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帝都櫻大戰⑳〜名残り……一生のお願い

作者：黒代朝希

　――六番目の猟兵よ、見事『輝けるサクラミラージュ』を破壊してくれた。
　――この世界に生きる人々は、最後を知らずに幸せを抱いたまま消失する事だろう。
　――だが、未練がある。
　――この世界に生きている人々の、笑顔。
　――彼らは、確かにこの『輝けるサクラミラージュ』に存在した。
　――その事を忘れないでくれ。
　――ここにいたのだと、覚えていてくれ。
　――理解してくれ。
　――六番目の猟兵よ、死者として希う。
　――どうか、完全に消えゆくその時まで……この『輝けるサクラミラージュ』の光景を、一つでも多く目に焼け付けてほしい。
　――『幻朧帝イティハーサ』が、我の残滓を差し向けるだろうが……その影響は『輝けるサクラミラージュ』には及ばない。
　――『輝けるサクラミラージュ』の光景、一幕を目に焼き付けた後……我の残滓を迎え撃ってほしい。
　――残滓とは言え、我に加えて『幻朧帝イティハーサ』の力も内包している以上、油断はしないでほしい。
　――贅沢を言っているのは分かるが……それでも、我の理想であった『輝けるサクラミラージュ』を一つでも多く記憶してほしい。

　――彼らの人生が確かに存在し、その温もりと幸せが確かに存在していた事を。
　――もしも、彼らが本物のサクラミラージュで同じ様に笑えるなら……それ以上に言う事はないのだが。
　――頼む、六番目の猟兵……我の我儘、一生のお願いを聞いてくれ。

　――彼らの幸せを、せめて心ある者達と、命ある者達の記憶の中で……永劫のものにしてくれることが、我の幸いなのだから……

第1章 ボス戦 『ソウマコジロウ幻朧態』

POW   :    透明逆転剣 【舞い散る幻朧桜】が命中した敵を一定確率で即死させる。即死率は、負傷や射程等で自身が不利な状況にある程上昇する。 SPD   :    透明魂魄刀 【鷹の如く飛翔する、無数の透明な日本刀】で攻撃する。命中すると【世界創造の力】を纏い、レベル分間［鷹の如く飛翔する、無数の透明な日本刀］の威力と切断力が上昇する。 WIZ   :    透徹たる眼光 戦場内に、見えない【幻朧桜の花弁】の流れを作り出す。下流にいる者は【オブリビオンと化す運命】に囚われ、回避率が激減する。 イラスト：炭水化物 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「この世界は、たしかに作り物かもしれない……けど、いつか見た夢なら、ぼくは忘れないよ」
　――そこに意識と形があるなら、夢でも守るべきだと誰かは宣した。
　だから、その言葉を告げた者に透明軍神『ソウマコジロウ』は告げる。
　――現実で、その意識を形にしてほしい……と。
「少しずつ、間違える事もありながらも……この『輝けるサクラミラージュ』も今あるサクラミラージュも、前に進んでいくよ」
　ユーベルコード『｜新世界ユウトピア《シャンバラー・ゲヱト》』を発動し、ハイカラさんとして『理想世界構築型ハイカラさん後光領域』を放つ国栖ヶ谷・鈴鹿（命短し恋せよ｜乙女《ハイカラ》さん・f23254）。
　お手製の二挺銃に後光領域を付与し、幻朧帝の足掻きである『ソウマコジロウ幻朧態』の残滓に向かって掃射しながら鈴鹿は呟く。
「ぼくのレシピ(設計図)は特別製さ……今あるサクラミラージュを、この『輝けるサクラミラージュ』にして見せるとも――」
　彼女は｜天才《ジイニアス》……類稀なる工学技術の才能を用いてオブリビオン・フォーミュラ『幻朧帝イティハーサ』と相対する六番目の猟兵である。
　だからこそ――『ソウマコジロウ』に約束をする。
「だから、安心して良いよ……ぼくが、守りたかったものを守るから……」
　ユーベルコードを用いて二撃を改変、幻朧帝の力をそぎ落としながらヨナの受け流しの噴水で、刀剣を蒼で染めた後……ゆっくりと、軍人の耳元で囁く鈴鹿。
　彼が行った正義を、祝福するかのように……

