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令和に蘇るリメンバー昭和

作者：黒代朝希

「アンタ達、猟書家の案件……そう、シルバーレインでハビタント・フォーミュラが動いたわ」
　金髪のドリルツインテールを揺らし、アリス適合者のグリモア猟兵シャルロット・シフファート（異界展開式現実改変猟兵『アリス・オリジン』・f23708）はグリモアベースにて『大戦再演』の事件の案内を時計ウサギの如く行っていく。
「大戦後、シルバーレインで銀誓館学園が確保していたメガリスはそのまま彼らが保管しているのは知っているわね？　それを狙ってナイトメアビースト配下のオブリビオンが鎌倉に集結……銀誓館学園からメガリス「ティンカーベル」を奪取しようとしていることが予知されたわ」
　もしもその奪取を許した場合……ナイトメアビースト達は『全盛期の力を永遠に維持できる幻想の軍勢』と化し、いずれ世界中を蹂躙し始める事だろう。
　其れだけではない。もしもこの事件の立案者であるナイトメアビースト『百目鬼・面影』が『永続する全盛期の力』を得た場合、その力を手土産として猟書家……三番目の猟兵の盟主である『書家の王』の元へと合流するだろう。
　銀誓館学園襲撃。
　ナイトメアビーストの永続的大幅強化。
　ナイトメアビースト軍の猟書家への合流。
　いずれもカタストロフに繋がる大事案だ。
「鎌倉市内には既にナイトメアビースト配下のオブリビオンが集結し、銀誓館学園のキャンパスを包囲しようとしているわ。広範囲に多数集結した敵の軍勢を手分けして漏れなく叩かなければ、猟兵の手が薄い箇所からは敵が銀誓館に侵攻してしまうでしょうから……『精密に広域殲滅或いは組織戦を行えるユーベルコード』の使用を推奨するわ」
　鎌倉の土地に被害を及ぼす事無く、ナイトメアビースト配下のオブリビオンを効率よく撃破する能力を持つ猟兵が推奨される事だろう。
　オブリビオンのみを殲滅する広域能力の持ち主か、召喚等で組織戦を挑める能力者や六番目の猟兵が活躍できる事だろう。
「次にこの包囲網を破壊した場合、ナイトメアビーストの拠点への侵攻ルートを切り開けることが予知されたわ。だけどナイトメアビーストのユーベルコード『錠前屋』の能力を移植されたオブリビオンによってその道が封印されているわ」
　これを解除するには一つ……『錠前屋』のユーベルコードを移植されたオブリビオンを撃破する事だ。
「それを突破した後は、ナイトメアビーストの一人にしてジェネラル級のオブリビオンゴースト、「百目鬼・面影」との決戦よ」
　彼の能力は『昭和の品々から『昭和ゴースト』を生み出す』という代物。
　其れはただの召喚能力ではない……カクリヨファンタズムのオブリビオン種族『骸魂』のうち、新しい妖怪の骸魂を召喚して使役するのだ。
「正に『リメンバー昭和』という事ね。これに対抗する策として『現在は平成を超えて令和となっている』という旨の通達によって面影に精神攻撃を行えるわ」
　これによって生じた隙を突き、面影を撃破するのだ。

「十数年前のこの『ファイナルナイトメア』は包囲網と奇襲によってかなり銀誓館学園を追い詰めた様だけど、あの組織には私達『六番目の猟兵』がいる……過去の亡霊に、その力を叩きつけてやりなさい」
　そう言って青いタブレットを叩き、シャルロットは猟兵達を銀誓館学園に送り込んでいくのであった。

第1章 集団戦 『サイコチェーンソー』

POW   :    殺人チェーンソー 【チェーンソー】が命中した対象を切断する。 SPD   :    サイコスピン 【狂乱しながらの回転斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。 WIZ   :    ノイズチェーンソー 自身の【チェーンソー】から【強烈な駆動音】を放出し、戦場内全ての【防御行為】を無力化する。ただし1日にレベル秒以上使用すると死ぬ。 イラスト：青柳アキラ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　――鎌倉の路地裏で、オブリビオンゴーストは暗躍する。
　憎き銀誓館学園を包囲し、メガリスを奪取する為に。

