帝都櫻大戰②〜艶めく彩りをあなたへ
●そこに需要があるならば供給するのが経済活動
「素晴らしいですお客様! この大変お美しいお姿、これならばお相手様も大層お喜びになることでしょう」
シンプルながらも手入れの行き届いたブラウスに濃紺のタイトスカートでいかにも「仕立屋の店員」といった姿の女性が、肌も露なきわどいデザインのドレスを纏った若い娘へお決まりの営業トークを決めていた。
言われたほうはというと俯いたまま暗く浮かない表情。
それもそのはず。
このドレスは愛する相手のためではなく、金で彼女を買った男を喜ばせるためのもの。
傍らには仲介業者か遊郭の担当者か、男が一人。
「ったく、俺もいい女にこんな服を着せて楽しみたいぜ」
使い走りなのだろう。自分ではとても手が届かない金持ちの道楽を羨む言葉を吐いて、会計を済ませる。
「おいさっさと行くぞ。ぐずぐずするな!」
「……はい」
男の怒号に若い娘は力のない声で答えると、自らを買った男のもとへ送られていく。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
店内の悲壮さもどこへやら、店員はいつもの調子で明るくお客様を見送るのだった。
お客様の未練は新たな影朧の種。次なるお客様を店員は笑顔でお迎えする。
●聖の近くにはだいたい俗があるらしい
帝都随一の繁華街「浅草六区」。華やかな施設が立ち並ぶその影に裏の繁華街、「番外地」ともいうべき区画が存在していた。
「遊郭、賭場、闘場とくればこういうお店もありますよね」
そう話を始めたのはステラ・バールフリット(氷と炎の魔女・f44391)。最近加わった世界『サイキックハーツ』から来た魔法使いだ。学生時代からファッションに気を使っていただけにこの手の情報には敏い。
「突然『帝都櫻大戰』が始まってびっくりしましたが、私の白い蝶が急報を告げてきましたのでお知らせいたします」
彼女の言う白い蝶とは、淡い光を放つ魔力でできた蝶のような形をした彼女のグリモア。そう、ステラ・バールフリットはグリモア猟兵なのだ。
グリモア猟兵とは予知能力によってオブリビオンの活動を知ることができる。彼女が語るのはこのまま何もしなければ起こる出来事だ。
「番外地のアパレルショップが影朧達に占拠されてしまいました。このままですと裏社会らしい未練を集めて影朧達の発生源になってしまいます」
遊郭に売られる若い娘などよくある話。そこにまつわる暗い情念など枚挙にいとまがない。そして影朧はそんな情念や未練を糧に出現する。
「それを防ぐためにアパレルショップを奪還する必要があるのですが、ただ撃破するよりも効果的な方法がありますのでそちらを実践していただきたいのです。
その方法はというと、皆さんには現地のアパレルショップでファッションを楽しんでいただき、影朧達上回る情念をもって彼らを浄化してください」
もともと無念を抱いていった者たちのなれの果て。お客様の笑顔のために働ければ影朧達は満足して浄化されてくれるだろう。
「女性服以外にもちゃんと男性服もありますし、エンターテイナー向けや甲冑をはじめとした戦闘服も用意があるようです。思いっきり着飾るもよし、全力でネタに走るもよし、方法はお任せします。楽しんできてくださいね」
要するにキーワードは【楽しむ】ということらしい。
「ただし、羽目を外し過ぎないでくださいね」
きわどい衣装もあるということで釘をさしておく。
「なお、残念ながら私自身は転送に専念しないといけないようですのでご一緒できません。ここで皆さんのご活躍を祈りつつお見送りさせていただきます」
グリモア猟兵はグリモアベースと転移先の連絡を確保する必要があるため、自分が直接予知された事件解決にあたるわけにはいかず、他の猟兵たちに依頼して対処してもらう形になるのだ。
魔女は笑顔で手を振ると猟兵たちを現地へと送り出すのだった。
如月麗文
ご無沙汰しております。
|如月麗文《きさらぎれいぶん》です。
OPをご覧いただきありがとうございます。
実に4年ぶりのシナリオは『帝都櫻大戦』の裏街道が舞台となります。
歓楽街の非日常を彩る衣装の数々。需要があるということは供給があるわけで、そんなお店のお話です。
綺麗なお姉さんが着てそうな服以外にも闘場で使えそうな武装類、賭場に出入りしてそうな自由業な感じの方々の衣装もあります。自慢の一着を着て艶やかな姿をアピールしてください。
衣装の解説やアピールの描写がメインになるかと思います。
実は衣装のイラスト持ってるよという場合はプレイングで教えていただければ参考にいたします。
水着を着てもいいですよ!
