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親ナシサアカス

#サクラミラージュ #影朧サアカス #受付:9日の23:59まで #締め切り済みです

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“母が男と逃げた”
“父は私を追い出した”

 15の私が産まれた当初うちは貧しかった。
 子が産まれたというに勤め人を辞めた父は「自らのアヰデアを企業に売って生きていく」なんて夢を見た。
 たまたまの思いつきが当たって資本家として身を立てるまで10年、母が寝ずの内職で必死に金を作ってくれた。まさに糟糠之妻というやつだ。
 だが金ができた父は苦労で老け込んだ母を蔑にし、夜な夜ないかがわしいカフェーの女給をとっかえひっかえし遊び歩いた。
 私は、震える母の背を撫で摩ることしかできなかった。けれど、その手はちっぽけすぎたのだ。
 母は5年耐えた。
 堪え忍ぶ中で通いの使用人と身も心も通わして、その男の子を身ごもった直後に姿を消した。
 あれほどに若い女に溺れ、母を老女と蔑んだ父は半狂乱になり私を殴り責めた。何故、母を駆落ちさせたのだと。どんなに「知らない」と言ってもわかってくれなかった。
 やがて私は無一文で追い出された――「躰を売って金を稼げばよい、売女の母のようにな」とせせら笑う父によって。
 斯くして、學府に通う女學生の日常はいとも容易く崩れ去ったのだ。

 ここに、それぞれの親が私に投げつけた捨て台詞を記そう。
「ごめんなさい。日に日にあの男に似てくるあなたを連れてはいけないわ。私の本当の愛はこの子にだけあるの」
「嗚呼! 嗚呼! あの淫らな糞女に娘のお前はそっくりだ!! そんな顔は見たくもないッ! 出て行けェ!」

「どうすればいいというの? 私はパパとママの遺伝子が組み合わさってできた娘なんだから、どっちにも似ていて当たり前よ!!」
 この顔を剥がせばいいのかと、どぶ川に映る容の額に爪をたてたなら、背後から声がかかった。

『いけないよ、そこな學徒兵のお嬢さん。愛らしい容に疵がついてしまう』
 黒ずくめで痩身の男は底の読めない笑みで私の手首を掴む。柔らかなのに決してふりほどけない事に、当時の心が疲弊した私は気づけなかった。
 ただ催眠術のように心地良い声に胸を震わせて、ああだけど、ここでしな垂れかかったらふしだらな母と同じだとぐっとこらえ足を踏ん張った。すると、涙がこぼれてしまうのだ。
『お嬢さん、自分でよければ話ぐらいは聞きますよ』

 まだ夜闇に堕ちる前の逢魔が時、學徒の制服に身を包む娘は男が救いの手と縋った。
 純潔を売り渡す闇から逃れても、人間性を佚する真闇に囚われるとも知らず――。


 憐れじゃと久礼・紫草(死草・f02788)は切り出した。
 浮気の挙げ句に夫婦関係が破綻した親に齢十五の娘は捨てられた。名を|嘉納・静香《かのう・しずか》と言う。
 もう数ヶ月前にもなる、厭世の情に囚われた所を或る悪辣な影朧につけこまれたのだ。
「どう嗾したかはわからぬ。影朧は娘を『セツコ団』というサアカスの団長に祭り上げたのじゃ」
 セツコとは、娘の母の名だそうな。さて、母への思慕かそれとも自分を捨てて不幸に貶めた恨みか。
「この影朧サーカスは逢魔が時にのみ現れる。帝都だけではない、世界各国を巡っては、自分に似た境遇の娘や傷ついた影朧を取り込んでおる」
 まるで移動する逢魔が辻だ。このような事例は過去にも幾つかあり、猟兵の介入により解決を見た。
「顕現している時以外はしっぽが掴めぬのが厄介でのう。此度、儂の目に止まったのは行幸。皆、サアカスとやらに潜入して対処してはくれまいか」

 まずは団長に近づく為に『演目』を行って欲しい。
 一般的なサアカスならば、空中ブランコや大玉乗り、ジャグリングしながらの綱渡り、猛獣ショウに歌姫の歌謡ショウ、などなど。その他、猟兵が得意とする演目ならばなんでもよい。ユーベルコヲドを使用しても構わない。
 このサアカスはごった煮が真骨頂。故に飛び入りで興行舞台に混ざるのは非常に容易い。特段の警戒は不要だ。

「潜入したならば、追々皆の|あやしさ《・・・・》に気づく。すると取り込んだ影朧が襲いかかってくるじゃろうな。それを撃破して、なんとか団長の娘を救い出して欲しいのじゃよ」
 紫草は灰色の目を伏せて重々しく告げる。
「先にも云うたが、この影朧サアカスは一度興行が閉じたら捉えること叶わぬ。娘を助けるのは此が最初で最後の機会となる」
 憐れな娘がこのまま悪辣な影朧の狂言回しと扱われて良い道理はない。
 どうか、皆の手でこのサアカスに永遠の幕を下ろして欲しい。


一縷野望
お久しぶりです、一縷野です
プレイングはいつでも受付け中です

文章作成のリハビリ中です
長期運営とならぬようシンプルに書いて進める予定です
上記の事情のため、オーバーロードはいただけても通常リプレイと然程変わらぬ文字数になる予定です
よろしければプレイングをお待ちしてます
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第1章 冒険 『乱入! 影朧サアカス興行』

POW   :    猛獣との格闘や怪力パフォーマンスを演じる

SPD   :    華麗なジャグリングやナイフ投げを演じる

WIZ   :    ド派手なイリュージョンを披露する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アリス・セカンドカラー(サポート)
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい♥

それはまるでチートのような、とんでもない才能であると便利な|舞台装置《デウス・エクス・マーキナー》役な|狂言回し《サポート》。

瞬間的に|主観の世界観を切り替える魔術的パラダイムシフト《高速詠唱早業先制攻撃多重詠唱拠点構築化術結界術》による妄想を具現化する|混沌魔術《欲望開放》で|戦闘、諜報、輜重《多重詠唱×各種技能》とマルチに活動可能。
|大概のことは高水準でこなせるわ《高性能を駆使する、応用力》

依頼の成功を大前提に、あわよくば己の欲望を満たそうとするかも?
|エナジードレイン《大食い×魔力供給×料理》と|融合《捕食×魔喰》でえっちなのうみそおいしいです♥




 サァサァ! よっといで! 『セツコ団』のタノシイ見世物だよ!
 ビニルのテントは夕暮れ色にそっくり。だから見つけられたお嬢ちゃんは運が良い!

「なんだぁなんだ、このしけた稼ぎはよぉ。酒代にもなりゃしねえ!」
「おっとう、ごめんよぉ、ごめんよぉ! 今日はお花が売れなかったんだよぅ」
「口答えすんな、クソガキがぁ!」
 派手派手しいテントの前で、茜を背にした長い二つの影がもつれ合う。そして打撃音と共に小さな方が転がった。
 酒浸りの赤ら顔の親父は、頭を抱えて震える娘めがけ更に拳を振り下ろした。だが、直後にはズデーンと無様にスッ転ぶ。地面にいたはずの娘は忽然と消え失せていた。


 直後、舞台に突然現れしはアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の混沌魔術師ケイオト艶魔少女・f05202)
「ようこそ、私のワンダーランドへ♪」
 虐待に晒されていた娘は、お姫様抱っこをされて目をぱちくり。
 アリスは、気障に可憐にウインクで返し、観客席へと振り返る。
「父親の理不尽なる拳の雨に打たれる姫君は、こうして私が救い出しました」
 頭上に備え付けられたテレビジョンには娘の消失に気色ばむゲス親父の姿。先程、まさに痣だらけの娘もそこに映っていたのだ。
 しかしアリスの姿は見えず、ただテレビジョンから小鳥のさえずりめいた口上だけが響いていたのだが。
「さぁ、こちらへどうぞ。お姫様」
 ロココ調の貝殻艶めくソファへ、アリスは娘をおろした。それこそ宝物を扱うように丁重に。
 夢のような赤い絨毯に金の椅子が並ぶ観客席からは羨望の眼差し。観客は全て、不幸の沼に肩まで浸かった顔した娘たちだ。
『お嬢様方、そのように容を曇らすものではないわ! ここに招かれたあなた達はサアカスの夢に選ばれたのだから!』
 舞台袖からキラキラと響く乙女の声。姿はない。アリスは声の方へと大仰に|頭《こうべ》を垂れた。
「団長、私の芸はお眼鏡に叶ったかしら?」
『ええ、大満足よ。私好みの|奇蹟《イリュージョン》ったらないわ!』

成功 🔵​🔵​🔴​

音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。



自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
                      プロデューサーより




「やめて、ハードルあげないで……」
 団長が待機する舞台袖とは反対側で、床に蹲る形でガクガク震えているのは音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)である。
 ハートフルイリュージョンですっかりあたたまった場は、今か今かと次の見世物を待ち構えて居る。それが鬱詐偽にはものすごい|重圧《プレッシャー》だ。
「ど、どどどど、どうすればいいの?! やっぱりユーベルコードで奇蹟爆アゲかしら」

 案1:苦戦を映して応援してもらう。
「ダメよ、戦いなんて恐がらせてしまうわ……」

 案2:猜疑心や恐怖心を感じたら~
「確か猛獣使いという芸があるのよね。猛獣に襲われそうになったら恐いわ……ああ、だけど猛獣を殺したら流石にドン☆引きでしょう……」

 案3:周囲に落下する錯覚を感じさせて~
「観客を怖がらせてどうするのよ……叩かれて炎上してしまうわ。いや、炎上恐い……」

 漏れかけたバロックレギオンをしまい込んで、鬱詐偽は頭のおみみをきゅうっと掴む。案4と5は歌だけど、操ったり戦いに駆り立てるのはNGが過ぎる。
 そもそも、いつもは画面越しだから保っていたのだ。ライブ配信だって緊張するのに、生の舞台とか無理すぎる。
『サァ! お次の飛び入りは誰かしら? 余り待たせるものではなくてよ!』
 団長の凜とした声がよく通る。
「あぁぁあああああ……もう、私が出ないとケリがつかないじゃあないのおぅ……」

