●スリルにも種類がありまして
全人類がエスパー化し寿命以外では死ななくなった世界。変化は至る所で起きていたが、一部の遊園地は『通常攻撃無効』を良いことにアトラクションがハードかつデンジャラスな方向にハイパー進化していた。
それら過激な遊園地の中でも群を抜いて『怖い』と大評判なのが「デスデス☆デスティニーランド(以下DDL)」である。過激なスリルを求めるエスパー達で連日大行列が出来るほどだ。
だがそんなDDLのスリルに魅了され、やれ曽祖父が大往生した、やれ従兄弟の結婚式が、などと適当に理由をつけて休暇をとっては足繁く通っていた会社員男性「鳥杉・八角(とりすぎ・やすみ)」はいつもと違う施設内の様子に戸惑っていた。
「え、ちょっと今日混みすぎじゃね?」
どのアトラクションも客がぎゅうぎゅうと詰めかけ、巻き込まれるように押し込まれた彼はまったく身動きがとれない。
死ぬ! 死なないけど圧死する! 死なないけど!
苦しくて死にそう! いや、これ絶対死ぬって! 誰か助けて!
ーーこんなスリルは求めてねええぇ!!
●グリモアベースにて
「皆さんお集まりいただきありがとうございマス☆」
グリモア猟兵の恋澄・クララ(コズミック綺羅星・f01432)は狐耳をぴこーんと立てて猟兵たちに向き合った。
「予知しましたのはサイキックハーツ世界デス」
サイキックハーツ世界は、かつてダークネスに支配されていたが灼滅者たちの活躍によりこれを打ち倒し、全人類エスパー化という平和を勝ち取った。
しかし今オブリビオンの介入によりその平和が脅かされようとしている。今回の依頼もオブリビオンによる事件だ。
「ある一般人エスパーさんの『ソウルボード』ーーつまり精神世界デスネ、にオブリビオンが入り込み、悪夢を見せ続けることで精神を破壊しようとしていマス」
被害者は夢の世界で苦しみ続け、夢に囚われている時間が長いほど精神破壊の危険度は増してしまう。
さいわい武蔵坂学園のシャドウハンター達の助力により猟兵たちも夢への侵入が可能だ。
「鳥杉さんの夢世界は『チョット過激な遊園地』が舞台デス。夢に入りましたらまずは彼を捜し出して保護シテください」
遊園地のアトラクションはなぜかどれも架空の客がぎゅうぎゅうに詰まっているそうだ。それどころか売店までミッチミチである。どのアトラクションに目標がいるかは不明。
ちなみに遊園地の客にはエスパー能力はない。夢の中なのでまあ多少手荒く扱っても問題はないだろう。
猟兵たちの侵入をオブリビオンが察知すれば何らかの妨害をしてくることが予想される。
被害者を護衛しつつ、原因のオブリビオンを見つけ出し、これを撃破して欲しい。
「折角ですので遊園地を体験してみるのもアリですネ☆」
クララが狐尻尾をふるんと揺らすとグリモアが輝いた。
OHAGI
こんにちは、初めまして。『OHAGI』と申します。
初のシナリオとなります。どうぞよろしくお願いします。
サイキックハーツ世界にもオブリビオンが現れましたね。
今回はソウルボードに侵入した敵の目論見を阻止し撃破する依頼です。
●第1章
夢の世界で被害者を捜索して頂きます。
折角なのでアトラクション体験もどうぞ。
アトラクション内容はお好きに設定して構いません。どれもたぶんスリル満点でしょう。
●第2章
侵入を察知してどこからか仕掛けてくるオブリビオンを見つけ出して下さい。鳥杉さんも守ってあげて下さい。
●第3章
オブリビオンとの戦いになります。
危険度は【★】です。
●NPC情報
「鳥杉・八角(とりすぎ・やすみ)」
エスパー能力は接触テレパスのみです。
各章ともに、断章公開してからプレイング受付いたします。
それでは、皆さんのプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ハイパーレジャーランド』
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POW : 行列のできる大人気アトラクションに挑戦する
SPD : 目当てのアトラクションを効率よく巡る
WIZ : 変わったお土産を買ってみる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
もうとにかくギュウギュウだった。入場ゲートを『くぐる』というより『雪崩込む』『押し出されるとろてん』といった感じで、来園客たちは人混みを気にせず目的のアトラクションへと向かって各自好き勝手に突き進む。
現地に到着した猟兵たちはスタッフが懸命に差し出す案内パンフレットをゲットしたり出来なかったりしながら、どこに向かうかを検討する。あちこちから悲鳴というより断末魔がひっきりなしに聞こえてくる。
この芋洗いもとい満員御礼の遊園地から被害者を捜しださねばならない。
但し、まったく手がかりがないと言うわけでもない。被害者だけが『エスパー』なのだ。
猟兵たちは覚悟を決めたかはわからないが、戦場へと足を踏み出した。
橘・レティシア
「凄い混み具合ね。このままだと鳥杉さんを探すのにも苦労しそう」
ここはユーベルコード『熱狂ライブ』で言うことを聞いて貰いましょう。悪夢である以上、このお客さんたちも『敵』が見せているものよね。「Clap your hands!」
ゆったりとした、惑わすような歌を唄って、お客さんたちに道を開けてもらいましょう。
「ちょっと窮屈でしょうけど、ごめんね? 通して頂戴」
ええと、パンフレットには確か観覧車があったはず。それに乗って、広く園内を探せれば……って、もしかして観覧車もハードだったり? あーれー!
