打ち砕け、エジプトピラミッド怪人の野望!
今日もグリモアベースにて。
御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)が、目の前に集った猟兵たちに相談を持ちかけてきた。
「お主ら、ちょっとこのネット画像を見てくれんか? サイキックハーツ世界での案件なのだが」
菘がぱちんと右手の指を鳴らすと、立体スクリーンが浮かび上がる。
その画面に映し出されたのは、どこかの風景写真。深い夏の緑が生い茂る山並みと、黄金に輝き聳える巨大な岩の三角錐の建造物であった。
「これが何かを分かる者はどれぐらいおるかのう? ピラミッドといって、要は岩を積み上げて造った昔の偉い王様の墓なのだそうだ。いやはや、スケールがでっかいのう!」
と、巨大な建造物の鎮座を興奮した様子で菘は説明をするのだが、ピラミッドが一体何なのかを詳しく知っている世界出身の猟兵たちは、微妙な反応を見せていた。
この画像、ちょっとどころかだいぶおかしい。
「はっはっは、怪しむのは当然だな。そりゃそうだ、実はこのピラミッドは偽物だ。なんせ日本の山中にあるのだからな!」
そう、当たり前だがピラミッドといえばエジプトの建造物だ。
どこまでも広がる黄色い砂漠と、高く青い空の下にどーんと鎮座しているものであり、こんな緑生い茂る森の中に埋もれるように存在するはずがない。
どうやら見た所構造自体はしっかりしているようだが、なんというか、テーマパーク感が拭えないというか……。
「実はこれ、エジプトのご当地幹部、『エジプトピラミッド怪人』が造ったアジトなのだ。日本には昔のデカい墓が多くあるらしいのう? それを全てピラミッドに変貌させてやろうという、ご当地愛に溢れた壮大な野望を持つナイスガイが動いておる!」
ナイスガイ云々ともかく、壮大な計画なのは間違いない。
しかもこのピラミッド、アジトであるピラミッドに入ろうとした者を『エジプトミイラ戦闘員』に変える力も持つのだとか。
「少し話を戻すと、この写真はエジプトピラミッド怪人があえてネットに流した情報なのだ。『この建物は一体どこにあるでしょう? 辿り着いた方には豪華プレゼント!』という感じの、偽りのクイズとかミステリーな企画としてな。すでに犠牲者も複数人出てるらしい」
ピラミッドがある場所を画像から特定して探し当て、その中でも実際に現地に辿り着いてしまった|エスパー《一般人》を戦闘員に変えてしまおうという、計画としては巧妙なものだ。
怪人どもは今はまだ静かに戦力を蓄える雌伏の段階。被害者であり配下が充実してきたら、一気に日本中の墓所をピラミッドに変える攻勢に出るのは間違いない。そうなる前に野望は潰さなくてはならない。
「お主らにはまず、この画像を元にピラミッドの存在する地点を特定してもらいたい」
この画像そのものはネットに広く出回っている情報であり、それなりの人数にちゃんと解かれることが大前提。決して誰も解けないような難易度ではない。
位置の特定に繋がる情報は必ず画像に含まれているし、もっと別の手段でも場所の特定の方法は色々とあるだろう。問題は解いたが現地に向かわなかった人に接触してみるとか。
「とゆーか、場所が分かったからといって誰もがそこに行こうぜ! とはならんわな。豪華プレゼントと銘打ってはいるが具体的に景品の内容を発表しておらんし、掛かる交通費とか時間とかを勘案すると、実際に正解と思しき現地まで赴く者は割と絞られるだろう」
だからこそ、あくまでも怪人が秘密裏に少しずつ進めている作戦という規模になっているわけだ。
とにかく。場所が特定できたら現地に赴いて、エジプトピラミッド怪人とその手下たちの討伐となる。
「実はこの山中のピラミッドは『巣』でもあってな。このアジト、周囲の弱いオブリビオンを呼び寄せるという性質も持っておるのだ。
画像を改めてよ~く見てくれ。ピラミッドの周りに包帯を巻いた奴らが見えんか? これは演出ではなく手下のオブリビオンだ。こいつらをまずはブッ飛ばしてくれ」
なるほど画像がぼやけてはいるが、杖? 刀? を手に持った包帯男たちらしきものが所々に見えている。これが手下のミイラなのだろう。
と、思ったのだが。
菘が非常に気まずげに猟兵たちから顔を逸らす。
「いや、こいつらはミイラではないぞ。『トンカラトン』という都市伝説だ。エジプトとかピラミッドとは、全っ然、関係がない」
……じゃあなんで、こいつらここに居るの?
「はっはっは、さあな! 妾にもさっぱり分からん! なんかこう親近感とか感じて寄ってきたのではないか?」
菘が適当なことを言って笑い飛ばす。実際のところは本当に分からない。少なくとも推測で答えの出るものではないし、する必要もないだろう。
「トンカラトンたちを倒したら敵のボス、エジプトピラミッド怪人との戦闘だ。場所的にピラミッドの上とかで戦うことになるのではないかのう? お主らならズバーンと勝利できると信じておるぞ!
……さて、それでは覚悟はできたかのう? 作戦の成功を信じておるよ。では行ってくるがよい!」
高笑いとともに菘のグリモアが輝く。猟兵たちはサイキックハーツへと転送されるのであった。
雨森
OPをご覧いただきありがとうございます。雨森です。
今回の作戦の舞台はサイキックハーツ。日本全国にピラミッドを作らんという野望を抱き、そのための戦力拡充を図ろうとしているご当地怪人の野望を打ち砕きましょう。
●第一章
冒険です。何らかの方法で、事件の舞台となる現地の場所を特定してください。
現地に向かう交通手段、移動方法などは考える必要はありません。一章と二章の章間で行います。
●第二章
森の中での『トンカラトン』との集団戦です。
●第三章
ピラミッドの上での、エジプトピラミッド怪人との決戦です。
なお今回の事件に巻き込まれてミイラにさせられた一般人は基本的に登場しません。戦闘に巻き込む恐れも、助ける行動のプレイングも不要です。
それでは、皆様の素敵なプレイングをお待ちしております。
第1章 冒険
『噂話に潜む真実』
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POW : 手当たり次第、色んな人から話を聞く
SPD : 気になる話題をひとつに絞って調べる
WIZ : 情報の出所に目星を付け、そこを当たる
イラスト:yakiNAShU
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
フリル・インレアン
ふえ?この場所がどこか当ててみせろって、そんなのわかる訳がないじゃないですか。
この世界には猟兵のお仕事ぐらいでしか来てないんですから、何があるかなんてわからないですよ。
ふえ?それならアヒルさんの名推理でこの場所を特定してみせるって、ふええ劇場ですね。
本当は正座をさせられるから嫌なんですけど、私にはこの場所はさっぱりですからアヒルさんの推理に期待しましょう。
きっと、この画像に写っている植物や太陽の位置から場所を割り出したりとかするんですよね。
今回はアヒルさんの推理が楽しみですね。
「うーん……ふええ……」
とあるパソコンの前で、フリル・インレアン(大きな|帽子の物語《👒 🦆 》はまだ終わらない・f19557)は頭を抱えていた。
ディスプレイに写っているのはもちろん、グリモア猟兵から渡された例の画像――森の中のピラミッド――だ。そして、フリルはさっきからずうっと困ったような声を漏らしていた。
「この場所がどこか当ててみせろって……そんなのわかる訳がないじゃないですか」
フリルにとってサイキックハーツとは馴染みのある世界ではない。今回のように猟兵の任務ぐらいでしか訪れる機会がないので、例えるなら仕事で行く慣れない地域の出張先のようなものだろうか。
誰かに頼ることもできず、すでに諦め気味のフリルである。
そんな呻いているフリルに対して、アヒルさんが助け船らしき声を掛けてきた。
「ふえ? それならアヒルさんの名推理で、この場所を特定してみせるって……わかりましたよ、ふええ劇場ですね」
実のところ、それを期待していた節は否定できない。フリルとしては決して乗り気にはなれないが。
「私にはこの場所はさっぱりですから、アヒルさんの推理に期待しましょう」
……先ほどは、フリルが居るのを『とある場所』とだけ表現したが、実のところ、そこはとあるネットカフェであった。
フリルがちょこんと椅子の上で正座しているとなると……実に可愛らしい。もとい、周囲の眼が恥ずかしいわけだ。ネカフェに来た客が他人を気にするのかといえば、実は誰も全然気にしないかもしれない。が、フリル自身がどう感じるかが大切なわけである。
「ふええ、んしょ」
ひとまずは椅子の上で正座になり、アヒルさんがなにやらキーボードを触るのを眺めていく。
どうやら、この画像に写っている植物や太陽の位置から場所を割り出していく、ということらしい。
「へえ、地域によって植生? 生えてる植物の種類には特徴があるんですか。どれも同じ木にしか見えませんね」
残念なことにフリルにはその特定作業のプロセスが理解できない。が、情報を解析してスムーズに謎を解いていくアヒルさんの手腕は見ていて小気味よい。
「はあ、どうやら関西地方らしいのですね」
……その一方で。足に痺れを感じてきたから早く解いてほしいとも切望しながら、フリルはアヒルさんの流れるような手際を眺めているのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
え?こんなでっかい建物がこの極東の国に?!
へ?偽物?偽物かよー!くそ~怪人め~私のトキメキを奪いやがって~!
そんな悪い怪人はホンモノの騎士道たるベルト・ラムバルドがお仕置きだ!
だがまずは場所を特定せにゃならんわけよ…面倒だな~…どこ?
…わからん!悩んでも無駄!こういう時こそキャバリアよ!
