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帝都櫻大戰⑱〜無限の欲望は天をも貫く

作者：OHAGI

●コンコンコンついに完全稼働！
　あるところをコンコンコンと叩けばアイテムが出てくる。キマイラフューチャーお馴染みのシステムである。

「システム・フラワーズ始動！　キマイラフューチャー、フルオープン！！！」

　ゴッドゲームオンライン『謎の黒聖者』は、幻朧桜が発生したキマイラフューチャーの街中で、このシステム・フラワーズによる「コンコンコン」を完全な形で使用してみせる。
　何故か、彼女はどこをコンコンコンしても欲しいもの望むものを望むだけ出すことができるのだ。

　この黒聖者の「｜中の人《プレイヤー》」は統制機構で生まれ育った普通の少女で、猟兵のことも他世界のことも知らなかったという。

「私、この世界では誰にも負ける気がしません！　さあ、何でも望んでください。あなたのご希望どおりに欲しいものを欲しいだけ、お出ししてみせましょう！」
　黒聖者は手を差し伸べる。

●というわけで
「キマイラフューチャー世界に降臨したエンシェント・レヰス『神王サンサーラ』を撃退する切り札といえる人物が彼女デス」
　グリモア猟兵の恋澄・クララ（コズミック綺羅星・f01432）はサクッと説明する。

「サンサーラについては皆さんもうご存知かもしれまセンが、かつてサンサーラディーヴァを創造した超存在でシテ、『骸の海を無限に流し込む』ユーベルコードによって、現在複数の世界が破滅の危機に瀕してイマス」

　しかし、極めて強大なオブリビオン故に、サンサーラは「完全に無傷の状態」でない限りこの世界への顕現を維持することができない。広がり続ける骸の海を乗り越え、何とかして彼に一撃でも与えられれば一旦撤退させられる。

　山本親分とキャンピーくんによって送り込まれた『黒聖者』の無限のコンコンコン能力は凄まじい。さすがにコンコンコンの設計者であるドン・フリーダムの技術レベルを超えるものは出せないが、それでも生物以外の「現在、猟兵たちが扱えるアイテム」は一通り出せるのだ。

「コレをうまく利用すれば、あるいは思いもよらない方法デ、あのサンサーラと渡り合えるかもしれないのデス☆」

　無限の欲望が生み出す、無限の……無限の……無茶苦茶でぶっ飛んだ能力である。
　キマイラフューチャーが骸の海に飲み込まれるか、それともコンコンコンのトンデモ激流によって破壊されるのか。まあ、その対策として『宮本・武蔵』も召喚されたわけだが。

　とにかくこの際、使えるものは何でも使おうではないか。コンコンコンで世界を救うのだ！

第1章 ボス戦 『神王サンサーラ』

POW   :    サンサーラディーヴァ 自身の【眼前】を【広大無辺の仏国土】化して攻撃し、ダメージと【神王サンサーラへの到達不能】の状態異常を与える。 SPD   :    サンサーラノヴァ 【かざした両掌の間】から、詠唱時間に応じて範囲が拡大する、【五感封じ】の状態異常を与える【神王光】を放つ。 WIZ   :    強制転生光 レベル秒間、毎秒1回づつ、着弾地点から半径1ｍ以内の全てを消滅させる【サンサーラの光】を放つ。発動後は中止不能。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

●時は無限に流れゆく、ゆえに。
　エンシェント・レヰス『神王サンサーラ』ーーオブリビオン化により、無限に過去を、つまり骸の海を生み出す能力を手にしてしまった。時を止めることはできない。過去は今も生まれ続けているのだ。

「もはや私にはこの力を止めることはできない。わずかでも私を食い止める手段があればーー」

　キマイラフューチャーの上空に降臨したサンサーラはかつての己を悔いながら、ポップなサイバー都市を見下ろした。

　あの『黒聖者』なる者は私を止めることが出来るのか？　彼女にあるのは底しれぬ欲望、まさに無限。そうか、彼女もまた無限か。ならばーー。

「しかし良いのか？　それこそ無限の欲望でこの世界を滅ぼしかねないが」

●無限には無限を！
　街中をコンコンコンしてまわる黒教の聖者『黒聖者』。ポコポコと飛び出すアイテムたち。
「あなたは何を望みますか？　本来欲望に果てなどないのです。それこそが人間の本質というもの。さあなんでも求めて下さい。私はあなたの願いに応えましょう」
　言葉をそのまま受け止めると、それはそれでマズイ気もするが、今は彼女を頼る他ない。
　何よりこれこそがシステム・フラワーズの設計者であるドン・フリーダムの求める人間の姿なのだ。

