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竜と密室

#サイキックハーツ

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#サイキックハーツ


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 女たちの悲鳴が絹を裂く。ガシャァン、と響いた甲高い耳障りな金属音は、大型スーパーの駐輪場の自転車が薙ぎ払われた音。
『……|呵呵呵《カカカ》ッ!ああ何や、今回は殺すだけのつまらんシノギやと思っとったら、暴れがいのある場所もあるもんやんか、なあ!』
 腰まで伸びた黒い三つ編み。両側頭部に生えた羊の角。改造された真紅のチャイナ服を纏う男は、白い竜尾を波打たせ、竜翼を広げて宙に舞い上がる。
『さあ来てみいや、|灼滅者《スレイヤー》!来ぉへんなら、ここら一帯全部更地にしてッ!ついでにここの奴ら全員ぶっ殺したろうやんか!』
 「ファヴニール」。
 邪竜の名を持つ|アンブレイカブル《オブリビオン》は、千に万にと分かたれた燃え盛る槍を逃げ惑う人々へ向けて──否、人々など無視して、ただ暴れ散らす為だけに天から地へと降り注がせた。
『――|呵呵呵呵呵呵呵呵《カカカカカカカカ》ッ!!』
 邪竜の哄笑が、破壊音とともに響き渡る──。


「ああ、来てくれて有難う。さて、早速だけど僕の見た予知を伝えるよ」
 贄波・エンラ(Liar Liar Liar・f29453)は、自らの呼びかけに応えた猟兵たちへひらひらと手を振って礼を述べると、ふうと紫煙を吐き出した。
「場所はサイキックハーツ世界の日本、北海道は札幌の地下鉄麻生駅周辺。大きなスーパーがいくつか並んでいて、それなりに人通りも多い。昼のランチタイムに重なっていたから、それもあるようなんだけどさ」
 ここまで言って、エンラはどこか不機嫌そうに眉を顰めた。
「サイキックハーツ世界の敵、復活ダークネス……つまりオブリビオンなんだけれど。「トリプルクエスチョン」っていう六六六人衆がいる。こいつの殺しは「|脱出不能の巨大密室殺人《ハンドレッド・コルドロン》」。指定したその場所を、|密室《・・》、つまりは脱出不可能な空間にする厄介な能力を持っている。」
 現在の麻生駅周辺は密室状態にあり、多くのエスパーたちが屋外にいながら閉じ込められている状態にあるらしい。
「この『密室』内部にいるオブリビオンはトリプルクエスチョンだけじゃあない。半人半竜のアンブレイカブルが、あたり一帯を破壊しながら暴れ回っている。まず君たちは彼と戦ってもらうことになるんだけど、ねぇ」
 後頭部を掻きながら、グリモア猟兵は口元に火のついた煙草を持っていく。有害物質を吸い込んで、吐いて、エンラは言った。
「このアンブレイカブルの名は『ファヴニール』シャオロン・リー。猟兵の誰かさんの姿によく似てるかもしれないけれど、ついでに名前も同じで、戦法もよく似てるかもだけどさ。だけどアレは全くの別人だ。気にせず倒してあげるといいよ」
 ファヴニールは二振りの槍を用いた槍術に長けたアンブレイカブルだ。槍に炎を惑わせ、無数に分裂させた状態で自在に操り、高所から雨霰のように降り注がせる戦い方を好むらしい。
「そう、アンブレイカブルであって六六六人衆じゃない。殺しはあくまでもついで、それよりも戦う……というか、「暴れて」「壊す」ことのほうが好きっていうタイプだからさ。それを利用してやれば、意外と楽に倒せるかもだ」
 このアンブレイカブルを倒せば、密室内にはアンデッド軍団『ブラックスーツ』が現れる。
「こっちは生前の知識を有した屍部隊、ダークネスたちの従順な悪行の尖兵。容赦なくエスパーたちを殺そうとしてくる。だけど|猟兵《キミたち》が姿を見せれば、彼らはキミたちにターゲットを変えるようだ」
 自分たちを灼滅した|灼滅者《スレイヤー》たちへの、そしてひいては|灼滅者《スレイヤー》を含めた猟兵たちへの恨みによって今回の巨大密室は出来ているらしいから、と。
「姿を見せればブラックスーツたちはキミたちに向かってくる。一人に対して一体から三体くらいが群がってくるかな。こっちの数が増えれば、その分奴らの数は多くなるから気を付けて」
 そうして屍部隊を片付けて、ようやく現れるのが脱出不可能の巨大密室「ハンドレッド・コルドロン」の主。オブリビオン「トリプルクエスチョン」だ。
「こいつの狙いは多数のエスパーを殺して、ダークネスを六六六人衆として蘇らせること。まあ、密室からは出られなくても、エスパーたちを逃がす時間や方法がないわけじゃないからさ。そこはキミたちの腕次第だね」
 厄介な事件ではあるけど、今から現地へ行けば閉じ込められたエスパーたちを全員無傷で救い出すことも可能だ、とエンラは告げた。
「それじゃあ、密室内部への転移は僕がやるから」
 みたび吐き出された紫煙は今度は転送の為の門となり、猟兵たちを送り出す。
「さっさと送り返して来ちゃってよ、骸の海にね?」
 ──札幌へ。


遊津
 遊津です。サイキックハーツのシナリオをお届けします。
 一章ボス戦・二章集団戦・三章ボス戦の三章構成となっております。

「★注意★」
 マスターの巨大ロボットについての知識がめちゃくちゃなため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
 ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
 生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。

「一章 戦場について」
 場所は北海道の札幌、地下鉄麻生駅周辺となります。
 大型スーパーやマンション、食べ物屋の入ったビルなどが多く、買い物客や食事時の人々が「大規模密室」となった空間内に閉じ込められています。彼らは三章のボスを倒すまで脱出不可能です。
 日中であり太陽に照らされており、暗闇ではありません。
 戦闘に使えそうなものは街中にあるものなら何でもありますが、何かを利用する場合には「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してください。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
 多くのエスパーたちが閉じ込められていますが、どこにも逃げられないため避難誘導のプレイングは行わずとも問題ありません。(エスパーはユーベルコード相当の攻撃でしか傷ついたり死ぬことはありません)
 転送から接敵まで少々時間があるため、「身体の“パフォーマンス”を良くしておく」などといった準備行動は十分行うことができます。

「第一章 ボス敵『ファヴニール』シャオロン・リー」
 猟兵シャオロン・リーの真の姿に性格も戦い方も姿形もそっくりな別人オブリビオンです。倒してしまってください。
 竜翼を持つアンブレイカブルで、二槍を用いて戦います。
 性格は非常に残忍ですが気まぐれで、殺すことより壊す、暴れる事の方を重要視します。
 猟兵がユーベルコードを一切使わずにアイテムと技能だけで戦った場合でも、手にした槍で戦います。

 ※エスパーはユーベルコード以外では傷つきませんが、『猟兵がユーベルコードを用いて戦わなかった場合』にユーベルコードの代わりに使われるオブリビオンの武器はユーベルコード相当のものとしてエスパーを傷つけ殺します。
 猟兵がユーベルコードを使わなければオブリビオンもユーベルコードを使えずエスパーも殺されない、とはなりません。

「第二章 集団戦『ブラックスーツ』」
 かつてダークネス企業が抱えていたアンデッド部隊です。
 ノーライフキングは生前の知識や経験をそのままに人間を従順なアンデッドにすることが可能で、彼らは様々な悪行の尖兵となりました。
 詳細は二章の追記にて行います。

「第三章 ボス戦『トリプルクエスチョン』」
 脱出不能の巨大密室「ハンドレッド・コルドロン」で都市を包み、多数のエスパーを殺戮することで強大なダークネスを六六六人衆として復活させようとする、全身が影に包まれた実態不明の六六六人衆です。
 詳細は三章の追記にて行います。

 当シナリオのプレイング受付開始は、このシナリオが公開され次第即時となります。
 上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、プレイングを送ってくださって構いません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『『ファヴニール』シャオロン・リー』

POW   :    万象鏖殺・火尖鎗
【自身の限界の殻】を脱ぎ、【白翼の半竜半人の姿】に変身する。武器「【無限に増殖する炎を纏った槍】」と戦闘力増加を得るが、解除するまで毎秒理性を喪失する。
SPD   :    二槍・三段突き
【砂礫の一粒も含めた自身からの攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【無数に分裂し焔を纏った槍からの刺突】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    天鳳海花・乾坤圏
装備中のアイテム「【炎を纏った二振りの槍】」の効果・威力・射程を3倍に増幅する。

イラスト:月日人

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠シャオロン・リーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

北皇・玄華
敵が武力ならこっちも武力で対抗じゃ。
僅かな【オーラ防御】と【結界術】でしのぎつつ、ユーベルコードの杖攻撃でドカンじゃ。
地形破壊したけば足止めにもなるじゃろう。
アドリブも構わんぞ。



