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地竜の翼は憎悪に堕ちる

#バハムートキャバリア

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#バハムートキャバリア


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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「バハムートキャバリアのとある村に、|百獣族《バルバロイ》の呪いがかけられました」
 かの世界の人類は、かつて|人造竜騎《キャバリア》の力で神に選ばれし百の種族を滅ぼした。いにしえより伝わる|聖なる決闘《トーナメント》ではなく、女子供さえも根絶やしにする非道な殺戮をもって。その当時に凄惨な最期を迎えた|百獣族《バルバロイ》の中には、怒りと憎しみに染まりきってオブリビオン化する者も少なくない。

「その|百獣族《バルバロイ》は、かつて己を滅ぼした張本人である人間の子孫が暮らす村を見つけだし、その地に呪いをかけてしまいました」
 |百獣族《バルバロイ》の呪いは生物のみならず土地そのものを汚染して蝕む。そもそもの非は人類にあるにせよ、放置するには少々やり過ぎと言えよう。このまま無秩序に呪いが広がっていく前に、猟兵の手でオブリビオン化した|百獣族《バルバロイ》を撃破し、呪いを解かなくてはならない。
「|百獣族《バルバロイ》の元に赴くには、皆様も土地にかけられた呪いを攻略しなければなりません」
 その呪いは『酒池肉林の花園』。踏み入る者に豪奢で堕落した暮らしの幻影を見せ続け、堕落へと誘う呪いだ。甘い誘惑に耐えて幻を打ち破らなければ先には進めないが、内なる欲望や願望を反映した幸福な景色に抗うことは容易ではなく、精神力の強さが試される。

「土地の呪いを攻略した先には『ガーゴイル』の集団が待ち構えています」
 彼らは呪いをかけた張本人とは別だが、やはり人類に対して深い恨みを持ち、ここから先へは行かせるまいとして挑みかかってくる。ガーゴイルは堅固な石の肌を持つ翼持つ悪魔の姿をした|百獣族《バルバロイ》だが、|獣騎《バルバ》に変形すると装甲はより頑強さを増し、肉薄しての格闘戦を得意とする。
「彼らを倒して進んだ先に、今回の呪いをかけた|百獣族《バルバロイ》……『ドレイク』がいます」
 陸上生活に適応した地竜の|百獣族《バルバロイ》であるドレイクは、|獣騎《バルバ》化すると飛行をやや苦手とする反面、上空まで一気に跳躍できる強靭な脚力とバネを持つ。これを活かした俊敏な身のこなしで相手を翻弄する、その実力は単騎でガーゴイルの集団を上回る。

「生前は正々堂々を心がける武術家だったと言いますが、現在のドレイクは人類への憎しみに取り憑かれ、怒りのままに襲いかかってきます」
 彼を撃破して呪いを解くことが今回の依頼目的であり、そのためなら手段は問われない。だが、もしも猟兵が騎士道に則り、正々堂々と高潔に戦う姿を示すことができれば、もしかするとドレイクの心を動かし、失った武術家の精神を呼び覚ますことができるかもしれない。
「彼を怨嗟に囚われたオブリビオンとして倒すか、高潔なる|百獣族《バルバロイ》の勇士として倒すかは、皆様にお任せします」
 バハムートキャバリアの文明社会は騎士道に基づいているが、騎士ではない猟兵がそのしきたりに従う必要はない。
 ただ、この世界の流儀を尊重し、非業の死を遂げた者にせめてもの尊厳をと願うのであれば、|聖なる決闘《トーナメント》の如く彼に挑むのもひとつの選択肢だろう。

「|百獣族《バルバロイ》の呪いを解き、今を生きる人々を救うために、どうか皆様の力をお貸しください」
 説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、バハムートキャバリアの呪われた土地に猟兵を送り出す。
 人類の非道によって滅ぼされた哀しき|百獣族《バルバロイ》。その深き憎しみが生んだ呪いを、果たして解くことはできるのか。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回のシナリオは新世界バハムートキャバリアにて、|百獣族《バルバロイ》のかけた呪いを解くために元凶に挑む依頼です。

 1章は土地にかけられた『酒池肉林の花園』の呪いを攻略します。
 この土地に踏み入った者は豪奢で堕落した暮らしの幻影を見せられ、甘美な堕落に誘われます。
 誘惑を断ち切り幻を打ち破らなければ、これ以上先に進むことはできません。

 2章は『獣騎ガーゴイル』との集団戦です。
 人類への憎しみという共通点からドレイクの配下となり、呪いを解かせないために猟兵の行く手を阻みます。

 3章は『獣騎ドレイク』との決戦です。
 呪いをかけた張本人である彼は、深すぎる憎悪と怒りゆえに我を失っています。
 どのような手段であれ撃破すれば呪いは解けますが、もし猟兵が騎士道に則った正々堂々たる戦いぶりを示せれば、かつての高潔な武術家の心を取り戻すかもしれません。それを試みるか否かは各自にお任せします。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『酒池肉林の花園』

POW   :    気合を入れて自らを鼓舞する

SPD   :    幻影が見せる幸福な景色の違和感に気付く

WIZ   :    何らかの手段で幻影を破る

イラスト:みささぎ かなめ

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アラタマ・ミコト
極楽浄土にて習得せし御業で皆様方を「ひーる」致します!
完全回復でございます。
さあ、妖共との戦いももう一踏ん張りと参りましょう。
……皆様方が極楽浄土で相まみえた「もんすたー」というものになっております。

これはばぐではないのです!
極楽浄土でで言うちーとというものなのです!……多分なのです!!



「なんと、ここはまさしく極楽浄土! 戻ってきてしまったのです!?」
 |百獣族《バルバロイ》の呪いを受けた地でアラタマ・ミコト(極楽浄土にて俗世に塗れし即身仏・f42935)が見たのは、バハムートキャバリアでも故郷アヤカシエンパイアでもない、異世界の光景だった。そこは即身仏の儀にて彼女がかつて到達した極楽浄土――またの名を「ゴッドゲームオンライン」という。
「ここで再び|試練《くえすと》を受ければ、新たな|法具《れああいてむ》を授かる事もできるでしょうか……」
 これが『酒池肉林の花園』の呪いが見せた幻影だということはアラタマも分かっている。しかし妖を討伐する力を求める欲を抑えきれなかった彼女は、かつての記憶を頼りに探索を始めた。まずは「ぎるど」なる場所で|試練《くえすと》を受け、仲間と「ぱーてぃー」を組んで「もんすたー」に挑むのだ。

『行くぞ、アラタマ!』
「はいなのです!」
 ご丁寧なことに、呪いの幻影はパーティーメンバーやモンスターまで忠実に再現する。敵を倒してドロップアイテムを手に入れ、報酬をゲットしてまた次のクエストへ――ゴッドゲームオンラインは終わりなき欲望を肯定する。幾多のプレイヤーを沼にハマらせた中毒性は、ヒトを堕落に誘うには十分なものだ。
「極楽浄土にて習得せし御業で皆様方を『ひーる』致します!」
 そんな極楽浄土の幻影の中、アラタマはヒーラーとして仲間を支えていた。彼女の発する【極楽の香気】は、どんなダメージも瞬時に全回復させる。しかも射程・対象は視界内にいる全員というチート級の回復スキルだ。彼女が立っている限り、仲間が全滅することはあり得ないだろう。

