帝都櫻大戰②~櫻瑪瑙が輝くあの日
●櫻瑪瑙採掘所
その鉱石は、ある鉱山から採掘されるとても綺麗なものだった。
誰が呼んだか|櫻瑪瑙《サクラメノウ》、欠片でも桜の花のように鮮やかなのが特徴だ。
「ねえ、あの宝石が欲しいんだ」
男は、好きな女に告げられる。
男の身銭では到底買えない代物だ。ほしいと頼まれた、だから――職人以外が立ち入ってはならぬ鉱山へ、男は入り込み、不運な男は天井が崩れる脆い基盤を不用意に叩き割り、瓦礫の下に埋まることとなる。
「……探さないと。あの石が、似合う君のために」
●廃鉱山
「やあやあ、石、好き?」
狼姫・白(白闇バーチカル・f43818)は開口一番そう告げる。
「ボクはねえ、綺麗なものはだあいすき!……じゃなかった、お仕事の話するね。庶民が喜ぶ娯楽の殿堂が集う帝都随一の繁華街「浅草六区」その、「番外地」での話をするよ。此処には、裏の顔があるんだけどね……一つ、暗い側面から出た心残りがある影朧による「猟奇殺人事件」が起こりそう、な気配がするんだよ」
白は困ったような顔をして続ける。
「影朧は男の人。宝石のこと、相手に渡したい心残りだけを強く心に焼き付けていて名前すら忘れてしまった、青年だよ。この人は生前、遊郭の女の人相手に宝石がほしいと頼まれて鉱山へ探しに行って――そして不慮の事故で無くなったのだけれど、朧げな姿で夜な夜な今でも生前の心残り【櫻瑪瑙】を掘り当てようと探しているんだ。だけどね、今回の騒動で生前の姿を取り、衝動に突き動かされるまま、【鉱山で宝石を見つける】【女へ渡す】を達成したら呪い殺そうとしているみたい」
物騒な話だよね、と白は続けながら、尾を振った。
「該当の鉱山は、今は死亡事故の多さから廃鉱山となっているのだけど……忍び込む輩は後を経たず、櫻瑪瑙は高値で、裏では売買されているそうだよ。桜色を基調に光の角度によっていろいろな色が現れる宝石、それの質がどんどん良いものが、出回っているとかなんとか……」
どうして色が、と思うだろう。
桜の下に何が埋まっている、なんてよく言われるだろうか。
「鉱山では死亡事故が絶たない。死体が見つかる事は稀なんだ。白骨死体ばかり、見つかったあと埋葬されるらしいけれど、鮮やかな人々に流れる液体はさて、どこへ消えていったのだろうねえ……」
尻尾をしゅんと、下げたのは一瞬だけ。
「みんなには、「帝都桜學府」から許可が降りているから、採掘所に行ってほしいんだよ。きっとすぐ見つかる――死ぬ気で採掘している影朧はそこにいるはずだから。遊郭の女の人は今でも遊郭努めらしいけれど、その廃鉱山からは、遠くでの勤務だから……そう簡単に事故は起きないと思うけどね」
「……宝石が血の色だなんて、きっと迷信だし。櫻瑪瑙自体は本物だから、必要なら思いつくことをしてみると良いと思うよ。採掘道具も、色々現地に準備済みだろうからね。君たちは、ほんの少し探検家気分で向かうことになるねえ」
タテガミ
こんにちは、お久しぶりです。タテガミです。
このシナリオは戦争に属する1章のみのシナリオとなります。
プレイングボーナス:影朧の行動を推理する/影朧をちょっと手伝ってやる。
●場所
廃鉱山。櫻瑪瑙採掘所。
今は、「帝都桜學府」の管轄。
櫻瑪瑙の宝石や石言葉等は調べてみると奥深いのでシナリオで求められたのはそんな情景。
猟兵は、「帝都桜學府」によって正しく許可を得て侵入を許されているので石が見つかる見つからないは、報告の義務なんてないかもしれません。サンプルとしてポケットに忍ばせるとか。ネッ。
●男
20歳中旬くらいの男。名前はロストしている影朧。
行動目的は「櫻瑪瑙を採掘する」「見つけ出して彼女に告白する」「返答次第で殺す」のムーブになります。
ツルハシ片手に見つからない見つからない、と死にものぐるいで穴を開け、壁や地面を叩き宝石を探しています。必死。猟兵を攻撃する感じはなさそうですが、一心不乱という言葉がとても良く似合います。
●その他
断章などはありません。OPが断章みたいなものです。久々にリプレイ執筆を行うため、場合により全採用が出来ないかもしれませんし、さくっと完結する場合があります。状況に合わず見送ることもあるので、ご留意ください。
第1章 冒険
『櫻瑪瑙(さくらめのう)の採集』
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POW : 廃鉱山の入口から、暗闇の中、坑道を降りて宝石を探す
SPD : 廃鉱山入口周辺に掘りだされた岩石屑の中に、質の高い宝石が混ざってないか探す
WIZ : 廃鉱山より下った地点を流れる河川敷に、流れ出た宝石がないか探す
👑7
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
スリジエ・シエルリュンヌ
まさか、こんなことになるとは…。
桜色の文豪探偵、推してまいります!
