幻想、流れて、夢灯篭。
「……新しい事件を予知しました。」
大きく白い翼を広げ、付近に集まった猟兵を見渡すのは白霧・希雪()。
氷の結晶の意匠が施された小さな魔道具を手に、はっきりと話し始める。
「今回は──サクラミラージュ。とある街の一角、『逢魔が辻』と化した路地の制圧が任務となります。」
サクラミラージュ──直近で戦争のあった地。
その余波は未だ広く残り、各地には影朧の巣となる『逢魔が辻』へと変貌した危険地帯が数多く発生している。
「詳しい内容を説明しますね。」
持ってきた魔道具を起動し、説明とともに空中に映像を表示させる。
映るのは──暗い雰囲気の路地だ。
「『逢魔が辻』となったのは、狭い路地です。ですが、歪められ、つくり変えられた事でそこは空間が拡張され──青白い炎を灯した古い石灯籠が並ぶ、土道の街道へと変化しています。」
青白い炎はゆらゆらと仄めき、まるで吸い込まれてしまいそうな程に綺麗な光。
しかし薄暗く照らされた路地はおどろおどろしい雰囲気を纏う。
「道の終わりが見えないほどに広く、揺らめく灯篭の炎が等間隔に並ぶ──この場所に一歩踏み入れば、炎の中から『憐火蝶』というオブリビオンが現れます。」
憐火蝶──周囲の強い感情に呼応し、その炎を燃え盛らせる蝶型の影朧。
ひらひら、ゆらゆらと強い想いのある方へ飛来する──のだが、ここまでの数が集まれば脅威にもなる。
「憐火蝶は青白い炎を纏って、舞い飛びながら炎を放ってきます。群れると多少厄介ですが……一匹一匹は強くありません。範囲攻撃で殲滅するのが手っ取り早い手段でしょうが、素早く撃破を重ねても短時間で撃破は可能でしょう。」
先の見えない路地に並ぶ灯篭の数だけ、憐火蝶は現れる。
10、20ならばまだ処理は容易だ。
ならば、40、50はどうだ?
100を越えればもはや生ける大火事だ。
集まる前に、数が揃う前に──減らしておく必要がある。
「憐火蝶を殲滅したのちに、道の奥から大きく黒い狐……『黒天金星の九尾狐』が現れます。」
憐火蝶が消え、火の灯らない灯篭。
周囲を照らすものは僅かな月明かりのみ。
そんな中──闇を纏った黒九尾が現れる。
「人の願望を覗き、世界すら歪め──幸福な幻想を見せる狐ですが……その風景に囚われてはいけません。
その幸福を蜜とし、数多の人間を呼び寄せ喰らう怪狐。囚われてしまえば、もはや脱出は困難でしょう。」
帝都でも有名な『幻朧怪狐録』──それに度々名を刻まれる『黒天金星の九尾狐』。
人に幻惑を魅せ、夢現もわからぬままに喰らう──強力な影朧だ。
金の双つ星が、暗闇の中に瞬いた時──
「私が出られないのは歯痒いですが……貴方達なら打ち倒してくれると信じています。」
魔道具を停止させ、そしてくるりと振り返る。
すると徐々に視界が白く──白い霧が周囲を満たす。
「門を開きます。行き先はサクラミラージュ───どうか、ご武運を。」
カスミ
どうも、カスミです。皆様、帝都櫻大戰お疲れ様でした。
私はあまりシナリオをお出しすることができなかったのですが、それでも参加できて嬉しく思っています。
ハロウィンのイベントはもう始まっているようですし、12月には√EDENとクリスマス。楽しみには事欠きませんね!
ということで、説明に移らせて頂きますね。
第一章:『憐火蝶』の群れを殲滅せよ。
灯篭の中に潜んでいた憐火蝶が、猟兵が来ると同時に襲いかかってきます。
一匹一匹はそこまで強くないものの、集まれば厄介なのも事実。集まり切る前にさっさと殲滅してしまいましょう!