「完全回復でございます。さあ、妖共との戦いももう一踏ん張りと参りましょう」
『サンキュー……うっ、なんだ、体が……ウオオォォォッ!?!』
 しかし、このユーベルコードにはひとつ大きなデメリットがあった。回復を受けた対象は極楽の蓮の花に汚染され、数時間だけ理性無き天上界の獣と化してしまうのだ。その姿は極楽浄土で相まみえた「もんすたー」とまったく同じ。
「これはばぐではないのです! 極楽浄土でで言うちーとというものなのです! ……多分なのです!!」
 どっちにしろダメそうな言い訳をするアラタマであったが、理性のタガが外れたプレイヤーは無差別に暴れまわり、敵モンスターだけでなく味方にまで牙を剥いた。こうなってしまうと、もはやクエストを続行するのは不可能だろう。

「致し方ないのです」
 やむを得ずアラタマは宝具を構え、法力と神通力でモンスターを一掃する。クエスト失敗のアナウンスが表示されるのと同時に、極楽浄土の幻影が消えていく。どうやら力への欲望を断ち切ったとみなされ、呪いを攻略できたようだ。
「欲張りすぎは良くないのです。あらたまちゃんは既に十分な御力を授かりました」
 そう己を戒めつつ、いざ妖討伐に向かうアラタマ。手には巨大な太刀を携え、まだ仄かに蓮の花香を漂わせて――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ネッド・アロナックス(サポート)
めずらしい そざいはある?
なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!
(※セリフはひらがな+カタカナ+空白で話します)

探し物や調べ物は楽しくて得意だよ
"くらげほうき"や"ゆきソリ"で空を飛んだり泳いだりしてヒトや物も運ぶよ

戦闘はサポートに回ることが多いかな
手強い敵は基本隠れながら隙を作って逃げる!
"クリーピングコイン"で物をひっかけて飛ばしたり
"しろくじら"の歌で余所見をさせたりね

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
よろしくおねがいします!



「めずらしい そざいはある? なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!」
 人類遺跡のガラクタ素材屋を営むネッド・アロナックス(ガムゴム人の冒険商人・f41694)にとって、外の世界は魅力的な賞品の仕入れ先だった。今回はバハムートキャバリアまで足を伸ばした彼が、呪いによって見る『酒池肉林の花園』は――。
「わあ すごい おたからの やまだね!」
 地面を埋め尽くすほどの大きなガラクタの山。|人造竜騎《キャバリア》のパーツや残骸であったり、破損した武具であったり、ヒトによってはゴミでも彼にとってはお宝だらけだ。欲望を刺激する幻だと聞かされてはいても、ついつい目を奪われてしまう。

「ちょっとだけ もちかえれない かな?」
 ネッドはここまで来るのに使った「ゆきソリ」に積み込めそうなガラクタをひとつ持ち上げてみる。手触りから匂いに至るまで本物のようだと五感が訴えかけてくるが、彼もこう見えてプロの冒険商人。品物の目利きについては自信がある。
「やっぱり にせもの みたいだね」
 しょせんコレは人を惑わせるための幻。持ち帰ることができないと分かれば、ネッドの興味は途端に失せた。欲をかいて引き際を見誤らないのは彼の長所のひとつだが、その直感が「ここに居すぎると良くない」とも訴えている。進むか退くか、どちらにせよ足を止めている時間はなさそうだ。

「みきわめが だいじだよね」
 一度は手に入れた|財産《ガラクタ》を自らの意思で手放す。そうすることで堕落の欲望を断ち切ったネッドは、【独立独行】の意思のもとガラクタ山に背を向ける。|百獣族《バルバロイ》の呪いが見せた『酒池肉林の花園』は消え去り、戻ってきたのは殺風景な野原だった。
「つぎは ほんもののおたからが あるといいな」
 そう言ってガラクタ屋さんはソリに乗り込み、相棒の「しろくじら」と一緒に空を飛んで先に進む。どこから強そうな敵が出てきても逃げられるよう、また落ちている本当の宝を見逃さないように、感覚は常に研ぎ澄ませたまま――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヘルゲ・ルンドグレン
よっし!(ぱんっと両手で頬を叩いて気合いを入れる)
頑張っていくわよ、ウロボロス!(己の相棒たる人造竜騎に声を掛ける)

百獣族の恨みはアタシにだって理解できる……でも、だからってこっちも黙ってやられてあげるわけにはいかないわ!
ご先祖に代わって、今度こそ正々堂々と決着をつけてあげる!

その前にまずはこの森を抜けないとね
にしても、豪奢で堕落した生活ぅ……?
お生憎様! アタシにとってはこんな景色はイヤな思い出そのものよ!
どんなに優しくて都合のいい生活だって、本当のアイツらがアタシのことをまともに相手してくれたことなんてないんだもの!
豪華なお屋敷での生活、それを本当の記憶と比較して偽物と断じて突き進むわ!



「よっし! 頑張っていくわよ、ウロボロス!」
 ぱんっと両手で頬を叩いて気合いを入れ、ヘルゲ・ルンドグレン(魔導騎士・f44787)は己の相棒たる|人造竜騎《キャバリア》に声を掛ける。此度の|百獣族《バルバロイ》の呪いを攻略するためには、欲望に負けない精神力の強さが求められる。気を引き締めなければ『酒池肉林の花園』に呑まれてしまうだろう。
「百獣族の恨みはアタシにだって理解できる……でも、だからってこっちも黙ってやられてあげるわけにはいかないわ!」
 種族を根絶やしにされ、自らも凄惨な最期を迎えたドレイクの怒りは、子々孫々まで呪うほどの憎しみと化した。
 かの|百獣族《バルバロイ》の無念を晴らすにはどうすれば良いのか。甘んじて罰を受け入れるよりも、彼女は騎士として対峙することを選んだ。

「ご先祖に代わって、今度こそ正々堂々と決着をつけてあげる!」
 その為にも、まずはこの森を抜けなければならない。呪いの地に足を踏み入れた途端、幻影がヘルゲの前に現れる。
 食べきれないほどのご馳走、綺麗なドレス、ふかふかのベッド。まるで貴族のように立派なお屋敷が目の前にある。
『お嬢様、お帰りなさいませ』『夕食の用意が整っております』
 ご丁寧なことに、幻影は屋敷で働く使用人たちまで再現する。彼ら彼女らはみなヘルゲに恭しく接し、優しい微笑を浮かべて彼女を歓待する。屋敷全体に満ちる甘い香りが、ここに留まればずっと幸せに暮らせるのだと誘惑してくる。

「にしても、豪奢で堕落した生活ぅ……? お生憎様! アタシにとってはこんな景色はイヤな思い出そのものよ!」
 しかしヘルゲはその誘惑をきっぱりと突っぱねる。彼女は代々騎士を輩出してきた名門の一族「ルンドグレン家」の出ながら、才に恵まれず軽んじられ、忌まわしき半妖精の血に目覚めた者として家を追われた身だ。彼女にとって物質的に恵まれた暮らしとは、自身を蔑む嫌悪の視線とワンセットである。
「どんなに優しくて都合のいい生活だって、本当のアイツらがアタシのことをまともに相手してくれたことなんてないんだもの!」
 豪華なお屋敷での生活を、本当の記憶と比較して偽物と断じ、突き進む。なるほど"これ"は自分が本当に欲しかったものかもしれないが、とうに背を向けたものだ。今、彼女が駆る|人造竜騎《キャバリア》も、開花した魔法の才も、家柄とは関係なく己自身で掴み取ったもの――今さら引き返したりなんかしない。

「いくわよ、ウロボロス!」
 相棒と共に堕落の誘惑を打ち破ったヘルゲは、そのまま森を抜けて異変の中心へ。魔法使いとしての才ゆえか、彼女はこの呪いをかけた者の発する強大な邪気を感じ取っていた。もはや本人にさえ抑えがきかぬであろう怨念――それを鎮めんがため、魔導蛇の|人造竜騎《キャバリア》が往く。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベル・プリンシパル
昔の人がどれだけ非道な事をしたのだとしても…
今を生きる普通の人達が犠牲になるなんて見過ごせない!
百獣族を止めるために俺も力になるよ!

