帝都櫻大戰③〜誰がために供給するか
●公式
「号外! 号外! 大号外!」
響き渡る奇怪なる声。
それは『帝都タワー』より降り注ぐようであったし、また同時に何か冊子のようなものが振りまかれていた。
まるで幻朧桜の花弁のようであったが、違う。
それは見事な装丁を施された薄い冊子だったのだ。
一冊一冊が異なる装丁。
つまり、中身が異なるということであった。
赤と青の熾火が幻朧桜の花弁に紛れて見えた気がしたが、多分気のせいである。
「超・超巨大|悪魔《ダイモン》ビヰムスプリッタァ、遂ニ帝都ニ姿ヲ晒ス!」
その声は『帝都タワー』から響いていた。
『帝都タワー』は世界最大級の電波塔。
「それは世を忍ぶ姿。その正体はなんと、エンシャント・レヰス|『悪魔』《ダイモン》の最高指導者、通信を司るダイモン『ビームスプリッター』、その頭部だったのです」
ダブルピースしているグリモア猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)は黒髪を揺らし薄紅色の瞳で『帝都タワー』に集った猟兵たちを見つめていた。
「御覧ください。右手に見えますは、ダイモン『ビームスプリッター』さんの『頭部』こと『帝都タワー』です。ええ、『ビームスプリッター』さんは、サクラミラージュ発生時点からずっと此処にいらっしゃったのです」
そう、世界の通信を一手に引き受け続けたダイモン。
世界統一を支える一柱。
『如何なる遠隔地へも遅延なく通信を繋ぐ』という恐るべきユーベルコードによって、それができてしまったのである。
まあ、それが号外、大号外というのは理解出来るところである。
普通に今までサクラミラージュに暮らしていた者たちにとってみれば、まさか帝都のシンボリックタワーたる『帝都タワー』が頭部であり、またあまつさえはなんかよくわからん奇怪な存在の上に自分たちが暮らしていたのである。
「いぇいいぇい。ドッキリ大成功」
ノインはおなじみのような立て看板を掲げている。
ぴすぴす。だぶぴである。
しかし、この幻朧桜の花弁と同じように舞い散っている冊子はなんなのだろうか。
一人の猟兵が冊子を拾い上げて見る。
すると、その表紙にあるのは自分かもしれないし、もしかしたら知人の猟兵の姿であったのだ!
こ、これは!?
「私が夜なべして作った同人誌です」
いえい。よく見るとノインの目の下にはクマが出来ている。
マジで徹夜で作ったというのか? 猟兵たちの同人誌を? 一人で?
「やってやれないことはないということは、やってやれるということです」
猟兵たちはノインの言葉に、はてなマークを頭に浮かべただろう。
なんで同じこと二回言った?
だが、そんな猟兵たちの疑問をぶっ飛ばすように『帝都タワー』の周囲には無数の影朧たちがひしめいていた。
しかもなんか嗚咽が聞こえてくる。
「ア゛ッ……顔良゛!ん゛っ……!!」
「らいしゅき! 尊すぎりゅ! むりぃ!」
「今日のコーデもバチクソ決まりまくってガンギマるぅ……!」
「かわちぃ……! かわちぃがすぎる……!!」
猟兵たちは困惑しただろう。
この『帝都タワー』に集まってきた影朧『同人娘』たちは、皆一様に花弁のように降り注いでいるノインのばら撒いた同人誌を崇め奉るようにして拝読していた。
感涙の涙が滂沱のように溢れ出し、こぼれだす嗚咽は語彙を失っているがためである。
感謝。
圧倒的感謝しかなかったのである。
それほどまでの感涙に塗れながら、彼女たちは『光線銃』を手にしていた。
それは『ビームスプリッター』の触手のあちこちから無限に生えているものであり、『同人娘』たちは同人誌にて感じ入った猟兵たちの尊さに押しつぶされそうになりながらも、しかし、猟兵たちの活躍を見守る天井とか壁のシミになりたいと一斉に逃げ出す。
「皆様、すでに『同人娘』さんたちに補足されております。イェッター改め、Jの鍵垢にしたようなものですね」
何言ってるか全然わからん。
つまり?
「彼女たちは強力な光線銃で武装し、しかしすでに皆様を補足し、通信に寄る情報共有で、ずーっと補足され続けるということです。この影朧たちを倒さなければ……」
そう、この戦場は制圧できない!
しかし、なんで自分たちの同人誌をノインが作ることになったのか。
「何故と申されましても……そう望まれたことですから?」
あ、こいつ! と猟兵たちは思っただろう。
望まれたことはなんでもやってしまう悪癖。それがノインなのである。
「では、いってらっしゃいませ。私は配布を頑張っております。目指せ壁サー。それが望まれたことですから」
そう言って彼女はクマの出来た目でフラフラしながら、印刷した新たなる供給をばらまくのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。
※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。
『帝都タワー』と呼ばれる世界最大級の電波塔……しかしてその実態はエンシャント・レヰス|『悪魔』《ダイモン》の最高指導者にして通信を司るダイモン『ビームスプリッター』の頭部でした。
その周囲には影朧『同人娘』たちがひしめいています。
彼女たちは皆、一様にばらまかれた皆さんの同人誌を片手に嗚咽し、むせび泣き、公式の尊さに感涙しています。
ですが、それとこれとは、話は別!
彼女たちは『ビームスプリッター』から無限に生える光線銃を手にして、皆さんを補足し、補足し続けようとしています。
公式が健康であれ! それだけを願っているのです。めちゃくちゃやりづらいでしょうが、彼女たちを倒すに必要なのは、過剰なファンサ。つまりファンサービスです。
ですが、彼女たちは光線銃で公式を撃つことよりも、公式に補足されぬようにと逃げるでしょう。
それは集団的自衛であり、容易くはありません。
どうにかこうにかして、彼女たちを過剰なファンサ、あるいは塩対応で『帝都タワー』から排除しなければなりません。
プレイングボーナス……敵の光線銃に対処する/光線銃を奪って使う。
それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『同人娘』
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POW : ア゛ッ…顔良゛!ん゛っ…(嗚咽)
非戦闘行為に没頭している間、自身の【敵でもあり、公式でもある猟兵の顔 】が【良すぎて、嗚咽。立ち止まったり、倒れ伏し】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。
SPD : ――散ッ!(公式である猟兵に察知されたので逃走)
肉体の一部もしくは全部を【同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 】に変異させ、同人エッセイ漫画とかでよくある小動物 の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
WIZ : 同人娘達…? ええ、あっちに駆けて行きましたよ。
【オタク趣味を微塵も感じさせない擬態】を披露した指定の全対象に【「こいつ逆に怪しいな…」という】感情を与える。対象の心を強く震わせる程、効果時間は伸びる。
イラスト:まめのきなこ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友
第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん
武器:漆黒風
……やりづらいったら。どうしてこうなった。
でもまあ…逃げてるのは変わりないんですよね…。
では、あえて陰海月に乗りましてー。狭い隙間に入られても、漆黒風で穿ちますし。
小動物なら…霹靂が狩りますよ?本当ですよ?今は自由行動させてますから。
どこへ行こうと、こっちも追いかけますからねー?光線銃の起動は、それぞれ見切りますし。こっちは四天霊障で歪めますし。
※
陰海月「ぷきゅ」
ノインさんのクマ、立派だったなぁ…。あ、光線銃だ。持って撃っちゃえ!
霹靂「クエッ」
うわ、獲物(小動物)だ!!狩る!雷属性結界パリパリ。
馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)はやりづらい、と思った。
それが正直なところであったし、なんていうか影朧『同人娘』たちからは敵意らしい敵意がないのも要因の一つでもあった。
「渋イケオジ、最高ッ!」
「枯れた感じ……潤いがなくなったんじゃあない、精錬されてるッ!」
「一粒で四度美味しいこの感じ! アーモンドキャラメルを超えてる!!」
彼女たちの怒号というか悲鳴というか、嗚咽っていうか、慟哭っていうか。
なんかそういう感じのあれが響き渡る姿を見て、ハの字に表情が曇ってしまう。
「……やりづらいったら。どうしてこうなった」
「……!」
その言葉に『同人娘』たちは一斉に振り返る。
「見られた!」
「公式に見られてしまった!」
「いけない、これ以上は!!」
「――……散ッ!!」
彼女たちは一斉に周囲に飛ぶ。
建物の隙間、影、あらゆる場所にどうやって入り込んだ? となるほどの速度で逃げ出すのだ。
そう、それこそが彼女たちのユーベルコード。
なんかこうよくエッセイ同人誌とかでよく見る小動物みたいな姿になってにげだしたのだ。
しかも、『ビームスプリッター』の光線銃を手にしているため、一度補足した『疾き者』の情報を彼女たちは把握して逃げているのだ。
「小動物なら……『霹靂』が狩りますよ?」
『陰海月』に乗った『疾き者』の言葉に『同人娘』たちはご褒美だけど、ナマモノへのお触りがNGだから! と謎の倫理観を持ち出して逃げ回っている。
いや、というか。
「……どこに行こうと、こっちも追いかけますからねー?」
「公式に追いかけられるとか、これは夢!?」
「……いえ、あの」
「むしろ、捕まえてほしいけれど、捕まったこの夢のような時間は終わってしまうので申し訳ないけれど逃げます!!」
独特な感性である。
彼女たちの行動論理というものが『疾き者』はほとほと理解に苦しむ。
「ぷきゅ」
『陰海月』も同様であった。
触腕がにゅっと伸びて『ビームスプリッター』の触手から生えている光線銃を手に取る。
あ、撃てる、と思った瞬間走るはビーム。
思った以上に高威力!
「きゅっ!」
「ありがとうございます! 公式からのビーム頂きましたぁん!」
「ぷきゅ~」
うわぁ。
そんな声しか出ない。だが、『霹靂』は違った。
そう、『同人娘』たちは小動物に変じた。
ならば、小動物は己の獲物とばかりに『霹靂』は街中を駆け回って『同人娘』たちを追いかけ回す。
「……本当にどうしてこうなったんでしょうねー」
『疾き者』は収拾のつかない状況。
この阿鼻叫喚の如き様相に頭を抱えるも、しかし、そのうちなんかいい具合に事態が収束するであろうと楽観しながら『同人娘』たちを追いかけ回し、その体力が尽きて、尊さの限界を超えた彼女たちが消滅するのを見届けようとするのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●WIZ
うわ、きめぇ!?
クソでけぇビームスプリッターの目の前で同人誌を漁ってる図その物がカオスじゃねぇか!
物色するのに集中してるから問題ねぇだろうけどよ…こっちと目を合わせると素知らぬ顔で本を隠してるのが何とも生々しいな、オイ
多分アレだ
見逃せば本を布教するとか言ってばら撒かれるに違ぇねぇ
そうなる前に…【ヴィジョン・ハイジャック】!
同人誌でフヒッてた内容をVR体験させりゃ、失神なり仰げば尊死なりすんだろ
追い打ちで落とした光線銃を拾って撃って、汚物は消毒すんぜ!
…で、ノインの野郎はオレをどう書いたんだよ…
おっ、ベアをリモコンで動かす短パン少年探偵か
良いも悪いもリモコン次第とか、意外と面白ぇじゃん!
「体はショタ、頭脳はジーニアス! フンフンフンッ!!」
大の大人……影朧『同人娘』たちは『帝都タワー』……その頭部であった『悪魔』、『ビームスプリッター』のお膝元でばらまかれる同人誌をかき集めていた。
いい大人がさぁ……と世間一般では言われるような醜態。
だがしかし、彼女たちは刮目する。
「外野の御意見無用ッ! この尊さは万病に効くの! いずれガンにだって効くようになるんだから! 見なさいよ、この素直になれないツンヤンデレ色素の薄い美少女ロリとショタの尊さを!!!」
ぐわッ!!
むちゃくちゃ語る。
そんな混沌を前にしてウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は、思わずうめいていた。
「うわ、きめぇ!?」
きもくない!
「いや、どう見てもきっつい。クソでけぇ『ビームスプリッター』の目の前で同人誌を漁ってる図そのものがカオスじゃねぇか!」
思わずウィルは叫ぶ。
すると、その声に『同人娘』たちは、ぴく、と反応する。
「なんか今ショタの声が聞こえた気がする」
「やばすぎんだろ!」
目と目が合うと『同人娘』は、スンッ、とした顔をする。
え、何もなかったですけど? は? 同人誌? やめてくださいよ、そんな言いがかりつけるのは。因縁ですか? 当たり屋ですか? おまわりさーん! 見たな顔をした『同人娘』たちは、あまりにもそつなく擬態する。
「いや、むりだろそれ! しかも、さっきまで集めていた本をしれっとバッグの中にかくしやがって!?」
「やめてください。乱暴するんですか、男の人っていつもそうですねっ!」
「違ぇーよ!?」
そのまま立ち去ろうとする『同人娘』。
勢いに飲まれてウィルは逃がしそうになるが、そうはさせない。
もし、ここで彼女を逃せば、布教するとかんとかいってばらまかれるに違いない。そうなった時の被害を考えてウィルは青ざめる。
「そうなる前に、ヴィジョン・ハイジャック! おらっ!お前の妄想が現実になるんだよッ!」
おらぁ! とウィルは『同人娘』を逃さず、彼女がかき集めていたショタ×ツンヤンデレロリとの……違う、ツンヤンデレロリ×ショタの本の内容をVRで体験として叩き込むのだ。
「あ、あっ、あっ、あっ……違う違う! 私は違うの! 私がショタをからかったり、いじめたりしながら甘く耳元でささやく役じゃなくって、壁のシミになりたいのぉ!!」
「あ?」
ウィルは勘違いしていたのだ。
そう、彼女たちはショタが好きなのではない!