大成功 🔵​🔵​🔵​

「きれいね、ここはきっと、理想の世界……楽しそうに向けられる笑顔は、今この瞬間、偽りのものではないのでしょう」
「とても美しい、素敵な世界ね街を歩けば、道行く人の明るい笑顔……」
　路地裏にも影は無く、歌声は朗らかに優しく響く。
　三つ編みのお嬢さんが売ってた桜色のクレープは、とても美味かった。
　伊澄・響華（幻惑の胡蝶・f44099）とフィーナ・シェフィールド（天上の演奏家・f22932）が見て……目に焼き付けていく『輝けるサクラミラージュ』は、どこも笑顔だ。
　作り物ではない……悩んだり無軌道に路上などで戯れている若者――若き頃の『そう言えば、若かったなぁ』で済む小さな不満と悩みが、その輝きを更に――作り物ではなく、悩んだり退屈した果てに幸せになれる世界としての解像度を高めていく。
「ふふ、あれは帝都でも人気のパーラー。この世界でも流行ってるみたい……」
「あぁ、たとえここが本当のサクラミラージュじゃなくても――たしかに、理想の世界がここにはあった」
「……確かにここは、サクラミラージュなのね」
　やんちゃをした子供達が警官に怒られながらも、悩みを聞いて貰ったり……
　これで良いのだろうかと悩んでいるサラリーマンが、屋台の店主に背中を押されたり……
　反抗期の子供が、母の誕生日プレゼントを買ったり……
　小さな悩みと、それを凌駕する普遍的で不変の幸福の様相がそこにはあった。

