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帝都櫻大戰㉓〜誰がために鋼は散る

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第三戦線 #幻朧帝イティハーサ #護国鉄神零號

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●歴史
 砕けた鋼鉄の駆体の上に降り積もるのは白濁した花弁。
 幻朧桜の花弁とは異なるそれは、まさしく『幻朧帝イティハーサ』の力に寄るものであった。
 砕けた鋼鉄の駆体は、苛烈なる戦いを猟兵と繰り広げたエンシャント・レヰス『護国鉄神零號』。
 その上に肉の剥げ落ちたかのような半身を持つ『幻朧帝イティハーサ』は降り立つ。
「生命は、既に多種多様な|歴史《イティハーサ》を織り上げた。だが、三十六世界よ、生命の役目はとうに終わっているのだ」
 その言葉にグリモア猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)は薄紅色の瞳を以て見つめる。
 目の前にいるのは言うまでもない。
 諸悪の根源、『幻朧帝イティハーサ』。
「そうでしょうか、『世界を創造するもの』」
 ノインの言葉に『幻朧帝イティハーサ』は頷く。

「無論である。望むのであれば、これまでの歴史から如何なる世界も創りあげてやろう」
 証明するかのように『幻朧帝イティハーサ』は瓦礫となった『護国鉄神零號』の駆体を組み上げていく。
 砕けた四肢は時間が巻き戻るように構成されていき、そして元の完全なる駆体へと様変わりする。
「再孵化……」
「その通りだ。そして、儂に寄越すのだ、新世界を望む『意志』を」
 融合していく白濁たる体と鋼鉄の駆体。
 そして、同時に知るだろう。
 今、この瞬間、偽りなしに新たなる世界が生まれたことを。

「これこそ侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』……そう、最早世界を創るのに、新たな『未来』など必要ない。新世界は、これまで形つくられた『過去の断片』を組み合わせるだけで、用意に作り出せる」
 彼の言葉とともに大地に降り立つのは無数の鉄人形であった。
「……鉄人形……この数は」
 猟兵たちは気がついただろう。
 大地に降り立つ鉄人形。
 その数は圧倒的であったし、百を超え、千を超え、さらに万を超えて億にまで到達する数であると。
 そして、その数が八億に上ることも。
 そう、鉄人形は肉体を失った『護国鉄神零號』の駆体に収められていた八億の魂。

「生まれることは、喜び。ですが、あなたの生み出したものは真に喜びなのでしょうか」
「新たなる駆体と意義を持ち得たのだ。これが喜びでなくてなんとする。最早、生命は不要だ。たとえ、一度は滅びた魂でさえ、新たな形を持って生まれ出るのだ」
「それは生まれたのではないのです。ただ『組み替えた』だけです。それを創造などと嘯く。混沌をかき混ぜ、得意げにしているだけ」
 ノインの言葉を遮るようにして、怨嗟の叫びが轟く。
 それは仇敵によって命の尊厳を踏みつけられ、ただひたすらに怨嗟の叫びを上げることしかできない、嘗ての『鋼鉄共栄圏』の人々の末路であった。

 敵は『幻朧帝イティハーサ』。
 まさしく『骸の海そのもの』とも言える凄まじい的である。
 響き渡る恨みの念が込められた叫びは、猟兵たちの足を止めさせるだろう。だがしかい、誰もが思ったかもしれない。
 生命を、その尊厳を踏みつけにする行為は、過去を踏みつけにして生きていると謗ることとは異なるものであった。
 前に進むでもなく。
 新たなる未来を目指すでもなく。

「認めたらどうだ。汝らに、最早生命は不要である。そろそろ、六番目の猟兵……『第六猟兵』に縋るのを諦めてはどうだ」
『幻朧帝イティハーサ』は言う。
 その言葉に真正面からノインは薄紅色の瞳を爛々と輝かせた。
 明滅するような輝きは、猟兵たちの瞳にも宿っていたことだろう。
 怒りか、憎しみか、義憤か。
 いずれにせよ、許せるものではない。許しておけるわけがない。

「その熱せられた『意志』を持つ、すべての生命さえもやがては冷めゆき……その全てがオブリビオンとなるのだから」
「敢えて、この言葉を送りましょう」
 ノインは爛々と輝く瞳と共に告げる。
「『理由になってない』――」


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。

『護国鉄神零號』と融合し『意志』を獲得した『幻朧帝イティハーサ』が生み出した、侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』にて戦うことになります。
 この世界は、全国民が肉体を失い鉄人形と化した世界です。
 無論、この鉄人形は『護国鉄神零號』に搭載されていた八億の魂たちが使用されています。
 死す後も尊厳を傷つけられ、憎き仇敵の尖兵として駆り出される彼等は、怨嗟の叫びを上げる度に『イティハーサ・零號』はより強大な力を得て攻撃してきます。
 さらに鉄人形の叫びは、衝撃波と共に強い恨みの念によって皆さんの行動を封じてきます。

 この状況に対応するためには、何らかの手段で彼等の叫びを聞き届け、その怨念を少しでも和らげてあげる必要があるでしょう。
 それが成功すれば、その分だけ叫びの影響は弱まりますし、もしも魂たちが皆さんに完全に同調する前でに心を開くのであれば、彼等の叫びは皆さんの助けになるでしょう。

 プレイングボーナス……理不尽な叫びを聞き、怨嗟を和らげてあげる/魂達を味方に付け、強化を受けて戦う。

 それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『イティハーサ・零號』

POW   :    天矢『殲機鋼鉄共栄圏』
【命令と共に飛来する殲滅機械矢(ミサイル)】に乗り、レベル×5km/hで飛翔する。飛翔突撃も可能。
SPD   :    神鷹『殲機鋼鉄共栄圏』
【飛翔する神鷹の真下の大地】から【無数の生命殲滅鉄人形】を召喚する。[無数の生命殲滅鉄人形]はレベル×5km/hで飛翔し敵を攻撃する。使用者はこれに騎乗可能。
WIZ   :    骸眼『殲機鋼鉄共栄圏』
【骸眼の蠢き】を合図に、予め仕掛けておいた複数の【足止め用の対猟兵鉄人形軍団】で囲まれた内部に【『殲機鋼鉄共栄圏』の爆弾の雨】を落とし、極大ダメージを与える。

イラスト:炭水化物

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

朱鷺透・小枝子
夜剣大蛇【操縦】サイキックシールド展開、衝撃波を【オーラ防御】
【呪詛念動力】で以て彼らの意志と繋がる!

聞こえているか!鋼鉄共栄圏の魂たちよ!!
怨敵に意志を利用されている!いい様に扱われている!
とうてい赦せるものではない!故に!嘆くな!!憤怒を燃やせ!!

彼らの心から嘆きの哀しみではなく怒りを引き出し、
その【闘争心】と同調!『破壊侵撃』彼らと自身の闘争心を夜剣大蛇に注ぎ込み巨大ドリルに変形!!

抗う意志を!!戦う意志を燃やせ!!
最早平和なき心に、それでもと言い聞かせろ!!!

メガスラスター【推力移動】
天矢乗るイティハーサの軌道を【見切り】ドリルで飛翔突撃!
怨念、心を糧にし、ドリルを超高速回転させる!!



「生命は熱量だ。前に進むという熱量。それが多種多様な可能性を生み出すことは言うまでもない。だが、生命よ。すでに多くの世界は播種するかのように芽吹き、そして滅びゆく。多くの可能性を生み出したがゆえに混沌は相成る。ならば、もはや生命の役目は終えたのだ」
『幻朧帝イティハーサ』は『護国鉄神零號』と融合を果し、意志を持って侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』を生み出した。
 大地に溢れ出すのは億を越える無数の鉄人形。
 それは大群となって規則正しく、一糸乱れぬ行軍をもって蹂躙をもたらすようであった。
「どんな世界も、可能性から組み立てることができる。創造することができる。儂の力がそれを証明しているのだ」
『イティハーサ・零號』へと変貌した『幻朧帝イティハーサ』は、その鋼鉄の巨体を持って迫る猟兵を見下ろす。

 そこには憐憫も憎悪もなかった。
 端的な事実だけを告げる言葉だけが響く。
 しかし、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は構わなかった。
 彼女に必要なのは、そんな言葉ではなかった。
 如何なる世界も創造しうるといった『幻朧帝イティハーサ』の言葉など彼女にとっては無意味であった。
 破壊の権化。
 それが己だ。
 壊すことしかできない。
 己に迫る怨嗟の叫び。鉄人形の冷たき体躯より放たれる叫びは、仇敵によって尖兵となさしめられた八億の魂の嘆きにも似ていた。
 
 だからこそ、小枝子は叫ぶ。
「聞こえているか! 鋼鉄共栄圏の魂たちよ!! 仇敵に意志を利用されている! いい様に扱われている!」
「――!!」
 その言葉に返ってくるのは怨嗟の叫び。
 己がキャバリアともどもに動きが止められる。
 だが、体の動きが止められても、己が意志は止められない。
「とうてい赦せるものではない! 故に! 嘆くな!! 憤怒を燃やせ!!」
 怒りだ。
 怒りしかない。それだけが生命に熱を灯す。
 嘆きは冷たき感情である。
 あらゆるものを停滞させる。歩みを止めさせる。だが、怒りは違う。熱を持ち、諦観に塗れた心を激情をもって突き動かし続ける。
 故に、小枝子は叫ぶのだ。
「抗う意志を!! 戦う意志を燃やせ!! 最早平和な気心に、それでもと言い聞かせろ!!!」
 咆哮と共に小枝子は『夜剣大蛇』にサイキックシールドを展開し、迫る矢を受け止める。

「無駄だ。生命は停滞することを選ぶ。前に進まなければ、死という終点には至らぬ。故に、それは諦めではない。選んだだけなのだ。誰もが生きたいと願っている。ならば、不死は永遠の死にも似たものである」
「黙れ」
 小枝子は瞳をユーベルコードに輝かせる。
 迫る巨躯。
『イティハーサ・零號』の巨体からの一撃を受け止めながら、小枝子は睨めつける。
 ユーベルコードに輝いた瞳が、矢を穿ちながら破壊侵撃(キャバリア・デストラクション)たる一撃となったキャバリアと共に振り抜かれた鋼鉄の拳に激突する。
 火花散る光景。
「それはお前の理屈だろうが。それを自分は破壊する! 他者の死を利用し、それを可能性という。生のみならず死すらも利用した者の語る言葉を、自分は!!」
 破壊する。
 超高速回転を始めた衝角の一撃が『イティハーサ・零號』の装甲を切り裂きながら、突き進む。
 怨念。
 それは多くの鋼鉄共栄圏の魂を怨嗟から解き放つように、激烈なる熱量でもって戦場へと広がる破壊の音だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ツォーナ・ロチェアーダ
ただ怨嗟の叫びをあげる事しか出来なくなった彼らの声を聴く為には…その心の内を【心眼】で見切るだけす。

聞こえます、皆さんの憎しみ、怒り、絶望が!
ですがそれをぶつけるべき相手は皆さんの後ろにいます!
幻朧帝イティハーサ…、彼は皆さんの尊厳を踏みにじり、いい様に使い…そしてあろうことか零號さんの身体まで奪う始末!

お願いします、皆さん!
ボクに預けてください、皆さんの力を!怒りを!
それをあの憎き怨敵にぶつけてやりましょう!

海はどこまでも広く深い物…その刃が大海ならやれるはずです、ロチェアーダ!
皆さんの怒りを乗せどこまでも巨大化する刃で、爆弾もろとも切り裂き未来を切り開けることをあの老人に思い知らせます!