　しかし銀誓館学園の協力者……最強クラスの来訪者たる稀人『六番目の猟兵』と、其れに至った能力者はナイトメアビーストの全てを許しはしない。
　六番目の猟兵よ、持てる力を使って一匹も逃す事無く包囲網を敷こうとしているオブリビオンゴーストを撃破するのだ――

　プレイングボーナス：精密に広域殲滅或いは組織戦を行えるユーベルコードを使用する。


「やあ。すでに言ったけれど……そんな大それた作戦、成功させてなんかやれないってもんさ――だから、アタシはここに来たんだ」
　夢境界の悪魔にしてナイトメア適合者であり、魔女でもある蘇芳・柘榴（商人/夢守り人・f43635）はナイトメアビーストの配下であるオブリビオンゴーストを相手に、そう宣する。
　対してオブリビオンゴースト『サイコチェーンソー』は狂乱しながらの回転斬撃……ユーベルコード『サイコスピン』で柘榴を切り刻もうとする。
「ああ、回転攻撃してくるのか。それは、近づかないようにすればいいかな？――掌握」
　――半径17km圏内を夢の世界に置換、掌握する事で夢境界の悪魔は笑みを浮かべ、チェーンソーによる回転攻撃を対応。
「というか、近づかれるまえにこっちの攻撃が当たるからねぇ」
　瞬く間に、オブリビオンゴーストの群れへと『空から降る硝子の如き夢の欠片』が降り注ぐ。
　ユーベルコード『降り注ぐは夢の欠片』によって起きた事象だ。
「さあさあ、ご覧あれ。ここはすでに夢の世界……建物などに被害はなく、アタシには有効範囲内は全て見えている」
　にっこりと、柘榴はチェーンソーを振りかぶって来るオブリビオンゴースト相手に硝子の如き夢の欠片を激突させて撃破。
　夢に関する『生命体の埒外』を所有する悪魔は、適合したナイトメアを駆動させて夢を紡いでいく。
「今この瞬間……戦場内そのものは夢その物――だからね、隠れようにもできないよ」
　つまり、既に『サイコチェーンソー』は全て撃破の目途が立っているという事。
　ナイトメア適合者の悪魔は、ナイトメアビーストの配下へと容赦なく『夢』を用いて攻撃を仕掛けていくのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ここがシルバーレインの世界かぁ。ここでの戦闘は初めてだが……｜元いた世界《ケルベロスブレイド》と同じ感覚で動けそうでござるね」
　かつてケルベロスディバイドと似て異なる地球……『ケルベロスブレイド』と呼ばれる世界の地球を守り抜いた『異世界のケルベロス』の一人である竜姫士、フェル・オオヤマ（氷焔操る紅の竜姫士・f40802）はシルバーレイン世界の鎌倉を見渡しながらも戦闘態勢を整えていく。
　目の前にはチェーンソーを振りかぶるオブリビオンゴースト『サイコチェーンソー』の群れ……しかし、集団戦等フェルはすでに経験している。
「敵は１体たりとも通さないように、だね！　了解！」
　瞬間、フェルはドラゴニアンとしての翼を広げて飛翔。
　相手のユーベルコードがチェーンソーによる白兵戦ユーベルコードである事を活かし、空中に一旦逃げて空から敵の位置を把握していく。
「無線やスマホで常に仲間と連絡を取れるようにして、っと！」
　マテリアルロットを手に持ち、防衛の手が薄くなおかつ敵が多く押し寄せようとする場所を把握したフェルは自身のユーベルコードを発動。
　その名は『｜我竜《ラーニングアーツ》・｜月渦氷陣《フリーズストローム》』――指定地点からレベルｍ半径内を氷と冷気を伴った竜巻に変えるユーベルコードだ。
「風よ！　氷よ舞え！　そして我が前に立ちふさがる敵を切り刻め！　フリーズストローム！」
