タナハは確約す、エースの破滅
●
悲しいことばかりが続く。
そんな時はどうすればいいのか。
『ドライ・スルーズル』は言う。
「誰かを思えばいい! 自分以外の誰かを思えばいい! 別に親しい誰かじゃなければならないということはない!」
喉の声量を調節することができないのかと思うほどに『ドライ・スルーズル』は、いつだってそんな調子で言葉を響かせていた。
何故、そんなに声を張り上げるのだと問いかけたことがあるが、彼は笑むばかりだった。
「その誰かを思ったところで悲しみが薄れるわけでもなければ、悲しみがなくなるわけでもないだろう」
「そのとおり! 人が人である限り、悲しみは根絶できない! 感情とは結局の所、人の確固たる性能の一つであるし、根幹であるからだ! だからといって、何もしないでいられるわけでもないだろう!」
彼の言う通りだった。
悲しみはどんなに逃れようとしてもやってくるものだ。
そして、苦しみもまた同じだ。
生きている限り、影のようにピタリとついてくる。
「『フュンフ・エイル』、君もそうだろう! どんなに人が悲しみを生み出し、『平和』をもたらしても戦禍によって容易く焼き滅ぼすことを知ってもなお、君は『平和』を求めるのだろう!」
結局、と彼は笑った。
戦う理由なんてものは、その時々でついて回るものだ。
今日の誰かのために戦った理由が、明日の争いを呼び込むことになるのだとしても。
「そうせずにはいられないのが人間なのだ――!」
●プラナスリー
小国家『プラナスリー』は神出鬼没なる勢力である。
彼らは瞬く間に『第三帝国シーヴァスリー』を滅ぼし、小国家『グリプ5』の周辺国家に散発的に侵略行為を働いている。
だが、その本拠地がどこであるのかは未だ知られていない。
小国家である限り、そこにプラントが存在していることは確かなはずだ。
「人は二本の足を大地に付けて生きている生物。当然、その足は時に根となって己が領域を定めるもの」
『ノイン』と呼ばれた女性は、潮風のベタつくような感触に顔をしかめる。
そう、小国家『プラナスリー』は特定の大地を持たぬ流浪の小国家。
他の大陸にも影響を及ぼすのは、立地的な条件を無意味にしているからこそ。
では、どこに『プラナスリー』の拠点があるのか。
海原を割るようにして巨大な何かが浮上する。
それは巨竜の如き黒き要塞だった。あまりに巨大過ぎるがゆえに通常の艦船を逸脱した物体。
それこそが小国家『プラナスリー』の拠点。
大地に根ざすのではなく、海を揺蕩う浮島こそが『プラナスリー』が海に面した他の小国家に自在に干渉できる最大の理由だった。
その一つの浮島の如き要塞の内部には滅ぼした小国家が保有していたプラントが多数収められている。
それによって『プラナスリー』は多くの兵器を製造し、他国へと『武装ボランティア』としてオブリビオンマシンを排出し、戦乱を引き起こしてきた。
「目標は、小国家『フルーⅦ』、『グリプ5』、『ビバ・テルメ』。この三カ国に対して、我ら『プラナスリー』は宣戦布告いたします」
『ノイン』の言葉はあまりにも無謀極まる宣言だった。
如何に小国家間の距離が離れすぎているがゆえに、宣戦布告した三カ国が同盟を組んでも連携ができぬという目算があれど、『プラナスリー』が同時に三カ国を相手取るほどの国力はない。
まるで自滅が目的であるかのようであった。
否、事実、自滅が目的である。
「他大陸……は動かないでしょうね。問題があるとすれば、猟兵。そして、灼滅者ですか」
彼女が立つ巨竜の如き要塞の背後にあるのは、『捻れた二重らせん構造の鉄塔』。
「『天空の螺旋階段』。この内部に装填された|『殲術再生弾』《キリング・リヴァイヴァー》と、この『ベヘモット』があれば……!」
必ずや破滅的な『最終戦争』に赴く『プラナスリー』を阻止せんと来襲するものたちを阻むことができる。
それだけの戦力が此方にはあるのだ――。
●最終戦争
グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はクロムキャバリア……小国家『プラナスリー』があまりにも勝利には程遠い破滅的な戦争を三カ国同時に宣戦したのです」
彼女の言葉に、それがオブリビオンマシンの策動があればこそであると猟兵たちは理解しただろう。
本来、クロムキャバリアにおける小国家の戦争とは、どちらかが全滅するまで行われない。
殆どが小国家という体裁を保てなくなって分散するにとどまる。
だが、『プラナスリー』は違う。
徹底的に敵対した小国家を叩くか、もしくは己たちが破滅するまで戦い続けようとする。
隷属などいらないと言わんばかりの徹底抗戦。
これはどう考えてもオブリビオンマシンの破滅的な思想によるものであるとしか結論付けられない。
「皆さんが向かっていただくのは、小国家『ビバ・テルメ』の沿岸部。その海上に小国家『プラナスリー』の拠点である超巨大巨竜型海上要塞『ベヘモット』が存在しています。加えて……『天空の螺旋階段』と呼ばれる巨大な鉄塔のような砲塔も携えており、その内部に『殲術再生弾』が装填されているのです」
無論、オブリビオンマシンの狂気に侵された『プラナスリー』の人々は『ビバ・テルメの沿岸部に既に取り付かんとオブリビオンマシン『クレイシザー』でもって迫っています」
無論、『ビバ・テルメ』の防衛部隊と四騎の『神機の申し子』が駆るサイキックキャバリアも迎撃にでている。
しかし『プラナスリー』の『ベヘモット』内部のプラントより次々と『クレイシザー』は量産され、すぐさま出撃してくる。
その上、要塞である『ベヘモット』の周辺には水上機雷が敷設されており、用意に近づくこともできない。加えて要塞の弾幕も凄まじい。
「状況は最悪と言っていいでしょう。ですが、オブリビオンマシンの狂気に一つの小国家のみならず、三つの周辺小国家まで巻き添えにさせるわけには参りません」
ナイアルテの言葉に猟兵たちは頷く。
無論、そのとおりである。
「どうかこの戦線に介入し『殲術再生弾』が装填された巨大砲身へと向かってください。敵の数は多くまた、戦場は湾内ということで敵に利する地形であると言えるでしょう」
だが、それでも進まねば破滅的な最終戦争は、必ずやクロムキャバリア世界の全てに連鎖し、世界の破滅へと至ることになるだろう。
「このクロムキャバリアにおいて『殲術再生弾』の名を再び聞くことになるとは思いもしませんでした……どうかお願いいたします」
滅びに向かう者たち。
その前に立ちふさがる者として、猟兵達の活躍をナイアルテは祈るように送り出すのだった――。
海鶴
マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
今回はクロムキャバリア、これまで多くの事件で暗躍し続けてきた小国家『プラナスリー』がついに本格的に姿を現しました。
彼らの拠点は、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』。
浮島の如き巨大さを持つ要塞こそが彼らの小国家であり、常に移動し続けるからこそ『武装ボランティア』や他国へと介入、干渉することができたのでしょう。
彼が望むのは小国家の覇権ではなく、破滅です。
自滅的な三カ国同時宣戦布告を阻むシナリオになります。
キャバリアをジョブやアイテムで持っていないキャラクターでも、キャバリアを借りて乗ることができます。ユーベルコードはキャバリアの武器から放つこともできます。
ただし、暴走衛星『殲禍炎剣』が存在しているため、空は自由に行き来できません。
●第一章
集団戦です。
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』より『ビバ・テルメ』の湾内を突き進むオブリビオンマシン『クレイシザー』たちとの戦いになります。
これらを蹴散らし、『殲術再生弾』を装填された巨大砲塔『天空の螺旋階段』を持つ『ベヘモット』を目指しましょう。
●第二章
冒険です。
『殲術再生弾』の装填された巨大砲塔を持つ『ベヘモット』を目指す皆さんは、周辺海域が機雷に埋め尽くされていることを知るでしょう。
この一帯を躱し、『ベヘモット』にとりつかねばなりません。
●第三章
ボス戦です。
巨大砲塔『天空の螺旋階段』から放たれた『殲術再生弾』を受けたオブリビオンマシンとの対決になります。
厳しい戦いになることが予想されます。
ですが、皆さんの熱い思いでもって、『殲術再生弾』が引き寄せた戦場に渦巻く人の情念、憎しみや愛情、紡がれた思いを喰らうオブリビオンマシンから、これらをかきみだしたり、引き剥がしたるすることができれば、この強大なオブリビオンマシンを弱体化することができるかもしれません。
それでは破滅に自ら歩を進める小国家『プラナスリー』の凶行を阻止すべく戦う皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
第1章 集団戦
『クレイシザー』
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POW : クレイハイド
自身の【地中潜行能力】を籠めた【超振動破砕クロー】を用い、通常移動と同速度で地中を掘り進む事ができる。装甲破壊にも使用可能。
SPD : クレイアダプテイション
自身の【戦闘能力】を【環境に適応した形】に変形する。攻撃力・攻撃回数・射程・装甲・移動力のうち、ひとつを5倍、ひとつを半分にする。
WIZ : クレイシューター
【複合センサーで索敵を行い、照準】を向けた対象に、【魚雷またはミサイル】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:柿坂八鹿
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
小国家『ビバ・テルメ』の湾内にて立つ波は戦乱に荒れ狂うようであった。
湾内に侵入してきた小国家『プラナスリー』の巨竜の如き黒き要塞『ベヘモット』から次々にオブリビオンマシン『クレイシザー』が海に飛び込み、波をかき分けるようにして『ビバ・テルメ』へと迫る。
その目的は言うまでもない。
『ビバ・テルメ』の湾内を突破し、温泉小国家としての観光資源である温泉地帯を破壊し尽くし、なおかつ己たちも破滅に突き進むためである。
『クレイシザー』を駆る『プラナスリー』のパイロットたちは皆、一様に狂っていた。
「全ての争いの火種であるプラントは等しく破壊されなければならない。そうだとも、あんなものがあるから人は相争う」
「他者より優れたるを求めて、無為に争い続ける。なら、火種を消すしなない。平和は真、遠くとも!」
プラントを失えば、小国家のインフラは滞る。
あらゆる物流は止まり、人々の生活は荒廃するだろう。
だからこそ、である。
彼らはそれを望んでいる。
そうやって自然に帰ることが人の行き過ぎた豊かさへの希求を鎮めるものであると信じて疑わないのだ。
「だからといって、人の生きる導さえ消してどうなるっていうんです!」
四騎のサイキックキャバリア『セラフィム』が海上を蹴るようにして疾走する。
『ビバ・テルメ』の『神機の申し子』たちは、『エルフ』を筆頭に迫る『クレイシザー』の上陸を阻止せんと戦いを挑んでいる。
確かに敵の上陸を許してはならない。
だが、それ以上の脅威があることを猟兵たちは知っている。
そう、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』に存在する『二重らせん構造の鉄塔』――『天空の螺旋階段』と呼ばれる砲塔である。
その砲塔には『殲術再生弾』が装填されているのだという。
一度放たれれば、それが如何なる力を発揮するのかを猟兵たちは知っているのだ。
「ここは僕らに!」
「ええ、敵の巨大要塞が何かをしようとしているということはわかっています!」
『神機の申し子』たちの言葉に猟兵達は頷く。
己たちが為すべきは、このオブリビオンマシンの猛攻を退けつつ、あの超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』へと至ることなのだ――。
ウィル・グラマン
●POW
ひぇー…アレが|プラナスリー《ノイン》が拠点としてる超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』かよ
まるで動く工場…いや、動く要塞じゃねぇか
へへ、でもよ…中々悪い連中の根城としては申し分ねぇな!
スーパーロボットのアニメでも悪い奴らの根城はだいたい怪物なデザインだしよ!
なら、妄執ごと野望をぶち壊すだけだぜ…いくぜ、ベア!借りたキャバリアで俺
俺も出撃だ!!
前衛はベア、その後続に借りたキャバリアに乗った俺の援護射撃のコンビネーションの前に敵なんざ…げぇ!?
コンクリート舗装から潜るとかどんなハサミしてるザリガニなんだよ!
ベア、電磁光線を応用して地面に照射した電波の反射波を感知するんだ!
タイミングは任せたぜ!
小国家『ビバ・テルメ』の領海たる湾内は荒れ狂うように白波が立っていた。
だが、それ以上に脅威であったのが小国家『プラナスリー』の要する超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』であった。
黒き威容。
それはまるで、浮島のようでもあった。
「ひぇー……アレが|『プラナスリー』《ノイン》が拠点としてる超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』かよ」
ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は『プラナスリー』の国土とも言うべき拠点が、あれほどまでに巨大であることに目を見開く。
大きすぎて自分の目が錯覚を起こしているのではないかと思うほどであった。
しかし、理解も出来る。
あれだけの移動拠点を有しているからこそ、これまで他国へと自在に介入し、また『武装ボランティア』としてオブリビオンマシンを供給することもできたのだ。
「まるで動く向上……いや、動く要塞そのものじゃねぇか」
ウィルは『ベヘモット』より放たれる真紅のオブリビオンマシン『クレイシザー』を見やる。
水中に適応するように赤いオブリビオンマシンの群れが湾内を突っ切って『ビバ・テルメ』の市街地へと至らんとしている。
まずはこれをどうにかしなければならない。
「市街地へ僕らが行かせません」
『神機の申し子』たちの四騎の『セラフィム』が迎撃に当たっているが、しかし波状攻撃のような物量に押されてしまうだろう。
故にウィルは、この状況にあっても不敵に笑う。
「へへ……悪い連中の根城としては申し分ねぇ……これがスーパーロボットアニメだったら、まんまだよな! なら、その妄執ごと野望をぶち壊すだけだぜ……いくぜ、ベア!」
ウィルは借り受けた量産型キャバリアを駆り、また己の命令でもって動くスーパーロボット『ベアキャット』と共に戦線に躍り出る。
「ガォン!!」
「出撃だ!!」
前衛に『ベアキャット』、後衛にウィルの駆る量産型キャバリア。
その布陣でもって迫る『クレイシザー』に対処しようとするが、しかし、その両腕の超振動粉砕クローの一撃が振るわれる。
波を割るような一撃。
斬撃とも打撃とも取れるその一撃は、あまりにも強力だった。
「げぇっ!? なんだよそれ!?」
凄まじい水しぶきを上げて衝撃がウィルの駆るキャバリアにまで到達する。
「やっべえな! なんだよ、本当に量産型なのかよ!」
「ガォン!!」
ウィルの前衛として『ベアキャット』の電磁光線が放たれ、『クレイシザー』の装甲を破壊する。
そこにウィルのキャバリアが砲撃を叩き込んで市街地に寄せ付けぬようにして叩き返す。
「よっし、この勢いで任せたぜ、ベア!」
「ガオォォォン!!」
「ベアキャットGo!(ベアキャットゴー)」
ウィルの言葉に『ベアキャット』が咆哮する。
自律的な行動を行う『ベアキャット』が『クレイシザー』のハサミを掴み上げ、引き裂くようにして破壊し、手にした残骸を投げつける。
荒れ狂う波間に二つの黒い影が相対する。
一つは『ベアキャット』。もう一つは『プラナスリー』の本拠地たる巨大なる巨竜『ベヘモット』。
嵐が来る。
そう予感させる暗澹たる戦場が、今まさに開かれたのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎
ベヘモット視認時
コイツは又随分とデカブツを持ってきやがったなあ。まあ目立つ分迷う事はなさそうだ!
召喚したゼロウォリアーの持つクラウソラスにムゲンストライカーを融合合体
|ZI《ジー》ユナイト!モードブレイダー!出番だ!
ゼロブレイダーッ!!
グレイプニルXEEDを用いたUC不空羂索使用
敵機の拘束・破壊による僚機への援護や支援及び陽動を狙う
【残像】【ジャミング】も駆使し攻撃は回避
UCで破壊できない敵機は装甲5倍になっていると判断し
【鎧無視攻撃】による直接攻撃を行う
不敗の刃に無限の力を!|我が名《ロウガ》の下に銘ずる!
クラウ・ソラス|∞《インフィニティ》!
喰らっとけ!ザリガニ野郎ッ!!
それは黒い巨竜だった。
神話の時代というものがあったのだとすれば、それは海に浮かぶ方舟の如き威容を持つ浮島のような移動要塞だった。
あまりにも巨大過ぎるがゆえに、それが一体どれだけの大きさを持つのか理解できぬほどの巨体。
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』。
それが小国家『プラナスリー』の国土であり拠点であったのだ。
内部に無数のプラントを有しており、次から次にオブリビオンマシン『クレイシザー』を放出してきている。
「コイツはまた随分とデカブツを持ってきやがったなあ」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は『ベヘモット』の威容を見やる。
確かに巨大であるということは、それだけ有利である。
何せ浮島程もあろうかという要塞なのだ。
海に揺蕩うからといって堅牢でないわけがない。
「まあ目立つ分、行先に迷うことはなさそうだ!」
ロウガの背後に召喚されるオブリビオンマシン『ゼロウォリアー』。
乗り込み、手にした『クラウソラス』がナノマシン融合を果たし、斬突ユニットへと変貌する。
「|ZI《ジー》ユナイト! モードブレイダー! 出番だ! ゼロブレイダーッ!!」
海面を割るようにして迫る『クレイシザー』。
腕部の超振動クローの一撃が凄まじい衝撃波を生み出し、ロウガの駆る『ゼロブレイダー』へと迫る。
その斬撃は無数に出現した『グレイプニル』を両断する。
「『グレイプニル』を断ち切るかよ! だがな!」
ロウガはユーベルコードに煌めく『ゼロブレイダー』のアイセンサーの輝きと共に、残光を描きながら『クレイシザー』へと踏み込む。
敵は超振動クローでもって、拘束する『グレイプニル』を両断してみせた。
当然、攻撃力を底上げしてきているのだろうということは理解できる。だが、その攻撃能力の底上げによって失われたものがあるはずだ。
移動力ではない。
何せ『クレイシザー』は小国家『ビバ・テルメ』の市街地を目指している。
となれば、移動力を捨てる理由がない。
攻撃回数も然りだ。
己達猟兵を排除しようとするのならば、なおのこと攻撃の回数は減らせない。
「となれば、必然、装甲を削るよな! 攻撃は最大の防御とはよく言ったもんだ。だが、そこに落とし穴よ! 不空羂索(ラウンドアップ・ストラングラーズ)! こいつはお前らにとっての『裁きの縄』よ!」
空中に生み出されるのは無数の『グレイプニル』。
十や二十ではきかない。
百を超える複製された『グレイプニル』が弧を描くようにして宙を走り、『クレイシザー』を縛り上げるのだ。
ふるえる超振動クローも、抑え込まれてしまえば、その切断能力を発揮できない。
「ご自慢のクローも動きを封じれば、この程度よ!」
ロウガは『ゼロブレイダー』と共に踏み込む。
敵の数が多いことは承知の上だ。
「不敗の刃に無限の力を! |我が名《ロウガ》の元に命ずる! クラウ・ソラス|∞《インフィティ》!」
『グレイプニル』によって拘束された『クレイシザー』の胴へと叩き込まれる斬撃。
「喰らっとけ! ザリガニ野郎ッ!!」
ロウガの気合と共に一閃された一撃が『クレイシザー』の機体を両断し、爆発が巻き起こる。
荒れ狂う波間に輝く無数のアイセンサー。
「ハッ、まだまだおかわりはあるってか! 上等!」
迫る無数の『クレイシザー』を前にロウガは『ゼロブレイダー』と共に海原の戦場を両断するように駆け抜けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・弦介
ごちゃごちゃうるせぇんだよ!!!
回点号【操縦】メガスラスター【空中機動・水中機動】
回避行動を取りつつ、避けきれねぇ弾とか爆風をサイキックシールドの【オーラ防御】で耐えてクレイシザーへ接近『タイムカットインセイン』の範囲内に入ったら発動だ!!
他人の口で平和がどうだこうだご高尚な事言いやがって、
気に障んだよザリガニ野郎が!!
【早業】過程を省略!一気に距離詰めてRX退魔刀で、
狂気の源泉、オブリビオンマシンどもを【切断】ぶった斬る!!
回りが動揺してる内にウイングブースターで急速【推力移動】
オブリビオン共を叩っ斬りながら、あの超巨大巨竜型要塞へ侵攻するぜ!!
クロムキャバリアにおいてプラントとは生きる者たちにとって必要不可欠なものである。
それを小国家『プラナスリー』のオブリビオンマシンによって狂わされたパイロットたちは火種だと言った。
そう、プラントの数こそが小国家の国力を意味している。
他より優れたるものを得ようとする者にとって、その数とは最も必要なものである。
それを手に入れなければ、他者より優れているとは言えないからだ。
単純な話だ。
豊かになるためには奪わねばならない。
ただそれだけのことで争いは生まれる。
そういう意味では確かにプラントは火種でしかないのだろう。
だが、鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)は、そうした『プラナスリー』のパイロットたちの言葉を前にして一括する。
「ゴチャゴチャうるせぇんだよ!!!」
その怒号と共に彼はキャバリア『回天号』のメガスラスターの噴射光と共に海上を疾駆する。
放たれる無数のミサイル攻撃。
一斉に己の機体をオブリビオンマシン『クレイシザー』がロックオンしたのだろう。
ミサイルの数が尋常ではない。
モニターにアラートが明滅し、けたたましい警告音が響き渡る。
「しゃらくせぇ!」
海上から海中へと飛び込み、弦介はミサイルの猛攻を躱そうとする。
だが『クレイシザー』の放ったミサイルは水中でも問題なく『回天号』を追ってくるのだ。
まるで機雷のように炸裂するミサイルの衝撃を弦介はサイキックシールドで耐えきりながら、『クレイシザー』へと接近する。
「火種は消さねばならない。俺達はそのために戦っている!」
「知ったことかよ! 他人の口で平和がどうだこうだ、ご高尚なこと言いやがって」
弦介にとって、その言葉は真の言葉ではなかった。
オブリビオンマシンの見せる狂気によって紡がれた言葉だ。
その言葉に弦介は胸を打たれることもなければ、感じ入ることもない。一考にすら値しない言葉だった。
オブリビオンマシンが見せる狂気を彼は知っている。
それがどれだけ度し難いことかも。
故に、弦介は己が乗騎『回天号』と共に『クレイシザー』へと踏み込む。
手にした退魔刀を振るう。
だが、その斬撃は『クレイシザー』へと届くことはない。
「この距離で近距離武装など届くものか!」
「うるせぇんだよ。気に障んだよザリガニ野郎が!!」
ユーベルコードに輝く『回天号』のアイセンサー。
その煌きは、ふるった退魔刀の斬撃を距離という『過程』を吹き飛ばして、絶対命中の斬撃と成して『クレイシザー』の装甲を容易く切り裂く――否である。
彼の刃は機体を切り裂くことはない。
「オブリビオンマシンの狂気を叩き切るッ!」
タイムカットインセイン。
それが弦介のユーベルコードだった。彼の斬撃は狂気のみを切り裂く斬撃。
『クレイジー』のパイロットを侵すオブリビオンマシンの狂気を寸断し、茫然自失となったパイロットを叩き起こすように機体を蹴りつけて弦介は海上へと飛翔する。
「いい加減目を覚ましやがれ! 破壊ばっかりで本当に『平和』になるってんなら、もうとっくになってんだよ!」
怒りをにじませる弦介の瞳が黒き巨竜の如き『ベヘモット』を睨めつける。
あの先にこそ、このオブリビオンマシンをもたらす狂気が存在している。
それを許せぬと弦介は怒号を上げ、『回天号』と共に海上を斬りつけるようにして一直線に飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
『ベヘモット』…いや、『殲術再生弾』もか。とにかく放置する訳にはいかない。それにアレがもしカメリア大陸に襲来したら、今度こそ合衆国どころか大陸の国々が滅びてしまう。戦争の傷もまだ癒えていないというのに…。
水中の敵は他の奴らに任せるとして、水上に顔を出している敵を叩こう。
指定UCを発動して、超高速機動を活かして敵の武装やスラスターなどを切り裂いて戦闘不能にする。ミサイルや魚雷は回避したり、可能であれば足場に利用していく。
無関係の人々まで破滅へと巻き込ませる訳にはいかない。これ以上人々の悲しみと憎しみを増やしても、新たな戦争が生まれるだけだ。その負の連鎖は断ち切らなければならない。
アドリブ・連携可
黒き巨竜の如き要塞『ベヘモット』――それこそが小国家『プラナスリー』の拠点にして国土であった。
『二重らせん構造の鉄塔』、『天空の螺旋階段』は巨大な砲身となって、その内部に『殲術再生弾』を装填している。
加えて、内部に配されたプラントからオブリビオンマシン『クレイシザー』が次々と排出され、まるで自滅に向かうかのように『プラナスリー』は破滅にひた走る。
小国家『ビバ・テルメ』の湾内、波間を往くようにして『クレイシザー』は進む。
装備された武装はいずれもが強力。
「プラントこそが争いの火種! これを排除することが平和への道なのだ!」
『クレイシザー』のパイロットたちは狂気に染まっている。
プラントを排除したとて、齎されるのは飢餓でしかない。
この世界は食糧事情、インフラの多くをプラントに依存して回っている。
故に、プラントが破壊されれば、人々の生活は立ち行かなくなり、世界の破滅をもたらす。
故に止めなければならない。
「『ベヘモット』……いや、『殲術再生玉』もか」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は、オブリビオンマシンのもたらす狂気によって破滅的な争いに突入する『プラナスリー』が自滅に向かえば、この世界に如何なる影響を及ぼすのかを考える。
この場で『ビバ・テルメ』に敗北しようが、他の二国に敗北しようが、その自滅は世界のバランスを崩しかねない。
海洋に面した小国家に自在に干渉するのならば、その裏で如何なる繋がりがあるかわからないからだ。
「それにアレがもしカメリア大陸に襲来したら、今度こそ合衆国どころか大陸の国々が滅びてしまう」
拓也は、己のよく知る大陸の現状と示し合わせて考える。
いずれにせよ、オブリビオンマシンの狂気は此処で断ち切らねばならないのだ。
「時間を掛けるつもりはない。すぐに終わらせる」
ユーベルコードによって強化された拓也は『クレイシザー』へと飛び込むようにして距離を詰め、手にした武装でもってスラスターや武装を斬撃で持って切り裂く。
炸裂する光が波を揺らし、『クレイシザー』の振り上げた超振動クローの一撃が叩きつけられる。
だが、そこに拓也はいなかった。
神速の斬撃を放つことができるということは、それだけ拓也の機動力が優れているということだ。
「超常の人間が!」
「飽和攻撃で仕留めろ!」
『クレイシザー』のパイロットたちは、拓也が生身単身であっても驚くことをしなかった。
想定していた、とでもいうかのようにコンテナからミサイルが放たれる。
爆風が海上に荒ぶ中、拓也は破壊した『クレイシザー』を足場にして飛ぶ。
「無関係の人々まで破滅へと巻き込ませるわけにはいかない。これ以上、人々の悲しみと憎しみを増やしても、新たな戦争が生まれるだけだ」
「そうだ。滅びればいい」
「他者が存在しているから争いが生まれるのだ!」
「勝手な理屈を」
拓也は狂気に染まったパイロットたちの言葉を聞く。
だが、付き合っている暇などない。
「その負の連鎖は断ち切らねばならない」
例え、それが他者の存在を否定することでしか成し得ぬことであったとしても、誰かがやらねばならないのだ。
今日打ちのめし、退けた者が二度と戦いの場に現れなくても、その縁者たちが必ず怒りと憎しみを募らせて来襲するだろう。
真に負の連鎖を断ち切るというのならば、皮肉なことに拳を振り上げられた側のみができることなのだ。
戦いに生きる限り、負の連鎖は終わらない。
だが、それ自体が世界の破滅をもたらすというのならば、戦わねばならないのが猟兵という存在なのだ。
拓也は迫るミサイルを両断し、爆風荒ぶ中『ベヘモット』を目指して海上を往くのだった――。
大成功
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アルカ・スィエラ
……どっかで聞いた気がするわね……前は「キャバリアこそが、全ての元凶」だったかしら?
別にいいわ、やる事は変わらない。裏で糸を引いているオブリビオンマシンを、あなた達の「頭」を潰す。それだけよ
海上だし、コルヴィルクス・L装備のプロトミレスで出撃するわ。推力を調整して水上をドラグレクスと進み、複数の搭載装備とドラグレクスからの砲撃を仕掛けるわ。そして丁度躾…もとい再編成が終わったところよ、来なさい【マルクス・エクィエス】…!