 八億の魂を利用した侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』の国民……鉄人形たちは、一糸乱れぬ行軍でもって猟兵に迫る。
 その背後にそびえるのは超巨大なる鋼鉄の巨人『護国鉄神零號』……否、『イティハーサ・零號』である。
『護国鉄神零號』の『意志』を獲得した『幻朧帝イティハーサ』は言う。
「生命の役割はすでに終わった。あらゆる可能性を織り上げ、あらゆる世界が生み出された。可能性は既に混沌に変わったのだ。ならば、もはやこれ以上は意味をなさない。どれだけの生命が生まれようとも、これ以上はないのだ」
 故に、諦めろと言う。
 生きることを。
 あらゆる生命が行き着く先は、死という終点。
 即ち、オブリビオン。

 永遠の死を得たのならば、生きることは無意味である。
 その言葉を語る『イティハーサ・零號』の眼前にて鉄人形たちは怨嗟の叫びを上げて行軍するのだ。
「聞こえます」
 ツォーナ・ロチェアーダ(世界を渡る大海の剣・f01913)は頷く。
 ただ怨嗟の叫びしかあげることのできなくなってしまった、かつての『鋼鉄共栄圏』の八億の魂たちの声に、彼女は答えたいと思ったのだ。
「皆さんの憎しみ、怒り、絶望が!」
 どうしようもない事実だ。現実なのだ。
 これが力なき者が蹂躙されるということ。
 死すらも踏みつけられ、利用される。その悪辣さにツォーナは怒りを憶えただろう。
「ですが、それをぶつけるべき相手は皆さんの後ろにいます!『幻朧帝イティハーサ』……」
 彼等の尊厳を踏みにじり、いいように使い、そしてあろうことか『護国鉄神零號』の体躯すらも奪う。
 その行いを許してはおけない。

 踏みにじられたままでいいものなどいていいわけがない。
 たとえ、死すのだとしても、その死は高潔でなければならない。
「お願いします、皆さん! ボクに預けてください、皆さんの力を! 怒りを!」
 ツォーナを取り囲む鉄人形たち。
 それはマーカーのような役割を果していたのだろう。
 ツォーナごと鉄人形たちは『イティハーサ・零號』の放つ弾雨に穿たれる。
 絶え間ない弾丸。
 ツォーナは、傷つきながらも瞳をユーベルコードに輝かせる。
「海はどこまでも広く深いもの……」
 彼女の手にした剣。
 銘を『ロチェアーダ』――大海剣(ロチェアーダ)と言う。

「この刃が大海ならばやれるはずです、『ロチェアーダ』!」
 膨れ上がるは刀身。
『鋼鉄共栄圏』八億の魂の怒り。
 それをそれを乗せ、巨大化した刃でもって炸裂する爆発を切り裂きながら、ツォーナは踏み込む。
「憎き怨敵!」
 ツォーナは思い知らさなければならないと思った。
 未来はいらぬといった『幻朧帝イティハーサ』。
 しかし、怨嗟も怒りも、絶望さえも。
 己が手にした刃が切り拓く未来があることを示さねばならない。

 怨嗟に叫ぶ魂たちが求めてやまなかった未来。
 それを奪ったものへの怒りを込めて、ツォーナは大海剣の一戦を『イティハーサ・零號』の巨大なる体躯へと叩きつけるのだった――。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
(「奴は何も創っていない。無理矢理繋げただけ。わかる?黒影」と頭の中の教導虫が話しかける)
はい!せんせー!想いが募って創造を生みます!奴は許されないことをしました!
(「そうね。でも八億の怨嗟が行く手を阻んでいるわね」)
では【穿つ言霊】で魂に呼びかけます!

皆さん!俺はたとえ手足が無くなろうとも絶対に奴を討ち滅ぼすことを誓います!
だからどうか俺を奴の元まで送り届けてはくれませんか!
言葉だけでは足りないならどうか俺の心を、奴に対する怒りの炎を見てください!

(『肉体改造』で『硬化』した体で攻撃を浴びながらも決して歩みは止めず{誘導灯型合金破砕警棒}による『衝撃波』を纏った攻撃を試みる)



『幻朧帝イティハーサ』は世界を創造することができるという。
 生命の役割は、可能性を紡ぐこと。
 紡がれた可能性は、新たなる世界を織り成す。
 そうして生まれては滅びるのが世界だというのならば、骸の海には彼の語るところの可能性が混沌のように溜まっているのだと言える。
 そして。
「それらを使えば、新たなる世界を創造することなど容易いのだ」
 生み出すは、侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』。
 鉄人形たちが大地を埋め尽くし、猟兵たちに迫る。

 彼等から発せられるのは怨嗟。
 死してなお、敵を打倒せんとした想いは、仇敵によって利用されてしまっている。その怨嗟の深さたるや語るまでもない。
 どれほどの絶望が彼等を飲み込んだのかも知ることはできない。
 理解できるなどと言えるものではない。
「奴は何も創っていない。無理やりつなげただけ。わかる? 黒影」
 その叫びを一身に浴びながら、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、頭の中の教導虫の言葉に頷く。
「はい! せんせー!」
 兵庫の瞳がユーベルコードに輝く。
 いや、それ以上に怒りが燃え上がるようであった。

 創造とは、彼にとって想いが募って発露するものだ。
 そして、『幻朧帝イティハーサ』は、兵庫にとって許されないことをした。
 迫るは八億の怨嗟と超巨大なる鋼鉄の巨人。
 猟兵たちのユーベルコードが明滅し、戦場が照らされる。
 八億の鉄人形たちは、照らされなければならない。
 あの鋼鉄の駆体の暗闇の中に、閉じ込めていてよいわけがない。
 あからこそ、兵庫は叫ぶ。
「皆さん! 俺はたとえ手足がなくなろうとも絶対に奴を討ち滅ぼすことを誓います! だからどうか俺をやつの元まで送り届けてはくれませんか!」
 それはただの言葉だった。
 だが、穿つ言霊(ウガツコトダマ)だった。
 鈴虫の無音の羽音。
 その霊力によって、兵庫の言葉が鉄人形に反響していく。
 
 増幅された言霊は、鉄人形の駆体を傷つけることなく、彼等の怨嗟と憎悪にまみれた心の壁を穿つ。
 その先にあるのはむき出しの心だ。
 柔らかく、繊細で、傷つきやすい人の心。
「言葉だけではな。許さぬと、断じると語るには、力が足りぬ。六番目の猟兵よ。お前たちのやっていることは、人を救うことではない。世界を救うことのみ」
「言葉だけで足りないというのなら!」
 兵庫は迫る矢を一身に受け止めながら、前に進む。
 示さねばならない。

 溢れる血潮。
 額から流れ落ちた血の色は、かつて生きたものたちと同じものであっただろう。
 そして、その赤さは彼の怒りの炎だ。
「俺の心を! 奴に対する怒りの炎を見てください!」
 硬化した肉体ですら、痛みを消すことは出来ないし、傷を追わぬことはできなかった。
 けれど、それでも兵庫は示したのだ。
 己が何をすべきかを。何を思っているのかを。
 故に兵庫は鉄人形たちの心に触れる。
 熱き血潮が、その冷たい諦観にまみれた鉄の体躯を溶かすことはできずとも、その血の熱さを心が感じ取れたのなら。

「これが人の心だ。生命の力だ! 可能性ばかりに目を奪われたお前には!」
 無い力だと言うように兵庫のふるった警棒の一撃が『イティハーサ・零號』の装甲を斬撃波でもって斬り伏せるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん?
武器:漆黒風

怨嗟、それは四悪霊にとって身近なものですがー…。
四天霊障、広域拡大。その怨嗟の叫び、全て受け取りましょう。
私一人ではなく、この四人で受け取りを。
怨敵に利用されるほど、理不尽なことはないのですから。

大丈夫ですよ、私が、私たちが怨敵に一撃を届けますから。
どれだけ殲滅機械矢に乗ろうとも、広域四天霊障から逃れられませんし…見切って避けましょう。
捉えて、そこへUCと風属性攻撃を乗せた漆黒風を投擲しましょう。

怨嗟は、正しく向けるべき相手に届ける。それが、私たちですから。



 どうしようもないことで世界は満ちている。
 人の感情の揺らめきなど世界を如何にすることもない。
 しかし、人の感情は人の身を縛るものである。
 嘗ての『鋼鉄共栄圏』の八億の魂は、今や『殲機鋼鉄共栄圏』の鉄人形と化し、その魂を怨嗟にまみれさせている。
 叫ぶ声。
 それは鉄の駆体の内側で、失われた生命の熱に狂乱するようなものであった。
「――!!」
 彼等の誰もが生命を失っている。
 奪われた生命は、何に対して贖いを求めるのか。

 誰もがその方法を知らない。
 故に、彼等の怨嗟は響き続ける。
「……身近なものですがー……」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は己の霊障でもって怨嗟の叫びを受け止める。
 動きが止まる。
 肉体が動かない。
 それほどまでに怨嗟の声は凄まじく、その八億の魂が上げる叫びは強烈であった。
 四柱全ての霊障でもって受け止めてなお、ありあまる怨嗟。
「理不尽ですね……」
 これが全て諸悪の根源たる『幻朧帝イティハーサ』によって成されたことである。

 恐るべきことに、ここは侵略新世界。
 新たなる世界を創造しうる力を持つ『幻朧帝イティハーサ』は『意志』をも取り込み『護国鉄神零號』と融合を果している。
 放たれる矢が飛来し、怨嗟の叫びに身動きの出来ぬ『疾き者』を打ち据える。
 痛みを覚えるまでもない。
「元来、生きるとは理不尽に耐えることである。耐えたところで、何か得られるものがあるわけでもない。そもそも生きることは即ち死ぬこと。その熱をもって歴史を進めるからこそ、生命は可能性に満ちている。だが、その可能性も混沌の如き様相を持って結実するのだ」
『イティハーサ・零號』の言葉に『疾き者』は耳を貸さなかった。

 それよりもやらねばならないことがある。
「だいじょうぶですよ、私が、私達が、怨敵に一撃を届けますから」
 語りかけるは八億の魂。
 報われぬ魂たちに呼びかける声に、さらに怨嗟の叫びが殺到する。
 穿たれた矢の痛みを忘れる。
 彼等の叫びこそが、己たちの悪霊たる魂に響くものであった。
「怨嗟は、正しく向けるべき相手に届ける。それが、私達ですから」
 放たれる四悪霊・風(シアクリョウガヒトリ・トノムラヨシツナ)の一撃。
 投げはなった棒手裏剣の一打。
 それは鋼鉄の装甲に穿たれる。

 亀裂走る装甲。
 されど、まだ浅いと思える。だが、それでいい。
 穿つのは楔。
 楔は、ただの一投でもって実を結ぶものではない。この戦場に集った猟兵達がいる。彼等のことを信じるのだ。
 必ずや、この怨嗟の叫びに答えてくれるはずだと。
 故に『疾き者』は無数の、それこそ億を数える魂の荒ぶる声を受け止め続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ツォーナ・ロチェアーダ
今ですよロチェアーダ!
今のボク達ならもっと皆さんの想いを、叫びを受け止められるはずです!
もっと強く、もっと激しく!
ボク達の【覚悟】と皆さんの想いをもって未来を切り開きましょう!

先程攻撃を耐えて受け続けた事で、爆弾の軌道や威力は【見切り】ました!
【集中】して【空中機動】を活かし爆散を避けながら突撃し、時には【武器受け】や【盾受けを】活かして【受け流し】ます。
避けるべきか受けるべきかは【瞬間思考力】を活かして判断します!

さぁまだまだ受けていただきますよ幻朧帝!
ボク達の、この世界の皆さんの過去を、尊厳を踏みにじられた怒りを!
未来を切り開く意思を!

これが未来を捨てた貴方が理解できないであろう一撃です!



 叩きつけた一撃は、『護国鉄神零號』の装甲によって受け止められた。
 大海の如き重さを伴った斬撃。
 されど『イティハーサ・零號』はこれを受け止める。
 多くの猟兵たちのユーベルコードが煌めいている。明滅するユーベルコードの度に『イティハーサ・零號』の装甲は削られ、傾ぐ。
 だが、圧倒的な力は未だ健在であると言えるだろう。
 鉄人形たちが大地を埋め尽くすようにして、ツォーナ・ロチェアーダ(世界を渡る大海の剣・f01913)に迫っている。
 取り囲まれては、弾丸の雨に晒される。
 強烈な一撃を受けては、ツォーナの体が保たないだろう。

 今もなお、怨嗟の叫びが彼女の体躯を縛り上げるようだった。
 軋む体を推して彼女は前に一歩を踏み出す。
「まだです!『ロチェアーダ』! 今のボクたちならもっと皆さんの想いを、叫びを受け止められるはずです!」
 ツォーナは悲痛なる怨嗟の叫びを受け止め続ける。
 それだけが自分のできることであった。
 もっと強く、もっと激しく。
 己の覚悟を持って、彼等の、八億の魂を受け止め続けなければならないのだ。
「人の身、ただ一つの器で八億の魂の怨嗟を受け止められる道理などない」
『イティハーサ・零號』の言葉と共に鉄人形に囲われたツォーナに爆発が叩き込まれる。

 掲げた剣の刀身で爆発を受け止めたはいいものの、ツォーナの体躯は傷だらけであった。
 見切れる、と思った爆発。
 だが、周囲の鉄人形たちの妨害にあって、彼女は思うように動けなかった。
 集中しなければならない。
 走って、走って、走って、あの超巨大なる鋼鉄の体躯を目指さねばならない。
 迫りくる弾の雨。
 それをかいくぐるようにしてツォーナは走った。

 誰のために走るのか。
 問われるまでもない。
 八億の失われた魂のためにツォーナは走っている。
 彼等の失われた生命に贖う術などない。失われた生命は戻らない。
 永遠の死であるオブリビオン化は、彼等の魂を救いはしないのだ。
「やはり無駄だとは思わないか。諦観こそが、停滞という救い。生命よ、それじたいに最早価値などない」
「知りませんょ、そんなことは! 今、ボクたちが怒っているのは!」 
 ただ一つ。
 シンプルだ。
「ボクたちの、この世界の皆さんの過去を、尊厳を踏みにじったからです。『幻朧帝』、他ならぬ貴方が! だから!!」
 これは怒りだ。
 熱量が前に進む原動力だというのならば、己に宿る怒りは、未来を切り拓く意志。
「これが未来を捨てた貴方がりかいできないであろう一撃です!」
 振るうは、一心同体(ウン・ソーロ・クォーレ)たる『ロチェアーダ』の一戦。
 大海を思わせるような深い蒼色の翼が羽撃き、一気にツォーナは『イティハーサ・零號』へと肉薄する。
 振るう一閃は『イティハーサ・零號』の顔面を切り裂き、その苛烈なる怒りを知らしめるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ギュスターヴ・ベルトラン
オレは…いや、ぼくは怒るよりもただ悲しい…
命の末路を、八億の怨嗟の声を聴き【祈り】を捧げる