 ――黒いおみみの白|ウサギ《鬱詐偽》は、颯爽と舞台に飛び出した! もうこうなったら慣れているアレでぶっつけ本番でいくしかない。

「世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん、ただいま参上」
 鬱詐偽は歌った、主題歌を。頭真っ白でもそれだけは出てくるのだ。
 ネガティブな彼女が勇気を奮い立たせる様は、不幸な少女たちに「自分たちもがんばれる」と共感を与えたらしい。パチパチと響く拍手に鬱詐偽は深々とお辞儀する。
(「良かったわ、炎上しなかった……」)

成功 🔵​🔵​🔴​

大町・詩乃
呼びましたか?呼びましたよね?
そう、私が!ここに!います!
とバニィ心で衆生救済♪

こうして猟兵として悲劇に介入できる機会を得ましたから、
その後も含めて出来る限りの事をしますよ~。

ダークセイヴァーで契約したバニーの紋章を使ってバニーガールに変身!
兎の如き身軽さ(軽業と空中戦)と敏捷さ(ダッシュとジャンプ)、
そして《天賦の才》を以って、まずは床体操でオリンピック選手達が
行うような華麗なジャンプやひねりながらの宙返りで団長や観客の皆さん
を魅了します。

その次は空中ブランコ。
大車輪したり、回転しながら飛び移ったりと、空中で華麗に舞います。

最後は華やかな笑顔で大きくお辞儀。
団長さん、皆さん、如何でしょうか♪




 吃驚への期待に満ちたキラキラの瞳の彼方に、しなやかなる跳躍でひとりの娘、大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)が現れる。
 頭の黒くて長い耳をゆらし、クラッシックをお洒落にアレンジしたメロディに乗って詩乃はバレリーナの如く優雅に巡る。飾る光は、色とりどりの万華鏡。
 音楽が、止む。
 床を踏みきり空中一回転。ヒュルリッと風切り音で皆様の耳を遊ばせた、ウサギの娘は――ここで、なんと空中静止。

『空を飛んでるわ!』
『ねぇ、あれどうなってるの??』

 口々に囀られる吃驚。その謎解きはライトに浮かぶ。天井からのびる華奢な糸に結ばれた三日月型は空中ブランコだ!
 再びはじまった曲はゆったりとしたメロディライン。夢幻のライティングと紙吹雪を浴びて、詩乃は投げキッス。
「みなさまのおめめをしばし拝借♪」
 ハイヒールの踵で虚空を操り、グンッと九十度以上の角度でこぎあがると手を離した。躊躇いのない飛び出しに観客たちは釘付けである。
 反対側から現れたのは豪奢な大車輪。ぱしりと縁を掴んで逆上がりから、車輪の上にしゃなりと立った。
「はい!」
 曲面にて危なげなく片脚あげてつま先立ち、広げた腕は白鳥の羽ばたき。
 危なげなくはあくまで詩乃の視点。観客たちはハラハラドキドキ! 『こわいわ』と震えつつも目が離せない。
「大回転とくとご覧あれ♪」
 下には誰もいないのに、不思議不思議。ぐるんぐるんと大回転。苛烈な風圧の中で、詩乃はにこにこ笑顔でみんなへと手を振った。
 バニィ心で衆生救済♪ あの子もこの子も、一時の夢で笑顔になってくれたら良いな。
 いいや、一時にせず助ける気持ちは満々だ。
 ――ジャン! と、舞台裏でシンバルを鳴らす赤い羽織に黒い袴。サアカスを楽しく運営する団長の静香へも、詩乃の救いたい心根は向けられているのだ。
 最後は大車輪からのダイブ! ひねり回転は人の目にも止まらぬ数の大回転。
 すたんッ! と着地からのお辞儀に拍手喝采。それは舞台袖の静香からも贈られる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

椎那・紗里亜
猟兵としての初仕事はサクラミラージュ。
……本当に大正モダンな世界なのですね。(モガスタイルで登場)
初めての異世界に心が躍りますが、コホンと咳払い。
浮かれてはいけませんねと気を引き締め、サアカスのテントへ向かいます。

翠の拳法着で一対の直刀、紙束を携え、舞台の中央で一礼。
「ようこそ紳士淑女の皆様」
紙束をパアッと宙に放り撒き、両の手にした直刀を閃かせます。
目にも留まらぬ速さで刃を入れた紙は蝶の切り紙細工へと変わり、
まるで飛んでいるかのように風に乗って観客席へ。

「蝶は夢を運ぶもの。幽世と現世を繋ぐものとも呼ばれます」
「この世でもあの世でも。あなたの大切なものに届きますように」

客席に一礼すると舞台暗転。




 クロッシェから覗く髪をバッサリ断髪……の勇気はなかったけれど、ミディアムのワンピースにレトロな小花模様を着こなして、モダンガアル椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)は舞台中央へと進みでる。
『お姉さんはなにを観せてくれるの?』
 最前列の娘の問いかけを合図に、舞台袖の団長の静香がスポットライトを操作した。
 一瞬の暗転。
 |その刹那に服を変える《瞬間着替え》。
 眩い光の下に現れたるは、艶やかなる翡翠のチャイナドレス。クロッシェに隠れていたサラ髪もきゅっと同色リボンでおまとめ。
「ようこそ紳士淑女の皆様」
 一対の直刀を腰にさし一礼。
 直後翳した手にはラメをチラし舞台映えする紙束が現れる。カンフーガアルへの大変身からここまでの一連は魔法にしか見えない。
 少女たちは煌めく瞳を紙束へと集中させる――ああ、懐かしい。かつての星空芸能館でファンが振ってくれた星空ペンライトと同じ輝きだ。
 彼女たちの不幸を未然に刈り取りたい。いいや、そうしてみせる。
「どうかご注目あれ! これよりの魔法、一瞬でございます」
 ハッキリと良く通る自分の声。紗里亜の心に軸が通された。指先もピンとはり、紙束を舞台一面に解き放つのだ。
 夜空に降り注ぐ細雪か! 真夏の絶景にワァッと歓声があがる中で、紗里亜は握った銀刃を翻す。
 あれも、
 これも、
 それも。
 研ぎ澄まされた切っ先は1枚だって逃さない。
 モンシロチョウ、
 アゲハチョウ、
 ルリタテハ。
 常人には捉えきれぬ早業にて数多の蝶へと大変身だ。
「蝶は夢を運ぶもの。幽世と現世を繋ぐものとも呼ばれます。この世でもあの世でも。あなたの大切なものに届きますように」
 セロファン通した色とりどりの光束が忙しなく巡る中、両腕を広げた紗里亜はくるりくるり足払いの要領でまわる。直刀はいつのまにやら扇に代わり、紙の蝶たちは地に落ちることなく飛び続ける。
『なんて綺麗な蝶々さん!』
 スポットライトを動かしながら、団長静香は光熱のもたらす汗を拭ってにっこり。舞台の|奇蹟《イリュージョン》に魅入られる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
……静香さんの境遇に思うところがあり、
猟兵として助けるべく
サアカスに潜入させていただきましょう。

飛び入りで興行舞台に混ざり、
動物と話す、動物使いといった森育ちならではの
技を駆使し、猛獣ショウで盛り上げましょう
ふふ、本当に良い子ですね、もう1回おねがいしまーす!

不足であるならば私自身の芸を披露しましょうか
行うはジャグリングしながらの綱渡り。

綱渡りを行ったことはあまりありませんが、
体幹の強さにバランス感覚には自信があります。
バランスを取りながら野性の勘を生かし、
堂々と歩んでいきましょう

危ういところがあればユーべルコードの力を補助に
《ディープトランス》の力で本能的に動き、
成功を勝ち取ってみせますよ。




 荘厳なる蝶の宴を、出番待ちのユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は舞台袖で観賞する。
『なんて綺麗な蝶々さん!』
 そう瞳を輝かせる静香は、親に捨てられた現実よりも今の方が幸せなのかもしれない。それでも、いいやだからこそユーフィは見過ごせなかった。
 バチン! とスポットライトが落される。それを合図にユーフィは舞台袖から軽やかに跳躍。
『さァお嬢様方、お次は空ですわ!』
 静香の声と共に暗幕に浮かび上がるのは、健康的な肢体の娘がひとり。みみたれウサギのように結わえた髪をぴょこんと揺らし、高さ5メートルに張られた細い綱を歩く。
 ――芯の通った体幹は全くもって危なげない。けれど、それじゃあ面白くない。
「おっとっと」
 わざと蹴りあげて、レトロカワイイビーチサンダルの赤い方を蹴り投げた。
『ああ! 危ない!』
『落ちちゃうわ!』
 娘達は指さしハラハラドキドキ。
「待ってくださーい」
 ユーフィは裸足の指で綱をきゅっと掴んで逆さづり。落ちていくサンダルもしっかり指に引っかけた。
「良かったです。落ちなかった」
 観客席がほっと安堵の息に包まれるのはほんの刹那。
 ぶらんぶらんと揺れる眼下には、ああなんということか! 百獣の王がのしのしと我が物顔で歩いてくるではないか!!
 ガオォォオオ!!! これ見よがしに吼え猛るライオンを前に、少女たちは隣同志で抱き合い身を震わせる。
 膝でくるり、舞台目掛けてダイブだ。観客席は、ユーフィがなにかする度に悲鳴のバアゲンセエルだ。
 弾いたライターで火の輪に着火し華麗に着地。コォコォと燃え上がる炎を浴びて立つユーフィこそが輝きの女王めいているではないか。
「さぁ! こっちですよー!」
 鞭すらいらない。良く通る声で命じるだけでライオンは床を踏みきり焔の輪をくぐる。
 瞳を眇めぐるるぐるる……鬣をすりつける様子は愛らしい仔猫だ。
「ふふ、本当に良い子ですね」
 密林で育った娘にとってはどんな猛獣だろうが良き友。
「もう1回おねがいしまーす!」
 松明で火をとり上のわっかに着火すると、待ちかねたように上、即Uターンで下と連続火の輪くぐりだ!
「皆さん、彼へ今一度大きな拍手を!」
 割れんばかりの喝采の中で、ユーフィはライオンの喉下をご褒美と撫でてやる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
サアカスの演目に相応しいかは分からぬが……
一つ、イリュージョンに見せかけられるユーベルコヲドを披露してみようか

