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|旅行者《パッセンジャー・ピジョン》の祈り

#UDCアース #カットスローターズ #UDC支部襲撃 #プロメテウス #旅行者

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●願いの権化
 涙の訳を知りたいと思う。
 何故、君は泣くのか。
「おそらのうえから あなたをすくいにきました」
 その言葉はきっと優しさの証明であったことだろう。
「わたしは けっしてみすてません」
 そう言ってくれたこと、嬉しく思えたのだ。けれど、それはきっと嘘だと思った。
 優しい嘘だ。
 これは誰の記憶にも残らない。
「やめるときも うれうときも」
 けれど、自分だけが覚えているだろう。たとえ嘘に塗れた言葉だったとしても、結局それは言葉でしかない。
 その空虚な言葉に意味を見出したのならば、きっとそれは力に変わっただろう。
「わたしが そばにおります」
 優しく微笑む君は、9番目の子。
 けれど、そこに君の席はない。すでに|番外《ヌル》がいるから、君は其処にいられない。爪弾き者とどうか思わないで欲しい。
 僕は、俺は、きっと君が……。
 そんな自分の言葉を遮るように、その願いは紡がれる。

「どうか どうか しあわせでありますように ――」

●アンダーグラウンド・ディフェンス・コープ
 UDC。
 それは同時に敵の名を示す記号でもあった。
『アンディファインド・クリーチャー』――太古から蘇った邪神と眷属たちのことを示す。
 狂気に満ちたそれらは、人類防衛組織と暗闘を繰り広げている。
 人が知れば、たちまちに狂気に飲み込まれてしまうだろう。
 そんな『怪物』たちと戦う者たちが集うUDC組織支部の一つに、一人の少年が首をかしげていた。
「いいのかねえ。この世界でこんなハデなことして」
 少年は手にしたカッターナイフを弄ぶ。
 まるで手品のようにもう片方の手には替刃が剣呑に輝いていた。
『私達の命令系統がどうなってるのか知りませんが、そう言う割りには楽しそうですね、切宮君』
 声が響く。
 どこから響いているのかはわからない。
 けれど、少女の声だとわかる。
 その声に『切宮』と呼ばれた少年は憮然とした表情を浮かべた。
「いや、縫村、お前に言われたくないんだけど……」
 しかし、と彼はUDC組織支部の一室を見やる。
 そこには影が無数に蠢いていた。
 不定形。
 けれど、影のように蠢き、そして分裂してはまた一つになるようだった。

「良くもこれだけ訳のわからんもんを溜め込んだもんだ」
『UDCアースには、私達でも勝てない存在が山のように居ます。それを、六番目の猟兵が現れるまでの間、曲がりなりにも抑え込んでいた組織です。どうしようもなくて封印したオブジェクトの十や二十はありますよ』
「で、これかよ」
『みたいですね。ああ、なんとも醜い願いなんでしょう。戦いを厭うが故に戦いの権化になってしまう願いなんて、全く持って無意味だとは思いませんか?』
「さぁ? 俺達には関係ないね。なにせ、俺達は悪性と善性とは無関係な場所にいるだからな。よし、これで最後の封印を解除!」
『切宮』と呼ばれた少年の言葉を皮切りに、そのうごめく影が霧散していく。
 その内側から現れたのは、無数の邪神であった。

「さて、職員の奴らはどれぐらい抵抗してくるかな?」
『逃げ出すのならば、無駄ですけれどね。この支部は私のユーベルコード『縫村委員会』で封鎖しています。彼らには邪神たちの贄になっていただき、そして邪神たちにも殺し合い喰らい合って『最強の一体』に成長していただきましょう。まあ、本命は』
「ああ、恐らくコイツだろうな。まったく人の心ってのは面白い。善性だけの奴なんているのかと思っていたが、コイツはただの器。なら」
『ええ、この支部に存在する邪神たちをも全て飲み干すことのできる器です。きっと私達の闇堕ちゲームの最後の一体になるでしょう』
 二人の声が交互に響き、彼らが見ているであろうUDC怪物の一体が面を上げてつぶやく。

「あなたはしあわせですか」

 その言葉に謎のオブリビオン『カットスローターズ』は笑う。
「コイツが最強の一体に成長し、|『持ち帰る』《アーカイブ》ことができれば、俺達は多分無敵だ……待ってろよ、|灼滅者《スレイヤー》!」
『執念は私達の大切な行動原理です。一度殺すと決めたのなら、死んだぐらいでは諦めません。何度でも、どんなイカサマをしても、場にしがみついてみせます!』
 まだ終わっていない。
 何一つ終わっていない。
 オブリビオンとして舞い戻ることがイカサマなのならば、謗られようと恥じ入ることはない。
 だってこれは――。

●UDCアース
 グリモアベースに集まってきた猟兵たちを迎えたのはナイアルテ・ブーゾヴァ(神月円明・f25860)だった。
「お集まり頂きありがとうございます。今回の事件はUDCアースにおいて、謎のオブリビオン『カットスローターズ』によるUDC組織支部の一つが襲撃されることが予知されています」
 彼女の言葉に猟兵達はどよめく。
 それもそうだろう。
 UDC組織には封印するしかないUDC怪物やオブジェクトが無数に存在しているのだ。
 ここが襲撃されれば、どのような惨劇が起こるかなど想像したくもない。
「ですが、この支部からUDC怪物たちが溢れ出すことはありません」
 どういうことだ、と猟兵達は疑問を浮かべる。
 そう、謎のオブリビオン『カットスローターズ』は、ユーベルコード『縫村委員会』によって支部の建物を『出入りが不可能な閉鎖空間』に変え、この支部にて職員を生贄にした上で開放したUDC怪物たちに蠱毒めいた共食いをさせることで『最強の一体』を|『持ち帰る』《アーカイブ》ことを目論んでいるのだ。

「閉鎖空間は、皆さんの全力攻撃で一瞬、人が通れるだけの穴を空けて乗り込むことができるでほしょう。『カットスローターズ』、彼らに蠱毒を生き残った邪神を手に入れさせるわけにはいきません。何より……」
 そう、UDC組織が壊滅してしまえば、この地域における今後のUDC怪物事件への対処が困難になってしまう。
 語るべくもないが、『カットスローターズ』たちの目論見を打破しなければならない。
「謎のオブリビオン『カットスローターズ』……その最終的な目論見がなんなのかはわかりません。ですが、きっと良くないことが起こることだけはわかります。どうか、UDC職員の人びとを救い、彼らを打倒してください」
 そう言ってナイアルテは猟兵達を送り出すのだった――。


海鶴
 マスターの海鶴です。どうぞよろしくお願いいたします。
 今回はUDCアースのUDC組織支部に突如として現れた謎のオブリビオン『カットスローターズ』の目論見を打破するシナリオになります。

●第一章
 集団戦です。
 ユーベルコード『縫村委員会』によって封鎖されたUDC支部に乗り込み、収容状態から開放された低級のUDC怪物を撃破しましょう。
 現在、この支部は多数のUDC職員たちが、支部の各セクションに立てこもって儚い抵抗を続けています。
 低級UDC怪物『混ざり物の猟犬』たちを倒し、支部職員たちを救出しましょう。

●第二章
 ボス戦です。
 みなさんが支部職員を救出している最中に出現するのは、謎のオブリビオン『カットスローターズ』です。
 カッターナイフ使いの少年と、何処からか聞こえる少女の声が交互に響く彼らの周囲では、彼らの目的である蠱毒の中を生き残った『最強の一体』である邪神を決めるべく超常たる戦いが繰り広げられています。
 その余波を避けながら『カットスローターズ』の繰り出す殺人技巧に対処しなければなりません。

●第三章
 ボス戦です。
『カットスローターズ』を撃破したことで、救出した支部職員たちを連れて脱出するチャンスが見えてきましたが、『最強の一体』となったUDC怪物が佇んでいます。
 まるで道を阻むように佇むUDC怪物を撃破しましょう。

 それではUDC組織支部に突如として現れた謎のオブリビオンと邪神同士をくらい合わせる蠱毒めいた儀式。これを阻む皆さんの物語の一片となれますよう、いっぱいがんばります!
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第1章 集団戦 『混ざり物の猟犬』

POW   :    いぬのきおく
戦場内の味方の、10秒以内の【ダメージ】を無効化する。ただし、自身の幸福な記憶ひとつを心的外傷に改竄する。
SPD   :    いぬのあそび
【あらゆる直線と90度以下の角度から仲間達】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    いぬのきもち
【|清浄《正常》な生命への憎悪から鏖殺形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:いぬひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「隔壁を緊急閉鎖! 急げ! 低級とは言え、UDC怪物だ! 早く!」
 UDC組織支部に緊迫した空気が走る。
 突如として支部内部に広がった恐るべき気配。
 身の毛がよだつほどの感覚を支部の職員たちは知っていた。これは異常な事態だ。
 嘗て彼らが対峙してきたUDC怪物たちに似た雰囲気。
 それを嫌と言うほど知っていた。
 願わくば、知らずにいられたのならばよかった事実でもある。

 けれど、彼らはそれを知っているからこそUDC怪物が支部施設から這い出すことを良しとしない。
 なんとしてもこれを封じなければならない。
「どんな犠牲を払ってでもだ!」
「各セクションの隔壁閉鎖完了! 各員は鎮圧装備! 最重要オブジェクトの封印は!」
「『9番目』セクションの封印が解かれました!」
「……!? 馬鹿な、あれは最も強固な封印を施しているんだぞ? それが何故……!」
「わかりません、ですが……」
 隔壁の向こう側で凄まじい衝撃の音が響く。
 何かが体当たりしてきているのだ。そして、どこか遠吠えが聞こえるようだった。
 ここは隔壁で閉鎖されているのだ。
 なのに、耳に響く遠吠え。
 まるで、ここに得物がいると理解しているような……。

「ウ、ォォォォ――ンッ!!!」
 確かに聞こえた。
 これは猟犬が上げる遠吠え。
 ここに獲物がいる。そう告げるように隔壁を打ち据える音が増え、そしてきしむようにして隔壁が拉げる音が響いた――。
馬県・義透
四人で一人の複合型悪霊。生前は戦友

第一『疾き者』唯一忍者
一人称:私 のほほん

とんでもないもので蠱毒を計画するとか、本当に嫌になりますねー。
しかし、救出は間に合いますから…いきましょう。

早業UC付きで、漆黒風を投擲。超耐久といっても、傷はつくんですから…これで、不幸はあちらに。
これを陰海月の支援とともに繰り返していきましてー。ええ、数は減りますね?
その隙に、霹靂に頼んで職員の安全確保も。


陰海月「ぷきゅ!?」
ぬいぐるみの意見聞こうと思ったら、こんなことになってる!
四天流星を投げて、無差別攻撃を同士討ち誘導!
霹靂「クエ」
慎重に、ゆっくりと…職員さんを背に乗せて。



 謎のオブリビオン『カットスローターズ』が目論むのは邪神たちによる蠱毒である。
 それによって生み出された『最強の一体』を|『持ち帰る』《アーカイブ》することで、彼らに利するところとなるのは言うまでもない。
 そして、その場となったのがUDC組織支部である。
 この支部は今や封鎖されている。
 外から侵入することも、内側から脱出することもできない。
 だが、馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の一柱『疾き者』は、己の全力攻撃ならば一瞬ほころびが生まれることを知る。
 人一人が通れる程度の穴が一瞬だけ生まれる。
「とんでもないもので蠱毒を計画するとか、本当に嫌になりますねー」
 だが、UDC組織支部に閉じ込められた職員たちは今も抵抗を続けているのかもしれない。
 間に合うかもしれない、という可能性があるのならば、この蠱毒に飛び込むことを厭う理由はないのだ。

「……いきましょう」
 叩き込んだ一撃にてて生まれた僅かな穴。
 其処に飛び込み『疾き者』は隔壁が落とされた支部の通路を見やる。
 周囲には多くの低級ながらUDC怪物たちが蠢いている。
 まるで影のような姿。
 それが猟犬の形をしている、と理解できたのは低級UDC怪物が遠吠えのような咆哮を上げたからだ。
 不定形。
 影が蠢き、しかし、それが遠吠えによって形作られる。
 床に滲むような影は一瞬で『混ざり物の猟犬』へと変貌し、『疾き者』へと飛びかかってくるのだ。