●黒聖者ちゃんとコラボしましょ！
「はーい、黒聖者ちゃん…でいいのかしら。よければアタシとコラボしてみない？　アナタの活躍に華を添えたいの」
　黒聖者にコラボを持ちかけたのは『GOATia』というファッションブランドのデザイナー兼界外支店長であるリダン・ムグルエギ（宇宙山羊のデザイナー・f03694）。
「コラボ、ですか？　私と？」
　目をパチクリする黒聖者。
「えーと、そうね。準備するための時間稼ぎもしておきたいわ。『ゲーミング発光する派手でパフォーマンス重視の衣装』と『マネキン』を大量にお願い」
　首を傾げながらもご希望とあれば、と黒聖者はコンコンコン。
　目立つ！　イヤでも目を引く虹色に光る衣装を身に着けたマネキンが無数！
　リダンは彼らを後方にまばらに配置する。サンサーラも思わず『なんだあれは？』と目を疑う。
　見事に「転生光」はマネキンたちへと降り注ぐ。

「さてと。いい？　これはゲームのイベント戦。それらしく衣装も新調しちゃいましょう。あなたの好みのデザインを教えてちょうだい？　あっという間に仕上げてみせるわ！」
「私の好みですか……私らしくて皆さんの欲望をより引き出すような、そんな衣装がいいですね」
　リダンは手早くデザインするとコンコンコンでクラフト開始！
『トレンドプランナー・GOATia』により仕上げられた衣装は、錯視錯覚を引き起こす催眠模様が施され、装甲強化も加わる。なんといってもオシャレだ！
　戦場に赴かねばならない最重要キャラである黒聖者ちゃんを守る。これこそがリダンの作戦であり彼女へのエールである。
「これなら「転生光」もほぼ回避できるわ！　アナタは今無敵よ……行ってらっしゃい！」
　出来に満足したリダンは、はわわと照れる黒聖者を元気づけて送り出す。
「戦いの様子はキチンと撮影しておくわ！　後でアナタにもシェアするわね」
　ウインクするリダンに「あなたのご希望のとおりに」と微笑み返した。

●無限ガチャとかすごくない？
「神王サンサーラ……間違いない。ぼくが勝てる相手ではありません。病んだ死のう。いや黙ってても死ぬんですけど。わはは。終わりだ……」
　もぅまぢむり。。｜ロクカ《ロックカット》しょ。。
　全身が召喚ガチャ石で構成された世にも珍しいクリスタリアンであるルミネラ・ジェムジェム（身体はガチャで出来ている・f41085）は、格の違いすぎるサンサーラを前に体育座りでうずくまり絶望していた。
　それはそうだ、単体でどうにかなる相手ではない。しかし今は心強い協力者がいるではないか。

「むっ。なんだか未実装の新キャラの気配！　コンコンコン……？　望むものを望むだけ……？　つ、つまり……それって……」
　そうだ。ガチャラーにとっては夢のような。

「召喚石無限配布……ってコト！？」

　ルミネラは思わず立ち上がった。こんなチャンスはそうそうない！　というかもう二度とないかもしれない。
「黒教最高！　黒教最高！　深夜2時教から改宗します！」
　コンコンコンで無限に溢れ出す召喚石の山！　山！　山！　……羨ましい。
　NにRにSSR、コモンにレアに星4星5！
「霊騎士PU全キャラ完凸RTAしちゃうぞー！」
　毎秒10連ガチャを引けば向こうのユーベルコードにも押し勝てる！
　ルミネラのユーベルコード『クリスタルサモニング』により、続々と召喚される、強さ大きさ共にランダムな霊騎士族の召喚獣たち。
　まさに無限の欲望が生み出す光景である。