【桜兎の隠し部屋】発動、小さな木製オルゴールを手に乗せて
手近な誰かを手招きし、触れてみるよう促せば
あっという間に中に吸い込まれ、その姿はかき消える事だろう
中の居心地は悪くない筈なのだが
出てこようと思えば何時でも出られるから、無理強いでは無いしな

仕組みは企業秘密だ、とだけ言って人差し指を立てる
問題は、俺自身はこの箱に入れないという事くらいか
代わりに、串刺しトリックならば喜んで引き受けよう
本当は刺す方が得意なのだが仕方が無い

ヤドリガミというのは便利なものでな
本体さえ無事なら……うっ、痛い




 めくるめくアクションに興奮状態の観客たちの心を静めるように、ノスタルジックなメロディが場に満ちた。
 ふんわりとした桜色のライトの元に花道がせり上がる。佇む紳士はニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)である。
「こんばんは。大興奮のイリュージョンを楽しまれたようでなによりだ」
 舞台で魅せる大掛かりな芸は花形。だが観客のすぐそばで術者がもたらす奇蹟もまた思い出に残るもの。
 木製のオルゴールを頬を紅潮させた少女らの前に翳す。
「さぁ、不思議な世界にご招待だ。怖がらなくても良い。願えばすぐに出られる」
『えぇ? こんな小さなオルゴールに入れてしまうの?』
 ニコに促され、ちょんっと指で触れたのは一番好奇心の強い子だ。するとどうだ! 少女の姿は忽然と消えてしまったではないか!!

『消えちゃった!!』
『小さくなるところなんて見えなかった!!』

 ――さて、内側に飛ばされた娘だが、目の前に広がる光景にきょとりと瞳を瞬かせる。
 革張りの座り心地の良さそうな椅子。本棚には読みたかった本が誂えたように揃っている。
『おっかあに、女は勉強するなって叩かれたけど、これ読みたかったんだぁ』
 手を伸ばせば温かいミルクが渡される。本を読むのにおやつは御法度、そんなルールがまた大人扱いしてもらえたようで誇らしい。
 知性の光を瞳に宿した娘は時間を忘れて読みふける――。

「ほら、お帰りだ。くつろげただろうか?」
 ニコが閃かす掌の元に消えた筈の娘が現れた!
『読みたい本ばかり並んでたわ! ありがとう、魔法使いさん!』
 使い慣れぬ単語が自然と転げ出たのは、未だファンタジイ小説の世界の余韻があるから。口角をあげて応えたニコに、我先にと他の娘たちが押し寄せた。
「順番だ。大丈夫、行きたい者は全員招待するから、良い子で並ぶといい」
 自らは入れない匣の中には、どのような世界が広がっているのか。ただ出て来た者達は一様に満たされた表情をしているのがニコの誇りだ。
 ちなみに、オルゴールの書斎が大人気、故にヤドリガミの体を張った串刺しショウは未開催で済むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイ・エインシェント(サポート)
 仕事? あんまする気しねぇなぁ……。オレ、ニートだし。でもあんまプラプラしてる訳にも……あ、それなんか楽しそうだな。オレも混ぜてくれよ。美味いもんは食わせろ。ゲテモノも……気にはなるな。
 ア?! 偉い人?! えっ、あぁ、申し訳ございません。少々立て込んでおりまして。ええ、畏まりました。お任せください。……どっか行った? はぁ……オレ、偉い人とかって苦手なんだよな。

(ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動する。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。あとはおまかせ。よろしくおねがいします!)




 舞台照明に音楽……と、団長の静香は一息つく暇もない。だが生き生きとそれらを操りサアカス舞台を盛り上げている。
(「オレもエリアが実装されてたらあんだけ忙しかったのかねぇ……あぁやだやだ、想像するだけでうんざりだ」)
 なんて怠惰に思いながらも、レイ・エインシェント(ニートのドラゴンプロトコル・f42605)は静香から渡されたレコヲドを棚へとしまう。
『いい加減においたら承知しないわよ。あと、ちゃんと|いろは順《・・・・》に並べること!』
「はい、畏まりました。気をつけます」
 本来はエリアで一番崇拝される役回りだった筈だが、偉い人からの指示へはどこまでもへりくだってしまう。やはり権限を与えられる側である性分なのだろうか。
『嗚呼、今日の飛び入りは皆さんすごいわ!』
 ウキウキと暗転操作をする静香を眺めていたレイは、不意に背筋がぶつぶつと泡立つ怖気に奥歯を噛みしめる。ああ、やっぱりメンドイことになるよなぁと声には出さず背後の気配を伺った。
『何時もよりも芸達者が過ぎる……そうは思いませんか? |団長《お嬢さん》』
 響くは張りのあるテノール、赤い瞳孔だけを動かし捉えた姿は黒ずくめで細身の伊達男だ。
(「成程、こいつが今回のラスボスか」)
 いかにも何かしでかしてきそうだ、特にその黒手袋。
 ニートとて猟兵だ。レイはいつでも静香を庇えるよう神経を張り詰める。
『それは良いことではなくて? 黒桜のおじさま』
 ことりと首を傾げる静香へ、黒桜のおじさまも同じように戯けて首を曲げる。
『けれども、彼らがこのサアカスの永遠なる幕を落す刺客だとしたら? お嫌でしょう、|団長《お嬢さん》』
 それはそうね、と即答する静香に、黒桜のおじさまは満足気に口端を持ちあげた。
「……っぶねぇ!」
 ほぼ同時にレイのいた場所が漆黒で塗りつぶされた。後には、右腕が弾け飛んだ等身大のピエロ人形が残される。
 レイは、吃驚に目を見張る静香の背後に移動し潜む。たった今蓄えたドレインエネルギーをいつでも治癒に使えるよう備え、ウジャウジャと増え出すサアカス人形に警戒する。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『怪奇動くマネキン人形・甲』

POW   :    マネキン・ダンス
【流れる様な動きで様々なポージング攻撃】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    マネキン・アサシン
【戦場が一瞬闇に包まれ、瞬間移動】で敵の間合いに踏み込み、【死角から『影朧の残光』】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    マネキン・バック
自身と武装を【戦場に溶け込むマネキン人形】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[戦場に溶け込むマネキン人形]に触れた敵からは【気付かぬ内に装備】を奪う。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



『彼らは楽屋でしょうかねぇ? さぁ、皆、超弩級と遊んでおいで』
 この影朧の狙いは猟兵のみ。
 幸いにも現時点では黒桜のおじさまとやらは静香に手出しをする気はないようだ。

 ピエロ、
 猛獣使い、
 煌びやかなレオタードの軽業娘、
 しなやかな体躯の曲芸師、
 シルクハットの手品師。
 ……など、青ざめた肌の無機質なマネキンは猟兵の血を求めテントの中を彷徨い歩く。


******
>マスターより
 サアカス団員を模したマネキンの群れを撃破してください
 戦闘は静香の目の前でも別の場所でも、お好きにどうぞ
 観客の避難誘導はプレイングにあれば描写します。なくても描写外で逃がした扱いで死者はでません
 以上です
 プレイングお待ちしております
 
納花・ピンチン(サポート)
ブギーモンスターの勇者×殺人鬼
布を被ってから10年が経ちましたわ
普段はお嬢様口調で、時々関西弁がちょこっと
……って、勉強中なんですわ!

あくまでお仕置きをしに来ているから
あまり殺伐とした戦い方はしませんわ
武器も直前で刃を返して叩いたり
その光景はギャグになることが多いですわ

商人街出身、お話しや交渉なんかも好きです
小さなスイーツや飴ちゃんを渡して一緒に食べると
色々話してくれるんですわ

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し
多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功の為でも
公序良俗に反する行動はしません

あとはおまかせ
ほないっちょ、よろしくおねがいします


ルドルフ・ヴァルザック(サポート)
「フゥーハハハ!(こ、この場は笑ってごまかすしか……)」
◆口調
・一人称は我輩、二人称はキサマ
・傲岸不遜にして大言壮語
◆性質・特技
・楽天家で虚栄心が強く、旗色次第で敵前逃亡も辞さない臆病な性格
・報復が怖いので他人を貶める発言は決してしない
◆行動傾向
・己の威信を世に広めるべく、無根拠の自信を頼りに戦地を渡り歩く無責任騎士(混沌/悪)
・何をやらせてもダメなヘタレ冒険者だが、類まれな「幸運」に恵まれている。矢が自ら彼を避け、剣先が届く前に毀れ、災難は紆余曲折で免れる
・臆病な性質も見方次第では生存本能と言えなくも……ないよね?
・コミックリリーフ役にお困りならば、彼が引き受けます(但し公序良俗の範囲内で)