救いとはまず聴くことから
主とて祈りという神との対話がなければ、救うことすら叶わないのだから
彼らの痛みと嘆きを聴いたならば、ぼくに出来るのは【声を届かせる】だけ

幻朧帝を倒す為にぼくに力を貸してくれるなら、ありがたい
でも…もう眠りたいと願うなら
――あなた達の踏み躙られた祈りに救いを

UC二重退魔陣でダメージを減らしつつ、別UC孤峰を発動
【浄化】と【除霊】を更に込め、怨嗟が弱くなった者から戦場を離れさせる

|カラス《Miserere nobis》、相手は神鷹だけど今ならどうにかできるよね

主の御業を騙る者に、罰を



 生命は熱量を持つ、というのならば『意志』は未来へと進む原動力そのものであったことだろう。
 人は老いる。
 どうしようもなく老いていく。
 それは肉体的な全盛を終えた下り坂という意味でもあったし、また同時に『意志』の輝きでもあった。
 生命は死に向かう。
 終点の死こそが生命の到達点。
 それを虚しく思う者もいるかもしれない。
 人の命が灯火に例えられるように、『幻朧帝イティハーサ』にとって、生命とは吹けば消えるようなものであり、弄ぶには容易いものであった。

 それ故に大地を埋め尽くす鉄人形たちである。
 これらは全てが『鋼鉄共栄圏』の嘗て生きとし生ける魂たちであった。
「オレは……いや、ぼくは怒るよりただ悲しい……」
 ギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)は思う。
 いや、祈る。
 戦いの果てに行き着く死。
 その末路に、八億の怨嗟が広がっていく。
「救いとはまず聴くことから」
「何も救えぬよ。世界が欲しいというのならば、儂が作り出してやろう。可能性などすでに混沌によって観測し尽くされた。ならば、それは意味のない行為だ」
 巨大な影がギュスターヴの頭上に落ちる。

 その生まれた影より溢れるのは、鉄人形たちであった。
 生命を奪わんとする、嘗て生命だったものたち。
 その姿を見やり、ギュスターヴはしかし、聴き続ける。
「主とて祈りという神との対話なければ、救うことすら叶わないのだから」
「聴くことで何の意味がある」
「簡単なことだが、しかし、おおげさなことでもない。ぼくに出来るのは声を届かせることだけだ」
「そこに何の意味が生まれる」
 ギュスターブの瞳がユーベルコードに輝く。

 周囲に渦巻く怨嗟の叫び。
 その一つ一つをギュスターブは受け止め続けた。
 器は一つ。
 されど、迫る怨嗟は八億。
 どれ一つとて同じものはない。
『幻朧帝イティハーサ』にとって、八億の魂は、ただの数でしかない。
 どれ一つとっても凡百に過ぎない。特別な魂などなく、どれもがた等しく無価値な魂だった。
 故に、踏みにじることができる。
「いいや、きみには理解できないだろう。生命を見ていない君には、きっと聞き届けることもできやしすまい。彼等の願いを、ぼくはもう知っている」
 戦いに明け暮れるのではなく。
 ただ、安らかに眠りたいと願う声がある。
 なら、と彼は思う。祈る。
「――あなたたちの踏みにじられた祈りに救いを」
 二重退魔陣:展開(ニジュウタイマジン・テンカイ)によって祈りと霊的防護を籠めた二重退魔陣を放つ。
 それは迫る鉄人形たちを受け止め、阻む。
 人は一人で生まれてきては、一人では生きられぬ。そして、一人で死んでいかねばならない生命でもある。

 故に、祈りがあるのだ。
「主の御業を語る者に、罰を」
 退魔陣が展開し、鉄人形たちを浄化し、除霊していく。
 怨嗟の叫びが晴れ渡るようにしてギュスターヴの眼前に霧散していく。
 消えゆく無数の影の中から、彼の操る影業が飛び出し、一気に『イティハーサ・零號』の巨躯を捉える。
 そう、これは罰だ。
 踏みにじられた祈りに救いを。
 ただそれが、今、己にできることなのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

真月・真白
UC発動、本体である歴史書を開きペンを片手に歩み続ける

過去は棄て去られ現在を脅かす脅威になるのがこの世界の仕組み…けれど記し伝えることで現在の道導に、未来を照らす灯りになる、それが『歴史』です
イティハーサ、歴史は『|未来《いのち》』の為にある。歴史書である僕はそう思うしそのために|存在《あ》る……貴方とは決して相容れられない!

護国鉄神零號、貴方と八億の人々の『歴史』を、必ず記し、伝え残します

別の彼にした宣言と覚悟、それを今ここで
滅びに対する怨嗟の声だけじゃない、それ以前の『|物語《じんせい》』を聴き、記す、どんな攻撃に晒されてもやめない

味方に付けられたなら栞型霊符で攻撃、それまでは記し続ける



 じんせいとは、歩み続けることだ。
 それが己のアイデンティティだ。存在意義であると理解している。故に、己は人の形を取る。
 二本の足で歩み続ける道は、轍となって振り返れば、文字という形を得て物語へと変わっていく。
 切なくもあり、また恥ずかしくも思える。
 成功ばかりではないし、失敗のほうが多いだろう。
 路傍に転がる小石のようなものであるようにも思えたりもするが、しかし、誰かを照らすことの出来る太陽にもなり得る可能性だってある。

 生命とは、きっとそんなものである。
 その熱量こそが光となって人という影を世界に映し出すのかもしれない。
 手にした歴史書、そのページが風になびき、広がっていく。
 もう片方の手にあるのはペン。
「過去は棄て去られ、現在を脅かす脅威になるのが、この世界の仕組み……けれど、記し伝えることで現在の道導に、未来を照らす灯ありになる、それが『歴史』です」
 真月・真白(真っ白な頁・f10636)の言葉に『イティハーサ・零號』は頭を振るようだった。
 鋼鉄の巨体。
『護国鉄神零號』の体躯を奪った彼は、その『意志』をもって鉄人形たちを操り、猟兵たちを退けんとしている。

「『歴史』とは即ち儂のことだ。そして、歴史とは過去の断片を数珠繋ぎにしたものでしかない。組み替え、可能性をもってすれば、このように新たなる世界はいくらでも創造することができるのだ」
「いいえ、イティハーサ。歴史は「|未来《いのち》』のためにある。歴史書である僕はそう思うし、そのために|存在《あ》る……貴方とは決して相容れられない!」
「第六の猟兵よ。お前たちがいるから、生命は今に縋る。どの道、遅かれ早かれ生命は灯火を潰えさせる。可能性はもうすでに蓄えられている。それを」
「いいえ」
 真白の瞳がユーベルコードに輝く。

 記すは、『鋼鉄共栄圏』。
 その結末は終焉を迎えた。
 紛れもない事実だ。けれど、まだ続いている。『殲機鋼鉄共栄圏』と成り果ててもなお、今生きる己の瞳に彼等が映っているのならば。
「歩み記し続ける歴史書(ザ・クロニクル・ウォーキングアンドライティング)、それが僕だ。『護国鉄神零號』、貴方と八億の人々の『歴史』を必ず記し、伝え残します」
 それが、この怨嗟の叫びに報いることだと真白は思うのだ。
 故に、誰も彼を傷つけることはできない。
 宣誓と覚悟。
 それによって真白は己が手にした歴史書に八億すべての魂の怨嗟の叫びを書き記す。

 だが、それだけではないと思うのだ。
 喪われる生命には、必ず人生がある。人生という物語が、必ずあるのだ。
 故に真白はどんなに鉄人形に群がられようとも、傷つけられない。
「僕は記す。貴方の物語を。いつかの誰かの歴史が、現在と共に未来に向かうためには!」
 全てを書き記す。
 途方もない時間がかかってもいい。
 特別だろうが、そうでなかろうが、関係ない。
 真白にとって、八億の魂の一つ一つが記すに値する物語なのだ。

 故に彼は受け止め続け、決して折れぬ心をもって『幻朧帝イティハーサ』の猛攻をしのぎきるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
お聞かせください、皆々様の怨嗟の声を!
その怨嗟こそ、皆々様の歌!
帝さんのものではない皆々様の心!
折り重なる八億の声に曲を奏でて寄り添わさせてもらうのでっす!
動きを封じる叫びではなく魂の歌としてチューニングさせてもらうのでっす!
恨み、嘆き、憎しみ。それは悪いことではないのでっす。
理不尽に憤る、ヒトとして当然の心なのでっす!
八億の歌の一つ一つにアンサーソングを贈るように鎮魂歌を紡いでいくのでっす!
理屈も条理も超越し皆々様を癒やすこの歌は、ミサイルに乗り突っ込んでくる帝さんにも届くかと!
悲しみの元凶でっすからね―!
8億人の皆様との合唱でミサイルごと震撼爆破しちゃうのでっす!



 それは叫びなんかじゃあない。
 いや、叫びであることは認めるところである。怨嗟の叫び。八億の鉄人形たちより発せられる叫びは、人の身を凍えるような冷たさでもって襲う。
 喉がかすれる。
 身がこわばる。
 いずれもが、生命を奪われた者たちの悲哀に満ちていた。
 生命とは熱量。
 なら、生命奪われた者たちの叫びは、絶対零度。
 温もり失った者たちの叫びは、きっと生きている者たちの身を斬り裂くようなものであった。

 けれど、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は思う。
 眼の前の鉄ん行たちを思う。
 見分けなどつかない。全てがのっぺらぼうのような冷たい鉄の塊。
 生命とは言えない。
 でも、それでもと藍は思うのだ。
「藍ちゃんくんでっすよー! お聞かせください、皆々様の怨嗟の声を! その怨嗟こそ、皆々様の歌!」
 藍は真っ向から叫びを受け止め続ける。
 身を斬り裂くような痛みが体躯を大地に縫い留める。
 けれど、それでもいい続けるのだ。

 己が己で。
 あるがままに、その祈りや願い、心を籠めた歌声をもって鉄の駆体に熱が宿らぬというのならば、灯してみせようと。
「それは誰のものでもない皆々様の心!」
 人の憂いに寄り添うことができるのが優しさだというのならば、今此処で己が歌わねば誰が歌うというのだ。
 できるできないじゃあない。
 今此処で、自分が歌うことをやめたのならば、その悲しみは、苦しみは、誰が拭うというのだ。

「恨み、嘆き、憎しみ。それは悪いことではないのでっす。理不尽に憤る、ヒトとして当然の心なのでっす!」
「だが、それでも生命とは、ただ熱を持つものでしかない。可能性と未来を見つめ、愚かしくも消費されていくだけのものでしかないのだ」
『イティハーサ・零號』の声が響く。
 だが、藍はこころを込める。
 そこにあったのは、理屈も条理も超越した穏やかな顔だった。

「そうでっすか。そうかもしれませんねー? でっすが! 藍ちゃんくんは! 心を込めて歌うのでっす! あなたに、その怨嗟に、一つ一つアンサーソングを歌うのでっす! だって、それが、藍ちゃんくんだっていうことだから!」
 藍音Cryね(アイ・ネ・クライネ)と歌う。
 平凡な少女の歌を歌う。
 魂の形を一つ見据える。性差もあるだろう。老いも若きもあるだろう。
 だからこそ、一つ一つを見やる。
 迫る矢を受けてもなお、藍は歌い続ける。

「悲しみや恐怖、憎しみを癒やすのが歌なのでっす」
「歌など。ただの事象にすぎない。それが魂を癒やすことなど」
「いいえ、あるのでっす! あなたは確かに強いのでしょう。歴史そのものと言えるほどに。でも、あなたはやっぱり唯一人なのでっす! 今、此処にいる皆々様は、心をともにして貴方に立ち向かったのでしょう。それは、強大な力を得るよりも、もっと大きな喜びに満ちているのでっす!」
 だから、と藍は歌う。
 悲しみの元凶に、諸悪の根源に、魂をともにする八億と共に歌う。

 全ての怨嗟が晴れますようにと。
 その願いを祈りに変えて、大気を震撼させ、空に爆発を巻き起こしながらも藍は歌いつづけるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

百海・胡麦
諸悪の根源…
成る程。業突く張りだ
生き様、想いを奪い
やる事は慈しみでもなく
奴隷にして嫌う事をさせる
創造?他者のしあわせを描ける者の所業じゃないよ
海に呑んだなら、お前が一番分かるだろうに

アタシ妖だからね
一部の過去達にゃ似た匂いを感じてる
誰かを想う子がちゃんといるから
それも材料すぎぬのね
共喰いの帝殿

怨嗟や嘆きは其の儘浴びる
UCに浄化と破魔の焔・息名を纏わせ
結界で包む
帝は命の骸を求めながら何も見てないのだから
駒にされ悔しかろう
踏み躙る阿呆に呆れる事すら疲れ果てる
でも一矢報いましょ?
箒・天人と熱と駆けて迎える
乗って来る帝をね