できるだけ耐えて鳥杉さんを探しましょう。
エスパーだったら無理ができるし、目立つ筈。
叫び声にも耳を澄ませて。
●遊園地といえば観覧車
入場したものの見渡す限りひとひとひと、運休となった駅構内に溢れるホームにも入れない乗客の群れが延々と続くような光景である。
「凄い混み具合ね。このままだと鳥杉さんを探すのにも苦労しそう」
橘・レティシア(灼滅者のサウンドソルジャー・f44010)はパチンと指を鳴らすと両手を上げてリズムよく打ち鳴らし始めた。
「Clap your hands!」
スローテンポなリズムで来場客たちに拍手を促しながら、レティシアの耳触りよく心地好いそれでいて魂を揺るがす歌声があたりに響き渡った。
『熱狂ライブ』だ。
そこはもう単独ライブ会場だった。来場客は瞬く間に魅力され観客と化しレティシアの歌に合わせ手を叩く。ソウルフルなグルーヴ感は緩やかな波のように伝播していく。
「(悪夢である以上、お客さんたちも『敵』が見せてるものよね)」
惑わすようなそれでいて熱に浮かれるような歌。
「ちょっと窮屈でしょうけど、ごめんね? 通して頂戴」
歌声の虜となった客たちは歓声をあげると、言われるがままにレティシアのために道を作った。彼女は手を振りつつ大勢の間を悠々と抜けていく。
さて、パンフレットには観覧車があったはず。見れば巨大なアトラクションである観覧車が目に入った。あれに乗って広く園内を探せれば。
最初はごく普通の観覧車に見えた。しかしここはDDLである。普通のわけがなかった。
ユーベルコードの効果で待機列をショートカットしながら並ぶ客たちの会話に耳を傾ける。
「俺まだ4パターンしか乗ったことないんだよな」
「自分は6パターン」
海沿いに位置する観覧車の土台部分が水中から現れる。その全容はまるで巨大重機「バケットホイールエクスカベーター」である。
観覧車の車輪ごとクレーンが首をもたげ垂直に立ち上がると、車輪を回し上下させながら土台も回転し始めた。
「パターン56だ! わりとレアじゃね?」
「全部で243パターンだっけ。網羅出来てるのなんて永年パス持ちの『ハッカク』さんくらいだろ」
レティシアが呆然としているうちに観覧車は元の姿に戻り、最前列となった彼女をスタッフがゴンドラへと案内する。
「待って、今の話……」
長蛇の列をさばくべくスタッフに問答無用でゴンドラに押し込まれ、観覧車は無情に動き出す。
クレーンが立ち上がり土台は左右に揺れ、クレーンは大きく腕を振る。まるでライブでライトを振る観客のようであった。
大成功
🔵🔵🔵
●コードネーム『ハッカク』を追え
「永年パスポート所持」「ハンドルネーム『ハッカク』」なる人物が存在するらしい。
得られた情報はただちにDDL会場内の猟兵へ共有された。この『ハッカク』が被害者エスパーの鳥杉・八角である可能性が高い。彼を捜し出す手掛かりになるのではないか。
猟兵たちは寿司詰めのレジャー施設で被害者を見つけ出すべく、引き続き奮闘するのであった。
音駆螺・鬱詐偽(サポート)
世界に蔓延る悪を懲らしめるネガティブアイドル鬱詐偽さん
ただいま参上。
・・・って、どうしてこんな恥ずかしいセリフを言わないといけないのよ。
うう、これも番組の為なのね。
自身の命綱である番組の為、多少の苦難や困難は仕方なく行います。
むしろ持ち前の不運によりおいしい場面を呼び込んでくれるかと思います。
ただし、ネガティブとはいえアイドルですのでマイナスイメージとなる仕事はすべて却下でお願いします。
ユーベルコードや技能はご自由に使わせてください。
どうぞ、当番組のネガティブアイドルをお役立てください。
プロデューサーより
網野・艶之進(サポート)
「正直、戦いたくはないでござるが……」
◆口調
・一人称は拙者、二人称はおぬし、語尾はござる
・古風なサムライ口調
◆性質・特技
・勤勉にして率直、純粋にして直情
・どこでも寝られる
◆行動傾向
・規律と道徳を重んじ、他人を思いやる行動をとります(秩序/善)
・學徒兵として帝都防衛の技術を磨くべく、異世界を渡り武芸修行をしています
・自らの生命力を刃に換えて邪心を斬りおとす|御刀魂《ミトコン》の遣い手で、艶之進としては敵の魂が浄化されることを強く望み、ためらうことなく技を用います
・慈悲深すぎるゆえ、敵を殺めることに葛藤を抱いています……が、「すでに死んでいるもの」や「元より生きていないもの」は容赦なく斬り捨てます
黒いウサギ耳のゴスロリ少女は入場ゲートの上に立ち会場内の様子を眺めて溜息をついた。
「プロデューサーさんが取ってきたお仕事だし、番組の為に頑張らなきゃいけないとは思ってるけど……人ひとり入る隙間もないじゃない。うう、帰りたい……」
音駆螺・鬱詐偽(帰ってきたネガティブアイドル・f25431)は思いっきり憂鬱になりながらも、鬱詐偽ドローンを飛ばしDDLの光景を探査していた。さすがバーチャルキャラクターのアイドルである。この手のデバイスの扱いはお手の物。そこへ愛用のスマホがちょっと懐かしい着信音を響かせた。
「ふうん、このハンドルネームの人物についてネットで調べれば良いのね」
鬱詐偽は慣れた手付きで素早くネット情報をチェックしていく。
一方その頃ーー
「夢を練るがごとく、念ずることは無く……zzz……」
アトラクション「雲上バンジージャンプ」の前で桜の花吹雪を舞い散らせる男がひとり。
網野・艶之進(斬心・f35120)の周囲には眠りこけた大量の来場者が雑然と積み重なっていた。『網野御刀魂流活法《練夢念無》』の効果で混み込みになっていた客を眠らせたのだ。
「鳥杉氏は接触てれぱすを扱うと聞く。こうして一人ひとりに手を触れて行けば、必ずや見つけられるはずでござる」
会場内を隅から順に歩きつつ進路を塞ぐ客を手当たり次第に触っていき、応答がない者は眠らせていた。
非効率きわまりないが、勤勉で実直、純粋な心根を持つ艶之進である。苦ともせずひたすらコツコツとこなしていた。
「道のりは長そうでござるな」
艶之進は延々と続く人混みを見渡し、同じ作業に戻るのだった。