まずは呪いを突破して村に入らなきゃいけないんだけど…
わわっ、近くに立ち入っただけで村の人たちからすごい歓迎が!?
一騎当千の勇士様、とか持て囃されて、いつまでも続く宴会の幻影に囚われそうになって…

でも楽しさに溺れて立ち止まるのは本当の勇士じゃない
危険があると分かっていても、勇気をもって浪漫を求めて歩み続ける者
助けを求める人々に勇気の輝きを見せる者
それが本当の勇士だから…楽しい時間はここまで!
幻影を打ち払うように矢を放って自分を奮い立たせ、しっかり前を見据えて進むよ!



「昔の人がどれだけ非道な事をしたのだとしても……今を生きる普通の人達が犠牲になるなんて見過ごせない!」
 生前に|百獣族《バルバロイ》が受けた理不尽は理解するが、その怨念をぶつけるべき相手はここにはいない。凄惨な復讐譚よりも冒険譚を愛するベル・プリンシパル(いつか空へ届いて・f33954)が、この話を聞いてどうするかなんて決まっている。
「百獣族を止めるために俺も力になるよ!」
 憎しみに染まった哀しきオブリビオンを解放し、大地と人々を蝕む呪いを解く。これぞ彼の憧れる勇士にふさわしい行いと言えよう。純白の翼を羽ばたかせ、呪われた土地に向かう少年の視線はまっすぐで、勇気と希望に溢れていた。

「まずは呪いを突破して村に入らなきゃいけないんだけど……わわっ!?」
 かつてドレイクに悲劇をもたらしたという、怨敵の末裔が住むという村。その近くに立ち入っただけで、ベルはたちまち村人らしき集団に囲まれた。呪いのせいでさぞ困っていたのだろうか、「勇士様だ!」とものすごい歓迎ぶりだ。
「一騎当千の勇士様が来てくださった!」「これでもう安心だ!」「お会いできて光栄です!」
「あ、ありがとう。へへ……」
 初めて会った人ばかりなのに、みんなベルに尊敬や憧れの眼差しを向け、褒め称えてくれる。最初のうちは戸惑っていたベルも、こんなに持て囃されると悪い気はしない。情報では聞いていたはずなのに、これが呪いによる幻影だとはとても感じられなくて――。

「歓迎の宴の準備はできております!」「どうぞ、ゆっくりなさってください」
「わあ、すごいや!」
 そのままベルは村まで案内され、村人による盛大な祝祭に招かれる。小さな村では考えられない豪華なご馳走の山、陽気な音楽、そしてみんなの笑顔。あまりにも居心地が良すぎて、いつまでも続く宴会の幻影に囚われそうになる。
(でも楽しさに溺れて立ち止まるのは本当の勇士じゃない)
 幻だと分かっていてもなお甘美な誘惑、だからこそ彼は強い意志をもって『酒池肉林の花園』に抵抗する。こうして自分にとって都合のよい光景を見せつけ、堕落させる呪いなのだろう。だが少年の目指す「勇士」とは、ただ座ったまま皆にチヤホヤされて、安穏を享受する存在ではない。

「危険があると分かっていても、勇気をもって浪漫を求めて歩み続ける者。助けを求める人々に勇気の輝きを見せる者。それが本当の勇士だから……楽しい時間はここまで!」
 理想を言葉にして自分を奮い立たせ、幻影を打ち払うように【ファイアワークス】の矢を放つ。燦々と煌めく光球が宴会場を照らしたかと思うと――あとには料理も、村人も、跡形もなくかき消えていた。どうやら最初から呪いにかけられていて、実際には一歩も進んでいなかったらしい。
「もう見間違えないよ」
 今度こそしっかり前を見据えて、大地を踏みしめるように進むベル。まだ若くとも、その胸に宿る勇気は一人前だ。
 |百獣族《バルバロイ》の復讐を止め、怨念の呪いを解く。その想いは堕落の誘いを跳ね除けたことでより一層強まったようだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルジニア・ルクスリア
女子供まで皆殺しにする非道な殺戮の被害者。
その怒りと憎悪は正当だと思うわ。
だけど、先祖の非道を恥じる、今を生きる人々が罰せられるのは違うと思う。
……複雑な歴史の世界だから色々と思うところはあるけれど、猟兵としてオブリビオンから人々を護るわ。

呪われた土地を【龍脈使い】で確認して【浄化・破邪】する。
自身と人造竜騎には【結界術・魔力防御・加護】で【呪詛耐性・霊的防護】を付与。

目的地には入手した人造竜騎に練習がてら乗り込んで向かうわ。



「女子供まで皆殺しにする非道な殺戮の被害者。その怒りと憎悪は正当だと思うわ」
 戦いにおいて、時には悪辣な手段も辞さぬヴィルジニア・ルクスリア(|甘やかな毒《ダークメルヘン》・f36395)であっても、かつてバハムートキャバリアの人類が|百獣族《バルバロイ》に対して行った所業を弁護するつもりはない。生命と尊厳を奪われ同胞を根絶やしにされて、これで恨むなと言うほうが無理だろう。
「だけど、先祖の非道を恥じる、今を生きる人々が罰せられるのは違うと思う」
 現在の人類は彼らなりに先祖の罪を受け止め、贖罪の意味を込めて騎士道という社会の規範を作った。それに従って真っ当に生きている人間が、仇の子孫というだけで呪われるのも如何なものか。もはや、どちらかが一方的な被害者で加害者という関係性は変わってしまった。

「……複雑な歴史の世界だから色々と思うところはあるけれど、猟兵としてオブリビオンから人々を護るわ」
 簡単には答えを出せない問題に頭を悩ませつつも、ヴィルジニア個人としての行動は決まっていた。大地を流れる龍脈を確認すれば、この先の霊気が淀んでいるのがはっきりと分かる。怒れる|百獣族《バルバロイ》の呪いが土地を汚染している証だ。
「聞いていた通り、強い呪いね」
 死して妄執と化した憎悪より生まれた『酒池肉林の花園』。ヴィルジニアでも無策で踏み入れば安全の保証はない。
 本来であれば、高潔にして誇り高い|百獣族《バルバロイ》に民間人を巻き込む所業はタブーのはずだ。にも関わらずこの有り様とは、呪いをかけたドレイクはすでに狂気に陥っている。

「けれど、妄執と狂気は私の専門よ」
 そう言ってヴィルジニアは魔導書のページを捲り、土地にかけられた呪いを破邪の呪文で浄化する。呪いに精通する者は、呪いの解き方にも詳しいものだ。さらに自分自身にも加護を与えて、呪詛耐性と霊的防護を高める結界を張る。
「これで大丈夫なはずよ」
 準備を万端に整えれば、彼女はこの世界で入手した一機の|人造竜騎《キャバリア》に乗り込む。「タイタニアキャバリア」と呼ばれる精霊力特化型人造竜騎で、魔女であるヴィルジニアとの相性は悪くないはずだが、実戦で使うのはこれが初めてだ。

「今のうちに慣れておかないとね」
 練習がてら|人造竜騎《キャバリア》の操縦を確認しつつ、目的地に向かうヴィルジニア。機体にも本人と同様の霊的防護を付与してあるため、浄化され弱まった呪いが悪影響を及ぼすことはない。涼しげな表情で『酒池肉林の花園』を抜けていく彼女の視線は、この先で待ち構えているはずの敵を見据えていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『獣騎ガーゴイル』

