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魔穿鐵剣外伝 ~氷晶結実~

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クロム・エルフェルト
魔穿鐵剣外伝

【概要】
木常野・都月さん(f21384)とのノベルをお願い致します。
クロムが都月さんに対し『憑紅模』を喪い、『紅憑』を鍛刀して貰った話をしたところ
丁度ダガーの事で悩んでいた彼を永海の里に案内する事に……という感じです。
(クロムから彼への呼び名は『都月くん』or『きみ』です)

今回クロムは付き添いなので、割と自由に過ごしている感じです。
里の子供に剣術の歩法を教えたり、或いは彼の傍に居て
頑鉄さんに「旦那を連れて来た」とからかわれても良いかもです。
煙MSさまにハンドルをお任せするので、うまく使って頂ければ幸いです。

■プレイングらしきもの(アドリブ他諸々ご自由に)
――永海の里。
出生地である妖狐の隠れ里は行方知れず
お師様の庵は独り暮らしの住処
そんな私にとって、此の里はとても暖かく居心地がいい
ん、私の刀……『紅憑』の故郷で合ってる。よ。
そっか。此処の土と火と、槌に育まれたんだもの。ね。

「恵まれたね、きみ」と『紅憑』の柄を撫でる
私も、此処が故郷であったならば良かったのに

さて、里に着いたら何をしよう
刀の手入れ? 生憎研ぎは素人故、お願いするのも良いかも
里の子らに新陰流の歩法を教えるのも良いかも知れない
刀を持てずとも凶刃から身を逃がす程度には役に立つ筈

短剣をどれほど鍛えたら強くなる、か?
ん……、と
えぇ、と……
(困り果てて狐耳と尾が萎れる)
(刀の振るい方ならばそれなりに熟知しているが)
(鍛刀は素人なので分からぬ、へるぷ)
(助けを乞うように傍らの鍛冶師殿を見上げる)

仕上がった彼の得物を感嘆しながら眺める
ん。何だか美人になったね、この子。
わ、短剣が両手剣に……。
大きさが変容する剣は初めて見た。
妖刀地金の力、そんな風にも引き出せるんだね。
都月くんと鍛冶師殿の発想力は凄い。ね。

そう言えば、彼の前で『紅憑』を抜いた事はまだ無かった
仙狐式抜刀術の更に先
未だ試行錯誤の段階だけれど
新たな術理を此処で披露するのもまた善き、かな

火迅椿に足掛かりを得て
編み出したる新たな『椿』

――|刎椿之迅《ハネツバキ》

術理の名前が此の里の|刀《子》達の銘に似ているのは
私の拠り所が永海の里になっている証左か
ん、そうだね
私は、此の里が大好きなんだ


木常野・都月
魔穿鐵剣外伝

■概要
クロム・エルフェルトさん(f09031)とのノベルをお願いいたします。
内容は現アイテム「ダガー」の強化・仕様変更です。

ダガーは両刃の短剣です。
現状は、所謂普通の短剣です。
もう1本エレメンタルダガー(以下ED)を持っており、使用時はEDと併せて双剣として使用しています。
EDが片刃の属性剣に対して、ダガーに特殊な機能はありません。
今回このダガーに何かしらの機能を追加したいと思っています。

仕様変更の内容ですが、実はまだ詳細が決まっていません。すみません。
ただ、普段は短剣仕様、何かのアクション(掛け声?意思?等)で両手剣にできたら良いなと思っています。
案としては、今考えているのは、氷か何かしらの精霊を仕込んで両手剣にする等?
何かあれば両手剣になるギミックもお任せしたいと思います。

銘についても、ダガーの名称変更も含めて、全てお任せします。


■都月について
記憶喪失の妖狐の精霊術士/シーフです。
気がついたら野生の狐として雪山の森で生きていました。
とあるきっかけで妖狐に目覚めましたが、妖狐としての生活はまだ数年程度です。

