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帝都櫻大戰⑯〜 涅槃を貫く雷

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第二戦線 #神王サンサーラ #碎輝

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 いきなり現れた三角テントが山本親分の使いだって言った時はビックリしたが、世界と山本親分のピンチだって事は良ーくわかった。
 だから二つ返事でテントの中に入ったら、だ。
 いつの間にか、やけに豪華な建物が立ち並ぶ奇妙な場所に居て、しかも俺の身体が俺の姿のまま、雷が集まって出来た様な奇妙な体になっていた。
 確か、猟兵の誰かが言ってた気がする。此れが電脳空間ってやつなんだろうな。
「私の放つ骸の海は無限に広がりゆく。それを阻む術は無い……」
 だがそんな事よりも、だ。
 目の前では逃げ惑う人々が居て、その先には何か神々しい奴が、昏く淀む骸の海を何処までも広げてると来たもんだ。
「あ〜、なるほど。だから山本親分は俺をここに……」
 コイツを突破するのは並大抵の方法じゃどう考えても無理で。
 だからこそ山本親分は俺に頼ったって訳だ。
 だったら、難しく考える事なんてないな。
「悪いが俺は、世界最弱の『お前を止められる男』なんだ」
 山本親分が困っていて、助けてほしいって言うなら俺はいつだって駈けつけるぜ。
 そうすりゃ友情も護れて、世界も護れる。
 今日を超えて、明日が来るって訳だ!
 これってそういう話だろ?
「元に戻れるかな……だが、やるしかないな!!」
 それに、一人で戦う訳じゃない。
 こういう時に、一緒に戦ってくれる奴らを俺は知ってるからな!

「オーダーは簡単で単純明快。キャンピー君の力でサイバースペースに降臨した竜神親分『碎輝』が、同じくサイバースペースに降り立った神王『サンサーラ』の『骸の海を無限に広げる能力』を超えるまで成長するのを待って、神王『サンサーラ』を叩くだけだよ!」
 集まった猟兵達に笑顔を向けて、シーネ・クガハラ(ただいまB級テンペストプレイヤー・f01094)は現在のサイバーザナドゥの状況を説明していた。
「いや実際、そうとしか言えないのよね。私達のユーベルコードでどーにかなるか?って言われると、ちょーっと厳しいというかなんというかなので、無限に成長する碎輝のにーさんにドーンと一発やって貰うのが一番良いんだよ。そういう訳でなんとしても守って、成長するまでの時間を稼いでくれい!神王『サンサーラ』も、自分を止めてくれる事を願ってる訳だし!」
 神王『サンサーラ』の無敵の様に思える能力だが、彼は「完全に無傷の状態」で無ければ顕現する事が出来ず、少しでも傷を付ける事が出来れば一旦撤退するとの事だ。
「そーいう訳で碎輝のにーさんを助けに行くぞー!皆頑張ってねー!!」


風狼フー太
 固定値の無限と成長し続ける無限なら後者の方が勝つんだよ!とかなんとか。
 閲覧ありがとうございます。風狼フー太です。

 プレイングボーナス:弱い状態の碎輝を守って戦う/強力に成長した碎輝と協力して戦う。

 プレイングボーナスは上記の通りです。
 無限に広がる骸の海を猟兵達の力だけで突破するのは困難を極めます。なので、先ずは神王『サンサーラ』の攻撃を防ぎつつ、竜神親分『碎輝』が骸の海を突破できるまで成長するのを待ちましょう。
 なおシナリオの内容的には、成長しきった碎輝であればサンサーラを一人で倒す事も出来なくはないでしょう。
 ひたすらに彼を守って援護して、後は彼にお願いして後ろで応援する等のプレイングもアリといえばアリです。合わせプレイング等が無いと使いどころに困ったりする援護系に属するユーベルコードの使い時かもしれません。

 それでは皆様の素敵なプレイングをお待ちしております!
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第1章 ボス戦 『神王サンサーラ』

POW   :    サンサーラディーヴァ
自身の【眼前】を【広大無辺の仏国土】化して攻撃し、ダメージと【神王サンサーラへの到達不能】の状態異常を与える。
SPD   :    サンサーラノヴァ
【かざした両掌の間】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【五感封じ】の状態異常を与える【神王光】を放つ。
WIZ   :    強制転生光
レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1m以内の全てを消滅させる【サンサーラの光】を放つ。発動後は中止不能。

