた独特な世界のようですね。
まだここの習慣も分かってはいませんが、噂が本当なら許してはおけない事です。
私も剣によって生きてきた身です、その真偽は剣で聞けと仰るなら受けて立ちましょう。
元よりそれ以外の事も知りませんしね。
私の剣は生きるために身に付けたもの。
基礎以上を教えられる人は身の回りにいませんでした。
後は戦いながら敵の真似をし、味方の真似をし……そんな風に身に付けた技が騎士と呼ばれる方のお気に召すかどうかは分かりません。
人となりを見ると言うなら、勝てば良いと言うものでもないでしょう。
ですがこれが私の剣です。
言葉はいらないでしょう。
全力で教えて差し上げます、私と言う人間を!



 バハムートキャバリア。
 それは人類が鋼鉄の咎を抱く世界である。
 嘗て在りし聖なる決闘。
 人間は、その王を頂くための戦いに参加することすらできなかった。
 妖精族の助力によって戦いに参加するだけの力を得て、彼等が行ったのは己達以外の虐殺である。
 百獣族は女子供に至るまで滅ぼし尽くされた。
 その咎が今のバハムートキャバリアの騎士道を形作っているというのならば、皮肉そのものであった。
 咎を持って初めて人は正道を歩むことができるという証明でもあったのだ。
「なるほど、これはまた独自な世界のようですね」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は、なんとも言えない気分になったことだろう。
 
 この世界の人々は己が先祖が犯した罪を深く後悔している。
 懺悔によって騎士道というもので己を律して、正しき生き方をしようとしている。
 だが、この辺境の地を治める『ラーズグリーズ』辺境伯は、長年にわたり、多くの幼き子らを神への供物として生贄に捧げているのだという。
 それは騎士道に悖る悪逆である。
「噂が本当なら、赦してはおけないことです」
 ハロは己もまた剣にて生きてきた身である。
 悪評が果たして風評であるのか、はたまた事実であるのかを知るためには盗賊騎士『ブリュンヒルド』に問いかけるしかない。

「その真偽を語る言葉は、偽りに堕すことだってある。だから」
「ええ、ですから」
 二人の眼が交錯する。
 そう、最早言葉はいらない。
 抜き払った剣の刀身にハロの姿が映る。
 もとより、ハロはそれ以外を知らぬ。
 己が剣は生きるために身につけたものだ。
 基礎、というのならば確かに誰かに教わることもあっただろう。だが、基礎を修めた身で生きていけるほど、彼女の世界は生易しくはなかったのだ。

 交錯する剣閃。
 剣が火花を散らし、明滅する。
 互いの斬撃が弾かれ、開かれた体躯を互いに見やる。
 即座に振り抜かれる『ブリュンヒルド』の斬撃は鋭いものだった。疾い。そして、その疾さでもってハロを追い詰めるものであった。
 だが、ハロはその一撃を剣の柄で受け止める。
 妙技と言うほかない。
 戦場にあって、剣の軌跡は不規則。
 故にハロは己が身を守るために、生き抜く力を得るために見様見真似を繰り返してきた。
 敵であろうと味方であろうと関係なかった。
 己が吸収できるものは全て吸収してきた。
 それが盗賊騎士である『ブリュンヒルド』が気に入るかどうかなど思いもしなかった。

 己が剣に宿るのは己自身である。
「……これが私という人間です」
「不器用だな。だが、嫌いじゃあないぜ。そういうやつは。愚直だと笑う者もいるかもしれないが、少なくとも私はあんたを笑いはしない」
 互いに距離を離す。
 間合いの外。
 しかし、思いの外互いの顔が見える。
「あんたは、強く靭やかだ。そういうあんたを私は信じる。だから」
「ええ、私もあなたという人間を信じます。あなたが抗うのならば」
 それが『ラーズグリーズ』辺境伯の真なのだろう。
 故にハロは剣を収め、制帽の位置を直し、頷くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トラスト・レッドライダー
手段としてではなく、対話か…良し、分かった。
応えよう、騎士『ブリュンヒルド』
俺の剣を貴女がどう捉えるか、そして、俺は貴女の剣から、何を見る事ができるのか、確かめよう……!!

|片手半剣《アンガーブレード》を【怪力】と【戦闘知識】で操り、彼女と手合わせする。範囲、威力、小回りも効く。両手でも片手でも振るえる剣は中途半端とも言われるが、選び取れる択も多い。
【早業】で相手にも己にも、選択を迫る。そうして彼女の剣を【見切り】、その理想を見極める。

唯勝つだけで得られるものに、俺が求めたものはない。
誰かの為に、狂気と戦乱を齎す存在を打ち払う。
俺はそういう剣が振るいたい。彼女は、なんの為に剣を振るっている?



 互いに語るべき言葉は真偽を見定めねばならない。
 例え、その言葉に嘘偽りの一片もないのだとしても、人はまず疑わなければならない。
 真実を語る言葉事態が過ちにまみれていたのならば、真もまた偽りに堕落するものであるからだ。
 故に盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、剣でもって語る。
 多くの猟兵達と語る剣戟の音をトラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)は聞いただろう。
 それは手段であった。
 だが、剣戟の音を聞いてトラストは考えを改める。
 これは手段ではない。
 対話だ。
 剣と言葉。
 用いるものが異なるだけのことだ。
 ならば、とトラストは頷く。

「応えよう、騎士『ブリュンヒルド』」
「次はあんたか」
「俺の剣が貴女をどう捉えるのか、そして、俺は貴女の剣から、何を見ることができるのか、確かめよう……!!」
 互いに踏み出す。
 合図などいらない。
 互いにあるのは、互いの剣の軌跡が描く先行きを見定める視線のみ。

 振るわれた赤い斬撃の軌跡。
 完全に捉えたと思った一撃は、しかし『閃光』の如き疾さでもって踏み込んできた『ブリュンヒルド』の剣によって威力をげんぜられ、弾かれる。
 疾い。
 トラストは自身が自覚する以上に『ブリュンヒルド』の技量が優れたるものであることを知る。
 小回りがきく己が片手半剣を上回る剣速。
 押し込まれる斬撃にトラストは、強固な意思を見ただろう。

 必ず果たさねばならぬという意思。
 それは仇を討たねばならぬという意思。されど、それを凌駕するのは『ラーズグリーズ』辺境伯の悪逆を許さぬという意思。
 それをトラストは剣に感じ取る。
 そして、同時に『ブリュンヒルド』も理解しただろう。

 トラストの斬撃は己を打ち倒すためだけのものではないことを。
 そう、ただ勝つだけで得られるものをトラストは求めていない。
 何故勝つのか。
 何故戦うのか。
 その理由がトラストの斬撃には籠められている。
 彼が求めるのは、誰かのために、狂気と戦乱をもたらす存在を打ち払う力のみ。
「俺は」
「あんたは」
 互いに視線と身が交錯する。
 振り返った互いの視線は、もはや言葉以上に理解するところであった。
「そういう剣が振るいたいと思っている。貴女も」
 そうなのだろ、というトラストの言葉に『ブリュンヒルド』は笑う。
「あけすけすぎだろ。だが、言葉以上にあんたの剣が誰かに伝われば、あんたも苦労することもないだろうにな」
「……それは、そうかもしれないな」
 トラストは確信するだろう。
 かような盗賊騎士『ブリュンヒルド』が抗おうとしている『ラーズグリーズ』辺境伯は、紛れもなく悪逆に堕した存在なのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
(彼女を見て、既視感を覚えるかもしれないわね)
(別人とわかっている)
(けれど、私が彼女を信じる理由はそれで十分)

礼儀を重んじて、名乗りましょう
私は薄翅・静漓
戦いの予兆を知り、ここへ来たわ

知っているわ
戦いを通してこそ、わかる事があること
手合わせして貰えるかしら
私が積み重ねてきたものを、この『水精の剣』で示すわ

人の心が善と悪に揺れるのならば
悪逆と呼ばれる者にも善はあるのかしら
私は知りたい
教えて『ブリュンヒルド』
あなたが知っていることを



 理解している。
 他人の空似であるということは。
 けれど、盗賊騎士『ブリュンヒルド』を見て、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は既視感を覚えていた。
 僅かに違う点は多くある。
 まずは年齢。
 彼女を見てたぶったのは、弱い十を数える幼い少女だ。
 そして佇まいも僅かに違うように思える。
 静漓の知る少女が『しあわせなゆめ』を見るのならば、眼の前の『ブリュンヒルド』は今まさに厳しい現実の中、その嵐の中にいるようなものだった。

 彼女はこの辺境の地にてはびこる悪評を証明する者である。
 だが、その悪評が偽りかもしれない可能性はいくらでもある。領主を貶めるために誰かが流した噂ではない、とは言い切れない。
 なにせ、猟兵たちはこの世界の外からやってきたのだ。
 真を知るには、己が目と耳とだけが頼りであった。
 けれど、盗賊騎士『ブリュンヒルド』が、その悪評こそが真であるというのならば、静漓はそれを信じる。
 彼女を信じる理由は、彼女が感じた既視感だけだ。 
 だが、それで充分だった。
「私は、薄翅・静漓。戦いの予兆を知り、ここへ来たわ」
「『家名なし』の『ブリュンヒルド』だ。おかげさまで千客万来ってやつだ。悪いが、私にできるのは」
 これだけだ、と彼女は剣を構えている。

「知っているわ。戦いを通してこそ、わかることがあること」
 手合わせを、というまでもなかった。
 静漓が手にした『水精の剣』。
 その刀身に『ブリュンヒルド』の姿が映し出される。
 重なるはずのない面影が、そこに重なっていた。
 きらめく刀身の刹那に互いは肉薄していた。
 互いに、互いの踏み込みの疾さに目を見張る。挙動の初動。
 それが互いに同時であったがゆえに、疾さが拮抗しているのだ。振るう剣。その一撃が刀身に激突して剣戟の音を響かせる。
 弾かれるのは静漓の体だった。

 羽衣人であるが故の弊害であると言えるだろう。
 重さがない。
 だからこそ、『ブリュンヒルド』の一撃に体が吹き飛ばされるのだ。
 揺れる。
 重さがないからこそ揺れる。
 ゆらゆらと、定まることなく揺れ動き続ける。
 それは人の心を示すものでもあったことだろう。
 人は心に悪性と善性を持つ。
 天秤のように揺れるからこそ、人は良心を獲得せしめるのだ。

 静漓は思う。
 悪逆と呼ばれる者にも善性は宿るのかと。
 真の邪悪とは、一片の善性も宿さぬというのだろうかと。
 振るわれる剣を受け止めて、静漓は重なる『ブリュンヒルド』の表情を見やる。
「私は知りたい」
 その一心だった。
「悪逆に宿るのは悪性と善性だ。人の性だ。人の本質に横たわる凶暴な衝動。箍が外れてしまっているのさ」
 あの領主は、と『ブリュンヒルド』は応える。
「そう」
 なら、と静漓は剣を収める。
 伝わった言葉がある。
 それだけで充分だった。
 人は悪性と善性との根底に他者を排斥せねばという凶暴な衝動を持つ。故に、『ラーズグリーズ』辺境伯は悪評そのままに、真なる邪悪なのだと静漓は剣戟の中に見出すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
|エイル様《主人様》の!!
香りがしまぁぁぁすっ!!
はい、メイドin新しい世界!
それにしてもラーズグリーズ辺境伯のご息女ですか
……ヌル様?まさか彼女もクロキャ以外の世界から?
そうなるとサツキ様の出自がえらいことになりそうですが……うーむ

ともあれまずはブリュンヒルド様にお会いしなくては
……アイン様?ちがう?
しかし何かしら閃光っぽい感じがしますね警戒していきましょう
さてお話を伺いするには武勇を示す必要があるとのこと
銃撃は卑怯とされるこの地
ですが銃の使い方はそれだけではありません
銃撃を除いた【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けるとしましょう
お付き合い頂けますか?
何よりも戦いに意味を求めるであろう御方?



「|『エイル』様《主人様》の!! 香りがしまぁぁぁすっ!!」
「うお」
 びく、と盗賊騎士『ブリュンヒルド』は肩を振るわせた。
 大抵のことでは驚くことのない胆力を持つ『ブリュンヒルド』であったが、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の雄叫びには体が少し跳ねていた。
 それほどまでに凄まじい叫びだったのだ。
「はい、メイドin新しい世界!」
 だが、そんな彼女の戸惑いを他所にステラは一人納得していた。
 クロムキャバリアと同じくキャバリアの名を持つ世界、バハムートキャバリア。
 鋼鉄の咎を人類が抱く世界である。
 新たなる世界にあって、彼女が真っ先に感じ取ったのは、彼女が主と頂く者の香りであった。
 本当にそんな香りがするのか。
 それはステラのみが知るところである。

「それにしても『ラーズグリーズ』辺境伯とは」
 その息女。
 神隠しにあったという少女。
 その名にステラは僅かに違和感を覚える。いや、取っ掛かりがある、と言ってもいいかもしれない。
 クロムキャバリアの小国家『グリプ5』に生きる『ラーズグリーズ計画』の一翼にして、『憂国学徒兵』……『ハイランダー・ナイン』の一人。
 それが『ヌル・ラーズグリーズ』である。
 奇しくもキャバリアの名を持つ世界同士。
「……まさか彼女も?」
 そうなると、とステラは一人でぶつくさ考察を深めていく。

「で、あんたもなのか?」
「そうなると『サツキ』様の出自がえらいことに……いえ、であるからこそ、潔斎行路、と……?」
 うーむ、と唸るステラに『ブリュンヒルド』は溜息を吐き出す。
「何をブツブツと」
「あ、いえ……ん?『アイン』様? 違う?」
「『ブリュンヒルド』だ。『家名なし』の、な。で、アンタもなんだろう? なら、これ以上の言葉はいらないよな!」
 踏み込まれた、とステラが思った瞬間には剣が振るわれていた。
 刹那、ステラは己が二丁拳銃を携え、交錯させて剣を受け止めていた。
「まさしく『閃光』の如き太刀筋でございますね」
「そういうアンタは、そんな小さな得物でよくもまあ」
 そんな芸当ができるものだと、『ブリュンヒルド』が笑う。

「なんら問題なく。ええ、メイドでございますから」
「よくわからんことを。だが」
「ええ、お付き合い頂きましょう。何よりも戦いに意味を求めるであろう御方?」
 ステラと『ブリュンヒルド』の剣戟が響く。
 それは輪舞曲のように響き渡り、互いの動きがまるで舞いを披露するかのようであった。
 それほどまでに二人の技量は高いものであったことだろう。
 ひらりと躱すメイド。
 銃身を押し込む騎士。
 身分は違えど、されど二人の輪舞曲は互いの技量において信を置くことのできるものであっただろう。

 そこに言葉はいらない。
 あるのは互いが互いを信じるという一点のみだったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシータ・フィラ
さて、わたくしの初陣
騎士道とは良い世界ですわ
わたくしが参戦するにふさわしいと言えましょう
ええ、わたくしの『推し道』も負けておりませんが!!
今宵の推しはブリュンヒルド様ですか!?
いえ、ひとめぼれするような簡単な女だとは思わないでくださいまし!!
その実力、わたくしが測って差し上げますわ!!

ですが、わたくしの主武装アームドフォートなのですよねえ
この地ではあまり良くないイメージの様子
それではまず【マイペット・ドラゴン】にて
アームドフォートをカリーノに変えまして
傍に控えさせておきましょう
これでこちらの武装はナイフがふたつ
まさか二刀流を卑怯とはおっしゃいませんよね?
『戦闘』のスイッチをいれつつ
いざ尋常に!



 ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)にとって、これが猟兵としての初陣であった。
 騎士道を掲げる世界。
 誰もが鋼鉄の咎を持ち、祖先の犯した大罪を思う。
 贖罪すら許されぬのは、百獣族を悉く滅ぼしたからである
 後悔すれど、その贖罪すべき者がすでに世になく。
 懺悔のみを寄す処に人類は騎士道を持って清廉潔白なる生き方をなさんとする。

 だが、人は、その根底にどうしようもない凶暴性を持つ。
 故に騎士道に悖る生き方もまた存在しているのだ。
 それがこの『ラーズグリーズ』辺境伯が収める辺境の地にあるというのならば。
「わたくしが参戦するに相応しいということ! ええ、わたくしの『推し道』も負けておりません!!」
 叫ぶファルシータに盗賊騎士『ブリュンヒルド』は耳を指で塞いでいた。
 さっきのメイドと言い、なんだんだと言わんばかりである。
「今宵の推し、『ブリュンヒルド』様でですか!?」
「そうだがよ、なんだよ、あんたは」
「わたくしはファルシータ・フィラ! ひとめぼれするような簡単な女だと思わないでくださいまし!!」
「言ってねぇよ」
「塩対応も営業のうちでございますものね! その実力、わたくしが測って差し上げますわ!」
「聞けよ。ああいや……そうだよな。私としたことが、ついあんたのペースに飲まれるところだった」
『ブリュンヒルド』は苦笑いするしかなかった。
 ファルシータの勢いに飲まれていた、というのならば、すでに戦いの決着はついていると言ってもいいだろう。
 
 だが、ファルシータは、そういう事柄に頓着していなかった。
「二刀流で構わいませんこと? まさか得物が二つあっては卑怯とはおっしゃいませんよね?」
「そりゃあな。信条が異なれば、得物も違うってものだろう。後は」
「ええ、刃にて語るといたしましょう!」
 ファルシータにとっては、手にした二つのナイフは主武装ではなかった。
 が、この地ではあまり良くないイメージだと思ったのだ。
 だからこそ、彼女は手にしたナイフを構えた。
「いざ尋常に!」
 呼気が漏れた瞬間、互いが交錯する。
 いや、スイッチが入った、とも言えるだろう。

 言葉はなく、あるのは呼気の漏れる音と剣戟のみ。
 圧倒的な速度でもって振るわれる二刀流のナイフを剣一本で『ブリュンヒルド』はいなしている。
 凄まじい技量である。
 これを捌くことができるのかと思わせるほどの速度で振るわれる剣にファルシータは舌を巻く。
 そして、理解するだろう。
 眼の前の盗賊騎士は、悪に抗する者であると。
 彼女が掲げるのは騎士道。
 復讐に燃えながらも、しかし、その復讐よりも優先されるべきものがあると言うようなまっすぐで疾い剣閃にファルシータは理解を深める。
「真の騎士はあなたでしたのね、『ブリュンヒルド』様。ならば、此度の推しはあなた様に決まりですわ!」
「何の話だよ!?」
 理解すれど理解できぬ根底があると言うように『ブリュンヒルド』はファルシータの言葉に困惑するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

やあやあ我こそは!って名乗りを上げるんだっけ?
それとも人質にして身代金をやりとりする感じ?

なるほど…御託は無用ってわけだね!わっかりやすい!

●ボクは伝説の
UC『神知』を使ってるときのボクは伝説の『双剣使い』!
ごそごそっと曰くありげな双剣を[影]から取り出しいざ勝負!
騎士道かー
ボクには馴染みのないスタイルだけどこうやって遣り取りするのも悪くは無いね!

悪徳領主かー
なんだかおかしな話だね
急にキャラ変が激しすぎっていうかー
まあ前はどんなだったのか、今はどんななのか
それを嘘偽りないその技の冴えで教えてもらうとするよ!



「やあやあ我こそは!」
 ってやつだっけ? とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は名乗りを上げようとして首を傾げていた。
 騎士道。
 それは互いに正々堂々たる一騎打ちこそが華であり、栄誉である。
 故にこの世界、バハムートキャバリアでは最も尊ばれるべきものなのだ。
 だが、人はそれだけで生きていけるものではない。
 そうでなければ、盗賊騎士などという存在があるわけもないのだ。
「それとも人質にして身代金をやり取りする感じ?」
「まあ、そういうこともあるわな」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』はもうどんな者が己を訪れても気にすることはなかった。

 彼女がこの辺境の片隅に居を構えてからというもの、ここまで人が多く訪れたことは稀であった。
 故に彼女はどんな存在が来ても驚くことはもうないだろうなと思っていたのだ。
「だがまあ、御託は無用だ。言葉は偽ることができる。が、剣は嘘をつけない。であれば」
「わっかりやすい!」
 そう、力。
 力を持って互いを知る。
 この上ないシンプルさである。
 ロニは、いたく感激したようであったし、同時にユーベルコードに瞳をかが屋kせた。
「ボクは伝説の『双剣使い』!」
 ロニは影から双剣を取り出して構えた。
 曰く有りげな……本当に曰くがあるのかどうかは定かではないが、それっぽい双剣を構えてロニは笑む。
「さあ、いざ勝負と行こうか!」

 その言葉と共に『ブリュンヒルド』は一気に踏み込む。
 手にした剣の斬撃は、多くの猟兵と語り合うように剣戟の音を響かせて尚、その鋭さの精彩を欠くことはなかった。
 きらめく軌跡は、それだけでロニを圧倒するようだった。
 ロニはしかし、逆に馴染みないやり取りに、少したたらを踏むようであった。
「これが騎士道かー」
 ロニにとっては、あまりにも馴染みのないスタイルである。
 けれど、悪くはないように思えた。

 この地を収める悪徳領主。
 それは風評に寄るところしかロニは知らない。けれど、それが嘘か真かを知るすべもない。いや、あるっちゃある。あるけど、それをしては話が進まないし、まるっと全部解決してしまうものでもある。
 人は清廉に生きることを愛する。
 だが、時にそれは反転するのだ。
 手のひらを返すように、美徳は悪徳へと堕落する。
 手にしたものの大きさ、喪ったものの大きさ。
 そうしたものが、人を狂わせるというのならば、この辺境を治める『ラーズグリーズ』辺境伯の豹変もまた真であったことだろう。

 迫る剣の閃きは偽りなどない。
 技の冴えは、その全てが事実であることを知らしめるようだった。
「なるほどねー」
 ロニは双剣をぽいっと影の中に放り投げて空手を上げる。
「うんうん。わかったよ。急にキャラ変しすぎって感じかー」
「きゃら、なに?」
「豹変しちゃったって意味。でもまあ、それが事実なら」
 やるべきことは一つ。
 ロニはやっぱり単純でいいや、と笑うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
正義も悪も、結局の所相対的なもの
誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪にもなれる
そうして惑った時にどうするか…そう、自分の好きに動くのみ
俗世の評価なんて、誰かに言わせておけばいい!
私が!正義だ!
という訳で勝負!
やり合う理由?えーっと多分|剣を交える事で真実が見えてくるそんな綺麗《やりたいからやるだけ》な感じの理由でよろ!

