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縫い潰された蠱毒の中で

#UDCアース #カットスローターズ #UDC支部襲撃

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#UDC支部襲撃


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●とことん間が悪い
「いっやぁあああ! なんだって私が出張で古巣にきた時にこーんなことになっちゃうんですかぁああああ!」
 悲鳴の主は、花沢・ぼたんというUDC職員である。彼女は顔の横でコの字にした指をカクンッと持ちあげた。
 2年前にコンタクトに変えたのだけど、今でもたまに眼鏡だったクセでやってしまう。
 ――んなこたぁどうでもいい!
 いま、ぼたんの命が大ピンチ。
 迫り来るのは、スーツ姿に無機質な仮面をつけたサラリーマンの群れだ。彼らは無数に分裂した仮面型UDCにのっとられたUDCの職員らである。男も女もみーんなスーツのサラリーマン。
 オフィスの引きだしをあけて、あらゆる文房具がこんにちはー。ホラー映画の如くぼたんを襲う!

●ぶりーふぃんぐ
 都内から電車で2時間、土地だけはある地方都市。だから駐車場はいちいち広い。
 今回カットスローターズに目をつけられたのは、そんな地方都市で倉庫と事務所に偽装したUDC支部である。
 土地があり、人口密度も都心部より低いのを良いことに、ここは無力化されたUDCの封印保管を担っている。
 実は過去に一度、封印した邪神が解放されてあわや……ということがあったのだが、駆けつけた猟兵により事なきを得た。
 その後も更に土地を買い取り、人員を増やした上で、この支部は封印保管の役目を担っている。なんでも土地の方角も封印にとても良いらしい。そういうのも無視できないのだ、邪神って祟るしね。
 そんなわけで、完全に無害化した上で封印しているのだが、如何せん種類は多い。
「まぁねえ、カットスローターズくんからすると宝の山だよねえ」
 九泉・伽(Pray to my God・f11786)はしみじみと紫煙と共にそんな言葉を吐き出した。
 カットスローターズは『縫村委員会』というユーベルコードでこの支部を完全封鎖した。
 UDCの手で『完全無害化』したとは言うが、そんなもんはカットスローターズにとってはちり紙みたいにピーッとあっさり裂けるもんだ。
 そんなわけで、カットスローターズの手により封印解除された邪神どもが、支部内にみっちみちになって殺し合っている。
「喰らい合って最後に残るのが一番強い奴、蠱毒だね。生け贄はUDCの職員さんたちだ。幸いにも始まったばっかのトコに送り込めるんで、できるだけ助けてあげてよ」
 紫煙が暗闇に白を描く。その先に灯る電子画面には、支部の見取り図と職員のデータが記されている。
「殆どの職員は“仮面型UDC”にのっとられて、老若男女オールサラリーマン化してるよ。彼らはユーベルコードを使ってキミらに襲いかかってくる」
 彼らのユーベルコードをうまくかいくぐって仮面だけを壊せば無傷で救える。
「そうだねー、最初に救護班の面子を助けとくといいかもしんない。そしたら多少手荒な真似をしても手当ができるねー」
 不幸中の幸いで、UDCの力で肉体が強化されているので、致命傷を負わせても最大で全治1週間の怪我で済む。
「あ、あとね。ひとり、仮面に取り憑かれてない女の子がいるよ。花沢・ぼたんちゃんって言うの。2年半ほど前までこの支部にいて、当時も事件に巻き込まれてる」
 彼女は必死でサラリーマン化した職員から逃げ回っている。嘗て猟兵に助けられているので、とても協力的でもある。助けられれば他の職員を落ち着かせてくれる。また猟兵とも仕事をしているので、避難誘導の指示などなにかと通りやすい。
「職員を助けたら、カットスローターズがでてくるよ。猟兵もろとも生け贄にして、より強い邪神を|『持ち帰る』《アーカイブ》する算段だね」
 そんなこたぁ赦されないからぶちのめして欲しい。そもそもこいつを倒さないと閉鎖空間からの脱出は不可能だ。
「蠱毒が出来上がってなきゃあいいんだけど……まぁ無理だろうねぇ。今回もハードワークだけど、よろしくね」
 


一縷野望
オープニングをご覧いただきありがとうございます、一縷野です

こちらは、他シナリオやノベルの合間を縫ってのマイペース運営のシナリオです
・サポートを使ってガッと進むことが多々あります
・タグで「しめきりました」とないならいつ送っていただいてもOKです
・ただしタグにて告知する『執筆予定日』に手元にないプレイング流れる可能性が高いです(再送はお任せします)
・1章目の『執筆予定日』は8月30日~31日を予定しています(それ以前にサポートの執筆が行われることもあります)

>1章目
*花沢・ぼたん
ぼたん救出の描写は先着順です、執筆のタイミング次第ですが最大4名まで
「ぼたん救出以外のリプレイは不要」と言う方はプレイングのラストに【×】をつけておいてください
4名より後にきたもので【×】がない場合は、ぼたんを見送りつつ戦闘するリプレイをお届けします

*仮面職員を無傷で救う方法
敵ユーベルコードに対策をたてて仮面に攻撃をすればOKです
対策なく倒すとちょっと怪我しますが、後味は悪くならないです

>全ての章:オーバーロードについて
・プレイングが沢山書けるのを一番の利点にしていただければと思います
・流れることがないので採用はしやすいです
・リプレイ文字数はそこまで多くはなりません

>オマケ
2年前のぼたんが巻き込まれた事件
『私だって輝きたい ~カラオケでストレス解消~』
https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=40651

 以上です、ご参加お待ちしております
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第1章 集団戦 『仮面型UDC・サラリーマン』

POW   :    契約成立
【投擲した万年筆】が命中した対象を爆破し、更に互いを【契約の鎖】で繋ぐ。
SPD   :    凶化サラリーマン
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【事務用品による攻撃】の威力と攻撃回数が3倍になる。
WIZ   :    仕事をしなさい
【カバン】から、対象の【仕事を終わらせたい】という願いを叶える【パソコン】を創造する。[パソコン]をうまく使わないと願いは叶わない。

イラスト:MAO..AZ.

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

神代・凶津
やれやれ、大変な事になってんな相棒。
「…早く職員の方々を助けなければ。」

「…祓います。」
おうよ、相棒。敵の攻撃を見切って避けつつ『破魔弓』から【破魔の祓い矢】を敵の顔面にぶちかましてやんな。
コイツは怪異のみを粉砕し浄化する一撃。これなら気にせず存分に戦っても職員を傷付けずに助けられるってもんよ。
助けた職員には『結界霊符』を貼って結界術を展開して保護だぜ。

手当たり次第祓いながら進みつつ、ぼたんの嬢ちゃんを見つけたら保護だぜ。
俺達が来たからには安心だぜ……いや、俺は仮面型UDCじゃねえからッ!?
「…似たような物ですが害は無いので安心して下さい。」
ひでぇな、相棒ッ!?


【アドリブ歓迎】




 朱の袴が澱みを斬るよう進む。真っ赤な相棒仮面を携えし神代・凶津(謎の仮面と旅する巫女・f11808)だ。
“やれやれ、大変な事になってんな相棒”
「……早く職員の方々を助けなければ」
 桜の名の通り形の良い花唇へ、あわや突き刺さりかける万年筆。すんなりとした指でつまんで止めて下げおろす。
「……確かに、反応速度は通常の人間より強化されています」
 桜は携えた相棒に双眸を向けると容に被せた。
「……祓います」
 面越しのくぐもる声が戦いの合図だ。
“おうよ、相棒”
 赤い鬼面を被った刹那、嫋やかな巫女服が激しく翻る。女性とは思えぬ荒々しい振る舞いにて構えられしは破魔の弓だ。
“なんの遠慮もいらねぇ、敵の顔面にぶちかましてやんな”
 応じる変わりに破魔の矢が放たれる。壁沿いに白き光が浄化の筋を刻み突如反転。右隣のサラリーマンの仮面を貫いた。
 ぱりぃん……ッ! 繊細な硝子が割れる音を響かせて、サラリーマンに変えられていた中年女性が崩れ落ちる。
 まさに矢継ぎ早だ。無防備な女性を取り囲むサラリーマンの仮面が次々と粉砕されていく様は。
“安心しな。コイツは怪異のみを粉砕し浄化する一撃だ。怪我ひとつねえだろ?”
 顔を見合わせる頷く職員を前に、面も内側の花唇も安堵の微笑みを浮かべた、その時。
「こっちこないでくださいよぅ!」
 ぼたんの悲鳴だ。
“結界を張ったからしばらくは安全だ、ここでじっとしててくれ”
「……後続の猟兵もきますので」
 凶津と桜は、それだけ告げて悲鳴の元へ。
 だだっ広い廊下に崩れた柱、そこへぞくぞくとやってくるUDCの仮面どもに、ぼたんは尻餅をついてイヤイヤと首を振る。
“俺達が来たからには安心だぜ……”
 最前列の仮面が矢を受けて砕けたのだが、ぼたんの顔がますます恐怖に染まる。
「やだぁぁあ! なんか強そうなのが来ましたよぅ、たぁーすけてええ!!」
“いや、俺は仮面型UDCじゃねえからッ!?”
 間 違 え ら れ た。
 一見すると地獄の窯のように真っ赤だし、くわっと開いた口元も恐い……とはいえ、凶津はしょげしょげ。
「……似たような物ですが害は無いので安心して下さい」
 一方の桜はよくある対応だとしごく冷静であった。
 ふたりは、ぼたんを庇うように立ち次々矢をつがえては放つを繰り返す。
「あ、は、はい……ありがとうございますぅ」
 それでようやくほっと相好が崩れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

管木・ナユタ
よっ、ぼたん!
久しぶり!
アタシが来たぜ!

……『アタシ様』って一人称はやめたのかって?
ま、色々あったんだ

さて、積もる話は後だな!
こいつらはアタシが引き付ける!
ぼたんは安全なところへ行くんだ!

敵の群れに【ラブミー!】
こいつら、猟兵を愛しそうな感じじゃないしな
行動速度は半減するはずだ
そうすりゃ、万年筆を投擲する動作も見切りやすくなる
投擲する仕草を始めた奴にその辺のオフィスチェアを蹴倒してぶつけて、ひるんだ隙にチェーンソー剣で仮面を斬る!

間に合わずに万年筆を投擲されたら、飛斬帽を投げて弾き飛ばすぜ
最悪爆破されても、アタシ自身に万年筆が命中さえしなければ平気なはずだ

仮面を斬る時は職員を傷つけぬように注意


大町・詩乃
ぼたんさん、お久し振りです。
もう大丈夫ですよ♪と笑顔で。

結界術・高速詠唱による防御結界と、武器巨大化した天耀鏡による盾受けで、ぼたんさんと詩乃を護ります。
その上でオーラ防御を纏って前に出る。

皆さん、これから助けますからね。
そんな趣味の悪い仮面は葬り去ってしまいましょう。
と響月を口元に当てて楽器演奏による《帰幽奉告》。

仮面型UDCの魂と精神のみを破壊して、職員さん達を無傷で救出いたしますよ~。
尚、接近戦を挑んできた相手には第六感で予測して、見切りで躱しつつ、指先に籠めた光の属性攻撃・破魔・浄化で仮面のみを砕きます。

救出した職員さん達への対応はぼたんさんにお任せして、どんどん救出していきますよ~!




 カンッ! 小気味の良い音をたて万年筆が弾かれへし折れる。
「そうそう、その恐い仮面の奴だが、ハートは優しい奴だぜ!」
 戻った飛斬帽を被りなおし、きりりと収る漢前な双眸にぼたんは破顔一笑。
「ナユタさん! 元気そうですねぇ」
 かつてまどろっこしい自分のもやもやを聞いてくれた友人・管木・ナユタ(ミンチイーター・f36242)に相好を崩す。
「よっ、ぼたん! 久しぶり! アタシが来たぜ! 相変わらず厄介なのに好かれてんな」
「アタシ様じゃあないんです? めちゃ個性的な一人称だなーって思ってたんですけど!」
「ま、色々あったんだ」
 照れたようにツバを引いてから、チチッと人差し指をたて片目を閉じる。気障な仕草もナユタにぴったりだ。
「さて、積もる話は後だな! こいつらはアタシが引き付ける! お?」
 ナユタの勇気に応えるように、ぼたんの頭上に清浄なる風が渦巻いた――見事な防御結界だ。
「ぼたんさん、お久し振りです。もう大丈夫ですよ♪」
 ひらひらっと手をゆらし笑顔で駆けつけたのは、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)だ。
「わぁ、詩乃さんだぁ! 今度またお洋服買いに行こうってお誘いしようと思ってたんですよぅ!」
 切りそろえてふわふわにした髪は夏だから耳の下。ベビーピンクのレースのカットソーも似合っている。
「ふふふ、すっかりお洒落に磨きがかかりましたね。あ、そうそうカラオケのレパートリーも増えたんですよ」
 まったりとした再会の会話の手前で、矢継ぎ早な万年筆が全て落される。全身を映すまでに巨大化した天耀鏡が、詩乃の意志を汲み取り流麗に動き回り盾の役目を真っ当しているのだ。
「ぼたんを安全なところへ頼む。足止めはアタシに任せろ」
 その影でナユタは詩乃へ向けてぼたんの背を押した。
「策がおありのようですね。援護しましょう」
 詩乃はぼたんを背に庇いながら、ナユタから三歩後ろへと下がる。
「その人たちはぁ、事務員のおばちゃんや掃除のおじさんなんですよぉ。優しくしてあげてくださいねぇ!」
 なんて注文をつけるぐらいには調子を取り戻したのは、過去にも護り抜いてくれた信頼があるからだ。
「肉からヤバイもん剥がすのはアタシの得意分野だ、任せとけ!」
 なんて言いながら内心ではやりすぎねえようにと戒めるナユタである。
「さてっと」
 ゾンビのように躰を揺らしやってくるサラリーマンたちへ、ナユタはびしっと湯ひさし指を天井に向ける。
「さあ! アタシを! 愛せ!!」
 画然とした命令である。
 傲慢? ああ、上等だ。出来損ないと揶揄されて、それでも歯を食いしばり意地をはり前へと踏み込んだ。さらにさらにだ……自分の弱さに気づき“様”を外した。
「こんなアタシだから、いまは笑えるんだぜ!」
 にぃっと歯を見せて口端を吊り上げれば、少年めいたイタズラっぽさが強くなる。
「……わ、わぁ、ナユタさん可愛いですよぅ」
 影からぐぐっと上体を曲げて覗き込むぼたんに、詩乃も同意と神様スマイル。
「前を向ける人の輝きですね♪ ぼたんさんも可愛らしいですよ……あ、チャンス到来のようです」
 サラリーマンがぐっと四肢を引き攣らせる。スロー再生の如く万年筆を振りかぶったポーズは、す・き・だ・ら・け!
「やっぱなぁ、猟兵ラブとはいかないよな!」
 オフィスチェアの固まる場所まで回り込み、渾身の力で蹴り飛ばす。床を滑る灰色の暴走チェアは不安定な奴らを見事に巻き込んだ。
 エレキギターめいた轟音でチェーンソーの糸引き起動、へっぴり腰の仮面へ切っ先を押しつける。無論、そっとだ。
 チュイン! 次々と仮面が真っ二つになって落ちる。
「……ッ! うわっ、あいつら速度落ちてない?! 斯くなる上は……」
 自らを盾にと踊り出たナユタだが事なきを得る。なんと! 敵がぽとりぽとりと万年筆を取り落としたのだ。
 気づけば、殺伐からは程遠い安寧のメロディが場を包み込んでいる。
「~♪」
 上品な漆と金を纏いし響月は、その身に恥じぬ安らぎの音色を詩乃の口元で奏でる。この慈悲深き神の心根を厭う者、それ即ち邪の手先。証明するように、職員を乗っ取った仮面があっさりと砕け散った。
 現れた中年のご婦人二人が尻餅をついて、きょとんと瞳を瞬かせた。
「もう大丈夫ですよ。立てますか?」
 詩乃は手を差し伸べる。
「ありがとうございます」
 ひそひそと「美人ねぇ」「巫女さんだわぁ」と呟く二人。ぼたん曰わく、その二人は可愛いものに目が無いのだという。
「だからナユタさんの笑顔にやられちゃったんですよぅ」
「……ちょっ!!」
 真っ直ぐ褒められて照れるナユタだが、周囲の警戒は怠らない。だから詩乃はご婦人二人を背に庇い入れ替わり前へ。
「残りの皆さんもこれから助けますからね。こんな趣味の悪い仮面は葬り去ってしまいましょう」
 再び花唇を響月に宛がって、詩乃は解放の調べを奏で続ける――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