●砕く鉄槌(杖)
『――燃えろ火尖鎗、壊れろ万象、砕けて散れや、なんもかも!』
 |復活ダークネス《オブリビオン》「ファヴニール」の放った幾万の燃える槍がマンションの屋上に降り注ぎ、備え付けられていた給水塔が槍衾になってガゴンと転落する。
 かつてダークネスや|灼滅者《スレイヤー》の存在と彼らが引き起こした現象についての情報伝播を阻害する永続型結界膜「バベルの鎖」は既に失われた。だから巨大密室「麻生駅前」に閉じ込められたエスパーたちは自分たちが異常事態の中にあることをはっきりと理解している、その中でも、室内にいる者たちは起きている異常事態に怯え、窓を閉め切ってファヴニールが入ってこないことを祈るしかない。尤も、ファヴニールが豪語する通りに「ここら一帯全部更地にする」が実現してしまえば、彼らはいずれ建物の倒壊に巻き込まれる。それでもエスパーは死なないが、そうなれば今度はファヴニールは逃げ惑う彼らを一人一人殺していくだろう。きっと、歓喜も興奮もなく、退屈そうに。
 けれど、それをさせないために、彼女は来た。
『……何やチビ。|灼滅者《スレイヤー》……とはちゃうな。ほんならオマエ、猟兵とかいうやつか』
 その気配に気づいたファヴニールが幾万本に分身した炎を纏う槍の一本を手に取り、肩でとんとんと弄びながら振り向いた。
「ワシをチビと呼ぶでない、これでも立派な瑞獣じゃぞ!」
 北皇・玄華(北を守護する退魔術師(物理)・f36813)は玄武の瑞獣だ。先端に亀の甲羅がついた杖に蛇を纏わせ、自身の身体的特徴を指摘したファヴニールへとキッと鋭い視線を送る。
『はァ、ほんで? 嬢ちゃん一人のその細腕で俺を止められるんと思うとるんか?』
「舐めるでないわ。いずれワシ以外にも猟兵たちがここへ貴様の蛮行を止めに来ようぞ。それに、貴様のような慮外者一人、案外ワシだけでなんとかなってしまうやもしれぬぞ?」
『|呵呵《カカ》ッ、よう吠えたわ!――ほんなら、試してみたろうやんけオラァ!』
 炎を纏った槍が、ファヴニールの手の中で更に幾千幾万と分裂していく。
『燃えろ、穿て、壊せ……あぁあァ、俺はまだまだ暴れ足りへん、万象鏖殺・火尖鎗!!』
 白い翼がばさりと翻り、暴れ竜は地を蹴る。マンションの屋上に立つ玄華よりもさらに高く、空中へと舞い上がり、そして降り注がせるは燃え盛る槍の雨!
しかし、それらの|鋒《きっさき》ひとつ、火の粉の欠片も玄華の体を傷つけること、触れること能わず。玄華が放つオーラによる防護膜と幾重にも貼られた結界が幾万の|鋒《きっさき》を、暴れ狂う炎を、防ぐ、防ぐ、防ぐ――。
「ふん、他愛もないのう小童。貴様の自慢の槍の雨、これこの通りワシの結界の一枚も破っておらなんだ」
 そして玄華は軽やかな足取りで、タン、タン、タンと天を上ってゆく。彼女には空中を歩く技術も、ファヴニールのように空を飛ぶ翼もない、故にこれは――彼女の持つ叡智、|結界術の応用《・・・・・・》。不可視の結界を階段状に展開し、その上を歩いているのだ。それは、翼で空を舞うことに慣れすぎた半竜のファヴニール、特にユーベルコードの代償として理性を削っている彼にはとても思いつかぬことで。
「さて、お返しじゃよ」
 ファヴニールが突きかかってくる炎纏う槍の刺突をオーラによる防護膜で防いだ玄華は、そのまま杖を振りかざし――。
 【|亀甲杖撃破《きっこうじょうげきは》】。単純に、ただただ単純に重量を増した杖の、硬い甲羅の部分がファヴニールの腹を強かに打ち据えて、その一撃は邪竜の意識を一瞬失わせた。
『が、ッハ……!!』
 そのまま滞空のコントロールを失い、ファヴニールは落下する。彼の肉体を受け止めたのは彼自身が穴だらけにしたマンションの屋上。その屋上のコンクリートを墜落の衝撃で更に破壊して、細かな瓦礫が土埃のように舞う。
「どうじゃ? いつまでも自分が一番高いところにいると思うておると、怪我をするぞ――このようにな?」
 ひととき目を回しているファヴニールに、玄華はウィンクを一つしてみせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

秋風・葉月
あら、相当壊したがりのオブリビオンのようで。
ふふ、まるで怪人みたいですわね。

ええ、でしたら怪人にはヒーローにやられる姿がお似合いでしょう。
生憎ここは札幌は麻生、秋葉原からは遠く離れてはいますが、秋葉原のご当地ヒーロー、私、参上ですわ!

まずは変身とかには頼らず、【鋼鉄拳】を狙っていきましょう。
ゴミ箱とかの遮蔽物を探してそれを盾にすれば暴れて壊すことが好きな相手の事ですから遮蔽物を壊そうとするのでしょうか。
あるいはこちらから蹴飛ばして煽るのもアリですわね。
相手がそっちに気を取られて隙ができた時を狙い一撃喰らわせてあげますわ!

あなたには私の力の一部すら使うのも勿体ないですわ!



●滾る情熱(ご当地愛)
 燃え盛る槍がアンブレイカブル「ファヴニール」の手の中で分裂していく。二振りから五、十、百、千、万――もはや数え切れなくなった槍の|鋒《きっさき》がぼう、と炎を纏い、そしてとっくにエスパーの逃げ去った宝くじ売り場の建物に一斉に突き刺さって瓦礫に変えた。そのままファヴニールが両の手に残した二槍を振るえば、「建物だったもの」は文字通り粉微塵になる。
『ああクソ、足らへん、全然暴れ足らん……!』
 ファヴニールのユーベルコードは既に発動している。すなわち、代償であるところの彼の理性も毎秒ごとに削られている。だが彼はそれをマイナスだと思わない――彼は暴れ狂い、壊すことを楽しむアンブレイカブル。暴れて壊すことに、理性など不要、むしろ邪魔でしかない。
「あら、相当壊したがりのオブリビオンのようで。……ふふ、まるで怪人みたいですわね」
『あぁ?』
 ぬらり、と首を傾げて振り返ったファヴニールの後ろに立っていたのは、秋風・葉月(秋葉原のご当地ヒーロー・f44081)。
『……|呵呵呵《カカカ》ッ、よぉやっと来たか|灼滅者《スレイヤー》!こちとらお前らを待っとったんや、闘りあおうやんけ、なあ?』
「ええ、怪人はヒーローにやられる姿がお似合いでしょう。ですけれど私、あなた程度に本気を出すほど安くありませんの」
『あン? 舐められたもんやな、そういうセリフは俺をぶっ倒してから言うてみろや』
「ええ、そのつもりでしてよ?」
 葉月は秋葉原のご当地ヒーローだ。秋葉原に近ければ近いほど真の力を発揮する。されども生憎ここは北海道は札幌の麻生。秋葉原からは遠く、月に行くよりも遠く離れた場所で、ホビーショップの一つもないが――それでも葉月はここに来た。ヒーローが来た以上は、やる事は決まっている!
「秋葉原のご当地ヒーロー・私、秋風葉月……参上ですわ!」
 口上を述べるや否や、食らいやがれですのと大型スーパー前に備え付けられていたゴミ箱をファヴニールに向かって蹴り飛ばす葉月。空き缶が満タンまで詰められたゴミ箱は相当の重さがある。それを軽々と蹴り飛ばして見せたのである。ファヴニールはそれをにやりと口角を上げて見届けると、手にした槍で穿ち抜いた。詰まっていた空き缶がパンと弾けて四方に飛び散り、プラスチック製のゴミ箱は粉々に砕けた。
 葉月はそれを読んでいた。グリモア猟兵からこのアンブレイカブルの習性を聞いて――暴れて壊すのがそんなに好きならば、必ずそれを壊してみせるだろうと信じていた、いっそ信頼してさえいた。だから、ファヴニールは眼を見開いて驚愕する。弾けた空き缶が散らばる中で、それを目隠しにするように自身に肉薄してきていた葉月の存在に!
「あなたには空を飛ぶ暇も与えませんわ。この拳で」
 ――沈みなさい。
『ガぁ……っ……!?』
 【鋼鉄拳】。文字通りの葉月の拳、当たらないギリギリまで命中精度を犠牲にして威力を上げた拳が、ファヴニールの羊の角ごと側頭部を強かに殴りつける。限界まで威力を上げた一撃は、ファヴニールを彼自身が暴れ散らして滅茶苦茶にした大型スーパーの自転車置き場の中までぶっ飛ばした。
『……|呵呵《カカ》、|呵呵呵《カカカ》ッ!やるやんけ、|灼滅者《スレイヤー》……!』
 頭から血を流したファヴニール、白い竜翼竜尾を生やした赤いチャイナ服の男がゆら、と立ち上がり、その赤い瞳に暴虐の色彩を宿す。
『ほなどんだけシバき倒したら本気出してくれんねんやろな、楽しみや』
「ふふ、あなたには私の力の一部さえ使うのも勿体ないですわ!」
 炎を纏った槍の|鋒《きっさき》が幾万本と空中から葉月を狙う。それに対して、葉月は拳一つで余裕を見せて口角をあげて笑ってみせるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ユーフィ・バウム
接敵までスーパーで簡単な摘める
食事を買って食べパフォーマンスをUPさせます
おなかが満たされれば動きも良くなるのです、大事!

その後勇気全開でファヴニールに肉弾戦を挑んでいきますよっ
怪力で武器を振るってなぎ払いを叩き込み、
間合いを詰め功夫を生かした鎧砕きの肉弾戦を挑む

相手の攻撃はオーラ防御全開で耐えながら
間合いを離さず、激痛耐性等のある頑丈な肉体を信じ
拳を、蹴りを振るい続きますっ

ダメージを重ねていったら覚悟を決めて
大きな一撃を挑発で誘い、野生の勘で見切り
避けきれずとも致命を避け、カウンターの一撃を
いえ、3撃です!
《トランス・コンビネーション》の
拳と投げ、そしてヒップドロップの踏みつけで仕留めますッ