ウィルと幼き殺人鬼の、恋が始まってるのに、始まってるのに気がついてない感じのもどかしい甘酸っぱライフを体験したいのではなく、それを見ていたいのだ!
言うなれば、第三者! 俯瞰した視点で、はぁはぁしたいだけなのだ!
どっちにしろ禄でもねぇやつである。
「……おらっ!」
ウィルはなんかビクビクしている『同人誌』へと光線銃のビームでビビビビってする。
ばさ、と落ちたウィルをモデルにした同人誌。
それを拾い上げたウィルは内容をちらっと見る。
怖いもの見たさであった。
「おっ、黒鉄のスーパーロボットを動かす短パン少年探偵か。うんうん、まあ、わかってんじゃん。良いも悪いもリモコン次第か。なんか意外と読めるじゃん」
そんなことをウィルは思いながらも、作者にファンレター出すべきかを悩むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
藤柄田・焼吾
緊張感が行方不明!
俺の猟兵の初仕事がコレで良いの?
推しに認識されるのがつらいの、わかる
擬態が浮いちゃうのもわかる…
ちょっとだけ共感性羞恥!
えっと、注目させて足止め狙うか〜
猟兵になってから使えるようになった技…ユベコを使用
出でよ、スーパーご当地ロボ!虚空に向けてビーム!
おお〜、初めて使ったけどカッコイイじゃん!
けど人数足りないから動かせない!
…めっちゃ見られてるのに恥ずかしい!
慣れない事をするもんじゃないね…テヘ…
あっ、でも逃げ足が止まってる子がいる?
なら光線銃を妖怪ブランケットさんに回収をお願いするよ
っていうか猟兵なら誰でも良いのって節操なくない?
違う?生半可な事を言ってスイマセンデシタ…
藤柄田・焼吾(陶芸検定2級・f44441)はちょっと困っていた。
いや、ちょっと困っていた、というのは語弊があるかもしれないが、まあ、大体あってるからいいでしょ、という気持ちがないのかと言われたら、多分ある。
「緊張感が行方不明!」
そう、彼はあまりの事態に目を見開き頭を抱えそうになっていた。
今、彼の目の前で繰り広げられているのは、わりと混沌そのものであった。
この世界最大級の電波塔『帝都タワー』は、超古代の種族、エンシャント・レヰスの頭部だったし、なんか触手みたいなのがうねってるし、そこから光線銃が生えているしで、大騒ぎだ。
加えて、集まってきた影朧『同人娘』たちは、幻朧桜の花弁と共に配布されている同人誌を抱えて嗚咽を響かせるばかりである。
「はぁ~……推しと推しとの関係性。このカップリングで米飯何杯でもいけますわ」
「尊さと尊さの悪魔合体。これが萌えというやつなのですわね」
彼女たちはなんか知らんが、勝手に感極まっていた。
そんな彼女たちを見て、焼吾はちょっとだけ共感性羞恥に苛まれていた。
「推しに認識されるのがつらいの、わかる。擬態が浮いちゃうのもわかる……」
でもさ、と焼吾は思うのだ。
猟兵となって初仕事がコレってどういうことなの、と。
むしろ、もっと適した初仕事があったのではないか。
こう、陶芸に冠する依頼とか、喫茶店のメニュー作成とか、なんかこう、そういうの!
でも、やってきたからには仕方ない。
なんかばら撒かれているし、長引くとなんかよくない!
「といういわけで、ユベコ、ユーベルコードの出番だぜ! 合体せよ!スーパーご当地ロボ!」
虚空に向けられたビーム。
それは空を切り裂きながら天空より舞い降りる全長45mの合体ロボ『スーパーご当地ロボ』であった!
「おお~初めて使ったけどカッコイイじゃん!」
だが、このスーパーご当地ロボの欠点は一人では動かせないこと!
そう、合体ロボの宿命!
誰でもいいから五人いないと操縦できないのである!
「え、なに、合体?」
「何かの暗喩?」
「え、つまり、そういう……ことっ!?」
どういうことだよ、と思わないでもないが、『同人誌』たちの足が止まっている。
いや違うなこれ!
なんか妄想がノンストップで合体、という言葉になんかこうよくない妄想を掻き立てられてるやつだ!
「……なんか逃げ足止まってる子がいるな? じゃあ、妖怪ブランケットさん、回収よろしく」
ひゅーって飛んでいく妖怪ブランケット。
それは動揺しまくっている『同人娘』たちの光線銃を奪い、戻って来る。
「よし、これで無力化したな。ていうか、猟兵なら誰でも良いのって節操なくない?」
焼吾の言葉に『同人娘』たちの瞳がぐわっと開く。
「違います! 誰でもいいのではないのです!! そこにいる推しが健康で生きてくれている! その事実が私達を生かしてくれているのです!」
「そうよ! 猟兵の皆様のエモさこそが私達の栄養素!」
「猟兵の皆さんをどうにかしたいわけじゃあないの! 見守っていたいの! いつまでも健康で笑ってくだったり、曇ったり、泣いたり笑ったりしていただきたいの!!!」
その慟哭めいた叫びに焼吾は、ちょっとビクっとする。
そして、ええと、と困惑した後に、漸く口を開くのだ。
「な、生半可なこと言ってスイマセンデシタ……」
いいってことよ! と『同人娘』たちはサムズ・アップしてなんかいい感じで消滅していった――。
大成功
🔵🔵🔵
八秦・頼典
●POW
へぇ、この世界にも|混苦魔決闘《こみっくまけっとう》を行う前の創作物頒布に近い概念があったんだね
ボクは恋多き君と呼ばれているだけあって恋愛物の題材に事欠く事はないだろう…果たしてノイン様はどんなボクの見聞を耳に入れて物語を綴ったか…是非とも読みたいものだね
その為にも同人娘なる貴腐人方から書を譲り受けて欲しいところだけど… 影朧と言えども女性であれば手荒な真似は避けたいのがボクの美学でもある
なので、読み耽っているところを背後からそおっと気配を消しながら近づき、【愛の狩人】で口説きながらご挨拶しよう
間近で見聞きしたボクの顔と声で卒倒してしまうかもしれないが、霊符を貼ってリスキル祓いとしよう
世に歌われるは、|混苦魔決闘《こみっくまけっとう》である。
――なんて?
「いや何、聞き間違いではないよ。知らないかい、混苦魔決闘。その名を」
八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)の言葉に誰もが首を傾げたかもしれないが、ごく一部では『やつも知っているのか』みたいな謎の黒影が不敵に笑む。
多分そんなやり取りがあった。
多分!
「創作物頒布に近い概念が、この世界にもまったんだね」
頼典は、彼の出身世界であるアヤカシエンパイアにおいては恋多き君と噂される美丈夫である。
彼を題材とした恋物語というものは噂好きな女房たちの間では結構な頻度で話題に上がるものであった。
それ故に、今更自身をモデルにされたナマモノ同人誌というものがサクラミラージュの空を花弁の如く舞うのだとしても、そこまで慌てることもなかった。
泰然自若とはこのことである。
どんなものごとであっても、どっしり腰を構えていれば動じることはないのだ。
「果たしてノイン様はどんなボクの見聞を耳に入れて物語を綴ったのか……是非とも読みたいものだね」
とは言え、花弁の如き散る同人誌は影朧『同人娘』達によって悉くが確保されている。
シュバババ! となんか凄まじい勢いで動いているのは、きっと手にした光線銃による情報共有故であろう。
マジでろくでもない使い方をしている。
とは言え、頼典はそんな彼女たちをどうにかして捉えなければならない。
「ふむ。影朧なるものとはいえ、貴腐人……おっと、貴婦人の方から書を譲り受けるのに実力行使というのはなんともいただけないものだな」
できれば手荒なことなしに御婦人がたから書を手渡してほしいものである。
それは頼典の美学でもあったのだ。
「ぐふ、ぐふふふっ!」
そうしていると、街角の奥からなにやら笑む声が聞こえる。
その声のする方に向かえば、街角の隅、奥まった路地の奥で『同人娘』たちが戦果を物色しているではないか。
「たまりませんなぁ! 見てくださいよ、この八秦のつややかなお顔の作画!」
「なんとも、これはこれは……」
じゅるり。
今の音何? よだれ拭う音じゃなかった?
気のせいである。
「おほーっ! お相手の方も大変美形! 顔が良すぎますよぉ!! こんなの昇天してしまいます!」
「はぁ、なるほど。このお相手は……」
そぉっと頼典は彼女たちの背に回っていた。
気配を消して、愛の狩人(アイノカリュウド)たる本領を発揮したのだ。
「ひぇっ!?」
「ああ、驚かないで。美しき人よ。あなたを驚かせるつもりはなかったのです」
公式が目の前にいる。
そんでもって近い!
なんかいい匂いがする!
『同人娘』たちは戸惑った。そして、卒倒してしまった。推しとの距離は適切でなければならない。
だが、頼典の距離は近すぎたのだ。
彼女たちは気絶し、バタバタと倒れ伏す。
「……いやはや。なんとも」
まあ、いいか、と頼典は己の霊符でもって彼女たちを祓い、噂される者の宿命を背負って花弁散る街を征くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
エリー・マイヤー
私は強力なサイキッカーで美貌の猟兵だと自負してはいますが…
こうあからさまに興奮されると、戸惑ってしまいますね。
まぁ、何にせよ、楽しそうで何よりです。
敵に対して言うことではないかもしれませんが。
それはそれとして、お仕事なので掃討させて頂きますね。
さて、相手は歴戦の猟兵マニア。
私の手の内は既に知られていることでしょう。
私が【念動ソナー】で敵を補足することも。
念動力で補足した相手の指をほどいて光線銃を抜き取ることも。
抜き取った光線銃を遠隔操作して攻撃することも。
きっと、予想済みなのでしょうね。
知っていても、対処は難しいでしょうけど。
淡々と処理する私を見て、果たして彼女達は落胆するのか喜ぶのか…
猟兵には美男美女が揃っている。
それは影朧『同人娘』たちにとっての共通認識であった。
顔が良すぎる。
最早凶器の一種であった。
「私は強力なサイキッカーで美貌の猟兵だと自負はしていますが……」
エリー・マイヤー(被造物・f29376)もまたその一人である。
彼女の風に揺れる緩やかなウェーブを伴った髪が、風下に立つだけで自分の顔面に当たると思えば、それはもう一生分の幸運を使い果たしてしまったかのように『同人娘』たちは卒倒しかけていた。
「な、なんだか良い匂いがします!」
「あっ、ずるい!」
「それにしても本日のコオデネヰトも素敵ですわ! カジュアルでありながら洒脱! 瀟灑! 出で立ちからも強さを兼ね備えた雰囲気が伝わってまいります!!」
彼女たちの興奮マックスな歓待にエリーは僅かに戸惑う。
というか、彼女たちは楽しそうであるのだが、なんか距離が遠い気がする。
「それだけ慕ってくれるのは悪い気がしませんが……私がこういうのもなんですが、なんです、その距離」
エリーは首を傾げた。
「ッキャー!! 首を傾げる仕草まで百点満点ですわー!!」
「いいえ! 百億点よ!!」
「あ、いや……その」
戸惑いがまた首をもたげる。
彼女たちは一定の距離を取りながら、エリーの一挙手一投足に喜んでいるのだ。
凄まじい熱量であるが、しかし距離を取っているのは、本能的なものではなく、単純に推しとの距離を図っているだけである。
近すぎると失神してしまう。
それ故に彼女たちは距離を取っているのだ。
「……これは穿った見方をしなくてもよいのでは?」
エリーは、まあいいか、と距離を詰めようとした瞬間にシュバ! と脱兎のごとく逃げる『同人娘』たちに嘆息する。
厄介というか、面倒である。
そこで、これ。
念動ソナー(サイ・ソナー)。青いたぬき型ロボットのあれのイントネーションである。
「ご存知かもしれませんが、私の念動力の波は見えず、そして躱せない。そして……
エリーの見えざる手の如き念動力が『同人娘』たちの手にした光線銃の指を離して、奪い取るのだ。
だが、その動きにすら彼女たちは感激してしまう。
「生エリー様の念動力! 触れられていないのに触れられているッ! えんっ!!」
ぶっぱ、と鼻血が噴出する『同人娘』たち。
興奮が最高潮に達した緩徐たちはエリーの念動力に触れられるだけで、鼻血を噴出して倒れてしまっている。
「……なんですこれ?」
エリーは死屍累々たる『同人娘』たちの姿を見やり、そして地面に描かれた鼻血文字『エリー様麗し』の文字に、なんか余裕あるな、と思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
弓落・高寿
…あたまいたい。ずつうがひどい。あたまいたい。こいつらなんなんだよ!