焔と針で抱き寄せ
熱す
身灼かれる程に

元凶へ捧ぐ
知るがいい
お前が欲しがった者の熱だよ



 諸悪の根源。
 それが『幻朧帝イティハーサ』である。
 歴史の名を持つ存在の力は強大そのものだ。可能性の断片をつなぎ合わせることで、新たなる世界をも創造する力は、途方もないものであった。
 嘗ての『鋼鉄共栄圏』の八億の魂すら、容易く『殲機鋼鉄共栄圏』として存在させ、侵略世界へと作り変えた。
 鉄人形たる尖兵へと魂を変じさせ、己の手駒とする力は、悪辣に過ぎる。
「もっと言えば、成る程。業突く張りだ」
 百海・胡麦(遺失物取扱・f31137)は、眼の前に迫る鉄人形たちを見据える。

 彼等が『護国鉄神零號』に搭載されていた魂であることは言うまでもない。
「生き様、想いを奪い、やることは慈しみでもなく奴隷にして嫌うことをさせる」
「儂と雄々しく戦った彼等だ。再び戦うことになったのならば喜ぶべきことであろう。生命とは生きる熱量をもって他者を害し続けることではないか。これこそが創造である。あらゆる可能性をつなぎ合わせ、儂は今一つの世界を示してみせたのだ」
 胡麦は頭を振る。
「創造? 他者のしあわせを描ける者の所業じゃないよ。海に呑んだなら、お前が一番わかるだろうに」
 怨嗟の叫びが胡麦の体躯を縛り付ける。

 どうしようもない怨嗟だ。
 その苦しみも悲しみも、彼等にしか理解できない。
 けれど、胡麦は薄っすらと感じ取っていた。
 誰かをおもって戦う者だっていただろう。
 親しき者のために立ち向かったものだっていただろう。
 それさえも『幻朧帝イティハーサ』は、ただの可能性の断片として扱っている。そこにあった想いなどに考えを巡らすことなどない。
 あるのは、数だ。
 ただ一つ。
 ただ八億の霊があるという事実だけを彼は見ている。

 可能性ばかりを見ているから、眼の前の生命に気が付けない。
 身に浴びる怨嗟に胡麦は呻くかもしれない。
「アタシにはわかるよ。だらかね――踊れ、銀の川」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 胡麦は浄化と破魔の炎を纏い、迫る鉄人形たちを掌で包むようにして結界の内側に封じ込める。
「悔しかろう。踏みにじる阿呆に呆れることすら疲れ果てる」
 抵抗など無意味だ。
 抗うだけ己が魂が傷つけられるだけだ。
 わかっている。
 だからこそ、胡麦は思う。

「でも一矢報いましょ?」
 柔らかな箒にまたがり、冷たいという熱を持つ鉄人形たちの怨嗟を共として、胡麦は迫る『イティハーサ・零號』を見据える。
「骸の海は混沌そのもの。可能性のるつぼ。それ故に、儂を前にしてはあらゆる可能性が無意味だ。すでに、それは見ている」
「だろうね。でも、ね」
 美しい銀の針が鉄人形たちを束ねていく。焔が舞い上がり、さらに籠められた魔力がおまじないによって形を変えていく。
 針。
 それは鋼鉄には届かないかもしれない。
 けれど、胡麦は針へと変じた鉄人形たちを熱する。
 己の心で温め、元凶を見据えるのだ。
「知るがいい。お前が欲しがった者の熱だよ」
 これが、そうなのだと言うように彼女はユーベルコードに煌めく瞳でもって『イティハーサ・零號』を見据える。

 穿つ一念。
 それは無数の針もまた同様。
 嘗て在りし、敵との対決を為すように、胡麦の熱によって灯された火は『イティハーサ・零號』の装甲を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
燃やせ、燃やせ!燃やせ!!
敵への怒りを、この世界を、そして敵そのものを!!!
|全て、須らく《壊れてしまえ》

戦場を、砲火襲い来る大炎熱世界に変える!
【呪詛】望まぬ生を与えられた鋼鉄共栄圏の、彼らの魂を鉄人形の躰を溶かし開放させ、その魂に、その意志、【闘争心】に再度呼び掛ける!今一度、戦えるかと!
戦えるならば、抗えるならばその意志を以て世界を燃やせと!!

彼らの怨念を薪に大炎熱世界を広げ、更に多くの鉄人形を燃やし溶かし、
その魂を、その意志を以て、この殲機鋼鉄共栄圏を!塗り潰さん勢いで大炎熱世界を広げ『イティハーサ・零號』へ大焦熱と砲火で【継続ダメージ】排熱できない程に熱し、溶かし!

停滞を燃やせ、魂を燃やせ、壊して進め!!
あの翁を燃やしてぶち壊すぞ!!!

夜剣大蛇から尾剣・夜天叢雲剣を外し【念動力】で【投擲】
焦熱する意志を尾剣に注ぎ込み、以て劫火の霊威を開放!!
『イティハーサ・零號』を貫き、『護国鉄神零號』の中の『イティハーサ』を【浄化】燃やし尽くす!!!
その躰は貴様が乗っていていいものではない!



 燃える。
 怒りが己の内部で燃え盛る。
 それは念じるような声であったし、怨嗟に対する絶対的な熱であった。
「燃やせ、燃やせ! 燃やせ!!」
 朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は戦場にありて敵に対する怒りを、この侵略新世界を、そして敵そのものに対して怒る。
「|全て、須く《壊れてしまえ》」
 重なる言葉。
 怨嗟の叫びは、今もなお鉄人形たちから響いている。

 身をすくませるような叫び。
 これを前にして小枝子は『イティハーサ・零號』より放たれる弾雨の中に一歩を踏み出す。
 後退はない。
 ただの一歩も後退してはならない。
 砲火迫る戦場であっても小枝子はためらわない。
「望まぬ生を与えられた鋼鉄共栄圏の、彼等の魂を――溶かす!!」
 禍戦・劫焔納 甲(デッドオーバー・マグナゲヘナ)によって、塗り替えられるのは砲火襲い来る大炎熱世界へと交換される。
「世界を交換してどうする。どの道、お前の描く世界は、破滅しか齎さない。そこに可能性はただ一つしか存在しない。即ち、破滅である」
「だからどうした!」
 小枝子は遮るようにして『イティハーサ・零號』に対峙する。

 幾多のユーベルコードが明滅してなお、『イティハーサ・零號』の鋼鉄の体躯は健在である。
 今もなお、己を取り囲む鉄人形たちを見ればわかる。
『イティハーサ・零號』は、その有り余る力でもって己たちを滅ぼさんとしている。
 新たな世界を生み出してなお、だ。
 ならばこそ、小枝子は思うのだ。
 己たちを遠ざけようとしている、と。
「今一度戦えるか!!」
「何を言っている」
「貴様に向ける言葉など、唯一つしかない! この言葉は貴様ではなく!」
 問いかけるのは、鉄人形たち。
 彼等の意志、闘争心。
 生命失っても、魂一つになっても鋼鉄共栄圏の人々は『護国鉄神零號』に搭載され、戦うことを選んだ。

 敵と戦い、打ち倒すと覚悟を決めていたのだ。
 彼等はオブリビオン化し、その魂を歪めさせられた。
 他ならぬ仇敵によって、だ。
 それはあまりにも悲哀なる運命であっただろう。
 だが、一度立ち上がった事実は、たとえ新世界にくべられたのだとしても、変わるところではない。
 故に小枝子は問いかける。
「戦えるのならば、抗えるのならば、その意思を以て世界を燃やせ!!」
 咆哮と共に小枝子は大炎熱世界でもって侵略新世界を燃やし、鉄人形たちを溶かしていく。
 いかに鋼鉄の体躯が溶けるのであっても、その意志は溶けることはない。
 故に、その魂を、意志を以て、小枝子は大炎熱世界を広げる。
「停滞を燃やせ、魂を燃やせ、壊して進め!!」
 小枝子は踏み出す。

 そう、どんな道であろうと最初の一歩がなければ、どこにも征けはしない。
 故に小枝子は叫ぶ。
「あの翁を燃やしてぶち壊すぞ!!!」
 小枝子は『夜剣大蛇』より飛び出し、その夜天叢雲剣を念動力で引き剥がすようにして外し、念動力でもって宙に浮かべる。
「壊すぞ! 自分は貴様を! 壊す!! 燃やし尽くすのではなく!! 壊してやる!!」
「愚かな」
「だったらなんだ。知恵ある者が全てを制するのか! 違うだろう! 貴様は!!」
 そう、この世界では悪霊そのもの。
 生きることを許さぬのならば、この侵略新世界を生み出したものも、生み出されたものも、全てが意味をなさない。

 だが、砲火襲い来る大炎熱世界の熱を全て小枝子は『夜天叢雲剣』に集約させ、己が念動力を燃やすように灯す。
「その躰は貴様が乗っていいものではない!」
 放たれた一撃が『イティハーサ・零號』の鋼鉄の駆体を貫き、その内部を燃やし尽くす。
 そう、内部に最早、鋼鉄共栄圏の魂はない。
 あるのは『幻朧帝イティハーサ』のみ。
 その焔は、浄化。
 破壊という浄化によって、新たなる再生をもたらす灰燼となるのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

儀水・芽亜
私に出来ることは、多くはありません。
ですが出来る限りを尽くしましょう。

「落ち着き」をもって、全力の「集中力」で竪琴を「楽器演奏」して、生命賛歌を「歌唱」。
「郷愁を誘う」「コミュ力」「情報伝達」「降霊」などを歌声に乗せましょう。
苦痛に塗れた魂たち、生命の輝きを思い出してください。そして、生命を否むものが誰なのか、あなた方の怒りを叩きつける相手が誰であるべきかを思い返してください。
あなた方のことは、私が覚えています。戦いが終われば、輪廻の輪へと戻しましょう。

全ての元凶は、幻朧帝イティハーサ。あなた方の正当な怒りをぶつけましょう。
生と死を弄んだ罰を与えねばなりません。あなた方の腕が届きますように。



 戦場には怨嗟の叫びが満ちている。
 その声を聞くだけで、身がすくむ。足が止まってしまう。
 けれど、それは仕方のないことであったのかもしれない。
 それほどまでに『鋼鉄共栄圏』の八億の魂……今は、『殲機鋼鉄共栄圏』の鉄人形へと変えられた魂たちの叫びは強烈なものだったのだ。
 故に、儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『夢可有郷』・f35644)は思う。
「私に出来ることは、多くはありません、ですが、できる限りを尽くしましょう」
 彼等の怨嗟に応える事はできない。

 なぜなら、彼等の苦しみ悲しみの一欠片とて、己は理解できるものではなかったからだ。
 悲壮なる覚悟も。
 壮絶なる決意も。
 全てが『幻朧帝イティハーサ』によって踏みにじられてきた。
 その悲哀たるやどれほどのものであろうか。
 理解できるなど言えるわけもなかった。
 だからこそ、芽亜は意識を竪琴に集中させる。
 己ができるのはただ一つ。
 理解するのではなく、慰撫のみ。
「苦痛にまみれた魂たち、いのちの輝きを思い出してください」
 その歌声は生命賛歌。
 世界に満ちるのは鼓動だった。

 時に騒々しく、時に力強い音。
「そして、生命を否むものが誰なのか。あなた方の怒りを叩きつける相手が誰であるべきかを思い返してください」
「無駄だ。これらの魂にあるのは怨嗟のみ」
「いいえ。彼等は」
「違わない。八億の魂は過去の体積によって歪み果てた。歪む魂は元に戻ることはない。たとえ、癒やしであっても、だ」
 芽亜は頭を振る。
 ユーベルコードに輝く瞳が、『イティハーサ・零號』より放たれる爆発を見据えていた。

 己を取り囲む鉄人形たち。
 そこに温もりはない。
 あるのは、鉄のような冷たくも強固な悲哀のみ。
 だが、それでも歌う。
 歌わねばならない。
 生命であった者たちは、この歌を鼓動として刻んできたはずなのだから。
「あなた方のことは、私が憶えています。戦いが終われば、輪廻の輪へと戻しましょう。この生命賛歌(セイメイサンカ)を標として」
 怒りはぶつけなければならない。
 けれど、矛先を間違えてはならない。
 怒りに正当性があるのならば、きっとそれだけが正しいことなのだ。

「『幻朧帝イティハーサ』、生と死を弄んだ罰を与えねばなりません。私は、歌いましょう。ずっと。あなた方の腕が届くまで、いつまででも!」
 芽亜は歌い続ける。
 この戦場に集った者たちの負傷、疲労、多くを癒やしながら芽亜は、己が身を苛む心の傷を請け負う。
 それが覚悟というものだ。
 己が傷つこうとも守らねばならぬものがあるのならばこそ、発露する力がある。
 これまでもそうだったのだ。
 なら、これからもそうなのだと示すように芽亜の瞳は『イティハーサ・零號』を真っ向から睨めつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・茜
まあ…ここまで民を蔑ろにして
よくも帝を名乗れたものですわね!
わたくしは戦国大名御堂家の志を継ぐ者
我が家名にこそ勝者のカリスマと覇気は在り!