琶咲・輝乃
(顔の右半分を隠すお面を身に着けた着流し姿で登場)

密室での戦闘には本当に良い思い出がないなぁ
まぁ、あの時に比べたら状況的には大分楽な方だから職員の人達を助けていこう

高速詠唱で神薙刃を使用
攻撃の意識を職員にとりついている仮面型UDCとカバンや願いを叶えるパソコンに向けて攻撃を当てて
確実に相手の攻撃を潰したり職員さん達の安全を確保していくよ

仮面型UDCから解放された職員さんは即座に大量に出した漆鯆に救助活動をしてもらう
ぼたんさんの協力が得られそうなら避難誘導とか任せたいな

安全地帯にUDCが向かっているなら
そこの防衛をしつつ職員さん達を神薙刃で解放していこう

さて、次にも備えないとね

アドリブ
連携歓迎


椎那・紗里亜
鮮やかな翡翠色の拳法着と大きな扇を携えて現場へ。
「ぼたんさん、無事ですか?」

ぼたんさん周囲のUDCを排除した後、
救護職員、戦闘要員、一般職員の順で救出します。
救出した職員には声掛けし、順次手伝ってもらいます。

投擲された万年筆は扇で対処。
受け流し、叩き落とし、視界を遮り。
隙を縫って滑り込むように近づきます。
仮面の職員の間を流れるように歩む間に、
閃光のように掌底を仮面に叩き込みます。
百連打なら一瞬で複数体の仮面を割れるでしょう。

さて、次はカットスローターズですね……
直接相対したことはありませんが、
厄介な相手と聞き及んでいます。
油断せずにかかりましょう。




 ああ、この粘度の高い空気には憶えがある。
 もうあれから10年近く経つのかと、琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・f43836)はずり落ちる着流しを引き直し嘆息を漏らす。
 縫村委員会――まさか別世界でその名を聞く羽目になろうとは。
(「密室での戦闘には本当に良い思い出がないなぁ」)
 絶望の中で無辜の人々が殺される。暗澹たる気持ちで機を窺うのは精神が摩耗するばかりであった。
 しかし今日は違う。この手は命に届く。むしろ助けた後の安全確保に頭を悩ましているぐらいだ。贅沢な悩みだと思う。
「早速お出ましだね」
 ずらりと目の前に並ぶサラリーマンたちは、ばちんばちんとやけにうるさく鞄の留め金を外した。
 その間に輝乃の詠唱はとっくに終わっているのだが、この人たちを直接痛めつけたくはないので待機。
 ……間。
『わぁもう! パスワードとかわからねえんだけど!』
『紙で仕事しろ、いんたーねっつとかふざけるなぁ!』
 ええっと。
 輝乃はことりと首を傾げる。これはもしかしてうまく使えてないのではなかろうか? 現に輝乃には一切のダメージがやってこない。
(「敵愾心に呼応するよう編んでたのを調整して……っと」)
 直後、神薙刃の風がびゅるりと渦巻いた。窓ガラスが揺れて角から罅割れる。華奢な娘の脇をオフィスチェアがすーっと滑り進む。
 風は、為った。
 鞄が持ち手から千切れ落ち、ノートパソコンは突風で飛び散り壁に叩きつけられ一巻の終わり。
 最後に穏やかになった風が、ちょんっとUDCの仮面をそよがせたなら、それらは呆気なく砕け散った。
「もう大丈夫だよ。それでー……」
 避難の相談をしようとしところで前方が騒がしくなった。


 その前方では、詩乃とナユタの元に多勢が押し寄せていた。
「わわ!」
 ぼたんと敵を分断するように割り入ったのは、目が覚めるような翡翠の扇。
「ぼたんさん、無事ですか?」
 半身を覆う程のそれを軽快にとりまわし、椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)は一旦サラリーマンをまとめて吹き飛ばす。極力怪我をさせぬよう、まだユーベルコードはのせない。尻餅をつかせて話す暇を作ったのだ。
「はい、皆さんが護ってくださってるので」
 紗里亜の背で息をつくぼたんは随分と落ち着いている。
「良かったです。でしたらお願いがあるのですが。ぼたんさん、救護班の方ってわかりますか?」
 次々と起き上がり態勢を整えるのを前に、紗里亜は扇をぼたん側へと傾ける。
「腕章を巻いてる人たちがそうですよ」
 凜とした緑の光を頬にうつし答えるぼたん。確かに白い腕章をしている者が数名いる。
「わかりました。それでは私から離れないでくださいね。前に出ますッ!」
「は、はいーっ!」
 クンフーシューズで床を叩き乗り出した先には、万年筆の切っ先がずらり勢揃い。尻餅のままでも、死ぬまで働けの|鎖《契約》は投擲できるってわけだ。
 とはいえ、武術の研鑽を重ねた紗里亜からすればそれらは静止物も同然だ。
 日本舞踊めいた優雅さで扇を返し、受け止め斜め下へと叩き落す。誰もいない床で砕けた万年筆を一顧だにせず、紗里亜は一足飛びに立ち上がろうとする仮面の元へ到達する。直後、職員を捉える仮面が掬いあがり後方へと放り出された。
『……んあ?!』
 白髭の男はまさに面食らったという顔でへたりと再び尻餅をついた。
「白田さぁん! 無事でよかったですよぅ……!」
「ぼたんちゃん、おお、お久しぶりだな」
「んだ」
 そんなほのぼの再会に、更に数名の職員がまざる。輝乃が連れてきた解放済の職員だ。
 彼らの視界を艶やかな扇が遮った。直後、紙が凹む音が幾つも響いて谷折りが震える。
「ご安心を、絶対にとまりますから、ね」
「ここはボクに任せて、思い切り前に行っていいよ」
 後ろ手に扇の盾を維持する紗里亜を後押しするように、輝乃は着流しの腕を広げ職員を庇い立つ。
「ぼたんさん。あっちの道は風で清めてあるから、避難誘導をお願いできるかな?」
 輝乃が指さす先は、密室の澱みが風でくりぬかれ日常の彩りが戻されている。
「わかりましたぁ! じゃあ行きますよぅ」
 白田を庇い歩き出すのを横目に、紗里亜は万年筆をかいくぐり接敵する。
「この方たちもお願いします! ハァッ!」
 屈強な面々を扇で集め追い込んで、あとは掌底。1、2、3……と、テンポ良く入れる。軽快だ。心躍るようにすら見えるのは、余りに素早く決して痛みを与えぬ一打だからだ。正気に戻った彼らを紗里亜はぼたんの方へと促した。
「お仕事禁止だよ」
 長机にパソコンを置くそばから輝乃の風が薙ぎ払う。
 こうして、ぼたんが先導する避難メンバーは、瞬く間に増えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユウ・リバーサイド
UDC組織には幼少時に父さんと俺を保護して貰ったり
その後の生活の援助とか返し切れない恩があるんだ

(芦屋にあるUDC職員寮で海莉と2人、子供だけの生活を
同じ棟に住む職員さん達に見守ってもらった当時を思い出し)

…絶対に、絶対に1人でも多く助ける!

万年筆の軌道を心眼で見切りかわし
あるいはパフォーマンスのように近くの遮蔽物で受け止め
軽技で下がり爆風の勢いを殺す

捕まったらこちらから鎖を掴んで引っ張り
勢いをつけて距離を詰め
仮面の破壊を試みる

UCで仮面の破壊ができれば御の字
UCが無理ならハートからの追撃の形で剣の柄で仮面だけを狙って砕いていく
攻撃を貫通『させず』、仮面で止まるように意識

しっかりしてください!




 ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)は、一時期ではあるが、おっとりとして上品な関西弁に囲まれて育った。
 ある組織の大人たちは、身元しれずの父子を受け入れてくれた。両親を二度失った義妹の海莉共々、寄り添い見守ってもらった恩は忘れられない。
 ――その組織の名はUDCという。
(「……絶対に、絶対に1人でも多く助ける!」)
 誓いと同時に自動的に躰が動いた。ユウは、積み上がるオフィスチェアを一客つかむと虚空に遊ばせる。
 ガヅッ!
 背もたれに黒い万年筆が突き刺さった。尻に鎖をつれた先、握りしめるのは仮面のサラリーマンである。
 彼らは人だ。彼らの手で救われる人たちがいる、ならば痛み無く助け出してみせようではないか。
 左手にもう一客。即座に3本の万年筆が刺さった。間髪入れず、ジャグリングめいた手つきで操り4人をこちらへ引き寄せる。
『なにをする!』
『うわぁあ……ッ』
 ユウはぐんっと撓む鎖に飛び乗り跳躍する。眼下でしゃんしゃんと揺れる音は着地点の標だ。
 サラリーマンが万年筆を手放すが遅い! 既に|エンタテイナー《ユウ》はテーブルマジックの距離にいる。
「悪い夢よ、さようなら」
 些か気障な台詞と共に、指先から現れた漆黒の蝶が仮面を掠める。するとどうだ、仮面は砂塵と化したではないか!
 仮面から解放されて硬直する婦人を庇う。同様にあとの3人へも、esprit noirを介して|目覚めの儀式《モーニングコール》。
 ――決して、肌に達してはならない。強き力を振うからこそ、精密なる加減を要する。

“ひとのこころとは、いともたやすくこわれるものだから”
“くみたてなおしても、そうそうもとにはもどらない”

「しっかりしてください!」
 蹌踉ける2人の手首を掴んで声をかける。助けた2人も口々に名を呼んでくれた。
『猟兵さん、助けにきてくれたのねぇ』
 ふらつく2人も改めてふんばると口々に礼を告げる。良かった、みんな大丈夫そうだ。
「こちらです」
 壁を背に通路に顔を出す。
 空間が歪み好き勝手に縫い合わされていたのだが、猟兵らの勝利で随分と元に戻されているのがわかる。
 esprit noirを先頭に、ユウは彼らを安全な場所へ送り届けるのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山崎・圭一
仕事ォ??
俺ァ自分の“好き”を生業としてるから御生憎様
テメェ等のUCは俺には無意味だぞ
俺は死ぬまで写真家の仕事を続けたいの!
行って来い!|ガブリエル《ゴキブリ白燐蟲》達!
奴らのカバンから机の引き出しまで行き渡って
社畜仮面共をパニクらせろ

そんで『唯蛾毒尊』で【マヒ攻撃】
屋内なら煙も籠るだろ
動きを止めたら程よい力加減で【呪殺弾】炸裂
仮面ぶっ壊すぞ

怪我人がいれば、俺の白燐蟲の鱗粉撒いとくわ
これ、治癒効果あるし
正気に戻った職員には避難に徹してもらう
転送前にスマホで撮影した見取り図を確認
避難箇所を指定して、
あんまし散らばった形で避難しないよう頼んどこ

あ、言っとくがその白いゴキは俺の大事な白燐蟲だからな!




 煙草に灯る火の輝きを眼下に、山崎・圭一(学ランおじさん・f35364)は右目を隠す髪を耳にかけた。
 世の中、どこもかしこも禁煙禁煙、だがこれだけ空間がこんがらがってりゃあ見逃してもらえるだろう。
 携帯灰皿に灰を叩き歩く圭一は、好きが高じてフォトスタジオを営んでいる。故に、安定と引き替えに自由を差し出す職場にはとんと縁がない男だ。
『まだノルマがぁ……』
『クロックアップで仕事よはやくなぁれ』
 だから死にかけ魚類の風体でノートパソコンをカタカタさせる面々のことは理解できない。
『仕事が嫌だぁ』
『帰りたぁい』
 つらーい、圧。
 くるしーい、圧。
 画一的なオフィス用品のように等しく苦しむサラリーマンを前にして、圭一は曲げた唇から紫煙を漏らした。
「仕事ォ?? 俺ァ自分の“好き”を生業としてるから御生憎様、テメェ等のUCは俺には無意味だぞ」
 恐らくは精神攻撃なのだろうけど、相殺する必要すらないノーダメージ。
『安定しない仕事につかないと親が泣くぞー』
『若い内だけだぞ、年取ったら後悔するぞー』
 カチン!
「俺は死ぬまで写真家の仕事を続けたいの!」
 紫煙に交え穏便に白燐蟲をばらまくつもりだったが方針変更、一気に行く。というか、鬱陶しい感情がもはや抑えられない。
「行って来い!|ガブリエル《ゴキブリ白燐蟲》達!」
 圭一の全身が白銀に輝いたかと思うと、羽根をてらりと輝かせる小判大の大群が雪崩のように溢れ出した。
 ゴキブリめいたガブリエルズは、社畜な彼らの鞄を一瞬でデコる。遠目にはキラキラ★だが、手首かゴキ●リが這い上がってくる様はたまったもんじゃない!
『うわぁああ!』
 落ちた鞄をみぢみぢと腐食、次の攻撃を放つ筈だったパソコンも白燐蟲のお腹の中に消えていく。
「あいつらが帰ってくるから、俺の腹に社畜パソコンも入るのかよ、ゲップでそう」
 などとボヤキながらも煙草を灰皿に躙って煙に変える。呼応するように室内にも深い靄に埋めつくされた。
 靄の中、サラリーマンが倒れる前に呪殺弾で仮面を壊す。傷つけぬようにはしたが、怪我した人には白燐蟲の鱗粉での|アフターケア《手当》もつけておこう。
「「「「ありがとうございました」」」」
 我に返った職員からのお礼に手を振って、圭一はスマホの見取り図から顔をあげた。
「そっち行くと西通用口に出るから。あんま散らばらないでいてくれると助かるわ」
 ……さっきの煙の正体が蛾だったのは黙っておこう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…たまぁにいるのよねぇ、奇運悪運ひっくるめてどういうわけかやたらと星の巡りが偏る人って。本人からすれば不本意極まりないでしょうけれど。