思わずゴミみてえな句を詠んでしまったが、それ程の精神的恐怖を感じたためで。
ならば逆に「かれら」を理解するため歩み寄ったらどうなのだろう。いけるいける。頑張れ我。
外見だけなら何かのますこっとのようなお供妖精ども。この状況なら自然に偵察出来よう。
あとは位置を把握した敵の背後に回り込んで何だっけ…かべどん?
おっと、その|危ないもん《光線銃》を渡してもらおうか。お嬢さん。
などと優しく囁き、微笑みかけて銃を奪い取る。
…これを全員に?いや負けるな、頑張れ我。お前の始めた物語だ。もう帰りたい。いや負けるな。己に喝。
幻朧桜の花弁散る帝都にて、一句。
「……あたまいたい。ずつうがひどい。あたまいたい」
弓落・高寿(平安京異邦人・f44072)はなんていうか、この現状を見て、そのような歌を詠むしかなかった。
眼帯に覆われた瞳の奥まで痛くなるような気がする。
彼女の目の前にて広がる光景を端的に言い表せば、簡単である。
幻朧桜の花弁と共に撒き散らされている猟兵モデルの同人誌が宙を舞っているのだ。
割りと雅である。
「んなわけあるかよ! というか、こいつらなんなんだよ!」
高寿は思わず叫んでいた。
ゴミみたいな句を読んでしまったが、それ以上に彼女を追い詰めているのは、彼女をモデルにしたであろう同人誌をかき集めまくっている影朧『同人娘』の姿だ。
正直、メンタルに来る光景であった。
いや、恐怖を感じているというのが正しいだろう。
「大漁大漁ですわ! 狂犬系眼帯拵えの思春期はセンチメンタルジャーニー!!」
「なに、なんて?」
高寿は思わず『同人娘』にたずねていた。
というか、答えられても理解できるとは思えない。だが、逆に、と彼女は思ったのだ。
影朧を理解するために歩み寄ったらどうなのか、と。
目算ではいけるいける。頑張れば行ける。
本当に? と疑問を浮かべる自分自身がいるような気がしたが、しかして、お前の力はこんなもんか! という我が身に対する叱咤激励が炸裂しているのである。
なんか行ける気がする!
「ナマモノはお触り厳禁なのですわ! お許しを! ……あ、これなんか良い感じですわ! 追いかけられるのくせになりそうですわ! 推しに追いかけられる! こんなの臨死体験と同じですわ!」
そう言って『同人娘』はあっという間に高寿より逃走を図る。
それはロケットスタートダッシュ。
グッバイ、光の彼方へ。
推しは推しても押されるなってね!
「上手くもなんともねぇし、なんなら意味わかんねぇ!! おら、お供妖精ども……いけるよな」
お供の妖精たちは、無理くさくね? と肩をすくめていた。
あのロケットダッシュはやべーっすよ、みたいな感じでもあった。
だが、高寿は目をひん剥いた。
きりりとつり上がった目もまた素敵であった。あの眼光に射抜かれて死ぬなら、それも本望って感じである。
「……なぁ!? 返事!!」
さーいえっさー! とでも言いそうになる勢いでお供妖精たちは飛び出していく。
いつだってお供のケツを蹴るのは貴人の説法(プラセボ)という名の無茶振りなのである。
高寿はお供妖精たちの本気の本気の偵察によって『同人娘』たちを追い詰める。
完全なる袋小路である。
「ひゃっ」
なんか語尾が上がっている上に色めきだっているのは気のせいだろうか。
むしろ、誘い込まれたのはこっちなのでは? と高寿は思わないでもなかった。
「こ、来ないで! きてはだめです! それ以上近づかれては、私何をするかわかりませんよ……」
「おっと、その|危ないもん《光線銃》を渡してもらおうか、お嬢さん」
出たー!!
これが噂の禁じ手! 壁ドン!
古来より女子は壁ドンにときめくというのが我々の業界における常識! 他の界隈ではわかりませんが、確実に効いております。
そんでもってダメ押しの。
「その手には花こそが似合う、だろ?」
そう言って高寿はオラオライケメンオーラ炸裂のご尊顔を持って『同人娘』たちの腰を砕いてみせたのだ。すんごい。
だが、当の本人のやる気の腰も折れそうだった。
「……これを全員に?」
そうだよ。
心が折れそうな顔を一瞬浮かべそうになる。
だが!
「いや、負けるな、頑張れ我。お前の始めた物語だ。もう帰りたい。いや負けるな」
高寿は己に喝を入れ、そのノルマ達成になるまで『同人娘』たちを姫にして腰砕けにしていくのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
ピスピスなのでっす!
どうぞ配信してくださいなのでっすよー!
はてさて皆様よろしいのでっすかー?
藍ちゃんくんの生ライブ、最前列で見ないで大丈夫でっすかー?
ところで今、皆様の行動の対象が藍ちゃんくんになってますがー。
それ即ち、逃げ先が藍ちゃんくんになっていて、藍ちゃんくんに迎えられ、受け止められちゃうだけでなく!
な、なんと、藍ちゃんくんに小動物な一部を生やしたり、小動物化もできるのでっすよー?
耳も尻尾も肉球も擬獣化もファンサービスとして受け付けちゃうのでっす!
ちなみに当然、配信してくださっているビームスプリッターさんからのリクもお待ちしてまっすからねー!
勧誘続行中なのでっす!
『帝都タワー』にて撒き散らされる同人誌。
それは全てが猟兵をモデルにしたものであり、影朧『同人娘』たちは、そうした同人誌を読み漁り、またモデルとなった猟兵たちに対する尊いという感情に咽び泣いていた。
そう、貴すぎるのである。
顔も良けりゃ、性格もいい。そんでもって能力も申し分なし。
まるで出来過ぎスパダリである。
そんな猟兵達と己たちの蜜月を妄想するくらいは許されていいはずだ。
いや、そうでなければ、この世に救いがなさすぎる。
あまりに高望みと言われようとも、現実が見えていないと言われようとも、それでもやはり猟兵という尊みの集合体は存在しているのだ。
「それがとっても素晴らしいことだって私達は理解しているのですわ!」
「これが尊いという感情。これなくばもう私達は生きていけませんわ!」
そんなふうに彼女たちは咽び泣いている。
故に彼女たちは猟兵達から距離を取ろうとする。
自分たちは距離を間違えてはならない。
お近づきになりたいなんて思ってはならない。そう、己たちは猟兵という花に群がる蟲であってはならないのだ!
だが、そんな彼女たちの思いを知ってか知らずか、むしろ、知っていても自分が自分であることをやめられない猟兵とは存在するものなのである。
そう、即ち!
「藍ちゃんくんでっすよー!」
降臨・紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)!!
幻朧桜の花弁散る中に舞い降りたのは、天使!
いや、あれなるは愚か姫!
そう、藍、御本人の登場である。
「ア゛ッ――!!!!」
汚い声の大合唱。
そんな中、藍はだぶびで降臨しているのだ。
「ピスピスなのでっす!」
「目が焼けちゃう!」
「尊さで前が見えない!」
おんおんと感極まった泣き声が響いている。
とんでもないことである。
だがしかし、藍はこうした事態に慣れっこであった。
寧ろ日常。
「余所見厳禁! 皆々様、藍ちゃんくんだけを見てくださいなのでっすよー! 藍は盲目(アイキャッチ)、いっきまっすよー!!」
響くは大絶叫。
めちゃくちゃやかましい。
だが、『同人娘』たちは本能的に距離を取ろうとしていた。
そう、彼女たちは理解していたのだ。
推しとの距離感というものを。
だからこそ!
「あれ、いいのでっすかー? 藍ちゃんくんは此処にいますよー?」
顔が良いというのはずるい。
あと、なんかこう大抵のわがままであれば受けれてくれそうな雰囲気がある。
「今なら藍ちゃんくんに小動物な一部をはやしたり、小動物化もできるのっっすよー? 耳も尻尾も肉球も擬獣化も!」
つまり、それは!
過剰なまでのファンサービス! ファンサの特大盛! むしろ、これから先一生はないのではないかという程の致死量!
「ありがとうござまぁぁぁぁすっ!!!」
藍に殺到する『同人娘』たちは感謝、圧倒的感謝と共に昇天するしかないのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
綾倉・吉野
(……)
マステマ殿の沈黙が何だか怖いであります…あれ、なんだか急に意識が……
(以下マステマさん)
……ラウム。「影」を介して聞いているのでしょう?隊長命令です。貴方は遊撃を。可能ならばいつものように盗みなさい。光線銃?何を言っているのです。同人誌の方に決まっています。
……近くに吉野本の気配がしますね。気配察知で対象を捕捉、逃げるのなら移動速度二倍で追い詰め退魔刀を突き付けて強引に供出させます。勝手に倒れ伏すのならばそのまま身体検査ですね。
ええ、吉野の全ては私のものですから。当然、この手の書物も同様ですが?
ただ、もし“私の”吉野で不埒な想像をしていたのならば……
分 か り ま す ね?(圧)
綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)は我が身に走るゾワゾワとしたものの正体に気が付かなかった。
いや、気が付かないふりをしていたのかもしれない。
『帝都タワー』。
それはこのサクラミラージュが発生した当時より存在しており、帝都統一の柱として機能していたという。
いや、それはいい。
寧ろ、本題はそこではない。
彼女が今、差し迫った悪寒みたいなものを感じている理由はただ一つ。
目の前で散る己の同人誌である。
それを見た瞬間、己の中にある『マステマ』が沈黙しているのだ。
「『マステマ』殿、沈黙がその、なんだか怖いであります……」
「……」
彼女の中の『マステマ』は何も語らない。
それ故に若干怖いと思ったのだ。
なにか言ってほしいと思った瞬間、吉野の意識が揺らぐ。
「あれ、なんだか急に意識が……」
暗転する視界。
そして、吉野の体はマステマの手助け(ワタシガオアイテシマショウ)によって、操られている。
「……『ラウム』」
その言葉に影より現れるのは、カラスであった。
一羽のカラスは、恭しく一礼するように頭を動かす。
「影を介して聞いていましたね? 隊長命令です。貴方は遊撃を」
頷く仕草。
そう、その影なるカラスこと悪魔。契約されしものであり、また手癖の悪さは『マステマ』の知る所であろ。
つまり、影朧『同人娘』たちが手にした光線銃を隙あらば奪え、と言っているのだ。
了解したというように『ラウム』が頷く。
光り物とカラスは相性がいい。
「ひかりもの? 光線銃? 何を言っているのです」
えっ! という顔をする『ラウム』。違うのか、と思ってしまった。
それを見透かすように『マステマ』は、にこりと吉野の顔で笑むのだ。
「同人誌の方に決まっています……おや、近くに吉野本の気配がしますね」
『マステマ』は『ラウム』が動くよりも早く動いていた。
花弁が散るようにして舞うのは、吉野の表紙の同人誌。
キリリとした表情の彼女が活躍する冒険活劇のようであった。手に取った『マステマ』は笑む。
なるほど、とも思ったようであった。
「吉野の魅力をよく捉えた表紙ですね。ですが、表紙買いさせる力があるからといって、内容まで表紙と同じクオリティがあるとは……」
『マステマ』はペラリと中身をめくってみて、よく吟味した。
それは彼女の中の吉野と解釈が一致していただろうか。
それとも新たなる一面を見出させてくれただろうか。
何れにしても彼女は『ラウム』に告げる。
「吉野の全ては私のもの。ですから、わかっていますね?」
彼女は『同人娘』たちに退魔刀を突きつけ、示す。
どこまでも逃げようとも、どこまでも追いかけていくと言わんばかりの眼光。
「ひっ! これはこれで素敵な一面!」
「何を言っているのです。この表情は吉野のものではありません」
きっぱりと言い放ち『マステマ』は追い詰めた『同人誌』から同人誌を押収する。
いや、回収と言って上げた方がいいかもしれない。
全ての吉野本は彼女の手元に。
そして、加えて彼女は告げるのだ。
「わかりましたか。此度は見逃します。ですが、もし『私の』吉野でふらちな想像をしていたのならば……」
「は、はぃぃっ!」
「わ か り ま す ね ?」
その圧は凄まじいものであり、『同人娘』は恐れおののくというか、むしろ、吉野の中にある『マステマ』にこそ心酔するように頷きながら消滅していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
柊・はとり
あー…この界隈の方々
Jでもすげえ見るし知ってる
あの人達アポヘルでもやたらしぶとい
原作への未練だけでデッドマン化するし
物資がないから推しの地上絵描いたりとか
すごい情熱だよな
俺の事好きな奴リョナラー以外いんの?