口調は、一人称「俺」、呼び捨て系
クロムさんに対しては「クロムさん」、丁寧語っぽい喋り方をします。
精霊は「精霊様」と呼んでいます。


■内容:アドリブ自由にお任せします
クロムさん、このダガーを強くしたいんです。
このダガーは、野生の狐から妖狐、ヒトに目覚めた俺にとって、第二の牙みたいなものだから。
でも、カタナカジってよく分からなくて。
ダガーはアックスアンドウィザーズの剣だけど、見てもらえるかな……。

ここが永海の里……
凄く気持ちよさそう。
あちこち火の精霊様の気配。
クロムさんの刀の故郷なんですね。
気のせいか金属の、土の精霊様の気配が似てる気がする。

この人がカタナカジの人?
これ、強くして欲しいんだ。
この世界……では見慣れない剣かもしれないけど、強くして欲しい。
クロムさんの刀のように、強くして欲しいんだ。

クロムさん、短剣はどれくらい鍛えたら強くなるんですか?

銘?名前の事?
その、銘はカタナカジの人に付けて貰っていいか。
名前は、親が付けるものだから。

これが新しい俺の牙か。(興味津々)
美人、ですか?
そうか、お前、美人にして貰ったんだな!(嬉しそう)
クロムさん、俺、試し切り、やってみたいです!

ダガーが大きくなった!
クロムさんと同じ両手の剣……(嬉しくて尻尾の揺れが止まらない)

クロムさん、見てください!
これ、ほら!クロムさんと同じ!(尻尾ぶんぶん)

ハネツバキ……凄い。綺麗だ……
(新たな牙に)これからよろしくな。
強くなろう。俺たちも。
クロムさんと紅憑みたいに。
帰ったらユーベルコードとか調整しないとな!(嬉しそう)



 その日、クロム・エルフェルト(縮地灼閃の剣狐・f09031)は己が恋人に話したものだ。この刀、|無比真焔《むひしんえん》『|紅憑《あかつき》』は、失った無二の愛刀たる『憑紅模』に代わり、さる刀匠の元で無比の熱を込めて鍛えられた刀なのだと。そこに至る迄の幾つもの、波乱の戦の話もさることながら、恋人の興味をより強く惹いたのは、彼女の美しき刃を鍛え上げた刀匠達だった。
「クロムさん、俺、このダガーを強くしたいんです」
 木常野・都月(|妖狐《ヒト見習い》の精霊術士・f21384)は、真っ向クロムと視線を重ね、続ける。
「このダガーは、野生の狐から妖狐、ヒトに目覚めた俺にとって、第二の牙みたいなものだから。……その、カタナカジって人たちに、見てもらうことはできませんか?」
「できる」
 クロムは即答した。確信があった。
 妖の鋼を扱わせたならば、三千世界で一等賞。彼らを知るからこそ、クロムの答えに淀みはない。
「――行ってみる? |紅憑《このこ》の故郷へ」
「!」
 クロムの誘いの一言に、ぴんと跳ねた都月の尻尾が、答えを何より如実に語っていた。



 さて、そうして訪れたは言わずもがな、|永海隠里《ながみのかくれざと》である。
 某日、昼下がり。鎚音と活気、心地よく冷えた秋の空気。キョロキョロと見回しながら、都月が呟く。
「ここが永海の里……あちこち火の精霊様の気配がしますね。それに……クロムさんのその刀と、金属の……土の精霊様の気配が似てる気がする」
「ん……そっか。此処の土と火と、槌に育まれたんだもの、ね」
 クロムは、そっと愛刀の柄を撫でた。
「恵まれたね、きみ」
 クロムは妖狐として生まれたが物心つく前に里より放逐された『石子』だ。故に己の故郷を知らぬ。そんな彼女を育てた師、上泉武蔵守信綱が隠れ住んだもただ一人暮らしの住処である。里というものに馴染みのなかった彼女にとっては、暖かく居心地のいい、数えるほどの里の一つだ。皆、かつて里を救った猟兵の一人であるクロムを慕い、可愛がり、いつでも温かく迎えてくれる。
「私も、ここが故郷だったならよかったのに」
「……」
 晩秋の風にクロムが浮かべた一抹の寂寞に、都月は黙って彼女の手を握る。