早く仕事を終わらせたいのはこっちも同じなんだし、さっさと片付けちゃいましょ。●黙殺・妨害と黙殺・砲列を同時起動、描くのは帝釈天印雷。パソコンをどう使う気なのかは知らないけれど、高圧電流の〇弾幕叩き込めばまあさすがに壊れるでしょ。あとは端から仮面叩き壊してけばいいわよねぇ。電撃の関係で○マヒ攻撃も乗るからそっちの面でも制圧は楽になるかしらぁ?
後にもっと大物がいるのは確定してるんだし、効率的にいきましょ。




 シェーカーをペンに持ち替えて、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、再びこの地に踏みいった。
 なんとなーく見覚えのある壁の色を横目に、未だ仮面を剥がされていない被害者を求めて歩を進める。
(「……たまぁにいるのよねぇ、奇運悪運ひっくるめてどういうわけかやたらと星の巡りが偏る人って」)
 ぼたんとは、2年半前の貸し切りカラオケボックスで、推しカクテルを作ってからの縁だ。趣味のことは嬉しそうに話してくれたのが印象に残っている。彼女の救護は完了したとのことで、そこは一安心。
 不本意極まりない巻き込まれ体質の挙げ句に死亡だなんて、本人も浮かばれないだろうし。
「あら、けっこう残業しているのねぇ」
 蕩ける声で“お疲れ様”と労られたら明日も生きていける! けれど仮面に生きてもらっては困るので、ティオレンシアは今日も粛々と圧縮詠唱を済ますのだ。
“帝釈天印雷”
 指で印を組まずともゴールドシーンを奔らせれば完了。刹那、室内では心躍る花火大会が開催! ……実際はパソコンから艶やかに電光が弾けて盛大におシャカになっているだけだ。
『仕事がはじまらん!』
『どうすればいいんだぁ!』
 スタイリッシュ涙目、ただし瞳は仮面の向こう側。そんな有様にティオレンシアは頬杖の形でやれやれと首を傾ける。
「早く仕事を終わらせたいのはこっちも同じだし、そのユーベルコードが起動できたとしてもあたしには痛くもかゆくもなかったわよぉ?」
『『『なん、だと?!』』』
 言葉で刺して、指先は黙殺と妨害を量産する。マスキングテープの如く広がる雷は予備のパソコンも含めて葬り去っていく。多分備品ではないはず、ここは縫村委員会の特殊空間だし。
 もはや心のライフポイントが0のサラリーマンたちは、次々と床にぺしゃりと倒れていくだけだ。麻痺しているので再起動は不可です。
「じゃーあ、その邪魔な仮面をひっぺはがしていきましょ」
 デコピンの要領でぺちんぺちんと弾けば、いとも簡単に仮面は霧散する。
「……よいしょっと。これで最後ね。どぉ? みんな、痛いところはないかしらぁ?」
 雷を流し込んだのはパソコンそして仮面まで。だから職員らは痺れからも解放されて体スッキリ、口々にお礼を述べる。
「それじゃあ避難場所まで護衛するわ。ついてきて頂戴ねぇ」
 大物が控えているのは確定事項。だから救助もれなく効率的に、である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
UDCに操られるってのはよくあるけど…
……サラリーマンにされてやりたくもない業務を給料無し残業有でさせられるってのはかなり悲惨だな…

UDC職員の中でも戦闘に関わる方々を優先して攻撃します
戦闘が始まったばかりなら普段からいる場所からそう離れていないかもしれないし、まずはそういう部署がある場所へ向かいます
普段から戦い慣れている分戦闘能力が高いなら先に抑えておかないと犠牲者が増えそうだし、荒事に慣れていれば正気を取り戻した後もあまり混乱せずに動いてくれそうだしな

愛刀…というよりは相棒とでも表現した方が適切な気もするけど、一緒に何度も死地を潜り抜けてきた『風牙』を手に突っ込みます
《空斬裂破》なら身体は傷付けないですむので仮面諸共斬ります

契約を迫るなら最低限契約内容を開示しろとは思いますが、碌なものではなさそうだしその辺にある机や椅子でも盾にして万年筆を防ぎます
爆破の専門家であるRB団をそう簡単に爆破できると思うなよ…
……仮面のせいで身体を無理矢理動かされていたのなら、明日は筋肉痛で大変だろうな…




 さて。
 ここまでで大きな被害が出なかったのは、猟兵達が各々最適な方策で対処したのが大きい。その上で、最初に布石を置いたのは、涼風・穹(人間の探索者・f02404)である。
 戦場に送り込まれた穹がまず探したのは、UDC職員の中でも戦闘部隊の面々だ。
(「予知に引っかかるかは運だ。だからUDCの所内には有事に対処する防衛訓練を詰んだ職員がいるはずだ」)
 ましてや危険なアーティファクトを預かる支部がなんの対策も講じてない訳が無い。今回も非戦闘員を逃がしつつ抵抗した筈なのだ。
「……ぐちゃぐちゃに縫い合わされてるが、前に来た時の記憶はけっこうアテになるもんだ」
 壁や廊下の色や漂う雰囲気、そして|抗った痕跡《・・・・》――穹は戦闘員が布陣した場所を特定する。
 しかし同時に拙いことにも気がついてしまう。
 本来は離れている筈の場所も距離を無視して隣り合わせ。これじゃあ非戦闘員を逃がしたのが水の泡だ。早く手を打たねば。
 埒外ではないにしても戦闘の心得を持つ者が、そうでない者と同士討ちを始めたら目も当てられない。

 穹の足音にあわせ、カタカタカタと革靴がリノリウムを叩く音がまじった。鋭く、隙がない。
 相棒の柄を握り、穹はバリケードのように積み上げられたオフィスデスクを駆け上がり空間目掛けて飛び込んだ。
「爆破の専門家であるRB団をそう簡単に爆破できると思うなよ……」
 眼下には、屈強な体躯を窮屈そうにスーツにつっこんだ男達がずらり。敵襲にも焦らず素早く万年筆を構えて投げつけてくる。
 すいっと、身を傾けて1つ避け。そのまま壁に足裏をつけ着地。重力無視は瞬間なら叶う。
 だが叶うのは刹那だ。
 まさに風の刃、振り抜く勢いを翼に変えて空間圧縮にて接近、仮面を斬り裂いた。
『……くっ!』
 致命の刃に身を竦めた男へ、穹はまぁまぁ落ち着けと頬をゆるめた。
「この技はつまらないものしか斬れないんだ。つまりあんたらの命は無事ってことだ」
 口上を述べながら、ノックバックのフリで真後ろの襟首を掴んで放り投げ、でんぐりがえって晒される仮面に刃をあわせた。
 仮面が割れて、どすんっとしりもちをついたのは熊のような男だ。丸い瞳を瞬かせ首を揺する様はどことなくユーモラスですらある。
『おい、なんだこれは……あんた、猟兵か?』
「すまん、説明は後だ」
 男の前に陣取り、穹は素早く椅子を蹴飛ばした。
 くるんと半回転した背もたれにダーツの如く万年筆が命中。お陰で契約の鎖が仇となり、身動きがとれなくなったサラリーマンがずらり三名。
「契約を迫るなら最低限契約内容を開示しろ……いや、やっぱりいい。そんな風に無意味に縛り付けられるだけだろうからな」
 穹は座面を踏み台に飛翔、落下の勢いで縦切りから持ち手を捻って薙ぎ払い。一気に三名の仮面をはがした。
 息をつく間もなく机へと転がり込む。直後また刺さる万年筆の音、それを合図に垂直に飛上がると、鎖を踏んで躍りかかる!
「これでラストっと」
 この場にいる全ての職員をUDCから解放し、漸く風刃は鞘で眠りについた。
『ありがとう』
『猟兵さん、助かった~』
 背中には口々のお礼が投げかけられる。ああ良かったなんて安堵は顔面にはのせずに、クールめに振り返る穹。
「お疲れさん。もう契約書にない無意味な残業は終わりだ。こっからは正規のお仕事タイムだぜ」
 穹はこれから救助されるであろう者達の護衛を依頼する。UDCの猛者どもは口々に巻かせておけと請け負った。
 請け負った……が……。
『うぅ、痛っえ……なんか体が異様に疲れてるんだけど!』
『なんだこれ捻ったか?』
 と、穹とさほど年の変わらぬ2名が異常を訴える。無理もない、仮面に無理矢理動かされていたのだから。
『ははは! 鍛え方がたりねえんだ』
『こーれだから最近の若い奴はよぉ』
 なんて、老害ムーブしているオジサンたちへ穹は肩を竦める。
(「筋肉痛って、年を取れば取るほど後からくるんだよなぁ……」)

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『カットスローターズ』

POW   :    断裁ディバイダー
【カッターナイフ】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    疾風ダンスマカブル
【高速ステップ】で敵の間合いに踏み込み、【斬撃力を備えた衝撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    九死カットスロート
自身の【瞳】が輝く間、【カッターナイフ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。

イラスト:みやこなぎ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

オズワルド・ダンタリオン
久しいね、六六六人衆。お前たちが覚えてなくても僕は忘れはしない
僕が、お前たちを止める

防護魔術式を展開しながら前進し敵との間合いを詰めに行く
|マジックミサイル《エネルギー弾》で牽制しながら接敵し剣で近接戦闘に持ち込もう

だが、ダークネスは強い
あの時代ほど絶対的な戦闘力差ではないが、それでも真っ向勝負は僕が不利だろう。敵の猛攻に僕は押し切られ、血を吐きながら膝をつく
そうして奴が僕にトドメを刺しにきたその時だ

《随分と油断したな、殺人鬼。勝ったとでも思ったか?》
召喚された|僕のダークネス《ダンタリオン》が奴を奇襲する。ゼロ距離からのフリージングデスだ!
《ブレイズゲートの虜囚ごときが、頭に乗るなよ!》




 あの時代のように既に弄ばれ助命叶わぬ状態からのスタートより、どれほど幸いなことか。
 奴らにとっちゃあスプーンで掬って流し込んだパプリカの欠片程度なのだろう。
 だが、僕は忘れはしない。
「久しいね、六六六人衆」
 オズワルド・ダンタリオン(夜を往く者・f43848)を見もせずにカットスローターは机に腰掛けカッターナイフを弄ぶ。
「ああ、来たね猟兵。いや、|灼滅者《スレイヤー》」
 オズワルドが防護の術式を起動したのは片目で把握済。
「人々を助け出せたから勝ちだと思ってる? 残念だねぇ、UDC達は順調に強い子競争に夢中だよ」
 反対側の目の側は仮面をかけたように歪んだ赫で染まっている。共食いしているUDCの返り血だ。
『切宮君、油断は大敵ですと何度言ったらわかるのですか』
「油断? してないって。縫村は相変わらず口うるさいね」
 既に九つのパッションピンクはその手を離れている。
(「ああ、この圧だ」)
 オズワルドの頬を照らし飛び立っていく光が、いつもより頼りなく思える。蛍火のように麗しく征くそれは、数え切れぬ程に重なりようやく1つを落とす。
 歩みは止めぬが故に、命を刻む切っ先には近づき相殺は難度をあげていく。三つのカッターナイフに頬と腕を抉られ、気合いで輝夜の剣振り下ろした
『近づかれましたよ』
「これは俺の距離だよ」
 細い刃で止めたカットスローターは、無造作に反対の手でオズワルドの腹を薙いだ。
「くッ……」
 デコイを噛ませようとしたが間に合わず。刃の細さを無視した深手に内臓が痛んだ。
 がぼがぼッと喀血の熱が伝う喉に次の刃がくる。辛うじて剣で払うと、左右の肩に刃がねじ込まれ激痛にのたうった。
(「やはり、まだまだ真っ向勝負では勝ち目がないな」)
 呼吸音しか聞こえない中で、オズワルドは魂を深淵へと沈ませる。

“――我は汝、汝は我……頼むよ、負けたくはない。だけどこのままじゃあ埒があかないんだ”
《――随分と素直に助けを求めるようになったものだな》

 内側の悪魔が嗤った時も、奴らは相も変わらずお喋りを続けていた。
「その腕ふたつ、落としとこうか」
『腕2本と言わずトドメを刺してください』
「わかってるよ。こういうのは順番が大事なんだよ」
『あなたの美学なんてどうでもいいです』
 それは、なんて無駄話。
 だから、こうなる。
 距離無しのダイヤモンドダスト。
 出来上がるのは、マヌケに口を半開きにしたカットスローターの氷像だ。
《随分と油断したな、殺人鬼。勝ったとでも思ったか?》
「……き、さま、まさか闇堕ち……?」
 オズワルドは首を傾けると、更なる氷点下の魔術を重ねた。凍り付いたカッターナイフが手首ごとぽとりとおちた。
《ブレイズゲートの虜囚ごときが、頭に乗るなよ!》
 容赦はない。
 悪魔とは狡猾であり抜け目がない。動き出すのが遅い代わりに、行動を起こした時には勝ちが確定しているのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユウ・リバーサイド
アドリブ絡み歓迎

随分と力が落ちたもんだな
以前は外からどんなにぶっ叩いても壊れなかった縫村委員会も
今は一発で穴が空いたぜ?

UCで記憶を辿り
挑発の演技で相手の隙を誘う

あの頃
依頼のサポートで待機しては
惨劇が終わるまで外で待ってた“俺”の悔しさが蘇る
でも今は違う
救える命がある!

心眼で相手の足取りを見切り
幸運とダンスで鍛えた体幹でかわしカウンターで足払い

橘華中学のお前と癖は変わんねぇな!

