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帝都櫻大戰⑤〜完璧で究極のシヰクレツトアイドル~

#サクラミラージュ #帝都櫻大戰 #第一戦線 #トンチキシナリオ #そうはならんやろ #なっとるやろがい

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 ――帝都櫻大戦。
 幻朧帝イティハーサの復活により、幻朧桜が暴走を始めることによってサクラミラージュは混乱に包まれた。
 ……だけではない。
 まだ残暑厳しい9月の空に桜吹雪と共に降り注ぐ猛吹雪。
 激しく噴火し巻き上げながら火山岩と一緒にあちこちに散っていく桜の花弁……などなど。
 どう見ても帝都ではない場所からやってきたと思しき浮島が、幻朧桜と共にやってきたのである。
 それらはサクラミラージュの世界では「秘境」と称される幻の地。
 そこに根を張り花開く幻朧桜は【冬桜】と呼ばれ、幻朧帝封印の楔として機能していたそうだ。
 定期的に皇族が各地の秘境を密やかに巡り、幻朧封じの儀を執り行うことで封印が解けぬようにしていたのである。

 しかしそれが破られ、幻朧帝イティハーサは復活。
 自らを封印せしめた|『超古代種族』《エンシェント・レヰス》の指導者たちをオブリビヲンとして自らの配下に取り込み、サクラミラージュに|破壊《カタストロフ》を齎さんと動き出した。
 ならばと皇族たちは立ち上がる。
 今ここで冬桜の元で『幻朧封じの儀』を執り行い、少しでも奴の力を抑え込まねば、と。
 その為にある一人の皇族が立ち上がり、共を100人ほど引き連れて秘境へ向かい。

「みんな――――――――!!!!今日は特別緊急シヰクレツトライブにきてくれてありがと―――――――!!!!!
 これを拝めたみんなは超ラッキーだよ自分の幸運を称賛してね!!
 さあ全力で盛り上げていくよ―――――――――!!!!!!!!!」
「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」

 ……何か、アイドルライブが始まった。


 ――ここまで説明し、猟兵を招集したグリモア猟兵である終夜・日明(終わりの夜明けの先導者・f28722)は皆まで言うなと首を振った。
 予知した自分が一番信じたくないのである。

「ええ、と。皇族の幻朧封じの儀は各人によって取る手法が違うそうで……その、たまたま僕の予知に出た皇族がアイドルで、かつライブを開くのが幻朧封じの儀だった、という……何をどうしたらそんな悪魔融合みたいなことになるのかと仰りたいのは重々承知なのですがね?
 皆さんにはこの皇族の幻朧封じの儀を成功させる為にご協力頂きたいのです」

 とはいってもそんな難しいことではない。
 浮島の秘境にある極彩黄金劇場に向かい、冬桜周辺をうろつく影朧を片っ端からしばき倒して皇族を守るか。
 はたまたライブ参加者になって皇族の一ファンとしてアイドルライブを盛り上げるか。
 この二択である。
 アイドルに\PPPH/とかしたい人の為にサヰリウム、法被、「こっち向いて❤」と書かれた団扇に【皇族❤LOVE】とか書かれたハチマキとかも用意されていた。
 ドルヲタやれってか???????????という視線を向ける猟兵たちに日明は再び皆まで言うなと言いたげに首を振った。

「皇族本人から猟兵に「ライブに参加するならこれ使ってね❤」と送られたものでして……」

 聞けばその皇族、自らが皇族だということを隠してアイドルとしてサクラミラージュで活動しているそうで。
 ファンサも完璧な超絶美少女アイドル、だそうで。愛を知らないどころか愛情たっぷりでみんなにハートを送る究極アイドルと評判だとか。

「まあ、そういうことですので、ええ。はい。お気持ちは非常にわかりますが、サクラミラージュの一大事ですので、何卒ご協力の程を頂けますと」

 グリモア猟兵の顔は完全に諦めた顔であった。

 ……そう、トンチキからは決して逃げられないと――。

 招集に集まった猟兵諸君も、覚悟を決めて極彩黄金劇場に向かわれたし。


御巫咲絢
 ※このシナリオがトンチキシナリオじゃないワケないじゃない。
 そうはならんやろって?なっとるやろがい!!
 というわけでどうもMSの|御巫咲絢《みかなぎさーや》です。
 シナリオ閲覧ありがとうございます!!御巫のシナリオが始めましての方はMSページもお目通し頂けますととっても助かります。