　オブリビオンゴーストの群れを竜巻で纏め、一網打尽になった所を竜の頭部を模した多機能バスターライフル『神穿ツ竜ノ顎』で確実に撃ち抜き撃破を試みるフェル。
　それは正に歴戦の『異世界のケルベロス』の姿……謎のゲートに導かれるがまま新たな地球に、そしてデウスエクスとは異なる脅威に襲われている人々を守るべく、竜姫士は戦うのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「母校の危機なら駆けつけないわけには行きませんね――さっさと殲滅してしまいましょう」
　領域型ユーベルコード『黒影の領域』を展開し、半径147メートルを『闇のオーラ』で覆うのは天宮・紫苑（人間の魔剣士・f35977）。
　魔剣士として剣を振るうだけでなく、闇の｜帳《オーラ》を展開した範囲内の敵から生命力を奪うユーベルコードを用い、紫苑はオブリビオンゴースト『サイコチェーンソー』を弱体化させた上で切り刻んでいく。
「敵のみから生命力を奪う……つまり、民間人や家屋には被害が出ないでしょう」
　また一閃――魔剣士が振るう大太刀『闇纏』とサイコチェーンソーのチェーンソーが鍔迫り合いを繰り広げ、やがて大太刀がオブリビオンゴーストを唐竹割りの如く真っ二つにする。
「さて、このまま放っておいても殲滅できますが……」
　とはいえ、相手はナイトメアビースト……知性を宿す狂気に落ちたナイトメア適合者の能力者。
　高度な戦略を練り上げる事を可能とする以上、力によるごり押しは危険だ。
「だからこそ、見守らせてもらいますね――母校の入り口を」
　ユーベルコードを起動したまま、敵が見当たらなくなるまで学園周辺を警戒していく紫苑。
　思った通り、大勢を囮として少数のサイコチェーンソーが銀誓館学園に突入しようとしていた。
「させませんよ」
　大太刀『闇纏』の一閃――それはオブリビオンゴーストの首を複数体分刎ね、銀誓館学園への侵入を抑止する。
　他にも別動隊がいる可能性は非常に高いだろう……休まず紫苑は他の銀誓館学園の入り口を見て回る。
「早々に片付けさせていただきます」
　闇に紛れながら目立たず、忍び足を駆使してオブリビオンゴーストの背後を取り……そのまま、紫苑は斬滅するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「大変なことになってるね〜……ボクも猟兵として頑張らないと！」
　最後に銀誓館学園周辺のオブリビオンゴースト包囲網を崩すべくやってきた六番目の猟兵は、レイヴァ・エレウネラ（不敵で不思議な女神・f44350）。
「目的が広域殲滅なら……惜しみなくユーベルコードを使っていこうかな！」
　展開するは『異界神星域・虚界』――広範囲に異界のエネルギーの空間を作り、空間内の存在を消滅させるオーラを放ちながら異界のエネルギーで自身を強化するユーベルコード。
　その応用として『空間内の存在を消滅させるオーラ』を操作する事で、レイヴァは周囲のオブリビオンゴースト達だけを纏めて消滅させていく。
「オーラは障害物を貫通するから、見えない敵も一掃できるよ！」
　既に包囲網が瓦解寸前だったことも合わさり、銀誓館学園に侵攻しようとしていた『サイコチェーンソー』の群れは綺麗に位階のエネルギーの空間展開によって消え去っていく。
「惜しくも巻き込まれなかったオブリビオンゴースト達は……一体一体殴り倒していこうね！」
　最後に、レイヴァは異界のエネルギーで自身を強化。
　格闘好きの女神は、ゴッドハンドの如く徒手空拳をオブリビオンゴーストの残党相手に披露。
　チェーンソーが反撃としてレイヴァへと振るわれる前にその凶刃も、オブリビオンゴーストの肉体も全て粉砕されていく……
「ふー！　これで次の段階に進む感じかな？」

