【鱏秋祭】不思議な子供とキラキラ交流
ダークセイヴァーを翔ぶ我らが飛空戦艦「ワンダレイ」にて。
きょろきょろと、艦の廊下で見慣れない小さな姿が視線をあっちへこっちへ泳がす様をアスカ・ユークレース(電子の射手・f03928)は見つけた。
鱏秋祭が主催が一人。
迷い込んだ迷子の可能性もある。声をかけないわけにはいかない。
「どうかしました?」
アスカはしゃがみ込んで視線を合わせる。
布を被った布お化け風の子どものように見えるが、その姿はどこか儚げで――。
――光学迷彩の布だと、これくらい出来ますね。
一人で個人的に納得し、日々の化学と組み合わせれた技術の進歩に思わず内心ニッコリ。
『……!あ、あのね、此処からだとね、キラキラがね、沢山みえるの!』
子どもは、ぽつりとそう答える。布から覗いた目は光を映して煌めいていた。
此処は廊下。眩しいほどの輝きはそう多くない。
何を見ているのだろう、とアスカは子どもと視線の高さを合わせ、見ていた風景を自分も眺める。
――ああ、成程。
見えたのは光ばかりではない。
『知らないお兄ちゃんが、綺麗なお姉さんがそして沢山の色んな人が、キラキラなの!』
艦の皆が声を交わす様や賑やかな様子をキラキラだ、と眩しそうに眺めている。
伸ばそうとする手は|空《くう》を切り握られるものはない。
「案内しましょうか?」
『えへへ、へへ……此処で、良いの』
にかっ、と笑った表情は掛けた歯が見える。
よく見れば煤に汚れた頬や手足。靴は履かれてなどいない。
「そう、……ですか?」
『うん。もうちょっとだけ楽しそうな雰囲気眺めていたくって……ねえ、あそこが"天国"かなあ?』
「人によってはそうかも知れないですねぇ」
此処は街のように賑やかな空中戦艦で、賑やか。
天国と形容してもみんなもまた、同意で返答しそうなものだ。
『天国かあ、そっかあ……』
いいなあ、と言いたげな子どもは誰かに呼ばれたように振り返る。
アスカの傍を離れ、ててて、と何処とは言わずに駆けていこうとする。
『いいなあ、天国。此処にはあるんだ。いいなあ。――行きたなあ、キラキラ素敵、良いところ』
独り言は、見ていた場所とは別に駆けていく後ろ姿は置いていく。
『ねえお姉ちゃん、遠くに離れてもやっぱりキラキラだねぇ!見ているだけはもったいないねえ。連れてって、お姉ちゃんのおすすめをたくさん教えて?』
「はい、ご馳走も縁日の私イチオシセレクションも、順番にお連れしましょう」
にこりと笑って手招くと子どもは笑顔で戻って来る。
キラキラの空気を全身で浴びる――浴びようとした。アスカの目には不思議な子に映ったが、どの場所を案内しても眩しそうに目を細めて笑うのが印象的だった。
「どうでしょう?少し、一休みにしましょうか?」
暫く子どもと色々を巡った後アスカが声を掛けるとすぐ傍にいたはずの布を被った子どもは消えていた。
探すがどうにも見つからない。
『お姉ちゃん、ありがと!』
声だけは確かにそう聞こえたが、此処へはひとり迷い込んだわけではないのだろう。
「どういたしまして、ですよ」
ふふふ、と穏やかに聞こえた声の方を向いて返答をしたが――キラキラと光が浮かんで消えたのが見えただけだった。
そういえば。
アスカをこの日この時間見た皆は口々に言っていた。
だが、不思議と何を言っていたのか、アスカはわからずじまいだった。
誰かが近くにいるのかい?
誰を案内しているんだい?
紛れ込む迷い人。ダークセイヴァーならば、魂だって迷子になって訪れよう。
突然の背筋を凍らせる想いが頭を過るが、それにもやはりふふふと笑った。
あれは、光学迷彩で全身消えて姿をくらましたのだ、と。
成功
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