それじゃ、UCを使わず斬り結ぼうか
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀…と同時に「居合」!
抜刀の勢いを乗せた「なぎ払い」で先ずは牽制
突きで「串刺し」を狙いつつ剣戟を連続して繰り出し攻撃していこう

お互い、こんな所で死ぬつもりはないよね
なら全力でやり合わなきゃ!



 善悪を隔てるものは一体なにか。
 人という存在の中に悪性と善性とが内在するのならば、生み出されるのは良心。
 されど、それは善悪の彼岸より見やるからこそ理解できるものであった。
 明確なる線引。
 それはきっと誰しもの中にあるのだろうが、しかし、誰とも共有できぬものでもあった。
「ま、結局のところ相対的なものだからね。誰かにとっての正義は、誰かにとっての悪にもなれる」
 何処まで言っても人間は個なのだ。
 故に、己が思う全うは他者にとって道外れし道であるようにも映るだろう。
 相互理解など程遠い。
 されど、理解を拒むものではない。

 理解して尚、理解しきれぬものが其処にあるというからこそ、人の心には善悪を隔てる明確なものを持ち得るのだ。
 刃と刃が激突して火花が散る。
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は己が手にした二振りの模造神器の刀身をして押し切らんとするような痛烈な一撃を受け止める。
 その一撃の主である盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、その言葉に答えない。
 代わりに彼女は己が剣でもって語る。
 惑うのが人だ。
 星さえも惑う。
 一定の軌跡を描くように見えて尚、光放ち変わらぬ不滅のように思えるものでさえ、すでに輝きを喪った過去よりの光の明滅を示すように。

 ゆらぎ、惑う。
 なら、どうするのか。
 玲はこういう時、好きに動くことに決めている。
 他者の、俗世の評価なんて誰かに言わせていれば良い。それこそ、のちの歴史家にでも語らせれば良いことだ。
 今、自分たちが語らねばならないことは唯一つ。
 そう。
「私が!正義だ!」
 やりたいことだけやる。
 やりたいからやるだけ。
 ただ、それだけなのだ。
 剣を交えることで真実が見えてくるなんて、そんなお綺麗なやり取りが成立するのならば、世界はこんなにも簡単なものなのだろう。

 だが、そうは行かないのが現実なのだ。
 突き出す剣の切っ先を盗賊騎士『ブリュンヒルド』は剣の腹で受け流し、迫るもう一刀を躱す。
 互いの剣の軌跡はすでに見切られていた。
 既の所で切っ先がかすめていく。
「お互い、こんな所で死ぬつもりはないよね」
「ああ。私は復讐を……あんたは、本当にやりたいようにやるだけだしな」
「なら、全力でやり合わなきゃ!」
 振るわれる剣戟の最中に玲は、眼の前の盗賊騎士が真であることを知るだろう。
 彼女が抗するのは悪逆。
 であるのならば、逆説的に『ラーズグリーズ』辺境伯の所業は、その立ち上る風評が真であることを裏付けている。
 でもまあ、と玲はちょっと楽しくなってきていた。

 やりたいようにやる。
 それを咎めることなく受け入れて剣戟を響かせる『ブリュンヒルド』の太刀筋。
 その煌めきこそが、今彼女にとって必要な真なのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザビーネ・ハインケル
●SPD

よぉ、ご同輩
何でもデケぇヤマがあるだなんてな?
オレにも一枚噛ませてくれよ

…なんつってハイそうですかと承諾する奴が居れば盗賊騎士失格だがな
生憎オレは名声よりも悪名の方は高いんで、名乗ればまず素性は分かるだろう
だが、火事場泥棒されちゃ元も子もねぇよな?
お互いに盗賊騎士やってれば、相手の本心を伺う腹の探りあいってのがあるが、今は時間がないんでね
予知通りなら間もなく『奴ら』がやってくる
そうなる前にカタをつけるとなりゃ…腕で示すしかねぇわな

繰り出される剣をひょいひょい躱しながら、隙あれば杖槍の穂先を外套でも引っ掛けた【ぶんどりアタック】でホイッとな
ま下手な動きをしたら遠慮なく斬っても構わねぇぜ?



「よぉ、ご同輩」
「あ?」
 気安い雰囲気の言葉に盗賊騎士『ブリュンヒルド』は首を傾げた。
 同輩、と呼ぶからには眼の前のザビーネ・ハインケル(Knights of the Road・f44761)もまた盗賊騎士と呼ばれる種類の人間であったことだろう。
 だが、彼女の容姿を見やり即座に『ブリュンヒルド』は目を見開いた。
「あんた……」
「ああ、言わずとしれた『忌み子』ってやつさ。なに、それは今関係ねぇ話さ。なんでもデケぇヤマがあるんだってな? オレにも一枚噛ませてくれよ」
 その言葉に『ブリュンヒルド』は押し黙る。
 言葉を選ばなければならない。
 眼の前のザビーネが盗賊騎士であるというのならば、なにかに抗う者である。

 だが、己とザビーネは出自が異なる。
 言うまでもなく分類として同じ種類の人間であろうが、しかし、故に互いの腹を探り合うように言葉を紡ぐ。
『ブリュンヒルド』は黙って剣を抜いた。
 その姿にザビーネは笑う。
「ハッ、それでいい。それでこそってやつだ。オレはザビーネ・ハインケル――って言えば通りが良いか?」
「『街道の騎士団』か。火事場泥棒でもやるつもりか?」
「さぁな」
 ザビーネは剣を構えるまでもなかった。
 彼女にとって、それはあまりにも意味のない所作であったからだ。

 踏み込む『ブリュンヒルド』の速度は目を見張るものがあった。ザビーネですら目で追えない。
 が、同じ盗賊騎士ながら『ブリュンヒルド』の剣は清廉潔白過ぎた。
 技量の高さ故におきれいなのだ。
 剣の軌跡を読むことなど、目で追えぬのだとしても容易。
「おっと」
 ザビーネは瞬時に己が膝でもって『ブリュンヒルド』の剣の柄を打ち上げる。
 手甲を狙った膝蹴りの一撃に剣が宙を舞う。
 互いに飛ぶ。
 伸ばした手がぶつかり合う。
 剣と剣ではない。
 空中で徒手空拳が交錯し、剣が地面に突き刺さる。その剣を間に挟んでザビーネと『ブリュンヒルド』は相まみえる。

「ハッ、やめだやめだ。千日手じゃあねぇかよ、こんなの」
『ブリュンヒルド』が息を吐き出して両手を上げる。
「だろうな。『奴ら』が来るってのに悠長に構えている暇はねぇ」
「そのとおりだ。だが」
「わあってるって。下手な動きをしたら、遠慮なく斬ってもらって構わねぇぜ?」
 互いに腹芸などお手の物であろう。
 そうでなければ、悪逆なる領主と渡り合うことなどできやしないのだ。
 故に二人は互いが盗賊騎士である所以を持って理解し合う。
「行こうぜ、ご同輩。デケェヤマは、すぐそこだ。とりっぱぐれねぇ……ってのは、アンタには無用かもしれねぇが」
 彼女の目的が自分のそれとは違うことをザビーネは理解し、辺境の地を指差す。
 その先にあるのは、土煙。
 そう、百獣族が辺境の地へと迫っていたのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『獣騎ゴブリン』

POW   :    ゴブリンアックス
【ゴブリンに伝わる呪文】を唱えて投擲した【斧】がレベル×100m半径内で最も【知力】の強い対象を自動追尾・自動攻撃する。
SPD   :    ゴブリントラップ
【獣騎の装甲】を一定量消費し、触れた対象を切断する【超振動ワイヤー】か、触れた攻撃を無効化する【ゴブリン網】を、足元に設置する。
WIZ   :    フライングゴブリン
【ゴブリン族の血】に宿る【先祖の魂】を自身に憑依させ、レベル×5km/hの飛翔能力と【爆発】を放つ能力を得る。

イラスト:kamiya jun

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 土煙と共に現れるのは『獣騎ゴブリン』たちを率いた『獣騎トロウル』であった。 
 体高5m級の鋼鉄の巨人。
 それこそが聖なる決闘に望む百獣族の甲冑とも言うべき威容であった。
 嘗て人類は聖なる決闘に参加する資格を保たざる種族。されど、人造竜騎を得たことにより、人類は大逆をバハムートキャバリアに巻き起こす。
 それが百獣族の虐殺である。
 ただ一人も残さぬ鏖殺。
 人類の非道は此処に証明され、また同時に逃れ得ぬ罪過を背負うことになったのだ。
 故に正当性は百獣族に在り。
 されど、世界を守る猟兵たちは、死者に世界を明け渡すわけには行かぬと立ち塞がらなければならない。
「人の子らよ。我らは汝らが祖先によって滅ぼされし者なり。敗者は勝者に生命を委ねるもの。されど、我が妻、子らをも手に掛ける道理はなし。その恨みこそが今此処に我らを顕現せしめているのだ」
『獣騎ゴブリン』たちは、恨みの正当性を説く。
「だがしかし。この辺境の地においては悪徳なる者在りけりと聞く。であるのならば、我らが望むは、真に悪逆なる者の討滅のみ。それはこの地の領主『ラーズグリーズ』辺境伯……ぬっ!」
 その言葉が終わらぬうちに辺境伯の屋敷より飛来するのは、『ラーズグリーズ』辺境伯に仕える騎士たちが乗り込んだ人造竜騎による砲撃であった。

「……なるほど。従わされる者たちよ。汝らの騎士道は、すでに地に失墜したものである。であるのならば!!」
『獣騎ゴブリン』たちは領内を疾駆する。
 砲撃の最中を行き、必ずや悪逆なる領主『ラーズグリーズ』辺境伯を取り除かねばならぬと、怒りに我を忘れ、その力を周囲に撒き散らすのだった――。
ジークリット・ヴォルフガング
●POW

…始まったか
聞けばこの世界におけるオブリビオンは過去の人類により滅ぼされし|兵《つわもの》と聞く
正当性ある復讐と言えばそうなのだろうが…その怨み辛みが子孫ではなく生ける者全てに向けられているのであれば話は別となる

私は|牙なき者の剣《ケルベロス》…
人々が祖先の原罪を悔い改める慎ましい日々を送っているのならば、そちらを護るのが私の騎士としての在り方だ

何、私が居た世界ではあれほどの大きさの敵などよく居たものだ
キャバリアを駆らずとも駆逐してみせよう…ゾディアックサンクチュアリ!
星座の加護による重力にて繰り出された投げ斧を落として見せよう
星剣よ、星辰の重力をもってして蘇りし悪鬼らを断て!



 煙るようにして舞い上がる土は、戦いの気配。
 それは避けようのない戦いであったことだろう。
『獣騎ゴブリン』たちは、体高5m級の鋼鉄の巨人である。辺境の地に住まう人々は、その威容に逃げ惑うしかなかった。
 それは嘗て人造竜騎を得た人類が百獣族の女子供に行った虐殺、鏖殺と同じことであっただろう。

 復讐は正統性を欲している。
 正しいという免罪符の元に人は何処までも愚かになることができる。
 生命に贖うことができるのは生命だけであるが、しかし、生命を奪った所で生命は回帰することはない。
 有史以来、失われた生命が生命によって戻ったことなど一度たりとてないのだ。
 故にジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、辺境の地において、迫る『獣騎ゴブリン』たちの前に立つ。
「……その怨みつらみが子孫ではなく、生ける者全てに向けられていると気が付かないか」
 ジークリットの言葉に『獣騎ゴブリン』たちは怒りに我を忘れて突っ込むようだった。
 領主の屋敷より現れた騎士操る人造竜騎たちの砲撃が荒ぶ最中にあってジークリットはつむられた瞳を見開く。

 その瞳に輝くのはユーベルコード。
「私は|牙無き者の剣《ケルベロス》……人々が祖先の原罪を悔い改める慎ましい日々を送っているのならば、それを守るのが私の騎士としての在り方だ」
「その懺悔が、我が妻と子を取り戻せるのならば許すこともできよう! だが、生命は戻らぬ! それを!!」
 咆哮と共に叩き込まれるは、長柄もつ斧の一閃。
 その一撃をゾディアックソードに宿った星座の重力でもってジークリットは受け止める。
 軋む骨身。 
 されど、ジークリットは一歩も退くことはなかった。
「その恩讐、身を引き裂く怒り、如何なるものかを知るなどとは言わない。だが……! 剣に宿りし守護星座よ、我らに星辰の加護を!」
 重力が『獣騎ゴブリン』たちの足を止める。
 踏み出そうとしても、その一歩が重いのだ。

「何だ、この重力は……!」
「体が思うように動かぬ……!」
「ゾディアックサンクチュアリ……この聖域にあって、お前たちの動きを封じさせて頂く。我が星剣は、悪鬼を断つもの。されど、お前たちの怒りの正統性もまた理解するものである」
「ならば」
「だが、それはお前たちの求めた正しき在り方か。怒りに身を任せ、怨みつらみを晴らすことが、在りし日のお前たちの誇りではあるまい」
 故に、とジークリットは『獣騎ゴブリン』たちの動きを留めた。
 誰も奪わせはしない。
 誰も奪われはしない。
 ここは聖域。
 守るべきが騎士であると己を規定するのならば、ジークリットは『獣騎ゴブリン』たちの怒りをも鎮めなければならない。

 奪い奪われる連鎖を断ち切るための道筋は茨の道である。
 それを理解しながらも歩みを止めぬことこそが、真の騎士道であるとジークリットは、己が瞳が輝き続ける限り、彼等をこの場に留めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリス・セイルハート
も、もう始まっています…!
ですが、わ、私も戦いませんと…!

Aerisに乗って、百獣族の皆様と真っ向より対峙、名乗りを上げて決闘を挑みます。
「わ、私はセイルハート家の騎士ラブリス!皆様方に、け、決闘を申し込むものです!」
「そのお怒りは、ええ、至極正しいものです。それでも、其に基づく行いは、見逃すわけにはいかないのです…!」

翔ける暴風を発動、敵の只中を駆け抜けつつ風の放射で敵を吹き飛ばし、足並みを乱した処に【風を操る】ことで【斬撃波】を放ち各個撃破していきます。
敵が作る罠も風で吹き飛ばしてしまえればと。

ま、まだまだ…私はやれます…!
私は、円卓の騎士なのです、から…!



『ラーズグリーズ』辺境伯が治めるバハムートキャバリアの辺境の地に土煙を上げて突き進む『獣騎ゴブリン』の群れ。
 その筆頭に立つのは『獣騎トロウル』である。
 このバハムートキャバリアにおいて獣騎とは即ちオブリビオン。
 過去より蘇りし死者であり、またバハムートキャバリアに生きる人間たちにとっては、嘗て己らが祖先が犯した大罪の証人でもある。
 彼等の怒りは尤もであり、また復讐の正当性を持ち得るものであった。
 しかし、死者に世界を明け渡すことなどできはしない。
 仮に祖先の大罪が贖うことのできないものであったとしても、それは越えてはならぬ一線であったのだ。
「も、もう始まっています……!」
 ラブリス・セイルハート(早春の騎士・f44762)は、己がキャバリアに乗り込み迫る『獣騎ゴブリン』と相対する。
 この事件、戦いに遅れて馳せ参じたことをラブリスは恥じれど、しかし民衆を守ることと、己が恥を天秤に掛けるまでもない。

「わ、私はセイルハート家の騎士ラブリス! 皆様方に、け、決闘を申し込むものです!」
 精一杯の雄々しさ。
 勇気を奮い立たせて戦いに挑む彼女の気概に『獣騎ゴブリン』たちは嘲笑うことはなかった。
 むしろ、弱き者のために立ちふさがる勇気を持ちえる彼女の振る舞いにこそ敬意を払うように長柄斧を天に突き上げ、その名乗りに応えるのだ。
「決闘者よ、汝の気概を我らは見たり! されど、この怒りに我らの正当性があることを承知しての名乗りか問わせてもらおうか!」
 ラブリスは身を震わせたかもしれない。
 唇が震える。
 体躯の震えは戦いに対しての恐れ故。
 されど、彼女は一歩も退かなかった。
『獣騎ゴブリン』たちの勢いは凄まじいものである。怒りに我を忘れども、しかし己が名乗りに呼応する誇り高さが彼等にあることをラブリスは知ったのだ。
「そのお怒りには、ええ、至極正しいものです。それでも、其に基づく行いは、見逃すわけにはいかないのです……!」
「であれば、我らが戦斧の錆となれい! 我が妻、我が子、我が一族! その無念を此処にて晴らせさせて頂く!」
 その言葉と共に迫る『獣騎ゴブリン』。
 ラブリスは己が乗騎と共に敵の群れへと飛び込み、風の放射を持って駆体を吹き飛ばす。

「風を操るか! だが!!」
「我らが獣騎の装甲を持って生み出されし『ゴブリン網』を躱せるか!」
『獣騎ゴブリン』たちの装甲が網へと変貌し、一気にラブリスの駆る乗騎にしてタイタニキャバリア『Aeria』へと迫る。
 しかし、ラブリスの瞳と共に乗騎のアイセンサーが煌き、翔ける暴風(バスター・ドライブ)の如き風の翼を羽撃かせるのだ。
 吹き荒れる風。
 それは暴風であり、網すらも容易に吹き飛ばすだろう。
「くっ……! 見事! されど我らとて退くことはできぬ! お覚悟いただこうか!」
 吹き荒れる風を突っ切って迫る『獣騎ゴブリン』。
 その振るわれる長柄斧の一閃をラブリスは装甲で受け止める。
 軋むフレーム。
 されど、ラブリスの瞳には未だ戦意は消えることはなかった。
「ま、まだまだ……私はやれます……!」
「ならば、その意思折れるまで!」
「私は、円卓の騎士なのです、から……!」
 ラブリスは迫る『獣騎ゴブリン』たちの群れを相手取りながら、なんとしてでも彼等をこの場に押し留め、領内の戦えぬ民衆が戦場より遠ざかる時間を稼がんと、その騎士としての戦いを見事に果たすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルマ・フィーリア
アルマ・フィーリア、そして乗騎『ドラグリヴァーレ』、獣騎達の前に立ちはだかるように立つよ!
……過去の事は解らないし、そもそもハイドラキャバリアを駆るボクに何かを言う資格はないのかもしれないけれど
……ボクの中の何かが言うんだ、あなた達をそのままにしてはおけない。あなた達が真に誅すべき相手以外にその刃を振るってしまうというのなら、ボクらが全部受け止めると!

幸いこっちは頑丈だし、それでも止まってくれないのなら
……吠えて!ドラグリヴァーレ!【ドラグブラスター】を放って無理やりにでも止めます!