第二章:『黒天金星の九尾狐』を討伐せよ。
憐火蝶を殲滅し灯篭の炎が消えた時、暗闇の奥から現れる黒い九尾──黒天金星の九尾狐を討伐しましょう。
記憶を覗いて、幸福な光景を幻術で再現します。実際に周辺を作り替えるほどの力を有しているようなので惑わされないように、幻術に打ち勝って討伐を成功させましょう!
第1章 集団戦
『燐火蝶』
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POW : 灼熱飛舞
【ヒラヒラ舞い飛びながら炎】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 翅翼火光
【炎の翅から放たれた光】が命中した対象を燃やす。放たれた【蒼白い】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 蝶蝶怪火
レベル×1個の【蝶の姿をした焦熱】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
イラスト:芽蕗ハジメ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
真宮・奏
【星月の絆】で参加
たとえ我が家族の家がある世界の諸悪の根源が倒されても、この世界の魂の循環のシステムは変わることなく幻朧桜は咲き誇っています。住民としてはできるだけ彷徨う魂は鎮めておきたいですね。瞬さん、行きましょう。
スーパージャスティス発動!!相変わらず攻撃強烈ですね・・・【オーラ防御】【拠点防御】【硬化】【鉄壁】【回復力】【火炎耐性】で攻撃を凌ぎます!!
私は護りの騎士、そう簡単に崩せれるとは思わないことです!!さあ、還りなさい!!【限界突破】からの【風を操る】+【衝撃波】!!全力のかまいたちで吹き飛ばします!!瞬さん、追撃を!!
戦い続けますとも。私には守るべきものがあるのですから!!
神城・瞬
【星月の絆】で参加
世界を作り変えるようなやつが諸悪の根源ですからね。余波は少なからず残るでしょうね。それに影朧の発生の循環システムがなくなった訳ではありまんし。ええ、奏。僕たち家族が愛する世界の為、できるかぎりのことをやりましょう。
氷使いの僕にとって、炎はできるだけ被弾を防ぎたい。六花の舞発動。90個を投擲武器に66個を幻影に回します。更に【オーラ防御】【残像】【心眼】【第六感】【回復力】で防御もしっかり。
奏の負担が大きいので、できるだけ早く数を減らしたい。【高速詠唱】【全力魔法】【限界突破】【範囲攻撃】で【凍結攻撃】!!まとめて敵群を凍らせます。
還りなさい。彷徨える魂。もう休んでいいんです。
サクラミラージュの、ひとつの路地に。
煉瓦を踏む音を僅かに響かせ、立ち入れば──瞳に映る景色は変化し、現ならざる逢魔が辻。
煉瓦通りは荒い土道、並ぶ街灯は青白く光る灯篭へ。
雰囲気は重く、湿った風が髪を撫でる──おどろおどろしい古道へと姿を変える。
「瞬さん、行きましょう。」
「えぇ、奏。僕たち家族が愛する世界の為、できるかぎりのことをやりましょう。」
真宮・奏(絢爛の星・f03210)は油断なく武器を構え、神域・瞬(清光の月・f06558)はその隣に並ぶ。
この世界で起きた戦争の余波。諸悪の根源が打ち倒されたと言っても、それで万事解決となるはずもなく。
魂の循環は未だ続き、故に彷徨う魂は鎮めなくてはならない。救わなくてはならない。
古い路地に灯る灯篭だけが、青白く2人を、すべてを、照らし出し──幻想的と言える程に綺麗な光景が広がってゆく。
だが、それでも街角から一歩踏み出せば、既に帷は落ちているのだ。
2人の視線は油断なく、グリモア猟兵からの情報にあった灯篭へと注がれる。
ゆらり、と仄めく灯篭の火。
まるで吸い込まれそうな程に鮮やかな、そして奥深い色。
それでも、これは──滅ぼすべき、否、還すべき存在なのだ。
灯篭の蒼い炎が、ふわりと浮かび上がる。
ゆらゆらと仄めいて──憐火蝶は彩りを強める。
それは、攻撃の合図。
「……来ます!」