全力で楽しめば影朧達の未練も晴れることでありましょう。
なお、お代は結構です。
お客様の満足する姿が何よりの報酬でございます……。
当然ですが成人指定になりそうなプレイングはお返しいたします。
シナリオ成功を大きく超える採用は行いませんので、ご了承ください。
●プレイングボーナス……とにかく楽しむ/楽しむふりはするが一線は越えない。
楽しむとボーナスがつきますが、内容的に行き過ぎたアピール(具体的には年齢制限が発生しそうな内容)はしないでくださいね、という形になります。
それでは皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『レッツ・ファッションショウ!』
|
POW : とにかく格好良いor可愛い服装を選ぶ
SPD : 自分が普段着ないような服装を選ぶ
WIZ : 帝都で一般的に着られている服装を選ぶ
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フィーナ・シェフィールド
戦争が始まって大変な状況ですけど…
こんな時こそ、スタアとして市民を安心させるのがお仕事!
しっかり楽しみますよ♪
「あ、かわいい…」
わたしが選んだ衣装はこれ。
お祭りに着ていけそうな、紫色の地に満開の薄紅色の彼岸桜(ひがんさくら)の模様が入った浴衣。
帯は朱色で、飾り紐に桜の花を象った飾りが付いています。
「小物も揃えたいな…」
そこで見つけたのが、彼岸桜の柄が入った白い和装用のバッグ。
足元の草履もバッグと同じ色で揃えてコーディネート。
わたしと同じ、彼岸桜の模様。
落ち着いているようで、とても華やかな柄。かわいくて、きれいで。
こんな格好をして、みんなで楽しくお祭りにいけるようにするため。
がんばらなくっちゃ!
サクラミラージュの起源が突如として明かされ、もはや日常の風景であった|幻朧桜《げんろうざくら》が暴走、帝都タワーが実は|超古代種族《エンシェント・レヰス》『|悪魔《ダイモン》』の最高指導者、通信を司る|悪魔《ダイモン》『ビームスプリッター』の『頭部』であることも判明し、そこへきて『帝都櫻大戰』の勃発に帝都は混乱し民心は極限状態に陥っていた。
平和なはずの帝都で影朧の大発生から市街戦が始まり、外敵が空中艦隊で侵攻、極めつけは世界を統治していたはずの「不死の帝」がこの騒乱の元凶だというのだ。もはや何を信じていいのかわからなくなる。
そんな最中でも猟兵として、スタアとして、市民を安心させようとするフィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)の姿が帝都の番外地にあった。
(「戦争が始まって大変な状況ですけど……こんな時こそ、スタアとして市民を安心させるのがお仕事! しっかり楽しみますよ♪」)
グリモア猟兵からの依頼を受けて番外地にある|服飾店《アパレルショップ》を訪れた彼女は出迎えた店員にスタアとして笑顔で手を振り案内された女性服コーナーへ。
店の客層もあってか最近の流行りものからもうシーズンが終わっている懐かしい品まで幅広く取りそろえられている。
時間があれば眺めているだけでも楽しめそうなほど色鮮やかな品々だがフィーナが求めているのは今すぐ着て市民に安心を届けられる衣装。
この時期に合わせた浴衣をと探していると……
「あ、かわいい……!」
彼女が選んだのはお祭りに着ていけそうな、紫色の地に満開の薄紅色の|彼岸桜《ひがんさくら》の模様が入った浴衣。
|彼岸桜《ひがんさくら》は葉が広がる前に大量の小輪の花が咲き見栄えが華やかで、|幻朧桜《げんろうざくら》とはまた違った美しさがある桜だ。
淡紅色の花は紫色の生地に文字通り花のように咲き誇りフィーナのスタアとしての魅力を引き立てる。
帯は朱色で、飾り紐の桜の花がお花見の宴席に舞う花吹雪のよう。
浴衣が決まったところで続いて小物を探しにバッグや巾着が並ぶ一角へ。
「小物も揃えたいな……」
浴衣に合わせて小物も|彼岸桜《ひがんさくら》で揃えようと眺めていると目に飛び込んできたのが|彼岸桜《ひがんさくら》の柄が入った白い和装用のバッグ。
草履もバッグ同様に落ち着いた白で揃えたフィーナは髪に咲く桜も相まってまさに|彼岸桜《ひがんさくら》の天使。
