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帝都櫻大戰①〜誰がために身を擲つか

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線 #透明軍神『ソウマコジロウ』

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#透明軍神『ソウマコジロウ』


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●唯一にして無二
 真を知れば、それはあまりにも偉業と呼ぶに相応しきことであった。
 あと一歩。
 帝都を制圧せしめ、幻朧帝を殺すに至らねど。
 それでも彼は――透明軍神『ソウマコジロウ』は、偉大なる先駆者。
「遙けき昔……」
 彼は語る。
 善なる|『超古代種族』《エンシェント・レヰス》四種族と、悪なる『幻朧帝イティハーサ』との大戦を。

「『幻朧帝イティハーサ』は、エンシェント・レヰスの故郷尽くを|破壊《カタストロフ》せしむるも、四種族全ての命と引換えに想像されし『幻朧櫻』の根元に封ぜられるる」
 彼の語る所は創世神話にも似ていた。
 事の起こり。
 諸悪の根源。
 善と悪。
 そして、語られるは、この世界の根底である。

「そしてその上に、幻朧帝を永代に渡り埋葬すべく建立された仮初の大地。それこそがこの地、『櫻花幻朧界』――サクラミラージュ』なり……!」
 そう、サクラミラージュとは『幻朧帝イティハーサ』を封ぜる重石sのもの。
 だが、彼の表情が陰り、曇り、そして消えていく。
 比喩ではない。
 彼の体躯が、四肢が、透き通るように透明になっていくのだ。
「されど今、幻朧帝は蘇らんとしている。それは彼奴が、善なるエンシェント・レヰスの四代指導者をオブリビヲン化し、己が配下に加えた為である。我も間もなく彼奴の傀儡と化す……」
 そう、透明化しているのは彼がオブリビヲンとして望まぬ復活を果たそうとしているからだ。
 幻朧桜の花弁舞い散る中、彼の声だけが響く。
 残された時間はもう幾ばくもないことを示していた。
「心ある者達よ、生命ある者達よ、これより始まる『帝都櫻大戦』に備えよ……! そして、我を打倒せよ。それこそが我の望み……――!」

●帝都櫻大戦
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのは黒い学生服に身を包んだ少女とも言うべき猟兵、ノイン・シルレル(第九の悪魔・f44454)であった。
 彼女は黒髪を揺らし、薄紅色の瞳で猟兵たちを見つめる。
「影朧跋扈し、万年咲き誇る幻朧櫻の花弁散る帝都、その青山にて現れたるは、誰も見たこともない、誰にも語られることのない、唯一無二たる軍神。その名も」
 ノインは溜めた。
 何を溜めたのかっていうと、間を、である。

 今やサクラミラージュにおいては、大いなる戦い、帝都櫻大戦が勃発している。
 悠長に間を溜めている余裕などないのだ。
「透明軍神『ソウマコジロウ』。嘗て帝都を揺るがしたる一大事、帝都制圧と幻朧帝暗殺未遂。これなるは世紀の大事件として語られたる所。はちゃめちゃ号外と言ってビラ配りしていた電波塔頭から突っ込んだ触手が言うような感じで知られるところの、その『ソウマコジロウ』がオブリビヲン化し、青山にある『帝都櫻學府本部』を制圧し、サクラミラージュそのもの大地破壊儀式を行おうとしています」
 彼女の言葉は時折なんかこう、ゆるっとしているが、まあ、説明はできているようである。

「彼はオブリビヲン化したことにより、望まぬ凶行に手を染めんとしています。彼の本来の目的は封印された幻朧帝を完全に殺すことでした。しかし、今や彼は望まぬ蘇生を果たしてしまいました。その望みは、己を打倒すること。であれば、その望みを叶えて差し上げねばなりません」
 ノインは語る。
 透明軍神『ソウマコジロウ』は最初の奇怪人間。
 完全に透明化できる『透明人間」であり、その肉体と装備、ユーベルコードをも自在に透明化することで、決して相手に自身の存在を把握させぬまま、必中の先制攻撃を仕掛けてくるというのだ。

「つまり、絶対に一撃もらってしまう、ということですね。ずっこいですね。ですが、わかりますよ。皆さんが既に対策に当たりをつけているということは」
 ノインは猟兵達を見やる。
 その顔に自信が溢れていることを彼女は見て取ったのだ。
「では、いってらっしゃいませ。私は後方で転移を維持しております。それが望まれたことですから」
 彼女はそう言って猟兵たちを『帝都櫻學府本部』のあるサクラミラージュの青山へと転移させるのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。

 ※これは1章構成の『帝都櫻大戦』の戦争シナリオとなります。

 かつて帝都を唯一制圧せしめることに成功した『ソウマコジロウ』は、歴史に語られることのない目的『幻朧帝の完全なる殺害』を果たせぬまま没しました。
 しかし、彼は今や幻朧帝によって望まぬ蘇生、つまりはオブリビヲン化し『帝都櫻學府本部』にてサクラミラージュの大地破壊儀式を行おうとしています。
 彼を打倒し、望まぬ蘇生から救いましょう。

 ですが、彼は極めて強力な透明人間。
 肉体と装備、ユーベルコードを透明化させることで、絶対に感知できぬ必中の先制攻撃を仕掛けてきます。

 プレイングボーナス……敵の必中先制攻撃に対処する/敵の透明化能力に対処する。

 それでは、幻朧櫻舞い散る帝都にて戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 ボス戦 『ソウマコジロウ』

POW   :    透炎剣
【透明化中に見えない炎を帯びた刀】で虚空を薙いだ地点から、任意のタイミングで、切断力を持ち敵に向かって飛ぶ【透明な炎】を射出できる。
SPD   :    透明魂魄軍団
【叛逆の同志たる「透明魂魄軍団」】の霊を召喚する。これは【全身を透明化したまま戦闘を行える能力】や【様々な和風の武器】で攻撃する能力を持つ。
WIZ   :    透明念動弾
【自身を共に透明化した装備】から【見えざる念動弾】を放ち攻撃する。その後、着弾点からレベルm半径内が、レベル秒間【透明化】状態になる。

イラスト:秋原 実

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

明和・那樹
●POW

見えない敵…か
高難易度クエストの敵が攻撃する際にしか姿を現さないインビシブルチャレンジを何回か挑戦しているけど、頼れるのは行動パターンの理解とVRゴーグル越しで聞き取れる音の響き具合での感知頼み
意識を集中して頭の中でイメージすれば…必中の先制攻撃は双剣を持ってして防ぐ事は何とか可能だ

問題はソウマコジロウが使う剣のリーチを見て計れないことで、防戦は善しとしてこちらからの攻勢は自殺行為に等しいか
なら、お互いに視えない状態にすれば…どうだろう?
場所を移して暗所におびき寄せたら、【黒影剣】を使ってこちらの姿を闇に溶け込ませる
後はお互いの直感頼みの真剣勝負…闇のオーラに触れた瞬間が生死を分かつよ



 サクラミラージュの大地を破壊せんとする儀式。
 それを行わんとしているのは、嘗て帝都を一時的とは言え制圧せしめた怪奇人間、透明軍神『ソウマコジロウ』であった。
 彼は大地の破壊など望まない。
 明かされなかった幻朧帝暗殺の理由。
 それは諸悪の根源たる幻朧帝を封印ではなく確実に殺すこと。
 故に彼は本来であれば、『幻朧帝イティハーサ』に抗う者であった。
「されど、我が身は既に傀儡。心ある者達よ。命ある者達よ」
 声だけが聞こえる、と帝都櫻學府本部に駆けつけた明和・那樹(閃光のシデン・f41777)は見えぬ『ソウマコジロウ』の姿を探す。

 だが、見つからない。
 いる、という気配があれどしかし、見えないのだ。
 見えない敵に対してどのように対処すべきか。
 彼はこれまでゲーム世界、ゴッドゲームオンラインで多くの高難易度クエストをクリアしてきた熟練のゲームプレイヤーだ。
「高難易度クエストには、攻撃する際にしか姿を現さないエネミーもいたけどさ……」
 インビシブルチャレンジ。
 何回か挑戦して入るが、それはエネミーの行動パターンを理解していればこそ成り立つゲーム性であった。
 パターン、VRゴーグルのヘッドセットから聞き取れる僅かな音の響き。
 それだけが頼りだったのだ。

 だが、今回の透明軍神『ソウマコジロウ』は違う。
 完全に見えないのだ。
「我を止めてくれ。傀儡たる身は、お前たちを見誤ることはない。故に」
 風切音が響く。
 それは『ソウマコジロウ』の放った斬撃が炎を放ち、那樹へと迫る音だった。
 だが、生み出された炎すら見えない。
 透明な炎は躱すことができない。
 なら、どうするか。
「集中……!」
 那樹は瞳を閉じ、迫る攻撃の気配を双剣でもって受け止める。
 なんとか受け止めることはできたが、透明な炎は那樹の肌を焼く。伝わる痛みに呻く。
 集中が途切れる。

 なんとか建て直さねば、と思った瞬間、那樹はかろうじて双剣を振るう。
 衝撃と共に音が響く。
 那樹を横合から襲ったのは完全なる透明化を果たした『ソウマコジロウ』の斬撃であった。
「ぐっ!」
「双剣使い。それでは足りない。一方的に敵に有利な状況を良しとすることは!」
「なら、こうするまでさ!」
 那樹の瞳がユーベルコードに輝き、己の双剣から闇のオーラが噴出する。
 身を覆うオーラによって那樹の姿が闇に紛れる。
 透明化と闇。
 互いに互いを認識できぬ状況であれば、如何に透明化できる『ソウマコジロウ』とて己に攻撃を当てることはできないだろう。
「後は……直感頼みの真剣勝負……」
 闇のオーラは四方八方に広がっていく。

 互いに見えぬ中、那樹は闇のオーラが『ソウマコジロウ』の生命力を奪った感触を頼りに踏み込み、双肩を振るう。
「そこだっ!」
 黒影剣の斬撃の一撃が『ソウマコジロウ』の体躯を捉える。
 だが、手応えが浅い。
「けど、一撃!」
 そう、戦えないわけではない。
 那樹は己の双肩に伝わる感触を掌に感じながら、決して倒せぬ敵ではないと確信するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリス・フェアリィハート
アドリブ連携歓迎

【SPD】

この世界でも
いよいよ戦争が…!

自身の翼で飛翔
【空中機動】等駆使し
【空中戦】も行い
立体的に立回り

先制攻撃及び
透明化能力は
【第六感】【心眼】【残像】
【通常攻撃無効】
【結界術】【オーラ防御】等
総動員し
防御行動しつつ
UC発動
戦場全体に
焔の蜘蛛糸領界展開
それと組合せ
クイーンオブハートキーを手に
【ハートのA】を展開
【破魔】の
【全力魔法】や【誘導弾】を
全方位的に【一斉発射】し
【弾幕】を張り
敵のUCの軍勢を相殺しつつ
透明化した
コジロウさんを
攻撃
受けるダメージは
UCの蜘蛛糸の露で回復

『戦場内にいる限り、蜘蛛糸が捕らえます――コジロウさん…こんな形でしか、貴方を救えなくて…ごめんなさい』



 アリス・フェアリィハート(不思議の国の天司神姫アリス・f01939)は憂う。
 サクラミラージュ世界。
 影朧という弱いオブリビヲンを転生という手段でもって救うことのできる世界。
 されど、勃発するは『帝都櫻大戦』。
 それと共に白日のもとに晒されるのは、この世界が諸悪の根源たる『幻朧帝イティハーサ』を封ぜる重石であるという事実。
「この世界でもいよいよ戦争が……!」
 けれど、立ち止まっている時間はない。
 猟兵として戦うのならば、ためらっていては救えるものも救えなくなってしまう。

 自身の翼を羽ばたかせ、アリスは飛翔する。
 立体的に立ち回るのは、透明軍神『ソウマコジロウ』が何処から攻撃を放ってくるのかわからないからだ。
 彼の能力は透明化。
 装備も、姿も、ユーベルコードさえも透明化する恐るべき力。
「嘗て我と共に立ち上がりし叛逆の同志たちよ、許せ」
『ソウマコジロウ』は望まぬ蘇生と共に己の力を幻朧帝に利用されている現実を憂うが、しかし、止められない。
 彼のユーベルコードによって召喚された嘗ての叛逆の同志たる兵たちが、透明化したままアリスへとピストル銃の引き金を引いたのだ。
 弾丸が迫る。
 オーラを広げたアリスは、その弾丸を防ぐ。

 弾かれた弾丸があちらこちらに飛び散り、アリスの渾身たる力がなんとか『ソウマコジロウ』のユーベルコードによって召喚された同志たちの攻撃を防いだのだ。
 だが、依然、見えない。
「なんていうことを……でも、――全てを灼く紅蓮の星焔の蜘蛛糸…全てを癒す銀なる星の蜘蛛糸――それらの領界を…!」
 アリスの瞳がユーベルコードに輝く。
 見えぬ敵。
 どこにいるのかもわからない敵。
 それを絡め取るのは、アトラクナクア・ヴァーミリオンウェブ。
 万象等あらゆる全てを灼く星焔の蜘蛛糸領界が張り巡らされる。
 それは彼女の技量による限界時間まで維持され、『ソウマコジロウ』を見えぬままに捉え、ダメージを与え続けるのだ。

「蜘蛛の糸……斯様な地獄にありて、我に垂らされたものか」
「コジロウさん……こんな形でしか、貴方を救えなくて……」
 アリスの頭上から降り注ぐは、全力の魔法に寄る一斉射。
 弾幕が雨のように降り注ぐ中、アリスは狙いをつけていなかった。
『ソウマコジロウ』は未だ完全なる透明化のまま。
 姿を見ることはできない。
 その目を見て己の想いを告げたかったけれど、それすら叶わない。
 それを為しているのが『幻朧帝イティハーサ』、諸悪の根源なのだ。
 望まぬ蘇生のまま力を振るわねばならない、忸怩たる想いをアリスは思う。口惜しいだろう。屈辱であるだろう。

 だからこそ、アリスは己の力を振るう。
 ユーベルコードで輝く瞳で、どこにいるかもわからぬ『ソウマコジロウ』に己が重いだけでも届けんとするのだ。
「……ごめんなさい」
「幼きものよ、謝ることはない。我の不始末、それを成す。それだけを考えよ」
 その言葉と共にアリスは頷き、己の全力で持って弾幕を降り注がせるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

祝・成豊
植物系の神としては、桜たちの暴走は他人事ではないのう
しかし、これほどの混乱……うまくすれば、この隙に儂の|森《領土》をこの地に根付かせることができるやもしれぬ
ふふ、そうと決まればしっかりせねばな!