奏が一歩前に出る。手に持つ盾を正面に構え、オーラを纏わせて──来たる炎を正面から受け止めようと。
憐火蝶は舞うように、青白い炎を撒き散らす。
華やかな見た目からは違和感すら感じるほどの、鋭く熱い炎。
周辺を火の海にするが如くに──降り注ぐ。
しかし──奏の盾はその程度に屈することはない。
新たに纏われるは黄金のオーラ。意思の力をそのまま映し出したかのような輝きと、安心感。
「スーパージャスティス発動!! 相変わらず攻撃強烈ですね…」
口ではそう言いつつも、その盾は炎のひとつすら通すことはない。
敵の攻撃を一手に引き受ける姿は鉄壁の如く。
「私は護りの騎士、そう簡単に崩せるとは思わないことです!!」
だが、このままでは攻勢に移れない。
今の状態でこれならば──次第に敵の数が増えるなら、状況は悪くなる一方だ。
しかし、奏の瞳にその未来は映らない。
今は、心から頼れる最愛の──瞬とこの戦場に立っているのだから。
「さて、これ以上奏に負担をかけられない。──少々強引に行きますよ。」
この戦場に、冷たい風が吹く。
炎で熱された体を優しく撫でつつ──数多出ずるは自身の幻影。
そして瞬の周りにふわりと浮かぶ氷の短刀。その数およそ90。
次々と投げれば寸分の狂いもなく蝶の胴体を貫き、そのままに熱を奪い兵三へと変える。
自身の扱う属性が故に炎を被弾することは避けたいものだ。だが、奏が蝶たちの攻撃を一手に担うなら、大技も打てようというもの。
そして奏としても、氷短刀の乱舞により敵勢が緩んだ今ならば──反撃の一手を打つことも可能!
「さあ、還りなさい!!」
右腕を高く掲げ、風を纏わせ──風の螺旋、かまいたちを戦場に放つ。
元来蝶というものは強風に弱き生き物だ。吹かれ、散らされ、その力が弱まるれば、露わになる致命的な“隙”
「瞬さん、追撃を!!」
「えぇ。還りなさい。彷徨える魂。──もう休んでいいんです。」
柔らかな優しさすら感じさせる言葉に呼応して魂も凍える冷たい風がひゅうと吹き込む。
凍風に触れた蝶たちは末端からパキパキと音を立てて凍りつき、その動きを完全に停止させる。
この結末は必然だ。なんせ、奏が繋いでくれた攻勢のチャンス、無駄にすることなど出来ようはずもないのだから。
数多の氷像は重力に従い地に墜ちて──パキン、と澄んだ音を響かせて粉々に砕け散った。
火の灯る灯篭はその数を大きく減らした。
未だ数は多く残るが──それでもその全てが集結するという最悪の状況はもはや起こり得ない。
勝利への大きな第一歩を、確実に刻みつけたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アレクサンドロ・ロッソ
【アドリブ歓迎】
煉瓦を踏む感覚と音が土を踏むそれに変わる
「ここか」
グリモア猟兵からの事前情報の通りだ
帳は落ち、無数の石灯籠が並び照らす暗い路地
数十の燐火蝶が灯籠の炎の中から浮かび上がるやいなや、こちらに向かってきた
どうやら、|俺の首飾り《亡き母の形見》に込められた|強い想い《愛》に惹かれているらしい
「…お前たちにこれはやれん。だが、神の慈悲の下に痛苦なき死を赦そう」
そう言って息を吸い、体内で魔力を圧縮
こちらに迫る大火の群れに向け、解き放った
閑散とした路地。
戦争の影響か、最初からそうであったのか、人通りの無い街路の奥に。
青白い灯火がひとつ、ふたつ、みっつ。
気付けばそこは現に在らず。
煉瓦を踏む感覚と音が──静かに土を踏み締めるそれに変わる。
アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は油断なく周囲に気配を張り巡らせる。
「ここか」
情報通りだ。帷は落ち、無数の石灯籠が並び照らす暗い路地。
静かに仄めく青白い灯火が、湿気を含んだ風に揺れてゆらゆらと。
美しい光景。だが、その本質は穏やかな外の世界のものとはかけ離れている。
炎とは元来、存在するだけで被害を齎す危険なものだ。
意思を持ち、その行動原理がどれだけ単純なものであったとしても、それは変わらない。