鏡の前で改めて眺め、自身と同じ|彼岸桜《ひがんさくら》の模様に大満足するとそのままお買い上げ。
「落ち着いているようで、とても華やかな柄。かわいくて、きれいで。こんな格好をして、みんなで楽しくお祭りにいけるようにするため。がんばらなくっちゃ!」
奇しくも|彼岸桜《ひがんさくら》の花言葉は「心の平安」。
その花言葉を実現するため、フィーナは意気込みも新たに『帝都櫻大戰』へと向かっていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
栗花落・澪
あ、あの…店員さんに相談に乗ってもらう…
なんて事も出来たりします?
僕って見た目…自分で言うのもアレなんだけど
低身長で女っぽい、じゃないですか
髪は義理の姉が気に入ってるから切りたくはなくて
僕自身も可愛い系が好きだから
自分で選ぶとそっちに寄っちゃうし
他人に見繕うのは男女問わず得意なつもりだけど
自分用だと…ほんとに似合う?って、不安になって
だから、その…
男っぽく見える服オススメしてほしいです…!
いい服が見つかればこれもいいな、こっちもいいな!
どうしよう悩む~等きゃっきゃしつつ
髪を結んでみたり
ベースが決まれば合わせる小物等はスムーズに見繕い
モデルのように鏡の前で決めポーズ
えへへ、かっこよく見えます?
「いらっしゃいませ、お客様。ようこそお越しくださいました。店内をごゆるりとご覧いただき、御用があれば何なりとお申し付けください」
特にやましいことはしていないのだけれども何となくひっそりと入店した栗花落・澪(泡沫の花・f03165)を店員はいつものように明るい声でお迎えする。
せっかく向こうから声をかけてくれたということもあり、澪は思い切って切り出すことにした。
「あ、あの……店員さんに相談に乗ってもらう……なんて事も出来たりします?」
「もちろんですお客様。本日はどのような装いをご案内いたしましょう。スーツやタキシヰド、モダンな洋装に浴衣、紋付き袴など多数取り揃えてございます」
さすがは裏通りの|服飾店《アパレルショップ》の店員。澪の性別を間違えることなく紳士服を勧めてきた。
さすがプロ……澪がそう思ったかはさておき、店員に相談を続ける。
「僕って見た目……自分で言うのもアレなんだけど、低身長で女っぽい、じゃないですか」
澪の言葉を承りつつ|劣等感《コンプレックス》や|機微《センシティブ》にかかわりそうな話を否定も肯定もせず店員は笑顔のまま続きを促す。
「髪は義理の姉が気に入ってるから切りたくはなくて。僕自身も可愛い系が好きだから自分で選ぶとそっちに寄っちゃうし。他人に見繕うのは男女問わず得意なつもりだけど、自分用だと……ほんとに似合う? って、不安になって」
続く告白に笑顔のまま店員はただ静かに耳を傾ける。
「だから、その……男っぽく見える服オススメしてほしいです……!」
ようやく口にされた澪の希望を聞き、わが意を得たりとばかりに心なしか得意げな笑顔になった店員はお勧めのコーディネートをお客様に提案しはじめる。
「お客様の長い髪を活かしつつ男っぽく見える服装でございますね。かしこまりました。そうですね……」
言うが早いか紳士服コーナーに視線を巡らせ、ひょいひょいっと手に取ると澪のもとへ戻ってくる。
「ここ最近の帝都の殿方に流行の羽織袴に中折れ帽はいかがでしょうか。伝統的な和服に最先端の洋装を取り入れた“とれんどふぁっしょん”で、髪のお花を中折れ帽で隠しつつ長い髪は一つにまとめれば粋な若旦那の着こなしでございます」
大正時代ならではの和洋折衷コーデだった。女の子っぽい記号を西洋の帽子で消して、一目で紳士服とわかる羽織袴。長い髪も綺麗な殿方であればむしろより魅力を引き立ててくれる。
澪の髪の色にあった羽織袴を探してとっかえひっかえしつつどうしよう悩む~と店員さんと相談しつつきゃっきゃと楽しみながら若旦那らしい小道具も見繕う。
鏡の前でポーズを決めれば、粋な若旦那の凛々しい姿が。
「えへへ、かっこよく見えます?」
「素敵なお姿ですよ、お客様!」
サクラミラージュらしい粋ないで立ちの澪はほくほく顔で|服飾店《アパレルショップ》を後にするのだった。
大成功
🔵🔵🔵
薬袋・あすか
こういうのもある意味戦場、なのかね?