(ドラグリヴァーレ:全体的なシルエットは重装甲のヒト型だけど、よく見ると手足は一部の竜の首が変形したものです)



 人は過ちを犯す生き物である。
 だからこそ、戴く王を決める聖なる決闘に参加することを許されなかったのかもしれない。
 身の奥に秘めたる凶暴性。
 抑えきれぬ衝動。
 そうしたものが百獣族を鏖殺せしめたというのならば、申し開きのないことであった。
 贖罪を望めど、すでに百獣族は悉くが殺され尽くしている。
 誰に向けた懺悔か。
 誰に向けた悔恨か。
 贖うべき生命もなく、人は過ちを是正することもできずに懊悩のままに生きるべきなのか。
「……過去の事は解らないし、そもそも」
 アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)は己の乗騎である人造竜騎『ドラグリヴァーレ』を駆り、辺境の地にて『獣騎ゴブリン』の群れを前に立ちふさがる。
「ハイドラキャバリア……! 貴様、その魂を汚す乗騎をよくも我らの前に持ち出したな! その異形、その異質さ、許されざる機体であることを鋼鉄の咎抱きながらも駆るか!」
「何かを言う資格なんてない……わかっている。けれど、ボクの中の何かが言うんだ。あなた達をそのままにしてはおけないって」
「今更何を言う! 我らがこうなったのは、貴様たち人間の祖先のせいであろうに! それを!」
「……わかっているよ。でも、あなた達が真に誅すべき相手以外にその刃を振るってしまうのは!」
 アルマは『ドラグリヴァーレ』と共に飛び出す。
 異形のバハムートキャバリア。
 ハイドラキャバリアと呼ばれる上半身が多頭多腕にて形成される『ドラグリヴァーレ』は飛翔し、爆発を巻き起こしながら迫る『獣騎ゴブリン』を前にして立ちふさがる。

「ダメなんだよ! あなた達の怒りは、その矛先は、彼等に向けてはあなた達もまた邪悪に堕すだけなんだ!だから!」
「黙れ! 誰に贖えるというのだ! 我が子、我が妻、我が友! 彼等の滅びをただ受け入れろというか! 人間に与した妖精が!!」
「……ボクらが受け止める!」
 爆発を一身に受け止めながらアルマは己がキャバリアの多頭多腕が吹き飛ばされるのを感じただろう。
 だが、ハイドラキャバリアは再生能力を持つバハムートキャバリアである。
 加えて、多腕と多頭が両立した機体でもある。
 そのために多少の損害は気にすることもなかった。
「生命には生命で贖わねばならぬのだ!」
「止まってくれないのなら……吠えて!『ドラグリヴァーレ』!」
 ユーベルコードに輝くアルマの瞳。
 それと同時に『ドラグリヴァーレ』の装甲が展開され、竜の首が展開し、ドラグブラスターの一撃が解き放たれる。
 否。
 一撃ではない。
『ドラグリヴァーレ』の全ての多頭より放たれる竜の咆哮。
 それ自体が破壊光線となって『獣騎ゴブリン』たちを打ち抜き、吹き飛ばすのだ。

「くっ……! 我らが復讐を……!」
「復讐は何も生まないなんて、言えないけれど……でも、あなた達まで怒りに飲まれては……だから、無理矢理にでも止めます!」
 アルマは立ちふさがる。
 その背にあるのは、辺境の地に暮らす人々。
 そう、ここで彼等を『獣騎ゴブリン』たちが蹂躙すれば、憎しみが繋がっていく。
 嘗て死せる者たちの悲哀を全て理解できるとは言えない。
 けれど、理解しようと務めることはできる。
 例え、それが痛みに塗れ憎悪の炎に焼かれることでしかないのだとしても。
 それでもアルマは『獣騎ゴブリン』たちの爆発を一身に受け止め、彼等を押し留め続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トラスト・レッドライダー
その怒りも、義憤も、正しいのだろう。
それでも俺達はオブリビオンを倒さなくてはならない。

亡国の主【操縦】アンガーブレードを立て、UC発動。

故に、俺は正面から貴方達を倒し、悪逆を正す!それを、ここに誓おう!!

メガスラスター【推力移動】
アンガーブレードからプラズマを迸らせ飛来する斧を【なぎ払い】
『獣騎ゴブリン』の正面から【切り込み】剣を叩きつける!

今在る人の悪徳は、今生きる者達の手で正すが正道!!
だから!百獣族よ、信じろなどとは言わん。その非道への怒りを、
俺にぶつけろ!!!

【情熱】を以て彼らの怒りを受け止め、【戦闘知識】で獣騎ゴブリン達の動きを【見切り】【怪力】で剣を振るい宣言通り正面から打倒する!



と乗り込んだトラストは瞳を見開き、ユーベルコードの輝きを宿す。

 己は何だ。
 誰がために戦うものは、狂気戦乱を打ち払うモノ(キョウキセンランヲウチハラウモノ)でなくてはならない。
 たとえ、己の理想が仮初であろうとも、最早己は二度と折れることはない。
「俺は、戦える」
 迫る『獣騎ゴブリン』の長柄斧。
 その一撃をプラズマ迸るアンガーブレードの刀身で受け止め、薙ぎ払う。
「我が一撃を払うか!」
「いいや、叩きつける!」
 振るい上げた一撃が『獣騎ゴブリン』を真っ向から両断する。

「み、見事……だが、お前たちに正せるか、悪逆を! 人の弱さを!」
「今在る人の悪徳は、今生きる者達の手で正が正道!! だから! 百獣族よ、信じろなどとは言わん。その非道の怒りを、俺にぶつけろ!!!」
「ならば、受けて頂く! 我らが怨念を!」
 さらに迫る『獣騎ゴブリン』をトラストは『亡国の主』と共に受け止める。
 真正面。
 真っ向勝負。
 それはトラストが騎士でなくても、そうしなければならないと思えるほどの気迫を受ければこそであった。
 怒りをぶつけろと言う己が折れてはならぬ。
 トラストは『亡国の主』の装甲を傷つけさせながらも、しかし、『獣騎ゴブリン』たちの怒りを一身に受け止め真正面からの打倒にこだわり続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ランスロット・グレイブロア
――今こそ『悪役』が『悪役』たる出番だな

――悪役は、正しき嚇怒を吼える者に対しては策を弄さず、ただ堂々と前に出てから名乗りを上げる!
UCで強化されたそれら『悪役』としての正義とそれに関連する行動……成功率・効率・芸術性が3倍となり、そこから劇的な美麗さを以て、正々堂々と戦いながら相手のゴブリンを見惚れさせながら『アロンダイト』に乗り込んで『湖畔に輝くは水面の刃』による『境界面』の概念を『不定化』する事での万象切断攻撃を以て真正面からゴブリンの軍勢を切り伏せていく

――数多くの『正義の軍勢』、だからこそ私は『悪役』としてそれらを蹴散らしていく
その果てに何かがあると信じて!



は、『アロンダイト』と呼ばれる聖剣の刀身に己が怒りと嘆きとを映し出すだろう。

 ランスロットは応える。
「我が剣の一閃を見るがよい。我が悪はただの悪逆に非ず。其れは刻が示すように、嘆きと歓びを持つ者を救う為の剣なり」
 真正面から剣を構えた『アロンダイト』へと迫る『獣騎ゴブリン』。
 手にした長柄斧の一撃が迫る。
 鋭い踏み込み。
 力任せではない。
 確かな技量があるがゆえの長柄斧。
 重心が手元より離れているのは、それだけリーチを稼ぐためだ。だが、同時に重心が手元から晴れることで振るう腕には多大な負荷がかかるだろう。
 それをものともせずに振るうことがどれだけのことであるかをランスロットは知る。

 ならば、己は『悪役』として嘲笑うように一閃を躱すのだ。
「悪役の滅紫よ、刻が示す義であれ(アロンダイトロア・ルーティーン・オブ・ヴィランズ)」
 振るわれる斬撃が美しささえ感じさせる湖面の如き軌跡を描く。
「汝ら正義也」
 故に、とランスロットは『獣騎ゴブリン』を蹴散らす。
 己が演じるのは『悪役』だ。
 彼等の怒りは正しい。
 正しさしかない。
 例えオブリビオンとなったのだとしても、今を生きる己等が大罪人である。彼等の屍の上に生きている。
 であるのならば、己は悪役でいい。
 彼等を蹴散らすこと。
 その果てに何かがあると信じるからこそ、ランスロットの太刀筋に迷いはなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​


――――
トラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)さんの正しいリプレイは以下の通りです。申し訳在りません。
――――
 戦いに際してはいつも思うことがある。
 誰がために戦うのか。
 そう問いかける声が己の中に響くのだと、トラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)は戦いを忘れることがないことを己が胸に秘め続ける。
 眼の前には戦いの気配。
『獣騎ゴブリン』たちの姿は、辺境の地に生きる民衆にとっては恐ろしき存在であったことだろう。
 同時にそれは、彼等の中に咎人の血が流れ続けていることを自覚させられるものであったはずだ。

 はるか昔に祖先が犯した大罪。
 その清算をしなければならないと言うように『獣騎ゴブリン』たちは吠え猛る。
「奪われた我らが奪おうというのだ。例え、今はもう当事者たちがいないのだとしても。この恨みは、この怨念は!!」
 彼等の声を聞きトラストは頷く。
「その怒りも、義憤も、正しいのだろう」
 だが、とトラストは己が猟兵であることを自覚している。
 どれだけ正当性を持つのだとしても。
 復讐せねば、生命に贖うこともできないのだとしても。
 それでも。
「それでも、俺達はオブリビオンを倒さなくてはならない」
 仕方のないことだと割り切れたのならば、己の胸に響く声はなかったはずだ。

 だが、今も尚己の心には誰がために戦うのかと問いかける声が響く。
 世界のためである戦いなのは言うまでもない。
「故に、俺は正面から貴方達を倒し、悪逆を正す!」
「それが出来るか、お前たちに! 過去から人は変わっていない。己が凶暴性を正当化させるために言葉を弄する者たちが!!」
「誓おう! 俺は、俺達は!!」
『亡国の主』へと乗り込んだトラストは瞳を見開き、ユーベルコードの輝きを宿す。

 己は何だ。
 誰がために戦うものは、狂気戦乱を打ち払うモノ(キョウキセンランヲウチハラウモノ)でなくてはならない。
 たとえ、己の理想が仮初であろうとも、最早己は二度と折れることはない。
「俺は、戦える」
 迫る『獣騎ゴブリン』の長柄斧。
 その一撃をプラズマ迸るアンガーブレードの刀身で受け止め、薙ぎ払う。
「我が一撃を払うか!」
「いいや、叩きつける!」
 振るい上げた一撃が『獣騎ゴブリン』を真っ向から両断する。

「み、見事……だが、お前たちに正せるか、悪逆を! 人の弱さを!」
「今在る人の悪徳は、今生きる者達の手で正が正道!! だから! 百獣族よ、信じろなどとは言わん。その非道の怒りを、俺にぶつけろ!!!」
「ならば、受けて頂く! 我らが怨念を!」
 さらに迫る『獣騎ゴブリン』をトラストは『亡国の主』と共に受け止める。
 真正面。
 真っ向勝負。
 それはトラストが騎士でなくても、そうしなければならないと思えるほどの気迫を受ければこそであった。
 怒りをぶつけろと言う己が折れてはならぬ。
 トラストは『亡国の主』の装甲を傷つけさせながらも、しかし、『獣騎ゴブリン』たちの怒りを一身に受け止め真正面からの打倒にこだわり続けるのだった――。
――――
ランスロット・グレイブロア(姫騎士は悪役に思いを馳せる・f44775)さんの正しいリプレイは以下の通りです。申し訳在りません。
――――
 響くは怨嗟の声。
 義心に端を発する百獣族の行軍であれど、いざ辺境の地における人の営みを見れば湧き上がるのは、生命奪われた怒りである。
 己達が破れたのは、人造竜騎に力及ばなかったためである。
 弱者は強者に恭順を示すしかない。
 だが、人類の凶暴性は常軌を逸していた。
 女子供すらも関係なく、唯一人さえも残さぬと百獣族を殺し尽くしたのだ。
 鏖殺、虐殺、殺戮。
 血に染まった大地の上に人は立ち、生きている。
 懺悔を持って騎士道を邁進し、残穢を灌がんとするのは見上げたものである。
「だがしかし、それで生命が回帰するか? いや、しないのだ。生命は、失われたものは、決して戻らぬのだ! 生命に贖えるものは生命のみ!」
 長柄斧を振りかぶり『獣騎ゴブリン』たちは辺境の地に踏み込む。

 此処から先、行われるのは血を血で洗う殺戮であっただろう。
 確かに『獣騎ゴブリン』たちの怒りは正しい。
 正当性しかないだろう。
「だからこそ――今こそ『悪役』が『悪役』たる出番だな」
 策など必要ない。
 ランスロット・グレイブロア(姫騎士は悪役に思いを馳せる・f44775)は、己が乗騎たるバハムートキャバリアと共に戦場に降り立つ。
 空より降り立つ姿は、まさしく竜そのもの。
「正しき嚇怒を吼える者よ、見遣れ。これなるは涙応龍機『アロンダイト』。そして、駆るはランスロット・グレイブロアである」
「名乗り上げるか、人よ! 忌まわしきは人造竜騎! その忌まわしき翼こそが我らが怨敵!」
『獣騎ゴブリン』たちは、『アロンダイト』と呼ばれる聖剣の刀身に己が怒りと嘆きとを映し出すだろう。

 ランスロットは応える。
「我が剣の一閃を見るがよい。我が悪はただの悪逆に非ず。其れは刻が示すように、嘆きと歓びを持つ者を救う為の剣なり」
 真正面から剣を構えた『アロンダイト』へと迫る『獣騎ゴブリン』。
 手にした長柄斧の一撃が迫る。
 鋭い踏み込み。
 力任せではない。
 確かな技量があるがゆえの長柄斧。
 重心が手元より離れているのは、それだけリーチを稼ぐためだ。だが、同時に重心が手元から晴れることで振るう腕には多大な負荷がかかるだろう。
 それをものともせずに振るうことがどれだけのことであるかをランスロットは知る。

 ならば、己は『悪役』として嘲笑うように一閃を躱すのだ。
「悪役の滅紫よ、刻が示す義であれ(アロンダイトロア・ルーティーン・オブ・ヴィランズ)」
 振るわれる斬撃が美しささえ感じさせる湖面の如き軌跡を描く。
「汝ら正義也」
 故に、とランスロットは『獣騎ゴブリン』を蹴散らす。
 己が演じるのは『悪役』だ。
 彼等の怒りは正しい。
 正しさしかない。
 例えオブリビオンとなったのだとしても、今を生きる己等が大罪人である。彼等の屍の上に生きている。
 であるのならば、己は悪役でいい。
 彼等を蹴散らすこと。
 その果てに何かがあると信じるからこそ、ランスロットの太刀筋に迷いはなかった――。
ハロ・シエラ
騎士道に悖る悪徳者を滅ぼすのが彼らの望みとは……今回もまた、単純に戦って全員打ち倒せば良いと言う話ではありませんね。
私個人としても、事情を知ると戦い辛いですが……彼らの攻め入る先には本当に罪のない領民もいるはず。
そんな人達をみすみす危険に晒す訳にはいきません。
やれるだけの事はやってみましょう。

あの巨体で高速飛行し爆撃を行うと言うのは驚異ですね。
ここは幻術を用いて彼らの動きを止めましょう。
私の専門ではありませんが、無辜の民が逃げる時間くらいは稼いでみせます。
せめて幸せな幻覚を見て下されば良いのですが。
今回何を討つべきか、私はまだ迷っています。
心を決めるにはもう少し見届けなければならないでしょう。



「……彼等の望み」
 ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は辺境の地に迫る土煙を見ていた。
 それは『獣騎ゴブリン』たちの大群。
 彼等はオブリビオンである。
 猟兵である彼女にとっては見れば即座に理解できることであった。
「騎士道に悖る悪徳者を滅ぼすのが彼等望みとは……」
 この世界、バハムートキャバリアにおいてオブリビオンである百獣族は、全てが正当なる復讐者である。
 今を生きる人類が直接百獣族を鏖殺したわけではない。
 が、しかしである。
 彼等が怒り狂うのもまた頷けるところであった。

「承知している。汝らが遥か過去、我らが友を、妻を、子を鏖殺せしめた人類でないことは。だが! この煮え滾る怒りが! 汝らに流れる血潮を赦してはおけぬのだ!」
『獣騎ゴブリン』たちは辺境の地にて、そこに住まう民衆に復讐の念を向けるだろう。 
 例え、当初の目的が辺境の地にて悪徳を重ねる領主を誅することであっても、積年の恨みを抱くものが晴らす機会を得たのならば、何をするかなど言うまでもない。
 オブリビオンは滅ぼさなければならない。
 それが猟兵の務め。
 世界の悲鳴に応える戦士のなすべきことだ。

 人を救う必要はない。
 世界を救う猟兵にとって、天秤に掛けるのは人の命よりも世界である。
 だがしかしとハロは異を唱えるように百獣族たちの怒りの声を前にして戦いづらいという感情以上に、彼等が戈を向ける先にある民衆たちの怯える顔を見た。
「罪なき領民も……いるのですよ。そんな人達をみすみす危険に晒すわけにはいきません」
 できるだけのことはやらねばならない。
「おぞましき人類の血! 我らが失いし同胞たちの流した血と同じ量の血を流さねば、この恨みは!!」
 飛翔し、爆発を解き放つ『獣騎ゴブリン』たち。
 脅威でしかない。
「夢と現の水面より出でよ」
 ユーベルコードに輝くハロの瞳。
 幻術(ゲンジュツ)によって、ハロは『獣騎ゴブリン』たちの足を止める。

「おお……これは、我らが懐かしき故郷……」
「過ぎ去りしもの、もはや見ること叶わぬと思っていたが」
「これが我らが奪われしもの。そして、これから我らが奪おうとしていたもの」
『獣騎ゴブリン』たちは、ハロの幻術によって生み出された幻影に足を止め、己が怒りを鎮める。
 わかっているのだ。
 憎しみが何も生み出さないことは。
 失い続けるしかない彼等にとって、復讐とは己が恨みを晴らす手段でしかない。
 その先などない。
 そして、彼等の復讐がさらに新たな復讐の輪となって未来へと続いていく。

「それは悲しいことだ」
「……そうですね。悲しいことばかりが現実には多すぎます」
 ハロは頷く。
 まだ迷いが己の中にある。
 心が決めきれていないのだ。
 なら、とハロはせめて幸せな幻覚の中で、と『獣騎ゴブリン』たちが足を止める姿を認め、事の成り行きを今しばらく見届けなければならないと瞳を伏せるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「辺境伯の悪評は真…か。」
この戦いは辺境伯じゃなくて辺境伯領の民のため…と割り切ろう。
しっかし、どこの世界にも悪は消えないもんだな。

【行動】
あれが百獣族…か。
あれに対抗する力はバハムートキャバリア…なんだけどなぁ。
はぁ、≪応龍騎グランゼドーラ≫…頼むわ寧々…
この世界で出会った麒麟キャバリア…こいつが認めた王とやらがオレじゃなくて寧々というオチは何なのさ…。
『『二人乗り』で『騎乗』し『化術』で『18歳変身』した寧々が『運転』を担当だ。
オレは補助担当だな。

『仙術』の『武器巨大化』で百里神剣をグランゼドーラに装備させる
『武器受け』で攻撃を『受け流し』
≪煌閃≫の『範囲攻撃』版で一気に薙ぎ払う。



 盗賊騎士『ブリュンヒルド』と剣を交えることで猟兵たちは『ラーズグリーズ』辺境伯の悪評が真であったことを知るだろう。
 悪政を強い、人知れず幼子たちをいるのかもわからぬ神へと生贄とし、殺し続けている者。
 それが『ラーズグリーズ』辺境伯である。
「……割り切るか」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は、この戦いは辺境伯ではなく、辺境伯領の民のためであると切り替えた。
 多くの世界をこれまで見てきた。
 悪の栄えた試しはないが、しかし、どこにでも悪は存在する。
 人の心に悪性と善性とがある限り、それはどうしようもないことであったのかもしれない。

「とは言え、だ。あれが例の百獣族……か」
 変形し、体高5m級の鋼鉄の巨人へと変貌した『獣騎ゴブリン』たち。
 その体躯は紛うことなく鋼鉄。
 手にした長柄斧は血に飢えているようにも思えた。
 彼等が抱くのは怒りである。
 滅ぼされた恨み。
 無辜なる女子供まで殺され尽くした憎悪。
 彼等の復讐は正当性しかない。
 生命には生命でしか贖えない。
「はぁ……『応龍騎グランゼドーラ』……頼むわ『寧々』……」
 名捨は、己の背後に現れる麒麟キャバリア。
 王たる資質を搭乗者に求めるという、最後の人造竜騎である。

「さあ、往くぞ。お前様!」
「はぁ……」
 名捨はどうにもやる気がでない。
 そう、この麒麟キャバリアは王たるを定めたが、しかしそれは己ではない。
 他ならぬ『寧々』に王たる資質を見たのだ。
 要するに名捨は『寧々』に戦いを任せるほかなかったのだ。
「何をやる気のない声を出しておる!」
「いやだって……」
「如何に復讐が妥当性を持つのだとしても。無辜なる民を捨て置くことなどできるわけがなかろう」
「それはそうだけど……ああ、もうわかったよ」
 名捨は己の剣を仙術でもって巨大化し『グランゼドーラ』の眼前に浮かべる。
 伸ばした手が掴み、みなぎるはユーベルコードの輝き。