男子高生の冷凍死体が好きなやべーやつだろ
「男は成人する前に殺さなきゃ…」とか
「伊達眼鏡と結局眼鏡外す奴は眼鏡キャラ名乗るな」とか思ってそう
過激思想すぎる
ノインって奴は流石に変なの描いてないと思うが
いや…影朧の皆さん
擬態しても第六感で解るぞ
謝らなくていい
そういう性癖になる事情があったんだよな
地雷多すぎて生きづらかっただろ
現実で人殺してなくて偉い
UCで出したサイン本あげるから
銃置いて成仏してくれ
うおん、うおおん。
それは唸り声のようでもあったし、嗚咽のようでもあった。
拾い上げた同人誌。
それは恐らくきっと柊・はとり(死に損ないのニケ・f25213)が見れば、解釈違いであり、憤慨することであろう。
作者は何もわかっちゃいないのだと言うだろう。
それくらいに悲劇は見事に悲劇に描かれた同人誌であった。
一種の冷たささえ感じさせる結末であったし、それ以上の先はまるで見えないバッドエンド締めくくられていた。
だからこそ影朧『同人娘』たちは慟哭していたのである。
「悲恋ッ! 泣かずにはいられません!」
「ああ、でもどうしてバッドエンドというのは斯くも美しいのでしょう!」
「解釈違いをねじ伏せるのはいつだってバッドエンド! グッドエンドもハッピーエンドも、なんだか物足らないの一言でケチがつけられるというのに!」
「どうして私達はこのバッドエンドを心の傷として受け入れなければならないのでしょう。この運命にさちあれ!」
そんな彼女たちの慟哭を聞き、羽鳥は一層困惑を強めたが、まあ、彼はイェッター改めJにてこういう人たちをよく見ていた。見かけたというのが正しいのかもしれない。
「うんまあ、いるよな。こういう界隈の方々。アポカロプスヘルでもやたらしぶといし、原作への未練だけでデッドマン化するし、物資がないから推しの地上絵を描いたりとか、すごい情熱だよな」
情熱。
その言葉で表現するしかないほどの熱量を、はとりは『同人娘』たちから感じたのだ。
「うぉんっ! 公式のお出ましですわ!」
「はぁー……顔が良いと傷までえっちに見えますわぁ!」
「冷めた瞳に心臓凍結まったなし!」
「お、おう」
はとりは彼女たちの声に困惑していた。
ていうか、はとりは自分のことを推しにするような者たちは、明らかにやべーやつらだとばかり思っていたのだが……いやまあやべー連中であるところは否定しない。
が、しかし、思っていたものではなかった。
男は成人する前に殺さなきゃ、とか。
伊達眼鏡と結局眼鏡外すやつは眼鏡キャラ名乗るな、とかそんな過激思想の持ち主ばかりだろうと思っていたのだ。
けれど、実際に相対した彼女たちはそういう感じではなかった。
なんかこう、ボーイ・ミーツ・ガールというか。僕と君の世界系というか。
そういうのが好きそうな『同人娘』たちであった。
いや、あのグリモア猟兵、変なの描いたのか?
そう思って自分らしき人物の表紙の同人誌を取ろうとして、『同人娘』たちは一斉に動いた。
はとりに手に取られる前に回収したのだ。
「いや……擬態しなくていいのか、影朧の皆さん」
「ッキャー!!!! その言い回し、名探偵『白雪坂のホームズ』そのものですわー!!!!」
めちゃくちゃ大音量。
はとりは、耳がキーンとなった。
そう、彼女たちは擬態するより先に、はとりが同人誌を手に取ることを忌避したのだ。
なんで?
「ごめんなさい、『白雪坂のホームズ』! でもこれだけはだめなのです!」
「謝らなくていい」
「その言い回しも解釈一致で動悸がどっきんこですわ! 私の性癖にダイレクトアタック!!」
はとりは息を吐き出した。
それはもう盛大に。
「そういう性癖になる事情があったんだよな。地雷多すぎて生きづらかっただろ」
「いいえ! むしろ、クリティカルヒット多すぎて、致死って感じですわ!」
「……現実で人死にがでなくてよかった」
「そういうところまで『白雪坂のホームズ』バチピシですぅ!!」
「わかった。新たなる殺人『古書街呪殺行脚』(オウサツリテラチュア)にサインしてやるから、それと光線銃の交換で……」
「いいえ、推しとの会話。それだけで私達もう……」
えっ!? とはとりが目をむいたときには、彼女たちは皆、はとりの同人誌を胸に抱えて昇天するように霧散していた。
「で、結局、俺の同人誌には何が書いてあったんだよ!?」
はとりの叫びが、『同人娘』たちの昇天に響き渡った――。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎
――良いですか…アリス姫様…
人の趣味・趣向は
千差万別…なのですわ――
何故か
よく解りませんけど、
自分に仕える
兎メイドさんの
言ってた言葉が
頭に浮かびつつも
『え…えっと…光線銃に対処しなきゃ…です…よね…?』
同人娘さん達に困惑しつつも
同人娘さんと
光線銃に対処すべく
UC発動
麗しき女性の
翼の騎士達が
召喚され…
女騎士『姫様を御護りすべく、馳せ参じました…!』
私に傅いてくれる
女騎士さん達を
見て
同人娘達『主従系おねロリっ…!?』
(擬態し平静を装ってた何人かが|尊死《卒倒》)
『!?だ…大丈夫ですか…?』
女騎士『怪しい者達です姫様っ、不用意に近づかれては…!』
(主従の光景に
更に何人かの同人娘が…)
いつの日だっただろうか。
それはアリス・フェアリィハート(不思議の国の天司神姫アリス・f01939)の聞いた言葉だった。
「――良いですか……アリス姫様……」
その声は静かなものであったが、自分に言い含めるような声色だった。
「人の趣味趣向は千差万別……なのですわ――」
アリスはなぜだか、目の前の光景を見て自分に仕える兎メイドたちの言葉を思い浮かべていた。
目の前には『帝都タワー』と幻朧桜の花弁舞い散る光景。
それまではいつもどおりだ。
けれど、いつも通りでないものがある。
つまり、それは大量に頒布という名の形でばら撒かれている猟兵をモデルにした同人誌が舞い散る光景であった。
とあるグリモア猟兵が夜なべして作った同人誌である。
そこにはアリス自身をモデルにした表紙もチラチラと見えていて、それを影朧『同人娘』が読んで、感涙に咽ぶのだ。
もうわけがわからない。
なんで彼女たちは泣いているのか。
泣いているのならば、涙は止めないといけないのではないかと思ったのだが、アリスはそれよりも『光線銃』に対応しなければ、と思ったのだ。
確かに『同人娘』たちは影朧。
けれど、こうしている分には脅威ではない。なら、と光線銃を奪おうとロイヤルプリンセスガード・スターホワイトナイツを召喚するのだ。
「我ら白の星刻騎士団、姫を御護りすべく馳せ参じました」
現れる翼持つ騎士たちの姿に周囲がざわめく。
正確には『同人娘』たちが、である。彼女たちにしてみれば、公式からの推しの供給である。
見逃せるわけがない。
「主従系おねロリっ……!?」
なんかこじらせてんな、という声が聞こえた。
しかし、アリスにとって、それはいつもの光景であったし、取り立てて不思議なことをしたつもりはない。
だが、『同人娘』たちは一様に絵面の凄まじさに鼻血を吹いて卒倒していた。
鼻血が噴水のように、ぴゅーぴゅーでているが、『同人娘』たちの顔は安らか……っていうか、ずっとニコニコしている。
それはそれで怖い。
「主従の主がロリってところが最の高ですわ」
「立場は上だけど守ってあげなきゃ感が溢れて止まらないのですわ」
「ドバドバですわ」
「鼻血が……どばどば、ですよ?」
アリスは心配そうに駆け出す。
すると『同人娘』たちはまた一斉に鼻血を噴出させるのだ。
「ふりふりのふわふわ」
「え、あ、なにが?! だ……大丈夫ですか……?」
駆け寄ろうとするアリスに騎士団が手で制する。
「怪しい者です姫様っ、不用意に近づかれては……!」
「ありがとうござまぁぁぁぁすっ!!!」
さらに鼻血が噴出する。
何がどうなっているのか、アリスにはもうわけがわからなかった。
けれど、『同人娘』たちは満足そうに霧散していく。
そう、公式からの過剰供給に彼女たちは尊みが限界を超えて、堪えきれなくなったのだ。
「……な、なんででしょう?」
「そのままの純粋さでいてくださいね! 本当に!!」
その言葉と共に『同人娘』たちはアリスの前から一人残らず消えていくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒沼・藍亜
……ほうほう、で、カプ本とかはどんなのがあるんすかね?いやボクの事はどうでもいいんすよ。続けて?《目立たない》Lv25あるしへーきへーき。
……向こうが気付いて逃げ出すより前にUC!まあ逃げたり擬態したところでお構いなしに対象にするし…分かるんすよねそういうの、過剰にその気配を消そうとするから。
本当に知らない人なら気付けないようなところまで完璧に。
で、だ。このUC、完全回復する代わり、対象は「Lv分間、理性無きままに己の趣味嗜好を垂れ流す超早口オタクと化す」んすよね。なのでその間に光線銃はUDCで取り上げ。
後は時間一杯語らせて、疲れたところをバットで意識を飛ばし、そのまま楽にしてやるっすよ。
単体モノもあれば、カプ本もある。
それが同人誌の懐の広さってやつである。
多くのニーズに応えるのではない。多くのニッチに応えるだけなのである。
お前の好きは俺の好き。俺の好きはお前の好き。違うのだ!! みたいなやり取りをするのもまた同人誌の良いところであろう。多分。
「黒髪片目隠れ……へぇ、よく練られてる」
「武の頂きとくれば、片目隠れは性癖の頂き。つまりは、最高っていう図式ですわ」
影朧『同人娘』たちは、黒沼・藍亜(に■げ■のUDCエージェント・f26067)をモデルした同人誌を片手に、胸に手を当てて詩を諳んじるようであった。
別に何も諳んじてないけど。
けれど、彼女たちは理解していたのだ。
藍亜という猟兵の存在の尊さを。
UDCに憑かれるという突発的なバディ物の主人公。
そんでもってオタクに優しいであろう私生活ではアニメが好きなだらしないダメ大人。
しかも片目隠れ。
ある種の煮凝りである。
そんな藍亜の素晴らしさを幻朧桜と共に舞い散る同人誌は伝えていたし、まだまだ伝えきれない! という情熱が見て取れるようであった。
「……ほうほう、で、カプ本はどんなのがあるんすかね?」
「いえ! この藍亜様の場合は、安易なカップリングなど不要! 入り込めないほどのバディが既に存在しているのです!」
「そうですわ! 百合の間に挟まるかの如き愚行! 藍亜様に必要なカップリングなど!」
過激派である。
そんな『同人娘』たちの言葉に藍亜はフンフンと頷く。
「……ん?」
「……えっ?」
「どうぞ、続けて?」
瞬間、彼女たちは脱兎のごとく逃げ出した。
推し! そう、推しが至近距離にいる! いかん! 距離を取らねば尊みで焼かれてしまう! 何が? 脳が!!
「あっ、と……まあ、逃げたりしても構わないんすけど……で、まあ、これでいいっすよね」
藍亜の瞳がユーベルコードに輝く。
ようこそおかしな世界へ(クチガカッテニオドリダス)。
広がる黒色。
それは汚染であった。
あらゆる存在を餌食にする萌えという狂気。
それによって『同人娘』たちは口々に早口のままに藍亜という存在の萌えを語りまくる。もうすでに語りまくっていたように思えるが、まだ足りないのである。
「片目隠れってだけでご飯三杯はいけますわ!」
「だらしない大人がたまに見せるキリッとした表情はうな重みたいなものですわ! 秘伝のタレ! そういうことですわ!」
「厚着の下から、どろっと出るUDCがなんかちょっと、えっ――」
ごすん、と藍亜はまくしたてる『同人娘』のバットで意識を飛ばす。
流石に語りまくった後に自己嫌悪で卒倒してしまいそうだから、介錯と言えば介錯であった。
「まあ、いいんすけど。楽にしてあげただけ感謝してほしーっすね」
そう言って藍亜は、うん、と昇天した『同人娘』たちが抱えていた己がモデルの同人誌を取り上げる。
それは黒髪片目隠れへの愛を詰め込んだような、そんな同人誌だった――!
大成功
🔵🔵🔵
百鬼・甚九郎
なんじゃなんじゃ、儂の絵描いてくれたのかや
何それ見たい、見せとくれ~
すっごい逃げるのう……
鬼はな……逃げられると、追いたくなっちゃうのじゃよ
みーせーてー!(移動力五倍、攻撃力半分)
わーははは!先回りじゃ!