100機以上のシュモクザメ型の無人艦機械生命体群を転送、敵が攻撃力や移動力重視なら145機による飽和攻撃で、装甲や攻撃回数を伸ばすなら1機にまで合体させての集中攻撃で対応するわ
争いの火種は尽きない。
いつだって人は争い続ける。それがどんなに悲しい出来事を引き起こすのか知りながらも。
小国家『プラナスリー』のオブリビオンマシン『クレイシザー』を駆るパイロットたちは言った。
プラントこそが争いの元凶であると。
それがあるから争いが起こる。
豊かさを求めるがゆえに他者の豊かさを寛容できぬ。
「……どっかで聞いた気がするわね……前は『キャバリアこそが、全ての元凶』だったかしら?」
「プラントもキャバリアも、全てが争いの火種でしかないのだ! それを!」
小国家『ビバ・テルメ』の湾内を疾駆するは、『プロトミレス』。
海面を切り裂くようにして飛ぶアルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)の乗騎は海面から顔を出した『クレイシザー』へと迫る。
コンテナから放たれたミサイルの雨をかいくぐりながら、推力に任せて一直線に引き離すようにして飛ぶのだ。
その『プロトミレス』に従う機龍『ドラグレクス』の砲撃がミサイルを撃ち落とし、爆風が戦場に吹き荒れた。
「別にいいわ、やることは変わらない」
アルカにとって『クレイシザー』のパイロットたちが何事かを叫ぼうとも揺らぐことのない目的があるのだ。
それはこの事態をもたらした張本人。
裏で糸を引くオブリビオンマシンの排除。
そう、つまりは、『プラナスリー』を破滅に導こうとしている『頭』を潰す。
ただそれだけを為すために彼女は爆風の中を飛び、『プロトミレス』のアイセンサーをユーベルコードに輝かせる。
「丁度躾……もとい再編成が終わったところよ。来なさいマルクス・エクィエス! 全機、陣形構築!」
「海中から反応増大……!? なんだこれは!?」
「ばかな、どこにこんな数が……!」
アルカの言葉と共に海上に浮上するのはシュモクザメの如き無人艦艇型奇怪生命体。
それらは彼女が『ビバ・テルメ』の湾内にて己が機械細胞によって変容した機械獣たちであった。
彼女は『マルクス・エクィエス』と名付けた機械獣たちを呼び寄せ、『クレイシザー』へと突っ込ませるのだ。
その数、実に百を超える。
群れ為す機械獣たちは海にあて、その性能を発揮する。
「怯むな! たかが数が増えた程度で!」
だが、敵もさるものである。
数には数で対抗する。ミサイルコンテナから次々と放たれる火力の凄まじさは『プラナスリー』の超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』より次々と排出される所に所以している。
圧倒的な数。
「なら!」
アルカの号令と共に百を超える『マルクス・エクィエス』が融合していく。
合体である。
頭部に刻印された数字が目まぐるしく変わっていく。
百を超える数字に至った『マルクス・エクィエス』は、その巨体と共に迫る砲火を受け止め、反撃の一撃でもって『クレイシザー』を吹き飛ばすのだ。
「良い子ね。『ドラグレクス』と共に陣形維持! 敵の数が多いというのなら、質で圧倒する!」
アルカの言葉に従うように『マルクス・エクィエス』と『ドラグレクス』の砲撃が猟兵たちの接近を阻むように迫る『クレイシザー』たちを吹き飛ばし、その残骸を波間に鎮めるのだった――。
大成功
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ユーリー・ザルティア
【心境】
「ベヘモット…その名にたがわぬ巨体ッ!!」
あんな巨大要塞…海上で監視衛星とかない世界だからといえどこに隠してたのよッ!!
【行動】
でも…ボク達の前に出てきたんだッ
後顧の憂いを断つためにもここでッ!!行くよレズヴァントMk-2。
そして、数には数で対抗よ。
≪鉄血騎鋼団≫全機出撃よ。
出撃した全レズヴァントとパールバーティを『戦闘知識』による『瞬間思考力』で遠隔『操縦』。パイロットのいない機体ならではの『限界突破』した機動で回避させつつ『制圧射撃』による十字砲火で迎撃。
その隙にボクは後方から『データ攻撃』による『ハッキング』と『ジャミング』で後方支援。大物に力を残しておかないとね。
黒き威容。
そう表現するしかないほどに巨大な竜が小国家『ビバ・テルメ』の湾内に存在していた。
あまりにも巨大過ぎるがゆえに、それはまるで浮島のようでもあった。
そう、それが。
「『ベヘモット』……その名に違わぬ巨体ッ!!」
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は己が乗騎『レスヴァンとMk-2』のコクピットモニターに浮かぶ姿にうめいた。
「あんな巨大要塞……海上で監視衛生とかない世界だからとは言え、どこに隠してたのよッ!!」
無論、海洋である。
あれは海上要塞であると同時に潜航することすら可能なのだ。
故に、海洋に面した小国家に対して自在に干渉することができるのだ。大陸という人の生活の基盤に根ざした場所ではなく、『プラナスリー』は海洋国家として正しい戦略を行っていた。
『武装ボランティア』もまた然りである。
己が直接争うのではなく、争いの火種でもって他者を疲弊させ、疲弊させた小国家に襲いかかり、利益を得る。
「それで『第三帝国シーヴァスリー』も滅ぼしたっていうわけ!」
「プラントがなければ火種にはならない。キャバリアさえなければ、人は争わない。知恵を付けても人は結局、争うことでしか自己を保存できない哀れな獣なのだ。なら、我がそれを取り上げようというのだ!」
オブリビオンマシンによって狂気に囚われた『クレイシザー』のパイロットたちが口々に叫ぶ。
プラントが失われれば、言うまでもなく人々の生活は困窮する。
それをわかって尚、他者に己達と滅びることを強いるのが『プラナスリー』……オブリビオンマシンに支配された小国家。
「手前勝手な理屈を!」
だが、ユーリーは凄まじい数の『クレイシザー』を前にして怯むことはなかった。
敵の拠点が自分たちの前に出てきた。
なら、世界の滅びを阻止するために戦う猟兵として戦わねばならない。
「後顧の憂いを絶つためにもここでッ!! いくよ『レスヴァントMk-2』!」
アイセンサーが煌き、白いキャバリアが海上を飛ぶ。
そして、ユーリーの脳が演算を開始する。
「鉄血騎鋼団(アイゼンブラッドパンツァー)、全機全速出撃!」
その言葉とともに複製された『レスヴァント』と『パールバーティ』が『レスヴァントMk-2』とともに戦場に躍り出る。
砲火が荒ぶ。
『クレイシザー』はミサイルコンテナを解き放つ、膨大な数のミサイルを雨のように降り注がせる。
凄まじい火力であると言わざるを得ない。
けれど、ユーリーは瞬間的に思考を回す。敵が数で迫るというのならば、此方も数で対抗するのみ。
複製された機体は全て無人機。
ならばこそ、パイロットという縛りのない機動でもってミサイルを躱しながら、アサルトライフルと火砲に寄る支援でもって『クレイシザー』のミサイル飽和攻撃を総裁していくのだ。
加えて、数は十分。
十字砲火でもって『クレイシザー』を取り囲む。
「敵の数はやっぱり圧倒的か。あれだけの数、あの『ベヘモット』の内部にあるプラントの生産力を全部オブリビオンマシンに回してるってわけ」
ユーリーはならばと無人機に『クレイシザー』を任せて『レスヴァントMk-2』を温存させる。
大物がきっとくる。
まだ『プラナスリー』はカードを切りきっていないのだから――。
大成功
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ファルコ・アロー
てめーらもですか!
プラントぶっ壊しちまうなんてバカな事抜かしやがって、それで世の中良くなるとでも思ってやがんですか!
だったらてめーの国のプラントだけ壊して閉じこもってろってぇんですよ!
ここでこいつら止めとかねーと、ボクの国にまで波及しかねねーですからね、きっちり全滅させてやるですよ!
ロータリーキャノン、アームドフォート、レディ!
例え水中だろうが関係ねーです、撃って撃って撃ちまくって全部スクラップですよ!
地中に潜られても、キャバリアサイズの穴ならボクにとってはデカ過ぎるくれーですね。
地の底まで追い掛けてでも蜂の巣にしてやるです!
遠慮は要らねーです、全弾持ってきやがれですよ!
「プラントこそが豊かさの象徴。豊かさこそが他者の妬み嫉みを生み出し、争いを生み出すのだ!」
「火種を! 消し飛ばせ! プラントを有する全てを壊し尽くしてこそ、恒久たる平和が訪れるのだ!」
小国家『プラナスリー』のオブリビオンマシン『クレイシザー』を駆るパイロットたちは破滅的な思想に囚われていた。
それほどまでに『プラナスリー』はオブリビオンマシンのもたらす破滅的狂気に沈められているのだ。
プラントは復元できないし、新たに創り出すこともできない。
遺失技術であるからだ。
故に少国家は覇権を争うようにプラントを奪い合う。
それは確かに争いの火種だった。
けれど、同時に人の生活を支える基盤でもあったのだ。
「てめーらもですか! プラントをぶっ壊しちまうなんてバカなこと抜かしやがって、それで世の中良くなると思ってやがんですか!」
ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は小国家『ビバ・テルメ』の湾内を望む沿岸部にて、『コンパクトロータリーキャノン・クアドラプルカスタム』を構えた。
本来ならばキャバリアに内蔵する小型機関砲である。
それをレプリカントであるファルコが扱えるように改造した砲なのだ。
レプリカントであるからこそ振り回すことの出来る代物。
「だ、大丈夫ですか!? 本当に!?」
『神機の申し子』の一人『フィーアツェン』の駆る『セラフィム』が直掩に当たってくれているが、ファルコの小さな体でキャバリア用の武装を振り回す姿に困惑しているようだった。
「いーから、てめーらのキャバリアで市街地に迫る敵を警戒してろってんですよ! ここでこいつら止めねーと、ボクの国にまで波及しかねねーですからね!」
ここで食い止める。
ファルコは猟兵として、という理由以上に己の小国家『レンブラント・ラダー』を護るために戦っているのだ。
故に己の心配は不要であると言わんばかりに彼女は己の手にした火砲を構える。
「ロータリーキャノン、アームドフォート、レディ!」
ファルコの瞳が海洋より迫る『クレイシザー』を睨めつける。
ロックオン。
例え水中であろうと関係ない。
「黙れ! これは世直しである!!」
「世直し? ほざくんじゃねーですよ! プラントが火種だっていうんなら、てめーの国のプラントだけ壊して閉じこもってろってぇんですよ!」
ファルコが引き金を引いた瞬間、彼女の武装の全てが火を噴く。
ロックオンした『クレイシザー』へと放たれる弾丸。それはまるでファルコを中心とする嵐のようだった。
凄まじい砲火。
「撃って撃って撃ちまくって! 全部スクラップにしてやるですよ!」
「舐めるなッ! この『クレイシザー』は!!」
水陸両用のオブリビオンマシン。
ファルコの火砲をかいくぐって迫る『クレイシザー』の超振動クローの一撃が迫る。
その一撃を『神機の申し子』が駆るサイキックキャバリア『セラフィム』のプラズマブレイドが受け止める。
「だから無茶は!」
「してねーってんですよ! 遠慮はいらねーです、全弾持ってきやがれですよ!」
その言葉と共にファルコは己の武装の全ての弾丸を『クレイシザー』へと叩き込む。
爆発が巻き起こり、ファルコは『クレイシザー』の大群の奥にざす黒き威容を睨めつける。
あれこそが敵の本拠地。
圧倒的な物量で迫る敵を前にファルコは臆することなく、その瞳に戦意を宿すのだった――。
大成功
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村崎・ゆかり
『プラナスリー』か。『ノイン』と狂ったパイロットしか見たことないな。本当に『国民』っているのかしら?
海原を見渡せる『ビバ・テルメ』の岬の突端から、戦場を臨む。
あの人工島みたいなの見てると、距離感が狂うわね。
まあ、メインディッシュにはまだ早い、オードブルは焼いたエビになるかしら。
「全力魔法」質量の「属性攻撃」「範囲攻撃」「衝撃波」「仙術」で天絶陣。出来るだけ広域に隕石の雨を降らせるように、この場所を選んだのよ。片っ端から沈めてあげる。
距離はあたしの味方。ミサイルさえ気をつければ、怖い相手じゃない。
念のため、偶神兵装『鎧装豪腕』に「オーラ防御」をかけて「盾受け」する準備は命じておくわ。
小国家『プラナスリー』は新興の小国家である。いや、だったというのが正しいだろう。
彼らは新興小国家などではなかった。
今の今まで海洋に潜み、海洋に面した小国家に自在に干渉してきた存在だったのだ。
それを示すように小国家『ビバ・テルメ』の湾内に黒き巨竜が威容を誇っていた。
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』。
それこそが『プラナスリー』の本拠地。
海洋を移動し、海中に潜航し、姿を隠し続けてきたのだ。
「プラントの破壊こそが世直し! 我らがそれをなすのだ!」
「破壊だ、破壊だけが全てをより良いものへと、恒久平和へと導く標なのだ!!」
オブリビオンマシンのもたらす狂気に侵されたパイロットたちが口々に叫ぶ。
それはあまりにも破滅的な思想だった。
プラントを失えば、人の生活の基盤は容易く崩れ、元には戻らない。
それほどまでにプラントという遺失技術にクロムキャバリア世界の人々は依存していたのだ。
「まったく狂ったパイロットとしか見たことがないわね、『プラナスリー』は。本当に『国民』って言えるのかしら?」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は『ビバ・テルメ』の湾内、その突端たる岬から戦場を臨む。
黒き威容。
敵の巨大要塞『ベヘモット』は次々とオブリビオンマシン『クレイシザー』を排出し続けている。
内部にプラントを多数擁しているがゆえにできる芸当であった。
「距離感狂うわね。まるで人工島じゃないの。あれが海中に潜航して姿をくらまして、また浮上してを繰り返すなんてにわかに信じがたいわね」
ゆかりは自分の遠近感が狂ったわけではないことを確認してから、敵の本拠地を直接狙うのではなく、『ビバ・テルメ』の市街地を目指す『クレイシザー』の対処に当たらんとする。
「まあ、メインディッシュにはまだ早い。オードブルは焼いたエビになるかしら」
ユーベルコードに輝くゆかりの瞳。
目の前の敵。
それを撃滅するための力を呼び起こすようにして彼女の放つユーベルコードの輝きが戦場に走る。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。天より降り注ぐ先触れのかそけき光よ。滅びの遣いを導き、地上をなぎ払え。疾!」
天絶陣(テンゼツジン)が戦場の空に広がるようにして展開される。
降り注ぐは流星雨。
光が『クレイシザー』の赤い装甲に降り注いだ瞬間、その頭上に燃え盛る巨大隕石が姿を現すのだ。
「片っ端から沈めてあげる」
ゆかりの言葉と共に、天より飛来する隕石が海中、海上にあろうがおかまいなしにオブリビオンマシンを砕く。
ひしゃげた装甲。
砕け散る武装。
爆風と衝撃が海の波間を揺るがし、ゆかりの目の前で荒れ狂う。
「距離はあたしの味方ね。怖い相手じゃあない」
今更かもしれないけれど、と『鎧装剛腕』でもって、ゆかりは己の守りを固めながら呟く。
敵の強みは数だ。
ならばこそ、己のユーベルコードは戦場にある敵を一掃することができる。
次々と飛来する隕石によって海中に没していくオブリビオンマシンを見やりながら、ゆかりは敵の本拠である『ベヘモット』、その巨大なる姿を見つめるのだった――。
大成功
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ルクス・アルブス
【ステルク】
ステラさん、そんなに大きな声出すと見つかり……うわ。
『神機の申し子』さんたち、逃げて。すぐ逃げて。
あ、まずは|同担拒否《そっち》ですか。
え?さいは……?
あ、あー!あれですか!目の回りそうな筒だか塔だか!
あれこんなところにもあったんですね。もっかい壊すんです?
では……かもん、ソナーレ!
わ、今回はちゃんと飛んでます!咥えられてないです♪
って、今回のあれって……ザリガニですか?
なんかだんだん『ビック●ドッキ●メカ』みたいになってきましたね。
ノインさん、最終回でお洋服ボロボロになって飛んで行くんでしょうか?
ま、そこにいくまでにまずはこの子たちを!
いっきますよー!
「おしおきだべー!」
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の!
香りがしまーーすっ!!!
はい、颯爽と美人クールメイドのステラ参上です!
はぁぁん、久しぶりのエイル様直系の濃厚な香り
『神機の申し子』たちも元気そうで何よりです
ノイン様……こちらは後に回しましょう
しっかり同担拒否しないと
天空の螺旋階段……サイハ世界でルクス様が音符爆弾でめっちゃくちゃにしたモノと関連がある……に決まってますよねえ
ここに飛んできていましたか
ルクス様、破壊しきれなかった責任取りに行きましょうか
ええ、フォルで運んであげますので
フォル、いらっしゃい!
ソナーレを掴みながら
【ル・ディアーブル・ヴィアン】でクレイシザーの動きを封じます
後はルクス様にお任せです!
小国家『ビバ・テルメ』、『フルーⅦ』、『グリプ5』という三カ国に対して小国家『プラナスリー』は宣戦布告した。
それは勝算があってのことではなかった。
ただ滅びに向かうためだけの争い。
自滅的であり、破滅的でもある衝動的な行動そのものであった。
それを裏から後押しするのがオブリビオンマシンの狂気的な思想である。
彼らは明日を求めていない。
彼らはただ滅びという結果のみを求めている。
だから、簡単に己の生命を脅かすような行いをしてしまうのだ。
「プラントこそが火種。それを破壊することによって、漸く我らはこの世界から放たれるのだ!」
オブリビオンマシン『クレイシザー』を駆るパイロットたちの目は血走っている。
狂気に囚われた者たちの心はただただ破滅を臨むばかりであった。
そんな破滅的な思想を遮るように雄叫びが迸る。
「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまーーすっ!!!」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)であった。
彼女の雄叫びが、狂気満ちる思想を切り裂く刃のように響き渡り、周囲をドン引き……いや、動きを止めさせるのだ。
「はい、颯爽と美人クールメイドのステラ参上です! はぁぁん、久しぶりの『エイル』様直系の濃厚な香り。『神機の申し子』たちも元気そうで何よりです」
「『神機の申し子』さんたち、逃げて。すぐ逃げて」
ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はドン引きしながらも、ステラから距離を取るようにと『神機の申し子』たちに告げる。
そう言わなくても『神機の申し子』たちの駆るサイキックキャバリア『セラフィム』は戦場を駆けずり回るようにして圧倒的な物量を誇る『クレイシザー』への対応に追われていたのだ。
「『ノイン』様もいますね……ですが、こちらは後に回しましょう。しっかり同担拒否しないと」
「あ、まずは|同担拒否《そっち》ですか」
ルクスはステラのいつもの通り具合に頭を抱えそうになる。
こうなったステラは止まらない。
だからこそ、自分がしっかりしなければならないと思っているのだろう。
「加えて『天空の螺旋階段』……サイキックハーツ世界でルクス様が音符爆弾でめちゃくちゃにしたモノと関連がある……に決まってますよねえ。ここに飛んできていましたか」
「え、さいは……? あ、あー! あれですか! 目の回りそうな筒だか塔だか! あれこんなところにもあったんですね」
ルクスが見やるのは、黒き巨竜の如き移動要塞『ベヘモット』の背に備わった砲塔であった。
確かに見覚えがあるかないかと問われたら、ある。
なんか見たような気がする、ルクスは思っていた。
「もっかい壊すんです?」
「ええ、ルクスさまが壊しきれなかった責任を取りにいかねばなりません」
「責任問題!?」
ルクスは自分のせいなのかとちょっと納得行かない気持ちになったが、ステラがそういうのならばそうなのかもしれない。
「フォル、いらっしゃい!」
ステラに従うように現れた鳥型キャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』がルクスの招来した『ソナーレ』の肩にドッキングする。
「運んで差し上げますから、あとはお任せします。進路は『ベヘモット』に!」
「あっ、はい! 今回は咥えられないから一安心です……って、あれってザリガニですか? なんかもう既に茹で上げられたような色をしてますけど!」
ルクスの眼下にあるのは海上を往くオブリビオンマシン『クレイジー』である。
その砲火は凄まじいものであったが、しかしルクスの瞳がユーベルコードに輝く。
同時に『フォルティス・フォルティス』の放つ射撃武装が放たれ、『クレイシザー』の火力を相殺していくのだ。
「ルクス様!」
「はーい! いっきますよー!」
『ソナーレ』のコクピットの中でルクスがバイオリンを構える。
そう、いつだって敵を打ち倒すのならば、これと決まっているのだ。
「おしおきのCanon(カノン)だべー!」
放たれる破壊音波魔法は凄まじいの一言であった。
広範囲にわたって放たれる破壊音波は、海中であろうと構わず『クレイジー』の装甲をひしゃげさえ、その武装を誘爆させながら破壊していく。
その往く先は、『ベヘモット』。
「さあ、『ノイン』様、同担拒否の強火勢として、どちらが上か! 決着を付けてさしあげます!」
「やべーですね」
「やばくはありません」
そんなやり取りが戦場に似つかわしくなく交わされ、二人は脅威なる要塞へと進路を取るのだった――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01【操縦】
RX騎兵刀の腹でミサイルを【武器受け】
自分は、此処にいる。来い、同胞よ!
『渚の戦端』ディスポーザブル01群召喚【範囲攻撃】
魚雷・ミサイルを【鉄壁】の装甲で受け止め、
【怪力】突き進んでくるクレイシザー群を01群が重機爪と装甲で押止め、
超振動破砕クローで装甲を破砕されながら【呪詛】で駆動し、電磁音響兵器【マヒ攻撃】から電磁拳で【追撃】機能破壊!
【継戦能力】01群が敵機を【おびき寄せ】散らし、
神機の申し子達の負担を低減し、メガスラスター【推力移動】01群に気を取られているグレイシザーをRX騎兵刀で【重量攻撃】叩き壊してその先へ侵攻する!
プラナスリー、此処で、壊してやる!!
眼前に迫るは無数のミサイル。
それは雨のように降り注ぎ、海上にあっては全てを寄せ付けぬと言わんばかりの猛攻であった。
しかし、『ディスポーザブル01』の単眼たるアイセンサーが煌めく。
ミサイルをロックオンし、手にした騎兵刀を振るって、これの直撃を不正だのだ。
爆風がすさび、装甲が熱波で歪む。
「自分は、此処にいる。来い、同胞よ!」
朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)が『ディスポーザブル01』のコクピットで咆哮する。
渚の戦端(ビーチ・ポイント)にて、出現するのは自律する『ディスポーザブル01』の群れであった。
霊物質の海が小国家『ビバ・テルメ』の湾内を侵食していく。
異様なる光景であった。
鋼鉄の巨人が居並ぶ海。
オブリビオンマシン『クレイシザー』たちの猛攻を前にしても、盾になるかのように爆風を受け止め続けている。
本来ならば装甲がひしゃげて爆散している所である。
なのに、どうしてか『ディスポーザブル01』は爆風が立ち上る海面にあって、構わうことなく歩を進めている。
「此処が、自分たちの戦場だ」
「こいつ……! どこにこんなパワーが! だが、『クレイシザー』とて!」
小枝子は、その瞳にユーベルコードの輝きを宿しながら迫る『クレイシザー』と組み合う。
赤い装甲。
ザリガニを模したかのような水陸両用の機体。
そのパワーは侮れない。己の機体『ディスポーザブル01』のフレームがきしみ、超振動クローが装甲を切り裂く。
だが、それでも呪詛でもって小枝子は『ディスポーザブル01』を駆動させ続ける。
胸部が展開する。
「電磁音響兵器展開ッ!」
「ぐぁっ!? 音!? 何だ、この音は……機体が揺れる……軋む!?」
「壊れろ!!」
炸裂する凄まじい音響。それは『クレイシザー』を吹き飛ばし、さらに『ディスポーザブル01』の巨躯が宙に舞う。
構えた拳は、電磁拳。
ナックルダスターの如き装甲をまとった拳は、『クレイシザー』の頭部を叩き潰し、爆散させる。
そのような光景が今や『ビバ・テルメ』の湾内のあちこちで巻き起こっていた。
小枝子が呼び出した『ディスポーザブル01』群は『クレイシザー』に組み付き、破損に構わず進軍しているのだ。
「進め! 敵は、自分たちの壊すべき敵は!!」
小枝子は睨めつける。
その視線の先にあるのは黒き巨竜。
『ベヘモット』と呼ばれる巨大要塞である。
あれこそが小国家『プラナスリー』の拠点であり、要塞であり、そして国土でもあるのだ。
だが、小枝子にそんな理屈は必要ない。
あれが『プラナスリー』をたらしめる要因の一つであるというのならば。
手にした騎兵刀を『クレイシザー』に叩き込みながら小枝子は『ディスポーザブル01』と共に踏み出す。
「『プラナスリ』、此処で、壊してやる!!」
そう壊す。
壊すことしかできないのならば、戦禍を生み出すものを壊す。
それが小枝子に出来るたった一つのことだというように、呪詛まとう鋼鉄の巨人たちは海原を行軍するのだった――。
大成功
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ソフィア・エルネイジェ
●聖竜騎士団
なんという巨躯!
移動要塞がプラナスリーの国土だったとは
如何にしてクレイシザーを手に入れ、なおかつ安定供給するに至った経緯についても気掛かりではありますが…まずはインドラの裁きを受けて頂きます
インドラ・ストームルーラーで参ります
突破に費やした時間の分だけこちらが不利となりましょう
雷光強襲にて攻勢に出ます
海上に姿を現したクレイシザーにガンポッドとミサイルの集中攻撃を行います
環境に適応強化したとしてもクレイシザーそのものが変わる訳ではありません
羽を生やすのでもなければ、滞空する相手に格闘戦を挑む事は至極困難でございましょう
想定される対空ミサイルの反撃はUCで増強した速力を以て振り切ります
イリス・ホワイトラトリア
●聖竜騎士団
なんて大きさ…!
それにベヒーモス様と似た名前に竜のような姿…ひょっとしてあれもキャバリアなんでしょうか?
これ以上進ませたらビバ・テルメが…
ベヒーモス様!お願いします!
早くクレイシザー部隊を突破しなきゃ…
ハイドロジェットエンジン始動!
ベヒーモス様!湾内をお進みください!
ソナーで敵の位置を確認しましょう
索敵データを入力して中型誘導魚雷で攻撃します!
クレイシザーのハサミはとても危険です
近寄られない内にやっつけないと
メルヴィナ殿下にお守り頂いてますけど、あまりご迷惑をお掛けするわけには…
海底に潜航してるクレイシザーには大型対艦魚雷を使います
偉大なる巨竜の一撃で潜っている地形ごと破壊します!
ルウェイン・グレーデ
●聖竜騎士団
大きいな
ベヒーモスと似た名前の響きだが、巨大な竜の意味を持つ名詞なのか?
イグゼクターで出るぞ!
敵はクレイシザーを我が物顔で量産しているのか
だが!相手が悪かったな!
何故ならば!こちらにはメルヴィナ殿下がいらっしゃられるからだ!
リヴァイアサンの顎に砕かれ海の藻屑となるがいい!
メルヴィナ殿下の戦場たる海中を乱してはならない
俺は海上に上がってきた敵を叩くぞ
攻撃のチャンスは一瞬だ
敵の動きを見逃さないように
送られてくる索敵情報には常に注意を払っておこう
敵が姿を見せた瞬間にミサイルとガンポッドを斉射しながら急接近
爪双連撃で仕留めよう
クローは驚異だ
しかしそもそもとして挟ませなければ攻撃できまい!
メルヴィナ・エルネイジェ
●聖竜騎士団
あの要塞が国そのものなのだわ?
国ごと攻めてきた時点で話しが通じる相手じゃないのだわ
止めるには壊すしかないのだわ
リヴァイアサンで行くのだわ
騒いでる人は放っておくのだわ
海中で戦うのだわ
まずはソナーで索敵するのだわ
ベヒーモスと二機でやれば見落としも無くなるのだわ
敵の位置が分かっていれば先制攻撃できるのだわ
索敵したら誘導魚雷を撃つのだわ
進路を邪魔する敵を狙うのだわ
全部を相手していたら突破できないのだわ
魚雷を撃ち尽くしたら格闘で戦うのだわ
クローに挟まれる前にスイングスマッシャーで薙ぎ倒すのだわ
ベヒーモスに纏わり付く敵を優先するのだわ
攻撃を受けても海竜装甲があるから水の中にいる限り平気なのだわ
「……動きますか、『エルネイジェ王国』。しかも、『聖竜騎士団』とは」
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』に立つ『ノイン』は、小国家『ビバ・テルメ』の湾内に現れた白き巨竜『ベヒーモス』を見やり呟く。
予想していなかったわけではない。
だが、彼女の『エルネイジェ王国』への干渉、その工作が成功していたのならば、その戦力はやってくるはずがないものであった。
「ご丁寧に『ベヒーモス』を動かして。手痛い失敗だったと認めざるを得ませんね」
彼女は嘗て『エルネイジェ王国』で機械神の一柱『ベヒーモス』に選ばれた少女――イリス・ホワイトラトリア(白き祈りの治癒神官・f42563)を巡る裁判にて謀略を持って対応した。
だが、ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)によって、これは阻まれていた。
「第一皇女……ソフィア・エルネイジェ。内政などできぬ狂戦士かと思っていましたが……なかなかどうして。ふっ……」
『ノイン』は己の記憶の中に存在するある男とソフィアの面影が重なることに自嘲めいた笑みを浮かべた。
過ぎ去ったことだ。
今更である。
あのやかましいだけを装った男。
「『轟響』、『ドライ・スルーズル』を想起させる。ですが!」
『ベヘモット』より放たれるオブリビオンマシン『クレイシザー』が大群を成して、戦場に現れた『聖竜騎士団』へと殺到する。
潰す。
ここであの戦力は潰さねばならない。徹底的に。
明らかに『クレイシザー』の動きが変わる。
これまで市街地を狙っていた挙動が、ある一団……『聖竜騎士団』擁する『ベヒーモス』へと集中し始めたのだ。
「大きいな」
しかし、そのような挙動を前にしても『ヴェロキラ・イグゼクター』を駆るルウェイン・グレーデ(自称メルヴィナの騎士・f42374)はたじろぐことはなかった。
ソフィアやイリスが小国家『プラナスリー』の超巨大巨竜型要塞……その浮島のごとき巨大さを誇る姿に驚愕しても、ただ事実を確認するだけだった。
彼が『聖竜騎士団』に所属する前であったのならば、ただ動揺するばかりであったことだろう。
だが、今の彼は違う。
そう、彼には真芯が一つ太くそびえ立っている。
「『ベヒーモスと似た名前の響きだが、巨大な竜の意味を持つ名詞なのか?」
「わ、わかりません。ですが、『ベヒーモス』様は……! あれもまたキャバリアであると!」
イリスの言葉にルウェインは一つ頷く。
敵の動きが変わっている。
明らかに己たちを狙うような動きを見せているのだ。
だが、なんら不足はない。
己の背にはメルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)の駆る『リヴァイアサン』がいる。
後顧の憂など抱くことなどない。
僅かにもない。
ただ一つ。己がすべきこと、真芯に据えたるメルヴィナのために出来ること。
「『イグゼクター』、出るぞ!」
『ベヒーモス』の滑走路から勢いよく『ヴェロキラ・イクゼクター』が飛び立つ。
「メルヴィナ皇女殿下のために! 我が物顔で量産する『クレイジー』などなにするものぞ! 貴様たちが狙っているのはメルヴィナ殿下の座す『リヴァイアサン』と知れ! メルヴィナ殿下がおられる限り、貴様たちの鋏など何一つ届かぬ!『リヴァイアサン』の顎に砕かれ、海の藻屑となる運命を知るがいい!!」
「……」
やかましいルウェインにメルヴィナは無言だった。
「騒がしい人はほうっておくのだわ」
そうは言うがルウェインのやかましさは健在すぎた。加えて、ソナーに干渉するほどであったのがメルヴィナの頭痛の種であったが、やらねばならないことはある。
海中にあって『リヴァイアサン』のセンサーから逃れるすべはない。
ターゲットをロックした瞬間、『リヴァイアサン』より放たれる魚雷が『クレイシザー』を捉え、海中にて爆発を巻き起こす。
「イリス、今のうちなのだわ。前進を」
「は、はい! ハイドロジェットエンジン始動!『ベヒーモス』様! 湾内をお進みください!」
「イリス、索敵データリンクを! 俺は海上に上がってきた敵を討つ! 海中はメルヴィナ殿下の戦場! 露払いは俺が!」
ルウェインの駆る『ヴェロキラ・イグゼクター』が海上に顔を出した『クレイシザー』を捉え、ガンポッドとミサイルでもって的確に暴風の如き攻めでもって撃ちた倒していく。
迫る超振動クローを空中で身を翻すことによってルウェインは躱し、さらにクローの一撃をカウンターで叩き込む。
「そのクローの脅威は知っている。しかし、そもそも挟ませなければ!」
蹴り飛ばすようにして『クレイシザー』の装甲をひしゃげさせながら、ルウェインは海上を走るようにして飛び、先端を切り開いていく。
海中では『リヴァイアサン』の巨躯の周囲に『クレイシザー』の赤い残骸が漂うようにして浮かぶ。
そう、海上にでられなかった『クレイシザー』は尽くが『リヴァイアサン』によって撃滅されていたのだ。
「海中の敵は一掃したのだわ」
「メルヴィナ、ご苦労さまでした。では、イリス。引き続き、敵の索敵情報を」
「は、はい! ですが、メルヴィナ様にお守り頂いておりますので……ですが、あまりご迷惑をおかけするわけには……」
「イリス、いいのだわ。あなたの『ベヒーモス』は敵の『ベヘモット』と同じく湾内における拠点なのだわ。これを守らずしてどうするのだわ」
「そのとおりだ。海上は俺が! メルヴィナ殿下はどうか敵に煩わされることなく海中の戦場を! 惜しむのならば、その勇姿を直視できぬことでありますが、ああっ! 俺は!!」
ぷつん、とメルヴィナはルウェインとの通信を遮断する。
「騒々しいのは嫌いなのだわ」
メルヴィナは『リヴァイアサン』と共に海中を往く。
『聖竜騎士団』の叩きぶりを『ベヒーモス』の甲板上で認めたソフィアは『インドラ・ストームルーラー』でもって海上に飛び出す。
敵の戦力は膨大である。
如何にして『エルネイジェ王国』の主力キャバリアのデータが持ち出されたのかを知らねばならない。
ならばこそ、ソフィアは時間を掛けられないと理解していた。
突破する時間がかかれば、此方が消耗し不利になるだけ。
故にソフィアは雷光の如き迅速さでもって戦場を横断しようとするのだ。
「攻勢にでます!」
「そう上手く行きますかね、『エルネイジェ王国』、第一皇女ソフィア・エルネイジェ殿下」
『インドラ』に介入する通信。
その声は『ノイン』のものであった。
「あなたは」
「『ノイン』と申します。すでにお見知りおきかもしれませんが……敢えてお教えしておきましょう。此方には『殲術再生弾』がございます。その戦略性、理解できぬわけではないでしょう」
「つまり」
「ええ、如何に『聖竜騎士団』と言えど、ということでございます。故に」
「だから何だというのです。退くとでも? それこそ無意味な問答。強敵であるからこそ打ち倒して進まねばなりません。強きことを示すことこそ、王者の位格を内外に知らしめるもの。この私を『エルネイジェ』の皇女と知るのならば、なおさら無意味であると知りなさい」
ソフィアの言葉と共に通信を振り切るようにして『インドラ・ストームルーラー』は白き雷光となって戦場を横断し、黒き巨竜へとせまるのだった――。
大成功
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カシム・ディーン
…やれやれ…今度は最終戦争とか…頭おかしいんじゃねーの?