「我らが怒りを思い知って頂く! これは正当なる報復!」
『獣騎ゴブリン』が迫る。
 長柄斧の一閃は鋭く重たいものであっただろう。だが、『グランゼドーラ』は手にした剣で受け流し、さらに一瞬で両腕を十字に形作る。
「『寧々』……!」
「おうともよ! 煌閃(コウセン)! これで……ラストショットである!」
「それ、オレのセリフ……」
「細かいこと!」
 放たれるユーベルコード。
 破壊光線の一閃が『獣騎ゴブリン』を十字に切り裂く。

「見事! 次なるは我よ!」
 さらにわらわらと名捨たちへと『獣騎ゴブリン』たちが集まってくる。
 集団で囲むことをすれど、一斉に襲いかかってくることはない。
 怒りに我を忘れていても、それでも彼等はあくまで一騎打ちに拘るようであった。
「上等!」
『寧々』のやる気に満ちた声に名捨はコクピットでまたため息を付いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
『ラーズグリーズ』辺境伯の許へ向かうわ
襲撃の目的である領主を抑えることができれば
この戦いを止められるかもしれない

騎士からの砲撃を結界術で防ぎ、ダッシュ
攻撃されれば『皓月結界』で『獣騎ゴブリン』を捕縛
時間を稼ぎ、攻撃範囲内から抜けるわ

領主の凶行を止めたいのはこちらも同じ
人間だって悪逆を許す者ばかりではない
正しき騎士道を示し、立ち上がる者もいたと知ったから
先駆けとなった者へ報いるためにも
もっと、疾く……間に合う内に



「我らの怒り、憎悪、悲哀。これを解せよとは言わぬ。だが、我らの怒りは生命によって贖わなければならぬ。奪われた生命は戻らぬのだから!」
『獣騎ゴブリン』たちは、辺境の地にて無辜なる民を襲う。
 彼等にもわかっているはずだ。
 己たちが復讐を果たすべき人類はもういない。
 同時に人間たちにとってもそうだ。
 懺悔すべき百獣族は祖先が殺し尽くしてしまった。

 互いに贖罪すべき相手も、復讐すべき相手もいない。
 どこまでも行き違ってしまっている
 ボタンのかけちがえどころではない。不毛すぎる復讐の連鎖が、今まさに始まろうとしていることを薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は理解した。
「同胞らの悲哀を一身に受けよ!」
 放たれる爆発。
 その一撃を静漓は民衆との間に割って入り、結界術で阻む。
 凄まじい熱量が静漓の肌を焼いただろう。
 痛みが伝わってくる。
 だが、静漓は顔をしかめることすらしなかった。

 彼等の憎悪、悲哀がそれ以上に彼女の心を突き刺したからだ。
「動かないで」
 皓月結界(コウゲツケッカイ)によって『獣騎ゴブリン』たちの動きを止める。
 蝶のように舞う護符が月光の結界術で彼等を捕縛する。
「……駆体が動かぬ……!」
「いかなる術か……!」
「怒りに忘れてしまわないで。あなた達が成そうとしたのは、領主の凶行を止めること、そうでしょう」
 静漓の言葉に『獣騎ゴブリン』たちは頷く。
 義心によって彼等は此処まで来た。 
 だが、辺境の地にて人類が息づいている光景を見て、己たちの同胞の姿を幻視したのかもしれない。

 かつて在りし暮らしを。
 聖なる決闘によって王を戴く戦い、その当時を。
 だからこそ、怒りがこみ上げるのだ。
 戦うものが打倒されるのは理解できる。だが、戦えぬ女子供まで鏖殺したことが彼等には許しがたいのだ。
「ここに、あなた達を殺した者はいないの。それに、人間だって悪逆を許す者ばかりではない。正しき騎士道を示し、立ち上がる者もいたと知ったから」
「ならば、何故今もなお悪逆は続いている。其れは人が愚かであるからだ。どうしようもない凶暴性すら御しきれぬ未熟。それが人間という存在の本質だ」
 其れを正せるのは人間ではないと『獣騎ゴブリン』は言う。
 頷くしかない。
 だが、静漓は彼等の動きを止めて告げる。

「なら、私は先駆けとなった者へ報いるためにも。もっと、疾く……間に合う内に『ラーズグリーズ』辺境伯』を止める。戦いを止める」
「それが茨の道と知ってか」
「その茨の道をこそ進むと決意した者がいた。人は例え、殺されてしまったとしても……負けるようにはできていないのよ」
 静漓はこれまで多くを見てきた。
 何度敗北を喫しても勝利を目指す者も、勝利を得るためにあらゆる力を尽くす者も。
 だから、人の凶暴性もまた一側面なのだ。
 それを見て、全てを決めつけるには尚早がすぎる。
「証明してみせるわ」
 静漓は、間に合えと願いながら辺境の地……『ラーズグリーズ』辺境の地へと向かうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【雷炎の絆】で参加

まあ、アタシも目の前で律を殺されたからねえ。律は稀有な例だ。

でも復讐に正当性なんてないんだよ。アタシ達は仇は取ったが自分勝手なエゴだ。でも関係ない罪無き人々も殺していい訳じゃない。まあ気持ちはわかるが、いささか暴走しすぎだ。意地の張り合いだね。かかっておいで。

追尾ね。まあスーパージャスティス発動して【残像】【迷彩】【心眼】をつかって致命的な被弾をふせぎながら槍を回転させて弾いていく。【衝撃波】も使うよ。

勢いだけの力任せの攻撃はみやすい。なってないね。【限界突破】の【衝撃波】や【槍投げ】で【串刺し】してやるよ。

全然なってない。少し感情を制御しな。暴走はいずれ自滅するよ!!


真宮・律
【雷炎の絆】で参加

まあ、俺も家族置いて死んだ身だからな、義理の子供達3人も全員生まれの家族はいない。失うものが多すぎて失う苦しみをそのまま返したいんだろうな。

でもな、怒りのまま全て殺し尽くしてもむなしいだけだぞ?お前ら、向けた刃はかならず返ってくる。殺戮の連鎖だ。まあ、復讐の感情のあまり話きかなそうだから問答無用でぶっとばすか。

俺も傭兵だからわかるんだが、ただ蹂躙するだけの攻撃はむやみに巻き込まれたら痛い目みる。数の暴力だ。金属のワイヤーと網ならこれがいいだろう。無闇に触れると痛い目みる。

剣の【斬撃波】と【衝撃波】で飛んでくるのを迎撃しつつ荒ぶる雷鳴!

まあ、突撃してくるなら巻き込みやすいよな。



『獣騎ゴブリン』たちの怒りは燃え上がるようであった。
 嘗て在りし虐殺。
 聖なる決闘へと介入した人造竜騎。
 その力は圧倒的だったのだろう。王を戴く戦いにあって、人類は敵を打ち倒すだけに飽き足らず、敵に属する全てを滅ぼした。
 百獣族が一人とて現在のバハムートキャバリアに残っていないのが、その凶暴性の証明であった。
 抑えきれぬ衝動。
 敵を殺し尽くすまで戦いをやめられぬ人の性。
 それがもしかしたのならば、聖なる決闘に参加できなかった最たる要因であったのかもしれない。

 例え、過去を懺悔しても贖うべき者はもういない。
 生命に贖うことのできるものは生命でしかないが、しかし、命を奪ったとて、死せる者が生き返るわけではない。
「我が同胞の悲哀を知れ! 人よ! 我が子の骸を見よ、それこそが贖罪である!」
『獣騎ゴブリン』たちの怒り。
 それは正当なる報復の証でもあった。
 確かに、と真宮・響(赫灼の炎・f00434)は思う。
 眼の前で夫である真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)が殺されてしまった。
 彼は魂人として転生を果たしたが、それは他の世界での例でしかない。
 愛する者が殺された怒り。
 愛する者を残していく悲しみ。
 それらを二人は理解するものであった。

『獣騎ゴブリン』の怒りも理解する。
 だが、と響は彼等に告げる。
「復讐に正当性なんてないんだよ」
 響の言葉に律は頷く。
 失うものが多すぎると、その苦しみを誰かに投げつけずにはいられないのだろう。悲しみという感情はいつしか憎悪に変わる。
 そうやって連鎖が繋がっていく。
 誰かが断ち切らねばならないのだ。
「……アタシたちは仇は取ったが自分勝手なエゴだって気づいたんだよ」
「我らには報復すべき者もいないのだ。今更だ!」
「だろうな。でもな、怒りのままに全て殺し尽くしても、虚しいだけだぞ?」
「我らの心に去来するのは、今も、これからも虚無だけだ。ならば」
 この怨みは晴れないにしても、一時の感情は溶けて消えるだろう。
 例え、また湧き上がるものだとしてもだ。

「向けた刃は必ず返ってくる。殺戮の連鎖だ」
「それでもだ。構えよ、我が同胞の怒り、汝らに受けて頂く!」
 標的が二人に移ったことを理解して、響と律は構える。
「問答無用だな」
「暴走しすぎとも言えるけれどね。けれど……戦えない民衆に刃が向くよりはいいだろう。かかっておいで」
「いざ!」
『獣騎ゴブリン』が長柄斧を構え、装甲が弾ける。

 それはゴブリン網となって二人をひとまとめに捕らえようとするユーベルコードであった。
「薙ぎ払うとするか」
 掲げた掌から荒ぶる雷鳴(アラブルライメイ)が轟く。
 それは一瞬で戦場に走り抜け、迫るゴブリン網を吹きと明日。
「無闇に触れるつもりはない。罠である可能性もあるからな……響!」
「わかってるよ」
 投げ放たれた長柄斧。
 空中を飛ぶブーメランのように響を狙って旋回し、追尾するようにして迫っているのだ。
「我が斧は一族に伝わる秘術によって貴様を狙い続ける! 躱せるか!」
「なっていないね。秘術だろうがなんだろうが、勢いだけの力任せ!」
 黄金のオーラを纏う響が長柄斧よりも速く『獣騎ゴブリン』へと踏み込む。
 間合いの内側。
 振り抜いた槍の一撃が『獣騎ゴブリン』の頭部を穿つ。

「……みご、と……」
「もっと冷静だったのなら、アンタたちもマシだったはずだよ。その暴走は、いずれ自滅するよ!」
「だが、我らの怒りは……こうでもしなければ、抑えられぬのだ」
「オブリビオン化した弊害なのかもしれいな……」
 感情は力になる。
 だが、御せぬのならば破滅の呼び水にしかならないのだ。
 それを示すような『獣騎ゴブリン』たちの姿に二人は、復讐の連鎖こそ断ち切らねばならぬものだと改めて思ったかもしれない――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
伝えられた歴史に、|歴史の当事者《オブリビオン》が言うならその事実は正しいんだろうけど…
当時の人類の思惑が何処にあったか分からないんじゃあ、何とも言えないって思っちゃうね
それにどっちにしろ今に生きる人を害するなら、こっちはそれは許しちゃいけないお仕事なので
相容れないなら、押し通ってみせろってね

引き続き2剣を抜刀
【剣技・蒼嵐剣】起動
手近な獣騎ゴブリンに先ずは一撃、斬撃と風の刃を飛ばす
竜巻を発生させて、ジャンプでそれに乗り「天候操作」で竜巻から上昇気流を発生
体を「吹き飛ばし」てジャンプ移動
跳んでいる最中に次の攻撃を飛ばし、竜巻を設置してジャンプ戦闘で足元のトラップを回避して攻撃していこう



「我らが生命は決闘の結果。されど、人よ。汝らの祖先は戦わぬ者にすら戈を向けたのだ。その凶暴性こそが汝らの原罪であると知れ。敵に情すらかけられぬ凶悪。それこそが、血のつながりによって連なる罪の証明!」
『獣騎ゴブリン』は辺境の地にあって、怒りを発露する。
 彼等はこの地に騎士道に悖る悪徳領主を誅するためにやってきていた。
 だが、辺境の地にて暮らす人々を見て、その身の内にある怒りが燃え盛るのを止められなかった。
 怨みよりも義心を、と彼等は行動したはずだった。
 それでも抑えられないのだ。
 例え、彼等が己たちの同胞を殺し尽くした存在とは違うのだと理解していたとしても、その血脈が今に連なっているという事実が、彼等の心を苦しめ、憎悪に走らせているのだ。
「やはり人類は悪そのものである。許せるわけがない。ここで悪の、巨悪の芽吹きを摘まねばならぬ!」
 彼等の声を月夜・玲(頂の探究者・f01605)は聞き、頷く。

 伝えられた歴史。
 嘗ての人類の凶行。
 |歴史の当事者《オブリビオン》が言うのならば、その事実は正しいのだろう。
 だが、当時の人類の思惑が何処にあったのかわからない。
 当事者ではない自分たちは、この世界に介入してきただけだ。
 何も言えるわけがない。
 正せるわけがない。
 けれど、彼等の……オブリビオンの行動が世界を滅ぼすというのならば、これを止めねばならない。
「今を生きる人を害するなら、こっちはそれを許しちゃいけないお仕事なので」
 二振りの模造神器を抜き払い、玲の瞳がユーベルコードに輝く。
「嵐を呼ぶか! だが、我らが憎悪の炎が吹き消せると思うな!」
「やっぱり相容れないよね……なら、押し通ってみせろってね」
 互いに一歩も退かぬ。
 玲が踏み込んだ瞬間、振るわれた斬撃は音速を超えて雷鳴の如き轟音を響かせる。
 その斬撃は風の刃。
 切り裂かれた大気が衝撃波と吹きすさび『獣騎ゴブリン』の装甲を切り裂く。
 だが、『獣騎ゴブリン』もまた、さるものであった。
 飛翔し、手にした長柄斧を振りかぶっている。

 装甲を犠牲にしてでも玲との距離を詰めたのだ。
「やる……けれど、蒼嵐大系――剣技・蒼嵐剣(プログラム・ストームソード)はさ、基礎なんだよね!」
 彼女の放った斬撃は風の刃となって、確かに『獣騎ゴブリン』の装甲を切り飛ばした。
 けれど、その斬撃が、それで終わりではないのだ。
 そう、斬撃は蒼き竜巻となって残り続ける。
 敵は空にある。
 玲は竜巻を蹴って飛ぶ。
「さあ行こうか!」
「飛ぶか……だが!」
 切り離された装甲がゴブリン網となって玲を捕らえようと迫る。
 だが、玲の手にした模造神器は二振り。
 振り払った斬撃がゴブリン網を切り裂き、吹き飛ばす。

「一手、多いけどさ! トラップを警戒しないわけないじゃん!」
「だが、距離は詰めたぞ! 受けよ、我が憎悪の戦斧を!!」
 空中で振り抜かれる長柄斧の一撃。
 見事な一撃であった。
 一閃、それは玲の体躯へと叩きつけられるべきものであった。しかし、玲の体が一瞬で横にずれる。
「なに……!?」
「蒼嵐大系の基礎……ならさ、基礎は応用してこそでしょ!」
 そう、ゴブリン網を切り払った斬撃によって生み出された竜巻。それを玲は蹴って横っ飛びに斧の一撃を躱したのだ。
 急速なる方向転換。
 これによって隙だらけとなった『獣騎ゴブリン』の横っ腹へと玲は残された模造神器の一振りでもって薙ぎ払う。
「……なんと!」
「ここは押しのけさせてもらうよ!」
 両断された『獣騎ゴブリン』の爆発が空に咲く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザビーネ・ハインケル
●SPD

随分と御大層な言い分だが、積年の恨みと怒りに御冠になっちまって癇癪起こしたガキみてぇな暴れっぷりだ
…ハッ、テメェら三下に|人造竜騎《キャバリア》に乗っての|聖なる決闘《トーナメント》はふさわしくねぇな
怒りのあまりに誇りを忘れちまった魂ごとオレの魔法で昇天してやるぜ

指先で作った魔力弾のツブテをゴブリンの頭にでもぶつけてご挨拶してやったら、出来るだけ人気がねぇ場所まで誘導だ
まぁ、相手は5mもある|獣騎《バルバ》だ
数の暴力で追い詰め、ご自慢のゴブリン罠で逃げ道を封じるだろうな
だがな…忘れたか?
杖をまだ使ってねぇ事をよぉ…|縮重荷電《ライトニングフォーミュラ》!
溜め込んだ雷霆を浴びやがれ!!



 ザビーネ・ハインケル(Knights of the Road・f44761)にとって、辺境の地を襲う『獣騎ゴブリン』の憎悪の叫びは、子供の癇癪のようであった。
 彼等の言い分は尤もである。 
 御大層であるとも言える。
 積年の恨みと怒り。
「御冠になってるのはわからねぇでもねぇが……」
 その怒りの正当性は言うまでもない。
 彼等の怒りの矛先が、辺境の地に生きる民衆に向かうことも理解できないわけでもない。
 が、それよりも何よりもザビーネは鼻で笑う。
「ハッ、テメェら三下に|人造竜騎《バハムートキャバリア》に乗っての|聖なる決闘《トーナメント》はふさわしくねぇな」
「我らをそしるか!」
「ああ、怒りのあまりに誇りすら忘れて復讐に走るなんてのは、三下のやることだってんだよ!」
 ザビーネは獰猛に笑い、『獣騎ゴブリン』たちの眼の前で舌を出す。
 まさしく挑発的な笑みであったことだろう。

 いや、挑発そのものである。
『獣騎ゴブリン』たちは、悪徳領主を誅するために辺境の地へと進んでいた。
 だが、辺境の地に生きる人間を見て、怒りが込み上げてきたのだろう。御しきれぬ怒りによって彼等は無辜の民に刃を向けようとしていたのだ。
 であるのならば、ザビーネは彼等の意識を己に向けさせるべく、挑発的な物言いを持って彼等の関心を買ったのだ。
「売り言葉に買い言葉ってんじゃあねェがよ……その程度でお冠だってんなら、やりやすいぜ、まったくよ!」
 ザビーネは笑い、礫でもって『獣騎ゴブリン』たちを嘲笑うように小突き走る。
「逃げるな! 我らを挑発したというのなら!」
「お、挑発だってのは理解できてんだな。上等なおつむだってみてぇだな!」
「貴様……!」
 更に重ねる挑発に引っ張られるようにしてザビーネを追う『獣騎ゴブリン』たち。

「逃さぬ!」
 放たれるゴブリン網。
 それによってザビーネは絡め取られんとするだろう。
 だが、彼女は不敵に笑う。
「おいおい。数で来るのかと思ったら、一騎ずつかい。変な所で律儀だな、てめぇらもよ!」
 放たれた網。
 それは数で勝る『獣騎ゴブリン』からすれば、彼女を囲んで放てば容易なことであっただろう。
 だが、彼等は如何に怒りに我を忘れていても、騎士道に強いこだわりを見せている。
 だからこそ、一騎で迫っているのだ。
「見上げた根性だがよぉ……忘れたか?」
 ザビーネは己の杖を掲げる。

 ユーベルコードに輝く杖の先端。
 送り込まれた魔力がチャージを得て、縮重荷電(ライトニングフォーミュラ)となって解き放たれる
「杖をまだ使ってねぇってことをよぉ……! 溜め込んだ雷をくらいやがれ!!」
 放たれた一撃が『獣騎ゴブリン』を打ち据える。
「ぐおっ!? おおおおっ!?」
「しのげると思うなよ? なんのためにてめぇらを惹きつけたと思っていやがる。それはなぁ……チャージ時間を稼ぐためだよ!」
 充分にチャージ時間を得た雷撃は例え、『獣騎ゴブリン』であったとしても耐えられるものではない。
 その雷に打ち据えられ、『獣騎ゴブリン』が黒焦げとなって膝をつく。
「さあ、次はどいつだ?」
 来な、とザビーネは計算され尽くした挑発でもって、『獣騎ゴブリン』達を真っ向か雷撃で打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシータ・フィラ
えぇぇぇぇぇぇ!?
今からブリュンヒルド様を奉る|祭り《推し事》の始まりなのでは!?
戦いなんて『推し』の前では無意味ッ!!
ブリュンヒルド様を神輿に乗せて突撃すればあっはい静かにいたします

よし冷静になったところで!(推し事グッズは仕舞う)
誰が表に出してはいけないタイプの変態ですか正解です

ティタニア、初陣です
形態は飛翔型
飛竜の|象《カタチ》で軽やかに舞うとしましょう

我らが敵はラーズグリーズ辺境伯
ええ、少し話を聞きたいとは思いますが
まずは辿り着かねば
獣騎ゴブリンは行軍と押し留める程度で問題ないでしょう
【真夏の夜の夢】にて
ゴブリンたちの足を狙いますわ!!
空を舞ってきたとて
振り切ってみせますわ!