イラスト:ぽんち

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夜刀神・鏡介
竜神親分を守って戦え……か。言葉にすれば簡単だが、実際はそう容易い話でもない
だが、やらなければ勝てないというなら。なんとかやってみるしかあるまい

神刀の封印を解除。神気を纏う事で身体能力を強化して
碎輝はひとまず一緒に動いてもらう事にする。俺の少し後ろに立ってもらい
強制転生光の狙いを見定めて、一緒に躱してもらう

しかし。攻撃は秒間一発なので弾幕で殺されることはないにしても、避けてばかりじゃ万が一もある
敢えて立ち止まり、精神統一。その光を断つ――絶技【無為】

触れれば消滅とは言っても、その力は神仏によるものであり
此方の得物も神の名を冠するもの。つまり同格であるのだから、後は技量の勝負

きっと守ってみせるさ


天御鏡・百々
異教の神よ
望まぬ侵略、我らがここで止めて見せよう

碎輝殿が成長しきるまで守り切れば良いとはいっても
これほどの存在相手に耐久とはなかなかに骨だな
しかし、やるしかあるまい

強力なれど光ならば相性は悪くない
放たれしサンサーラの光を『幻鏡相殺』にて相殺するぞ

ユーベルコードのみで抗し切れぬようであれば
持ってきた普通の鏡を念動力で操り反射を試みるぞ

初撃さえ何とかなれば、以降は幻鏡相殺の成功率も上昇する
困難ではあるが、なんとしても碎輝殿を守り切って見せようぞ

(※本体の神鏡へのダメージ描写NG)


凶月・陸井
妻のシリル(f35374)と

無限の骸の海の対処
確かに俺達だけでは無理だ
だけど彼らの覚悟に応える為に
俺達にできる事をしよう

まずは碎輝にシリルと挨拶しよう
猟兵と名乗りを上げてから前に出て
「護る事なら任せてくれ」
シリルは風の加護、俺は全力の攻撃で
骸の海を迎え撃って時間を稼ぐよ
「シリル、此処は任せたよ」

【水遁「霧影分身術奥義」】を使用
まずは分身の高速突撃で敵の勢いを止め
分身を散開して敵の注意を引き付ける
シリルの加護があるから多少の無茶も大丈夫
傷を負っても分身が減っても再度使用して
「さぁ、俺達は此処だ!」

稼ぐのに必要な時間は背中の気配で解る
その時が来たと感じたら道を空けて任せるよ
「最高の一撃、頼むな」


シリルーン・アーンスランド
夫の陸井さま(f35296)と

碎輝さまのお覚悟山本親分さまのお志
しかと拝見いたしました
痛苦を厭わず立つお覚悟に報いたく存じます

「碎輝さま!」
陸井さまと参り猟兵でございますとご挨拶
御身のお護りを致しますとお伝えし
UC護り風の翼を詠唱致します

碎輝さまにはシルフィードの風翼の纏い
傷は風果を召し上がれば癒えますとご説明を

陸井さまと自分にも掛け持久戦にございます
「お任せくださいませ我が背の君!」

陸井さまのお護りも頼もしく
風果を使い果たさば掛け直し
ただご守護を旨に
声掛け合い死角を補完し専心致しましょう

ああ…雄々しく逞しきお姿が!
お戻りも必ずお手伝いをとお声掛けし
お見送りを

必ず勝たれますわ
間違いはありませぬ


雪華・風月
柳緑花紅よろしくお願いします!
神王光、ダメージまであるのか知りませんが
武刃息災…状態異常を反射するUC五感封じを反射させて頂きます…

向こうが五感封じにて狙いが甘くなれば回避もしやすくなりましょう
時に碎輝さんと躱し
難しければ『霊的防護』、霊力を纏いダメージを抑えれるようにして碎輝さんの盾となりて守ってみせます…

はい、このようにわたし達の世界の戦争に他の世界も巻き込み
更には多分成長後には戦力として使い物にならないのでサンサーラを任せてしまうことになるのは大変心苦しく…
ですがサクラミラージュの民として他の無辜の方々のためにもお力添えよろしくお願いします