POW   :    ゴールドロックアーマー
【全身を覆う装甲】を凝縮し、任意の身体部位ひとつの攻撃力・防御力を5倍にする。ただし他の部位の防御力は0になる。
SPD   :    ガーゴイルストーム
【地面】から、戦場全体に「敵味方を識別する【岩の嵐】」を放ち、ダメージと【出血】の状態異常を与える。
WIZ   :    ガーゴイルボム
自身の身体部位を切断し、(レベル×切断部位数)m半径内の全てを爆破する【ガーゴイル型爆弾】に変換する。

イラスト:純志

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「止まれ、人間共」

 大地を汚染する呪いを解くため、『酒池肉林の花園』を抜けて探索を続ける猟兵たち。
 その前に立ちはだかったのは、まるで悪魔のような姿をした、翼持つ|獣騎《バルバ》の一団だった。

「これは我らの復讐だ」「何人たりとも邪魔は許さん」

 彼らの名は『獣騎ガーゴイル』。頑強な装甲と肉弾戦を武器とする|百獣族《バルバロイ》だ。
 彼らもまた、かつての人類の非道によって滅ぼされた種族のひとつ。怒りと憎しみの深さゆえに、此度の呪いの元凶側に与した者たちだ。

「我らから子を奪い、誇りを奪い、明日を奪った人間よ。未来永劫に呪われよ!」
「堕落に溺れ、醜き本性を晒し、欲望の花園で死に絶えるがいい!」

 人類に対する怨嗟の声を上げながら、ガーゴイルの集団は襲いかかってくる。
 その言い分にも一理あるとしても、ここで退く訳にはいかない。猟兵たちは即座に戦闘態勢を取った――。
ヴィルジニア・ルクスリア
「私は魔女ヴィルジニア。猟兵として蛮行を止めるわ」
怒りをあらわにするガーゴイルに対して名乗り上げて立ち向かうわ。
騎士道なんて私には無縁だけど、過去の非道な殺戮の被害者でもあるガーゴイル達に対して礼節をもって接するわ。

『魔導書』発動
籠められたユーベルコードは【リアライズ・エクスカリバー、魔封じの魔弾、死棘槍、マジック・マグマ・ジャベリン、疾風の魔弾】

|人造竜騎《キャバリア》での戦闘は初めてなのよね。
この後に控えているドレイクとの戦いの前に|人造竜騎《キャバリア》の空中戦・空中機動等、色々と試行錯誤するたびに魔導書に籠められたユーベルコードが発動してガーゴイルを打ち倒す。

※アドリブ歓迎



「私は魔女ヴィルジニア。猟兵として蛮行を止めるわ」
 怒りをあらわにする『獣騎ガーゴイル』に対して、ヴィルジニアは名乗り上げて立ち向かう。騎士道なんて彼女には無縁だが、過去の非道な殺戮の被害者でもあるガーゴイルたちに対しては礼節をもって接する。それが彼女の礼儀だ。
「邪魔立てするなら……」「貴様から殺す!」
 だが悲しいかな、怒りと憎悪に囚われてしまったガーゴイルたちは、もはや止まることができない。ヴィルジニアの乗ったタイタニアキャバリアに殺意をありありと向けて、拳を握りしめて襲いかかる。その姿はもはや復讐の悪魔だ。

「知は力なり」
 迎え撃つヴィルジニアは【魔導書】を発動。所持している魔導書のページが開かれ、次元の斬撃と黄金の魔弾が同時に放たれる。彼女がこの書物に籠めたユーベルコードは5つ。1日間、彼女はそれらを自由に行使することができる。
「ぐあッ?!」「おのれッ!」
 【リアライズ・エクスカリバー】に斬られた者は四肢を失い、【魔封じの魔弾】に撃たれた者はユーベルコードを封じられる。それでもガーゴイルの勢いは止まることなく、自ら手足をもいで【ガーゴイルボム】に変え、ヴィルジニアに投げつけてきた。

「|人造竜騎《キャバリア》での戦闘は初めてなのよね」
 ガーゴイルには悪いがこの戦いは、この後に控えているドレイクとの戦いの前に、操縦に慣熟するチャンスである。
 ヴィルジニアは|人造竜騎《キャバリア》の空中戦・空中機動等、色々と試行錯誤しながらガーゴイルの爆弾を躱す。そのたびに魔導書からは異なるユーベルコードが二種類ずつ放たれた。
「ぐはぁッ……!」「つ、強い……!」
 必中の【死棘槍】と、炎と大地の力を束ねた【マジック・マグマ・ジャベリン】に貫かれたガーゴイルが地に伏せ。
 華麗に上空を舞うタイタニアキャバリアの羽ばたきは【疾風の魔弾】を生み、他のユーベルコードとコンボを繋ぐ。追い撃ちをかけられた|獣騎《バルバ》は一機、また一機と力尽きていった。

「あなた達の怒りは理解できても、見過ごす事はできないの」
「無念……!」「……ならば、魔女よ。せめて我らを、忘れるな……」
 誇り高き戦士であった彼らが、その誇りをこれ以上汚す前に。堂々と己の全力をもって敵を打ち倒すヴィルジニアの姿に、ガーゴイルたちは何を感じたか。骸の海に還るその刹那、彼らの表情は少しだけ安らいだようにも見えた――。
「さあ、次が大将ね」
 ヴィルジニアもこの戦いを通じて自分の|人造竜騎《キャバリア》の扱いに慣れることができた。飛行速度を上げるタイタニアキャバリアが進む先は、この地を蝕む呪いの中心点。なおも立ちはだかるガーゴイルを魔導書の力で薙ぎ払いながら、彼女はドレイクの元に向かう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘルゲ・ルンドグレン
その意気や良し!
その怨嗟と呪いをアタシたちは受け止めましょう!
だけど、後半は遠慮させてもらうわ!
貴方たちの憎悪を受け止め、ご先祖様の咎を背負い……それでもアタシたちはこの世界で生きていくわ!
それを邪魔するのなら……正々堂々! 力のぶつけあって雌雄を決しましょう!
いくわよ、ウロボロス!

人造竜騎に乗り込んで、ガーゴイルたちを迎え撃つわ!
飛行し、数で勝る彼らに囲まれないように移動し続けながら魔法発動!
攻撃回数を重視した魔力弾を【高速詠唱】で連射して全身を満遍なく狙うわ!
強化された部位をめった撃ちで探しつつ、見つけ出したらその部分をさけて連射、連射!
一体一体確実に落していくわよ!



「その意気や良し! その怨嗟と呪いをアタシたちは受け止めましょう!」
 鋼の咎を背負いし人類の人類の一人として、|百獣族《バルバロイ》の怒りと憎しみを受ける覚悟がヘルゲにはある。彼らにかつて先祖が行った蛮行を擁護するつもりはない。オブリビオンとして蘇った彼らが復讐の念に囚われるのも無理からぬことだろう。
「だけど、後半は遠慮させてもらうわ! 貴方たちの憎悪を受け止め、ご先祖様の咎を背負い……それでもアタシたちはこの世界で生きていくわ!」
「なんと傲慢な……!」
 堂々と胸を張って宣言すれば、『獣騎ガーゴイル』達はますます怒りを燃やす。当然の反応だろうが、それでいい。
 かつての|百獣族《バルバロイ》に守りたかったものがあるように、現在を生きる者として譲れぬものがヘルゲにもあるのだ。それこそ、命を懸けてでも。