曲がり角で、ばあ!と驚かせてやるぞい
泣いちゃった……
お、おぬしら大丈夫かえ……?ちょっと対応したことない敵で儂びっくりなんじゃが
えーと、ふぁんさすればいいんじゃっけ
とりあえず、ほーれ、高い高ーい。いないいないばー。よしよーし
なんか赤子向けみたいな動きしちゃったが、しゃーない
戦う気のない小娘とかどうせいちゅーねん
あ、光線銃くれるかえ
ありがとうのう、お礼に銃持ったかっこいいポーズ見せちゃるなー
「ダメですわ! これはダメですわ!」
「なんじゃなんじゃ、儂の絵が描かれているんじゃろ?」
「いやー!! ナマモノは触れてはダメだというオタクの不文律があるのですわー!」
そんな声が『帝都タワー』周辺で響き渡っていた。
別にいかがわしいなんかそういうあれではない。
それは百鬼・甚九郎(茨鬼童子・f17079)が影朧『同人娘』を追いかけ回している光景であった。
健全。
至って健全であった。
そう、甚九郎は自分をモデルにした同人誌とやらに興味津々であった。
「見たい、見せとくれ~!」
「ダメですわ! 本当に!!」
逃げる『同人娘』に追う甚九郎。
そのうちバターになるんじゃないかと思うほどに『帝都タワー』の周囲をぐるぐるしている。
「すっごい逃げるのう……」
甚九郎は埒があかないとおもっただろう。
だが、しかし。
「仕方ないのう……とは言わんわい! 鬼はのう……逃げられると追いたくなっちゃうのじゃよ!」
それは自然の摂理。
そういうかのように甚九郎は『同人娘』を追い立てる。
「みーせーてー!」
しかもユーベルコードまで発動させているのだ。
「いーやー!!」
「ばあ!」
甚九郎はガチの不意打ちモードに変貌し、一気に『同人娘』を追い抜いて曲がり角から飛び出して『同人娘』の肩を掴み上げる。
「きゃあああっ!?」
「おわっと、どうしたんじゃ……って泣いておるのか?」
「ひっくひっく……」
「お、おぬし大丈夫かえ? 痛いのか? 強く掴みすぎたか?」
「か」
「か?」
「顔が近くで見ても良すぎるッ!! 無理ッ!! 絶対私よりも長く生きているのに、老成を感じさせる喋り口で見た目若くて美形とか! しかも、ちょっと子供っぽい幼い感じ! そのうえでこっちの都合全部ぶっ飛ばしてでもかっさらわれるそうな腕の力強さにドキドキしちゃうぅぅぅぅッ!!!」
早口であった。
すんごい早口。それに甚九郎は戸惑ってしまった。
びっくりしてしまった。
「え、えーと、ふぁんさ、すればいいんじゃっけ?」
「もうこれ以上は無理ぃ」
「ほ、ほーれ、高いたかーい、いないいないばー」
あまりに幼児に向けたファンサ。だがしかし、それが『同人娘』には効いた。
これ以上なく。
「おぎゃあ」
「おぎゃあ!? な、なんじゃ、いきなり赤子に戻りおった!?」
「……もうこれ以上は勘弁してください。本当に無理です。昇天しちゃいます。でちゃいけないものまででそうです」
「うお、いきなり冷静になるのな? あ、光線銃? くれるのかえ?」
手渡された光線銃に甚九郎は戸惑う。
けれど、何かもらったのなら御礼をせねばと思うので、かっこいいポーズを取ってみせたのだ。
それが痛恨の一撃であった。
「がふっ!」
「お、おぬしー!?」
『同人娘』は語る。
これが最後の光景であったとしても、ぶっちゃげ悪くなかった、と。
その顔は最後まで晴れやかであった。
多分――!
大成功
🔵🔵🔵
シャルロッテ・ヴェイロン
あー、待ってください。「猟兵を題材にした同人誌を出版する」、そこまでは別に構わないですよ、ですが…。
「二次創作ガイドライン」はちゃんと遵守してるんですか?(ぇ)(【世界知識・情報収集】)
それはさておき、そこのオブリビオンに逃げられる前にニューロンを【ハッキング】!そして大量のデータを注ぎ込んで、過剰負荷で焼き切ってやりましょうか!(【精神攻撃・データ攻撃・逃亡阻止】)で、手放した光線銃を拾って追い打ちの【レーザー射撃】とかやっちゃいましょうか――ついでに、同人誌の内容が気に入ったらテイクアウトしちゃいましょう(ぇ)。
※アドリブ・連携歓迎
『帝都タワー』周辺に散るは幻朧桜の花弁。
そして、同人誌であった。
わかっている。なんでそんなことになってしまったのかということ位、言いたいことはわかってる。
だがしかし、そうなってしまったもんは仕方ないのである。
今更取りやめにしよっかなって言っても、始まってしまったイベントっていうのは簡単に中止できないものである。
寧ろ、行くとこまで行くしかないのである。
結局の所!
「あー、待ってください」
影朧『同人娘』たちの前に現れたのは、シャルロッテ・ヴェイロン(お嬢様ゲーマーAliceCV・f22917)であった。
彼女はなんか腕章みたいなものを見に付けていた。
そう、それはスタッフ腕章!
この同人誌頒布イベントを取り締まる側!
如何に『同人娘』たちが影朧であろうが、運営スタッフには従わねばならない! そういうものなのだろうか? そういうもんなのである。ご協力ください。
「な、なにか? 私達は別に何もやましいことはしておりませんことよ!」
「そうよそうよ! 正しき尊さに打ち震えていただけですわ!」
「ちょっと体中の体液が目から汗をかいたりよだれがこぼれてしまったりしただけのこと!」
須らくアウトであるが、シャルロットは頭を振る。
「猟兵を題材にした同人誌を出版する、そこまでは別に構わないんですよ」
「な、なら!」
シャルロットの言葉に『同人娘』たちは意気込む。
だが、シャルロットは手で制する。
それは魔法の言葉であった。
「ですが、『二次創作ガイドライン』はちゃんと遵守しているんですか?」
ど、どういうことだってばよ!
に、二次創作ガイドライン!?
『同人娘』たちは、頒布される側である。だから関係ないのでは?
けれど、なんかこうスタッフの人から咎められた感じがした『同人娘』たちはたじろいだのだ。
そこにシャルロットは踏み込んだ。
「それはさておき! 自壊プログラム実行!全員まとめて、ぶっ壊れてもらいましょうか!」
シャルロットの不意打ちユーベルコード!
BRAIN HACKING:DEMOLITION(ブレインハッキング・デモリション)によって『同人娘』たちはスタッフ腕章つけたシャルロッテもいいよね、という尊さの過負荷によって、その身を昇天させてしまう。
え、昇天するところあった? とシャルロッテは思ったが、まあ、影朧が消えていったのなら、いいのかな、と思う。
「その若干いい加減なところも、みりょくてき!」
「こっちのことは全然なんとも思ってない感じもまた!」
「はあ……まあ、いいです。はい、ビーム」
シビビビ、とシャルロッテは拾い上げた光線銃で昇天しかけている『同人娘』たちを射抜く。
「ああっ、そういう塩対応もまたたまらないものがありますわ!」
「うわ」
シャルロッテは、そんな彼女たちが見ていた同人誌を拾い上げる。
内容はさておき。
まあ、表紙に描かれた自分の姿はかわいいのではないかと思いながら、シャルロッテはずり落ちたスタッフ腕章をひきあげ、さらなる取り締まりのために走るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(「分からない…文化が違う!」と頭の中の教導虫が話しかける)
せんせーは蜂皇族の皆様の中でも外交官としてご活躍されていたと聞きました!
異文化との交流もあったのでは?
(「それでもあの子らの行動が分かんないのよ!うちらの味方でしょ!?協力しなさいよ!?」)
味方だけど遠くから見守りたいという気持ちなんでしょう…
俺には分かります!
(「マジか。じゃああとヨロ」)
任されました!
さてどうするかな
そうだ!推し同士の関係性が見える供給をされたら尊すぎて行動不能になるはず!
なので…せんせー!{教導虫の抜け殻}を用意するので『念動力』で抜け殻を操作して
俺とダンスをしましょう!
(「え?どういうこと?いや説明されても分からんし、うんしよう!」)
そしてUC【穿つ言霊】で俺たちの会話を言霊に変えてシュート!
公式からの供給過多を食らって妄想の沼にハマっちまいなー!
舞い散る花弁。
それは幻朧桜。桜ミラージュにおいては常なる光景であった。
季節は巡れど、桜の花弁が散る光景は変わらず。
帝都のシンボルとする電波塔『帝都タワー』は今や奇怪な存在へと成り果てた。
否、成り果てたのではない。
元よりエンシャント・レヰスたる『ビームスプリッター』であったのだ。
その目覚めと共に撒き散らされるのは大量の同人誌。
しれっと語られたが同人誌である。
とあるグリモア猟兵が夜なべして作ったものである。
望まれてからって言っても限度ってもんがある。
それを影朧『同人娘』たちは歓び勇んでかき集めて崇め奉っている。
「尊いが詰まっている!」
「まるで現代の怪奇奇譚! 因習村? そんなの真正面からぶっ飛ばしてやるよ! と言わんばかりの尊さ!」
「それはそれとして、今日も推しが尊い!」
『同人娘』たちの様子に黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)の頭の中で教導虫が頬をヒクつかせた。
「わからない……文化が違う!」
文化。
まあ、文化って言えば文化なのかもしれない。
彼女たちの尊さというものは、常人には理解しがたいものであったし、また同時に情熱と狂気というものは紙一重であるところは言うまでもないだろう。
それは教導虫とてわかっている。
わかっているが、彼女がこれまで触れてきた外界の人間たちとは一線を画するようであったのだ。
「異文化との交流があったのではないですか?」
「それでも、あの子等の行動がわかんないのよ! うちらの味方でしょ!? 推しってことは! 協力しなさいよ!」
まあ、頭の中で響いているだけなので、外には漏れていない。
けれど『同人娘』たちは兵庫の姿を捉えた瞬間、咽び泣く。
感涙であった。
推しが目の前にいる。
とは言え、推しとの適切な距離感というのは大切である。厄介なファンになりたくはない。ほかとは違う。節度を守ってます。
それをあっぴーるするために彼女たちは余念がない。
むしろ、そこまで行くのならば、いっそこちらに協力してくれたほうが余程好意的に見れるというものである。
「味方だけど遠くから見守りたいと言う気持ちなんでしょう……俺には分かります!」
兵庫が以外にも理解を示している。
なんで?
「マジか。じゃああとヨロ」
「ですが、それにはせんせーの協力が不可欠なのです!」
「どういうこと?」
本当にどういうことだってばよ! 教導虫は首を傾げるようであった。
彼女の理解の及ばぬことが次々と起こっているのだ。
「推しの過剰供給。それは即ち、公式からの供給! 関係性が見えることによって、さらに彼女たちは自分自身で想像の翼を広げるのです!」
つまり!
「尊すぎて行動不能になるということ! なので、せんせー!」
「え、なに、なんで抜け殻を……」
「これを念動力で操作しますので、俺とダンスしましょう!」
「説明されてもわからんし!」
「後はノリと勢いです! 解釈は『同人娘』さんたちが勝手にやってくれます!」
そういうもんなのだろうか? そういうもんなのである!
「そして! 穿つ言霊(ウガツコトダマ)! せんせー、いつもありがとうござます! せんせーがいてくれるから俺はきっとがんばれるんです。せんせー!」
「うんえっ!?」
「せんせーがいないときっと俺は大変だったでしょう。今の俺があるのもせんせーがいるからです! その感謝で胸がいっぱいです!」
「ちょいちょい! 何いきなり!?」
「これです、せんせー! これが推しの供給! 俺達の会話はしっかりと『同人娘』たちに届いていますよ!」
踊る二人。
そして聞こえる会話。
感謝。
圧倒的感謝しかない。
一次産業からしか得られないものがある。むしろ、一次産業でなければなし得ないものがある。
それを示すように兵庫と教導虫との会話は『同人娘』たちに尊さを限界突破させ、いつのまにか昇天するように霧散していたのである。
「よき――」
大成功
🔵🔵🔵
ソティア・エピアルティス
これが、私の選ばれた戦士としての初陣…すぅ…(カードを構え)
『深淵より目覚めよ闇より昏き焔』―――変身!(決めポーズ)
さあ、この聖魔ソティアが相手を……え?これが敵?
……い、いや、きっと深淵にして冒涜的でちょっと淫靡な魔導書とか「撃つ、相手は死ぬ」な黄金光線銃とか持ってるに違いない…!油断は禁物…!
さあその刃を晒せ、影劫杖大鎌形態!……って逃げた!?
え、あ、ちょ…ま、まだよ!サイキッ…じゃなくてユーベルコード!
精神世界に影を送り込めば変身されても距離があっても問題ないし、現実のこっちは銃を撃たれたって回避に専念できるから!
後は精神世界での攻撃で隙を作って、現実でカッコよく(重要)トドメよ!
力の目覚め。
それは世界に選ばれた戦士である猟兵にとって、最初の衝動であったことだろう。
ソティア・エピアルティス(闇に紛れ闇を狩る聖魔の影狩人(自称)・f43894)は、己の身に宿った力の使命を自覚する。
例え、ダークネスであろうとも。
それでも彼女は世界のために戦うと決意したのだ!
「これが、私の選ばれた戦士としての初陣……」
息を吸う。
やれる。やれるのだ。
己の手には力の象徴たるカードがある。
構えたカードが水平に掲げられ、ソティアの瞳が輝く。
「『深淵より目覚め闇より昏き焔』――変身!」
決めポーズ!
決まった!