一撃は必ず食らうのじゃったか……そら来た!
ぐ、炎か……しかし植物が炎に弱いというのはちと固定観念が過ぎるのう!
受けた熱量は『太陽の紋章』でエネルギーに変換、ついでに水球を造って頭から被るぞ
さあここからじゃ、世界樹の根で地を突き破り、一帯を閉じ込めるように檻とする
そこに細く硬い髪を張り巡らせ切断罠としよう
火と斬撃はもはや効かぬ、その分儂は強うなるぞ!
檻も段々小さくし、内を植物で満たすのじゃ、逃がしはせぬ



『幻朧帝イティハーサ』の復活。
 これによりサクラミラージュの幻朧櫻の尽くが暴走をしていた。
 散る花弁は常なるものなれど、これが異常なる事態であることは一目瞭然。
 加えて、『帝都櫻學府』本部たる青山は、透明軍神『ソウマコジロウ』によって大地の破壊儀式が着々と進められていた。
「止めるには」
「我を打倒する他ない。心ある者達よ。命ある者達よ。それ故に、我が身という負債を押し付けねばならぬ。許せ」
 祝・成豊(豊穣・鎮守・盛衰・f42643)の問いかけに『ソウマコジロウ』の声だけが響く。
 彼は最初の怪奇人間であり透明人間である。

 彼の姿を最早誰も見ることはできない。
 完全なる透明化によって、彼の苦悶、苦渋浮かぶ表情すら知ることはできないのだ。
 嘗て、幻朧帝を完全に殺すために叛逆の徒となった『ソウマコジロウ』は、今やその仇敵の傀儡として彼の意志とは真逆の行い……すなわち、サクラミラージュの大地の破壊を行わされようとしているのだ。
「いらぬよ、そのような言葉は」
 植物の神として、幻朧櫻の暴走は他人事ではない。
 混乱が世界に満ちている。
 そこで成豊は、はたと思い至る。
 これほどの混乱である。うまくすれば、この隙に自身の|森《領土》をこの地に根付かせることができるかもしれない。
 ならば、しっかりことを成さねばと思うのだが……。

 しかし、身に走るのは斬撃の衝撃と炎の熱であった。
『ソウマコジロウ』の透明化は装備、ユーベルコードにすら波及する。
 見えぬ炎が己の身を灼く。
 だが、成豊は笑む。
「……そら来たことか!」
 炎が己の身を包むが、しかし、彼は 天を呑む星の大樹(エオニオ・デントーロ)である。
 たしかに炎は樹を燃やすだろう。
 だが、彼は神性である。であれば、炎に対する対策を取っていないわけがない。
「長く生きておるのじゃ。それくらいはの」
 身を灼く炎を無視しながら、成豊はユーベルコードを瞳に宿しながら、一歩を進める。

 依然、敵は見えない。
 己が手にある紋章……寄生虫型オブリビオン『太陽の紋章』によって炎のエネルギーを変換し、水球を生み出し、炎を鎮火させる。
「ここからじゃ!」
 成豊の周囲に宙より現れた世界樹の根が槍のように大地に突き立てられる。
 凄まじ衝撃。
 だが、『ソウマコジロウ』を穿つ手応えがない。

 否である。
 これは攻撃ではない。
「見えぬのならば、一帯丸ごと閉じ込めるのみ!」
 張り巡らされた根が地面より走り、透明化した『ソウマコジロウ』ごと包み込む。
 まるで球状の罠だ。
 しかも、成豊の硬い髪を張り巡らされているがゆえに、その切断力は凄まじいものとなっていた。
「さあ、逃しはせぬ」
 成豊は見えぬ敵を捉えるべく、その檻たり根を次々と根付かせ、『ソウマコジロウ』を追い詰めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葛城・時人
本当はしたくない
​ククルカンは俺の無二
十年以上ずっと一緒の相棒に等しい存在
恐らく俺が最後の息を引くまで

だけど
「ごめんな、今回は」

頼むと言うといつも通り肩から顔を出してた蟲は
きゅい、とどう出しているか分からない声で肯ってくれた

透明の存在を感知する術は俺には無い
全技能で抵抗しても初撃は避けようがない
でも
俺にはこいつが居る

激烈な一撃を予想外の方向からお見舞いされる
けど
最初から俺に張り付いてくれてた蟲達のお陰で
戦闘不能は免れた!

「サンキュ!」
血反吐を吐いても生きてたらユーベルコードは撃てる!
白燐剣光大神楽を詠唱

「視えなくても縫い留めたらそこにしか居られない!」
倒される事が望みなら朽ちるまで全力で苛烈に



 これまでとこれからがある。
 やりたいこととやりたくないことがある。
 天秤にかけるのは何れのことであったかなどいうまでもない。
 だからこそ、己の意志を感じ取って肌を覆う『ククルカン』は、どのような理屈で鳴いているのかわからない鳴き声で肯定してくれた。
 己の想いを。
 ずっとずっと一緒だったから、きっと己が思うよりも早く動いてくれたのだと思う。
 本当はしたくない。
 こんなことをしたいとは思わない。
『ククルカン』は葛城・時人(光望護花・f35294)にとって無二。
 十年以上ずっといっしょの相棒に等しい存在。
 恐らくこの関係は時人が息を引く最期の時まで変わらないのだろう。
 不変というものがあるのならば、きっと時人は『ククルカン』のことを言うのだと思った。

 だけど、と時人は小さくつぶやく。
「ごめんな、今回は」
 頼む、と言うべきだったのかもしれない。だから、言い直した。
 謝るよりも頼ることへの感謝のほうが先に立つ。
「頼む」
「きゅい」
 鳴いた『ククルカン』に迫るは見えぬ弾丸だった。
 時人に透明化した存在を感知するすべはない。
 如何なる技能を駆使したところで、透明軍神『ソウマコジロウ』の攻撃は必中である。躱すことも、見ることも許されない一撃。
 これを如何にして凌ぐか、が時人にとっての課題だった。

 どうしようもないことだ。
 けれど、時人には『ククルカン』がいる。
 唯一無二の相棒がいる。
 それは心強いことだ。
「心ある者よ。その生命は如何なる為に」
 声が聞こえる。
 これが『ソウマコジロウ』の声かと時人は思う。
 確かに彼の攻撃は強烈だった。己を守っていた『ククルカン』越しですら、凄まじい衝撃に骨身がきしみ、臓腑が揺れる。
 吐き気がこみ上げてくる。
 けれど、己の体躯に張り付いていた『ククルカン』のおかげで戦闘不能に陥ることだけは避けられたのだ。

 すまない、よりもありがとうを。
 それが相棒に報いるただ一つの言葉だった。
「サンキュ! 俺は! 共に在る者たちのために生命を使う。そうやってきたんだ!」
 ユーベルコードに輝く瞳。
 身を覆っていた『ククルカン』が変化し、光剣へと変貌する。
 剣舞の如き太刀筋は、光を伴う衝撃波となって見えぬ『ソウマコジロウ』へと走り、未だ存在を知覚できぬ敵の視覚を奪う。
「……我が視界を白で塗りつぶすか」
「視えなくても縫い留めたら、そこにしかいられない!『ソウマコジロウ』!」
 白燐剣光大神楽(ビャクリンケンコウダイカグラ)は、そのまばゆい光と共に『ソウマコジロウ』の足を止め、彼の望みである自身の打倒を成すために波動の如き光の衝撃波を時人は放ち続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
見えない敵……暗殺者でもあるまいに、困ったもんだ。
そんなんとの戦いは怖ぇし、無傷でやり過ごす算段も正直、思いつかねえ。
おれの実力じゃ、得意の〈第六感〉でなんとか攻撃の前兆を察知して、決定的な一撃を〈オーラ防御〉と〈見切り〉を組み合わせて防ぐんが手一杯だな。

初撃を凌いだら、〈覚悟〉を決めて敵と対峙。
たとえ見えなくても、UCを使って〈第六感〉を強化すれば、どこにいるかはわかる。
〈武器落とし〉や〈目潰し〉を狙った攻撃をばら撒いて牽制しながら、奴さんの攻撃のペースが乱れねえか、じっと耐えて待つ。
あとはいつも通り、隙を見せたところを〈スナイパー〉ばりの一撃で撃ち抜くだけだ。
おれにだって、意地がある。



 ユーベルコードの明滅が戦場たる『帝都櫻學府』の本部、青山にて広がっている。
 煌めく光は戦いの光。
 しかし、その猟兵たちが戦う戦場にあって敵の姿がない。
 いや、違う。
 視えないのだ。
 透明軍神『ソウマコジロウ』は、怪奇人間。
 このサクラミラージュにおける最初の怪奇人間であり、透明人間なのだ。彼は帝都転覆を狙ったのではない。
 サクラミラージュの大地という重石によって封印していた幻朧帝を完全に殺す耐えに帝都を制圧し、為し得ることができなかったのだ。
「心ある者たちよ。命ある者たちよ。我を打倒せよ」
 その声だけが響く。

 傀儡となって透明化した『ソウマコジロウ』のユーベルコードは必中。
 故に鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は己の実力を顧みる。
 得意の第六感は攻撃の予兆を察知できても、躱すことはできない。何せ視えないのだ。
「……暗殺者でもあるまいに、困ったもんだ。そんなんと戦わなきゃならねぇなんて……」
 怖ぇ。
 小さくつぶやく。
 恐怖は心があるがゆえである。
 心なくば、恐怖することもできないだろう。けれど、これまでもそうだったのだ。
 大きな戦い、小さな戦い。
 何れにしたって嵐は恐れを心に抱いていた。
 無傷ではいられない。やり過ごすこともできない。
 かといって正攻法でどうにか出来る気もしない。

 なら、どうするか。
「我が一撃を前にして足を止めるか」
 周囲に凄まじい数の気配がする。見えない。けれど。
「これは……!」
「我が叛逆の同志たち。その身に受け止めきれるか!」
 迫るは無数の気配。
 斬撃銃弾。
 無数の攻撃が嵐を囲い込み、一斉に叩きつけられる。オーラの防御も役に立たない程の痛烈なる一撃。
 その一撃を受けながら嵐は血反吐が己の口からこぼれたことを理解する。
 怖い。
 痛い、と思うより強さが先に立つ。けれど、それでも嵐の第六感は敵を見据える。

「この場で一番怖いのは、やっぱりお前だ。『ソウマコジロウ』」
 そう、痛みは堪えられる。
 のなら、恐ろしさだって耐えられる。
 足が震えても、腕がかじかんでも。
 それでもできることがあるのだ。
 残されし十二番目の贈り物(ベニル・ドゥーズ)は、常に己の手のうちにある。これを如何にして使うかこそが、己の中にある勇気というもの。
「……茨の迷宮、百歳の夢、其を切り拓く導を此処に!」
 瞳に煌めくはユーベルコード。
 嵐はただ一射。
 唯一射のために『ソウマコジロウ』の見えぬユーベルコード、その恐怖に打ち勝つ。
 引き絞ったスリングショットの一撃が瞳の輝きを受けて走る。
 一直線に。
 脇目もふらずに、己の直感に従う一撃が見えぬ敵を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・夕凪
世を憂いて身を擲った高潔たる士の姿
武士の鑑、刃を持つ者の理想の姿と存じます
叛逆と言われてもなお、付き従う霊魂たちがその証左