　――六番目の猟兵の活躍により、銀誓館学園侵攻とメガリスの奪取は防がれた。
　次は、銀誓館学園の反撃の時間である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第2章 ボス戦 『自尊心の虎』

POW   :    臆病な自尊心と尊大な羞恥心 全身を【肥大しつづける無数の虎の頭部】で覆い、共に戦う仲間全員が敵から受けた【プライドを傷つけるような行為】の合計に比例し、自身の攻撃回数を増加する。 SPD   :    個人情報特定電流 【全身に帯びた電撃】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【SNSのIDとパスワード】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。 WIZ   :    承認を求める虎の群れ 自身が【屈辱】を感じると、レベル×1体の【燃え盛る毛皮を持つ虎】が召喚される。燃え盛る毛皮を持つ虎は屈辱を与えた対象を追跡し、攻撃する。 イラスト：青空皐月 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　――百目鬼・面影の元へ征くルートを、オブリビオンゴーストが塞ぐ。
　それはナイトメアビーストが一人のユーベルコード『錠前屋』の効果によるものだ。
　このユーベルコードを移植された目の前のオブリビオンゴーストを討たない限り、百目鬼の元へは辿り着けない。

　銀誓館の生命使いよ、六番目の猟兵よ――錠前を、破壊しろ。


「さて。銀誓館学園の防衛は完了したみたいだし……私たちも打って出るとするか！」
　ケルベロスコートを靡かせ、フェル・オオヤマ（氷焔操る紅の竜姫士・f40802）はユーベルコード『錠前屋』を保有するオブリビオンゴースト『自尊心の虎』と相対。
　オブリビオンゴーストのユーベルコード『承認を求める虎の群れ』に対し、フェルは迫り来る『燃え盛る毛皮を持つ虎』へと飛び込んでいく。
「承認欲求が拗れた結果虎になってしまったのか。どうせなら竜の方が空を飛べる――向上心も身につけれるのにねぇ？」
　しかしフェルも歴戦のケルベロス……オブリビオンゴーストの特性を活かし、攻撃の前に口撃を仕掛ける。
　相手を煽って敵意を自身に向けさせ、使役系ユーベルコードの精度を鈍らせて『燃え盛る毛皮を持つ虎』の猛攻と連携を凌ぐと同時に反撃を紡ぐ。
「風よ！氷よ舞え！　氷嵐を以て我らの障害たる敵を打ち倒す！――ブリザードオブ・ルナ！」
　ユーベルコード『｜我竜《ラーニングアーツ》・｜月光氷嵐《ブリザードオブ・ルナ》』発動……戦場全体に『蒼白く輝く吹雪の嵐』を発生させていくフェル。
　銀色の宝石の装飾が施されている長杖『銀の星』を装備し、魔力を増幅し安定感を高めながら彼女は追加で召喚された虎ごとオブリビオンゴーストを攻撃していく。
「煽られたからって数で何とかしようって言うのかね？――それなら纏めて凍結されちゃえ！」
　竜姫士は氷炎を操作するユーベルコードを得意とする。
　その内の一つである吹雪を発生させる『｜我竜《ラーニングアーツ》・｜月光氷嵐《ブリザードオブ・ルナ》』による広域殲滅を行う事で、目標である『錠前屋』を解除するべくフェルは立ち回る。
「幾ら虎を召喚しようとも、関係ないよ――全て、私達が食い止めて打ち破って見せるから！」
　次々と現れる虎を凍結粉砕して処理しながら、フェルは『自尊心の虎』へと高らかに自分達の勝利を宣言する――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「さて、さっき置換中に怪しいところがあったけど……十中八九、そこにいるよね。学園への侵攻も防げたみたいだし、行こうか……！」