「さあ、この聖魔ソティアが相手を……」
「ッキャアー!!!」
「聖魔降誕!! ファンシーな衣装が素敵!」
「自信たっぷり! スタイル抜群! ピンクの髪はマジカルラジカルにクラシカル!!」
響き渡る絶叫。
ソティアは、目を丸くする。
目の前には影朧『同人娘』たちが卒倒寸前に奇声を上げていた。いや、悲鳴とも言えるし黄色い歓声とも言える。
とにもかくにも、彼女たちは聖魔ソティアの降臨を待ち望んでいた。
彼女たちの手にあるのはソティアの同人誌である。
なんで? 初陣なのになんでもうあるの? ないものはない。のなら、あるのである。そういうことになっているのである。
「……え? これが敵?」
「いいえ、私達はあなたのしもべ! むしろ踏んでください!」
「……い、いや、きっと深淵にして冒涜的でちょっと淫靡な魔導書とか、『撃つ、相手は死ぬ』な黄金光線銃とか持ってる違いなわいわ!」
油断は禁物である。
しもべって言われても信じられるわけがない。
「さあ、その刃を晒せ、影劫杖大鎌形態! ……って逃げた!?」
そう、ソティアがファンシーな杖を大鎌に変えた瞬間『同人娘』たちは脱兎のごとく逃げていた。そりゃもう、散ッ!!! ってな具合に。
「え、あ、ちょ……」
「変身バンクと同じく武装チェンジバンクも見逃せません! その間に攻撃すれば? とかそんな野暮な事言うやつは――」
ちょっと自主規制しておく。
過激派であった。
「ま、まだよ! サイキッ……じゃなくてユーベルコード! 儚き影夢の抱擁(ソウルアクセス)!」
瞬間、精神世界にソティアの影を送り出す。
しかし、それはむしろ、ご褒美であった。そう、彼女たちの精神世界には幼女化したソティアが送り込まれているのだ。
変身ヒロインにおいて大切なことは何か。
一つ教えておこう。
それはどう見ても正体がバレそうな感じなのにバレないことと、変身前は幼い見た目であるということ!
「そんな尊いことを!」
「ありがとうございます! ありがとうございます!!」
『同人娘』たちは精神世界にてひれ伏していた。
ソティアは、顔をヒクつかせる。
いや、動きが止まったのはいい。だが、精神世界で幼女化したソティアに彼女たちは、尊さが限界突破して、現実世界でまな板の鯉みたいにビクンビクン震えているのだ。
正直、ちょっと彼女が望んだ格好良くトドメを差すことができないくらいの、あれな光景であった。
「わ、私の初陣が……! ええい、無理矢理にでも格好良くしてやるんだから!」
ソティアは手にした大鎌の斬撃で持って、惨憺たる光景をごまかすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
猟兵の事が書かれた冊子……?
私の本もあるのかしら、内容を知りたくなるわね
冊子を持っている子を捕まえるわ
技能『逃亡阻止』の力を込めた結界を張り
結界の壁に追い詰めて、早業で光線銃を奪いとる
……大丈夫よ、落ち着いて
怖くないわ、じっとしていなさい
私の為に祈ってくれた優しい子
貴女が消えるまで傍にいるわ
影朧の消えた先になにがあるのか知らないけれど
また別の世で貴女に似た誰かに会えるかもしれない
だから、元気でね、と見送るわ
ばら撒かれている冊子。
それはいわゆる同人誌と呼ばれるものであった。同好の士に頒布することで交流を深める一種の手段。
それが今まさにサクラミラージュの『帝都タワー』周辺で行われているのだ。
無論、非公認である。
何せ、題材が猟兵なのだ。
彼等をモデルにした同人誌はいわゆるナマモノ。
許可? 無許可ですけど何か、みたいなノリであるが諸々よろしくないことは言うまでもない。
しかしながら、それってワルじゃない? とてつもないワルなんじゃない? とそそのかされた悪魔がいたのだろう。
そうでなければ、一晩でこれだけの同人誌をばらまくことなぞできやしないのであrう。
「私の本もあるのかしら」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は、影朧『同人娘』たちの咽び泣く光景に困惑するよりも興味が勝っているようであった。
「肌白ッ! お御髪さらさら! 発光してない? してるよね?」
「どこ見ても細い! なのにスタイルは抜群! こんなの公正取引委員会を通してない脱法猟兵に違いないわ!」
「基本無表情クールが時折見せる微笑みの弾丸にぶち抜かれるのは、もはや運命なのでは?」
彼女たちの言葉を静漓は一つも理解できなかったかもしれない。
とは言え、彼女たちは静漓のあまりの美しさに感涙しながら逃げていた。
推しがやばすぎる。
実際に見たら、想像の斜め上どころか、天井をぶち抜いて青天井とか、そんなの! おかしくなる! と言わんばかりに彼女たちは推しである静漓との距離をとらんとしていたのだ。
「だめよ」
静漓は静かに言い放ち、結界に『同人娘』たちを囲い込む。
「ぶへっ!? 見、見えない壁!?」
追い詰めた静漓は、目にも止まらぬ速度で彼女たちが手にしていた光線銃を奪っていた。
「ああっ! 私達の光線銃が!」
「……大丈夫よ、落ち着いて」
「無理ぃ! 顔が良すぎて眩しっ! 推しの光でお肌が焼けちゃう!」
「怖くないわ、じっとしていなさい」
「はぁ~……近っ、近すぎる! いい匂いしすぎて天然のフレグランス素材ッ!」
「私のために祈ってくれた優しい子。貴女が消えるまで傍にいるわ」
静漓は彼女たちを壁に追い詰めながら、柔らかく笑む。
その表情に『同人娘』たちは、卒倒しそうであった。
え、なにこれ? この世の終わり?
むしろいいのか?
課金しなくていいのだろうか?
推しと近くにいるだけでもあれなのに、結界内という密室に一緒くた。なにこれ、〇〇しないとでれない結界……ってコト?
しかも、消えるまで傍にいてくれるって、押しに看取ってもらえるってことである。
「か、課金しまぁぁぁぁぁすっ!!!」
「? お金はいらないわ?」
「させて! 課金させてもらわないと頭変になっちゃうぅぅっ!!」
それが辞世の句であった。
そんな辞世の句なんてあってたまるかと思うかもしれないが、事実である。
霧散していく彼女たちを静漓は見送り、また柔らかく笑むのだ。
「影朧の消えた先になにがあるのかしらないけれど、また別の世で貴女に似た誰かに会えるかもしれない。だから、元気でね」
その見送りの言葉に『同人娘』たちは昇天以上の昇天でもって光に還っていくのだった――!
大成功
🔵🔵🔵
メンカル・プルモーサ
……(落ちてる同人誌をパラパラ確認)バリエーション豊かな内容はひとまず置いといて…なまものは御法度では……?
…しかしこう…見つけたらさっさと逃げるし逃げ切るかと思えば遠巻きにキャアキャア言ってる…やりづらいなこれ…
…風評も考えると逃がすわけにもいかないし…【支え能わぬ絆の手】を発動…床の摩擦係数を0に近づけてすべらせて逃亡を防ごうか…
…あとはスプリッターから光線銃をもぎ取って…まず鳥に変身して飛んで逃げる同人娘を撃墜…
…あとはすべって動けない同人娘を撃つとしようかね…
…それにしても半ば予想してたけど…塩対応しても喜んでるしなにやってもファンサになって喜ぶよね…
ひらりひらりと落ちるは幻朧桜の花弁。
だけではない。
そう、今まさに『帝都タワー』にて舞い散るは花弁のみならず、猟兵たちを題材にした同人誌であった。
その一冊を無言のままメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)は手に取った。
表紙を見るとわかる。
灰髪ジト目系研究者クール系。
まあ、端から見たらそういう感じなのかな、とメンカルは冷静に見ていたかもしれない。これって自分のことだろう。
「……」
パラパラとめくって中身を確認しているメンカル。
それはさながら、サークルの前で試し読みしていっすか。みたいな感じのムーヴであった。
……へへっ、どうすかね?
「……なまものはご法度では……?」
その時『帝都タワー』に激震が走る。
影朧『同人娘』たちは皆、一様に逃げ出していた。
そう、ナマモノ。
実在する人物が登場する同人誌のことである。それは例外なく界隈においては、ご法度。
やはりよくない。
現実に存在する人物を題材にすることは。
わかっている。
だが、『同人娘』たちは止められなかったのである。
「だってだって推しが尊すぎるんだもん!」
「……そんな女の子だもん、みたいに言われても……」
「推しがシャベリカケテクレタァァァァァッ!!!」
うわ、とメンカルは思った。
なんかやりづらい。
さっさと逃げるかと思えば、遠巻きに見て、きゃあきゃあしている。
黄色い歓声なのもまた、若干うっとおしく感じてしまう。
「……とは言え、風評を考えると逃すわけにもいかないし……繋ぎ止める絆よ、弱れ、停まれ。汝は摺動、汝は潤滑。魔女が望むは寄る辺剥ぎ取る悪魔の手」
「でましたわ! あれなるは、支え能わぬ絆の手(フリクション・ゼロ)!」
「物理情報を改ざんすることで摩擦抵抗を極限までゼロにしちまうユーベルコードですわ!」
詳しい。
そりゃそうである。
メンカル題材の同人誌を彼女たちはしこたま読み込んでメンカルの推しになったのである。
当然のようにそりゃ知っているのである。
「となれば、飛んで逃げるまで! それ! って、あばばばばッ!?」
しびびび、とメンカルは『ビームスプリッター』の触手から生えていた光線銃をもぎ取って、びーっと鳥に変身して逃げようとした『同人娘』を撃ち抜いて撃墜したのだ。
「飛んでもすぐに対応する! これが我らがメンカル様ですわ! 流石ですわ!」
「……すってんころりんな体勢で言われても……」
メンカルはこれでも塩対応しているつもりであったが、彼女たちにとってメンカルのユーベルコードを受けたということが特大のファンサなのである。
何しても喜ぶ。
光線銃でびーってやられても喜ぶ。
「……やりづらい」
けど、やる。メンカルはすってころりんな『同人娘』も光線銃で撃つ。
その容赦ないやり方に、『同人娘』たちは御礼の言葉とともに昇天するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ティオレンシア・シーディア
…肖像権とかナマモノ問題とか、できれば作る前にもー少し考えて欲しかったかなぁ…
あー、と…要はファンサの尊みで爆発四散させろ、と。我ながら何言ってんだか半分くらいわかんないけど。
|マン《自分自身》を核にして●忙殺・写身を起動、2・3をデコイにして○おびき寄せ。後の分身と一緒に手分けして同人娘さんたちと○手をつないであげましょ。
…何って、見てわからない?「握手会」よぉ?この手の生体なら至近距離でのファンサなんて特大供給受ければ思考感覚一切合切そっちに向けるでしょうし、光線銃奪うのも楽でしょ。
…にしても、あたしの同人誌って…どんなの描かれたんだろ。ちょっとだけ興味あるわねぇ。
同じ趣味や志を持つ人同士が集まり、己の創作意欲を発露する。
その結果、同人誌が生まれるのである。
それは尊さの結晶。
影朧『同人娘』たちは、空より舞い落ちる同人誌を恭しく受け取るように回収し、中身をめくっては感涙に咽び泣いていた。
推し。
それは心の支え。
エモの塊。
胡散臭い路地裏バーに佇むバーテンダー、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。
その魅力は言うまでもなく、夜色の髪。
三つ編みにした髪型はどこか母性を感じさせるものであったし、また常に閉じられた瞳の奥の色は伺いしれずとも、確かに自分を見てくれているのだと理解できるものであった。
そして何より、薄く常に笑む唇の形の良さたるや!
胡散臭い?
ノンノン。何もわかっちゃおるまい。
その形よい唇が紡ぐ声は、激甘ロリボイス。
たまらんのである。このギャップ! このギャップに足を取られてすっ転んで、人生を狂わしたい!
そんな思いと共に『同人娘』たちは、ハラハラと尊さに涙するのだ。
「はぁ~……やばやばのやばたにえん。推しが綺麗過ぎて、今日も健康ですわ」
「コスメ何を使ってるのか教えてほしい。ラインで揃えて推しと同じコーディネイトしたい」
そんなことをつぶやいている彼女たちを前にティオレンシアは息を吐き出す。
その吐息すらご褒美ですありがとうございます!!
「……肖像権とかナマモノ問題とか、できれば作る前にモー少し考えてほしかったかなぁ……」
ご尤もである。
言い訳のしようがない。
だがしかし!
「推しの押しが強い!」
ティオレンシアは、忙殺・写身(インスタント・アルターエゴ)によって己の分身を作り出して『同人娘』たちの手を取っていた。
あの、何を?
「……何って見てわからない?『握手会』よぉ?」
握手会!?
知っているのか、グリモア猟兵!
あれは伝説の……というどこかの書房からの引用を語りそうになるが割愛させていただく。
「あっ、あっ、あっ、あっ!!!」
ティオレンシアと握手した『同人娘』を包み込むのは尊みのバースト。
炸裂する推しとの接触!
手と手が触れている! 手汗すごない? 推しが嫌な気持ちになってない? あ、むしろ近すぎて良い匂いする。変になる。
そんな具合に『同人娘』たちは次々と昇天していくのだ。
「こんなのでいいのね」
そりゃもうばつのぐんの効果である。
至近距離でティオレンシアの激甘ボイスで握手なんて、そんなもん昇天するに決まってるのである!