●唸る必殺(ヒップドロップ)
 六六六人衆・トリプルクエスチョンの「|脱出不能《ハンドレット》|の《・》|巨大密室殺人《コルドロン》」によって密室状態と化した札幌、地下鉄麻生駅周辺。
『あぁ、あぁ、あぁ、暴れ足らん……!全ッ然暴れ足らへんぞ……!!』
 暴れ回るアンブレイカブル「ファヴニール」は大型スーパーの裏側、駐車場に並ぶ自家用車に向けて、無限増殖する燃え盛る槍を降らせていた。アンブレイカブルは最強を求め、強敵と死合う為ならば全てを躊躇なく破壊する狂える武人。半人半竜の姿となって槍を増殖させている時点で彼のユーベルコードは発動しているがゆえに、その代償として理性を削り取っている影響もあるだろうが―—このオブリビオンは、より破壊を、暴走、暴虐の限りを尽くすこと自体を目的とする性質があるのだろう。グリモア猟兵が見た予知にあった「ここら一体を更地にしてからエスパーたちを殺す」との言葉通り、破壊の限りを尽くしていた。
 だからこそ、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)には――ファヴニールの目を盗み、大型スーパーの地下へと侵入することが可能であった。
 地下鉄駅と直結する大型スーパーの地下には食料品売り場がある。その中ではエスパーたちが救出を待って肩を寄せ合っていた。サイキックハーツ世界に以前存在していたダークネスや|灼滅者《スレイヤー》の起こす超常現象の情報伝播を阻止する永続型結界膜「バベルの鎖」は失われている。だからエスパーたちは過たず、地上から響く破壊音を聞いて、あるいは地上から逃げ込んできた者の言葉によって、自分自身が異常事態に巻き込まれていることを理解していた。
 ――そんな異常事態をものともせず、ユーフィはクレープ屋のレジに歩いて行った。
「すいません。チョコバナナのクレープください」
「いらっしゃいませ!あなたも避難してきたんですか? 気分を落ち着かせるには甘いものが一番ですよ!」
 笑顔で応対する店員。流石にユーベルコードでしか死なないエスパーたちは肝の座り方が違う。彼らとてオブリビオンが直に地下へとやって来て殺戮をはじめれば死んでしまうのだが、それでも彼らには|灼滅者《スレイヤー》が来て助けてくれる、という希望がある。この世界での|灼滅者《スレイヤー》たちが培い、勝ち取って来た信頼ゆえだ。
 さて、クレープに舌鼓をうち、おなかを満たして己の体のパフォーマンスを絶好調にしたユーフィは堂々と地上に出て来る。本当は一階にあるタルト屋さんの絶品タルトと話題のチーズケーキも味わってみたかったのだが、さすがに地上階の店は無人であった。
 そしてユーフィは、とうとうファヴニールの前へ立つ。
『は、えらい遅かったやんけ、嬢ちゃん』
 ゆらりと長い黒の三つ編みが揺らし、破壊された自動車たちの残骸の前で、邪竜の名のついた男は二槍を構えて口角を歪めて笑みでもってユーフィを歓迎した。
「お待たせしました。――では、参ります!」
 大剣を打ち直して作り上げた大型武器「ディアボロス」を振りかざし、ファヴニールに向かってゆくユーフィ。組み込まれたウェポンエンジンが唸り、「ディアボロス」の加速度を増す。そのユーフィの目の前に、天から降り注ぎ次々と突き刺さっていく炎を纏った槍。それらに竦みそうになる体を勇気でもって動かして、ディアボロスを薙ぐ。ファヴニールの胸が切り裂かれ、赤い血が飛沫いてユーフィの顔を汚す。
『|呵呵《カカ》、|呵呵呵呵呵《カカカカカ》ッ!!ああそうや、殺す気で来いや猟兵!!そうやないと何もおもんないねん!』
 哄笑を上げたファヴニールは二槍を器用に扱い、ユーフィへと突きかかり、槍の|鋒《きっさき》で薙ぎ、彼女の体を穿ち抜かんとする。全身に纏ったオーラによる防御膜によって刃による傷を受けることは凌いでいるが、その流れるような二槍の動きに歴戦のユーフィも圧倒される。これまでの戦いで培った痛みへの耐性で激痛を凌ぎ、辛うじて間合いを放さず拳と蹴打を混ぜながらがぎりぎりついて行くのがやっとだ。
「っ、これだけの技術を持ちながら、何故あなたは……!」
 ――暴れ、壊す事しかしないのか、と、無駄と知っていてユーフィの唇から疑問がまろび出た。
『はッ、野暮なこと言いよるわ!そんなモン!それがいっちゃん愉しいからに決まっとるやろぉが!!』
 瞳孔を開き、野蛮な笑みを浮かべながらファヴニールはそう叫ぶ。心の底からの本音。それは相手がダークネスだから。既に闇に堕ちた邪悪な人格であるから。なによりも、そうしなければ喜びを感じられない生き物であるから。
『穿て、貫け、俺はまだまだ暴れ足りへん!万象鏖殺・火尖鎗ッ!!』
 天から燃える槍の雨が降り注ぐ。その幾万の槍を致命傷だけを避けて、ユーフィは全身を槍に貫かれる激痛に耐えながら拳を振るい――ファヴニールのその手に握った槍を、破壊する。
『……!』
 武器にして最大の防御を失った手は、すぐに空中に控える百万の槍から代わりを掴み取ろうとする。それをさせまいとユーフィはファヴニールの体をホールドし、上空高くに舞い上がる。当然そこにも槍はあって、身を裂かれるような痛みを抑え込みながらファヴニールをアスファルトの|地面《マット》へ投げつける。
『がぁァッ!!』
「まだ終わりでは――ありませんよ!」
 そのまま、地面に叩きつけられたファヴニールに対し、オーラを纏ったヒップドロップで全体重をぶつける。
腹部に強烈な一撃を受けた男は反吐を吐き、しかしそれでも立ち上がる。
『|呵呵《カカ》、ええ|技《モン》持っとるやんけ!ほな続けようやん、俺はまだ暴れ足りてへんのや!』
 唇を染める赤を拭って地面に吐き捨てるファヴニール。その目に暴虐の紅が灯る。
果たして彼に、足るを知らせることができるのか。ユーフィは再び目の前の男へと向かって、拳を構えるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

蒼月・碧
そんな暴れちゃだめですよ?
八つ当たりみたいに、ものばっかり壊すとかね。

ボクでお相手できるならお付き合いしますよ?
ただ、そう簡単にお付き合いできるとは思わないでくださいねっ!

箒飛行で一気に接近して、右手に持った降魔の光刃ですれ違いざまに一閃!
当たっても当たらなくても、そのまま通り抜けますね。
その後は、上昇すると見せかけて…。
箒から飛び降りて、上段から斬りつけます。

貴方も炎使いみたいだけど、ボクもそこそこ使えるんだよ。
それじゃ…。
思いっきり行くよっ!レーヴァテイン!!

炎と闇の属性攻撃で身を纏って炎を纏った光刃で連撃を行っていきます。
さぁ、ボクの炎はまだまだ燃え尽きないよ。
どっちが先に切れるか勝負!



●迸れ爆焔(竜殺し)
 はためき風を切る白い竜翼。波打つ竜尾。
 「|脱出不能《ハンドレット》|の《・》|巨大密室殺人《コルドロン》」によって密室化し封鎖された札幌・地下鉄麻生駅周辺では、|復活ダークネス《オブリビオン》・アンブレイカブル「ファヴニール」が暴れ回っていた。
そう、暴れ回っている。エスパーたちは殆ど近場のどこかに避難した。彼らを殺すことを後回しに――否、エスパーたちの存在など無視をして、封鎖された町を破壊することが目的であるかとでもいうように、否、否、|それ《破壊》さえも彼にとっては手段でしかない。
『あぁ、あぁ、ああ……!!暴れ足らへん……!俺は、ちぃとも暴れ足りてへんぞ……!!』
 暴力、暴虐、暴走。邪竜を突き動かすその衝動は、何かを破壊すればするほど募る。全身、全力で、暴れ回り暴れ倒して街一つ灰燼に帰して、それでも足るを知らない暴れることへの衝動。それが「ファヴニール」の本質。
 きっとこのまま放っておけば、彼は麻生の街を言葉通りの更地にする。それからひとりひとり、エスパーたちを殺してゆくのだろう。そこに感動も歓びもなく、ただつまらなそうに。
 ――だから。
「そんな暴れちゃダメですよ? 八つ当たりみたいに、ものばっかり壊すとかね」
 蒼月・碧(碧星の残光・f43907)が来るのを、ファヴニールはきっと待っていた。
『|呵呵《カカ》、来たか、|灼滅者《スレイヤー》』
 邪竜は既に全身に傷を負っている。口の中に溜まっていた血反吐をぷっと地面に吐き出して、ファヴニールは口角をあげて笑った。
『ええやん、こちとらオマエが来るのを待っとったんや。闘り合おうやんけ』
 片手で二槍をまとめて持ち、空いた手で碧に向かって手招きしてみせる。そこから流れるように二槍を両の手に持ち替えて、ファヴニールはそのまま大地を蹴った。白い竜翼がばさりと広がり、空に舞い上がる赤いチャイナ服。
「ボクでお相手できるならお付き合いしますよ? ただ、そう簡単にお付き合いできるとは思わないでくださいねっ!」
 碧は箒にまたがり、空を往くファヴニールに一気に接近する。右手に握ったサイキックソード「降魔の光刃」をすれ違いざまに振り抜き――突き出された炎を纏う槍と交差する。改造チャイナ服の袖につけられていた房が切れて落下していく。そのまま通り抜け、碧を乗せた箒は急上昇して。ファヴニールがそれに対して槍を突き出した瞬間、碧は箒から飛び降りた。落下の勢い、重力を利用して、いつの間にか纏っていた炎のサイキックエナジーと共に、降魔の光刃を斬りつける。突き出した槍の|鋒《きっさき》が戻るよりも早く、光刃は邪竜の翼に振り下ろされ、そのまま刃が翼を裂きながら重力に従って引き下ろされる。そこから真っ赤な血が飛沫いて碧とファヴニール、両方の顔を真紅に染める。
そのまま碧の体は箒に受け止められた。片翼を欠くまでは行かなくとも大きく傷つけられた邪竜の体が空中で傾ぐ。その隙を、碧は見逃さない。
「貴方も炎使いみたいだけど、ボクもそこそこ使えるんだよ」
『ほぉ? ほんなら見せてもらおうやんけ!』
 ファヴニールがぱ、と手を放せば、そこにあった炎を纏う槍が宙に浮いたまま分裂し、見る間に十、百、千、万と増殖していく。
『いざや穿てや!』
「思いっきり行くよっ!!」

『万象鏖殺――
       「レーヴァテイン!!」
                  ――火尖鎗!!』

 炎を纏った槍がファヴニールの意のままに、ガトリング掃射のように撃ち出される。それを箒に乗ったまま次々と叩き落して、炎と闇の属性を纏った降魔の光刃が碧ごと突進してくる。
「さぁ、ボクの炎はまだまだ燃え尽きないよ!」
『|呵呵呵呵呵呵《カカカカカ》ッ!!――俺の槍はどこまででも飛ぶ!どこまででも増える!』
   『「燃えろ」』
       『貫け、穿て』
           「ぶった切れ!!」
                    
 ――どちらが先に、尽きるか、勝負――!!

 碧の【レーヴァテイン・|弐式《にしき》】とファヴニールの【|万象鏖殺《バンショウオウサツ》|・《・》|火尖鎗《カセンソウ》】、弐つの炎がそれぞれの|鋒《きっさき》に纏わりつきながら、燃える。燃やす。爆ぜる。迸る。
 そうして――互いに、天を往く力さえも尽き果てて――
 最後に立っていたのは、碧の方だった。
『|呵《カ》、|呵呵呵《カカカ》ッ!ああなんや、もう体動かへんやんけ!俺の負けや、|灼滅者《スレイヤー》!』
 ファヴニールは笑って、瓦礫だらけのアスファルトの上に天を仰いで大の字になり、いっそ気持ちよいほどに豪快にそう宣言した。
その四肢はずたぼろで、そして流れ出した血は炎に変わってその身を焼き焦がし、灰に変えていく。
『さあこっからやで、気合い入れろや|灼滅者《スレイヤー》。こっから来るのは、ほんまもんの人殺しのプロどもや。俺に勝ったんやから、この密室の中のエスパーども、全員守り抜いてみせろや』
 一人の命でも取り落としてみぃ、骸の海から笑ったるからな。
そのファヴニールの言葉に、碧は知れず頷く。
そうしているうちに邪竜の全身に炎が回り、最期の吐息を言葉に変えて。
『ああ、今回も暴れ足らんかった!』
 至極楽しそうな声で、|アンブレイカブル《オブリビオン》「ファヴニール」は燃え尽きていったのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ブラックスーツ』

POW   :    一刀両断
霊力を帯びた【日本刀】で斬る。対象にこの斬撃を防ぐ装備や能力があれば、全て無効化し、更に威力を増大する。
SPD   :    斬撃波
装備武器から【斬撃波】を発射する。自身の【生前の記憶】削減量に応じ、威力・速度・発射数が増加する。
WIZ   :    霊薬煙草
レベルm半径内を幻の【煙草の煙】で包む。これは遮蔽や攻撃効果を与え、術者より知恵の低い者には破壊されない。