さて、買いまくるか
男性服か女性服かは特にこだわらず気になった物を片っ端から試着&お買い上げしていこう
いやー他人の金(経費)で買う物ほど安いもんはないってね
好み……あんまりフリルとかレースとかブリブリしたのはちょっと、って感じ?スカートよりズボン派だし
逆にスポーツ系は好きだね、それからエスニックも
ネルシャツにループタイとベスト、細身なサブリナパンツ、キャスケットを合わせたブリティッシュトラッドな秋コーデにお着替え
ん?これは…紐リボンのセクシーなナイトウェア一式?
夜の時間にちょっとこれをきてマンネリ防止…いや流石にやり過ぎか…?どっちかの身が持たなくなる未来が見える…うむむ…(お買い上げしたかはお任せ)
「こういうのもある意味戦場、なのかね?」
出迎えた店員を適当にあしらい薬袋・あすか(雪ん子・f40910)は帝都番外地の|服飾店《アパレルショップ》で服を物色していた。
グリモア猟兵の指示は【楽しむ】こと。
であるならばショッピングを楽しんでも問題ないはずだ。どのみち全部経費で請求するわけだし。
「さて、買いまくるか。いやー|他人の金《経費》で買う物ほど安いもんはないってね」
他人の金で喰う焼肉は旨い、という類の話だろうか。
ものすごく稼いでいるアスリートも他人の金で喰う焼肉は旨いらしいので人類共通の楽しみなのだろう。
予算は無尽蔵とくれば紳士服だろうが婦人服だろうが片っ端から試着して少しでも気になった服はお買い上げしていく。
大正時代ということもあり婦人服は鹿鳴館でダンスができそうなフリルやレースのブリブリしたのが多かったが、新進気鋭の歌劇団が好評を博していたこともあり、舞台での男装用の婦人服はあすかがいくつも試せるほど取り揃えてあった。
さすが舞台用なだけあって壮麗で豪華でありながら激しい動きも考慮された機能性も兼ね備えており、あすかは店内の男装用衣装を根こそぎ買い上げていく。
素材の段階で現代品に遠く及ばないもののスポーツ系も並んでおり、部屋着とかカジュアルな用途なら使えそうだとぽいぽい籠に放り込んでいく。
しかし、店内は欧州や北米のものが大半を占めておりエスニック系と思しき服装は見当たらなかった。大正時代なので仕方ないのかもしれない。
着られるならとりあえずお買い上げのスタンスで進んできたが、ふと|倫敦《ロンドン》特集のコーナーが目に留まった。
ケルベロスブレイドでは1900年代初頭などデウスエクスの侵略でそれどころではなかったはずだが、UDCアース、シルバーレイン、サイキックハーツの日本だったら日英同盟の時期だ。別世界といいつつもこういうところは踏襲されているのかもしれない。
|今年《2024年》のファッショントレンドは「トラッド」がキーワード。しかもここにあるのは復刻ではなくサクラミラージュ風ではあるが当時のブリティッシュトラッドだ。
ネルシャツにループタイとベスト、細身なサブリナパンツ、キャスケットを合わせた本格的なブリティッシュトラッドな秋コーデに着替えて今日の服装は決まり。
大量の戦果に満足して店を後にしようとしたところで見通しが良くなった店内で目に留まった一品。
(「ん?これは…紐リボンのセクシーなナイトウェア一式?」)
もはや服と呼べるか怪しい代物だった。だがこの店の立地を考えれば需要はとても高い。
(「夜の時間にちょっとこれをきてマンネリ防止……いや流石にやり過ぎか……? どっちかの身が持たなくなる未来が見える……うむむ……」)
夫婦の時間のことを思い浮かべて悩むあすか。そして買うにしても経費明細にコレを載せるのは憚られる。
あすかの出した結論は――
「会計、別でお願いします」
大成功
🔵🔵🔵
浅間・千星
【星猫】
ファッションを楽しめば影朧たちが発生しなくなるのか
……よし、ならば女子会だ!