ネガティブアイドル鬱詐偽による『ハッカク』についての調査結果ーー
永年パスポート持ちは国内で1人だけ。
DDL公式にも認知されている常連である。
全アトラクションを制覇している。
最近は「フライング空中ヴァイキング」がお気に入りで1日中乗り続けている。
販売数が限られる新発売グッズを狙っている。
つまり、フライングなんとか周辺を探すか、グッズショップへ向かうか、の2択となる。
鬱詐偽はマップでフライング空中ヴァイキングの位置を確認した。場所は比較的近くゲート前広場を突っ切ればすぐそこだ。改めて自分の足元、入場ゲートから流れ込む入場客という名の人だかりで作られた大激流を見た。
「この流れに飛び込んで……あそこまで……む、無理、無理よ……あり得ない」
想像しただけで恐怖で足が震える。普段でも極端に白い彼女の顔がますます蒼白になる。
「誰か代りにお願い……」
スマホを抱え泣きそうになりながら呟いた刹那、恐怖の怪物「バロックレギオン」が複数体出現した。ユーベルコード『リアライズ・バロック』が発動したのだ。
突如現れたおぞましい怪物。周囲の人々は驚き悲鳴をあげ逃げようとする者、何かのパフォーマンスかと構える者、カメラで撮影しようとする者など、反応は実に様々だった。
バロックレギオンたちは鬱詐偽に恐怖を与えた対象、つまり来場客へ駆け寄ると掴んでは投げ掴んでは投げ、集団を蹴散らしていく。
気がつくとゲート前広場の客は一掃されアトラクションへの道は拓かれた。
鬱詐偽は広場に降り立ち、フライングなんとかを見上げた。
人を乗せた大きなヴァイキング船がぐるんぐるんと回転したかと思えば、回転軸を離れ空中を舞い空中ブランコが如く反対側の回転軸に飛び移り、再び回転を続ける。
途中何名かが船から脱落し下の安全ネットに引っかかった。
「うっそでしょ……!?」
唖然として立ちすくむ鬱詐偽の横をバロックレギオン軍団が走り抜ける。
「え!? 待ってやめてダメぇー!!」
バロックレギオンはためらいなくフライング空中ヴァイキングを根本からなぎ倒した。
乗っていた客は跡形もなく姿を消していた。
「これは夢よ、悪夢だから……ホント悪夢……鬱すぎる……」
ゴスロリ少女は膝から崩れ落ちた。
「見事に大破でござるな」
少女は声のした方向を見ると、顎に手をあて感心したように眺める帝國軍服に陣羽織姿の黒髪の青年が立っていた。
青年の後ろには眠れる人々が折り重なり敷地の向こう側から延々と人間堤防が築かれていた。
「なるほど、鳥杉氏は『ハッカク』と名乗り、ここにはいなかったと。あとはぐっずしょっぷとやらを探せば良いのでござるな」
「情報きてたでしょ? 確認してないの?」
「なにやら鳴ってはいたが、拙者このようなからくりは扱いがとんとわからずで」
彼が取り出したのは最新型の端末。
デジタルの申し子は頭を抱えた。
かくして桜吹雪に包まれながらグッズショップに辿り着いた二人組。
みっちりと客が詰まって軋みを上げる店舗。
恐怖の象徴たるバロックレギオンは容赦なく建物を破壊した。
「い、生きてる。死ぬかと思った。いや死なないけど! ああ、今日もグッズ買えなかった」
倒壊した瓦礫から出てきたひとりの男性。
「鳥杉・八角さん、よね?」
「そうだけど。もしかして俺のファン?」
へらへらと笑うこの男。被害者である。被害者ではあるが、ここが悪夢の世界とは気づいていない様子。なぜ彼が狙われたのか。
疑問と共に辺りの風景は歪み始めた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
第2章 冒険
『跋扈する眷属』
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POW : 力ずくで実行犯を止める
SPD : 罠を仕掛け、眷属を捕縛・無力化する
WIZ : 事件の内容から、黒幕の思惑や弱点を推測する
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●スリル満点!超超高層建築現場
空間の歪みがなくなると、そこは建築現場だった。正確には「超高層タワー」建築現場の鉄骨で組み上げられた足場に猟兵たちと鳥杉・八角は立っていた。
足場の周りには安全のためのメッシュネットは貼られておらず、手すりもなければ筋交いもない、もちろん命綱などもない。吹きさらしである足場の床は約1メートルの幅があり階層をはしごが繋いでいる。
見下ろせば地上は見えず、ここがどれほどの高さなのかもわからない。見上げれば遥か上層を雲が覆う。ためしに小さなナットを落としてみた。しばらくするとナットは上から落ちてきた。
「なにここ職場? 新しいアトラクション? 落ちても戻ってくんの? やった!」
事もあろうに鳥杉は足場から飛び降りた。あっという間に姿が見えなくなったと思えば上から降ってきた。そしてそのまま落ちては戻ってくる。
呆れつつ猟兵のひとりが怖くないのかと訪ねる。落下ループしながら鳥杉は笑う。
「俺、本職トビ職なんだよね。元々絶叫マシンとか大好きでさ。トビ職になったんだけど、エスパー化したらなんか物足りなくなっちゃって。落ちても死なないしな。めちゃくちゃ痛いけど」
「だからさ、スリルとか恐怖とか? 究極の体験したいわけ」
『死ねばいいのに』
何者かの声と同時に突風が吹いた。何かが鳥杉目掛けて高速で飛んでくる。
咄嗟に彼を掴み、これを弾き返す猟兵たち。それは鷹ほどの大きさの青紫色の鳥だった。
再び襲いかかる鳥、おそらくオブリビオンの眷属。気づけば複数の鳥が周囲を舞う。
「え? なに?」
「あんた命狙われてんのよ! ここ悪夢の中ね!」
「なんで?」
「知るか!!」
いまだ状況が掴めていないこの被害者を守りつつ、襲いかかる眷属を退け悪夢の主であるオブリビオンを引きずり出さねばならない。猟兵たちに緊張が走った。
仲佐・衣吹(サポート)
キレイなもの、カワイイもの、ぶち壊そうなんて許さないんだから
バトルだって芸術よ。美しく戦いなさい!