「……にしても、あたしの同人誌ってどんなの描かれたんだろ」
気になる。
それは裏路地にあるバーでと客の物語。
心癒やす一杯。
ヒューマンドラマ織りなすティオレンシアの技の冴えわたる至高の一時。
そんな感じのハートウォーミングな同人誌であった。
それに感涙した『同人娘』たちは感涙に咽びながら、特大のファンサと共に霧散していくのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ナノ・ナーノ
●SPD
【ケルナノ】
面白そうな話題だったからケルチューブの配信撮影をと思ったけど、想像以上に度し難い光景だから撮影は打ち切るのなの
特にばら撒かれている同人誌は猟兵達の個人情報の塊みたいなものだし、この辺はコンプラ的問題で本人の確認が必要なの
それはともかく、撮影してないのにも関わらず撮影している時と同じ悪役令嬢っぷりを演じているのは流石なの
同人娘もご褒美ありがとうございますと悦に入っている隙を見て【洗脳電波】を発信なの
これで逃げられなくなったなの
持っていた同人誌を見せてもらうと、どうやらボクとヴィルトルートが出会って人気ケルチューバーになるまでを描いた昭和レトロの少女漫画風な漫画みたいなの
ヴィルトルート・ヘンシェル
●SPD
【ケルナノ】
オーッホッホッ!
惨めに地べたを這いずり回りながら私の同人誌をお拾いなさい!
撮影を打ち切るのは仕方ありませんわ
ケルチューブも規約事項に抵触すれば動画再生数の収益は出ませんもの
こんな惨めな同人娘を映すよりも、ビームスプリッター様のてっぺん到達チャレンジする私を映した方が大ヒット間違いないですわぁ!
ですが…私とナノ様のナマモノ同人誌がどんな出来栄えかに興味がないと言えば嘘になりますわ
まぁ、下積みから人気スタァに登り詰めるまでの自伝的作品ですわね
本当に色々とありまして、私…感動しましたわ!
あら…ごめんあそばせ
つい感極まってしまい【破鎧掌】でサインしてしまいましたわ
オーッホッホッホ!
天に散るは幻朧桜の花弁、舞うは同人誌。
一体全体何を言っているのかわからんと思うが、これが現実ってやつである。
今まさに『帝都タワー』にて撒き散らされているのは、同人誌。
それも猟兵たちをモデルにしたものである。
拝むようにして回収しているのが影朧『同人娘』たち。
彼女たちは涙ながらもページをめくる手が止められないようであった。
「うう、今日も推しが尊くて頭から汁がこぼれでそうですわ!」
「むしろ、でている! これは最早、愛と言っても過言ではないのではないでしょうか!」
彼女たちの嗚咽というか、慟哭というか、なんかそんな感じの叫びが『帝都タワー』にて響き渡っていた。
そんな『同人娘』たちを見下ろしていたのは、宇宙のお嬢様、つまり宇宙お嬢様こと、ヴィルトルート・ヘンシェル(機械兵お嬢様・f40812)であった。
なんで同じこと二回言った?
「それはお嬢様であることが最も重要なことだからです!」
そう?
「オーッホッホッ!! 惨めに地べたを這いずり回りながら私の同人誌をお拾いになっているだけあって、よくわかっているじゃあ、ありませんこと~!!」
盛大な笑い声。
高笑い。
それはヴィルトルートがほかよりもちょっぴり高い位置から『同人娘』たちを見下ろしているからであった。
「ちょっとおもしろそうな話題だったから蹴るチューブの配信撮影をと思ったけど、想像以上に度し難い光景だから撮影は打ち切るなの」
ナノ・ナーノ(ナノナノなの・f41032)は、まさか自分自身もモデルにされているとは露とも思わなかったことだろう。
同人誌は確かに此処の好きなものの結晶。
だが、それは実在しない人物に限る。
つまりは、コンプライアンスの遵守の上に成り立つものであったのだ。
そんでもって、ばら撒かれている猟兵をモデルにした同人誌は、なんていうか、その。
「個人情報の塊みたいなものなの! 狼ゴリラとかなんとか銘打たれている同人誌なんか、明らかに……!」
ケルチューバーのことが描かれている。
むしろ、ナノは思った。
ちょっとマニアックが過ぎるのではないか、と。だがしかし、そんなことは言ってられない。
ケルチューバーのプロデューサーとして、コンプラ問題はちゃんと提起すべきなのだ。
本人の意向も、意志もちゃんと確認してこそ撮影ができるってもんなのである。
なのに、この同人誌は違う。
許可?
取っているわけがない。他ならぬ題材にされているナノやヴィルトルートには一切話がきていないのである。
それもさもありなん。
なにせ、夜なべして一夜にしてこれを作り上げたのだから。。
「だからっって許していいわけじゃないなの!」
「ええ、こんな惨めな『同人娘』を映すよりも、『ビームスプリッター』様のてっぺん到着チャレンジする私を映した方が、万バズですわ~!!」
確かに。
だがしかし、ヴィルトルートはチラ、と同人誌かき集める『同人娘』たちを見やる。
表紙に自分らしきものが描かれている。
気にならないかと言われたら嘘である。
「流石はヴィルトルートなの。撮影してないのに悪役令嬢っぷりを演じているのは流石なの」
「元より、お嬢様であることは常日頃から変わりないのですわ! とはいえ!」
「ハッ!!」
しゅば、と『同人娘』たちがヴィルトルートにヴィルトルートモデルの同人誌を献上する。
なんていうか、理解が早いっていうか深いっていうか。
お嬢様とは立場が上のもの。
なら、推しとしている彼女たちは?
言うまでもない。
下々ということになる。となれば、お嬢様の威光にひれ伏すのが正しいファンの在り方というものである。
「……洗脳電波、必要なかったなの」
「ありがとうございます!」
「いや、なにもしてないなの……」
こわ、とナノは思ったが献上された同人誌をめくってみて笑む。
底に描かれていたのは、波乱万丈ケルチューバー成り上がり記であった。
ちょっと絵柄が昭和レトロな少女漫画みたいな画風であるのが気になったが、なかなかの筆力である。
「ふむふむ……私、感動いたしましたわ! あ、それ!」
破鎧掌(ブレイクビンタ)炸裂。
盛大にぶっ飛ぶ『同人娘』。
ファンサにしてはぶっ飛んでいる。
だが、『同人娘』は幸せそうな顔をして吹っ飛んでいた。
「ありがとうございます!」
それはいわゆる、著名人からもらうビンタと言う名のご褒美。
ヴィルトルートは、その領域にまでお嬢様力を高め、ビンタすることで御礼を言われる稀有な猟兵としての階段をまたステップアップしていく。
その様子をナノは、何ていうか、怖いなぁって思いながら見守るしかなかったのであった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
…ナマモノはあかんて!
ナマモノはあかんて!!!
作るにしてもこっそり作るのが、ナマモノ同人のお約束じゃん!
大々的に配らない!
ルールは守って楽しく同人活動!!
じゃあ…まあ塩対応で
スンと感情を殺して塩対応モード
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
無言で構えて【断章・必滅ノ焔】起動
剣から蒼炎をブワーって放って汚物…もとい、同人娘と同人誌を『焼却』
とにかく同人娘を視界に入れないように、塩対応塩対応
多分火炎放射器で芝焼きしているような感じで、淡々と燃やしていこう
いやとぼけても良いけど…この蒼炎が見逃すかな?
さあ焚書焚書
けしからん本は焚書の時間
あ、ついでに同人娘も燃やしちゃうよ
舞い散るのは、気まま自由に生きるサブカルマニアお姉さん系猟兵の同人誌であった。
黒髪に流れる一房の蒼い髪。
赤い瞳はたまに物憂げであるけれど、徹夜でゲームした後で眠いだけである。
また様々な衣装を着こなし、それは春も夏も彼女が注目の猟兵であることを示すには十分過ぎるほどに魅力的だったのだ。
そう、何を隠そう、舞い散るは月夜・玲(頂の探究者・f01605)の同人誌であった。
「模造神器……良いよね」
「……良い」
マニア同士は多くを語らない。
影朧『同人娘』たちは、玲という推しについて言葉多く語ることはなかった。
いや語れというのであれば、きっと一昼夜を通してぶっ続けで語り続けることができたであろう。
けれど、それをしない。
情熱とは秘めたるもの。
決して外に出してはならない。
それが……。
「……ナマモノはあかんて!」
噴出するのは蒼炎。
まるで火炎放射器。うぉん、まるで玲は人間焼却炉。
「ナマモノはあかんて!!!」
大切なことなので二回言う。そう、玲は感情を殺して、スンとした表情のまま塩対応モードで手にした模造神器をあわせて蒼炎をブッパしまくっていた。
いつも以上に雑な対応である。
しかし、彼女の放つ蒼炎は悉く舞い散る同人誌を燃やし尽くしていた。
そう、ナマモノ。
それは界隈においても禁忌。
情熱が止められなくなって作るにしたって、こっそりするのが礼儀。ナマモノ同人誌のお約束、玲お姉さんとの約束だ!
大々的に配らない!
ルールは守って楽しく同人活動。
そこんところが、夜なべして同人誌作ったグリモア猟兵にはなかったのだろう。
多分、問い詰めても悪魔なので、とかなんかよくわからん納得しかねる理由でけむに巻かれることであろう。それはそれで憎たらしい。
「ああっ! 私達のお宝が!!」
「家宝にしようとしておりましたのに!」
「ひどい、ひどすぎる。人間のやることかよぉぉぉ!!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図である。
慟哭が響き渡る。
だが、玲は彼女たちを慰めることをしなかった。
これも彼女たちを昇天させるためである。心を鬼にしてし塩対応しているのだ。
だがまあ、とにかく『同人娘』がいないかのようにバンバン燃やしている。
「ひどいよぉ! でも、そういう塩対応しているクールな玲様のお顔も素敵!」
「むしろ、そっちのほうがらしい! ファンサする玲様? 解釈違いです!」
「これがいい。このままがいい。私達、今、とっても推しに無視されてるぅぅぅっ!!」
玲は思った。
これはこれでちょっときついな、と。
だが、玲は止めない。止まらない。
そう、焚書である。有害図書は全部焚書にすべきなのだ。
悪いのは同人誌を描いたグリモア猟兵ではない、描かれた悪書のみなのだ。
故に人に罪なし。
「いや、あるでしょ罪。けしからん本は焚書の時間」
ああっ、六法全書位ある月刊誌みたいな厚さをした玲さんモデルの同人誌がぁ!!
「あ、ついでに」
塩対応の極地とも言うべき、玲の蒼炎は『同人娘』さえも灼く。
だが、彼女たちは良い笑顔で感涙しながら手を合わせていた。
いいのかな。こんなんで。いいのである――!
大成功
🔵🔵🔵
ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!
●ファンサ
褒めて~!もっと褒めて~!
んもーしょうがないなー
まあボクがかわいいからしょうがないよね!
●じゃあ天井や壁にシミになってもらって
っていうのもかわいそう?いやそうでもない?
いいかい、キミたちはタダ消えるんじゃない
ボクのなかでずっと生き続けるんだよ…
とUC『神罰』で強化した[餓鬼球]くんたちを召喚しよう!
飛んでくるレーザーももぐもぐ食べてもらいながらたとえ隠れていても【第六感】で察して地形や建物ごとパックン!してもらおう
それじゃボクじゃなくて彼らの一部になってるだけだって?
いやだなーもー
それが何か問題あるー?
次はもっとちゃんと生まれ変わって…いやダメかなーこれ?
ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)はごきげんだった。
なにせ、ちやほやされるの大好きであるし、そうされるのが当然であるし、そうでなければならないと思っているからである。
無自覚にも愛されることが当然と思っているロニにとって、『帝都タワー』を取り巻く異様なる状況は寧ろ望むところであったのだ。
「褒めて~! もっと褒めて~!」
彼は浮かれるように影朧『同人娘』たちの褒めそやす言葉にご満悦であった。
「お可愛らしくてよだれが止まりませんわ!」
「かわちいが過ぎます! こんなの天上の造形物である以外にありえまして?」
「むしろ、如何なる偶像も許さぬって感じですわ!」
彼女たちの言葉はなんていうか、大袈裟が過ぎる。
過剰に己の感情を発露しているだけに過ぎないような気がするが、しかし、ロニは嬉しかった。
満腹にはまだほど遠いが、しかしてむふふと笑む。
「んもーしょうがないなーまあボクがかわいいからしようがないよね!」
「とは言え、ロニ様。私達、お近づきになりたいわけではございませんの」
「そうなのです。推しを推せど、近づくな、が私達の標語でございまして。なので」
散ッ!!!