さて、櫻瑪瑙を掘り当てるために…UCの動作で頭部を掻き毟った後に、採掘です!これで、上質なのも見つかりやすくなるはず。
そして、見つけたら…影朧たる彼に声をかけまして。「よかったら、こちらをどうぞ」と譲ります。
もし自分の手で掘り出したいようならば、またUCの動作をしてから…あそこを掘ったらどうでしょうか?との声掛けを。
ところで…その。この炭鉱は廃坑です。
いったい、彼の生前とは、何年前の話なんでしょうか?
凶月・陸井
相棒の時人(f35294)と
戦争中でも救いたい想いがある
俺達の手伝いで救われる心があるなら
勿論、助けにいくよ
「そうだな。だからこそ、これは俺達の領分だ」
殺人事件が起こりそうな気配であれば
まだその未来が確定してるわけではない筈
相棒と装備を担いで盗掘者のフリで侵入し
うまく声をかけやすい雰囲気をつくりながら採掘だ
「この辺りは大きいのが出そうだな」
声をかけて来てくれたら勿論会話を
それから、彼の話も聞いてあげたい
どうしてそんなに必死に探しているのか
何を想っているのか、それに
「なぁ、櫻瑪瑙の石言葉って知ってるか?」
その女性はその言葉を贈ってほしかったのか
それとも、彼に言葉を届けたいのか
彼の心のつっかえにならないよう
それを教えてあげたいな
見つけたら相棒と相談して彼に渡す
「だな。こんなにでかいと俺達も始末に困るからな」
彼が自分の状況に気付いて
話をして満足して行くならそれで良し
もしも呪いを使おうとしたのなら
【戦文字「重縛鎖」】で動きを止め
此処で俺達が倒して送ろう
最期の一撃は、勿論慈悲を以て
「相棒。頼むな」
葛城・時人
相棒の陸井(f35296)と
そっか…想い残し果てた末の影朧か
生前の行動をなぞってるのは
「まるで俺達の世界のゴーストみたいだね」
だったらその想いを遂げられたら
嬉しいを得られたら
少しでも
倒さないといけないとしても
ほんの少しでもって
「…いこっか」
陸井も同じ事考えてるの、解るよ
相棒と装備担いで盗掘者のフリ
必死で気付かないかも知れないけど
至近でわざと陸井と喋りながら掘ろう
声掛けてきたら話合わせるよ
俺はその…ホントに櫻瑪瑙が似合いそうな…そのあの
うん!同じだから!
会話出来ると思う
彼は無理でもこっちは借りた最新装備があるから…ほら
「あった!」
ていうかデカいね!
これならいける
陸井と囁き声で相談してから
「ね、こんなデカいの俺達も逆に困るから」
半分どう?って持ちかけよう
最初は信じないと思うけど…こういうちょっと
ダークな話法は陸井が上手いから任せよう
俺は横で頷きつつそっと
UC命還光を用意
手に入れた事に満足して消えるなら良いけど
必要ならこれで光に還すね
櫻瑪瑙、半分は置いていくよ
だってこれは彼にあげたものだからね
紫・藍
(あやー。
とってもとっても一生懸命なのでっす。
気持ちは分からないでもないのでっしてー。
藍ちゃんくんも恋人さんに自分で見つけた宝石を自分で加工した指輪にして求婚しましたからねー。
となると手伝ってあげても良いのでっすが、自分で掘り当ててこそでしょうから。
見えないファンの皆様に影朧さんの採掘をこっそり支援してもらいつつ、藍ちゃんくんも審美眼で影朧さんが納得しそうな宝石を探し当てるのでっす!