 サクラミラージュ、戦争候補になりかける度になんとか逃げ切って粘ってきたような印象がありましたがついに戦争になりましたね。
 ちょっといろいろお受けしているものがあるのでたくさんは出せないのですが、少しでも戦争シナリオ出していけたらなと思っています。
 しかしこんなクソトンチキシナリオが一本目になるとは俺も思ってなかった。
 でも思いついちゃったものは思いついちゃったので出しました。よろしくお願いします。

●シナリオについて
 当シナリオは『戦争シナリオ』です。1章で完結する特殊なシナリオとなります。
 当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在しています。
 またOPはわざと割とふんわーりとした書き方をしています。
 皆さんのプレイング次第であらゆるライブ内容とかその辺りの描写が決まります。
 公序良俗に反しない範囲で自由にプレイングをお書きください。

●プレイングボーナス
 皇族を護衛する/皇族の「幻朧封じの儀」に協力する。

●プレイングについて
 『9/4(水)8:31』より受付を開始致します。本業の都合で時間に合わせて受付開始タグはつけられないので時間がきていれば遠慮なくご投函ください。
 受付開始前に投げられたプレイングに関しましては全て一度失効を以てご返却致しますので、受付開始後にお気持ち変わらなければ再度ご投函頂けますと幸いです。
 戦線システムにMSが間に合わせる為の都合でたいへん申し訳ないんですが、締め切りが長いと伸ばすクセがあるのでオーバーロードは非推奨です。
 それでもええから書けや!!って人はご利用ください。
 受付締切は「シナリオクリアに必要な🔵が集まったら」、また執筆は『先着順ではなく』かつ『判定が成功・大成功のプレイングのみ』となります。
 あらかじめご了承の程を頂けますよう何卒よろしくお願い致します。

 それでは長くなりましたが、皆様のプレイングお待ち致しております!
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第1章 日常 『極彩の館』

POW   :    細かいことは気にせず力いっぱい楽しむ。

SPD   :    その場に馴染めるよう気を使いつつ楽しむ。

WIZ   :    何かハイカラな楽しみ方を思いついてみる。

イラスト:cari

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

島江・なが
ほぁぁ、凄いです!
サクラミラージュにもこういうアイドルさんがいらっしゃるのですねえ!
どこの世界でも誰かの希望になる人はいる……すごいです!
ながも全力で応援しますー!

凄く華やかでとっても綺麗ですねえ!
幻朧封じの儀――それもとっても大事ですが、皆さんの心をきらめかせるという気持ち、伝わってくるです!

「こっち向いて」団扇をお借りしましたが、これだけだとなんかちょっと足りねーですね……
ここは「ばーんして!」も必要なのではないでしょうか!
というわけで作って来たです!
このダブル団扇でアイドルさんを応援するですよー!
ほぁっ、ほんとにばーんしてくれるですか!?
わぁわぁ、すっごく嬉しーです!(団扇ぱたぱた)


栗花落・澪
アイドルする側なら慣れてるんだけど
応援する側って実は初めてで…
えっと、法被は着る、サイリウムは振る
ハチマキは巻く…で、団扇……
この文字入り団扇ってどうやって使うの?
持ってるだけでいいの?

一応万一の時に動きやすいようなるべく端の席で
周りの見様見真似で応援頑張る
もし事前に許可取れるなら
ステージ上または周囲に花弁状の紅色曼珠沙華や指定UC用意しておきたいけど…
演出として使ってくれていいし
UCは破魔を、曼珠沙華の方は鎌のような鋭さを持ってるから
影朧が接近した場合に斬撃や浄化で追い払えるかもって
アイドルさんには当てません
※ダメなら使いません

えっ、掛け声もあるの…!?
…が、頑張って聞いて覚えて合わせます…


鞍馬田・珠沙子
◎皇族サマが身分隠してアイドルとか超気合はいってんじゃん。そういう家の力に頼んない姿勢マジ気に入った!ぶっちゃけアイドルのライブとか行ったことないし、作法とかよく知らんけど一肌脱いだげるし!
とりあえずこの法被とハチマキがファンの|特攻服《トップク》ってワケ?なら着るしかないっしょ。で、こんだけ気合い入ったアイドルのオタクが気合入ってねぇわけないよなぁ!つーわけで盛り上がってるオタクからイキの良さそうなの連れて影朧に|喧嘩《カチコミ》行くべ!ライブに|乱闘《モッシュ》は付きもんっしょ!テンション爆アゲで一華咲かせに行くぜ!