自らの為ではなく、世の為に

その志が傀儡となり、血で穢れる前に私が斬りましょう

霊を呼ぶと同時に、風を操る術にして起こすは旋風
周囲の桜の花びらを渦巻かせ、近付くものを察知する結界に
如何に透明であれ、この花びらに触れずに接近する事は叶わないでしょう
ならば、花びらの乱れより僅かに見える挙動から先制攻撃を見切り、『涙切』で柔らかく受け流します
一度刃を振るったのなら後は逃さぬと心眼にて『気の流れ』を捉え
霊との連携を凌ぎ、コジロウの渾身の気迫を感じ取ればUCによる身躱しからのカウンターを



 透明軍神『ソウマコジロウ』――それはサクラミラージュにおいて大逆の人である。
 如何なる目的からか帝都を制圧し、しかして幻朧帝に敗れ、鎮圧されしもの。
 そして、最初の怪奇人間。
「世を憂いて身を擲った高潔たる士の姿」
 山吹・夕凪(雪色の吐息・f43325)は思う。
 世に語られるところの大逆人『ソウマコジロウ』。されど、その真を知ったのだ。
 幻朧帝こそ諸悪の根源。
 サクラミラージュという重石を以て封ぜる者を完全に殺すことこそが『ソウマコジロウ』の目的。

 歴史に語られぬ真を前に夕凪は胸を打たれる思いであったことだろう。
「武士の鑑、刃を持つ者の理想の姿と存じます」
「されど我が身は傀儡なり。叛逆の果てに仇敵に与することとなった不手際を許されよ、とは言わぬ。ただ我が望むは、我を討つことのみ。誉れというのならば、我が同志にこそふさわしい」
 見えぬ気配が夕凪を取り囲んでいる。
 姿を見ることはできない。
『ソウマコジロウ』は透明人間である力を、己がユーベルコードにまで波及させることができるのだ。
 恐るべきことである。
 しかし、夕凪の瞳に映るのは高潔なる者の心のみであった。
「いいえ。あなたの御姿は見えねど、その高潔たる魂は煌めいて見えます。例え、叛逆と言われても尚、付き従う霊魂たち。それこそが証左」

 いつだってそうだ。
 歴史の重さに潰されていくのは、弱き者たちばかり。
 ならばこそ、自らのためではなく、世のためにと生きた者たちをこそ夕凪は高潔であるとする。
「その志が傀儡成り果てようとも、血で穢れる前に私が斬りましょう」
「是非もなし」
 瞬間、旋風と銃弾が巻き起こる。
 風を巻き起こしたのは夕凪。
 幻朧櫻の花弁と共に風が舞い上がり、迫る透明の銃弾を受け止める。
 散り散りになる花弁。
 見えぬ弾丸とは言えど、質量がある。触れれば花弁は散る。そして、それを夕凪の瞳は見ていた。

 手にした黒刀『涙切』の刀身が柔らかく透明な斬撃を受け止めた。
「涙は悲しみに溢れるのかもしれません。けれど、その涙の一滴が無駄であるとは思えないのです。生きていれば悲しいことばかり。けれど、『さいわい』は涙の後先にこそ在るもの」
 故に、と花弁舞い散る中に夕凪の瞳はユーベルコードに輝く。
 無念無想にいたりて舞うような夕凪の袖が『ソウマコジロウ』の頬を撫でるようだった。
 見えぬが、しかして、流せぬ涙を拭うように夕凪は身を翻し、深き夜色の霊気ともなう斬撃、その黒刀の一閃を『ソウマコジロウ』へと叩きつける。
 これこそ、無念無想・夜渡の太刀(ムネンムソウ・ヨワタリノタチ)である。

「澄み渡る思いを、夜を渡る月と化して」
「ならば征くがいい。命ある者よ」
 その志との邂逅をこそ己の『さいわい』として夕凪は『涙切』を振り抜くのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

薄翅・静漓
その覚悟に向き合いましょう
真実を知った者として

弓に矢をつがえすぐに放てるように構え
心を、熱く。アスリート魂から溢れるオーラを身にまとい
微かな息遣い、空気の震え、その一挙一動に注意を払う
避けられないなら、せめて被害を最小限に留めなくては
オーラと結界術を重ねて攻撃に備えるわ
急所さえ守れれば、反撃の一手を打てるはず

念動弾が飛んできた方向へ矢を放つ
でたらめに撃つわけじゃないわ
どこを狙えばいいか、私の悪魔が教えてくれるもの
目に見えないものも邪視の瞳は捉えるのよ



 斬撃が見えぬ透明軍神『ソウマコジロウ』の身を切り裂く。
 怪奇人間――透明人間である者の血は一体如何なる色をしていただろうか。
 ぱたぱた、と血潮が地面に落ちる音が響く。
 されど、その血の色はわからなかった。
 血が滴っているということはわかる。だが、それを視認することはできなかった。
 それこそが怪奇人間である『ソウマコジロウ』の宿命であるというのならば、なんという皮肉であろうか。
 彼が為した偉業も、真の所は歴史に押しつぶされた。
 偽りに塗りつぶされた彼の志すら、幻朧帝によって傀儡されることで弄ばれていると言ってもいいだろう。
「だが、それでも我を打ち倒せ。命ある者よ。お前たちが心ある者であるのならば」

 その声と共に放たれる透明な銃弾。
 嵐のような銃撃であるが、何も見えない。
 あるのは銃弾が風を切る音ばかりだった。
 薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は思う。目の前にあるのは敵ではない。
 確固たる覚悟である。
 真を知るのならば、己もまた真を成さねばならない。
 覚悟とは、きっと相対する者にそうした感情を呼び起こすものであるのだと静漓は思っただろう。
「その覚悟に向き合いましょう。真実を知った者として」
 矢を番える。
 だが、放つことはない。
 迫る銃弾の嵐は、見えもしない。躱すこともできない。張り巡らせたオーラと結界は、容易く打ち破られるだろう。

 弾丸が激突し、きしみ、砕けていく。
 失速しても弾丸は弾丸。礫は身を打ち据え、静漓の身を揺らす。
 だが、彼女は倒れない。
「心を、熱く」
 どんな強敵を前にしても怯むことはない。
 それを彼女はもう知っている。教わったとも言うべきであるし、また同時に彼女が勝ち得たものでもあるとも言えるだろう。
 アスリート魂が燃え上がる。
 空気の震え。
 僅かな息遣い。
 集中の極地に至るは、これまで見てきた多くのアスリートたちの挙動があってこそ。
 生命のやり取りなくとも、極限に至ることはできると、他ならぬ彼等が証明してきたのだ。
 故に、静漓は己が急所だけを守り抜き、反撃の一手に手をかける。

「弾丸が来る、というのなら、その先に射手がいる、ということ。でたらめに撃つわけじゃないわ」
 どこを狙えばいいのか。
 耳元にささやく悪魔の声。
 教えて、と静漓はつぶやく。
 邪視の瞳(ジャシノヒトミ)は、彼女の背後に浮かび、射手の姿を捉える。

 不可視なる『ソウマコジロウ』。
 されど、そこに存在していることは変えようのない事実。
「そこにいるわね、『ソウマコジロウ』」
「ああ、我は此処にいる。逃げも隠れもせぬ、と言えたのならばよかったのだが」
「いいえ、あなたは逃げてもいなければ、隠れてもいない。その命は、あなたの目的を達成できなかった。けれど」
 静漓はつがえた矢を放つ。
 光が走り、吸い込まれるようにして一点を貫く。

「私達が必ず為し得ましょう」
 それが、己のやるべきことだと言うように静漓の一射は見えぬ軍神を射抜いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜刀神・鏡介
最初の怪奇人間……とはいえ怪奇人間になる理由はそれぞれだから、同族だという感慨なんかは別にないのだけれど
この世界を守る為にも、彼自身の願いを叶えるためにも。どうにか乗り越えるとしよう

利剣を抜いて敵と相対。敵がソウマコジロウだけならともかく、彼の同士を含む雑多な気配の中から一人を特定するのは流石に困難
それでも、殺気を読む事で攻撃を凌ぐのはまだどうにかなる……完全に躱す事はできないけどな

しかし防ぐだけではジリ貧だ。
界の型【虎嘯】を発動して、強い殺気を放つ。魂魄軍団も決して弱くないだろうが、多少は混乱させる事ができる筈
そして殺気への反応でソウマコジロウの位置がはっきり分かる。突貫して、一気に斬る



「最初の奇怪人間……」
 それが透明軍神『ソウマコジロウ』である。そして、帝都を唯一制圧せしめた大逆の人。
 歴史が語るのは、それである。
 しかし、真は異なる。
 諸悪の根源。
 それが幻朧帝であるというのならば、帝都を制圧せしめた者――すなわち『ソウマコジロウ』は叛逆者ではない。
 夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は、彼が最初の奇怪人間……自身と同じくする者であるからと言って、感情を揺らがせることはなかった。
 例え、傀儡となっていても、それでも打倒さなければならない存在であるというのならば、湧き上がる感情などない。
「この世界を護る為にも、『ソウマコジロウ』自身の願いを叶えるためにも」
 乗り越えるしかないのだ。

 故に鏡介は利剣を抜き払う。
 周囲には無数の気配がある。
 そう、此処に現れたるは『ソウマコジロウ』のみではない。彼の叛逆、その同志たちもまた透明化し、己を取り囲んでいるのだ。
 見えているのならばいざ知らず、見えぬ敵に囲まれているという状況は鏡介を窮地に追いやるものであった。
 加えて、『ソウマコジロウ』を打倒さなければならない。
 見えぬ敵を『ソウマコジロウ』と確信して斬撃を叩き込むことの難しさは、言葉で示す以上に困難であったことだろう。

 斬撃と銃撃が走る。
 理解できたのは、そうした攻撃が風を切っていた、ということだけだった。
 見えぬ斬撃は鏡介の体躯を切り裂き、血潮を噴出させる。
 見えぬ銃弾は手足を貫く。
 致命傷はなんとか避けられても、完全に躱すことはできない。
 防ぐことしかできない。
「後退することなかれ」
 その言葉に鏡介は頷く。
 確かに『ソウマコジロウ』は傀儡と化した。されど、その意思までは縛られていない。
 彼は望む。
 己の打倒を。故に鏡介の瞳がユーベルコードに輝く。

「恐れるならば退け、なれど俺は退かぬ。されば、界の型【虎嘯】(カイノカタ・コショウ)」
 迸るは重く鋭い殺気。
 だが、透明な気配は退くことはなかった。弱者ではない。
 彼等は叛逆の徒として歴史に葬られた者であるが、弱者ではないのだ。故に、鏡介は己が殺気に苛烈に反応する気配にこそ駆ける。
 確信があった。
 己の殺気を反射するような意志。
 そこに向かって鏡介は駆け抜け、己が利剣を振るう。
 歩法だけが確かなものだった。それ以外は全てがあやふやなものであったし、確信の持てぬものであった。

 だが。
「『ソウマコジロウ』、見えぬ姿なれど、その願いを受けて乗り越えるとしよう」
 振るう斬撃は『ソウマコジロウ』を切り裂く――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

多々良・緋輝
灼滅の魔金属と錬金悪魔の躯体を組み合わせ、デモノイドの肉体で『透炎剣』を受け止めてダメージを抑えていく
必中先制攻撃を受け止め、デモノイドの肉体を持つ帝竜の姿に変身する事で回復したらUC発動
追加攻撃20回を用いて透明な炎を上書きするようにブレスを放射
透明等のUCには、広域殲滅が有効…青山の『帝都櫻學府本部』の為にも、ブレスの効能は『金属を触媒として物質の再構築を行う』というものに設定
青山の周辺を復興し、人々の傷を癒し、オブリビオンの肉体を崩壊に導いていく

しかし、唯一無二の偉業か…もしかしたら、サクラミラージュの六番目の猟兵の盟主にも成れたかもな、アンタ



 見えぬ敵、透明軍神『ソウマコジロウ』の姿を猟兵たちは見ることはなかった。
 その身に刻まれた斬撃の痕も、滴る血潮の色も、全てが無色透明。
 凄絶なる戦いの軌跡あれど、その姿を認めることはない。
 歴史の闇に葬り去られた『ソウマコジロウ』は皮肉めいた運命を辿る。
 死してなお、傀儡として望まぬ蘇生、望まぬ凶行を強いられる。
「だが、我の轍に続く者たちがいる。それを知ることができた。それこそが」
 振るわれるは透明な炎を纏う斬撃。