いやおかしくなってるのか
「ジャパニアの神滅戦争を思い出すぞ☆」
あれも神機全滅したんだっけ?
「逃げたり封印されたりかな☆」
何方にせよろくでもねーことは確かだな
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵機の構造と陣形とパイロットの位置を解析
あれエルネイジェのだよな…流石にパクラれすぎじゃね?
「後でエルネイジェが賠償請求だね☆」
【属性攻撃・迷彩】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁で音や熱源隠蔽
【空中戦・念動力・弾幕・切断・盗み攻撃・盗み】
飛び回りながら念動光弾を叩き込み動きを止めて
鎌剣で切り刻みつつわたぬき発動
パイロットを強奪
これを丁寧に繰返
クロムキャバリアにおいて最終戦争とは起こり得ぬ事態である。
互いが滅びるまで行う争い。
けれど小国家『プラナスリー』は違う。
敵が滅びるまで戦う。いや、滅びるまで戦うというのは違う。
自らも滅びるまで叩き続ける狂気しか彼らにはない。だからこそ『第三帝国シーヴァスリー』は国家としての体裁が保てなくなるまで打ちのめされた。
周辺小国家において最もプラントを有する小国家であったのにもかかわらずに、だ。
それだけの国力を保った小国家が何故、これまで本拠地すらわからなかったのか。
その理由が海洋を往く超巨大要塞『ベヘモット』であった。
海上、海中を自在にゆき、海洋に面した小国家に干渉し続ける力。
「……やれやれ……今度は最終戦争とか……頭おかしいんじゃねーの? いや、おかしくなってるのか」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)には覚えがある。
いや、正確には彼が駆るキャバリア『メルクリウス』が語るところの神話によって、である。
『まるでジャパニアの神滅戦争を思い出すみたいだね☆』
「何れにせよろくでもねーことってことだけは、ハッキリわかるぜ……てか、あれってよー」
カシムは『メルクリウス』のモニターが表示するオブリビオンマシンの型式を見て眉根をひそめる。
それは『クレイシザー』であった。
赤い装甲を持つ水陸両用の機体。
それは『エルネイジェ王国』が量産するキャバリアであり、それが何故『プラナスリー』の巨大要塞『ベヘモット』より排出されているのか彼には理解できることろではなかった。
「流石にパクられすぎじゃね?」
『後でエルネイジェに賠償請求だね☆』
「どこでどうつながっているのかハッキリせんことにゃ、とぼけられてしまいだろうがよ。ともあれ、行くぞ『メルシー』!」
『りょーかいだよ☆』
その言葉と共にカシムは機体に迷彩を付与して、『ビバ・テルメ』の海洋へと飛び出す。
敵のセンサーには熱源も感知させない。
水の障壁で熱源を隠蔽しているからだ。
放たれる光弾は念動力で制御されている。赤い装甲が光弾に穿たれ動きを止めた瞬間、カシムの瞳がユーベルコードに輝く。
「パイロットまで殺しやしねーよ!」
わたぬき(ゾウフゴウダツ)とも言うべきカシムのユーベルコードによって、オブ」の内蔵とも言うべきパイロットが『メルクリウス』のマニュピレーターに奪われる。
パイロットさえ失えばオブリビオンマシンはただの木偶でしかない。
『クレイシザー』の機体を蹴り飛ばしながらカシムは懇切丁寧にパイロットを奪いながら戦場を横断していく。
その視線の先には『ベヘモット』の威容がある。
恐るべき程に巨体である。
まるで浮島一つそのものであるかのようであった。
「まったく面倒な者を持ち出してくれやがってよー。あれも機械神の一柱なんか?」
『さぁ知らなーい☆』
メルシーの言葉にカシムは息を吐き出す。
どのみち止めねばならないのだ。なら、やるべきことは一つ。そういうようにしてカシムは『メルクリウス』と共に奪ったパイロットたちを浅瀬に放置して疾駆するのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
三カ国同時宣戦布告……本気なのね
狂気が人々を駆り立てるなら、立ち塞がりましょう
機体を借りて、出撃するわね
攻撃はダッシュで加速して回避
『ビバ・テルメ』へ砲撃が届きそうなら
結界術で防ぐか、月光の矢で撃ち落とすわ
正常な判断力を失っているとはいえ
争いの種を失くしたいという願いは本気なのでしょうね
けれど、その先には破滅しかない
残酷な道を突き進むというのなら、強引にでも止めるわ
痛みを、くらいなさい
赤い月光の矢で意識を飛ばしてもらうわ
小国家『プラナスリー』は三カ国の小国家に対して宣戦布告をした。
『グリプ5』、『フルーⅦ』、『ビバ・テルメ』。
この三カ国は確かにオブリビオンマシンの蠢動によって、疲弊している。
だが、最も国力が安定しているのが温泉小国家として観光資源のみで成り立っている『ビバ・テルメ』であることは皮肉そのものであった。
もっと、『ビバ・テルメ』は背に鉱山、眼前に廃工場地帯という天然の要害を持ち得る恵まれた立地がある。
湾内から攻めるしかない、というのであればこそ『プラナスリー』の持ち得る最大にして本拠地である超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』を用いる理由にも理解が及ぶ所であった。
しかしである。
これは最終戦争。
どちらかが滅びるまで……否、まるで自滅を臨むかのように『プラナスリー』は無謀なる宣戦布告を行ったのだ。
「……本気なのね」
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は荒れ狂う波間を見やる。
オブリビオンマシンの狂気に晒された『プラナスリ』のパイロットたちは、己たちが自滅しようが敵対するものたちのプラントを破壊しようとしている。
それがどんな惨劇を引き起こすことになるのかを理解していながら、理解しているからこそ行おうとする狂気だけが、その瞳にあった。
故に静漓は立ちふさがる。
「機体を借りるわね」
「量産型のキャバリアですが、整備は済んでいますから!」
『ビバ・テルメ』に配されていた量産型キャバリア。
これを静漓は借り受けて出撃する。
敵の数は多い。
撃破しても撃破しても、次から次に『ベヘモット』から飛び出してくるのだ。
『ベヘモット』自体が国土であり、プラントを無数に有しているという事実を理解させるには十分過ぎる攻勢であった。
波間を蹴るようにして静漓の駆る量産型キャバリアが疾駆する。
「まだ砲撃はない……けれど、あの巨竜が砲撃能力を持っていないわけがないわ。なら」
敵の砲撃が始まる前にオブリビオンマシン『クレイシザー』を減らす。
そのために彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「くらいなさい」
残酷なレッドムーン(ザンコクナレッドムーン)の如き光を湛えた矢が量産型キャバリアから放たれる。
それは『クレイシザー』へと打ち込まれ、しかし、機体に損壊を与えない。
彼女のユーベルコードは物質を透過する矢を放つ。
透過した矢は『クレイシザー』のコクピットに座すパイロットに突き刺さる。
「な、なんだこれは! この痛みは……!」
「だが、我らは止まらぬぞ! プラントを破壊し、争いの火種を根絶するその時までは……!」
「いいえ、終わるのよ。その狂気に満ちた思考は」
静漓は静かに言い放つ。
瞬間、彼女のユーベルコードが真価を発揮する。
そう、赤き月光宿す矢は、『クレイシザー』のパイロットたちの意識を途切れさせるほどの激痛を与えるのだ。
それによって機体の操縦などできるわけがない。
「ガアアアアッ!?」
「あなたたちの争いの種を無くしたいという願いは本気なのでしょうね。けれど、その先には破滅しかない」
そう、オブリビオンマシンがもたらす狂気は、破滅しか齎さない。
それを知っている。
道行きは残酷な結末。
しかして、突き進むというのならば、静漓は痛みを伴わせてでも止めると決意しているのだ。
「痛みを、くらいなさい」
そうしなければ、わからぬことがある。
失うことの悲しみは痛みがもたらしてくれる。狂気は痛みが吹き飛ばす。
故に静漓は赤き月光の如き光を瞳に宿して、戦場を横断し『ベヘモット』へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
くそう…海上移動拠点
良いもん持ってんじゃねーか!
欲しい欲しい!あれ欲しい!
勝って!狩って!買って!!
…ダメかあ
仕方ないなあ、ザリガニ釣りしてこよう
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
湾内も荒れてるみたいだし、飛んでくか…
【Code:U.G】起動
重力制御、飛翔開始
ザリガニ釣りしようぜ!餌は私な!
敵のちょっと上あたりで静止してこっちに引き寄せていこう
それで寄ってきた敵は自重で潰れる程の重力でとりあえず足を壊して移動できなくさせておこう
完全に圧壊させると、パイロットもアレでアレだし…
今のご時世、色んな所に配慮しなきゃだし…
ミサイルとか飛んで来たら剣で『斬撃波』を飛ばして迎撃!
小国家『プラナスリー』の国土こそ、かの超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』であったのだ。
その巨躯、その威容。
まるで浮島一つに相当するかのような巨大さであった。
「くそう……海上移動拠点」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は歯噛みする。
小国家『プラナスリー』の存在は、これまで多くのオブリビオンマシンに関わる事件において散見されていたが、その本拠地がわからない小国家だった。
けれど、今まさに理解した。
『ベヘモット』こそが国土。
海上をゆき、海中ですら潜航することのできる要塞。
それ故に自在に海洋に面した小国家に介入、干渉することができ、また相手側からは介入されないというアドバンテージを有していたのだ。
「良いもん持ってんじゃねーか!」
玲は地団駄を踏む。
なんていう浪漫であろうか。まるで海洋国家。
「欲しい欲しい! あれ欲しい! 勝って! 狩って! 買って!!」
なんか不穏な言葉が聞こえたような気がするが、同音異義語ではないよね? いや、買ってと言われて買えるのならば誰も苦労はせんのである。
「……ダメかあ」
えっと、もしかして第四の壁をぶち抜いておられる
「仕方ないなあ、ザリガニ狩りしてこよう」
玲は物騒なことを呟きながら、模造神器を抜き払う。
目の前の湾内は波が荒れ狂っている。
多くの猟兵とオブリビオンマシン『クレイシザー』の戦闘の余波であろうことはうたがうまでもない。
故に、生身単身である玲が向かうには難しい戦場であったのだ。
けれど、玲には関係ない。
ユーベルコードに輝く瞳。
「重力制御開始。地の理は今此処に――Code:U.G(コード・アンロック・グラビティ)」
彼女の体が浮かび上がる。
まるで重力を感じさせない軽やかさでもって、励起した模造神器の刀身が蒼く輝く。
「重力制御こそが最先端の飛翔能力ってね! さあ、行くぜ、ザリガニ狩り! 餌は私な!」
なんとも斬新なやり方である。
お前餌な! はわかるが、私が餌な! はちょっと新しすぎる。
「生身単身……超常の人だ! 油断するな! 最高火力を叩き込んでやれ!!」
『クレイシザー』のパイロットたちは、超常の人たる生身単身の猟兵を前にしても、キャバリアの武装を叩き込むことに忌避感を覚えていないようだった。
ためらいなく放たれる武装に玲は頷く。
「おーおー、釣られてくれちゃってさぁ」
でも、なんだかんだで甘いよね、と玲は笑む。
彼女が浮かぶは海上。
そして、彼女のユーベルコードは戦場の全てに自重で潰れる程の重力を放つことができるのだ。
それによって『クレイシザー』の脚部は関節部が耐えきれなくなってはそんしてしまう。
移動できなくなれば如何に数多く存在しているオブリビオンマシンと言えど、『ビバ・テルメ』の市街地には向かうことができない。
回りくどいやり方であると思うかも知れない。
けれど、それは玲の狙い通りであったのだ。
「まあね。完全に圧壊させるとパイロットもアレでアレだし。トマトジュースだし。ほら、今の御時世、いろんな所に配慮しなきゃだし……」
飛来するミサイルを重力で失墜させながら、玲は爆風の中から斬撃波を飛ばして切り開いて悠然と飛ぶ。
そう、コンプライアンスってあるからね。
批判されると大変なのである。
「ま、そういうわけだからさ。その巨大要塞、いいよね。イエスだよね。だからさ」
頂戴、というように玲は聳える威容『ベヘモット』を前に笑むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『水上機雷地帯を突破せよ』
|
POW : 機雷を破壊しながら正面から突入
SPD : 機雷を回避しながら素早く通り抜ける
WIZ : 機雷の薄いルートや、機雷を黙らせる策を考える
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「『クレイシザー』部隊が全滅。此処までは想定通り。むしろ、パイロットを救助する余裕まであったというのは、正直……」
甘いことだな、と『ノイン』と呼ばれる女性は『ベヘモット』内部のモニターを見やる。
パイロットを尽く殺してくれたのならば、憎悪という情念が戦場に渦巻いて都合がよかったのだ。
けれど、猟兵たちの多くはパイロットを殺さなかった。
誤算と言えば誤算。
けれど、そうするであろうという確信もあったのだ。
ならばこそ、彼女は笑む。
「敵を、恐れよ。されど、恐れるなと私は言いましょう。どんなに恐ろしい敵であっても、疲弊しないわけがないのです。『ベヘモット』、全砲門開け。海上機雷排出。敵を近づけさせるな」
そう、彼女が求めたのは猟兵という特記すべき戦力の脅威である。
戦いに恐怖はつきものだ。
そして、猟兵は『プラナスリー』の人々にとって脅威そのもの。
これまで国土たる『ベヘモット』を襲撃されることなどなかった。
彼等にとって『ベヘモット』は方舟なのだ。最後に残された拠り所なのだ。それが今まさに脅威に晒されている。
その恐れこそが彼女にとって都合がいい。
強大な力は確かに正しく使えば、守る力になるだろう。
だが、護る力は敵対者にとって矛でしかないのだ。故に、『プラナスリー』の国土たる『ベヘモット』には恐れが充満していく。
「砲撃開始」
その言葉は、人々の恐れを具現化するように放たれ、凄まじい砲火となって『ベヘモット』より放たれ続ける。
そして、海上には無数の機雷。
これを如何にしてか、躱して猟兵たちは『ベヘモット』へと迫らねばならないのだ。
例え、その行為が『ノイン』の求める恐怖という感情を増幅させる、敵を助ける行為になろうとも――。
ウィル・グラマン
●POW
へへ、ザコは引っ込んでろってんだ!
あとはノインの根城に殴り込みかけるだけだな!
って意気込んだのは良いけどよ
これでもかってまでに機雷をばら撒いてやがるな
で、低空飛行でも大砲に対空砲、迎撃ミサイルの嵐とかハリネズミな護りか…
ベアの装甲ならゴリ押しで突破できるだろうが、戦後処理の事を考えっと機雷を除去しねぇとビバ・テルメに迷惑を掛けちまうし…にひひ、なら纏めて解決するっきゃねぇな!
いくぜ!『アローライン・スクリーム』!!
この前のように海を洗濯機のように矢印で渦巻かせて…機雷をベヘモット目がけてシューッ!エキサイティングってな!
にゃはは、見たかノイン!
ざまぁみろだ!
首でも洗って待ってろよ!!
無数のオブリビオンマシン『クレイシザー』を退けたウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は、借り受けたキャバリアのコクピットの中でガッツポーズを取る。
敵の気勢は削いだ。
後は、あの超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』を攻略するだけだ。
「へへっ、ザコは引っ込んでろってんだ!」
オブリビオンマシンの排除さえできれば、あの巨大な要塞は的でしかない。
だからこそウィルは、己が遠隔操作し、また自律挙動するスーパーロボット『ベアキャット』と共に海上をゆく。
「あとは『ノイン』の根城に殴り込みかけるだけだな!」
意気揚々とウィルは飛び出す。
だが、目の前にあるのは水上機雷である。
おびただしい量の機雷。
これを躱すには飛ぶことが最も簡単だ。
「おっと、面倒なことしやがって!」
そう、この世界は空に蓋をされている。高速で一定の高度以上を飛べば、暴走衛生に寄る砲撃が待っている。
故に空を飛ぶことはできず、また低高度であっても『ベヘモット』の弾幕で撃ち落とされるだろう。
まるでハリネズミだとウィルは思った。
対空砲、ミサイル、機銃、多くの火砲を擁する『ベヘモット』は何者をも近づけさせぬと言わんばかりに弾幕を張っているのだ。
それはいわば、『プラナスリー』の人々の恐怖の感情の現れであったことだろう。
破滅にひた走りながらも、しかし、心の何処かで自分たちは助かるのだという欲が残されている。
これもまたオブリビオンマシンの策動であるというのならば、なんとも厄介な存在を敵に回したものである。
「ベアの装甲ならゴリ押しもできるだろうが……機雷が厄介だな。戦後処理のことも考えねぇとだし……」
ウィルは考える。
確かに面倒すぎる。が、できないこともない。
「にひひ、ならまとめて解決するっかねぇな! いくぜ、アローライン・スクリーム!」
ウィルの瞳がユーベルコードに輝き、海域の一帯を電脳空間で覆う。
それはレースゲームを元にしたものであり、範囲内のあらゆる物質を矢印マークで加速させる。
矢印を手繰るはウィルだ。
「いくぜ! 海水は回る! まるで洗濯機の渦のようにな!」
ウィルの言葉通り矢印によって加速された海水は徐々に一点に集約されるようにして加速して海流を生み出し、機雷同士をぶつけさせながら爆発を巻き起こしていく。
すさまじい一手であった。
海流を操るウィルは、まとめた嫌いを『ベヘモット』の脚部へと叩きつける。
「シューッ! エキサイティングってな!」
爆発巻き起こり、巻き込まれる『ベヘモット』。
「にゃはは、見たか『ノイン』! ざまぁみろだ!」
かしぐ巨体。
だが、僅かに傾いだだけだった。そう、並の装甲ではない。
だがしかし、ウィルのユーベルコードは確かに『ノイン』の思惑を削ぐものであったことだろう。
「首でも洗って待ってろよ!!」
ウィルはそう宣言し、未だ沈黙を知らぬ対空砲火、その弾幕の中を『ベアキャット』と共に進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
村崎・ゆかり
機雷の海か。その程度じゃ、障害にはならないわね。
「全力魔法」風化の「属性攻撃」「範囲攻撃」「仙術」で紅砂陣。
オブリビオンマシンでもない単なる機雷なら、紅砂陣の対象になるわ。
効果範囲内の海水と機雷をまとめて紅い砂にする。
仮に機雷が砂にならなかったとしても、砂の海の中じゃ身動き取れない。
あたしは絶陣の中を『ベヘモット』に向けて砲火を避けて歩きつつ、絶陣が途切れたところでまた紅砂陣を張り直す。
オブリビオンマシンの第二陣でなくて助かったわ。
目指すはあの砲塔か。海上は問題ない。『ベヘモット』からの砲撃を凌いで、何とか本体に取り付かないと。
『鎧装豪腕』の「盾受け」と「オーラ防御」で防御しつつ、魔の城へ。
目の前に広がるのは水上機雷。
敷設された数は多く、猟兵のユーベルコードを持ってしても全てを除去しきることはできないかもしれない。
加えて、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』の弾幕。
対空砲火に加えて火砲が荒ぶ。
過剰なほどの砲火は、小国家『プラナスリー』に生きるものたちの猟兵への恐れの現れであると言ってもいいだろう。
「この程度じゃ止まらない。止まる猟兵なんていない」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は敷設された機雷満ちる海原を障害とみなしていなかった。
「古の絶陣の一を、我ここに呼び覚まさん。貪欲なる紅砂よ、万物全ての繋がりを絶ち、触れるもの悉くを等しく紅砂へと至らしめん。疾!」
彼女のユーベルコードが広がっていく。
縁を中心にして広がるは、紅砂陣(コウサジン)。
彼女が生み出したのは、無機物を急速に風化させる紅い流砂と砂嵐。
それは、この湾内にあってひときわ異様なものであった。
「海水すら流砂と砂嵐に変えて見せる。後は、火砲だけね」
如何に無機物を変換するユーベルコードであれ、それは彼女の技量に直結するものであった。範囲は限られている。
とは言え、流砂と砂嵐は砲火の一撃を防ぐ盾となって健在である。
「まったくオブリビオンマシンの第二陣でなくてよかったわ。まだ弾幕の方が防ぎようがある」
ゆかりが目指すのは『ベヘモット』である。
海上を渡るに問題はないが、しかし今だ砲撃が苛烈である。
これが人の感情を煽る『ノイン』のやり方なのかもしれない。
「なんとしてでも『ベヘモット』にたどり着かないといけないっていうのに……」
苛烈なる砲撃の熱波を『鎧装剛腕』で受け流しながら、ゆかりは波間を進む。
流砂が足場になっているからこそ踏ん張りがきく。
けれど、それ以上にやはり弾幕が苛烈さを増していく。近づけば近づくほどに拒絶の意志を感じる。
「これほどまでに強烈な意志を煽って『ノイン』は何をしようっていうのかしら」
確かに人の感情は時として力になるだろう。
けれど、恐怖はネガティヴな感情だ。
それ自体がプラスに作用することはないわけではないだろうが、しかし、この状況においては恐慌を引き起こすだけではないのか?
あまりにも『プラナスリー』にとっては不利な状況にしかなりえないだろう。
「……いえ、むしろ、逆?」
そう『プラナスリー』で糸引くオブリビオンマシンの目的は、最終戦争。つまるところ、破滅への一途をたどること。
ならば、この恐怖を煽り続けられているような砲火の意味は。
「人の感情を弄ぶだけ弄んで、それで力にしようっていう算段ということかしら」
確証はえられていない。
けれど、オブリビオンマシンであれば、そうするであろうとも思えた。
ゆかりは、しかしどのみち『ベヘモット』に近づかなければ、この状況を生み出したオブリビオンマシンを打倒することもできないことを理解するからこそ、凄まじい砲火の中を一歩一歩と着実に進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
……その「箱舟」を自ら危険に晒すんだから馬鹿にしか見えないけれど、
それすら気付けず、踊らされるままに突き進む。そういうものだったわね。よく憶えてる。……嫌になるほどに。
機体と装備はさっきと同じ、マルクス・エクィエスは隊長機の『カラハリアス』のみ残して後は下げる。
基本的にはコルヴィルクスの推力で進むけど、場合によっては上に乗せてもらうわ。
後は、まず最初にコルヴィルクス・Lの全Gランチャー砲門と連動させてのUCを。
着弾すればそこを中心に重力球を形成・吸引するからその周囲の機雷、砲火を全て吸引させ、吸い寄せられた機雷や対空砲火に追撃のミサイルや砲撃をぶつけ一気に破壊、生じた空隙を一気に抜けていくわ
国土にして方舟。
生命を乗せたゆりかご。
それが超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』であった。
しかし、今やその『ベヘモット』は猟兵達によって脅かされている。宣戦布告しておきながら脅かされている、と感じるのは、あまりにも都合の良すぎる。
戦いの常であると言えばそうなのかもしれない。
加害者と被害者。
それが逆転することも、ままあるだろう。
そして加害者が常に強いわけではないこともまた、歴史が示す通りである。被害者たる弱者こそが剣を持つこともあるのだ。
『ベヘモット』の内部にて膨れ上がっていく『プラナスリー』の人々の恐怖という感情。破滅に向かいながらも、しかし、失われる感情というものに怯える。
その情念こそがオブリビオンマシンの求めるものであったのならば。
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)にとって『プラナスリー』のやっていることは愚かの一言に尽きる行いであった。
だが、それに気が付けないままに破滅的思想に踊らされる……いや、狂気に囚われてしまうの。それを為すのがオブリビオンマシンだということをアルカはイヤと言うほど知っていた。
己の故国がそうであったように。
「そういうものだったわね。よく憶えてる……嫌になるほどに」
『プロトミレス』と共に機雷の敷設された海上をゆく。
召喚された機械獣『マルクス・エクィクス』は、隊長機である『カラハリアス』を除き引き下がっている。
その上に『プロトミレス』が飛び乗り、推力を温存するように進む。
「とは言え、この現状は面倒ね」
機雷。
所狭しと敷設され、加えて『ベヘモット』の対空砲火がハリネズミのように放たれ続けている。尋常ではないほどの火力である。
それも『ベヘモット』の要塞としての力なのだろう。
海上の機雷を躱すために飛翔すれば対空砲火の餌食になる。
逆に対空砲火を避けようとすれば機雷の餌食になる。
よく考えられている。
彼等が相対するのが猟兵である、ということを覗けばである。
「無駄だということを教えてあげる。バスターキャノン転送、機体接続」
ユーベルコードに輝く『プロトミレス』のアイセンサー。
転送された大型砲が機体に接続され、エネルギーが充填されていく。
「重力制御……よし!」
BS-X2 GBバスターキャノン(グラビティ・ブレイク・バスターキャノン)の一撃が『プロトミレス』の眼前の敷設された機雷源へと放たれる。
着弾点を中心として超重力場が生み出され、機雷を吸引して爆発すら飲み込んでいく。 さらに対空砲火の砲弾すらも吸引してみせるのだ。
「『ベヘモット』は……かしぐこともないか。まったくなんていう質量をしているっていうのよ……! でも、これで一時的にでも空白が出来た!」
こじ開けた機雷源と対空砲火の切れ目を『プロトミレス』と共にアルカは飛ぶ。
「――あれはッ!?」
『カラハリアス』の推力を得て一気に駆け抜け、アルカは眼前のそびえる黒き巨竜の眼前に浮かぶ、奇妙なる白きキャバリア……オブリビオンマシンを見つけるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「機雷なんて嫌いなんだよ。」
親父ギャグじゃなくてマジで嫌い。
機雷と地雷は戦闘だけじゃなくてその後も悲劇を残すんだッ!!
【行動】
判定:POW
アマテラス射出。
機雷の位置を『索敵』し『情報収集』
それと同時にダークマンティスの『エネルギー充填』
機雷を排除する。急がないといけないのは理解してる…でもッ
『限界突破』まで充填したダークマンティスの『レーザー射撃』で一個でも多くの機雷を巻き込むように『範囲攻撃』で破壊する。
全て破壊したいが…。口惜しい。道は開いた…これ以上の悲劇を生まないためにも…発生源をたたくッ!!