圧政に苦しむ民たちよ
この御堂に陳情を申しなさい!
わたくしは民の嘆きを真っ向から受け止めましょう
ええ、このままで良い筈はありません
敵は完全に我らを見くびっておりますわ
故に今こそ討って出る時です!

UCで大太刀に熱き正義の心を宿し
向かってくる鉄人形を全て謀反させます!
かの織田信長様が天下統一を成し得なかったのも
彼の覇道が民や臣下の不興を買ったからこそ
ですがそれも未来の為でしたわ

生きる喜びすら解さぬ帝に降る理由なし!
全身全霊の気合いを込め
我らは貴方の支配を拒みます!



 鉄人形の群れが戦場を行く。
 目指すは敵。
 だが、敵とは誰なのか。
 己たちの怨嗟をぶつけるべきは誰なのか。
 彼等に意識はない。だが、衝動があった。
 鉄の駆体は冷え切っている。灯されるものがないからだ。
 けれど、声が聞こえるのだ。
 猟兵たちの声。
 呼びかけ、己たちを理解しようとしている。
 標のように輝くユーベルコードの明滅は、彼等の虚の如き瞳に輝きを吸い込ませるばかりであった。
「――」
 ただ嘆きがあった。

 ああ、とその様子を見やり、御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)は呻くでもなく、ただ呼気を以て『イティハーサ・零號』へと対峙する。
「……ここまで民を蔑ろにして、よくも帝を名乗れたものですわね!」
「無論。儂にとって世界とは、統べるものであり、創造するものである。創造したものこそが、想像されしものの頂点に立つのは当然のことであろう」
「ならば、わたくしは名乗りましょう!」
 茜の瞳はユーベルコードに輝いていた。
 意志が輝いている。
 如何に世界すら創造しうる存在であっても、持ち得ぬもの『意志』。それを茜は瞳に宿しながら叫ぶ。

「わたくしは戦国大名御堂家の志を継ぐ者。我が家名にこそ勝者のカリスマと覇気は在り!」
 遠からば寄って見よ。
 体躯は鋼鉄の巨人『イティハーサ・零號』に遠く及ばずとも。
 されど、その体躯に宿したるものは真である。
「圧政に苦しむ民たちよ。この御堂に陳情を申しなさい! わたくしは民の嘆きを真っ向から受け止めましょう」
 茜は太刀を抜き払う。
 宿るは熱き正義の心。
 そう、どんなときも正義の心が燃えるのならば、彼女に敵はいない。

 無敵というのならば、きっとそうなのだろう。
「――」
 怨嗟の叫びを受け止めながら、茜は踏み出す。
 諸悪の根源を前死にて立ち止まる正義の味方がどこにいようか。
「このままでいいはずがありません。頂点に立つと、創造を司る者の驕りを語る者こそ、討たねばなりません!」
「――!」
「さすれば!」
 茜は迫る鉄人形の尽くに触れる。
 だが、彼等は茜を攻撃しなかった。何故ならば!

「此処に正義の心があるからでございます! そう、正義! 正義の心こそが、その冷えたる体躯に火を灯すのでございます!」
 嘗て、織田信長が天下統一を成し得なかったのも、その覇道が圧倒的であったからこそである。
 国は人であるが、頂点に立つ者はただ一人。
 故に他者を慮ることをせねばならないのだ。
 しかし、その慮る心が全て伝わるわけではない。未来のためにと語る言葉は、無理解に寄って燃やし尽くされる。

「生きる喜びすら解さぬ帝に降る理由なし! そうでしょう!」
 ミドウ城の変(ジャスティスミドウ・ネガエリコウサク)、此処に勃発す。
 茜の圧倒的正義感によって、鉄人形たちが次々と伝播するように『イティハーサ・零號』へと迫るのだ。
「……何故抗える」
「決まっておりますわ! わたくしの全身全霊の気合が、民に伝わっているのです! わたくしは……いえ、我らは貴方の支配を拒みます!」
 茜はたちの切っ先を向ける。
 共に走る鉄人形たち。
 そう、創造されしものが、創造せしものを凌駕出来ぬ道理などない。
 それを示すように茜は正義の炎を噴出させる鉄人形たちと共に『イティハーサ・零號』の巨躯へと立ち向かうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
本来はイティハーサを討つ為にある魂が、却って奴に力を与える事になるとは……皮肉にも程がある

神刀を抜き、神気を纏う事で身体能力を強化
気力を振り絞る事で無理矢理に身体を動かして、どうにか攻撃を防ぎ、回避して
そして無数の魂に呼びかける
イティハーサを憎む気持ちは分かる。その憎しみは正当なものだ――だが、その憎しみが奴に力を与えているのもまた事実
だからその思いを、憎しみだけではなく。正しい怒りとして燃やしてくれ
奴を倒し、あなた達を解放し――そして何よりも、他の世界で同じ悲劇を繰り返させない為に!

十分に動けるようになったなら行こう
奴が乗るミサイルに此方から飛び乗り、距離を詰めて一撃叩き込んでやる



 エンシャント・レヰス『護国鉄神零號』は語る。
 嘗て、『鋼鉄共栄圏』は敵と対峙していた。滅びし時に『護国鉄神零號』はその体躯に八億の魂を搭載し、敵を打倒した。
 しかし、あろうことか、その敵に寄ってオブリビオン化され、今はその尖兵へと堕した。
 八億の魂も同様である。
 オブリビオン化し、歪み果てた魂の上げる怨嗟の叫びは対峙する猟兵たちの身を封じるかのように突き立てられる。
「本来はイティハーサを討つためにある魂が、却って奴に力を与えることになるとは……皮肉にも程がある」
 巨大なる鋼鉄の巨人『イティハーサ・零號』を見上げ、夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)はつぶやく。

「皮肉でも何でもない。六番目の猟兵。儂の力は歴史そのもの。ならば、過去になったもの、即ち骸の海は須く儂にとって可能性の断片。どんな生命も死こそが終着点。ならば、お前たちも無関係ではいられないのだ」
「だとしてもだ」
 鏡介は神刀を抜き払う。
 神気を纏て、己が身体能力を強化する。
 気力を振り絞る。怨嗟の叫びが身を縫い留めるようであったが、しかし、せまる矢を切り払う。
 爆発が巻き起こる。
『イティハーサ・零號』の力は未だ健在である。
 此処まで多くの猟兵たちのユーベルコードが煌めいてきた。だというのに、未だあの鋼鉄の駆体を操る『意志』を獲得した『イティハーサ・零號』は苛烈なる攻勢と、そして何より、周囲に満ちる八億の鉄人形たちを手繰り攻勢を仕掛けているのだ。

 防戦一方であると言わざるをえなかった。
「イティハーサを憎む気持ちわかる。その憎しみは正当なものだ――だが、その憎しみが奴に力を与えているのもまた事実」
「――!!」
 怨嗟の叫びが鏡介に響き渡る。
「理解するか。八億の魂を。だが、第六の猟兵よ。この八億の魂変ずる鉄人形たちは、その憎しみの理由も、怨嗟の理由も、悲しみの理由すら忘れているのだ。永遠の死とは即ち忘却である。ならばこそ、その理由なき怨嗟を理解すれど、止められぬよ」
「そうかもしれない。だが」
 鏡介の瞳がユーベルコードに輝く。
 人は忘れるものだ。
 忘れるからこそ前に進むことができる。
 一種の脳の防衛本能であると言えば、それまでだ。だが、それでも人は前に進むことをやめなかったのだ。

 嘗ての鋼鉄共栄圏の魂たちが肉体失えど、敵を打倒するという覚悟を持って進んだように。
「悲劇は繰り返させない。イティハーサ、歴史そのものというお前を打倒し、彼等を開放する。そのためには!」
 踏み出す。
 怨嗟を振り払う。
「猛れ、剛刃一閃――参の型【天火:猛】(サンノカタ・アメノヒ・タケリ)」
 大地を蹴って鏡介は『イティハーサ・零號』へと飛ぶ。
 最上段からの猛烈な勢いの斬撃を叩き込む。
 迫るミサイル。
 それを鏡介は切り払い、爆風の中から飛び出す。
「繰り返させはしない。悲劇は、二度と!」
 斬撃が『イティハーサ・零號』の体躯を斬り裂く。
 鋼鉄を斬り裂く斬撃。
 それは、喪われし生命に贖う一撃として示される――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・スペルティナ
上等ですわね!彼らの魂を蝕むその怨嗟、怒り、嘆き、そして怨念……全部ちゃんと聞いた上で(死者の声を聞くのは得意ですわ)その負の想いをひっぺがして魂を浄化し、わたくしが、このスペルティナの血が、貴方達の代わりに全部背負ってみせますわ!

手首を切り、更に呪血の大剣も代償にUC!呪血の力で取り込んだ彼らの無念と怨嗟に形を与えた「軍勢」を引き連れ進軍し、あの朦朧帝とかいう爺に剣で一発叩き込んでやりますわ!
…勿論、貴方達も容赦は不要ですわよ!

……あれは「転生」などではなく、所詮は死者を別の器へといれただけの死体弄り。この「新世界」も同じですわ。
だからこれは……わたくしの、死霊術士の領分なんですのよ



「憎しみの理由を忘れた魂に意味はない。継ぎ接ぎの鉄人形とて、ただ可能性の断片でしかない。こうであったかもしれないという可能性だ。それ故に、彼等の生命に意味はあったのだ。今という瞬間のために」
『イティハーサ・零號』は『護国鉄神零號』と融合を果し、『意志』を獲得している。
 そして、搭載されていた魂八億を持って『殲機鋼鉄共栄圏』たる侵略新世界を創造したのだ。
「彼等の怨嗟にこそ意味がある。理由など必要ない。怨嗟の叫びという要因だけが、今この場に必要とされているのだ。滅びし己等を呪い、他者を呪う。その感情は、あらゆる感情に優先される」
 たしかにそうなのかもしれない。
 人の心は、ネガティヴなものほど拡散性を持つ。
 またたく間に広がり、人の心を蝕み、引きずり下ろしていく。
 そうであると認識しなくても。
 そういうものだと言えたのならば、楽であっただろう。仕方のないことだと割り切れたのならばよかっただろう。

 だが、正しい道はいつだって厳しく険しいものだ。
 遠回りに見えるし、坂道に思える。
 だが、その道を行くからこそ、人は多くを掴んできたのだ。
「上等ですわね!」
『イティハーサ・零號』が語るのは、そうした真理であった。
 しかし、メリー・スペルティナ(暗澹たる慈雨の淑女(自称)・f26478)は真っ向から立ち向かう。
 どんなに険しい道があるのだとしても、如何に八億の怨嗟が己を打つのだとしても、メリーはためらわなかった。
「彼等の魂を蝕む、その怨嗟。怒り。嘆き。そして怨念……全部ちゃんと聞いた上で!」
 怨嗟がメリーの体躯を縛り上げる。
 こわばる体。
 一歩も踏み出せなくなる。
 鉄人形たちの叫びは、それほどまでに強烈だった。

「その負の想いを引っ剥がしてあげますわ! この、わたくしが! このスペルティナの血が! 貴方たちの代わりに全部背負ってみせますわ!」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 ああ、偽・死の先を往く者よ(リバース・エインフェリア・フェイク)。
 その道がたとえ、偽りであったとしても。
 されど、その流れる血潮の赤き鮮烈さを魂は忘れることはできないであろう。
 嘗て己たちの身に流れし血潮は、覚悟によって鉄へと変じたのだ。
 それを忘れ、憎しみと悲しみにまみれた怨嗟しか上げることができなくなったとしても。

 メリーの手首から流れる血潮から生み出されたのは、怨嗟の軍勢。
 彼女は自身の血潮を媒介にして、怨嗟の叫びを軍勢に形を変えたのだ。。
「朦朧帝でしたっけ、幻朧帝でしたっけ。どっちにしてもろくでもない爺に一発叩き込んでやりますわ!」
「この圧倒的な創造のちからを前にしても嘯くか」
「嘯く? 馬鹿言っちゃいけませんわよ! こんなの不敬でもなんでもないですわ! 貴方達、容赦は不要ですわよ!」
 軍勢と共にメリーは鉄人形の群れを掻き分けて鋼鉄の巨人『イティハーサ・零號』へと突き進む。
「何故だ? 儂は与えたではないか。新たなる世界を想像によって。そして、失われた肉体の変わりも」
「あれは『転生』などではないのですわ! 初戦は、死者を別の器にいれただけの死体いじり。それと何が変わらないのです。この『新世界』も同じですわ!」
 だから、とメリーは瞳を輝かせ、己が剣を叩き込む。
「これは……わたくしの、死霊術術士の領分なんですのよ!」
 装甲を火花をちらしながら斬り裂く。
 そう、死者の声を聴く。
『イティハーサ・零號』の為すそれとは異なる力だと示すように、彼女は己が血潮を鉄に変えながら、その意思を叩きつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シーザー・ゴールドマン
悪くはないとも。過去のモノを継ぎ接ぎして作品を作る。
それらにもそれらなりの価値はあるだろう。
しかし、それは新しいモノが必要ないという話ではない。
それは新しいモノを創り出す力のない者の嫉妬に満ちた戯言に過ぎない。
それに――君が勝手に材料にしている過去は納得しているのかね?