それっぽい採掘ポイントなど見つけれたらファンの皆様に影朧さんをそれとなく誘導してもらいましょう。
その後は遊女さんに変装&演技で受け取ってもよいのでっすが、そちらのに注力する方がいらっしゃればバトンタッチ!)
夜刀神・鏡介
遊郭の女性……か法を犯し、危険を冒して宝石を手に入れたとて、願いが叶ったかは怪しいと思うが
しかし恋は盲目なんて言葉もあるしな。その思い自体は、否定できるものじゃないか
件の影朧氏と接触しながら桜瑪瑙を掘るってのは少々面倒な事になりそうなので
まずは少し離れて様子を伺いながら俺も宝石を探す事にする
鉱脈の良し悪しはわからんが、それでもできるだけ観察して、良さそうな場所を探して掘ってみる
掘り当てたとしても、俺が勝手に持って行くのはなんだし
タイミングをあわせて件の影朧氏の傍らに投げこんでみる
彼がこの後どうするにしても、まずは宝石を手に入れないと始まるまい
一応、暴走するようなら斬る事も視野にいれておくが
真・シルバーブリット
へぇー、同じ瑪瑙でも色合いが違うだけで色んな意味合いに変わるんだ
けど、可哀想な話だね
好きな人の為に命がけで廃坑の中に入ったのにあともうちょっとの所で死んじゃって、今は返答次第では好きだった人を殺しちゃう影朧になってさ
外に居ないとなると、また崩れてきてもおかしくない廃坑の中かな?
中は真っ暗でもライトを点ければよく見えるよ
注意しながら進めば…何か音が聞こえるね
来た道をマッピングしながら進めば、真っ暗な中でツルハシを振るう男の人が居たね
これじゃ石なのか桜瑪瑙かどうか分からないじゃないのかな?
ライトの灯りを照らせばすぐ見つかるだろうけど…嘘も方便で僕が彼女に持って行ってあげようかと言ってみようかな?
●
ちかっとライトで照らして、しかし誰も居ないと真っ先に確認したのは、真・シルバーブリット(ブレイブケルベロス・f41263)だった。
「外に居ないとなると、また崩れてきてもおかしくない廃坑の中かな?」
指定された廃坑は、誰が見ても寂れており立入禁止の字さえ踊っている。
誰も入ってはいけない。その代わり足跡もまた絶えず古いもの、新しいものが見つかった。
長年の泥の積載、汚れすら気にせず不法侵入を繰り返すものさえ後を絶たないのだろう。
「まあ、今回はお仕事だからね。じゃあ行こうか」
中は真っ暗でも、シルバーブリットがライトを点ければよく見える。
手彫りで掘り進められた廃鉱山は、入ってみれば分かるほど足場が悪く凹凸が激しい。
そして、車輪でも感じるのだ――どことなく居心地が悪い。
湿気や、環境のせいではない。
ただ――此処に長居したくないと想う雰囲気が猟兵たちの中にも広がっている。
「道のマッピングは任せて。得意だからね」
注意しながら進めば、一定音が誰の耳にも聞こえてくる。
鳴り響くその音は、採掘を行うおと。かーん、かーんと、抉る音と急ぎ囁く言葉の羅列。
雑音のような、雨音のような聞き取りづらい音が同時に響いていた。
「……うん、なにか聞こえるね」
明かり一つ無い洞穴の中で、一心不乱にツルハシを振るう男の人をシルバーブリットは捕捉した。
「ね。真っ暗な中、明かりのひとつもないようだけど……どう?明るいでしょ?」
『俺には視えてる。これは櫻瑪瑙じゃない……』
「ほんと?それ石に見えるけど、違うんだ……もうちょっと明るく照らしておく?」
光量はやや抑えて、はっきり視えないが暗くもない。
――ライトの明かりで一気に照らし出せば、すぐ見つかるだろうけど。
――それじゃあ、未練はきっと消えないよねえ。うん。
シルバーブリットは、この場所へ一緒に訪れた猟兵に、"此処に居る"と知らせるために薄く照らし続けることにした。なによりも、影朧から明るさなどいらないと返事がなかったから。
●
たとえ戦争が開始されたばかりの騒がしさがあるサクラミラージュにおいても、救いたい想いはある。
手伝い一つで救われる心が、魂があるのなら。
勿論助けに行く、とは、凶月・陸井(我護る故に我在り・f35296)の想いの有り方だ。