イラスト:キリタチ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


=====================================================
 巨大密室「地下鉄麻生駅周辺」に降り立った|アンブレイカブル《邪竜》は、猟兵たちの手で斃された。
彼が最期に言い遺した通り――ここから相手になるのは、本物の「人殺しのプロ」たちだ。
麻生の街のそこここに現れ始めた、何処に隠れていたのか、あるいは避難していたエスパーたちに紛れていたのか、日本刀を携えた黒スーツたち『ブラックスーツ』。
 かつて、生前の記憶と経験を有した生ける屍、アンデッドの集団。
 これまではアンブレイカブルの派手な破壊によって逃げ隠れていたエスパーたちを、彼らは今度こそ過たず殺害する目的で襲い来る。
 ただ一人の命も、取りこぼしたくはない。それが、猟兵たちの共通の思いだ。
さあ、思いを貫き通すために、戦いを続けよう。
=====================================================
 第二章 『ブラックスーツ』 が 現れました。

 おめでとうございます。猟兵たちの活躍により、巨大密室「地下鉄麻生駅周辺」に出現したオブリビオン「ファヴニール」は倒されました。
 そして、彼の消滅をきっかけとして、麻生駅周辺に集団敵『ブラックスーツ』が出現をはじめました。
 以下に詳細を記します。

 「★注意★」
 マスターの巨大ロボットに対する知識がめちゃくちゃなため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
 ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
 生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。
 
 「戦場について」
 引き続き北海道は札幌、地下鉄麻生駅周辺となります。
 大型スーパー、マンション、食べ物屋の入ったビルなどが多い場所で、相変わらず多数のエスパーたちが大規模密室と化した場所に閉じ込められています。彼らは三章のボスを倒すまで脱出不可能です。
 エスパーたちはユーベルコード相当のものでなければ死にませんが、オブリビオンの攻撃はそれがユーベルコードそのものでなく、武器での攻撃だったとしてもユーベルコード相当の威力を持ち、エスパーを殺すことが可能です。
 日中であり太陽に照らされており、暗闇ではありません。
 戦闘に使えそうなものは街中にあるものなら何でもありますが、何かを利用する場合には「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してください。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
 多くのエスパーは大型スーパーの地下などに避難しており、灼滅者に対して「彼らが助けてくれる」という信頼と期待を持っている為、パニックを起こしたりなどはしません。避難誘導などのプレイングは行わずとも問題ありません。
 ここからは時間との勝負となる為、事前の準備行動は行うことができません。
 何らかの準備行動を行いたい場合(「体の“パフォーマンス”を良くしておく」など)、戦闘行動と並行して行う事となります。

 「集団敵 ブラックスーツ」
 かつてダークネス企業が抱えていたアンデッド部隊です。
 ノーライフキングによって生前の知識や経験をそのままに、従順なアンデッドされた死した人間の成れの果てです。
 彼らは人間並みの知識と思考力を持っており、エスパーに扮して避難しているエスパーの所へ赴き、複数で殺害しようとします。
 猟兵一人につき一体~三体と戦うことになります。猟兵がチームを組むなどして増えた場合、彼らの数も増えます。
 猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで戦おうとした場合でも、彼らは手にした日本刀などで攻撃してきますし、彼らの日本刀はエスパーを殺すことが可能です。
 ユーベルコードを使わなければ敵もユーベルコードを使わず、エスパーは死なない、という事にはなりません。
 
 第二章のプレイング受付開始は、マスターの都合により7/28(日)朝8:31~となります。
 それより前に送られてきたプレイングは一度流させていただきますが、期日以降又送り直してくだされば内容に問題のない限り受付いたします。
 時間帯によっては上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、プレイングを送ってくださって構いません。
 プレイングを送ってくださる方は、諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
 
 それでは、札幌は麻生の街に現れ始めた生ける屍たちを、もう一度殺害して下さい。
仇死原・アンナ(サポート)
鉄塊剣『錆色の乙女』,妖刀『アサエモン・サーベル』、戦闘用処刑道具『赤錆びた拷問器具』、『鎖の鞭』等装備してる物を使います

UCは指定した物をどれでも使用

普段の口調は(私、あなた、呼び捨て、ね、よ、なの、なの?)
戦闘中は(ワタシ、お前、呼び捨て、言い捨て)

処刑人として敵と戦います
同行者がいれば協力
メインは鉄塊剣等大剣で敵を攻撃
鉄塊剣の使用が不向きな相手・場所では刀剣をメインにし敵を攻撃
拷問具や鞭を使い敵の行動を阻害、鉄塊剣や刀剣で敵群を倒す
守護対象がいれば武器受けでかばい、敵をおびき寄せ注意を惹いたりします
キャバリアを操縦したり生身でも戦います



●突き刺さる棘(鉄塊剣)
アンブレイカブルによってかき鳴らされていた地上の破壊音が止む。となれば、地価や屋内に隠れていたエスパーたちの中には|灼滅者《スレイヤー》たちが事態を解決したのかと考えて様子を見に来るものもあらわれるだろう。そう、かつてダークネスや|灼滅者《スレイヤー》の存在と彼らが引き起こした現象についての情報伝播を阻害する永続型結界膜「バベルの鎖」は既に失われている。
そして、そうやって地上に出ていたエスパーたちを殺そうとするのが――血濡れの日本刀を携えたアンデッド「ブラックスーツ」。巨大密室「札幌麻生駅周辺」に閉じ込められたエスパーを襲うのは、次は彼らだ。
「――駄目よ。まだ出て来ちゃ」
 仇死原・アンナ(処刑人、獄炎の花嫁、焔の魔女、恐怖の騎士・f09978)が、エスパーの前に出てブラックスーツの刃を受け止める。間一髪を救われたエスパーは慌てて地下への階段を舞い戻り、まだ危機は去っていないのだと同胞たちに伝えるために走り出した。それを見送って、アンナは拷問器具「錆色の乙女」を構える。それこそは鋼鉄の処女をモチーフにした、鉄塊の如き巨大剣。
他の世界ではまた違うだろうが、少なくともサイキックハーツの世界において――鋼鉄の処女「アイアンメイデン」は、血の伯爵夫人・エリザベート=バートリーが少女の血を搾り取るためには「使われなかった」。なぜなら血の伯爵夫人がヴァンパイアであったからであり、血を啜るにそのような大仰な拷問具など必要としなかったからだ。そして、かつての人間以外、ダークネスは永続型結界膜「バベルの鎖」によってその棘を通さないし、人間はその存在を忘れてしまう。ならばなぜ、人々はかの血の伯爵夫人が浴槽に乙女の血を溜め鮮血の湯浴みを行うためにこのような拷問具を使ったと考えたのか?
それは、幻想。それは、恐れ。彼らはこの使われることなかった拷問具の中に、少女たちが納められる幻想を、抱いた。それは恐れ、エリザベート伯爵夫人への畏怖。幻想と畏怖は力となり、そして別世界では「使われた」であろう実績を伴い、アンナの「錆色の乙女」へと力を与える。バガン、と剣が「開き」、棘に覆われた内部が露出する。
 成れ果ての屍・ブラックスーツは日本刀でその棘をいなす。しかし。さらにそこに錆色の乙女に込められたギミックが発動する。
「――消え失せろ。……邪魔を、するんじゃあないッ……!!」
 鋼鉄の、「錆色の乙女」が燃え上がる。そして、開いた扉から燃える棘が射出される!!
近接距離にいたブラックスーツは吹き飛ばされて全身に噴射された地獄の炎で燃える棘を喰らい、動くことかなわない。その隙にアンナは周囲のブラックスーツの首を跳ね飛ばし、彼らの全身を焼き焦がしながら、燃え上がる錆色の乙女でブラックスーツを掻き抱く――すなわち、幻想に語られるとおりに、ハコの中に閉じ込めたのだ。
 アンナが死の舞踏を踊り終えるまで、そう長い時間はかからなかった。
「…出てきた分は、殺し直したわね。だけど、まだ残ってる。……行かなきゃ」
 アンナはそう言って、「錆色の乙女」を引きずりながら、麻生の町を歩き出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ネッド・アロナックス(サポート)
めずらしい そざいはある?
なければ じょうほうを しいれて かえろうかな!
(※セリフはひらがな+カタカナ+空白で話します)

探し物や調べ物は楽しくて得意だよ
"くらげほうき"や"ゆきソリ"で空を飛んだり泳いだりしてヒトや物も運ぶよ

戦闘はサポートに回ることが多いかな
手強い敵は基本隠れながら隙を作って逃げる!
"クリーピングコイン"で物をひっかけて飛ばしたり
"しろくじら"の歌で余所見をさせたりね

ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し多少の怪我は厭わず積極的に行動します
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また例え依頼の成功のためでも公序良俗に反する行動はしません
あとはおまかせ
よろしくおねがいします!



●溺れる魚(比喩)
 午後三時。この時間に札幌・麻生駅周辺が無人になることはまずない。しかし、オブリビオン「ハンドレット・コルドロン」によって空間が切り取られて密室化したこと、そして先に猟兵によって撃破されたアンブレイカブルが暴れに暴れ、すみずみまで暴れ倒したことによって、エスパーたちはみな地下や屋内に避難している。そして先ほどダークネスの尖兵「ブラックスーツ」から猟兵によって助けられたエスパーによって、地下にいるエスパーたちは危機が去っていないのだと認識した。何故なら麻生駅周辺の地下は基本つながっているので。
 畢竟、エスパーたちを殺そうとするならば、ダークネスたちは自ら地下に降りていくか、そのへんの窓をぶち破らねばならない。楽なのは地下へ降りていく方だ。しかし――。
「やあ これはいけないいけない ちかには まだ エスパーたちが たくさんかくれているからね」
 ネッド・アロナックス(ガムゴム人の冒険商人・f41694)がそれを阻止する。空飛ぶソリ「ゆきソリ」によって飛来したネッドは、そのままブラックスーツの後頭部に激突した後ソリを降り、華麗にアスファルトの上に着地してみせる。
 そのままブラックスーツの視界の外へと逃げようとするネッド。しかし、行動に移すのは敵の方が早かった。カチン、とライターの音がする。勿論それは幻聴。しかしそれが切っ掛け。すべてが幻の、「ライターで煙草に火をつける」というゼスチャー、それがキーとなり、幻の煙草の煙が半径156m内に広がる。煙は薄白くありながら、遮蔽効果を持ち、そしてネッドにじわじわとダメージを与えていく。
「ううん こまった こまったな おれは にげたり サポートに まわるほうが とくいなのにな」
 メインアタッカーとして戦ってくれる味方は今ここにおらず、逃げ回ることもできない。だからネッドは出来る限り、追手の行動力を阻害することに尽力することを選んだ。
 【シェイプ・オブ・ウォーター】。煙草の煙が充満する麻生駅周辺に、更にソーダ水の雨が降る。それによって戦場を深海と同じ環境に変化させる、欲望の海の世界ではよく知られたユーベルコード。だが、それをサイキックハーツの、この地上のアスファルトの上で使えばどうなるか。
 端的に言えば、深海は「高圧」「低温」「暗黒」と三拍子そろった世界だ。
 深海の温度は水深1000メートルで2℃から4℃に下がり、それ以下にはならないとされる。もし今が冬であったならば札幌の麻生ならばその気温を軽く下回るが、今は夏だ。特に今年は気温がやたらと高い。25℃近い気温の低下。それでも、もう死んでいるブラックスーツの動きを妨げられたかどうかはわからない。
 深海には太陽の光が届かない。水深1000メートルでの太陽の光は海面の百兆分の一、生物が検知できる光の限界にまで落ち込む。その先は完全な暗黒の世界だ。|死体《アンデッド》と言えどブラックスーツは視覚で物を見ている。ゆえに、彼にとって戦場の深海化は突然視界を失った状態に等しい。
 そして、最後に「高圧」。圧力は10メートル潜るごとに1気圧ずつ増えていく。水深1000メートルでは101気圧。これならばまだ耐えられたかもしれない。だが、戦場の環境が「水深1000メートルと同じ」だと、いつ誰が言っただろうか。温度は1000メートルから下がらない。暗さも暗黒から変わらない。だが、水圧だけは延々とかかり続ける。水深1000メートルでは101気圧でも、超深海層と呼ばれる水深6500メートルでは約651気圧――小指の先に力士が4人乗るような圧力がかかると言われている。
 ネッドは深海に適応する能力を持っている。だからネッドにはこの深海でも地上と全く変わることなく動き、ものを見ることができる。しかし、ブラックスーツはまず最初に立っていられなくなった。視界を奪われ。そして地面の上に圧し潰されるように倒れ、内臓――特に空気を多く含む肺を圧迫されて、破裂する。アスファルトの上で、ブラックスーツは深海に溺れ死んだ。元々死んでいたと言われればそれまでだが――ネッドが止めを刺すまでもなく、行動停止、消滅に追いやられたのである。
「ふう なんとか なった みたいだな」
 ネッドはそう言うと、深海化を解く。そうして再び、麻生駅前で隠れながら敵を探し始めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