空桐・清導
POW

「1人に任せきりってのはオレ好みじゃねえ!
一緒に無限の骸を踏破しようじゃねえか碎輝!」
UC発動
黄金の[オーラ防御]を碎輝に分ける
そんなことをすれば防御力が下がる?
否!
「無限の[気合い]と[根性]![勇気]で補う!
オレのUCはそういうものだ!」
無限成長は碎輝だけのモノじゃない
オレも無限強化できんだよ!
迫り来る骸の海を真正面から殴り裂き、
碎輝が成長するまで護る
「それなら戻ってこれそうだな!力を合わせて突っ込むぞ!」
無限の強化に無限の[限界突破]を追加
骸の海をサンサーラの元まで拳で引き裂いて道を切り開く
「決めるぞ碎輝!
超必殺!インフィニティブレイズパンチ!」
究極に輝く拳と雷槍を奴に叩き込む!


栗花落・澪
碎輝さんには、色々お世話になったからね
遊んでもらったりもそうだけど
体の事、相談に乗ってもらったりとか

だから
碎輝さんが友情や世界を護るなら
僕が、僕達が碎輝さんを護る

例え元に戻れなくとも、碎輝さんが決めた事なら
僕はそれを信じるから

念のためオーラ防御を纏いつつ翼の空中戦
少ない魔力で大量に増殖させた鎌を壁のように自在に操り
刃で反射させるようにして神王の放つ消滅の光を防ぐ
鎌だったら消されたところで何度でも補えばいい

消費が少ないとはいえ魔力が削られる事に変わりはないから
長引き過ぎれば限界は来るかもだけど
その時は魔力の代わりに命を削ってでも
気力で耐えてみせるよ

信じて託すのも強さでしょ
負けず嫌いなんだ、僕



 無限に広がり往く骸の海がサイバースペースから広がり、サイバーザナドゥの世界を徐々に、しかし確実に破滅へと向かわせてゆく。
 己が過ちの続きを、何も出来ずただ滅ぶ世界を見る事しかできない現状を両の眼でしかと見ながら。
 元凶たる神王『サンサーラ』は骸の海の中心に座し、失意の底で項垂れていた。
「なんという事だ……これでこの世界も終わりを迎える」
 自身の体でありながらオブリビオンと化した身体は自由が利かず「骸の海を無限に広げる」ユーベルコードによって、骸の海は今も絶えず広がり続けている。
 無限に骸の海を広げる力を持つ自分に敵う者など居るはずもない。
 そう思い落胆し、だからこそ。
「悪いが俺は、世界最弱の『お前を止められる男』なんだ」
 その言葉を聞いて、目を見開いた。
 金色の光を放つ者が。その彼に寄り添う者達が、骸の海を止めんとばかりに立ち塞がっているではないか。
「私を……止めようとする者が居るのか」
 一瞬、僅かに沸き上がった歓喜。だが自分の身体は意思に反して、邪魔をする者を排除しようとユーベルコードを放たんとしている。
「いかん……!」
 そうはさせぬと全身全霊を込めて止めようと試みる。
 だが、恐らく暫くしか止められない事は分かっている。
 その様な自由に動かない身体を忌々しく思いながら。
 ただ祈る事だけしか出来ないのが余りにも不甲斐無く思いながら。
 それでもサンサーラは祈らずにはいられなかった。
 自らの世界と同じ様に、これ以上世界が滅びる事など許容できるはずもないのだから。