これに対し、影朧のあり方を想うのは葛城・時人(光望護花・f35294)。
想い残し果てた上で現われた生者成らざりしもの。
生前の行動をなぞり、生者が如く振る舞うその様は、
「なんだか、俺達の世界のゴーストみたいだね」
――だったら。
無念の想いを昇華できたなら。
得られたもので、満たされたなら。
――少しでも。可能性を信じて。
影朧が暴走して、倒さなければいけないとしても。
「ああ。地縛霊、近いだろう――だからこそ、これは俺達の領分だ」
「…いこっか」
――陸井も同じ事考えてるの、解るよ。
殺人事件はまだ起こりそうではない。
なにしろ櫻瑪瑙の採掘は、影朧が見つけられていないために終わっていない。
殺人という終わりの道を、まだ始めてさえいないのだ。
ライドキャリバーのライトが照らす先。
ツルハシが岩を叩く音も、耳をすませばよく聞こえる。幸の薄そうな背中だ、と思ったのはきっと見間違いなどではあるまい。汗水たらして働く姿ではない、と陸井と時人は理解する。
ツルハシこそ握り、作業に没頭して入るが――体力仕事はあの影朧の領分ではないのだと。
どちらかといえば、文豪など。書き物相手にする方が似合うほどに痩身。
それが二人が感じた印象だ。
「(武闘派ではないから危機察知が遅れたやつかも知れんか)」
「(……虫の知らせ、とかは聞くタイプではなさそうだね)」
お互い、背負って持参したのはツルハシやスコップ。
採掘必要道具を借り受けて、しかし、忍び歩いて盗掘者のフリだ。
「噂に聞いた櫻瑪瑙、採掘場は此処だったっけ?」
「ああ、この辺りは大きいのが出そうだな」
あえて大きめな声でわざと二人で語りだす。
「狙いはやはり大きいものだよな」
「うんうん。だって綺麗なんでしょう?櫻瑪瑙、やっぱり狙えるなら大きいものが狙いたいもんね」
先に作業する影朧の様子を伺いながらではあるが。
ぴくり、と肩を揺らし、視線がこちらに鋭く飛んでくる。
『同業者か?……まあ、いい。適当なところを掘って命を散らしても知らないよ』
「ご忠告どうも」
●
「(遊郭の女性……か)」
夜刀神・鏡介(道を貫く一刀・f28122)は想う。不法侵入、不法採掘。
もし、それらの中から目当ての宝石を掘り当てられたとして。
法は確かに冒されている。
「(だが、掘り当てる――ひいては手に入れる行為自体は達成されるのか?)」
疑問だ。それは願いが叶う、と言えるのだろうか。
他の猟兵たちも各々の方法と考えて協力しているようだが、手を貸して叶う願いは、喜ばれるのだろうか。
櫻瑪瑙を手に入れる願いが叶うと言えば、叶うのだろうが――いいや。鏡介は想う。
手に入れ方は様々である。金にものを言わせる方法も取れたハズ。
しかし、わざわざ一番難関の、採掘上から直接掘り当てるを選んでいるのに理由があるのだろう。
「("恋は盲目"なんて言葉もあるしな。否定だけが全てではないだろう)」
一言で片付くほどの未練ならば、こうして現われて心囚われている筈もない。
鏡介は、件の影朧を視界に捕捉しつつも、櫻瑪瑙探しは少し離れて行うことにした。
影朧からは、鏡介の姿など目に入っていないだろう。もし気づかれても視認できる人数より物音が少し多い、そう思われるくらいだ。正面切って言葉を交わし一緒に探すというのは――少々面倒な事だと判断したからであるが、他の猟兵が先んじて行動した。鉱脈における良し悪しなどわからない鏡介は、そちらを任せる事にして口を噤んでいる。自分の意見だけを優先するならば、煌めく破片一つでも、見つけられれば良いことにように思えなくもない。
小さな欠片、指輪に嵌まるようなサイズでもそれは幸福の証なのではないか――。
「(しかし、そういうものでもないんだろう)」
できるだけ観察し、手頃なサイズの良質なもの捜索に注力する。小さすぎず、割れたものではなく。
ただの石ではなく、綺麗な宝石を探して。
こんこんとしっかり観察して掘ってみても、屑鉄のような古ぼけたものが出てくるばかり――。
●
静かに、更に光源より暗がりで息を呑む。
賑やかに、喋りだすのはもう少し我慢。