有坂・紗良(サポート)
さてさて、お仕事ってンならなんだってやってやるっスよ

ボクは傭兵みたいなモンなんで、お仕事にはちゃーんと真面目に取り組むっスよ?
達成する過程でドンパチ出来そうな選択肢が取れるってなら、優先的にそっちを選ぶってだけっスけど
目的達成の為なら手段は選んでられないっスね、目標達成が最優先、当然っしょ?

攻撃手段は手持ちの銃火器による射撃っスね、思いっきり撃てるなら何だって大歓迎っス
必要に応じて範囲攻撃のUCやら爆発でドッカンドッカン出来ればなお文句ナシっス

ああ、平常時は普通っスよ?過激なのは戦闘時だけで十分なんで

大体そんな感じっスかねぇ……
記載のない部分はお任せするんで後は良い感じにお願いするっス



●火を噴く拳銃(ハンドガン)
 大規模密室と化した札幌麻生駅周辺。エスパーたちは屋内や地下に逃げ隠れ、地上は無人となっている。人殺しに特化したダークネスの尖兵、アンデッドのブラックスーツたちはあるものは地下に潜ろうとして阻止されて、そしてあるものはマンションの1階の窓ガラスを割って息をひそめるエスパーたちを殺して回ろうとする。
「おっと、やらせはしねぇっスよ」
 有坂・紗良(天性のトリガーハッピー人間・f42661)はそれを見逃さず、ハンドガン「COMPACT.45」から撃ち出した拳銃をガラスに当てることなくブラックスーツに直撃させる。ブラックスーツは紗良の姿を認めると、その場で日本刀を振り抜き、斬撃波を放つ。代償に生前の記憶が少しずつ削られぶっとんでいくがそれは些細なことだ。
「お、やるじゃないッスか!」
 恐らく別の猟兵が先ほどまで戦闘していたのだろう、薄煙が漂う中を飛んでくる斬撃波を避けながら、紗良は弾丸をブラックスーツにぶち込んでいく。斬撃波と銃弾。避けに徹した紗良と、|死体《アンデッド》であるがゆえに多少体の中に鉛玉が埋まっても行動可能なブラックスーツ、そしてブラックスーツの方は既に人間に擬態することを辞めているがゆえに、生前の記憶は幾らでも使い捨てられる。ゆえに紗良の方がジリ貧になるのが目に見えていた、故に。
「よぉっし、すこーし値は張るけど仕方ない、数の暴力ってヤツを教えてあげるっスよ!」
 【|特攻小隊出撃《スウォームチームロールアウト》】。時速765キロで飛翔する自立ドローン部隊を突撃させ、搭載した爆薬によって自爆させる。――ただし、ブラックスーツ以外の器物、特にエスパーと彼らを隔てる窓ガラスに一切の被害を出すことなく!
 紗良好みに広範囲でドッカンドッカンと大爆発させられないのが少しだけ懐を痛ませる理由にもなったが、エスパーをまんまと殺させるわけにはいかない。
 とはいえ。
【|特攻小隊出撃《スウォームチームロールアウト》】は153体の自立ドローン部隊を召喚することのできるユーベルコードである。その153体が、すべてブラックスーツだけを狙って爆発したらどうなるか、答えは火を見るよりも明らかであった。
 ブラックスーツは、塵も残らなかった。まるでその肉体そのものを爆弾に変じて爆発させられたがごとくに、途中で吹っ飛んであとかたもなくなっていた。その分だけ出費は抑えられたのであるが、さて紗良はトリガーハッピー。どうせ奥の手を使ったのならもっともっと爆発させたい。
「さて、じゃあ他の敵を探しに行くッスかねぇ……」
 窓ガラス1枚越しにガタガタ震えるエスパーがブラックスーツと紗良のどちらに対して怯えていたのかは知らぬまま、紗良は大規模密室・札幌麻生駅周辺をぶらぶらとうろつき出した――。

成功 🔵​🔵​🔴​

陰日向・千明(サポート)
「異世界のスマホってのは、こうやって使うンスよォ……!!」
◆口調
・一人称は「うち」、二人称は「あんた」、くだけた敬語をつかう
◆性質・特技
・マイペースで合理主義
・雨女
◆行動傾向
・特権階級者の車に轢かれ、事故を揉み消された恨みから黄泉返った女子高生。地元を鎮守する竜神の力を借りて受肉している
・他人より自己の利益を優先し、その世界の秩序や慣習にとらわれない傾向にあるが、なんだかんだで弱者は放っておけない
・神器化したスマホで霊界通信サービス「天孫(あまそん)」にさまざまな道具を注文して、あらゆる苦難を乗り越える
・死への恐怖心がなく、傷ついてもなお前進する様相はまさしく屍鬼
・切り札は誤発注したキャバリア



●気怠い両手剣(ツーハンド)
「ふっふぅ~ん?生前の記憶を有した|屍《アンデッド》部隊、ダークネスの従順な悪行の尖兵、っすかぁ~……」
 しとしとと、午後三時の札幌麻生駅周辺に雨が降る。
 陰日向・千明(きさらぎ市の悪霊・f35116)は、手元で|携帯端末《スマホ》を高速で操作しながら涙袋を押し上げて笑った。彼女が見ているのは、グリモア猟兵が口頭で行った説明を端末の機能によって文書としたものだ。千明は文字通りの「悪霊」である。千明としては復活ダークネス=オブリビオンがこのサイキックハーツ世界で何を企てているかにまでつきあうような正義感を持ち合わせてはいないつもりだ。もう倒されてしまったようだが、暴れたがりのアンブレイカブルが無人の街をぶっ壊そうとどうでもいい。だが――。
「目の前で屍体が弱い者イジメしてんのは、ちょっと見過ごせねえ甘ちゃんでもあるんすよねぇ、うちって結局」
 はぁーあ。そんなため息交じりの彼女の手の中にあるのはいつの間にやら両手剣で。その刃は、オブリビオン・ブラックスーツの振り上げた日本刀をぎりぎりと受け止めていて。そしてブラックスーツの刃の先、窓ガラスの向こうには、緊張に耐えきれず泣きだした赤子を必死に抱きしめる母親がいた。
 【|天孫《アマソン・》|購臨《コーリン・》「|通販で取り寄せた両手剣《ツーハンドソード》」】。神器たる|携帯端末《スマホ》によって霊界通信サービス『|天孫《あまそん》』から秒、いや瞬で取り寄せたものだ。ぎりぎりと刃同士が嚙み合い、がりがりという音と共に火花さえ散る。ブラックスーツが日本刀から力を抜くと同時に千明もまた刃を引いて、距離を取る。
 ――雨脚が強くなる。ざあ、と肌を叩くような雨が千明とブラックスーツを濡らす。ブラックスーツが刃を掲げ、刃を振り下ろすと同時に斬撃から衝撃波を放つ。それは直近にいた千明を襲い、そして。
「やめっ……!」
 斬撃波は、すぐ近くにある窓ガラスをも叩く。一つ、大きな亀裂が入った。赤子を抱きしめる母親が部屋の中で身をすくめる。一度で壊れなかっただけでも僥倖。オブリビオンのユーベルコードに二度、三度と保つほど、サイキックハーツ世界の窓ガラスは強靱ではない。まして、こんな高級住宅地でもない駅前に立つ団地の窓だ。――千明は全力で、窓ガラスを、ひいてはその向こうにいる母子を守るために走った。
「ぐっ……ぁあぁあああ……!!」
 千明の喉元からは意識しない呻きが漏れる。斬り刻まれボロボロになった体で、千明は何度でも母子を庇う。
死への恐怖心、というものは千明には存在しない。元より彼女は悪霊、すでに死んでいる。それでも今この状態を保ち続けているのは分が悪いと考える理性もある。なぜなら斬撃波は、ブラックスーツの生前の記憶を代償にして放たれているが――そんなものを後生大事に抱え続ける敵ではない。目の前の屍体の頭が空っぽになって自分が誰かわからなくなって、刀を振るう意味すら分からなくなるより先に、千明の体が、ひいてはこの薄い一枚の窓ガラスが、か弱きエスパーの母親と赤子の命が切り刻まれるのは火を見るより明らかだ。
 だから、千明には。多少の危険を冒してでも、速攻で片をつける必要があった。
高速の、片手だけのフリック入力で『|天孫《あまそん》』から秒で取り寄せたもの、それはダイナマイト。それを手にしてブラックスーツに突撃する。爆薬の量は多すぎても少なすぎてもいけない。戦場とエスパーたちとを隔てる脆い唯一の壁である窓ガラスを壊さず、一撃でブラックスーツを――仕留めなければ。
 幸いにも、エスパーの母子は爆発の瞬間。爆風から反射的に目をそらし、屍の肉塊が吹き飛ぶ瞬間を目の当たりにすることはなかった。
 ブラックスーツはこなごなの肉塊になり、千明もまた大きなダメージを負った。それでも、母子は生きている。
赤子を抱く母親が千明の惨状に、正しくはそれほどの怪我を負ってもまだ立って動いている千明のおぞましい姿に胸の中の子供を抱いてしゃがみ込む。千明から目をそらすように。
 ――それでいい。悪霊とは、こわがられてナンボだ。
 だから千明は、おぼつかない足取りで、それでも全力で、その部屋から遠ざかるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