 一方、その頃。骸の海を挟んだ対岸では。
「来ると思ったぜ!お前達!!」
 来るとは信じていた。
 それでも目の前の状況故、険しい顔をしていた竜神親分『碎輝』は破顔の笑みを浮かべて猟兵達に向き直った。
「まあ、碎輝さんには色々お世話になったからね」
 今までの思い出を奏でる様に栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は此処に立っていた。
 遊んでも貰った。相談にも乗ってもらった。
 沢山の思い出を、彼から貰ったのだと。
「だから、碎輝さんが友情や世界を護るなら僕が……」
 そこまで言って、澪は首を横に振る。
「僕達が碎輝さんを護る」
 例えこの先がどうなろうと、碎輝が決めた事なら信じると心に秘めて。
「猟兵のシリルーンでございます。夫の陸井さまと共に参りました」
「改めて陸井だ。護る事なら任せてくれ」
 その後ろからシリルーン・アーンスランド(最強笑顔の護り風・f35374)と凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の夫婦猟兵が声を掛ける。
「碎輝さまのお覚悟山本親分さまのお志、しかと拝見いたしました。痛苦を厭わず立つお覚悟に報いたく存じます」
「俺たちだけでは無理だが、彼らの覚悟に応える為に俺達も出来る事をしようと思っている」
「そう謙遜すんなって!お前らなら俺が居なくても何か方法を思いついてたんじゃねーの?」
 まるで世間話でもするかの様に、お互いがお互いの覚悟を確かめあう。
 それが今から起こる戦いの激しさを物語っているかのようでもある。
「申し訳ない。このようにわたし達の世界の戦争に他の世界も巻き込み、更にはサンサーラを任せてしまう事になるのは大変心苦しく……」
「あー、良いって良いって!ほら、仲間を助けるのって当たり前の事じゃん?」
 己の世界から始まった事、そしてこの戦いの事を任せっきりにしてしまうと悔やむ雪華・風月(若輩侍少女・f22820)に、気にするなとばかりに碎輝が風月に声を掛ければ。
「そうだな!だからこそ1人に任せきりってのはオレ好みじゃねえ!一緒に無限の骸を踏破しようじゃねえか碎輝!」
「おう!やっぱ、これから戦うっていうならこれ位の意気じゃあねぇとな!」
 本人にその気がなくとも、風月を励ます様な熱さの籠った空桐・清導(ブレイザイン・f28542)の言葉に碎輝は頷き返す。
「竜神親分を守って戦え……か」
「碎輝殿が成長しきるまで守り切れば良いとはいっても、これほどの存在相手に耐久とはなかなかに骨だな」
 一方、離れた所で彼等のやり取りを見ていた夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)と、天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は、今から行う事の難しさを頭の中で反芻していた。
「言葉にすれば簡単だが、実際はそう容易い話でもない」
 言うは易く行うは難しとはまさにこの事か。
「やらなければ勝てないというなら、なんとかやってみるしかあるまい」
 鏡介の言葉に百々も首を縦に振る。
 何であろうと、やらねば世界が一つ滅び去るのであり、今までもどうにか世界を守ってきたのが猟兵という存在なのだ。
「そうか、やはり私を止めようというのか」
 そして。彼等の決意を前にして、最早余り刻はないとばかりにサンサーラは猟兵達、そして碎輝へと声を投げかけた。
「今ならまだ間に合う。私が私を抑えている間に離れれば、其方達に被害が及ぶ事は無い」
「だが、そうしたらこの世界は滅んじまうんだろ?」
 そう言って返す碎輝の言葉に、俯くサンサーラの返事はない。
「異教の神よ。望まぬ侵略、我らがここで止めて見せよう」
 代わりとばかりに、百々が不退転の言葉を口にした事で。
「分かった。其方達の心尽くし、とても嬉しく思う」
 サンサーラもまた、覚悟を決めた。
 目の前の存在を消し去ってしまう可能性が生まれようと、僅かにでもこの世界が救われるのならばと。
「もし……出来るというのであれば、頼む」
 声をかけあえる程に近い筈なのに、サンサーラの姿が遠くにある様な『無限』という壁が彼等を別った。
「僅かでいい。私に傷を付けるのだ」