「ウォオオオオン!!!」
 剥く牙に滴るは影のような唾液。
 散るそれを『疾き者』は見るよりも早く、手にした棒手裏剣を投げ放つ。
 それは『混ざり物の猟犬』に致命傷を与えないものであったが、しかし、傷は確かにつけるものであった。
「確かに厄介な超耐久力ですねー。ですが、傷はつくのなら」
 ユーベルコードの輝きが発露する。
 己が放った棒手裏剣の一撃は癒えぬ傷跡を残す。
 そして、次々と連鎖する呪いによって、『混ざり物の猟犬』は不慮の事故に見舞われ続ける。
 即ち、このUDC組織支部にあっては、彼らが成そうとする殺戮の全て、その尽くが不運によって成し遂げられぬことを示す。
「これで不幸はあちらに」
『疾き者』は周囲を見回す。
 よほど緊急の事態だったのだろう。
 隔壁が閉鎖された支部を進むのは難しいものだった。とは言え、それでもなお迫ってくるUDC怪物『混ざり物の猟犬』たちを排除するのが先である。

「数を減らしていきましょう」
 この状況では職員たちを救うどころではない。
 戦いの気配に吸い寄せられるようにして次々と『混ざり物の猟犬』たちが影より這い出してくる。
 パンデミックにも似た様相である。
『疾き者』は己の影から『陰海月』と『霹靂』を呼び出す。
 手が足りない。
 自分だけでは『混ざり物の猟犬』を排除するので手一杯だ。となれば、彼らに職員たちの保護を頼むしかない。
「頼めますか」
「ぷきゅ!」
「クエッ!」
 二匹は力強く頷く。
「ならば、頼みました。この場は私が引き受けましょう」
 迫る『混ざり物の猟犬』たちの前に『疾き者』は立ちふさがり、二匹が職員たちの安全を確保できるようにと、手にした棒手裏剣と己が手繰る連鎖する呪いでもって、敵を押し止めるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紺郷・文目
……震撼します。邪神の蠱毒。なんとおぞましい事を考える者が。
確信します。そのようなものに人間達が巻き込まれていいはずがありません。請いなくとも直ちに戦列に加わります。

閉鎖空間に突入後、空間内の【天候を操作】。
【ヘヴンリィ・シルバー・ストーム】発動。
UDC職員達を味方と定義。優しい雨による癒しを与えます。大丈夫。誰1人犠牲にはさせません。
四方から来る獣達には【神罰】たる雷を。絶対に人間達を贄になどさせません……!



 邪神に寄る蠱毒。
 最強の一体を求める者らによって引き起こされたUDC組織支部の閉鎖と狂乱の如き宴。
 支部内部の隔壁は落とされ、なんとか半数以上の低級UDC怪物たちは分断されている。しかし、未だに抵抗を続けるUDC組織職員たちの安否は確認されていない。
 多くがこの事態に対して対応しようとしているのだろう。
 この未曾有の事態。
 全ては『持ち帰る』ことを目的とした謎のオブリビオン『カットスローターズ』によって引き起こされたものである。
 紺郷・文目(癒し雨の竜・f39664)は、このような事態を引き起こすに至った存在に身が震撼するのを感じたことだろう。

「このようなことに人間たちが巻き込まれていいはずがありません」
 文目は即座にユーベルコード『縫村委員会』によって封鎖されたUDC組織支部へと己が全力の一撃を叩き込む。
 それで漸く人一人が通れるほどの穴が一瞬生まれ、その一瞬を文目は逃さず踏み込む。
 組織内部は荒廃していた。
 多くの隔壁が落ちてはいたが、逃げ遅れたり抵抗虚しく死せる職員たちの遺骸はいずれも損傷著しいものであった。
「……」
 このような行いが許されるはずがない。
 嘗ては信仰によって雨を降らし、その力えもって人を癒やし邪神を退けてきた竜神が文目である。
 彼の心に去来するのは、許しがたいという激怒にも似た感情であったことだろう。
 たとえ、このような策動巡らせたものの思惑が彼を震撼せしめることであっても、彼はそれを振り切って支部内部を走る。
 請われるまでもない。
 人間が巻き込まれている。
 無為に死んでいく。
 その残骸がそこかしこに散っているのだ。
「ウオオオオッ!!!」
 咆哮と共に低級UDC怪物『混ざり物の猟犬』が文目へと襲いかかる。
 一瞬だった。

 しかし、文目は己が瞳をユーベルコードに輝かせ、支部内部に銀色の雨を降らせる。
 黒き影より滲むような不定形たる『混ざり物の猟犬』は、その雨によって文目へと食らいつくことを失敗し、隔壁に激突する。
 唸るように跳ね、その駆体が再度、文目に襲いかかる。
「死せる者には届かぬ雨……ですが」
 もう誰も犠牲にはさせない。
 今も尚、この支部内部出て以降を続ける者たちに届けと優しい雨が降りしきり、そして迫るUDC怪物『混ざり物の猟犬』に対しては万色の稲妻が叩き落される。
 四方より迫るのだとしても意味はない。
「これ以上、絶対に人間たちを贄になどさせません……!」
 決意を込めたユーベルコードの輝き。
 ヘヴンリィ・シルバー・ストームは戦場となった支部を一瞬で駆け抜けていく。

 文目は万色の稲妻に打たれ、その不定形を痙攣させながら床にのたうつ『混ざり物の猟犬』へと再び稲妻を叩き込む。
「人間たちの危機。これは不特定多数に累を及ぼすものと断定。故に」
 これを撃滅する。
 文目は、信仰のために戦うのではない。
 たとえ、人が己のことを忘れてしまっても、それでも在りし日に己を好いてくれた人間たちのために戦うのだ。
 故に、文目は万色の稲妻を持って、隔壁落ちたる支部内部の暗がりにて未だ蠢動し続ける『混ざり物の猟犬』を打ち据えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
今回は真剣口調で話すよ

過去の記憶が疼くのか、カットスローターについて妙に知っている風に話すよ

攻撃はUCで呼び出した子メインで、ワタシは基本的に職員の安全確保に動くね
攻撃された職員を【硬化】した体で【かばう】、怪我した職員を【回復力/医術】で治す、【救助活動/コミュ力/精神の余裕】で安全圏へ誘導する、等を行うよ

UCは『ワタシのソロモンの雷』
ソロモンの悪魔の雷で、UDC怪物のみを攻撃するよ
必要ならワタシもネクロオーブから放つ光弾による中・遠距離攻撃で攻めるね
技能は【エネルギー弾/弾幕/誘導弾】を使うよ



 時は過去を踏みつけて前に進む。
 どんなものでも過去になる。過去は堆積し、にじみ出る。
 それがオブリビオンというものである。
 過去の化身。
 しかし、過去となった『今』の質量は変わらぬものであるはずの過去さえも歪ませる。そうして歪み滲み出たものが『今』に叛逆するのならば、それは大罪とも言えるのかもしれない。
 だが、果たして大罪を犯したのはどちらが先だったのか。
『今』か、それとも過去か。
 いずれにせよ、過去がにじみ出れば世界は破滅に向かう。

 今まさにUDCアースを襲うものもまた破滅への一歩であろう。
 謎のオブリビオン『カットスローターズ』。
 彼、彼らと呼べばいいのか。
 その所業は目に余るものであった。
 邪神による蠱毒。
「そんなことをさせるわけにはいかないの」
 クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)は己の中にある何かが疼くのを感じた。
 もしかしたら、記憶というものであったのかもしれない。
 許しがたいと思う気持ちがある。
 感情が猛るように胸の内からこみ上げてくる。

 UDC組織支部の施設に飛び込む。
 この施設を覆っているユーベルコード『縫村委員会』は侵入者を許さない。けれど、全力の一撃を叩き込めばほつれるようにして、人一人が入り込める穴が一瞬生まれるのだ。
「UDC組織の職員は……」
 飛び込んだ施設内部。
 そこには低級とは言えUDC怪物たちの蹂躙の痕があった。
 恐らく、彼らを逃さなかったのは邪神たちの贄とするためであろう。遺骸を貪るように不定形の影が蠢いている。
 その影が、クローネの存在を感知し振り返る。
 影のような色。
 しかし、そのぞろりと生えた牙には赤い血が滴っている。
 UDC怪物『混ざり物の猟犬』たちは一斉にクローネへと迫る。最早、あの職員の遺骸に生命はない。

 けれど、未だ救われぬ者たちがいるというのならば、クローネはためらわなかった。
「ワタシのソロモンの雷(ブラック・ソロモン・デビル・ライトニング)よ」
 召喚したソロモンの悪魔の前進から放たれる雷の魔法。
 その一撃が『混ざり物の猟犬』の体躯を打ち据え、その不定形たる体躯をさらにいびつに変えていく。
 マヒしたようにビクつく躯体をクローネはさらに打ちのめし、隔壁をこじ開けたであろう通路へと飛び込む。
 まだ無事な職員がいるはずだ。
 全てがUDC怪物の贄となったわけではない。
 救える生命を救いたい。
 その一心でもってクローネは組織施設の中を走る。

 祈るような気持ちだった。
「無事かな!?」
 隔壁を解除し、その内にいた職員たちの姿を認める。
 大なり小なり傷を追った者たちがいた。
「あなたは……もしや、猟兵?」
「ええ、そうよ。もう安心して。落ち着いて。きっと助けてみせるから」
「あ、ありがとう……でも、まって。まだダメです! 多くの邪神たちの封印が解かれているんです。特にオブジェクト『9番目』が……!」
 錯乱するようにクローネに縋る職員に彼女は落ち着かせるように誘導しながら、言葉に耳を傾ける。
「あのオブジェクトを外に出してはダメなんです。際限なく願いを叶え続けてしまう。だから……!」
 そう、願いを叶え続けることは即ち、人の中にあるものを全て実現できてしまえるといことだ。
 つまり。
「人の破滅衝動まで叶えてしまう凶悪な、邪神、と?」
 クローネは知るだろう。
 謎のオブリビオン『カットスローターズ』たちだけでなく、さらに邪神の蠱毒を生き抜くであろう強力な存在がいることに。
 だが、それでもこの場を捨て置くことはできない。
 クローネは職員を保護しながら、この事態の元凶たる敵を討つべく、施設内部をゆくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ
嫌なやつらに目を付けられたね。職員さん達も邪神も
…うーん、嫌な感じ。この閉鎖空間にはどうしてだろう、見覚えがある気がする
ま、どこの世界にも悪趣味な考えを持つ奴はいるってことかな

猟犬に3種の武器を叩き込みながら職員さん達を守るよう間に割り込む
UCの効果で最初の10秒は無敵みたいだけど、これは俺へ殺意を向けさせる為の攻撃
そのまま先手はそちらにあげるよと挑発
職員さんに向かう攻撃を武器と身体で防御、無敵時間を耐え切ったら反撃に移るよ

この酷い惨状、どれだけの殺意を振り撒いたんだろうねーーそのままお返ししてやる
腕から放つ状態で猟犬を捕らえてUCを発動
【赤日】。これはお前達の、お前自身を滅ぼす殺意の炎だよ



 UDC組織支部を襲ったのは謎のオブリビオン『カットスローターズ』。
 彼らは厳重に施されていた封印すら解除し、なおかつUDC組織支部から職員たちを誰一人逃すつもりはないようだった。
 眼の前にある結界めいたもの。
『縫村委員会』と呼ばれるユーベルコードであるらしい。
 嫌な感じがする。
 廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)は、直感的にそう思った。
 見覚えがあるような気がする。
 どうしてだかはわからない。わからないが、これがひどく厄介なものであるということだけは事実なのだろう。

 強固な結界。
 これは己の全力を持ってしても破ることはできないだろう。できて、人一人が出入りすることのできる穴を一瞬だけ生み出すことだけだった。
 しかし、封鎖されたUDC組織支部に侵入するには十分だった。
「本当に嫌な感じだ……ま、どこの世界にも悪趣味な考えを持つ奴はいるってことかな」
 支部使節に入り込めば、空気の淀みを感じる。 
 同時に血の匂いも。
 あちこちで隔壁が降ろされてはいたが、これをUDC怪物はこじ開けたのだろう。
 所々にUDC組織職員たちの抵抗の痕があった。
 急がなければならない。
 こうしている間にも職員たちが襲われているだろう。
「――!!!」