アス・ブリューゲルト(サポート)
「手が足りないなら、力を貸すぞ……」
いつもクールに、事件に参加する流れになります。
戦いや判定では、POWメインで、状況に応じてSPD等クリアしやすい能力を使用します。
「隙を見せるとは……そこだ!」
UCも状況によって、使いやすいものを使います。
主に銃撃UCやヴァリアブル~をメインに使います。剣術は相手が幽霊っぽい相手に使います。
相手が巨大な敵またはキャバリアの場合は、こちらもキャバリアに騎乗して戦います。
戦いにも慣れてきて、同じ猟兵には親しみを覚え始めました。
息を合わせて攻撃したり、庇うようなこともします。
特に女性は家族の事もあり、守ろうとする意欲が高いです。
※アドリブ・絡み大歓迎、18禁NG。




「これだけの人々を守るには、まだいささか力が足りないようだ。ならば、力を貸そうか……」
 「|脱出不能の巨大密室殺人《ハンドレット・コルドロン》」によって閉鎖空間となった、札幌・麻生駅周辺。
 そこに捕らわれているであろうサイキック世界の住人、エスパーたちの数をざっと把握し、アス・ブリューゲルト(蒼銀の騎士・f13168)は立っていた看板の上から飛び降りる。ちょうど眼下には、ダークネスの忠実なる尖兵たる生前の記憶を有したアンデッド、ブラックスーツの姿が見えていた。ブラックスーツは日本刀を手に、店員・客たちとともに閉じこもりシャッターを下ろしているパン屋の、そのシャッターを壊そうとしている。
「俺が相手になろう」
 ブラックスーツは日本刀でもってアスへと斬りかかってくる。その刀には霊力が宿っている。もしもアスにこの刀を防ぐ方法があったとしても、それはすべて無効化される。そして、斬撃は更に鋭さを以てアスを襲うだろう――ゆえに明日は|光の剣《フォースセイバー》を使わない。受けることは出来る。だがそれはアスの持つ武器にて受ける技能あってのこと。それは、恐らく「防ぐ方法」に抵触する、アスはそう考えた。代わりに二挺の熱線銃「ブルーブラスター」を構え、ブラックスーツへと熱線を撃ち出しながら地面に伏せ、転がって斬撃を避ける。
 シャッターを壊されればエスパーたちとオブリビオンを隔てるのは薄いガラス戸の1枚程度だ。だからそれが彼らの最後の砦。中のエスパーたちの顔を見ることは適わないが、それでいい。応援されるために戦っているのではないし、守るべき相手の顔を確認する必要はない。ブルーブラスターから放たれた熱線がブラックスーツの腕を焼き、日本刀を握る腕が鈍る。それを好機とみてアスは立ち上がり、両足に内蔵されたレッグエンジンウェポンを解放する。
 タイミングは上々。この立ち位置ならば閉じこもるエスパーたちを巻き込むことも、彼らを守るシャッターを傷つけるない。そう確信できる位置まで移動し、アスは【ヴァリアブル・ウェポン】を放つ。
 ――それはここより異なる地球、UDCアースで機械化手術を受けたサイボーグならだれでも使えるユーベルコード。
それを、アス・ブリューゲルトは脚部装甲から放つ。彼が|機械《サイボーグ》化しているのが両脚であるからという理由はあるが――長い時間を共に過ごした肉の脚代わりのレッグエンジンウェポンは、彼を裏切らない。発射された弾丸の雨がブラックスーツを撃ち貫き、穿ち、蜂の巣にし、そしてミサイルがブラックスーツの超至近距離で爆発する。命中率重視に調整した銃撃は、エスパーたちを決して巻き込むことなく、ブラックスーツだけを標的とする。
 第一射が終わった時、既にブラックスーツの姿はどこにもなかった。ただ地上に、汚い肉片だけが僅かにこびりついているだけである。まだ、同じように襲われている者がいるのなら、ここで肉片を片づけている暇はない。
 アス・ブリューゲルトは、再び高所から敵を見つけるためにその機械の脚で地面を蹴るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

不破・静武(サポート)
年齢イコール彼女イナイ歴なので基本的な行動原理は「リア充爆発しろ」「リア充は死ね」です。オブリビオンは彼の中では全員リア充です。リア充に見えそうにないオブリビオンに対しては最初はやる気なさそうにしますが、状況を前進させる意思は一応あるので無理やり理屈をつけてリア充と決めつけます。一度敵とみなせば以降はもう容赦はしません。
オブリビオンに対しては基本的には『リア充ころし(焼却)』と『ガソリン』を併用して消毒という名の焼却を図ります。状況に応じて『リア充ころし(爆破)』や『リア充爆破スイッチ』等を併用して物理的にリア充爆発しろを実現させようとします。
見た目がやられ役なので逆襲くらう展開も可能です。




 ――視点は、サイキックハーツ世界のとある一人のエスパーのものに切り替わる。彼は地下鉄内のコンビニでレジ係を勤める一般的なエスパーである。何やら自分たちは「進化」したらしく、災害や暴力・病気や飢餓で死んだり傷つけられたりすることがなくなったのは彼が幼い時である。若い精神はすぐその状況に順応した。飢えて死ぬことがないが故、彼が働く理由は金銭を得てちょっとした趣味に使うためだ。同年代でも似たようなものが多い。死ぬことがないだけで「痛み」はある。それにどうやら「ダークネス」と呼ばれる存在の|攻撃《サイキック》によって自分たちは死んでしまうらしいということも知っているし、自分たちを「|灼滅者《スレイヤー》」と呼ばれる者たちが守ってくれるという事も知っている。
 そして今、どうやら地上が大変なことになったことは理解している。地上から逃げ込んだ人々によれば、彼が勤務する札幌麻生駅の周辺からは目に見えない壁が張り巡らされ、外に出られなくなったらしい。それが一度灼滅されたはずの六六六人衆による「|脱出不能の巨大密室殺人《ハンドレット・コルドロン》」であることまでは彼が知る筈もなく、また同様に地上で暴れ回っていたオブリビオンが一体猟兵に倒されたこともまだ知らない。
 さて、彼から見て。地下に備え付けられた椅子に座る男の二人、どちらが怪しかったかと言われれば、サングラスをかけたスーツ姿の男よりも圧倒的に太った男の方だった。あちらこちらと忙しなく視線をやり、挙動不審なことこの上ない。だから――もし事を起こすとしたら、そちらの太った男の方だと気をつけて見ていた。注視していたと言っていい。
 スーツ姿の男が、突然日本刀を抜いて、同じ避難してきた客に斬りかかろうとして、その腕を太った男の手が止めるまでは。
 視点をふたたび神の視点に戻す。一体のオブリビオン、ダークネスの死せる尖兵、生前の記憶を有する屍たるブラックスーツがエスパーに紛れ、人殺しを始める機会をはかっていた。地上でアンブレイカブルが暴れている間にまんまとエスパーとして地下に潜り込んだブラックスーツは、地上から響く破壊音が途切れて人々が安心するのを待っていた。しかし音が止んでもまだ安心できないという情報はいつの間にか外に偵察に出て逃げ戻ってきた一人のエスパーからもたらされ、彼からすれば避難民たちの張りつめた気が緩むのをようやく察して動き出した、その直後である。
「お前はリア充だ」
 よくわからないことを、腕を掴んだ醜男は言った。だがその後に発された言葉は、一般人としての生前の記憶と判断力を有するブラックスーツの思考からしても割と狂気に満ちた言葉であった。
「リア充は死ねよ」
 火炎放射が至近距離でブラックスーツに放たれる。そう、男は不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)。情緒が不安定なアラフィフ男性、しかして猟兵であった。彼はオブリビオンのすべてを自分が憎悪する悪「リア充」であると認識する。ブラックスーツが立ち上がって刀を抜き、そこらの人々に切りかかろうとした瞬間、静武の中でブラックスーツは即「|敵《リア充》」となったのだ。
 この避難民でごった返す中で火炎放射「リア充ころし」を使うなど、ここがサイキックハーツ世界でなければ愚の骨頂であっただろうが、幸いにしてこの世界の民間人はすべてがエスパー。ブラックスーツの刀では死ぬが火炎放射で死ぬことはない。むしろ静武が派手に事を起こした分、エスパーたちは迅速にそこから避難できた。
「そうだお前顔が結構整っているなさぞモテたんだろうリア充だ。リア充は悪だ。だから死ね」
 ブラックスーツに敵対するためにその理屈を捏ね上げる、|凶気《・・》でもって猟兵をしている静武であるが、この地下でガソリンを撒き散らすことは思いとどまれる理性があったらしい。だからと言っては何だが、静武はブラックスーツに反撃を許すことなくユーベルコードを使用する。
「リア充はぁぁぁ消毒だぁぁぁ~~!!」
 【|汚物《リアじゅう》は|消毒《しょうどく》だ】。この世の全てが齎す自分への不遇に対する憎悪をリア充への怒りに変えて生み出される炎は、あっという間にブラックスーツを燃やしつくし、焦がし尽くし、塵芥へと変えた。
 エスパーたちは蜘蛛の子を散らすように逃げ去り、ただ唯一レジ下に隠れるしかなかった男店員。彼の無事を確認して、静武は店員に言った。
「店員くん、彼女いる?」
「……い、いやあ、先日八年間片思いしてた相手に告白してフラれたばっかりでして、独り身っす」
「そうか、そうか。八年かあ……君はいいよ」
 かくて悲しい秘密を暴露することによって店員は敵認定されることを免れ。
 静武は駅地下の中を、|敵《リア充》を探して彷徨い出すのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『トリプルクエスチョン』

POW   :    クエスチョンキル
質問と共に【ククリ刀による斬撃】を放ち、命中した対象が真実を言えば解除、それ以外はダメージ。簡単な質問ほど威力上昇。
SPD   :    謎に満ちた死
【密室殺人鬼の殺意】を宿し戦場全体に「【六六六人衆のために死んでください】」と命じる。従う人数に応じ自身の戦闘力を上昇、逆らう者は【喉元へのククリ刀】で攻擊。
WIZ   :    ハンドレッド・コルドロン
【血の雨】を降らせる事で、戦場全体が【六六六人衆であふれる巨大密室】と同じ環境に変化する。[六六六人衆であふれる巨大密室]に適応した者の行動成功率が上昇する。