「それを邪魔するのなら……正々堂々! 力のぶつけあって雌雄を決しましょう! いくわよ、ウロボロス!」
 人造竜騎「ウロボロス」に乗り込んで、ヘルゲは怒れるガーゴイルたちを迎え撃つ。飛行し、数で勝る彼らに囲まれないようにするためには、こちらも移動し続けなければいけない。持ち前の操縦技術で敵機との距離を保ちつつ、彼女は高速で呪文を詠唱する。
「闇に満ちた深淵より、漆黒の宙を見つめる我が眼は、星屑の輝きを吸収し、その力を結集する。我が手に集いし力は、敵対する者へと放たれん」
 |人造竜騎《キャバリア》より放たれた【魔撃弾】は、マシンガンのような速度で連射され、ガーゴイルの全身を満遍なく狙い撃つ。
 相手は頑強な装甲を売りにする|獣騎《バルバ》、ただ闇雲に攻撃するだけでダメージは与えられまい。しかし、ある部位に魔弾が命中した瞬間、ガーゴイルは「グアッ?!」と悲鳴を上げた。

「そこね!」
 凝縮した【ゴールドロックアーマー】で強化された部位を滅多撃ちで見つけ出したヘルゲは、その部位を避けて連射を続ける。いかにガーゴイルとて全身を完全にガードすることはできず、どこかに防御の薄い箇所ができるのを予想していたのだ。
「ぐ、ぐあぁぁぁぁッ……」
 装甲の弱点を突かれたガーゴイルは無念の叫びとともに墜落していく。一体目の撃破を確認すれば、ヘルゲはすぐに次の目標に切り替え、同様の手順で【魔撃弾】を浴びせまくる。魔法能力に優れた|人造竜騎《キャバリア》と魔法使いの組み合わせに、魔力切れなどありえない。

「一体一体確実に落していくわよ!」
「そう都合よく……!」
 ガーゴイルたちも果敢に反撃するが、ウロボロスの展開する魔弾の弾幕を突破するのは容易でなく、迂闊に攻めれば強化した部位を教えることになりかねない。ヘルゲは相手のわずかな挙動からも【ゴールドロックアーマー】の凝縮を見抜き、照準を変えるセンスを持っていた。
「二体目!」
「がぁッ!!?」
 かくして彼女の狙い通り、数で勝るガーゴイルらは徐々にその優位を失っていくことになる。堂々と己の才を奮い、正面から敵を撃破する姿は、騎士としても文句の付けようがない戦いぶりであり――今際の際、微かに「見事だ……」と呟いた|獣騎《バルバ》がいたのも、自然な事であろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベル・プリンシパル
そんなことを言われても、はいそうですかと引き下がるなんて出来ないよ
手を差し伸べられるところに苦しむ人たちがいるのに、それを放り出すなんて出来ない
だから俺は立ち向かうよ。君たちに!

魔獣のような大きな相手とは何度も戦ってる。小さいからって甘く見ないでよね!
大きく翼を広げて飛び上がり、百獣族たちに【空中戦】を挑むよ!
岩を伴った嵐は確かに厄介だけど…【風を操る】のなら俺だって得意だからね
風の魔力を纏って嵐の暴風を【受け流し】て、飛んでくる岩の軌跡を【見切り】ながら高速飛翔
硬い鎧を直接撃っても効果は薄いだろうから、狙うは関節や鎧の隙間
素早い【空中機動】で翻弄しながら魔力の矢を次々に撃ち込んでいくよ!



「そんなことを言われても、はいそうですかと引き下がるなんて出来ないよ」
 人類の非道に殺された|百獣族《バルバロイ》の怒りを直に聞いても、ベルの決心は揺るがなかった。ここで自分たちが彼らの復讐を許せば、過去の罪とは直接関わりのない人々まで大勢死ぬことになる。さっき見たのは幻だったとしても、あんな風に善良な村人がここにはいるのだ。
「手を差し伸べられるところに苦しむ人たちがいるのに、それを放り出すなんて出来ない。だから俺は立ち向かうよ。君たちに!」
「どうしても、邪魔立てするというのか……おのれええええッ!!!」
 勇士らしい高潔な宣言も、憎悪に囚われた『獣騎ガーゴイル』達を改心させるには至らず、咆哮を上げて一斉に襲い掛かってくる。信仰の力で|獣騎《バルバ》に変身した彼らの体躯は目測でも5メートルはあり、生身の人間との体格差は歴然だ。

「魔獣のような大きな相手とは何度も戦ってる。小さいからって甘く見ないでよね!」
 自分より巨大な敵の集団にも怯まず、ベルは大きく翼を広げて飛び上がり、ガーゴイルたちに空中戦を挑む。ブルーアルカディア出身の彼にとって、大空は自分のホームグラウンド同然だ。機敏にして縦横無尽の機動で相手を翻弄し、羽先に触れさせすらしない。
「ちょこまかとぉッ!」「喰らえッ!」
 数にものを言わせて殴りかかるだけでは勝負にならないと判断したガーゴイルは、地面から【ガーゴイルストーム】を放つ。彼らの憎悪に呼応するが如く吹き荒れる岩の嵐は、戦場にいる限り逃れようがなく、掠めただけでも敵に出血を強いるのだ。

「岩を伴った嵐は確かに厄介だけど……風を操るのなら俺だって得意だからね」
 対してベルは風の魔力を身に纏い、嵐の暴風を受け流して、飛んでくる岩の軌跡を見切りながら高速飛翔を続ける。
 空の戦いでは悪天候など良くあること。どんな逆風や豪雨の中でもパフォーマンスを発揮できてこそ、真の勇士だ。
「遅いよ! そこだ!」
「ぐがッ?!」
 岩の嵐の隙間を抜けながら、ベルは魔力の矢を放つ。硬い鎧を直接撃っても効果は薄いだろうから、狙うは関節や鎧の隙間だ。天使核を動力とした聖弓「アルテミス」の自動詠唱機能により、本人ともども風の魔力を纏った矢は、斬撃波を伴って標的を射抜いた。

「まだまだ!」
「ぐおぉッ……つ、強い……」
 風を味方にして空を翔け、魔力の矢を次々に撃ち込むベル。そのスピードに追いつける者はおらず、一人また一人と撃墜されていくガーゴイル。どんなに悲しい過去があろうとも、今を生きる人々を呪うオブリビオンに、少年が弓弦を緩めることは決して無かった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラタマ・ミコト
なるほどでございます、呪いでございましたか。
それでは荒魂鎮神命が極楽浄土へと誘って差し上げましょう。
皆様方の苦痛は極楽の香気が癒やすのでございます。
それは人の心を持ちし妖、其方らもでございます。
自らの身体を切り裂き、さぞ痛く苦しいでしょう。
その苦しみから荒魂鎮神命は解き放ちましょう。
……ふふふ、完璧なのです。
あらたまちゃんの真の目的はこの呪われた花園を吹き飛ばすことなのです!
極楽の蓮で満たし、呪われた花園を蓮で塗り替えるのです。
さあ、どんどん爆破するといいのです。



「なるほどでございます、呪いでございましたか。それでは荒魂鎮神命が極楽浄土へと誘って差し上げましょう」
 先ほど見た不思議な幻の正体と、その元凶たちに出くわしたアラタマは、得心がいった様子でこくりと頷く。彼らのように傷つき妖と化した魂を鎮めるのも仏門に仕える者の務め。怒りには怒りでなく慈悲の心をもって相対するのだ。
「極楽だと?」「その前に我らが貴様らを地獄に送ってやるわ!」
 だが、ここにいるのは自身の安らぎより復讐を求めた者どもばかり。妄執の鬼と化した『獣騎ガーゴイル』たちは、我が身を切断して【ガーゴイルボム】に変え、アラタマに投げつけようとする。宿願を果たす為ならどんな手段も辞さない構えだ。