強い意志に惹かれるこの灯火たちは、言わば選別装置として此処に在る。
憐火蝶が反応するほどの強い想いを抱えるものは──この奥に居る存在にとって都合が悪いから。
青白い炎がふわりと舞う。
羽ばたき、鱗粉のような火の粉を散らし、闇に彩りを与えるように。
もはや、単純に数えることが困難な数だ。
それらはふらり、ゆらりと導かれるように──アレクサンドロの方向へ押し寄せる。
炎の群れは、ただそう在る為に炎を散らす。
アレクサンドロはそれを正面から受け、反撃をせずただ眺めている。
──憐火蝶が惹かれる“強き想い”が気になったから。
単純な行動原理で在るが故、その感情に、結果に、偽りは無い。
その翅をはたはたと動かして───1羽の蝶が静かに触れたのは、アレクサンドロの持つ首飾りだった。
それは、亡き母の形見。
それは、取り戻せぬ嘗ての日常。
それは、乗り越え歩んだ足跡のひとつ。
後悔が無いと言えば嘘になる。が───それでも抱く感情は“愛”。
アレクサンドロが人々に抱く慈愛の心とはまた毛色が違う。心から頼り、信じ、尊敬した存在に対するものなのだから。
「……お前たちにこれはやれん。だが、神の慈悲の下に痛苦なき死を赦そう。」
燐火蝶に悪意と呼べるような感情が無いのはわかっている。
ただ惹かれただけで、それを欲しているわけでは無いことも。
それでも、アレクサンドロには強き想いを、愛を、望んでいる様に見えたから。
サクラミラージュにおいて、穢れた魂──影朧たちは、幻朧桜を中心とした輪廻を歩む。
過去から滲み出て過去へと還るだけの存在ではなく、“転生”してその先を目指すことができる。
神として、他所の世界に深く関係を持つのは避けたい。が──それ以前にアレクサンドロは猟兵だ。
ならば、ここで輪廻の輪へと還すのも、役目のひとつ、なのだろうか。
【|竜の息吹《ソフィオ・デル・ドラーゴ》】───
瞳を閉じて、深く息を吸い、魔力を圧縮して。
ひらりと舞い寄る大火の群れに──解き放った。
大成功
🔵🔵🔵
夜鳥・藍
アドリブ歓迎です。
大戦が終わったとはいえ、まだまだ影朧は健在。逢魔が辻もまた同じ。
できる事をしていかなくては。
灯籠はただあるだけならばとても綺麗ですし、これもまた誰かの慰みになるのでしょうが。ですが。
逢魔が辻は一般の方にはただの危険地帯。少しでもその危険性は払わなくては。
現れた燐火蝶を確認したら、青月をかかげ雷公天絶陣で一気に殲滅を狙います。
相手の攻撃ごと撃ち落とす勢いで。
全てを撃ち落とす事は難しいでしょうが何度も雷公天絶陣を放つことで少しでも数を減らしていきましょう。
カツ、カツと靴の音を響かせて、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は薄明かりの照らすサクラミラージュの路地を歩む。
夜風を浴びれば白い艶髪がさらりと靡き、涼やかに。
───大戦が終わったとはいえ、まだまだ影朧は健在。逢魔が辻もまた同じ。
この世界を覆う闇は、黒幕というべき邪悪は、先の大戦で既に討たれている。だが、それでも世界の輪廻は、幻朧桜というシステムは、ただ美しく世界を彩る。
───できる事をしていかなくては。
一歩、道を外れる。ここが“狭間”だ。
景色はガラリと変化し───青白い灯籠の並ぶ古い路地。《逢魔が辻》へ。
淡く、幻想的な光が荒い土道を照らす。
この光景は、その本質に依らず。これもまた誰かの慰みになるのだろう。
───ですが。
ここは、違う。
この光景は、まさしく幻想だ。
人の心を誘い、奥へ奥へと導くための。
───逢魔が辻は一般の方にはただの危険地帯。少しでもその危険性は払わなくては。
ふわり、と灯籠の炎が浮き上がる。
青白い炎は文字通り羽ばたき舞って、道を塞ぐかのように寄って出てくる。
憐火蝶───これは、選別装置としてこの場に在る。
奥に潜む何者かの手によって、強き意思を持つものを拒み、そうでないものを導くための。
この場所において、藍は認められなかったらしい。
「私には、この道を進む資格がないという事でしょうか。なら──押し通りましょう。」