八億の魂達よ! 諸君の仇敵への怒り、憎しみ、怨嗟の声は届いている。
だから約束しよう。
私が幻朧帝を斬り裂き、未来永劫完全に消滅させることを!
諸君はただそれを信じ願えば良い。見ていたまえ――

【ウルクの黎明】を発動。
各種『魔力』を活性化。『魔王眼』を輝かせて『オーラセイバー』を振るい『骸の海』という概念ごと幻朧帝を斬り裂きましょう。



 何故抗うのか。
 生命は骸の海に熱を失って流れ着く。
 過去の体積たる骸の海。
 生命は過去になる。
 そして、それは混沌という可能性のるつぼへと変化する。
 生命の役割とは、可能性の断片を骸の海に集めることである。そして、『幻朧帝イティハーサ』は、その役割が既に終わっていることを示した。
 侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』。
「世界など、いくらでも想像できる。所詮、未来とは可能性の継ぎ接ぎに過ぎない。儂の作り上げるものと大差などない。だというのに、何故抗う。何故儂を悪しきと断ずるのか、第六の猟兵よ」
「いいや。悪くはないとも。過去のモノを継ぎ接ぎして作品を創る。それらにもそれなりの価値があるだろう」
 シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)はコートを揺らし、金色の瞳で『イティハーサ・零號』を見据える。

 確かに価値がないわけではない。
 過去になったものが全て無意味であるというのならば、無論である。しかし、過去もまた価値の一つだ。
 ならば、それを組み合わせたものと、まったくの未知なるものとの価値がかけ離れている道理もないのだ。
「しかし、それは新しいモノが必要ないという話ではない」
「そうだろうか。今、儂が作り上げた新世界など過去の寄せ集めだ。可能性に寄って生み出したものだ。それを」
「それを創造と呼ぶには、あまりにも私達は多くを知っているのだよ。君にそれは、新しいモノを作り出す力のない者の嫉妬に満ちた戯言にすぎない」
 シーザーはユーベルコードに輝く瞳を以て見据える。

 眼の前にあるのは贋作者ではない。
 だが、創造者ではない。
 過去、骸の海、混沌たる可能性。
 たしかにそれは理屈では正しいのだろう。
「それに――君が勝手に材料にしている過去は納得しているのかね?」
 迫る鉄人形。
 彼等の上げる怨嗟の叫びは、何一つ納得していないだろう。
 仇敵に利用されるだけの鉄の駆体。
 理解していなくても、魂が拒否している。だからこそ、怨嗟の叫び。その向ける先がわからなくなっているだけなのだ。
「八億の魂達よ! 諸君の仇敵への怒り、憎しみ、怨嗟の声は届いている。だから、約束しよう」

 シーザーは笑む。
 怨嗟を受け止める。
 理解はできない。けれど、それでも受け止めることはできる。
 人と人とは深く理解し合うことができても、全てを理解し合うことはできない。どうあっても、どこか一滴、染みのように小さな一点理解できぬものがあるのだ。
 それが決定的に他者と己が違うということ。
 その差異を知るのならば、それがどんなに喜ばしいことかを知る。
「私が幻朧帝を切り裂き、未来永劫完全に消滅さえることを! 諸君はただそれを信じ願えばよい」
「絵空事を」
「そう思うかね。だが、我々は知っているぞ、キミを完全に滅ぼす術を持つ者を。キミが本当に創造者であり、完全無欠なる可能性の体現者であるというのならば、完全に抹殺される儀式など、本来残っているわけがない」
 故に、『名を覚える者』を抹殺せんと刺客を差し向けた。そして、なにより、それは己達によって阻止されている。

「見ていたまえ――」
 ウルクの黎明(デウス・ポテスタース)が魔力をもってオーラセイバーの刀身を生み出す。
 ふるった一撃は、その強大な魔力のままに『イティハーサ・零號』の鋼鉄の体躯を斬り裂くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ワルルーナ・ティアーメル
くっくっく、貴様達の願い、この我が叶えてやろうではないか!ワルルンガーと共に進軍し、敵攻撃はワルルンガーの装甲と魔王的オーラで防御!ワルルーナアイで鉄人形達の願望を読み取り……まあ大体想像つくが。その上で「それを叶え」る!

さあ、その怒り、不満、鬱憤、全部我が代わりに晴らしてやろう!
UC!周囲の鉄人形達から怒りや鬱憤を分けても……もといかき集めた「怒り玉」を投げつける!玉を避けたとて爆発が周囲を覆い、さらに巨大なる怒りの悪魔竜が大乱闘に巻き込むぞ!

ふん!貴様が「創る」って口にする度なんかすっごい腹立つのでな!悪いが老人相手でも遠慮は無しでいくぞ!オブリビオンだしな!



『名を覚える者』――『山本五郎左衛門』。
 彼女は憶えていた。
 複雑怪奇なる工程の儀式。それによって幻朧帝を完全に消滅させる術を。
 如何に『幻朧帝イティハーサ』が強大で、滅ぼし得ぬ存在であると言われるのだとしても、彼女が憶えていた。
 その事実が彼を完全なる創造者であるという座から引きずり下ろしている。

 彼の力は恐るべきものである。
 世界そのものを創造する力。
 侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』。
 八億の魂すらも鉄人形に変え、その怨嗟の叫びを以て対する猟兵の動きを止める。
「――!」
 その叫びは彼等の動きを止めるだろう。
 身を貫くような痛烈なる叫び。
 憎むべき敵すら忘れた哀れな魂たちは、仇敵の尖兵となったことも理解していないだろう。ただ、眼の前の存在に対して怨嗟をぶつけるのみである。

 だが。
 その怨嗟を真っ向から受け止める者がいる。
「くっくっく、貴様たちの願い。この我が叶えてやろうではないか!」
 巨大なる魔王城『ワルルンガーΣ』と共にワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は、進撃する。
 迫る鉄人形たちの攻勢を『ワルルンガーΣ』の装甲と彼女の魔王的オーラで受け止める。
「――!」
「凄まじいまでの叫びであるな! だが、案ずるな! このワルルーナアイは、願いを見逃さぬ!」
 彼女は見つめた。
 物言わぬ鉄人形たちを。感情浮かべぬ鉄面皮の如き、鋼鉄の駆体を。
 だが、それでも彼女の瞳は捉えたのだ。

「そうか。怒り、不満、鬱憤……ありとあらゆる己達を取り巻くものにたいする怨嗟、なのだな。それを晴らしたいというのではなく、己たちが打倒すべき敵を、倒せぬことを憤るか」
 ワルルーナは頷く。
 覚悟が彼等にはあった。八億の魂全てに覚悟があったのだ。
 肉体失えど、魂だけとなっても、世界の敵を打倒せんする意志があったのだ。
 その意志をワルルーナはかき集める。
「くくく……」
 ワルルーナは精一杯悪そうな表情を浮かべた。
 彼等に報いることはできない。喪われたものを贖うことはできない。
 ならば、せめて願いだけでも叶えてやらなければならない。
 そう思うのだ。

「これが!『怒り玉』よ! 見よ、八億の怒り! これこそが、貴様が求めた意志というものだ!」
「世界する創造する儂に対して、怒りを覚えるか。見当違いも甚だしいものであるとは思わないか。生命は既に役割を終えているのだ。であるのに、それでもこれらはお前たちに縋る。それは」
「ふん! 貴様が語る『創る』って口にする度になんかすっごい腹立つのでな!」
 理由はそれだけだ。
 それで十分だというように、ワルルーナは掲げた『怒り玉』を投げ放つ。
 叩きつけられた怒りは大地を変容し、さらに怒れる悪魔竜を生み出す。

 それは魔王軍第3冠所属:悪魔竜怒りの大乱闘(ドラゴンレイジ)であった。
「老人相手であろうが遠慮はなしでいくぞ! むっ、なんかすっごいワルっぽいな、我! いいぞ、やってやろうではないか! 見るがよい、我が配下が貴様らの代わりに、その怒りを、怨嗟を晴らしてやろう!」
 ワルルーナは悪魔竜と共に『イティハーサ・零號』へと飛び込み、その大乱闘でもって、鋼鉄の駆体を打ち倒すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
命を踏みしだく輩は最も唾棄する存在

「新世界?笑わせるな!」
彼らは死して安らう権利すら奪われたのだから

「絶対に…」

激烈な怒りが満ち激情が荒れ狂う
『彼ら』のそれも俺を縛り上げる

「絶対に!倒す!」
ただ叫ぶと―ふっと締め付けが緩んだ

身を任せた全開の怒り、言外の確殺の約束に
彼らも賭けてみる気になったのかもしれない

「一緒に征こう!」
言うと、彼らと正しい意思の気配が俺の背を押した

一瞬で肉薄まで至る
早く征けと声なき絶叫も聞こえる

「解ってる…任せて!」
攻撃に耐え至近距離へ入り終焉光詠唱!

放つが最後俺を殺しても止まらない!
鉄人形もイティハーサも
全消滅するまで幾度でも掛け直そう

助力に礼を鎮魂の瞑目を
「ありがとう…」



 時は過去を排出することで前に進んでいく。
 それが世界の理だ。
 今は過去に代わり、過去は骸の海へと排出される。過去の体積はあらゆるものを歪めていく。それほどの質量があるのならば、ある種当然のことであっただろう。
 そして、それは過去を踏みつけて生きているということにほかならない。
 だが、葛城・時人(光望護花・f35294)は思う。
 己たちが過去の上に立つことは理解できる。
「新世界? 笑わせるな!」
『イティハーサ・零號』に対して、時人は叫んだ。

 世界の創造。
 侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』。
 それは嘗て在りし『鋼鉄共栄圏』八億の魂をもって、怨嗟の叫びだけを上げる鉄人形と変える所業であった。
 生命を踏みしだくことと同じ行為だ。
 唾棄すべき行為であった。
 故に彼は怒りをにじませた。
 鉄人形たちの怨嗟の叫びを身に受け止める。彼等を思う。彼等は死して安らう権利すら奪われた。
 嘗て、常闇の世界、ダークセイヴァーもそうであったという。
 死は救いですらなかった。
 死した後も転生し、さらに弄ばれ続ける。

 そんなことは。
「絶対に……」
 強烈な怒りがこみ上げてくる。
 激情が荒れ狂うように、己を縛り上げる怨嗟の叫びを振りほどく。
「絶対に! 倒す!」
 激情に身を任せた。
 その怒りは熱そのものであっただろう。
 鉄人形に宿るのは怨嗟であり、冷たき熱であった。冷えて、冷えて、冷え尽くした体躯に宿るものはない。
 だからこそ、その熱に当てられのだろう。
 緩むままに時人は駆け出していた。
「一緒に征こう!」
「共に、と言う言葉すらも彼等には届かぬよ。彼等には怨嗟しかないのだから」
「黙れ。お前には何も感じられないのだろうが、俺の背中は確かに感じているぞ。これは、お前が言うところの冷めた熱だ。だが、感じられる。なら、これは確かに熱だ!」
 時人は踏み出す。

 怨嗟の叫びが、征け、と聞こえた気がした。
 空耳かもしれないし、自分がそうであってほしいと願望したからそう聞こえたのかもしれない。
 でも構いやしない。
「解ってる……任せて!」
 叫びは叫びだ。
 それ以上ではない。けれど、感じ取ることができたのならば、それは力となる。
『イティハーサ・零號』へと肉薄した時人は、そのユーベルコードの輝きを解き放つ。
「光の果ては永遠の闇……終わりを導こう」
 終焉光(シュウエンノヒカリ)が迸る。
 着弾した光は、周囲を消滅させる激烈な創生の光。
 止まることのない光の明滅は、鉄人形たちを消滅させ、『護国鉄神零號』と融合を果した『イティハーサ・零號』の鋼鉄の装甲すら消滅させていくのだ。

「俺を殺しても、この光は止まらない! お前が創造したという世界、これを全て消滅させるまで!」
 止まらないのだ。
 怨嗟の源が、この世界であるというのならば。
 時人は、この世界を否定する。
 その思いだけが光をほとばしらせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

ステラさん、いろんな香りを嗅ぎ分けられるようになりましたね。
『ノイン』さんもグリモア猟兵になられてから、テンションおかしいですし、
正妻戦争ーとか言ってたのに、ボケ合戦みたいになってます……。

やべー×2なんて、いくらわたしがツッコミ系可愛勇者でも、
さすがに捌ききれないですよ?

いえ、冗談ではなく。

わたしは難しいこと苦手ですけど、
過去しか見ないのはよくないですよね。
それに、どんな命でも弄ぶのは勇者的にNGです!

そこはしっかりあらためてもらわないといけないですね。

はい。もちろんわたしの演奏で心を浄化してもらうんです。
渾身の一曲を聴いていただきましょう!