天玲寺・夢彩
※何でもあり
ええと、つまり…ライブを盛り上げながら護衛して楽しんで応援して、皇ぞ‥じゃなかったアイドルさんには安全に最高のライブをしてもらえればいいってことかな?

やっぱり學徒兵としてはメインは護衛かな?
んー、でも夢彩がなんかもし混じっちゃっても大丈夫?
あ、別にわざと混ざるつもりはないよ!?
でも、ほら夢彩の技ってだいたい派手だし広範囲で、もし春姫で戦う場合は春姫大きいし夢彩自身も動くと桜がけっこう舞うんだもん。
まあ、なんかあってもサプライズとか演出とか上手くやってくれるよね!

夢彩はお仕事頑張りながら、楽しんで応援するね!
まずは会場に行かなくちゃ!春姫Goー!
(なんとかなる精神)


馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊なんですが、今回ただの運搬係兼ねた保護者。着いたら即UC

陰海月「ぷっきゅー!!」

…陰海月語を翻訳します…

こういうライヴ、動画配信で見てた時から行ってみたかったんだー!
光る色は、周りに合わせて!メインは皇族の人なんだから、ぼくが目立っちゃダメだよね!
鉢巻は傘にゆる~く巻いてるし、うちわも持って前に構えてるよー!

ちなみにね、護衛を兼ねてのぼく主体!
強力な影朧見つけても、ぼくの光珠なら…当たって爆発しても、カラフルだから舞台演出★って誤魔化せるからね!
ちゃんとそこも考えてるんだよ!


黒木・摩那
皇族が隠れてアイドル活動とか尊すぎます。
しかも、世界の危機に立ち向かうべく、自らが儀式を取り仕切るというのでは、もう推すしかないでしょう。

ここは下賜されたアイテムを身に着けて参戦させてもらいます。
ライブに参加。
ライブを盛り上げたら上げただけ儀式がうまくいくのなら、頑張って盛り上げますとも。UC【乱舞雷花】を発動して、七色の花びらを花吹雪にして舞台演出するとともに、会場外の影朧達の阿鼻叫喚もセットにしましょう。

視線がたくさんもらえるよう、推し活がんばります。




「ええと、つまり……ライブを盛り上げながら護衛して、楽しんで応援して、皇z……じゃなかった。
 アイドルさんには安全に最高のライブをしてもらえればいいってこと、かな?」

 概要を聞いた天玲寺・夢彩(春の大嵐少女・f22531)の要約内容に集まった猟兵たちがこくこく頷く。

「概ね間違いないと思いますよ。皇族が隠れてアイドル活動とか尊すぎます。しかも世界の危機に立ち向かうべく、自ら儀式を取り仕切るというのでは……もう推すしかないでしょう」
「皇族サマが身分隠してアイドルとか、超気合入ってんじゃん!家の力に頼んない姿勢マジ気に入った!ぶっちゃけライブ行ったことないし作法とかよく知らんけど!」

 ぐ、と拳を握って熱弁する黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)と、手のひらに拳を当てる鞍馬田・珠沙子(SUTEGORO☆ONMYOJI・f26157)からはやる気が漲っているのが目に見えてわかる。
 これは一肌脱ぐしかあるまい、やんごとなき方が自ら迷わず前線に出るのであれば、それを尊重し最大限サポートするのもサクラミラージュの超弩級戦力と称される猟兵たちの役目だ。

「ながも全力で応援しますー!どこの世界でも誰かの希望になる人はいる……それはとっても凄いことですから!」
「ぷっきゅー!ぷきゅ!(訳:こういうライブ、動画配信で見てた時から行ってみたかったんだー!)」
「わかりますっ!ながもライブ参加するの楽しみですー!」

 島江・なが(超弾丸シマエナガ・f42700)は馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)――の、ペットである陰海月とこれから始まるライブへの期待に胸を膨らませている。
 様々なぷきゅぷきゅの鳴き声から的確にその意味を理解して楽しく談笑しているのは流石賢い動物である。ついでにおっきな陰海月の上にシマエナガが乗っているのは結構かわいい。
 尚、今回義透は完全に保護者に徹するらしい。まるで孫を見る祖父のような目で陰海月を見ていた。