 始めに光があった。
 だが世界を照らすような光では、もうない。
 来世への転生を強制する光。
 即ち、全てを消滅させるサンサーラの光が電脳の世界を穿ち始め。
 そして小学生の姿をした碎輝へと襲い掛かり――。
「風翼の加護ぞあれ!」
 先ずは狙われた碎輝へ。続けてこの場にいる猟兵全てに。
 詠唱を終えたシリルーンの持つ風の加護が舞い降りてゆく。
「あっぶね!助かった!!」
 体がまるで翼が生えたが如く、軽く自由自在に動く。
 集まった風が壁となり、光に飲まれて消えながらも、ほんのわずかに光の軌道をズラす。
 そうして何とか避けた碎輝を中心として、猟兵達は陣を組んだ。
「シリル、此処は任せたよ」
「お任せくださいませ我が背の君!碎輝さまに皆様!怪我を負われたら風の果実をお食べください!傷が癒えます」
 そうは言って、果たしてあの光を浴びて怪我で済むのかと内心、思ってしまう。
 だが、己が夫が任せたと言ったのだ。ならば出来る限りの事をするだけだけだと奮い立つシリルーン。
「ひとまず一緒に動いてもらうぞ碎輝」
「ああ、わかっ――おおっ!?」
 素っ頓狂な声を上げて、致命的なまでに碎輝の足が縺れた。
 走っている最中に小学生の姿から一気に高校生の姿に成長した碎輝。
 だからこそ足の大きさも長さも一気に成長し、足の底で地面を蹴りそこなったのだ。
「その光を断つ」
 情け容赦なく碎輝を焼き払わんとする光。
 その間に割って入ったのは、神刀の封印を解除し神気を纏った鏡介だった。
 彼の扱う絶技【無為】は、力の流れを見極め根源を断つ太刀筋。
 それ故、一度見たユーベルコードであれば、切るのはたやすく。
「我が刃にて」
 一閃。刀を縦に振るい、光が二つに割れる。
「此方の得物も神の名を冠するものであるなら、何とかなると思ったが、無事だな?」
「おう。迷惑掛けてワリィな!礼は成長しきってから返すぜ!!」
 兎も角、危機は脱したが未だに未だに光は猟兵と碎輝を滅ぼさんと放たれている。
 無策のまま逃げ惑えば、先程の様な事が怒らないとも限らない。
「でも、要は光何だよね?」
 だからこそ備えは必要だと。
 桃色を放つオーラを身に纏い空を跳ぶ澪の言葉と共に、ユーベルコードで創り上げた、無数の紅色に澄んだ美しき鎌が猟兵の周りを漂い始め。
「強力なれど光ならば、我の相性は悪くない」
 百々もまた、持って来た鏡を浮かべる。
 鎌と鏡。煌めく二つの壁が、サンサーラの光を反射するべく立ち塞がったのだ。
 それでもなお光はサンサーラの意思と、彼の体を取り巻くオブリビオンの本能を受け付けず放たれ続けるが。
「幻なれど鏡は鏡、映りしは鏡像なれど同じ力、相殺できぬ道理はあるまい」
 幻鏡に映したユーベルコードと同じ力を扱う事の出来る百々が召喚した幻鏡に映せば、幻鏡もまた光を放ち、破滅の光が互いに互いを喰らい尽くして消えてゆく。
「そうか……我が滅びの光への備えは万全であるか」
 その様子を見て、安堵の声を漏らしたサンサーラの身体が破滅の光を放つのを止めた。
 またしても己が意思に反して動き、代わりとばかりに胸の前で印を結ぶ。
「次はこれか。済まぬ……五感を封じる我が光、耐えてくれ」
 先程までの鏡に反射したかの様な、直線に進む光もまた光なれば。
 部屋の灯が辺りを照らし出すのも、また光。
 此れならば反射されようが構わないと真言を唱え始めたサンサーラの印の間から、戒めを与える光が広がり始め猟兵達を覆い尽くさんとする。
「柳緑花紅よろしくお願いします!」
 その光を前に、大太刀を前に突き出して両手に持つ風月がいち早く飛び出した。
「武刃息災。状態異常を反射するユーベルコード。五感封じを反射させて頂きます!」
 そう風月は言うが、サンサーラが広げている骸の海と彼が操る無限の壁が反射の力を弱め、霧散させてしまいサンサーラに届く事は無い。
 それでも、呪詛返しにより戒めの光が広がる速度は弱まっている。
 真言の力を何かで引き受ければ、光の速度は遅くなる様であり。
「成程。ならば」
 水が、陸井の掌から水が零れ落ちて、姿形を作る。
「水練忍者の奥義、御照覧あれってな」
 現れたのは水で作り上げた150を超える陸井の分身。
 その全てが、少しでも光の侵攻を少しでも遅らせるべく突撃し、散開してゆく。
「さぁ、俺達は此処だ!」
 次々に光に飲まれてゆく分身達。それでも、もう一度とばかりに水が分身を作り上げる。
 水が尽きれば、愛する妻が実らせた風の果実を貪れば傷が治ると、掌を斬り血でもって分身を創り上げた。
 他の猟兵も同じである。魔力が尽きれば命の力にすら手を出し、碎輝を守らんと奮闘する。
 ――例え、精魂尽き果てるとしても。稼いだ時間は必ず勝利に繋がると信じて、ただ信じた。
 それでもサンサーラの光の数々は、間違いなく猟兵達の命を削ってゆく。
「人の住む世界を、コイツ等は、なんだと思ってるんだ!」
 人々の安寧を脅かす、広がり続ける骸の海も脅威その物も脅威だ。
 正義と怒りを込めた清導の拳が何度も刺さり、ほんの少し広がる速度が遅くなり、世界の破滅がその分だけ遅くなる。
 つまる所これは、ゴールが何処にあるのかも分からない中、永遠と砂漠の中を走り回る様な行為に等しく。
 サンサーラの光が猟兵達を押し込むたびに。電脳世界から漏れ出した骸の海はサイバーザナドゥのハイウェイを、ネオンにギラめく街を、僅かに残った人の済む場所を蝕んでゆく。
 それでも。だからこそ。彼等は諦める事無く、立ち向かってゆく。