ヘルムを利用し高性能を駆使して情報収集と情報検索でネット画像の居場所を掴んで見せる!
あったまいいー!さっすが文明の利器!
場所はわかったが敵にばれぬように近づく為には…野良モーラット達を召喚!
こいつらの野生の勘と道案内でアジトを目指すとしよう!
なに?近道?ほんとに?獣道っぽいんだけど…大丈夫かこれ?
でっかいものに憧れるのは男の|性《サガ》なのである。
「え? こんなでっかい建物がこの極東の国に!?」
主語が大きい? そんなことはない。現にその中の一名であるベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は、説明を聞きながら後光が物凄くキラキラしていた。
自分の|キャバリア《パロメデス》にカッコ良いポーズを取らせて立たせたら、友人たちにドヤって自慢できるぐらいの素晴らしい写真が撮れるに違いない。
……のだが。その期待はすぐに黒く塗り潰される。
「へ? 偽物? 偽物かよー!」
そう、残念なことにこのピラミッドはパチモンだ。もし調子に乗っていたら、後々まで弄られるネタになるのは間違いない。
トキメキを奪われたベルトは憤慨した。
「そんな悪い怪人は、ホンモノの騎士道たるベルト・ラムバルドがお仕置きだ!」
この罪を糾さねばと、ベルトは決意も強く現地へと向かうのだった!
「で、だ。……まずは場所を特定せにゃならんわけよ……面倒だな~……」
……残念なことに決意は秒で挫けていた。外は異常に暑いので、冷房を効かせた自機の操縦席でぐったりしている。
「……ええい、わからん! 悩んでも無駄! こういう時こそキャバリアよ!」
しかしただ悩むのは性に合わない。ベルトはさっくりと気持ちを切り替えて、思いつく中で最も堅実な方法を採用する。
多機能搭載のスマートヘルムを使い、情報収集と検索を実行。高性能を全力で駆使してネット画像の場所を特定していく。
「ひゅー! あったまいいー! さっすが文明の利器!」
なるほどこれがキャバリアの平和利用。戦争の道具、プラントの争奪に使われるよりもずっと良い、かもしれないね。
「なるほど。これはナラ、という州にあるのか」
写真内に写っている電柱のデザイン、山の形や方角など、様々な情報から解析した結果を目標座標に入力する。後はそこへ向かうだけだ。
「キャバリアは目立つから、敵にばれぬように近づく為には……」
少し考えたベルトは、野良モーラットたちを召喚した。彼らに道案内を頼むことにする。
「もっきゅ? きゅぴ~!」
ぴょんぴょんと軽やかに跳ねながら、モーラットたちは目的地へと向かっていく。別にモーラットもこの世界の生物ではないが、地理的な要素はシルバーレイン世界と近いようなので問題ない、らしい。
「さあ、アジトを目指すとしよう!」
意気揚々と自機を駆り、ベルトは偽ピラミッドへと迫っていくのだった。
「なに? 近道? ほんとに? 獣道っぽいんだけど……大丈夫かこれ?」
ところで。モーラットは身体のサイズ差なんて考えずに道案内をしてくれるので、さすがにキャバリアで同じ道を通るのは難しい場面が多々ある。
「樹木ぐらいでは通せんぼにもならないが、環境破壊とか隠密性とかどうなんだ?」
バキバキと物理で豪快に道を切り開きながら、しかし事件を解決するためには仕方ないなと開き直るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
うわ出た
…いや、まだ出てねえんだけど思わず口にしちまった
とりあえずツッコミ、もといシバきに行くか
スマホで【情報検索】【情報収集】…この情景を近所で見ただの、噂になってるだのコメントが意外とあるな
そしてコメントしてる面子がSNSで晒してる飯情報で、そこがどの地域か当たりはつけられる
…まさか武蔵坂学園在籍時に日本あっちこっち行った経験が活きるとは思ってなかったな
じゃなくて、こういう所で身バレが起こりえるからSNSって怖いよな
オレも気を付けよ
そしてこのアプリの設定で…よっしゃ、サイザナの|情報端末《サングラス》とGGO製の魔導バイクの連携OKっと
じゃ、大雑把な目的地まで…走るか、Galgalim
「うわ出た」
グリモア猟兵による事件の経緯を聴いていた時にギュスターヴ・ベルトラン(我が信仰、依然揺るぎなく・f44004)が漏らした苦笑は、特に誰に咎められることもなかった。
「……いや、まだ出てねえんだけど思わず口にしちまった」
そう言葉を続けるが、皆の反応はほぼ100%、ギュスターヴに同意、あるいは同情するもの。
被害の規模や深刻さはたしかに相当に大きいのだが、いかんせんご当地怪人という存在が関わった時に漂うこの独特の雰囲気は、悪い意味でなんとも懐かしい。
「復活してきても全然変わんないのな、コイツら。とりあえずツッコミ、もといシバきに行くか」
そんなこんなで、ギュスターヴも解決に動くことにしたのである。
ひとまずギュスターヴが始めたのは、スマホを使用した情報の収集。画像の場所を自分で特定するのではなく、この地点の正答についての情報だ。
「ふーん……意外とコメントがあるな」
『日本』『ピラミッド』『場所』など、まずは曖昧なキーワード群から絞り込んでみると、この情景を近所で見ただの、噂になってるだのと、早速SNSで色々とヒットしてくる。
とはいえ、どこかの企業が開催している(と、表向きには思わせている)企画を邪魔するのも良くないと思っているのか、ピンポイントに具体的な地名を出している情報は出てこなかった。もしくは正答らしき地名を出しているが、呟いた当人が確実だとは思っていないか。
「だが、そこがどの地域かは当たりがつけられるんだな」
例えば、コメントをしている人間のとある発言に注目してみよう。それは食事だ。
「飯情報ってのは、結構地域を絞り込めるんだぜ? 食材然り、実は全国規模じゃない、ローカルに偏った出店をしてるレストランとかな」
まさか武蔵坂学園の在籍時に、日本全国あっちこっちに行った経験が今更に活きるとは。ギュスターヴはガラの悪い笑みをスマホの画面に向けた。その姿は、例えば借金をした者を追い詰める借金取りのような……。
「……じゃなくて。こういう所で身バレが起こりえるから、SNSって怖いよな」
セルフツッコミをしつつ、同様の事をやらかさないようにとギュスターヴは気を付けるのであった。
「このアプリの設定で……よっしゃ、連携OKっと」
使用しているスマホ自体は特に変哲もない――とはいえESPを使用する際の媒体にも使える――物だが、サイバーザナドゥ製の|情報端末《サングラス》から|GGO《ゴッドゲームオンライン》製魔導バイクに連携をさせる、いかにも猟兵らしいツールの連携を行う。
「じゃ、大雑把な目的地まで……走るか、Galgalim」
魔導書の装丁を一撫でしてバイクに跨ると、ギュスターヴは一路関西へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
檍原・颯汰
【171】
航空写真で見つけた秘境とか、現地に行こうとする冒険家心をくすぐる作戦だねぇ~
日来神宮の説などが好きな人は好きそう
色んな好きが乗じて一大組織になりそうだよ
若葉さんの言う通り、たしかに
武蔵坂学園を警戒してるのかもね?
怪しい動きが見つかると面倒だからさ……
僕はネット上のサイトを見て回ってみようかな
日本の「古代文明説」を唱えてるまにあっくな管理人さんなら色々まとめてくれてそうな……?
管理人さんに話聞けたら聞きたいかも
怪しいから現地に行くつもりです! とメールでやり取りしつつ
探検家な常連さんがいるなら近付かないよう注意喚起をお願いしたいかな
終わったら偽物の証拠写真を提供するって約束するね
鵯村・若葉
【171】
ご当地怪人の事件は色々ヤバいとは檍原さんから聞いてはいましたが
日本の山中にピラミッド……?
無法が過ぎません?
それにしても、どうして明確に場所を出さないのでしょう?
武蔵坂学園を警戒しているのでしょうか?