「みんな!皇族さんが許可くれたよ、ライブ会場にユーベルコードを仕込んでいいって」

 栗花落・澪(泡沫の花・f03165)が駆け寄ってくる。
 今回ライブを盛り上げつつ襲い来る影朧を撃破するということで、ライブ会場内に侵入された時のことも踏まえ予めスタッフの下に向かい許可を取りに行っていたのだ。
 スタッフが皇族に確認しに行くと秒でOKが降りたそうな。

「ほんと?なら安心して戦えるかも……あ、でも夢彩がもし混じっちゃっても大丈夫?あ、いや別にわざと混ざるつもりはないんだけど!」
「うん、大丈夫だって。むしろ猟兵がライブに入ってきたらもっと盛り上がるから歓迎するよ!って言ってくれたよ」
「本当?ならよかったー!なんかあってもサプライズとか演出とか上手くやってくれるんだね!」

『サクラミラージュの誇るべき超弩級戦力の皆さんですから!それにライブも派手な方が盛り上がりますし、長年やってますからアドリブで何でも何とかしてみせちゃいますよっ!』
 ――とは、澪がスタッフから伝え聞いた皇族のお言葉だそうで。
 あまりにも懐が広いアイドルである。まあ実際、猟兵のユーベルコードは戦闘における切り札としてだけではなく多種多様な使い道が存在する。
 当然このようなライブの場でも問題なく行使できるものも存在しているワケで。

「マジ太っ腹じゃん、ならお言葉に甘えさせてもらうしかないっしょ!とりあえずこの法被とハチマキがファンの|特攻服《トップク》ってワケ?
 ……うっわ何これ布の手触りがヤバ、めちゃくちゃいい布じゃん!!こんないーモンならなおさら着るしかないっしょ!」
「ぷっきゅ!ぷきゅー!(訳:法被は着れないけどハチマキは巻くよ!ゆるーく)」
「ほぁ、ながでもつけられるサイズがあるなんて凄いです!でもハチマキどうしましょう……」
「夢彩が巻いたげるよー!こっちおいで!」
「わぁ、ありがとうございますー!」
「応援する側って実は初めてなんだよね……えっと、この文字入り団扇ってどうやって使うの?持ってるだけでいいの?」
「持っているとファンアピができるので良いですよ。これ持ってるとファンサしてくれることがあるんです」

 かくして、各々戦装束(?)を身に着けた猟兵たちは皇族がライブの準備をしている極彩黄金劇場へと向かったのであった――。


 ――ライブ会場。
 法被にハチマキ、団扇にサイリウムと万全の準備をした観客たちが始まりはまだかと固唾を飲んで見守っている。

「(必要な打ち合わせは終わったし、あとは盛り上げるだけ……でも影朧がいつ飛び込んできてもおかしくない。警戒は怠らないようにしなきゃ……)」

 いつ何時でも対応できるよう、敢えて端の席を取って澪は定期的に辺りを見渡している。
 一方偶然その隣の席を取った珠沙子がふと思い出したように切り出した。

「そういやさ、アイドル応援する時って掛け声あるんだって?」
「えっ掛け声もあるの!?」
「まあアタシも作法とかよくわからんから知らんけど、てきとーに声合わせて盛り上げてりゃどうにかなるんじゃね?」
「が、頑張って聞いて覚えます……」
「ま、アタシらも協力したんだしきっといいライブになるって。全力で楽しんで影朧シバいてこ!」

 肩の力抜けよ、と言うかのように珠沙子が澪の背中をぽんぽん叩く。
 それもそうだ、と自然と澪の口元が綻び、油断はしないながらも前向きにライブが始まるのを待っていた。

「(まもなく開演の時間ですね……)」

 ライブが始まるのを楽しみに待ちながらも摩那は上を見上げる。
 極彩黄金劇場の天井は開けており、雨を凌ぐ為だけにガラス張りになっているという造りになっていた。
 即ち、影朧に目をつけられたら一気に侵入を許してしまうということでもあるが――
 仮にそうなったとして、|それもライブのパフォーマンスにしてしまえば良い《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》。