　蘇芳・柘榴（商人/夢守り人・f43635）は『夢現の鋏剣』を構えてオブリビオンゴースト『自尊心の虎』へと相対。
　――『虎』、という姿に柘榴は何か思い当る所があったのか、得心した様子で頷く。
「なるほど、目の前の虎が門番か」
　振るった『夢現の鋏剣』を用いて牽制を行い、そのまま距離を取っていく柘榴。
「……ある意味、ネットが発達している世界故に出来た『虎』だよね。だから、その雷撃に付加してるのが、SNSに紐づいてしまうのか」
　ネット社会だからこそこの『虎』は生じうる。
　単なる雷撃操作ではなく、命中した人物の個人情報を集めてそこから攻撃を行うという特性は、成程過去の『｜死と隣り合わせの青春《シルバーレイン》』よりも現在の方が生じ得るだろう。
「SNSはアタシ、持ってなかったりするんだけどね？――まあ、その雷撃は避けたほうが良いか」
　受けるのではなく、捌く方針で……柘榴はユーベルコード『個人情報特定電流』を回避。
　そのまま突進してきた『自尊心の虎』へと柘榴自身のユーベルコードを発動していく――
「どのみち、アタシには向かってくるだろう？――切断」
　――『夢現の鋏剣』で牽制として薙いだ空間。
　そこから『夢の魔力でできたギロチン』が射出され、オブリビオンゴーストの肉体を深々と切り裂いていく。
「アタシは夢境界の悪魔だからね、こういうこともできるんだよ？」
　そんな風に笑みを浮かべながら、柘榴は再び『夢現の鋏剣』を振るって『夢の魔力でできたギロチン』を射出するユーベルコード『夢現のギロチン』を発動するのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「……『錠前屋』、絶対的な足止め能力、とはいえ……」
　天宮・紫苑（人間の魔剣士・f35977）は大太刀『闇纏』を取り出してオブリビオンゴースト『自尊心の虎』へと挑む。
「能力の使い手を排除してしまえば良いだけです」
　魔剣士が使うことを前提として鍛えられた大太刀は、ユーベルコード『黒影剣・気魄』の発動条件を満たして周囲に『闇のオーラ』を展開していく。
　それは視覚と嗅覚での探知能力を奪い、生命力を奪う力場を展開するユーベルコード。
「さて、さっさと倒してしまいましょう」
　更に目立たない様に忍び歩きで闇に紛れ……紫苑は『自尊心の虎』へと大太刀『闇纏』を振るっていく。
「何があってもユーベルコードは解除しません」
　冷静沈着に、落ち着き払う事。
　それがあの『｜死と隣り合わせの青春《シルバーレイン》』を生き抜いてきた紫苑の心得。
　オブリビオンゴーストとの戦いとなった現在でも、其れは揺るがない。
「感知されないように、できれば一方的に打ち倒したいですが……ボスクラスとなると、そうも行きませんね」
　全身を『肥大しつづける無数の虎の頭部』で覆い尽くし、異形の姿となった『自尊心の虎』は『天宮・紫苑』の存在を確信し、手あたり次第に闇の中を無差別攻撃していく。
　だが、紫苑も卓越した跳躍力と瞬発力を以て無差別攻撃を回避。
　そのまま『自尊心の虎』の背後を取り、その背を袈裟斬りにする――
「次が本命ですからね」
　淡々と、それでいて強い覚悟を思わせる声色と口調。
　その残響を闇のオーラの中に響かせながら、紫苑は魔剣士として大太刀『闇纏』を振るっていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「いよいよ『錠前屋』も突破できそうです……ここから、ナイトメアビーストを撃破する為に加勢しますよ！」