声を張り上げ味方全員に情報共有

壁を蹴って方向転換したりと足場として地形を利用
斬撃波はエアシューズで生んだ鎌鼬で相殺

小さくも隔離されて歪んだ世界となったこの空間を革命する
その意思で剣を碧く強く輝かせ強化
敵の急所へと突き出す




“彼”が目にしてきたのは|戻らない《・・・・》ものばかりだ。
 辿り着いた時には生きているのに身を挺して庇ってはならない。彼らの死は既に計上されていて、既定路線を外れるとより被害が膨れあがるから。
 既に堕ちた魂が再び人に戻ることはほぼあり得ない。だから、殺す。
 魂の摩耗を感じながら、生きる己が傷つくべきではないと無理矢理に律した。
 芝居という匣に悲劇を詰めるなんて赦されない。いつだって無情なリアルがつきまとう。
 ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)深く息を吐き出した。それは己を一旦外に出すように。
 此度纏うは“彼”だ。普段より勝手が違う、それとも同じであるべきか。まぁいい、役が走り出せば自ずとわかる。決めるのは役者ではなく観客だ。
 だから――さぁ、おいで。

「随分と力が落ちたもんだな、切宮。縫村を連れてその程度か」

 第一声は重要だ、時には役者の評価が全て決まると言ってもよい。
「うるさい、小物。口より先に手を動かしなよ」
 切宮の渦巻き眼がぎろりと剥かれる。ただそれだけでビリリとした圧がある。
(「ああ、狡いな。いるだけで映える役者って」)
 これこそが闇に堕ちた者だけが持ち得る|格《・》だ。到った者だけに赦された闇の煌だ。
(「だからこそ、スポットライトを奪いたくなるね」)
“記憶”がトラウマに震えても、役者馬鹿のユウは余裕綽々である。何物でもないからこそ、刹那刹那で何者にだったなれる。
 壁にひょいっと足かけ宙返り。通過していく衝撃波に前髪を遊ばせてにぃと歯を見せ蔑んだ。それは29歳の男がするにはガキくさく、10代の青年なら似合いの表情だ。
「さっきの戦いでまさにお喋りしてて負けたものな」
 ロボット兵のように真っ直ぐな足を九十度に蹴り上げて、つま先より鎌鼬を生み出し相殺。
「橘華中学のお前と癖は変わんねぇな!」
『切宮君、言われてますよ』
「うるさいよ、縫村。お前どっちの味方だよ!」
「そうそう、縫村もさぁ」
 切宮のステップを崩すように躍り込み、
「以前は外からどんなにぶっ叩いても壊れなかった縫村委員会も今は一発で穴が空いたぜ?」
 悪口だけ置いてまた身を翻し下がる。
「ほらほら嗤われてるぜ、縫村」
 せせら笑って意趣返しの切宮は、縫村の気配が恐怖に引き絞られるのに気づく。
『……ッ! 切宮君!! 首……ッ!』
「あ?」
 既に革命は為された。
 碧く強く輝く細剣が横から少年の首を串刺しにしている。
「は……? え??」
 指が勝手に震えカッターナイフを取り落とすのを、渦巻きは漫然とみているしかない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

管木・ナユタ
最初は遠距離戦をメインにするぜ
投擲すればブーメランみたいに戻ってくる、飛斬帽での攻撃を中心だ

敵はカッターナイフを投げて……はこないと思うが、警戒はしておく
投げ続けてカッターがなくなるにしろ、投げずに接近戦に持ち込むにしろ、敵は近づいてくるはずだ
その瞬間がチャンスだ

敵が接近を試みた瞬間に、こちらも床を蹴り、そのままタックルだ!
急に敵の予想以上に距離が縮まれば、すぐには攻撃に移れないはずだ

タックルに成功したら、そのまま【鋏角齧り】!
敵の肩口の肉を喰らって、アタシの右手からカッターナイフを生やすぜ

【断裁ディバイダー】
生えたカッターで敵を掻っ切る
さあ、自分のユーベルコードを受けた気分はどうだ!




『派手にやられたものね……』
「焦るなよ、これぐらいなら幾らでもリカバリーできる」
 入り口の壁を背にして、管木・ナユタ(ミンチイーター・f36242)はそんなやりとりを聞く。
 カットスローターズの息づかいが荒い。しばらくは回復を優先するのだろう。
(「時間稼ぎに入る、か。ならアタシのやり方にぴったりだな」)
 にぃと口端を尖らせてナユタは飛斬帽を投げつける。くるりとつばが回転し、傷が塞がりつつある手首の肉を削り取った。
「チッ! 新手が来やがったか」
 少年はピンクの軸を持ち直すと、弧を描き進路を変えた飛斬帽へナイフを投げた。
「無駄弾打ってんなぁ、そんなんじゃこいつは落とせねえぜ」
 併走するナイフ蹴り落とし、手に戻った飛斬帽を即座にまた投げる。今度は首の横側を狙った。
「ちっ、見た目通りの布じゃあねえわけか」
 意志あるモノのようにナイフを回避して眉間を掠めたのに舌打ちだ。
『切宮君。早急な立て直しが必要です』
「ああ、わかってるよ」
 瞳の間を赤く染める相方へのアラートも具体性がなければ焦らせるだけだ。
(「アタシと同じくガキの見た目で中身は大人かと思いきや、そうでもないようだな」)
 他者を恐怖に陥れるデタラメな力を手にしたから、精神的な成熟を必要としなかった。
 出来損ないの鋏角衆と生まれ苦渋を舐めながらも足掻き続けるナユタとは逆だ。
「ウザいんだよ、畜生! そこにいるのはわかってるんだからな!」
 ほら、我慢ができない。
 近づく足音に飛斬帽を被り直して、ナユタは即座に床を蹴った。
「?!」
 ナユタ渾身のタックルで、蹌踉めいたカットスローターズがガツンと段ボールに腰を打ち付ける。
 暴れる切っ先で髪や頬が切られても、ナユタの細い瞳孔はターゲットから微動だにしない。開いた口に獰猛に尖る牙の群れがのぞいた。
「ぎゃああ!」
 ――直後、少年の悲痛な悲鳴がフロアを打った。
 ナユタの牙は少年の肩をやわやわと突き破り骨まで到達する。口中に溢れる血潮と肉ににぃと瞳を弓にすると、ドンッと切宮を突き飛ばし食い千切った。
「くそぉ、こんな傷は大したことな……」
 信じられない光景を前にして切宮の唇が固まった。
 ぐいっと口元を拭うナユタの右手から、タネも仕掛けもなくパッションピンクのカッターナイフが生えてくる。
 ナユタの視界には、しりもちをついた少年。そして今までは見えなかった黒い靄が喉元、横腹……他急所と言われるところに浮かんでいる。
 冷え冷えとした思考で一番濃い腎臓の位置にカッターナイフをねじ込んだ。
「あぁぁああぁぁ……ッあっ!」
『切宮君、切宮君しっかりしてください!!!』
 ナイフを腹に刺したままでも大丈夫、カッターナイフは無尽蔵に指から生えてくる。
 胸を薙ぎ切り、顎を突き上げ……黒い靄がなくなるまで、ナユタはカッターナイフを相方にして舞い踊る。
「さあ、自分のユーベルコードを受けた気分はどうだ!」
 答えは――恐怖で声がでない、だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

淳・周
ゴッドモンスターから十年ぶりになるか!
やっぱ分割存在なんかじゃねえ、本物ぶん殴らねえとな!
アタシが正義のヒーローだ!
テメエらが悲劇をバラ撒こうとするなら何度だってブチのめしてやろう!

UC起動、大気から最硬の紅炎の手甲両手に装着して挑む!
皐月のオーラ燃え上がらせ手甲で刃筋立たせぬようカッターの斬撃見切り真横からぶん殴って逸らしカウンター気味に全力の拳をぶち込む!
体勢崩れそうになったら睦月の影操り天井の出っ張りとかの地形に引っ掛けて強引に立て直し隙を減らす。
多少の傷は気にせずガンガンカッターブチ折ってやる気概で畳み掛けるように攻めるぞ!
その薄刃でアタシの炎熱に耐えられるか!?

※アドリブ絡み等お任せ


大町・詩乃
元凶のお出ましですか、きっちりお仕置きの上で骸の海に直送してあげましょう!

素早い動きと鋭い攻撃が得意なようですね。
まずは護りを固めます。
結界術・高速詠唱で自身の周囲に防御結界を展開。
武器巨大化した天耀鏡による盾受け。
オーラ防御を展開。

その上で《漂陽陣》発動。
早い攻撃は素早く躱せても、ランダムな軌道で漂う障害物が増えればどうなりますかね?
(詩乃の近くに漂ってきた火の玉は念動力で弾き飛ばす。)

更にカットスローターズを念動力で捕縛して火の玉に押し付けたり、催眠術で「止まりなさい」と指示して動きを止めた所に、神罰・雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱による雷で貫通攻撃したりと、確実に追い詰めていきますよ!




「おいおい、随分と追い詰められてないか?」
 古の特撮ヒーローめいた張りのある声は淳・周(赤き暴風・f44008)からだ。
「ゴッドモンスターから十年ぶりで、こちとら本物が殴れるって張り切って来たってのに」
 烈火の髪も意志ある琥珀の双眸も、溢れて止らぬ自信を象徴するようだ。そり自信はヒーローとして無辜の人を救い続けた誇りに裏打ちされている。
「アタシが正義のヒーローだ! テメエらが悲劇をバラ撒こうとするなら何度だってブチのめしてやろう!」
 宣言と同時に紅蓮が渦巻き周の手の甲に宿る。
「却って冷静になったよ、灼滅者。お前らを舐めちゃいけないってね」
 カットスローターズがそう口にした時には、夥しい数のカッターナイフが少年から飛び立っていく。広げた指には既に新たなナイフがすらり。
「ははーん」
 それぐらいは|喰らってやる《・・・・・・》と、肩で風切り踏み出す周は、不意に左右から現れた銀の綺羅に瞠目する。
 禍々しいカッターナイフを受け止めたのは神々しい金冠をいただく鏡。
「間に合って良かったです」
 ほっと胸を撫で下ろし、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は天耀鏡を従える。詩乃の凜とした横顔を映す銀面は傷ひとつない。
 元凶である少年を見据える双眸は鋭く尖り澱みがない。それは螺旋瞳孔の少年とは本当に対照的だ。
「ありがとよ」
「ええ、ここからは共に。元凶をきっちりお仕置きの上で骸の海に直送してあげましょう!」
 琥珀と瑠璃が切り結び互いの意図を渡しあう。その間、カットスローターズもオフィスデスクの城塞に滑り込み作戦会議だ。
『切宮君、攻防に優れた二人のようですよ。策はあるんですか?』
「縫村がいてくれればなぁ……なんて弱音を吐くと思ったか?」
 少年は形の良い唇を禍々しく歪めた。
「顔を見ればわかる。赤いのは猪突猛進の正義マン、黒髪お嬢さんは如何にもな優等生タイプ、トリッキーに攪乱すれば訳も無いさ」
『赤い人は女性ですけどね』
 縫村のツッコミには応えずに、カットスローターズは目の前の机を蹴飛ばして不意をつく。蹌踉けてしまえば簡単に餌食にできるのだ!
「おっと……ははッ! 元気がいいなぁ!」
 もはや地形と化していた机を周は次々と引っ掴む。一瞬で灰と化し糧に換え、紅蓮はますます燃え盛った。
「さぁ来い!」
 構える周の脇を嘲るように過ぎる、狙いは詩乃だ。
「防御に回復役から狙うのは定石ってね!」
 心臓を貫くと確信した。
 しかし、その刃は虚しく空を切る。
 ……無軌道な焔と周の影が合わさり産まれた詩乃の虚像が音もなく消えた。
「私はこちらですよ」
『切宮君、罠です』
「わかってる……ッ!」
 持ちあがった容が瞬時に詩乃の放つ炎で焼けた。腕で庇いながらも少年は真横にナイフを薙ぐ。
「そこにいるのはわかってる、死ね」
「刃物を振り回すのは危ないぜ?」
 だが、刃を掴み滴り落ちる血も周の焔の糧だ。回り込めばヒーローは殺人鬼とは真っ向対峙。
「待ってたぜ!」
 歯を見せ闊達に笑う女は切宮の頭を掴んで頭突き一発。ノックバックで血を吐く少年は、扇に出したカッターナイフを盾とし堪える。
 ぺき、ぺきんぺきん!
 だがUCで生み出した刃は周に握り潰され弾け飛んでいく、無残だ。
「お前バカか、腕が潰れるぞ」
「ダークネスがそんな親切な台詞を吐くのは、焦ってるってこったな!」
 図星だ。
 手首に夥しい斬り痕を作りながらも生えてきた2本の腕は、白髪少年の頭をがっちりと捕らえる。三つ編みがじゅんっと一瞬で蒸発するのに舌なめずり、周は思い切りワンツーを叩き込む。
「……ッ、つぅ……ぐっっ」
 苦悶の声を嘲笑うように炎が踊る。
「ハッ! 燃える拳はいい目印だよ、今度こそ斬り落してやる!」
 カッターナイフで滅多切り……だがそれは、漂陽陣を操る詩乃からすればタコ踊りだ。
「周さんの炎と私の炎、見分けがついていない時点であなたに勝ち目はありませんよ」
 規則性のない炎だ、詩乃を焦さんとする悪戯者もいる。それを一瞥で弾き、詩乃は着々と進みでる。
「おっと。まだダウンにははやいぜ六六六人衆!」
 周の裏拳が叩き込んだ先は、詩乃が練り上げた束縛の陣のど真ん中だ。
「止まりなさい」
 神よりの命には誰も彼も逆らえない。それは悪逆非道なる六六六人衆とて例外ではない。
「くっ、離せ! 離せよっ!」
 ジタバタと藻掻く切宮へ、詩乃はすっと瞳を眇める。慈悲深き瑠璃も、今は深海の凍てつきを纏っている。
 磔にした少年の体がふわりと木の葉のように浮かび上がり、無軌道な火の玉の坩堝へと墜とされた。
「今まであなたはどれだけの命乞いを踏みにじりましたか?」
 ――答えは聞かずとも明白だ。故に業火はずっと少年を罰し続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
…そりゃまあ、そこらの一山いくらな木端連中とは比較にならないくらい強力なのは理解しているけれど。
余計なギミックだの特殊な設定だのがない分、戦争案件よりはよっぽど気が楽ねぇ…

ま、やること自体は単純ねぇ。●黙殺・砲列の○弾幕で侵攻ルートを誘導、攻撃の軌道を○見切って踏み込みに合わせた●明殺の○クイックドロウ一閃。カウンターで六連ファニング喰らわせてやるわぁ。
あたしこういう閉所での戦闘が一番得意なの。お生憎様、御免なさいねぇ?