……大変ですね、怪人も、学園も
この手のタイプには熱意と秘密感が刺さりそうな気も
邪道ですが敢えての情報発信元に問い合わせ
一般人の目に触れないよう直接メッセージで行います
『どうしても二択で絞れません! ヒントをいただけないでしょうか? トト神の導きを!』とでも送っておきましょう
やり取りは常に《ビジネス知識》の礼節で丁寧かつ偽りの熱意を
檍原さんの情報と合わせれば精度がより上がりそうですね
ご当地怪人は今回、割と遠回しな作戦で被害者を集めようとしている。
「航空写真で見つけた秘境とか、現地に行こうとする冒険家心をくすぐる作戦だねぇ~」
などと、檍原・颯汰(ダークネス「シャドウ」のアリスナイト・f44104)ネットで情報を検索をしながら相方と緩く雑談をしていた。
「|日来神宮《にちらいじんぐう》の説などが好きな人は好きそうだよね。知ってる? ヒラミトとも読めるから、巡り巡って実は日本のピラミッドだって説」
「いえ、知りません」
そんなことを聞かれても、という気持ちが入った端的な否定を返す鵯村・若葉(無価値の肖像・f42715)。さすがに古代のトンデモ学説まではUDC関係者でも知識の範囲外だ。
「やっぱりそういうのも意図的に匂わせてるのかねえ。色んな好きが乗じて、放置しておくと一大組織になりそうだよ」
「……ご当地怪人の事件は色々ヤバいとは檍原さんから聞いてはいましたが、日本の山中にピラミッド……? 無法が過ぎません?」
割と本気でドン引きしている若葉の視線の先、PCの画面上には件の写真が写っている。その圧倒的な力をもっと別の方向に使えばなどというのは、要らぬ心配ではあるのだが。
「それにしても、どうして明確に場所を出さないのでしょう? 武蔵坂学園を警戒しているのでしょうか?」
「若葉さんの言う通り、たしかに。多分だけど武蔵坂学園を警戒してるのかもね? 怪しい動きが見つかると面倒だからさ……」
「……大変ですね、怪人も、学園も」
こんな戦う気を削がれる手口のくせに、マジで強いんだから、とぼやく颯汰のことを責められる学園OBはきっといない。
そして昨今再びご当地怪人の突飛な作戦に対応させられることになっている武蔵坂学園にまで、何故だが同情の火の粉は飛んでしまうのだった。
それはともかく。
颯汰は『このピラミッドは古代文明の建造物』説を唱えている、まにあっくなサイトを訪問してみることに。
「その幻の古代文明|(仮)《カッコカリ》、多分どっかのダークネスの支配下だったんじゃないかなあ」
様々な未知の古代文明の情報を掲載しているサイトを閲覧する颯汰。学園関係者のみが知るレベルの機密度が高い世界の謎もいくつか知っているので、こういうサイトの推察は微笑ましくすらある。
なお改めて強調するまでもないが、今回のピラミッドは古代文明とは一切関係が無い。なんせここ数か月以内に造られらものだ。
「いや、エジプト文明と関係があると解釈できるのかな?」
そんなことはありません。
ともあれ、颯汰はサイトの管理人とコンタクトを取ることにした。すると、サイトの管理人もこの件は気になっていたとのこと。まだ都合がついていないので訪問できていないが、近日中に向かうつもりだったようだ。
「だったら、『僕たちも怪しいと思っていて、すぐに現地に行くつもりです!』と……」
フットワークは軽いものの専門知識はあまり無いので、先に現地で色々と証拠写真を撮ってくる。それを提供するので期待して待っていてほしいと心理的な牽制を行う。
また、他にも探検家なサイトの常連が居るなら、まだ近づかないようにとお願いをするのだった。
一方、若葉はある意味で禁じ手……そして、今回であれば極めて友好な手を打った。
「えーと、『どうしても二択で絞れません! ヒントをいただけないでしょうか?』。相手を神のように称えて持ち上げるのであれば、どんな名前を出せば適当でしょうか」
「知名度があって高位っぽいなら、何でもいいんじゃない?」
「ですね。なら適当に……『トト神の導きを!』と。知恵を司る神ですし」
文面の熱量とは反比例した徹底的に冷めきったテンションで、若葉はメールを作成する。その送り先は、画像の情報発信元。
そう、邪道極まりないが、こちらを逆探知できないように秘匿して――そこは武蔵坂学園に協力してもらった――、主催に直接メッセージを送りつけて正答を教えてもらおうという魂胆だ。
「ビジネスでのような礼節ある丁寧さに、大嘘の抑えきれない熱意をひとつまみ」
普通ならこんなメッセージは完全無視。正解どころかヒントすら出してくれない以前に、返信すらするはずがない。しかしこれは解かれることを大前提とした問題だ。分からない相手であれば助け舟を出し、謎を解いて現地に来てもらわなくてはならない。
「返信が早いな……『我も、手助けするのはやぶさかではない。ヒントはN県の……』」
「地名の頭文字をアルファベットで? かなりギリギリのヒントだね」
「檍原さんの情報と合わせれば、精度がより上がりそうですね」
ここまで来れば正解はほぼ出たようなもの。両者の得た情報を突合させて件の地点を特定した颯汰と若葉は、早速現地へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
椎那・紗里亜
ご当地怪人のやることは時代が変わっても変わらないんですね。
呆れると言うか安心感と言うか……
(苦笑しながらPCに向かう)
画面に映る植生や地形、特徴的な風景を検索。
さらにピラミッド、ミステリー、賞品などのキーワードで、
実際に場所を特定した人の書き込みを検索。
二つのヒットを突き合わせて場所を特定します。
(スマホでスケジューラー確認)
次の講演会にはまだ余裕がありますね。
これならお出かけしても大丈夫でしょう。
さて、出かける前にこの書類とレポートは仕上げておかないと……
ある程度平和になったとはいえ、山積されるESP法関連の業務。
武蔵坂学園大学法学部椎那研究室もまた、
時代が変わっても変わらないのであった……
「ご当地怪人のやることは、時代が変わっても変わらないんですね」
パソコンを前にした椎那・紗里亜(言の葉の森・f43982)の呟きには、呆れの中にも僅かに懐かしさが含まれていた。
ある程度平和になったとはいえ、サイキックハーツの世界は最も深刻で大きな課題をひとつ解決したというだけ。数十年、数百年という単位で人類史を俯瞰した場合、今は、とても長くて平穏な時代へと――必ずそうしてみせる――向かうための、混乱の過渡期なのではないだろうか。
そんな中で復活してきたご当地怪人なわけだが、手口の懐かしさに紗里亜は呆れるというか安心感すら覚えていた。
今、彼女が居るのは仕事場であり居城。武蔵坂学園大学の法学部の椎那研究室の中であった。研究室内にはESP法整備関連の資料が山積している。
紗里亜が事件画像を確認しているのは別に仕事のサボりというわけではない。ダークネスの灼滅もまた本業なのだから。
「それで今回の奴は、どこで悪事を働こうとしているのでしょう?」
ということで、早速情報を精査し始める。
単に風景画像として見ていると気づかないが、植生や地形など場所の特定に繋がる情報の量は実は多い。
「関西……奈良県の北部の山中、でしょうか」
加えて、別方向からもアプローチを行う。
そこまで広く出回ってはいない謎解きではあるが、『ピラミッド』『ミステリー』や『賞品』などとキーワードを重ねて検索していけば、謎解きを楽しんだ人々の書き込みはSNSなどでそれなりの量がヒットする。
一つ一つの情報は曖昧でも、それらを整合させていけば……すべてが交わる点が発見できるのだ。
一通り調査を続け、彼女なりの結論を導いた紗里亜。
「うーん……」
椅子の上で後ろに反り、背もたれに体重をかける。両腕を伸ばしてストレッチした後、スマートフォンを取り出してスケジュールを確認した。
「次の講演会には、まだ余裕がありますね」
拠点への襲撃であるし、連戦は予想されるがそう長引くものでもないだろう。紗里亜が出張しても大丈夫、という判断だ。
とはいえ。
「出かける前に、この書類とレポートは仕上げておかないと……」
それでも数時間、数日分の業務が圧迫されてしまう。紗里亜はやる気を出し、まずは眼前のタスクをこなしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『トンカラトン』
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POW : トンカラトンの歌
予め【遠くから包帯姿を見せつける】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD : 包帯飛ばし
自身が装備する【敵を拘束する包帯】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ : 「トンカラトンと言え!」
【包帯の下からの視線】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
イラスト:大雪基地
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
奈良県北東部の某所、とある山中。人里から離れてはいるが、一応無理をすれば車でも到達できるような地点。
深い森の中に、エジプトピラミッド怪人がブッ建てたピラミッドがどーんと鎮座していた。
謎に答えてこの場にたどり着いた者を歓迎するように『ようこそピラミッドへ』『正解です、中へお入りください』などと書かれたのぼり旗が立っているのが、シュールさをより一層際立たせている。もし本当に民間人によるクイズ企画であったなら、きっとほっこりとした顛末となったのだろう。
しかし今は、猟兵たちを迎撃すべくミイラが……ではなく、刀を構えたトンカラトンたちが待ち構えていた。
ピラミッドへと向かいボスを倒す前に、彼らを殲滅しなくてはならない。
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
やっと着いた!疲れた…!
おぉ!?ミイラだ!偽物だがさすがピラミッド!雰囲気凝ってるな~!
え?ミイラに似た妖怪!?なんだよ偽物かい!ふざけんなよ~!
モノホンの騎士道精神のベルト・ラムバルドが相手じゃあ~!
レイピア振るい…生身で集団と戦うのは無理!
つー訳でUCでカクリヨから東方妖怪軍団たちを召喚!
諸君!なんとこの世界には新しい妖怪のトンカラトン達が生き延びてた!
お仲間だぞ!感動の再会だぞ!祝えや祝え宴会だ~!ほら武器もしまってしまって!
周囲を宴会場に変化させて、敵連中を宴会に引き込んで妖怪達と宴会をさせよう!
よしよし感動の再会だな!その隙にピラミッドに入ろっとトンカラトンっと…!
「やっと着いた! 疲れた……!」
主に、森林破壊だとか発見されるかもしれない不安を我慢して、長時間のキャバリア移動の果てにベルトが辿り着いた場所。
そこには、黄金色に輝くピラミッドがどーんと聳え立っていた!
というかそもそも、本物のピラミッドの表面に金が貼られたという事実はない――そんなに大量の黄金があるわけがない――ので、実のところコレはかなり誇張されたピラミッドなのである。多分これも本物の金ではない。
「おぉ!? ミイラだ! 偽物だがさすがピラミッド! 雰囲気凝ってるな~!」
そしてそんな黄金ピラミッドの前には、ゆっくりとした感じで徘徊しているミイラたち。それを発見したベルトのテンションは、まるでテーマパークに来たみたいに一気にブチ上がる。
……のだが。|キャバリア《パロメデス》から送られてきたデータはあまりにも残酷なものだった。
なんと、奴らはミイラではなく、よく似た妖怪だったのだ!