イラスト:オリヤ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちは、ダークネスの尖兵、生前の記憶を有した屍者どもを排除することに成功した。
そして彼らは見つけ出す。札幌麻生駅周辺を「|脱出不能の巨大密室《ハンドレット・コルドロン》」に変えた「密室殺人鬼」――トリプルクエスチョンを。
『シャシャ、シャシャシャシャシャ!さすがは|灼滅者《スレイヤー》と、そして異世界からの|猟兵《イェーガー》の皆さん。ここまでただの一人もエスパーを殺させずに守り切ってしまうとは』
 ……ええ、エスパーの命でもっと強いダークネスを六六六人衆として復活させようとしていたのに、残念でたまりません!
 そう言うトリプルクエスチョンの表情を窺うことは出来ない。彼は常に全身が影に包まれている。この男がどんな顔をしているのか、誰も知ることは出来ない。一度灼滅されているとはいえ、実質この男の全てが不明だ。
『では、代わりに皆さんの命を捧げてみるのはどうでしょう? シャシャシャ、いい考えかもしれません。エスパー数百人の命よりも、もっと強い六六六人衆が復活するやも』
 そう言ったトリプルクエスチョンは、その思い付きを実行することにしたようだった。
 ――もちろん、殺されてやるわけにはいかない。
 この密室殺人鬼を斃し、麻生の街を解放しなければならないのだから。
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 第三章 「トリプルクエスチョン」が 現れました。
 
 おめでとうございます。猟兵たちの尽力により、巨大密室「地下鉄麻生駅周辺」に出現したダークネスの尖兵「ブラックスーツ」たちは全員倒され、排除に成功しました。
 そして猟兵たちは巨大密室を作り上げた元凶である六六六人衆「トリプルクエスチョン」をたった今追い詰めています。
 彼を再殺すれば、「|脱出不能の巨大密室《ハンドレット・コルドロン》」は解除され、札幌麻生駅周辺に閉じ込められたエスパーたちを誰も死なせずに解放することができるでしょう。
 以下に、詳細を記します。
 
 「★注意★」
 マスターの巨大ロボットに対する知識がめちゃくちゃなため、基本的にキャバリア、メイガス、そうでなくても巨大ロボットの登場するプレイングは不採用となります。
 ユーベルコードも巨大ロボが登場するものは採用できません。あらかじめご了承ください。
 生身でキャバリア兵器を扱っている場合は採用可能です。
 
 「戦場について」
 場所は北海道は札幌、地下鉄麻生駅周辺、密室と化したその場所に存在するとあるビルの屋上です。
 日中であり太陽に照らされており、暗闇ではありません。
 解放された空間ですが、敵のユーベルコードで「密室」にされる可能性はあります。
 戦闘に使えそうなものはあまり多いとは言えませんが、「何を」「どうやって」使うかプレイングに明記してくださった場合はそこにあったことにします。「使える物は何でも使う」的なプレイングだと何かを利用する描写を行わない場合があります。
 既にエスパーは全員避難済みであり、ビルの上から状況を見守っていたトリプルクエスチョンに害されることはありません。
 接敵している状態からリプレイは開始する為、事前の準備行動は行うことができません。
 何らかの準備行動を行いたい場合(「体の“パフォーマンス”を良くしておく」など)、戦闘行動と並行して行う事となります。
 
 「ボス敵・トリプルクエスチョンについて」
 脱出不能の巨大密室「ハンドレッド・コルドロン」で都市を包み、多数のエスパーを殺戮することで強大なダークネスを六六六人衆として復活させようとする、全身が影に包まれた実態不明の六六六人衆です。
 エスパーの殺戮が難しくなったため、猟兵たちを殺害して代わりにしようと「思いついた」ようで、それを実行しようとしています。
 猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで戦おうとした場合でも、ククリ刀などによって攻撃してきますが、ユーベルコード、或いはプレイング状況によってはユーベルコードを使わせないといったリプレイになる場合もあります。あくまでもユーベルコードを使わないだけでは棒立ちのやられっぱなしにはならないという意味です。
 
 当シナリオのプレイング受付開始は、このシナリオが公開され次第即時となります。
 上記タグやマスターページに受付中の文字がないことがありますが、公開されていればプレイングを送ってくださって構いません。
 諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。

 それでは、自分の命を守り抜き。この密室殺人事件を未遂で終わらせてください。
アズロ・ヴォルティチェ
アドリブ・連携歓迎

六六六人衆の復活かあ…
で?
復活させてどうするの?
あなた達、どうせみんな弱いのに。

相手がハンドレッド・コルドロンを使うまでは言葉で煽りながら紺碧の絵の具や変幻自在の闇で応戦。
使った瞬間にこちらも枕中のアガルタの環境変化で対抗しよう。
10秒経っても使わなさそうだったら先にこちらが戦場全体の環境を変えてしまおうか。
わたくしの全てを侵食し続ける青き悪夢の世界への環境変化が出来た場合は精神汚染や恐怖を与える事で更に妨害を。
六六六人衆に精神汚染が効くかどうかはわからないけどね。

今のわたくしの行動の目的はあくまでただ2つ、ハンドレッド・コルドロンの発動を妨害する事。
この密室を…消し去る事。




「六六六人衆の復活、かあ……」
 アズロ・ヴォルティチェ(『紺碧のヴォルティチェ』・f44735)はトリプルクエスチョンの言葉を繰り返しなぞり、遠い目をしてため息を吐く。
「で? 復活させてどうするの? あなた達、どうせみんな弱いのに」
「シャシャシャ、これは手厳しい。どうやらあなたは|灼滅者《スレイヤー》ではなく、ダークネスの様子。なるほどなるほど? シャドウであるあなたからすれば六六六人衆は「弱い」と。納得です。生きる世界が違いますからね」
 トリプルクエスチョンは唯一窺える口を弦月の形に歪める。恐らくは心底可笑しいのであろう、ダークネス「シャドウ」でありながら猟兵となり、自分を再灼滅せんとしているアズロのことが。
「復活させて、ふむ復活させてどうしましょうねえ!仮にランキングマンの復活に成功すれば我々はまた自分より上位の六六六人衆を殺すことでまたこれ以上に強くなれる。その繰り返しを行うことができるでしょう。それもまたいいかとは思いますが――」
 ククリ刀をアズロに向けて薙ぎ払い、トリプルクエスチョンが玲瓏に語る。だが、トリプルクエスチョン自身それを名案だと思って話しているかは疑問であった。
「多数の六六六人衆を復活させて、そうどこにいるのでしょうねえもう蘇っているのでしょうか、縫村委員会を行うというのはどうでしょう? まさに蟲毒、最後に残った六六六人衆はより強い一体となるでしょうとも」
 アズロは言葉によってトリプルクエスチョンを煽るつもりであったが、トリプルクエスチョンはアズロが思った以上に明朗に喋りながら殺しの技をアズロにぶつけてくる。
「まあ、私たちの言う事など全部その場しのぎのいい加減であることは同じダークネスであるあなたならばご理解のうちだと思いますが……」
「――うん、もういいよ。時間は充分に稼げた」
 あなたが、思った以上にお喋りだったからね。
 アズロはユーベルコードを起動する。――【|枕中のアガルタ《アガルタ・デル・グイダリエット》】。紺碧の絵の具が戦場となったビルの屋上に降り注ぐ。絵の具が触れたそばから、その場所はあらゆるものを侵食する――侵食し続ける、青き悪夢の世界へと変化する。
「ああ、青い――青い――シャシャシャ、これは私のハンドレッド・コルドロンと同質の能力!実に美しい!シャシャ、シャシャシャシャ!」
「いい加減な六六六人衆には恐怖や精神汚染は効かないということかな、まあそれでもいいのだけれど」
「いいえ、いいえ!私ただいま私が灼滅されたあの戦争『ハンドレッド・コルドロン』でのことをまざまざと思い出しておりますとも!ああ、本当に楽しかった!」
 |灼滅者《スレイヤー》たちが苦労して灼滅したかつて出来損ないの|灼滅者《スレイヤー》だった|もの《ダークネス》たちを!「ハンドレッドナンバー」とするべくしていたあの名古屋での戦い!!
 ――そう、トリプルクエスチョンは高揚して叫ぶ。
「もういいよ、喋るな」
「そういうわけにも参りません、ああ、かつての学び舎の友であった者たちが我々の同胞として盟主となったこと、武蔵坂の|灼滅者《スレイヤー》たちには心労いくばくのものであったか!もう戻らぬと切り捨てるまでにどれだけの葛藤が為されたか、思いを馳せるだけでも愉しいというのに……」
「喋るな、そう言っている」
 アズロの目的の一つは達成された。悪夢に酔っているらしいトリプルクエスチョンはハンドレッド・コルドロンを発動させようとはしないようだ。
 ならば、もう一つの目的――この男を。トリプルクエスチョンを再殺し。この大規模密室を消し去る。それを、達成するまでのこと。
 アズロの絵筆は、トリプルクエスチョンにさらなる攻撃を仕掛けるために動き出す――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アズロ・ヴォルティチェ
アドリブ・連携歓迎

かいて、えがいて。
姿形を変え、救済を執り行おう。
穏やかな静謐の世界に、あなたは要らない。

人間形態からシャドウの姿に変化するよ。
せっかくの不定だ。腕を無数に増やして防御と攻撃に使おう。
質問には誠実に答えてあげるよ。
どうせあなたは消えるだけだし。
そもそも悪夢の中でまともな質問が出来るかは謎だけど…
防ぎ切れない斬撃は防御用の腕で受け止め、斬れた分の腕は新しく生やす。