「前回」の裸の王様もまあまあ迷惑ではあったけれど…蟲毒が完成しているであろう現状、なぁんかもう少し厄介なのが出てきそうよねぇ。
はぁ…面倒ねぇ…




 縫い合わされた空間を、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は踵を鳴らし歩いて行く。ピシャリと横から頬に跳ねた血のぬるさに僅かに瞳が開いた。
(「ただいま蠱毒の真っ最中と言ったところかしらぁ」)
 だとすれば、壺の持ち主はすぐ傍に居る筈。
「――」
 カッ……と、微少な靴音がしたかどうかのタイミングで、ティオレンシアの黒髪が弧を描く。
 はらり、一房の髪が落ち、同時に銃声がひとつ。だが着弾で深く割れた床を飛び越えて、カットスローターズは悠然と歩いてくる。
「煙幕をはって逃げたつもりだろうけど丸見えだよ。自分から逃げ場のない所に入るとはね」
『切宮君、避けられたのにどうしてそう態度が大きいんですか?』
「勝ちが確定してるからだよ」
「…………」
 のうのうとした会話を前にしてティオレンシアはクッと口端を下げた。
 確かに、目の前の少年は脇で殺しあっている一山いくらな木端連中とは比較にならないくらい強力なのだろう。
「袋のネズミを狩るには僕のナイフは多すぎるぐらいだ」
 瞬時に距離を詰め、ババ抜きのペアを捨てるようにカッターナイフを二本放つ。
 妙齢の美女は肢体を捻り、背に握把を押しつけ引き金を引く。薬莢が滑り落ちるのを、睥睨する渦巻きの瞳孔はしてやったりとにやけ口。
「今のでふたつ。腕の腱を斬ったから、見た目より辛い筈だよ?」
 肘から滴り落ちる血はまるでヘンゼルとグレーテルのパンだ。斬り裂きの六六六人衆は、目印を鼻で笑い獲物を追い詰めていく。
「三つ目」
 またはられた煙幕の向こう側、短く投げた切っ先が確かに刺さる音を聞いた。
『本当は四つ目ですよ』
「いいんだよ。四つ当てればいいんだから。ほら、これで最期だ」
 ビュッと、握りしめたピンクの把手の残像。だが既にカットスローターズはティオレンシアの真正面に居た。
『切宮君、もしかして誘導され……』
 無駄口叩く六六六人衆と違い、女は黙ったままで六連、ファニングショット!
 ガンッガンガンガン、ガンッ! と、銃声に少女の警戒は塗りつぶされた。
 ガンッ!
 弾丸顎に囓られた少年の顔がクレーターのように削れていく。ラスト一発でとうとう仰向けにひっくり返った所で、女は引き絞っていた唇を呆れたように緩めた。
「あたしこういう閉所での戦闘が一番得意なの。お生憎様、御免なさいねぇ?」
 ぽいっと、カッターナイフの刺さり流血沙汰などこぞのオブリビオンの腕を投げつけ種明かし。煙幕の向こう側であがる咆吼に肩を竦める。
「はぁ……面倒ねぇ……」
 完成しつつある蠱毒に甘い声でため息。
 前回ここで相手した裸の王様もまあまあ迷惑ではあったが、更に厄介なのが出て来そうでうんざりだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

椎那・紗里亜
【糸括】
「輝乃ちゃん?」
一息ついて共に戦った猟兵を見れば、何とも懐かしい仲間の姿。
思わぬ再開に満面の笑みで両手を握ります。

戦いはまだこれからと気を取り直しますが、
同じ灼滅者と言うだけでなく、気心知れた仲間と戦えるのは心強いです。
相手がかつての強敵だとしても。

私たちの策は波状攻撃。
互いの攻撃で作った隙に自身の攻撃を繋げていきます。
カットスローターズの攻撃は扇と体術で幻惑。
輝乃ちゃんの攻撃で敵がよろめいた瞬間にダッシュし、
至近距離で閃光百裂掌を発動します。
「!」
無理な攻撃で体勢が崩れたかのように見せ、
カットスローターズを誘って輝乃ちゃんに繋ぎます。

ゆっくりお話したいけど、まずは依頼の解決、ですね。


琶咲・輝乃
【糸括】
………あれ、もしかして紗里亜?
会うのは久しぶりだから
さっきの避難活動の時には気付かなかったよ

偶然とはいえ、こうして久しぶりに会えたことだし……
まずは、そこにいる厄介な殺人鬼を一緒に倒そうか

星輝扇を構え、速攻で歴戦御面娘を使用
怒涛の攻撃を回避しつつ
その隙を見て〈神薙刃〉や斬撃派などを放ち
カットスローターズの体勢を崩そう

紗里亜が追撃したら
漆鯆で体勢を立て直そうとする敵の妨害や
連携攻撃を繰り出すよ

その後も紗里亜のサポートをしつつ遊撃していこう

せっかくの旧友との再会
楽しいお喋りの為にも頑張らないとね


アドリブ
連携歓迎




 UDC職員を逃がしほっと一息ついた椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)は、特徴的な右目隠しの少女にぱちりと瞬いた。
「輝乃ちゃん?」
「………あれ、もしかして紗里亜?」
 小鳥のように首を傾げ、琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・f43836)は、両手を差し出す旧友へ頬を緩めた。
「会うのは久しぶりだから、さっきの避難活動の時には気付かなかったよ」
 きゅっと華奢な指で握り返す。
「私も気づきませんでしたよ」
 花咲くように笑い合い旧交を温める二人はすぐに容を引き締めた。先ほどは前哨戦、未だこの空間は縫村委員会として敵の手の中だ。
「偶然とはいえ、こうして久しぶりに会えたことだし……まずは、裏で糸を引いてる厄介な殺人鬼を一緒に倒そうか」
「はい、カットスローターズは難敵ですが、輝乃ちゃんが一緒なら心強いです」
 遠くに争うオブリビオンの咆吼を聞きながら、リノリウムの床を踏みしめる。作戦立案、あうんの呼吸で対抗策が組み上がっていくのは気心知れるが故だ。
 ――ッ!
 尖らせた神経、警戒心MAXの二人は、同時に背筋がゾワリと泡立った。このプレッシャーは間違いない――高位のダークネスだ。
「近いね」
「いつ戦闘になってもおかしくないです」
 ピリリと引き締まる表情には、ひと匙の自信が浮かんでいる。
 かつて、灼滅者にとってのダークネスは格上の敵だった。時に苦渋を飲まされ、助けられぬ命に歯ぎしりし耐えた。
 だが今は違う。
 誰ひとり取りこぼすことなく救えている。猟兵として生きる灼滅者達は本当に強くなった。
 ――差が詰まっていると果たしてダークネスは気づいているのだろうか?


 カットスローターズの眉間には深々とした皺が寄っている。
『生け贄の一般人を取り返したいところですね。灼滅者という人たちは、人質があるととたんに精彩を欠きますから』
 縫村の冷静な提案には苛々が隠せない。
 人質を目の前で殺すなんてのは、悔しがる顔を見たさの余興だったのに、今は勝つために必須な策だ。
『切宮君、落ち着いて下さい』
「わかってるよ……チッ」
 舌打ちする少年の螺旋の瞳孔に星空が刻まれる。直後、手首に過剰な痛みが走る――。

 ――星輝扇をパチンと閉じた輝乃は、カットスローターズの手首を素早く打ち据えた。
「ぐっ」
 忌々しげなダークネスに風圧が襲いかかる。おぞましく輝きかけた渦巻きの瞳が次に映したのは鮮やかな翡翠の円だ。
「ハァッ!」
 一気に接敵、初撃に渾身。
 練り上げた気で輝く紗里亜の掌は、切宮のみぞおちに強烈な一撃を食らわせる。だがそれで止まることはない。流麗に持ちあげられた膝が腹を打ち、小柄な体躯はくの字で打ち上げられた。
 ぱちり! 再び開く星空の扇にて、輝乃は少年の躰を叩き伏せる。
「死ね」
 跳ね起き様、カットスローターズは握り込んだカッターナイフを突き付ける。
 余りに直線的だ。拮抗している実力の元、紗里亜は優雅さすら滲ませ身を逸らし躱した。
「逃がしませんよ」
 立て続けの素早い斬撃をかいくぐり、肘打ちからの裏拳につなげた。力なくカッターナイフを取り落とす少年へ、翡翠の娘はしなる蹴りを浴びせた。
「……ぐあっ!」
 刃が肌を切る前に、紗里亜の白い四肢は戻り、また次の攻めへと移る。四肢を使う攻撃ならば斬り裂いてやるとの企みも、目にも止まらぬ技の前では形無しだ。
「防戦一方ですね、私達を見くびりすぎなのですよ」
 呼吸を乱さずに連撃を重ねる紗里亜。その横顔を見つめる輝乃は突如慌てて息を飲んだ。
「……紗里亜ッ」
『切宮君、下がって』
 輝乃の警告と縫村の助言はほぼ同時だ。
 それは紗里亜の意識が過剰に攻めに囚われた合図で、切宮は大きく一歩身を引いた。
「!」
 勢い余った翡翠の娘はつんのめる。
「調子に乗ったなぁあ、スレイヤぁあ!!」
 慢心に足を挫かれた紗里亜目掛け、切宮は両手に握ったカッターナイフを突き立てる!
 ……その攻撃を入れ替わり現れ受け止めたのは星空だ。
「作戦通り、かかったね」
 にんまりと笑う輝乃は切っ先を掬い上げ退けた。
「誘えば大ぶりがくると思っていました」
 フッと口元を傾がせた紗里亜は扇の影でほくそ笑む。そうして面食らう切宮の腹に初撃以上の気をぶつけた。
「ぐあっ! 雑魚どもが舐めやがって……ッ」
 血の塊を吐き出した切宮は、命を代償に瞳におぞましい輝きを呼んだ。殺す殺すと湿度の高い呟きで、縦横無尽なる刃が狙うのは輝乃だ。
 だが、切宮の切っ先は、一度として、輝乃どころか星輝扇にすら触れること叶わなかった。
 面で伏せ続けた右側の日々、それが輝乃に人外の反射神経を与えている。八振りを見事に躱し、最後の一撃。
「それを振うと命を縮めるよ」
「知った風な口を聞くなぁ!」
 見事誘いにのり振り下ろされた刃を弾き、そのままの勢いで雪月の刃が胴体を薙ぎ払った。
 衝撃波で吹き飛ばされた先では紗里亜が腰を沈めて待ち構える。気合い一閃、慢心の時計が昔で止まったダークネスを掌底で打ち据える。
『切宮君! 切宮君!!』
 斬撃と打撃で壊された少年は、床にたたきつけられてぴくりとも動かなくなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
この騒ぎの元凶のカットスローターズはさっさと仕留めたいけど、支部の内部がこうもでたらめに縫い合わされているとなると、邪神の封印場所も直ぐ隣でした、なんてオチもありそうだな…

カットスローターズとの戦いに割り込まれても厄介だし、サラリーマンから元に戻ったUDC職員達の当座の安全を確保する為にも、ここはまず邪神の方をどうにかします
蟲毒なら殺し合う相手の数が減ればその分最後に残る邪神の強化度合いも減る…筈、多分…

邪神達は殺し合っているとしても近くにいればさっさと攻撃します
人間に何かをする特性の邪神は多いし、此方やUDC職員達は寧ろ狙われかねないしな

邪神との戦闘時に近くにUDC職員がいれば邪神の特徴や弱点がないか確認しておきます
特定の武器や物質が有効とかなら《贋作者》でその手の武器を作り出し攻撃します
何も情報がなければ迂闊に近寄るのは危険かもしれないし、まずは銃火器を作り出して撃ちます

邪神の能力は千差万別だし突然現れたりするかもしれない
カットスローターズとの戦闘よりも邪神への警戒と妨害を優先します




 ――猟兵らの猛攻に耐えきれず、カットスローターズこと切宮少年が事切れた。
 姿無き縫村もまた、子供じみた表情で下唇を噛みしめて敗走と相成る――。

 さて、そこからしばしの時間を巻き戻そう。
 事態が進む裏側で秘めやかにサポートに動いていたのはやはりこの男、涼風・穹(人間の探索者・f02404)である。
(「支部の内部がこうもでたらめに縫い合わされているとなると、邪神の封印場所も直ぐ隣でした、なんてオチもありそうだな……」)
 支部の内部はグッチャグチャに縫い合わされている。以前に訪れた時に較べて、明らかに広く感じる。同じ所に飛ばされて歩かされていると穹は気づいている。
 地図を作ろうにも、似た机と椅子が連なっていて目印をつけるのは難しい。刀傷を刻めばカットスローターズや縫村に気取られる危険性もある。仲間達が到るところで波状攻撃を浴びせているのだ、邪魔はしたくない。
 身を屈め、気配を消し、奮戦を横目に穹は歩を進める。そうすると気づいたことがある。
 ――カットスローターズは、猟兵達を相手取り瀕死レベルの負傷を浴びせられながらも、逃げかくれるようにして移動している。当然、彼は縫村委員会のデタラメな縫い合わせの中で正確な地図を把握している筈だ。
(「……一見すると回復の為の時間稼ぎに見えるが」)
 厭な予感がする、これは穹の猟兵としての勘だ。
 あいつは蠱毒で戦わせた邪神を連れ帰るのが目的だ。最後の一体になるまで戦わせる、その時間稼ぎはあるのだろう、けれど。
 それだけだろうか? ……もしかして、猟兵すらをも蠱毒に巻き込み強化の贄とする気では?
「……」
 穹は仲間を信じている。彼らは強い。むざむざと生け贄にされる訳などない。
「六六六人衆って奴は性格がひん曲がった奴が多いと聞くな。さっき助けた職員を盾に自己犠牲に殉じろと迫るなんて胸糞悪い作戦も平気でとってきそうだ」
 折角助けた一般人を犠牲にする悔しさも、猟兵が命を落とすことも、決してあってはならない未来だ。ならば、念には念を――涼風穹は、懸念事項を潰すためならすすんで裏方にまわる男だ。
「さて。なら、どうしたものか。避難場所で護衛に当たるかねぇ?」
 いいやそれよりも、攻撃的に行こう。理由? そちらの方が冴えたやり方に思えたからだ。


『さぁ、これがあなたのライフプランの契約書ですよ』
 指先から無数の契約書が飛び立っていく。スーツ姿の女は涼しげな顔をしていたが、取り囲むあからさまな異形らに手傷を負わされて防戦一方に押し込まれていた。
 絵面だけだと一般人がバケモノに襲われているようだなとちらと浮かべるも、穹は躊躇いなくモーゼルの引き金を弾く。
 バシュッ!
 サイレンサーで殺された銃声の直後、女の頭が三日月のようにごっそりと欠け落ちて倒れ伏す。
 女からすると、相手は目の前の邪神ないしは眷属であり、完全に想定外の穹からの銃撃には何一つ対処できなかった。
 うごごご……と、歪頭の異形と四つ腕のケダモノが、倒れた女を前に蠢いている。奴らは女が死んだにも関わらず自身の力にならなかった違和感に戦いを止めている。
 やはり穹の睨んだ通りだ。トドメを刺すのを横取りすれば、邪神の強化は防げる。
 穹はモーゼルを塵に還すと即座に四つ腕の1本を模した武器を作り投げつける。禍々しい紫のそれはブーメランのように飛び込み、歪頭の異形の胴体を貫く。
 斯くして、怒気孕む咆吼をあげて異形どもは争いを再開した。ケダモノの雄叫びと打撃音に紛れ、穹はオフィス机の影に潜んだ。
(「出来れば全員息絶えてそのまま帰りたい所だが、そう上手くはいかないか」)
 個体次第ではあるが、知略の罠にて一般人を誘い込む奴らも多い。ただ、穹の経験上の話ではあるが、人の姿を佚した時点で攻撃力極振りに変わることは多かった。
 UDC職員からの情報によると、この支部には知能犯系統を封じたアーティファクトが持ち込まれていたらしい。危ないことをするものだ。
(「職場環境の改善の為、口添えした方がいいかもしれないな。幾ら職員が精神的に鍛えていると言ったって、洗脳されたらあっという間だ」)
 そうこうしていると四つ腕が頭頂の鮫めいた口を開く!
『ちょっちょっちょ! あたしを食べてもおいしくないんですけどッ!』
 目の前には息も絶え絶えの大口邪神、そしてもう一人極彩色の髪をした娘がいる……一気に2体をいただいてパワーアップのつもりだろう! そうはさせるか!
 穹は先ほど女が使っていた契約書を手元に作ると、3体が団子になる戦場に浴びせつける。
 紙とはいえ鋼鉄より鋭いそれは、まず瀕死の大口邪神をなます斬りにて葬りさる。続けて四つ腕がかぱりと開いた口中に忍び込み内側から内臓を斬り裂いた。
 ひとり残った娘の肩口でちらつく電脳ノイズが昂ぶるように乱れた。
『ヒィィ! 炎上は嫌ァあ!』
“炎上が嫌い”に合わせて火炎放射器を作成する穹が瞠目する。これ以上、ひとりで押すのは危険すぎる、裏方の引き時だ。
『あたしはまだやりたいゲームがあったんだからぁ、この復活のチャンスは逃せない』
 娘が逃げるように跳躍すると周囲で蠢いていた瀕死の邪神どもが巻き上げられて命を絶たれていく――ここに蠱毒は成立する。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『暗黒邪神系美少女配信者』黒仏・みくろ』