「なんだよ偽物かい! ふざけんなよ~! モノホンの騎士道精神を持つ、ベルト・ラムバルドが相手じゃあ~!」
あまりにも手酷い裏切り。憤慨したベルトは昂りのままにミイラ、もといトンカラトンへと襲い掛かるのだった。
「いや、しかし、数がちょっと多いな!」
レイピアと刀が数瞬鍔迫り合うが、すぐに押し込んで斬り払う。敵はそれほど強くはないとベルトは悟ったが、いかんせん生身かつ単独で戦うには頭数が多すぎる。
「つー訳で、カクリヨから召喚! いらっしゃい、東方妖怪軍団たち!」
……ぬるり、と。
そのベルトの声に応え、周囲の森から現れる者。ベルトがかつて助けられた東方妖怪たちだ。
『おう坊主、なんか用か?』
『どこだよここ! 暑っちー!』
『ヒヒヒ! つまんねー要件だったら怒るわよ!』
妖怪たちのテンションが高いのは、ベルトをまた助けたいからか、単に騒ぎたいからなのか、それぞれに理由があるのだろう。だが少なくとも、今のベルトはこの移り気で陽気な妖怪たちを満足させられるネタを持っていた。
「諸君! なんとこの世界には……新しい妖怪のトンカラトン達が生き延びてた!」
そんな彼らに向けて高らかに宣言するベルト。彼の指さす先に居るはトンカラトンの群れ。
トンカラトンたちを見て、妖怪たちはおおと驚き、歓声の声を上げる。
現代地球に現存する妖怪となれば、東方妖怪からしたら故地で頑張っている新人……のようなものかもしれない。
「お仲間だぞ! 感動の再会だぞ! 祝えや祝え、さあ宴会だ~!」
ベルトの声にテンションが爆上がりする東方妖怪たち。そしてそんな反応に、トンカラトンたちは戸惑うばかりだ。
「ほら武器なんて、しまってしまって!」
雰囲気に呑まれて、敵の声なのに思わず刀を鞘に納めてしまう。
後は、ひたすらに乱痴気騒ぎが繰り広げられることになった。何故か酒が樽で登場し、飲めや歌えやの大騒ぎ。
「よしよし感動の再会だな! その隙にピラミッドに入ろっと、トンカラトンっと……!」
そんな彼らを尻目に、ベルトはピラミッドの中へと突入するのであった。
なお宴に混じったトンカラトンは、その全体からすると一部ではあったが、彼らは東方妖怪たちに絆されてカクリヨファンタズムへの移住を決めたらしい。
猟兵や灼滅者たちと戦うことのない、ささやかで幸せな結末であった。
大成功
🔵🔵🔵
檍原・颯汰
【171】
山中にのぼり旗があると何だか和むね
奥にあるピラミッドとは世界観が違うけど
シーサーとかスフィンクスが欲しいね!
スマホで写真を撮っていく
トンカラトンの歌、聴きたいなぁ~
左手? ああ、トンカラトン相手には包帯巻いてるといいんだっけ?
若葉さんに呪瘡包帯を分けて貰うよ
……ライブのリストバンドみたい
会えて感激
本物(?)の歌を聴けたらor聴きながら攻撃!
交通標識をスタイルチェンジさせて、UCでエネルギー弾を撃っていこう
彼我の距離はなるべく保ちつつ、接近されたら狛犬のあられも仕掛けていく
というか戦闘員確保しなきゃなんだから
怪人には都市伝説の統率も行って欲しいなぁ
きっと貴重なピラミッドシンパだよ?
鵯村・若葉
【171】
いや『ようこそ』じゃないでしょう
ピラミッドの雰囲気を大事にして欲しい
そうですね、スフィンクスがあれば多少は……?
……歌、ですか
檍原様、左手をお借りしても?
聞く為に準備をしておきましょう
檍原様と自分の左手に『Rob-bandage』を巻く
トンカラトンの包帯ではなくとも
一瞬の隙は作れるかもしれません
……確かにリストバンド感ありますね
これがトンカラトンの歌……
包帯で拘束される前に茨で抑え込む(UC)
ファンサは喜ばれますが観客との距離は大切です
『鳴月』で《呪殺弾》を撃ち込む
確かに
彼ら、ミイラと勘違いされる可能性も高いのに来た訳ですし
戦力に引き入れないのは少々勿体な――ピラミッドシンパ……??
「こういう雰囲気って、なんて表現すればいいんだろう? 牧歌的っていうのかな……山中にのぼり旗があると、何だか和むね。奥にあるピラミッドとは世界観が違うけど」
「いや『ようこそ』じゃないでしょう。ピラミッドの雰囲気をもっと大事にして欲しい」
ピラミッドの前の勧誘ののぼりに対して興味を示す颯汰と、ピラミッドという壮大な文明の遺物への冒涜に苦言を呈する若葉。
資金を投入しすぎてしまった田舎の残念テーマパークのような目の前の光景に、颯汰と若葉の目の付け所は少し違っていた。
「シーサーとかスフィンクスが欲しいね!」
「そうですね、スフィンクスがあれば多少は、……いえ多少?」
普段よりもテンション高い感じでお土産用の写真をスマホで撮影していく颯汰に、若葉は少々戸惑っていた。
とまあ、まるで一般人観光客のような振る舞いをしていた二人であったが、敵からすれば望まぬ来訪者であることは明白。トンカラトンたちが次々と湧いて出てくる。
そんな彼らにこの場で出会えたことを、颯汰はとても感動していた。
トンカラトンの歌、聴きたいなぁという颯汰の呟きに、若葉がやれやれという溜息をつく。
「……歌、ですか。檍原様、左手をお借りしても?」
「左手? ああ、トンカラトン相手には、包帯巻いてるといいんだっけ?」
自分の両腕のうち、右腕に巻いていた|呪瘡包帯《Rob-bandage》をするすると解き、慣れた手つきで颯汰に左腕に巻いてやる。
「トンカラトンの包帯ではなくとも、一瞬の隙は作れるかもしれません」
「……ライブのリストバンドみたい」
「……確かに、リストバンド感ありますね」
お揃いで左腕を上げてみると、もはやそうとしか思えなくなってくる。
「だったら、せっかくのライブでアーティストに突撃をかける、悪い観客にでもなるとしましょう」
「そうだね」
そんなこんなで準備を終え、二人は交戦に入るのだった。
『トン、トン、トンカラ、トン♪』
「これがトンカラトンの歌……」
「わー凄い! 本物だ!」
トンカラトンの歌に後押しされ、いや歌を切り裂くようにして颯汰が駆ける。そのまま突進するわけではなく、距離と位置の調整だ。エネルギー弾を撃ち込むための。
「横風ならぬ、真正面からの突風の吹き飛ばしに注意だよっと!」
交通標識のポールを手中でくるりと回すと、標識の看板部が『横風注意』に切り替わる。標識を振り回して放たれたエネルギー弾を食らったトンカラトンは、はるか遠くまで吹き飛ばされていった。
もちろんトンカラトンも一方的にやられはしない。包帯を伸ばして颯汰を捕まえようとするが、若葉が影茨を伸ばして拘束してしまう。
「ファンサは喜ばれますが、観客との距離は大切です」
そのまま動きを止めた相手を、|回転式拳銃《鳴月》で呪殺弾を撃ち込んで沈黙させた。
縦横に駆け回りながら次々とトンカラトンを吹き飛ばしていく颯汰、それを捕まえようとするトンカラトン、それを抑える若葉。次第に敵の頭数は減っていく。
「……というか戦闘員確保しなきゃなんだから、怪人には都市伝説の統率も行って欲しいなぁ」
「確かに。彼ら、ミイラと勘違いされる可能性も高いのに来た訳ですし、」
「だよね。きっと貴重なピラミッドシンパだよ?」
「戦力に引き入れないのは少々勿体な――ピラミッドシンパ……??」
「実はトンカラトンの起源はピラミッドにあった、なんてミッシングリンクがあるかもしれないよね」
「清々しくトンデモ学説ですね……ただまあ逆に、似たものだからこそ認められないのかもしれません。宗教というのは大概、異教徒よりも異端に対して当たりが厳しいんですよ」
「へー、そうなんだ!」
益体もない考察を続けながらも真剣に、二人は戦闘を続けていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
ところで、トンカラトンってチャリに乗って日本刀ぶん回す都市伝説だ
ここでバイクに乗って日本刀乗り回す方が、より格上って感じしねえ?
つまり…Galgalim――あいつら轢きに行くぞ
まず【祈り】を捧げて心を整え
|煙草型ココアミント《今日のお菓子》を咥えて【第六感】を高める
日本刀を抜き、【戦闘演算】で奴らの攻撃の軌道を読み、避ける…ように見せかけて、
一気にUCと同時に【魔力増強】【リミッター解除】発動し、そのまま一直線にトンカラトンを轢きつつ日本刀で攻撃も加えておくな!
今更だけど、なんで奈良にピラミッドなんだろうな
日本は神秘と混沌の坩堝ではあるけど、トンチキを受け入れる場所じゃあねえだろうによ
ピラミッドの周りを徘徊しているトンカラトンたち。彼らの姿は、実は画一的ではない。
基本的にまるでゾンビのように――というかここではミイラのようにというのが正式なのだろう――体を揺らし、ゆっくりとした仕草で歩き回っているのだが、中には自転車に乗っている個体もあった。
すいすいと自転車を乗りこなす様には全く危なげがない。そもそもそれも当然で、トンカラトンは本来、自転車に乗って現れる都市伝説なのだ。エジプトかぶれをしていない者なのだろう。
であるならば、だ。
「チャリに乗って日本刀ぶん回す都市伝説より、バイクに乗って日本刀ぶん回す方がより格上って感じがしねえ?