 遠くに獣の咆哮が聞こえる。
 たろは踏み込む。
 咆哮の奥に悲鳴を聞いたからだ。まだ生きている職員がいる。そのか弱い抵抗を聞き逃すわけがない。
 生きようとしている意志がある者の声を聞き逃すわけがない。
「邪魔」
 たろは、通路を駆け抜け、今まさに職員に襲いかからんとしている黒き影のような獣の眼前に躍り出て、手にしたカトラリーを突き立てる。
 だが、その傷跡は瞬時になかったことにされてしまう。
 手応えはあった。
 しかし、たろの一撃を受けたUDC怪物『混ざり物の猟犬』は、まるでその一撃を受けな方かのように牙剥き、彼に襲いかかるのだ。
「こっちの一撃を無効化しているのか。けど……」
「あ、ああ……」
「だいじょうぶ」
 たろは、背後にかばった職員につぶやく。
 安心させたかっただけだ。確かに『混ざり物の猟犬』は此方の攻撃を無効化できるらしい。だが、永遠に、ではない。
 必ず限界があり、制限があるはずなのだ。
 故に、たろは手にしたカトラリーで迫りくる『混ざり物の猟犬』の攻撃を捌き切って、己に殺意を集める。

「この酷い惨状、どれだけの殺意を振りまいたんだろうね」
 たろの瞳がユーベルコードに輝く。
 敵が己の攻撃を無効化するのならば、無効化できなくなるまで攻撃を放つまで。
 際限なき殺意があるというのならば、己は、その殺意をこそ跳ね返す。
 ユーベルコードの輝きは、【赤日】(アカキヒハシズマズ)のように彼の瞳に輝く。
 腕に巻きつけられた包帯がほどけ、一瞬で走り抜ける。
 絡みつくようにして『混ざり物の猟犬』の体躯を包み込み、一瞬で発火させる。

「グォォン!?」
「これは、お前たちの、お前自身を滅ぼす殺意の炎だよ。丸ごとお返しだ」
 炸裂する炎。
 それは無尽蔵に、無差別に撒かれていた殺意を集約するように『混ざり物の猟犬』を燃やす火柱となって立ち上るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼノン・サイネスト
…ひどい有様だ。
前触れもなく事が起きたな
どこの誰だか知らないが、その思惑を阻止させて貰うぞ

建物内に侵入後、敵に見つからないよう隠密かつ素早く移動
そして獲物に夢中になっているであろう敵の不意を突くように、
炸裂弾を仕込んだクナイグレネードを放つ
敵が状況を把握する前にダッシュで間合いを詰め、
赤光(フォトンセイバー)で攻撃

敵に囲まれないよう位置取りながら
シールドで防御、合間に反撃しつつ打開の機会を探す
…これは、敵が増えるばかりでキリがないな
本体を叩くべく、敵達の隙が見えたらジャンプ、その頭上からUCを放つ
敵達の動きが鈍ったら、本体を赤光で集中攻撃

目前の敵を撃破後、可能であれば他職員の助力に向かいたい



 踏み込んだUDC組織支部施設は酷い有り様だった。
 抵抗の痕はあれど、しかし、その付近には必ずと言っていいほど無惨に食い殺されたかのような遺骸があった。
 引きずるような痕。
 銃痕。
 どれもがUDC職員たちの必死の抵抗だったのだろう。
 逃げ出すことのできない閉鎖空間。
 それが『縫村委員会』である。外にUDC怪物たちが溢れ出すことはないが、しかし、内部にいた者たちは贄と捧げられるように食い殺されてしまったのだろう。
 だが、全てではない。
「何処の誰だか知らないが、その思惑を阻止させてもらうぞ」
 ゼノン・サイネスト(赤き残光・f36685)は眼帯に覆われていない赤い瞳を、明かりの明滅する施設内部に走らせる。

 生きている者がまだいるはずだ。
 彼らを救わねばならない。
「……連中、遊んでいるな」
 まるでUDC怪物たちは職員たちを弄ぶようにして追い立てている。
 隔壁があれど関係ないというようにこじ開け、恐怖の音色を楽しむように追い詰めているのだ。
 故に、ゼノンは狩られる者と狩る者を逆転させる。
 UDC怪物『混ざり物の猟犬』たちの後を追ってゼノンは忍び寄り、一瞬で炸裂弾を仕込んだクナイグレネードを投擲する。
 炸裂する爆発に『混ざり物の猟犬』は不意に振り返る。
 そこにあったのは光と熱。
 だが、この程度でUDC怪物がどうにかなるわけではない。
 けれど、音と光がゼノンの姿を彼らの視界から消すのだ。
 一瞬で間合いを詰める。

 通常の人間では無理である。
 どんなに敵の不意をついたとて、人間の動きでは『混ざり物の猟犬』の反射速度を上回ることはない。
 そう、人間であれば、である。
 ここにいるのは、戦闘義体に己のが身を置き換えたサイバーニンジャである。
 一瞬で踏み込んだゼノンは手にしたフォトンセイバーを翻す。
 僅かな動き。
 最低限の動きとも言えただろう。
 暗闇に刻まれた残光は赤。されど、『混ざり物の猟犬』たちは、その首を地面に落とし、その体が影へと変わって霧散していく。
「……他愛ないな。だが」
 ゼノンは、己を取り囲むUDC怪物たちを見やる。

「ウォオオオオン!!!」
 咆哮と共に集まった『混ざり物の猟犬』たちが飛びかかる。
 それは一瞬にして交錯する一撃であった。
 しかし、ゼノンはこれをシールドで受け止める。きしむシールド。牙が食い込む。さらに衝撃が走る。
 次々と『混ざり物の猟犬』が放った牙がシールドに突き立てられていくのだ。
「……これは、敵が増えるばかりでキリがないな」
 即座に己の守りであるシールドを捨て、眼前の狼の頭部を蹴って飛ぶ。
 この攻撃は確かに数で圧倒するものだ。
 けれど、この攻撃の起点たる存在がいるはずだ。故に、ゼノンは手にしたビームウィップの一撃を影の大元である『混ざり物の猟犬』へと叩き込む。

「ギャイン!?」
「犬のように鳴くか。だが」
 ビームウィップから放たれた高圧電流で動きが鈍った瞬間、フォトンセイバーの一閃が『混ざり物の猟犬』を切り裂く。
 ゼノンは視線を走らせる。
 まだ救われぬ職員たちがいる。彼らを救わねば、とゼノンは己が倒した的に目もくれず施設をひた走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルメリー・マレフィカールム
……職員の人たちを、生贄に……?
……そんなことはさせない。これ以上の犠牲が出る前に、止めてみせる。

突入したら、まずは職員の人の安全を確保をするように動く。
襲われそうな人がいるなら、割って入って注意を引く。まだ障壁が破られていないなら、その前に猟犬を斃す。

戦う時は、「死者の瞳」で猟犬を観察。視線、呼吸、力の込め方。それらから初動を読んで、急所に刺さるように【銀閃】を当てる。
【銀閃】を潜り抜けた猟犬が居ても、[残像]で攻撃を避けた後に、ナイフの[急所突き]でカウンターを狙うつもり。

猟犬を斃し終わったら、職員の人を少しでも安全な場所に誘導する。
まだ、外には出られないけど……きっと、助けてみせるから。

【アドリブ歓迎】



 謎のオブリビオンの目的は邪神の蠱毒である。
 強大な力を持つ存在である邪神たちを共食いさせ続け、最後の一体を得るための儀式めいた行いである。
 正気ではない。
 そして、邪神たちへの贄としてUDC組織支部の職員たちを逃さぬと結界めいたユーベルコードが張り巡らされている。
 ルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)は結界に触れる。
 硬い。
 自分の全力の一撃でも一瞬しかほころびが生まれないだろう。
 しかし、迷っている時間はない。
 このまま時間が経てば経つほどに、この支部に閉じ込めれた職員たちは邪神たちの贄として殺し尽くされてしまうだろう。
「……そんなことはさせない。これ以上の犠牲が出る前に、止めて見せる」
 ルメリーは己がナイフを結界に叩きつけ、その一瞬生まれた穴に身を飛び込ませる。

 すると、己が鼻腔をかすめる匂いがあった。
 血の匂いだ。
 施設のあちこちから血の匂いが漂ってきている。
 すでに犠牲となった職員たちがいるのだろう。争った形跡がそこかしこにある。いや、抵抗の痕とでも言えばいいのだろうか。
 血痕。銃痕。それらをルメリーは認め、施設を走る。
「……させない」
 こじ開けられた隔壁の先にUDC怪物がいると当たりをつけて彼女は疾駆する。
 遠吠えめいた咆哮と悲鳴が聞こえた瞬間、体制を低くして彼女は踏み込む。
「斃す」
 短くつぶやいてルメリーは己がナイフを投擲する。
 迷いはなかった。

 彼女の瞳には、今まさに襲われんとしている職員がいた。
 UDC怪物『混ざり物の猟犬』は、その牙を剥いて職員の喉を一気にかき切ろうとしていたのだ。
 放たれたナイフが『混ざり物の猟犬』の眼球へと突き刺さる。
「ギャィン!!」
 ルメリーは駆け出した勢いを殺さずに、その眼球に叩き込まれたナイフの柄を膝で押し込むようにして突進して弾き飛ばす。
 指を引っ掛けるようにして柄を握り締めて、引き抜いて着地して、さらにルメリーは疾駆する。
 止まってはいられない。
 己の瞳は世界を白と黒、そして灰色に染め上げる。
 時がゆったりと流れているのではない。
 極限まで集中しているからこそ、彼女の瞳に映る世界は、スローモーションのようにつぶさに観察させるのだ。

 UDC怪物『混ざり物の猟犬』は、不定形。
 通常の生物と同じと考えてはならない。故に、ルメリーは手にしたナイフを剣呑に輝かせ、器用に回転させ拳で柄を打ち付けて銀閃(ギンセン)の如き一撃を『混ざり物の猟犬』へと叩き込んでいくのだ。
 恐るべき速度。
 そして精度であった。
 彼女はナイフを放ち、打ち込むたびに『混ざり物の猟犬』へと飛び込みナイフを引き抜いては、反撃すら許さずに敵の体躯を穿つ。
 不定形であるというのならば、急所の場所も不定であろう。
 倒すには足りない。
 けれど、いつか急所に当たることもあるはずだ。
 故にルメリーは己の一撃が不定形の核を捉えるまでナイフを打ち込み続けるのだ。

 断末魔の悲鳴すら響かない。
 彼女の斬撃は、閃光のように『混ざり物の猟犬』の影のような体躯を照らし続け、これを消滅させるのだ。
「ま、まだ職員たちがこの奥に……!」
 職員の言葉にルメリーは頷く。
「わかってる。けれど、あなたたちを外に出すことはまだできない。敵のユーベルコードのせい」
「そんな……でも」
「だいじょうぶ」
 ルメリーはそう言ってへたり込んでいた職員の手を取って立ち上がらせる。
 道行きはまだ遠い。
 このまま職員たちを連れて、蠱毒めいた邪神たちの争いの中で、この事態を引き起こした張本人たちと戦わねばならないのだ。
 難しいことだろう。
 けれど、やらねばならないのだ。
「……きっと、助けてみせるから」
 これは約束だ。そして誓いだ。
 ルメリーの幼い精神性において、他者を安心させるためにはこれしかないのだ。
 真摯なる言葉は、きっと伝わるだろう。
 その約束を果たすためにルメリーは、さらなる邪悪な気配満ちる施設の奥を目指すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
はいはい通して
|正常《清浄》かどうかは知らんけど、普通の人っぽい雰囲気には定評のある夏報さんだよ
書類仕事が専門だけど
これを放置してたら残業が増えちゃうからね

敵が速く動くものを無差別に攻撃するのなら
派手に動いてる物体が常に存在していればいい
自分の動きは目立たないよう気をつけつつ
|フック付きワイヤー《アンタレス》を駆使して散乱している資材や死体を動かし、敵を挑発
……こうやって『餌』で釣り、誘導した先の位置を拳銃で撃つ

