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帝都櫻大戰⑨〜回転を止めるな

作者：にゃあら

●地獄の特訓、その彼方
　此処は途轍もなく平和で、毎日がなんでもない不思議の国であった。時々アリスが迷い込んだり、オウガがやってきたりもしたけれど、今は愉快な仲間たちだけが住んでいる、とっても楽しい場所である。愉快な仲間たちはハッとするかのような帽子を被り、紅茶とやらをガブガブと飲み、ゲタゲタと笑っていた。そんな平穏にひとつの――いや、無数の影が差す。クラクラと唐突に生えた『桜』の美しさに大慌て。そして遂に悪魔はやってきた。おお、あの小さな小さな鉄の神の群れ――まだ、彼方の筈だけれど、このままでは――何もかもがブージャムだ！
「――特訓をする！」
　愉快な仲間たちは首を傾げた。いつの間にか目と鼻の先に、実に精悍とした女が立っていたからだ。おお、猟兵よ、君達ならば彼女の事を知っている。彼女は――最強のダークリーガー『時宮・朱鷺子』！
「民よ――この世界の小さき民達よ。君達は自分達の世界を守る為に行動しなければならない。だが、安心してくれ。君達には底知れない力が宿っている。この力を最大限活かせるよう、私と、猟兵がみっちりと仕上げてみせよう。幸いにもこの世界は常に回転している。ならば、丁度いいスポーツがあるのだ。そう――あとは分かるだろう。ぐるぐるバットだ！」
　ザワつく愉快な仲間たち。この人は何を言ってるんだろう。でも楽しそうだしいっか。ティーカップは回るものなんだし！！！

●グリモアベース
「ぐるぐるバットの時間よ！」
　は？？？
　戦争では？？？
　先程までのシリアスな予兆は何処に？？？？？
「そんなことは置いといてアリスラビリンスに行くわよ。護国鉄神零號が『小鉄神』をバラ撒いてるらしいわ。猟兵だけじゃ数的に足りないの。だから、不思議の国の『愉快な仲間たち』を『最強のダークリーガー』と一緒に鍛え上げるの。幸いな事にこの『国』は常に回ってるらしいわ。そう、ぐるぐるバットの神を彼等に憑依させれば、或いは――！」
　グリモアが輝いて。

第1章 冒険 『回り続ける世界』

POW   :    回転に逆らって進む SPD   :    回転を有効活用して進む WIZ   :    回転しないように工夫して進む 👑7 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

　説明しよう――ぐるぐるバットとは！
　アスリートアースでちょっとした話題になっている（当MS比）その他スポーツである！！！　古代バトリンピアにおいて『神と一体化する儀式』として生じたこの回転行為も現代、より万人受け出来そうなカタチと成って進化したのだ。
　ルールも説明しなければならない！
　ぐるぐるバットとは『得点性』のスポーツである。ぐるぐる回って目を回して、先にゴールした人の勝利だとか、そのようなものではないのだ！　ぐるぐるバットは『基本の姿勢』『回転している最中の美しさ』『目を回した後のリアクション』で点数が左右される。そう、たとえ三半規管がクソザコでも、リバースしてしまっても、高得点であれば十分に優勝が狙えるのだ！！！　ところでサクラミラージュの戦争ですよね？？？　しかもフラグメントアリスラビリンスですよね？？？　殆どぐるぐるバットの説明では？？？
　ええい、やかましい！
　兎も角、この国は文字通り回転している、ならいっそ、ぐるぐるバットの特訓も加えて、より『神の力』に至れるよう頑張ろうって話だ。愉快な仲間たちも実は結構乗り気である。ほら、早く力をつけないと小鉄神の群れがやってくるぞ！！！
　……よし、猟兵達も覚悟は出来ているな？
　最強のダークリーガーとして君達を最強のぐるぐるバット選手にしてやろう！！！
　地獄が始まる！！！！！