 だが、やがてそれも、遂に終わりが来た。
 まるで恒星が爆発でもしたかのような、圧倒的な光量を放つ雷が猟兵達が守り続けてきた方から、サンサーラの光と骸の海を貫いたのだ。

 俺の体だってのに、俺の心だってのに。
 俺の思い通りに成長しない自分がもどかしかったけど。
 アイツ等が稼いでくれた時間が。一分、一秒の時間が。
 俺の中で血となり、肉となって行くのが良く分かっていた。
 アイツらは、こんな最弱の俺を信じて此処までしてくれたんだ。
 だったら応えなくちゃいけない。
 そうでなきゃ、最強の竜神親分としての名が廃る。
 そして何より、だ。
 もう、山本親分達にアイツらを友達とは呼べなくなるからな!

 それは。
 見上げるばかりに巨大な身体をしたドラゴンであった。
 電脳世界たるこの世界を喰らいつくし、それでもなお成長を続けてゆく程に巨大な。
 未だに成長を続ける金色の光を放つドラゴンであった。
「待たせたな、皆」
 生えそろう牙はあらゆる生物を易々と食らうだろう。
 それでも、その顎が笑みを浮かべて、出てきたのは聞き知った声。
「ワリィ。手間取っちまった」
 まさしく竜神の名にふさわしい姿に
「ああ……雄々しく逞しきお姿が!」
 シリルーンの声が微かに震えたのは歓喜か。或いはその神々しさ故か。
「お戻りも必ずお手伝い致します」
 そう言って、一歩彼女が後ろに引けば。
「勿論、俺も手伝う。最高の一撃、頼むな」
 夫たる陸井もまた、彼女に倣い碎輝へ道を譲る。
「サクラミラージュの民として他の無辜の方々の為にも、お力添えよろしくお願いします」
 ふらつく足取りだが、それでも礼を失してはならぬ、と。
 頭を下げた風月に鋭い爪を持つ親指が一本、天を差して碎輝が答える。
「自分でどうにか出来ないのは悔しいけど、信じて託すのも強さでしょ」
 例え弱々しく見られようと。奇特な目で見られようと。
「負けず嫌いなんだ、僕」
 男の娘にだって、私にだって意地は有るのだと。
 電子の世界が生み出した塵にまみれて、煤だらけな顔を何処かしかめっ面で、キリっと上を向いた澪も金色の竜を送り出す。
「後は頼んだ碎輝殿」
「世界を守ってくれ」
 百々に鏡介の期待を込めた言葉に頷き返した碎輝は。
 改めて、サンサーラの方へと向き直った。
「其方……その力は、何者なのだ」
「俺は俺さ。世界最弱で弱っちくて」
 瞬間。ただサンサーラへと突貫する碎輝。
「世界最強になれる男。竜神親分『碎輝』だ!!」
 それだけで、空気が爆発した。電脳の世界から光が消え、稲妻が走った。  
 骸の海を身体から漏れ出す雷で焼き払いながら。
 黄金に輝くドラゴンが、神の王に挑まんと疾走する。
 その後ろから。
「1人に任せきりってのはオレ好みじゃねえ!」
 真紅の機械で出来た鎧を纏った清導が碎輝を追いかけており、自らを守る筈の黄金のオーラが彼の体を守る様に覆い尽くす。
「一緒に無限の骸を踏破しようじゃねえか碎輝!」
「良いぜ!ついてこれるなら、一緒に来い!」
 しかし、果たしてである。
 爆発を起こす程に早く、速く。彼等はサンサーラへと近づいている筈である。
 だというのに辿り着く事が無い。
「私の王国、サンサーラディーヴァは無限の国土を持つ」
 目を伏して。罪を告白するかの様に。
「それが私を中心として周囲に顕現させているのだ。私に届く事はない……」