お相手するはアタシことネイル
美術好きな女性人格よ
口調はいわゆる女言葉かしら
身のこなしが一番軽いみたいで
接近戦より距離をとってダガーで戦うのが好きよ
よく使う手は
外套を投げつけて囮や目暗ましからの一撃
ルーンソードで戦ってる途中で手放して虚を突き、袖口から隠し武器としてダガー
光属性を付けたルーンカルテを落としといて、タイミングを見て目潰しフラッシュ
こんなところかしらね
アイテムやユーベルコードはお好きに選んでくれていいわ
使えるものは全部使って、華麗に美しく戦いましょ!
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
普段の口調は「チンピラ(俺、てめぇ、ぜ、だぜ、じゃん、じゃねぇの? )」
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
冒険等では割と力業を好みますが、護符衣装を分解して作った護符などを操作したりなどの小技も使えます。戦巫女なので、破魔・浄化系統も得意。
護符を足場にしたり、猫車を使ったり機動力もある
ユーベルコードは指定した物か公開されているものを使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。お触りなしのお色気までが許容範囲。
橘・レティシア
謎が謎を呼ぶ展開ね。今はとにかくあの鳥を追い払わないと。
「気を付けて、鳥杉さん。理由はわからないけれど、貴方、なんだか恨まれているみたいだから」
鳥杉さんを守りながら戦うとしましょう。
落ちても平気そうだけど、あまり自由自在に跳び回れるような場所ではないわね。ここは魅力-majestic-を使って、召喚した歌の精霊でダメージを与えていきましょう。命中率が高いから、動き回る鳥も仕留められるはず。
鳥杉さんを護るけれど、もし危険に陥るようだったら……容赦なく突き飛ばすわ。
ごめんね、えーい!
……大丈夫よね、上から降ってくるだけだから。
それにしてもどうして鳥杉さんが狙われたのかしらね……。
●そして彼らは謎に挑む
超高層建築現場という閉鎖空間に襲いかかる鳥の集団。そして聞こえた『死ねばいいのに』という声。
「謎が謎を呼ぶ展開ね」
橘・レティシア(灼滅者のサウンドソルジャー・f44010)はこめかみを軽く抑え、ポカンとしている被害者に注意を促す。
「気を付けて、鳥杉さん。理由はわからないけれど、貴方、なんだか恨まれているみたいだから」
「なんで? 俺、鳥に何かしたっけ?」
鳥杉・八角はまったくピンとこない様子で、さらに集まってくる青紫色の鳥たちを眺めていた。
「(たぶん相手は鳥じゃないわよ)」
レティシアは心の中で突っ込む。
「緊張感ねぇな。命を狙われるなんてよっぽどのことだぜ」
名刀『マタタビ丸』を手に陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)が呆れたように軽口を叩く。しかし視線は鳥たちの動きを捉え迎撃態勢の構えを崩さない。
ーーあれ、今日シフトでしたっけ?
ーーんにゃ、八角の代理でな。
ーーおつかれッス、また誰か亡くなったんスか。
建築現場の足場に薄っすらと人影が現れた。実体のない幻影だろうか。服装から見てトビ職のようだった。彼らは仕方ないと言った様子で笑い合ったのちに作業を始めると人影は消えていく。
『お父さん、今日休みって言ったのに!』
子供の叫び声と同時に周囲の鳥が一斉に飛びかかってきた。
「来やがったな鳥公! こいつには指一本触れさせねぇぜ!」
鳥の一群が次々と真っ二つになり消え落ちていく。
柳火による目にも止まらぬ居合い斬りによる斬撃が、襲いかかる敵を瞬時に斬り伏せる。
「猫式抜刀術『じゃらし落とし』!」
通信講座もバカにできねえなこりゃ、二股の猫の尻尾を揺らしニカッと笑い、柳火はさらに鳥を落としていく。
「今の子供の声、聞き覚えあるかしら?」
鳥杉の後ろから外套を羽織った女性いや青年かーーが問いかける。仲佐・衣吹(多重人格者のマジックナイト・f02831)。正確には美術好きな女性人格の『ネイル』である。
「わかんね……知らない子供だと思う」
そう答える顔にはさすがにもう笑う余裕はなかった。自分の行動の何かがこの事態を生んでいる。そう考えるほどには。
「とにかくあの鳥を追い払わないと、それなら」
レティシアは敵の思惑を考察することから思考を切り替え、周囲を飛び回る鳥に勝利を確信したかのような微笑みを向けた。
響き渡る歌声。レティシアではない。彼女が召喚した『歌の精霊』たちの歌声が周囲へと降り注ぐ。歌という精霊の力が衝撃となって鳥を消し飛ばしていく。
『魅力-majestic-』
「ごめんあそばせ。私、手加減はあまり得意ではないの……ふふっ、常に最高の自分でいたいのよ」
鳥の群れは二人の攻撃で数を減らしたが、まだ多くの青紫色はこちらを獲物を狙うように羽ばたき隙をうかがっている。
ーーひいひいじいさんが大往生だってさ。
ーーすげぇな、何歳だよ。
ーー手当つくから穴埋めすんのはいいんだけどさ。
またトビ職の同僚らしき会話が聞こえる。
『作業日程おくれるとヤバいんだって』
『じゃあその人が出勤すればいいじゃない』
『葬式じゃ仕方ないだろ……』
『こっちだって半年前から予約してたのに!』
誰かが言い争う声。
『お父さんの嘘つき!』
『もう付き合うのやめよう?』
『スケジュールが狂う』
空間中の青紫色の鳥たちが一斉に狂ったように襲いかかる。これはーー殺意だーー。
繰り返される嘘、破られる約束、覆される予定。
度重なり積み重なり、それは刃となりーー
「俺考えもしなかった、同僚の家族のことなんて、大事な誰かのことなんて……」
「あなたは、同僚が許してくれるから、それで大丈夫だと思ってたのね」