「(……あやー。とってもとっても一生懸命なのでっす)」
紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は、物陰より思考を巡らせる。
邪魔をするか、手助けするか。先に行動した猟兵たちのサポートから始めるのも良し!そう思い、後方からやってきて影に潜めたままついてきた。藍の存在に、鏡介以外がもしかしたら気がついていないかもしれない。
藍は、聞いた話を想像するに――気持ちがわからなくもなかった。
死して二人を分けたのだとしても、やり残した事象は未練ろう。
「(何を隠そう、藍ちゃんくんも恋人さんに自分で見つけた宝石を自分で加工した指輪にして求婚しましたからねー)」
綺麗なモノは探したいし、欲しいと言われたら手に入れたいがロマンの心を擽る。
そういうものだ、頼まれたら、望まれたら叶えたくなるのが"お願い"なのだから。
いやあ、なんだか自分を見てる気分にも――と、手を貸したくなる気持ちもある。
「(自分で掘り当ててこそでしょうから)」
"そういうのもの"とわりきって、後押しサポートタイムは始まる。
本命掘り当ては、自力の方がきっと"達成感"は上だろう。さあ近場の猟兵諸君、に伝えてみせよう!
影なる活躍、みえない人々の手助けで、作業量を減らしてすすめ!
「(ファンの皆々様一緒のお歌は山をも動かすのでっすよ~)」
廃坑の中、視えない|藍の手《コールミーアイチャンクン》!
見えないファンの皆々様によって、作業効率はぐんと上がる。こっそり支援は、騒音に似た音は藍の中に響き渡る。
「(さあさあ皆々様!探しましょうでっす、藍ちゃんくんも審美眼を発動チャァンスなのでっすよ~!)」
納得しそうなポイントを、手当たり次第にサーチを開始。
これには、影朧を特定ポイントへと誘導する意図を含めている――さあ、猟兵探偵。
その意図に気付けるか?
●
「まさかまさか、……こんなことになるなんて」
スリジエ・シエルリュンヌ(桜色の文豪探偵・f27365)は、桜色の文豪探偵。
この場に訪れた、現場に偶然居合わせた探偵だ。
「見つからない品物、――原石ですものね。やはり傷つけず、良質でなければなりません」
むむむ、と悩みながらしかし最前線。彼女は頭部を掻き毟る。わからないことなんて無い。
この場で導かれるべき答えは、多くない。
此処は明かりがすでにある。鉱山は、色んな場所に穴があり、誰かが手を加えた場所であると証明されていた。
此処にもいつかどこか誰かが仕事に来ていたのだと。希望がある、可能性を追うのならあまり掘られていない場所――または、更に奥であることが好ましいのではないか?
特に上質なものを探すなら、未踏である場所のほうが――!
「お任せください!おそらくです、右手側、更に掘り進めると見つかるかと!」
『何故そういい切れる』
「単純な推理を披露させて頂いています、語りましょうか?」
『俺は忙しい』
ざくざくと掘り荒らすように男は掘り続ける。
スリジエの話を無視するかのように、しかし掘り続けることは決して辞める様子がない。
「どうしてそんなに必死に?」
『手に入れなければならないから。それ以外に理由があるか』
「理由としては上出来だが、お眼鏡には叶わないものばかりのようだなあ」
『此処は掘り尽くされてなど居ない。いつかは見つかる、探せば見つかるはずだ!』
かーんかーんと猟兵たちと影朧の手元で聞こえるツルハシを振るう音。
これだけ手を借りて、理想サイズが見つからないとは勿論誰も思わなかった。
無論、見つけたところで影朧が素直に話を聞いたかは、別の話である。
「なあ、櫻瑪瑙の石言葉を識ってるか?」
『何?』
「「心を開く」「平穏」と……」
「『安定』、ですね」
言葉を紡ぐ、スリジエと陸井が答えれば、影朧はピクリ、と動きを止める。
「桜瑪瑙の石言葉はそんな所だが」
「俺はその…ホントに櫻瑪瑙が似合いそうな…そのあの」
まあまあ、時人はさりげなく採掘音で誤魔化しにかかる。
――その女性はその言葉を贈ってほしかったのか?