「皆様方の苦痛は極楽の香気が癒やすのでございます。それは人の心を持ちし妖、其方らもでございます」
 痛々しい振る舞いに眉をひそめながら、アラタマは【極楽の香気】を発する。それは幻の中で「ぷれいやー」たちに使ったものと同じユーベルコード。ガーゴイルがこれまでの猟兵との戦いで負った傷や、自切による傷が癒えていく。
「自らの身体を切り裂き、さぞ痛く苦しいでしょう。その苦しみから荒魂鎮神命は解き放ちましょう」
「?! な、なんのつもりだ……」「うッ?! うおぉぉぉぉぉッ!!!」
 敵である自分たちを回復する意図が分からず、困惑するガーゴイルたち。しかし、傷が癒えた直後に異変は訪れる。
 完全治療と引き換えに極楽の蓮の花に汚染された者は、理性なき天上界の獣――「もんすたー」と化す。それは|獣騎《バルバ》相手でも変わらぬ摂理だった。

(……ふふふ、完璧なのです。あらたまちゃんの真の目的はこの呪われた花園を吹き飛ばすことなのです!)
 狙い通りの展開ににっこり笑うアラタマ。もんすたー化したガーゴイルは完全に理性や敵味方の区別を失い、無差別に【ガーゴイルボム】を投げまくる。ドカンと轟音が鳴り響き、爆炎と衝撃が『酒池肉林の花園』を薙ぎ払っていく。
「さあ、どんどん爆破するといいのです」
「「ウオォォォォォ!!」」
 ボムが破壊した戦場を極楽の蓮で満たし、呪われた花園を蓮で塗り替える。これで庶民が呪いに巻き込まれる危険性も減るだろう。ついでにガーゴイルたちも極楽の香気に包まれたまま、自らの爆発によって極楽浄土に誘われていく。

「オォォ……我らは、ここまで、か……」

 力尽きたガーゴイルが最期に感じたのは天上の安らぎか、それとも無念か。何れにせよ彼らはみな骸の海へと還る。
 だが、これで『酒池肉林の花園』が完全に消え去ったわけではない。この地に呪いをかけた|百獣族《バルバロイ》の首謀者のもとへ、アラタマは残り香を纏ったまま歩きだした――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獣騎ドレイク』

POW   :    竜爪猛襲脚
【強靭な脚力を活かした目にも止まらぬ爪撃】で装甲を破り、【鞭のような靭やかさを持つ竜の尻尾】でダウンさせ、【急所を狙い澄ました突き刺し】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
SPD   :    変竜裂破
回避力5倍の【獣の如き俊敏なる地竜】形態か、攻撃対象数5倍の【拳士】形態に変形し、レベル×100km/hで飛翔する。
WIZ   :    翼刃閃
【退化した竜翼を象った肘の翼刃】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【真空波】を射出できる。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠サブリナ・カッツェンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「人間に呪いあれ……その行く末に災いあれ……」

 獣騎ガーゴイルの集団を撃破し、ついに猟兵たちは『酒池肉林の花園』を生み出す呪いの中心地に辿り着く。
 そこにいたのは一体の|獣騎《バルバ》。緑色の単眼を爛々と輝かせ、呪詛の言葉を紡ぎ続けている。

「……知っているか? 私の故郷は人間の騙し討ちによって滅びた……彼奴らは幼い我が子を人質として攫い、解放の条件として私を呼び出し……その隙に、手薄となった里に奇襲をかけたのだ!」

 怨嗟の籠もった声音で語るは、彼の一族が迎えた悲劇の末路。
 彼自身と彼の一族にあった、人類による侵略と殺戮の過去だ。

「人質の我が子はとうに殺されていた……私が必死に戻った時にはもう、里は|人造竜騎《キャバリア》に蹂躙され、灰と化していた……嗚呼、神よ! このような所業が許されて良いのか!」

 慟哭する『獣騎ドレイク』の叫びが、天地に響き渡る。
 戦士としての誇りを踏み躙られ、守るべきものを守れなかった彼に残されたのは、人間への怒りと憎しみしかない。

「あのような非道と、我らの犠牲の上に立つ平和など、私は認めん! 虚飾の繁栄にふさわしい幻想の中で、子々孫々に至るまで死に絶えるがいい!」

 深すぎる憎悪ゆえに復讐の鬼へと堕ちたドレイクを、言葉で説得するのは不可能だろう。
 この地の呪いを解くためには、力をもって討ち倒すしかない。高潔に正々堂々と戦うか、それとも手段を選ばぬか、対峙の形は各々の猟兵に委ねられる。

 それはバハムートキャバリアの人類が背負いし鋼の咎。牙を剥く復讐者を前に、猟兵たちは戦闘態勢を取った――。
ヘルゲ・ルンドグレン
その罪を認めましょう
されど、今を生きる人の営みを脅かすことは認めない!

我が名はヘルゲ・ルンドグレン!
先祖より鋼の咎を、そして、使命と誇りを受け継ぐ者!
名乗りなさい! その身に怨嗟だけでなく、まだ誇りを宿しているのなら!
聖なる決闘にて、アタシたちの魔法が、貴方を撃ち砕く!

目には目を、刃には刃を!
翼刃を薙いで発射地点を増やされる前に魔法剣を撃ち込んでから接近戦に持ち込むわ!
魔法使いだからって接近戦ができないなんてことはないのよ!
ウロボロスで魔法剣の一本を握り、距離を取らせない内に一気に畳み掛け、そこに別の魔法剣を一気に撃ち込む!
【魔力制御】と【魔力防御】を駆使して、ドレイクだけをしっかり狙ってね!



「その罪を認めましょう。されど、今を生きる人の営みを脅かすことは認めない!」
 この事件の首謀者にして悲劇の当事者、狂乱せし『獣騎ドレイク』と相対したヘルゲは、今一度己の決意を叫んだ。
 人が生んだ罪業の証から目を逸らすことはしない。だが彼女が背負うべきは咎だけではない。この世界の平和と未来を守り、剣持たぬ人々のために戦う務めがある。
「我が名はヘルゲ・ルンドグレン! 先祖より鋼の咎を、そして、使命と誇りを受け継ぐ者!」
 ゆえに彼女は高らかに名乗りを上げる。自らの|人造竜騎《キャバリア》「ウロボロス」に乗り、戦うべき相手をまっすぐに見据え。
 その勇姿は虚飾などではない。己の意志でこの道を往くと決めた者でなければ、この気魄、この闘志は生まれない。

「名乗りなさい! その身に怨嗟だけでなく、まだ誇りを宿しているのなら! 聖なる決闘にて、アタシたちの魔法が、貴方を撃ち砕く!」
 そしてヘルゲはドレイクにも問う。かの者は憎悪の獣と成り果てたのか、それとも|百獣族《バルバロイ》の矜持を遺しているのか。
 人類の騎士より決闘を挑まれたドレイクは、刺し貫くような眼光で彼女を睨み付け――そして、咆哮ではなく言葉を発した。

「私は……ドレイク族のグラム! 呪いあれ、報いあれ、罪深き人の子らよ!」
 それは狂気にまたたいた束の間の正気だったのやもしれない。それでもドレイクはヘルゲとの|聖なる決闘《トーナメント》に応じた。
 退化した竜翼を象った肘の翼刃で虚空を薙げば、真空の刃が|人造竜騎《キャバリア》に向かって射出される。死角からではなく正面より放つのは、|百獣族《バルバロイ》に残された誇りゆえか。
「目には目を、刃には刃を!」
 即応してヘルゲも【白雪刃】を発動。数百本にも及ぶ氷雪の魔法剣を作り出し、【翼刃閃】の発射地点に撃ち込み、相殺する。真空刃と激突した剣は硝子のような音を立てて砕け散り、ダイヤモンドダストとなって戦場を舞う――双方譲る気のない全力のぶつけ合いだ。