いつの間にか其の手に持つは、青き月の名を冠する打刀。
逢魔が辻に入りて尚も照らす月の光を浴びてか、それとも憐火蝶の色彩故か、仄かに青白く輝く刀を、抜き放って。
「さあ、道を開けてください。さもなくば───唯のひとつすら残す気はありません。」
青月が、仄かとは言えないほどの光を、否、雷を纏う。
バチバチと刀に留まった純粋なエネルギーが、その力を振るう先を待ち望むかのように輝きを増す。
強き光に誘導されるかの如く、憐火蝶も動きを見せる。
この場に集まった幾匹もの蝶が一ヶ所に集まり、大きな炎弾を作り出す。
「纏まってくれたのは好都合です……! いざ……!!」
両者は、同時に放たれ──そして、衝突する。
割れるような閃光と爆発音が響く。
弾け飛んだのは、炎弾の方だ。
それを貫いた荒れ狂う雷が、その先にある全てを蹂躙する。
一条の光を残したかと思えば通り道に居た蝶が灯火を消して地に墜ちる。
流れ、伝わり、破壊を撒き散らす雷の前にひとつとして残る灯火が存在するわけもなく──一陣の風が通り過ぎた後に残されたのは月明かりのみが照らす、魂のない灯籠だけだった。
「さて……先に進みましょう。まだ、すべきことがあるのですから。」
湿った風がゆるく吹き、藍の姿は灯籠の奥へ消える。
そして──無視はできぬ敵の下へ、纏わり付く嫌な気配と共に。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『『幻朧怪狐録』黒天金星の九尾狐』
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POW : 大変化・幸福流転
指定地点からレベルm半径内を【幸福な場面が繰り返されるだけの幻想世界】に変える。内部にいる者は活力(体温・燃料等)を激しく消耗する。
SPD : 大変化・極楽浄土
レベルm半径内を幻の【対象の記憶を奪う代わりに願望を叶える世界】で包む。これは遮蔽や攻撃効果を与え、術者より知恵の低い者には破壊されない。
WIZ : 大変化・郷愁呪惑
対象に【見た者がもっとも心安らぐ環境】の幻影を纏わせる。対象を見て【少しでも、この幻影の中にいたい】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。
イラスト:小日向 マキナ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠田抜・ユウナ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
真宮・奏
【星月の絆】
これは・・・黒狐?この尋常ならざる邪気・・・。本気を出さなければやられますね。ほぼ反応でスーパージャスティスを発動しますが、発動の隙にユーベルコードを喰らって・・・しまった・・・
目の前にいるのは少し歳をとったお父さんとお母さん。隣には5歳くらいの瞬さんと私の面影をもつ子供。子供を挟むように座って微笑む瞬さん。向いのソファには少し成長してならんで座っている星羅と朔兎・・
で、その場面は今じゃないでしょう?私の望む未来の幸せはまだ来ないし未知数。【オーラ防御】【狂気耐性】【呪詛耐性】で耐えます。今をみずにして未来はありえない!!
【限界突破】+【衝撃波】で偽りの世界ごと敵を吹き飛ばします!
神城・瞬
【星月の絆】で参加
この影朧・・・並みの影朧とは違いますね。奏!?問答無用でUC発動したってことは・・・!?・・・(戸惑った隙に敵のUCを喰らう}
これは・・・ああ、父さんと母さん、奏と星羅と朔兎が仲良く食事してますね。僕視点でしょうか。確かに何気ない食事風景が僕が心やすらぐ風景ですが、長年戦場体験してきて敵が目の前で邪気をはなっていきなりこの風景は場違いすぎるでしょう・・・甘いですね。
家族とは辛い戦場も一緒に潜ってきたんです。なるべく幻影をふりきります。奏の臨戦体勢をみてますし、一人で戦わせません。
お待たせしました。奏。【高速詠唱】【全力魔法】で氷晶の矢!!これが修羅場を潜り抜けた者の本気です!