海上に敷設された機雷。
ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は歯噛みする。
「機雷なんて嫌いなんだよ」
珍しいこともあるものである。
ジョークが飛び出した、と思った者もいるかもしれない。だが、それは違う。
親父ギャグだと取られても仕方のない発言であったが、ユーリーの偽らざる思いであった。
地雷、機雷。
それは人の生活に密接に関係がある。
いずれもが対象を選ばない。無差別に触れたものを傷つける。そして、それは戦いが終わった後も残留しつづけるのだ。
無辜なる者がいつだって犠牲になる。
それを知るからこそユーリーは歯噛みしたし、憤るようにして『レスヴァントMk-2』から『アマテラス』を射出し、海上に敷設された機雷の位置情報を習得する。
猟兵たちのユーベルコードによって多くが除去されているが、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』から次々と機雷が放出され続けている。
此方を近づけさせないためであろう。
加えて、対空砲火も凄まじい。
「機雷と地雷は戦闘だけじゃなくて、その後も悲劇を残すんだッ!! それを学びもしないで好き勝手に!」
スキャニングされた海原の情報を得てユーリーは背面に装備された巨大砲塔『ダークマンティス』にエネルギーを充填する。
機雷を排除する。
それは敵の目論見に嵌まることだ。
わかっている。
時間が惜しいことくらいは。
けれど、それでもユーリーは譲れなかった。
この戦いに勝利したとしても、残された機雷は『ビバ・テルメ』の湾内で漁業を営む人々の生活を脅かすだろう。
それだけではない。
彼等の命を奪うことだってあるだろう。
そんな未来が容易に想像できてしまう。
だからこそ、ユーリーは時間を捨てる。ターゲットインサイトに位置情報を得た機雷を収める。
「『ダークマンティス』、拡散モードで照射ッ!」
放たれるエネルギーは限界を越えて充填されていた。
苛烈なるレーザー射撃は一瞬で海面を蒸発させ、さらに機雷を巻き込みながら爆風を生み出す。
砲塔を横薙ぎにして払うようにしてレーザー照射が続く。
「全て破壊したいけど……口惜しいッ!」
ユーリーは焼け落ちた砲塔を捨てる。
『レスヴァントMk-2』のエネルギーインゴットが空になってしまう。
そうなってしまえば、この後に控えるオブリビオンマシンとの戦いに遅れを取ることになってしまうだろう。
本末転倒だ。
だからこそ、ユーリーは自分に言い聞かせる。
道は開いたのだ。
なら、此処から先は。
「これ以上の悲劇を生まないため……発生源を叩く戦いだッ!!」
ユーリーは薙ぎ払われた機雷原を『レスヴァントMk-2』と共に『ベヘモット』の眼前へと飛び出すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
今度はベヘモットによる砲撃と機雷か。
だが、これくらいの相手でなければ新しい力を試せない。早速だが使わせてもらうぞ。
そう言って両眼を閉じた後、指定UCを発動。開眼した両眼が翡翠色になり、瞳孔の周囲に0の模様が浮かび上がる。それと同時に同一人物と思えない程、自身の強い覇気が戦場全体へと広がる。
「さて…進ませてもらうぞ」
そう言って水上を走り、機雷や砲撃は斥力で吹き飛ばして無効化したり、未来予測で回避していく。
「敵はこの眼の存在を認識していたかどうかは知らんが…牽制くらいにはなるだろう。今の技はこの眼の力のほんの一部に過ぎないのだからな」
そう呟きつつ、的確に機雷や砲撃を捌いていく。
アドリブ・連携可。
目の前に広がるのは機雷原。
海の波間に浮かぶ機雷は触れれば炸裂し、爆発を巻き起こすだろう。
海上に浮かぶ要塞が取る戦術としては正しいだろう。加えて、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』の対空砲火。
二段構えである。
それはまるで近づくなと言うようでもあったし、事実猟兵たちの攻勢を阻むものであった。
用意周到とも言うし、敵の指揮官はよく戦いというものを知っているようであった。
「だが、これくらいの相手でなければ新しい力を試せない」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は、両眼を閉じる。
息を吸う。
息を吐く。
鼓動を認識する。
鼓動を理解する。
身に流れる魔力が血脈を通して全身に巡っていく。
閉じた瞼の裏に浮かぶのは未来予測の光景。砲火が荒ぶ。機雷が炸裂する。
いずれもが拓也の目の前で起こり得る光景であった。
故に、瞳を開く。
そこにあったのは翡翠色の瞳だった。
ユーベルコードの輝きが円を描くようにして瞳孔の周囲にめぐり、身より放たれるは魔力に寄る覇気であった。
波が揺れる。
衝撃と共に拓也は一気に海上を走る。
「さて……進ませてもらうぞ」
機雷を吹き飛ばすように振るわれた手と海上を駆け抜ける脚力が一気に拓也を『ベヘモット』との距離を縮める。
だが、そんな拓也を睨めつけるようにして砲撃が降り注ぐ。
ハリネズミのような弾幕であった。
苛烈、といえるものであったし、生身単身の存在に向ける火力ではなかった。けれど、間違ってもない。
そうでもしなければ止められない超常の存在がいる。
それが猟兵である。
ならばこそ拓也は未来予測でもって迫る砲撃を躱す。
「原初の魔眼(ゼロノメ)、敵はこの眼のことを認識していたかどうかは知らんが……牽制にはなるだろう」
迫る砲撃を斥力でもって弾き飛ばす。
衝撃が海面を割る。
降りしきる海水が雨のように拓也へと注ぐ。
だが、その一滴すら拓也を濡らすことはなかった。。
「今の技は、この眼の力のほんの一部にすぎないのだからな」
強化された拓也の身体能力でもって『ベヘモット』と迫る。
だが、拓也は見ただろう。
巨竜の眼前に浮かぶ白いキャバリアを。いや、違う。
あれはオブリビオンマシンだと猟兵であるからこそ認識できる。
そして、球体のような異形のオブリビオンマシンは、ゆっくりと羽根を広げようとしている。
「あれか。敵の首魁は」
真の脅威は『ベヘモット』ではない。
あの球体の如きオブリビオンマシンこそが、世界の破滅をもたらすものであると知り、拓也は海上を駆けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎
ったく、コンナに|機雷《ゴミ》垂れ流しやがって……。|UDC辺り《どこぞの世界》じゃ環境に優しくしねえと炎上するんだぜ?
UC不空羂索使用。分裂したグレイプニルXEEDで機雷を絡め取る
絡めとった機雷はベヘモットへ向け敢えてゆっくり飛ばし対空砲やミサイルの的になってもらおう。無駄弾の消費と陽動が狙いだ。
無駄撃ちゴクローさン!ま、自分の|機雷《ゴミ》の始末は自分でやってくれってこった!
弾幕が薄くなった所を【残像】【ジャミング】【カウンター】
を駆使して気取られぬように進みベヘモットへ取り付く
尚僚機への援護、支援は引き続き行う物とする
鬼が出るか蛇が出るか、ま、両方来ようが負けはしねえ!
「ったく、コンナに|機雷《ゴミ》垂れ流しやがって……」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は己がオブリビオンマシン『ゼロウォリアー』がクラウ・ソラスと融合した『ゼロブレイダー』を駆り、海原に広がる機雷原を見やり吐き捨てる。
正しくゴミだ。
しかし、そのゴミが他者を傷つける。
時に生命を容易く奪うだろう。
機雷とはそうした兵器なのだ。無差別であることこそが、機雷の最大の武器でもあり、害悪でもあった。
「ったく、|UDC当たり《どこぞの世界》じゃ、環境に優しくしねえと炎上するんだぜ?」
ロウガは吐き捨てながら、己のユーベルコードを発露する。
複製された『グレイプニル』を持って海に敷設された機雷を絡め取るようにして網目を作り上げ、海中から宙へと飛ばす。
すると、それを標的としたわけではないだろうが対空砲火を行っていた超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』から砲撃が飛ぶ。
炸裂する爆発。
そう、ロウガは機雷を集め、その処理に『ベヘモット』の砲撃を利用したのだ。
「はっ、手当たり次第ってやつだな! ったく、無駄弾をバカスカと撃ちまくりやがって。とは言え、弾を消費捺せてる感じがしねーな!」
ロウガは『ゼロブレイダー』と共に海上を走る。
編み上げた『グレイプニル』の網でもって機雷をかき集めながら、さらに処理させるようにして砲火に晒す。
上空に炸裂する爆発。
凄まじいまでの熱波が『ゼロブレイダー』を襲うが、装甲に阻まれる。
「無駄打ちゴクローさン! ま、自分の|機雷《ゴミ》の始末は自分でやってくれってこった!」
ロウガはそう言い放ちながら海上を駆け抜け続ける。
『ベヘモット』の砲撃は収まる所を知らなかった。
まるでやたらめったらに砲撃を行っているようにしか思えなかった。まるで破滅的な行いだ。
いや、違う。
そうだ、そうだったのだ。
「チッ、面倒だな。破滅的な狂気に囚われているっていうのはよ!」
彼等は破滅するために戦いに臨んでいる。
けれど、同時に言い難いほどの恐怖もまた感じているのだ。
相反しているように思えたかもしれない。
失うとわかっていながら破滅にひた走りながら、失うことを恐れてもいるのだ。
その情念が『ベヘモット』から放出されるようにして砲撃が続いているとしか思えなかった。
「鬼が出るか蛇が出るか、ま、両方来ようが負ける気はしねえがよ!」
ロウガは見ただろう。
『ベヘモット』の巨体より溢れる情念が背面に背負った捻れた二重らせん……『天空の螺旋階段』と呼ばれた砲身に集約されていくのを。
そう、その情念こそがオブリビオンマシンの狙いであった。
「『殲術再生弾』ってやつか! この状況を利用して人の情念をかき集めてやがるッ! 野郎!」
ロウガは理解した。
破滅的な行動は、ただ滅びるためだけではなかったのだ。
この事件に集った猟兵たちを確実に打倒するため、また世界の破滅をもたらすため、その二つをいっぺんにクリアするために敵は『ベヘモット』自体を危険にさらして、人々の情念をかき集めて『殲術再生弾』として放つつもりなのだ。
張り巡らされた策動。
だがしかし。
「この程度で猟兵が止まるかよ――!」
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
ちっ、まーだ抵抗しやがるですか!
往生際の悪ぃ連中ですねぇ、海の水質汚染も甚だしいってやつです!
機雷除去も良いですけど、ボクの能力を活かすなら……元を断ちに行くのが早いかもですね。
低空を短時間飛ぶならあの忌々しい殲禍炎剣のターゲットにならねーってのは学習済みです。
小型戦闘機に変形してバリアを張り、敵の砲撃の中を最短距離でかっ飛ばすですよ!
機雷は飛べば回避できるですし、砲撃はバリアで防げるはずです。
それに今のボクは戦闘機だけど、キャバリアよりは大分小さいんです。
そんな的に当てるのは大変ですよ!
さぁ、どんどん撃ってきやがれです。
そんなもんで止められると思うんじゃねーですよ!
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』より排出されるのは機雷だけではなかった。
ハリネズミのように巨竜に配された火砲。
その全てが対空砲火となって周囲に撒き散らされている。
凄まじいまでの砲火である。
「ちっ、まーだ抵抗しやがるですか!」
ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は、舌打ちする。
敵のオブリビオンマシンの大群は排除できたというのに、まだ『プラナスリー』は己たちの本土とも言うべき『ベヘモット』を晒してでも戦いを続けようとしている。
「往生際の悪ぃ連中ですねぇ、それに海の水質汚染も甚だしいってやつです!」
ファルコの怒り等気にもとめてないというかのように『ベヘモット』の砲火は凄まじい勢いで撒き散らされている。
彼女が視線を向けた先にあるのは海原に敷設された機雷原であった。
これを除去するのもいいだろう。
だが、あまりにも時間が足りない。
あのまま『ベヘモット』が『ビバ・テルメ』の湾内を突っ切ってしまえば、それだけで市街地にかかる戦禍は凄まじいものとなるだろう。
それをファルコは理解しているからこそ、己の能力を十全に活かすことを決断する。
危険極まりない行為であることは言うまでもない。
「へんっ、ビビってなんていられねーんですよッ! 元を断ちに行くってんですから、これくらいは!」
ファルコの瞳がユーベルコードに輝く。
彼女は航空戦力としてのレプリカントである。
何の因果なのか、この世界に生まれてしまったのが間違いであるのかもしれない。けれど、ファルコは学習していた。
確かにこの世界で空を飛ぶことはできない。
天に座す暴走衛生が常に高速飛翔体を狙っているからだ。一定の高度まで上がり、飛翔するだけで例外なく砲撃が飛んでくる。
時にそれは小国家の滅亡を意味するものであった。
「まったくもって忌々しいことですけど、低空を短時間。これさえ守れば、ターゲットにはならねーってのは学習済みです! ならっ! シールド全開……」
ファルコはバリアをまとった光り輝く小型戦闘機へと変身し、対空砲火荒ぶ戦場を一直線に飛ぶ。
そう、彼女はこのために生まれたのだ。
空を飛ぶために。
奇しくもこの世界で、それはできないことだった。
けれど、今はできる。確信がある。そして、迫る砲火をバリアが弾き飛ばし、さらにファルコは飛ぶ。
「……最大戦速ぅ! 名付けるならッ! Gディフレクターアタック(ジーディフレクターアタック)とでも名付けるですよ!」
砲火はバリアをまとったファルコに届かない。
弾き飛ばすようにして一直線に飛ぶ。
それだけではない。
今のファルコは等身大である。
キャバリアという体高5m級の戦術兵器が主役を張るクロムキャバリアの戦場にあって、彼女に正確に狙いをつけることができる砲手は限られているだろう。
「さぁ、どんどん撃って来やがれです」
ファルコは挑発するようにして飛ぶ。
だが、誰も彼女を捉えることはできないだろう。弾幕がまぐれ当たりのようにファルコに激突するが、その全てがバリアに阻まれるのだ。
「そんなもんで止められると思うんじゃねーですよ!」
彼女を止められない。
如何にハリネズミのような砲火であろうとも、だ。
そして、ファルコは知るだろう。
『ベヘモット』の眼前に浮かぶ球体の如き白いオブリビオンマシンの姿を。
それこそが、この事件を引き起こし、最終戦争という名のけったいな悲劇を齎さんとしている存在であると――。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・弦介
がーうざってぇ!!ザリガニ野郎の次はなんだ、カタツムリかああん?
てめぇからふっかけておいて今度は引きこもりかぁ?
まったくいいご身分だな畜生が!!
回点号【操縦】サイキックシールド展開【オーラ防御】
ウィングブースターとメガスラスターで【推力移動】海上を高速飛翔しながら『エレクトロスケアリー』を発動!
ふっとべぇええええ!!!
【念動力】サイキックの電撃を放射して周囲と移動先の海上機雷をぶっ壊して爆炎砲火をパリィ【シールドバッシュ】で払いのけ、突っ切る!!
どうせすかしたツラでいいこと言ってんだろうなッ!!
ぜってぇその横っ面ぶっ叩いてやるからなぁぁぁぁぁ!!!
戦場たる小国家『ビバ・テルメ』の湾内には多くの情念が渦巻くようであった。
恐れ、憎しみ。
負の感情が渦巻いて、黒き巨竜『ベヘモット』に集まっていくのを鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)は、キャバリア『回天号』のコクピットで感じたかも知れない。
人の情念は彼の頭に釘を打ち付けるような痛みでもって迫るだろう。。
それほどまでに、この戦場には多くの感情が吹き荒れ嵐のようになっていたのだ。
「がーうざってぇ!!」
しかし、弦介はこれを振り払うようにして頭を振り、瞳を見開く。
「ザリガニ野郎の次はなんだ、カタツムリかああん? てめぇからふっかけておいて、今度は引きこもりかぁ?」
目の前の『ベヘモット』は海上に機雷を敷設し、さらには全身に配された弾幕でもって、猟兵たちの接近を拒むようであった。
「まったくいいご身分だな畜生が!!」
叫ぶような情念を受けながら弦介は『回天号』のサイキックシールドを展開し、砲火を受け流しながらブースターの推力に任せて海上を飛翔する。
頭痛がする。
知ったことか、と弦介は情念を振り払うようにしてユーベルコードの輝きを瞳に宿す。
頭部より放たれる電撃放射。
それはあらゆる防護を切り裂くサイキックの刃となって宙を走り、迫る対空砲火の弾丸を弾き飛ばすのだ。
「ふっとべぇええええ!!!」
叫びと共に弦介の放ったサイキックの刃は電撃放射と共に海上の機雷に激突して爆炎を巻き上げる。
それらをサイキックシールドで受け止め、払い除けながら強引に突き進む。
その様子を『ベヘモット』から『ノイン』は見ていた。
猪突猛進とも言うべき『回天号』の動き。
モニターに映るそれは、サイキックの輝きを放ちながら驚異的な速度で持って迫っていたのだ。警戒しないわけがない。
「ふっ、ただ直進するだけでは」
「どうせすかしたツラで言いたいことを言っているんだろうなッ!!」
弦介の思念が飛ぶ。
『ノイン』は僅かに顔をしかめた。
「やかましいだけの男が」
「ぜってぇ、その横っ面ぶっ叩いてやるからなぁぁぁぁぁ!!!」
「……無礼な」
弦介に『ノイン』の顔は見えない。
けれど、己の胸に湧き上がる怒りはとどまる所を知らない。四方八方に放たれるサイキックの刃と共に弦介は『ベヘモット』、その目の前に浮かぶ白い球体のようなオブリビオンマシンを見つける。
この戦場の情念の多くが、そのオブリビオンマシンに集約されていくとしている。
渦を巻いているのだ。
理解する。
あれこそが、この戦いの破滅。
己が穿たねばならぬものであると弦介は理解し、情念を振り払うようにして飛ぶのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルウェイン・グレーデ
●聖竜騎士団
イリス神官はベヒーモスを潜航させないのか?
…なるほどな
敵からすれば猟兵などに用は無いという事か
ノインめ!やる!
ソフィア殿下の命に従ってベヒーモスの左舷飛行甲板で対空防御に当たるぞ
敵のミサイルはベヒーモスにもビバ・テルメにも行かせはしない
イグゼクター向きの戦い方ではないが…こういう時こそUCだ!
弾雨猛襲でミサイルを撃ち続けてやる!
デュアルガンポッドの弾幕を抜け切れるか!
あの大きな渦潮はメルヴィナ殿下の業か?
リヴァイアサンを駆り海を制するメルヴィナ殿下のなんと勇ましく鮮烈な事か!
まさしく怒れる海原の化身!
俺は今!メルヴィナ殿下への畏怖に打ち震えている!
ンアー!メルヴィナ殿下!ンアー!
ソフィア・エルネイジェ
●聖竜騎士団
そういう事ですか…!
プラナスリーの戦略目標はビバ・テルメの破壊であって猟兵の撃破に拘る必要はない
この砲撃の狙いは初めからイェーガーなどではなく…!
イリス!聖盾の守護を展開して全速前進!ビバ・テルメを守りなさい!
メルヴィナは進路上の障害の排除を!
グレーデ卿はベヒーモス左舷飛行甲板で対空防御を!
飛来するミサイルを全て迎撃なさい!
私は右舷に回ります!
飛行甲板に降着しストライクディフェンダーに瞬間換装(攻撃回数5倍・移動力半分)
シールドで防御しつつVTFミサイルで敵ミサイルを迎撃します
撃ち漏らしはUCで発射間隔が短縮されたガトリングガンで対処しましょう
レーダー情報はベヒーモスから受信します
メルヴィナ・エルネイジェ
●聖竜騎士団
あのベヘモットが国なら中には市民がいるのだわ?
市民を乗せたまま戦場に来ているのだわ?
イリス、ベヒーモスを海中に潜らせるのだわ
そのままじゃ艦砲に撃たれ続けるのだわ
海中にいればビームやミサイルは気にしなくて済むのだわ
機雷と魚雷だけ注意していればいいのだわ
仕方ないのだわ…
姉上に言われた通り進路上の障害を取り除くのだわ
リヴァイアサンを中心にバックシュトロームを発生させるのだわ
強力な海流で機雷も魚雷も引き寄せるのだわ
一つ一つ壊すよりも遥かに効率がいいのだわ
機雷と魚雷のどちらも意思があるようには見えないから棲家に転移する事を望むとは思えないのだわ
だからダメージを受けた後は爆発するのだわ
イリス・ホワイトラトリア
●聖竜騎士団
すごい砲撃…!
メルヴィナ殿下!だめです!
いまベヒーモス様が潜航したら砲撃がビバ・テルメに!
神機の申し子の方々も戦っていますけど、砲撃を受け続けたら持ち堪えられるかどうか…
砲撃を防ぎながら前進しなきゃ…
ベヒーモス様!どうか堪えてください!
ベヘモットは正面でビバ・テルメは背後です
聖盾の守護を展開します
これでビバ・テルメへの被害も抑えられるはず…
ベヒーモス様の全身にはアダマンチウム装甲もあります!
対空機関砲と対空ミサイルはベヘモットが発射したミサイルの自動迎撃を!
進路上の機雷はメルヴィナ殿下が除去してくれます
ハイドロジェットエンジンは最大稼働!
砲撃を止めるには少しでも速く突破しないと…!
敵の目論見。
それは破滅に向かうこと。
だが、ただ破滅に向かうのならば、唯の自滅に過ぎない。
問題であるのは、それが誰かを巻き添えにしたものであるということ。そして、この戦場に渦巻く情念。
巨大な要塞『ベヘモット』から放たれ続ける対空砲火。
まるでハリネズミのように絶え間なく砲撃が続いているのだ。弾薬が尽きることを知らぬとでもいうかのような砲火の嵐。
その中を四騎のサイキックキャバリア『セラフィム』が海上を疾駆……できなかった。
「……水上機雷!」
「飛べば対空砲火、海上を進めば機雷。二段構えですか。しかもこの砲撃のコースは」
「『ビバ・テルメ』の市街地を狙っている!」
「二段構えどころじゃないです、これは……」
まるで暴威。
「そういうことですか……!」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は『ノイン』の狙いを理解する。
『プラナスリー』の戦略目標は『ビバ・テルメ』の破壊。
この場に集った猟兵は障害であって、目標ではないのだ。
故に、ソフィアはしてやられたと思ったかもしれない。『ノイン』が己たちを敵視しているのは理解していたが、それすら利用する戦略が彼女にはあったのだろう。
「イリス、『ベヒーモス』を海中に潜らせるのだわ。そのままじゃ艦砲に狙い撃ちされ続けるだけなのだわ」
メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は海中から伝わるセンサーで『ベヘモット』の内部に多くの『プラナスリー』の市民がいること知る。
何故、と思うことができたのはメルヴィナが悪意に晒されながらも、その心の真芯に他者を思う心を残している証明であろう。
元より『エルネイジェ王国』において市民とは護るべきもの。
そして戦いとは力持つ者、貴族たる者が戦闘に立つべきもの。
故にメルヴィナには理解しがたいものであったのだ、『ベヘモット』自体が国土そのものであると知ってもだ。
「メルヴィナ殿下! だめです! 今、『ベヒーモス』様が潜航したら砲撃が『ビバ・テルメ』に!」
『ベヒーモス』の中でイリス・ホワイトラトリア(白き祈りの治癒神官・f42563)は遠望システムから見える『ビバ・テルメ』の市街地と、巨大なキャバリア『ベヒーモス』が直線で結ばれていることを知る。
『ベヘモット』の砲撃に対して『ベヒーモス』は今や、『ビバ・テルメ』を護る壁となっていたのだ。
ここで潜航すれば壁を失った『ビバ・テルメ』は砲撃に晒され市街地に甚大な被害が出ることが予測できたのだ。
イリスは赤と青の装甲を持つ『セラフィム』たちをモニター越しに見る。
彼等も戦っている。
けれど、砲撃を受けながら持ちこたえることはできない。
迷いが生まれる。
否、それは迷いではなかった。決然とした思いであった。
「イリス、ダメなのだわ。海中にいれば『ベヒーモス』は耐えられるのだわ。ビームやミサイルは海中では威力を減退するのだわ。だから……」
「いいえ、申し訳ざいませんメルヴィナ殿下。砲撃を躱すだけではダメなのです。砲撃を防ぎながら前進しなきゃ……!」
「イリス!」
「『ベヒーモス』様! どうか堪えてください!」
『ベヒーモス』のハイドロジェットが巨竜の脚部を前に進ませる。
機雷の爆発に装甲が軋む。
祈るようにイリスは手を組み合わせる。
瞳にユーベルコードが輝く。
「断罪の竜帝よ、神の教えの元、悪しきを退け友を守護する盾をお授けください」
聖盾の守護(セイントプロテクション)が広がる。
巨体を覆う聖なる光の盾の如き守護結界が『ベヒーモス』に展開され、砲撃を受け止めている。
「イリス……よいでしょう。むしろ、その判断は好ましいと思う所。今再び命じます。『ビバ・テルメ』を守りなさい! メルヴィナ! ……よいですね」
ソフィアの言葉にイリスは頷く。
「仕方ないのだわ……」
ソフィアの言葉にメルヴィナは頷く。
『リヴァイアサン』を中心に帰還の渦潮(バックシュトローム)が生み出される。
海中にあって『リヴァイアサン』の性能に比肩するキャバリアなど存在し得ない。
「そうとも! メルヴィナ皇女殿下! ンアー!」
「気持ち悪いのだわ」
ルウェイン・グレーデ(自称メルヴィナの騎士・f42374)の叫びにメルヴィナは通信を再び付けたことを心底後悔した。
そう、己がユーベルコードで持って海上の機雷を集め、潮流に乗せてお繰り返した所を海面すれすれにルウェインの駆る『ヴェロキラ・イグゼクター』が飛翔して飛んでいくのだ。
「敵からすれば猟兵などに用はないということか。『ノイン』とやらめ! やる! だがな! そのような謀略術策の尽くが『リヴァイアサン』に座すメルヴィナ殿下に届かぬことを知るがいい!!」
「ルウェイン、あなたは……」
「ハッ! このようなときこそ我が剣は露払いと心得ております!」
ソフィアからの号令が走る前にルウェインは『ベヒーモス』の飛行甲板の上に降り立ち、踏みしめるようにして脚部のアイゼンクローを突き立てる。
「弾雨猛襲(バレットスコール)……! 銃身が焼ききれる程の砲火で迫るミサイルなど! デュアルガンポッドの弾幕を抜けきれるか!!」
『ヴェロキラ・イグゼクター』の放つ弾幕が『ベヒーモス』の巨体に迫る砲火の尽くを撃ち落とし、湾内の海上に爆風を吹き荒れさせる。
さらに反対側の甲板にソフィアの『インドラ』が降り立つ。
「右舷は私に任せなさい。イリスは情報の共有を!」
甲板のパネルラインが明滅し、『インドラ』に『ストライクディフェンダー』を装着する。
ストームルーラーと呼ばれた装備を、瞬間換装(クイックフォームチェンジ)し、ソフィアは迫る右舷より迫る砲火に対してVFTミサイルでもって迎撃するのだ。
だが、それ以上に『ベヘモット』の火力は凄まじいものがあった。
『ベヒーモス』が守りの巨竜であるというのならば、『ベヘモット』は火力運用に長けた存在であるように思えた。
「奇しくも黒と白……奇縁と呼ぶにはあまりにも……! ですが、撃ち漏らしはしません!」
ガトリンガンを携えた『インドラ』の砲火によって『ベヒーモス』から得た情報をもってソフィアは対空砲火を尽く無力化していくのだ。
「姉上、進路上の機雷は排除したのだわ。でも……」
「また敷設される、と?」
「そうなのだわ。あの『ベヘモット』の中には……市民が存在しているのだわ。それに、プラントも。あれ自体が『プラナスリー』の国土そのものだというのなら……」
メルヴィナのためらう言葉にソフィアは頷かなかった。
己が皇女として敵国に対して憂うことは、人として正しくとも『エルネイジェ王国』の玉座に座す者として果たして如何なるか。
決断しなければならない。
あの『ベヘモット』を放置すれば、必ずや脅威になる。
捨て置いても、破壊し尽くしても。
どちらにせよ、人々に負の遺産を残すことになるだろう。
故に、彼女はためらいを……。
「ンアー! メルヴィナ殿下! ンアー! なんと勇ましき手腕であろうか! ああ、あのあ渦潮の偉大さ、雄大さは、メルヴィナ殿下の御心の器そのもの! それでいてメルヴィナ殿下が駆る『リヴァイアサン』』の勇ましく鮮烈さは、やはり素晴らしい! まさしく怒れる海の化身! 俺は今! メルヴィナ殿下への畏怖に打ち震えている! 否! これは畏怖を越えた畏敬!! そうとも! 俺は――!!!」
ソフィアはルウェインの雄叫びがコクピットを貫通して届いていることに、己の悩みが吹き飛ばされたことに瞳を伏せて苦笑いするしかなかった。
そうとも。
悩むことは咎められることではない。
咎められるべきは足を止めること。
故にソフィアは告げるのだ。
「イリス、進みなさい。その歩みが『ビバ・テルメ』の人々を護ることになりましょう。そして……」
『ベヘモット』の眼前に浮かぶ球体の如きオブリビオンマシンを見る。
白き異形。
その姿を捉え、ソフィアはオブリビオンマシンを取り除いてから『ベヘモット』のことを考えるのだと言わんばかりに、己が矛としての役割を務めるのだった――。
大成功
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朱鷺透・小枝子
ディスポーザブル01【操縦】
【鉄壁】機雷も、砲火も、顧みず、
只管に超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』へ侵攻する。
進め、進め、進め!ディスポーザブル!!
壊す為に、戦い続ける為に、敵を、進め!!!
【継戦能力】『激禍怨霊・永戦機能』
殲術再生弾が人の想念を集めるなら、己もまたそうであれば良い。
進め!!!
殲術再生弾へ集めようとするこの世界の怨念を、憎しみを哀しみ苦しみを【永戦機能】の力で、己が【闘争心】で、【念動力】で、【呪詛】で以て霊物質として奪い、自らへと降ろし【永戦機能】を強化駆動、
他の想念も奪い、喰らい、捻じ伏せ、躯体の再生に回し、押し通る!!
進め!!!!