「えぇぇぇぇぇぇ!?」
 それは驚愕の声であった。
 辺境の地に迫る百獣族。
『獣騎ゴブリン』たちの進軍によって、辺境の地は蹂躙されてしまうだろう。
 本来ならば義心によって悪徳領主を誅せんとする彼等であったが、しかし、辺境の地にて生きる人間を見て、怒りに我を忘れてしまっているのだ。
 故に、ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は己の思う予定と違うことに驚愕したのだ。
「今から『ブリュンヒルド』様を奉る|祭り《推し事》の始まりなのでは!?」
「なんだよそれは」
 意味わからん、と盗賊騎士『ブリュンヒルド』は肩を竦める。
「戦いなんて『推し』の前では無意味ッ!!」
「それはあんただけじゃあないのか?」
「そんなことはございません。このような戦い、『ブリュンヒルド』様を神輿に乗せて突撃すればあっはい静かにいたします」
「情緒どうなってんだ、あんた」
 冷たい目線にファルシータはシュンとなったが、すぐさまに推し事グッズを仕舞って、己が人造竜騎へと乗り込む。

 それはグリフォンキャバリア。
 騎士型と飛翔型への可変を有する機体であり、その速度を御しきれる騎士は稀である。
「あんた、グリフォンキャバリアを」
「ええ、『ティタニア』、初陣です! さあ、飛竜の|象《カタチ》で軽やかに舞うとしましょう!」
 ファルシータは先程までの変態ムーヴは何処に行ったのかというほどに冷静な顔で『ティタニア』と共に『獣騎ゴブリン』へと迫る。
「人造竜騎! 我らが憎悪……! 鋼鉄の咎を駆る騎士……!」
「我らが敵は『ラーズグリーズ』辺境伯、その筈でございましょう!」
「だが、我らの眼の前に人間がいるのだ……! この怒りこそが我らを突き動かしている。この感情こそが、我らが冥府より蘇った理由なのだ……それを!」
「お話、聞きたいところではありますが……まずはたどり着かねば!」
 宙を舞う『ティタニア』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
 空より見下ろす『獣騎ゴブリン』の位置は全て把握している。

「さぁ、踊ってくださいまし。真夏の夜の夢(マナツノヨノユメ)、妖精の夜は少々騒がしいのですわ」
 視認した全ての『獣騎ゴブリン』の脚部へと幾何学模様を描きながら飛翔する光線が一瞬にして貫く。
「……っ! 脚部のみを!」
「ええ、その行軍は押し留めさせていただきます。人のしでかしたことは、人が裁きますわ。過去の化身、あなたがたの手を煩わせるまでもなく!『ブリュンヒルド』様!」
「わーってるよ!」
 その言葉にファルシータの駆る『ティタニア』が先導するように『獣騎ゴブリン』たちが擱座した大地を飛ぶ。
 その背後を追うようにして『ブリュンヒルド』が追従している。
 自分たちの目的はあくまで、邪悪なる『ラーズグリーズ』辺境伯を討つこと。
 ならば、今は『獣騎ゴブリン』たちにかまっている暇はない。
 彼等もまた義心によって立ち上がった者たちであるというのならば、なおのことであろう。
 彼等を敵とみなすよりも、今は敵ではないと置くほうがいい。
「振り切ります。お掴まりになって!」
「グリフォンキャバリア……とんでもねぇな」
「行きますわ!」
 その言葉と共に盗賊騎士『ブリュンヒルド』はファルシータの駆る『ティタニア』と共に『ラーズグリーズ』辺境伯座す地へと飛ぶのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

わーなんだかしっちゃけめっちゃかになってきた!
ほんとに相手が悪徳領主だけならほっといてもよくない?
だめ?
だめかー

まあ支配者の交代っていうのはけっこう単純な話ではないよね
お互いに抱くお互いへの恐れ…不安…


●知力の神だから!
くっボクに向かって斧が迫ってくる!
くるよね!
絶対にくる!

迫る斧を【第六感】で察知したボクは[超重浮遊鉄球]くんたちを解放し迎え撃つ!
そしてそのままドカデカ球体くんたちをぶん投げながらボクもUC『神撃』でドーーーンッ!!

とまれ、道理を説いて正道を通すっていうならば
ここはボクたちに委ねてもらうよ!
敗者は勝者に委ねるもの。
なんでしょ?



「わー、なんだかしっちゃかめっちゃかになってきた!」
 眼の前に広がる光景。
 それは『獣騎ゴブリン』が辺境の地を荒らさんとしている光景だった。
 彼等は元は悪徳領主を誅するために迫る大群であったはず。
 それが怒りに我を忘れることで辺境の地に生きる人々に、その刃を向けようとしているのだ。
 積もりに積もっった怒り、悲しみ、憎しみ。
 そうしたものがない交ぜになったからこそ、『獣騎ゴブリン』たちは怒りに我を忘れてしまうのだ。
「ほんとに相手が悪徳領主だけならほっといてもよかったんだろうけどねー」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、息を吐き出す。
 このまま彼等に悪徳領主を誅してもらえば、丸く収まるのではないかとさえ思ったのだ。

 だが、彼等は怒りに我を忘れている。
 仮に悪徳領主を打倒したとしても、そのまま領内の人間を嘗て彼等の祖先にされたように鏖殺を行うことは想像に難くない。
「だめ? だめかーだめっぽいなー」
 悪徳領主はまだ人間社会を維持しようとするだろうが、百獣族たちにとって人間の社会を存続させる理由などない。
 よしんばあったとしても、その先行きは悲惨なものであったことだろう。
「まあ、支配者の後退っていうのは結構単純な話ではないよね」
 お互いに抱く他者への恐れ、不安。
 そうしたものが膨れ上がって、猜疑心となり、他者を排斥しようとするのが生命というものだ。

「我らが怒りを!!」
 ふるわれる『獣騎ゴブリン』の長柄斧。
 その振るう一撃がロニに迫っていた。
「いやいやいや、ボクじゃないよ? っていうか、もうすでに敵認定されてる感じ? されちゃってる? あ、絶対に来るやつだよね、これ! わー!」
 ロニは自分にめがけて放たれた斧をなんとか躱しながら、球体をぶつけて押し留める。
「あっぶなぁ!」
「この怒りを鎮めるためには! 我が同胞の生命を奪った人間の生命で贖わなければならぬ!」
「我らが怒りは正当! であるのならば!」
「悪逆たる人間を誅するのみ!」
「だったら、道理を説いて正道を通すっていうならば、ボクたちに委ねてよ!」
 ロニは斧を躱しながら、球体の上を跳ねて飛ぶ。

 頭上より振り下ろすのは神撃(ゴッドブロー)の一撃。
 叩き込まれる拳。
 それが『獣騎ゴブリン』の頭部を粉砕し、その体躯を吹き飛ばす。
「敗者は強者に委ねるもの。なんでしょ?」
 ならさ、とロニは笑う。
 ここは自分たちに任せて欲しい、と。
 悪逆たる『ラーズグリーズ』辺境伯。
 それを止めるのも、凶行を止めるのもまた人でなくてはならない。
 百獣族の怒りは尤もであるが、今は違う。
 それを晴らすべき機会は、今ではないのだ。
 なぜなら、彼等が義心によって立ち上がったからだ。その意志を、気高き魂を汚すような行いを赦してはおけない。

 だからこそ、ロニは拳でもって理解してもらおうと思ったのだ。
「そういうわけだからさ。今日のところはこれで勘弁してあげてよね――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
悪逆に潜む|善性《青》と|悪性《赤》、そして揺らぎ
ラーズグリーズ辺境伯は揺らぎを亡くしてしまったのですね
人の間と書いて人間と呼びます
人との繋がりがその人を作る……それがマイナスに働いてしまったのでしょう
しかしその悪逆を見逃すわけにはいきません
戦いに際しては心に平和を
その先に『何か』を求めるならば!

フォル!いらっしゃい!(鳥型キャバリア呼び寄せ
あなたの速度で全てを蹴散らしていきます!
【ファム・ファタール】突撃いきます!
クロキャに比べれば随分と自由に空を舞える世界ですね
フォルも気持ちいでしょう
追いつけない速度で
目的地までいきますよ!

潔斎行路、いえ、潔斎者たち
ここにエイル様の名残も必ずあるはずです!



 人の心には悪性と善性がある。
 二つの相反する要因。
 人は生まれながらに善性であるのかもしれないし、生まれながりにして悪性であるのかもしれない。
 どちらが先であったのかと論ずれど、答えはでない。
 だが、人の生き方というものがより善きものを目指すのであればこそ、その根源が如何なるものであったとしても些細な問題でしかないのだろう。
 二つの相反するものがあるからこそ、その心は揺らぎ続ける。
 葛藤と呼んでもいいだろう。
 揺らぎ続けることこそ、人はそれを良心と呼ぶのだ。

 身に刻まれた原罪にもがき苦しみ、懺悔を持って後悔を払拭せんとするバハムートキャバリアの人々のように、時としてそれは騎士道と呼ばれるものへと昇華することもあるだろう。
「悪逆に潜む|善性《青》と|悪性《赤》、そしてゆらぎ……『ラーズグリーズ』変』はゆらぎをなくしてしまったのですね」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は迫る『獣騎ゴブリン』たちを眼の前にして、掌を天に掲げる。
「人の間と書いて人間と呼びます。人とのつながりがその人を作る……それがマイナスに働いてしまったのでしょう。しかし、その悪逆を見過ごす理由にななっておりません」
 飛来するのは鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』。
 いななくようにして翼を広げた機体にステラは乗り込み、瞳をユーベルコードに輝かせる。

「戦いに際しては心に平和を。その先に『何か』を求めるのならば!」
 進まねばならない。
 人の悪逆は人が止め、裁く。
 百獣族の手に委ねるのではなく、自らを持って罰しなければならないのだ。
 羽ばたく翼は自由を謳歌するように機体を飛翔させ、その音速を超える速度でもって一気に『獣騎ゴブリン』たちを引き離していく。
「フォル、自由に飛べて気持ちいでしょう。彼等は今は打ち倒す敵ではありません。このまま彼等が追いつけない速度で目的地まで飛びます!」
 その言葉と共に『フォルティス・フォルトゥーナ』は飛翔し一直線に『ラーズグリーズ』辺境伯の座す辺境の地へと迫る。

 見えるは、二騎の鋼鉄の巨人。
 一騎は『獣騎トロウル』。
 そして、もう一騎は青い鎧を纏うような鋼鉄の巨人であった。
「あれが……!」
 そう、『獣騎トロウル』と相対するは人造竜騎。
 青き鎧纏う鋼鉄の巨人は、恐るべき力でもって『獣騎トロウル』を圧倒している。
 その力の在り方はまさしく蹂躙と呼ぶに相応しいものだった。
「フォル! この世界が罪と咎とに塗れているというのならば……潔斎行路は、いえ、潔斎者たちは……!」
 ここに彼女の求める者の名残が必ずあるはずだ。
 そう信じて彼女は、この事件に臨んでいる。
 だが、その求める名残は、最悪の形で眼の前に現れる――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獣騎トロウル』

POW   :    ツインアームハンマー
【岩の弾丸】を浴びせつつ対象に接近し、【両腕振り回し】で攻撃する。同時に、敵の攻撃は【腕】でパリイ可能になる。
SPD   :    トロウル無敵装甲
狙った対象1体を殺すか凶器「【左腕に装着したロックスピア(岩槍)】」を手放すまで不死となり、対象への殺傷力と追跡力も3倍になる。
WIZ   :    ハイパーナックル
【棘の生えたハンマー状の右腕】が命中した敵の【背骨】を叩き割る。高所から攻撃する程命中率上昇。

イラスト:タヌギモ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


『獣騎トロウル』は、怒りに我を忘れることはなかった。
 確かに人間に対する怒り、憎悪というものは己が胸に宿っている。だが、それ以上に人間の悪辣さを目の当たりにし、その怒りこそが憎悪を凌駕していたのだ。
「貴様……どれほどの生命を。その身にこびりついた死臭……!」
「我が領民の生命である。それを領主たる私が使って何の問題があるのだ。我が娘を、再び腕に抱くために、あの四角錐の如き容貌をした界渡る神の御力が必要なのだ。それには生贄がいるのだ……百を越えて尚、お答えにならぬ。やはり、まだ足りぬ。だが……だが! あの神は、我が娘にそれだけの価値を見出したのだ。ああ、尊き我が神よ、人の生命で足りぬというのならば、百獣族の生命をも捧げてみせましょうぞ!」
 血走った目。
『ラーズグリーズ』辺境伯は、彼の人造竜騎、青い鎧纏う鋼鉄の巨人を駆り、圧倒的な力でもって『獣騎トロウル』を蹂躙していた。
 装甲は砕け、その手にした槌すらも砕かれている。

「……まさしく悪鬼。騎士道に悖る悪逆そのもの! やはり人間は己が欲望を抑えられず、その凶暴性を他者に向け続ける。斯様な行い、赦してはおけぬ! 例え我が身砕けようとも!!」
 放たれる岩の弾丸。 
 だが、青い鎧纏う鋼鉄の巨人は、その身より岩の弾丸を『獣騎トロウル』とまったく同じように放ち、相殺し、その駆体をうちすえるのだ。
「無駄だ。我が人造竜騎『エイル』は! あらゆる獣騎の力を学び取る人造竜騎! 貴様の力はすでに我が力。己が力で再び滅びるがよい、百獣族よ! そして、その生命を我が神へと捧げるがいい!」
 そう、かの青き鎧纏う鋼鉄の巨人は、敵対する獣騎のユーベルコードを学習し体得しているのだ。
 最強の、と言われる所以。
 獣にはなく、人のみに許された知性。
 それを象徴する力を持つ人造竜騎『エイル』は、罪過を重ねるようにして迫る『獣騎トロウル』を返り討ちにしたのだ。

 ふるわれるはロックスピア。
 手にした岩槍の一撃が『獣騎トロウル』へと叩き込まれんとした瞬間、『閃光』のように一騎の人造竜騎が、『ラーズグリーズ』辺境伯の駆る人造竜騎『エイル』よりロックスピアを奪い取る。
 そして、その切っ先を向け、『獣騎トロウル』を背に庇う。

「あんたも失った悲しさに耐えられないってんなら、お悔やみ申すってところだがよ……己が悲しみを他者にも与えるのは、どうにも許せねぇ……」
 人造竜騎『ブリュンヒルド』。
 白き装甲を持つ鋼鉄の巨人を駆る盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、手にしたロックスピアを構える。
「人は失うまで、失われたものの尊さを知らぬのだ。生命もまたそうであろう。ならば」
「だったら、言葉で言えよな! なんのために言葉があるって思ってんだ! ……許せねぇ。許せるわけがねぇ。悲しみをいたずらに振りまき続けて、自分と同じようにみんな不幸になっちまえというような者が人の上に立つなど! そうして、過ちを過ちのまま捨て置くことなんて! ああ、許せねぇ!!」
「ならば、貴様も我が神への供物として、その生命、捧げるがいい!」
 人造竜騎『エイル』は、その青き装甲を震わせ、咆哮するように迫る敵の全てを打倒せんと力を発露させるのだった――。
如月・夏目
……そう、娘さんが……

ねえ、ブリュンヒルドさんとそこのトロウルさん、ちょっとだけ時間をくれないかな。
ごめんね、少しでも可能性があるなら、声をかけたくて。これは単に僕という人間のワガママだ。

領主様。神隠しはね、割とあることなんだよ。僕もそれで元いた世界から別の世界に来た。だから、娘さんが無事な可能性はゼロではないと思う。

猟兵には、色んな世界を渡る人もいる。もしかしたらその中から話を聞けるかもしれない。罪を償ってから僕たちの手を取るとか、そういう事を考える気は無い? その方が、他の人にも悲しみを植え付けなくていいと思うんだけど……

……もしこの言葉で少しでも揺らいでくれたら嬉しいけど、無理だったなら……

灼滅変形・煉獄、発動……ただの斧槍の一撃と思うなかれ。いくら学習能力があるとはいえ、その身に増え続ける炎は振り払えないでしょう。罪を濯ぐといいよ。その炎で。



 因果である。
 応報というのならば、その結実の時が今である。
『ラーズグリーズ』辺境伯が治める辺境の地は、嘗ては豊かであり、善政によって支えられるものであったという。
 だが、いつの頃からか。
 その善政はいつしか悪政へと堕した。
 領内から幼き子らが消え、その幼き子らの行方を追う親たちも消えていく。
 時に騎士たちもまた刃傷沙汰でもって放逐され、行方知れずとなっていた。
 それら全てが『ラーズグリーズ』辺境伯の息女の神隠しに端を発するものであったというのならば、それこそが彼の狂気の源であったことだろう。
「我が娘の行方を、あの子を! 我が手に取り戻すその時まで、私が止まれるわけがなかろう! どれだけの犠牲を払ってでも! 私は!!」
「その傲慢さが、その意固地さが、悲しみを振りまいていると何故わからねぇんだよ!」
 打ち合う石の槍と剣。
 その剣戟の最中に如月・夏目(デモノイドヒューマンの武装警官・f44353)は天を仰ぐ。

 そう、神隠し。
 それは多くの猟兵にも該当する事柄であったことだろう。
 彼もまた元々はサイキックハーツ世界の住人であったが、今はエンドブレイカー世界で生きる猟兵でもある。
 彼にとって幸いであったのは、世界が異なれど悪を許さぬという心が、その職務が、他の世界でもまた同様に受け入れられるものであったことだ。
「……そう、娘さんが……」
 その痛みを全て理解できるとは言い難い。
 けれど、盗賊騎士『ブリュンヒルド』が言ったように人間には言葉がある。
 なら、まだ、と夏目は思うのだ。
「ねえ、『ブリュンヒルド』さんと、そこの『トロウル』さん。ちょっとだけ時間をくれないかな」
「なんだよ!」
「……如何にか」
「ごめんね。少しでも可能性があるなら、声をかけたくて。これは単に僕という人間のワガママだ」
 彼の言葉に『ブリュンヒルド』は白い鋼鉄の巨人たる人造竜騎を半歩下がらせた。
「やれるっていうんなら、やればいい。私が『ラーズグリーズ』辺境伯に思うところがあるように、あんたにも思う所があるんだろ」
「……然り。なれば、人の子よ」
「ありがとう」
 彼等の言葉に背中を押されるようにして夏目は一歩を踏み出す。

 青い鎧纏う鋼鉄の巨人、人造竜騎『エイル』の前に夏目は立つ。
 訝しむように剣を向ける『ラーズグリーズ』辺境伯の重圧に夏目は屈しなかった。
「領主様」
「何用か」
「一つ、お伝えしたいことが」
「申せ。だが、聞くだけである。其れ以上は、我が剣の露と消えるがよい」
「……神隠しはね、割とあることなんだよ。僕もそれで元いた世界から別の世界に行った。だから、娘さんが無事な可能性はゼロではないと思う」
 その言葉に人造竜騎『エイル』のアイセンサーがきらめく。
 怒りを、激情を発露するように『ラーズグリーズ』辺境伯は口角からつばを飛ばすようにして叫ぶ。
「当然である! 我が娘、我が愛し子である! それは当然のこと! あの子はまだ死んでいない。だのに、騎士共はお悔やみ申すと! その言葉は我が娘を殺すのと同義!」
 認められない。
 認めたくない。
 その劇場こそが彼を狂わせたのだ。
「猟兵には、色んな世界を渡る人もいる。もしかしたら、その中から話を聞けるかもしれない。罪を償ってから僕達の手を取るとか、そういうことを考える気はない?」
 その方が、と夏目は思った。

 彼の凶行は他者に悲しみを植え付けるものである。
 それは悲しみだけが膨れ上がっていくだけのことだ。
「ならば、貴様たちを利用させてもらう! そうすれば! あの子は!」
「……そうか」
 夏目は息を吐き出す。
 この言葉で『ラーズグリーズ』辺境伯が揺らいでくれたら、と思ったのだ。
 そうであれば嬉しいとも思った。
 だが、彼は強行なる姿勢を崩さなかった。
 むしろ、己達をも生贄に捧げる腹づもりが決まったようでもある。

「なら、罪を濯ぐ時が来たよ」
 きらめくはユーベルコード。
 手にした侵食斧槍を構える。己が半身を覆う鎧から吹き上がる灼熱の炎。それが手にした斧槍に注ぎ込まれ、灼滅変形・煉獄(シャクメツヘンケイレンゴク)へと至る。
「罪だと! この私に罪が、なんの罪があるというのだ! そんなものは!!」
 迫るは石の弾丸。
 そして、変形した両腕の槌が夏目へと叩きつけられる。
 だが、その一撃を夏目は斧槍で受け止めていた。
 煉獄の如き炎。
 それは罪を濯ぐための炎である。
 吹き荒れる炎が一気に噴出し、人造竜騎『エイル』の叩きつけた両腕を跳ね上げる。
「なんだと……!?」
「ただの斧槍の一撃と思うなかれ……いくら学習能力があるとは言え、その身に増え続ける炎は振り払えないでしょう」
 これが、煉獄。

 罪持つ者、その罪過を咎でもって濯ぐ禊。
 延焼する炎は、人造竜騎『エイル』の青い装甲にまとわりつき、燃え盛り続けるのだ。
「……罪は濯ぐ。その熱が、あなたの奪ってきた生命の痛み……その何分の一かもしれないけれど……その炎で、あなたは罪を濯ぐといいよ」
「お、おおおおおっ!!」
 吹き荒れる炎が、青き鎧纏う鋼鉄の巨人の体躯を包み込み、その灼熱を持って『ラーズグリーズ』辺境伯の身を焦がすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラブリス・セイルハート
な…そ、そんなことが…この領地で…!?