衣吹の女性人格『ネイル』の言葉に、鳥杉は項垂れて弱々しく頷く。
「そうね。あなたに足りなかったのはスリルじゃなくて想像力」
うずくまる被害者を見下ろし『それでも』とネイルは続ける。
「こんなやり方は美しくないわ。誰もが本当に彼を殺したいと思ってるとは考えられないもの」
静かだが確信に満ちた衣吹の姿。レティシアも柳火も強く頷く。
『『『お前なんて死んでしまえ!』』』
獲物を仕留めに飛びかかるオブリビオンの眷属。しかしその攻撃はどれも標的には届かなかった。
脱いだ外套で鳥の攻撃を躱し、別方向からの攻撃にその外套を投げつける。
「戦いも在り方も美しくなくてはね」
ひらめく外套の陰からダガーが放たれ敵を貫く。
素早いダガーの連投に、もはや近づくことさえ赦されない敵は成すすべなく撃墜されていく。
「出てこいよ親玉! オレがぶった斬ってやるぜ」
柳火も啖呵をきり『マタタビ丸』を振るっては斬撃を飛ばし残る鳥を斬り落とす。
レティシアの『歌の精霊』たちも鳥杉・八角を守るかのように歌声を響き渡らせる。
ついに全ての眷属は消え去り、建築現場であった閉鎖空間はその姿を変え始めた。
ーー辺り一帯は、雲の上。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
シン・ドレッドノート(サポート)
実年齢はアラフィフですが、外見は20代前後。
行動パターンは落ち着いた大人の振舞い。
口調は丁寧。時折、奇術師らしい芝居がかった言い回しをします。
「さぁ、ショウの始まりです!」等。
技能、ユーベルコードは状況に応じたものを使用。
身軽で素早い動き、器用さを活かした行動をとります。
効果があるなら破魔の力を込めて。
料理も得意。高級ホテルの厨房からキャンプ飯まで何でもこなします。
依頼成功のために積極的に行動しますが、他の猟兵や住民の迷惑になるような行動は避けるようにします。
女性には年齢関係なく優しく。
但し、奥さんがいるので女性からの誘惑には動じません。
失礼のない程度に丁寧に辞退します。
何もない雲の上。
エスパーとなってから死の恐怖もなくなって、スリルも作り物でしかなくなった。物足りない日々。
しかし今の鳥杉・八角はどこまでも心細く不安と恐怖でいっぱいだった。
この雲の上の空虚な世界は彼の心象風景なのかもしれない。
「鳥杉君、命を狙われてると言っても、なにも凶悪事件を起こしたわけではないのです。他者への気遣いや優しさを忘れなければ、この景色はずっと賑やかで豊かになるはずです」
何もない世界に、鳥杉の隣に、金色の髪をなびかせて青年が微笑んでいた。
シン・ドレッドノート(真紅の奇術師・f05130)は紳士のお辞儀で挨拶する。
「ふむ、どこかに潜んでいるようですね。いい加減に姿を現していただきませんとね」
さあ黒幕を探しましょうか、とパチンと指を鳴らした。
「閃光と共に! 降り注げ、光の雨!」
『光り輝く閃光の魔盾』が発動した。
シンの腕輪から光が溢れ眩いビームの雨が何もない世界に放たれる。
『ーーーー』
何か聞こえた気がした。
「これは敵味方を識別する光です。そうら黒幕を見つけましたよ」
鳥杉にシンはどこまでも優しく紳士に振る舞う。自分のような人に恨まれるようなどうしようもない存在に対しても。
それを問うた彼にシンは笑って答えた。
「鳥杉君の周りの人たちを私と同じように大事にしてみて下さい。そうすれば答えは自ずと得られましょう」
風が吹いた。それは突風となり青紫色の影が目の前に立ち塞がる。
成功
🔵🔵🔴
第3章 ボス戦
『御霊斬鴉』
|
POW : 歪みの世界
【邪視 】で射抜いた対象に、ダメージの代わりに【五感で感じたもの全てが心的外傷となる歪み】を与える。対象は行動速度2倍、知覚力16倍になる。
SPD : 善意で舗装された悪意への道
戦場内の味方の、10秒以内の【行動への介入衝動を与え、行動結果 】を無効化する。ただし、自身の幸福な記憶ひとつを心的外傷に改竄する。
WIZ : 行き場無き殺意
自身に刻まれた【心的外傷 】を引き裂き、【歪み切った人間性の化身】を召喚する。[歪み切った人間性の化身]は死ぬまで敵を追跡し、【ソウルボード】を【無数の刃と化した殺意】で攻撃し続ける。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「榊・霊爾」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
青い空と白い雲の空間に現れたそれは、冷酷な霊気を纏う美しい青紫色の「鴉」であった。ーーいや「堕天使」と表したほうがより相応しいかもしれない。
二対の翼。長い髪は毛束が羽根となり幾つもの翼を形成し、三本の脚と両腕には獲物を狩る凶器となるであろう鋭い爪が光る。
ゆっくりと羽ばたき上昇しながら視線は「死すべき対象」を捉えている。
鴉は慈悲とも無慈悲とも思える様相で静かに告げる。
ーー我が名は『御霊斬鴉』。
『貴様へ向かう殺意のひとつひとつは、細く儚く無意識によるものである』
『だが殺意は薄くうすく幾重にも重なり続け、ついには私を呼び起こすまでに育った』
『私は、貴様の死を願う数多の者たちの声にただ応えるのみ』
どこまでも冷たい声音に青白い顔で震える鳥杉・八角。猟兵たちは背中に庇うように立ち塞がった。
目を細め「凶鳥」は猟兵たちを見やる。
『邪魔だてするならば貴様らにも死を』
ソウルボードを破壊せんとするオブリビオンは翼を大きく広げ強く羽ばたいた。
マグラ・ユメノミヤ(サポート)
「木戸銭は結構――貴方がたの苦痛と骸さえ頂ければ、十分ですから」
◆口調
・一人称は私、二人称は貴方。持って回ったような物言いで、敵にさえ敬語を用いるものの内容は悪辣
◆癖・習性
・コワモテに反してぬいぐるみや人形を好む