『こほん!えー……皆さん!今回はシヰクレツトライブにお越し頂きありがとうございますー!』

 突如響き渡るながの声によるアナウンス。
 これはアイドル皇族が「ちっちゃいとサヰリウムや団扇振ってくれても気付けないかもしれないから」と超至近距離のなが専用席を用意してくれたのだが、
 流石にただでそのお言葉に甘えるワケには……とながが手伝いを申し出た結果、ライブ前の注意事項を読み上げることになったという経緯での突発アナウンスである。

『これからライブをするに当たって皆さんにアイドルからお願いしたいことをお伝えするので、よーく耳の穴をお掃除してお聞きくださいです!』

 ライブ前の注意事項や案内アナウンスはどの世界でも共通事項なようだ。
 一般常識的に禁止とされる事項をながが一生懸命読み上げていくなが。
 声の可愛らしさにファンが次々に可愛い~と声を上げる。

『わぁぁ、ありがとうございま……こほんっ!えー、最後に!このライブは影朧を封じ込める為のものでもあり、とっても大事なイベントです!
 なのでたくさんライブを盛り上げて、影朧たちが襲ってきたら思い切りやっつけちゃいましょう!

 皆さん、今日はいっぱい楽しんでくださいね――それでは!シヰクレツトライブ、開幕です~~~!!!!』


 ながが声高らかに宣言し、開幕を飾る歌の前奏が始まったその刹那、激しい音を立ててガラスが割れる。
 劇場の外に湧き出た影朧たちが一斉に襲いかかってきたのだ。

「(――きた!)」
「澪さん!」

 摩那の声に澪はこくりと頷き、互いに行動に出る。
 影朧がガラスをぶち破り突入してきたと同時に、"ライブ演出"が始まった。
 まずは澪の|【心に灯す希望の輝き】《シエル・ド・レスポワール》がライブ会場を浄化の光と美しい花で飾り立てると同時に影朧の動きを抑制。
 次に摩那の|【乱舞雷花】《フルール・イリゼ》による七色の花びらが宙を舞い――

「ぷっっっっっっっっっきゅ―――――――――――――!!!!!!!!」
「えっと……『怪傑斬姫参上!!キミの悪いところをぶった斬るよー!!』」

 ゲーミングカラーに光る陰海月と桜吹雪を纏った夢彩の駆る『霊式・春姫』が、澪や摩那のユーベルコードと共に影朧ごと空へと舞い上がった。
 1680万色に光る光珠に込められた呪詛と浄化の力を纏った『RX春颯』、そして2種の周囲を飾り立てるユーベルコードの4つ。
 光と闇が合わさったかのような強力な一撃に、上空に吹っ飛んだ影朧たちは何故かゲーミングカラーに爆発四散!
 花火の如く派手に散るそれはライブを飾り立てる演出としてはあまりにも完璧で。

「みんな―――――!!盛り上がってる――――――――――ッ!!!?」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」」」」
「一発目から飛ばしていくよ――――――――――ッ!!!!!『成★敗!怪傑斬姫』!!」

 そこに今回の主役が派手に煽ればファンたちのテンションも最高潮に至るというもの。
 前奏は既に明るくも激しい曲調となり、アイドルがさらに煽ればサイリウムを片手に観客が一斉に合いの手を入れていくッ!!

「HEY!」
 \HEY!/
「HEY!」
 \HEY!/
「HEY!」
 \HEY!/

\ズッバーン!!!/

「(か、掛け声ってこんな感じでいいのかな……!?)」

 ファンの動きを真似ながら澪は掛け声を覚えるのに必死である。
 しかしファンたちはそこからさらに見事なヲタ芸を開始。

「(!?え、えっと……?動き早、ちゃんと真似れてるかな……!?)」
「はい!はい!そーれっそーれっそーれっそーれ!!」
「あっははは!この振り付けおもしろいじゃんマジ楽しー!」
「(え、二人共凄……!僕も頑張らないと!それに楽しまなきゃね!)」

 見事に合わせてヲタ芸をする摩那と珠沙子に当てられ、一生懸命動きをトレースしていく。
 皆の全力のヲタ芸と掛け声にアイドル皇族はますます笑顔になり、より歌声を高らかに響かせる!