つまり……」
現地までバイクで乗り付けたギュスターヴの唱えた説は、実にトンデモ理論だった。
しかし説得力があった。納得させる力があった。恐れぬ心こそが、都市伝説には何よりも効いた。
目を閉じ首を垂れ、祈りを捧げて心を整える。
端折ることは許されない。じっくりと、そして丁寧に。
そして|煙草型ココアミント《今日のお菓子》を咥えて。
「Galgalim――あいつら轢きに行くぞ」
ギュスターヴは、一気に戦場へと躍り出た。
轢殺、斬殺。
暴力の嵐が吹き荒れる。
「自転車じゃオレに追い付けないだろ!」
追い縋る者は振りきり、迫る日本刀の斬撃は軌道を読んで際どく避け……るように見せかけて、一気にアクセルを踏んで急加速。前方一直線にいたトンカラトンたちを思い切りはね飛ばす。
「そして、逃がさねえ!」
バイクによるスピードを存分に乗せた日本刀の一閃は、側面に居た敵の胴を容易く両断する。
トンカラトンの歌は、轟くバイクのエンジン音に掻き消されていた。
「……今更だけど、なんで奈良にピラミッドなんだろうな」
そんな戦闘の中で、ギュスターヴはそんなことを考えていた。
たしかに日本は神秘と混沌の坩堝ではある。だが……、
「トンチキを受け入れる場所じゃあねえだろうによ」
そもそもご当地怪人という存在そのものや行動原理はトンチキではないか、といったら身も蓋もないのだが。
「ま、気になるところは、後でご本人さまに直接訊けばいい話だ」
そして、それはもうすぐの事になるだろう。黄金のピラミッドからの光の照り返しをサングラスで遮りながら、ギュスターヴは派手にトンカラトンたちを駆逐していった。
大成功
🔵🔵🔵
フリル・インレアン
ふええ!?なんで正解しているのに襲われるんですか?
アヒルさん、まさかハズレなんてことはないですよね?
あんな所であんなことまでしたのに!!
恥ずかしかったんですからね。
ふえ?正解と書かれていたんだから、ここが正解ですか。
これは罠なんですね。
それにしても、あのトンカラトンさん達は遠くの方から目立とうとしてますけど、薄暗くて見えないしダンジョンの中じゃ見づらいですよね。
ぬいぐるみの魔法でどんどん倒していっちゃいましょう。
「トン、トン、トンカラ、トン♪」
「ふえ、ふええ……!?」
猟兵たちが各々にトンカラトンを迎撃している中、同じく現地へと到着したフリル。そんな彼女は遠目に彼らの戦闘を目撃し……盛大に戸惑っていた。
「なんで正解しているのに襲われるんですか? アヒルさん、まさかハズレなんてことはないですよね? あんな所であんなことまでしたのに!!」
あまりにも不条理。公衆の面前で長時間正座をさせられ恥ずかしい思いをしたのに、今度は歓迎どころか超塩対応。自分があそこに混ざりに行って優しく歓迎される、などと思えるほどフリルも楽観的ではない。
そして、トンカラトンたちは単純に敵として恐ろしい。
全身に包帯を巻いた不審者が、意味不明な歌を陽気に歌いながら、日本刀を持って走ったり、個体によっては自転車に乗ったりしている。なるほどさすがは名の知れた都市伝説、強そうで怖いのではなく、ゾッとするような恐ろしさが感じられるし目が離せない。
そんな、怯えてメンタルの状態が割とよろしくない状態のフリルに、アヒルさんも助言をする。
「ふえ? 正解と書かれていたんだから、ここが正解ですか。……これは罠なんですね!」
そういえば、フリルにはピラミッドの位置当てについては説明していたが、ご当地怪人の引き起こした事件であることはどこまで話していたのだったか。
……というそもそも論を、アヒルさんは勢いでうやむやにしようとしていた。
「それじゃ早速。ぬいぐるみさん、来てください!」
アヒルさんの口車に乗せられた形となったフリルは戦意を漲らせる。現れたのはフリルの身の丈の倍はあるクマのぬいぐるみ。
「いきますよー、えい!」
巨体に気づき襲ってきたトンカラトンに対し、先んじてパンチを一発叩き込む。フリルの動作を正確になぞった一撃は敵を捉え、盛大に吹き飛ばした。
「ぬいぐるみの魔法で、どんどん倒していっちゃいましょう」
トンカラトンの動きは散々見たので、その挙動が読みやすい。あれだけ目立った動きをしていれば当然か。綺麗なカウンターパンチを入れることもできる。
フリルは次々と勢いよく、トンカラトンたちを殴り飛ばしていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵
椎那・紗里亜
「あれですね」
魔法の箒で上空からピラミッドに接近。
トンカラトンに見つからないうちに地上に降ります。
動きやすい拳法着姿で木立ちの間を音も立てずに忍び寄り、
「ふっ」
トンカラトンの背後から掌底で必殺の浸透勁を。
「一撃一殺、と行きたいところですが……」
他のトンカラトンに気づかれるまでは暗殺者の如く忍び寄りますが、
気づかれたら彼らを注視します。
戦闘力は上がってしまいますが攻撃を見切りやすくなるのなら好都合。
回避に集中しつつ敵の間に潜り込んで同士討ちを誘い、
大きな隙にはすかさず沈水通背掌。
素早く倒してピラミッドへ向かいます。
「やっぱり周りから浮いてますよね、このピラミッド……」
景観の 調和が育む ご当地愛
強烈な夏の日差しを反射する、黄金のピラミッドはやたらと眩しかった。
「あれですね」
森から頭を飛び出して豪快に鎮座しているピラミッドを、紗里亜は空から発見した。レトロデザインでいかにもな魔法の箒に乗って、できるだけの速度で急いで現地に到着したのだ。
「百聞は一見に如かずとは言いますが、写真ではなく現物はまた……」
眼下にはトンカラトンたちが何体も徘徊している。彼らの居ないやや離れた地点に着地し、動きやすい拳法着へと武装を切り替えた。
木立の中、音を立てずに静かに進む。無音の足運びは極めて滑らかだ。
最初の標的を確認すると背後へと回り込み、絶対に避けられない距離とタイミングで。
「ふっ」
掌底を、呼気とともにトンカラトンの背へと当てる。当然の結果として、びくん、とトンカラトンの身体が大きく跳ね、糸が切れたようにそのまま地面へと崩れ落ちた。
「このまま、一撃一殺、と行きたいところですが……」
倒した相手など顧みることはない。紗里亜はそのまま次の標的を探していく。何体かは順調に倒せたが、やはり何十体もというのは難しい。
「そう易々とは事も運びませんよね」
トンカラトンたちに発見されると、紗里亜はあえて敵を注視した。
見られることでトンカラトンは強くなっていってしまう。だが紗里亜は臆さない。戦闘力が上がろうが避ければよいだけだ。己の力量を自覚し、見極める。
迫る鋭い一閃の軌道を見切り、あえて前に踏み込む。懐に潜り込み、そのまま脇へとすり抜ける。
がら空きの胴へと攻撃ができなかったわけではない、しなかった。
「ギャッ!」
その理由は明白。次の瞬間には、後ろから紗里亜を追ってきていた個体に対して、空を切った刀が刺さっていた。
「個の強さは脅威ですが、乱戦において活かせるタイプではないでしょう?」
敵を混乱させるため、至近の距離で張り付くように避けていく。
大きな隙が生まれたら、そこが致命の瞬間だ。
「……ふっ!」
サイキックエナジーを丹念に練り上げた掌底を打ち込む。もちろん一撃で必殺の威力。トンカラトンは容易く内側から爆ぜ飛んだ。
「やっぱり周りから浮いてますよね、このピラミッド……」
素早く殲滅を完了させると、紗里亜は先を急ぐ。だんだんと迫り大きくなってくるピラミッドの威容に美しさを感じはする。しかし素直に素晴らしいとは思えない。
――景観の 調和が育む ご当地愛
それもこれも、自分勝手な都合でこれがこの場所に存在しているからだろう。
内心で一句詠みつつ、紗里亜はいよいよピラミッドの麓へと迫るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『エジプトピラミッド怪人』
|
POW : 天空ピラミッド
【空飛ぶピラミッド】に変身し、レベル×100km/hで飛翔しながら、戦場の敵全てに弱い【ミイラ化光線】を放ち続ける。
SPD : ピラミッドの呪い
戦場に、自分や仲間が取得した🔴と同数の【ピラミッド】を召喚し、その【呪い】によって敵全員の戦闘力を減らす。
WIZ : ミイラ取りはミイラと化す
【頭部のピラミッド】からレベル×1個の【ミイラの棺】を召喚する。[ミイラの棺]に触れた対象は【エジプトミイラ戦闘員化】の状態異常を受ける。
イラスト:みやこなぎ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
黄金に輝くピラミッドの外側中層部に、その男は堂々と立っていた。
「都市伝説どもは殲滅されたか。所詮はミイラの紛い物、いやそれ以下の存在だったようだな」
鍛え上げられた肉体は、まさにかつての|王《ファラオ》を彷彿とさせる。
「事が露見するのが想定よりも早かったな……集めてきた人間どもを、エリートなミイラに教育するには間に合わなかったか。俺が引き連れてきた者たちを動員するしかあるまい」
誇り高き存在だと自認している怪人だ。手下にも相応の強さと品格を求める。……ミイラの、だが。今回の戦闘には、先に捕まった民間人は混じっていないらしい。
「まあいい、日本中の古墳をすべてピラミッドへと変えるのだ。そのための足掛かりとして、大きな古墳が数多くあるらしい奈良を選んだのだからな。
猟兵どもよ、貴様らもその身をミイラへと変え、俺の眷属としてやろう!」
かくして、ピラミッドの上で決戦が始まる――!