時間稼ぎにはなったかな
まだ生きている人いるー?
希望者にはUCを使って不死性の呪詛を配って回ろう
攻撃と称して肌をちょっとだけ切るよ
多少の代償はあるやつだけど、この非常時なら仕方がないよね



「はいはい通して」
 通せんぼしている誰かに告げるような声色だった。
 狭い通路だから、ちょっと横に退いてというような気安さだったかもしれない。
 けれど、この場においては最も似つかわしいものであった。
 UDC組織支部は、今や混乱に陥れられている。
 視線を巡らせれば、室内灯が明滅し、不自然に影を生み出していた。
 赤い飛沫の跡。
 何かを引っかいたような傷跡。
 引きずったように一筆書きが這う廊下。
 いずれもが異常事態を示していたがゆえに、臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)の言葉はあまりにも日常のそれであった。

「おっと、これはなんとも」
 彼女は見た。
 支部施設の廊下、その奥まった場所にて水音が響き、その正体が黒い不定形めいた影が咀嚼に身を揺らしている姿を。
 UDC怪物『混ざり物の猟犬』が犠牲となったUDC組織職員を食らっている。
 彼女の言葉に反応したように振り返った眼光は狂気に満ちていた。いや、獣欲にギラついていたとも言えるだろう。
 そして、瞬間的に、その影『混ざり物の猟犬』は夏報に飛びかかっていた。
「おや、普通の人っぽい雰囲気に定評のある夏報さんをめざとく見つけるとは」
 まったくと、彼女は嘆息する。
 そんな暇などない。
 けれど、彼女は大仰に肩を竦める。
 迫る牙は彼女の喉元を切り裂かんとしていたが、既のところでとどまっていた。
 空中に揺れる顎。
 滴り落ちる血と唾液が混ざった液体。

 それを見上げ、夏報は笑むまでもなく首を傾げた。
「悪いけれど、それは君のモノじゃあないんだ」
 通路に張り巡らされたワイヤーが『混ざり物の猟犬』の体躯を絡め取り、さらに襲いかかってきた『混ざり物の猟犬』が食らっていた遺骸を奥からワイヤーで釣り出すのだ。
「グウルルル!!!」
「おっと怒らないでくれよ。そんなに怒ると、その身に食い込んでしまうよ」
 まあ、それよりも早く、と彼女は手にした拳銃の銃口を『混ざり物の猟犬』に額に押し付け、引き金を引く。

「さて、時間稼ぎにはなったかな。まだ生きている人いるー?」
 夏報はこじ開けられた隔壁の奥へと呼びかける。
「うーん、返事がない」
 そこかしこに抵抗した跡がある。
 そして、どう見ても血の痕や量とが組織職員たちの人数からすれば少ないと思える。
「これはあれかな。他の猟兵たちに保護されている感じかな?」
 なんだ、と彼女は生きを吐き出す。
 己のユーベルコードで不死性を与えて保護しようと思ったのだけれど、それはしなくても良さそうだ。
「まあ、夏報さんも気乗りはしてなかったけれど。なにせ代償にちょっぴり肌を切らないといけないし、徒に傷を与えるのもちょっとね、とか普通の人っぽい事を考えたり考えなかったりしていたのでね。非常時なら仕方ないって自分に言い訳までしないといけない手間が省けたっていか」
 ウンウン、と彼女は一人うなずき、振り返る。
 そこには『混ざり物の猟犬』たちが、己たちの獲物を横取りしたと映る夏報を睨めつけ唸り声を上げている。

「なんだ、しっかり犬らしい執着があるんじゃあないか。これは釣りの才能があるんじゃないかな?」
 軽く笑って彼女は己に迫る『混ざり物の猟犬』を討ち滅ぼすためにワイヤーと拳銃を駆使して、くちづけの先の熱病(コールド・ケース・アフター)よりも熱き弾丸を彼らに叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャムロック・ダンタリオン
ふん、何の目的で邪神を狙っているかは知らぬが、どうせろくな事ではあるまい。
それにしても「アーカイブ」ときたか。だがこれで、かつての猟兵の成れの果てどもがすべて動き始めたというわけか(【世界知識・戦闘知識】)。

(で、結界を強引に【切断】しエントリー。そして辛うじて無事な職員を見つけ(【威厳・存在感】))
貴様らはまだ息のある連中を連れて逃げるがいい。そのための【時間稼ぎ】くらいはしてやるさ(と、「【破魔】」の「豪雨」で場を【蹂躙】してる(【属性攻撃・全力魔法】))。

※アドリブ・連携歓迎



 UDC組織支部を襲撃した謎のオブリビオン。
『カットスローターズ』と呼ばれる存在の目的は、邪神を用いた蠱毒による最後の一体を『持ち帰る』ことである。
 しかし、シャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)は、これを知ったところで己が為すべきことは変わらぬと案じる。
 どうせ碌なことではないのだ、この襲撃の先にあるのは。
「それにしても『アーカイブ』ときたか」
 その名を彼は知っている。
 二番目の猟兵『アーカイブ』。
 理解の及ばぬ目的のために他世界の技術や能力を『持ち帰る』ことを目的とした瞬断であると語られる存在である。

 大いなる戦いの後に得られた情報である。
 そして、六番目の猟兵である己達にそれを知られたと悟った瞬間、多くの世界で二番目から五番目の猟兵たちが動き出したのだ。
「だが、これで嘗ての猟兵の成れの果て共が動き出したという証明でもある。ならば」
 シャムロックはUDC組織支部を覆う結界にふれる。
 強固な結界だ。
 これを破ることは難しいだろう。他の猟兵たちもそうであったように、これに己が全力の攻撃を当てることで、漸く人一人が入れるかどうかの穴が空く。
 だが、それも一瞬だ。
 その一瞬でシャムロックは施設内部に踏み込む。

 周囲を満たすのは剣呑なる雰囲気であった。
「グルゥウウウ……!」
 シャムロックは施設内部に踏み込んだ瞬間にUDC怪物たちに取り囲まれていた。
 待ち伏せていたのか。
 いや、違う。これは偶然であろう。
 自らが強引に結界に穴を空けて入ってきたところに、他の猟兵達に狩りめいた行いを妨げられ、追い立てられた個体がいた、ということであろう。
「未だ職員たちが残っているという話であったが、まず会敵するとはな」
 迫る牙と爪。
 不定形の影のような存在である『混ざり物の猟犬』はシャムロックを食らわんと飛びかかるのだ。
 凄まじい速度。

 しかし、シャムロックの瞳が敵を見つめる。
 ユーベルコードに輝く瞳。
 そして、彼は属性と自然現象を合わせる。
 破魔の属性と豪雨。
 降り注ぐ雨はは、その雨粒の一滴一滴が破魔の力を宿し『混ざり物の猟犬』を打ち据える。
「グルゥウウオウ!!」
 それでも迫る牙。
 打ち据えられながらも迫る力は低級と言えど、UDC怪物のそれである。
 その一撃をシャムロックは受け止め、破魔の雨降りしきる通路にて抑え込む。
「……貴様ら」
 シャムロックは隔壁の奥にいるであろう職員たちに声をかける。
 閉鎖されるまえに逃げ遅れたものたちだろう。
 戦う力を全ての職員が持ち得ているわけではない。だからこそ、隔壁の中に閉じこもるしかなかったのだろう。
 そんあ彼らにシャムロックは呼びかける。

「まだ息のある連中を連れて逃げるがいい。他の猟兵たちもいる。保護を求めるがいい」
「あ、あなたは……どうするんですか」
 隔壁の向こう側から職員の声が聞こえる。
 無論、とシャムロックは笑むでもなく告げる。
「時間稼ぎくらいはしてやるさ。どの道、小奴らを滅ぼさねばならん」
 ゆけ、とシャムロックは短く押さえつけた『混ざり物の猟犬』の喉元を押しつぶし、さらなる破魔の力をほとばしらせながら、職員たちが隔壁から逃げ出すのを守るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
無限にいると思われた|旅行鳩《パッセンジャー・ピジョン》が絶滅したように、邪神やUDC|怪物《モンスター》が消え去る日は来るのかしら。その時、J.J.オーデュボンのように悼んでくれる人はいないでしょうね。
あるいは送辞は、カクリヨへ去った妖怪たちに送るべきものかもしれないけど。

眷属召喚+羅睺召喚。
揃ってるわね、皆。タイムアタックを始めるよ。生きているスタッフを一人でも多く助けながら、敵を目指す。
ゆりゆりは治癒をお願い。アヤメはクナイで湧いてくる犬の先手をとって。羅睺は、酩酊を招くガジェットでも出して、犬を酔わせてくれるかしら?

あたしは『鎧装豪腕』で防御しながら、前方から来る敵に氷の「属性攻撃」。



 空を覆い尽くすような光景は、真昼であっても夜を思わせたかもしれない。
 それほどまでに多く、当たり前にあったものが失われることに恐怖を覚えるものもいれば、力に溺れるものもいる。
「無限にいると思われた|旅行鳩《パッセンジャー・ピジョン》が絶滅したように、邪神やUDC|怪物《モンスター》が消え去る日は来るのかしら」
 村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は、UDC組織支部の施設にて退治するUDC怪物『混ざり物の猟犬』の不定形の影の如き姿を見て思う。
 このUDCアースにて、人知れず存在する怪物。
 彼らは影のように人の営みの放つ光に寄り添う。
 当たり前のようにいるが、それを知った時人は正気ではいられない。
 己たちが支配しているのではなく、己たちが支配されていると知った時、きっと人は耐えられない。

 そんあ怪物たちから人の世を護るためにUDC組織は暗闘を繰り広げていた。
「滅び、消え去り、忘れ去られる時、J.J.オーデュボンのように悼んでくれる人は……いないでしょうね」
 彼女の瞳がユーベルコードに輝く。
 ゆかりの影から飛び出したエルフのクノイチ『アヤメ』の放ったクナイが『混ざり物の猟犬』の体躯を縫い留める。
 そして、全てを蕩かすリリスの女王の籠絡がUDC怪物であろうと染み込んでいく。
「ゆりゆり、籠絡はいいから隔壁の中にいる職員の人たちの治癒をお願い。アヤメ、足止めよろしくね」
「かしこまりました」
「さあ、こっちにおいで」
 ゆかりの指示にしたがって、眷属召喚(ケンゾクショウカン)された彼女たちが手足のように指示を出して、支部施設内に走る。
「ねーねー、何すればいいの?」
「酩酊を招くガジェットを出して。あの犬を酔わせて此方を追わせないようにしてほしいの」
 次々とゆかりは己の使役する眷属たる彼女たちと共に隔壁の内に隠れていた職員たちを保護していく。
 とは言え、このままでは手一杯になるだけだ。
 なにせ、この支部は『縫村委員会』と呼ばれるユーベルコードで封鎖されているのだ。
 これを解除するためには、ユーベルコードの主である『カットスローターズ』を打倒しなければならない。

 とは言え、多くの職員たちを保護したままでは現実的ではないだろう。
『カットスローターズ』が如何なるオブリビオンであるのかは判然としていない。そんな状況で保護した職員達を守って戦わねばならないのだ。
「加えて、邪神同士の争い、その余波のことも考えないといけないとか……」
 ゆかりは『鎧装副腕』と共に迫りくる『混ざり物の猟犬』の一撃を増え義ながら、なんとも気の重たい展開だと思ったかもしれない。
 けれど、やらねばならないのだ。
 これ以上の犠牲を出してはならない。
 UDC組織職員たちが失われれば、たとえ事件を解決しても、こに地域のUDC事件への対処ができなくなってしまう。
 職員たちは邪神の贄であると同時に猟兵たちの足かせでもあるのだ。
「まったく面倒なことをしてくれるわね」
 ろくなことをしない、とゆかりはため息と共に毒づく。
「怖い顔しなーい。せっかくかわいいお顔なのに」
「こうなるのも致し方ないわよ。でもまあ、そうね。なんとかなると思うしかないわ。絶望するにはまだ早すぎるもの――」

大成功 🔵​🔵​🔵​

明星・ぐれん
邪神共を利用しようとするなんて愚かな奴らが現れたもんじゃのう
何故なら!
我が邪神を片っ端からぶっ飛ばすからじゃ!