一斉に『同人娘』たちが逃げる。
「えっ? そうなの? じゃあ、天井や壁のシミになってもらって……」
「むしろ望む所!」
「かわいそうかなっておもったんだけど、そうでもないんだね……」
ロニはならば、と己が呼び出した球体を掲げる。
最大経をさらに百万倍したものを生み出し、それは丸ごと『同人娘』たちを飲み込むのだ。
「あれー!?」
「ふふん、いいかい。キミたちはただで消えるわけじゃない。ボクの中でずっと生き続けるんだよ……」
「これって球体の中じゃあありませんこと!?」
「そうだけど」
「それだとロニ様の一部担った、とはいい難いのでは……?」
その言葉にロニは、ンー、と考える。
いや、それもそうだな、と思い至る。
確かに、一理ある。
「いやだなーもーそれがなにか問題あるー?」
「ないです!」
「ないですわ!!」
彼女たちはとっても良い返事をしていた。
あまりにも良い返事であるから、ロニは一瞬面食らう……ことはなかった。
「だよねー! 次はもっとちゃんと生まれ変わって……いや、ダメかなーこれ?」
どの道、また『同人娘』みたいな感じになるのは明白であった。
どうするのがよかったのかな、と思いながらロニは、なんかよくわからんうちに球体の中で昇天して霧散していく『同人娘』たちを見やり、人間て難しいなーって思うのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・タタリクス
ノイン様が作った同人誌っ!?(ガタッ)
いえ、そんなエイル様似のキャラが所々いたりとかそんな事はないと思いますが!!(ばばばっと捲る
……ふぅ
あ、戦争でしたね
メイド頑張ります
ここは【メイドズ・ホワイト】で
力押しといきましょう
誰ですかいつも通りのやべーメイドと言った人は
超スピードで強引に肩を掴めば
あとはこちらのもの
すかさず壁ドン(膝を足の間に入れるファンサ付き)で抑え込み
「逃げないでくださいませ。貴女の為に命を削っているのですよ」(顔近づけ)
まぁ単なるUCの反動ですし
エイル様見たら寿命伸びるので実質ノーリスクなのですが
後はそうですね
某光の勇者を甘やかすムーブを流用していけば
大丈夫じゃないでしょうか?
息が荒くこぼれる。
ハァー。ハァー。ハァー。
正直ちょっと怖い雰囲気だなって思っただろうが、まあ、ある意味怖いのかもしれない。
ページをめくる手。
じっとり汗ばんだ指先。
その一枚一枚に何か情念のようなものがこもっているような気がしたかもしれない。
『帝都タワー』に舞い散る同人誌。
それはグリモア猟兵が夜なべをして作った同人誌である。
「まさか、ところどころに主人様似のキャラがいるかも……!」
そんな思いに駆られてステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、落ちている同人誌を片っ端からチェックしていた。
最初はゆっくりであったが、徐々に最適化された視線とページをめくる手が高速になっていく。
バババババッ! とすさまじい勢いで旋風を巻き起こすかのようにステラは同人誌をチェックしていた。
全てのコマ! 奥付! あらゆる点において『エイル』こと主人様の影がないかチェックしたのだ。
あまりにも本筋から遠ざかっている!
だが、ステラにとってはこちらが本筋!
「……ふぅ」
ステラは確認と言う名の検閲を済まして一段落するように息を吐き出す。
「メイド頑張ります」
なかった。
『エイル』の影がなかった。『エイル』のエの字もなかった。
だが、そんなステラを推している影朧『同人娘』たいちは遠巻きに彼女を見守っていた。
「主人様の影を追って生きるメイド不憫尊き……」
「逢える、逢えない、と花占いしているのですわ。同人誌で」
「なんて健気! 推せる!!」
彼女たちも大概である。
そんな彼女たちに目にも止まらぬ超速度でもってステラは踏み込んでいた。
「ひっ! 顔が良い! 顔だけが良いッ!!」
「いいえ、今の私はメイド。この程度できて当然です」
見事なカーテシーを決め、瞬間的にステラは『同人娘』たちの肩を掴んでいた。
ドン! とかべに押し付けられる『同人娘』たちの胸が高鳴る。
トゥンク。
高鳴る要素あった?
あるのである。古来より壁ドンとは、そういうもの。乙女の嗜み。オラオラ系攻略対象者の必殺技。
そういうもんなのである。
「逃げないでくださいませ。貴女の為に生命を削ってるのですよ」
顔を近づけるステラ。
生命を!?
そう、彼女のユーベルコードは確かに彼女を超有能なスーパーメイドにしたが、解除するまで寿命を削るのである。
まさか自分ごときのために、そこまで過剰なファンサを!?
「あっ、あっ、にげませんから、その寿命は動やったら伸びるのですか? 課金ですか? 課金ですよね? 課金しまぁす!!」
「いえ、『エイル』様を見たら寿命が伸びるので実質ノーリスクです」
「はぅっ! 一途!」
勝手に昇天していく『同人娘』。
何が彼女たちの琴線に触れたのかさっぱりわからんが、なんか結果オーライであった。
「ふむ。彼女たちの様子を見るに、このどこかに『エイル』様の同人誌がある……? いえ、ですが、猟兵を題材にしたものであるのならば……」
彼は猟兵ではない。
なら、彼単体ものではない。
ということは、カプ本……。
「あの女ぁぁぁぁぁ!!」
ステラは一瞬で誤解して、〇〇×『エイル』本か、『エイル』×〇〇本を求めて帝都を彷徨う悪鬼メイドとなるのであった――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
ユーニ上官殿(f29981)と
「ユーニ上官殿、本日はご参加してくださりありがとうございます」
ドロモス・コロスでそこら辺に生えてる光線銃を回収、そしてスピーカー兼バックバンドとして配置。
…戦法は本当にこれで大丈夫なのですか?
『まぁまぁまぁ、こういうの私の方が得意だからね!催眠術にかかったと思って!』
ユーニ上官殿がそう言われるのであれば……
『私は!?』実際クレイドルの魔音【催眠術】に掛かってますが、素面ではできませんよこんな事。
『私としても不本意だけどね!まず成功体験が大事だからね!!』
【舞台増上】を発動し【楽器演奏】【歌唱】【ダンス】複合!
一画を即席ライブステージにユーニ上官殿とゲリラライブ!同人娘達を集める!
『見られたくはない。でも推しのライブには参加したいのがファンなのさ!
それに一人じゃ恥ずかしくても大多数の一人なら気にならない!!』
ユーニ上官殿と手を取り合い、笑顔で踊り、
『さぁ、最後はウィンクファンサで尊死させろー!!』
聴いてくれて、ありがとー!!!(やけくそウィンク&光線銃撃ち!)
ユーニ・グランスキー
小枝子君(f29924)と参戦
「ふふふ、構わないさ。君の素敵な姿を見れるし興味もあったからね」
AIクレイドルの意見に肯定的な理解を示す
小枝子君、戦略的にも間違っていないさ
相手を釘付けに出来ればそれだけ周囲の援護にもなるだろうしね
内心で小枝子の格好に眼福を感じるがいちいち言わない
小枝子とお揃いの舞台衣装を着て光線銃を拾い『ダンス』『楽器演奏』『歌唱』『メイク』でパフォーマンス
ベースを鳴らし【女狩人のビート】使用
「ほらこっちにおいで?」
熱唱とダンスで『同人娘達』の恥ずかしがる気持ちをで吹き飛ばして熱狂させようじゃないか
小枝子君の手をとって笑顔で踊ろう
こっちはノリノリでウインクも合わせ光線銃も撃つ♪
正直なところを言うと、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は乗り気ではなかった。
何に、と問われたのならば、サクラミラージュにおける大いなる戦い、帝都櫻大戦、その一つの戦場である『帝都タワー』に赴くことを、だ。
周囲には幻朧桜の花弁が舞い散るのと同じようにグリモア猟兵が作った猟兵を題材とした同人誌が舞っている。
なんていうか、異様な光景であることは言うまでもない。
もう帰ってもいいんじゃないかと小枝子はもじもじしていた。
だが、帰れない。
何せ。
「ユーニ上官殿、本日はご参加してくださりありがとうございます」
そう、小枝子に共するのはユーニ・グランスキー(黒縞瑪瑙の才媛・f29981)、上官である。
彼女が共にあるのに自分が逃げ出すわけにはいかない。
小枝子の操る子機『ドロモス・コロス』たちが『帝都タワー』、『ビームスプリッター』の触手から生えている光線銃を回収し、スピーカー兼バックバンドとして配置されていく。
一体全体何をしようというのか。
「ふふふ、構わないさ。君の素敵な姿を見れるし、興味もあったからね」
そう言ってユーニはウィンクしてみせた。
彼女の視線の先にあるのは、普段の小枝子とは打って変わった……なんともパンクなファッションスタイルの彼女だった。
まるで学園祭に浮かれるティーンエイジャー。
そんな彼女のいつもと異なる姿にユーニはいたずらっぽくウィンクすると、周囲からは黄色い歓声が響き渡る。
それは影朧『同人娘』たちの歓声であった。
無論、周囲に撒き散らされるように頒布されている同人誌に彼女をモデルにしたものもある。
ユーニは騎兵団を率いる若き女傑であり、団のマネジメントも行っている。すでにスパダリの要素を持ち得るが、加えて彼女はキャバリアにも乗り込むことができるのだ。
その組織運営力や電脳操縦技術は卓越したものであり、一角の人物であることは疑うまでもないだろう。
そんなスパダリ猟兵のごときユーニを知った『同人娘』たちが彼女に夢中にならぬわけがない。
加えて、小枝子との絡み!
突然の公式からの供給!
とあれば、黄色い歓声は悲鳴に変わるのは必然でもあったのだ。
「……あの、戦法は本当にこれで大丈夫なのですか?」
不安げな小枝子はまだもじもじしていた。
いつもの格好ではなく、本当に十代のような服装に未だ慣れない様子であった。
『まぁまぁまぁ、こういうの私の方が得意だからね! 催眠術にかかったと思って!』
「まるで信用がないであります」
「いや、『クレイドル』の意見を我は肯定する。小枝子君、戦略的にも間違っていないさ。我らの目的は影朧から光線銃を奪い、逃げる彼女たちをひとまとめにして一網打尽にすること。この場を制圧する、ということはそういうことさ。ならば、相手を釘付けに出来る手段を君が持っているというのは、それだけで周囲の援護にもなるだろうしね」
ユーニはそう小枝子に告げる。
小枝子はその言葉に感じ入るようであった。言葉の重みが違う。
「そうおっしゃられるのであれば……」
『私は!?』
シカトである。
そんな二人の様子を見やりながら、ユーニは小枝子の姿に眼福であることを敢えて口にはしない。
わざわざ口にしなくてもいいとわかっているし、何せ今の彼女もまた小枝子と同じファッションスタイルなのだ。
いわゆるおそろいコーデ。
双子コーデともいうのかもしれない。
「無理ぃっ! 双子コーデ似合いすぎぃ!」
「目が潰れちゃう! どこに課金すれば推しの衣装が増えますかっ!!」
そんな『同人娘』たちの様子にユーニは、ふっ、と笑む。
その表情に彼女たちはまた卒倒してしまうが、それでも今まさに行われんとしている小枝子とユーニのライブは止められない。
小枝子はすでに催眠術に掛かっている。
素面でガールズバンドの真似事なんてできようはずもない。
故に、小枝子は己を騙し尽くす。
『私としても不本意だけどね! まずは成功体験が大事だからね!! さあ、頼んだよ!!』
「ああ、任せたまえ。では、いこう。我の演奏を聞きたくば――」
すぅ、と息を吸うユーニ。
彼女の息がマイクに吸い込まれた瞬間、それは女狩人のビート(アルテミスビート)となって『帝都タワー』の直下に響き渡る。
「ほらこっちにおいで?」
その言葉で『同人娘』たちの推しとの適切な距離という貞操にも近しい観念はぶっ飛んでしまった。
近くで、持っ近くで見たい!
その尊さを至近距離で浴びたい!
その欲求をもってユーニは『同人娘』たちを熱狂の渦に一瞬にして引っ張り込んだのだ。
「さあ、いくよ、小枝子くん!」
手を取って小枝子をステージの中央に引っ張り出すユーニ。
不慣れながらもぎこちない笑顔を浮かべる小枝子に『同人娘』たちの尊さゲージは振り切られていた。
もうとっくに限界を突破している尊さ。
それはもう『同人娘』たちの許容量をとっくにオーバーするものであり、溢れ出す気持ちが止められなくなっている。
『ふっ、やはりね。見られたくはない。でも推しのライブには参加したいのがファンなのさ!』
「この欲求を止められはしない。だからこそ」
ユーニはウィンクをばちこんと決めて見せる。
「わたしにウィンクされましたわ!」
「いいえ、私ですわ!」
「どこに目をつけておられるの、私ですわ!!」
もうしっちゃかめっちゃかである。
ブンブン振られるサイリウムにうちわ。
こっち見て、ウィンクして、ばきゅーんして☆ などなど。
それはもう色とりどり過ぎる。
そんな光景を小枝子は見下ろして笑顔を浮かべる。
悪くない、と思ったのかもしれない。
目の前にて湧く『同人娘』たちを見て、小枝子は催眠術にかかりながらも、確かにそう思ったのだ。
『彼女たちは一人じゃ恥ずかしがり屋さんだ。けれど』
「大人数の一人ならば気にならない。木を隠すにはなんとやら、だな。さあ、光線銃のビームで飾ろう。小枝子君、君の特別な」
『ウィンクファンサで尊死させろー!!』
二人の言葉を背に受けて小枝子は、ヤケクソでもなんでもなく本心から叫ぶ。
ばっちこーん☆
びっくりするくらいとびっきりのウィンク。
それは光線銃のビームよりも苛烈で激烈で強烈な一撃。
「聴いてくれて、ありがとー!!!」
その声は、いつもの雄叫びではなく。
特大のファンサとして、『帝都タワー』に集った『同人娘』たちを残らず昇天させ、光の中に霧散させるのだった――!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