　火土金水・明（夜闇のウィザード・f01561）はユーベルコード『ファイナル・フレア』を発動。
　その性質はシンプルに『全ての魔力を込めた一撃』を放ち、156メートル半径内の指定した全ての対象を攻撃する……というものだ。
「この攻撃にすべてを込めて！」
　何体もの召喚された『燃え盛る毛皮を持つ虎』……オブリビオンゴースト『自尊心の虎』のユーベルコード『承認を求める虎の群れ』による包囲攻撃に対し、ユーベルコード『それはまるでチートのような、とんでもない才能』の効果も合わさり広域指定殲滅攻撃となるユーベルコードは戦場を六番目の猟兵の有利に展開させていく。
「と、相打ち狙いで突撃ですか？――残念、其れは残像です」
　その明の殲滅攻撃を掻い潜り、肉体を文字通り半壊させながら『燃え盛る毛皮を持つ虎』は明に攻撃……相打ち上等で攻撃を仕掛ける。
　が、卓越した『残像』が生じ得るスピードを以て明はその攻撃を回避。
　奮戦空しく突撃した『燃え盛る毛皮を持つ虎』は『ファイナル・フレア』の『全ての魔力を込めた一撃』を直接叩き込まれ、塵も残さず吹き飛ばされる。
「しかし、ここで図には乗りません……私の目的は、後続の猟兵に有利になる様に遊撃を行う事」
　そう言って『燃え盛る毛皮を持つ虎』の殲滅とオブリビオンゴースト『自尊心の虎』に致命的なダメージを負わせたのを確認した後、明はすぐさま撤退に移る。
「オブリビオンゴースト……ナイトメアビーストの猛攻も防いだ以上、ここからは『百目鬼・面影』を討ち取れるか否かになるでしょう」
　そんな風に今回の戦場の局面と戦況を分析しながら、明はグリモア猟兵の転移で撤退に成功。
　ダメ押しにもう一回『ファイナル・フレア』をオブリビオンゴースト相手に解き放ち、最後に加勢する六番目の猟兵へとつないでいくのであった――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「なんや柘榴が気にしててな。たぶん、先に交戦しとるんちゃうか？」
　花葉・黄蘗（卜者/夢の防人・f44417）……2011年に地球へ至るための作業中に、神隠しに合いシルバーレイン世界から離れ離れになり、グリモアベースとシルバーレイン世界が繋がった事で帰還に成功したルナエンプレスは鎌倉へと降り立つ。
「……それに、この勢力は『青の末妹』があないにも愛し、熱込めて語った銀誓館学園狙ってたんや。覚悟はしてもらわなあかん」
　そんな風に強い決意を呼び起こした後、黄蘗はユーベルコードを発動。
　ユーベルコード『ルナティック・マグネタイト』――力の力量に応じた時間の間、全身から月光の魔力を放出して全能力を倍増すると同時に『空飛ぶ月光の刃』で攻撃するという異能。
「いうて、僕は猟兵に成りたてや……力の継続時間もしれとる」
　だからこそ、彼は幻影使いの技能で自身の幻影を作り出して撹乱。
　そのまま所有する｜龍頚珠《りゅうのくびのたま》から凍結光線を放射して攻撃に繋げていく。
「10秒で決めてやる――ユーベルコード『ルナティック・マグネタイト』……」
　言葉と同時、瞬く『空飛ぶ月光の刃』はオブリビオンゴースト『自尊心の虎』を切り刻んでいく。
　反撃として『自尊心の虎』の方もユーベルコード『個人情報特定電流』で攻撃するが……
「ところで、SNSって何や？　この世界には帰ってきたばかりで、ようわかんわ。今はA＆W世界住みやし」
　――SNSを一切行っていない者にとっては、ただの電撃に過ぎない。
　その相性差を以て、かつてのナイトメアビーストのユーベルコードを移植された『自尊心の虎』は撃破されるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『百目鬼・面影』