 苛烈なる斬撃は、必中にして不可視。
 その一撃を多々良・緋輝(ロード・ヒイロタマハガネ・f44126)は、己の体躯で受け止めた。
 透明な炎を纏う斬撃は、灼滅の魔金属と錬金悪魔の駆体を組み合わせたデモノイドの体躯であっても耐えられるものではなかった。
 両断されなかったのは、幸いであったのかもしれない。
「鋼は此処に。寄生者から希少金属に、希少金属から竜へと至った魔が至るは生命の極致。その再現と反証を以て金属の吐息を司ろう」
 ユーベルコードに瞳が輝く。
 透明な存在は、見ることはできない。
 気配をかんじても、すぐさま離れてしまわれては、文字通り見失ってしまう。

 ならばなんとするか。
 簡単な話だった。
 緋輝は、DRDB・希少金属の吐息を司る金属竜(デモノイド・レアメタル・ドラゴン・ブレス)へと肉体を変化させる。
 帝竜との姿と能力、その全身を覆う金属の肉体からデモノイドのレアメタル能力に応じた吐息を噴出させる。
 透明な炎が燃え盛るというのならば、それを上書きすればいい。
 体躯に叩き込まれた斬撃は、両断さえ免れたのならば、己が体躯で挟み込めばいい。
「なんとも単純な話だよな」
『ソウマコジロウ』の凶行は、サクラミラージュの大地を破壊する儀式の遂行そのもの。

 ならばこそ、ここ『帝都櫻學府本部』を守り抜かねばならない。
「金属を触媒として、物質の再構成を行う。アンタが壊そうとしたものは、守ろうとしたものだろう。なら、それを再構築して守ってやるよ」
 青山の大地に広がる吐息が楔のように大地の亀裂を繋ぎ止めていく。
「しかし、唯一無二の偉業か……もしかしたら、サクラミラージュの六番目の猟兵の盟主にも成れたかもな、アンタ」
「我が成すことに名などいらぬ。我が目的はただ一つ。諸悪の根源を完全に殺すこと。それさえ相成るのならば」
 自身がどうなろうと関係ない。
 元より怪奇人間たる身。長くは生きられぬ。
「生命を、そのためだけに使ったか」
「成すこと無く、あまつさえは仇敵の傀儡となった末路。故に」
 己を打倒せよという『ソウマコジロウ』へと緋輝は己がブレスの一撃を叩き込み、姿見えぬ敵を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
怨敵が傀儡にされる……

人工魔眼を以て己の【第六感】を研ぎ澄まし念動弾を【見切り】
【早業】ソウマコジロウ殿の念動弾を騎兵刀で迎撃【武器受け】
破壊の呪詛物質を解き放ち断ち壊す!

それがどれほどの屈辱かッ!!

【継戦能力】『熾火の塵芥』発動
多量の騎兵刀と無数の【闘争心】の炎を【念動力】で迸らせ【範囲攻撃】透明状態に関係なく、周囲一帯を焼き、念動力と第六感でソウマコジロウを感じ取り【推力移動】

それが!どれほどの無念か!分るなら疾く壊せ!!朱鷺透小枝子!!!

多量の騎兵刀を合体させ長大な二刀とし強化【重量攻撃】
念動【怪力】で二刀を振るい攻め、【フェイント】
一振りを合体解除、念動力で放ち行動を阻害して、【切断】



 死は魂を救わない。
 怪奇人間の寿命は短い。そうであることが多いといえる。全てがそうであるとは言わぬが、多くの者にとって、生命とは短きこと。
 故に何かを成そうと行き急ぐのかもしれない。
 透明軍神『ソウマコジロウ』もその一人であったのだろう。
 最初の怪奇人間である彼は、己が余命が幾ばくもないことを知っていたのかもしれない。故に、諸悪の根源を討とうとしたのだ。

 しかし、志半ばで倒れることになる。
 あまつさえは、今に蘇り望まぬ凶行に手を染められんとしている。
 すなわち、大地の破壊である。
「怨敵が傀儡にされる……」
 そう、まさに『ソウマコジロウ』の現状は、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の言葉の通りであった。
 望まぬ蘇生。
 それによって彼は守ろうとした大地を破壊せんとしている。
「故に我を討て」
 銃弾が嵐のように迫る。
 迫る、とわかるのは風を切る音が聞こえたからだ。
 依然銃弾は見えない。
 敵の姿も見えない。
 第六感を研ぎ澄まし、人口魔眼を燃やしながら小枝子は、迫る透明な銃弾を弾く。
 騎兵刀で弾き、それでも尚、己が体躯を貫く弾丸。

 血潮が溢れる。
 痛みよりも先に怒りが湧き上がる。
 破壊の呪詛物質が溢れ出した。それは、『ソウマコジロウ』の無念に呼応するようであり、また同時に小枝子が共感した、屈辱に比例するようでもあったのだ。
「それがどれほどの屈辱かッ!!」
 ユーベルコードが煌めく。
 熾火の塵芥(フューリアス・レギオン)が戦場たる青山にて幻朧櫻の花弁を黒き炎で焼き尽くす。
 広がる炎。
 黒い闘争心は炎へと変じて小枝子を中心に広がっていく。

 透明な見えぬ敵。
 それが『ソウマコジロウ』であり、彼のユーベルコードすらも透明化している。故に第六感に頼っても小枝子は弾丸を避けきれなかったのだ。
 だが、構わない。
 怨敵の傀儡にされれるという屈辱。
 それが如何なるものかを小枝子は知っている。
「それが! どれほどの無念か!」
「討て。それが我の望みである」
「わかる、というのなら疾く壊せ!! 朱鷺透・小枝子ッ!!」
 小枝子は己に言い聞かせるように疾駆する。
 一直線に『ソウマコジロウ』へと迫り、騎兵刀を振るう。
 黒く炎が刀身に集合し、長大な二刀へと変貌する。

 見えては居ない。
 けれど、振るうべき場所はわかっている。
「壊れろ、その無念!!」
 振るう斬撃が大地を砕く。だが、敵を切り裂いては居ない。それはフェイントの一撃。
 一刀へと変貌していた騎兵刀を分割し、念動力でもって『ソウマコジロウ』の身を掴む。
「壊れろ、その屈辱!!」
 二振りの斬撃が『ソウマコジロウ』の体躯を挟み込むようにして放たれ、切断する。
 飛ぶは透明な腕。
 音だけが響いた。
 骸も見ることはできない。血潮も、その傷も、その表情も。
 それが、どんなに悲しき末路であるのかなど言うまでもない。見送ることもできない。
 故に小枝子は己にできるただ一つだけを疾く遂行したのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒影・兵庫
長年大叛逆者扱いしてきたと思えば今度は無理矢理従えて望まぬ破壊をさせるとは…幻朧帝許すまじです!
(「勝てば官軍、負ければ賊軍。歴史は勝者が作るってか…まぁ胸糞悪いわね」と頭の中の教導虫が返事する)
せんせーもそう思いますよね!ならば幻朧帝を倒しに行きましょう!
(「ちょい待ち!その前にソウマコジロウさんをどうにかしなさいよ」)
もちろんです!俺たちの強さが幻朧帝を倒せるほどだと知ってもらって安心して成仏していただきましょう!
(「随分と強気じゃない。じゃあ透明化による先制攻撃の対策はできているんでしょうね?」)
はい!『結界術』で{蜂蜜色の靄}を媒体に『気配感知』能力を強化した結界を展開し靄に侵入した相手を察知して攻撃を回避します!
(「なるほど透明になっても実態はあるものね…その次は?」)
UC【蜂皇清掃術】で無差別全方位攻撃します!
(「見えないなら全部攻撃すりゃいいってことね。ま、いいでしょ!作戦開始よ!」)
はい!せんせー!



 歴史とは遍算されるものである。
 時が移ろえば、人も変わる。
 人が変われば、視点も変わる。
 真実とは多角的に見れぬ事象そのものである。故に、人は真を見つめることができない。それが歴史に起こり得たものであるのならば、なおのことである。
 黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は、透明軍神『ソウマコジロウ』の顛末を知る。
 サクラミラージュにおいて、帝都転覆を目論んだ大逆人。
 それが『ソウマコジロウ』である。

 彼の為したことは悪行として歴史に語れるところであり、しかし、今まさに真の凶行に手を染めさせられんとしていた。
 望まぬ蘇生。
 望まぬ凶行。
 真の語るところの『ソウマコジロウ』の目的は、諸悪の根源である『幻朧帝イティハーサ』の完全なる死である。
 そう、このサクラミラージュの大地こそ『幻朧帝イティハーサ』を封ぜる重石そのものであったのだ。
 故に、兵庫は思う。
 許せるものではない、と。
『勝てば官軍、負ければ賊軍。歴史は勝者が作るってか……まぁ胸糞悪いわね』
 頭の中の教導虫の言葉に兵庫は頷く。
「せんせーもそう思いますよね! ならば幻朧帝を倒しに行きましょう!」
『ちょい待ち! そのまえに『ソウマコジロウ』さんをどうにかしなさいよ』
 その言葉に兵庫は頷く。

「勿論です! 俺達の強さが幻朧帝を倒せるほどだって知ってもらって安心して成仏していただきましょう!」
「心ある者が来たか」
 透明な姿。
 見えぬ敵を前にして兵庫は響いた声に頷く。
 これが『ソウマコジロウ』の声だと確信したからだ。
「はい! 勿論です。あなたを倒して、あなたが安心できるように戦いますとも!」
 その言葉と共に見えぬ気配が殺到する。
 以前、何も見えない。
 戦場たる青山にて敵影はない。
 全てのユーベルコードが透明化しているがゆえの必中。
 迫る無数の足音と共に斬撃と銃撃が兵庫を襲う。

 だが、兵庫は、その攻撃を躱す。
 何故か、とは言うまでもない。
 彼は結界術を以て気配を感知している。だが、見えぬ斬撃はそう甘くはない。
 達人の領域にまで到達してもなお、不可視の一撃は全てが不意打ちの一撃。
 故に、兵庫は己が結界の靄に侵入した敵の気配を憶え、攻撃を完全ではないにせよ、躱し、また受け流す。
 身に裂傷刻まれ、血潮が溢れても尚、兵庫の瞳は煌めいていた。

「掃除にはこれが一番とせんせーに教えていただきました! ですが、皆さんの誇りある魂は、掃いて捨てるようなものではありません! ですから!」
 蜂皇清掃術(ホウオウセイソウジュツ)は、全方位にオーラの矢を解き放つ。
『なるほど。見えないなら全部攻撃すりゃいいってことね。ま、いいでしょ! 及第点よ!』
「はい、せんせー! それにこのオーラの矢は!」
 どれだけ見えぬ敵でも、そこに実態がある。
 実態がある、ということは全方位に放った矢が当たる、ということ。
 そして、兵庫の放った矢は着弾と同時に爆発するのだ。
 その爆風が周囲の全ての敵を巻き込みながら、連鎖的に反応し『ソウマコジロウ』の呼び寄せた叛逆の徒たちごと、彼を飲み込んでいくのだ。

「視えなくても戦う術はあります! そして、それがどんなに強大な敵であろうとも!」
「退くことはにない、か」
「そうです! 長年大逆者扱いされてきた無念、そして幻朧帝赦すまじというあなたの気概こそ、俺達が引き継ぎます」
 兵庫は拳を握りしめる。
 視えぬ『ソウマコジロウ』がどのような表情を浮かべ、どのような状態化はわからない。
 けれど、それでも兵庫は笑むのだ。
 己が自信たっぷりであるこということは、彼が生み出した轍の先へと己達が進めることの証明であるからだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紫・藍
あや~~~!
吹き飛ばされる藍ちゃんくんなのでっす!
初撃の念動弾、なんとか藍ドルオーラで防御しましたが。
周囲の透明化も厄介でっすねー。
自分の身体は見えて無くても感覚でどうにかできますが。
周りや足場が見えないのは足運びなどにも影響しますのでー。
見えないが故のミスをした所に畳み掛けるのが狙いでしょうねー!
でしたらええ。
透明でいられない程に盛り上げちゃえばよいのでっす!
藍ちゃんくんでっすよー!
響く藍ちゃんくんの歌声に、戦場さえも拍手喝采!
それはコジロウのお兄さんや装備もなのです!
見えずとも感じるワクワクいそいそ盛り上がり!
アイドルにはお見通しなのでっすよー?
ハートを射抜く音響弾、ばきゅーん☆なのです!