――それとも、彼に言葉を届けたいのか
「(彼の心の支えに成らないように、教えたいものだが)」
「色が違えば、石が違えば言葉は違うが――これを欲しい人は、誰かへの願いでもかけるのだろうな」
「へぇー、同じ瑪瑙でも色合いが違うだけで、色んな意味合いになるんだねえ」
シルバーブリットがライトを揺らして反応。
「私なら、勿論そうですね。幸せを、願うかもしれません」
影朧が無視する中でスリジエがニコリと笑って返答する。影朧へ誰かの思いの断片が伝わるようで伝わらないような、そんな空気感を突破したのは、文豪探偵たる彼女であった。
「ところで……世間話を一つ失礼したいのですが、この炭鉱は随分前から廃坑だそうですね」
「――いったい、貴方が此処で櫻瑪瑙を探し始めて何年経つのですか?」
影朧の返答は、ない。
男に名前はない――死した未練の場はこの廃鉱山。何年経ったかなど、もう思い出せないのだ。
語る名前はなく、語るべき相手は――。
「掘り当てたい鉱石は、それほど誰か宛に届けたい代物なのか?」
コロリ、と足元に鏡介の足元から影朧の方へ転がるのはやや小ぶりの――傷の少ない瑪瑙の原石だ。
しかし、影朧は一瞥して更に掘る作業へと戻る。
見たのは一瞬。拾う仕草を見せなかった。
『……そうだ』
やっと返答らしい返答を、猟兵たちは聞いた。
「へえ。どんな人?自分宛てじゃないなら、聞いてもいいかなって」
「此処は今や廃鉱山。俺達皆、悪いことをしている仲間だが」
許可を得て訪れた猟兵と、無断採掘をする影朧とでは立場は違うが誰もそこは指摘しない。
『……青い髪、赤い目の背の高めの遊女の女だ。何年も約束を果たさず、そして帰らぬ俺に流す涙もないかもしれん』
「(へえ、髪は青い……丁度良い事を聞いたでっすね~)」
隠れたままの藍が何やらごそごそと準備を始める。
変装は、相手に気づかれ無いことが重要だ。
仲間たちがうまくやりきることを祈り、手早く準備する。
『でも今日は見つかりそうな気がする……邪魔するなよ』
「成程……そうと聞いてしまえば、膳は急げ!私の推理では、今現在の場所よりさらにさらに奥ですよ、これは直感です!びびっと来ました!」
藍の見えないファンたちの誘導、その波動は不思議とこの世に不思議なものなどあり得ない証明となった。
洞穴の奥、そちらにライトを当然のように向けるシルバーブリット。
『……話を聞いて我先にと行くのかい!負けねえが!?』
影朧は、追いかける。時人と、陸井の最新道具を備えた二人が、指示通りの場所の直ぐ側を掘る。
しばらくすると、かつーんと、甲高い音があたりに響いた。
「――あった!」
時人が見つけたそれは、大きめな鉱石として採掘された。
とても良質な、模様を中に内包し――とても綺麗な櫻色。
「うーんデカいね!」
「だな。こんなにでかいと俺達も始末に困るからな」
囁きながら、相談を開始する。鉱石は比較できないほど大きく育った石であり、盗掘者の体裁でこの場にいる二人は、この大きさを持ち出すには大きすぎると判断する。
「ね、こんなデカいの俺達も逆に困るから」
半分どう?と交渉を持ちかけた。
「大胆なものだろう。磨けば相当大きな櫻瑪瑙と見たが」
『……いいのか?』
「いいよ。俺達は半分、いやもう少し小さくてもいいんだから」
葛藤。悩む仕草。
自分で採掘した訳では無いが、大変上質なものだとひと目見てわかった。
『……なら、頼む。ああ、ああ――』
『これで、やっとあいにいける』
「磨く前ので良ければ、僕が彼女に持って行ってあげようか?」
自慢の駆動音を高鳴らせる。すぐに届けるよ?どうする、と音と同時に尋ねる。
『じぶんでとどけなければ いみがない』
「だよねえ、うん試しに言ってみただけだよ~」
ツルハシをぶんぶんと、振りかざし猛るどす黒いオーラを纏う影朧は、どうみても正気のそれには見えない。