　もちろん召喚演出の光はサンサーラの視線を引き寄せ、召喚獣はサンサーラの転生光によって消滅するが、それ以上の速度で新たに現れる召喚獣。

「無限には無限をぶつけんだよ！　転生光より確定演出の光の方が尊いのです！」
　召喚演出の輝きとサンサーラの光がぶつかる！　ひたすらに眩しい……。

　｜最大無限連無料召喚《アンリミテッド・ガチャ・ワークス》――！
　体は召喚石でできている。

●スレ民のみんな！　力をわけてくれ！
「ゑ？　この状態でも手に入れられるアイテムがあるんですか？」
　榊・ポポ（｜ごく普通の一般事務員《トンチキカカポ》・f29942）は叫んだ。
　ちなみにこの状態とは。脳波でメカ類を操縦するザ・昭和な見た目の超小型ハイテクリモコン『頭で動かすぞう君』で、家賃滞納者玉砕兵器『デキるロボ子』を操作し、野生の勘とダッシュでもって攻撃を回避している。そんな状態である。

「そうと決まれば黙っちゃいられないネ！」
　アイヒョーンをコンコンコンで取り出してペアリング、ひとつを黒聖者に渡して、ユーベルコード『ポポちゃん安価スレッド』と接続ゥ！

「『安価であいつをオモチャにするスレ』...っと」
　ポポは素早く入力し、ネット上の奇人・変人・暇人・鬼才へ呼びかける。
　サンサーラをオモチャに、恐ろしい文面であるがスレ民にとっては彼も玩具扱いなのかもしれない。なにより賛同者数と願いの荒唐無稽さにより強力になるユーベルコードなのだ。

　スレッドには次々とアイテム名が書き込まれていく、が。
「ア！　こら！　スレ民！　しれっと自分が欲しい奴リクエストすなッ☆」
　コンコンコンで出てくるのは、ゲーミングPCやレアカードや絶版レアプラモ等など。あっという間に山が出来た。そしてサンサーラの光に消滅される。
　これはこれで攻撃目標の分散になっているので悪くはないが。
「頼むから安価指定したやつちゃんとしたネタキボンヌして☆」
　ーーで、つよくてすごいやつが生成されたら、デキるロボ子に搭載して反撃ィ！
「死に晒せぇぇ！！」

　……としたいところだが、スレ民のアイデア次第なわけで。ポポがサンサーラへ一撃を加えるまでにはもうしばらくかかりそうである。

　待て次号！

●骸の海を抜け、未来への道を拓け！
『神王サンサーラ』のユーベルコードを回避・相殺する猟兵たち。けして押し負けてはいない。
　ならば次に続くべきは。

「ニューチャレンジャーの登場か」
　戒道・蔵乃祐（荒法師・f09466）は黒聖者に向き合うと一礼した。ワイルドな外見であるが野良プレイヤー同士のマナーは忘れない。一期一会であっても挨拶はなによりも大事なのだ。
「何処のどなたかは存じ上げませんが今はとても頼もしいです。野良同士ですが、突発レイドの協力バトルといきますか」
　いや、もしかしたらエネミー報酬とかもあるんですかね？　とニヤリと笑うと黒聖者も笑みを浮かべる。この欲望が彼女には好ましく思えるのだ。

　彼が求めたのはペイント弾を連続発射可能な高速キャノン砲。骸の海を上書きするカラー塗料を大量に発射する事でサンサーラへと到達するための道を作り出そうというのだ。

　コンコンコンで出された大量のペイン弾をありったけ仕込んだ蔵乃祐はユーベルコード『｜即影《シャドウ》』で影法師に変異する。
　狭い隙間にも入り込める能力に『闇に紛れる』と『切り込み』を用いて影に溶け込み、塗料の中に紛れる。

　そうしてペイント弾で作り出された道、『広大無辺の仏国土』を塗り潰す極彩色の海を泳ぐことで「到達不能」状態異常を回避し、骸の海を突破する作戦だ。

「どうかお気をつけて」
　黒聖者は祝福を与える。宗派は違えど同じ宗教家であり『野良同士』である彼を送り出した。

「はっはっは、妾のキマフュで随分とエモい悪事をぶちかましてくれるではないか、歓迎しよう！」
　邪神の風格を漂わせ不敵に笑うのはキマイラの御形・菘（邪神様のお通りだ・f12350）。
「ならば！　最後は妾にボコられるまでがお約束であると知るがよい！」

　それと黒聖者はキマフュを存分に楽しんでくれよ？　と邪神は客人たる黒聖者をもてなすことも忘れない。
「はい、それはもう。キマイラフューチャー世界は素晴らしいですね。人間の果てることのない欲望を全肯定するかのようなこのシステム。さあ、コンコンコンで何をお出ししましょう？」
　聖女のような微笑みには溢れんばかりの欲望が見え隠れする。