 ――大丈夫です。俺が、きっと、あなたの帰る場所になるから。

 熱い手がそう語っているかのようで、クロムは眼を僅かに瞠ってから、柔らかく青年に笑みを向けるのだった。


 道順を知っているクロムがいた故に、不案内は一つもなく、二人は無事に鍛冶場に至った。二人を出迎えたのはクロムと懇意の鍛冶師、『紅憑』を生んだ鬼才――|緋迅鉄《ひじんてつ》筆頭鍛冶、|永海・頑鉄《ながみ・がんてつ》翁である。都月のいた世界で言うのならドワーフさながらの、背の低いながらに屈強な、壮年の男だ。その腕ときたら、下手をすれば女の細い腰ほどにあるのではないか、という太さ。岩の塊のような男である。
「ほ、久しぶりに顔を見せたと思えば、まさかクロム殿が旦那を連れてこようとは! 長生きするモンじゃの!」
「頑鉄殿っ」
「旦那って……からかわないでくれ」
「かかかっ」
 二人が頬を赤らめる様子にからから笑う好々爺は、老いて尚才気煥発の風情! そのまま話を聞いて都月の刀を|鍛造《つく》ってしまいそうな勢いだったのだが、どっこい都月が「これ、強くして欲しいんだ」と出したダガーを一目見て、彼は眼を細めるなりこう言った。
「ああ、口惜しいが、こりゃ儂の仕事じゃないのう」
「頑鉄殿、それはどういう?」
「お前さん、凍気に|所縁《ゆかり》があろ。そういうものが持っていたものは、儂の仕事じゃモノにならん。儂の本分は緋迅鉄、炎気の刀故な」
 クロムの問いに片目を閉じて、一目で見抜いたかのような言動。頑鉄はそのまま一挙動に振り向き、胴間声で何者かを呼ばわった。
「|冷鑠《れいじゃく》! 数打ちを鍛造っとらんでこっちに来い! お前さんの仕事じゃ!」
「……」
 鍛冶場でうっそりと顔を上げた男がいた。するとその男こそが、冷鑠。永海・冷鑠なのだろう。クロムは聞いたことがある。確か、初代妖刀地金、|絶雹鉄《ぜっひょうてつ》の筆頭鍛冶だ。
「俺の手を止めるだけの価値があるんだろうな」
 立ち上がり、歩いてくる。白い膚、まるで夜雪のような青銀の髪。身長は都月よりもやや高く六尺足らずというところ。死装束に見紛うような白い着物を青い帯で止めた、不健康そうな男だ。年の頃は三〇に差し掛かろうか。
「凍気のある業物だ。鍛え直すにゃ不足はあるまい」
 頑鉄の言葉に冷鑠が眼を瞠る。もっとも、一瞬だ。その目が、『最早驚き飽きた』とでも言うように細まる。
「また猟兵ゆかりか。凍気を帯びた尋常の鉄なぞ、四方世界にそうなかろうに」
「「?」」
 都月とクロムが顔を合わせ不思議げに首を傾げ合うのを見て、頑鉄がからから笑った。
「儂らにとっては珍しいことなのよ。猟兵どのらが使う『ゆうべるこおど』なる力のせいか、猟兵どのの持つ武器には少なくないようじゃがな」
「|御託《ごたく》はいい」
 ずい、と進み出るなり、刀台を挟んで、冷鑠は都月を見下ろした。
「お前、俺の鍛造る刀を使う覚悟があるんだろうな」
「冷鑠――」
 名前のように冷たい険のある声を、頑鉄がめらりと燃える声で征そうとした刹那。
 どこまでも真っ直ぐな、少年のような瞳で、都月は迷いなく言った。
「ああ。この世界……では見慣れない剣かもしれないけど、強くして欲しい。クロムさんの刀のように、強くして欲しいんだ」
 いくつもの世界を、大切な人々を、――最愛のひとを、護るために。
 冷鑠の険など意にも介せず打ち抜くような、直向きな眼光。
「……ちッ」
 冷鑠は舌打ち一つ、
「|熟々《つくづく》猟兵というのは、氷の溶けるような眼ばかりしている……」
 ばし、と冷鑠は刀台からダガーを取り上げた。――承諾の意であろう。それを悟った都月が満面の笑みを浮かべる。
「やった! ありがとう! ――ねえ、クロムさん! 短剣って、どれくらい、どうやって鍛えたら強くなるんですか?!」
「え」
 ずんずんずん、と去って行く冷鑠。急に水を向けられたクロムの耳と尾が萎れる。
「ん……、と、えぇ、と……」
 さてこの狐、刀の振るい方ならば熟知しているが、鍛刀は素人なのでとんと分からぬ。
 頼りに見上げた頑鉄は、くっと笑ってこう言った。
「あの時斯様に揮ッた鎚の|様《さま》、語ってくれればよかろうさ」