「――殺気、隠せてないわよ」
「モーントシャイン、展開」
　そうして一通り『輝けるサクラミラージュ』の光景を目に焼き付けた後、フィーナと響華は戦闘態勢――幻朧帝イティハーサの悪あがきである『ソウマコジロウ幻朧態』の残滓と相対。
　それぞれ防御を用いて必中先制攻撃を凌ぎながら、彼女らは『ソウマコジロウ』へと語り掛けていく――
「……ソウマコジロウさん。あなたの理想の世界、わたしは忘れないわ。そして、いつか本当のサクラミラージュで、その願いを叶えてみせる」
「さようなら、ソウマコジロウ……あなたの夢見た世界は、わたしの天使がきっと叶えるわ」
　二人は連携しながら『ソウマコジロウ幻朧態』の中にて潜む『幻朧帝イティハーサ』の要因のみを攻撃。
　フィーナはユーベルコード『｜断帝櫻花剣《アシキモノヲタツオウカノケン》』で手の届く範囲の空中から『悪しき者を断罪する長大な桜色の光の聖剣』を召喚。
　響華はユーベルコード『｜幻惑の胡蝶《ファントム・バタフライ》』を発動し、足元から高威力の切断ダメージを与える『幻影の胡蝶の群れ』を召喚。
　それぞれ、残った幻朧帝イティハーサの呪縛の身を切り裂いていく――
「見ていてね、優しい軍神さん」
「わたしも、少しはお手伝いしてあげる」
　最後に、幻朧帝イティハーサに抗い無辜の民を守ろうとした一人の軍神……軍人に手向けの言葉を捧げながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ソウマコジロウ自身のことは覚えているつもりだ――だが……この世界は幻朧帝が生み出した幻……最終的にはぶっ潰すしかねえんだよ」
　森宮・陽太（未来を見据える元暗殺者・f23693）は真剣な眼差しで消えゆく『輝けるサクラミラージュ』を見据えながら……『幻朧帝イティハーサ』の足掻きとして嗾けられる『ソウマコジロウ幻朧態』の残滓に対応。
　自身の勘を用いて危険――『ソウマコジロウ幻朧態』残滓の接近を感じ取り、ユーベルコードを受け止めていく。
「透明化対策だが……姿が見えなくとも気配と殺気までは消せねぇだろ？」
　幻朧の花弁の流れも、流れる気配を察知できれば把握が可能……陽太はそう宣して花弁の流れを捕捉。
　そのままユーベルコードの効果が適用されない様に距離を保ちながら、花弁の流れ――その上流に遡っていく。
「獄炎操る悪魔アスモデウスよ、その炎で魔と闇を打ち砕き、希望を齎せ！」
　祈りを籠めたダイモンデバイスから、破魔・浄化に特化した白色の獄炎の術を操作して幻朧桜の流れをかき分け、時に破魔と浄化の白炎で燃やしながら少しずつ歩みを進めていく――『ソウマコジロウ幻朧』の残滓へと。
「――｜悪魔召喚《サモンデーモン》「アスモデウス・｜浄炎《ホーリーフレイム》」」
　展開した白き炎は、そのまま『ソウマコジロウ幻朧態』に寄生する『諸悪の根源』の影響などを、決定的に浄滅。
　陽太はこの隙を逃さずに『幻朧帝イティハーサ』を追い詰めて……『ソウマコジロウ幻朧態』の残滓を浄化していくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「はい、消して忘れません……確かに――偽物の世界であっても、そこにあった思いは……」
　雪華・風月（若輩侍少女・f22820）……帝都桜學府に所属している華族の少女にとって、この戦い――『帝都櫻大戰』は驚きの連続であった。
　だが……それでも、確かに後世へと受け継ぐべき規範や光景を――風月は獲得していた。
「舞い散る幻朧桜の花弁に『焼却』の霊力を……」
　触れる前に燃やすことでユーベルコード『透明逆転剣』への対策を施し、透明化していても尚……把握できる物音、息遣い――
　何より言の葉を紡ぐことで位置の把握を、気配を察知する事で『ソウマコジロウ幻朧態』の位置座標を風月は把握していく。
「そうですね、わたしは甘味が好きです……サクラミラージュの物もですが、他の世界で口にした物も素晴らしい逸品で……」
　風月は、言葉を、紡ぐ。
「ソウマコジロウさんは何かこの『輝けるサクラミラージュ』にて……他の世界にも負けぬと思える甘味はなんでしょう？」
「……甘味、か……」
　紡いだ言葉は、残滓から、かの軍神の言葉を引き出すに至る。
「料理、景色、人々の思い出……これは、ソウマコジロウさんが欲しかった宝物」
　それらを武器を振るいながら語り合い、この世界での『ソウマコジロウ』の記憶、思い出として風月は記憶する――
　弔うのではなく、継ぐのだ。
　確かに存在した、夢見た『輝けるサクラミラージュ』を。
「どうか、見ていて下さいね」
　風月の言葉は、きっと届く事だろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「贅沢でも我儘でもないと思う……それでも、未練はない方がいいよね」
　この世界――『輝けるサクラミラージュ』を時間の許す限り巡る。
　天玲寺・夢彩（春の大嵐少女・f22531）はそうすると決意した。
「街は賑やかで、みんなは笑顔で幸せそう！……この世界の事、夢彩は忘れないよ」
　目に映るのは、輝く程にありふれた……しかし前に進み続けている『輝けるサクラミラージュ』の光景。
　悩みも退屈もあるだろう……それすら思い出に変えて、進める世界。
　其れこそが――『ソウマコジロウ』の理想たる世界の筈だから。
「――残滓でも強いね」
　見えない花弁……ユーベルコード『透徹たる眼光』を受け流し、夢彩は最後の『ソウマコジロウ幻朧態』の残滓と相対。
　攻撃は『ソウマコジロウ幻朧態』の力を利用して受け流し、受け流した隙を突いてカウンターを決める。
　其れを繰り返して……生まれた大きな隙を突き、夢彩はユーベルコード『桜の癒やし』で眠らせていく――
「確かに存在した輝きはそんなに簡単に消えないんじゃないかな？――命は自然のように巡るモノだから」
「それならば、夢を見てもいいのだろうかな……」
「うん……｜本当のサクラミラージュ《未来》で輝く｜奇跡《希望》があっても罰はあたらないよ。ソウマコジロウさんはこんなに頑張ったんだし！」
「――そうか、なら……」
　その言葉を紡ぐ前に……『ソウマコジロウ』は眠りについた。
「だから、いつかまたその魂が輝く日までおやすみさい」
　最後に、その言葉を手向けとして夢彩は『輝けるサクラミラージュ』と『ソウマコジロウ』を看取るのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年09月27日