進め進め進め進め進め進め進め進め進め進め進め
荒ぶ砲火。
それはまるで嵐だった。
火の玉が眼前に迫る。超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』の砲撃は、正しく脅威なる火力を有し、迫る猟兵たちを阻まんとしていた。
荒れ狂う波。
その中にありて朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)の駆る『ディスポーザブル01』の単眼のアイセンサーが煌めく。
止まらない。
そう、立ち止まることを是としない。
砲火は立ち止まる理由に値しないと言うように『ディスポーザブル01』は小枝子と共に一歩を踏み出した。
「進め、進め、進め! ディスポーザブル!!」
砲撃の一撃が『ディスポーザブル01』の装甲をえぐる。さらに海上に敷設された機雷の爆発が機体を傾がせる。
だが、それでも歩を進める。
愚直さとでも言うべきだろうか。
「壊すために、戦い続ける為に、敵を、進め!!!」
小枝子は多くの事ができる者ではない。
たった一つのことを突き詰めていくからこそ、他の追随を許さぬ者。故に、彼女は戦場に渦巻く情念を見た。
恐れ。
憎悪。
多くのネガティヴとでも言うべき感情が迸るようにして戦場に渦巻いているのだ。
それを集約するのが『ベヘモット』の眼前に浮かぶ白い球体の如きオブリビオンマシンであった。
「あれかッ!!!」
小枝子は睨めつける。
あれこそが、この争いの元凶にして破滅の終点。
『殲術再生弾』が人の想念を集めるのなら、己もまたそうであればいい。
そう、進むことだけが己に許されたこと。
「憎しみ、悲しみ、苦しみ」
小枝子はそうした戦場の情念を闘争心でもって手繰り寄せる。否、巻き取るようにして引き派がいていく。
呪詛で霊物質として奪い続ける。
己の肉体は器。
壊れた器であっても、壊れたがゆえにこれ以上壊れることのない不壊なる器である。
底が抜けているのだ。
故に小枝子は踏み出し続け、己が闘争心でもって他の想念を尽くねじ伏せていくのだ。
砲火も、機雷も、全てが『ディスポーザブル01』を傷つけるだろう。
だが、それらを霊物質に変換した想念でもって贖っていく。
「押し通る!! 進め!!!! 進め進め進め進め進め進め進め進め進め!!!」
「なんておぞましい」
『ベヘモット』の中で『ノイン』は小枝子の姿を認めて、吐き捨てた。その独白は小枝子に伝わることはなかったかもしれない。
けれど、それでも彼女はためらわない。
他者の思惑など関係ない。ただひたすらに、歩を進める愚直さこそが己の最大の武器であると示すように。
ただ進む。
ただそれだけだ。
前に進むことでしか未来にたどり着けないというのならば、己にできることはやはりそれだけなのだというように小枝子は絶え間ない砲火の中をためらうことなく、白いオブリビオンマシン目掛けて突き進むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ヴィンデ・ノインテザルグ
Fireflyに搭乗し前線へ。
―…ギャラガー財団所属、ヴィンデ・ノインテザルグ。現着した。
今は亡き祖国を見ているようで虚しさが込み上げる。
こうして己が鎮圧する側に回ろうとは、何という皮肉だろうか。
至極冷静にベヘモットを見据え
|Firefly《己》の心眼から十字を放とう。
使用時間は…140秒在れば十分か。
戦場内の全ての機雷、及び砲撃を無力化したまま
Evangeliumを巧みに操作し、海上ギリギリを高速移動。
目的地に到達する寸前に
足元にあった機雷を、ベヘモットに向けて蹴り上げたい。
この機雷の撒き方は素人にも劣っている。
寧ろ己の妨げになるだろう。
…自棄になって精細を欠いたか。余り私を失望させるなよ。
海上を征くは高速機動特化型キャバリア『Firefly』であった。
そのコクピットの中でヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)は砲火の凄まじさに眩しさを感じることはなかった。
目の前にそびえるようにして存在しているのは、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』である。
黒き巨竜は、小国家『プラナスリー』の要塞でありながら、本拠地であり本土であり、国土であった。
内部には多くの市民たちが存在している。
彼等はオブリビオンマシンの狂気に思想を狂わされているが、しかし、迫る猟兵たちの攻勢に恐怖を抱いていた。
人であるがゆえに浮かぶ当然の感情。
狂気に支配されながらも浮かぶ感情は想念となって戦場に渦巻いている。
「『Firefly』より前線へ。 ――……ギャラガー財団所属、ヴィンデ・ノインテザルグ。現着した」
「状況の情報共有は!」
赤と青の装甲を持つサイキックキャバリア『セラフィム』のマーカーがモニターに浮かぶ。
所属は小国家『ビバ・テルメ』。
『神機の申し子』と呼ばれる者たちの駆るキャバリアだとヴィンデは理解しただろう。
「すでに済ませてある。これより戦場内の機雷と砲撃を無力化する」
ヴィンデは言葉短く『セラフィム』を駆る『神機の申し子』に告げ、通信を切る。
こみ上げてくるのは虚しさだった。
小国家『プラナスリー』の有り様は、今は亡き祖国を見ているようであったからだ。
まさか自身が鎮圧する側に回ることになるとは思ってもいなかった。
「なんという皮肉だろうか」
いや、なんという運命であろうか。
偶然とは言い難い。巡る因果というものがあるのならば、それは今まさにヴィンデの手足に絡みつくようであった。
だが、郷愁も虚しさも、既にヴィンデは振り切ると決めたのだ。
己の瞳は昼を映さない。
なれど、心の眼は十字に輝く。
ユーベルコード、Crucifixion(クルスィフィクション)。
「天にまします我等が父よ――」
瞳より放たれた十字型の光線が戦場に存在する全ての機雷と砲撃の、その機能を失わせる。
驚異的な力であった。
だが、その脅威たる力は、己が生命を危険に晒す。
「140秒……十分だ」
その言葉と共にヴィンデは『Firefly』と共に海上を一直線に飛翔する。
最短距離。
そう、彼に迫る砲火も、機雷も全てが無効化されている。回り道をする理由などどこにもない。
故にヴィンデは一気に突き進み、『ベヘモット』の眼前へと躍り出る。
そして、見上げ、知るだろう。
「あれか……」
白い球体の如き異形のオブリビオンマシン。
それが『ベヘモット』の眼前で浮かび、周囲の情念を巻き上げ続けている。
あれが終点。
破滅に至る点だとヴィンデは知るだろう。
無効化した機雷を蹴り上げる。情念渦巻く白いオブリビオンマシンは身動き一つせず、それを弾き返したのだ。
「なるほどな。この機雷の巻き方は素人にも劣っていると思ったが、故意か。自棄になって精彩を欠いたかと思ったが……私は失望せずに済んだ、ということか」
ヴィンデは理解する。
あの白きオブリビオンマシンこそが、この状況を歓迎しているのだと。
膨れ上がった戦場の情念。
それこそがあのオブリビオンマシンのもたらす破滅の終極――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…面倒な真似してくれてるじゃねーか
びびらせても力を増すなら…
「隠密でいく?」
それもやるがもうひと手間かけるとしようか?
【情報収集・戦闘知識・視力】
敵の機雷と砲撃の動きから回避して突破する方向を把握
そして
【属性攻撃・迷彩・念動力】
光水属性を機体に付与
光学迷彩で存在を隠し水の障壁と念動障壁で熱源や音諸々を隠蔽
「今回は気合いいれてるね?」
まーな
僕らは攻撃はしない
そいつはアイツらに任せるぞ
UC発動
無数の空飛ぶスライム発生
そのまま突撃
敵の砲撃を無数に受けて爆発したり機雷を取り込んで派手に爆発したりして玉砕していく
敵の弾薬や機雷を存分に消費させる
迎撃できてると安心しちゃうよなぁ?
消えたまま接近
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』の眼前に浮かぶ白いオブリビオンマシン。
その周囲に渦巻くのは戦場の情念であった。
恐怖。
憎悪。
悲哀。
そうしたネガティヴな感情が、あの白いオブリビオンマシンの周囲に渦巻いているのだ。何故か、など言うまでもない。
「やれやれ……面倒な真似してくれるじゃねーか」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は敵の狙いに嘆息する。
そう、敵の狙いは確かに最終戦争である。
そして、猟兵を障害としてしか見ていない。それはわかる。
国土たる『ベヘモット』を持ち出すことの意味も理解できる。
だからこそ、勝利を得ようとしていないことこそが問題なのだ。
「破滅に至る力か。しかも、僕らの存在が敵に利する所になるってーのはな。ビビらせても力を増すってことだろ?」
『派手にやれないってことだよねー。隠密でいく?』
『メルシー』の言葉にカシムは頷く。
「それもやるが、もうひと手間かけるとしようか?」
『メルクリウス』を駆るカシムは、海上に敷設された機雷を見やる。
猟兵の多くがこれを無力化しているが、次から次に『ベヘモット』から機雷が排出され続けているのだ。
厄介極まりない。
だが、カシムにとっては無意味だった。
「突破すること自体は難しくはねーんだよ」
『今回は気合を入れてるね?』
「まーな。万物の根源よ…帝竜眼よ…世界を作り命を作り世界を愛した竜の力を此処に示せ…!」
帝竜眼「ガルシェン」(セカイノテキニナッテナオセカイヲアイシタモノ)によって召喚された巨大スライムが海上の機雷へと飛び込む。
取り込むようにしてスライムの内部に機雷が入り込む。
瞬間、爆散するスライム。
だが、それらは圧倒的な数でもってカシムの周囲の機雷を誘爆捺せ続けるのだ。
進路はクリア。
なら、後は進むだけである。
「僕らが攻撃する必要はねー。ただ、機雷が爆発しただけ。それは『ベヘモット』側から見れば、敵が玉砕したように見えるだろ。なら……」
敵の戦意は高揚するはずだ。
そこにネガティヴな感情は無縁であるはずだ。
敵の狙いがネガティヴな想念であるというのならば、少しでもこれで減ずることになるはずだ。
「迎撃できてると安心しちゃうよなぁ?」
わかるよ、とカシムは頷く。
これだけ派手に機雷が爆発しているのだ。
『ベヘモット』の中にいる者たちは胸をなでおろしていることだろう。
これまで派手に無力化され続けてきたのだ。
だからこそ、その落差は大きい。カシムは、そうした想念を削ることで、あの白いオブリビオンマシンの目論見を打破せんと姿を消したまま海上を進み、接近を試みるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ワルルーナ・ティアーメル
くっくっく、ふはははは!我参じょ……え?出遅れた?
……と、とにかく!あの要塞へ進軍でよいのだな!?
この世界の、機械人形相手を想定した機雷とか砲弾と言うならそれなりに大きい筈であるな?
くく、機雷ごときで我を止められると思うなー!【ワルルーナ黄金ブレス】!
機雷にも砲弾にもブレスを浴びせて黄金のワルルーナ像へと変えてしまうぞ!まあ海に沈んじゃうだろうから迷彩や遮蔽の役に立つかは微妙であるが……。くくくこわかろう!逃げたって良いのだぞー?丁度機雷も減っておるのだしな!
我の少し遅れてついてこさせたワルルンガーで時折休憩(はねやすめ)しながら、我自身飛んで前に出てガンガンブレスを浴びせて突き進んで行くぞ!
荒れ狂う波。
吹き荒れる爆風。
惨憺たる戦場にあって、高らかな笑い声が響き渡る。
「くっくっく、ふはははは! 我、参じょ……」
だが、その笑い声は途切れてしまった。
そう、ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は遅れてやってきた百胎堕天竜魔王であった。
すでに赤いオブリビオンマシン『クレイシザー』は排除されてしまっている。
残るは超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』が敷設した機雷原と弾幕凄まじき対空砲火なのだ。
そう、端的に言えば、出遅れたのである!
「……と、とにかく! あの要塞へ進軍すればよかろうなのだな!?」
ワルルーナは気を取り直して咳払いして己の遅刻を誤魔化した。
咎めるものがいなかったのが幸いである。いや、魔王様を咎められる者などいようはずもないのである。
何せ、ワルルーナはワルのカリスマなのだから。
「それにしても機雷であるか。この世界の、機械人形を想定したものであれば、それなりに大きいはずであるな?」
ニヤリ、とワルルーナは海原に浮かぶ機雷を見やり笑む。
迫る砲撃に、ちょっとタンマ! と言いかけた所は編集でカットしてあるのであしからず。
とりあえず、気を取り直して。
「くく、機雷如きで我を止められると思うなー! 受けよ、これこそが、我が第五の冠の秘めし『強欲』の力の籠もったブレス攻撃であーる!!」
ワルルーナ黄金ブレス(ゴールデンブレス)が吹き荒れ、金色の吐息は触れたものを黄金製ワルルーナ像へと変質させた。
なんで?
いや、よしんば黄金に変質させるのは、『強欲』たる所以であろう。
しかしなんでワルルーナ像?
「そりゃもう、我の偉業を讃えるために決まっとろーが! まあ、海に浮かんでいた機雷であるから、黄金像に代わった瞬間に沈んでしまうがな」
遮蔽物や迷彩に利用することは敵わない。
飛んでくる砲撃の砲弾さえもワルルーナは異次元の如き力でもって黄金へと変質させるのだ。
まるで攻撃がワルルーナに届かない。
さらに、その背後から『機動魔王城ワルルンガーΣ』が、海原を踏み越えてついてきているのだ。
「よいしょっと、ちょいと休憩をば」
ワルルーナは地力で飛んでいた羽根を休めるために『ワルルンガーΣ』の肩に座って息を整える。まあ、ブレスを吹きっぱなしで肺活量もキツイからね。しかたないね。
「くくく、全てが黄金の変えれるのは怖かろう! 逃げたって良いのだぞー?」
ぜえへえ、言いながら告げるものだから、なんだか緊張感がない。
だが、事実敵の攻撃は尽くがワルルーナのブレスによって無力化している。
それどころか、小国家『ビバ・テルメ』の湾内に金塊として落ちまくっているのである。後からトレジャーハンティングが捗りそうである。
「さて、後もう少しといったところか! さあ、ガンガンブレスを浴びせてやる! ゆけ、『ワルルンガーΣ』よ! 全速前進である!!」
その言葉に応えるようにして『ワルルンガーΣ』が歩を進める。
迫る砲火も、機雷もワルルーナが吹き付けるブレスでもって無力化され続けている。
ちょっと肺活量しんどいなと思いながらもワルルーナは『ベヘモット』の対空砲火の殆どを惹きつけ続けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
『ベヘモット』に乗る人々も怯えている
それが解っていても、私は進まなくてはいけない
結界術で足場を作り、早業のダッシュとジャンプで接近
砲撃と水上機雷の隙間を擦り抜けるには
傷つくことを恐れず、踏み込まなくてはいけない
それぐらいできなくては、辿り着けない
もっと疾く――もっと、もっと
願うに連れ、風が赤く染っていく
真紅の疾風を纏って加速
砲火を切り裂くように駆け抜けるわ
薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は知る。
この戦場に渦巻く想念の意味を。
恐怖、憎悪、悲哀。
全てがネガティヴなものであった。渦巻く情念は、戦場に満ちるばかりであった。
そして、同時に怯えを感じ取る。
「『ベヘモット』……あれが『プラナスリー』の拠点にして国土……」
海洋小国家とも言うべき『プラナスリー』の特性上、『ベヘモット』こそが彼等の生きる場所なのだ。
故に、戦いの場に来る、ということは彼等に累が及ぶということでもあるのだ。
「怯えている……」
それでも静漓は前に進まねばならないと思った。
己の進撃が人々を怯えさせる。それは本来望むものではなかった。
けれど。
借り受けた量産型キャバリアを結界術で生み出した足場に立たせ、海上を走る。
海上に敷設された機雷を躱すには、こうするしかない。
そして、同時に『ベヘモット』から放たれる砲火が荒ぶ。海上の機雷は躱せても、放たれる砲火の凄まじさはいかんともしがたいものがあった。
「傷つくことを恐れず、踏み込まなくてはいけない」
彼女は知ったのだ。
戦いに赴くということがどういうことなのか。
いや、戦いだけではない。
戦いではない場にあっても、そうなのだ。踏み出せば傷つくことがわかっていても、それでも傷をいとわず踏み出す者がいることを知った。
いつかの彼女たちがそうであったように、己もそうあるべきだと思ったのだ。
「それぐらいできなくては、たどり着けない」
真紅の疾風が量産型キャバラリアを包み込む。
静漓の瞳が紅く輝いている。
望む。
そう、彼女は望んでいる。いつかの誰かがそうであったように。
もっと疾く――もっと、もっと。
願う力は戦場に渦巻く想念に比肩するものだった。纏う風は更に赤さを増していく。
真紅の疾風は砲撃を受け流しながら、しかし、爆風に煽られる。
量産型キャバリアの装甲が引き剥がされる。
けれど、静漓はためらわなかった。
「もっと、もっと――あの子はもっと疾かった」
『閃光』のように、『迅雷』のように、そして、『轟響』ように音速を超えたことを証明するように空気の壁をぶち抜きながら、『幻影』すら生み出すように静漓は戦場を駆け抜けていく。
砲火を切り裂く赤い矢。
それが今の静漓だった。
「『ノイン』、あなたが何を思い、何をしようとしているのかはわからないけれど。それでも止めて見せるわ。誰かを傷つけるより疾く」
己が駆けつける。
剥離した装甲の下のフレームを露出させながら量産型キャバリアは静漓を『ベヘモット』の眼前、そして、空に浮かぶ白き球体の如き異形のオブリビオンマシンの元へと届けるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
こうなりますとわたしも勇者として|真面目《シリアス》になるしかありませんね!
(練乳チューブちぅちぅ)
えっ、見た目?
だいじょぶです。コックピットの中ですから見えてないはずです!
さ、いきますよステラさん。
機雷には似たようなのをぶつけるのが得策!
(チューブ投げ捨てクラリネットに交換)
【魔弾の射手】で、音符爆弾ばらまきますね。
そしてバッドステータスは!
『爆発音の響く範囲内の敵に爆発の追加ダメージ』です!
これで見えてる範囲内くらいの機雷は全部いけるはずです!
どーですどーです! とっても勇者してると思いませんか♪
えっへん!(どやぁ
はいいんですけど、ステラさんの敵の意味ちょっと違ってません……?
ステラ・タタリクス
【ステルク】
出てきましたかノイン様!
|厄介極まりない敵《強火すぎるエイル様ファン》を倒すお時間ですね
ノイン様がいつも海から来るのはこういう理由でしたか
元はセラフィム・シックスを探す為だったかもしれませんが
まぁそれも聞けばわかること
ルクス様……が自分からシリアスしてる!?
え?大丈夫生きています?
機雷の方はお任せして
私とフォルは砲撃の対処を
加速しつつ
フォル!【スクファム・ヴー・デューレヴ】!
サイキックエナジー光弾で砲撃の相殺します
しかし最近のノイン様の行動
筋が通らないものが多い
恐怖を生贄にして何かを呼び出す……?
UDCでの|邪神《ノイン様》はまさにそれでしたが
いずれにせよ、放置する訳にはいきません
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』に座す『ノイン』は状況の推移を見守っていた。
見守っていた、というのは語弊があるのではないかと思うかもしれない。
けれど、事実である。
彼女は事態を覆すでもなく、ただ見守っていた。
戦場に渦巻く情念。
悲哀、憎悪、恐怖。
そうした情念が『ベヘモット』の眼前に浮かぶ球体の如き白いオブリビオンマシンに渦巻いている様子を見守っていた。
「……条件はクリアーされる。目指すは破滅の終点。されど、私は知っている。猟兵は必ず世界の破滅に際して現れる。避けようのない現実。ならば、その出現事態を逆手に私は取る。世界を救う戦士が、人の心まで救うわけではないということを私は知っている」
だからこそ、彼女は渦巻く情念の色を見やり、『ベヘモット』の背面に装備された二重らせん構造の鉄塔の如き砲身『天空の螺旋階段』を傾けさせた。
そのさまを見やり、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は叫ぶ。
「出てきましたか『ノイン』様! |厄介極まりない敵《強火過ぎる『エイル』様ファン》を倒すお時間です」
そしてステラは思う。
『ノイン』たち『プラナスリー』がどうして今まで他国への干渉をなす時、海洋から来たのかを。
そう、『ベヘモット』が『プラナスリー』の国土であるからだ。
元は巨神『セラフィム・シックス』を探すためだったのかもしれないが、おそらく、こちらが本命の理由であることは明白だった。
「こうなりますと、わたしも勇者として|真面目《シリアス》になるしかありませんね!」
そんなステラのキャバリア『フォルティス・フォルトゥーナ』とドッギングした『ソナーレ』のコクピットの中でルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は練乳チューブをちゅうちゅうしていた。
「ルクス様、ご自分からシリアスに立ち向かう姿は感涙ものですが……」
「えっ?」
「その、見た目が」
随分とシュールであるとステラは言う。尤もである。
「だいじょうぶです。コクピットの中ですから見えてないはずです!」
そういう問題かな、と思わないでもなかった。
「さ、いきますよ、ステラさん」
練乳チューブを空い尽くして、ルクスはコクピットに投げ捨ててクラリネットを構えた。
「え、あ、はい。では機雷をお任せしても」
「おまかせされました! 機雷って、所謂、爆弾ですよね!なら、『魔弾の射手』序曲(マダンノシャシュ・ジョキョク)の音符爆弾でぶつけて爆発させちゃいますね!」
「では、私とフォルは砲撃の対処を。加速いたします」
「はぁい! では、いきますね!」
ルクスの言葉に合わせるようにして『フォルティス・フォルトゥーナ』が飛翔する。
砲火の嵐をかいくぐるような機動はハッキリ言ってジェットコースターなんて目じゃないくらいの加速であり、また急旋回、急制動は内部にあるルクスの内蔵を揺らしまくっていた。
だがしかし、勇者を侮ることなかれ。
彼女は演奏に集中することによって、肉体的な干渉をはねのけているのである! たぶん!
「見えてる範囲の機雷は片付けましたよ、ステラさん! どーですどーです! とっても勇者していると思いませんか♪ えっへん!」
どやぁ!
ルクスの顔がモニターに浮かぶ。
「はい、では、これよりもっと加速いたしますね」
「えっ」
「フォル! スクファム・ヴー・デューレヴ、スタンバイ!」
羽ばたく翼から放たれる無数の漆黒のサイキックエナジーの光弾。
その乱舞によって『フォルティス・フォルトゥーナ』の機動は一層目まぐるしいものとなるだろう。
凄まじいまでの加速度Gがルクスに掛かる。
「ちょっとやりすぎでは!?」
「いいえ。最近の『ノイン』様ほどではございません。彼女の目論見がなんであれ、放置するわけには参りません! 私の敵ですので!」
「えっと、ステラさん、敵の意味、ちょっと違ってません?」
同担拒否的な意味で。
そんな言葉をルクスはこみ上げるものと共に飲み込みながら、『フォルティス・フォルトゥーナ』と共に砲火を躱し、『ベヘモット』の眼前へと迫るのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
月夜・玲
機雷は嫌いや!
…よし、ノルマ達成
後処理の面倒なものを…!
まあ別に、今処理しなくてもなんとかなるか
いや機雷だけなら兎も角砲撃もとなると、ちょっと手間と工数と予算の都合がですね
と言う訳で、華麗にスルーしていこー
【Ex.Code:A.P.D】起動
転身、プラズマドラグーン!
物理攻撃無効!
砲撃も機雷も無効無効!
海や海に浮かぶ機雷を通電物質内移動で経路にしてベヘモットへ近付いていこっと
ついでに通った機雷を雷鳴電撃で起爆させながら移動しよう
うーん、一石二鳥
SDGsに優しい猟兵です
よく知らんけど
ふふふ、想定通りみたいな行動してるけど
これまで想定通りに行ったことがあったかな!
余裕ぶってると痛い目合うぜ合わすぜ
「機雷は嫌いや!」
それは突然飛び出したギャグであったかもしれない。
あまりにも唐突であったし、戦場は砲火と爆炎荒ぶがゆえに聞き流されてしまうものであったかもしれない
「……よし、ノルマ達成!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、うん、と深く頷いた。
機雷源を前にしては、やらねばならないノルマみたいなものがあるのかもしれない。
が、しかし。
すでに先んじた猟兵の一人がノルマを達成していた。
彼女はノルマとか考えてないあれであったが。
「機雷は後処理めんどいから、嫌われるのは当然っていえば登園だけどね……まあ、別に」
今処理しなくてもいいかな、と玲は周囲の猟兵たちの攻勢を見て思った。
もしかして、自分の出番なくない?
主に機雷処理に関しては、であるけれど。
「機雷だけならまあ、なんとでもなるんだけど……大盤振る舞いし過ぎじゃない? ちょっと手間と工数と予算の都合がですね」
玲は超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』の凄まじい砲火に辟易するようであった。
これを機雷原と合わせて処理するのは骨が折れそうだった。
「ま、いいや。華麗にスルーしていこーEx.Code:A.P.D(エクストラコード・アヴァタールプラズマドラグーン)、起動。雷龍解放、転身」
ユーベルコードに輝く玲の瞳。
迸るは雷撃。
彼女の身が稲妻の龍と融合した姿へと代わっていく。
「プラズ・ドラグーン!」
一気に加速する。
目の前には機雷原。
だが、玲は構わなかった。
今の彼女は物理攻撃無効の特性を持つ。故に機雷がどれだけ目の前を塞ぐのだとしても構わなかった。
「さらに、それだけじゃあないんだな! これが!」
そう、稲妻の龍と融合を果たした彼女は通電物質内の移動すら可能としているのだ。
機雷は当然、通電する。
そのさなかを縫うようにして砲撃を躱しながら、機雷から機雷を繋ぐようにして玲は突き進むのだ。
さらに通電したことによって、機雷は起爆し爆発を巻き起こしていく。
処理が面倒なのは、起爆しないでいつまでも海に機雷が存在しているからである。
だが、全て爆発させてしまえば?
「簡単だよね! うーん、一石二鳥。SDGsに優しい猟兵です。よく知らんけど」
爆発を背に玲は全身から雷撃をほとばしらせながら、己が模造神器の切っ先を『ベヘモット』に座すであろう『ノイン』へと突きつける。
「ふふふ、想定通りみたいな行動しているけど、これまで想定通りにいったことがあるかな!」
「……模造神器。頂きに至る可能性を持つ者。天頂から見れば、さぞや滑稽に映るでしょうね。ですが」
『ノイン』はモニターに映る玲の姿を認めて、笑む。
「如何に天頂の力とはいえ、人の想念は星をも動かし、砕くことができることを私は知っている。ならば、知るがいいのです、頂きの探求者!」
「余裕ぶってると痛い目合うぜ合わすぜ!」
玲は不敵に笑む。
互いの間に流れるのは、敵と認識した者同士に通じるものであったかもしれない。
そんな玲の眼前に浮かぶは白いオブリビオンマシン。
球体のような異形。
翼と翼が貼り合わさって出来上がった球体の如き体躯。
そのアイセンサーが煌き、戦場の情念を纏うようにして渦巻く力を発露する。
「……オブリビオンマシン……? 今更……」
玲は理解する。
あの情念。
それこそが『殲術再生弾』に装填されるものであると――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『ネハシム・セラフ』
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POW : 天使の梯子
【自身が殲禍炎剣にアクセスできる状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
SPD : 廻転する炎の剣
【自身の翼から放たれた車輪状の炎 】が命中した対象を燃やす。放たれた【あらゆるものを焼き尽くす】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ : 聖なるかな、聖なるかな、聖なるかな
自身が【歌うような機械音を発し、翼が輝いている 】いる間、レベルm半径内の対象全てに【炎のように輝く翼】によるダメージか【機械音】による治癒を与え続ける。
イラスト:key-chang
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「天音・優歌」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
戦場は暗雲が立ち込めていた。
だが、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』に座す『ノイン』は笑む。
十分だ、と言うようであった。
「猟兵……貴方がたは確かに世界を守る戦士でしょう。ですが、世界しか守らない。嘗て『アハト・スカルモルド』は、そんな貴方たちに失望の念を抱きながら、『今』を護るために敢えて狂気に身を委ね、すがった。ですが、私は違います。感じますか、第六の猟兵。これが、貴方たちに向けられた想念であると!」
戦場に渦巻く、恐怖、悲哀、憎悪。
『ベヘモット』を何故、彼女が戦場に持ち出したのか。
それは最終的には自滅の如き破滅に向かうためのものであっただろう。
それが終極。終点。最終目標。
だが、今はその時ではない。ならば、なんとするのか。
戦場に渦巻くネガティヴな想念の全てが『ベヘモット』の背面に配された二重らせん構造の鉄塔の如き砲身『天空の螺旋階段』へと注ぎ込まれていく。
狙うは猟兵達――ではない。
その咆哮の先にあったのは、浮かぶ異形の白きオブリビオンマシン。
翼が幾重にも球体を形成するかのような姿。
そのオブリビオンマシンへと砲口が向いているのだ。
「『ベヘモット』、急速潜航形態へと移行。『天空の螺旋階段』、照準、『ネハシム・セラフ』――見なさい、第六の猟兵! これが、これこそが!|『殲術再生弾』《キリング・リヴァイヴァー》というものです!!」
瞬間、照射された砲弾が球体の如きオブリビオンマシンに打ち込まれる。
体高5m級のオブリビオンマシン。
それが目の前で翼を広げる。
だが、それ以上に猟兵たちの目を引いたのは、遠目に見ても明らかに『ネハシム・セラフ』が大きくなっているという事実であった。
翼を広げたからではない。
目の錯覚でもない。
そう、戦場に渦巻く……つまりは、『ノイン』は『プラナスリー』だけではなく『ビバ・テルメ』の人々のネガティヴな想念すらも巻き取りながら『ネハシム・セラフ』へと『殲術再生弾』を打ち込んだのだ。
それによって、『ネハシム・セラフ』は数百メートルにも及ぶ超巨大キャバリアへと変貌を遂げたのだ。
そして、『殲術再生弾』を打ち込んだ反動と急速潜航形態へと変形した『ベヘモット』が海中へと一気に沈み、戦場から離脱していく。
残されたのは数百メートルはあろうかという巨体のキャバリア『ネハシム・セラフ』のみ。
「――」
素養ある猟兵は聞くだろう。
その歌を。
天地に『生命讃歌』よ響け
いつかの誰かが問いかける。
君はまだ歌えるか、その歌を。
「――」
その歌声は『殲術再生弾』、そして、戦場の情念の全てを取り込み、『ネハシム・セラフ』に搭載された『疑似脳』を肥大化させていた。
コクピットブロックに満載された疑似脳のナンバリングは『Ⅲ』
もはや、それは想像もできぬおぞましき怪物へと成り果てている。
人ですらないのかもしれない。
人ではないのならば、何なのか。
すなわち『怪物』である。
その脅威が、炎の破滅を齎さんと翼を羽ばたかせた――。
村崎・ゆかり
『ベヘモット』は逃げたか。『プラナスリー』はまだ暗躍を続けるつもりね。
まあいいわ。まずはこれから。
帝竜並みね、このサイズ。
だけど、対処してやろうじゃないの。
「全力魔法」炎の「属性攻撃」「範囲攻撃」「法力攻撃」で火伏せの法。
あなたが生み出す炎も熱も、一切を打ち消してあげる。
さて、ここは数で行くべきね。
「式神使い」で幽世千代紙から作り出した禽獣の折紙を式神の群れに変え、敵機に群がらせて弱い部分を集中的に攻撃させる。視覚素子とかあれば狙いどころね。あたしへの攻撃があれば、後退しつつ『鎧装豪腕』の「怪力」で「盾受け」しつつ。
火力があればいいってものじゃないのよ。相手に合わせた戦い方が猟兵の真骨頂。
数百メートルにも及ぶ巨体。
それはクロムキャバリアという世界においては、あまりにも異形なる存在であった。
『ネハシム・セラフ』。
まるで翼を広げた車輪の如き姿。
翼は光を放ち、まるで歌のような音が周囲に響いている。
暗雲より差し込める光は、天使の梯子のように『ネハシム・セラフ』に差し込み、その白亜たる機体の色を一層輝かせるものであった。
「――」
その内部――コクピットブロックに存在しているのは、疑似脳である。
人の脳を象ったものであるが、しかし、その巨大さはもはや人のそれではない。言い換えるのならば『怪物』そのものであった。
「『ベヘモット』は逃げたか」
村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は小国家『プラナスリー』がまだ暗躍を続けるつもりなのかどうかは定かではないが、『ノイン』の手駒として扱われるであろうことは、予想に難くなかった。
「まあいいわ。まずはこれから」
彼女が見据えるのは『ネハシム・セラフ』。
通常のキャバリアではあり得ないほどの巨体。
吹き荒れる炎は、ゆかりに迫り、逃げ場をなくすように取り囲んでいく。
どう考えても人間サイズに向けた攻撃ではない。
「帝竜並ね、このサイズ。だけど対処してやろじゃないの」
ゆかりの手にした符がユーベルコードに輝く。
火産霊命の火伏の符によって齎されるのは、火伏せの法(ヒフセノホウ)。
放たれた符が『ネハシム・セラフ』の機体に張り付く。
あまりに巨体であるがゆえに狙う必要がなかった。
しかし、彼女の符は、炎を操る『ネハシム・セラフ』にとっては相性が最悪出会ったとも言えるだろう。
「あなたが海m出す炎も熱も、一切打ち消してあげる」
彼女の放った符は、符が命中した全域の火気を一切存在不可能にする。
そう、外しても外れても彼女が符をばらまくだけで『ネハシム・セラフ』は炎の翼に寄る攻撃を行えない。
「――」
それを理解したのは『ネハシム・セラフ』は悠然と動き出す。
ゆかりは式神使いである力を使い、猛禽の折り紙を式神へと変貌させ、『ネハシム・セラフ』へと群がらせる。
覆うにはあまりにも巨体過ぎるし、此方の攻撃はまるで蚊に刺されたもののようであったことだろう。
だが、炎は封じている。
「これがどれだけ持ちこたえられるかってことだけど……攻撃の手段の一つを潰せたのだから、むしろ安いものよね」
ゆかりは『ネハシム・セラフ』の巨体を見上げる。
そこには未だ健在たる怪物がいた。
翼を広げた姿は、正しく神話に語られるところの天使の階級を示すように盛んに燃えるものであった。
しかし、今やゆかりの符の効果が及ぶうちは、その限りではない。
「火力があればいいってものじゃあないのよ。相手に合わせた戦い方が猟兵の真骨頂」
ユーベルコードとは多種多様。
千差万別でもあると言えるだろう。
故に猟兵というカテゴリーは一括りに対処できるものではない。
いかに強大な力を持ち得るのだとしても、『ネハシム・セラフ』を襲うのは、混沌の如き多様性を持つ第六の猟兵なのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
へー、随分でかくなったじゃねーですか。
でも見ての通り、ボクは小っせーんです。
てめーがキャバリアサイズのままだろーと巨大化しよーと、こっちからすりゃ大して変わんねーんですよ!