・苦痛を受ける度に気分が高まる性癖
◆行動傾向
・妻と部下をオブリビオンに殺された経験から生命の埒外に到達した悲しみの猟兵。胸中に渦巻くのは、復讐心と愛する者を護れなかった罪悪感……
・見えざる魔力のからくり糸で、凶器を仕込んだ球体関節人形を自在に操ってあらゆる試練に挑む。ダークセイヴァーを出自とするだけあって、そのスタイルは冷徹で老獪
・死霊術士であることから、魔導にもいちおう通暁している
クロト・ラトキエ(サポート)
基本、戦闘中は無口。
静かに、密やかに、確実に…
鋼糸やワイヤーを張り巡らせ、陸空構わず足場とし、武器として、
他に、毒にナイフ…と多彩な暗器で敵を討つ。
物心ついた時から戦場に在り、
仮令、相手が誰であっても、如何なる強者や数だろうと、
ふわり、いつも通りの微笑みを絶やさない、生粋の戦場傭兵。
かわいい小動物から猛獣まで、生き物には避けられがち。
かなしみ。
常に周囲を視。
敵の動きや特性を見切り、回避や攻撃へと繋げる、
距離・範囲拘らずの攻撃orサポートタイプ。
温かな癖に、凍れる感情。
特に色仕掛けは効かない。
状況に合わせ、動きやUCはご自由に。
物語にとって良い様に、上手いことサポートさせて頂ければ幸いです。
●ソウルボードを切り裂く刃
オブリビオン『御霊斬鴉』が羽ばたくごとに、周囲にあの複数の青紫色の鳥が現れる。眷属であり殺意の具現化であり。加えて翼が刃と化しており凶悪さを増している。
長髪の合間から覗く殺意に満ちた眼を大きく見ひらき「罪深きエスパー」を凝視した。
『苦痛と絶望を抱いて黄泉路をゆくがよい』
標的へと放たれる眷属。
青紫色の凶刃の群れは疾風が如き速度で、猟兵もろとも切り裂きにかかった。
鳥杉の身体は硬直し目を瞑ることしか出来ず、取り囲むようにいくつかの気配が動くのを感じた。
「この人が犯した罪など私と比べたらとてもとても。その苦痛は贖えぬ罪を背負った私にこそ相応しい!」
すぐ前方からの少々しわがれた男性の声に恐るおそる目をあける。
「そう思いませんか鳥杉さん」
自分の前に立つのは眼光鋭い老紳士。黒ずくめの礼服に肩当て。手には操り人形。マグラ・ユメノミヤ(堂巡魔眩の人形師・f35119)であった。
人形への視線に気づいたマグラは「可愛らしいでしょう私の《ルーチェ》は」と操り人形を揺らしてみせる。
彼に戦っている様子はない。だが先程の鳥たちが鳥杉を傷つけることはなかった。
攻撃に対し動いた気配のうち二つは、球体関節人形だった。これは奇術か?
二体の人形《ドグラ》と《マグラ》は飛びかかる鳥たちを踊りながら鋼糸で切り刻んでいく。
マグラのユーベルコード『処刑操法「胎児之夢」』である。
「ああ、胎児よ! 胎児よ! なぜ踊る!」
芝居がかった素振りで人形師は、理由がわからないと言わんばかりに首を振った。
そこへ一羽が飛び込みマグラの脚に突き刺さる。踊っていた人形は同時に姿を消した。
「ぐはっ、ーーそうです! これです! この痛みこそが苦痛こそが、私を救済してくれるのです! さあもっと! 私に苦痛を与えたまえ!」
痛みに歪みつつ恍惚の表情で高らかに笑い、処刑人形《ルーチェ》を操る宝玉を握りしめた。
オブリビオンはさらに強く羽ばたき突風を作る。同時に生まれる新たな殺意の具現化たる眷属たち。先程より明らかに数が多い。
『忘れたか、ここは精神世界。仮初の肉体が守られようと、じきお前は後悔に苛まれ破滅する』
『数多の心に、苦しみと哀しみを与え続けた罪深き魂よ、死して償え』
殺意の鳥たちは散開し空間を飛び回る。その一羽が青い空を切り裂いた。
切り裂かれた隙間からはドロリと赤い血液のようなモノが溢れ出てくる。
ーーあんたが橋から飛び込まなければ、うちの子が真似して川で溺れることもなかったのに!
ーー将来の夢はないのか? 早く進路希望出せ。
ーーおまえホントに自分勝手な。空気読まないし気も効かないし。
ーー鳥杉くんて、なんでいつも独りでいるの? つまらなくない?
『ごめんなさいごめんなさい』
『空気を読むってなんだ?』
『独り』
塞いでいた傷が、奥底に閉じ込めていた記憶が、次々と溢れてあたりに広がっていく。
ああ……空虚だ。
そうだ自分は生き続けるほどに責められ疎まれ呆れられてきた。ただただ虚しい気持ちが鳥杉の心をあっという間に占めていく。
鳥が間近に迫っているのに気づいても、避けようという気も起きなかった。
「勦滅」
目前で青紫色が切り払われ霧散した。
クロト・ラトキエ(TTX・f00472)の『弐式』が命中したのだ。
黒い蛇腹剣と鋼糸を用いた範囲攻撃は複数の敵を違わず捉え撃ち落とす。あれだけいた眷属は彼の正確無比な技によりほとんど姿を消していた。
クロトは青空にあいた隙間を仰いだ。
「(撃ちもらしたか。さすがにあの距離は範囲外だな)」
黒髪の男性の緑がかった瞳が鳥杉へと向けられる。柔和な表情ではあるが、同時に隙のなさのようなものも感じる。このような奇妙な事象に慣れているのか動じる様子はない。
「気をしっかり持って。これは精神攻撃です」
戦場では基本無口であるクロトであったが、憔悴しきった被害者を放っておくわけにはいかない。ソウルボードの持ち主である彼の心が負けてしまったら、猟兵がいくら戦っても彼を救うことは叶わない。
「あれは心の柔らかい弱い部分を無理やり引きずり出しているに過ぎません。だからどうか振り回されないで。あなたも自分自身と戦って下さい。それが僕たちへのなによりの支援になります」
戦う? 俺が自分と? 彼らのためにーー
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
橘・レティシア
少し分かるような気がするわ、鳥杉さん。貴方がなんで恨まれたのか。
でも完璧な人間なんていないし、気付かされたのでしょう?