POW   :    黄金昭和時代 【昭和時代の物品】から1体の強力な【黄金の昭和ゴースト】を召喚する。［黄金の昭和ゴースト］はレベル秒間戦場に留まり、【元の物品にちなんだ手段】で攻撃し続ける。 SPD   :    リメンバー昭和 【昭和時代の物品】から【半透明の昭和ゴースト】を放つ。ダメージは与えないが、命中した対象の感情から【未来への意志】を奪う。 WIZ   :    遥か遠き昭和 【昭和時代の物品】からレベル×6体の【朧げな昭和ゴースト】を召喚する。［朧げな昭和ゴースト］は弱いが、破壊されるまで敵を自動追尾・自動攻撃する。 イラスト：秋田なお 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

「ああ、何と嘆かわしい」
　悲嘆……というには、あまりにも濃すぎる傲慢の声色。
　懐旧と言えば聞こえがいいが、その実『己の尊ぶべき過去』以外を眼中にしない懐古主義。
　其れを体現し、或いは悪用したのが……ユーベルコード『リメンバー昭和』。
　――ナイトメアビーストが一人、百目鬼・面影の力だ。
「書架の王……其れが如何なる存在であれ、その『侵略蔵書』があれば『全ての世界の世界の全て』を『昭和』にする事も、十分に可能でしょう」
　そんな風に嘯くナイトメアビーストは、手に取った昭和の物品……それを媒介として『昭和ゴースト』を召喚していく――！


「貴様は静かに消え失せた」
　最初に百目鬼・面影の元へと辿り着いたのは、ロバート・ブレイズ（冒涜王・f00135）。
　シャドウハンターとして、ユーベルコード『｜デフォルメ頭部の物語《ベイカー・メーカー》』を発動して百目鬼に『ブージャム』を投擲していく。
「ならば『黄金昭和時代』！」
　咄嗟に百目鬼は『ブージャム』を『黄金の昭和ゴースト』を召喚する事で防御。
　しかしロバートの目的は『ブージャム』を囮として百目鬼に肉薄する事であった。
「カカッ――否定せよ」
　そっと手を添える様に百目鬼の脇腹に触れるロバート……次の瞬間、強烈なイメージが百目鬼の精神を汚染していく。
「平成でなく……令、和……！？」
「去り行く者は去り、残されるは塵芥……カカッ、或いはそれらを踏む者ですら強烈なる――」
　言葉一つ一つが、所作一つ一つが、冒涜王の全てが、百目鬼の精神を汚染していく。
　彼の精神汚染の技能は、並みのユーベルコードを凌駕している故に――