「わぁぁ、凄い!凄いですー!とっても楽しいです!いっぱい応援するですよー!!」

 「こっち向いて」団扇と自作の「ばーんして!」うちわを構えてながもきゃっきゃと手――というか羽を振りながらぴょんぴょんと飛び跳ねてアイドルを応援。
 すると、アイドル皇族の目がこちらに向いた。

「ほぁ!?」

 目が合ったことで思わずながはびくんと飛び上がった。
 本当に団扇の通りにこっちを向いてくれたとなると、ファンなら心臓が飛び出そうになるものだ。それぐらい好きなんだもん。
 アイドル皇族はながの持っている「ばーんして!」の団扇を見るとにっこり笑って、マイクを持っていない手で銃を形作り、口パクで「ばーん!」とながを撃ち抜くファンサを見せた。

「ほぁっ!!!?ほんとにばーんしてくれたですか!?わぁっ、わぁわぁ!すっごく嬉しーです―――――!!!!」

 団扇を思い切りぱったぱったと振りながらハイテンションのながである。
 アイドル皇族はこの後も何人かのファンたちに向けたファンサを伴奏中のダンスに適切なタイミングで盛り込み、場の盛り上げに余念がない。
 ラストサビの前に既に会場は完全に温まりきっていた。

「っしゃあアンタら!影朧に|喧嘩《カチコ》む準備はいいかァ!?」
「「「おおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!」」」
「よっしゃァ!テンション爆上げで一華咲かせに行くぜェ!!!」

 そして最高に盛り上がるタイミングで珠沙子がイキの良さそうなドルオタ数人を引き連れて劇場内に侵入した影朧たちへ突貫!
 お前らも戦えと【闘魂注入】されたドルオタたちは珠沙子のSUTEGOROにも負けず劣らずの見事な徒手空拳で次々にしばき倒していくではないか。

「あはははっ!アンタらアタシがバフったからって鬼強すぎっしょ!ライブに|乱闘《モッシュ》は付きもん、このままブチ上げっぞォ!!!」

 ユーベルコードで強化しただけで影朧をしばき倒せる時点でただのファンではない。
 流石は秘境で行われるシヰクレツトライブに参加し続けた者たちだ、面構えが違う。
 影朧たちは他にも澪の仕込んでいた紅色曼樹沙華や摩那が展開した七色の花弁にも翻弄され、そこに珠沙子のSUTEGOROとドルオタ徒手空拳という必殺コンボにより次々と倒れていく。

「ぷっきゅー、ぷきゅっきゅー!(訳:楽しー!こんなライブ初めて!)」
「こんなに楽しい気持ちで戦うの初めてかも!よーし、春姫どんどんいくよー!!」

 空中では陰海月と夢彩の春姫がライブのリズムにノリながらも華麗に鮮やかに空からくる影朧共を仕留めていく。
 ゲーミングカラーに光る珠と夢彩の霊力が形作った光る桜の花びらが上空から極彩黄金劇場をさらに煌めかせる。
 ライブに盛り上がりながら影朧と乱闘を繰り広げるとかいうカオスな状況なのに、皆が皆顔を輝かせて何もかもを全力で楽しむ、そんな空間が今この場に出来上がっていた。
 その熱狂さ、場の一体感はまさに強固な楔そのものと言っても過言ではない。
 ライブが幻朧封じの儀である、というのに首を最初は傾げずにはいられない部分もあったが、なる程これは確かに封印の楔としての力になるには十分だ。

「……まあ、そんなことよりも今はライブを全力で楽しまないとですね」
「うん、そうだね。ふふ、お客さんの立場になるのも色々発見があっていいなあ」

 摩那と澪は二人顔を見合わせて笑い、再び他のファンに合わせて合いの手を入れていく。
 最初はぎこちなかった澪の動きも最初の1曲の間にすっかり慣れ切り熟練のファンと変わらない。
 こうして開幕から絶好調で迎えたシヰクレツトライブは最後までその勢いを崩すことなく、影朧をシバき倒しながら盛り上がり続けたのである――。
 当然ながら、儀式の成否は言うまでもない。
 戦争でありながらライブを楽しむという二度と味わえないであろう貴重な経験を、猟兵諸君が経ることができたのはきっと小さくない収穫になっただろうか。
 もしそうならば、それはきっととても喜ばしい――という所感を最後に、当報告書を締めくくることとする。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年09月08日


挿絵イラスト