　頭部がひどく重い気がした、それは大成功の合図だ。
　徐々に徐々に落ちていく、地面が勝手に倒れてきたかのよう。
　グルグルと嗤う世界の中心で、嗚呼、君達は何を認めたのか。
　風に攫われた植物達が一斉に踊り出す、笑顔も花も咲いているサマは、偶像、その背景にピッタリではないか。されど偶像よ、今回の主役は彼等彼女等である。ならば、可愛くて格好いい偶像は相応の働きをしなくてはならない。藍ちゃんくんでっすよー！　重要視すべきはアイドル｜ユニット《●●●●》だという事だ。目を回した後のリアクションは皆様方自身の強みを魅せることになるでしょうから。そう、猟兵と最強がすべきは『基礎の基礎』の積み重ねである。アイドル活動もスポーツも何事も、はじめが肝心と謂うワケだ。回転している最中の美しさを鍛えちゃいましょう！　それでは早速サポート付きで、手取り足取り超特訓を進めると宜しい。ところで手足の無い愉快な仲間は如何すればいい？　それはあれなのでっす！　遊園地のコーヒーカップみたいにぐるぐるすれば良いのでっすよー！　まるでメリーゴーラウンドではないか猟兵、有機無機と関わらずに始まるスーフィな宴だ。成程、案外真似出来そうな、見事なぐるぐるは、とっても楽しそうだから釣られる他ない。あやややややや～！　感覚は、つかめましたか～？　掴めたと表現するよりも『捕まった』か、ぐるぐるおめめはカートゥーンめいていて、どこに目玉があるのかも判らない。……猟兵よ、私も目が回ってきたのだが？
　ルーレットだ。藍ちゃんくんが針ならば、皆様方は数字である。
　ではでは、特訓が終わったら小鉄神さん達を迎え撃つのでっす！　自分も回転しているのならお国も回転している、神の領域へと到達した彼等ならば、そう、藍ちゃんくんのぐるぐるにだってついていける。ああ、目眩とやらに、世界の流れとやらに慣れていない敵さんがドタバタと大転倒だ。足場やら景色やらがぐるぐるして、センサー、もうエラー塗れ。このエラーって🌈みたいだよね、愉快な仲間のひとりがこぼした。
　うーん、皆様、高得点なのでっす！
　やるではないか、ぐるぐるバットの選手としてスカウトしたいレベルだ。
　三半規管強めな藍ちゃんくんもちょっと目が回るかもしれない。
　時宮さんは目を閉じて頭をフラフラさせている。
　レッツダンシング？　いやいや、レッツ・ゴー・サイクロンだ。
　パフォーマンスとしても完璧である。

成功 🔵​🔵​🔴​

　絆された彼等彼女等の成長は凄まじい。
　超がつくほどの短時間、地獄のような嘔気だったと謂うのに。
　蒼白なクセに楽しんでいた。
　シャボン玉の脆弱さについては、容易さについては、最早、説明する必要も皆無だろう。されど彼等は脆いなりに、弱いなりに増え続け、塵も積もれば山となる、と訴え掛けてくれるのか。或いは、何かしらの証明とも考えられよう。拍手とやらは平等だ、応援とやらも平等だ、では『喝采』は如何に――あらゆる音と感情が一人に捧げられる、ある種の信仰。スポーツとはパラダイムシフトの連続である。越えられないと思われていた、人類史上絶対と謳われていた『壁』も誰かが突破すると、一人また一人と突破する者が増え『当たり前』と化していく。で――あれば、この身に宿った神も、神性らしき合戦も、熱病のように感染るのではないか。ああ、猟兵、猟兵が訓練相手となるならば、私はむしろ『される』側になった方が正解かもしれんな。見よ、猟兵の神々しさに愉快な連中まで咽喉を鳴らしている……。そう、難易度を下げたのは、道を拓いたのはオマエなのだ。まるで輪郭を辿るように、空間を認めてしまうように――ぐるぐるバットを遂行する。いいや、完遂したのだ。黄金色に中てられた勝負服によって世界の『回転』までもが跪く。
　逆らう術など要らない、侵蝕されたとしても、自分はこの場で回転している。
　ひどく目を回していたが、個人差で🌈塗れな愉快な仲間もいたが、訓練は上出来だ。争いを好む、好まないかは不明だが、兎も角『神』はティーカップの中でとろけているらしい。砂糖とミルクを掻き混ぜる為のバットだ、まさか、マドラーを使うなんて事はしないだろう。小さな小さな鉄の神など色とりどりな彼等にとっては只のスイカも同然である。
　――猟兵、これなら問題なく防衛出来るだろう。
　――ああ、そうだ。今度はトライアスロンで勝負してみたいな。