 仲間達の出し物は全てすんばらしかった。なんだって猟兵はこうも多芸なのか、不公平だ、神様ずるい。
 剣も魔法もからっきし虚勢と逃げ足だけは天下一品と自負するルドルフ・ヴァルザック(自称・竜を屠る者・f35115)は、潜入のための芸が浮かばずに今の今までずーっと観客席にいた。少女の中にナイスミドルなおじちゃん冒険者がいたら目立つ筈なのだが、そこはそれ|運良く《・・・》見つからなかったのだ。
「フゥーハハハ! 真打ちとは最後に登場するもの! 我輩の身も心も震わせるアッと言わせるイリュージョン、さァご笑覧あれ!!!!」
「とか言ってるけど、ぜーんぜん足が進んでいませんわ」
 どこからともなく現れた納花・ピンチン(ブギーモンスターの勇者・f31878)が、ラブリーキッチュな縞々の持ち手部分でルドルフの足首をチョンッ。
「ウッヒャアアア、ハハハハハ、フゥー」
 笑い声の順番がおかしくなるぐらいビックリしたー。
「キサマどこから現れた!? さっきまで我輩の周りには誰もいなかった筈だ!」
「そりゃあそうですわー、だってたった今ワープしてもらったのですもの」
 白い布をふわりんと揺らし、嘴のように愛らしい切っ先を天井に掲げる、どやぁっ!
 どこからどうみてもピンチンはラブリーでいて得体が知れない。ルドルフは経験上知っている。このようなゆるキャラは、大抵すげえ実力を隠し持っていて主人公様のとても良いサポートをするのだ。
「つまり我輩はこれから、優秀なる仲間のサポートを受け大活躍をするということかぁ。よぉし、今度こそ我輩を追放した奴らの目に物を見せてくれ……」
「! あぶないですわ、避けてくださいませー!」
 壁に同化していた蒼肌マネキンが具現化したとたんピエロになるとはどういうことだ?!
 ピエロはジャグリングのクラブをつかみ取ると、ルドルフの頭目掛けて振り下ろす。
「……ッひゃあああっ!」
 何故か床にへばりついていたバナナの皮で滑って転けた。
 ルドルフの頭のあった所を殺人クラブが怖ろしい圧の空振り。ピエロは自前のスポットライトを照らし銀色ナイフで今度はルドルフの脳天直撃を狙う。
「うわっ、眩しぃ! 目がぁ!」
 顔を覆ってしゃがむルドルフの頭上にナイフがどすりと突き刺さる。その後もルドルフはなんやかやとトラブルに見舞われながらも見事に難を逃れていく。
「まぁ! おじさまってば、なんという運の良さかしら!」
 布越しの瞳をキランキランに輝かせて、ピンチンは鋏を握ったおててをブンブン、大興奮だ。
 4発外したピエロは両腕を壁につっこんで動けなくなっているゾ! チャーンス!
「わるいこにはお仕置きですわー!」
 季節のお花でデコった剣を振り上げて、ピンタンは布からちら見せの指をちょちょいと動かした。
「わ・き・の・し・た! ひ・ざ・の・う・ら! く・び・の・う・ら!」
 割と急所に当たる部分をついばむようにちょんちょんちょん★血もでなければ壊れもしない、本当に触れただけ――少なくともルドルフにはそうとしか見えなかった。
(「こりゃあトンだ見かけ倒しだぜ。敵も増えてきたし、逃げ……戦略的撤退を考えた方が良さそうだなぁ」)
 直後、あひゃひゃひゃひゃーー! っとピエロマネキンは大音量で笑い出した。なんと怖ろしいことに、味方の団員たちが攻撃そっちのけで仲間のピエロを擽り出したのだ!
「はーい、いらっしゃーい! みんななかよくですわー! わ・き・の・し・た! ひ・ざ・の・う・ら! く・び・の・う・ら!」
 メイクがぐずぐずのピエロにたかる軽業嬢や手品師へも、ピンチンはちょんちょんのちょんと嘴刃で言った通りの場所をつつく。
 すると御伽噺でバターになったトラのように、3体は輪になってそれぞれの急所を擽りぐるんぐるーん♪
 わひゃひゃひゃっと壊れた笑いをたてながら、彼らは息も絶え絶えに身を震わせて、やがて動きを停止した。
 ――おそるべし、くすぐり秘術!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ユーフィ・バウム
何かする度に悲鳴のバーゲンセール
そこからの安堵というエンターテイメント
レスラーである真の姿時の
気持ちが理解できた想いです

さて、マネキン人形達に対処していきます
人形達を衝撃波を吹き上げるなぎ払いで吹き飛ばし
観客に避難を促しますね
必要あればかばうことで犠牲を出しはしません
傷付くのは戦士だけで良いのです

相手の攻撃は野性の勘を生かして見切り。
武器受けで凌ぎ、あるいはオーラ防御で弾き落します
初動を止めれば連続攻撃も恐るるに足らず、ですね!

次はこちらからお返ししましょうか
魂を燃やし今必殺の
《鉄心分裂拳》で人形達を殴る、殴って、殴ります!

次は「黒桜のおじさま」に相対する時ですね
静香さんを真闇より救いましょう




 プロレスは命のやりとりめいたシーンの連続。時に凶器での流血を伴う過激さも珍しくはない。
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)はプロレスラーという真の姿を持ちながらも、このようなショウが耳目を集めるのが不思議だった。
 だが、その謎は解けた。
 観客たちは恐怖を愉しむのだ。ハラハラと肝を冷しながらも決してリングから目を離さない。
 失敗していまにも落ちそうな綱渡り、頭をパクリと食い取られそうなライオンの顎……生身のドラマを前にキラキラ輝く双眸、同じものをユーフィは舞台で沢山受け取った。
 だが、プロレスにもサアカスショウにも悲劇タブー。観客が無事帰れないなんてもってのほかだ!
 さて。
 猟兵を求めて現れたマネキンらは次の出し物かと拍手で迎えられた。だが勘の良い娘がこれはオカシイと察してまず悲鳴をあげた。
 ほぼ同時にマネキン軽業師の宙返り、紙切れのように舞台の板を踏み砕く。だがユーフィが身軽さで遅れを取るはずもない!
「失礼、踏ませてもらいますよ!」
 椅子の背を踏んで一足飛びに駆けつけた。間髪入れず、悲鳴をあげた娘の首を狩る腕を掴み上げる。
「今の内に逃げてください。傷つくのは戦士だけで良いのです」
 後続の人形の蹴打をギリギリまで惹きつけてからしゃがんで躱す。同時に羽交い締めにしていた軽業マネキンで胴体薙ぎ払って遠ざけた。
 そんな派手な立ち回りを演じるユーフィの意識は実は背後の観客席にこそある。少女たちを傷つけるわけには、いかないのだ。
「右が安全です。大丈夫です、どうか落ち着いて逃げてくださいッ、ね!」
 駆けつけた仲間へ誘導の期待を込めてそう叫ぶ。そして髪色と同じ艶やかなオーラでクラブの一撃を弾いた。
 チリッ――。
 ユーフィの頬が風圧で千切れ真っ赤な血が一筋。だが構わず野生の娘は回転で躍り込み、拳に魂を握り込む。
「次はこちらからお返ししましょうか」
 常人には決して捉える叶わぬ無数の拳、それら全てがユーフィの手で繰り出されている! 掘削機で粉々にされたと見まごうマネキンたちの破片が床に降り注いだ。
 静香を真闇に捉える|黒桜のおじさま《・・・・・・・》とやらを浮かべ闘志を燃やす拳は全て必中だ!

大成功 🔵​🔵​🔵​

椎那・紗里亜
いよいよ動き出したようですね。
まずは観客の安全を優先。
「出口はあちらです!」
先ほどの光る切紙細工の蝶を出口へ飛ばして誘導。
「あなたたちの相手は私です」
同時にマネキンの注意を自分に引きつけます。

この6年間、多忙でしたが鍛錬は欠かしていません。
右手を伸ばし左手を添え、腰を落として半身に構え。
気を巡らせて感覚を研ぎ澄まします。
「ふううぅ」
マネキンたちのポージング攻撃を読み取り、
流れるような体裁きでマネキン・ダンスの攻撃を受け流すと、
「はっ!」
体勢を崩したところに閃光百裂掌を叩き込みます。

振る舞いから静香さんの心根の優しさはわかります。
そんな彼女や傷ついた娘たちに何をしようというのですか、影朧!




 右が安全――そう告げた仲間の声に応えるように、椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)は切紙細工の蝶を再び宙に放つ。輝き帯びた蝶たちは恐怖に震える娘たちの頭上を飛び、ひとつの道筋を構築する。
「出口はあちらです! どうか落ち着いてください。光の通りに来れば無事に逃げられますから」
 床に煌めく光の筋を辿り観客の娘たちは我先にと出口を目指しだす。
「はぁっ!」
 蝶を追う形で走り込んだ紗里亜は、追い縋るマネキンピエロの鼻先目掛けてつま先掠めてご挨拶。
「あなたたちの相手は私です」 
 宙を舞う椅子をキャッチするとマネキンたちに即投げる。ついでにもう2客も引っこ抜いては投げつけて逃げ道を広くする。
 少女たちの押し合いへし合いが気に掛かったが、背後に新たな仲間の気配を感じ取り任せることにした。道は作ったなればあとは目の前の敵の排除が良策だ!
 すらり、
 バレリイナのめいた動きで腕を天井に逸らすマネキンを前に、紗里亜はふううぅと息と雑念を吐き出しきった。
 右手を伸ばし左手を添え、腰を落として半身に構えたならば――、
 足裏に軸が入る、
 頭頂を引き上げる糸がついた。
「――ッ」
 この6年間、多忙ではあったがそれを理由に鍛錬を怠る日などひとつもなかった。だから、視える!
 九時の形で振り下ろされたマネキンの手刀はまさに一瞬だ。だが紗里亜は流麗に僅かに右へと上半身を傾けるだけで躱す。矛先を失い蹌踉けた腕をすかさずつかみ押し倒す。
「はっ!」
 掌底。
 軽業娘はレオタードを残したままで蒼白い身に無数の罅を抱く。床も霜柱めいた音をたててシャリシャリと砕けていった。
 いけない、と、紗里亜は床を蹴った。マネキンの群れに背を向ける形での着地、足元には余波でできた裂け目があった。避難中の娘たちを脅かさぬよう踏みしめて止めたのだ。
 不安定に揺れる隙だらけの背へ、様々なマネキンの奇矯なポーズの影が落ちる。
「はいっ!」
 だが、しなやかに反り返り、華麗に捌く。
「振る舞いから静香さんの心根の優しさはわかります。そんな彼女や傷ついた娘たちに何をしようというのですか、影朧!」
 平手ですっかりと打ち倒されたマネキンを背に、紗里亜は舞台袖にいるであろう敵へ鋭い視線を向けるのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
俺の拙い出し物でも、楽しんでくれたお嬢さん達が居る
決して害させる訳には行かぬと、まずは己が背に庇い避難させよう

そして何だお前達は、人々を楽しませるべき道化達の姿で殺生等
到底許される事では……む? 姿が戦場に溶け込むように……?
困った、此れでは攻撃しようにも
と言いつつ双剣を構え【花冠の幻】を発動させる
見えぬならば当てずっぽうで、では無いが
此れだけの花弁を広範囲に散らせば、流石に攻撃も当たるだろう
例え双剣を奪われようと、俺には他にも得物があるのでな
何度でも花弁の嵐を吹かせてみせよう