 透明な弾丸は紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)の体を容易く吹き飛ばした。
 凄まじいまでの力。
 透明化することによって透明軍神『ソウマコジロウ』は必中たる先制攻撃を猟兵達へと叩き込んでいた。
 それ故に猟兵たちは初撃を凌がねばならない。
 しかし、である。
 例え初撃を凌いだのだとしても、依然、透明化された『ソウマコジロウ』の攻撃は簡単にどうにかできるものではなかったのだ。
「あや~~~!」
 藍は吹き飛ばされながらも、なんとか致命傷を藍ドルオーラでもって防御していた。
 防御していたとは言え、体に走る激痛に笑顔を忘れそうになる。
 だが、藍の表情は笑顔のままだった。

 歪むこともなかった。
 痛みに忘れそうになっても、顔が反射的に笑顔を作っているのだ。
 己ではない誰かのために笑顔を作る。
 そうした日々こそが彼女の笑顔をさせているのだ。
「心ある者よ。心苦しいが、しかして、この傀儡たる体は止まらぬ。それゆえに加減もできぬ。許されよ、とは言わぬ。だからこそ」
「ええ、ええ! わかっているのでっすよー!」
 藍は視えぬ『ソウマコジロウ』の言葉に頷いた。

 どれだけ視えなくても、周囲の感覚はわかる。
 動けば風が揺らめくし、音だって鳴る。
 なら、そこにいる。
「ええ、ええ! でしたら! この歌を聞いて下さいでっすよー! Can't l“i”e to my heart(アイチャンクン・ハクシュカッサイ)!!」
 藍は歌う。
 歌うことでしか戦えない。
 いや、戦うという概念すら藍にはないのかもしれない。
 どんなに透明であっても、それをやめられないのだとしても、歌は届くのだ。

「藍ちゃんくんの歌を聞いて、じっとしていられますかー? 黙ったままでいられまっすかー!」
「いいや、この心踊り、沸き立つような歌を前にしては」
「そうでっすよー! これが心! 傀儡になっても『ソウマコジロウ』さんには心があるのでっす! 藍ちゃんくんのお歌を聞けば、きっと拍手喝采したくなるのでっす!」
 その言葉と共に柏手が打ち鳴らされる。
「あっは! そこでっすねー!」
 藍は未だ視えぬ『ソウマコジロウ』が打ち鳴らした柏手の音の向こう側へと指先を向ける。
 ピストル銃のような指先で藍はウィンクしながら笑顔のまま指を打ち鳴らすようにして銃を撃つ仕草をする。
「ばきゅーん☆」
 わかっているのだ。
 藍ドルは、会場にいる誰も見逃さない。
 誰もが笑顔になってほしいから、いつだって歌うのだ。

 そのために自分はいる。
 故に、音響弾が視えぬ『ソウマコジロウ』の体躯を打ち抜き、その体を吹き飛ばす。
 ふーっ、と息を銃口に見立てた指先に吹付け、藍はとびっきりの笑顔を浮かべるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天御鏡・百々
新皇塚の封印の事件の予知でソウマコジロウ殿の名は知ってはいたが
まさか善の側だったとはな
しかし、その際は帝都転覆の一手として影朧が解放を目論んでいたのだが……封印状態では傀儡だったのであろうか?
どちらにせよ、今傀儡とされてしまった以上、引導を渡すのが彼の者のためか

見えぬ先制攻撃とは厄介だな
全周囲に『神通力』の障壁(オーラ防御、結界術)を展開するぞ
攻撃を受け止めたら、その部分を厚くして突破されぬようにしよう

初撃を受けきったら『神扇花吹雪』にて反撃だ
如何に透明でも、『神扇天津』の変じた無数の桜の花びらは避けきれるものではない
場所を特定したら、花びらを集中させて一気に仕留めに行くぞ



 ソノ魂幻朧桜ニ還ルコト能ハズ。
 それが帝都を制圧せしめた大逆人『ソウマコジロウ』へと発せられたものであった。
 幻朧櫻による転生。
 それが認められる影朧という弱いオブリビオン。
 死ぬということは過去になるということ。
 転生するということは、魂に癒やしを与えるということ。
 ならば、『ソウマコジロウ』は癒やしすら与えられぬ魂ということになる。

 新皇塚の封印の事件を天御鏡・百々(その身に映すは真実と未来・f01640)は思い出す。
 あの事件の予知によって『ソウマコジロウ』の名を知っていた。
「まさか善の側だったとはな」
 そう思うのも無理な駆らぬことである。
 サクラミラージュは影朧による事件があれど、しかして平和を謳歌する世界でもあったのだ。だが、その根底がひっくり返っている。
 サクラミラージュという大地はエンシャント・レイスなる古代種族の犠牲によって生み出された世界であり、世界自体が重石となって『幻朧帝イティハーサ』を封じていたというのだ。
 加えて、『ソウマコジロウ』は封ぜられし『幻朧帝イティハーサ』を完全に殺すために帝都を制圧し、そして敗れた。
「今となっては、幻朧亭の傀儡である。故に心ある者よ」
 透明軍神『ソウマコジロウ』の声が響き渡る。
 同時に百々を襲うのは、念動たる弾丸であった。
 不可視たる弾丸は、一斉に百々へと襲いかかり、その身を守る神通力の障壁を砕く。

「ならば傀儡となった『ソウマコジロウ』殿、引導を渡させてやるのがあなたの為か」
 砕かれた障壁の合間から弾丸が飛び込んでくる。
 砕かれる傍から分厚く修復してはいるが、追いつかないほどの暴風。
 だが、百々はたじろがない。
 初撃は確かに凄まじい。
 必中とも言える。障壁も役には立たない。

 けれど、時間は稼げたのだ。
「その傀儡にされし悲哀たる心、その慰めになれば……」
 百々は神気宿る扇を広げる。
 高天原の神々により作られたと伝わる『神扇天津』。その広げられた扇が桜の花弁へと返事、一瞬で障壁の外へと飛び出していくのだ。
 透明化された弾丸さえも花弁が絡め取り、さらに渦巻いて天高く舞い上がる。
「これは……」
「天より伝わりし我が扇よ、桜花となりて舞い踊れ」
 百々の言葉と共に舞い上がった花弁が、周囲に舞い散る。それは圧倒的な手数であった。
 如何に透明化し、姿視えずともこれだけの広範囲を包みこんでいるのだ。
 花弁をすべて避けられるわけがない。

 故に百々は舞うようにして己が手でもって花弁へと変じた扇を翻すようにして舞う。
「ご照覧あれ。これなるは、神扇花吹雪(シンセンハナフブキ)。傀儡と堕してなお、己の打倒を願う強き嘗ての勇士よ。幻朧桜ではなく、この花弁にて導かれよ」
 百々は一気に舞い上げた花弁と共に『ソウマコジロウ』へと己がユーベルコードの輝きを叩きつけ、その身を打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

綾倉・吉野
(吉野、今は考えるよりも初撃を凌ぐことに集中を)
マステマ殿の特訓を思い返し、精神と意識を集中して……結界術、霊的防護、持てる技能を全部駆使して、何とか「死んでいない」程度までは…!
(……よくやりましたね吉野、特別ですよ。後は「私」がやりましょう)


……生前は特務隊を率いる帝都軍人、部隊丸ごと影朧と化し綾倉当主により鎮め封じられし「綾倉家の悪魔」達が首魁……悪魔としての名を「マステマ」。それでは行きましょうか、最初の怪奇人間殿。

吉野の体を私が動かす以上、損傷はともかく「痛み」は無視できますから後は持てる技能と行動速度の向上でどうにかするしかないでしょうね。
霊力弾幕をばら撒き牽制、移動や燃焼に伴い生じる空気の動き、拭えぬ血の、何かが燃える匂い…気配感知で読み、退魔刀と結界術にて攻撃を受け、流し、一撃を狙う。

全く……流石と言う他ないですね。部下にも怪奇人間はいましたが、桁が違う。ですが、超えさせてもらいましょう。世界を壊し、私から吉野を奪おうという|帝《赦されざる大罪人》を討つ為にも



 目の前に迫るは裂帛の気合と共に放たれる不可視の炎纏う斬撃。
 受け止めた一撃は痛烈なるもの。
 綾倉・吉野(桜の精の學徒兵・f28002)は意識が傾ぐのを感じただろう。それほどまでに透明軍神『ソウマコジロウ』の一撃は痛烈なものであった。
 吉野は考える。
 どうしても考えてしまう。
 最初の怪奇人間、『ソウマコジロウ』。
 透明人間である彼が如何なる思いで帝都を制圧せんとしたのか。

 歴史の語るところの『ソウマコジロウ』とは大逆人。
 だが、真を知った吉野には傀儡となった『ソウマコジロウ』が哀れにも思えてならなかったかもしれない。
 それほどまでに、彼の決意は悲壮たるものであったのだろう。
 己たちが生きる大地は諸悪の根源の重石。
 されど、完全に殺すことはできず、封ぜることしかできない現状を憂いたのだ。そして、己がやらねばならぬという使命をもって彼は行動したのだろう。
『吉野、今は考えるよりも初撃を凌ぐことに集中を』
「マステマ殿、わかっております。ですが、これは!」
 そう、痛烈なる一撃。
 来るとわかっていても、不可視たる斬撃は防ぐので精一杯であった。

 そして、軍神とも呼ばれた男の斬撃である。
 苛烈、強烈、鮮烈。
 そう呼ぶに相応しい斬撃は吉野の体を強かに打ち据えていた。
 膝から崩れ落ちる吉野。
「なんとか、『死んでいない』程度までは……!」
『……よくやりましたね吉野、特別ですよ。後は『私』がやりましょう』
 吉野の代わりに悪魔マステマがユーベルコードの輝きを放つ。
「気配が代わったな……悪魔か」
「そうです、最初の怪奇人間殿」
 マステマの手助け(ワタシガオアイテシマショウ)によって、意識を手放した吉野の代わりに、その肉体を操るのは悪魔マステマであった。
 生前は特殊部隊を率いる帝と軍人。
 されど、部隊ごと影朧と化し、封ぜられた『綾倉家の悪魔』の首魁こそが己。
 それが『マステマ』という悪魔の正体である。

 故に吉野の肉体を動かすマステマは、己が持ちうる技能のすべてを底上げし、痛烈なる一撃を受けながらも迫る『ソウマコジロウ』の斬撃を躱す。
 未だ不可視。
 されど、見ること以外にも外界を知る術はある。
 例えば、霊力弾幕による牽制による敵の行動の制限から来る空気の動き、拭えぬ血の匂い、燃えるというのならば、大気が燃焼する際の匂い、ゆらめき。
 そうしたものをマステマは感じ取りながら、斬撃を躱したのだ。
「我が不可視の斬撃を躱すか」
「ええ、ギリギリといったところですが……できぬことではありません」
 結界術によって、斬撃が受け止められる。
 だが、受け止めたはずの斬撃は結界すらも切り裂き、マステマに迫る。

 凄まじい練度であると言えるだろう。
「全く……流石というほかないですね」
 彼女は思い出す。
 部隊にも怪奇人間はいたが、桁が違う。
 だが、今此処で越えなければならない。そういう敵なのだ。
 大逆の汚名を受けてでも、尚『ソウマコジロウ』が望んだのは、この世界を救うことである。
 ならば、応えねばならない。
「あなたを超えます。そして、世界を壊し、私から吉野を奪おうという|帝《赦されざる大罪人》を討つ為にも」
 マステマの手にした退魔刀が不可視の斬撃を弾き飛ばし、返す刃で、そこに在ると認識した『ソウマコジロウ』の胴を切り裂く。
 透明化した怪奇人間の血潮もまた無色透明。
 されど、その血の匂いだけがマステマに手応えを感じさせたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
戦う気が無い者を戦わせるなんて、随分とろくでもない奴みたいだねえ幻朧帝ってのは。
止めてほしいんだろう?ならそうしてあげるよ。
…姿見えないと独り言みたいになるねえ。

さて、姿が見えなかろうと刀に炎を帯びてるなら話は簡単だ。
あたしの蛇の瞳は熱で物を見れるからね。
飛んできた炎を斧で切り払って防いでいこうか。

斧で攻撃を防いでるうちにこっそりと出糸突起から糸を出して罠を仕掛けて、
相手が引っかかったら【縛索豪振】で振り回して思いっきり叩きつけるよ。

見えない仕掛けを使えるのはそっちだけじゃないんでね。
痛くせずにアンタを止める手段は持ちあわせがないから、そこは我慢してね。



 叛逆の大罪人。
 それが『ソウマコジロウ』であった。
 だが、事実は異なる。彼が帝都を制圧したのはサクラミラージュという大地によって封ぜられし幻朧帝、諸悪の根源を完全に殺すためであった。
 しかし、歴史が示す通り、彼の目論見は果たされることはなかったのである。
 そして今、透明軍神『ソウマコジロウ』は望まぬ蘇生と共に、仇敵の傀儡として大地を破壊せとする儀式を遂行させられようとしていた。
「不甲斐なし。だが、此処には心ある者たちがいる。なれば、我が身、その五体が砕けようとも……!」
 果たされるべき宿願があると彼はつぶやく。

 その言葉を聞いたペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)はいたたまれない気持ちになったかもしれない。
『ソウマコジロウ』が今、どんな表情をしているのかはわからない。
 けれど、彼は正しく忸怩たる思いを抱えているには違いないのだ。
 故に、ペトニアロトゥシカは、幻朧帝がろくでもない者であることに確信を強めていた。
「止めてあげるよ。そうしてあげる」
「かたじけない」
 姿見えぬ『ソウマコジロウ』。
 これではまるで独り言のようだとペトニアロトゥシカは思ったが、しかし迫る斬撃を斧で受け止めていた。