POW   :    地元では割と有名でつよつよプリチーな邪神だぞっ!
【宇宙塵や流星、ガンマ線バーストなど 】を降らせる事で、戦場全体が【あらゆる生命体にとって生存困難な極限の星】と同じ環境に変化する。[あらゆる生命体にとって生存困難な極限の星]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    いや、あたし清楚枠だから。炎上なんてしないし…?
自身が【悪意や敵意、悪質な誹謗中傷や迷惑行為 】を感じると、レベル×1体の【絶対に許さねぇからな覚悟しろよ…という闇】が召喚される。絶対に許さねぇからな覚悟しろよ…という闇は悪意や敵意、悪質な誹謗中傷や迷惑行為 を与えた対象を追跡し、攻撃する。
WIZ   :    邪神だってバーチャル世界でチヤホヤされたいの!
全身を【五千兆円くらい雑に欲しいという俗な欲 】で覆い、自身の【今まで頑張ってきた投稿動画の総再生時間】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

イラスト:リタ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は伊美砂・アクアノートです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 坩堝の中を生き残ったのはオタクなノリの『暗黒邪神系美少女配信者』黒仏・みくろちゃん、である。
『なんだなんだぁ、その本命じゃなかったって顔はぁ! 地元では割と有名でつよつよプリチーな邪神だぞっ!』
 言ってから恥ずかしくて頭を抱えてのたうつ。他の邪神の死体の真ん中という所に奴めの異常性があるのだろう。
 ずらりと駆けつけた猟兵達が盾になり、陰惨な現場は見せないようにした。
「あー、なんだか親近感がありますねえ」
 だから、こんなにのどかに言ってしまえるぼたん。彼女のスーツの袖を引いたのは、戦闘部隊のおじちゃんだ。
「ほーら、巻き込まれるとまずいから、こっちこっち」
「ぼたんちゃん、あいつは俺らが仮面つけていたのとはワケが違うど」
「は、はい!」
 戦闘部隊から助けて避難の下地をしっかりと固めた。
 カットスローターズ達の陰惨な戦いを目にしないようにした。
 そもそも全員がトラウマになるような痛みもない。
 故に、優秀なるUDCのバックアップ要員は遺憾なく能力を発揮。統制のとれた行動で退避していく。
 最後にぼたんは振り返り大きく手を振った。
「みなさん、おまかせしちゃうようでごめんなさいですけど、がんばってくださーい!!」
 彼女が今回も「ラッキーに助かったんですよぉ!」と言えるよう、最後の仕上げだ!


*************
大変お待たせし申し訳ないです
この断章投稿時点より募集開始です

蠱毒を運良く生き残った『暗黒邪神系美少女配信者』黒仏・みくろを倒してください
UDC職員は撤退中です
守りながら戦うもよし、戦闘に集中するもよし。皆さんらしく戦ってください

みろくは蠱毒でパワーアップしています
戦争シナリオのように「UCに対処する」と、攻撃威力が下がったり先手をとれたりと恩恵があります
『炎上が恐い』ので火系に弱い可能性があります

以上、皆様のご参加お待ちしております
管木・ナユタ
敵意とかをみくろが『感じると』闇が召喚されるんじゃん?
なら、感じさせなけりゃいい

チェーンソー剣と飛斬帽を床に置く

認められたい
いいねが欲しい
チヤホヤされたい
その気持ち、痛いほどよく分かる
ぼたんの親近感も多分同じ理由だ

炎上が怖いって気持ちは、その裏返しだ
他者に否定されると、自分の存在価値がないように感じるから、怖いんだろ

大丈夫
アタシはお前を肯定してやるよ

両手を広げ、無防備を装いながら歩み寄る
抱擁可能な距離まで近づけたら……

制服の袖下からフォークを取り出す
武器巨大化。グルメツール改だ

【猛毒暴れ独楽】
フォークの先端を外側に向けて高速回転

お前は邪神だからな
こうするしかない
でもさっきの言葉は演技じゃないぜ


ユウ・リバーサイド
うん、ごめん
ちょっと思った
お詫びに怪談でも配信ネタにどうかな

UC使用
ラジオの心霊特番の生放送中に起こった案件を本気で語ろうか
話中でディレクターの過去の殺人が発覚してラジオ局が炎上するし
亡霊の影は敵を襲う

耳を塞いでも声は届かせるし
話は動きながらでも途切れさせない

(先日、サクミラの声優仲間からこれを聞いて
恐怖で泣いたのは秘密
自分が語ってる間はお芝居だから平気)

君を出す訳にいかない
誰も傷つけさせない
避難してる彼らじゃなく俺を見て
全力で相手をするよ

軽技で闇を避けつつ
王子様としての力と剣の光で打ち消し
邪神の死体が転がる地形を利用して遮蔽物や足場に利用
心眼で急所を見抜き
ダンスの動きで蹴りつけ、剣を突き出す




 以前、何かと目立つ姉と妹に挟まれたぼたんの自己肯定感は最底辺であった。
 本当は誰かに目をかけて欲しい――アグレッシブか消極的かの違いはあれど、管木・ナユタ(ミンチイーター・f36242)もまた似た渇望を抱いていたし、目の前にいる邪神も同じ病に取り憑かれている。
「ナユタさーん、あとでおいしいご飯食べに行きましょう!」
 人の良いおっちゃん面でUDC戦闘員の皆に庇われるぼたんは答えを見つけたのだろうか?
「ああ、楽しみにしとく」
 アタシと同じくゴールじゃなくてもなにかは掴んだんだろうな。
「そちらのお兄さんも怪我なくがんばってくださいね」
 なんて、観客の声援はなによりの栄養だ。ユウ・リバーサイド(Re-Play・f19432)は、あげた右手を閃かし、ファンサめいた笑みを返す。
 面白くないのはみくろだ。
『“弱虫ちんで逃げてたら知らない間に最後のひとりになっただけだろ”って根拠レスな誹謗中傷なんですけどぉ!』
「うん、ごめん。ちょっと思った」
 ユウ、まずは素直にぶっちゃけた。
『ハァ?! いくら清楚なみくろちゃんでも堪忍袋のテイルがぶっち切れるんですけどぉ?!』
 むきーっとなる邪神配信者の肩口におどろおどろと渦巻く闇。
 ナユタはちらっとユウに目配せする。意図を悟れないなら下がってろ――目は口ほどにモノを言う。ユウは片目を閉じて声を出さずに唇だけで答える。
「exactly」
 なんて気障に仮面を被る役者と、
「そんなこと言う訳ないだろ。人生に責任とってくれない外野がピーチクパーチク囀るのはアタシだってうんざりなんだから」
 チェーンソー剣と飛斬帽を床に置いた丸腰に本音を携えて歩み寄る女。
『ちょっちょっちょっ、近い、近いーー』
 怯むみくろちゃんを前に足を止めナユタは苦く笑った。
「認められたい」
 それはアタシの抱いた渇望。
「いいねが欲しい」
 ぼたんもアタシも“見て”欲しかった。
「チヤホヤされたい」
 ……この目の前の邪神配信者もそうだ。
 一言ごとに再び歩きだし、とうとう目の前に来たナユタは親しげに顔をくしゃつかせる。
「なぁ隣に並んでいいか? それともこの位置、実況者とリスナーがお望みかい?」
『……べ、別にーダチとの雑談配信に憧れてるとかないしー?』
 つんっと横を向く肩口にはもう闇はない。代わりに隣の席をつくるように身をずらす。
「炎上するとさ、みーんないいね押してた手に殴り棒を掴んで振り回してくるもんな。だから嫌われたくない」
『うん』
「他者に否定されると、自分の存在価値がないように感じるから、怖いんだろ」
『わかってんじゃーん! アンタ、名前は』
「アタシ? ナユタ。管木ナユタってんだ」
『ナユちんね、よろすくー!」
 この会話が既にユウに見せる形で動画として流れ出す。
(「他者の評価が恐い、自分の中身がない、か。耳が痛いね」)
 同じ恐怖をユウも抱く。だから役で被せて隠すのだ。本音トークがウケる動画配信とは一線を画す、観客が見たいものを見せるのが芝居。
「さっきはごめんね。お詫びに怪談でも配信ネタにどうかな?」
 避難する彼らから自分へ注目を向けるように大仰に腕を広げた。
「これはUDCアースでは初だしのネタだよ。サクミラの声優仲間から聞いたんだけどね……」
 いつの間にやら手には洒落た金古美の燭台。七不思議の影響で電灯がパリンと弾けて全て消えた。
「おおっと、本格的じゃねぇか。雰囲気たっぷりだ、なぁ、みくろ」
 ユウのUC起動から気を逸らすように、ナユタは抑揚たっぷりの物言いでショッキングピンクの腕に指を絡めた。
「……もしかして、恐いのかよ?」
『恐くないっ! これでも地元では思ったより有名なんだじょ』
 噛んだ。
 ナユタはにひっ☆と悪戯っぽく笑ってからユウを促した。
「サクラミラージュの娯楽って、案外|UDC《ここ》と変わらなくてね」
 近づけた蒼い炎のせいかユウの頬はやけに血の気が抜けて不気味に見える。
「ラジオで怪談話を面白おかしく取り上げる……まぁ、低俗の部類に入る番組が人気を博しているんだよ」
 ――声音はするのに静逸。瞼は半分伏せて、敢えて感情は宿さずに、ユウは自身を演技の贄に放り投げる。
 ごくんっと、みくろとナユタの喉元が同じタイミングで動いた。照れたように顔を見合わせてから「続き、はやく」と促す声もかぶる。
「その番組はリスナーの体験談を元に書き起こした脚本を元に役者が演じる形式をとっている。その時放映されたタイトルは――“盗ラれた”」
 ふっと、ユウはこのタイミングで蝋燭を吹き消す。
『ぎゃあああ! やだ、恐! 暗いの恐ッ!!』
「わっぷ……おーい、まだ始まったばかりだぜ」
 抱きついてくるみくろの腕を掴みナユタは頭を寄せた。
「愛らしい恋人、仕事では遺憾なく才能を発揮し常に褒めそやされる。その男は順風満々そのものの人生を送っていた――」
 不意に落ちた闇の帳の中で淡々とユウはト書きを連ねる。
「“憎い”“妬ましい”“何故あいつだけが”」
 喉を絞り嗄れた声はひとりの人物を顕わしている。未だUCの亡霊が暴れない辺りこいつは主役じゃないなとナユタは分析しつつ、みくろの背中をぽんぽんと撫でた。
 その恨み言は、主人公の男の上司の怨嗟だ。
 社内政治で上手くやってきたが才能に欠けた上司は、男が羨ましくって仕方がなかった。
 と、ユウが張り巡らせる伏線と同時に、ぽろろんぽろん♪と不安をかき立てるオルゴールの不協和音が耳を打つ。
「“あの成功は、本来は俺が得るべきもの”“あの女も、本来は俺がものにすべき栄誉”――その上司は、男の出したラジヲ企画と最初の脚本を、さも自分が用意したのだと乗っ取ったのだ」
 ぴとり、と、みくろの頬が生ぬるく濡れた。
「……なにこれ、血ィィ!!」
 震え上がるみくろの首に、人ならざるモノの指が絡みつく。

“いまそこでのうのうとディレクターに収ってるそいつに、俺は企画だけでなく命すら奪われた。酒に誘われて眠らされ、汽車目掛けて躰を投げ捨てられたんだぁ”

 ドンッと、みくろの背中に鉄の塊めいた鼻っ面がぶつかった。被害者の死に様を|あなた《ディレクター》にも。
「人をの呪わば穴ふたつ――君を出す訳にいかない」
 騙した報いはいつかは自分に、そう受け入れた上でユウは落ちてきたみくろを剣で叩き飛ばした。
『いったぁああい! ナユちん、あいつをやっつけてよぅ!』
「恐いよなぁ、痛いよなぁ」
 悲鳴をあげて逃げてくるみくろを、ナユタは腕を開いて抱き留める。袖口できらり銀星の煌めき。
「“だから、アタシがその恐怖ごと喰らってやるよ”」
「!!!」
 するりと抜いたフォークは顔の大きさに膨れあがり、相応の肉をみくろから欠き取る! 一度ならず、何度もくるりくるりと、あたかも皿についたソースをかき集めるように執拗に。
『ひどいよぅ。ナユちんも騙したの?!』
「お前は邪神だからな、こうするしかない」
 ユウの剣にて刺し貫かれ身動きできぬ所を囓りとる。口元についた肉片も指で押し込み残さず味わうのだ。
「でもさっきの言葉は演技じゃないぜ」
「ああ」
 ユウは〆の台詞を口ずさむ。
「――演技ではないからこそ残酷なのです。ディレクターに殺された彼の話も、今目の前であなたに降りかかる現実も」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

神代・凶津
みょうちくりんな奴が現れたな。どうするよ、相棒。
「…凶津、あんな感じでも邪神です。油断しないように。」

先ずは『結界霊符』で結界を張りUDC職員の撤退をフォローするぜ。悪いな、此処からは通行止めだ。

さあ、ぶっ倒してやるぜッ!…って、何か召喚して来やがった。いや、何だよ絶対に許さねぇからな覚悟しろよ…という闇ってッ!?
まあいい、なら纏めて片付けるだけよ。オラッ、【大火炎大息吹】ッ!
はっはっはっ、大・炎・上ってなッ!
そのまま接近して『無銘の妖刀』でぶった斬ってやるぜ。
敵が絶対になんちゃら闇を再召喚してきたらその都度【大火炎大息吹】で焼き祓ってやるよ。

炎上系って奴でバズらせてやるよッ!