 そう。やいばとは、鍛冶が己の全てを懸けて打つものだ。



◆永海・冷鑠作 絶雹鉄 純打
   刃渡一尺 |氷晶結実《ひょうしょうけつじつ》『|銀狐《ぎんぎつね》』◆
 鮫皮で滑り止めを成した変則両刃短剣。刃は元の形状と同じく、背側にはソードブレイカーのように敵の刃を受け止める荒い鋸歯が設えられている。
 都月のダガーを素材として精錬された、妖刀地金『絶雹鉄』による作刀。意念を込めることで、精霊に頼らず冷気を発する。基となったダガーよりも柄が長くなっており、ともすればアンバランスにも見えるのだが――



 鍛冶場中庭。試斬場。
「――“凍て付け”!!」
 都月がそう発した瞬間、銀狐の剣身が濡れたように光り、瞬く間に白い凍気を上げながら伸びる! 次の瞬間にはダガーだったはずの銀狐は、二尺八寸はあろうかという氷の大剣へと姿を変えていた。
「ダガーが……大きくなった!!」
「短剣が、両手剣に……なるほど、あの柄はそのために」
「ふん。当然だ」
 驚く二人に、冷鑠は当然の結果を見るようにいらえた。――銀狐は都月の音韻と意念に従い、氷の刃を形成し、自在に大剣へと形を変える。|字《あざな》して、氷晶結実『銀狐』。
「妖刀地金の力、そんな風にも引き出せるんだね」
「……そいつの持つ力と銀狐の力があればこそだ。驚くようなことではない」
「クロムさん! ほら! 見てください! クロムさんと同じ! 俺、試し斬りとかやってみたいです!」
「ふふ。冷鑠殿、巻藁を貸していただいても?」
「勝手にしろ。俺も、成果確認はせんとならんのでな」
 斜に構えた態度で、それでも設えられた巻き藁を指で示す冷鑠。見た目ほどにはこの男が冷たくないのを、クロムは聡くも理解している。そして恐らくは、都月もまた。
 わあわあと試し斬りをし、釘が打てるほどに凝固した巻き藁を見てはしゃぐ都月。当然だ、と繰り返しつつも成果に満足げな冷鑠。二人を見ながら、クロムもまた、愛刀の柄に手をやる。
 無比真焔『紅憑』。
「そういえば、まだ見せたことがなかったから。私も、御披露目」
 納刀状態から、低く低く構える。爆ぜる寸前の爆弾のような。刹那に開く椿のような。
 覇気とその美しき構えに都月と冷鑠が息を呑んだ瞬間、虚空に美しい斬閃が刻まれた。
 何をも斬ったわけではない。ただ虚空を薙いだだけ。

 それなのに、圧倒的な説得力があった。
 彼女が断つ気になったなら、例え神とて、その一閃からは逃れられまいと。
 
 ただ疾く、強く、あらゆる守りを断つであろう、無窮の一閃。

「|刎椿之迅《ハネツバキ》」
「――きれいだ」

 その動き、そして技の銘に見蕩れ聞き惚れるように、都月は呟く。冷鑠が圧倒されて言葉を失うその横で、密やかに、彼は短剣のグリップを強く握り直した。

 ――強くなろう、俺たちも。クロムさんと紅憑みたいに。これからよろしくな、銀狐。

 ちりり、と、氷の鈴が軋むように、返礼めいて音が鳴る。
 斯くて彼の短剣は、第二の生を受けたのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年10月26日


挿絵イラスト