…あ、貴方様の行い、認めるわけには参りません…!
如何なる故があろうとも、無辜の民を手にかけるなど騎士としてあるまじき事!
円卓騎士の名にかけて、貴方様の行い、止めさせて頂きます!

引き続きAeria搭乗。
ブリュンヒルド様・トロウル様と共にラーズグリーズ様へ攻撃を仕掛けます。
【風を操る】ことで敵の攻撃を逸らしたり【体勢を崩す】よう風をぶつけたりでお二人の援護を。
並行して【多重詠唱】にて精霊力の光球を敵周囲へ設置、完了次第お二人へ下がるよう呼びかけの上で降潰す積風発動。
大ダメージを狙います。

…そも、血で塗れた貴方様の手は…その、娘御を抱くに相応しい、でしょうか…?



 界渡る神。
 それが真に実在しているのかどうかは、この際問題ではない。
 ラブリス・セイルハート(早春の騎士・f44762)が驚愕したのは、この辺境の地において領主たる『ラーズグリーズ』辺境伯が領民を生贄に捧げ、その無辜なる生命を奪っていたという事実である。
「な……そ、そんなことが……この領地で……!?」
「我が領土、我が領民である。そんなこととはなんだ! 我が娘の! 大事である!!」
 血走った目の『ラーズグリーズ』辺境伯。
 すでに正気ではない。
 狂気に満ちた表情を浮かべる彼は、青い鎧纏う鋼鉄の巨人、人造竜騎『エイル』を駆り、凶行を続けるために悪逆たる道を邁進するようだった。

「……あ」
 ラブリスは恐ろしいと思う以上に怒りがこみ上げる。
 戦いは恐ろしいことだ。
 いつだってわからないことだ。
 自分の膝が、肩が、体が震える。恐怖とは身を強張らせる。
 わかっていたことだ。けれど、それ以上に怒りがラブリスの体を震わせた。
「貴方様の行い、認めるわけには参りません……!」
「認める認めないではない。これは我が聖なる使命。我が子を助くる。それだけのことよ!!」
 迫る人造竜騎『エイル』を前にラブリスは果敢にも立向う。
 右腕が変貌した棘付きのハンマー。
 その一撃は鋭く速く、飛翔する『エイル』の加速と相まって絶大なる威力となってラブリスの駆る『Aeria』を打ち据えんとしている。

「人間の騎士よ!」
『獣騎トロウル』は傷つきながらも立ち上がり、その棘付きハンマーの一撃を受け止め、そらす。
「臆するな。眼の前の人造竜騎は真に邪悪なる者。その心根は正せるものではない!」
「止めなきゃ、また領民の誰かが死ぬ。そんなのはもうたくさんだろうが!」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』の白い人造竜騎と『獣騎トロウル』が人造竜騎『エイル』と打ち合う。
 そうだ。
 ラブリスは頷く。
 ここで己たちが敗北を喫するのならば、また辺境の地にて生贄として領民の生命が失われる。
 血は大河となって大地に染み込み、さらなる穢れ、さらなる復讐の輪が広がっていくだろう。
 それは許されない。
「円卓騎士の名にかけて、貴方様の行い、止めさせていただきます!」
 ためらう暇もない。 
 あるのは己が胸に抱く騎士道。
 風を操り、精霊へと呼びかける。
『ブリュンヒルド』と『獣騎トロウル』の援護をしながら、ラブリスは光球を周囲に配置していく。

「なんかやってるみてぇだが、やれんのかよ!」
「は、はい……! お二人は!」
「下がれと言うか」
「お、おまかせを……必ずや!」
「わーったよ! おら、退くぞ!」
「い、今です……! 精霊様、お願いしますっ!」
 二騎がラブリスの合図と共に下がる。
 瞬間、精霊への呼びかけと共に精霊力によって形成された光球が輝く。
 それは人造竜騎『エイル』を取り囲むようにして輝き、一瞬にして降潰す積風(ダウンバースト・ストライク)を落とす。

 その一撃は極低温の暴風。
 機体の装甲が凍りつくような一撃。
 それによって『エイル』の動きが鈍る。
「チッ……だが! 私は!」
「……そも、血で塗れた貴方様の手は……その、娘御を抱くに相応しい、でしょうか……?」
 ラブリスは問いかける。
 彼が父親だというのならば、如何なる犠牲をも払ってでもと思うのもまた理解できるところである。
 だが、その手が血にまみれて己が娘を真に抱くことができるのか。
 そう問いかけるラブリスの瞳は、狂気に震える青き人造竜騎を見つめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ランスロット・グレイブロア
成程…これは…『悪』だ
それも…『ただの悪』だ、誰かを救う事も出来ない、空虚な消費
ーーだからこそ、ここに『悪役』は『悪』を討つ!

聞け、悪に奪われた者よ!
奪われた者の嘆きに応じ、その慚愧を晴らす…それが我がUCの触媒
死者の嘆き、死者の見る夢、それらを『死者は生者の領域を犯しては行けない』という『正義』が、『死者と再会する』という『正義』に踏み躙られるならーー『悪役』は、その正義を粉砕しよう!

UCで強化されたアロンダイトブレイドを振るい、ラーズグリーズを討つ!



 炎が青き装甲を焼き、暴風が吹き飛ばす。
 青い鎧纏う鋼鉄の巨人、人造竜騎『エイル』を襲うユーベルコード。
 その光の中に未だ煌々とアイセンサーがきらめいていた。
 人類最初にして最強の人造竜騎。
 広がる翼はユーベルコードの炎と風を吹き飛ばす。
「黙れ! 我が道は、必ずや愛しき娘へと続いているのだ。それを阻むものはなんであろうと!!」
 両腕が変形し、その装甲から岩の弾丸が放たれる。
 まるで散弾銃のように岩の弾丸が猟兵達を襲う。
 凄まじい猛攻である。
『獣騎トロウル』のユーベルコードを写し取るように学び得た人造竜騎『エイル』は岩槍奪い取った人造竜騎『ブリュンヒルド』と打ち合う。

「それが不幸を撒き散らすことだってなんで理解しねぇんだよ! そうやって不幸を誰かに押し付け続けるから、現実がクソになってくんだろうがよ!」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』の声が響き、剣戟の音が響く。
 それをランスロット・グレイブロア(姫騎士は悪役に思いを馳せる・f44775)は己が乗騎にて聞く。
「成程……これは……『悪』だ。それも……『ただの悪』だ。誰かを救うこともできない。空虚な消費」
 彼女が見るのは人造竜騎『エイル』。
 青い鋼鉄の巨人。
 その力は猛威を振るうが如くである。
『ラーズグリーズ』辺境伯の成したことは言うまでもなく巨悪である。
 歯止めが効かないのだ。
 目的に向かって脇目を振らず邁進することは、確かに人間の強みであろう。だが、同時に悪癖でもあると言える。
 騎士道とは、そうした人間の悪癖を抑え込むものである。

 だが、すでに『ラーズグリーズ』辺境伯は、そうした抑えが効かない狂気を持ち得てしまっている。
「――だからこそ、ここに『悪役』は『悪』を討つ!」
 ランスロットは己が乗騎と共に踏み込む。
 暴風が吹き荒れる中、互いの人造竜騎のアイセンサーが呼応するようにきらめく。
 ユーベルコードの輝き。
「聞け、悪に奪われた者よ! 奪われた者の嘆きに応じ、その慚愧を晴らす……それこそが我がユーベルコードの触媒。死者の嘆き、死者の見る夢、それらを『死者は生者の領域を犯してはいけない』という『正義』が、『死者と再会する』という『正義』に踏みにじられるなら――『悪役』は、その正義を粉砕しよう」
「我が娘を死者と言うか! その罪、万死に値する! 貴様は幾度串刺しにしても飽きたらぬ!」
 踏み込む人造竜騎『エイル』。
 ふるわれるは剣。
 水の流れを思わせる刀身。
 ユーベルコードの輝きを受けて、煌めく。

「慚愧の慟哭よ、晴らせ我が誓約(アロンダイトロア・オールハード・ゲットオーバー)」
 振るうのは、斬撃。
 幾千もの死者の嘆きがあるというのならば、幾万もの生者の祈りが塗り替える。
 打ち合う剣と剣。
 激突する度に火花が散り、水流を宿す刃を砕く。
 しかし、水は一滴たりとて失われていない。
 砕けど、砕けぬ。
 それが水である。故に『アロンダイト』はランスロットの乗騎として、その力に答え続ける。
 ここに誓いがある。
 奪われた者の嘆きに応じ、その慚愧を晴らす。
 それを成すまでは、一歩も退くことはできない。

「……『エイル』が圧倒されるだと……!?」
「無論。貴様の乗騎が例え、幾千もの生者を食らって来たのだとしても。我が剣に宿るは、幾万もの奪われたものたちの嘆きを晴らすための祈り。故に!」
 叫びに報いる。
 そのためだけに己が剣を振るう。
 振り上げた聖剣の一閃が『エイル』の青い鎧を切り裂き、その装甲を無きものとするのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
世界を渡る、四角錐の如き……聞いたような特徴ですね。
万が一私の想像が正しければ、あれはきっと生贄を求めるような存在ではありません。
きっとキャンプでもしてあげた方が喜ぶでしょう。

ですが今はそんな話をしている場合ではありません。
この世界の常識は未だ理解しきれていませんが、騎士道やら領主やら以前に人間として許せません。
もしそれが、悲しみで心が壊れた結果であったとしても……あなたを含め全ての人達の為に終わらせます、ここで。
私に出来るのは一つ、この混戦の中を突っ切って全力を込めた剣をあの青いキャバリアにぶつける事だけ。
百獣族がこの後どう動くかは分かりませんが……彼らの言う騎士道に期待しておきましょう。



「世界を渡る、四角錐の如き……」
『ラーズグリーズ』辺境伯の語る所の神。
 その特徴に当てはまる存在をハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)はどこかで聞いたような特徴だと思っただろう。
 しかし、それは想像の領域を出ない。
 正しいと断定するには情報が足りないだろう。
 だがもし、その想像が正しいのであれば『ラーズグリーズ』辺境伯のやってきたことは、足元から瓦解するだろう。
 彼女の知る存在は、生命の生贄など求めていない。
「あれはきっと生贄を求めるような存在ではありません」
「貴様に何が分かる。あの神は、血を求めているのだ。私にはわかる。そうでなければ、これまで如何にしても私に答えなかった理由がない! まだ足りないのだ! そうなのだ、そうだとも!」
 血走った目には狂気しか宿っていない。
 青い鎧纏う鋼鉄の巨人、人造竜騎『エイル』を駆る『ラーズグリーズ』辺境伯が、その装甲より石の弾丸をハロへと放つ。

 凄まじい弾雨。
 そのさなかをハロは駆け抜ける。 
 瞳にはユーベルコードの輝き。
 如何に石の礫が弾雨のように降り注ぐのだとしても、彼女の瞳は輝いている。
「きっとキャンプでもしてあげた方が喜ぶでしょう」
「キャンプ? 何をふざけたことを!」
 迫るは鉄槌の如き一撃。
 それをハロは躱し、衝撃と共に宙に舞う。
「今はそれについて言及している場合ではありません……騎士道やら領主やら以前に私は」 
 煌めくハロの瞳が『ラーズグリーズ』辺境伯を見つめる。

「人間としてあなたを許せません」
「赦しなど求めてはいない!」
「悲しみで心が壊れたのだとしても……あなたを含めて全ての人たちの為に終わらせます、ここで」
 悲しみは連鎖していく。
 人の感情は伝播していく。 
 いずれの感情もそうなのだ。
 それが人に備わった共感性であり、社会性であるというのならばそうだろう。
 誰かの憂いに寄り添うからこそ、優しさ。
 人が感情と知性とを得て、胸の内より湧き出したのは狂気ではなく優しさなのだ。
 それを悲しみが覆い尽くすというのならば、ハロは己の名が示すようにユーベルコードによって己が体力と魔力を己が変じさせた巨大なレイピアに注ぎ込む。
 全てを断つ力。
 それこそがハロの持ち得る星砕く一撃。

「スターブレイカー……!」
 幾重にも重なる光輪。
 切っ先はただ一点を捉えている。
 そう、あの青い人造竜騎のみ。
「星を砕くと豪語するか! だが、我が人造竜騎『エイル』はぁ!!」
 振るわれる巨大な腕部。
 青い鎧纏う巨人の拳はハロの一撃をパリィする。だが、ハロは構わず進む。

 そう、この力は全てを断つ力。
 なら。
「悲しさの連鎖だって断ち切ることができる――ちぇえすとぉおぉおぉおぉぉぉぉ!」
 あらゆる攻撃を弾き返すはずの腕。
 それすらも引き裂きながら、ハロの一撃は人造竜騎『エイル』の腕部を、悲しみと共に断ち切るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
そう、我が子が彼の『しるべ』なのね
愛する者の為、すべてを犠牲にしてもいい、と
知っているわ
幼い生命を慈しむ心
奪われたものを取り戻さんと、奇跡に縋ってしまう気持ち
それでも超えてはいけない一線はある
あなたは、悲しみに壊れてしまったのね
もう引き返せないなら、終わらせましょう

『ブリュンヒルド』が岩槍を奪った、なら
今が絶好の機会
『獣騎トロウル』と『ブリュンヒルド』ともタイミングを合わせるわ
追跡をダッシュ、ジャンプで飛び躱し
『ラーズグリーズ』目掛けて早業の矢を放つ

理解と同情は別
大丈夫、わきまえているわ



 人の心にはいつだって、しるべ(シルベ)が必要だ。
 何かに向かって進むこと。
 何かを得ようと手を伸ばすこと。
 何かに憧憬を見ることも。
 全てが、道標たるものがあればこそであろう。
『ラーズグリーズ』辺境伯にとっての、それが彼の息女だったのだろう。
 それが失われたこと。
 どれだけの痛みであっただろうか。
「そう、我が子があなたの『しるべ』なのね」
「そうとも、私の、私が持ち得る最大の! それが、我が娘なのだ。それを取り戻すためには如何なる犠牲も払ってみせるとも!」
 人造竜騎『エイル』の片腕が引き裂かれ、体勢を崩した機体へと薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は高速で踏み込む。

「愛する者の為、すべてを犠牲にしていい、と」
「そうだ! それこそが愛なのだ。そうでなければ最愛などと言えるものか! あの子はこの世でたった一つの私の……宝なのだ。何者にも代えがたき!」
「知っているわ」
 静漓は知っている。
 幼い生命を慈しむ心を。
 奪われたものを取り戻さんと、奇蹟を思うことも、すがってしまう気持ちも。
 だが、静漓はもう一つ知っている。

 世の理には、決して超えてはならぬ一線があることを。
「あなたは、悲しみに壊れてしまったのね」
「黙れ! 私は変わらぬ。世界が変わったのだ。あの子の居ぬ世界など、壊れてしまえばいい!!」
 みなぎるようにして人造竜騎『エイル』のアイセンサーが煌めく。
 振るわれるは、残された隻腕。
 その一撃が静漓を捉えることはなかった。
「もう引き返せないのなら、終わらせましょう」
「止まらねぇってんなら、止めるしかねぇだろうが!」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』が己が乗騎とともに奪った岩槍を振るう。
「邪魔立てするな、盗賊騎士風情が! 家名なく、白騎士を駆るのならば!」
 槍の一撃を躱しながら、人造竜騎『エイル』の一撃が人造竜騎『ブリュンヒルド』のフェイスガードを粉砕する。
 砕け散った装甲の奥にアイセンサーがきらめき、岩槍の一撃が装甲を引き剥がす。

「行けよ! 好機ってんなら!」
『ブリュンヒルド』の声に静漓は頷く。
 悪魔の加護が煌めく。
 一気に踏み込み、静漓は飛び散る破片を蹴って宙に舞う。
 翻る体。
 軽やかなる体は、まるで羽衣が風に踊るようであった。
 彼女の瞳が見つめていたのは、人造竜騎『エイル』のコクピットにいる『ラーズグリーズ』辺境伯だった。
 心壊れ、狂気に囚われた人。
 人間の凶暴性は、時として、その心さえ歪ませてしまう。
 自らで自らを壊してしまう。
 その悲しさは言うまでもない。だからこそ。
「邪魔をするなぁぁぁぁ!!」
「わきまえているわ」
 理解と同情は同列。されど、別なのだ。
 故に彼女の放つ光の矢は、人造竜騎『エイル』のコクピットの装甲を引き剥がすように駆け抜け、大地を射抜くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルマ・フィーリア
ぐっ……損傷が激しい、けど…!!
ラーズグリーズ伯、そして何より「エイル」……その機体を、ボク達は止めなくちゃいけないんだ…!!


(損傷した乗騎を覆う鋼竜石…異界の機竜より剥がれ落ちたる|欠片《金属細胞》が増殖、人造竜騎と妖精とを呑み込んで「融合合身」し、ヒト型の機体『鋼竜殲騎アルマリヴァーレ・ドラグスキア』へと変貌します。

機体各部の装甲より展開する魔法砲撃の『バレト』と魔法の刃を生じる『ブレイド』二つの「鋼竜装」により遠近織り交ぜ交戦、損傷は金属細胞により自己修復します。

最終的には周囲への被害の出ない位置取りを取ったのち、しっぽ部位を変形させた剣による【殲剣ドラグキャリバー】での一撃を狙います)



 怒りに我を忘れた百獣族との戦いは、アルマ・フィーリア(鋼竜石の妖精・f44795)の乗騎『ドラグリヴァーレ』に損傷を与えていた。
 けれど、彼女は進む。
 進まねばならない。
 機体の状況は芳しくない。
「けど……!!」
 そう、己が意思が告げているのだ。
 あの人造竜騎『エイル』は止めなければならない。何をおいても止めなければならない。
 そして、それを駆る『ラーズグリーズ』辺境伯もだ。
 どれだけ理由があろうとも、どれだけの悲しみが心を軋ませ、歪ませたのだとしても。

 それでも生命を奪う行いを肯定することなどできはしないのだ。
「ボク達は止めなくちゃいけないんだ……!!」
 彼女の乗騎『ドラグリヴァーレ』を覆うは、欠片。
 それは異界の機竜より剥がれ落ちたるもの。
 鋼竜石と呼ばれる装甲は、増殖するようにして機体の損害を修復していく。それどころか、人造竜騎とそれを駆るアルマすらも飲み込んでいく。
「だから!『鋼竜殲騎アルマリヴァーレ・ドラグスキア』!!」
 装甲との融合変異。
 それによって現れるは、黒き竜。
 相対するは、青き人造竜騎『エイル』。

 隻腕となり、コクピットハッチを引き剥がされた先にあるのは、狂気の光。
『ラーズグリーズ』辺境伯の瞳は狂気だけを湛えていた。
「悪しき竜が、我が道を阻むのならば! この愛こそが、貴様を射殺す刃となることを知るがいい!!」
 石の礫が放たれる。
 散弾のように広範囲に放たれた一撃が『アルマリヴァーレ・ドラグスキア』へと迫る。
 だが、その装甲の奥より展開した魔法砲撃が石の礫と打ち合い、互いの境界を示すように激突しては爆発していく。
 それでも爆発の勢いは凄まじく、アルマは己の体が押し込まれるのを感じただろう。
「止める! どんな凶行にだって人が手を差し伸べるのなら!」
「貴様たちの生命でもって我が神への供物となせ! それこそが!」
「優しさだけが、狂気を止める! あなたの心は、救われないじゃあないか! そんなの悲しすぎる!」
「私が救われることに意味などない。あの子が! あの子さえ戻るのならば、私は幾千もの生命すら差し出す!」
 激突する二騎。
 弾き返される『アルマリヴァーレ・ドラグスキア』。
 機体が軋む。

 けれど、アルマは面を上げる。
 その瞳にユーベルコードの輝きがあった
「ドラグキャリバー、展開」
「如何なる障害であるのだとしても、私は!」
 迫る人造竜騎『エイル』。
 脅威を眼の前にしてアルマはためらわなかった。
 踏みしめた大地が砕け、圧倒的な加速を生み出す。
 尾が剣へと変じ、現れるは殲剣ドラグキャリバー(ドラグキャリバー・フラガラッハ)。
 携えた剣を振るうことにためらいはない。
「……斬断せよ」
 その狂気を。その悲しみを。
「断ち切れ!!」
 振るう一撃は空間そのものを断裂させる虚無の斬撃。
 如何にあらゆる攻撃を弾き返す力であろうとも、虚無を弾くことなどできはしないのだ。
 故に、アルマの斬撃は人造竜騎『エイル』の翼を断ち切るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒髪・名捨
【心境】
「まさに『勝ったほうが領民の敵となる』ってやつだな。」
正義の逆は別の正義ともいうが、悪の逆も正義じゃなくて悪なのかもな(辺境伯とトロウルの戦いを見つつ)
なんで、オレはあんたを信じる。
剣を交えた仲…だしな騎士ブリュンヒルド。
なあ、これ本当に本名なのか?