【アドリブ歓迎】




『もー! 騙し討ちとかマジ卑怯なんですけど?!』
 そんなクレームと共に、避難中の職員の前に巨大な電脳画面が展開された。
『ちょっとーみんな聞いてよー!』
 画面の枠に指をかけ身を乗り出してみくろ、生放送開始である。
『ひゃ、ひゃい! 放送を聞くだけならぁ……って、それだけでは済みませんよねぇ』
 思わず足を止めたぼたんだが、すぐに思い直して背を向けた。
『あ、あ、あの、同接めちゃヤバだから、聞いてよー』
 伸ばした腕は、かつんっと赤い鬼面の角で弾かれる。
「……職員の皆様への手出しは赦しません」
 立ちはだかったのは巫女服の女性、神代・|凶津《桜》(謎の仮面と旅する巫女・f11808)だ。鬼面を容に翳す様には一分の隙もない。
“みょうちくりんな奴が現れたな。どうするよ、相棒”
 完全に面に覆われる前の端正な眉が顰められる。
「……凶津、あんな感じでも邪神です。油断しないように」
 桜の言いつけは最もなことだ。だから凶津はまず後方に手を翳し気を放つ。
「“おっと、ここから先は通さないぜぇ”」
『ぎゃん!』
 透明な蜘蛛の巣めいたそれは、みくろの画面を電子屑に変えた。
 防御結界の向こう側、逃げていく職員達を背にして鬼面は牙を剥きだしにし顎を持ちあげる。
「“悪いな、此処からは通行止めだ”」
『圧力かけて清楚枠のみくろちゃんを黙らせようなんて……悪質ぅ』
 ジト目の邪神より、モワモワとどす黒い気が滲み出す。凶津はひと目でそれがよろしくないものだと察知して妖しの刀を前に構えた。
『そんなキタナイやり口、世間様に暴露してジャッチメントだよ! トコトンまで叩かれて潰されろー!』
 呼応するように黒い影が人の形をとり、凶津目掛けて襲いかかる!
「“……って、何か召喚して来やがった。いや、何だよ絶対に許さねぇからな覚悟しろよ……という闇ってッ!?”」
「……人は誰しも見たいものしか見ません。何を言った所で聞く耳を持ちませんよ」
 冷静な桜の解説をBGMに、凶津はバネのような動きで一歩引き、妖刀をぶぅんと振り回す。
「“なんだかよくわからねぇが……まあいい、なら纏めて片付けるだけよ。オラッ、【大火炎大息吹】ッ!”」
 ふぅ……。
 置いたのは、火種。
 口元より吐いた火は、瞬く間に燃え上がり喧々諤々たる黒い影を駆逐する!
「“はっはっはっ、大・炎・上ってなッ!”」
『うっそ、なんでみくろちゃんが炎上してるワケ?! ……ぎゃあああ!』
 煽って焚きつけたリスナーの闇ごと叩き斬られみくろは壁に吹っ飛ばされる。
「“炎上系って奴でバズらせてやるよッ!”」
「……案外凶津もネット界隈をわかっているのですね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

琶咲・輝乃
【糸括】
配信者の敵かぁ
タタリガミも復活ダークネスとして居るだろうし
あの邪神と似たような感じの都市伝説が発生しているかもしれないね
そりゃぁもう、炎上確定のネタ的なものも含めて

地雷を踏まれたからって
紗里亜に手を挙げていい理由にはならないでしょ

紗里亜のヘイト誘導に乗じて
敵から姿をくらまし
グラウンドファイアで不意打ち
(迷彩・闇に紛れる・誘導弾など

空中に逃げるのならば
漆鯆で追撃したり漆鯆を足場にして紗里亜と連携攻撃をしたりする
(2回攻撃・連続コンボ・空中系技能など

うん、そうだね
あたしも久しぶりに紗里亜とお話したいし
お茶会にお呼ばれしちゃおうかな
(身に着けていたお面を外しながら

アドリブ
連携歓迎


椎那・紗里亜
【糸括】
カットスローターズは倒せましたか。
次は邪神ですが……(先行猟兵の戦いを見て)
ちょっと残念な感じ?

「あなた、何か邪神らしいことはされてるんですか?」
一般人を害するようなら灼滅待った無しですが、
そもそもどんな内容の配信なんでしょう。
「あ、これですね」
(教えられた配信をスマホで閲覧)
あー、これは……(残念)
ええと、総再生時間は……あ、地雷踏みました?

ヘイト稼いで自分に注目を集めた隙に、
輝乃ちゃんに攻めてもらいます。
怯んだところでマジックミサイルで追い撃ち。
「元ネタへのリスペクトを忘れちゃダメですよー」

輝乃ちゃん、この後時間あります?
よかったら久しぶりにお茶でもどうですか♪




 カットスローターズを下し駆けつけた乙女達は、菫とえび茶の双眸を丸める。
「配信者の敵かぁ、タタリガミも復活ダークネスとして居るだろうし……」
 のんびりとした声音が途中からくぐもった。年よりあどけなく可憐な琶咲・輝乃(紡ぎし絆を想い守護を誓う者・f43836)の容が面で覆われたからだ。
「この邪神と似たような感じの都市伝説が発生しているかもしれないね」
「確かに。噂の伝播とこうした配信は馴染みが良さそうです」
 椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)はしまっていた眼鏡をすちゃっとかけて、何処か無防備に歩を進めていく。
『うぅ、アンタ達もみくろちゃんを叩きに来たの?! ここには地獄のリスナーしかおらんのかーい! 復活★損』
 バンバンババン! と文字が浮かぶ。復・活の文字はみくろの瞳に乗っかっていて、★と損はほっぺたに縦書き。
「ちょっと残念な感じ?」
 炎上煽りとか抜きにして思わず素で零す紗里亜。
「あなた、何か邪神らしいことはされてるんですか?」
 まだ脚は出さず、眼鏡越しの瞳をぱちりと瞬かせ興味津々でトーク開始。
『普通の配信者ができんような流星やガンマ線バーストとかできけどー、そんなもんだして視聴者を滅ぼしてなんになる? 見てくれる人がいてこその配信者! アタシ、そこんとこよーくわかってんのよ』
 邪神としては、多分、色々、わかってない。
「都市伝説が一見妙なことをするのも囚われてる目的の達成なんだけど……そういうのもなさそうだね」
「ですよねぇ、一般人を害するようなら灼滅待った無しですが……」
 そらし目。
『! みくろちゃん『●×区を滅ぼしてみた』って実況ぐらいできんだからー!』
「それは困るね、もっと穏便にいこうよ」
 輝乃は黒いカーテンを次々としめながら軽く応じた。
「今まで配信された動画を見てみたいです……あ、ありがとうございます」
 ぽぽんっ★と、みくろちゃんの動画がスマホに現れる。

“駄菓子屋のオバチャンと値切り勝負してみた!”(すげなくされて2分で動画終了)
“ポニャチーガムの当たりが出るまでやめれまてん!”(製造終了、2分で動画終了)

「これは……収益化しようにも、2分だとそもそもCMより短いのでは……」
 カチッ★
 みくろちゃんの顔が影に染まり肩が震えた。
「あ、地雷踏みました?」
 わかっててやってる。
『みくろちゃんだってええ、動画投稿する時はいつもいつも『今度こそ大バズで五千兆円いけるかもね★』って夢みてるんだからなー!』
 夢を背に羽ばたまくみくろの影の元、紗里亜は素早く身を踊らせる。入れ替わり、邪神の視界を燃え盛る白い炎が埋め尽くした。
『まさか、みくろちゃんを燃やそう(物理)としてる?! 絶対に許さねぇからな覚悟しろよ……』
 みくろの悲しみが闇を呼ぶ。
 例え炎上(物理)で火だるまになったとしても、火をつけ貶めた奴のことは絶対に追い詰めてひぼーちゅーしょーでさらしあげてやるーーー。
 だが、
 火を放った輝乃の姿は何処にもない。居場所を特定できなければ、闇は瞬く間に威力をなくすのである!
「地雷を踏まれたからって、紗里亜に手を挙げていい理由にはならないでしょ」
 声の方向に目を凝らせども暗幕で封じられた空間に人影は見いだせない。
 更に夥しい圧力が背中に掛かる。
『これは、マジックミサイルー?!』
「元ネタへのリスペクトを忘れちゃダメですよー」
 涼しげな紗里亜の肩口には、編まれた魔方陣の欠片がちらつく。
「よいしょっと……順当に燃えようね」
 漆黒いるかに跨がった輝乃が、刃をくるり。突き落とされたみくろは白き炎にあっさり飲まれた。
『いやぁああ、炎上は勘弁してぇー』
「炎上確定のネタ的なものだとしても、やり方が下手すぎるよ」
「といいますか、話題にすらなれませんよね。視聴者数は一桁ですし」
 言葉でのぺちり。真打ちはマジックミサイルの追い打ちだ。


 ――さて。
 輝乃と紗里亜はその後も息の合った連携で仲間の戦いを支えた。倒し切った所で一息ついて、紗里亜はふふっと頬を緩めた。
「輝乃ちゃん、この後時間あります? よかったら久しぶりにお茶でもどうですか♪」
 仮面を外す昔なじみは花唇を綻ばし返す。
「うん、そうだね。あたしも久しぶりに紗里亜とお話したいし、お茶会にお呼ばれしちゃおうかな」
 花の乙女はそれぞれ衣を整えて、交流の茶会へと歩を進めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

淳・周
おー盛大に燃え上がってんな。
カットスローターぶん殴っただけじゃまだ物足りねえ。
もういっちょ熱く燃やして完全勝利、掴んでやろうじゃねえか!

…しっかし雑というか俗な欲だな…邪とはいえ神なのにそんなんでいいのか…?
まあいい!動画投稿で頑張ってきたんなら今も撮影とかしてんじゃないか?
猟兵にボコられるアタシ可哀想!とかそんな感じで。
動画ならBGMもいるだろう、アタシのギター付けてやるよと如月構えUC起動!
燃え上がるようなロック奏でて飛ぼうが逃げようとしようがガンガン反響させて大炎上、UDCの面子も避難してるから巻き込みはないだろう!
炎上恐れてなーにが配信者だ。
もっと燃え上がろうぜ!

※アドリブ絡み等お任せ




 床を焦す白き炎にまかれ転がるみくろに人の形をした影が降る。
「おー盛大に燃え上がってんな」
 カットスローターズを焦した炎を拳に纏い、淳・周(赤き暴風・f44008)は仁王立ちである。
『やだもう、炎上(物理)はズルだよーぅ』
 半べそかくみくろを前に、周の満たされぬ闘争心がジクジクと疼く。無論、落胆の方向でだ。
「……なんだよ、弱そうじゃねえか。折角もういっちょ熱く燃やして完全勝利、掴んで握り潰そうって来たのによ」
『握り潰すんかーい!』
 シュタッと跪くみくろはスマホカメラを構え画面に周を捉えた。
『是非やってみて。アタシ撮って万バズすっから! で今度こそ五千兆円と運営からの黄金の槍をゲットだ、ひゃっほーい』
「……しっかし雑というか俗な欲だな……ん? 邪とはいえ神なのにそんなんでいいのか……?」
 ちゅいーんっとスマホレンズから発せられたビームが周の指を焦した。そうだ、カッターナイフを握り潰し出来た指の傷を丁寧にトレースし抉ってくる。
『ふひひ、痛いでしょー。指がもげても握り潰せんのか、検証でっす♪』
 みくろはサマーソルトキックで周の顎を蹴り上げると、そのまま空中に留まり距離をとる。
『アンタ、単純接近距離のファイターでしょー? みくろちゃん、さっきの戦いこーっそり撮影してましたぁ』
 自慢げに虚空に画面を展開されたのは、カットスローターの三つ編みが焦げるシーンだ。
「成程、全言撤回。飛びっきり邪で、攻撃力も神並みだなっ」
 白い骨を赤き炎で上書きすると気障な所作で腕を掲げた。そこには、愛機如月が燦然とした存在感を放ち収っていた。
「猟兵にボコられるアタシ可哀想! ――なぁんてシケた動画とってやがるかと思ったが、殺ル気に溢れてるじゃねえか。いいねぇ! だったらアタシのギターで|華《メロディ》を付けてやるよっ。ワン、ツッスリッ!」
 ギャーン! ギャリリーーン!!
 耳劈くメロディにのせ、ドラムの代わりに床をガンガンと蹴る。その踵から周の熱を触媒に魂揺さぶる熱き炎が巻き起こる。
『ああもうーうるさーい!! ♪五千兆円、WOWWOW!! ……ッ、ぎゃあんっ!』
 初めて聞くメロディに魅了され、欲望を唇にのせシャウト。揺さぶられる魂を目印に業火はみくろを包みその羽根をもぎ取った。
「炎上恐れてなーにが配信者だ。もっと燃え上がろうぜ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
(みくろを見て「コレジャナイ」と一瞬思うが)
邪神生存戦争を生き残った猛者という事ですね。見かけで油断は禁物です💦
全力でお相手いたしましょう。

他の猟兵さん戦闘中にスマホで相手の配信活動を情報収集。
「今まで随分と悪名を流して炎上してきたようですね」とジト目で精神攻撃。
反論してきたら心眼・読心術・第六感で一番嫌そうなネタを挙げて心の傷口をえぐりましょう。

相手が問答無用で攻撃しそうになれば、催眠術・精神攻撃・念動力にて「止まりなさい。」と命令。
一瞬止まったところに神楽舞(ダンス)にて制御した《宇宙開闢》による炎をぶつけましょう!
これが宇宙規模の大・炎・上です!