もちろん『ノイン』さんもいっしょに!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
というか泥棒猫の香りがしまーすっ!
ルクス様みました!?あのグリモア猟兵
パッセンジャー様の台詞とりましたよ!?
ちょっと『キリッ』してた気がします!
これはもうルクス様のコンサートに招待コース

さて冗談はここまで
悔しいですが『理由になってない』には賛同です
ええ、過去と未来は相容れないものですが
過去と未来は同価値であるモノ
過去を礎にしているから現在の我々から未来が変わるのです!
その道を征くのが生命
その生命を弄ぶなど!赦すわけには!
皆様の恨みつらみ当然のこと
ですが今一度
生命が前に進むために力を貸していただけないでしょうか
過去を解き放つは現在の役目
勇者とメイドにお任せを!



 戦場に響き渡るのは怨嗟の声。
 鋼鉄共栄圏に有りし、嘗ての魂八億は、『イティハーサ・零號』によって侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』の鉄人形へと変じた。
 それはあまりにも尊厳を踏みにじる行いであった。
「――!!」
 怨嗟の理由すら最早、そこにはない。
 あるのは、怨嗟という感情のみ。
 誰にぶつけるのかもわからない。ただひたすらに叫ぶだけの鉄人形たち。

 だが、そんな叫びを斬り裂く雄叫びがあった。
「|『エイル』様《主人様》の! というか泥棒猫の香りがしまーすっ!」
 言うに事欠いて泥棒猫である。
 此処まで来ると、そろそろ出るとこに出た方がいいのではないかとグリモア猟兵はおもったかもしれない。
 身に覚えがなさすぎるからだ。
 いや、まあ、なんかこう過去のやらかしが遠因となって、こういう事態を招いているのならば、身から出た錆っていうこともないわけでもないのかもしれないが、今はまあ、関係ない。

「ステラさんもいろんな香りを嗅ぎ分けられるようになりましたね」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の叫びを聞いてももう動じなくなっていた。
 というか、日常になっていた。
「正妻戦争ーとか言ってたのに、ボケ合戦みたいになってますよ」
「そんなことありません! それよりも!」
 ステラは後方を指さした。
 いや、それよりも戦って欲しい。切に。
「『パッセンジャー』様の台詞取りましたよ!? ちょっと『キリッ』ってしてました!」
「それはもう風評被害じゃないですかね。っていうか、やべー猟兵×2なんて、いくらわたしがツッコミ系可愛勇者でも、流石に捌ききれないですよ?」
 笑うところかなここは。
 というか、盗った、というより与えた方が正しいのだが、ここでそれを言っても詮無きことである。

 彼女たちに迫るのは、八億を越える鉄人形たち。
 彼等の叫びは彼女たちの動きを止める。
 けれど、そんなことにかまっていなかった。
「いえ、冗談ではなく」
「もうここはルクス様のコンサートに招待コースですね!」
「それは喜ぶところでは?」
「そうかもしれません。たぶん」
 たぶんじゃないと思う。
「さて、冗談はここまで。悔しいですが『理由になってない』には賛同しましょう」
 ステラの言葉に『イティハーサ・零號』は言う。

「何故だ。生命はすでに意味をなさない。役割は終えたのだ。ならば、これ以上の可能性の断片は必要ないのだ。第六の猟兵、お前の言うところの『主人様』もそうだ。確定した可能性はこれ以上いらない。これ以上は、無意味だ」
「だまらっしゃい!!」
 ステラの赤い瞳が見開かれる。
 瞳孔が開いてガン決まっていた。
 うわ、とルクスは思ったが、難しいことは苦手である。けれど思うのだ。
「過去しか見ないのはよくないことですよね。いくら、骸の海に過去在りし可能性が全てあるのだとしても。それに、なによりも、どんな生命でもて遊ぶのは勇者的にNGです! つまり!」
 相容れぬのだと二人は言う。
「過去と未来は同価値であるもの。過去を礎にしているから現在の我々から未来が変わるのです。その道を征くのが生命。それを如何に確定した可能性であろうとも、もがき苦しみ、それでも前に進まんとした我が『主人様』を無意味と謗る言葉」
 それは、万死に値する。
 万の罪にも勝る大罪。
 故にステラは叫ぶのだ。

「皆様の恨みつらみ当然のこと。ですが、今一度前に進むために力を貸していただけないでしょうか!」
「もっちろん、わたしの演奏で浄化しますね! 渾身の一曲聞いていただきましょう! もちろん、後方で転移維持している人もですよ!」
 それはノーセンキュー。
「なんでですか!」
「過去を解き放つは現在の役目……なんだか外野が締まらないですが! 勇者と!」
「メイドに!」
『お任せを!』
 二人の言葉が重なり、その声は戦場に響き渡る。
 八億の魂たちを揺さぶる声と演奏は、如何に創造の力を手繰る『イティハーサ・零號』にも阻まれることはない。

 それを証明するために、生命は讃歌するのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
イティハーサの能力は確かに脅威的デース!
しかし、過去を組み合わせるだけだと断じるのが実にもったいない!
何故ならワタシは……|過去《交戦記録》と|現在《バルタン》を組み合わせて|未来《新たなUC》を創造できるのでありますゆえ!

ご覧に入れマショー!
三年前、グリモアに目覚めた直後のワタシが、アポカリプスヘルの戦争で身に宿した力!
骸式兵装展開、米の番!

イティハーサ・零號に振るう武力は、他の猟兵諸君が存分に示しただろう。
よって私は『殲機鋼鉄共栄圏』全国民に語り掛けよう!
殲滅機械矢はワタシの身体能力、滑走靴の機動力で避けて拳による迎撃で凌ぎつつ、鉄人形の彼ら八億の魂に告げよう!

諸君! その恨みを晴らさないでいるべきだろうか?
闇雲に叫ぶだけで、何もせずに佇むべきだろうか?
否!
復讐するは汝等にあり!
憎き仇敵を恐れる、ならば奮い立つ魂を分けよう!
戦う力がない、ならば拳を与えよう!
同意したまえ、護国鉄神零號!
君こそが、この世界のプレジデントなのだから!
和らいで終わるのではない。自らの魂で、革命を起こすのだ!



『幻朧帝イティハーサ』
 その力は強大無比である。
 骸の海そのもの。歴史そのものたる力によって世界一つを創り上げてしまう。
 かつての『鋼鉄共栄圏』は、『殲機鋼鉄共栄圏』という侵略新世界へと変貌を遂げた。八億の魂は、鉄人形へと歪められた。
 響くは怨嗟の叫び。
 しかし、その叫びの主たちは、己の怨嗟の理由さえも忘れ果てた。
 一体誰に向けていたものであったのかもわからない怨嗟は、対する猟兵たちにさえ牙を剥く。

 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は脅威だと理解していた。
『幻朧帝イティハーサ』。
 世界一つを創造しうる力。
 恐るべきことである。
 だがしかし、彼女は思うのだ。
「過去を組み合わせるだけで新世界を作り出す、そうするのが創造だと断じるのが、実にもったいない!」
「そこに意味などない。生命は役割を終えている。ならば、そこに貴賤はない」
「いいえ! ならばワタシが示してみえマショウ! |過去《交戦記録》と|現在《バルタン》を組み合わせて|未来《新たなユーベルコード》を創造してみせましょう! それでは、ご覧クダサイ!」
 バルタンの瞳がユーベルコードに輝く。

「骸式兵装展開、米の番!」
 それは嘗て彼女がグリモアの力に目覚めた直後に身に宿した力。
 模倣様式・合衆国大統領(イミテーションスタイル・プレジデント)。
「それも儂の語るところの可能性の断片ではないのか。ならば、儂の言うところの創造を補強することでしかないのではないか?」
「そうかな」
 声が聞こえる。
 己の身に宿すは大統領魂。
 憑依とも違うのかもしれない。
 見て、知り、体感したこと。
 それをバルタンは模倣してみせた。

 誰かに何かを伝えるということは、それだけで力だ。
 誰もが出来る言語によるコミュニケーション。誰でも出来るからこそ、誰でも出来ないことができるという裏返し。
 もしも、価値というものが輝くのならば、そこらに転がる凡百の中でこそ最も光り輝くものである。
「武力はすでに猟兵諸君が示した。ならば、私は『殲機鋼鉄共栄圏』全国民に語りかけよう!」
「迫る矢は、すべてワタシが!」
 滑走靴によってバルタンの身が翻る。
 怨嗟の叫びは身を縛る。だが、それでも己が拳でもって『イティハーサ・零號』の攻撃をしのぎ、バルタンは声を発する。

 伝えること。
 それが創造を越える。組み上げられた世界は、唯の舞台装置でしかない。
 ならば、此処が己の壇上である。
「諸君! その恨みを晴らさないでいるべきだろうか!? やみくもに叫ぶだけで、何もせずに佇むべきだろうか?」
 確かに激流濁流の如き時流に対して、立ち止まり、踏みとどまることもまた力の証明であろう。存在の証明でもある。
 だが、とバルタンは叫ぶ。
「否! 復讐するは汝等にあり! 憎き仇敵を恐れる、ならば、奮い立つ魂をわけよう! 戦う力がない、ならば拳を与えよう!」
 バルタンは叫ぶ。
 己の身に宿る大統領魂は、開拓精神の現れだ。
 荒野を征くのは、暗闇の中を歩むことと同じ。だが、その心に魂があるのならば。

 暗闇の荒野に灯火をもつことができるだろう。

 それこそが意志。
 己たちにあって、『イティハーサ・零號』にはなかったもの。
「同意したまえ、『護国鉄神零號』! 君こそが、この世界のプレジデントなのだから! 和らいで終わるのではない。自らの拳で、革命を起こすのだ!」
 演説は鉄の駆体へと響く。
 誰かがやらねばならない。
 のならば、己がやる。
 その覚悟を八億の魂は宿していたのだ。

 ならばこそ、『鋼鉄共栄圏』は敵を魂だけとなっても成し遂げた。
 その結末が、たとえオブリビオン化され、傀儡とされるのだとしても、そのままにしていいわけがないと叫ぶ者たちがいる。
 その意志が此処にあることを示すように、バルタンは己がユーベルコードの輝きという灯火を、暗闇の荒野に示すのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィンデ・ノインテザルグ
憤りに静かに歯噛みしつつ
Fireflyに搭乗して参戦。
Evangeliumを駆使して飛翔し
Satanで|イティハーサ《標的》を追尾したい。

鉄人形と化した人々に、説教壇から語るように呼びかけを。
傾聴せよ。
祖国を喪う絶望は…私もよく知る処だ。
それを歪な形で再生する等、断じて赦してはならない。
我等の想いは…一つだ。

骸眼の動きを注視し
攻撃姿勢に移行したのを確認すると同時にUC機動。
…145秒間、極限まで敵の攻撃を無力化しよう。
無論、爆弾の雨が民衆に被弾せぬように。

Mammonを照射後に一気に距離を詰め、
最大出力で変形させたAsmodeusで骸眼を狙いつつ
Luciferの射撃を浴びせ、神罰を執行しよう。



 それは静かな憤りであった。
 言葉にするまでもないことであったし、内なる激情は荒れ狂うままである。そして、ヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)は己がキャバリアのコクピットで歯噛みする。
 眼の前には億を数える無数の鉄人形と超巨大なる鋼鉄の巨人。
『鋼鉄共栄圏』は、侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』へと成り果て、『護国鉄神零號』は『イティハーサ・零號』へと変わり果てた。
『意志』こそが、確定された可能性を打開するものであるというのならば、ヴィンデはためらわなかった。

「傾聴せよ」
 響くは猟兵たちの声。
 そして、鉄人形たちの怨嗟の叫び。
 交錯する叫びにヴィンでは告げる。
 彼はよく知っていた。この光景、この叫び、全てを彼は知っている。
「祖国を喪う絶望は……私もよく知る処だ。それをいびつな形で再生する等、断じて赦してはならない」
 機体の外部スピーカーから流れ出る言葉は誠であった。
 真摯に語るほかない。
 同じく失ったものにしか、その心は理解できない。

 そして、同時に失い続けても進まねばならないこともまた理解できることであっただろう。
 歪み果てた身に、その言葉がどれだけ酷なことであるのかも理解していた。
 悲しみも、苦しみも、憎しみも、怒りも。
 全てが己と同じだと思うのだ。
 数多の猟兵達が叫んだ。
 赦せるわけがないと。『イティハーサ・零號』の為したことは、継ぎ接ぎでしかない。創造などではない。
 奪われたものは回帰しないのだ。
 決して二度と戻ってはこないのだ。

 どれだけ新たなる世界を作り上げるのだとしても、それでも。
「我らの想いは……一つだ」
「――」
 怨嗟の叫びとヴィンデの言葉が重なる。
「想いが一つなどありえない。魂の数だけ混沌たる可能性がある。お前も、彼等も、全てが異なるものだ。矮小たる凡百たる一つに過ぎないのだ。同じことなどありえない。可能性とはそういうものだ」
『イティハーサ・零號』の言葉にヴィンデの人がユーベルコードに輝く。

「そうなのだろうな。だが、天にまします我らが父よ――」
 違うのだ。
 想いとは重なるものである。
 共有するものである。
 だからこそ、違えど共に手を取り合うことが出来るし、心を分かち合うことができる。
 その心の喜びを知らぬ者が、創造を語るというのならば、ヴィンデのCrucifixion(クルスィフィクション)は十字の光を放ちながら、鉄人形たちの攻撃行為の全てを無力化する。
「分かち合う事の出来ぬもの、それがお前だ、『イティハーサ・零號』。頂点に立つがゆえに、お前は誰かと何かを分かつことができぬ。その喜び知らぬ者は!」
 ビームアンカーが『イティハーサ・零號』の骸の眼へと突き立てられ、一気にスラスターの噴射で近づく。
 眼前には、巨大なる体躯の顔があった。
「この場より去るがいい」
 放たれるクリスタルビットが『イティハーサ・零號』の巨大なる威容を打ち据え、その爆風の中、ヴィンデは十字の光を背負い、怨嗟の叫びに手を差し伸べるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもー
なんで歴史の上にこころを、それを伝え合うためのことばを――
なんで歴史の上にいのちを、ふれあうためのからだを――
そんなものたちを作ったのかもう少し理解してほしいものだね!