成功 🔵​🔵​🔴​

　前後不覚にはならない。自覚がなければ『無い』と同じだ。
　呪詛に塗れた｜回転刃《エモノ》が鋳造の際の想いを回す。
　神は存在する。それは事実だ。何者にも覆せない世界の意であり、この異を拒む事など出来ない。ならば、肯定した上で、理解した上で、尚、それを冒涜したのならば如何か。ぐるぐるバット――神と一体化する為の儀式。回転する事で、目を回す事で、彼方におわす神との同化を試みる儀式。だが――自分が使っている乗機は神を殺す為のキャバリア。真逆！！！　それに加えて如何だろう、空を覆い隠すかのような愉快な仲間たちのビッグなお顔、筆舌に尽くし難い代物を模倣しているのではないか。しかし！　故にこそ、故にこそ、その神を殺す為の回転が彼らになにがしかのインスピレーションを与えはしないだろうか！！！　ふむ……一理あるな、猟兵。では、訓練方法は任せるとしよう。最強のダークリーガーも結構乗り気だ。揺れる地に震える大気、何を恐れているのか。嗚々、ワーム！
　神を滅ぼす為に、神に類するものを屠る為に『造られた』蜷局を巻く巨躯。これが猟兵の操縦する｜夜剣大蛇《パンツァーキャバリア》であった。大蛇の如き体躯は勿論だが、何よりも特徴的なのは口腔代わりの｜部品《ドリル》。そう、ドリルだ。ロマンの極みだ。ドリルとは――ぐるぐるバット以上に、異常に、ギュルギュルと回るものだろう。よく見ろ、神を憎み果てた機械の回転を！　これから『くる』は小鉄神！　神の名を冠したモノだ、神としての驕りを誇りとしているモノだ！　故にこの刃は、この回転は――神への闘争心に燃え、なおよく回る！！！　咆哮！　何かに憑かれたかの如くに愉快な仲間たちが吼えた。最早、愉快は狂喜となり、ティーカップは荒々しい姿形へと進化した。蛇行せよ！　蛇行せよ！　ついでの轢殺だ！
　基本の姿勢も、回転の最中の美しさも、目を回した後のリアクションもない！　真逆！！！　反面教師にはならなかった。だが、代わりに、オマエは信仰めいた熱気とやらを齎したのだ。どうだ！　これが自分にできる精一杯の回転だ！　奴等が攻めてきたぞ。さあ、風穴を開けてやれ――！　おまけの｜紅茶《毒入り》だ、潤っていけ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　十人十色と言葉にしてみたところで、嗚呼、現実は七色しかないと肩を落とすべきだ。脳髄から爪先まであらゆる肉が七色に染まり、それは、人間だろうと獄卒だろうと愉快な仲間だろうと変わりない。しかし色彩は上っ面でしかないのだ。中身を覗き込んでやれば、胃袋をひっくり返してやれば、なんとも吃驚、この世には様々な食物が蔓延している――インテロゲーションマーク多いですね？？？　負けませんよ？？？　えっ何するって戦争ですよねあっし騙るんですよね？？？　語るんじゃありませんよね？？？　疑問符に塗れるのは結構だが🌈にも塗れるべきではないか猟兵、じろりと、最強のダークリーガーがオマエの反応を観察している。……ぐるぐるバットの特訓をする。つまり回れ？？？　あっはい、よろこんで！！！　ようやくエクスクラメーションだ、バットを構えよ。
　猟兵よ、数年のブランクがあるのは本当か？　私にはベテランの基本姿勢に見えるのだが……？　ええ、そりゃあっしも伊達に某水溜に長居してやせんよ。椅子の回転に始まり螺旋階段駆け上がりなんざ朝飯前！　いや、朝飯前の方が良いのではないか。食べた後でのぐるぐるバットは地獄の特訓よりも地獄と言えよう、猟兵……。あ、ところで名前聞いていやせんでしたね、あっしは紗我楽・万鬼と申しやす。そうか、初対面だったな。私は『時宮・朱鷺子』かつて時間遡行能力を持っていた最強のダークリーガーだ。おっとお喋りが過ぎましたかね見てくださいよ御犬様あっしのこの滑り出し！　独創的で芸術点も中々だな、ところで猟兵よ、御犬様とやらが急かしているが……。何早くしろ？？？　成らば不明仕込みの回転御覧ください！！！　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　観覧車も大惨事な回転速度だ、見ているだけでこっちの目が回ってくる。ほーら、見事な虹がきれいでｓｓｙ……。騙らせたのなら反芻したって味が良いもの、愉快な仲間たちに見せかけた怪異だって止まらない。回れ、れ、れれれれれ……。お、おい猟兵、そろそろ連中が攻めてきそうだ。あっわかりやした、是が所謂団体競技アーティスティックぐるぐるバットですｙｙｙｙｙｙ……。
　舌も回以下同文。噛むなんて無様は有り得ない。
　怪異の弾を一斉に発射せよ、虹の彼方は直ぐ其処だ。
　喰らうがいいですよれれれれｒ……。
　うっ……貰ってしまいそうだ。
　だが、これで愉快な仲間たちだけでも大丈夫か。

　不思議の国は特訓を受けた愉快な仲間たちによって守られた。
　ぐるぐるバットは救いなのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2024年09月11日