成功 🔵​🔵​🔴​

「昭和ですか……私が生まれる前なんですよね」
　魔剣士として『大太刀『闇纏』』を取り出した天宮・紫苑（人間の魔剣士・f35977）は、ユーベルコード『黒影剣・気魄』を発動。
　魔剣士が使うことを前提として鍛えられた身の丈ほどもある長大な大太刀は、百目鬼が召喚した『黄金の昭和ゴースト』に深い斬撃痕を刻んでいく。
「良いと思いませんか？　理解するべきでしょうけどねぇ……」
「理解の強要は、理解と受容から最も遠ざかる行為でしょうに」
　いつもと変わらず、慌てず騒がず落ち着いて、隠れ潜んで不意を打つ――魔剣士として忠実に……闇に生き、闇に染まりし暗殺剣を操る能力者として、闇に紛れて気配を消す。
　そのまま音を立てないように体捌きをこなし、鍛え上げた膂力で暗殺剣を紫苑は振るっていく。
「闇よ……」
　展開するは闇のオーラ……触れた敵の生命力を奪うその漆黒は、傷を刻まれた昭和ゴーストの背後を取って――
「ただ、言わせていただきたい言葉があります」
　そこで紫苑はユーベルコードを解除。
　百目鬼と昭和ゴーストが目視できる状態で、言葉を放っていく。
「すでに昭和が終わり30年以上、平成を通り越して令和の時代」
「……オブリビオンゴーストとして蘇った後、其れが一番応えましたね……」
　ぶつけられた言葉は、百目鬼のユーベルコードの精度……昭和ゴーストの出力と存在維持にブレが生じ得る。
　――その隙を、鍛え上げられた魔剣士である紫苑は決して逃しはしない。
「すみませんが、流石に時代遅れが過ぎますのでとっととご退場ください」
　切り裂くのは昭和ゴーストではなく、百目鬼本体……
　ユーベルコード『リメンバー昭和』の使い手は、深い痛手を負う事となる――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「あ、やっぱり。柘榴も来てたんや。あれだけ言ってたら、まあ当たり前やな」
「なんだ、黄蘗も来たんだ……じゃ、組もうか。頼りにしてるよ」
「うん、一緒に行こか」
　最後に、百目鬼・面影の元へとやってきたのは蘇芳・柘榴（商人/夢守り人・f43635）と花葉・黄蘗（卜者/夢の防人・f44417）の二名。
　柘榴が攻めて、黄蘗が支援するという体制で『リメンバー昭和』を追い詰めていく――
「というてもな、今回、僕がやるのは援護なんや……『ラブマックスルナ』」
　まずルナエンプレスの少年が『黄金の月光』を放射。
　更に『光の子安貝』……美しき魔力の光を放つ、貝殻に似た形状の投擲武器をなげた上で『龍頚珠』を用いる黄蘗。
　空中に浮かび冷気と光線を放つ、念動力で操る握りこぶしほどの宝珠から放射される冷凍光線を用いて、更に攻撃援護を行っていく。
「ところでさ、面影さん。あなたの言う昭和って、いつ頃なんだろね？――え？　今？　昭和99年で平成36年で令和6年だよ？」
　冒険商人として、話の種と話術は立派な武器の一つだ。
　特にUDCアース等、アース系世界では一部の情報を共通規格として機能させる事が出来る。
「昭和うんぬんは……柘榴が言うとるな。昭和、長かったって聞いたことあるけど……」
「まぁ、半世紀以上は続いたからねー……さて、アタシは『｜夢の槍雨《ドリーム・ランスレイン》』でその朧気なゴーストともども、面影さんを攻撃しよう！」
　刹那に具現化するのは、夢属性で構築された槍の雨。
　幾何学模様を描き複雑に飛翔する『夢属性の槍』は、数だけは多い朧げな昭和ゴーストの群れを殲滅していく。
「弱いけれど、いなくなるまで厄介だからね……これでいなくなってくれたら、万々歳さ」
「……ファイナルナイトメア、確か『青の末妹』の銀誓館学園を最も追い詰めた闘いの一つだったか」
　そこに、同じルナエンプレスである『青の末妹』……銀誓館学園の理事長について思いを馳せる黄蘗。
「その末妹が大切にする場所を襲撃するんやったら、僕も来る理由にはなるでな……血は繋がらずとも、月帝姫ならば『兄弟姉妹』や思てるんに」
「妹思いだねぇ……」
「末妹が大切にしとる場所を、しかも長期休みに襲撃するんは……な？」
　そんな会話を繰り広げながら、ルナエンプレスと夢境界の悪魔である六番目の猟兵達は百目鬼の様子を窺う。
　どうやら、柘榴の包囲殲滅ユーベルコードによって瀕死状態の様だ。
「それじゃあ、後は任せるわ」
「うん、この『夢現の鋏剣』でトドメを刺すよ！」
　薙ぐように、夢白剣と現黒剣からなる、二本一対の片刃剣……クロスシザーズでオブリビオンゴーストとして蘇ったナイトメアビースト『リメンバー昭和』百目鬼・面影の首を刎ねて止めを刺す柘榴。
　その様子を見て、黄蘗は一息ついて肩を下ろす。
「しかし、この次は……」
「うん……いよいよ――『次』が始まるかな」
　そう言って、とある『世界』を見据えるかのように二人の六番目の猟兵達は一つの方向に視線をやるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2024年08月31日