心に痛みを感じるなら、その痛みこそ想像力がある証。
……こういう時は言葉より音楽、ね。
スターライト・リヴァイヴァーで、歌唱とダンスの技能を駆使してバイオレンスギターを掻き鳴らしましょう。
攻撃が届きにくいかもしれないけど、そこは音響攻撃、音響弾で。
鳥杉さんが自分と戦い立ち上がろうとしているなら、この音楽も役に立つでしょう。生命力が高まれば精神も安定するはず。
歪み切った人間性の化身もバイオレンスギターで打ち払って、御霊斬鴉が落ちてきたり高度を下げたら同じように痛烈な一撃を。
中村・裕美(サポート)
副人格のシルヴァーナで行動します
『すぐに終わってしまってはもったいないですわね』
多重人格者の殺人鬼× 竜騎士
外見 赤の瞳 白の髪
口調 (わたくし、~さん、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)
裕美のもう一つの人格で近接戦闘特化。性格は享楽的な戦闘狂
戦闘では【残像】が残るような優雅ステップで敵に近づき、惨殺ナイフによる【切断】を【早業】で繰り出す
ドラゴンランスを使うことがあれば、相手を【串刺し】にするか、竜に変えて【ブレス攻撃】
【瞬きの殺人鬼】使用後の昏睡状態はもう一つの人格に切り替えカバー
電脳魔術が使えないので裕美の能力が必要な場合は【オルタナティブ・ダブル】で呼び出します
あと、虫が苦手
小宮・あき(サポート)
お困りの方がいる、と聞いて参りました。
スポット参戦のような形でフラリと。
◆性格・人柄
敬虔な聖職者として猟兵に目覚めた、人間の聖者。
です・ます口調の礼儀正しい女性。
ピンクの髪に、透き通る水色の瞳が特徴的。
ふふ、と微笑み、愛らしい見た目で佇んでいますが、
本業は商人。ホテル経営者。冷静で非情な心も持ち合わせています。
また敬虔な聖職者故、邪教徒や魔女に寛容さが無く、苛烈な面も持ちます。
既婚者。
神と夫に報告できない行動は、絶対に取りません。
◆戦闘
ユーベルコードは指定したもので臨機応変に。
基本は後衛の魔法職。
・範囲魔法(神罰)
・回復(コルセオ)
・拘束(光の鎖)
・人手が必要な作業(戦場のハレム) 等
北条・優希斗(サポート)
『敵か』
『アンタの言う事は理解できる。だから俺は、殺してでも、アンタを止めるよ』
『遅いな』
左手に『蒼月』、右手に『月下美人』と言う二刀流を好んで戦う剣士です。
自らの過去を夢に見ることがあり、それを自身の罪の証と考えているため、過去に拘りと敬意を持っております。その為オブリビオンに思想や理想があればそれを聞き、自分なりの回答をしてから斬ります。
又、『夕顔』と呼ばれる糸で敵の同士討ちを誘ったり『月桂樹』による騙し討ちを行なったりと絡め手も使います。
一人称は『俺』、口調は年上には『敬語』、それ以外は『男性口調』です。
見切り、残像、ダッシュ等の機動性重視の回避型の戦い方をします。
●誰が為にーー
青紫色の凶鳥との会話はもはや成り立つまい。相手を責め苦しめ衰弱させて死に追いやる。オブリビオンの目的はそれだけである。
開いた心の傷からは赤い液体が流れ続けている。未だ癒えずにいる鳥杉の過去の記憶。
いびつに歪み形を変えた人々の不満が怒りが、無意識の殺意が、凶暴な鳥の形を成して自分を襲う。
「……少しわかるような気がするわ。貴方がなんで恨まれたか」
橘・レティシア(灼滅者のサウンドソルジャー・f44010)が鳥杉の横に立ち、少し困った顔をしながら話しかける。鳥杉は無言で頷いた。その様子にふふっと口元を綻ばせてレティシアは続ける。
「でもね、完璧な人間なんていないし」
気付かされたのでしょう? 心に痛みを感じるなら、その痛みこそ『想像力』がある証なのよ。
だったらもう絶望なんていらないわ! 貴方がやるべきは生きてここから出ることよ!