とにかく攻撃用の腕で殴る、千切る、捻る、押し潰す。

穏やかな死の未来を書き換えるあなたをわたくしは許さない。

わたくしはあなたを救わない。
僕はあなたを許さない。
血の一滴まで世界に穢れてしまったあなたはもう穢れそのものだから。




 かいて、描いて。
 姿かたちを変え、救済を執り行おう。
「穏やかな静謐の世界に、あなたたちは要らない」
 アズロは自身を紺碧の絵の具で|鎧《よろ》う。身長は5メートル近くなり、握る絵筆のサイズもそれに比例して巨大化する。不定形の絵の具がより合わさったような姿は、アズロのソウルボードでの本来の姿であるスペードのシャドウ「紺碧のヴォルティチェ」――【|紺碧の影《アズロ・シャドウ》】。
「なるほど!それがあなたの正しい姿!ソウルボードの外でシャドウの正しい姿を見られるのは、シャシャシャ、時代の流れですねえ!」
 トリプルクエスチョンはククリ刀を踊らせる。斬撃と共に、アズロへと問いを投げかける。
「その強大な力を、ダークネスであるあなたが人の心を蝕むために使ったこともあったのでしょう? 実に、実に愉快!痛快な見世物であったことでしょう!この青は、実に美しいのですから!」
 それは質問をトリガーにしたユーベルコード。アズロが真実を答えなければ、その斬撃はアズロの絵の具の肉体をバターでも切るように真っ二つにするだろう、が。
 元より、アズロに答えを躊躇う理由はない。
「わたくしは『紺碧のヴォルティチェ』。絵を描いて侵蝕と拡大を繰り返すシャドウ。ならばこの青に魅入られた人間が心を蝕まれたこともあっただろうね?」
 元よりアズロの戦う理由は絵を描くこと。描き、塗りつぶす、紺碧で塗り潰す為に塗り潰す。絵を描けるからこそ戦っている。その「絵」に人が見入られるか心を蝕まれるかなどは知った事ではない。それは関心がないのではなく、自然現象と同じだからだ。
「さて、質問には答えたよ。悪夢の中でこれだけまともな質問ができたことは及第点かな」
 アズロの「正答」を以てトリプルクエスチョンのユーベルコードは解除され、ククリ刀の斬撃はキャンセルされる。それでも彼は六六六人衆。|得物《ククリ刀》を手にしたからには、幾らでも斬撃を繰り出すことは出来る。勿論それに「質問」が伴わなければユーベルコードとしては成り立たない、だからこれはただの攻撃だ。
 斬撃を防御用に生やした腕で受け止め、青の巨人と化したアズロは断ち切られたそばから絵の具の腕を新しく生やす。
 青い、青い腕で殴り、千切り、捻り、圧し潰す。
「どうせあなたは消えるだけの存在だけれど――そもそも、わたくしとは根本的に合わない」
 |トリプルクエスチョン《あなた》が撒き散らす血の赤は、この紺碧を汚すノイズでしかない。美しくない。
「穏やかな死の未来を書き換えるあなたをわたくしは許さない」
 わたくしはあなたを救わない。/僕は、あなたを許さない。
「血の一滴まで世界に穢れてしまったあなたは、もう穢れそのものだから」
 ――わたくしが、青に染める。
 アズロの巨大な絵の具の腕はより合わさり、巨大なてのひらと化して、トリプルクエスチョンを上から羽虫でも落とすようにビルのコンクリートへと叩きつけるのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゾンビーヌ・ロッテンローズ(サポート)
デッドマンのコミックマスター×自由農夫、18歳の女です
普段の口調は「女性的(わたくし、~様、ですわ、ますの、ですわね、ですの?)」、心を許したら「無口(わたし、あなた、呼び捨て、ね、わ、~よ、~の?)」です

ゾンビとして蘇った文字通りの『腐』女子
男性が好きですが恋愛対象でなく、妄想のネタとして男同士でくっつけることを好みます
口調は作っているもので、本性は内気な陰キャです

ユーベルコードは所持する物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません
また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




 ここはサイキックハーツ世界の北海道は札幌、「地下鉄麻生駅周辺」。現在このエリアは六六六人衆たるオブリビオン「トリプルクエスチョン」の「|脱出不能の巨大密室《ハンドレッド・コルドロン》」によって、内側から出られずこの世界の一般市民「エスパー」を何百人も閉じ込めた「密室」と化している。
 そして猟兵たちは破壊活動にいそしみ暴れていたアンブレイカブルを倒し、エスパーたちを内部から殺害しようとしていたダークネスの尖兵の屍部隊を殲滅し、ようやくこの事件の元凶たる「トリプルクエスチョン」をビルの屋上にまで追い詰めたところであった。
 さて、現在もこの街は巨大密室と化しているのであるが――
「つまりここってって「セ○○○しないと出られない街」ですわよね!?」
「セ○○○しても出して差し上げるつもりはございませんがァ!?」
 突如上がった猟兵の黄色い声にトリプルクエスチョンはついでけえ声でツッコミを入れた。入れざるを得なかった。
 無理もない。セ(以下略)しないと出られない部屋は初出2012年ごろのこと、戦争「ハンドレッド・コルドロン」で灼滅されたトリプルクエスチョンが知らなくも……いや、知ってるなこれ。このサイキックハーツ世界の灼滅者組織であるところの武蔵坂学園が活動し始めたのがちょうど2012年であるからして。セ(以下略)部屋ネタってもうそんなに経ってたのかよという気持ちとともに密室殺人鬼の皆さん擦り倒されたんだろうなって気持ちがある。インターネットミームって怖い。
「そんな「セ(以下略)しないと出られない街」の中に!たくさんの殿方を閉じ込めて!一体何をしようとしていたのです……いいえ、しようとしていなのはナニですね!? なんて美味し……いいえ、汚らわしいことでしょう」
「ううーん? 殿方?」
 そう、さっきから黄色い声をあげている猟兵たるや、ゾンビーヌ・ロッテンローズ(元カルト組織「リビング・デッド魔導会」の腐薔薇姫・f40316)。腐れる薔薇の姫、肉体とともに魂に強く腐の宿命と誇りを抱いた女史である。
「なんて恐ろしい計略でしょう!もしやダークネスの尖兵であった屍部隊「ブラックスーツ」はモブ(以下略)の為の竿(以下略)としてお呼びになられたのですか!? なんて破廉恥な!」
「いえ……普通にエスパー殺してもらうためですけどぉ……」
 会話のペースはゾンビーヌが完全に握っている。それでもなんとか自身のユーベルコードを発動する為、「質問」を投げかけながらククリ刀を振り抜くトリプルクエスチョンであったが。
「その場合私のポジションはどこになるのですかね!!参考までに聞いておきたく!」
「それは決まり切っています!総攻めですわ!!」
 あえなく言い切られてしまったので斬撃は回避された。
「ええあなたが総攻め、屍部隊の皆さんがモブの○役、そして……ああならばきっと倒されたアンブレイカブルの方は受けだったのでしょう!嫌だ嫌だと暴れながらも手籠めにされてしまう雄々しき薔薇の竜!そんな彼こそ汚されるにふさわしいですもの!そして閉じ込められた大勢の殿方はセ(以下略)しないと出られない!」
 なんて完璧な布陣でしょう、ええいうらやまけしから許すまじ!
 言い切るだけ言い切るとゾンビーヌはユーベルコード【ロッテンローズヒップ】を発動させる。長文を叫ぶ間に持ち込んだ土に希少植物「ロッテンローズヒップ」の種は撒き終わっている。10秒で変異した腐毒滴る棘を持つ無数の蔓薔薇の鞭がトリプルクエスチョンを襲うのであった。
 腐れよ乙女、腐れよ貴婦人。お前が男と男のカップリングに注ぎ込んだ熱の分だけ薔薇は燃え。その魂に薔薇は咲く!

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーフィ・バウム
《蒼翼の闘魂》を発動!
真の姿:蒼き鷹として挑みましょう。

『ハンドレッド・コルドロン』
確かに私は”覚えて”います。

無辜の人々が流した血で濡れた駅前の道路を
殲術再生弾の発動を叫んだ2016年4月のことを、ね
貴方が何度蘇ろうと、その都度灼滅してみせますわ

闘志全開にて相手に向かい
功夫を生かしたプロレス打撃を叩き込みます
ククリ刀による攻撃も見切り、致命打を避け
オーラ防御全開に凌ぎますわ

何か質問を投げられても秘匿することなどありません
堂々と己を晒し、受け切り勝つのがレスラー
貴方の刃で斃れるような鍛え方はしておりません

激痛耐性で耐え抜き間合いを詰め
怪力を生かした投げと共に衝撃波を叩き込み
KOを奪いますわっ!




「『ハンドレッド・コルドロン』……。ええ、確かに私は“覚えて”います」
 無辜の人々が流した血で濡れた名古屋駅前の道路を。
 |戦術再生弾《キリング・リヴァイヴァー》の発動を叫んだあの2016年4月のことを。
 静かにそう唇から言葉を紡ぐユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)の髪は青。
 彼女のユーベルコード【|蒼翼《そうよく》の|闘魂《とうこん》】は既に発動され、彼女は真の姿へと転じている。
「貴方が何度蘇ろうと、その都度灼滅してみせますわ!」
「シャシャ、シャシャシャシャシャ!!ああ、あの時のことを覚えている|灼滅者《スレイヤー》ですかぁ!ならばどうでしょう、お友達を手にかけた? 既に魂は我々と同一のダークネスとなって戻らないお友達とやらのは温かかったでしょうかね?羨ましいですねえ、私友達などというものはもう忘れてしまって久しいですので!」
 トリプルクエスチョンのククリ刀が「質問」を伴って真の姿を晒すユーフィの喉元に迫る。けれどユーフィは毅然としてその攻撃をてのひらでつかんで受け止めた。
「残念ながら、あの戦場で友に巡り合えるほどの幸運も悪運も私にはありませんでした。だから私は彼ら彼女らを再殺することは出来ませんでしたし、その血の温度を知ることもできなかった」
 ぐぐ、と受け止めたククリ刀に力を込めるユーフィ。
「そして私は、あなたにだってあそこでは出会えなかった。けれどそんなことはどうでもいいことです。必ずや私がやらなくてはいけないことではなかったから。……だけど、今あなたがまたこうして蘇って、人々に害をなすというのなら――何度でも、私はあなたを灼滅します」
 ユーフィの体にはオーラの防護膜が幾重にも張り巡らされ、刃を掴んでも指が切断されるという事はない。けれど、皮一枚は確かに切れて、ククリ刀を真っ赤に濡らしていく。けれど刃を、ユーフィが離さない。
「は、あ、あああああああああ――」
 丹田に氣を集中させ、殺意でなく闘志をみなぎらせて、青髪のユーフィ「蒼き鷹」は吠える。既に回収不可能と見做されたククリ刀からトリプルクエスチョンの手は離れている。がらんと掴んでいた刃をコンクリートに落とす。
「さあ、まだなにか質問はございまして? 私には秘匿すべきものなど何もありません。堂々とすべてを晒し、己を晒し、受けきってからそして勝つのがレスラーなれば、貴方の刃で斃れるような鍛え方はしておりません」
 何もないのなら――
「こちらから、参りましてよ!!」
 レスリングとは「受け」の美学だ。相手の攻撃を堂々と受けきる姿にこそ観客は熱狂する。そしてそれらをすべて耐えきったのならば、勿論反撃するのが礼というものだ。
 肘。骨と皮との距離が一段と薄いその部位を武器に。ユーフィはエルボーを繰り出す。そこから半回転し。姿勢を低くしてからのアッパーとともに衝撃波を叩き込む。
「シャシャ、シャシャシャシャ!いやあ、さすがに序列一位と二位をも灼滅しただけある――」
 くるりと衝撃波に乗って屋上の貯水塔へと捕まるトリプルクエスチョン。しかしユーフィはそれを見て、理解する。
 この男は、この期に及んで、まだ、逃げるつもりだ。
「――逃がしませんわよ」
 己の意図に気づかれたトリプルクエスチョンはククリ刀を多数投擲してくる。その全てを受けきり。痛みに耐えて間合を詰め、貯水塔から引き下ろして地面に縫い留める。
「これで、KOですわ……!」
 二度目にエルボーを叩き込まれたのは心臓の裏側。ぐしゃりと心臓がつぶれる感触が骨越しに伝わってくる。
「ええ、これであなたを、また灼滅させていただきましたわ」
 ユーフィは青髪に汗を伝わせ、静かに告げた。

 ――密室殺人鬼、トリプルクエスチョンは再殺された。
 大規模密室と化していた地下鉄麻生駅周辺は既に解放されている。
 地下に商店内に逃げ込んでいたエスパーたちが戻り、ふたたびそこに活気が取り戻されるまで、そう長い時間は必要ないだろう――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年11月07日


挿絵イラスト