……なお余談だが。
最も古墳の数が多いのは奈良県ではないし、大きさのトップ5に入る古墳も存在しない。
非常に著名な古墳は確かにいくつもあるが、詳しい情報収集をせず印象だけで、怪人はピラミッドを奈良県に造っていたのであった。
フリル・インレアン
ふえ?古墳をピラミッドに変える?
どっちもお墓でしたよね?
あまり変化がないような?
ふえ?アヒルさん何ですか?
ピラミッドが増えるということはミイラさんやスカラベさんが出てくるって、確かに問題ですね。
古墳からはそういったものが出てくるとは聞きません。
あの怪人さんの野望は阻止しましょう。
ふえ、アヒルさんがアヒル真拳で攻撃するから、私は怪人さんの攻撃を凌いでいればいいんですね。
頑張ります。
ふえ?ミイラ化光線が弱いからって油断しない方がいいって、どういうことですか?
あ、ミイラさんって包帯ぐるぐる巻きじゃないですか!
つまり服がどんどん消えていっちゃうってことじゃないですか!!
日本中の古墳をピラミッドへと変える。そう己の野望を言い切ったエジプトピラミッド怪人。
「ふえ? 古墳をピラミッドに? ……どっちもお墓でしたよね?」
……しかし、壮大な事を宣言されたフリルの方はといえば、ただきょとんとした表情を浮かべていた。
「あまり変化はありませんよね?」
「え?」
「え?」
……悲しいかな、そこには双方の知識と常識の大きな乖離があった。フリルからしたら別に日本は故郷でもなく、その国にある過去の巨大なお墓のことは詳しく知るわけでもなかったのだ。
「いや全然違うだろう! 何から何まで! サイズ感とか構造とか色々とさあ!」
「ふええ……! すみません、怪人さんの犯行は止めたいですけれど、日本風の墓をエジプト風へ変えるのって、どのくらいとんでもないことなのでしょう……」
「無知は罪であるぞ。そもそもピラミッドとは……」
怪人は説教からピラミッド史の解説に入りそうな状況だ。さすがにアヒルさんもフリルに助言、あるいは方向修正をかける。
「ふむふむ、ピラミッドが増えるということはミイラさんやスカラベさんが出てくるって、確かに問題ですね」
少なくとも古墳からはそういったものが出てくるわけではないようなので、それなら怪人の野望は阻止をしておくべきだろう。
「あ、お話し中すみません、とりあえずその野望は止めたいと思いますので戦いましょう」
「なんだそれは!」
とにかく、そういう事になった。
「いくぞ、天空ピラミッドパワー!」
高らかに叫び、怪人は高く跳び上がる。その身はピラミッドへと変化し、フリル目掛けて光線を放った。
「ふええ……!」
その光線を避けるために逃げ回るフリル。
今回の戦闘でのフリルの役割は囮だ。攻撃が彼女に集中している間に、アヒルさんがアヒル真拳で攻撃を仕掛ける。そんな戦法だった。
空を飛んでいるアヒルさんが奇襲を仕掛けるためにも、まずはフリルがしっかり引き付ける必要があるのだが。
「ひゃっ! ……あれ、この光線全然痛くありませんね?」
そうしても避けられず、身体に直撃することもある。しかし特にダメージを受けたように感じない。
「アヒルさんは、光線は弱いが油断しない方がいいって言ってましたけど」
弱いどころかノーダメージではないか、そんなことを考えたのだが……。
「……ふえ?」
すうっと、交戦が当たった場所のフリルの服が消えていく。
「ふはははは! 順調にミイラになりつつあるようであるな!」
「ひゃあ!」
咄嗟にうずくまる。服が消えたといっても裸になったわけではなかった。消えた服の部分の下に覗く包帯。いつの間にか、フリルの身には包帯がぐるぐると巻き付いていた。
「ミイラ化って、そういうことなんですか!?」
実際にはエジプトピラミッド怪人の眷属となるようにと精神干渉などもしているのだが、ミイラの姿になったというショックでその辺は完全にふっ飛んでいた。
そして、攻撃が成功した直後には隙も生まれる。
フリルに光線を当てて笑う怪人の身に、アヒルさんの突進による嘴の一撃が深く突き刺さるのだった。
成功
🔵🔵🔴
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
おいでなすったか!偽物怪人!…いや本物の怪人?でぇいややこしい!何が王よ!
貴様なんぞ騎士道ベルト・ラムバルドが倒して革命起こしてやる!行くぞー!
キャバリア操縦し発進!
まぁキャバリアなら容易くプチっと潰せるが奴を心から負かす為にどおすっか…
えぇっと古代エジプト神話の情報収集と情報検索で…猫の神様か…
よし!ならばUCで猫達を召喚!
猫達の集団戦術攻撃で敵を囲い込み、悪戯で敵の攻撃を妨害してやる!
むはは!ピラミッドは過去の物だが猫は今も民衆に崇拝されてるのよ!
時代遅れの王様なんかと違って猫は貴様より偉いのだー!
…あ!棺を触れた猫がなんかミイラ化してるー!?
でもミイラになっても猫は猫だな…
騎士の名乗りは、どこまでも堂々としていた!
「おいでなすったか! 偽物怪人!」
「なにい! 我が偽物だと!? 我は本物! 本物の王だ!」
「? いや、偽物なのは怪人という方で……なら王としては本物? だったら偽物の王なら本物の怪人?
……でぇい、ややこしい! 何が王よ! 貴様なんぞ騎士道ベルト・ラムバルドが倒して革命起こしてやる! 行くぞー!」
「ふん、騎士風情が王に勝てる道理など無い! 貴様も王のしもべ、ミイラにしてやろう!」
しかしなんだかグダグダとしたまま、戦闘に突入するのだった!
「しっかし、キャバリアなら、奴を容易くプチっと潰せるが……」
|キャバリア《パロメデス》に搭乗し、勢いよく発進するベルト。そこまではカッコ良く決まったのだが、さて攻撃を仕掛けようとするとなると実は案を何も考えていなかった。
「心から負かす為にはどおすっかな」
こういうタイプはただ倒すだけではまだ足りない。自称王としての驕り、慢心を挫いてやらなくてはならない。
決して、アイツなんだか妙に気に入らねーとか思ったからではない。決してない。大切なことなので繰り返しました。
ベルトは怪人に効果的な戦法を選ぶべく、キャバリアでネットを検索する。
「えぇっと、古代エジプト神話の情報収集と検索をして……」
そして、一つ面白そうな情報を発見した。
「……猫の神様か」
「よし、ならば猫たちを召喚だ!」
ベルトは隊長の猫を呼び出す。
ぴたりと動きを完全に止めたキャバリア。その機体の各パーツの隙間から……なんと猫が大量に飛び出してきた!
ついさっきまで動いていたのに何故、隙間から猫が? そもそもちゃんと|キャバリア《パロメデス》を稼働させる前に猫バンバンは行ったはずなのに!
いや、謎などない。ある種の理不尽を発生させるのが猟兵、そしてユーベルコードなのだからだ。
「……む? どういうつもりだ?」
とはいえ、眼前で起こった現象をエジプトピラミッド怪人は理解できない。猫たちはキャバリアの上を自由に駆け回ったり寝転がったり、一部は怪人の方へと擦り寄って来ている。
猫に囲まれた怪人は、それを無下に振り払うことができない。……できるはずがない!
「ぬうう……!」
「むはは! 古代エジプトでは猫は神聖な生き物だったな! ピラミッドは過去の物だが、猫は今もこうして民衆に愛され、崇拝されてるのよ!」
翻って、お前はどうだとベルトは煽ってやる。
「時代遅れの王様なんかと違って、猫は貴様より偉いのだー!」
「ぐっ!!」
その口撃に怪人は、いや王はクリティカルヒットを食らい、がくりと膝から崩れ落ちるのであった。
なおその後、ベルトが撤退する際のこと。
「あ! 猫がなんかミイラ化してるー!?」
怪人が召喚した棺に触れてしまった猫が、なにやらミイラになってしまっていた。
「でも、ミイラになっても猫は猫だな……」
なんというか、ボウリングのピンのような形状とでも呼ぶべきか。ただ包帯をぐるぐる巻きにしただけではなく本格的なミイラであった。
「どうすんのこれ、お湯とか掛けたら戻らんかな?」
とりあえずベルトはミイラを全部回収していくのであった。
ちなみに、もう少し時間が経った後に呪いは解けて猫は元に戻った。
この事件で猫は犠牲になりませんでした、ということである。
成功
🔵🔵🔴
檍原・颯汰
【171】
緑豊かな山中にピラミッドだと、東南アジア辺りの遺跡みたいだなって思っちゃうね
そう思わない?(若葉さんと怪人に聞き)
でも、神使の鹿がいっぱいいる奈良県から始めたのは良い点だと思う~
まあ……そうだね、企みは潰すけど
ピラミッド化した怪人は素早そうだし足止め兼ねて磁気の風で翻弄していくよ
突風逆風の繰り返しでぐるぐる状態へ
磁気だから敵の光線も弾けるかな?
共にUCで配下を足止めしたり、吹き飛ばしたそれらをピラミッド怪人に叩きつけたり
若葉さんがいっぱい挑発してるな~
怪人の隙を見つけたら、僕自身も適宜交通標識で攻撃していくね
あ、討伐後の壊れたピラミッド等は写真とってくね
(あとで例の管理人さんに送る)
鵯村・若葉
【171】
確かに
エジプトとは違った印象を受けそうな気も……?