　面白い娘だ。
「ふむ、では超高性能なマイクやアンプ、スピーカーなどを出していってもらおうかのう」
　希望どおりの品々がずらりと並ぶ。

　妾がやることは、とてつもなく単純な力押しだ。だが、妾がやればそれは絶対的な必殺！
　本気を出した上で、科学力で限界突破させて音量を増幅させた妾の一喝が、たかが無限を消し飛ばせぬはずがない！

「「「はーっはっはっは！　きしゃー！！」」」

『｜神の専売特許《デナオシテクルガヨイ》』
　菘は大きく息を吸い込むと全身全霊でもって大音声の一喝を叩き込む。それは衝撃波を伴ってサンサーラの「転生光」を相殺していく。

「全部消せるとは思わんよ、道ができるほどで構わんさ」

　大音声の一喝で拓かれた道を邪神は全速で駆け上がる。

「黒教の教祖……誰でどんな目的があるかは分からんが、協力してくれるというなら拒むまい」
　夜刀神・鏡介（道を貫く一刀・f28122）は謎の黒聖者に警戒しつつも、協力者であるならば今はそれ以上は考えまいと意識を集中させる。
　自身がなすべきは降臨した『神王サンサーラ』の撃退である。

　鏡介は神刀の封印を解除した。神気が全身を纏い身体能力が強化されていく。

「（敵ユーベルコードの範囲は眼前。単純に視野であれば範囲は180度以上だが、実際に影響を及ぼせるのは恐らく有効視野。つまり30度程度）」

　距離がどれくらいかは分からないが視界内どこでもという事はない筈。

　黒聖者にコンコンコンしてもらったジェットパックを装着し、ダッシュで突撃する。
　近づくにつれ骸の海『広大無辺の仏国土』が眼前に広がる。
　このまま突っ切っては骸の海に飲み込まれてしまう。しかしサンサーラ本体にはまだ僅か遠い。
　その時、転生光を吹き飛ばす衝撃波が鏡介の横を掠った。菘のユーベルコードである。
　作られた道を菘が勢いよく駆け上がってくる。
　鏡介もこの道を利用しジェットで素早く海を抜けると、大きく横っ飛びをして視界から外れる。

　ーー本体は目前だ。

●そして
　強大な敵、エンシェント・レヰス『神王サンサーラ』の本体が姿を現す。全容を視界に入れることが難しいほどに巨大である。神々しく眩く、そして哀しみを湛えている。

「ここまでよくぞ届いた。汝らの健闘を讃えたい。だが無駄なのだ猟兵たちよ。私の視界に入ればたちまち骸の海に飲み込まれ、打ちすえようとすれば我が光が汝を消し去ろう」

　ジェットパックで接近する鏡介をサンサーラはチラリと見やる。視線からの攻撃を先読みで回避する鏡介。
「（まだだ）」
　そのまま視野外に抜け慎重に攻撃の機会を伺う。

「やってみなければわかるまい。さあ、邪神の左腕の一撃、全力でブチ込んでくれよう！」
　菘の左腕、絶望を粉砕し希望を掴み取るモノ。邪神は大きく振りかぶると転生光をも打ち破る勢いで、全ての力を込め神王へと叩き込む！

　怪僧・蔵乃祐もまた、ペイント弾で塗り潰した海を渡りサンサーラの視界から外れた位置に飛び出した。
「上手い位置に出れたようですね。さてやりましょうか」
　クライミングとジャンプで巨躯を駆け上がり、視界を避けながら、怪力とグラップルの重量攻撃を豪快にお見舞いする！

　二人の重厚な打撃にサンサーラの身体が揺らぐ。
　この一瞬を鏡介は逃さなかった。

　ジェットパックで加速接近し、神刀【無仭】を上段に構える。

「猛れ、剛刃一閃――参の型【天火：猛】」

　僅かに体勢を崩したサンサーラに鏡介の渾身の一撃『｜参の型【天火：猛】《サンノカタ・アメノヒ・タケリ》』が打ち込まれたのだった！

「ーーそうか。私はまだ」
　サンサーラは目を細め微笑むと、キマイラフューチャー上空から消え去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年09月14日