【行動】
辺境伯覚悟
寧々の『運転』するグランゼドーラに『二人乗り』で乗り込む。
『仙術』の『武器巨大化』でアーラーワルを巨大化。
『武器受け』で攻撃を受け止めつつ『カウンター』で…ん?寧々コックピットを開放してな…に…をぉぃぃぃい(≪翔撃≫で射出される)
やけくそだ『肉体変異』で『鬼の手』に変化させた右腕から繰り出す『断罪』の一撃必殺なんじゃー



 猟兵たちのユーベルコードが煌めく度に人造竜騎『エイル』は損傷を追っていく。
 隻腕になり、翼さえも切り裂かれてなお、その人造竜騎はたち続ける。
 それを支えるのは、引き剥がされたコクピットハッチの奥に座す『ラーズグリーズ』辺境伯の瞳に宿る狂気であった。
「幾千の敵があろうとも、幾万もの生命で贖わせる。我が娘を腕に抱くその日までは! 私は倒れるわけにはいかぬのだ!」
「悍ましき執着……この凶暴性が人類の業そのもの。やはり、人間は、あの日より一歩も前に進んではいないのだ」
『獣騎トロウル』は呻くようだった。
 如何に騎士道で律するのだとしても、人類は他者を脅かし続ける。
 己が望みを叶えるために如何なる犠牲をも払おうとする。 
 それがどんなに狂気に飲まれている所業だとしても、だ。

 狂気に飲まれている自覚すらなく、ただひたすらに邁進し続ける愚かさ。
「やはり、人は」
「まさに『勝ったほうが領民の敵になる』ってやつだな」
 黒髪・名捨(記憶を探して三千大千世界・f27254)は息を吐き出す。
 正義の逆は別の正義とも言う。
 悪の逆も正義ではなく、また別の悪なのかもしれない。
 名捨は『ラーズグリーズ』辺境伯と『獣騎トロウル』を見てそう思ったのだ。
 仮に己たちが『ラーズグリーズ』辺境伯を罰しても、『獣騎トロウル』たちは人間への復讐をやめないだろう。
 どの道、続くのは戦いだけの日々だ。
「なんで、オレはあんたを信じる。剣を交えた仲……だしな、騎士『ブリュンヒルド』」
「……」
 名捨が見たのは盗賊騎士『ブリュンヒルド』だった。
「信じるのは勝手だ。けれどさ、悲しみは悲しみのままにはしておけないだろ。罪も罪のままでは捨て置けない。そういうものだろう。変わり続けなければ、失われた生命と時に贖うこともできやしねぇ」
「なあ、それって本当に本名なのか?」
「家名なしの騎士にゃ、本当かどうかなんて意味のないことだ。あるのは我が騎士道に殉じる心のみってやつだよ!」
 白い人造竜騎が戦場をかける。
 手にした岩槍を持って人造竜騎『エイル』と打ち合う背中を見て、名捨は息を吐き出す。

「だよな。じゃあ、行くぜ、『寧々』!」
「お前様、言われるまでもなく」
『グランゼドーラ』を駆る二人は、人造竜騎『エイル』へと迫る。
 放たれる石の弾丸。
 躱すことのできないほどの広範囲に渡る弾丸に加えて、あの腕は隻腕となってもあらゆる攻撃を弾き返す。
 卓越した技量がなければできないことだ。
 それを人造竜騎『エイル』は可能としているのだ。
 巨大化した短槍を携え、名捨は『グランゼドーラ』に迫る石の弾丸を弾く。

「弾くだけではな!」
 踏み込まれた瞬間、振るわれる腕部が『グランゼドーラ』を弾き飛ばす。
「単純に受けるかよ! カウンター……って、『寧々』何して」
「何ってカウンターじゃろ? お前様」
「どういう……って、をぉぃぃぃい!?」
 急加速によって名捨が開かれたコクピットハッチから砲弾のように飛び出す。
 カウンター。
 確かに今こそカウンターの好機。
 だが、これは!
「オレかよ!」
「ハハハッ、イカれてんな!」
「笑いごっちゃねぇんだよ! ああ、ちくしょうが!!」
 名捨の拳がユーベルコードに輝き、まさしく人間砲弾のように、翔撃(ショウゲキ)が人造竜騎『エイル』の拳と激突する。
 力の奔流がほとばしり、互いに弾かれながらも名捨は見事に再び『グランゼドーラ』のコクピット、『寧々』の腕に抱かれるのだ。
「おかえりじゃ、お前様」
「お前さぁ……――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

トラスト・レッドライダー
亡国の主【操縦】ブリュンヒルド、獣騎トロウルと連携
彼女らへの攻撃を【武器受け】また彼らに背中を預け、
【怪力】でアンガーブレードを、剣を打ち合わせる

親が積み上げた屍の上で生きる事が、
子にどれほどの哀しみと苦痛を抱かせる事か!分かる筈だ!
貴方が贄に差し出したのは、娘の幸せな未来そのものだと!!

言葉を剣に込めて打ち込む。
彼は生来の悪鬼ではなく、悪逆に道を間違えた、子を愛する只の父親だ
だからこそ、その悪逆は正さなくてはならない

剣を躰で受け止めながらUCを発現させ【限界突破】
意思を赤刃に込め、ラーズグリーズ辺境伯に届かせる

娘が生きていると信じるなら、その愛は、
娘の幸せな未来にこそ注ぐべきだったんだ…!!



『亡国の主』と共にトラスト・レッドライダー(レプリカントのデスブリンガー・f43307)は戦場を駆け抜ける。
 白い人造竜騎『ブリュンヒルド』と『獣騎トロウル』もまた同様であった。
 彼等は『ラーズグリーズ』辺境伯の悪逆を許さじと立ち向かっている。
 だが、立ちふさがる青い人造竜騎『エイル』のちからは圧倒的だった。
 放たれる石の弾丸。
 それは『獣騎トロウル』のユーベルコードだった。
 さらには、放たれる『ブリュンヒルド』の一撃を難なく弾き返している。
 隻腕となり、翼を断ち切られて機動力が落ちているというのにだ。
 恐るべき技量である。
 果たしてそれが『ラーズグリーズ』辺境伯の技量によるものなのか、それとも人造竜騎『エイル』の性能によるものなのか。
 いずれにしても、トラストは構わなかった。

「親が積み上げた屍の上で生きることが、子にどれほどの哀しみと苦痛を抱かせることか! わかるはずだ!」
「私を前にして我が娘の心を語るか! その愚昧なる行い、愚劣にも劣る!」
 打ち据えられる剣の一撃。
 トラストはアンガーブレードでもって剣戟の音を響かせる。
「貴方が贄に差し出したのは、娘の幸せな未来そのものだ!」
「黙れ! その口で我が娘のことを語ることは許されぬ!」
 打ち合う度に心が響く。 
 トラストは己の心に『ラーズグリーズ』辺境伯の心の傷を映し出す。
 想像するしかない。
 眼の前の男は、生来の悪鬼ではない。
 悪逆に道を間違えただけの、ただの、何処にでもいる男であり、父親でしかないのだ。
 子を愛するただの父親。
 それを懸命に果たそうとして、道を踏み外しただけの男なのだ。

 だからこそ。
「だったら尚更だろうがよ!」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』の声が響く。
「あんたが親をやるってんなら、尚更、誰かの生命を生贄にするなんて考えをしちゃいけなかったんだ。失われた生命は回帰しない。あんたの哀しみは、誰かの哀しみを映し出すことはなかっていうのかよ!」
 弾かれる『ブリュンヒルド』と入れ替わるようにトラストは踏み出す。
 己の心が燃える。
 心は炉心だ。
 故に、燃え上がる。

 赤き騎士は、赤熱する。

「娘が生きていると信じるなら、その愛は!」
「すでに私は踏み出したのだ! 最早後戻りすることなどできはしないのだ! 時は未来に進む。どうしようもなく、あの子のいない時間を置き去りにして!!」
 燃やせ、とトラストは己が心の中で呟く。
 己が心を、魂の代わりに、赤き血潮の代わりに心を燃やせと呟く。
 アンガーブレードに宿るのは赤き刃。
 その一撃は人造竜騎『エイル』のあらゆる攻撃を弾き返す力を切り裂く一閃。

「な……っ、何だ、その力は!」
「あなたは、娘の幸せな未来にこそ注ぐべきだったんだ……!!」
 その愛をこそ。
 誰かを思う愛を。
 故にトラストは己が斬撃を人造竜騎『エイル』に叩き込み、その装甲を引き剥がすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・タタリクス
人造竜騎『エイル』!?
こんなところでエイル様の名残に巡り合うとは

ですがこの死臭
戦いの先に、平和も祈りも求めず
平和を作り出す為の戦いでもなく
ただただ|死を貪った《足踏みをしていた》というのですか
そんなことにエイル様のお名前を?

……チッ
久しぶりにブチギレそうです

齎される結果を鑑みず
求められるままに力を振るったことが
原罪となったのならば
潔斎行路とはそれらを省み
力の意味を知る事なのでしょうか
ならば『間違っている』とぶっ飛ばされるのもまた潔斎行路
ええたぶん

良いでしょう
本人の意思ではなくとも主人が道を誤るのであれば
地獄に落ちようとも諫めるのもまたメイドの役目!

ブリュンヒルド様
申し訳ありませんが私も『退けなく』なりました
共に戦う事お許しください

しかし白きキャバリア……閃光のブリュンヒルド?
ここで『また』青と白が交わるとは……これもまた禊ですか

私が合わせます&空から仕掛けます
フォル!!【アン・ナンジュ・パス】!!
ブリュンヒルド様の支援と見せかけて
私も全力で仕掛けるとしましょう!
死の天使、かわせますか!?



 青い鎧纏う鋼鉄の巨人。
 人造竜騎『エイル』。
 その名は、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)にとって望むものではなかった。
 いや、望み続けたものでもあったが、このような形で相まみえることになるとは思いもしなかったのだ。
『エイル』。
 その名はいくつかの世界にて見受けられるものである。
 時に人の名であり、時に戦術兵器の名でもあった。
 今まさに眼の前にあるのは人造竜騎。
 青い鎧の巨人

 これは偶然なのか。
 それとも必然なのか。
 確定した過去が未来を定めるのと同じように、今ステラの眼の前にある人造竜騎は、起こり得る未来が過去と重なることを示すのか。
「よもや、こんなところで『エイル』様の残穢に巡り合うとは……ですが、この死臭」
 戦場に立ち込める死臭。
 その源となっているのは、他ならぬ人造竜騎『エイル』である。
 引き剥がされたコクピットハッチ、その奥に座す『ラーズグリーズ』辺境伯の狂気に満ちた瞳をステラは認める。
 あれが死臭の根源。
「戦いの先に、平和も祈りも求めず。平和を作り出す為の戦いでもなく」
「求めるは我が娘のみ。其れ以外など、些末」
「ただただ|死を貪った《足踏みしていた》というのですか? そんなことに『エイル』様のお名前を?」
 ステラの頭の奥で何かが切れた音がした。

 一線を容易に踏み越えられたような気分だったt。
「……チッ」
 舌打ちしていた。
 思わず。
「久しぶりにブチギレそうです」
 もうキレている。
 キレッキレである。
「もたらされる結果も鑑みず、求められるままに力をふるったことが原罪となったのならば」
 眼の前の人造竜騎『エイル』に意思はない。
 あるのは、嘗ての百獣族を虐殺した時に受けた怨念と、『ラーズグリーズ』辺境伯が一身に受けた生贄と捧げた生命の怨嗟のみ。
 集約されていく罪。
 そこに大義などない。
 あるのは、結局エゴでしかないのだ。
 彼の愛娘を取り戻す。
 その一点において、あらゆる罪過を集約した存在。それが人造竜騎『エイル』なのだ。

「潔斎行路とは、それらを省み、力の意味を知ることなのでしょうか。ならば、『間違っている』とぶっ飛ばされるのもまた潔斎行路。ええ、たぶん」
 ステラの腹は決まった。
 女は度胸。メイドは狂気。
「わけのわからぬことを!」
「それはこちらのセリフです! よいでしょう、本人の意思ではなくても主人が道を誤るのであれば、地獄に落ちようとも諌めるのもまたメイドの役目!」
「諌言など!」
 迫る人造竜騎『エイル』の剣。
 鋭い剣閃。
 その一撃を受ければ『フォルティス・フォルトゥーナ』の装甲は容易く両断されるだろう。

 その一撃を受け止めたのは白い人造竜騎『ブリュンヒルド』であった。
「油断すんなっての!」
「申し訳在りませんが、私も『退けなく』なりました。共に戦うことをお許しください」
「もとよりそのつもりだっての!」
 しかし、とステラは頭の冷静などこかで思う。
 白い人造竜騎。
『ブリュンヒルド』。
 閃光の如き機動は、ここでも『また』交わるというのか。
 いや、これもまた禊だとでもいうのだろうか?
「だが、今は! フォル!」
 翻るようにして宙を飛ぶ『フォルティス・フォルトゥーナ』。
 すでに人造竜騎『エイル』は飛翔することはできない。損傷によって、できないのだ。
 ならばこそ、『フォルティス・フォルトゥーナ』は空を自由に飛び、ブレイクターンからの高速機動マニューバによって、一直線に……それこそ、天雷のように人造竜騎『エイル』へと飛び込み、その射撃武装の全てを弾雨のように注ぐのだ。
「死の天使、躱せますか?」
 いいや、躱すことなどできはしない。
 弾丸の雨に打たれて、青い装甲が砕け、その機体を大きく傾がせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ファルシータ・フィラ
ラーズグリーズ辺境伯さん?
はっきり申し上げますと、狂うのは勝手ですが
他人様に迷惑をかけないでいただけませんこと?

失うまでその尊さを知り得ない
確かにそうでしょう
経験無きモノは想像できても実感できませんし
しかしながら
それを強要する必要はありませんわ
それにグリモアは人を救いません

過ちを振り返らないのならば
それは知性ではなく
ただ強くなるだけの力など
より強い力でねじ伏せられるだけ!

ティタニアを騎士型へ変形
ブリュンヒルド様を支援する形で
妖精の様に舞います
ファータ・バラージで仕掛けつつ
ティラトーレ・シールドランスでの刺突と
ファータ・レイでの零距離射撃
【オーバーブースト・マキシマイザー】!
決めてみせますわ!!



 砕ける青い鎧の如き装甲。
 人造竜騎『エイル』を駆る『ラーズグリーズ』辺境伯の咆哮が轟く。
「負けるものか。この程度で、退くことなどできるものか。これこそが、我が神が私に与えたもうた試練なのだ! ならば、この先にこそ娘がいるのだ……それを!!」
 それは狂気だった。
 愛は狂気に歪む。
 歪められたものは、元には戻らない。
 そして、彼の行ってきた凶行も回帰することはない。なかったことにもならない。
 故に、ファルシータ・フィラ(アレキサンドライト・f44730)は告げる。
「はっきり申し上げますと、狂うのは勝手ですが、他人様に迷惑をかけないでいただけませんこと?」
「迷惑? 我が娘のことが、迷惑? 領主たる私の娘を救うことの何が迷惑か!」
「それ、それですわ。失うまでその尊さを知れない。あなたはそうおっしゃいました。確かにそうでしょう」
 経験無きモノは想像できても実感できない。
 そういうものなのだ。

 だが、とファルシータは頷く。
「それを強要する必要はありませんわ。それにグリモアは人を救いません」
 未来を垣間見せるだけなのだ。
 望まれない未来を。
 世界の破滅の一歩手前を見せるだけだ。
 人を救うことはない。結果的に救うことになったとしても、それは世界を救うことに付随したことでしかないのだ。
「過ちを振り返らないのならば、それは知性ではなく。ただ強くなるだけの力など、より強い力でねじ伏せられるだけ!」
「黙れ! 我が人造竜騎『エイル』はァ!!」
 迫る人造竜騎『エイル』は翼を失い、機動力が半減している。
 隻腕となって攻撃能力もまた同様である。
 だが、それでも迫る速度の踏み込みは尋常ならざるものであった。

「『ティタニア』!」 
 飛翔形態から騎士形態へと変形した『ティタニア』と共にファルシータは『ブリュンヒルド』と共に戦う。
「ハッ、最強を豪語する割には、振り回されてんじゃあねぇかよ!」
 手にしたロックスピア、岩槍が人造竜騎『エイル』へと叩き込まれる。
 周囲を舞うは『ティタニア』。
 狙いを絞らせぬ飛翔は、その機体よりシールドランスの一撃を叩き込む。
「オーバーブースト・マキシマイザー! 決めてみせますわ!」
 放たれる一撃。
 神速とも言える『ティタニア』の踏み込みは人造竜騎『エイル』の装甲を貫き、頭部のフェイスガードを粉砕する。
 飛び散る破片。
 互いに交錯する瞳。
『ラーズグリーズ』辺境伯にあったのは、狂気だけだ。
 愛は狂気に変わる。
 それは悲しいことだが、しかし、他者の生命を奪うことの正当性にはなりはしない。だからこそ、ファルシータは思うのだ。

 己の推し事だって同じだ。
 愛とは一歩間違えば狂気に堕すもの。
 故に律せねばならぬのだ。強固なる推しへの感情。激重と言われようとも、それは己を律する重みとして我が衝動を抑えるのだから――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

真宮・響
【雷炎の絆】で参加

娘、か。確かに4人の子供達いずれかが死んだらアタシと律はどうなるかわからない。でもあの子たちは多くの人たちの生贄で復活するなんてよろこばない。

ラーズクリーズ。神とやらはそんなこと要求してきた時点でおかしいとおもわないかい?娘さんは喜ぶかい・・・所詮アンタは捨てゴマだ。殺しをさせる為の。

律、地上戦は任せたよ!!アタシは上からいく!!赫灼の騎士発動!!全力を持ってランスと槍でブッ刺す!!

覚えておきな。我が子は他人に価値あるものといわれても本当にわかってあげられるのは親だけだ!!多数の生贄を前提にした取引なんかで子供は喜ぶと思うかい?

同じ親として、アンタを討つ!!


真宮・律
【雷炎の絆】で参加

ああ、響のいうとおり、俺も子供たち4人いずれかが死んだら何があったらわからんな。響、伯爵の娘は神隠しにあっただけだ。でもたとえいきていても対価が報酬に見合ってない。神とやらは親心につけこんで沢山殺戮させるつもりだろうな。

俺は傭兵だ。ラーズクリーズ、アンタは引き返せないところまできている。これ以上犠牲が出る前に止めさせてもらうぜ。

響が飛んでいってしまった・・・空中戦得意な相手なんだぞ?でも娘ときいて地雷をふまれて怒っているな。黒雷の意思で援護するぜ!!悪いが俺たちは戦場を二人で散々駆け抜けている!!

なあ、ラーズクリーズ。たとえ娘が生きて帰ったとしても、どの面さげて向き合う?



 全ては娘のために。
 神隠しによって消えた娘を再び腕に抱くために。
 それは『ラーズグリーズ』辺境伯の全てであったのだろう。
 他に何もいらない。
 そう思えるものがある、というのは誰しもにもあり得るものであった。
 少なくとも、真宮・響(赫灼の炎・f00434)にもある。
 確かに、と思うのだ。
 自分の四人の子供たちのいずれかが死ぬのだとしたら、己と真宮・律(黄昏の雷鳴・f38364)はどうなるのかわからない。
 生きてはいられないだろう。
 そう思えるほどにこみ上げる不安があった。
 だが、そこに失ったものを取り戻す手立てがあるのだとしたら?