ぼたんさん、皆さん、おつかれさまでした♪




 そっと目をそらす。
 しばしは情報収集と、オフィス机の影にて戦いを観察していた大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は、余りの惨状にそうせざるを得なかった。
 煽り耐性0。やけに再生数が少ないのに、何故こんなに炎上暦だけはいっぱしなのがわかる気がした。
 戦いも猟兵達を甘く見て高をくくり……ああ、今も周のロック魂で無様に墜とされたではないか。
(「邪神生存戦争を生き残った猛者、なんですよね……猛者、の、はず、です……」)
 初見の直感は「コレジャナイ」だった。油断禁物と気を引き締めていたのだが、第一印象は当たる、割と。
『ぐぅ、猟兵ときたらぁ、みくろちゃんの動画をロクに見もせず荒し※書くようなヤカラばっかりー、ひっどおいー。ぜんっぶ全世界に大公開してやるんだからー』
「猟兵が悪く見えるように編集して、ですか?」
『あたぼうよー、みくろちゃんの神の手編集技術を舐めんなよー』
「神 の 手」
 スッと、詩乃の容にシャドウが落ちる。わぁ、表情わっかんなくてこわーい。
「よりにもよって、そのような邪なやり口を神の手と仰るのですね」
 どっちがどっちの地雷を踏んでるのやら。
『マテ、話せばわかる。そのコメント投降の前に一度考え直し……』
「今まで随分と悪名を流してきたようですね。こちらなど、某有名カフェにてご自由にどうぞのメープルシロップを注ぎ口に齧りついての一気飲み」
『あ、あれは哀しい事件だった。みくろちゃん、全国に本名まで晒されてオブリビオン邪神交流会の出禁になッ……』
 スッと頬が凍えるのに、アチャーっとふざけていた顔が凍り付いたぞ。
「その他にも__や××など、口に出せぬ恥ずかしい炎上の数々――神の風上にも置けませんね」
 詩乃の口元はあくまで朗らかだ、だがシャドウの中はジト目だ。
 あれこれ心の傷口をいじられみくろは打ちひしがれている。だが、今一度、動画配信モチベーションの原点に立ち返り、ガバッと身を起こす。
『アタシはなんと言われようとも五千兆円ぐらいの視聴者おひねりをゲットする! それまでは、さいならーー!』
 飛んだ!
 こいつ、ユーベルコードを全力で撤退に使うつもりだぞー。
「“止まりなさい。”」
 圧を伴い発した言霊、同時に詩乃は神楽を場に描き始めている。
 ――宇宙開闢。
 動画でバズってチヤホヤされたい? そもそもチヤホヤしてくれる人達が生きとし生きる世界を開き顕わしたのがこの光と炎だ。
 のみこまれる。
 大衆の熱量に。
「これが宇宙規模の大・炎・上です!」
『ぴぃ……!』
 ひよこのような愛らしい悲鳴で閉ざされたみくろちゃんを背に、詩乃は手を閉じ制止する。
「…………おー、なんだかすごいものを見てしまったようなー」
 逃げ遅れがないかと戻ってきたぼたんとおっちゃんが瞳をきょとりとさせるのに、詩乃はころころと鈴転がしの声で手をふった。
「ぼたんさん、皆さん、おつかれさまでした♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​

涼風・穹
炎上が嫌い、というのとそれがそのまま火が弱点なのかどうかは慎重に判断します
騒動を起こしてでも再生数が稼げればいいという炎上系なんてのもいるし、物理的に火が付けば投稿動画の総再生時間が増えたという解釈で相手が強化されたりすれば目も当てられないからな
配信者にとっては無関心が一番きついだろうけど…

生き残った非戦闘員は復活した邪神の最初の生贄にされました、なんてどこかのホラー映画のような笑えない展開は御免なのでまずは撤退するUDC職員達の防衛を優先させます
感染型UDCではなさそうだし物理的に距離を取れば当座の安全は確保できる筈
考え過ぎかもしれないけど念のために手持ちの情報端末の電源は切るようには伝えておきます

もし生存者が逃げる、という行為が邪神から迷惑行為と認識されるなら仕方がない
《贋作者》謹製の火炎放射器で邪神を物理的に盛大に炎上させて俺自身が攻撃のターゲットになるように誘導して彼らが逃げる時間を稼ぎます
それはそれとして自称清楚枠が死体だらけのこの惨状の中で平然としているのは突っ込み待ちか…?




 涼風・穹(人間の探索者・f02404)は、積み上がる椅子の影で仲間が黒仏みくろを追い詰めていく様をじっくりと観察する。
 炎上が嫌い、というのとそれがそのまま火が弱点なのかどうか……。
(「どうも炎上が精神的トラウマなのは確かなようだ。非常に効果的かは正直曖昧だなぁ」)
 なにしろほぼみんながみんな燃やしている、そして抜群に効いている。だが、最初のフォークでガッツリ喰われたり怪談話もそれぞれ芯まで効いていた。
 穹はみくろがフォークでいただかれた頬をすりすりと撫でて、さぁ自分の得物をなににしようかと考えあぐねる。
 なにしろ見たことがあるものであればなんでも偽造できる。恰好より実利を取りたい、どうせなら効率良くとりまわせる得物がいい。
 みくろの動画についてつっこむ猟兵が現れた。
 成程。
「全く再生数がまわらない」→「なんでもいいから炎上させてバズる」→「叩かれて病む」という、承認欲求だけはいっちょ前のメンタル豆腐がやらかした考えなしのありがちルートのようだ。
 こいつは本当に邪神なんだろうか? と、穹の心に疑問が渦巻く。だが、相手を舐めて掛かるのは最もNGだ――生き残った非戦闘員は復活した邪神の最初の生贄にされました、なんてどこかのホラー映画のような笑えない展開は御免だ。
 実際、穹の目の付け所は正解だった。
『うぅーー! もぉもぉもぉ! みくろちゃん激おこだよ! もういい、闇堕ちしてやるー! 猟兵がいっちゃん嫌がることあたし知ってるんだからね!』
 デジタル加工で焼け爛れた傷をリタッチし、画面用のラブリーみくろちゃんを作成完了。そっちにリソース削りつつ、ミクロは電脳画面に指を滑らせる。
『この空間でみくろちゃんの動画をご覧のリスナーちゃん達ぃ、今からぁ、みくろちゃんがおそばに現れて夢のような時間をプレゼントしちゃうよん🎶 死ぬ前にちゃあんと『いいね🐿️』するんだぞ♥』
 ぽっ。
 ドヤッた指先に火が灯る。まだ痛くはない、ない、が……動画編集とアップ作業を阻止されて、ぎゅんっとVに吊り上がる眉。みくろちゃんは超不機嫌だよ!
「やっぱり動画を介してあれこれできるんだな。蠱毒で得た力のひとつか……危ない危ない、情報端末の電源を切っといてもらって良かったぜ」
 これでも蠱毒を生き残った邪神だ。職員に追いつかれやりたい放題されたらと思うとゾッとする。
 穹は、常に最悪の事態を想定して手を打つ。こと一般人が絡む案件では取り返しがつかないので、徹底して行う。元“無力な一般人”である自分だから持てる視点であり、猟兵としての役割だと考える。
『ぐぎぎぎ、嘘の通報して垢バン喰らわせるのと変わらないじゃん! それなんて迷惑行為?! 絶対に許さねぇからな覚悟しろよ……』
 血涙で拳を握りしめるみくろから、どす黒い闇が滲み出てくる。撓む空間に混ざり合い増殖していく様はキュートでポップな見た目にそぐわぬ禍々しさだ。
「おっと、やっぱり俺が迷惑ユーザー扱いになるのか。そっちの視聴者になったつもりは一度だってないんだがな」
『うるせえ!』
「口が悪いねぇ……自称清楚枠が死体だらけのこの惨状の中で平然としているのは突っ込み待ちか……?」
 UDC職員から意識が逸れるなら万々歳。穹は敢えて煽ってタゲを取る。
『誹謗中傷しかしねえ口はいらないよねー? 斬り裂いちゃえー!』
 渦巻く闇が、顎を持ちあげにやりと口端を持ちあげる男へ一直線に向かう。鋭利な先端をギリギリまで惹きつけて 火 を 放 つ !
「炎上ってなぁ、些細な発言に火がついて瞬く間に広がるんだよ。こういう風に、な」
 ごぉごぉと燃え盛る炎は、闇を焼きながら逆走し瞬く間にみくろを炎上させる。
『いっ、やあああぁぁああ!』
「そーら、燃えろ燃えろーー」
 穹はよく燃えるガスタンクを背負い、バンダナと同じ赤いラインの火炎放射器を再び構えると思い切りトリガーを引いた。あ、ヒャッハーは余りに雑魚いので自重する。
 炎は、末広型に拡散しみくろの周囲を塗りつぶす。それはあたかも、チクチクコメントやヘイトコメントしか見えなくなる、ネット炎上のようだ。
「火種は俺だぁ。もっともっと火をつけてやるぞー」
 床を蹴り、みくろの周囲をぐるぐると回り出す。常に火炎放射器はフルスロットル。
『うおおお、清楚なあたしはこんなスキャンダルではつぶされないー! 嘘、やだ、もう燃やさないでえー、ぎゃあああ!』
 必死に相殺しようと足掻くみくろの闇が『許さ……』『覚……』と逆にインターセプトされて潰される様は憐れみすら誘う。もちろん、本体も電脳画面ごと黒焦げだ。
「炎上後の焼け太りを期待してるなら、ご愁傷様だな」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
うーん…こーいう言い方するのもなんだけど…なんというか、邪神の中だと割と木端寄り?いやまーあんなんでもれっきとした邪神ではあるし、その上で蟲毒で強化されてるんだから油断も慢心もできないけれど。
都合よく残った…というより、誰かはわからないけれど対処しやすい部類のを残して「くれた」と見るべきかしらぁ?

あたし正直悪意とか敵意とか全然感じてないんだけどなぁ…
そんなもの無くたって、別に|他人《ヒト》を殺すのに支障はないでしょぉ?
ああでも|誹謗中傷《自意識過剰》とか|迷惑行為《被害妄想》でも起動しちゃうのかしらねぇ?ま、それならそれで上から数で圧し潰しましょうか。
●黙殺・目録より●黙殺と黙殺・妨害を展開、合わせて●黙殺・砲列を同時起動。描くのは|カノ《炎熱》・|火天印《真火顕現》に|烏枢沙摩明王印《汚穢焼滅》。反則?無理ゲー?攻略不能?そりゃそうでしょ。避けさせてあげる理由なんてこっちには無いんだし。
空間を埋め尽くす火炎○属性攻撃の三重弾幕で纏めて○焼却されて頂戴な。




『やだ、もぉ……『ド外道猟兵! こんなヤカラが世界守るなんてプゲラww』って実況するはずが、なんで全世界に流せないのぅー』
 焼かれに焼かれ、もはやみくろちゃんの姿はデジタル修整加工では誤魔化せない程に損壊している。足元に転げ出てきたのに、ことりと首を傾げるのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)だ。
(「うーん……こーいう言い方するのもなんだけど……なんというか、邪神の中だと割と木端寄り?」)
 瞼をもちあげる必要もない。
(「都合よく残った……というより、誰かはわからないけれど対処しやすい部類のを残して「くれた」と見るべきかしらぁ?」)
 誰かは運命の神か、まぁティオレンシアは正直関心がない。人を守護する神がいるなんて夢を見るほど甘えた世の中じゃあないと、彼女はよぉく知っている。
『そこの人ぉ、助けてぇえ……』
 やはりティオレンシアからは悪意や敵意の類いは滲み出ていないようだ。
 柔和な笑みにと見まごう容に、みくろは地獄に仏と震える指を伸ばす。だがティオレンシアは握られかけた足首をスッと引いた。
 どんなにメンタル豆腐なダメ人間に見えたってみくろはれっきとした邪神。その上で蟲毒で強化されてるんだから油断も慢心も禁物だ。
 ピクンッとピアノ線で引かれたようにみくろの指が引き攣って、床を掻いて跳ね起きた。
『あんたもやっぱりあたしを殺すんですかぁ? 絶対に許さねぇからな……』
 ぷすんっ。
 しかし、闇が出てこない。わかりやすくスカッた感じで、みくろ自身も戸惑っているようだ。
『あれー……? もしかしていい人? あたしのファン? えー、でもここに居るってこと猟兵……だよね??』
 まじまじと見据える眼には妙齢の美女が映りこむ。上品に閉じた瞳は微笑みの角度。よく似合う紅で彩られた唇は伺うように小さく開いている。
 警戒心を抱かせず、然りとて気に入られようという媚びもない自然体、ティオレンシアの佇まいを文章化するとすればそうなる。
 ここは特殊空間のど真ん中であり、みくろという蠱毒を勝ち抜いた邪神と対峙しているという臨戦状態である――そう付け加えると、ティオレンシアという女が如何に修羅場をくぐり抜けた業の者かとの証明になるわけだが。
 みくろがその|証《・》に気づく前に、動く。
 しゅっと翳した掌に、ゴールドシーンがくるりと巡り収る。
『ぴえ……やだ、なにするのよー』
 みくろは子羊のように頭を覆ってぷるぷると震える。そんな様子にあらあらと鴉羽のみつあみが揺れた。
「あたし正直悪意とか敵意とか全然感じてないんだけどなぁ……」
『嘘、猟兵なのにー? 邪神のみくろちゃんを倒そう倒そうってギラギラして……ない、ね?』
「さっき言った通りよ? 悪意も敵意もないわよぉ」
 ゴールドシーンを持つ手を下げる。詠唱を止めたのではない、もう|全て完了している《・・・・・・・・》。
 ギャンッ! 仔犬のような悲鳴と共にみくろの慎ましやかな胸元が灼けとけた。今解き放った烏枢沙摩明王は、胎内の女児を男児に変える力を持つと崇められた。
「あらぁ、案外力技で性別を変えるのねぇ」
 形良い胸を特に強調もせず更に口中で詠唱を畳み重ねる。
『あっ……熱いぃ、ひぃぃ……こっ、殺そうとしたぁー?!』
「したわね」
 相も変わらず涼しげな佇まいのティオレンシアに、みくろはカチカチッと奥歯を鳴らす。
『けど、なんで……なんであたしの闇が! 反応しないのーー?!』
「悪意、敵意……」
 反撃できないみくろに教えてやるようにわざとゆっくりと印を描く。
 |カノ《炎熱》。
 |火天印《真火顕現》。
 |烏枢沙摩明王印《汚穢焼滅》。

「そんなもの無くたって、別に|他人《ヒト》を殺すのに支障はないでしょぉ?」

 ティオレンシアにとって殺害は呼吸と同等だ。
『やだこいつ、息するようにコメントに毒を織り込むプロの荒らし屋じゃないですかーー! 周囲もあたしも扇動されてるって気がついた時には既に時遅しでコミュニティが廃墟になってるやつーー!!』
 彼女の真実を悟ってしまった邪神みくろの全身から粟立つように闇が溢れ出た。足掻くように炎を必死に相殺しはじめる。
「ああなるほどねぇ。やっぱり|誹謗中傷《自意識過剰》とか|迷惑行為《被害妄想》でも起動しちゃうのねぇ」
『ああぁー! やめろおお! それ、ぜーんぶみくろちゃんへの当て擦りだよねー?!!! ぎゃあああ、やだこっちの足も燃えだしたよー』
 だが、明らかにティオレンシアの炎の方が物量に勝る。黙殺・砲列の真骨頂は、到るところに術を置き、タイミングも数も種類すら自由自在な発動を叶える所だ。
『Bot使うなしー! 反則だよぅー! 闇! 仕事しろおーーー!』
「反則? 無理ゲー? 攻略不能? そりゃそうでしょ。避けさせてあげる理由なんてこっちには無いんだし」
 もはやみくろの居た場所は、いいや、縫村が作りし特殊空間は紅蓮の炎に染めあげられて、赤くない場所は欠片もない。
『あぁぁあああ、あ、あ、……バズリたーいーー……折角、また出てこれたの……にぃい…………』
 はやくシチューのお肉が煮えないかしらぁ……なんて呟きそうな人の良い表情の女は、やがて唇を軽く開いた。ふうっと吐いた息がかかり淡い炎が消えるように空間が揺れ、UDC支部のつるつるに磨かれた廊下が現れる。
 そこには勿論、邪神みくろちゃんも他のUDCも、カットスローターズと縫村も、いない。
「今回のお仕事はこれでお仕舞いね」
 ぐんっと伸びをした女がみつあみを揺らし歩き出す。そちらには猟兵達が守りきった職員らが居て、安堵と共に感謝の言葉が次から次に溢れるのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年12月21日


挿絵イラスト