普段は黒一択と豪語している佐久・ララを連れて、これ以上悲劇が生まれないようにファッションを楽しもう
わたしはこれでも服飾系の大学生だぞ!
佐久・ララのコーディネートは、このわたしにお任せあれ
彼女は花が好きだから、花柄が似合うんだろうなぁ
花柄の着物と、ピンクベージュのエプロンスカート
ソックスは普通でいいけど編み上げブーツ
これだけでもう、和洋折衷のハイカラさん衣装だ
それに頭は大きめの大きめのリボンにしたら、可愛いんだろうなぁ
あぁ、人の洋服選ぶの、楽しい……!
あ、自分の服も忘れてないぞ
彼女と同じコーディネートでお揃いにしよう
彼女を服と共に試着室に送り込んで、自分も隣の試着室でさっさと服を着てみる
鏡の前でちょっとポーズとって、
(…可愛いって言ってくれるかな…)
などと思うが、今は目的が違う!
こう思う時間の楽しさも、服選びなのだけどっ!
あとは佐久・ララを待つだけだが……
ん、なにこの子かわいいー♪
ん、デート?
なんのコト?
佐久・ララ
【星猫】
ちせちゃまと、お洋服見にきたなのー。
ララは正統派魔女っ子系ニャンコだから普段は黒い服しか着ないーなの。だけど、実はいろんな色のお洋服、気になってたなのー♪
魔女っ子同盟一発目の活動は、お洋服選びーなのっ!
ちせちゃまがいろんなお洋服を選んでいるのをワクワクして眺めながら、黒がちょっとも無くてちょっと不安
でもアレよアレよと言う間に選んでくれて、あっという間ーに試着室に突っ込まれたーなの
ちせちゃまが選んでくれたお洋服は、色とりどりのお花のお着物にエプロンスカート、編み上げブーツとおっきなリボン
恐々着てみて、鏡を見てみたけど……
ララ、『魔女はいつも黒一択』って決めつけてたとこがあったーから、鏡で自分を見た時、ほわわーって心が踊ったなの!
早速ちせちゃまに見せるーなの!
ってカーテン開けたら、ちせちゃまもお揃いのお洋服着てたなの
かわいーなの♪
お揃い、嬉しいなの♪ ありがとうなのー♪
お洋服って、楽しいなのっ
で、ちせちゃまはそのお洋服でデート行くなの?
女のカンを侮ってもらっちゃ困るーなのっ!