火の消えた灯籠、その先へ。
湿っぽい風がぴたりと止み、冷たい汗が背を伝う。
一歩、一歩と進む足が重いような錯覚。
ざり、と荒い土道を踏みしめる音がやけに大きく耳に響く。
間宮・奏(絢爛の星・f03210)と神域・瞬(清光の月・f06558)は警戒を深め、一瞬たりとも気を抜かぬように武具を構える。
情報によれば、この先に、居る。
人々の心を弄び喰らう妖の獣が。
止まった風が、僅かに揺れる。
禍々しいと感じるほどの邪気を隠しもせず、運ばれてきた“エサ”ではなく自らの狩場を荒らす“侵入者”を見据える金色の瞳がきらりと輝く
───これは……黒狐? この邪気は……!!
奏の体は思考するより早く、邪気に反応して一歩前に出て盾を構える。
そして流れるようにUCを起動させて不意打ちを防ごうと。
───この影朧……並の影朧とは違いますね。
瞬の冷静な視線が、闇纏う巨躯の金瞳とぶつかる。だが、それよりも──
「奏!? それを使うということは……!?」
瞬は奏と対照的に、一歩後ろへ下がる。
戸惑いもある。肌を指すような邪気に、恐怖に似た警戒も抱いている。
2人の対応は、間違っていなかった。だが、それでも結果は残酷だった。
「しまっ、た……」
「……!?」
一手、遅かった。
2人には既に闇によく似た幻影が纏わり付き、その効力を発している。
この幻影は、対象者に幻想を見せる。
戦意を削ぎ、戦力を削ぎ、自らの支配下に置くための。
しかし、それは辛く苦しい幻覚などではなく──
「これ、美味しいね!」
「そう? まだまだあるから、好きなだけ食べてもいいのよ?」
目の前で、楽しそうな声が響く。
はっとしたように奏は目の前の世界を認識しようと。
確か、今は子供達と食事をしていたんでしたっけ。
楽しげな食卓の姿に、自然と笑みが溢れる。
「本当に美味しいよ、お母さん。」
なんて言ったりして。
でも───違う。
この場面は|今じゃない《・・・・・》。
そう心で思った瞬間、幻想は姿を変える。
より楽しそうな光景。幸せそうな笑顔。アルバムを捲るかのように、今まで経験もしたことのない最高の瞬間だけを切り取って、変わるがわるに。
まるで、この世界から逃さぬようにと、“奏の想像する最も幸せなもの”を映し出そうとして───
それでも、奏の心は揺らがない。
「もう取り繕っても遅い。 私の望む未来の幸せはまだ来ないし未知数。」
自身の持つ剣に手をかける。
幻想を振り払う覚悟なんて、とっくの昔にできている!
「今を見ずして未来はありえない!!」
声をあげて、幻想を吹き飛ばして───
瞬もまた、幻影に囚われる。
見えたのは殆ど奏と同じ景色──何気ない食卓、幸せな光景だ。
───これは……ああ、父さんと母さん、奏と星羅と朔兎が仲良く食事をしていますね。
いただきます、と皆が言って食事をとる、確かに心安らぐ光景。
それでも、瞬の瞳は、気配は、和らがない。
最初から知っている。この光景は僕が望んだもので、酷く甘く魅力的で、そしてこれは現実ではないことくらい。
「敵が目の前で邪気を放っていきなり──この風景は場違いすぎるでしょう……甘い、ですね。」
手を緩く伸べ、冷気で仮初の幸せを埋め尽くす。
それでも、風景だけは凍りつかない。 えぇ、知ってます。
「家族とは辛い戦場も一緒に潜ってきたんです。奏の臨戦体勢を見てますし、1人で戦わせません。」
冷気が満ち、温度を奪い、幻想は音を立てて剥がれ落ちて───
「大丈夫ですか、瞬さん!」
「お待たせしました、奏。」
2人は同時に幻想を振り払う。眼前には今だに黒狐が存在し、そして追加の幻影はない。
「人の幸せを弄ぶのは、許せません!」
「見せましょう、これが私たちの本気です!」
構えた剣をそのままに、一歩踏み出して。
手慣れた動作で氷の矢を無数に作り出して。
「はあああああッ!!!」
奏の斬撃は黒狐の夜のような毛皮を軽く切り裂き、血を滲ませる。