さて、コイツの武器はどうやらあの殲禍炎剣みてーですね。
速く動いたら狙われるってーんなら動かないのが良いですね。
空が飛べる世界ならこっちから攻めてやるんですが、今はチャンスを待つしかねーです。
あんまり知性的な動き方には見えねーですから、早かれ遅かれ何かに反応して動くでしょう。
瞬間思考力でそれを見逃さず、ボクの最高火力を叩き込んでやるですよ!
撃ったら暫く動けなくなっちまうですから……決めてやりますよ、これで!
風が吹いている。
それは荒れ狂うような暴風でもあったし、すべてを切り裂くような旋風でもあった。
いずれにしても、戦場に似つかわしいものだった。
争いが生み出す風とはいつだってこんなものだった。
戦うために生まれてきて、飛ぶために生まれてきた者がいる。
目的というものが人生に対する意義であったのならば、ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)は、きっとこの世界で燻り続ける者であったことだろう。
だが、それは何も彼女に限った話ではない。
誰もがそうだ。
己の人生の意義というものを全うすることのできる者が一体どれだけ存在しているだろうか。
僅か一握りの者しかいない。
故に嘆く必要はない。
……否である。ファルコ・アローは否定する。
「へー、随分でかくなったじゃねーですか。でも、見ての通り、ボクは小っせーんです」
目の前には数百メートルを超える巨体がある。
白きオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』は、『殲術再生弾』を受けて巨大化し、その力を猛威として振るう。
この世界においてファルコが十全に性能を発揮できぬ要因。
暴走衛生『殲禍炎剣』にアクセスした『ネハシム・セラフ』は、その性能を超強化し、炎の翼を広げる。
湾内であってよかった、と思えただろう。
もしも、ここが陸地であったのならば『ネハシム・セラフ』の放つ炎によって小国家は瞬く間に火の海になったであろうから。
「へんっ、てめーがキャバリアサイズだろーと巨大化しよーと、こっちからすりゃ対して変わらねーんですよ!」
放たれる炎に囲われながら、ファルコは『ネハシム・セラフ』の『化け物』の如き眼光を捉える。
今だと思った。
今しかないとも思えただろう。
あの眼光は確実に自分を捉えた。瞬間、炎が渦巻き巨腕のように己へと振り下ろされる。
瞬間的に思考したファルコは、己が瞳をユーベルコードに輝かせる。
己の拳に集約された破壊のエネルギー。
一瞬。刹那。その僅かな時にファルコは掛けたのだ。
「これがボクの最高火力ですよ!」
彼女の背に生まれつき備わっていた推進機関『パルスプラズマ・スラスター』が噴射光を解き放つ。
それは彼女の背を押すものであり、また同時に集約された拳を彼女の名が示す『矢』へと変貌せしめるものであった。
極大の威力を放つ破壊のエネルギーは、その代償に彼女のパワーを奪い尽くす。
すなわち、このたった一撃で彼女は動けなくなる。
けれど、彼女は構わなかった。
己を一射とする一撃は、必ずや道を開く。
あの脅威なる『怪物』は多くの人々の負の想念を飲み込んでいる。
確かにそれは恐るべき力だろう。
だが、人の想念が負の側面ばかりを持つものとは限らない。
人の想念は正をも併せ持つ。
故に、彼女は踏み出す。
「……フルブラスト!」
放つは、Gブラスト(ジーブラスト)。
風が彼女の背を押した。
その風はきっと戦場に渦巻いた負の想念以外のものが呼び起こしたもの。
争いは確かに憎悪も恐怖も、悲哀も呼ぶだろう。
だが、きっとそれは誰かを思えばこそだ。故に、呼び込まれる風に乗ってファルコを飛ばすのは、きっと争いに際しての負ではなく正。
誰かを思うものが、彼女の背を押す。
「どーだ! 決めてやったですよ!」
放たれた矢の如き一撃が『ネハシム・セラフ』の巨体を穿ち、ファルコは『見下ろした』――。
大成功
🔵🔵🔵
皇・銀静
(戦場に姿を現す灼滅者)
…ふん…殲術再生弾…僕らがラグナロク一人を救うことでやっと一撃用意できる代物をこうも容易く準備して使う…ふざけてやがるな
この世界じゃキャバリアとか言うのに乗るんだったか?それじゃあのセラフィムとか言うのを貸せ
……駄目…だと?
疾駆する者こっそり発動
「主ー☆グリムちゃんならもっと凄いの用意できるよ☆」(いつの間にかいる黄金の髪の少女)
またお前かこのストーカーが!
お前なんぞ当てにできるか!
まぁいい…他の代物じゃ僕の力を十全に出せるかわからないしな…(未だ少女の正体を知らない青年)
「ちぇー☆(でもセラフィムなんかに主の初めて奪われなくてよかったよ♥️)」
生身突撃
【戦闘知識】
敵機の動きと能力把握
【念動力・空中戦・オーラ防御】
覇気を纏って海上を疾走して敵機に迫り
グリムは敵機の周辺を高速で飛び回り回避に努め敵の意識を向けさせ
【リミットブレイク】
…忌々しいがグリム!お前の力を貸せ!
「勿論だよ主☆強烈なの決めちゃって☆」
UC発動
威力千倍!
槍の神発動
絶対必中付与
超絶なる拳を叩き込み
その輝きを知る者がいる。
灼滅者にとっては、大いなる戦いにおける切り札。
ダークネスに対抗するための力。
しかし、その絶大なる力は容易く得られるものではなかった。
ラグナロクと呼ばれる特殊体質者を救うことで『殲術再生弾』は一発得ることができる。そうした過程を知る者にとって、クロムキャバリア世界において戦場の情念とは言え、かき集めることで己たちの知る切り札がオブリビオン側にあるという事実は、驚愕そのものであった。
また、皇・銀静(陰月・f43999)にとっては忌々しいものであった。
「……ふざけてやがるな」
鋼鉄の巨人が戦場の主役たる世界。
小国家『ビバ・テルメ』の湾内を戦場とする最中に、彼は現れていた。
その姿を認めた『神機の申し子』たちは、生身単身で現れた彼の元に急行していた。
「此処は危険です、離れて!」
銀静は見上げる。
赤と青の装甲を持つ鋼鉄の巨人。
「たしか」
『セラフィムって言うんだよ、主ー☆』
いつのまにか傍らにあった黄金の髪を持つ少女の言葉に銀静は視線を向けたが、すぐに『セラフィム』と呼ばれる鋼鉄の巨人に視線を向ける。
「それじゃあ、その『セラフィム』とか言うのを貸せ」
「貸す……!? いえ、あの、これはそういうものでは」
「貸出出来ないのか」
「あなたがどこのどなたかもわかりませんから」
明らかに怪しんでいる、と取れる態度に銀静は鼻を鳴らす。
『主ー☆グリムちゃんならもっとすごいの用意できるよ☆』
「ストーカーのお前なんぞ当てに出来るか!」
『えー?』
二人のやり取りを見ていた『神機の申し子』たちは、この不可思議な闖入者が一体何をしたいのか測りかねていた。
猟兵であろうか。
ならば共に戦ってくれるのか。
背後には数百メートルはあろうかという巨大な白き『ネハシム・セラフ』が炎を噴出させ続けている。
「まぁいい……他の代物じゃ僕の力を十全に引き出せるかわからないしな……」
『ちぇー☆』
グリムと名乗る少女は惜しい気持ちであった。
主と呼ぶ彼が生身単身で、あの巨大な存在に立向うつもりなのだと理解したのだ。
「え、ちょ……」
「気にするな。勝手にやるだけだ。お前たちに責任などないし、追わせるつもりもない」
銀静は走る出す。
海上にあって『ネハシム・セラフ』は噴出し続ける炎でもって戦場を覆う。
湾内でなければ、市街地に凄まじまでの被害がでていたことだろう。不幸中の幸いと言えば、そうであった。
「……巨体であるからこその出力差か」
銀静の肌を焼き焦がすほどの熱量が吹き荒れている。
動かずとも『ネハシム・セラフ』は、そこに存在しているだけで滅びを呼び込む終極たり得るのだ。
猟兵の拳の一撃が矢のように放たれ巨体を穿つ。
だが、まだ足りない。
「なら、習うとするか……忌々しいが、グリム! お前の力を貸せ!」
『勿論だよ、主☆ 強烈なの決めちゃって☆』
銀静の瞳がユーベルコードに輝く。
握りしめた拳。
それは鋼鉄の如き拳であった。
みなぎる力は、その鋼鉄をさらなる純度へと導くだろう。
握りしめるたびに熱を帯びるように拳が赤熱するようだった。
「巨体であることが仇となったな。そのくだらん炎なぞ、僕を止められるものか」
放たれる拳の一撃は超絶なる一撃。
巨体である『ネハシム・セラフ』が放つ炎に焼かれながらも、鋼鉄は溶け落ちることを知らぬかのように打ち込まれる。
故に鋼鉄拳。
高められた拳の一撃は『ネハシム・セラフ』の装甲を打ち破り、海上を凄まじい衝撃でもって押し広げる。
波が荒れ狂う中、銀静は熱波すらも吹き飛ばし、突き上げた拳にユーベルコードの輝きを灯すのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ロウガ・イスルギ
連携・アドリブ歓迎
尻尾巻いて逃げた割りには随分とデカい置き土産だな!ま、デカけりゃデカい程ブッ壊し甲斐があらあな!
ここで俺が取るべき戦術は……敵射程距離外からの超火力攻撃!
装甲も、攻撃もブチ抜く程の飛切りのヤツだ!
だが今の手持ちの|武装《カード》でそれをやれるのか……?
何をブルってやがる!ココが戦場なら|傭兵《俺》が負けるわけには!逃げるわけには!いかねえんだ!
砲撃が出来ねえなら俺自身が|砲弾《タマ》になりゃいい!
クラウ・ソラスを構えゼロウインガーで吶喊
迎撃や攻撃は【残像】【早業】【カウンター】【オーラ防御】で躱す
|直撃《インパクト》直前でゼロブレイダーにモードチェンジ
|ZI《ジー》ユナイト|解放《リリース》!そしてもう一丁!
|ZI《ジー》ユナイト!モードブレイダーッ!!
クラウ・ソラスにゼロウインガーの加速吶喊及びUC超鋼砕破の威力と権能を上乗せし叩き込む
お前に|終焉《ゼロ》をくれてやる!
不敗の刃に無限の力と夢幻の翼を!|我が名《ロウガ》の元に命ずる! クラウ・ソラス|零式《ゼロ》!
二つの拳が数百メートルはあろうかという巨大なオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』を穿つ。
ユーベルコードの明滅。
交錯する二つの拳に穿たれながらも『ネハシム・セラフ』は炎を噴出させる。
炎の翼。
まるで、それは終極を示す滅び。
「尻尾巻いて逃げた割には随分とデカい置き土産だな!」
ロウガ・イスルギ(白朧牙虎・f00846)は、湾内の海上に浮かぶ炎の終極たる『ネハシム』を見上げる。
その瞳に恐れはない。
「ま、デカけりゃデカい程ブッ壊し甲斐があらあな!」
『ゼロブレイダー』を駆るロウガは、海上から『ネハシム・セラフ』の現状を見やる。
猟兵たちのユーベルコードによって穿たれた装甲。
だが、あまりに巨大すぎるがゆえに、一体どれほどのダメージを与えられたのかわからない。
それに己にあのユーベルコードのように装甲を穿つ火力があるのかという自問があった。
己に取れる戦術は敵の射程外からの高火力攻撃。
そうでなければ、噴出する炎で己は焼き殺されてしまうだろう。
「だが今の手持ちの|武装《カード》で、それをやれるのか……?」
改めて見上げる。
人は巨大なものに畏怖を覚える。
本能的なものであったし、それが獣の因子持つキマイラであるのなら尚更のことであっただろう。
ロウガは頭を振る。
「何をブルってやがる! ココが戦場なら|傭兵《俺》が負けるわけには! 逃げるわけには! いかねえんだ!」
覚悟を決める。
やるしかない。
「|ZI《ジー》ユナイト||解放《リリース》!」
『ゼロブレイダー』から『ムゲンストライカー』との融合を解除し、背に飛行ユニットとして合体した『モードウィンガー』でもって『ゼロウォリアー』が飛ぶ。
対するは同じオブリビオンマシン。
炎の翼が羽ばたくようにして『ゼロウォリアー』の装甲を焼く。
ただれた装甲。
しかし、手にした『クラウ・ソラス』と共に『ゼロウォリアー』は『ネハシム・セラフ』の巨体へと飛び込む。
「砲撃ができねえなら、俺自身が|砲弾《タマ》になりゃいい!」
加速した機体と共に炎を突き抜け、ロウガは『ネハシム・セラフ』へと肉薄する。
「そして、もういっちょ! |ZI《ジー》ユナイト! モードブレイダーッ!!」
再び融合合体したムゲンストライカーは『ゼロウォリアー』を『ゼロブレイダー』へと変貌させる。
手にした斬突モードのクラウ・ソラスを『ネハシム・セラフ』の炎を切り裂きながら装甲に突き立てる。
ユーベルコードに輝く瞳とアイセンサー。
「ブッ飛ばせ相棒! 的がデカけりゃ、外す心配なんてねえ!!」
叩き込んだ装甲に力を込める。
数百メートルを超える巨体である。
狙いは雑でいい。
当てさえするのならば、己のユーベルコードは発露する。
そう、破壊するという結果を手繰り寄せるのだ。
「お前に|終焉《ゼロ》をくれてやる!」
強固な装甲を砕く刀身。
「不敗の刃に無限の翼を! |我が名《ロウガ》の元に命ずる! 超鋼砕破(デモリションドライバー)! クラウ・ソラス|零式《ゼロ》!」
その一撃が『ネハシム・セラフ』の装甲に亀裂を走らせる。
炎が噴出する最中、ロウガは見ただろう。
『ネハシム・セラフ』が海上にありてかしぐのを。
どんな巨大な敵でも立ち向かう。それが猟兵というものだ。例え、ただ一人で敵わぬ敵であっても、紡がれていくものがある。
それを示すように『ネハシム・セラフ』の巨体には己の斬撃が刻まれているのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
防人・拓也
「随分とデカいな…。だが、対抗手段が無い訳じゃない」
そう言ってクナイで右の親指に傷をつけて血を出し、その指で左の掌に術式を描いた後、両手で術印を結び、水面に片手をつけて自身の周囲に3つの魔法陣を召喚。
「来い、アイリス、ルイーズ、マイラ!」
その魔法陣から自身が所有する巨神3機を呼び出す。なお、3機ともキャバリア形態。
「これまた随分と大きい敵ですね…マスター」
「どんな敵であろうと、我が君を阻むものは退くまで」
「マイラはあんな大きな敵と戦うのは初めて~」
アイリス達は各々反応するが、すぐに拓也の方へ向く。
「マスター、我々にご命令を」
「命令は単純。あの敵を倒せ。ただし、高速で動き回るのは控えるように。殲禍炎剣の的になる。以上」
「承知しました」
命令を受けたアイリス達は各々散開し、各々の古代武装で攻撃を始める。アイリスは大きな山を削れる威力がある光の矢を放ち、ルイーズとマイラは光弾の嵐を放つ。
自身は原初の魔眼で未来予測しながら、斥力で自身やアイリス達への攻撃を吹き飛ばして無効化する。
アドリブ・連携可。
交錯するユーベルコードの輝きがあった。
穿たれる巨躯。
数百メートルはあろうかという巨躯を持つオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』は、炎を噴出させながら翼のように羽ばたく。
その力のあり方は、地上の全てを焼き尽くすような熱量を示すものであった。
「随分とデカいな……だが、対抗手段がないわけじゃない」
防人・拓也(奇跡の復活を遂げた原初の魔眼の開眼者・f23769)は、共に戦う猟兵たちが示したユーベルコードの軌跡を見やる。
どれだけ巨大な敵でろうと。
オブリビオンという存在が猟兵の個としての力を凌駕する存在であろうと。
それでもこれまでも猟兵たちは強大なオブリビオンを打倒してきたのだ。
その事実こそが彼の背中を押す。
「来い、アイリス、ルイーズ、マイラ!」
己の親指から流れる血潮でもって、掌に術式を描く。
術印を結び、海上に触れた瞬間、魔法陣が生み出される。光り輝く魔法陣の底より現れるのは、彼の呼びかけに応えた巨神であった。
「これまた随分と大きい敵ですね……マスター」
「どんな敵であおると、我が君を阻むものは退けるまで」
「マイラはあんな大きな敵と戦うのは初めて~」
巨神たちは『ネハシム・セラフ』に渦巻く情念を見ただろう。
多くの負の想念が渦巻くことによって打ち出された『殲術再生弾』。
それは人であったものを『怪物』へと変貌させるものであった。人の意志は、人を人ならざる者へと変貌させる。
憎悪、悲哀、恐怖。
そうした感情が渦巻くことによって『ネハシム・セラフ』は、あれだけの巨体を得たのだ。
ただ巨大なだけではない。
その姿に似つかわしい出力を得ているのだ。
「マスター、我々にご命令を」
「命令は単純。あの敵を倒せ」
拓也は三騎の巨神に告げる。
ああ、と付け加えるように彼は言い含める。言うまでもないことであるが、と。
「ただし、高速で動き回るのは控えるように。『殲禍炎剣』の的になる。以上」
「承知しました」
その言葉と共に三騎は己が性能を発揮する。
巨山を穿つかのような光の矢が吹き荒れる炎を吹き飛ばし、光弾の嵐が飽和攻撃のように『ネハシム・セラフ』を押さえつける。
いずれもが装甲に弾かれていく。
それほどまでに『ネハシム・セラフ』の装甲は強固なものであった。
「あの想念……」
「あれが『殲術再生弾』の力」
「だが無限ではない。雨だれが岩を穿つように、アイリス、ルイーズ、マイラたちの攻撃で装甲を削ぎ落とす」
原初の魔眼(ゼロノメ)によって得た身体能力強化と未来予測によって拓也は迫る炎を斥力で弾き飛ばしながら、無効化する。
荒れ狂う炎が『ネハシム・セラフ』を取り巻いていく。
強烈なまでの力の奔流。
拓也は見上げるだろう。
人の想念は、形を為せば此処まで強固なものになるのかと。そして、同時に感じ取ることができるのならば、悍ましき形へと変貌するのかも知るだろう。
「俺は必ず……この力を守るべきものを守る為に使ってみせる!」
そう決めた己の想念が、二つの小国家に渦巻いた想念に負けるとは思えなかった。
負の想念の塊であるというのならば、尚更だ。
「踏みこらえろ」
あの『ネハシム・セラフ』を陸地に上げてはならない。
海上で抑え込まねば、小国家『ビバ・テルメ』の市街地が焼かれる。そうなれば、さらに負の想念が戦場に満ちて手が付けられなくなってしまう。
だからこそ、拓也の魔眼はユーベルコードに輝き、三騎の巨神と共に『ネハシム・セラフ』を海上に縫い留めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
鳥羽・弦介
おいちょと待てやカタツムリ野郎!!
芋引いてやがったなあいつ!?あー!
あー!!畜生がぁああああ!!!
回点号【操縦】『|超能力爆発《サイキックバースト》』
爆発的サイキック推進力で【推力移動】
爆速で【空中機動】車輪炎を躱しながら【早業】、
BXS-Bウィングキャノンから【念動力レーザー射撃】、
叩きつけた思念を【超能力爆発】で発破、デカ物天使を、
こいつの体を構成してる想念ごと砕き散らす!
てめぇはてめぇで!!
人間を見下してんじゃあねぇえええええ!!!
ウィングキャノンから念動力レーザーを放出し続け【限界突破】
ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!
レーザーをなぎ払い、『ネハシム・セラフ』を爆破【切断】する!
「芋引きやがって、あの野郎!!」
口汚く罵りながら、鳥羽・弦介(人間のキャバリアパイロット・f43670)は苛立ち紛れに己のサイキックを噴出させる。
機体である『回天号』より噴出したサイキックの光は、荒れ狂う炎を吹き飛ばす。
迫るは超巨大なオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』。
負の想念をもって『殲術再生弾』を受けた『怪物』は、その炎の翼を広げ、海上にて縫い留められていた。
猟兵たちのユーベルコード。
その明滅が、あの『怪物』を湾内からの移動を許さないのだ。
それは懸命な判断であったと言えるだろう。
あの巨体が放つ炎が陸地にあがれば防ぐ手立てなどない。
「あー! あー!! 畜生がぁああああ!!!」
弦介の中に激情が荒れ狂う。
目の前に迫る炎の翼以上の憤怒が渦巻いて、サイキックバーストを引き起こす。
己の念動力の限界を踏み越えた|超能力爆発《サイキックバースト》は、彼の駆る『回天』に爆発的な推力を与える。
閃光のように弦介は飛び、迫る車輪の如き炎を躱す。
かすめるだけで機体が燃えるだろう。故に弦介は激情にかられながらも、その炎の危険性を動物敵本能で悟っていた。
ウィングキャノンからの砲撃を『ネハシム・セラフ』に叩き込む。
巨体であるがゆえに狙いをつける必要はない。
爆炎はしかし、『ネハシム・セラフ』の装甲を僅かに削るばかりであった。
「硬ェッ!! けどよぉ!!」
弦介のサイキックが爆発的に膨れ上がっていく。
この戦場に渦巻くのは想念。
恐怖、悲哀、憎悪といった負の想念ばかりだ。
戦場にあっては、ありきたりな感情だ。だが、ありきたりだからといって、捨て置くことの出来ぬ感情でもあったのだ。
故に、弦介は睨めつける。
「てめぇは、てめぇで!!」
巨体がある。
『怪物』と成り果てた『ネハシム・セラフ』が己を見下ろしている。いや、見下しているとさえ弦介は思えただろう。
許せるものではなかった。
「人間を見下してんじゃあねぇえええええ!!!」
怒りだ。
怒りこそが、全てを吹き飛ばす強大な感情だ。
憎悪を凌駕し、悲哀を消し飛ばし、恐怖すらかなぐり捨てる怒り。
それによって増大した弦介のサイキックがウィングキャノンから念動力の光条となって吹き荒れるようにして『ネハシム・セラフ』の装甲を穿つ。
「――」
「訳のわからねぇ歌を歌ってんじゃあねぇえええええ!!!」
頭に響く歌。
それを振り払うようにしながら、弦介は咆哮する。
「ぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおお!!!」
明滅する視界。
限界は常に越えている。
放たれた光条の出力に任せて弦介は『ネハシム・セラフ』の装甲を溶断するように切り裂くのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ユーリー・ザルティア
【心境】
「ベヘモットは退いたか…。」
くそ、やっぱり無理してでも一発撃っとけばよかったッ
【行動】
戦場に渦巻くネガティブの想念を吸収した…か。
なら教えてあげる。戦場にはネガティブな想いだけじゃない!
明日への未来を夢見て!!大切何かを守るため戦った!
そんな勇敢な魂も眠っている!
≪レムナント・オーヴァー≫発動。
『肉体改造』で強化した体が悲鳴あげてるけど、根性で『限界突破』
『残像』を残す超機動で『瞬間思考力』による反応で『見切り』回避しつつ、ネハシム・セラフに肉薄。
デカいってことは的もデカいってことだ。(慣性で内蔵壊して吐血)
アストライアの『制圧射撃』を一点集中。強化された耐久力にも限界があるさ。
小国家『プラナスリー』の超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』は『殲術再生弾』を『ネハシム・セラフ』に照射する反動でもって海中へと逃げおおせた。
センサーが、あの巨大な要塞の反応をロストしたことを知り、ユーリー・ザルティア(自称“撃墜女王”(エース)・f29915)は歯噛みする。
「くそ、やっぱり無理してでも一発撃っとけばよかったッ」
後悔するしかない。
もしも、己の『ダークマンティス』の一撃が『ベヘモット』に直撃させることができていたのなら……。
「いや、後悔しても仕方ないッ!『ベヘモット』が引いたんなら、やることをやらないと!」
戦場は風が荒ぶ。
明滅する光は猟兵たちのユーベルコードの輝きであった。
『ネハシム・セラフ』は『殲術再生弾』の照射によって凄まじいまでの巨体へと変貌している。
数百メートルはあろうかという巨躯。
その巨躯に合わせた蚊のようなすさまじい出力を持って、炎の翼が噴出しているのだ。
恐るべき敵である。
「戦場に渦巻くネガティヴの想念を吸収した……か」
それはこの世界、クロムキャバリアに充満する想念を形にしたかのようだった。
争いばかりが起こる世界。
平和には程遠く、その言葉の意味すらも忘れ去られたかのような世界にあって、その想念は人々の心に沈泥するものであった。
故に、強大。
だが、ユーリーは知っている。
他の世界を知っているからではない。
「なら、教えてあげる。戦場にはネガティヴな想いだけじゃない! 明日への未来を夢見て! 大切な何かを護るために戦った! そんな勇敢な魂も眠っている!」
ユーリーは戦いの中に生きてきた。
確かに戦場は恐ろしい場所だった。
人の生き死にはいつだって己の傍らに転がるものであった。
綺麗事ばかりが汚れていく毎日であったことだろう。
けれど、それでも輝く者があると知った。
汚泥の中でこそ輝けるものがあるとも。
故に彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
「レムナント・オーヴァー!! それを証明するためにボクの体を貸す。だから、力を貸してくれッ!!」
その言葉と共に戦場で散っていったエースパイロットたちの魂がユーリーの肉体に入り込み、骨身が軋むように悲鳴を上げる。
だが、構わなかった。
『レスヴァントMk-2』が閃光のように戦場を駆け抜け、アサルトライフルの引き金を引く。
精密な射撃。
アサルトライフルの弾速と連写性能。
それらをかけ合わせた一点集中射撃は、『ネハシム・セラフ』の炎の翼を穿ち、銃弾が溶解しても、次なる弾丸が切り開いた弾道を寸分違わず進む。
届かなくてもいい。
次なる弾丸がそれをなす。
装甲に弾かれる。
だが、それでもさらに弾丸が集約されていく。
『レスヴァントMk-2』の凄まじ挙動と精密な射撃によってユーリーの臓腑は傷つき、眼球内部に出血が見られる。
けれど、止まらない。
止まれない。
『ネハシム・セラフ』が負の想念の塊だというのならば、己は多くのエースたちの思いを体に宿しているのだ。
「翔べッ!『レスヴァント』!!」
集約された弾丸は一点突破でもって『ネハシム・セラフ』を穿ち、ユーリーたちの一念を叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ワルルーナ・ティアーメル
……ふん、それだけではあるまい?