 視えぬ斬撃に、視えぬ炎。
 だが、何故。
「蛇の瞳は熱で物体を感知する……難しい横文字が合ったような気がするけれど、言えたからってなんだって話だろうからね。だから」
 ペトニアロトゥシカは己が瞳を輝かせる。
 例え、視えぬ敵であろうとも斬撃を己に放つというのならば、受け止めた斧の先にいるということだ。

 故に彼女は熱を見る。 
 人型の熱。
「捕まえたよ」
 縛索豪振(キャプチャー・スイング)。
 それは斧の先にいる『ソウマコジロウ』の体躯に絡みつく蜘蛛の糸。
 体を翻そうとして『ソウマコジロウ』の体躯がよろめいた。糸がピンと張っている。テンションが懸けられているということだ。
 ならばこそ、確実にそこにいると理解できる。
「ぬっ、これは……!」
「見えない仕掛けを使えるのはそっちだけじゃないんでね」
「糸……!」
 驚愕せしめる声色。
 それは彼がペトニアロトゥシカを怪奇人間だと思ったからなのかもしれない。真複雑怪奇たる力であると感じ入る雰囲気にペトニアロトゥシカは苦笑いしたかもしれない。

「先に謝っておくよ。痛くせずにアンタを止める手段は持ち合わせがないから、そこは我慢してね」
「是非もなし」
「じゃあ、やるね」
 ペトニアロトゥシカは斧を振るう。
 縦一閃に振るわれた斬撃は鮮血を走らせる。いや、鮮血であると思えたのは、彼女の瞳のおかげだろう。
 生命の温もりを感じさせる熱帯びた透明な血潮がペトニアロトゥシカの頬に飛び散る。
 呻くこともせず、ただ己の滅びを望む『ソウマコジロウ』の、生命の暖かさをペトニアロトゥシカは感じるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティグリ・ブリヤジール
ティグなのだー!げんろーてーってどこかで聞いた気がするけどまあいいやなのだー!いってくるのだー!

姿が見えないなら鼻、耳にたよるのだー!気配感知なのだー!
攻撃されても諦めちゃダメなのだー!咄嗟に身をよじったり、その場から飛び退いたり、『イェジェロノーク』や『オルグ・ケストル』を盾にするのだー!

飛び道具自体は見えなくても飛んできた方向なら分かるのだー!そっちに向かってグレネード投擲、続けてUCなのだー!思いっきり大声を出してぶっ飛ばしちゃうのだー!
グレネードが当たれば臭いも着くのだ、臭いや気配を頼りにぶっ飛ばしたところに『ヴェーチェ』と『グラザー』での風と雷を纏った斬撃をおみまいするのだー!



 透明な血潮が飛ぶ。
 猟兵たちの攻勢によって透明軍神『ソウマコジロウ』は追い詰められていた。
 いや、真を知るのならば彼が望んだことである。
 彼の蘇生、オブリビオンとして現れたるは、諸悪の根源、幻朧帝の成す業である。
 望まぬ蘇生。
 それによって彼が行おうとしていたのは、大地の破壊儀式。
「望まぬ。我は大地の破壊など!」
 身、消耗すれど『ソウマコジロウ』は、己を操る幻朧帝の意思に突き動かされ、無色透明のままに己が力を猟兵に振るうのだ。

「ティグなのだー! げんろーてーってどこかで聞いた気がするけど、まあいいやなのだー!」
 ティグリ・ブリヤジール(トラの戦闘猟兵・f40385)は『ソウマコジロウ』のちの匂いを憶え、透明化した彼の元へと疾駆していた。
 匂いだけではない。
 優れた聴覚をもってティグリは己が打倒しなければならない者の元へと迷うことなく一直線に突き進む。
「いくのだー!」
「なんと! 四肢が獣とは!」
「これがティグリなのだー!」
 放たれる念動力の弾丸。正しく見えぬ弾丸を解き放つ『ソウマコジロウ』の攻撃にティグリは、己が体躯を翻し、なんとか躱そうとする。

 けれど、見えぬ弾丸は匂いと音だけではどうしようもない。
 体躯を貫く弾丸にティグリは僅かに呻く。
 己の手にした火砲などがなければ、致命傷になっていたかもしれない。
 血潮がティグリの鼻を突く
 嫌な匂いだ。
 けれど、ティグリはためらわなかった。
「すぅぅぅぅぅ……」
 息を大きく吸い込む。
 胸骨が膨れ上がり、ティグリがどれだけ空気を肺に取り込んだのかがわかるだろう。だが、それでどうなるというのか。

 答えは簡単である。
「たいがーろあー!(トラノホウコウ) なのだー!!!」
 放たれるは大音量。
 それは彼女の声が届く範囲のすべてを衝撃で吹き飛ばすほどの咆哮だった。
「ガッ!?」
「耳がわんわん言っているはずなのだー! そしてそして、これでー!」
 凄まじい衝撃伴うティグリの咆哮は、一瞬で『ソウマコジロウ』の聴覚を維持的に奪い、さらにティグリはグレネードを投擲し、爆発と匂いを付着させる。
「そこなのだー!」
 一気に駆け抜ける。
 手にした二振りの軍刀。
 翻る刀身の輝きと共にティグリは匂い一層濃ゆい場所目掛けて斬撃を放つ。
 十字に放たれた斬撃は、狙いあやまたず『ソウマコジロウ』を切り裂き、その透明なる血潮を噴出させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

サタニア・ダイモーン
望まぬ蘇生か。操られるとあっては望む訳もないだろうな。
良いだろう、再びの死を与えてやる。

見えない先制攻撃、【透明魂魄軍団】による攻撃を第六感と気配察知により見切り、『魔神の刃』を振るい『魔神の影』を駆使する事によって防ぐ。
しかる後に――

見えずとも関係ないな。この戦場に居る全ての私の敵は死に絶える。

と【魔神術式Ⅷ】を発動。戦場全体を魔力の奔流で覆い、敵を死滅させます。
とは言えソウマコジロウ。透明魂魄軍団は一掃できても耐えられるでしょう。
『魔神の刃』に極限の魔力を籠めて一閃を放ちましょう。



 透明な血潮が流れている。
 怪奇人間、透明人間たる透明軍神『ソウマコジロウ』は満身創痍であった。
 だがしかし、彼は止まらない。
 止まらぬ以上猟兵はこれを打倒すべく戦わねばならない。
 彼は透明化したままだ。
 そして、その傷も、表情も、流れる血潮さえ誰の目にも止めさせることはなかった。
「元より覚悟の上」
 そう、己が倒れることを望む。
 傀儡とされ、大地を破壊する凶行を己に止める手段はない。
 出来ることは何もなく、対する猟兵に手心を加えることさえできない。正しく傀儡。
 敗北するということは、斯様なことであると示されているようであったし、己が透明人間であることを『ソウマコジロウ』は感謝しただろう。

「このような無様、誰の目にも入らぬことを感謝すべきか」
「良いだろう、再びの死を与えてやる」
「無論。感謝いたす」
 サタニア・ダイモーン(暗黒竜・f39306)の言葉に『ソウマコジロウ』は頷く。とは言っても、その姿は認められるものではなかっただろう。
 だがしかし、その心に偽りはなかった。
「だがしかし、加減できぬこと許されよ」
 一斉に気配が増える。
 サタニアはいつの間にか己が囲まれていたことを理解する。

 透明なるユーベルコード。
 それによって召喚されたのは、『ソウマコジロウ』に嘗て従った同志たち。
 彼等の持つピストル銃より透明な弾丸が放たれ、サタニアを襲うのだ。
「なるほど。見えぬ、が、気配ある。のならば!」
 振るう斬撃が弾丸を切り捨て、更に迫る弾丸の雨を彼女の足元から吹き上がるようにして立ち上った影が防ぐ。
 強烈な攻撃であった。
「ふむ。見えぬ攻撃、なかなかのものである。だが、私は」
 踏み込む。
 見えずとも気配あるのならば、サタニアは己が直感を信じていた。
 掌から放たっるは、敵味方を識別する漆黒の魔力。
 それは極大の奔流となって放たれ、透明化した『ソウマコジロウ』が生み出した同志たちをも押し流していく。

「 魔神術式 Ⅷ(シノホンリュウ)――ソク・メマジシ・ヒカマカーダ」
 放たれた奔流と共にサタニアは一気に『ソウマコジロウ』へと肉薄する。
「やはり耐えたか」
「凄まじき一撃。されど」
「ああ、されど、だな。軍神と呼ばれたあなただ。きっと耐えると信じていた」
 サタニアは、己が刃に魔力を込める。
 極大なる魔力を込めたのは、『ソウマコジロウ』への敬意からかもしれない。
 ただ一人、サクラミラージュの歴史において帝都を制圧せしめ、幻朧帝に迫った者。
 肉体だけではない。
 精神もまた強者であった『ソウマコジロウ』を傀儡となす悪法を許しては置けない。
 サタニアは、その斬撃を叩き込み、その姿が今際の際まで見えぬであろうことを僅かに惜しく思ったかもしれない。
「故に、切り裂く」
 放った斬撃は、そのような思いと共に見えぬ軍神へと吸い込まれたのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

雄叫びがないとなんとなく始まった感が薄いですね……。
って、あれ? わたしだいぶ毒されてます!?

このままだとわたしもやべー認定されちゃいます。
それだけは避けないと。

それにしても『ノイン』さんなんですか?

いつもの迷惑料として練乳ください!
いえ、あれないと死リアスしてしまうんです。
ください。おねがいください。白いのちょっとでいいですから!

えー。練乳はいつでも大事ですよぅ。

でも相手透明になるんですよね。どうし……え?

いいんですか!?
耳栓わたしが持ってるのに!?

はい!もう後戻りはできませーん♪

護りはステラさんにお任せして、わたしはー……。
ステラさんが隙を作ってくれたらカウンター合わせますよ!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
なんとなく|エイル様《主人様》の香りがします??
依頼と言うか、なんかこの辺(グリモア)から……
誰がやべーメイドですか
ってノイン様!?ノイン様ナンデ?!
いえ待ってください
なんかとっても上澄みの綺麗なノイン様のような気がします!
……また今度お話しを

というわけで超絶クールメイド参上です!
ルクス様行きますよー
今日はほどほどなシリアス度なのでスイーツ要らないと思います

先制攻撃だろうと透明化だろうと
【ヴァレット・パープル】で変身した
完璧メイドに対応できないものはありません!
『ニゲル・プラティヌム』で攻撃を受け流しつつ
銃撃と打撃で攻勢にでましょう!
その間にルクス様がどうにかするでしょう(丸投げ



 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は困惑の中にいた。
「なんとなく|『エイル』様《主人様》の香りがします??」
 なんで疑問形なのか。
 そして、どうして困惑しているのか。
 それは言うまでもないが、この事件に関連したものではないところから漂っているからである。
「誰がやべーメイドですか」
 まだ誰も何も言ってませんが。
「雄叫びがないとなんとなく始まった感が薄いですね……」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はステラの絶叫がないことに僅かに不満があったのかもしれない。
 あれだけ叫んでばかりのステラと同じ白い目で見られていたのだから、鳴りを潜めたということは喜ばしいことなのかもしれない。
 
 が、それはそれでなんとなく寂しいのかもしれない。
 大分毒されていると言ってもいい。
「あれ!? わたしだいぶ毒されてます!?」
 そうだよ。
 ルクスはこのままだと自分もやべーメイドサイドであると思われてしまうと危機感を抱く。いやもう遅いって感じ。
「それだけは避けないといけません!」
「いえ、待ってください。なんかこう、あれはあれで違う気が!」
「何の話です?」
「いえ、こう、グリモアベースで事件の概要を説明していたグリモア猟兵のことです!」
「あー、はいはい。それはいいんですけど」
 あの、とルクスは周囲を見回す。
 
 なんか気配がする。
 グリモアベースにいたグリモア猟兵には迷惑料というか慰謝料を請求したいと思うが、それはそれである。
 彼女たちを取り巻くのは透明軍神『ソウマコジロウ』が呼び寄せた無数の叛逆の徒たち。すべてが透明化されているがゆえに、気配を感じるが見えぬという矛盾がそこにあったのだ。
「ど、どうしましょ、ステラさん! やばいですよ!」
「私はやばくないメイドですが?」
「そっちもですけど、そっちじゃないです!」
「どういう意味でございましょうか!」
 漫才やっている場合ではないのである。
「こほん。ルクス様、メイドに不可能などございません。相手が透明であろうと見えなからとうと、完璧メイドは超有能メイド。さあ、ルクス様。私が敵の攻撃を防いでおります。その間になんとかしてくださいませ」
 所謂丸投げである。