「煌めく白き雪よ、我が手に宿りし力よ。無垢なる魂へと刻み込みし氷の刃よ、我が前に現れよ」
 ヘルゲはなおも呪文を唱えながら愛騎を駆り、ドレイクとの近接戦に持ち込む。このままの距離で戦うと【翼刃閃】の発射地点を増やされ、徐々にこちらが手数で不利になる。であれば、その隙がないような戦いにしてしまうまでだ。
「魔法使いだからって接近戦ができないなんてことはないのよ!」
「舐めるなァッ!」
 接近戦は相手の本領でもある。魔法剣の一本を握ったウロボロスが斬り掛かれば、ドレイクは翼刃にて受け止める。
 他種族より飛行を苦手とするドレイクは、脚力や跳躍力に秀でた種族である。そのフットワークで距離を取られない内に、魔導の騎士は一気呵成に畳み掛ける。

「我が意のままに振るわんと欲する剣、その名を――!」
 熾烈な剣戟でドレイクの体勢がわずかに崩れれば、ヘルゲはそこに別の魔法剣を一気に撃ち込んだ。高度な魔力制御と魔力防御技術を駆使してコントロールされた白刃の軌道は、ドレイクだけをしっかり狙って、吹雪の如く殺到する。
「ぐおおぉぉぉぉ……ッ!!」
 全身を【白雪刃】に突き刺され、獣のような絶叫を上げるドレイク。だが、その瞳はいまだ憎悪で輝き続けている。
 この程度で屈するような生温い怨嗟ではないということか。それでも、名乗りを上げた際に彼が見せた|百獣族《バルバロイ》の誇りを信じて――ヘルゲは新たな魔法剣を生成すると、決闘を継続した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アラタマ・ミコト
……それは卑怯というより常套手段なのです。
極楽浄土ではよく使われるのです。
強敵相手に陽動や弱い相手から倒すのは基本なのです。
むしろ、毒や幻覚の方が卑怯なのです。
ということなので、あの妖は滅するのです。
あらたまちゃんは殲剣陣羽織で相手をするのです。
むむむ、あの妖は器用なのです。
あの大きさであらたまちゃんの装甲を的確に突くとはなかなかやるのです。
それにあのような巨大な尾で吹き飛ばしではなく『だうん』だったりと、『ずる』や『ちーと』はそっちなのです!!



「……それは卑怯というより常套手段なのです。極楽浄土ではよく使われるのです。強敵相手に陽動や弱い相手から倒すのは基本なのです」
 慟哭と共に『獣騎ドレイク』が語った過去の悲劇を、アラタマはすっぱりと言い切った。極楽浄土ことゴッドゲームオンラインでは、騎士道のように正々堂々戦うよりもゲーム的な効率が重視する「ぷれいやー」のほうが普通だ。一般にイメージされる極楽浄土より大分殺伐としているが、己が見てきた価値観を彼女は信じる。
「むしろ、毒や幻覚の方が卑怯なのです。ということなので、あの妖は滅するのです」
「滅びるのは、貴様らだッ!!」
 これまでのお返しとばかりに臨戦態勢に入るアラタマに、ドレイクは怒号で応じる。考え方が相容れないのならば、ここで生き残るのは一方のみ。アラタマにとっては慣れ親しんだ、勝利と報酬を賭けた「れいどばとる」が始まった。

「オォォォォッ!」
 先手を取ったのは【竜爪猛襲脚】を発動したドレイク。飛行能力を捨て陸上生活に適応したドラゴンである彼は、翼の代わりに強靭な脚力で大地を蹴り、目にも止まらぬスピードで爪撃を仕掛けてきた。心は狂気に呑み込まれていても体に染み付いた技は喪われていない。
「むむむ、あの妖は器用なのです。あの大きさであらたまちゃんの装甲を的確に突くとはなかなかやるのです」
 アラタマも【殲剣陣羽織】を発動していたが、はっと気づけば将軍鎧が切り裂かれている。間髪入れずにドレイクは尾を叩きつけ、彼女をダウンさせようとする。鞭のような靭やかさを持つ竜の尾は、竜の爪と並ぶ危険な武器である。

「それにあのような巨大な尾で吹き飛ばしではなく『だうん』だったりと、『ずる』や『ちーと』はそっちなのです!!」
 彼我のサイズ差を考えれば実際そうなってもおかしくなかったが、敵の巧みな尻尾さばきによるものか、アラタマはあわや体勢を崩されかける。憤慨する彼女にトドメとばかりに放たれるのは、急所を狙い澄ましたドレイクのひと刺し――確実に仕留めるという殺意の籠もった一撃だ。
「ですが【殲剣陣羽織】はだうん中でも使用可能なのです!」
「なにィッ!?」
 彼女の身を守ったのは、念動力でコントロールされた極楽浄土の武器だちだった。刀剣を幾重にも重ね合わせることで鎧の代わりとすれば、妖の爪だって通さない鉄壁の装甲となる。渾身の一撃を凌がれたドレイクのほうが、今度は隙を晒すはめになった。

「もう二度と『ちーと』は許さないのです」
「ぐおぉぉッ!!」
 その隙を逃さずアラタマは防御に使った武器を一斉射出。巨大な太刀や神剣や光剣がドレイクの体躯に突き刺さる。
 どこの世界であれ、世を乱す妖を滅するという彼女の使命は揺らがない。純粋ゆえに容赦ない攻勢が、|百獣族《バルバロイ》の怨念を切り裂いていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベル・プリンシパル
すごい気迫と怨嗟、それに悲しみ
…それを理解できても、俺の気持ちは変わらないよ
犠牲になろうとしている人たちがすぐそこにいるのに…それから目を背けるなんて、どんな理由があってもやっちゃいけないから!

【空中戦】で立ち向かうけど、さっきまで戦ってた百獣族とは一味も二味も違う…!
素早い【空中機動】で攻撃を【見切り】ながら躱したり、【風を操る】魔法や魔力の矢を撃ち込んで【受け流し】たり…
でも防御に回るだけじゃ埒が明かない
覚悟を決めて【勇気】をもって、アルテミスを構えて正面から立ち向かおう
【全力魔法】を籠めたアローモードで、向こうが攻撃してきた瞬間、それごと貫くつもりで突撃するよ!
君は、ここで止めてみせる!



「すごい気迫と怨嗟、それに悲しみ……それを理解できても、俺の気持ちは変わらないよ」
 こうして向かい合うだけで、ビリビリと肌に感じる憎悪と殺気。それは『獣騎ドレイク』が人間に受けた仕打ちを考えれば妥当たろうが、ベルもここで屈する訳にはいかない。|百獣族《バルバロイ》の呪いに巻き込まれ、危機に陥る人々がいる限り。
「犠牲になろうとしている人たちがすぐそこにいるのに……それから目を背けるなんて、どんな理由があってもやっちゃいけないから!」
 悲劇の連鎖をここで断ち切り、人々の命を守るために、誇り高き地竜の一族に、これ以上名誉を汚させないために。
 確固たる信念をもって少年はドレイクの敵として立ちはだかる。エンジェルの証たる腰の白翼をいっぱいに広げて。

「邪魔を、するな……うぉぉぉぉッ!!」
 空を舞う若き勇士に向かって、ドレイクは雄叫びと共に跳躍する。陸上での暮らしに合わせて翼が退化した一方で、かの種族が得たのは強靭な脚力と身体のバネ。ひとっ跳びで空中の敵を捉えられるほどのジャンプ力から、目にも止まらぬ【竜爪猛襲脚】が繰り出される。
「さっきまで戦ってた百獣族とは一味も二味も違う……!」
 ベルも空中戦で立ち向かうが、相手のスピードに反応するのに必死だ。素早い空中機動で攻撃を見切ろうとするが、それでも地竜の爪や尾を躱すのは紙一重。魔法で風を操ったり「アルテミス」から魔力の矢を撃ち込んで、なんとか攻撃を受け流す。