そしてそれを嫌い空中へ大きく跳躍したならば───瞬の格好の的だ。
「さて、これを見切れますか? ──見切れたとしても、もはや躱すことなど。」
氷の矢は幾重にも飛来し、その度に氷の割れる音と血が地面に滴る音が響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
夜鳥・藍
アドリブ歓迎です。
現れましたね。
あなたの望みはわかりませんが人々の生活を脅かすものはおいてはおけません。
腰に下げた鳴神を撫で雷光を放ちます。
恨みはございません。ですが私もまたサクラミラージュに生まれ育ったもの。そこに住む人々に害なす存在を放ってはおけないのです。
幻影は今の一人暮らしの家。夜休む前のひとときの光景。
ですがただそれだけ。
それだけではありますがこの場所は私が勝ち取った場所。
実家を出て占いで生計を立てる場所。誰かに与えられた場所ではありません。
あなたが見せたところで無意味です。
湿った風が、ぞわりと肌を吹き抜ける。
ざり、と一歩踏み出す音が、異様に静かなこの空間に響き渡るような錯覚。
夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は白い艶髪を軽く靡かせて───只目前の一点を見据える。
ヒュウ、と風が吹き抜ける。
気づけば黄金の双つ星が目の前に浮かんでいた。
「現れましたね。」
神秘的な風景も、廃れた道も。もはや何も感じさせぬほどの悪寒を目の前の───此方を睨む金の瞳から感じとる。
油断はできない。恐らく、比較的強大な存在なのだろう。
グリモア猟兵からの情報も、そして、この身が伝える警戒も。危機感を覚えるのに十分だ。
だが、それでも。藍は一歩として下がることはない。
「あなたの望みはわかりませんが人々の生活を脅かすものはおいてはおけません。」
そう言い放ち、腰に下げた鳴神に手を伸ばそうとして───気付く。
周囲の風景がガラリと様変わりしていることに。
しかしそれは見覚えの無いものではない。
ここは、今住んでいる家。寝支度を済ませ、椅子に腰掛けてゆるりとくつろぐひとときの光景。
今は……何をしていたのでしょうか。少し寝てしまっていましたか。
違和感なく、そう思う。
これは幻影。人の記憶に作用し、風景を作り出し、そしてその奥にある泥沼へと突き落とす為の。
黒狐は嗤う。この獲物を喰らって、受けた傷を癒せると。
己の幻影の効力を、疑うこともせずに。
違和感は、無い。本当に?
軽く思考すれば、すぐに行き着くところに答えはある。
本来ならば、それすら出来ぬ程にこの幻影は厄介なものなのだろう。
だが、藍の場合は否と言う。それだけの話。
この場所は、私が勝ち取った場所。
実家を出て占いで生計を立てる場所。
自分、1人の手で。誰かに与えられた場所では無いのだから。
今更、この現実を見せられたところで、何も変わらない。
嬉しくはあるが、それは既に手の中にある。そんなものを。
「あなたが見せたところで無意味です。」
再び腰に下げた鳴神に手を伸ばし、今度はしっかりと小さな刃を手に握る。
「恨みはございません。ですが私もまたサクラミラージュに生まれ育ったもの。そこに住む人々に害なす存在を放ってはおけないのです。」
鳴神が、眩い光を帯びる。
そして、ひと撫ですれば───迸る雷光が視界を埋め尽くした。
幻影も、現実も、そしてその先にいる黒狐さえも。
ただ地面に電流跡を残して、藍はその場を静かに立ち去った。
大成功
🔵🔵🔵
アレクサンドロ・ロッソ
「これは…」
黒い狐、事前情報にあった黒天金星の九尾狐という奴か
姿を視界に認めた瞬間、周りの景色が変化する
幼き日に俺達姉弟を庇い、命を失った母
愚かな父を生き返らせんがために、自らが地獄に落ちることも厭わず神に祈った|エルピス《我が娘》がそこにいて、笑いかけていた