まずはこのでっか犬じゃな
職員達は我の後ろに下がると良いぞ
どんな犠牲を払っても?
馬鹿なことを言うんじゃない
いのちだいじに、だぞ?
ほれほれ下がれ
他の支部に報告するとか仲間を助けるとか出来ることがあるじゃろ
そっちは任せたぞ!

UCを使い変身し前に出るかの
身体が大きくなれば盾にもなれるしの
そして雷でじわじわ削ってやろう
ん?巻き戻し能力?
我の雷は常に相手を焦がすのじゃ
その度に相手が巻き戻しを繰り返していけば、いずれ記憶のほうが無くなるじゃろ
トラウマまみれとなったお主らが最後に恐怖するのはこの我よ!



 邪神の蠱毒。
 なんとも愚かしいことだと明星・ぐれん(旭日昇天・f40405)は思った。
 恐ろしいではなく、愚かしい。
 UDC組織支部施設の襲撃。それに加えて、邪神を争わせ、最後の一体を『持ち帰る』ことこそを目的とする謎のオブリビオン……二番目の猟兵『アーカイブ』であろう『カットスローターズ』。
 その全てが、ぐれんにとっては愚かしさの骨頂であった。
「邪神共を利用しようとするなぞ、愚か者と言われて然るべきである。なぜなら!」
 彼女は支部施設を封鎖しているユーベルコードに触れる。
 なるほど、堅牢である。
 己が全力でもこれを打ち破ることはできないだろう。

 けれど、一瞬穴を開けることはできる。
 ならば侵入することができるということだ。その一点において、このユーベルコードは完璧であることを失ったのだ。
「我が邪神を片っ端からぶっ飛ばしてくれようぞ!」
 彼女は打ち込んだ拳によって空いた穴へと飛び込んで施設を迅雷のように駆け抜けた。否、竜神であるところの彼女は飛翔する。
 完全なる竜体へと変じた彼女は一気に隔壁をぶち抜きながら施設内を飛ぶ。
 そう、彼女は救わんとしている。
 この場において、UDC怪物の解かれた封印をどうにかして押さえつけ、なんとしてでも被害を外に漏らさないようにと決意する職員たちを、だ。

「なんとしてもだ! 持ちこたえろ! そうでなければ!!」
「ああ、どんな犠牲を払ってでも!」
 彼らの気概は買うところであった。
 彼女が飛び込んだ隔壁が濛々と白煙を上げる。視界が遮られる中に黒い影が蠢いていた。それがUDC怪物『混ざり物の猟犬』であることを、ぐれんは知っただろう。
 だが、彼女は頭を振る。
「馬鹿なことを言うんじゃない。いのちをだいじに、だぞ?」
 突如として現れた、ぐれんの姿に職員たちは目を見開く。
「な、な……」
「ほれほれ下がれ。何かできやしないかと思っているのじゃろうが、できることはたくさんあるぞ。他の支部に連絡するだとか、仲間を助けるとかできるじゃろ」
 ぐれんの言葉は確かに頷けるところであった。

 職員たちは確かに捨て鉢に自暴自棄になっていたと言える。
 或いは、正気を失っていたとも言える。
 だからこそ、彼女の言葉が響くのだ。
「そっちは任せたぞ!」
 ぐれんは、職員立ち寄り前に飛び出し、己が竜体より放たれる雷と共に『混ざり物の猟犬』を打ち据える。
「グルゥオオオ!!!」
 迫る牙と爪。
 だが、ぐれんはためらうことなく竜鱗で受け止め、さらには雷を叩き込む。打ち抜かれる影の体。
「……ぬ?」
 ぐれんの眼の前で『混ざり物の猟犬』の体躯が巻き戻されるようにして修復していくのだ。いや、違う。
 なかったことにされている。
「なるほどの。此方の攻撃を無効化する類のユーベルコードか。じゃが!」
 ぐれんは笑う。
 己が放つは雷。
 どんなに疾く駆けるのだとしても、雷を避けることなどできやしないのだ。加えて、ぐえんの雷は絶え間なく降り注ぐ。

「そのユーベルコードの制約以上に打ち込めばいい。大方、記憶を代償に無効化しておるのじゃろう。ならば、お主等の最期は!」
 走る雷が『混ざり物の猟犬』の体躯を打ち付ける。
「トラウマ塗れとなった恐怖。それを与えるのは、この我よ!」
 その咆哮と共に、違えることなく彼女は『混ざり物の猟犬』に滅びを与えるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
蠱毒ってやつを邪神でやろうってか。なんつうおっかねえこと考えやがるんだ。
それに、UDCの職員さんたちだって放っておけねえ。
……怖ぇ。怖ぇけど、いつも通りやるしかねえよな……!

低級でもUDCなのには変わんねえ。気ィ引き締めねえと。
……クゥ、力を貸してくれ。
クゥの機動力を活かしつつ包囲されねえようにしながら、それでも追いすがってくる奴らを〈第六感〉を活かして〈見切る〉。
それでも捌ききれねえ奴は〈目潰し〉や〈マヒ攻撃〉で動きを止め、クゥの機動力を殺されねえように〈援護射撃〉で道を作る。
そんでもって隙が見えたら〈スナイパー〉ばりの一撃を叩き込む。

勿論、職員さんたちを助けるんも忘れねえ。



 鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は身が震える思いであった。
 ただでさえ厄介な邪神でもって蠱毒を行おうというのが、謎のオブリビオン『カットスローターズ』の目論見であった。
 最後の一体。
 それを『持ち帰る』ことを目的とした存在。
 それ自体は、嵐にとっても阻止せねばならぬことであった。
 けれど、それ以上に嵐が気がかりだったのがユーベルコードによって閉じ込められたUDC職員たちの安否であった。
「……怖ぇ」
 思わず言葉に出していた。
 言葉に出せば、余計に恐怖が胸を支配するようだった。

 けれど、それは特別なことではなかった。
 いつものことだ。
 戦う時、心に恐怖を抱くのは嵐にとって恥ずべきことであったが、止めようのないことでもあったのだ。
 ならば。
「怖ぇけど、いつも通りやるしかねえよな……!」
 どんなに恐ろしいことも、立ち向かうしかない。そうするしかない。恐れ抱きながらも、踏み込むのが猟兵としての己なのだ。
「行くぜ……『クゥ』! 力を貸してくれ!」
 嵐の瞳がユーベルコードに輝く。

 UDC組織施設内部は、UDC怪物『混ざり物の猟犬』にまみれていた。
 それに対抗するために焔をまとった黄金のライオン『クゥ』を召喚し、嵐は騎乗したのだ。
 生命力を共有するユーベルコード。
『クゥ』の傷は嵐の傷だ。嵐の傷は『クゥ』の傷だ。
 それはデメリットでしかなかったはずだ。けれど、嵐にとって、それは共に戦うものの証明であもったのだ。
 己の恐怖を照らす黄金の焔。
 そのたてがみに隠れるのではなく、嵐は前を向いて飛び込む。
「グルゥオオオ!!!」 
 咆哮と共に襲い来る『混ざり物の猟犬』たち。
 凄まじい速度である。だが、『クゥ』の機動力のほうが上だ。そして、嵐の第六感によって出される指示は的確であった。

 牙を、爪を、その尽くを嵐は『クゥ』と共に躱し、さらに引き絞ったスリングショットの一撃で以て打ち据えるのだ。
「職員の人だよな!?」
 嵐はそうして『混ざり物の猟犬』を打ち倒しながら隔壁の中へと飛び込んでいく。
 未だ抵抗していた彼らを見つけ、嵐は保護していく。
 他の猟兵たちも動いている。
 ならばこそ、嵐は彼らを守らねばならないと思う。
 己の心に宿る恐怖以上に彼らの心にも恐怖があると知っているからだ。
「もうだいじょうぶだ! おれたちが護るから!」
「で、でも……」
「怖いのはわかるよ。けれど、ここにいたらきっと危険だ。おれたちを信じてついてきてくれ!」
 嵐はそう言って『クゥ』と共に未だ救出を待ち、抵抗を続ける職員たちの元に駆けつけるために疾駆する。

 そう、誰にだって恐怖はある。
 けれど、それを拭えずとも誰かの恐怖という闇を照らすことはできるはずだ。
 嵐は、己以外の誰かに己と同じ恐怖を与えぬためにこそ戦うのだ。
 そうやって生きてきたし、己の力はきっとそのためにあるのだろう。
 こみ上げる恐怖を喉元で噛み殺し、嵐は恐ろしき戦場となった施設を走るのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
なんかリア充っぽそうなヤツの気配がするんですけお!!!
殺さなきゃ…拙者しってるよいちゃいちゃしてるとこアーカイブするんだろ…ぜってえぶっ殺さなきゃ…

たかだか犬の群れ程度で拙者を止められると思うなよ!怒りだ!もう怒りしかない!野郎ぶっ殺してやる!!!
|流体金属《オウガメタル》君もいきり立っておるわ!まとめてやるでござるよ!オウガメタル君からやたらめったらどす黒い光をこうペカーッとな
怒りの炎が世界を焦がす!無効化されようが継続して死ぬまで放てばいいんでござるよ
こんがり丸焼きにしてやる!

UDC職員?そんなのいたの?まあいいでござる貴様らも速くリア充を探すんだよおう
丸焼きにされたいのか?



 リア充とは。
 充実した現実と隔絶された場所から見るものたちの語る言葉である。
 隣の芝生は青く見える、という言葉があるように人は他の存在によって個を認識する生き物であり、社会性とは即ちそういうものである。
 故に、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は見事な黒髭をなでて、刮目する。
「なんかリア充っぽそうなヤツの気配がするんですけどお!!!」
 言いがかりも甚だしいところであるが、リアルが充実している定義なんて、人それぞれである。
 俺がリア充だと思ったからリア充なのだ。
 そう言わんばかりにエドゥアルトはギンギンに決まった目でUDC組織支部の施設内部に、ぬるっと侵入していた。

「殺さなきゃ……拙者しってるよいちゃいちゃしてるとこアーカイブするんだろ……」
 リア充とは斯くも写真が好きである。
 隙あればシャッターを押すし、昨今のスマートフォンの普及によってカメラ性能は天井知らずに向上している。
 加えて動画撮影も可能とくれば、このキラキラした思い出をみんなと共有したい! あわよくばちやほやもてはやされたい。
 羨ましがられたいし、嫉妬の羨望になるのもやぶさかではない。
 むしろ、見て!
 このリアルが充実してキラキラ金曜日を過ごしている自分を見て!! とSNSに放流してはあるのかないのかわからん意味のありそうでないような、ちょっと辛そうで辛くないみたいな、そんな感じのことを宣うのである。
「ぜってぇブッコロさなきゃ……」
 許しがたいことである。
 なので、エドゥアルトは施設内をなんかよくわからん変則的な動きで疾駆する。

 眼の前にはUDC怪物『混ざり物の猟犬』の姿があった。
 が、関係ない。
「たかだか犬の群れ程度で拙者を止められると思うなよ! 怒りだ! もう怒りしかない! やろうぶっ殺してやる!!」
 そう、拙者がこんなにも辛い思いをしているのに、どうして他人はイチャイチャしているのか。
 ちょっぴりかわいい女の子と融合しているとか、同棲生活を始めるより早く、肉体の同衾状態とかなにそれどんなラブコメだよ、と思わないでもない。
 あいつの魂が俺の肉体に一緒になって縫い込まれて切っても切れない件について。
「じゃないのでござるが!? |流体金属《オウガメタル》君もいきり立っておるわ!まとめてやつでござるよ! こう、黒い光をベカーってな!」
 爆発。

 実に雑な爆発である。
「ギャィン!?」
「犬でもなんでもない怪物が犬っぽく鳴くなでござる! 拙者の怒りの炎が世界を焦がす! おっ、なんでござるか。攻撃を無効化? そんなもん知ったこっちゃねぇでござる! 死ぬまで焼けば死ぬでござろう! こんがり丸焼きにしてくれる!!」
 荒ぶるエドゥアルトは止まらない。
 というか、止められるものなんているのだろうか。
 彼の狂気、いや、リア充憎しの感情は炎となって見るものに絶望を与える黒太陽となって施設内部に蔓延るように存在する『混ざり物の猟犬』を滅ぼし続けるのだ。

「あ、あの……」
「お? お主はUDC職員?」
「え、あ、はい」
 ふーん、とエドゥアルトは関心ないようであったが、ぴこんと頭上に豆電球。
「まあいいでござる。貴様らも早くリア充を探すんだよおう」
「り、リア充?」
「いたでござろう? なんかこう、可愛い顔立ちだけど男の子でお得! みたいなやつ!」
 侵入者のことだろうか?
 首を傾げた職員にエドゥアルトは肩を組み顔を近づける。
「早くするんだよ。丸焼きにされたいのか?」
 はっきり言って、ここだけ切り抜き動画にされたら、エドゥアルトのほうが悪役である――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

拝啓、ステラさんは今日も元気です。

と、それは置いておくとして、ノインさん案件ですか……。
強火vs強火で、わたしあまり入れないんですよね。

ここで『当ててんのよ』事案とか出されたら、
2vs1になりそう……いえ、なること請け合いですよね。

ここは少し大人しくして、って。
だれがわんこですか!? 今のはさすがにルビ読めましたよ!?