個人的には鳥取の方が人が来た気もしますが
潰すのでなんでもいいですね
そういえば
ヒント、ありがとうございました(画面見せ)
こんな釣りに引っかかる警戒心のない方の眷属などお断りです(《挑発》)
落日は突然訪れる
何も成せぬまま終わる者も多い
あなたもそうだっただけ(UC)
そんなにミイラが欲しければあなたがなれば良いかと
空中で洗濯(?)されている相手を呪瘡包帯で捕え
檍原様の攻撃と合わせ妖星の《呪詛》を注ぎ込む
流石に金や財宝をご用意はできませんが
一瞬の輝きを添えて差し上げます
どうぞ大好きなピラミッドでお眠りください
自分も一応写真や映像、撮っておきます
「あ~、なるほど!」
「どうしました?」
ぽん、と手を打つ颯汰。
二人はすでにピラミッドの外側を登り、エジプトピラミッド怪人と対峙していた。
「緑豊かな山中にピラミッドだと、東南アジア辺りの遺跡みたいだなって思っちゃうね。そう思わない?」
閃きとともに颯汰が放った一言は、違和感をうまく表現した、まさに正鵠を射るものであった。
それに納得し、確かにと唸る若葉。
「エジプトとは違った印象を受けそうな気も……?」
酷暑の森林の中の石造りの景観。別に二人ともそれほど東南アジアに明るくはない。ただ例えば、カンボジアのアンコールワットだとかタイの黄金の巨大仏像寺院だとかの知識ぐらいはある。そちらの親戚だと思えばこの黄金ピラミッドという存在にもそこそこの納得がいく、ということである。
「ぬうっ、偉大なるピラミッドを腐すのか!?」
「いやいや別に、そんなことはないよ。ちゃんと褒めてる。神使の鹿がいっぱいいる奈良県から始めたのは良い点だと思う~」
「自分としては、鳥取に据えた方が人が来た気もしますが……潰すのでなんでもいいですね」
「まあ……そうだね、勿体ないとは思うけど企みは潰すよ」
なんかもうフォローというかダメ出しも適当である。颯汰はあえてピラミッドに向かって合掌を行い、若葉はそれに追従するように二礼二拍手一礼を行ってやった。
「お前ら失敬な! 許さんぞ!」
それを怒るエジプトピラミッド怪人。日本でなら目くじらを立てるような事でもない――むしろ信心深い仕草と思われるかもしれない――が、残念ながら怪人のお気には召さなかったようだ。
かくして、二人は戦闘に入るのだった。
「そーらよっ、と!」
炎天下に、颯汰が喚んだ肝を冷やすような磁気嵐が吹き荒ぶ。
「ぐっ……!」
ピラミッドに変身して空を飛んでいた怪人は、順風や逆風をメチャクチャにぶつけられ翻弄された。なまじ飛翔速度が速い分、風の影響を強く受けてしまう。
「洗濯機の中の服みたいだね」
「せめて竜巻と言ってやりましょう」
怪人は抵抗するように光線を放つが、それも風が磁気を含んでいることで弾かれてしまうようだ。そもそもうまく颯汰たちを狙うこともできていない。
「ああ、そういえば」
そんな、難儀しながらもなんとか飛翔している怪人に対して、若葉はスマホを取り出して画面を見せる。
「ヒント、ありがとうございました。さすがトト神のお導きですね」
お辞儀をして、丁寧に感謝の意を伝える。
「……! お前はあの時の……!」
「ですが、こんな釣りに引っかかる警戒心のない方の眷属などお断りです」
「お、おのれえええーーー!」
ネットリテラシーは知恵の神の管轄外ですかね、などと冷笑してやれば……怪人は一気に憤激するのだった。
「それはともかく」
唐突に、昏く美しい夜の帳が降りる。
「落日は突然訪れる。何も成せぬまま終わる者も多い、あなたもそうだっただけ」
夜空にやわらかな銀の星々が瞬く。
「そんなにミイラが欲しければ、あなたがなれば良いかと」
相変わらず空で風に翻弄されている怪人に向けて、若葉が左腕から|呪瘡包帯《Rob-bandage》を伸ばす。
包帯に捕まりぐるぐる巻きにされた怪人に向けて、妖星の呪詛が流し込まれる――星のすべてが綺麗に輝いていたわけではない。中には敵に破滅を齎す星も存在していた。
「流石に金や財宝をご用意はできませんが、一瞬の輝きを添えて差し上げます。王よ、どうぞ大好きなピラミッドでお眠りください」
「ぐ、うお……!」
怪人は見悶えて、せめて拘束を解こうと暴れるが。
その瞬間、怪人は大切なことを失念していた。この戦闘は一対一ではないということを。
「若葉さんがいっぱい挑発してるな~」
生み出されたこれほど圧倒的な隙を、もちろん颯汰が見逃すはずがない。
「あ、倒した後の壊れたピラミッドの写真はちゃんと撮って記録に残しておくね」
「自分も一応、写真や映像、撮っておきます」
「……!」
お世話になった方にはお礼をしなくてはならない。例のサイトの管理人へのお土産話であり、同時に怪人に対する手酷い言葉となる追い打ちをかける。
颯汰の交通標識による全力フルスイングは、盛大に怪人の頭を打ち据えるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ギュスターヴ・ベルトラン
ピラミッドが飛ぶな!
コレは地にあるから意味があるんだよ、分かれよ!!
…いや奈良にも置くんじゃねえって話になるけども!
【祈り】を捧げ、ノクと一緒にバイクで飛ぶ…【空中戦】で勝ちに行く
UC発動し、茨と薊をオレたちの周囲に展開し結界とする
吸収した魔力やサイキックエナジーは、バイクとノクの【装甲展開】をする為の【魔力増強】リソースとして転用
弱めのミイラ化光線は【霊的防護】で弾く
で、ノクなら【空中機動】で避けられる
空を玉座にしたつもりかもしれねえが、天の国はそんな安っぽくねえぞ
【リミッター解除】し、リソースはノクに渡す
空に必要なのはいつだって輝けるモノなんだ…ノクターン、星を見せてやれ【竜爪激】!
ピラミッドが空を飛ぶ。王の栄光を示すために。
「ははははは! 平伏すがよい!」
プラミッドそのものに変身した怪人の高笑いが奈良の森の中に響き渡り、そしてギュスターヴは懸命にツッコんでいた。
「ピラミッドが飛ぶな! コレは地にあるから意味があるんだよ、分かれよ!!」
ごもっともな意見である。
「我ほどに偉大であれば、空すらも支配するのだ」
「だったら深い海の中にでも邪魔せず沈んでろ! ……いやそもそも、奈良にも置くんじゃねえって話になるけども!
っとに、ご当地怪人ってヤツはよお……!」
海中ピラミッドにも中々趣があるかも、などとロクでもない考えが頭をよぎったが、とっとと振り払う。
これ以上、敵の言動に付きあうのもバカバカしい。というか精神的にしんどい。
瞬間的に気を鎮めて祈りを捧げると、ギュスターヴは|リンドルム《ノクターン》と共に、|バイク《Galgalim》を加速させてピラミッドを駆け上がる。そのまま勢いよく空中へと跳び上がった。
「ふん、バイクで空を飛べるものか!」
「言ってろ。――茨と薊が、彼らの祭壇の上に生い茂る」
「なんだ!?」
「ピラミッドが空を飛ぶんなら、バイクだって飛んでもおかしくないんだぜ?」
祝詞に呼応して生み出された光る茨と燃え盛る薊が、バイクやノクターンも含めて、ギュスターヴを守るように結界として展開される。敵から放たれた光線は、その神聖な防護力の前に呆気なく消滅した。ノクターンもひらりと身を躱している。
茨と薊はそのまま勢いよく伸び続け、その先には……茨と薊に絡みつかれ締め上げられたエジプトピラミッド怪人の姿が。
「ぐっ、動けん! 力、が、抜ける……!」
怪人へと続く道が生まれた。それの上にバイクが乗る。
「空を玉座にしたつもりかもしれねえが、天の国はそんな安っぽくねえぞ」
怪人から吸収した魔力やサイキックエナジーは、バイクとノクターンの装甲をより強化していく。
ギュスターヴはアクセルを回して一気に加速。リミッターを外し……生まれた力はノクターンへと渡す。
「空に必要なのは、いつだって輝けるモノなんだ……ノクターン、星を見せてやれ!」
「ぎゃう!」
「ちょ、待っ……」
轢き殺すつもりのギュスターヴの重いバイク突撃と、|ノクターン《星屑の竜》の鋭い爪撃。
見事に完璧にシンクロした攻撃は、怪人を思い切り大空へと高く弾き飛ばすのだった。
大成功
🔵🔵🔵
椎那・紗里亜
ピラミッドを一気に駆け上がります。
「待ちなさい、ピラミッド怪人。
あなたのその歪んだご当地愛、灼滅します!」
怪人の誇りが本物ならば、ピラミッドは大阪に作るはず。
何故なら日本で一番大きな古墳は大阪にあるのですから。
挑発に乗ってくれればしめたもの。
考え無しでは実力を発揮出来なくなります。
ミイラの棺を出されたら、触れないように注意して
自分の周囲に積み上げられるように誘導。
「くっ、これでは逃げられない!」
と慌てて見せながら、小声でUC発動。
「皆さん、お願いしますね」
次の瞬間、棺は一斉に各種サーヴァントに変換。
ピラミッド怪人に集中攻撃を浴びせます。
最後は八卦方棍の一撃を。
次はしっかり勉強して来て下さいね!