 手を伸ばすだろうか。
 他の何をも振り払ってしまうだろうか。
「アンタの気持ち、解らないでもないよ。アタシも子の親だ。そう思ってしまうのも、無理なからぬことだってね。でも」
 響は同じ親として同情でも憐憫でもなく、その瞳に怒りをにじませていた。
「でも、あの子達が例え信だとしても、多くの人の生命で、生贄で復活するなんて喜ばない」
「ああ、響きの言う通りだ」
 律もまた同じだった。
 自分もあの子達の身に何かがあったのならば、と考える。
 それに、と律は思う。
 彼の言う所の神とは、本当に存在しているのか?
 していたとしても、多くの生命という贄を持ってさえ答えないのならば、それは。
 真なのか。
「黙れ。失いもしないものが、失ったものの心情を語るなど!」

 怒りに塗れた声とともに失われた腕部がロックハンマーへと変貌する人造竜騎『エイル』。
 その強烈なるユーベルコードの輝きは、損壊した機体をまるで思わせないほどの動きだった。
 踏み込まれ、叩きつけられる一撃。
 その衝撃を受けながら響は叫ぶ。
「『ラーズグリーズ』、神とやらはそんなことを要求してきた時点でおかしいと思わないかい? 本当にそれは、あんたが見たものなのか? あんたの狂気が見せた幻影ではないのかい?」
「私は見たのだ。我が神を! 我が娘の価値を! それを!」
「それで、娘さんが喜ぶかい?」
「喜ぶとも、父の元に戻ってきたのだ、喜ばぬわけがない!」
「その血に塗れた手で、娘を抱くことさえ、想像できなくなったんてんなら!!」
 響の瞳がユーベルコードに輝く。

 瞳が告げる。
 律は何も言わずに頷いた。
『ラーズグリーズ』辺境伯は、もう引き返せない所まで来ている。
 これ以上は、いらぬ犠牲でしかない。これまでもそうであったように、止めねばならない。
 哀しみが広がっていくのは、見るに絶えない。
「るべきものは必ず護る!!それがアタシの信念だ!!」
 律は、赫灼の騎士(カクシャクノキシ)の背中を見送ることしかできない。
 例え、彼女は己が止めても飛ぶだろう。
 それほどまでに怒り、憤っているのだ。
 なら、己が示すのは、黒雷の意志(クロイカヅチノイシ)。
 
 戦場に降り注ぐのは黒き雷。
 人造竜騎『エイル』はこれを躱すだろう。だが、それでも降り注ぎ続ける雷を躱しながら、騎士たる響の一撃をも躱すことはできない。
「なあ、『ラーズグリーズ』。例え、娘が生きて帰ってきたとしても、その面は見せられないだろう。そんな狂気に染まった父の顔は、娘に見せるものじゃあない。あんただって人の親だろう。だったら、子に示すのは、そんなものじゃあないはずだ!」
 吹き荒れる嵐。
 注ぐ雷が人造竜騎『エイル』の駆体を捉えた瞬間、響が手にしたランスと共に飛び込む。

「覚えておきな。我が子は他人に価値あるものと言われても、本当にわかって上げられるのは親だけだ!!」
「私が最も理解しているのだ。それを!!」
「だったら、なおさらだ! 同じ親として、アンタを討つ!!」
 振りかぶったランスの一撃が人造竜騎『エイル』の胸部を貫き、穿つ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

わーこっちもしっちゃかめっちゃかだー
んもーキャンピーくんなにやってるのー?
まあキャンピーくんは昔からそういうとこあったよねー
いやあったかな?

んもー…
人をコストにしちゃダメだよ
ましてやキミの娘さんは…

●答え合わせ
【第六感】でなんとなーくどうなったかは分かるけど
UC『歪神』を使って全知からちょっとだけ情報を引っ張り出そう
んもー、全知からちょっとでも情報や知識を取り出して記憶に残すと頭痛くなるのにー

いいかい、キミの娘さんは―――
と伝えて

最期にちょっと話す?



「わーこっちもしっちゃかめっちゃかだー」
 眼の前に広がる戦場。
 ユーベルコードの明滅。
 散るは人造竜騎の装甲の破片。
 二騎の人造竜騎と『獣騎トロウル』。そして猟兵たち。
 その戦いの余波というものは凄まじいものであった。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、その光景を見やり、いや、いつもどおりかなーと思う。
 というか、とロニは『ラーズグリーズ』辺境伯の語る所の神とやらに心当たりがあった。

「彼の言う所の神って『キャンピーくん』のことかなー? んもー、『キャンピーくん』ったらなにやってるのー? まあ『キャンピーくん』は昔からそういうところあったよねー」
 いや、あったかな?
 記憶違いかな?
 そもそも、『ラーズグリーズ』辺境伯の言う神が本当に『キャンピーくん』なのかもわからない。
 でもまあ、純粋であるがゆえに善悪を超越することだってあるだろう。
 全てはキャンプが優先されるのならば、そこに人間の善悪や思惑なんてものは関与することもできはしないだろう。

 だがしかしである。
 神性として、一言言っておかねばならない。
「んもー……人をコストにしちゃダメだよ。ましてやキミの娘さんは、生きているだからさー」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
「決まっている。生きていなければならぬ。真に価値あるものは、それだけで生きることを続けねばならぬ。我が娘は、私が捧げた生命の数以上の価値があるのだ。それを!!」
「いやまー、そうなのかもしれないけれど、他人から見たら、唯一つの生命以上でも以下でもないんだよねー?」
 ロニは首を傾げる。
 おかしいね、と笑うようでもあった。
 生命は生命だ。
 どんな生命だって同じだけ価値がある。
 上下なんてないのだ。けれど、時として人は生命にすら上下を見出す。

 あれはダメ、これはよい。
 あっちはくだらない。こっちは尊い。
 一つの事柄にたいして、そうやって価値を決定したい。したがる。
 そういうものなのだ。
「いいかい、キミの娘さんは、割と幸せだろうし割と不幸せだったと思うよ? 今も生きているから、どんな最後になるかなんてわからないけれど」 
 それでも、とロニは笑う。
 それって他の人間の人生とおんなじだ、と。
「だから、特別キミの娘さんだけが、父親との別離を経験したって、特別不幸ってことはないのさ。人は頼まれなくたって生きていくものだよ」
「違う! 我が娘は、我が庇護の元にあらねばならぬ!」
「いいや、いつかは巣立っていくものさ。キミの娘さんは、もしかしたら、他の人よりそれが早かっただけなのかもしれないよ?」
 まあ、それを今の君に言ったところで、とロニは首を傾げる。

「答え合わせはこれまでにしておこうか。もう頭痛いしー」
 ロニは記憶に残すと頭痛が酷くなることを理由にユーベルコードによって引き込んだ情報を消す。
 だって、それはもう起こったことだからだ。
『ラーズグリーズ』辺境伯が知り得ないことであったし、また知ったところで、すでに定まったものである。
 失われた時間は、もう取り戻すことはできないのだ。
 時間の流れが一定でなくたって、過ぎ去ったものは戻ってこない。
「生きているのなら、会えることもあるかもしれないね!」
 だから、とロニは笑ってユーベルコードの輝きを己が手の中に収めて、狂気の瞳を持って見上げる父親の顔をい下ろすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ジークリット・ヴォルフガング
●POW【騎士】

如何に悪逆の道に堕ちたのかと思えば、なるほど…消えた我が子を想っての事か
掛け替えのない宝がこの世から消えた喪失感は同情するが、同時に憐れみの念も否めない
東洋には多くの子を養う為に人の子を攫い喰らってきた悪鬼を改心させる為に一番可愛がっていた子を隠し、子を奪われた親の苦しみを解らせた逸話があるが…貴様は一体何人もの罪なき親と子を手に掛けた?

とは言え、狂っても領主だ
相手がオブリビオンマシンでなければ破壊せず無力化させ、牢にでも繋いで頭を冷やして貰うしかあるまい

…そして、ここに誓おう
貴殿の愛児は界を渡り来訪した猟兵が探し出し、再びその腕に返すと

同席したガラの悪い盗賊騎士に同意されたが、確かにその心意気は騎士だろう
その縁でキャバリアを駆っていたので援護を頼んだが…着弾地点を爆炎で包むとは中々派手にやるな
だが、一見すると無茶苦茶だが動線は確保されている
獣騎トロウルが放つ岩の弾丸…これを踏み台として跳び、爆炎の中から人造竜騎『エイル』を強襲だ

星剣…解放!
行くぞ、ゾディアックブレイク!


ザビーネ・ハインケル
●POW【騎士】

ハッ、これまた泣かせる話じゃねぇか
けどよぉ…コイツだけはハッキリ言わせておくぜ
目に入れても痛くねぇ愛しい我が子を喪ったあまりにロクでもねぇ邪法に手を出した時点で領主失格だってな
これが先に分かってたら消し炭にした|百獣族《バルバロイ》の連中も眠らさせるだけにしてたところだが…ま、領主をあの|人造竜騎《キャバリア》から引きずり下ろしたらで八つ裂きにしろと騒いでただろうがな

お、奇遇じゃねぇか人狼な騎士さんよ
オレもアイツを生かして、犯した罪を生涯償わせるのに賛成だ
ガキが帰って来た時に親が処刑されてたら…だしな?
そうなりゃ、あのトロウルとやりあうかも知れねぇが…そん時はそん時だぜ!

いくぜ、人造竜騎召喚!
来い!ガラドリエル!!
金を持ち逃げするのに必死だった悪徳領主が遺した唯一のお宝だ
登場が遅れた分、大暴れさせて貰うぜ!
|多重爆炎弾《ブレイジング・バレットストーム》!!

オラオラ!
躱してばかりだと領内は焼け野原になるぜ!
ま、人家や畑は外してるけどな?
あとは狼ゴリラな騎士さんに任せるぜ



『ラーズグリーズ』辺境伯が如何にして悪逆の道に堕したのか。
 理由は聞けば単純なものであったのかもしれない。
 神隠しによって消えた息女。
 この世界にはすでにいないのであれば、どれだけ捜索の手を広げようと無意味だったのだ。
 細君を亡くし、残されたのは愛娘のみ。
 であるのならば、彼が執着するのもまた頷けるところであった。
「……消えた我が子を想ってのことか」
 ジークリット・ヴォルフガング(人狼の傭兵騎士・f40843)は、『ラーズグリーズ』辺境伯にとって、かけがえのない宝こそが娘であったことを理解する。
 同情もする。
 喪失感は人の心に穴を開ける。 
 開けられた穴は、塞がらない。埋めることは出来るが、しかし、失ったものと同じものではないのだ。
 決して、元には戻らない。
 だからこそ、憐れみも否めない。

「東洋にも似た話があるな。多くの子を養うために人の子を攫って食らってきた悪鬼を改心させる噺が」
「悪鬼など。この私を、悪鬼と言うか。我が娘を思う親を、悪鬼と!!」
「ああ。そのとおりだ。その死臭……貴様は一体何人もの罪なき親と子を手にかけた?」
 己が子を隠された時、その苦しみを悪鬼は理解しただろう。
 その逸話が示すように『ラーズグリーズ』辺境伯もまた理解すべきだったのだ。
 我が子戻らぬからと、他者の生命を犠牲にしていい理由などないと。
 だが、彼は止まらなかった。
「知ったことか」
 そう、止まらなかったのだ。

「ハッ……泣かせる話なのかもしれねぇが、コイツだけはハッキリ言わせてもらうぜ」
 ザビーネ・ハインケル(Knights of the Road・f44761)は、狂気に満ちた『ラーズグリーズ』辺境伯と、多くの戦い経て傷ついた人造竜騎『エイル』の前に立つ。
 臆する必要もない。
 お気後れする必要もない。
 あるのは、一言申さねばならぬという気概のみ。
『目に入れても痛くねぇ愛おしい我が子を失ったあまりロクでもねぇ邪法に手を出した時点で領主失格だってな」
 ザビーネは首を傾ける。
 掌で首をはねるような仕草もしてみせた。
 そう、眼の前の領主は騎士道に悖る悪逆である。

 もしも、ザビーネがこの事実を知っていたのならば、先んじて戦った百獣族も眠らせるだけにとどめただろう。
 だが、どちらにしたって、この領主の姿を見れば八つ裂きにしろと騒ぎ立てていただろう。それはそれで面倒だ。
「狂っても領主だ。牢にでも繋いで頭を冷やして貰うしかあるまい」
「ま、それで罪滅ぼしってわけにゃいかねぇだろうがな……ま、人狼な騎士さんよ。オレは賛成だぜ、その案」
「そうか。ならば」
 ジークリットとザビーネは並び立つ。
 迫るは半壊した人造竜騎『エイル』。
 そして、白き人造竜騎『ブリュンヒルド』である。

「ぶっ飛ばす!」
 盗賊騎士『ブリュンヒルド』は、その機体の装甲を剥離させながらも、未だたち続けている。
 彼女が立つのは、親の仇を討つためではない。
 悪逆を正すために戦うのだ。
 その気概に騎士たるジークリットは笑む。
「ならば、誓おう。貴殿の愛児は界を渡り来訪した猟兵が探し出し、再びその腕に返すと」
「ハッ、だよな。ガキが帰ってきた時に親が処刑されたら……だしな」
 死して贖うより、生きて贖う。
 それはともすれば苦難の道程であろう。 
 仮に悪逆たる領主を活かすのだとすれば、百獣族や領内の人間たちの反発もあるだろう。
 だがまあ、とザビーネは笑う。
 その時は、その時!
 そう、生きているのなら、いくらでもやり直すことができる。
 生命は回帰しないというのならば、『ラーズグリーズ』辺境伯の生命だって回帰しないのだ。

「いくぜ、人造竜騎召喚! 来い!『ガラドリエル』!!」
 それは嘗て悪徳領主が置き土産。
 いや、唯一持ち出せなかったものであるともいえるであろう人造竜騎。
 タイタニアキャバリア。
「登場が遅れたぶん、大暴れさせてもらうぜ! 多重爆炎弾(ブレイジング・バレットストーム)!!」
 放たれるは高速の炎弾。石の弾丸と激突しては融解させ、爆発が周囲に撒き散らされる。
「わっち! 加減しろよな!」
『ブリュンヒルド』の言葉にザビーネは笑う。
「躱す暇なんて与えねーよ! 焼け野原になる前に終わらせやがれ!」
「まったく……なんともガラの悪い騎士だ」
 ふう、とジークリットは息を吐き出す。

 盗賊騎士とは言え、その本質、心意気は騎士そのものだとジークリットは頷いた。
「派手にやりすぎだ。だが」
 一見するとメチャクチャな攻撃だ。
 けれど、こちらの動線は確保されている。これが計算済みだというのならば、大したものである。
「やるようだな……行こうか、『ブリュンヒルド』」
「ああ! 行くぜ!!」
 閃光のように白い人造竜騎『ブリュンヒルド』が戦場を駆け抜ける。

 すでに人造竜騎『エイル』は翼を失い、その装甲の多くを脱落させている。
 胸部の装甲は切り裂かれ、その奥に炉が露出している。
 攻め込むのならば今しかない。
「星剣……解放!」
「さあ、ぶち込んでやれよ、狼ゴリラな騎士さんよ!」
「一言余計だ。行くぞ!」
 きらめくユーベルコード。
 放たれる超重力の一撃。
 それは周囲に撒き散らされた炎さえもかき消しながら、人造竜騎『エイル』へと叩き込まれる。
 例え、その機体がユーベルコードによってあらゆる攻撃を弾き返すのだとしても。
 それでも、ジークリットは構わなかった。
 己が一撃は、あらゆる防護を削減させる。
 そう、このゾディアックブレイクの一撃は最後の一撃を届かせるための布石。

「征け、騎士よ。その胸に宿すのが復讐の怒りではなく、恩讐の彼方を見やる騎士道に律された心であるというのならば!」
 白い『閃光』が疾走る。
 手にした岩槍。
『ブリュンヒルド』は渾身を込めて、その岩槍を投げ放つ。
 重なるユーベルコードの軌跡はぶつかり合いながら炎と重力を重ね合わせて空間をも切り裂くようにして、人造竜騎『エイル』の炉を貫きながら虚空へと消えゆく。

 崩れ落ちる人造竜騎『エイル』は、大地に膝をつき、剥がされたコクピットハッチから『ラーズグリーズ』辺境伯を吐き出すようだった。
「あんたには罪ばかりが残るだろうがよ……けど」
『ブリュンヒルド』はもう剣を向けるつもりはないようだった。
 ジークリットとザビーネは見ただろう、恩讐の彼方を。
 人の罪は咎を生む。
 だが、見なければならないのは、罪と咎ではないのだ。
 真に見なければならないのは、人の本質。
 変えようのない本質こそが、人の業であり、また同時に救いであるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
…まあ、色々と人の世も大変だ
人の心こそこの世の悪とはよく言った物で、げに恐ろしきはなんとやら

あれ?
…え!?
ラーズグリーズとやり合う流れなのこれ!?
なんかやだなあ…
だってそれを裁くのは、スポット参戦なこっちでも蘇った過去でも無いと思うし
という訳でそっちは盗賊騎士さんに丸投げ!
がんばれ!がんばれ!
私は当初の目的通り、獣騎トロウルを討つ!

祈り此処に在らずとも
願い此処に在らずとも
誓い此処に在らずとも
正義此処に在らずとも
超克の力、此処に在り!
超克、オーバーロード!
外装展開、模造神器全抜刀

ラーズグリーズは悪人ではあろうけど、外野がどうこうするのはお門違いさ
獣騎トロウル、その義憤はとても当然な事なんだろうけど、これはこの世界で今を生きる人間の話
私達外野は、外側で茶化すのがお似合いだよ
【偽書・焔神】起動
4剣全てに蒼炎を纏わせ、炎の放出で遠距離から牽制しつつ接近
纏った蒼炎で装甲を熱し溶かしながら斬り裂く!
上半身は随分と暴れてるみたいだから下半身狙い!
外装の腕と剣で敵の攻撃を「武器受け」
トロウルを引きつける



「……まあ、色々と人の世も大変だ。人の心こそこの世の悪とはよく言ったもので、げに恐ろしきはなんとやら」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は人造竜騎『エイル』を駆る『ラーズグリーズ』辺境伯と猟兵たちの戦いが決着したことを知る。
 彼女にとって、それはなんとも嫌なものだった。
 人の罪、人の業、それを裁くのは己達ではないと彼女は思っていたのだ。
 それに、蘇った過去もまた裁く権利などない。
 もしも、この場で『ラーズグリーズ』辺境伯を裁くことができるのは、当事者たる盗賊騎士『ブリュンヒルド』だけであったことだろう。
 彼女ならば、と思っていた。

 そして、彼女の槍の一撃が人造竜騎『エイル』のむき出しになった炉を貫き、その炉ごと、槍が星の重力と炎が重なり虚空へと消えたのだ。
 吐き出されるようにして落ちた『ラーズグリーズ』辺境伯を彼女は殺さなかった。
 生きているのならば、贖うことをしなければならない。
 殺すだけが贖罪ではないというのは、誰にでも下せる決断ではないだろう。
「がんばれ! がんばれ!」
 今も尚、葛藤が彼女の中にはあるのかもしれない。
 けれど、その葛藤を越えるからこそ、人はより善きへと進むことが出来るのだ。

 そして、玲は振り返る。
 そこに立っていたのは『獣騎トロウル』であった。
「悪逆たるものを赦すのか」
「確かにあの人は悪人だろうけどさ」
 玲は振り返り、『獣騎トロウル』を見上げる。
 煌めくは、超克の輝き。
 祈りは此処にない。願いもない。誓いもまたない。
 何より、正義もない。
 されど、克己する力はあるのだ。
 吹き荒れるようにしてオーバーロードの光が玲より放たれ、外装が彼女の周囲に浮かぶ

 巨大な腕。
 鋼鉄の腕部に携えたのは、模造神器。
 二振りの模造神器が抜刀され、また彼女の手にもまた抜き払った蒼き刀身がある。
「外野がどうこうするのは、お門違いさ」
「だが、それでも我らが怒りは正しきものだ。そして、悪逆は誅することで正される。それが世の習い、世の常なるぞ」
「その義憤はとても当然なことなんだろうけど、これはこの世界で今を生きる人間の話」
「我らが介在する余地はないと?」
「そうだよ。私達は所詮、外野。外側で茶化すのがお似合いだよ」
 煌めくはユーベルコード。

 相容れない。
 相容れると思うことのほうがおかしい。
 対峙するのは猟兵と過去の化身。 
 滅ぼし、滅ぼされる間柄でしかない。
「であるのならば、尋常に勝負。汝の語る言葉を否定してこそ、我が怒りは真の正当性を得るであろう」
「変な所で一本気なんだよなぁ……でも!」
 吹き荒れるは浄化の蒼き炎。
 刀身に纏う炎は、迫る石の弾丸を焼き払う。
 切り払うようにして打ち出された斬撃によって石の弾丸は溶けて落ちるだろう。だが、次の瞬間『獣騎トロウル』は腕部を槌に変形させて玲へと叩きつける。

 その一撃は交錯させた外装の機械腕さえもきしませる。
 遠距離からの牽制など無意味だというように『獣騎トロウル』は槌の一撃でもって玲をその場に留めさせる。
「力なき正義など、悪にも劣る。そして、心忘れた正義は!」
「だから、心を律さなければならないってんでしょう!」
 引き付け、打ち払う。
 四振りの模造神器をもって打ち合う剣戟の音。
 剣が心を映すというのならば、玲は知るだろう。
『獣騎トロウル』の義憤を。
 贖罪など、都合の良い言葉でしかないのだと憤る心を。

 だからこそ、玲は真っ向から『獣騎トロウル』を打ち払い、その腕部を切り裂く。
 蒼き炎が『獣騎トロウル』の身より引き、四振りの刀身に集約されていく。
「……見事」
 放たれる二連十字。
 交錯した斬撃は『獣騎トロウル』の体躯を切り裂き、その身を霧散させていく。
 正々堂々たる戦い。
 怒りに飲まれぬ義憤があればこその決着。
 玲は剣を収め、もう一度呟く。

 怒りに我を忘れぬものがいた。
 義憤にこそかられるものがいた。
 なら、盗賊騎士『ブリュンヒルド』は恩讐の彼方を見つめる。その先に何があるのか、今はまだ何も知らなくても、その決済行路を進むしかないのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年11月08日


挿絵イラスト