わしゃわしゃしないでくださいー。ちょっと気持ちいいですけど!
演奏していいんですか! わん♪

たしかにどこからでも湧くなら、点より面ですね。
それではこちらも無差別に【Canon】でいっちゃいましょうー!

今日はお許しもでてますし、
アンプもつかって全力で演奏しちゃいますね!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
|エイル様《主人様》の! 香りがしまーーすっ!!
どちらかというとノイン様案件…ですが、ノイン様のはじまりが
此処にあるのでしょうか?
平和の中にあって戦うしか出来ないノイン様
ええ、エイル様の強火ファンという事はわかっているのです
後はその正体がわかれば…また違う話も出来るでしょうか?

ともあれこのわんこ達をどうにかせねば
|ルクス様《わんこ》の出番ですよ?
え?違う?
またまたーほーらよしよしよし(わしゃわしゃ
今日はいっぱい演奏していいゾ☆

真面目な話どこからでも湧くなら
全周囲で仕留めるしかありません
【アウルム・ラエティティア】
音ならば隙はなく
さらにルクス様の演奏から逃れる事は不可能
完璧ですね?



 拝啓、ステラさんは今日も元気です。
 そんなはじまりから書き出されたお手紙が何処に届くのかはわからないけれど、ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は文をしたためる。
 いや、なんとなくである。
 こういう入り方も独特でいいかなって思ったまでである。
 というか、こういうことをしていないとまーたアレルギーが出そうだからだ。
 そんなルクスの思いとは裏腹に叫びが響き渡る。

「|『エイル』様《主人様》の! 香りがしまーーすっ!!」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)のいつものヤツである。
 もう言うまでもないことであるが、彼女は事あるごとにそう叫んでいる。ルクスにとっては、恒例行事なのでもう特に反応することはない。
 ちょっと鼓膜がイカれそうだなって思ったくらいである。
 勇者は鼓膜をぶち破るお仕事でしょ。ライバルでしょ。
「どちらかというと『ノイン』様案件……ですが、『ノイン』様のはじまりが、此処にあるのでしょうか?」
「強火VS強火ですよね」
 ルクスは思った。
 答えはどっちも厄介、である。
 どっちも敵に回したくない。布ガムテープの粘着性くらい厄介なスメルをルクスは感じ取っていた。
 というか、ここで『当ててんのよ』とか、ツンデレヒロインムーヴみたいなことをしたら、立場が逆転しそうで怖い。
 いや、そうなることが容易く想像できる。気がした。

「平和の中にあって戦うしかできない『ノイン』様……果たして、そうなのでしょうか。彼女の行動原理を顧みるに……ええ、『エイル』様の強火ファンということはわかっているのです」
 そうなの!? とルクスはツッコまなかった。
 否定してもあんまり意味ないし、なんなら下手なことを言って面倒なことに巻き込まれる気配がビンビンしていたのだ。
「ともあれ、彼女の正体がわかれば……また違う話もできるでしょうか」
 ファンミーティング的な?
 ルクスは思ったが黙っていた。

「ともあれこのわんこ達をどうにかせねば。|ルクス様《わんこ》の出番ですよ?」
 UDC組織支部に入り込んだステラたちはUDC怪物『混ざり物の猟犬』たちと対峙している。
 此処だけ空気感違うな、と思わないでもない。
 いや、ちょっとさっきから空気感違っているが、まあ問題ない。どうせ元に戻ってしまうことである。
「誰がわんこですか!? 今のは流石にルビ読めましたよ!?」
 言外を読み取る力とでも言うべきか、ルクスは流石に抗議した。
「グッボーイ、ルクス様」
「わしゃわしゃしないでくださいー! ちょっと気持ちいですけど! あとグッガールでしょ!」
「はいはい、ほーらよしよし。今日はいっぱい演奏していいゾ☆」
 なんでこの状況でいちゃつけるのだろう、とUDC職員たちは二人に庇われながら思った。
 さっきからこの二人、真面目なことを何一つしていない。
 でもまあ、助けてくれているのだから突っ込むのは野暮かなって思っていたのだ。
「演奏していんですか! わん♪」

 この変わり身である。
 なんていうか現金というか、目一杯演奏したあとで毒ガス訓練とか始まらないか心配になる展開である。
「いえ、真面目な話どこからでも湧くのならば、全周囲で仕留めるほかありません」
 ステラの瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、全周囲でぶっ飛ばすには歌である。その認識もなんというかわからんでもないのだが、方向性としては間違ってはいやしないかとUDC職員は思ったが突っ込まなかった。
 この非常事態において突っ込んだら負けってこともあるのである。
「確かに、どこからでも湧くなら点より面ですね。それではこちらも無差別に」
 ルクスはいそいそとアンプも使って全力演奏に取り掛からんとする。
「あ、あなた様はこちらを」
 そう言ってステラは耳栓を職員に手渡す。
 なんで?

 まあ、すぐに意味がわかる。
 UDC職員は耳栓すら貫通してくる酷いアレに此処から数日、狂気よりも悩まされることになるのだが、それはまた別の話ってやつである――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
何が目的かは知らないけど迷惑な
UDC組織にはお世話になっているし
職員達を助けるために戦うよ

突入したらガトリングガンの範囲攻撃で
混ざり物の猟犬を撃ちながら移動
立て籠もっている職員達と合流を目指そう

冒涜的な見た目をしているけれど
戦い方は似たような獣やモンスターを見た事あるから
予測して躱す事はできそうだね
接近してきた猟犬はワイヤーで絡めとって対処するよ

職員達と合流できたら
別支部に頼まれてきた救援だと伝えよう
実際普段から手伝っているしね

その後は職員達にも猟犬の攻撃の躱し方を伝えて
一緒に迎撃していこう

援護射撃や制圧射撃を活用して
皆が猟犬と戦う支援をしつつ数を減らすよ
一段落したら脱出経路も相談しておこうか



 謎のオブリビオン『カットスローターズ』が成そうとしているのは蠱毒に寄る邪神たちの共食いである。
 その共食いの果て、最後の一体になった邪神を『持ち帰る』ことを目的とし、その目的が達成されたとに彼らが何をなすのかは判別していない。
「けど、どちらにせよ厄介で面倒なことをするだろうし、迷惑なことでしかないよね」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)はUDC組織が襲撃された一報を受けて駆けつけた猟兵の一人であり、またUDC組織には日頃から世話になっている恩がある。
 職員たちがユーベルコード『縫村委員会』によって封鎖された施設から脱出できないというのならば、彼らを助けるために戦わねばならないと思ったのだ。

 結界である『縫村委員会』は強固そのものであった。
 己の全力の攻撃を叩き込んでも一瞬しか人一人が通れるほどの穴しか生み出せない。
 しかも、内部には封印されていたUDC怪物たちが蔓延っている。
「厄介なものを全部ぶちまけてくれて!」
 晶は突入した支部施設の影にうごめく『混ざり物の猟犬』の姿を認めガトリングガンの引き金を引く。
 放たれた弾丸を縫うようにしながら『混ざり物の猟犬』は晶へと襲いかかるのだ。
 不定形の影めいた姿。
 冒涜的な見た目、と晶は思っただろう。
 けれど、晶は知っている。
 これまで多くのUDC怪物との戦闘経験があるのだ。たとえ、不定形であろうとも、これまでの戦いで培った経験が、庸人の錬磨(ヒューマン・エクスペリエンス)として此処に結実しているのだ。

「グゥルオオオ!!」 
 咆哮とともに迫る爪と牙。
 けれど、晶は冷静んいそれを見つめ、躱す。
 不定形の一撃は確かに厄介だったが、予測はできる。躱すことができないわけではないのだ。そして、この手の猟犬は、猟犬の形を取っているがゆえに罠にかかりやすい。
 張り巡らせたワイヤーに絡みとられた『混ざり物の猟犬』がもがけばもがくほどに不定形の肉体に絡まっていくのだ。
「まったく、此処まで単純だと仕事がやりやすくて助かるよ」
 容赦なく晶はガトリングガンで動きを止められた『混ざり物の猟犬』を打ち抜き、これを制圧する。
 そして、UDC職員たちの姿を探す。
 彼らはまだ抵抗していたことは、支部施設の内部を見ればわかる。

「救援にきたよ。生存者はどれくらい? 負傷者がいれば、メディカルキットもあるかr」
 晶の呼びかけに隔壁の奥から職員たちが這い出してくる。
 彼らはなんとか隔壁に隠れてUDC怪物の襲撃をやり過ごしていたのだろう。
「無事で良かった」
「でも、まだ取り残された職員たちがいるんです」
「わかってる。彼らの安否も気になるし、保護もしなくちゃあならない。一緒に迎撃していこう」
 晶はUDC職員たちが戦闘力を持ち得ぬのならば、と彼らを背にかばいながら施設内部を進んでいく。
 彼ら保護しなければならない対象であるが、猟兵にとっては足かせとも言える存在でもあった。
 けれど、捨て置くことなどできやしない。
 彼らを助けるために己達はやってきたのだ。
「一応、他の猟兵もきているから安心して。一段落……と言いたいところだけど、状況は元凶を倒しても止まらないと思う。少なくとも、この施設を閉鎖しているユーベルコードの主を倒せば、君たちを外に逃すこともできる」
 だから、と晶は希望は捨てないで、とUDC職員たちに告げ、勇気づけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
そこにオブリビオンがいるのなら!壊す!!
回れ、夜剣大蛇!!!

人工魔眼の【第六感】で猟犬共の気配を感じ取り、
メガスラスターで【推力移動】速く移動する事で猟犬の注意を職員から引き、施設壁をプラズマシューズで蹴って【空中機動】転進!
『機械大剣』でドリル剣化した夜剣大蛇を【念動力】高速回転させ、
推力移動の加速を乗せながら混ざり物の猟犬へドリル剣を強引に突き込み引き裂く!!

|UDC《神》を殺せ!!