静香嬢の境遇は察するに余り有るが
此の侭サアカスを野放しにする訳にも行かぬ
今宵を限りに『セツコ団』は解散とさせて貰わねば




 眼鏡越し、ニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)の視界に飛び込んできたのは、団子になり必死に逃げる娘たちだ。死に到る危険に怯える娘らに他を思いやる余裕などないのだ。
 危ない、と声にするより先に、ニコは椅子を横っ飛びに転んだ小柄な娘に覆い被さった。
『……きゃああ……あぁ? まほうつかい、さん?』
「恐い思いをしたな。もう大丈夫だ」
 拙い出し物を一番最初に喜んでくれた娘が安堵するのもつかの間、愛らしい双眸が再び恐怖に見開かれる。
『うしろ……!』
 対するニコは黒手袋の人差し指をたててもう一度「大丈夫だ」と囁いた。同時に2人の仲間が荒ぶる拳でもって背後で蠢くマネキンを一掃した。
「さぁ、立てるか」
 ニコは娘の肩を支えて立たせると蝶の示す避難路を指さした。未だ混雑してはいたが、空中ブランコの妙技を見せた仲間の導きで混乱が収りつつある。
「怖い奴らは俺が止める。だから振り返らずに走るんだ、いいな」
『わかった!』
 聡い娘は言われた通りに一心に駆けだす。
 ニコは緩めた口端をすぐに引き締めて周囲を警戒、道化師マネキンがそこら中で躰を揺らすのに眉を顰めた。
「そして何だお前達は、人々を楽しませるべき道化達の姿で殺生等到底許される事では……」
 むっとニコの双眸が絞られる。なんということか! あれほど派手な化粧のピエロたちがすっかりと見えなくなったではないか!
「困った、此れでは攻撃しようにも……」
 さりげなく時刻を確認するような所作でのべられた指には、それぞれ炎と氷の刃が握られている。
 刹那、赤と蒼が虹花の欠片に変じた。数は無数、当てずっぽうに見せ掛けてちゃあんと目星はついている。
 からん、からん。
 虚ろな音たて、罅割れた四肢や首が床に落ちて霧散。同時に八時の角度に翳した掌に長針と短針が戻った。
『ウゥウウ……オオォ!!』
 腕の付け根に刺さった花弁をはぎ取って生き残った道化師がニコの頬を掠めた。おやと余裕ある態度で瞳を丸めたニコの手から二色の針が消え失せる。
『これで花びらは出せまいぃッ』
 片腕の道化師は奪い取った武器を得意げに翻したかと思うと、再び空間に溶けた。
「全く、人から借りたもので芸を見せるでもなし、無芸此処に極まれりだな」
 呆れ果てたと肩を竦めるその手には、一輪の星花咲く杖が握られていた。花弁のタネは尽きること無し。
 観客席を掠め暗幕目掛け征く花弁の先で憐れな道化の悲鳴があがる。直後、揺れる暗幕は蒼白い埃で汚れきっていた。
 さぁ、お次は静香嬢、否、黒幕との対峙だ。
 彼女の境遇は察するに余り有るが、此の侭サアカスを野放しにする訳にも行かぬ。今宵を限りに『セツコ団』は解散とさせて貰わねば――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
引き続きバニーガール姿で。

観客の皆さんに避難するよう誘導しつつ、最前線でマネキンの群れと戦いますよ!

「皆さん、捨てる神あれば拾う神ありと言います。
生きている限りやり直しは効きます。
このような魑魅魍魎が集う場所でお命や人生を捨ててはいけませんよ。」と明るく呼び掛けます。
勿論、静香さんにも聞こえる様に言って、微笑みかける。

《神性解放》発動。

マネキン達の攻撃は第六感・心眼で予測して、功夫・ダンス・見切り・受け流しによる太極拳の化勁で舞うようにいなす。
軽業・空中戦で宙を舞うように移動しつつ、八極拳の構えに移行しての発勁(神罰・功夫・雷の属性攻撃・衝撃波・貫通攻撃)でまとめて吹き飛ばしていきますよ~。




 蝶の光に導かれて一心不乱に逃げ込んでくる娘たちを優しく出迎え誘導するのは、バニーガールの大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)だ。
「ここが出口ですよ。恐いマネキンは追っては来ません、安心してくださいね」
 三日月と星のオブジェを風に踊らせ目印とする。夢ある妙技を見せてくれたバニーガールは希望の象徴だ。
 幼い娘たちは、やっと見えた出口に歓喜して駆けだしていく。けれど中には容を曇らせる子もいる。
『わたし、帰りたくないな……』
 サアカステントの中には夢が詰まっていて、一時の生ぬるい|地獄《現実》を忘れさせてくれた。今は怖ろしい影朧が暴れているのだとしても名残惜しいと振り返ってしまう。
「お嬢さん方、捨てる神あれば拾う神ありと言います」
 チョーカーの下に手を宛がい胸を張る詩乃からの言葉は素晴らしく尊い、そしてなにより強い説得力があった。当然だ、拾う神は詩乃自身。辛いと泣く子がいるのなら何処に居たって駆けつける。
 不安に震える娘たちの手をひとりひとり握りしめて優しい双眸で包み込む。
「サアカスを楽しんでくれてありがとうございます。魑魅魍魎が企てた地であれ、あなた達に“もう一度見たい”と願わせる夢を手渡せて良かったです。けれど、夢は生きていなければ見ることはできません。テントの中に戻るのはお命を捨てるのと同じなのです」
 聡い娘らは感じ入ることがあったのだろう。勇気を出して|外の世界《現実》へと戻っていく。最後の娘まで見守った後で詩乃はテントを捲り滑り込んだ。

 サァ! 最後の仕上げだ!
 瓦礫の重なる花道を、文字通り滑るように猛スピードで移動し、たった今現れた敵の眼前に躍り出る。
『お客サマ、イマイチドのハクシュヲ!』
 男のマネキンの肩の上でバレリイナのように片脚立ちでポーズ。人であれば直視しただけで命を奪われる怖ろしい芸だ。
 だが詩乃は若草色のオーラにて一蹴。
 マネキンが蹌踉けた所へ空中ブランコで魅せた宙返りからの踵落としだ。着地してからは太極拳の構えを取って受けにまわる。
 化勁の要領で突き出されるパンチやキックはアラ不思議! 瞬きの間に引かれて床へと押し倒されているのだ。
 開花を早回しで見るように優雅に舞いながら、詩乃は部隊袖にいるであろう静香へと呼びかける。
「生きている限りやり直しは効きます。ですから、このような魑魅魍魎が集う場所でお命や人生を捨ててはいけませんよ」

 ……舞台を仕切る暗幕が揺れて、静香が纏う赤い薔薇の着物がちらりと見える。
『サアカスが滅茶苦茶よ。乱暴だわ! どうしてなの、黒桜のおじさま。ひどいわひどいわ』
 叫ぶ声は崩れた信頼に打ちひしがれながらも気丈に糾弾している。

大成功 🔵​🔵​🔵​

寺内・美月(サポート)
アドリブ・連携歓迎
※エロ・グロ・ナンセンスの依頼はご遠慮願います。
・依頼された地域に亡霊司令官(顔アイコンの人物)と隷下部隊を派遣。美月がグリモアベースから到着するまで(サポート参加では現地にいない状態)、現地での活動に必要な権限を付与
・基本は一個軍団(歩兵・戦車・砲兵・高射・航空・空挺のいずれか)に、出動しない軍団から一個師団程を増強し派遣
・戦力不足の恐れがある場合は、上記の兵科別軍団を二十~三十個軍団ほど増派し派遣軍を編成
・敵に対し砲兵・高射・航空部隊の火力、戦車・空挺部隊の機動力、歩兵部隊の柔軟性を生かした戦闘を行う
・他の猟兵の火力支援や治療等も積極的に行い、猟兵の活動を援護




 影朧サアカス『セツコ団』を一個師団を取り囲む。軍人らは青ざめの濃い土気色の顔に判で押したように同じように一様に唇を切り結ぶ。背筋は棒を通したように真っ直ぐだ。
 知見のある者が見ればわかる。お飾り師団ではないのは何一つ武装せずとも蟻1匹通さぬ厳しさでもって完全なる安全を確保しているからだ。
 彼らは敬愛なる寺内・美月(霊軍統べし|黒衣《学生服》の帥・f02790)の命を受けた亡霊軍人である。美月到着まで、現地が必要な権限は付与されている。
 此度の任務は、テント内から逃げてくる一般人の確保、安全に住処まで送り届けることである。
 サアカスから逃げ出してきた娘らが見えたら迅速に歩み寄る。そして堅牢なる盾の如く背側に立ち導くのだ。
 隊長は捉えられた娘の数を漏らさず数える。不足があれば、内部の捜索と猟兵への報告。多ければ紛れ込んだ適性存在をすみやかに確定し、一般人には傷ひとつつけず、敵を処分。
 ――幸いにも、今回は人数に過不足無し。皆が一般人であることも確認済。
 続けて帰路護衛の任務に移行する。
 ただしこちらは、娘らが否を示すのであれば無理して付き従わずに後方よりの護衛に留める。当たり前だが、殆どの娘は自分たちで帰れると口々に礼を述べ去っていく。
 ……さて。
 中には、暴力的で酒飲みの父や母がいるのだが、娘の背後に立つ軍人の姿を見ると気圧されて目を逸らす。
 軍人は決して言葉では語らない。だが娘らの護衛は存在を賭けおこなっている。このような、矮小なる愚親へは気高き在りようを見せるだけで充分なのだ。
 今後、多くの愚親たちは娘に惨い仕打ちを見舞おうとする度に、現時刻にねじ込まれ刻まれた護りの威圧が蘇り、もはや以前のように娘を虐待することはできぬだろう――。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『『謀略の黒桜』黒いコートの男』

POW   :    影朧たちの相手でもしていては?
自身からレベルm半径内の無機物を【爆弾と化した怨嗟を吐く『影朧』の群れ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    暇ですねぇ、貴方達も。
【黒桜に触れた思念を『影朧』化すること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【『影朧』の群れによる連携攻撃と自爆攻撃】で攻撃する。
WIZ   :    私は策謀に忙しい。影朧達がお相手しますよ。
非戦闘行為に没頭している間、自身の【黒い桜が周囲を覆い、現れる『影朧』の群れ】が【連携攻撃と自爆攻撃で攻撃する。その間】、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる。