猟兵との交戦で、次第に負傷が積み重なっていくエジプトピラミッド怪人。
「くそ、どいつもこいつも勝手な言い草を……」
彼が愚痴るのも仕方ない。なんだか、どいつもこいつも攻撃してくるだけではなく一言も二言も多いのだ。割と精神的に傷ついている。
「待ちなさい、ピラミッド怪人。あなたのその歪んだご当地愛、灼滅します!」
その意味では、ピラミッドを下から一気に駆け上がってきた紗里亜の言動は、実に素晴らしい……往年の灼滅者らしさを感じさせるものであった。ちょっと感覚がおかしくなってきている。
「……おお、良いぞ良いぞ! その意気だ!」
「? 怪人の誇りが本物ならば、ピラミッドは大阪に作るはず。何故なら日本で一番大きな古墳は大阪にあるのですから」
残念、怪人は再び精神的ダメージを負った。
――大仙陵古墳、知らないのですか。まさか調べてもいない?
そんな呆れ気味の紗里亜の呟きは、意図的な挑発だ。だが大いに刺さった。
「ぬうう……! 許さん、やはり許さんぞ! お前らは永遠に一番下働きのミイラにしてやる!」
激高した怪人は、紗里亜に襲い掛かるのだった。
次々と怪人が飛ばしてくる棺の数々を、紗里亜はよく観察しながら軽快にステップで回避していった。棺の着弾場所が自分の周りへとだんだん積み上がっていくように調整する。
敵は相当頭に血が上っているのだろう。接触するだけでも危険な棺だが、その軌道は速くとも厄介ではない。
とはいえ、さすがに飛来する数が多い。
「くっ、これでは逃げられない!」
次第に逃げ場所が少なくなり、ついには左腕が棺に触れてしまう。ミイラ化の呪いでどこからか現れた包帯が巻き付いていき、思わず慌てた様子を見せてしまうが……、
「ははは、諦めよ!」
「皆さん、お願いしますね」
それは想定内であり焦りは演技だ。紗里亜は隙の生まれた瞬間に攻勢に出た。
「ぬっ!?」
棺が、一斉にサーヴァントに変換される。ナノナノ、ウイングキャット、霊犬などなど……彼らは何も迷いなく一気に倒すべき敵に襲い掛かった。
と同時に、紗里亜自身も怪人と距離を詰める。その手に握るは、長年の相棒の一つである|マテリアルロッド《八卦方棍》。
「残念ながら赤点、落第です。次はしっかり勉強して来て下さいね!」
経脈を断つ一撃が、エジプトピラミッド怪人の身の正中を、過たず打ち抜くのだった。
成功
🔵🔵🔴
高沢・麦
やってきました、奈良!
かき氷食ってたら遅くなっちった
おかず氷は驚くよねー
あと素麺も感動品質だった!
そんでやっぱ柿の葉…
いや遊んでない聞き込みしてたら食べて行きなって言われるからー!
そーいうのご当地ヒーローには重要っしょ?ガイアパワーばっちし満タン!
っつーわけで近所のおっちゃんおばちゃん達のため
奈良の平和は護らせてもらうぜっ!
ミイラ化は復活の願いなんだっけ?
尊敬される偉い人の証
ピラミッドの文化的価値だって理解してる
歴史は人を感動させる大切なもの
でもそれってこの地の古墳も同じだから譲ることはできないじゃん
後腐れなく殴り合おうな
呪いを受けてもその念は転じてお祝いに
神の使いである鹿と遊ん……えーっと
ここにお土産の鹿角キーホルダーがあります!
毎年生え変わり成長する鹿の角は『甦り』『豊作』の象徴らしいよ
説明済んだら謎ポーズ
くらえ!ご当地おすすめビーム!
神鹿の霊力がかき氷の冷気を纏いパワフル突進で敵を吹き飛ばすぞ!
オブリビオンって言うんだっけ?
過去に囚われず甦りのご利益を受け取れますよーに、なんてね!
猟兵たちの奮闘により、いよいよもって怪人は窮地に追い込まれていた。
「ぐっ……我の野望は決して潰えはせん! 何故なら我はエジプトピラミッド怪人、誰よりもエジプトを知り、そして愛する者!」
それでも怪人は勝利を疑わない。いくら追い詰められようが、最終的に勝利すれば良いのだから。
そんな、負傷を重ねながらもピラミッドの上で尚も気合いを入れる怪人の前に、そいつは現れた。
「いやー、やってきました、奈良! かき氷食ってたら遅くなっちった」
すまんね、などと気安く怪人に話しかける男。高沢・麦(栃木のゆるゆるヒーロー・f45122)だ。
両腕には沢山の紙袋やビニール袋を持っている。袋の柄や袋から飛び出ている品々を見るに、明らかに土産物がいっぱい入っている。
「おかず氷は驚くよねー。あと素麺も感動品質だった! そんで、やっぱ柿の葉…いや遊んでないって。
聞き込みしてたらさ、食べて行きなって言われるからー!」
一方的に怪人へと喋りかける。ただその語り口はとても楽しそうで、話を聞いているだけで自分も同じように奈良の食べ歩きをしたい、と思わせる魅力があった。
その相手が、怪人相手であるのが勿体ない。
「なんだ貴様はぺらぺらと! 何が言いたい!」
「え? そーいうのは重要っしょ? ガイアパワーばっちし満タン!」
「! ご当地ヒーローか……!」
お土産袋を下ろし、戦闘の邪魔にならないように脇へよける。それをご当地怪人が咎めるはずもない。腕を曲げて力こぶをつくるポーズを取る麦に、怪人は一気に殺気を昂らせる。
「……っつーわけで、ご近所のおっちゃんおばちゃん達のため、そして奈良の平和は護らせてもらうぜっ!」
麦と怪人は、真っ向から激突した。ユーベルコードを使うこともできる。遠距離で射撃戦を行うこともできる。だが、ご当地を愛する存在というコインの裏表である双方は、互いを倒すべき敵と認め、まずは直接ぶつかることを望んだ。
「ミイラ化は復活の願いなんだっけ?」
鍛錬を重ねた麦と、筋骨隆々の怪人の拳とが激突する。
「そうだ、来世において復活するために必要だからな」
「なるほど、尊敬される偉い人の証だな。望まれないと死後に誰もミイラにしてくれないだろうし。
……俺だって、ピラミッドの文化的価値は理解してる。歴史は人を感動させる大切なものだからな」
ぎり、と拳を握りしめる。自分の吐く言葉に激情が混じるのを、麦は自覚していた。
「でもそれって、この地の古墳も同じだから。譲ることはできないじゃん?」
「それは……!」
結局はその一点。ご当地を愛する者が、冒してはならない一線。
自分のご当地を立て、盛り上げるるために、他のご当地を侵害することは許されるのか? そこが善と悪の絶対的な境界線だった。
「ははっ、そんな顔をするなよ。まあ、事ここに至っては議論は無意味か。
勝った者が正しいってことで、後腐れなく殴り合おうな」
そうして、いよいよ戦いは佳境に向かう。
怪人が呼び出した仮初のピラミッドは2つ。それらから呪いのピラミッドパワーが放たれる。
「呪われろ!」
「さすがピラミッドパワー、だが俺も神の使いである鹿と遊ん……えーっと」
対して麦は、黄色い運動着のポケットの中を探り、目的の品物を取り出す。
「ここに、お土産の鹿角キーホルダーがあります!」
「ふん、たかがキーホルダーに何ができる。そんな安い量産品にどんな力があるというのだ!」
「毎年生え変わり成長する鹿の角ってのは、『甦り』『豊作』の象徴らしいよ。で、そんな縁起物ならば、呪いを受けても、その念を転じてお祝いに変えることができる!」
「馬鹿な、そんなことが……!」
「おっと、勘違いするなよ。あくまでもこれは発動のための触媒であり切欠だ! 俺が何故、今までずっとこの地、奈良の推しポイントやお土産について語っていたと思ってるんだ?」
「! まさか!」
そこまで言われて、エジプトピラミッド怪人も理解した。できてしまった。
「そう、ご当地パワーをチャージするためだっ! くらえ! ご当地おすすめビーム!」
「――!!」
ビームと名乗ったが、現れたのは鹿であった。そう、奈良のご当地ガイアパワーの具現化、奈良の象徴である神鹿だ。
頭をキーンとさせるような、神聖にして極冷のかき氷の霊気を纏い、怪人に向けてパワフルな突進を仕掛ける!
「お、おおおおおっ!」
ピラミッドの呪いなど一蹴し、神鹿は怪人へ致命の突撃をぶちかました!
……戦いは終わった。倒れ伏す怪人の身体が、まるで砂のように崩れていく。
「お前、実際にはオブリビオンって言うんだっけ? 過去に囚われず、甦りのご利益を受け取れますよーに、なんてね!」
「ふ、倒した敵を気遣うか。……ひとつだけ、教えてくれ。お前のそのポーズはどんな意味があったんだ?」
麦はビームを放つ際に、謎のポーズを取っていた。怪人は最期にその意味を問うた。
「具体的な意味は無い。ただ俺は、この奈良という地に敬意と感謝を示し、その想いを直感的に表現しただけだ」
「そうか。……ご当地を愛することが理解できる、素晴らしいポーズだった」
微風に吹かれ、砂が飛んでいく。
その様を、何も無くなるまで麦はいつまでも目で追っていた。
こうして、奈良でエジプトピラミッド怪人が引き起こした騒動は解決した。
しかし忘れてはならない。ご当地怪人たちは常に虎視眈々と悪事を企て、なんやかんやで世界征服を目論んでいるのだから――!
なお、ミイラ化の被害者となった一般人たちは猟兵に救出され、武蔵坂学園のフォローを受けつつ日常へと戻っていった。
そして怪人が建築したピラミッドは……実は消えることなくまだ残っていた。
解体するのも少々手間で、しかし放置はまずい。いっそ新しい観光資源にしようか、などと突飛な意見が地元から出ているとか。
なんにせよ今後の処遇はゆっくり決められるとのことであった。
大成功
🔵🔵🔵