『スターライト・リヴァイヴァー』
バイオレンスギターをピックスクラッチで勢いよく掻き鳴らす。激しくダイナミックな演奏と生命力溢れる情熱のダンス。聴くもの見るものの魂を揺さぶり生きる力を呼び起こす。
「(こういう時は、言葉より音楽、ね!)」
アップテンポなリズムに自然と心は沸き立ち、身体に勇気が漲ってくる。
もし、自分独りであったら、恐らく罪悪感と恐怖に耐えられずそうそうに挫けてしまっただろう。
しかし、鳥杉の周りにはいま自分のために戦ってくれている猟兵たちがいる。このトラウマ溢れる世界から助け出そうとしてくれている。
敵は己が犯してきた間違いが生み出したモノだ。
『あなたも自分自身と戦って下さい』
投げられた言葉を反芻する。
鳥杉は周囲の猟兵たちに手を触れた。猟兵たちは軽く驚いたり納得した表情、小さく頷く者も。
「そうね、終わらせましょう」
レティシアの演奏がピリオドを迎える。
入れ替わるように鳥杉が一歩前に出る。深呼吸をして「俺もあんたたちの助けになるなら」と呟くと『御霊斬鴉』に向かって走り出した。
『接触テレパス』で伝えたのは。
ーー俺が囮になるから、その隙に頼む。
鴉は唐突な特攻に対しわずかに怪訝な表情を浮かべたのち【邪視】を彼に向けた。
ユーベルコード『歪みの世界』。対象が五感で受けた刺激をトラウマへと変換する、心を殺す攻撃である。
鳥杉の顔が苦痛で歪み必死の形相へと変わる。脚は小刻みに震える。いま彼は全身であらゆる責苦を受けている。しかし前進をやめることはなかった。
さらに追い打ちとばかりに眷属の鋭い刃が襲いかかる。身体のあちこちから血が流れ出す。
「鳥杉さんが自分と戦い立ち上がろうとしてるなら」
レティシアはバイオレンスギターの音響攻撃と音響弾で彼を狙う眷属を撃ち払う。自身に飛びかかる鳥までは対処しきれない。だがレティシアはその手を止めなかった。
「サポートならお任せください。鳥杉くんに聖なる祝福を」
ピンクの髪がふわりと風に揺れる。
小宮・あき(人間の聖者・f03848)の『コルセオ』が味方を包み込み傷を癒やしていく。
水色の瞳は揺らぐことなく、十字架を背負う彼の背を見送りながら祈りを捧げる。主よ、悔い改めし彼の者をどうかお赦しください。
『己の罪の味は苦かったか? 辛かったか?』
翼で滞空し慈悲なき瞳でオブリビオンは、這いずりながらも眼下まで迫ったエスパーを見下ろす。感情の抜け落ちたその声は氷のようであった。
「俺、は、負けねええぇ!!」
最後の力を振り絞った鳥杉・八角は『御霊斬鴉』に飛びかかった。鴉は余裕でかわすはずであった。 が、彼は鳥の脚にがっしりとしがみつく。
オブリビオンが仕掛けた『歪みの世界』によって鳥杉の行動速度は2倍になっていた。
青紫色の鴉は無表情で蹴り飛ばし引き剥がすと、さらに鋭い爪で追い打ちをかける。ニ対の翼をはためかせ獲物をいたぶるかのように蹴り続けた。
さらに踏みつけようと振り上げた三本の脚がーーポトリと三つ転がり落ちた。
鳥か獣か、咆哮とも思える叫びが響き渡る。
「すぐに終わってしまうのは、もったいないでしょう?」
脚首より下だけ先に頂戴いたしましたわ。
中村・裕美(捻じくれクラッカー・f01705)の別人格「シルヴァーナ」の惨殺ナイフによる早業での切断。ナイフを手にシルヴァーナはニヤリと笑う。
『『『死』』』
「獲物を前に油断したか」
漆黒の妖剣士、北条・優希斗(人間の妖剣士・f02283)はすでに背後から懐に踏み入っていた。
「遅いな」
空中飛翔と早業を組み合わせた高速移動は、相手に気配を察する猶予を与えなかった。
「ーー其は、生でもなく、影でもなく、只、虚空の死を与えし蒼穹の舞踊ーー」
『秘技・蒼龍昇滅覇』
鋭い蒼穹の斬撃が、青紫色の翼を四肢を断つ。
ひとつ、ふたつ。
「わたくし、まだまだ物足りませんことよ?」
残像が喋った。切り刻まれ舞い散る青紫色の羽根。無情に垂れ下がる翼が一枚。
長い髪をなびかせスッと地に足をついたかと思えば次の瞬間は切り落とした残骸だけが残る。
殺意の具現化たる凶刃たちも、さらなる狂刃に翻弄され攻撃しようとも逃げる隙も与えられず一閃のもと墜ちてゆく。
みっつ。
「ほら余所見しちゃだめよ」
レティシアのバイオレンスギターによる痛烈な一撃が『御霊斬鴉』のボディに決まる。
「貴方の役目はもう終わりなの」
切り裂かれ刻まれ地に伏し、かつての美しさも見る影はなく無惨な姿となりながらも、凶鳥はなおも繰り返す。
『死を願うものがいる。破滅を願うものがいる。罪を重ね続けた貴様に死を。私は殺意に応えるもの』
ボロボロになった鳥杉は、上半身をなんとか持ち上げながら答えた。
「過去にやらかしたことはもう、どうしようもならないけど、俺、二度とあんたを起こさないように頑張るから。周りの人たちの気持ちもたくさん考える。自分勝手にならないようにする。だから……」
言葉を紡ぎ終わる前に彼は意識を失った。
『償え、つぐな、え』
「アンタは代行者なんだな。行き場のない怒りを苦しみを代わりに晴らしてやっているのか」
優希斗は左手に『蒼月』、右手に『月下美人』を持ち、息も絶えだえとなった「殺意」の具現者を静かに見据えた。このオブリビオンの在り方はわかった。それが相容れぬものであることも。
どんな罪であってもそれは死で償うものではない。自分は生きて贖罪を続ける道を選ぶ。
よっつ。
優希斗の4回目の斬撃が『御霊斬鴉』の首を落とした。
『秘技・蒼龍昇滅覇』、命を刈り取る最後の一撃だった。
こうして死を告げる堕天使は青紫色の塵となって消えたのだった。
●雲の上の夢の中
切り裂かれた穴は消えた。
鳥杉・八角が目を覚ましたとき、猟兵たちの姿はなく、自分の怪我も跡形もなく消えていた。
空間は何もない青空と白い雲に戻った。
初めは寂しく虚しいカラッポの世界だと思ったが、今は少し違う印象だった。
何もないが、景観もよく爽やかで落ち着くではないか。
自分にはまだ何もないが、いつかここに何かが増えるのならば、それもまたいいと思った。
ふと、空間の一角に何やら動くものが複数。
近づいてみると、金色の狐がいた。黒い仔猫に、歌う小鳥、ツバメに、ウサギ、リス、緑青の瞳の狼、小さな人形たちもいる。彼らは楽しそうにティーパーティーを開いていた。
なんともメルヘンな光景である。そして賑やかだ。
これが俺の精神世界と言われるとなんだかなー、という気がしなくもないが、また来てもいいかなとも思える自分がいた。
スリルどころか死の恐怖も味わって、だいぶ満腹にもなった。当分、DDLはやめとこう。
あのギュウギュウ詰めには驚いたけどな!
軽く笑ってから、彼は夢の世界をあとにした。
ーーそれからしばらく経ち、雲の上の住民が増え始めたのだが、それはまた別のお話。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