(でも防御に回るだけじゃ埒が明かない)
 苛烈極まるドレイクの攻撃に止まる気配はなく、一度でもダウンを取られたら、そのままトドメを刺されるだろう。
 このレベルの強敵相手にリスクを避けていても勝機はない。ベルは覚悟を決めて勇気をもって、アルテミスを構えて正面から立ち向かわんとする。
「その意気や……よしッ!」
 堂々と正対する勇士の姿には、狂える百獣族も感じ入るものがあったか。ならばとドレイクも正面にて、体をぐっと縮めてバネを溜める。間違いなくこの次に来るのは彼の最速にして最強の一撃。それを打ち破るに足る、ベルの切り札は――。

「俺自身が、どんな闇も貫く矢になるんだ!」
 全力の魔法を籠めた「アルテミス」が鏃のような形状に変形し、焔のような魔力がベルを包み込む。この一撃に賭けるという想いで彼はドレイクを睨み付けると、向こうが【竜爪猛襲脚】を放つ瞬間、それごと貫くつもりで突撃する。
「君は、ここで止めてみせる!」
 この【ブレイジングミーティア】の威力の基準となるのは、相手の強大さと自分の想いの強さ。どんなに相手が強くたって、負けない気持ちが強ければ――その身は流星となって必殺の爪撃を砕き、そのままの勢いで地竜と激突した。

「み、ごと、だ……」
 正面から全力をぶつけ合い、地に伏せるドレイク。敗北という結果は同じでも、その過程は過去とはまるで異なる。
 だからだろうか。怨嗟にまみれた彼の闘気が少しだけ和らぎ、ベルに対して賞賛の言葉をかけたのは。まだ魂の底に眠っていた|百獣族《バルバロイ》の誇りが、目覚めつつあるのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィルジニア・ルクスリア
遂に呪いをかけた『獣騎ドレイク』との対決ね。

一族全てを殺戮した人間とその子孫たちを恨むドレイク。
それはそう。
私は先祖の非道を恥じる、子孫が罰せられるのは違うと思うけど、当事者であるドレイクが納得するわけないわね。
猟兵である私とオブリビオンであるドレイク。互いに譲れない以上、戦うしかないわね。

「私は魔女ヴィルジニア。あなたの非道への怒りは正当よ。だけど、子孫たちへの報復は認められないわ」
|人造竜騎《キャバリア》に乗り込み、【空中浮遊】した状態でドレイクと正対して名乗りあげる。

ドレイク相手に戦うなら、僅かなチャンスを逃さないようにしないとね。

【空中浮遊】したまま、戦いの主導権を握らせないようにドレイクの攻撃の出鼻をくじくように【先制攻撃・魔法光線・制圧射撃】。
勿論、いつまでも抑え込めるわけもなく、私の攻撃を搔い潜り、跳躍してくるドレイク。
今よ!
跳躍してきたドレイクに竜騎用ウィザードロッドを振りかぶりながら【キャバリア突撃】、【カウンター】で『星崩し』をドレイクに叩き込む!

※アドリブ歓迎



(一族全てを殺戮した人間とその子孫たちを恨むドレイク。それはそう)
 遂に呪いをかけた『獣騎ドレイク』との対決だが、やはり彼の怒りは至極当然のものだとヴィルジニアは思う。大切なものを不条理に奪い尽くされた恨みを、水に流せと誰が言えるだろう。この世の全てを呪うほどに怨念を溜めても、誰が責められよう。
(私は先祖の非道を恥じる、子孫が罰せられるのは違うと思うけど、当事者であるドレイクが納得するわけないわね)
 猟兵である自分とオブリビオンであるドレイク。互いに譲れない以上、戦うしかない。今一度決意を固めたヴィルジニアは|人造竜騎《キャバリア》に乗り込み、空中浮遊した状態でドレイクと正対して名乗りをあげる。せめて相手に対する礼儀を通すことが、この場でできる唯一のことだ。

「私は魔女ヴィルジニア。あなたの非道への怒りは正当よ。だけど、子孫たちへの報復は認められないわ」
「なぜだ……私の子は、子孫は……全て絶やされたというのに!」
 ほとんど慟哭に近い絶叫を上げて、ドレイクの両脚が大地を叩く。陸上生活に適応する過程でかの種族が手に入れた強靭な脚力は、もはや飛翔と変わりないほどのジャンプを可能にする。空中にいる敵も容易に捉えうるだろうが――。
「その怒り、ここまで届かせてみせなさい」
「ぐぅッ!!」
 ヴィルジニアは空中浮遊したまま、ドレイクの攻撃の出鼻を挫くように先制攻撃を仕掛ける。タイタニアキャバリアより放たれる魔法光線の制圧射撃は、雨あられとドレイクの頭上より降り注ぎ、戦いの主導権を握らせない。堂々と全力をぶつけるからこそ、簡単には懐に入れさせないつもりだ。

(ドレイク相手に戦うなら、僅かなチャンスを逃さないようにしないとね)
 決してヴィルジニアは敵の力量を侮ってはいない。どんなにアウトレンジ戦法に徹しても、いつまでも抑え込めるわけもないだろう。事実、容赦のない魔法の弾幕に晒されていながら、ドレイクはまだ一度もクリティカルヒットを受けていない。
「私はもう負けられぬ……あの子たちの無念を晴らすまでは……絶対にッ!!」
 驚異的なフットワークでヴィルジニアの攻撃を搔い潜り続けたドレイクは、一瞬の攻撃の切れ間を縫って跳躍する。
 |聖なる決闘《トーナメント》において数多の|百獣族《バルバロイ》に勝利を収めてきた、必殺の【竜爪猛襲脚】が魔女に迫る。それは彼に残された最後の力を振り絞った、全身全霊の一撃だった。

「今よ!」
 そしてヴィルジニアも、この瞬間を最大の窮地にしてチャンスだと見計らっていた。跳躍してきたドレイクを迎えるように、竜騎用ウィザードロッドを振りかぶりながら|人造竜騎《キャバリア》で突撃。相手のユーベルコードに合わせて、カウンターの【星崩し】を狙う。
「「終わらせる……!」」
 目にも止まらぬドレイクの爪と、魔力を込めたヴィルジニアの杖が振り下ろされたのはほぼ同時。天に昇る地竜と、地に降りる竜騎が激突する。その瞬間、二機を中心に凄まじい衝撃が巻き起こり、暴風が戦場を吹き抜けていく――。

「眠りなさい」
「ガハァッ……!!!」
 たった数コンマの差で先に叩き込まれたのは、ヴィルジニアの【星崩し】だった。魔女の魔力で強化された武器は、超新星爆発にも匹敵する埒外の破壊力を生む。それを直に叩き込まれたドレイクの躯体は、バラバラに砕け散りながら地に墜ちていく。
「嗚呼……無念だ……が……もしも……貴殿らのような……誇りある者と、あの時も戦えていたなら……」
 最期の刹那、わずかに正気を取り戻したドレイクは、後悔を口にしながらも猟兵たちの意志を認め――「見事だ」と賞賛を送り、消えていった。呪いに侵された村人たちの命と、いにしえの|百獣族《バルバロイ》の名誉は、ここに守られたのである。



 鋼の咎を背負いし人類に、今もなお怒りを燃やす|百獣族《バルバロイ》。
 その怒りを受け止めたうえで、この世界の未来を守るために、猟兵はこれからも戦い続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年11月29日


挿絵イラスト