あり得ない
あり得てはならない
(我が母を、我が娘の覚悟と愛を踏みにじり、幻惑でもって騙り、この俺を誑かさんとするか)
そう認識した途端、憤怒が心の内に溢れた
「───もはや、貴様にかける慈悲などない」
【疑似神域生成】を発動
奴と奴の弄する幻惑ごと神域で包み込み、存在の残滓すら残さず消滅させてやる
「一欠片も残れると思うな」
灯籠の蒼い光は疾うに消え、澱んだ重たい空気だけが取り残されて。
一歩、また一歩と月明かりのみが照らし出す暗闇を歩めば。
アレクサンドロ・ロッソ(豊穣と天候を司る半神半人・f43417)は己を取り巻く空気の流れが、僅かに変化したのを悟る。
自分以外の誰かが姿を隠し、そう遠くない場所に現れた気配、とでもいうのだろうか。
先程迄はかかっていなかった霧が、いつの間にか纏わり付くように。
「これは……」
纏う濃霧に。そして、その先に現れた存在に、警戒混じりの小さな言葉を吐く。
此方をその二つの瞳で睨む、黒い狐。
事前情報にあった、黒天金星の九尾狐という奴か──
しかし、アレクサンドロに許された思考は僅かここまで。
濃霧に包まれた時点で、既に敵の術中にある。
この濃霧は幻惑の霧。
生半可な覚悟や意志では越えられぬ、幸福という名の泥沼に嵌める術。
黒狐の姿が濃霧に遮られ、その瞳の妖しき光だけが残光のように残る中──己の失策を理解する。
背後から、声が聞こえる。
この声は──最近聞いたどんな声とも違う。
女の声、それもふたつ。友人の声じゃない。同じ旅団の者の声でもない。もっと優しげで、もっと儚げで───
それでいて、どこか。覚えのある、懐かしい声だ。
「誰だ?」
振り返ろうとして、脳裏にチラついた顔。
有り得ない。
そんな訳は無い。
記憶間違いだろう。最後にその声を聞いたのは何千年も、あるいはもっと───過去のことなのだから。
でも、不思議とそうにしか思えなくて。
完全に、振り返ってしまった。
「大きくなったわね、アンディ───私を、覚えているかしら?」
「久しぶり、お父さん!」
その穏やかな笑みを、その輝くような笑みを、視界に入れてしまった。
それは、当たる筈の無い思考の的中だった。
ルシアス。そして、エルピス。アレクサンドロの母であり、そしてアレクサンドロの娘の姿。
有り得ない。
有り得てはならない。
だって、二人とも───もうこの世界に|存在しない《・・・・・》から。
何度、その顔をもう一度見れたら、と願っただろう。
何度、その声をもう一度聞けたら、と願っただろう。
しかしその全ては叶わなかった願い。
死者は蘇らない───わけではないが、この二人が未だ現世に留まっている可能性はゼロなのだ。
「母さん、そして、エルピス───」
少し、寂しげな声が漏れる。
それは、普段の彼からは聞けないような。
そして、心の奥から強い感情が湧き上がってくる。
再会の喜び? 神への感謝? ───否。
───我が母の愛を、我が娘の覚悟を踏み躙るのか。
───その姿を幻惑で以て騙るのか。
───そして、この俺を誑かさんとするか。
沸々と湧く強い感情。それは、嚇怒だ。
「───もはや、貴様にかける慈悲などない。」
アレクサンドロはその場から動くこともなく、ただ迸る紅き魔力を解き放つ。
それは幻惑ごとこの空間全てを包みこみ、誰一人脱出することの出来ない牢獄となりて。
残滓すら、残してやるものか。その存在の全てを消滅させてやる。
「一欠片も残れると思うな。」
魔力で包んだこの牢獄で、神の裁きが下される。
全てを蹂躙する雷。意のままに飛来する雹礫、そして地中から貫く樹木。
それは人地を超えたもの。神の領域。
黒天金星の九尾狐───哀れな黒狐は、触れてはならない逆鱗に触れたのだ。
大成功
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