イラスト:テル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠レイ・アイオライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 舞台に真っ赤な薔薇が咲いた。
 否、薔薇の振り袖に黒い袴の嘉納・静香が転げ出てきたのだ。
『いやぁ、いやぁ! 黒桜のおじさまっ、なんて顔をなさるの! 恐い、恐いわ!』
 抜けた腰で臀部を床にすりつけて、静香は駄々っ子のようにイヤイヤと頭を揺らす。続けて舞台袖からは、まるで脚本で決められたように、堂々たる足取りで漆黒がひとり現れた。
 スポットライトはない。だが、特異な存在感はそのようなものがなくても目を惹くものだ。
『いけないですねぇ、恐怖の感情を取り戻すなんて』
 影色の手袋、その細い指先が静香の額へ伸ばされる。
『静香、あなたはとてもよい触媒です。あなたの不幸を軸に、ぐるりぐりると沢山の影朧を集められたのですよ。そう、綿飴が割り箸に掬われるが如く』
 ガチガチと、マイクを通しちゃいないのに歯の根の音がうるさい。
『それは、私のように寂しい人たちを愉しませる為と……』
『嘘はついていませんよ』
『いや! 嘘よ! 恐いわ!』
 黒桜のおじさまと呼ばれし影朧は酷薄な表情で舌を打つ。
『嗚呼、これまでか。静香、もうお前は使えないね。いいや、まだ心の奥底には怨み辛みが残っているだろうかね』

 最後の道化を屠った猟兵たちが駆けつけた目の前で、黒桜は静香を指先から吸いとった。
 刹那、影朧は猟兵らを相手どる力を手に入れる。

『ははは、やっぱり残っていたか。静香や、静香。安心し給え。お前の怨み辛みは全て私が有効に利用して差し上げましょう。あの面倒な猟兵たちを消すのに丁度佳いはずです』

 吸収された静香の心と命が力尽きるのも時間の問題だ。
 猟兵諸君、どうかすみやかにこの影朧を倒し静香を救い出して欲しい。


*****
 戦いの中で静香に励ましの声をかけると、抗って黒桜の行動を阻害できる可能性があります
 そういった行動は向かないなという方は、攻撃に集中して素早く倒すプレイングも歓迎です

※静香への事後励ましを重視したい方は、戦闘描写をごく控えめで対応します
※プレイングは、戦闘(戦中の励まし含む)か事後の何れかによせていただければと思います

 プレイングをお待ちしております。
北条・優希斗
連・アド○
…静香さんのことは心配だが
彼女の心を助けようとする猟兵達は数多いるだろう
だから俺は黒桜への攻撃に専念させて貰うよ
黒桜だったか?
悪いが、これ以上アンタに静香さんの心を蝕ませやしないよ
黒桜に触れた思念を『影朧』化ね…
ならアンタ自身を内外同時に斬り続ければ
思念を影朧化させる暇はないよな?
早業+UC+先制攻撃
で黒桜の精神世界に分身を潜入させて
ペルソナに黒桜を中から壊して貰うべく
2回攻撃+薙ぎ払い+見切り+連続コンボ
で間断無く黒桜の思念と精神を切り刻む
もし静香さんの精神に接触したら
ペルソナで医術を使用し心の瑕疵を癒そう
俺本体は静香さんの身を守りつつ
UC蒼舞・剣聖+上記技能で黒桜の肉体を斬るよ




 静香を取り込んだ黒桜は、がらんどうの観客席を一瞥し哄笑した。
『猟兵が逃がしたようですね。まぁ器がなくとも思念はこの場に残っている、それで充分ですよ』
 ――すごい! ハラハラする!
 ――楽しい! 夢のよう!
 ――おうちに帰りたくない。
 境遇が似通っているせいか、観客が残した思念は大量生産のように全て同じ。
『やめてくださいませぇ、黒桜のおじさまぁ……』
 思念へ唇を寄せる気障な仕草に相反して、黒桜の内側からは嫌悪と恐怖の悲鳴があがる。
 だが、対峙した北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)は落ち着き払った容でほんの僅かに指を動かすに留まった。
『……? おや??』
 黒桜の細眉が不機嫌に持ち上がる。翳した手は阿呆のように空を掴むのみ。
「静香さん、どうかあと少しこらえてくれ」
 そう告げる優希斗は相変わらず泰然自若と佇んでいるようにしか見ない。だが、今度は黒桜が呻き声を漏らす。
 ぱたり、ぱたり……舞台を黒い血が滴り汚す。
 黒桜は慌てて痛みの走った手首を見たが傷がない。けれど軋むような激痛は絶え間なく続いている。
『……ぐッ! 影色の猟兵、一体どんな手品を使ったのですか?』
 しかも思念を手繰る傍から散らされて、一向に攻めも防御も叶わない。
「黒桜だったか?」
 影色の双眸を瞼に伏せ優希斗は応える。
「悪いが、これ以上アンタに静香さんの心を蝕ませやしないよ」
 此処に来て初めて優希斗は二振りの刀身を晒す。否、わざと見せてやったのだ。
 これより始まるは苛烈なる連激斬。なんと不可思議な! 縦横無尽なる切っ先に黒桜の身が吸い寄せられてわざわざ斬られに行っているではないか!
『躰の自由が……』
 不思議だ。まるで|そちらへ行かねばならぬ《・・・・・・・・・・・》と脳味噌が狂わされているようだ。
 荒い息で膝をつく黒桜と背中合わせの形で優希斗は再び刃を鞘に収めた。
 しばらく此奴はなにもできまい。なにしろ精神世界では未だ優希斗のペルソナが主導権を握り刻み続けているのだから!
 仲間の足音を聞いて、優希斗のペルソナは攻撃を止めた。そうして蹲る静香の頭を撫でて心の疵を癒やす。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
初手【氷炎剣舞】で黒桜を逆に縫い止め
内なる静香嬢へと可能な限り声を届けよう

弱っている所に甘い言葉を囁かれて
縋ってしまった事を、誰が咎められようか
若しかしたら、貴女はもう誰の事も信じられぬやも知れぬが
今一度だけ、俺達「超弩級戦力」へと其の手を伸ばしてはくれまいか

溜まった怨み辛みは、いっそ黒桜に全てくれてやれ
そうして貴女はなおも生き残るのだ
今度こそ、幸せになる為に
俺としても、此の侭貴女が不幸に沈んだまま終わってしまうのを
何も出来ずに見ているだけというのは耐えられぬ
貴女自身も、そう感じているのではなかろうか?

……偉そうな事を言ったが
具体的には桜學府に助力を頼むより他に無い
だが、悪いようにはしない筈だ


ユーフィ・バウム
※戦闘重視

私の手は《戦士の手》
人を癒すものではない
――そうだとしても、声を放たずにはいられない

静香さん、私は貴女を凄いと思います!
貴女は辛い想いをし続けても
けして人に害を為すのではなく人を愉しませることを望んだ!

そんな貴女です、必ず幸せになれる
いえ、ならなくちゃいけないんです!
心をしっかり保ってください――
すぐに私達が貴女を縛るモノを砕きます

オーラ防御でガードをしっかり固め、間合いを詰めての
属性攻撃を込めた鎧無視攻撃を捻じ込みダメージを重ねます
時間との勝負!覚悟を以て攻撃を凌ぎ
カウンターを叩き込んで
怪力とグラップルの技量を生かした掴んでの肉弾戦で仕留めます!

静香さん自身が幸せになれますよ、必ず




『――だがねえ、静香。お前にはもう帰る場所などないだろう?』
 こぉこぉと音をたて黒い桜花が舞台一面で吹き荒れる。その中心にて、黒桜のおじさまは内側の静香へ優しく語りかけた。
『――お前と父捨てただの女になった母と、そんな母に似ているというだけでお前を捨てた父。もう半年以上経つが、一度だって二人はお前に会いに来たかな?』
『やめて、やめて……わかって、る』
 肉体ごと取り込まれた娘は耳を塞いで首を振るのが精一杯だ。駄々をこねるような幼子を黒桜の掌が優しく包む。頼れるのは自分だけだと刻むように。
 余裕たっぷりに語る黒桜だが実は非常に焦っている。
 猟兵の来襲に静香は救いを見出している。だから今一度、甘言で心を捉え我が物とせねばと、説得へ全集中だ。
 それでは猟兵への対応はどうかというと、緩慢に散らされた道化師姿の影朧の群れが担っている。
「児戯だな」
 ニコ・ベルクシュタイン(虹を継ぐ者・f00324)の一言の元に、春と言うには禍々しい黒い桜の饗宴は一瞬で氷点下のシーンに変貌する。
 量産型の道化師へは多数の蒼い針の元に凍えて果てた。多数に見えて蒼い針は実は一本。精密に遅れなく動く秒針は既に中心の黒桜を捉えていた。
『……がはッ!』
 完全に無防備であったこともあり、身をくねらせることしかできぬ黒桜をニコはあっさり捕まえた。
「お前に用はない。嗚呼、静香嬢、申し訳ない。荒事で怖がらせてしまっているだろうか」
 黒桜へ額をぶつける勢いで圧をかける。その上でニコは、出来る限り穏やかさにを心がけ語りかける。
「若しかしたら、貴女はもう誰の事も信じられぬやも知れぬが、今一度だけ、俺達「超弩級戦力」へと其の手を伸ばしてはくれまいか」
『静香や、こんな男の言うことを聞く……ッ!』
 目の前で悪辣な言葉を吐く唇を蒼い糸が縫った。跳ねる蒼い秒針を額に突き刺して、ニコは続ける。
「弱っている所に甘い言葉を囁かれて、縋ってしまった事を、誰が咎められようか」
 黒桜の内側が蠢いた。澱のようなそれは救いを求めニコの白い手袋を包む。不器用ながら手をとるイメージで、ニコは睫で縁取られた瞳を優しく伏せた。
「溜まった怨み辛みは、いっそ黒桜に全てくれてやれ。そうして貴女はなおも生き残るのだ」
 黒桜のような偽の優しさではないとわかり、静香は勇気を取り戻す。
『わ、たし、生きて、よろしい、の? 私、パパ、とママ、棄てられて……』
 途切れ途切れの声にニコは大きく頷いた。
「今度こそ、幸せになる為に、その悲しみは手放すのだ」
 不意にニコの頬が赤く輝いた。炎の長針が翻り影朧の残滓を灼いたのだ。
「俺としても、此の侭貴女が不幸に沈んだまま終わってしまうのを何も出来ずに見ているだけというのは耐えられぬ。貴女自身も、そう感じているのではなかろうか?」
『余計なことを言うなぁ、黙れぇ』
 弱々しい抗いではニコの眉から動かすことは出来ぬ。
『け、れど。わた、し……どう、生きれば……』
 桜學府に助力を求め旨を告げるニコの声と、黒桜の濁った叫びが混じり合う。
『おおおおおぉ! 静香ぁ、夢をみるのはサアカスで、です!』
『いや、私はもう一度……』
『その想いをいただきますねぇ』
 希望という思念を根こそぎ掴み出す黒桜、なんと惨いことを!
『静香、静香』
 ニコは希望を奪われた娘へ必死に語りかける。隙だらけの背中を、黒桜は思念より産んだ強き影朧に狙わせる。
『もう鬱陶しいので死んでいただきますかねぇ、猟兵くん』