予想外に大口のお客様を迎えて番外地の|服飾店《アパレルショップ》は嬉しい悲鳴。いそいそと見通しの良くなった店内に商品を並べていく。
品出しも済み、次なるお客様を迎える準備を整えた|服飾店《アパレルショップ》へ新たに二つの影が現れた。
「ファッションを楽しめば影朧たちが発生しなくなるのか……よし、ならば女子会だ!」
これから戦争でも始めようかという勢いで女子会を宣言したのは浅間・千星(Stern des himmels・f43876)。まあ戦争はすでに始まっているのだけれども。
そんな彼女に連れられて帝都番外地までやってきたのは、普段は黒一択と豪語している正統派魔女っ子系ニャンコにしてケットシーの佐久・ララ(ハナサカコネコ・f17010)だ。
その言葉の通り今日の服も黒一色のワンピース。しかし実はいろんな色のお洋服が気になっていたらしい。意志表明したらそのまま撤回できないままになってしまうのは割とあるあるなこと。
そんなララの思いを知ってか知らずか、千星は服飾系の大学生としてララのコーディネートを買って出たのだ。
これによりララは千星と魔女っ子同盟を結成し、今日は一発目の活動としてお洋服選びにやってきた、という流れ。
「コーディネートはこのわたしにお任せあれ」
「ちせちゃまありがとーなの! ララ、どんなのが似合いそうなの?」
普段は黒以外着たことがないララに何が似合いそうか、千星なりの考察を披露していく。頭脳労働はお手の物。なぜならば彼女は元エクスブレインなのだ。
「佐久ララは花が好きだから、花柄が似合うのではないかと思うぞ。そうだな……」
そう言うと千星は早速花柄の着物を手に取り一緒に合わせる品と並べてコーデを確認していく。
(「ふむ、花柄の着物と、ピンクベージュのエプロンスカート、ソックスは普通でいいけど編み上げブーツっと、これだけでもう和洋折衷のハイカラさん衣装だな。それに頭は大きめのリボンにしたら、可愛いんだろうなぁ。あぁ、人の洋服選ぶの、楽しい……!」)
自身の意外な嗜好を自覚しつつ瞳を星のように輝かせて衣装選びに夢中になっていた。
ララは同盟相手が楽しそうに衣装を選ぶ様子をワクワクしながらも黒がちっともなくて少し不安な様子で眺めていたが、やがてコーデが決まったのか千星が選んだ洋服を籠にまとめて持ってくると。
「佐久ララのコーディネートが決まったぞ。早速試着してみてくれ」
そうして試着室に押し込まれた。
千星もまた試着する洋服を抱えてララの隣の試着室に入るとララに用意したものと同じコーディネートを身にまとう。
花柄の着物にピンクベージュのエプロンスカート、ソックスに編み上げブーツ、普段なら星を飾る髪は大きなリボンで可愛くデコレーション。
普段とは大きく変わる装いに、自然と鏡の前でちょっとポーズを取って。
(「……可愛いって言ってくれるかな……」)
ついつい見て欲しい相手のことを想ってしまう。
こう思う時間の楽しさも服選びなのだけれども、完全に今回の趣旨から外れていたことに気が付き千星は慌てて頭を振って思い直す。
しかしグリモア猟兵からのオーダーは【楽しむ】ことであり、ファッションはその手段でしかないので、作戦からしたら実は合ってるどころか楽しんでいるのでより効果的ですらあったりする。
とはいえララのコーディネートをするという目的のため、手早く着替えたら試着室の外でララを待つ千星。
一方のララは試着室の中で中身を確認してみると。
「ちせちゃまが選んでくれたお洋服は……まずは色とりどりのお花のお着物なの。ララが大好きなお花がいっぱいついてるなの。そして合わせるようにエプロンスカートに編み上げブーツとおっきなリボンなの! 服は可愛いけど……ララに似合うなの?」
普段と全く違う洋服に不安でいっぱいなまま恐る恐る着たララだったが、鏡を見て息をのむ。
『魔女はいつも黒一択』
そう決めつけていたララだったが、鏡で自分を見た時に不思議と心の奥から湧き上がるほわわーとした気持ちとともに心が躍るのを感じていた。
「早速ちせちゃまに見せるーなの!」
はやる心もそのままにララが勢いよくカーテンを開けると千星もまたお揃いのコーデでララを待っていた。
ララの姿を見るや否や千星は満面の笑み。
「ん、なにこの子かわいいー♪」
ララも千星とお揃いの可愛い服でご満悦。
「お揃い、嬉しいなの♪ ありがとうなのー♪ お洋服って、楽しいなのっ」
コーディネート作戦は大成功。
これにて一件落着と、お会計を済ませて帰路に就こうとするとララが一言。
「で、ちせちゃまはそのお洋服でデート行くなの?」
ギクッ、そんな音がしそうな反応を自慢の演技力で捻じ伏せると千星は普段通りの涼しい顔でクールに答える。
「ん、デート? なんのコト?」
「女のカンを侮ってもらっちゃ困るーなのっ! このコーディネートがどんな相手向けかくらいわかるなの!」
大量の状況証拠で追及する正統派魔女っ子ララが演技力で本心を隠し続けた名女優千星に挑む。
この対決の行方は果たして――
大成功
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劉・久遠
オシャレを楽しんで店も奪還できるやなんて最高やね
任しとき、そういうん大好き!