 ステラノ言葉にルクスは目を見開く。
 なんとかして、ということは演奏して、ということである。
 最早条件反射。
 いいのかな?
 いいのかな? とルクスはちょっとためらう。ステラの耳栓はすでにルクスが回収している。
 こんな状況で演奏したらどうなるかなんてステラにもわかっているはずだ。
 なのに演奏して、ということはつまり!
「わっかりましたー! 演奏しまーす!」
「演奏以外でどうにかできませんか」
「できませーん! はい! もう後戻りできませーん♪」
 ルクスは守りをステラに任せていそいそと演奏の準備を始める。
 完璧メイドは確かに完璧であった。

『主人様』の絡まないメイドとは、こんなにも完璧なのか。
 もうずっとこれでいいんじゃない? と思わないでもないが、それはそれとしてアイデンティティというのがなくなってしまう。
 メイドとは主人ありきなのである。
「フラワー・オブ・スコットランド、いっきまーす!」
 息を吸い込んだルクスのバグパイプの音色が戦場に吹き荒れる。
 とんでもない演奏であった。
 敵が如何に見えなくとも、関係ない。
「そこに存在するのなら、どんな存在にだって、わたしの演奏を聞かせて見せますよー♪」
 ルクスはご機嫌でステラの鼓膜をぶち抜きながら、とんでもなく壊滅的な演奏を戦場に響き渡らせ続けるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

摩津崎・灰闢
貴方の仔細を存じ上げませんが…
打倒せよとの依頼、承りました
私の刃が届くよう尽力致しましょう

透明化とはシンプルに厄介な能力ですね
事前に気配察知を強化する護符を使用

研ぎ澄まされた技を放つには相応の気を込めるもの。
膨らんだ殺気を感知したなら即座に防御の構え
WOKシールド展開、被ダメージを少しでも抑えたい
UC発動、強大な気配を捉える

次に軍団対処
空気の動きや武器を扱う音、向けられた殺気などを頼りに、
WOKシールドで防御しその方向へ刀や影業で反撃
囲まれたなら鏖殺の気で牽制後、間近な敵を影業で捕縛&盾にして同士討ち狙い
強者の気配を近くに感じたなら刀で攻撃を受けつつ、反撃
傀儡に堕ちたとは思えない剣技…見事です



 摩津崎・灰闢(済度無相・f43898)は、透明軍神『ソウマコジロウ』を知らない。
 慇懃無礼であろうが、事実であるのだから致し方ないと開き直る。
 例え、知らぬ敵であっても屠るのがグリモアベースのグリモア猟兵から承った依頼であるというのならば、猟兵としてやらねばならぬこと、と彼は頷く。
「貴方の仔細を存じ上げませんが……打倒せよ、との依頼、承りました」
「頼まれてくれたこと、感謝の念にたえぬ」
 透明軍神『ソウマコジロウ』の姿は見えぬが声は聞こえる。

 その息は荒い。
 それほどまでに猟兵の攻勢は苛烈であったのだろう。
 血の匂いが色濃く鼻腔をくすぐる。
 ああ、思った以上に深手なのだな、と灰闢は理解しただろう。
 だからといって、手を緩める理由などない。
「私の刃が届くように尽力いたしましょう」
 何か気の利いたことを言おうと思ったが、やめた。
 己を襲うのは無数の弾丸。
 それも見えぬ弾丸だ。己をぐるりと囲っていた気配のすべてが、一斉に見えぬ弾丸を己へ向けて放ったのだ。

 まったくもって厄介なことだ。
 透明化。
 不可視へと変ずる力。
 それはユーベルコードにまで波及しているらしい。すべての攻撃が透明化されているため、視覚に頼っていては、容易く殺されてしまうだろう。
 現に今も己の命を脅かす弾丸がえ待っている。
 故に灰闢は己に張った護符を軽く弾く。
 気配は感知できている。そして、己を射殺さんとした殺気も。

 なれば、話は簡単だ。
「貴方がたはどうやら手練のようだ。それ故に、その弾丸に込められた気というのはわかりやすい」
 即座に灰闢は防御の構えを取る。
 弾丸は四方八方から放たれている。すべてを捌くことなどできようはずもない。
 それ故に彼は防御の構えをとり、張り巡らせたシールドでもって防ぐことを選んだのだ。
 銃弾が弾かれる音がする。
 耳をつんざくような、嵐のような弾丸。
 それらを受けきって灰闢は疾駆する。
「そこ、ですね」
 より大きな気配。
 他の気配は小物と言っていい。

 雑兵に興味はない。
 自身が興味を持つのは、その多大な血を流して尚たち続ける『ソウマコジロウ』である。
 放つは透明な殺気。
 皮肉なことだ。
 見えぬ敵に見えぬ殺気を放つ。
「まこと、不可思議な力であるな」
「殺界形成(サッカイケイセイ)と言います。弱者は逃走させ、強者のみを把握するユーベルコード……ああ、そちらにいらっしゃいましたか」
 一気に影業が走り、『ソウマコジロウ』の体躯を絡め取る。
 未だ見えないが、影業から伝わる感触で理解する。腕を欠損している。体躯のいたるところが斬撃を受けて出血している。

 これならば、と思った瞬間影業が無色透明たる斬撃によって切り裂かれる。
「傀儡に堕ちたとは思えない剣技……お見事です」
「褒められたものではない」
「ですが、私の刃は届いたようです」
 そう灰闢の一撃は影業に絡め取られた『ソウマコジロウ』の胸を貫いていた。
 引き抜いた刀身に血の色はない。
 だが、彼は感じただろう。血さえも無色透明なのだ。
 その血潮の色を見ることのできぬことを彼は惜しく思い、されど追い詰めたことで己の職務は全うできたと、その無職なる血潮を払うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

皇・銀静
…ふん…此処がサクラミラージュとやらか
まるでサ◎ラ大戦やライ◎ウみたいな世界だな?
「はーしーれー◎うそくのーていこーく◎げきだんー☆」
またお前か…!まぁいい…邪魔はするなよ
「勿論☆寧ろ役に立っちゃうよ☆」

【戦闘知識】
敵の動きを解析
対先制
【オーラ防御】
広範囲にオーラを展開して敵を捕捉
【念動力】
念動障壁展開
ダメージを防ぎきる

【リミットブレイク】
敵の位置を捕捉すれば後は叩き潰すのみ
「君さー…透明とか必中とかイキッてるようだけど…私の眼からは逃れられないよ☆」
UC発動
槍の神同時発動
捕捉と共に100の連撃…絶対必中を付与された連撃を敵に叩き込む

…必中というのは恐ろしい…お前も使うなら理解しているな?



「……ふん……此処がサクラミラージュとやらか」
 まるで、と皇・銀静(陰月・f43999)は、年がら年中春の頭の温かい者しかいない世界であると揶揄しただろう。
 金髪の少女『グリム』が彼の周りで騒ぎ立てているが、銀静は聞かないふりをした。
 他人のふりをしたとも言える。
「ねーねー! 聞いてるー!?」
「聞いていない。またおまえか……!」
「そうだよー!」
 またも現れた彼女に銀静は辟易する。
 厄介な事に巻き込まれたと思ったし、また面倒なことをしなければならないのかとも思った。
 どちらも正しい。
 だからこそ、もう放置するのが良いのだろうとさえ思えたのだ。
「まあいい……邪魔はするなよ」
「勿論☆ 寧ろ役に立っちゃうよ☆」
 本気かしらないが、しかし銀静は己に向けられた殺気に目を見開く。

 周囲に敵はいない。
 いや、いないと思っているだけだ。
 見えるものだけが敵ではない。
 不可視なる存在が己へと殺気を向け、攻撃を仕掛けている。
 それさえわかればよかった。
「……これがこの世界の敵なのか?」
「然り。我は透明軍神『ソウマコジロウ』。故あって傀儡としてお前たちに仇成す者」
「なら、ぶっ飛ばされても文句はいえねーな?」
「無論!」
 その言葉と共に銀静は斬撃を受け止めたオーラが砕かれながら、己の肩口へと見えぬ斬撃が叩き込まれたのを知る。
 鮮血が散る。

 だが、それでも銀静は踏み込む
 己が攻撃を受けたのは、敵の位置を知るためだった。
「君さー……透明とか必中とかイキってるようだけど……私の眼からは逃れられないよ☆」
「さすれば、討つがよい! それこそが我が望み!」
「なら、遠慮なく行くぞ。白虎門…反転…須らく…砕け散れ」
 邪気纏う風が宿るは拳。
 補足と同時に放たれる拳の一撃は瞬きの間に百を超えた。
 凄まじき連打。
 その打撃は不可視なる存在『ソウマコジロウ』を捉え、捌ききれぬ打撃の嵐となって襲いかかる。
 暴風そのものたる打撃を打ち込み、銀静は息を吐き出す。

「まったく見えない、というのは厄介だな」
 裏白虎門開門(ウラビャッコモン)たる打撃を打ち込んで尚、敵がどうなったのかを判別するすべはない。
 あが、己の拳を見やる。
 ぬるりとした感触があった。つまり、それは血。
 透明人間であるがゆえに、その血潮さえも無色透明。
 銀静は鼻を鳴らして、その血潮を拭う。
「死んだのかも、生きているのかもわからぬ敵をながるのはゴメンだ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
うわぁぁ透明人間だぁぁ!!!
…いやよく考えると別にそんなに珍しくもないな
ビックリドッキリ人間多いもんねこの界隈

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
見えないとはいえ、実体はある
『オーラ防御』、私の周囲に薄いオーラのシールドを同心円状に展開
シールドにぶつかった方向が、念動弾の来る方向!
シールドをセンサー代わりに利用して、念動弾を迎撃
剣で払い『武器受け』しよう

これで私も透明人間じゃん!
記念撮影後でしとこ、いえーいいえーい
【Unite Dual Core】起動
伸ばした雷刃でとりあえず全方位『なぎ払い』、同時に追尾蒼炎を発射
別に剣を当てようとは思ってないよ
追尾攻撃で攻めさせて貰うし!



 透明軍神『ソウマコジロウ』の姿は戦場にあって見えない。
 不可視たる怪奇人間。
 それが透明人間である『ソウマコジロウ』なのだ。
 見えぬということは、どれだけ傷を負っているのかも、いかなる表情を浮かべているのかも認識できないということ。
 それは視覚情報をコミュニケーションの一種として捉える人間にとっては恐怖の対象であったことだろう。
 たかが姿が見えぬ。
 されど、見えぬ恐怖。
 そうした根源的な恐怖を持つのが、怪奇人間。

「うわぁぁ透明人間だぁぁ!!」
 故に月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、天と地がひっくり返ったように驚愕する。
 だが、すぐに冷静になった。
「……いや、よく考えると別にそんなに珍しくもないな。ビックリドッキリ人間多いもんねこの界隈」
 タール人間もいれば、悪霊だっている。
 時代が時代なら夜の墓場で大運動会を開催してたっておかしくない顔ぶれが猟兵には多いのだ。なんていうか、透明人間くらいでもう大騒ぎすることは、玲にはないのである。
「とは言っても戦わなきゃならないのが猟兵の辛いところだよね」
「ご足労をかける。だが、やってもらわねばならぬ」
「声だけ聞こえるの、ちょっと面倒だね」
「すまぬ、と言いたいところであるが!」
 迫るは気配。
 すでに多くの猟兵たちが『ソウマコジロウ』と相対し、そのユーベルコードを叩き込んできた。

 不可視故に、どれほど消耗しているのかがわからないが、玲は手を抜くつもりはなかった。
 抜き払う模造神器の二振り。
 蒼き光湛える刀身と共に彼女は己を覆うオーラを強化する。
 迫るは見えぬ弾丸。
 見えぬ弾丸は躱しようがなく、必中。
 なれば躱すのではなく受け止めるが定石。更に言えば、猟兵たちの構成によって『ソウマコジロウ』の攻勢は勢いがなくなっているのだ。
「でもそれでも、オーラをぶち抜いてくるとかさぁ!」
 模造神器の刀身で弾丸を弾く。
 それができたのは、オーラで一度受け止めているからだろう。

 弾いた弾丸と共に玲の瞳がユーベルコードに輝く。
「さあ、行くよ! あとで記念撮影しとこう! いえーいいえーいって……遊び少ないなぁ!」
「すまぬ。だが、己が意思で己が体躯を止められぬ不手際は」
「そうだね。止めることで終いとしようか。Unite Dual Core(ユナイトデュアルコア)、弐神合一プログラム…略してUDC…起動!」
 瞬間、模造神器に込められた雷と焔の疑似邪神が玲の体躯と融合を果たす。
 手にした模造神器の刀身が雷刃となりて、その斬撃をもって周囲を薙ぎ払う。
 見えぬ敵とて、横薙ぎの範囲攻撃を前にすれば以下にしてか避けるだろう。
 同時に玲は浄化の蒼き焔を撒き散らす。
 それによって、周囲の大気はゆらめき、透明化した『ソウマコジロウ』の輪郭を浮き立たせるのだ。

「悪いけど一刀両断とは行かないよね! だから、炎で攻め立てさせてもらうよ!」
 玲の放つ蒼炎が斬撃を放つ度に解き放たれ、見えぬ敵を追い立てていく。
 見えぬ敵の末路がどうなるかなど想像に難くない。
 嘗て、諸悪の根源を完全に殺すために立ち上がり、そして敗れた者は、その最期を誰にも看取られることはない。
 だがそれでも構わぬと立ち上がった者がいたことを玲は知り、その生き方を否定することなく、己が力で最期の望みを叶えるべく力を振るうのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

えー?
皇帝っていつまでも執筆が終わらないから死ねないでいる文豪じゃなかったの?
そんな…皇帝先生の新作完成を楽しみにしてたのに…
嘘つき!騙されたー!