【呪詛毒使い】機械大剣に呪詛を注ぎ、神殺呪毒大量生成。
傷口を抉りその傷口から呪毒を流し込み念入りに毒殺しつつ、周囲や職員たちが立て籠る場所にも呪毒を振り撒き猟犬の徘徊を抑制させておく。



 謎のオブリビオン『カットスローターズ』が目論むことを朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は知らない。
 いや、たとえ聞いたとしても彼女には関係のないことだった。
 そう、彼女の行動原理はひどく単純であったし、たった一つであった。
「そこにオブリビオンがいるのなら! 壊す!!」
 彼女は手にした己が機械大剣(キャバリアブレイド)をUDC組織支部を封鎖しているユーベルコード『縫村委員会』へと叩きつけた。
 全力の一撃。
 しかし、その一撃を持ってしても封鎖している結界を破壊することはできない。
 それほどまでにこのユーベルコードは強固なのだ。
「人一人分の穴が僅かに一瞬。ですが、それで十分であります!」
 小枝子は全力の一撃によって生じた穴へと身を投じ、猟犬の如く施設内を疾駆する。

 目がスラスターの噴射とプラズマシューズによって壁面を蹴って高速で飛び跳ねるようにしてUDC怪物の気配を感じ取って一気に隔壁をぶち抜いて進む。
 己の為すべきことを為す。
 ただそれだけのために彼女は砕かれた隔壁の先にあるUDC怪物の不定形たる影を見た。
 犠牲になった職員を貪るようにしてうごめく影。
 それを目にした瞬間、小枝子は己の中にある破壊衝動が燃え上がるのを感じただろう。
「回れ、『夜剣大蛇』!!」
 その咆哮と共に小枝子の手にした機械大剣が変容し、螺旋衝角めいた姿へと変貌する。
 念動力によって回転する刃。
 そして、己が駆け抜けてきた推力と共に小枝子は渾身の一撃を『混ざり物の猟犬』へと叩き込む。

 凄まじ衝撃が吹き荒れる。
「|UDC《神》を殺せ!!」
 螺旋の回転を見せる刃が『混ざり物の猟犬』の背をえぐるように削り取り、その悲鳴めいた断末魔を響かせた。
 けれど、小枝子は止まらない。
 振り抜いた螺旋の機械剣から呪詛を注ぎ込む。
 神を殺す呪詛。否、毒である。
 大量に生成されたそれを流し込み、その影の一片たりとも存在を許さぬと言わんばかりに小枝子は『混ざり物の猟犬』を断ち切る。
「……」
 小枝子は『混ざり物の猟犬』が霧散したあとを見やる。
 そこには遺骸しかなかった。
 貪り食われたであろう体躯。
 血潮が床に池のようにとどまっている。無念であったであろうと小枝子は思う。
 けれど、死者を悼む時間すらUDC怪物は与えてはくれない。
 一匹の『混ざり物の猟犬』を打倒しても、更に後から湧き出すようにして敵が集まってきているのだ。

「上等であります」
 小枝子は笑むでもなく、己が手にした機械大剣を掲げる。
 己の背後、隔壁の先にも未だ助かった生命があるだろう。これを狙って『混ざり物の猟犬』たちは集まってきているのだ。
 ならばこそ、小枝子は行かせぬと立ちふさがる。
 周囲に撒き散らす呪毒。
 これを以て敵を己の背、その先へと行かせぬと機械大剣を構える。
「来るがいい。貴様ら|UDC《神》は残らず鏖殺するであります」
 小枝子は、その瞳に輝くユーベルコードと共に、決して破壊されぬ意志と共に迫りくる『混ざり物の猟犬』を打ち倒すべく、力をふるい続けるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
本当に、これだけの施設をよく今まで維持できてたよね
素直に凄いや、火事場泥棒的に色々データとか技術とかパク…成功報酬として貰っていきたいくらいには感心しちゃう

こう建物の内部に出る犬と言えば、鋭角から滲み出るアレを連想するけど…
成程、混じってるだけあってそういう能力持ってるかー…

《RE》IncarnationとBlue Birdを抜刀
【剣技・嵐狼剣】起動
そっちが犬ならこっちは狼じゃい!
白狼に騎乗し支部内を駆けよう
猟犬が出てきたら『斬撃波』を飛ばして牽制、一気に接近して白狼の牙と剣戟で攻撃して倒していこう

職員を見つけたら合流してその近辺の猟犬を排除していこうかな
角があったら出てきそうだし…削っとく?



 UDC怪物を猟兵たちが現れるまで人知れず暗闘によって封印してきたものたち。
 それがUDC組織である。
 その施設の堅牢さは言うまでもないし、封印の精度というものは高いものであったのだろう。
 どうしようもない存在が故に封印しないといけないのだとしても、それができるのとできないのとでは大きな違いがある。
「本当に、これだけの施設をよく今まで維持できてたよね」
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)はユーベルコード『縫村委員会』によって封鎖されていたUDC組織支部施設に足を踏み入れる。
 UDCとはまさしく理解不能なる存在である。
 だからこそ、素直にすごいと彼女は思ったのだ。
 いやまあ、火事場泥棒的に諸々のデータや技術というものを提供してもらってもまわないのではないかと思う。
 いやいやそんなそんな。この事態を解決したからって悪いですよぉ、とかそんな展開にならないかな、と思っちゃうくらいには感心してしまうのだ。

「しかし、UDC怪物ね。こう建物の内部に出る犬と言えば、鋭角からにじみ出るアレを連想するけど……」
 瞬間、玲を襲うのは影であった。
 不定形の影。
 いや、違う。まるで猟犬のような姿。
 交差するように迫る爪と牙を抜刀した模造神器の刀身で受け止める。火花が散って、蒼い刀身が翻る。
 壁面、床、天井。
 鋭い眼光がいくつも玲を睨めつけている。
「なるほど、『混ざり物の猟犬』というだけだって、そういう能力持ってるかー……そっちが犬ならこっちは狼じゃい!」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 刀身に走るプログラム。

 生み出されるは白狼。
 玲は迫る『混ざり物の猟犬』たちに蒼き風を纏う白狼に飛び乗り、その恐るべき立体的な攻勢に退治するのだ。
 牙と牙。
 爪と爪。
 激突し、その蒼い嵐と共に玲は斬撃波を飛ばし、『混ざり物の猟犬』たちを薙ぎ払っていく。
「っとーにしつこい! けど……おっと、あれは職員の人かな?」
「ま、待ってくれ! 俺達は怪物じゃない!」
「うん、見ればわかるけど」
 玲は白狼と共に声を上げる職員の体を拾い上げるようにして白狼の背に乗せて確保し、さらに疾駆する。
 悲鳴が上がる。
 まあ、当然と言えば当然であろう。
 職員たちを次から次に確保しながら玲は白狼と共に施設内部を駆け抜けていく。

「うーん、角があったらでてきそうじゃない?」
 削っとく? と玲は職員たちに示す。
 けれど、職員たちは頷くことしかできなかった。猟兵という生命の埒外。彼女の行動を止められる職員などいないのだ。
「ま、どっちにしたって封鎖されているんだから、進むしかないよね」
 それじゃ、と玲は気を取り直して角という角を削り取りながら迫りくる『混ざり物の猟犬』達を蹴散らし、この絵図を描いたであろう元凶、謎のオブリビオン『カットスローターズ』の元へと駆け抜けていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもーどこのどなたー?
こんなビックリ箱を開けようなんてこまったもんだね!

●鬼ごっこ
●UC『神知』使用
はいはーい、鬼さんこちら~♪
と彼らを【誘惑】しながら【逃げ足】を発揮しよう!
【第六感】で最適と感じるルートを走りながら途中の通路を黒いペンキで塗りつぶすように[神様の影]をどんどんと拡げていこう!
そして行き止まりで…“食べてヨシ!”と彼らじゃなく、影の中で待機していた[餓鬼球]くんに【不意打ち】【捕食】!

さってじゃああとはー…
うわー開けて開けてよー!怪物がそこに!
僕はまだたくさんやりたいことがー!
とか言いながら隔壁をノックしよう!
――あれ?ちょっと?ねえ冗談だってばー!



「んもーどこのどなたー?」
 問いかける言葉に返ってくる答えはない。
 まあ、当然かな、とロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は思っただろう。
 そもそも答えなんて期待もしていなかったのかもしれない。
 このUDC組織支部は、支部とは言え多くのオブジェクト……即ち、邪神を封印した施設だ。UDCはもともと人類の手に余る存在である。
 これを打倒できずともどうにか活動を抑制して封印することができていた時点でUDC組織の優秀さが垣間見えることだろう。
 とは言え、猟兵の登場によって邪神を打ち倒す事が可能になったことは大きい。
 だが。
 このUDC組織使節を持って蠱毒と成し、邪神が最後の一体になるまで相争わせる事態を引き起こしたものがいる。

 ロニの尋ねたどこのどなた、即ち謎のオブリビオン『カットスローターズ』である。
 彼らの張り巡らせた結界『縫村委員会』は強固そのものであった。
 全力の一撃を打ち込んでも人一人の穴が一瞬生まれるばかりである。とは言え、完全性は失われている。封鎖し、何者も侵入させない、何者も逃さないという完璧なユーベルコードは、ここに破綻を見たのだ。
 故に猟兵達は施設に飛び込み、内部にて行われる蠱毒を阻止せんと走るのだ。
「こんなびっくり箱を開けようなんて困ったもんだね!」
 ロニは辟易しているかのように肩を竦める。
 とは言え、これは遊びの範疇であろう。

「おっと、噂をすれば影、というやつだねー。はいはい、こっちこっち。鬼さんこちら~♪」
 ロニの瞳がユーベルコードに輝く。
 己の存在がUDC怪物『混ざり物の猟犬』にとって、何をおいても優先される喰らうべき存在へと誘惑するように彼は施設を走る。
 隔壁が全て落ちてはいるが、ところどころこじ開けられていたり、ぶち抜かれている。
 ルートは頭に叩き込んでいても無意味だ。
 だからこそ、ロニは走る。
 己の直感を信じてひたすらに走り込む。
 迫る『混ざり物の猟犬』たちは交差し、天井、床、壁、あらゆる角度を交差させるようにしてロニへと牙と爪とを叩き込もうとする。

 その全てをロニは第六感で躱しながら、通路の全てを影で塗りつぶす。
 都合、床にしか塗りつぶすことはできなかったけれど。
「食べてヨシ!」
 その言葉と共に影から飛び出すのは無数の球体たち。
 不意打ちの一撃が『混ざり物の猟犬』達を飲み込む。内部で暴れているのだろう。球体がいびつに跳ね、その内側を傷つけていく。
「うん、ちょっと時間はかかるけれどしっかり消化できそうだね。さって、じゃあ、後はー……」
 ロニは隔壁を前にしていたずらを思いつく。
「うわー開けて開けてよー! 怪物がそこに! 僕はまだたくさんやりたいことがー!」
 隔壁を叩く。
 どんどんと拳で叩きつける迫真の演技。
 隔壁の向こうで悲鳴が上がる。
 あ、やりすぎたな、とロニは思った。確実にトラウマを職員たちに植え付けてしまった。冗談が過ぎれば、こんなことになるんだな、とロニは一人納得する。
 悲鳴がプツリ、と消える。
「――あれ?」
 ロニは慌てる。
 隔壁を無理やりこじ開けてしまえば、そこにいたのは気絶して倒れ込んでいるUDC職員たちの姿がった。
「ちょっと? ねえ冗談だってばー! これじゃ、ボクがやらかしたみたいじゃない! え、本当に起きて? えー!?」
 ロニは職員たちの頬を叩く。
 けれど、彼らは昏倒しっぱなしである。
 確実にやりすぎたやつである。
 彼らを保護しなければならないのだが、ロニはどうしようかな、と首を傾げ、まあ、生きているのならばいっか、とあっけらかんと笑うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『カットスローターズ』

POW   :    断裁ディバイダー
【カッターナイフ】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
SPD   :    疾風ダンスマカブル
【高速ステップ】で敵の間合いに踏み込み、【斬撃力を備えた衝撃波】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
WIZ   :    九死カットスロート
自身の【瞳】が輝く間、【カッターナイフ】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。

イラスト:みやこなぎ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちがUDC組織支部施設の中にて多くのUDC職員たちを救う中、一つの影が動き出す。
「あれが六番目の猟兵ってやつか。せっかく贄として用意した連中をあんなにもまあ助けてしまって」
『切宮君、きっと彼らは職員の人たちを見捨てないでしょうね。いえ、見捨てられない、というのが正しいのかもしれません。なら』
 少年はカッターナイフを弄びながら頷く。
 どこからか聞こえる少女の声に同意するようだったが、しかし、彼は笑う。
「そんなことは些細なことだよ。連中が足かせめいた贄の連中を守ろうが、守らまいが、どっちだっていい。この蠱毒の儀式は邪魔させない。どうせ、俺達には善性も悪性もない。眼の前にいるってだけで殺す理由になるんだから」
『そうですね。どっちみち殺すことには代わりないんですから、贄として消費されるか、足手まといとして六番目の猟兵に守られながら足を引っ張りながらまとめて死ぬかの違いでしかないですものね』
「そういうことだ。なら、俺達は殺すだけだ」
『邪神たちの戦いも佳境ですね。というか、一人勝ち状態ですけど』
 彼らの視線の先にあるのは、一人の白い少女。
 それが彼が本命と目していた邪神の一柱である。
 彼女は佇むだけだ。
 けれど、それでも周囲にうごめく邪神たちの戦いは収束していく。吹き荒れる風、迸る雷、迫る炎、あらゆるものを凍結させる氷、どんなものも、彼女を傷つけるには値しなかった。