 嘗て収めた王国、その無限に広がる国土の概念を呼び寄せたのだと語るサンサーラ。
 その言葉に偽りなく。彼我の距離は言葉が届く距離にして、一方に差が詰まる事は無い。
 だからこその無限であると言わんばかりに。
「それがどうした」
 だからといって。諦める者等、この場に一人としては居ない。
「人の意思だって無限の力を秘めているんだぜ!!」
 たった人一人分程の距離しかない、広大な空を碎輝が飛ぶ。
 たった人一人分程の距離しかない、広大な大地を清導が奔る。
 既に骸の海に侵された大地は容赦なくこの世界を渡る者を蝕まんとするが、それでも。
「決めるぞ碎輝!」
 星に手を伸ばさなければ、掴める物も掴めないのだと。
「超必殺!インフィニティブレイズパンチ!」
 清導の光り輝く拳が目の前に居て、届く事のないサンサーラへと叩きこまんとする。
 それでも。
「……やはり、駄目か」
 人の意思は無限ではないのだと。
 嘗ての私がそうであったようにと。
 無限という壁が、サンサーラを守っている。
「駄目じゃあないさ」
 再び、ドラゴンと化した碎輝の身体が成長する。
「俺は。いや、此処に奴ら全員が。今日より明日を願って、成長する奴らばかりなんだ」
 それに合わせて雷がより一層、幾重にも重なって光を発する。
「アンタ一人の無限より、俺達の無限を。力なく滅んじまった無限より、今を生きる成長し続ける無限を!」
 此処に居る誰もが守り抜いて輝きを取り戻した希望。無限の世界すら喰らいつくすほどの雷が。
「信じろよ!負ける訳ねぇだろうが!!」
 今、滅んだ世界を覆いつくした。
 
 それはまさにビックバンさながらともいえる様な。
 新しい星でも生み出そうかというような、そんなエネルギーを秘めた稲妻であった。
 そんな物を繰り出しては、このサイバーザナドゥの世界すら壊しかねないだろう。
 だが、サンサーラ覆う無限のサンサーラディーヴァはそれすら呑み込んだ。
 呑み込んで、呑み込み続けて。
 その薄皮一枚ほど上回り。
 無限の、ほんの少しの無限が剝がれ落ちる。
 そんな感覚が猟兵達を襲った。
「お、おお……」
 それは何より、サンサーラ自身がそれを証明していた。
「血だ……」
 座禅を組み、印を組む。その指先の一つから僅かに。
 血が流れ出していた。
 微かに焼き焦げて、血を流していたのだ。
「私の身体に、傷が」
 まさに文字通り。それが皮切りとなって。
 サンサーラを包んでいた骸の海が還ってゆく。
 サンサーラと共に、過去の底へと還ってゆく。
「救われたのか、この世界は」
 その顔は安堵に満ちた表情で。険しさの取れた慈しみの籠った顔をしていて。
 それこそが、彼の本質である事は言うまでもないのだろう。
「済まない……いや、ありがとう。命を賭して私に挑んだ者達よ」
 完璧を失ったサンサーラは、その体を現世に維持する事はなく。
 骸の海と共に、その体を沈めてゆく。
「私は、確かに希望を見た」
 何れまた、何処かの世界に彼はまた現れるのかもしれない。
 それでも、そうであってもである。

 きっとまた。自分を止める物が現れる。
 その事が、何よりも。
 此処に居る全ての者にとっての、希望であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月18日


挿絵イラスト