●そこっ!
からくる気がする!
そして!
こう攻撃がくるっ!
気がする!
と【第六感】で読んで【第六感】で回避ーーッ!

しかし透明って将軍ってより暗殺者の所業じゃない?
あと端から見てるとボクがなんか一人で遊んでるみたいじゃん!
んもー
まあキミの心配はごもっとも!
皇帝の新作が読めないのは残念だけど…あっちはあっちでボクたちがなんとかしてみるよ
じゃああとは任せて!

と【第六感】で感じるままにUC『神撃』でドーーーンッ!!



「えー? 皇帝っていつまでも執筆が終わらないから死ねないでいる文豪じゃなかったの?」
 幻朧帝のことを言っているのであろう、ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は首をかしげていた。
「そんな……皇帝先生の新作完成を楽しみにしてたのに……嘘つき! 騙されたー!」
 ロニは地団駄を踏んでいる。
 悔しくて悔しくてたまらないのだろう。
 そもそも皇帝先生がいかなる存在なのか、はたまた文豪であるのかどうかさえ怪しい。
 がしかし、ロニにとっては関係のないことである。
 騙された、という事実こそがロニを突き動かす。

「理由がわからぬが、しかし」
 透明軍神『ソウマコジロウ』は透明な炎纏う斬撃をロニに叩き込む。
 彼の透明化は肉体、装備のみならずユーベルコードにさえ波及する。
 完全なる透明化によって、猟兵は己たちの攻撃がどれほど『ソウマコジロウ』に影響を及ぼしているのかを理解できていなかった。
 血潮すら無色透明。
 消耗しているのか、していないのか。
 それさえもわからぬまま、立ち向かわねばならない。
 
 その斬撃は先制にして必中。
 故にロニは己の第六感を頼りに回避しようとして、それが上手くいかぬことを知る。
「あ、いったー?!」
 ごちん、と音がした。
 斬撃はロニの頭を割ることはなかったが、しかし炎の熱はロニをバタバタと転げ回らせる。
「なんでなんで!? 見えないってだけでこんなにも当たるもの!?」
 バタバタしつつロニは『ソウマコジロウ』の必中攻撃に憤る。
「透明って将軍より暗殺者の所業じゃない?」
「然り。我は暗殺に向く透明人間。それ故に軍神と呼ばれるいわれはなく。汚名を濯ぐつもりもない。我は打倒されるべきものなれば」
「そっかーでもさ、これって端から見てるとボクがなんか一人で遊んでるみたいじゃん!」
 そう、相手が透明であるということは、すなわち独り相撲のような様相である。
 かっこよく言えばシャドーボクシング。
「んもーまあ、キミの心配はごもっとも!」
「いや、何も……」
「わかってるってば! 皇帝先生の新作が読めないのは残念だけど……あっちはあっちでボクたちがなんとかしてみるよ。じゃあ、後は任せて!」
 ロニの拳がユーベルコードに輝く。

 己の頭を叩いた刀。
 なら、目の前にいるよね、と彼は神撃(ゴッドブロー)を振るう。
「ドーンってね!」
 躱すのが無理でも第六感で拳を当てることはできる。
 拳が当てられるのならば、その拳は大地すら砕くものなのだ。
 手応えを感じてロニは笑む。
 世に心配の種は尽きないけれど、それでもなんとかなんとかやっていけるのが人間なのだ。
「だから、そんなに心配そうな顔をしないでいいんだよ――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第四『不動なる者』盾&統括役武士
一人称:わし 質実剛健古風
武器:黒曜山

透明な相手なぁ。慣れぬものであるが…参ろう。
これ以上、意に沿わぬ行動はさせたくないしな。

先制攻撃は…四天霊障を広域展開。見えねどそこにあるのは変わらぬからな、四天霊障による気配察知で避けいこう。
UC使用可能になったのならば、即使いて薙いでいく。これの痕は残り続けるからな…相手は迂闊に近寄れぬし。
痕に触れれば、斬られた音が聞こえるしなぁ。
故に、『我ら』からは逃れられぬよ。

眠るがよい。『我ら』が幻朧帝を倒しきってみせるから。



 不可視なる敵。
 それが透明軍神『ソウマコジロウ』である。
 度重なる猟兵の攻勢。
 それが如何なる消耗を与えているのかも、『ソウマコジロウ』の姿が見えぬことは判然としない。
 透明人間と呼ばれる怪奇人間は、正しくその点において厄介だった。
「透明な相手なぁ。慣れぬものであるが……参ろう」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『不動なる者』は戦場となった帝都、青山にて大地を破壊せんとする儀式を行う『ソウマコジロウ』の元へと急ぐ。

 例え、それが意に介さぬ傀儡と化したがゆえの凶行であろうとも、止めねばならない。
 倒してでも。
 否、倒さねばならない。
『ソウマコジロウ』は幻朧帝に敗れた。
 そして、転生すら許されず今この時を迎えている。
 なればこそ、倒すことこそが彼の心を救うことに相違ないのだ。
「これ以上、胃に沿わぬ行動はさせぬ」
「心遣いありがたし。されど、油断召されるな。我が傀儡となった体は」
 召喚されるは透明な叛逆の徒たち。
 嘗て帝都を制圧した『ソウマコジロウ』の同志たちが、一斉に『不動なる者』へと迫る。その攻勢は、すべてが透明。
 同志たる彼らさえ、『ソウマコジロウ』はユーベルコードによって透明化させてしまえるのだ。

「見えねどそこにあるのは変わらぬ」
 霊障を展開する。
 そこにある、というのならば実態があることだ。
 霊障に寄る結界は、すなわちセンサー。
 触れた者を感知し、防ぐ。だが、敵の攻勢もさるものである。
 消耗しきっているはずなのに、それでも攻勢は苛烈そのもの。これが帝都を制圧せしめた『ソウマコジロウ』の地力であるとも言えただろう。
「なんと……!」
「名のある武人とお見受けするが、しかし!」
「なるほど。だが、わしもまた薙ぐを極めんとした者」
 きらめくユーベルコード。
 裂帛の気合と共に手にした槍が迫る透明なる同志たちを横薙ぎに払う。

 その一閃は苛烈であるが、しかし同時に疾風のごとき疾さでもって振るわれる。
 穂先の斬撃は三日月を描き、その衝撃波は残影となって戦場に残り続ける。
「四領域・岨刻不羇(シリョウイキ・ソコクフキ)、という」
 残る衝撃波を足場として『不動なる者』は駆け上がり、己が気配に感じる所へと飛び込む。
「なるほど、そこか」
「然り。さすれば、違うことなく」
「眠るがよい『我ら』が幻朧帝を倒しきってみせるから」
「かたじけない。このような不始末を押し付ける形になってしまったことをお詫び申す」
「否。それを案ずることはない」
 なぜなら、それはきっと猟兵たちの総意であっただろうから。
 死せる者をも取り込み、傀儡となす。
 そこに人としての誇りを踏みにじる悪意しかないことは言うまでもない。それ故に『不動なる者』たちは誓うのだ。
 諸悪の根源をこそ、己が槍で貫くと。
 無職なる敵を穿つ一撃は、その血潮すら無色。
 ただ、手応えだけが残るばかりであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

バルタン・ノーヴェ
ソノ魂幻朧桜ニ還ルコト能ハズ。
その号令の意味は、彼を走狗として利用するためでありましたか。
戦い敗れて、そのような目に遭うとは……。
然らばソウマコジロウ殿!
御身の望み通り、我輩たちが打ち倒しに向かうであります!

透明な必中先制攻撃、その技量恐れ入りマース!
しかしこちらにダメージを与えられるということは、そこに実体はある訳で……迎撃することは可能であります!
透炎剣がいつ来るかわからないならば、全方向に弾幕を張り砲撃を放ち、それらに対処あるいは接触する状況を作りマース!
荒ぶる弾雨砲火に当てずに斬撃を飛ばすのは、きっと難しいはずデース!

迫って来る先制攻撃を認識できれば、ファルシオンにて受け払い!
反撃のUCを……御身の力をお借りしマース!
オーバーロード!
「骸式兵装展開、透の番!」
アナタを越え、鎮めるために繰り返し挑んだ交戦経験から得られた透明化を模倣させていただくであります!
互いに透明の勝負となれば、本家のコジロウ殿に有利。
デスガ、こちらは武士ではなく兵器!
全武装を展開して、戦場ごと制圧致しマース!



 大逆の人。
 それが『ソウマコジロウ』の名で知られる存在である。
 歴史の闇に葬り去られた真は、皮肉なことに幻朧亭の復活の兆しと共に明るみに出ることになる。
 嘗て猟兵たちは知っただろう。
『ソノ魂幻朧桜ニ還ルコト能ハズ』とまで言われた帝都を制圧せしめた叛逆の徒を。
 それは額面通りに受け取るのならば、正しく大逆の罪を贖う令であった。
 だが、事実は異なる。
 バルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)は、ここに来て理解したのだ。
 あの号令の意味は、『ソウマコジロウ』を傀儡として幻朧帝の傀儡と成すためのもの。
 転生を許さず、ただひたすらに走狗として扱うためのものであった。

 それは言わば、死者に鞭打つ行為であった。
「戦い敗れて、そのような目に遭おうとは……」
 バルタンの言葉に不可視の軍神『ソウマコジロウ』は頭を振ったのかもしれない。
 無色なる血潮が散る。
 そう、その臓腑、血の一滴まで怪奇人間である彼に色を与えない。
 故に、頭を振った動作は気配で伝わるのみ。
 彼の顔に浮かぶ表情さえ判然としない中、声のみが響く。
「案ずることはないのだ。我は我が為さんとしたことの不始末をお前たちに押し付ける結果になったことを憂う。そして、我が身さえもままらぬままに傀儡と堕すこともまた」
「ノーでありマース! それ以上ハ!」
 バルタンは迫る不可視なる炎纏う斬撃を全方位の弾幕でもって受け止める。
 いや、受け止めるのではない。
 弾幕を張れば、すなわち透明な存在であれど実体を持つ『ソウマコジロウ』の其処にいる、ということがわかる。

 故に弾幕。
 ただバルタンは願ったのだ。
『ソウマコジロウ』に接触するための状況を。
 故に彼女は斬撃を身一つで受け止める。
 荒ぶる弾雨。
 その最中をかいくぐって己が身に斬撃を叩き込んだ技量こそ、まさしく軍神と呼ぶに相応しきもの。
 故にバルタンは笑う。
「然らば、『ソウマコジロウ』殿! 御身の望み通り!」
 煌めくはユーベルコード。
 ぬるりと、バルタンの体を濡らすのは無色なる血潮。
 これまでの戦いで『ソウマコジロウ』は満身創痍。されど、傀儡たる体躯は容易く死ねぬ。

 恐るべきは幻朧帝の所業である。
 だからこそ、バルタンは誓うのだ。
「我輩たちが打ち倒して向かうであります! 幻朧帝へと!」
 身に食い込む斬撃を弾きながらバルタンの瞳が更に煌めく。
 オーバーロード。
 超克たる己が道を征く。
 ただひたすらに。ただひたむきに。
 そうすることでしか救えぬ魂があるというのならば、バルタンはためらわない。
「骸式兵装展開、透の番!」
「これは……!」
「そうデース、これが御見の力! お借りしマース!!」
 バルタンの姿が透明人間へと変貌する。
 存在が把握しがたきバルタンは、一気にファルシオンを携えて『ソウマコジロウ』の目の前から姿を消す。

 そして、模倣は真に至る。
「アナタを超え、鎮めるために繰り返し挑んだ交戦経験からえられた透明化を模倣! そして、これは本家たる『ソウマコジロウ』殿に有利! デスガ、こちらは武士でなく兵器!」
 バルタンの武装が展開される。
 披露できないのが、『ソウマコジロウ』に見せることができないのが悔やまれる。
 けれど、それでも構わない。
 彼はきっと笑うかもしれない。
 だからこそ、バルタンは己の持ちうるすべての火器でもって、透明軍神と呼ばれた最初の怪奇人間。
 その我が身を擲つ覚悟にこそ報いるために、これまで紡がれてきた戦いを結実させるように『ソウマコジロウ』を爆炎の中、送り出すように火力を爆発させ、青山の大地破壊儀式を阻止するのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月04日


挿絵イラスト