恐怖を祓う、己を救う、敵を滅す、人々を導く……「力ある者」への執着、依存、渇望、憧憬、嫉妬……そういったものも見えておるぞ?
さしずめ、アレはそうした者達の願望を反映した、都合の良い人造「救世主」の雛型といったところか?
だがこちらも引き下がる訳に行かぬのでな!UCを使い、オーラを纏ってワルルンガーより飛び立つぞ!
車輪状の炎には……ええととりあえず神機の申し子とやらのでいいので「食べたいもの」を読み取る事で創造した食材をぶつけて相殺するぞ!弾が足りぬなら、その炎、直接喰らってくれる!
あとは接近してのブレス、ついてこさせたワルルンガーからのパンチを叩き込んでやるぞ!
戦場に満ちるのは負の想念。
あるのは憎悪、恐怖、悲哀。戦いに際して生まれる人の情動。そうしたものが『ネハシム・セラフ』に渦巻いていた。
『殲術再生弾』は、そうした負の想念こそを糧とするように『ネハシム・セラフ』を数百メートルはあろうかという超巨大オブリビオンマシンへと変貌させていたのだ。
そんな巨躯を『ワルルンガーΣ』の肩に立ちながら、ワルルーナ・ティアーメル(百胎堕天竜魔王(自称)・f31435)は見上げる。
「憎悪、恐怖、悲哀……ふん、それだけではあるまい?」
彼女の瞳に映る想念は、単純な感情ばかりではなかった。
恐怖を払う、己を救う、敵を滅す、人々を導く……『力ある者』への執着、依存、渇望、憧憬、嫉妬……。
そうしたものがワルルーナの瞳には見えていた。
「さしずめ、アレはそうした者たちの願望を反映した、都合の良い人造『救世主』の雛形と言ったところか?」
負の想念もまた人の想念であり、願いの発露であるというのならば、行き着くところは終極である。
人は希望を抱くが、その希望が果たして己を延命させるものばかりではないこともまた知る所である。
生きるということは死に向かうこと。
終点がそれであるというのならば、その願望はどうしようもないものであったのかもしれない。
故に、ワルルーナは願望を叶え続ける魔王として、『他者の欲望を満たす』ことを己が欲望として抱える者として引き下がるわけにはいかなかった。
「……少し、本気を出すぞ。第2の将ワルレーン、第3の将ワルコーン、第6の将ワルべロス、貴様らの力、しばし我へと還すがよい」
大罪の百胎堕天竜魔王ver.1(ハイパーワルルーナソノイチ)へと変貌したワルルーナは、己の感情を強化すべく、他者の欲望を探す。
いや、いない。
そう、ここは湾内の海上。
『ネハシム・セラフ』の炎は陸地であれば、瞬く間に市街地を炎へと飲み込んだだろう。不幸中の幸いである。
だが、此処にはワルルーナの糧となる欲望の主たる人間がいない。
「ええい! 誰ぞ……って、いた!『神機の申し子』とやら!『食べ物』でいいから何かお思い浮かべるがいい!」
そう、此処にはまだ猟兵たち以外に戦う者がいた。
赤と青の装甲持つ『セラフィム』と呼ばれるサイキックキャバリアを駆る『神機の申し子』たちが。
「えっ、たべたいもの……!?」
「お、温泉まんじゅう、とか……?」
「カレーが食べたい。キャンプメシというのだろう!」
「甘いものが食べたいです」
なんだかんだ言って、生きることは食事をすることである。
この戦いの中にあっても、彼等の思考はワルルーナの言葉によって誘導される。
「よし! それでよい!」
生み出された温泉まんじゅう、はちみつカレー味を割るルーナは暴食の力でもって『ネハシム・セラフ』の炎にぶつけて相殺するのだ。
「あっ! もったいない!」
「わかるが、今はそれどころではないのだ!」
ワルルーナは更に迫る炎の車輪に食らいつく。
下半身の竜たちも同様である。
炎を無効化させながらワルルーナは『ネハシム・セラフ』へと飛び込む。
「暴食からのッ! ワルルーナブレスである!!」
噴出するブレスが『ネハシム・セラフ』の装甲に叩き込まれる。
だが、それだけでは足りない。
「ならば、征け!『ワルルンガーΣ』よ!! その巨拳でもって粉砕せよ!!」
放たれる『ワルルンガーΣ』の拳が砕ける程の衝撃が海上に吹き荒れる。
『ネハシム・セラフ』の巨体が海上に落ちる。
炎が海水を蒸発させ、もうもうと立ち込める水蒸気の中、ワルルーナは炎によって膨れた腹をなで、ブレスの噴出させ『ネハシム・セラフ』を抑え込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルクス・アルブス
【ステルク】
はわわわわー。
ステラさんが怒ってます!
なんか怒りのベクトルが違う気もしますけど、すっごく怒ってます!?
とはいえ、わたしもちょっと怒ってますよ!
『ノイン』さんの今回のやり方は、良くないのです!
あれでは『生命賛歌』を歌う意味はないと思うのです。
あの歌は、みんなのために歌うものだと思うのですよ。
って……演奏、いいんですか!
いんですかいいんですね!
そ・れ・な・ら・ば!
ステラさんの歌とわたしの演奏に敵う歌なんてありません。
全力の【ラデツキー行進曲】で、悪意を浄化してあげちゃいましょう!
まずはこのセラフィム。
そして次は『ノイン』さん、あなたの心を溶かす演奏を、
ぶちこんでさしあげますからね!
ステラ・タタリクス
【ステルク】
|ノイン様めぇぇぇ!!!《あの女ァァァァァァ!!》
セラフィム・シックスを入手し損なってからなりふり構わなさすぎじゃないですか!?
それにしても疑似脳のⅢ……ドライ様?
ならばその機体は貴方様の熾煌ですか?
悲しみを振り払うその戦い方を
このような形で悪用されるなんて
生命賛歌……生きている者を讃えあげる歌
ならば|Ⅲ様《オブリビオン》の元にいても生命賛歌は為されるのでしょう
その根底に|悪意《ノイン様》がいなければ
争わずに済む道もあったはずのに
ここはルクス様の独壇場
演奏GO!
私も天使の声で応戦しましょう!
フォル、いきますよ!
【ヴォワ・アンジェリク】を叩きつけて
敵機の動きを止めます
ルクス様、今!
「あの女ァァァァァァァ!!」
「はわわわわー」
ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)の激烈なる感情の発露を示すような叫びに、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)はビビりちらしていた。
ステラが怒っている。
激怒している。
げきおこむかちゃっかなんちゃらである。
「『セラフィム・シックス』を入手しそこなってから、なりふり構わなさすぎじゃないですか!?」
「す、ステラさん、なんか怒りのベクトルが違う気がしますけれど、すっごく怒ってます!?」
「怒っておりますけれど何か!」
「はわわ。でも、わたしもちょっと怒っていますよ!『ノイン』さんの今回のやり方、よくないのです!」
ルクスはルクスで思うところがあるのだろう。
人の感情を煽って、負の想念を得る。
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』を戦場に持ち込んできたのは、戦場の空気に『プラナスリー』の人々を当てさせる目的もあったのだ。
そうやって、得た負の想念でもって『ネハシム・セラフ』は数百メートルはあろうかという巨体へと変貌を遂げている。
恐るべきことです。
「あれでは『生命賛歌』を歌う意味はないと思うのです。あの歌は、だって、みんなのために歌うものだと思うのですよ」
「それに、『疑似脳』……ナンバリングは『Ⅲ』……『ドライ』様?」
ステラは『ネハシム・セラフ』を見やる。
あのオブリビオンマシンが如何なる変遷をたどって此処にそんざいしているのかはわからない。けれど、悪用さえるわけにはいかない。
「悪意の根底……『ノイン』様が如何なることを企てていようとも! ルクス様!」
「は、はい!」
ステラのただならぬ様子にルクスは背筋を伸ばす。
『ソナーレ』のコクピットの中であるが、ステラの言葉は彼女に強く響いた。
強烈な意志を感じさせる言葉であった。
「演奏Go!」
「えっ、演奏いいんですか!?」
「ええ、ここはルクス様の独壇場でございます」
歌うような機械音が響き渡り、『ネハシム・セラフ』は、その機体に刻まれた無数のユーベルコードの傷跡を修復し始めている。
出力が違いすぎるのだ。
巨体へと変貌したのは、他者を圧倒するためだけではない。
機体事態の出力をも増大させているのだ。
故に吹き荒れる炎の翼と、歌による修復は『ネハシム・セラフ』を世界の破滅たる終点たらしめる力を示すものであった。
「いいんですか、いいんですね!」
「構いません。出し惜しみして良い相手ではございませんので!」
「そ・れ・な・ら・ば! ラデツキー行進曲(ラデツキーコウシンキョク)です! この巨躯で『ネハシム・セラフ』、そして次は『ノイン』さんの心を溶かす演奏をしてみせます! ぶち込んでみせますからね!」
響き渡るバイオリンの演奏。
そして、グランドピアノ、ユーフォニアム。
『ソナーレ』の中での演奏は、機体にユーベルコードの輝きとなって充填されていく。そして、ドッキングしていた『フォルティス・フォルトゥーナ』の嘴が開かれ、衝撃波が滅ば知る。
ユーベルコードに到達した歌声のような衝撃波は、『ネハシム・セラフ』の動きを止める。
海上から移動などさせない。
陸地に上がれば、あの炎で『ビバ・テルメ』の市街地が犠牲になる。
「ヴォワ・アンジェリク! もうどこにもあなたはいかせはしません。『怪物』と成り果ててしまったあなたは!」
ここで、止める。
ステラの叫びと共にルクスの『ソナーレ』がユーベルコードの力を集約させた拳を海上にある『ネハシム・セラフ』を海中へと沈めるように叩き込み、凄まじい衝撃と共に水柱を立ち上がらせるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヴィンデ・ノインテザルグ
口と逃げ足は達者なようだな。
次は自機で来い、国民は貴様の資源ではない。
…我が祖国と同じ轍を踏むな。
虚しさに浸る間はない。
即座にUCを起動し、首裏にケーブルを挿入。
前程通信したセラフィムの搭乗者に、コクピットを強襲する旨を伝えたい。
私が速さを以て囮となる。
流れ弾が本土に被弾せぬよう、貴官には迎撃相殺を頼みたい。
Luciferaseを高速で敵アイセンサー周辺に射出。
注意が逸れた隙にAsmodeusをコクピット付近へ撃ち込んで杭代わりとし
しがみついたままBeelzebulを用い、装甲破壊を試みる。
操縦者たる脳が現れたら、オープン回線で皆に好機を伝えたい。
私自身も、翼と蹴撃によって脳に猛攻を続けよう。
虚しさが胸にこみ上げる。
これでは己が祖国と同じだ。
人を資源としかみなしていない。あの小国家『プラナスリー』を実質的に支配しているであろう『ノイン』と呼ばれる存在は、人を己が道具としてしか見ていなかった。
おそらく彼女は、『プラナスリー』の人々が戦闘でどれだけ死ぬのだとしても構わないと思っているのだろう。
そのような思惑が透けて見える戦いだった。
戦場に満ちる負の想念。
それを高めるためだけに国土たる超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』を動かしたのだ。
「口と逃げ足だけは達者なようだな」
ヴィンデ・ノインテザルグ(Glühwurm・f41646)は、急速に離脱していく『ベヘモット』に届いているかわからないが、オープン回線で言葉を投げかけた。
「次は自機で来い。国民は貴様の資源ではない……我が祖国と同じ轍を踏むな」
その言葉は忠告だった。
けれど、同時に願いでもあった。
あの『ノイン』と呼ばれる者が、どのような思いを抱いているのかはわからない。けれど、己の胸に湧き上がる虚しさは、どうしようもないものであった。
しかして、浸る暇などない。
「父と子と聖霊の御名に於いて―」
己が機体『Firefly』のアイセンサーが煌き、ヴィンデはコクピットシートの背部に封じられた連結装置でもって機体と一心同体へと至る。
非違人道的な装置であることは言うまでもない。
キャバリアとパイロット。
その二つを融合させる人機一体たる力。
それを機械によって強制的に行っているのだ。
機体は己。己は機体。
混濁した意識は、機体のダメージを生身であるヴィンデにもフィードバックさせるだろう。
首に接続されたケーブルが脈動した瞬間、ヴィンデは赤と青の装甲持つ『セラフィム』へと告げる。
「私が疾さを以て囮となる」
「あなたは……!」
「それは、何か、わからないですけど、そんなのダメです!! それは!!」
直感的に理解したのだろう。
己が結合した装置の非道さを。だが、ヴィンでは構わなかった。
「流れ弾が本土に被弾せぬよう、貴官らには迎撃相殺を頼みたい」
その言葉と共にヴィンデは人機一体となって海上を駆け出していた。止める暇などあったわけがない。
目の前に迫るのは数百メートルはあろうかという巨躯のオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』であった。
海上にありて、その機体は海中に縫い止められている。
猟兵たちのユーベルコードが明滅し、海中に叩き落とすことで吹き荒れる炎の威力を減衰させているのだろう。
「ありがたい」
ヴィンデは己が機体の装甲に対するダメージが軽減されていることを知り、さらに速度を上げ『ネハシム・セラフ』に踏み込む。
狙いは敵アイセンサー。
頭部はそれだけで己が乗騎を圧倒する巨大さだった。
赤いアイセンサーが己を捉えた瞬間、炎が翼のように羽ばたき、機体を撃ち落とさんとする。
だが、瞬間的にヴィンデは己の身を翻すようにして炎を躱し、一気に腕部のパイルバンカーの炸薬を爆発される。
加速された鉄杭の一撃が『ネハシム・セラフ』のコクピット付近を穿ち、貫く。
それだけではない。
展開したブレイドウィングを機体をねじるように旋回させながら叩き込む。
穿たれ、切り裂かれた巨大なコクピットブロック。
露出した装甲の先にあるのは、肥大化した『疑似脳』。
「これが操縦者たる脳……ならば、これが好機」
ヴィンデの言葉は戦場に集った猟兵たちに伝えられただろう。
今こそ、この巨躯なる終点を失墜させる時であると――。
大成功
🔵🔵🔵
朱鷺透・小枝子
炎も、敵も、想いも、喰らうように。
『天回点壊・戦壊転生』発動。禍戦機【操縦】、黒輪光展開、【レーザー射撃】
【呪詛】|あらゆる強化防護を破壊する念動力《あらゆるものを焼き尽くす炎》を載せた灼熱線を放ち、
『ネハシム・セラフ』が放つあらゆるものを焼き尽くす炎にぶつけ戦塵霊物質変換、
吸収しながら骸装メガスラスター【推力移動】
拳を振るい、加速と【怪力】で『ネハシム・セラフ』の躯体に雷架を叩きつけ、
光子開放、熱光雷撃の念動力があらゆる強化、防護を、
人の想念でできた巨大な『ネハシム・セラフ』の躯体へ浸透し、
破壊し、引き剥がし、念動力で掴み、奪いとる。
|想念《これ》が自分達に向けられたものなら、これは貴様が持っていて良いものではない。
【2回攻撃】骸装で空を蹴り、光子迸る両拳を振るいたて【範囲攻撃】
殴り穿ち壊し喰らう。黒輪光が回り、無尽蔵に戦塵霊物質を生成する。
【継戦能力】炎を、想念を、霊物質を禍戦機が集積し圧縮し【エネルギー充填】
胸部BS-B断叫から電磁音波を発振し【追撃属性攻撃】
壊れて終われ
猟兵たちのユーベルコードが明滅し、暗雲を雷光が照らすように輝いていた。
海上から海中に没して尚、『ネハシム・セラフ』の巨体は全身からほとばしらせる炎でもって海水を蒸発させ、海上へと浮かび上がろうとしていた。
恐るべき力である。
圧倒的であるとも言える。
だが、猟兵のユーベルコードが煌き、コクピットブロックを切り裂く。
露出したのは、肥大化した『疑似脳』。
それこそが世界の破滅たる終点。
その光景を見やり、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は咆哮する。
「オオオオオオオオオッ!!!!!」
己が駆るキャバリア『ディスポーザブル01』が変貌していく。
黒い輪光を背にしながら、『禍戦機』へと変貌した乗騎と共に小枝子は咆哮する。
迸るよなレーザーの乱舞が『ネハシム・セラフ』を襲う。
だが、炎の翼と強靭なる装甲が、その一撃を尽く弾き返すのだ。
「炎も、敵も、想いも!!!」
如何に戦場に負の想念が渦巻くのだとしても、それは己の呪詛でもって喰らい尽くすs。
残さない。
禍根を残さない。
全て喰らっていく。
それおこそが己のなすべき破壊であると示すようにあらゆる防御強化を粉砕する天回点壊(テンカイテンカ)を『ネハシム・セラフ』へと叩き込む。
灼熱線は『ネハシム・セラフ』の翼を溶断する。
さらに変換された霊物質が小枝子の駆る『禍戦機』の背の黒輪光へと吸収されていく。
踏み込み、巨体にかかわらず小枝子は己が拳を振るうように『禍戦機』の拳を『ネハシム・セラフ』へと叩きつける。
「オオオオオッ!!!」
咆哮ばかりであった。
頭に響く『生命賛歌』など振り払う。
どれだけ頭に響くのだとしても、悪霊たる己には届かない祈りだ。
生命が生きることを意義としているのならば、悪霊たる己の意義は破壊することだ。
故に、光子を展開し、電撃まとう念動力がふるった拳に纏われる。
強化された防護のままに叩きつけ、『ネハシム・セラフ』の装甲を砕く。
砕き、指を傷口に押し込むようにして外郭たる装甲を引き剥がし、その巨体の上にて小枝子は咆哮し、さらに追撃を叩き込む。
「|想念《これ》が自分たちに向けられたものなら、これは貴様が持っていて良いものではない」
光子がほとばしり、叩きつけられる拳は装甲を粉砕する。
『禍戦機』の頭部が割れるようにして顎が現れ、粉砕した装甲を食らう。
そう、この負の想念こそ己が得るべきものであったのだ。
正の想念などいらない。
それは他の誰かが持ちえればいいことだ。
破壊の権化にとって、それは重荷でしかない。故に、炎を噴出させながら小枝子は『禍戦機』と共に狂うように攻撃を敢行し続ける。
迫る車輪の如き炎の輪が『禍戦機』の両腕を切り裂く。
寸断された腕部から噴出する血潮の如き霊物質。
しかし、小枝子は音動力で持って溢れ出す霊物質を繋ぎ止め、寸断された両腕を強引に引き寄せて再び結合する。
「天回す天を壊せ!」
此処が終点。
終極。
世界の破滅をもたらす終局であるというのなあらば、その終わりをこそ破壊する。
結合した腕部を『ネハシム・セラフ』の装甲に突き立て、生み出された『禍戦機』の顎部が開く。
口腔の如き機関より発せられるは、電磁音波。
絶叫めた衝撃が。
「壊れて……終われぇぇぇぇぇッ!!!」
小枝子の咆哮と共に海上に飛び立とうとしていた『ネハシム・セラフ』を海中へと再び叩きつけた――。
大成功
🔵🔵🔵
アルカ・スィエラ
その機体は知ってるわ、そして……向けられる恐怖と憎悪の視線も。
…生憎ねノイン。私は、清廉潔白な救世主様なんかじゃないのよ!
引き続きプロトミレスで!敵機の下を取り、推力を少し上げて海上を低空飛行し攻撃を回避するわ
下を取ればあいつ自身の巨体が殲禍炎剣に対する「傘」になる、なら必要なのはそれ以外の攻撃への対処。
最悪『ルーナエ』ユニットをパージして盾にし、そして……あの図体よ、視界からは外さない…!!
UC!高空からの【ルクス・ソリス】、何度でも叩き込んでやる…!!
野望に憑かれた老人、復讐に狂った救国の英雄、忠義に吼える将軍、そして…今回。誰が駆るのだとしても関係はない、その機体を…墜とすだけよ!
アルカ・スィエラ(鋼竜の戦姫・f29964)は知っている。
『ネハシム・セラフ』というオブリビオンマシンを。
幾度か相対したことがある。
それ自体が別の個体であることは、オブリビオンと戦う猟兵ならば知っていることだ。
けれど、それでも知っているということは、人という生命体にとって大きなアドバンテージとなることは言うまでもない。
知性をたぐり、己より強大な存在を打ち倒してきた轍が己の歩みの背にある。
「その機体は知ってるわ、そして……向けられる恐怖と憎悪の視線も」
アルカは、『ネハシム・セラフ』だけではなく、その機体に渦巻く負の想念も知っていた。
かの負の想念が生み出す視線に耐えられぬほどアルカの心は柔くはない。
嘗ては柔らかく、純粋無垢であった心もあっただろう。
けれど、彼女は『知って』いるのだ。
「……生憎ね『ノイン』。私は清廉潔白な救世主様なんかじゃないのよ!」
アルカの駆る『プロトミレス』が海中に叩きつけられた数百メートルはあろうかという巨大な『ネハシム・セラフ』へと肉薄する。
海水を蒸発させながら『ネハシム・セラフ』は炎の輪を放つ。
巨大であることは、膨大な出力を実現するということ。
これまで彼女が経験してきた『ネハシム・セラフ』とは異なる、圧倒的な出力に寄る炎の輪は、正しく脅威であった。
けれど、彼女は『プロトミレス』の推力を一気に増大させ炎の輪の攻撃範囲から逃れるようにして海上を飛ぶ。
もうもうと立ち上る水蒸気の向こう側で『ネハシム・セラフ』の赤いアイセンサーが煌めく。
もう海上に復帰しようとしているのだ。
これまで叩き込まれてきた猟兵たちのユーベルコードをして尚、ここまでのしぶとさ。
「大きくなるだけでこうも!」
再び迫る炎の輪。
掠めるだけでも、機体の装甲が焼け、メガスラスターユニットが誘爆する。
「クッ……! でもッ!!」
パージして爆発から逃れた『プロトミレス』が海上を蹴るようにして浮上する『ネハシム・セラフ』を追う。
「見えている。私にはもう、“見えている”」
アルカの瞳がユーベルコードに輝く。
メガスラスターユニットを破壊されようともアルカは見ていた。
『ネハシム・セラフ』を睨めつけていた。
「野望に取り憑かれた老人、復讐に狂った救国の英雄、忠義に吼える将軍、そして……いつかの誰か。誰が駆るのだとしても関係はない、その機体を……墜とすだけよ!」
アルカの瞳に輝く光が示すのは、空。
そこにあるのは。
「ドラグレクス! 私達の敵に、光の裁きを!」
XXX-01Dα ルクス・ソリス集束モード(ルクス・ソリス)。
それは『ネハシム・セラフ』の頭上に転移した『ドラグレクス』による砲撃。
超精密砲撃の一撃は、『ネハシム・セラフ』のコクピットブロックを狙っていた。
肥大化した『疑似脳』が猟兵たちの攻撃を受けて露出している。
その光り輝く砲撃の一撃が、コクピットブロックへと叩き込まれる。
護るように炎の翼が展開するが遅い。
翼を穿ちながら砲撃は『ネハシム・セラフ』のコクピットへと叩き込まれ、凄まじい爆発を巻き起こすのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
ノインの奴とんずらかよぉぉぉ!!あいつふざけてやがるなぁ!?(ぷんすこ
生命賛歌で全員焼きぶっ殺とかふざけてんのかてめー?
「生命の輝き君とかないのかな☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
敵の能力と動きと周辺状況の把握
【属性攻撃】
水の障壁を展開
あれだけでかいと僕らなんぞ元からきにもしねーだろ
【空中戦・念動力・弾幕】
UC発動
超絶速度で飛び回りながら念動光弾と水の弾丸を叩き込み
【二回攻撃・切断・盗み攻撃・盗み】
鎌剣で切り刻み武装や資源を強奪する
本当はキリング何とかを強奪したかったが…流石にそれは厳しいよな?
後は存分に削ってそのサイズをどんどん縮小させにかかる
デカければ強いってわけじゃねーんだよ!!
超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』は『殲術再生弾』を照射した反動でもって海中へと潜航し、戦場から離脱せしめていた。
その手際は見事なものであったが、しかし、小国家『プラナスリー』の本土である要塞の内部が如何なる惨劇に見舞われているかは言うまでもないことであったのかもしれない。
「『ノイン』の奴とんずらかよぉぉぉ!! あいつふざけてやがるなぁ!?」
カシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)は苛立つ。
『ノイン』と呼ばれる存在は、見事に猟兵たちを振り切った。
しかも『殲術再生弾』を照射された『ネハシム・セラフ』は、数百メートルはあろうかという巨体になっている。
それ故に猟兵達のユーベルコードが明滅しても、幾度となく浮上し続けている。
海水は炎の翼でもって蒸発し濛々と視界を白く染め上げている。
「ふざけてんのかてめー?」
『生命の輝き君とかないのかな☆』
「とは言え、どうにかしねーとな! 今は湾内だからいーが、市街地に移動されたらたまったもんじゃねーぞ!」
そう、戦場が湾内であったことは幸いであった。
もしも、戦場が市街地に及んでいたのならば、『ネハシム・セラフ』の巨大化した巨体に寄る向上した出力で炎は一気に市街地に住まう人々を焼き殺していたであろうから。
故にカシムは他の猟兵たちと同様に『ネハシム・セラフ』を海上にて打倒しなければならないと理解する。
「あれだけでかいと僕らなんぞ、元から気にもとめてねーってか!」
猟兵のユーベルコードによる砲撃が『ネハシム・セラフ』のコクピットブロックの装甲を引き剥がす。
そこにあったのは『怪物』の脳の如き、肥大化した『疑似脳』。
もはや人のそれであるとは到底言えない。
それほどまでに醜悪なる気配を放っているのは、これを為した者の邪悪さ故であろうか。
そう思うほどの光景を目の前にし、カシムの瞳がユーベルコードに輝く。
『やるっきゃないね☆』
「たりめーだろうが!『メルクリウス』……お前の力を見せてみろ……! 加速装置起動!」
その言葉と共に『メルクリウス』が加速する。
凄まじい速度で『ネハシム・セラフ』との距離を詰め、一気に斬撃を叩き込む。
手にした鎌剣の斬撃は『ネハシム・セラフ』の装甲を切り裂くが、あまりに巨体であるがゆえに効果は薄い。
しかも、迫る炎の輪の巨大さと圧倒的な熱量は加速した『メルクリウス』すらも捉えるほどであった。
回転する輪。
それはだた見栄えを重視したものではない。
円周の全てが熱波を生み出し、距離を無意味にしていた。
「チッ! 面倒なことをしてくれやがってよ! あのキリングなんとかってやつは出力も上げてくるのかよ!」
厳しい。
敵の攻勢は苛烈。
だが、やらねばならないのだ。
「見せてみろよ、お前の本領を! 神速戦闘機構『速足で駆ける者』(ブーツオブヘルメース)、その名が伊達じゃねーってことをよ!」
『あいさー☆』
更に加速する『メルクリウス』の鎌剣より放たれる超高速機動攻撃は、まるで嵐のように『ネハシム・セラフ』の機体全周を取り囲み、その装甲を削り取るように乱舞する。
破片が舞い散り、海中に没する中、カシムは炎の熱波に装甲が融解していくのを感じながらも、それでも速度で圧倒し続ける。
「デカければ強いってわけじゃねーんだよ――!!」
大成功
🔵🔵🔵
薄翅・静漓
私は知ったわ
人の想いの強さを
礎となった過去の上に立つことの意味を
善性と悪性に揺らぐ人の心を
猟兵に向けられた想念がこれほどのものであるならば
怪物と呼ばれるのは私達の方なのでしょうね
……今更、怯んだり逃げたりしないわ
この戦いの果てになにがあるか、私は知りたい
キャバリアには、ここに来るまでに負担をかけてしまった
だから、私が放てるのは一撃だけ
空中浮遊し、構えるわ
快活な子、理性がなくたって、勝負を受けてくれるでしょう?