「舞台に一番不要なのはあなたですよ」

 蛮人と自分を称する娘だが、その声は何処までも高貴さを帯びている。当然だ、立振る舞いも全てを含めこの娘には気高い矜持がある。
 ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は褐色の肢体を割り込ませて仲間ごと静香の心を庇いきった。
 禍々しい黒桜お似合いの漆黒の槍がユーフィの肩を打ち据える。だが“戦士”は怯まない、そして命を賭けるのならばそれを棄てるような真似もしない。
『……』
 ゆっくりと吐いた息の元、命の塊たるオーラが切っ先にあわせて張り巡らされている。ギリギリで退けるのは神経を削る。だがユーフィは目一杯の心を静香へと向けて唇を動かすのだ。
「静香さん、私は貴女を凄いと思います!」
 素早く動く掌は悉く黒い槍を退ける。けれど想いが伝わるように、口元に浮かべた笑みを声に纏わせるのだ――。
「貴女は辛い想いをし続けても、けして人に害を為すのではなく人を愉しませることを望んだ!」
 本心は優しく向き合って伝えてあげたい。あなたの勇気と気高さを。けれど熾烈なる攻撃を全て受け止めて、反撃を伺うユーフィには難しい相談だ。
(「私の手は《戦士の手》……人を癒すものではない」)
 そうだとしても、静香の心を救いたいと願った。
 みすぼらしい姿の観客たちへ、一時の夢をもたらしたのは悲しみを影朧につけ込まれた静香に他ならない。誰にでもできることではないのだって。
「そんな貴女です、必ず幸せになれる。いえ、ならなくちゃいけないんです!」
 その通りだとニコも続ける。同時に、背中越しのユーフィへアイコンタクトを送った。
 ――静香の心が力を取り戻した。ユーフィの奮闘が奪われた希望を再び生み出したのだ!
「その強さには心からの尊敬を。そして戦士は希望を絶対に裏切りません」
 爽やかにそしてなにより華やかに、ユーフィの紫の髪が黒を斬り裂いた。そんな髪に隠した掌は苛烈。先程から良いように振り回されていた黒い槍を掴んで握りつぶす。
 これだけ見せつけられていた攻撃に遅れはとらない。タイミングは全て頭に入っているし、なにより戦士は考える前に動く。そして全てを潰す。
「彼女の希望をこんなに醜く現わしてしまうなんて、やはりあなたは舞台に立つ資格がないです」
 裏拳ひとつで黒槍を携える影朧を消滅させた、次の刹那にはひらり蝶のように飛び上がり黒桜の横っ面目掛けて回し蹴り。
 しなやかに避けたニコが射出する赤い針に怯む黒桜、その隙をついてユーフィは舞台装置の火の輪を踏んで、飛んだ。
 それを黒桜は“目の前から脅威が消えた”と捉えた。なんと暗愚、なんと浅慮。
 ニコの針は影朧を盾にして凌ぎ態勢を立て直す。嗚呼、それすら猟兵のコンビネーション、何故ニコが蒼針での追撃を今回だけは控えたと思うのだ?
 黒桜が振り返るそこに別の焔が光一閃。
 ごきゅ、と鈍い音をたて黒桜の顔が捻れ左耳が飛んだ。ユーフィは綱渡りで張り巡らされた綱を握り弾むと、即座に落下。
「舞台に似合わないと言いましたが、けれど観客はもっと似合いませんね」
 首狩り投げの要領で黒桜の肢体を思い切り床へとたたきつける。
『ぐあっ……はな、せ……』
 もうこんな輩へは取り合わず、こんどこそ微笑みを咲かせて伝える。
「静香さん自身が幸せになれますよ、必ず」
 助け出した所から、幸せの再スタートだ――その希望に黒桜の内の花が綻んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

椎那・紗里亜
両親に捨てられ、影朧に利用され。
静香さんが不幸に打ち克つために必要なこと。それは……

八卦聖刀を一閃。
黒桜の静香さんへの支配を弱めるために、
破邪の光で黒桜の邪念を斬り払い、静香さんに問いかけます。

「静香さん。なぜ自分を捨てた母の名をサアカスにつけたのですか?」
不遇な娘に夢の様な時間を過ごさせる優しさ。
舞台の裏方で額に汗することを厭わない献身。
彼女の心根を考えれば、とても母への恨みから
セツコ団と名づけたとは思えません。
そこには彼女の願いが込められているはず。

それを言葉にすることが出来たなら。
しっかりと身に沁みたなら。
「あなたは幸せになれます。必ず」

黒桜が口を挟もうとしたら「お黙りなさい!」と一喝。


館野・敬輔
【SPD】
アドリブ連携大歓迎

声を掛けたい猟兵が多そう、って小耳に挟んだから来た
俺は遠慮なく影朧を斬るだけだしな

黒桜に触れた思念が『影朧』化するなら
黒桜の周辺から思念を追い払えば…阻止できる?
指定UC発動、白き靄状の魂たちを纏う
さらに黒剣に「破魔」の聖なる光を「武器に魔法を纏う」で纏わせる
その上で黒桜の周囲に「属性攻撃(聖)」の「衝撃波」を乱射し「範囲攻撃」し思念の浄化を試みつつ影朧化の阻止を狙う
その上で群れの攻撃が来たら、その攻撃の前兆を「見切り」つつ「ダッシュ」+UC効果の高速移動で距離を取り振り切る

彼女が抱く恨み辛みは、貴様が玩具にしていい感情じゃない
人の感情を弄ぶ黒桜よ、ここで散れっ!!




『もはや我が身を構ってなどいられませんね』
 勇気を取り戻した静香を、黒桜は三度力尽くで抑え込もうとする。体内の黒はうねり舞台のライトに艶を得て内側へ射込んだ。
『いやッ』
 また黒い気持ちに塗りつぶされる。為す術もなく殺されて壁に塗り込まれる死体のように。
『ハハハッ!』
 黒桜にとっては幸いにも、未だ舞台には思念が満ちている。
 静香を核に構築したサアカスで世界遊覧。かき集めた影朧は実は数え切れぬ程である。
『こないで、こないで頂戴!! いやよ、いやいや!』
 静香は悪辣なる|おじさま《・・・・》必死で拒絶する。
 猟兵たちがもたらした勇気を握りしめてちゃんと抗いたいのに、ああほらまた、怖がるしかできない。
 そんな消沈を黒桜は逃さない。
『フフフ、その恐怖がご馳走なんですよ』
 嗚呼、嗚呼、内側から全てがすり減り削れていく――。
『壊れた|道化師や軽業師《影朧》も実に良いものを残しましたねぇ……』
 意気揚々と黒手袋の指を翳す黒桜の表情が気色ばむ。
 ――そこには、光があった。
 佇むのは、漆黒の騎士だ。黒桜と同じ黒、だが彼には……館野・敬輔(人間の黒騎士・f14505)には、哀しみを知る人だけが持つ底なしの慈愛がある。優しさの蒼を、静香と場に満ちる悲しき思念へと向ける。
 辛く、悲しく、切ない、と、彼らを三文字に定義するとこうも陳腐に成り果ててしまう。だが敬輔は、誰ひとりとて笑い棄てられる矮小な者などいないのだとわかっている。
 時に、敵として対峙して喰らった魂は数多。
 此処に漂う影朧も本来ならば敬輔に害為す形とされる筈であった。事実、戻らぬ旅路のマネキンへと替えられて猟兵に仇為すものも先程までいたのだ。
(「今この地に残る想い、俺に出来るのは散らすことだけだ」)
 掲げた黒い刀身がそのままの色で輝きを増した。だが角度により赫と蒼に変じる、決して混ざり紫にはならぬそれを敬輔は今一度握り込み瞳をとざす。
「ええい、私から掠め取っていくとは、まるでこそ泥ですねッ」
 黒い手袋の指先は、刹那刹那敬輔の切っ先に狩り取られ、一度として思惑を遂げられはしない。
 不愉快な罵倒にも敬輔は眉一つ動かさず、だが姿は1秒たりとも留まらず黒桜が手繰る先へと現れ消える。
「動くのは口だけとは、程度が知れるな」
 刃を返し掬い上げると、あたかも粘つく中より飴を引き上げるように思念は斬り裂かれ、あるモノは散り、あるモノは敬輔の剣へと吸い寄せられる。
『ぐぅ……斯くなる上は! 静香や、お前は私と共に逝くのですよ、骸の海へ』
 訳のわからぬ文言だが、それが人間の尊厳どころか命すら侵しきるおぞましさを持つのだと、静香は悟ってしまった。
 自らが果てると定義した黒桜の凄みに、人である静香が耐えられようか?
「お黙りなさい!」
 通常は穏やかな言い回しをする椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)が珍しく厳しく一喝。
「自害に他者を巻き込むなんて、決して許されない」
 敬輔が思念を寄せれば一筋の道が浮かぶ。更には仲間のもたらす光が、道を確実なものにした。
 だから紗里亜はいま、黒桜の心臓に当たる部位に透明の刀を射込みきれているのだ。
『ぐっ、がぁああ! 娘ぇ離れなさい!』
 激しく瞬くフラッシュめいた光の中で、黒桜の容がガチャガチャとけたたましく浮かび上がる。その度に影朧は顔色を失い代わりに焦りを増していく。
『私の内側に干渉しないでもらえませんかねえ?!』
 圧倒的に闇が足りない。
 黒い手袋が空を切り振り回されるのに紗里亜の白き指先は全てあわせ、逸らし、捌く。同時に明滅の激しさをコントロールすべく深く息を吐きだした。
 拳法の使い手たる者、状況に翻弄されてはならぬ。常に明鏡止水の心持ちであるべし。
「静香さん、静香さん……」
 破邪の光は鋭すぎるだろうか? 懸念はすぐに柔らかな光を纏う蝶の群れを編みあげた。
「静香さん、私の蝶の芸を褒めてくださりありがとうございます。舞台の煌めきを思い出させてくれて、嬉しかったです」
 拍手も喝采も、なによりキラキラと輝く瞳が演者のなによりのやり甲斐となる。それは舞台袖の静香からも向けてもらえた。
『あ、あぁ……ちょうちょ、ちょうちょだわ』
 涙で濡れた掌を剥がし、静香は黒い眼に希望の蝶を映す。観客の娘らを1人残らず導いた蝶は、最後のひとりを救い出しに来たのだ。
「静香さん。ひとつ思い出して欲しいことがあるのです」
 沈黙は決して黒桜に阻まれたからではない。静香から発せられる待つ気配を察知し紗里亜は柔らかに語りかける。
「なぜ自分を捨てた母の名をサアカスにつけたのですか?」
『それは……』
 たじろぎ卑下に移り黒桜の餌食とならぬように、仲間達が口々に紡ぐ励ましに続き紗里亜は優しい声を到らせる。
「不遇な娘に夢の様な時間を過ごさせる優しさ。舞台の裏方で額に汗することを厭わない献身……セツコ団であなたは優しい輝きを常にともしていました」
 楽しいサアカス、その運営に心血を注ぎ、うまくいったら心から喜んでいた。その心根を考えると、母の名をサアカスに冠したのがただの恨みとは思いがたい。
 自分を棄てた母への痛みを越える、それはきっと――。