まずは店内をぶらぶら、ピンとくるものがないか探す
おや、これは書生コーデかな?
懐かし、昔嫁さんの扮する女給さんに合わせて書生服でデートしたなぁ……これ着て帰ったらどんな反応するやろか?
ジャケットを脱いで着物を服にあて、気に入ったものを一、二着、店員さんに預けたところで気付く
そっちの棚にあるアクセサリー……タイタックピンあるやん
しかも嫁さんや子供らと同じ色の小さな柘榴石
一言断ってから自身の首元のクロスタイにそのピンをあて、満足そうに笑む
家族の瞳が心臓近くにあるのって、なんかええね
普段使い用にこれもお願いしますと笑顔で頼む
もうすっかり日も落ちた帝都だが番外地はむしろここからが本領発揮とばかりに活気づく。
遊郭では遊女たちが道行く男たちに愛想を振りまき、賭場にはますます熱が入る。闘場もそろそろメインカードが始まるころだ。
そんな欲が渦巻く夜の歓楽街を飄々と歩く男が一人。
依頼を受けて|服飾店《アパレルショップ》の奪還にやってきた劉・久遠(迷宮組曲・f44175)だ。
任しとき、そういうん大好き! と二つ返事で引き受け、歓楽街の裏方としてそろそろ店じまいをしようかというこの店に足を運んできた。
「おばんどす。ちいと邪魔するでー」
いらっしゃいませーと明るく迎える店員に軽く挨拶を返すと店内をぶらぶら、ピンとくるものがないか探しはじめる。
「おや、これは書生コーデかな? 懐かし、昔嫁さんの扮する女給さんに合わせて書生服でデートしたなぁ……これ着て帰ったらどんな反応するやろか?」
思わぬサプライズのネタに久遠は妻の反応を想像しながらジャケットを脱ぐと、書生コーデに合うような着物を探していくつか試着してみる。
いっそ襟なしのスタンドカラーシャツも合わせて完全再現もいいかもしれない。おあつらえ向きに薄いグレーに細い白のストライプの着物まであった。
そうして気になる着物を一、二着ほど店員に預けたところでアクセサリー棚にタイタックピンが並んでいることに気づく。
それはしかも妻や子供たちと同じ瞳の色の柘榴石でできていた。
「ちょっとええかな?」
「はい。ぜひお試しください」
一言告げると意図を察した店員が試着を勧めてきた。
鏡の前で首元のクロスタイにそのピンをあてると、久遠は満足そうに目を細める。
(「家族の瞳が心臓近くにあるのって、なんかええね」)
今や最愛の妻と2児の父となった久遠にとって、家族を近くに感じられるタイタックピン。これも縁というものだろう。
「普段使い用にこれもお願いします」
「かしこまりました」
オシャレを楽しんで店も奪還できるやなんて最高やね、そんな意気込みで依頼を受けたが、思いのほか素敵なサプライズについつい顔が綻ぶ。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしております」
彼が最後の客だったのだろう。
久遠を見送った店員が店を閉じると灯りが落ち、満足げな笑顔のまま、店員だった影朧が消えていく。
こうして番外地の|服飾店《アパレルショップ》は奪還されたのだった。
せっかくだから桜餅も買うて帰ろうか。
そんなことを考えながら夜道を歩く久遠がふと空を見上げると。
「ああ……月が綺麗やね」
大成功
🔵🔵🔵