……いえ、ただ対峙する猟兵を排除しようと動くならそれでもいい
想いと想いを交えるように
心のオーラを宿した一撃を『轟音』へ放つわ
憎悪、悲哀、恐怖。
それは強烈なる人の感情であった。
想いとは、人の内側にあるもの。目に見えないもの。触れることのできないもの。
形はなく、色もなく、けれど、それを現す言葉は、やはりただの言葉でしかなかった。
故に、知りたいと思ったのだ。
千差万別たる感情を。
そして、薄翅・静漓(水月の巫女・f40688)は得てきたのだ。
「私は知ったわ。人の想いの強さを」
故に、己が肌を焼くような強烈なる負の想念を纏う『ネハシム・セラフ』を見つめる。
猟兵たちのユーベルコードの明滅が、『ネハシム・セラフ』を海上に留めている。
噴出する炎は、海上であるからこそ抑えられていたし、もしも、『ネハシム・セラフ』が『ビバ・テルメ』の市街地にて巨大化したのならば、その炎はとどまる所を知らず、全ての人々を燃やし尽くしてしまっただろう。
故に、海上に留め置くことが猟兵達の前提条件となっていた。
赤いアイセンサーが揺らめいている。
熾火のように。
「礎となった過去の上に立つことの意味を。そして、悪性と善性に揺らぐ人の心を」
それを良心と呼ぶ。
自身に向けられた負の想念がこれほどのものであるというのならば、真に『怪物』と呼ばれるのは、自分たち猟兵の方なのかもしれない。
それほどまでに静漓が身を持って知る感情の渦は、強烈だった。
「……今更、怯んだり逃げたりしないわ」
『ノイン』は言った。
猟兵は世界を救う。だが、世界しか救わないと。
その言葉の意味を知りたい。
この戦いの果に何があるのかを。
「私は知りたいの。だから、もう少しだけがんばってちょうだい」
静漓は己が借り受けた量産型キャバリアに告げる。
此処に来るまで相当の負担が掛かっている。
モニターに浮かぶアラートは、そうした結果であろう。だからこそ、己が撃つ事ができるのは、一撃のみであると知る。
機体を己が力でもって海上に浮遊させる。
他の猟兵の攻勢によって『ネハシム・セラフ』は海中に叩き込まれている。
浮上しようとしているのがわかるし、数百メートルの巨体だ。全てが海中に没することはなかったのだ。
故に静漓は『ネハシム・セラフ』のあらわにされたコクピットブロック、その内部に収められたもはや人とは言えぬ巨大なる『疑似脳』を見やる。
ナンバリングは『Ⅲ』。
数字で呼ばれた子らを静漓は幻視した。
「快活な子、理性がなくたって、勝負を受けてくれるでしょう?」
いつかの誰かを思う。
それは彼女の知る者ではないかもしれない。
けれど、どこか面影を感じたのは、己の感傷とも言うべきものであったのかもしれない。
向けられた負の想念が矢のように己に刺さる。
敵意なのかもしれない。
けれど、それでもいい。
「想いは力。交わるのなら、それはきっと、もっと大きな力になるだろうから」
心のオーラを宿した矢が量産型キャバリアの腕部に展開した弓の如き基部につがえられる。
全てを見透かすような瞳が、そこにあった。
せつな(セツナ)に煌めくは光。
伝わらなくてもいい。
けれど、感じて欲しい。
想いが力だというのならば、理性なき者にも届くはずだと信じたい。
故に、静漓は呟く。
「『轟響』――あなたが誰かに何かを伝えたいと思ったように。誰かを思うことが」
放たれた矢が一閃を描きながら『ネハシム・セラフ』の装甲剥がされたコクピットブロックへと叩き込まれる。
無防備たる量産型キャバリアに迫る炎の翼。
静漓の乗ったキャバリアが瓦解していく。海上に飛び出した静漓は、己を守ってくれた機体が海中に沈んでいくのを、その眼差しで見やり、穿たれた『ネハシム・セラフ』から歌うような機械音がけたたましく響き渡るのを聞いた――。
大成功
🔵🔵🔵
月夜・玲
うわ言いたい事だけ言って、置き土産して逃げた!
うっそだろお前!
もうちょっと残ってレスポンチバトルするなり、見届けて捨て台詞吐くなりしなよ!
しかも敵も喋らない奴じゃん…
お前、ほんまお前…!
《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀!
悪いけど、憂さ晴らしさせて貰うよ
これだけでっかく育ったんだ、斬り甲斐はあるね
そっちの耐久とこっちの剣どっちが強いか勝負といこう
【Code:T.S】起動
雷刃形成、ぶった切れる程のサイズ!
二剣を重ねて、雷刃の強度をアップ
そのまま一刀両断!
真正面、ド真ん中を斬り裂く!
『オーラ防御』『念動力』で敵から来る攻撃は最低限防御
後は根競べ!
どっちが先に音を上げるか!
「うっそだろお前!」
月夜・玲(頂の探究者・f01605)は、離脱していく超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』を見やり、思わず声を上げていた。
この状況にあって、自分だけ逃げようという算段をしていたことにたいしても、また同時に言いたいことだけを言った上に置き土産を残していい逃げした『ノイン』に対して、玲は怒りとも呆れとも言い難い感情を抱いていた。
「もうちょっと残ってレスポンチバトルするなり、見届けて捨て台詞を吐くなりしなよ!」
むしろ、捨て台詞を吐くような状況に絶対追い込んでやるという気概が玲にはあったのかもしれない。
そんな玲の怒りやら呆れやらなんやらが綯い交ぜとなった胸中に、風が吹く。
そう、猟兵たちのユーベルコードが煌き、数百メートルはあろうかという巨体へと成り果てた『ネハシム・セラフ』のコクピットブロックが光の矢によって穿たれたのだ。
そこには肥大化した『疑似脳』があった。
けたたましく鳴り響く歌。
それは『生命賛歌』。
だが、負の想念が渦巻いている。静寂たる宇宙に響き渡る生命という残響。
存在によっては、煩わしいだけの音が、戦場に渦を巻く。
「喋らない奴って思ってたら、叫んでばかりでさぁ! お前、ほんまお前……!」
玲は頭痛がするほどの歌に顔をしかめながら模造神器を抜刀する。
励起する蒼き刀身。
「悪いけど、憂さ晴らしさせて貰うよ」
コクピットブロックを穿たれて尚、『ネハシム・セラフ』の赤いアイセンサーが煌めいている。
今だ崩れ落ちることを白糠のように、その巨体からは炎が翼のように噴出し、海水を蒸発させ続けている。
「これだけでっかく育ったんだ、斬り甲斐があるね。そっちの耐久とこっちの剣、どっちが強いか勝負といこう。行くよ、Code:T.S(コード・サンダーソード)起動!」
煌めくユーベルコードが明滅する。
周囲に迸る雷。
それらが刀身に集約され、玲は天に刀身の切っ先を掲げる。
「出力上昇、雷刃形成」
瞬間、二振りの模造神器の刀身に雷刃が形成される。
そして、二振りを重ね合わせ刀身を更に強固なものへと変貌させるのだ。
「真正面、ド真ん中を切り裂く!」
振り下ろされた瞬間、炎の翼が玲を取り囲むようにして展開し、同時に締め上げるようにして両脇から彼女を襲う。
コクピットブロックを穿たれて尚、『ネハシム・セラフ』は、その圧倒的な出力を持つ炎の翼でもって生身単身の玲を焼き殺そうとしていたのだ。
オーラの防御を通して尚熱波が肌を焼く。
けれど、玲は笑う。
「根比べ! どっちが先に音を上げるかのね!」
叩きつけられた雷刃と炎の翼の出力が拮抗する。
凄まじ衝撃が周囲に吹きすさび、海面をえぐるようにして互いに譲らぬ力の奔流がすさび、玲の雷刃は『ネハシム・セラフ』の炎の翼を強引に切り裂きながら、その巨体の装甲を滑るようにして袈裟懸けに切り裂き、圧倒的な熱量で持って海水を蒸発させるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ウィル・グラマン
●POW
ちょ、待ちやがれ!
ノイン!!
あの野郎、負け惜しみに言いたい放題抜かしやがって…
勝ち逃げしたつもりだろうが、置き土産をぶっ壊してベヘモットの中で吠え面をかかせてやるぜ!
ベアライザーを電脳展開して、キャバリアから乗り換えだ!
ライザークロース!
ライジング・ベアキャット、Go!!
耳障りな歌が聞こえてくるが、『超電脳合体』した事でオレの指示はベアの直ぐ側で送れるからノイズを走らせねぇぞ!
上空に巨大エネルギー反応が感じるとなれば、殲禍炎剣とアクセスしている最中か
こうなりゃ疑似脳か重要部品をぶっ壊して阻止しねぇと…
ベア、このまま突っ込むぞ!
自慢の鉄拳で巨体をぶち抜いてビバ・テルメの人達を護るんだ!
『ノイン』と呼ばれる存在は、超巨大巨竜型要塞『ベヘモット』と共に『殲術再生弾』の照射の反動でもって戦場を離脱していた。
彼女はこれを狙っていたのかもしれない。
ただ単純に国土である『ベヘモット』を脅威にさらしたのは、『殲術再生弾』に装填するための想念を得るためであったのだろう。
国民の想念。
それを危険に晒すことによって、膨大なうねりを生み出し、『ネハシム・セラフ』へと照射した。
数百メートルはあろうかという巨躯になったのが、正しくその証明でもあったのだ。
「『ノイン』の野郎、負け惜しみに言いたい放題抜かしやがって……」
それは確かに負け惜しみであったのかもしれない。ウィル・グラマン(電脳モンスターテイマー・f30811)は、そう思った。
だが、事の推移というものは『ノイン』の思惑通りに進んでいったとも言える。
猟兵の脅威を国民に知らしめ、その負の想念を有効活用する。
そして照射と共に離脱。
鮮やかと言えば鮮やかな手腕であるとも言えただろう。
置き土産である『ネハシム・セラフ』が猟兵たちのユーベルコードを受けて尚、未だ健在であることもある。
「勝ち逃げしたつもりだろうが、置き土産ぶっ壊して『ベヘモット』の中で吠え面かかせてやるぜ!」
どのみち、世界の破滅など引き起こさせるわけにはいかないのだ。
「行くぜ『ベア』!」
ウィルは電脳魔術でもって己が借り受けた量産型キャバリアを『ベアライザー』へとリビルドし、漆黒のスーパーロボット『ベアキャット』とドッキングする。
そう、これこそが、超電脳合体(ヴァリアブル・ドッキング)。
ベアライザーとドッキングした『ベアキャット』は、『ライジング・ベアキャット』なのだ!
「ライザークロース! ライジング・ベアキャット、Go!!」
ウィングを手に入れ、『ベアキャット』に乗り込んだウィルが叫ぶ。
それに応えるように『ベアキャット』は咆哮し、眼前に迫る『ネハシム・セラフ』を睨めつける。
その姿は異形であった。
半身切り裂かれ、コクピットブロックを穿たれて尚、『ネハシム・セラフ』は噴出する炎と共に『ビバ・テルメ』へと上陸をはたさんとしている。
あの炎が『ビバ・テルメ』の市街地に向かえばどうなるかなど言うまでもない。
「野郎、まだ上陸を諦めてねーのか! だが、させるかよ!! この耳障りな歌なんてな!!」
「ガォン!!」
ウィルは、己が乗り込んだ『ライジング・ベアキャット』と共に飛翔し、『ネハシム・セラフ』に取り付くようにして激突する。
互いの出力差はある。
だが、敵も消耗しているのだ。
ならば、押し負ける理由なんてない。
「暴走衛生にリンクしているってだけで、ここまで強化されるのかよ。しかも、コクピットブロックを撃ち抜かれても挙動しているってことは!!」
「ガォン!!」
「ああ、ベア、このまま突っ込んで海中に押し込む!」
ウィルは決断する。
この巨体を徹底的に破壊しなければ、『ビバ・テルメ』への脅威は振り払えない。
ならばこそ、漆黒のスーパーロボットは拳を握りしめる。
「自慢の鉄拳を見せてやれ!『ビバ・テルメ』の人たちを護るんだ!」
咆哮と共に叩き込まれた鉄拳の一撃が『ネハシム・セラフ』の巨体を後退させ、さらには海中へと叩き込むのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
レイヴァ・エレウネラ
常時適用:【通常攻撃無効/硬化/激痛耐性】
見たことも無い大きなキャバリア…。
でもこの程度で怯んだりはしないよ!
この戦禍を終わらせる為に…行くよ!
ボクは翼を広げて高速で接近。
放たれる炎は【エネルギー弾】と【衝撃波】で掻き消して数を減らし、残りの炎は【空中機動】で回避していくよ。
近づいたら【怪力/グラップル/連続コンボ/部位破壊】の拳打、蹴打で一箇所ずつ破壊していくよ!
巨体を活かした物理攻撃で反撃してきたら耐久力は自信が有るから受けつつ、こっちも【カウンター】!
隙ができたらUCを叩き込んで一気に破壊してやるよ!
レイヴァ・エレウネラ(恐れ知らずな外界の女神・f44350)にとって、それはあまりにも未知なる巨大さであった。
キャバリア、という括りで見るのならば、このクロムキャバリア世界において、今まさに海上に浮かばんとしている数百メートルはあろうかという『ネハシム・セラフ』の巨体は、恐らく多く存在しないだろう。
「でも、この程度で怯んだりしないよ!」
レイヴァにとって、目の前の敵は打倒さなければならない戦禍そのものだった。
今は海上にあるおかげで噴出し続ける炎の翼は、抑えられている。
けれど、これが陸地――小国家『ビバ・テルメ』の市街地へと向かえばどうなるか。
言うまでもない。
被害は甚大なものになるだろう。
防ぐことの出来ぬ炎に市街地は焼かれ、多くの人命が損なわれる。
正しく世界の破滅にも等しい炎が、世界全土に広がっていくのだ。
終極とも言われた力のあり方に対して、彼女は決意を漲らせ己の翼を広げる。
「この戦禍を終わらせる為に……いくよ!」
飛翔する彼女に対して放たれる炎の翼は猛烈なる熱波を伴って彼女を近づけさせんとするかのようであった。
しかし、それは彼女の放つエネルギー弾と衝撃波で打ち払う。
炎が穿たれ、道ができれば彼女は一気に飛び込む。
眼前の『ネハシム・セラフ」は、他の猟兵たちのユーベルコードによって消耗している。
幾度となく海中に叩き込まれ、半身を失い、コクピットブロックの巨大な『疑似脳』すら穿たれて尚、『ネハシム・セラフ』は炎の破滅を齎さんと浮上しようといている。
「大きから頑丈なのかな! でもね!」
レイヴァは生身単身で数百メートルはあろうかという『怪物』に立ち向かう。
己が徒手空拳。
その拳、蹴撃でもって『ネハシム・セラフ』の巨体を打ち据え、装甲を破壊していくのだ。
如何に巨体と言えど、キャバリアという括りの中。
ならばこそ、装甲が粉砕されれば、むき出しのなるのはフレーム。
故にレイヴァの瞳はユーベルコードに輝く。
これまで彼女だけではない猟兵のユーベルコードによって走った装甲の亀裂を繋ぐように彼女は星砕のギガントブレイカ(セイサイノギガントブレイカ)たる拳の一撃を叩きつける。
打ち込まれた拳の形が装甲にめり込み、その痕を繋ぐようにして全身の装甲に走った亀裂が深く刻まれていく。
「叩き割られる覚悟は出来てるよね!」
レイヴァはニコリと笑う。
そう、彼女の拳は星を砕く拳。
その拳打は、如何なる装甲であろうとも破壊し、地形すらも変えて見せる神性の一撃なのだ。
凄まじい衝撃と共にレイヴァは『ネハシム・セラフ』の装甲を砕きながら噴出する炎を振り払い、蹴撃と共に巨体を海へと沈めるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
ルウェイン・グレーデ
●聖竜騎士団
巨大化した!?
しかもこのプレッシャーと歌はなんだ?
ええい、俺が讃えるのは…メルヴィナ姫だー!
メルヴィナ姫への讃美を聞け!
メルヴィナ姫ー!好きだー!
お救いくださった時から好きだった!
好きなどという言葉も生温い!
愛しているのです!メルヴィナ姫!
自分の愛は忠義に代えて全て捧げる所存です!
戦場に蔓延る怨念など!メルヴィナ姫への忠義で掻き消してやる!
メルヴィナ姫ー!あなたの全てを愛しているのです!
物憂げな目!
海のような青い瞳!
潮風を感じる匂い!
メルヴィナ姫の水着姿!
触れた肌!
抱かれた腕!
突き立てられた爪も!
噛まれた痛みだって!
メルヴィナ姫を潰してしまうほどに抱きしめたい!
首を刎ねられたって構いません!
愛しているんだ!メルヴィナ姫ー!
聞こえているか!ネハシム・セラフよ!ノインよ!
そちらに殲術再生弾があるというのなら!
俺にはメルヴィナ姫への忠義がある!
理解できるか!?
俺の身体を通して出る力が!
やるぞイグゼクター!
ハイパープラズマバスターの旋回照射で奴を断ち切れ!
メルヴィナ殿下の為にィィィ!
メルヴィナ・エルネイジェ
●聖竜騎士団
ベヘモットは去ったのだわ?
プラナスリーの民を傷付けずにすんだのだわ
あの機体、大きくなっただけじゃないのだわ
色んな思いが渦巻いて…ってルウェイン!?
何を言い始めるのだわ!?
姉上!誤解なのだわ!
そういうのじゃないのだわ!
もう分かったからやめるのだわ!
こっちの方がよほど心をおかしくされるのだわ!気持ち悪すぎるのだわ!
ルウェイン…あなたが潰してしまうほどに抱きしめたいなら、私はきっと本当に締め殺してしまうのだわ…
あなたの目に他の誰も映らないように、海の底に引き摺り込んで…私も怪物なのだわ
とにかくネハシム・セラフを止めるのだわ
こちらも大きくなるのだわ
リヴァイアサン、リグ・ヴェーダの真の姿をここに顕現させるのだわ
そして封炎の暴雨を喚ぶのだわ
水の加護がみんなを炎から守るのだわ
水は光を減衰、吸収、屈折させるのだわ
だから翼の輝きを直接防げるのだわ
そしてここは海なのだわ
水は幾らでもあるのだわ
ルウェインのせいでぐちゃぐちゃにされた恨みごとオーシャンバスターを叩きつけるのだわ
ソフィア・エルネイジェ
●聖竜騎士団
讃歌と呼ぶには悍ましき旋律ですね
プレッシャーにはかつて交戦したブリュンヒルドに近い感触があります
果たしてどこまでが殲術再生弾の所業なのでしょうか
肌に触れた?
抱かれた?
爪を突き立てられた?
噛まれた?
その…メルヴィナ、グレーデ卿…二人が良い交友を築く事は私にとっても望ましい事です
ですが弁える所はしっかり弁えなさい
しかし敵の圧力に飲み込まれるよりは良いでしょう
巨大である事は格闘戦において多様な恩恵があります
こちらも巨大化し対抗致しましょう
インドラ!リグ・ヴェーダの真の姿をここに!
…因みに私はインドラの背に乗っておます
盾が変じた翼で聖光城壁を展開!
延焼分も含めたその呪怨の炎!インドラが一身に受け止めましょう!
戦場に降るメルヴィナの封炎の暴雨で滅びの炎も衰えましょう
受けた炎の返報はインドラの拳とします
怨嗟を打ち倒すには魂を込めた拳が最良でありましょう
恐怖、悲哀、憎悪…それら全てを踏み付けてでも私は守る為に戦い続けます
世界などと大袈裟なものではありません
我が名に懸けて!エルネイジェを!
イリス・ホワイトラトリア
●聖竜騎士団
ネハシム・セラフが大きくなって見える…!
殲術再生弾はキャバリアを大きくするんですか!?
それに頭の中を掻き乱されるような歌声が…これも殲術再生弾の力なの?
ええっと…メルヴィナ殿下とルウェインさんの行く道に幸多からん事を…
言われた通り、確かに私は世界は守れても近くの一人は守れなくなっちゃったのかも知れません
猟兵になって、ユーベルコードが使えるようになって、ベヒーモス様に出会って、たくさんの人を守れるようになったから…
さっきもビバ・テルメの人達全員を守れたわけじゃないと思います
お父さんとお母さん、姉さんと兄さんも…
だからって…!できることをするしかないじゃないですか…!
何もしなかったらもっと助けられない!
気持ちで負けちゃだめ…!
ここまで受けた皆さんの傷は再動の聖光で癒します!
再び戦える力を!
ベヒーモス様!全砲をネハシム・セラフに向けてください!
あれだけ大きなキャバリアなら対艦武器も当てられます!
メガビーム砲!三連装衝撃砲!ハイパーレールガン!ギガンティックバスター!
一斉発射です!
「『ネハシム・セラフ』が大きくなって見える……!」
巨大な要塞型キャバリアである『ベヒーモス』の艦橋に座すイリス・ホワイトラトリア(白き祈りの治癒神官・f42563)をしても、数百メートルを超えるオブリビオンマシン『ネハシム・セラフ』は圧倒的な存在感を放っていた。
数多の猟兵たちのユーベルコードによって半身を損壊し、コクピットブロックさえ穿たれているにもかかわらず、噴出する炎は『ネハシム・セラフ』の装甲修復しようとし、また吹き荒れる炎でもって敵対者を滅殺せんとしているかのようだった。
それほどまでの威容を前にして心が怯むのは致し方のないことであったのかもしれない。
『殲術再生弾』とは、これほどまでに強力な切り札たり得るのだろう。
それに、と彼女は頭に響き渡る歌声に頭が割れそうだった。
「この歌……これもまた『殲術再生弾』の力なのですか!?」
「讃歌と呼ぶには、悍ましき旋律……悲鳴のような歌声とでも言えばいいのでしょうか……それに、コクピットブロックを穿たれて尚、機体を動かすあの『疑似脳』……!」
ソフィア・エルネイジェ(聖竜皇女・f40112)は『インドラ』のコクピットにて頭を抑える。
あの『疑似脳』の放つ重圧は、かつて『ブリュンヒルド』と呼ばれたオブリビオンマシンと対峙した時と同じような感覚がある。
一体どこまでが『殲術再生弾』の効果なのかわからない。
判然としないままに敵に立ち向かうには、あまりにもリスキーであった。
「でも、姉上。これで『ベヘモット』が戦場から離脱したということは、『プラナスリー』の民を傷つけずに済んだのだわ」
メルヴィナ・エルネイジェ(海竜皇女・f40259)は敵国でありながらも、無辜なる民が傷つくのを憂うようであった。
故に、『ベヘモット』が敵の手腕の内とは言え、戦場を離れたことを僅かに安堵する。
その言葉にルウェイン・グレーデ(自称メルヴィナの騎士・f42374)は酷く心をかき乱されていた。
目の前に迫る『ネハシム・セラフ』の巨大なプレッシャーなどまるで感じる暇などなかった。
そう、メルヴィナの優しさ! 慈悲! 海よりも広く! 雄大なる御心!
どれだけ頭にけたたましい歌声が響くのだとしても、己が讃えるのはただ一つ。
そう!!
「メルヴィナ姫ー! 好きだー!!」
「!?」
「!?」
「!?」
突然の告白。
いきなり過ぎる。唐突過ぎる。一体全体何を思ってるウェインが急に叫び出したのかを、聖竜騎士団の三姫は理解できなかった。
というか、いきなり愛の告白をぶちまけられたメルヴィナが最も困惑していたことだろう。
いや、メルヴィナは目の前に渦巻く負の想念が己たちに向けられていることに警戒を強めていたからこそ、尚更、寝耳に海水くらいの衝撃であったのだ。
だが、そんなメルヴィナたちの困惑をルウェインは意に介さない。
そう、けたたましい歌声が己の頭を揺さぶるのならば!!
己が胸に湧き上がる愛しのメルヴィナに対する想いで持って打ち消すのみ!
『生命賛歌』なにするものぞ。己が捧げるは、メルヴィナへの賛美のみ!
「メルヴィナ姫ー! 好きだー! 御救いくださった時から好きだった! 好きなどという言葉も生ぬるい! 愛しているのです! メルヴィナ姫!」
「な、何をいい始めるのだわ!? し、しかも、オープン回線なのだわ、これ!?」
そう、ルウェインの叫びは『ビバ・テルメ』周辺全域の回線にほとばしっている。
やめさせなければ、とメルヴィナは声を上げる。
だが、ルウェインは止まらない。
「自分の愛は忠義に代えて全て捧げる所存です! この愛に報われようなどとは毛頭思っていないのです! 貴女様からの愛を得ようなどという不遜はなく! ただ一点の曇りなく私の愛を受け取ってくださるだけでいいのです!」
「な、何を、言っているのだわ!」
「え、ええと……」
イリスも『ベヒーモス』の艦橋で、なんとなくずり落ちそうになったシートから身を起こして居住まいを正しした。そうしなければならないと思ったからだ。
「戦場に蔓延る怨念など!メルヴィナ姫への忠義でかき消してやる!」
なるほどわからん。
それは赤と青の装甲を持つ『セラフィム』を駆る『神機の申し子』たちの感想であった。
どういうことなんだろうか。
いや、本当にわからん。何が目的?
だが、彼等は理解した。ルウェインの叫びはオープン回線。つまり、頭に響くけたたましい歌と同じ!
「メルヴィナ姫ー! あなたの全てを愛しているのです! 物憂げな眼! 海のような青い瞳! 潮風を感じる匂い!」
せめて香りと言って差し上げなさい、と『エルフ』は思った。
だが、ルウェインは止まらない。
「メルヴィナ姫の水着姿!」
そう、思い出すことができる。鮮明に!
「触れた肌! 抱かれた腕! 突き立てられた爪も! 噛まれた痛みだって!」
「肌に触れた? 抱かれた? 爪を突き立てられた? 噛まれた?」
ソフィアは想像してしまった。
あまりに近しい者たちの、『そういうの』を。顔が思い浮かぶから、より一層、くっきりはっきりと想像してしまって、頬が上気する。こんな時でなければ、はちゃめちゃかわいいお顔であったことだろう。
だが、残念なことに、こんな時である。
「姉上! 誤解なのだわ!『そういうの』じゃないのだわ!」
メルヴィナの必死の声が上がる。
そう、『そういうの』ではないのだ。だが、ソフィアはコホンと咳払いして、メルヴィナの抗議を受け止めた。
「その……メルヴィナ、グレーデ卿……二人が良い交友を築くことは私にとっても望ましいことです。ですが、弁える所はしっかり弁えなさい」
説教!
まさかここに来て、マジなトーンの説教!
メルヴィナはソフィアすら、そんな感じに飲み込むルウェインの叫びに背筋が粟立つ想いだった。
「メルヴィナ姫を潰してしまうほどに抱きしめたい! 首を跳ねられたって構いません! 愛しているんだ! メルヴィナ姫ー!」
「ええっと……メルヴィナ殿下とルウェインさんの行く道に幸多からんことを……」
イリスは神官として祝福しようとしてくれていたのだろう。
健気である。
だが、逆効果である。
ルウェインは止まらない。
「聞こえているか!『ネハシム・セラフ』よ!『ノイン』よ! そちらには『殲術再生弾』があるといううのなら! 俺には!」
ユーベルコードにルウェインの瞳が輝く。
「やめるのだわ! もうわかったからやめるのだわ、ルウェイン! こっちのほうがよほど心をおかしくされるのだわ! 気持ち悪すぎるのだわ!」
「いいえ、やめません! 俺は示さねばならない! 敵にではなく、この世界に!! 俺にはメルヴィナ姫への忠義があると!」
止まらない。
マジで止まらん。
ルウェインの駆る『ヴェロキラ・イグゼクター』のアイセンサーが煌めく。それは、忠義の刃(ロイヤリティエッジ)たる己の信条の発露。
そして何よりも!
「理解できるか!? 俺の体を通して出る愛が! これが!!」
顎部に展開したハイパープラズマバスターより放たれた荷電粒子ビームが剣のように『ネハシム・セラフ』の剥き身になったフレームを寸断する。
「メルヴィナ殿下の為に! 俺が出せる愛の力! だァァァ!!!」
「ルウェイン……あなたが潰してしまうほどに抱きしめたいのなら」
メルヴィナは、そのユーベルコードの輝きを見上げる。
海中から、天を舞う光を見上げる。
まばゆいほどの輝き。
もしも、本当にそうなのならば。
己は、その代価として彼を絞め殺してしまうだろう。彼という光が誰の目にも映らぬように、海の底に引きずり込んで、海底の砂の、さらに奥にまで引き込む。
戻ろうと思っても戻れぬ海底の底。
光さえ届かぬ海溝の、さらに底にまで引きずり込みたいとさえ思ってしまう。
見やる『ネハシム・セラフ』のコクピットブロック、穿たれたそこにある『怪物』の如き『疑似脳』に己が重なる。
「私も『怪物』なのだわ……でも、『ネハシム・セラフ』は止めるのだわ!『リヴァイアサン』! リグ・ヴェーダの真の姿を見せるのだわ!」
その言葉と共に海中より出現する真の姿たる『リヴァイアサン』の巨躯。
封炎の暴雨(ファイアオブザ・シール)が降りしきる。
『ネハシム・セラフ』の生み出す炎が一気に鎮火され、代わりに降り注ぐ水の加護が整流器を護るのだ。
「……どんな愛の炎だって、この雨に打たれれば消えてしまうのだわ……」
「いいえ、俺の忠義は! 愛の炎は!」
消えません、とルウェインの言葉を遮るようにして、白き雷光が戦場に降り注ぐ。
それは、ソフィアの駆る『インドラ』が真の姿を顕現せしめた轟音。
同時に吹き荒れるは炎の翼。
『ネハシム・セラフ』の炎の翼と『インドラ』の持つ翼が激突する。
両者の炎と光。
それはユーベルコード同士の激突であり、苛烈なる光の奔流。
「聖光城塞(シャイニングフォートレス)……恐怖、悲哀、憎悪……それら全てを踏みつけてでも、私は護る為に戦い続けます。世界などと大袈裟なものではありません」
ソフィアの瞳が『ネハシム・セラフ』の内部にある『Ⅲ』のナンバリングを見つめる。
如何なる意味があるのかはわからない。
けれど、己の想いに呼応するように炎の翼が膨れ上がっている。
押し込まれる、と思った瞬間、『ベヒーモス』の火砲の全てが光を解き放つ。
「気持ちで負けちゃ駄目です……!」
イリスが叫ぶ。
そう、気持ちだけでは何も救えない。けれど、力だけでもだめなのだ。
瞼の奥に浮かぶのは、父と母、そして姉……兄の顔が浮かぶ。
瞬間、イリスは己の脳裏に光が走るのを感じただろう。
再動の聖光(セイントリバイブ)によって後押しされるようにして四騎の『セラフィム』がプラズマブレイドの斬撃を『ネハシム・セラフ』へと叩き込んでいる。
その一騎から走る光。
何故、という感情すらイリスには理解できなかっただろう。
懐かしさすら感じる背中を、四騎の『セラフィム』の内の一騎から感じたのだ。
それを理解するよリ疾く、『インドラ』が拳を握りしめていた。
「護る者として、我が名を懸けて! エルネイジェを!」
怨嗟を打ち倒す者は、怨嗟にとらわれてはならない。
そう、己が魂を込めた『インドラ』の拳は、護るための戦いを是とするもの。
故にソフィアは笑む。
敵の圧力に屈しぬ者がいる。
其の在り方に、疑問はあるけれど。
それでも暗き道行きを照らすのが愛だというのならば、その柔く傷つきやすいものを己は守らねばならない。
「断罪の竜帝よ!」
吠なさい。
その言葉と共に振り下ろされた一撃は『ネハシム・セラフ』をついにひしゃげさせ、炎の中に沈ませる。
内より触れた炎に消えゆく、嘗ての『名』は、しかして確約されし結末を辿るのだった――。
大成功
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