『……ママに私を見つけて欲しかった。私のサアカスを観に来て欲しかったの』

 絞り出すような声は啜り泣きへと到る。直後、哄笑にぐにゃり歪んだ黒桜の唇が縫うように横一閃。
 夥しい黒血を散らしてのたうつのを一瞥するのは、敬輔の赫と蒼の双眸である。
「彼女が抱く恨み辛み……なにより純粋なる思慕は、貴様が玩具にしていい感情じゃない」
 刃を返し打ち据える。このような下衆には刃すら勿体ない。
「人の感情を弄ぶ黒桜よ、ここで散れっ!!」
 黒桜が吹き飛ぶ刹那、確かに紗里亜は静香の手に触れ握りしめることが、できた。
「大丈夫」
 そう何度も繰り返す。
「あなたは幸せになれます。必ず」
 ――それはまるで黎明。
 仲間の刃が針がそして光が征き、黒桜を討ち取る。千切れ去る黒桜とは逆に、転げ出るように現れたのは、學徒兵の制服に身を包む1人の少女である。
「おかえりなさい、静香さん」
 現実の掌。
 紗里亜はきゅうと握りしめて、戸惑い瞬く娘、嘉納静香に微笑みかけるのである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

大町・詩乃
事後メイン

黒桜には「貴方の企みのおかげで、静香さんの不幸に介入できました。ですから、これくらいで許してあげます。」と神罰を籠めた《改心の一撃》で張り倒して、他の猟兵さんの攻撃に繋げます。

事後は詩乃が援助を申し入れ、超弩級戦力の地位を活かして彼女の保証人となります。
こういう時の為にオブリビオン(最近ではワルシャワ条約機構)から財宝を回収する事もしてますので、財宝を換金して資金に充てましょう。

見返りは「困っている善良な方がいれば、できる範囲で助けてあげて下さい。」です

家庭が壊れる前の静香さんは學徒兵だったとの事。
黒桜が利用するに値する力を持っているのかもしれませんね。
もし帝都桜學府に復学したいのであれば、知り合いの學徒兵さんや華族の方達との伝手も使って手続きを進めましょう。
それ以外の道を目指したいなら、勿論応援しますよ。

静香さんを優しく抱きしめて、「辛い事だらけで悲しかったですよね。でも、もう大丈夫です!貴女が幸せになれるよう祈っていますからね♪」と笑顔で温もりを伝えますよ。




 戦いで大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)は裏方に徹した。
 刃にて思念を祓う仲間へは心すら流す風でもって吹きだまるそれらを流し込む。
 静香へと励まし紡ぐ仲間がいる時は、光の入り口を僅かに拓く。仲間が到れば黒桜への圧へと己の技を切り替えた。
「貴方の企みのおかげで、静香さんの不幸に介入できました。ですから、これくらいで許してあげます」
 言動は許容、だが向ける光刃は熾烈。
『嗚呼、嗚呼……静香や静香、私をひとりにしないでおくれ……』
 猟兵の励ましで立ち直る静香を逃がさぬと、黒桜は未練がましく己を抱いた。心臓の位置を押し込み共に滅する算段だ。
「往生際が悪いですよ、黒桜」
 詩乃が翳した煌月、光の軌跡に寄り添い仲間達の様々な武具が黒桜へと殺到する。
「あなたは幸せになれます。必ず」その声の元、黒桜より連れ出された静香の元へ、詩乃は駆け寄っていく。


 静香は衰弱もあり、すぐさま學府の医療機関に運び込まれる手はずとなった。
 付き添いを申し出た詩乃はすぐに撤回する。慌ただしい中、不似合いな妊婦の姿を見い出したからだ。
「こんにちは。身重の体でこの炎天下はお辛いでしょう、よろしければこちらでお話をしましょう」
 握りしめる『セツコ団』のチラシを指さして、詩乃は風を操り即席でこさえた休憩所に彼女を招いた。
「静香は? 静香は生きているのでしょうか……私は、その……セツコと申します。もうあの子の母とは名乗れませんが……」

“ごめんなさい。日に日にあの男に似てくるあなたを連れてはいけないわ。私の本当の愛はこの子にだけあるの”

「本当に非道いことを言ってしまって……お腹の子も、静香も、どちらも私の掛け替えのない子供であった筈なのに……」
 妊婦はクッと下唇を噛みしめ大粒の涙を取り落とす。
「私が家を出てすぐに、元の夫が静香の葬式を出したと風の噂に聞きました。静香が死んだ……って……」
 娘を捨てた己を責めて憔悴し打ちひしがれていたであろうことは見ていてよくわかる。腹の子が流れなかったのはもはや奇蹟だ。
「静香さんは本日助け出されました、命に別状はありません。悪しき影朧に数ヶ月もの間囚われていたんです」
「そうなの、生きているのねぇ……良かった良かったわ……」
 それだけ聞けば充分と妊婦は席を立つ。それに対し詩乃は――。


 一昼夜眠り続けた静香は、學府のベッドでゆっくりと目を覚ます。
「よかったです、痛いところはありませんか?」
「はい、あの……私は……?」
 状況が飲み込めぬ静香へ、詩乃は易しい言葉を選び黒桜に囚われていた所から現状までを説明する。
 黒桜の名とサアカスの話に到った所で静香はしゃんと顔をあげて頷いた。
「そう、なのですね。助け出してくださりありがとうございます。被害は……」
「囚われた子供達は誰1人亡くなっていませんよ。静香さんが意識を確りと持ってサアカスを真っ当されていたからです。本当にがんばってくださりありがとうございます!」
 恐らくは、こうした意志の強さを先物買いして黒桜は手元に置いたのだろう。運良く黒桜の猟兵に覚醒し言いなりならば、學府にとって難敵たるは間違いない。
 安堵もつかの間、今後を憂い静香は眉を曇らせる。
 葬式を出した父の元には戻れぬし、母は何処に居るのやら皆目見当もつかない。
「パ……父には期待しておりません。けれど母に捨てられたのは辛かった……一緒にがんばってきたつもり、でしたのに……」
 じんわりと涙を浮かべるも笑顔を被せて誤魔化す、健気な娘だ。身勝手な父の元、そうやって母を励まし生きてきたのだろう。
「静香さん。辛い事だらけで悲しかったですよね」
 詩乃はふんわりと娘を抱きしめると、ぽんぽんと背中をさする。
「安心してください。帝都桜學府に復学したいのであれば叶えられますよ」
 神様だけど現実的な|伝手《コネ》も沢山有している。
 金銭的支援を申し出る華族も、学生生活をサポートしてくれる學徒兵も、幾らでもいるのだと伝えたら、静香は慌てて遠慮を示した。
「そんなッ! 私はなにもお返しできませんわ!」
「困っている善良な方がいれば、できる範囲で助けてあげて下さい――それならできませんか?」
「それは、ええ」
 詩乃はそっと手を取って、すりすりと優しく撫であげる。
「それでは助ける手となるためにも、まずは静香さんが望む道を歩んでいかないとですよね」
「はい、ありがとうございます! そうですね、いつでも笑顔、笑顔ですわ!」
 サアカスの中で輝いていた明るい表情を前に、詩乃はふと思い出したように手を叩く。
「ああそうそう、お見舞いの方がいらしてこちらをどうぞと」
 簡素な風呂敷包みから出て来たのは、小豆ときなこのおはぎだ。ちょんと白花豆が愛らしくのっている。
「あ……」
 ひと目見て実母のおはぎだと静香は気づく。直後、ワァッと涙を流し喉を震わせた。
「ママ……ッ、ママが来てくれたの? ママぁ……」
 母を赦すか赦さないか、それはもはや愚問だ。

 ――後日、静香は復学した。學府の寮に入り、様々な支援の元で明るく学園生活を送っているそうだ。
 更に少し未来の話、秋が深まるある日には赤子の弟を抱っこして母と微笑みあっていたという――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年08月13日


挿絵イラスト