●八億と一回の対話
まーまー落ち着いてよーそう言わずにー
話なら聞いてあげるから
ダイジョーブ!時間なら|幾らでも《無限に》あるから
UC『歪神』で時間から切り離された対話空間を展開して8億と1人の全員を説得…いや?そうだね、話をじっくり聞いてあげよう
彼らの思い出話を

落ち着いた?そう…うん、ボクもたくさん話せて楽しかったよ!
それじゃあ後よろしく!
やっちゃえー!8億+1個の強化[球体]くんでドーーーンッ!!



 傾ぐ巨体。
『護国鉄神零號』と融合を果した『イティハーサ・零號』は、猟兵たちのユーベルコードの光に圧されて後退する。
「何故、儂が後退している。あらゆる可能性、混沌たる断片を全て揃え、世界の創造すら容易い儂が何故」
「んもー」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は憤慨していた。
「なんで歴史の上にこころを、それを伝え合うためのことばを――」

「なんで歴史の上にいのちを、ふれあうためのからだを――」

「そんなものたちを作ったのかもう少し理解してほしいものだね!」
 その言葉に『イティハーサ・零號』は頭を振る。
「何も理解していない。生命とは可能性を生み出すもの。可能性はすでに混沌たる骸の海に十全に満たされた。生命とはそういうものだ。お前は生命という観点に囚われているだけに過ぎない。その一視点を俯瞰して見ているという視界に収めているだけに過ぎない」
「でもさ、それって結局の所キミも変わらないよ。キミは頂点からの視界しかしらない。俯瞰してみることしか知らないんだ。だから、キミはしらないんだよ。生命はもう別の役割を持っているんだからさ」
 怨嗟の叫びにかき消される言葉。
 ロニは、迫る鉄人形たちを前に、掌を向けて抑えて抑えて、というように身振り手振りを加えてみせる。

「まーまー落ち着いてよーそう言わずにー。話なら聞いてあげるから」
 ロニは頷く。
 八億の魂を前にして話を聞く、ということは膨大な時間が掛かる。
「ダイジョーブ、時間なら異kルアでもあるから」
 ユーベルコードに寄って全知全能の力が復活する。
 あらゆる攻撃がロニには届かない。
 これが歪神(ゴッド)である。

「君たちの言葉で、君たちのことを教えてよ。それは思い出っていうんだろう? なら、積もる話はいっぱいあるだろうさ。何もボクらの言う事を聞いておくれよなんて言わないよ。ただ、楽しくお話したいだけなんだ」
 それだけでいいのだ。
 心を伝え合うのが言葉。
 肉体があるのは触れうため。
 五感の全て世界を、眼の前にいる人を感じ取るための器。
 だからこそ、ロニは笑うのだ。

「そう。そうなんだね」
「――」
 言葉ならぬ怨嗟の叫びを受け止め続ける。
 彼に出来るのは此処までだ。
「ボクも、たくさん話せて楽しかったよ。それじゃあ、後よろしく!」
 ロニは生み出した球体でもって『イティハーサ・零號』を打ち据える。
 対話する事に生み出される球体。
 それによって数は背徳を越える。
 人は語らうことでつながっていく。
 つながりは、いつしか強固なものとなり、網目となって敵を逃さない。
 嘗ての『鋼鉄共栄圏』がそうであったように、『殲機鋼鉄共栄圏』へと成り果ててもなお、彼等は敵を打ち倒すことを選択したのだ。

 故に、ロニは笑う。
 その道行きがどうなるのであれ、何一つ彼等は間違えていなかったのだと――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
もうなんかお爺ちゃんが再放送と再編集版の時代劇さえあれば世界は十分じゃ、とか言ってるぞー!
老害かな?老害かも?
それって老害だよね
さっさと滅びろ〜!

…ま、そういう事で!
勝手に代弁者面して決め付けてんじゃないよ
たとえ明日が今より悪くなろうとも、たとえ未来がどれほど不確定だろうとも
立ち止まるよりは、よっぽどマシだよ
そっちの中にいる人も、そう思うでしょ
識らない歴史を紡ぐ事が出来るのが、人の強さなんだから

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【Code:U.G】起動
飛翔し、最大加速
そして周囲に自重で潰れる程の重量を照射
ミサイルを地に落としつつ、最大加速を乗せた『串刺し』で本体を狙う!



「生命は最早不要なのだ。すでに可能性の断片は満ちた。骸の海は混沌に至る。ならば、もう生命は無意味だ。無意味なものは存在しなくていい。疾く、その熱を失い、冷えてオブリビオンとなるがいい」
『イティハーサ・零號』の言葉に月夜・玲(頂の探究者・f01605)は鼻で笑う。
「それってさ、おじいちゃんが再放送とか再編集版の時代劇さえあれば世界は十分じゃ、とか言うやつじゃんね!」
 玲は思う。
 懐古主義を笑うつもりはない。
 最新が最高であるとは言わない。
 けれど、それでも、どんな懐かしさに足を取られても、それでも歩みを止めないのが人なのだ。

 それが創作ってもんである。
 何かを作り上げることをやめたものは、歩みを止める。つまり、それが老いである。肉体的ではない、精神的でもない、生命というものの根源的な老いなのだ。
「老害かな? 老害かも? それって老害だよね。ならさ、さっさと滅びろ~!」
 玲は模造神器を抜刀する。
 励起する蒼き刀身を前にして『イティハーサ・零號』は告げる。
「模造とは創造の対極。その力を振るうお前が、儂を謗るか」
「そりゃそうでしょ! そりゃあ、0から1を作り出す苦しさっていうのは、難しさとイコールなんだろうけどさ! でも、私たちは生きてる。生命ってやつなんだよ。生命はただ一つ単一なんかじゃあない」
 迫る矢を打ち払いながら、玲の瞳がユーベルコードに輝く。

 重力制御形態へと変じた玲が飛翔し、迫る鉄人形たちを次々と重力で押しつぶし、更に踏み込む。
 最大加速でもって迫る『イティハーサ・零號』の眼前。
「ただの可能性の断片にすぎない。故に、混沌相成れば、生命は無価値。それ故に、最早不要なのだ。ただ生きているだけで苦しみを得る生命など」
 終わってしまえばいいのだという『イティハーサ・零號』の言葉に玲は笑む。
 そして、その笑みは眼の前の停滞を象徴するかのような諸相を蹴り上げるようだった。

「勝手に代弁者面して決めつけてんじゃないよ」
「これ以上はないというのにか」
「たとえ、明日が今より悪くなろうとも、たとえ未来がどれほど不確定で見通せなくても。立ち止まるよりは、よっぽどマシだよ」
 だって、生きているのだ。
 生きることをやめない。
 誰かの頼まれたわけでもない。命ぜられたわけでもない。
「そっちの中にいる人も、そう思うでしょ。識らない歴史を紡ぐことができるのが、人の強さなんだから」
 玲は踏み込む。
 己が手にした模造神器は、確かに名の通り邪神の力を模したものだ。
 けれど、頂を探求する者は、それで終わりではない。
 模して、改め、よりよくしていく。

 それは明日を破滅に向かわせるものであるかもしれない。
 が、そうでないかもしれない。
 より良い未来が訪れるかもしれないし、そうでないかもしれない。
 揺らぐ不確定に恐れを抱くのではなく、玲は笑う。
 笑って挑むのだ。
「だって、それって楽しいってことでしょ。生命の讃歌は、ずっと私達の胸の奥で響いてる!」

 ――その歌を君はまだ歌えるか。

 問いかける言葉に玲は応えるようにして模造神器の刀身を振るう。
 蒼い十字斬撃が『イティハーサ・零號』の巨大なる体躯を切り裂いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
来なさい
その叫びごと受け止めてあげる
『天人結界』を展開し、衝撃波を耐えるわ
たとえ倒れても、何度でも立ちあがってみせる
理不尽に屈さない、その覚悟を示すわ

魂たちよ、力を貸して
踏みにじられた誇りを取り戻すために
生命がやがて冷めゆくのだとしても
心の炎は消えはしない
これまで出会ったオブリオン達が教えてくれたわ
残穢であっても、失われないものはあると……!

放つ矢に心のオーラを込めて
殲滅機械矢より疾く、飛翔し、狙い撃つ



 侵略新世界『殲機鋼鉄共栄圏』にユーベルコードの光が明滅し、怨嗟の叫びと悼む心とが交錯するように響き渡る。
 それはきっと歌のようであった。
 響き渡る歌。
 生命の讃歌。
 きっと生きるということは、こういうことであっただろう。

 ただ怨嗟だけではない。
 ただ希望だけではない。
 正と負が、光と闇が隣り合わせのように、どんな希望にも絶望が付きまとうし、どんな諦観にも優しさが寄り添う。
「来なさい」
 鋼鉄の巨人はよろめくようにして、前のめりに歩を進める。
 その眼前に薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は立つ。
 振り下ろされた拳、矢の衝撃を天人結界(テンジンケッカイ)で受け止める。
 身が軋む。
 怨嗟の叫びは、身を突き刺すようであったし、事実彼女の体躯を大地に縫い留めるようであった。
 そこに『イティハーサ・零號』の一撃が加われば、その身は傷つく。

 痛みに喘ぐことも、苦悶の表情を浮かべることも静漓はしなかった。
 膝から崩れ落ちる。
「無駄だ。どれだけお前たちが生命の可能性を見せるのだとしても、生命の役割は既に終わっている。あらゆる可能性の断片は――」
「いいえ」
 短く否定する言葉。
 静漓の瞳は諦観にまみれていない。絶望に濡れていない。
 ただ一つの光がそこにはある。
 諦めないという意志。
 その意志こそが彼女を前に進めさせるのだ。

 折れた膝であっても立ち上がる。
 理不尽に屈さない。それは多くの猟兵たちが示してきたものだ。故に、後は覚悟だけだ。
 嘗ての『鋼鉄共栄圏』にあったのは覚悟だった。
 肉体失い、魂のみとなっても、なお前に進み、敵を打倒戦闘する『意志』。
 それこそが覚悟。
 静漓は示す。
 どれだけ打倒されても、己は諦めないのだと。
「魂たちよ、力を貸して」
 静漓は手を伸ばす。
 生命の意味を知った。生命の輝きを見た。

 閃光の彼方に、それがあることを知った。
「踏みにじられた誇りを取り戻すために、生命がやがて冷めゆくのだとしても」
 熱が生まれる。
 これまでの経験が、これまで紡がれてきた者たちの言葉が、叫びが、魂が。
 此処に結実している。
「心の炎は消えはしない」
「いいや、熱は冷めゆく。どんなものも、生命は骸の海へと行き着く。そして――」
「これまで出会ったオブリビオンたちが教えてくれたわ。残穢であっても、失われないものはあると……!」
 叫ぶ。
 その叫びは、怨嗟の叫びを反転させる。

 これまで猟兵たちが語りかけた魂は、鉄人形の冷たき駆体の中で熱を失っていた。
 されど、冷えたということは、嘗てそこにわずかでも熱があったということ。
 熱は、『意志』。
 ならば、呼びかけに応える魂がある。
 一人では出来ないこと。多くの猟兵たちんの真摯なる飛び掛けがあったからこそ、静漓は己が心のオーラを矢に込める。
「失われていくばかりのもの、それが生命だ。なのに、何故」
 諦観に塗れない。
 憂いに塗れた魂が満ちている『殲機鋼鉄共栄圏』であるというのに。

 答えは単純だった。
 己の手を引く者たちがいた。
「疾く、ただそれだけよ」
 放たれる矢は、結実した人々の『意志』を宿し、紡がれてきた猟兵たちの言葉を乗せて『イティハーサ・零號』の体躯を貫き、その鋼鉄の駆体と共に『殲機鋼鉄共栄圏』に満ちた怨嗟の叫びに報いるように光へと変えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月22日


挿絵イラスト