『だが半分ではだめだ、彼女をずっと待たせた分。全てよこせ』
よこさないなら実力行使、そのためのツルハシなのだろう。
凶器としては十分だが――素早く鏡介が、同じくツルハシを持ち牽制にかかる。
打ち合い、動きをその場に釘付ける。
「もしも、を考えていて正解だったようだ」
|観の型【天眼】《(カンノカタ・テンガン)》本質を見定めた先で、動くだろう殺人計画の阻止に成功する。
「それ、"私"に?」
渾身の演技を披露する藍が、この場に堂々と姿を表す。
わざと光量を絞る、シルバーブリットの助力で藍の姿はぼんやりとしか見えない。
だが、狂気に猛る影朧だ。その言葉は、耳は正常に物事を判断しない。
「ずっと待っていたの。やっと、なのね」
『ああ!!そうだ、これを手に入れた俺を……この世でもっとも愛する男といってくれるのだろう!?』
「……さあそれはどうかしら」
『なんだと。何が足りない!!俺は、こんなに、死ぬほど打ち込み言葉を伝えるために頑張ったのに!』
「"その宝石は、たしかに欲しかったの。でも、勘違いしないで"」
「"私は貴方のことが好きでもないわ”」
涼やかな声で、語る藍は、勿論そう思った、を語っている。
遊女の女はそう考えるはず。この場に本人など連れてきてはいないため、真意は勿論わからない。
だが――もし、もしも。
桜瑪瑙がいい、と言ったのなら、石言葉は関係していたはずだ。
「"その石は貴方が持てばいいの。だって貴方にこそ必要なものだわ"」
『あ、アア……』
この世すべてを呪うまで。
この世全てが、正しく終わるまで。
愛する女が頷かないなら、殺して連れて未練を清算していこう。
『おまえがいれば、それにかわるこうふくはない』
世界に呪いあれ。その願望に願望たる呪詛よ至れ。
「答えを得て発揮するものは、ああ。やはり呪いか」
自分の状況に気がついてくれればそれでよかったんだが。
しかし、告白を受け止められなかったのなら――影朧に至った傷ついた弱い心では、保つまいよ。
「だが悪いがお前には、もう何もさせない」
|戦文字《イクサモジ》|「重縛鎖」《ジュウバクサ》――戦場に成り果てようとするこの場に、鎖の群れが大量に発生し無限に文字が埋め尽くす。当然、逃げ場などありはしない。
「此処で俺達が倒して、至るべき場所へ送ろう」
最後の一撃は、勿論慈悲に溢れる想いを以て。
「相棒。頼むな」
隣で頷く時人は、そっと唱える。
「ああ、創世の光で――還るといいさ!」
|命還光《イノチカエスヒカリ》、暗闇の洞窟内にカッと目を眩ませる輝きが溢れ出す。
光の軌跡は、捉えられた影朧に向かい疾走る。
「もう、やるだけやったんだ、終わりに心を燃やし尽くしてるだけで――未練なんてないだろ?こんなところで悪い男に落ちてる場合じゃない。桜の精に釣れられていつかまたイイ男に成ってもう一度挑戦するといいよ」
軽くウインクで、時人の輝きは影朧を光へと換えた。
その場には、からん、とツルハシが一つ落下する。
足元を見た猟兵たちは気がついたはずだ。
ツルハシが落ちた場所は、大量の時間の流れに取り残されたボロボロの遺骨の残骸と。
鉄錆た赤褐色が、染み渡っていた。それは、ツルハシも同様。
これは、――男が最期に没した場所。
男は確かに、生前と少しで、希望を手に出来ていたのかもしれない。
「櫻瑪瑙の半分は、本当に置いていくよ。これは、だって――」
確かに、彼にあげたものだから。
「ああ……これで、一件落着ですね!」
探偵有るところで、事件など起こりようがないのだ。
桜の精として、祈りを捧げましょう。
今日もこの世界に綺麗な桜が吹雪いて舞った。
大成功
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