 しかし、その恐るべき余波は、この場にあって謎のオブリビオン『カットスローターズ』をも巻き込みながら吹き荒れる。
「どんな状況だろうが、どんな相手だろうが殺す。まあ、そういうわけだ、六番目の猟兵。俺の、俺達の殺人技巧を見るといい。いやまあ、大したことじゃないから、そんなに意識しなくってもいいぜ」
『はい、どの道殺しますから。それじゃあ、皆さん』
 二人の声が重なる。
 この闇堕ちゲームの終焉を見届けろ――。
村崎・ゆかり
『切宮』? 『縫村』? まあどっちでもいいか。
あなたたち第二の猟兵『アーカイブ』のお膝元で、こんな騒ぎ起こしていいの? ねぐらがばれるわよ?
まあいい。あたしが心配する義理じゃないし。

眷属召喚+羅睺召喚を継続。『鎧装豪腕』をはべらせて。
アヤメ、羅睺、ゆりゆり、頼りにしてるわよ。

殺人技巧、ね。あいにく猟兵は生命の埒外なの。そしてこの子たちも人じゃない。
それだけじゃないわよ。幽世千代紙で四足獣型式神を量産。「式神使い」で操りながら、部屋を埋め尽くさんばかりに増殖させる。
ゆりゆりは蛇から針剣ブレス、アヤメはクナイで、“カットスローターズ”を狙って。羅睺は火炎放射器であれに食いついた式ごと焼いちゃって。



 吹き荒れる超常。
 UDC組織支部の施設の中での蠱毒。
 邪神たちの力はとめどなく溢れ、しかし、その中心に座す白い少女は一切の影響を受けていないようだった。
 恐るべきことである。
 彼女はどんな攻勢も意に介さない。
 それどころか邪神たちに積極的に介入することもしない。
 ただ、望みのままに。望まれるままに立っているだけだった。だが、それこそが謎のオブリビオン『カットスローターズ』の目的だった。
「やっぱりアイツだな」
『ええ、切宮君。ですが、六番目の猟兵が来ましたよ』
 少年の姿をしたオブリビオン『カットスローターズ』は、もう一つ響く少女の声に頷く。

「遠路はるばるご苦労さま、といえばいいのかな。まあ、ゆっくりしていけよ」
『ええ、私のユーベルコード『縫村委員会』をこじ開けて入ってくるなんて、生命の埒外にもほどがありますけれど』
 でも、死ね、と彼らの瞳がユーベルコードに輝くのを村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は見ただろう。
 そして、己に迫る斬撃波。
 恐るべき速度。
 ステップを踏むように一歩を踏み出すだけで、ゆかりの間合いへと『カットスローターズ』は迫る。

 手にしたカッターナイフが閃き、ゆかりの『鎧装豪腕』を一閃のもとに切り裂く。いや、寸断している、と言ったほうが正しいだろうか。
「あなたたち、第二の猟兵『アーカイブ』のお膝元で、こんな騒ぎを興していいの? ねぐらがばれるわよ?」
「心配痛み入るが、まあ、いいんじゃねーの? どっちみち、俺達が邪神の最後の一体を手に入れれば、多分無敵なんだからさ」
『そうです。蠱毒の如き惨禍を生き残った邪神さえ『持ち帰る』ことができれば、それでチャラになりますよ、きっと』
「まあ、あたしが心配する義理じゃあなかったというわけね」
 ゆかりは寸断された『鎧装豪腕』を捨て、後退する。
 そして、彼女を護るようにしてエルフのクノイチ『アヤメ』と全てを蕩かすリリスの女王『ゆりゆり』が出現し、迫る『カットスローターズ』の一撃を防ぐのだ。

 だが、その守りさえも『カットスローターズ』は寸断する。
 一瞬に踏み込み、一瞬で切り裂く。
 眼の前に何人いようと関係なかった。
「殺人技巧、ね」
「ああ、俺はあらゆる物を切断する。殺したいから切断するのか、切断死体から殺すのか判別はついちゃいないが、まあ、どっちだっていいだろ」
『殺すことには代わりありませんものね』
 崩れ落ちる体躯。
 しかし、ゆかりはユーベルコードの輝きを放ち、千代紙を掲げる。
 生み出されるのは四足獣型の式神の群れであった。
 わずかに稼がれた時間。
 その時間の中にあってゆかりは、己が持てる力でもって式神を増殖させ、室内を埋め尽くす。
 如何にあらゆるものを切断する能力を有していたとしても、『カットスローターズ』の斬撃には限りがある。
 であればこそ、ゆかりは物量で持ってこれを圧殺すると決めたのだ。

 吹き荒れる邪神たちの戦いの余波。
 それらが式神たちを吹き飛ばし、焼き滅ぼして尚、『カットスローターズ』たちを留める。
「『ゆりゆり』は蛇から針剣ブレスを!『アヤメ』はクナイで!」
 ゆかりの言葉に寸断されたはずの式神たちが立ち上がり、増殖する式神たちと合わせて『カットスローターズ』に殺到する。
「おいおい、殺したはずだろ。そんなのずるいぜ」
『式神だから召喚すればリスポーンするとかそういう話ですかね? なんて無法』
「そういうことよ。あいにくと猟兵は生命の埒外、そして、この子たちも人じゃない」
 ゆかりは、己の式神が操る炎を持って千代紙でもって編まれた式神たち事『カットスローターズ』へと炎を噴出させる。

 凄まじい炎。
 それらが渦となって『カットスローターズ』を呑み込んでいく。
 なまじ千代紙で出来た式神であるがゆえに、これを防ぐ手立てはない。ゆかりは、炎でもって彼らを押し止める。
 加えて、迫る邪神たちの戦いの余波を彼女は警戒し、攻めあぐねるしかなかった。
「まったく厄介極まりない連中ね」
 ゆかりは、歯噛みしながらも、しかし『カットスローターズ』を逃さぬと己が式神と合わせた力でもって押し止めるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

馬県・義透
引き続き『疾き者』にて

陰海月、霹靂。引き続き守りを任せますからね。
UCを使用。これで、余波も何も関係なくしましてー。

なれば、殺人技巧の腕比べといきましょうか。元はといえば、私も忍びですし。
ええ、善性も悪性もなく、ただ眼の前に獲物がいるなら…殺すでしょう?
漆黒風を風属性つきで投擲したり、握り込んだものを突き出したり。
相手からの攻撃なんて、避けることは考えませんよ。正真正銘、殺し合いなんですから。
まあ、私が受けることで、周りの被害を減らすのもありますけどね。


陰海月と霹靂、海色&雷結界張っての防衛!
こここ、こわいー!でも、頑張らなきゃ!なぷきゅクエ。



 吹き荒れる邪神同士の戦い。
 炎と雷、氷、風、あらゆる要素が入り混じり、その余波は凄まじいものであった。
「『陰海月』、『霹靂』。引き続き職員の方々の守りを任せますからね」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)は、保護したUDC職員たちの保護を二匹に任せる。とは言え、邪神同士の戦いである。
 その余波は凄まじいものであるし、加えて猟兵と『カットスローターズ』との戦いの余波もある。
 彼らを放置できぬと保護したまま連れてきたのは失敗だったかもしれない。
 けれど、彼らをあの場においていけばいつまた低級UDC怪物に襲われるともしれない。
 となれば、彼らを連れて行く他なかったのだ。

「ハハッ、護るものが多くて難儀しているな! まったく大したもんだぜ!」
『でも、私達にとっては幸いですよね』
『カットスローターズ』たちの声が響く。
 人を守って戦う存在に対する嘲笑がそこにはあった。
 見捨てれば自由に戦えるというのに、それをしない。それどころか、そうすることを望んでいる節さえあるさまを見て、彼らは笑ったのだ。
「そうでしょうね。ですが、因果はめぐりて回る。どこまでも」
『疾き者』は己たちの呪詛でもって身を覆う。
 迫りくる余波も、吹き荒れる炎の中から現れる『カットスローターズ』も、自身には関係なかった。
「にてるな、アンタたち。俺達と。でもま、数の問題じゃあないんだよな、これが!」
『質の話ですよね。執念深さっていう点では頷けるところもあるんですけど』
『カットスローターズ』が振るうカッターナイフは、凄まじい斬撃となって『疾き者』へと襲いかかる。

 躱しようがない。
 防ぎようがない。
『カットスローターズ』の斬撃は、いずれもが脅威であった。
 寸断される。
 腕が、足が、胴が、首が。
 あらゆる人体を切断せしめるカッターナイフの斬撃。
「はっ、やっぱり死にやしないか。一体どれだけの恨みつらみを溜め込めばそうなるんだろうなぁ!」
『怨念だけで存在しているんですから、仕方ないですよね。どうしたって、殺しきれないのかもしれませんが、でも殺しきれないって言われると執念で殺したくなるんですよね!』
 加速してく斬撃。
 血潮が飛ぶのは、『カットスローターズ』が己の体躯を傷つけているからだろう。
 自傷行為。
 それをしなければ保てない攻勢なのだ。
 故に『疾き者』は全ての攻撃を受け止める。
 己が受けた攻撃全てに比例した戦闘力を増強し、生命力を吸収していくのだ。

「ええ、私には善性も悪性もなく。ただ眼の前に獲物がいるから……殺すでしょう?」
「いいや! 別に理由なんて大したものはないぜ! 獲物なんていう感覚もない。ただ、そこにいた、っていうだけさ。常に俺達は殺人衝動に苛まれているんだからな」
『そうするのが自然というだけですよ? 考えるだけ無駄だと思いません?」
「でしょうね」
 これは殺し合いだ。
 そこに大義もなければ正義もない。
 眼の前の生命を殺さずにはいられない、ただそれだけのために振るわれる力なのだ。

 互いの一撃が叩き込まれ続ける。
 まるで交互に己が手を見せるかのように打ち込まれ続ける戦いは、まるで千日手のようでもあったことだろう。
 されど、『疾き者』は己が敵の面に立つことで余波を引き付けるためだけに戦うのだ。
 それは『カットスローターズ』になく、彼らにある理由であったことだろう。
 単純な一つは強固であろうが、しかし、ただ一つでしかない。 
 故に、もう一つの理由を持つ『疾き者』たちこそが、倒れぬ力を示すように、ユーベルコードの輝きを解き放つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

紺郷・文目
……必死に生き抜く人の子達を愚弄するか。
元々容赦などするつもりはなかったが、ここで……その企みごと撃ち抜いてみせる。(かなりキレてる竜神様。職員さん達を足でまとい扱いされたのがきた様子)

【結界術】にて職員達を保護しつつ、私は引き続き【天候操作】。【雨の礫】を敵に向ける。雨の弾丸で敵の動きを制限。視界も不良にして狙いを定めづらくする。
しかしそれでも飛び込んでくるようであれば七支刀で【受け流し】カッターナイフの攻撃をそらす。職員達の方向に行きそうならこの身で防ぐ。

人の子達は傷つけさせない。
お前達にも、邪神達にも。



 殺す理由は、そこにいただけ。
 たったそれだけで殺す理由になるのだというように謎のオブリビオン『カットスローターズ』は笑う。
 そう、生命を奪うのに良心の呵責など要らない。
 なぜなら『カットスローターズ』たちの殺人衝動は、そんなものを何処かに置き去りにしてきているからだ。
 深い、深い、闇の奥底にまで人の善性は届かないのかもしれない。
 故に彼らは殺す。
 息をするように、瞬きをするように。
 そうせざるをえないし、そうでなくても殺したいと思うから殺すと言って手にしたカッターナイフを振るうのだ。
「必死に生きる人の子達を愚弄するか」
 紺郷・文目(癒し雨の竜・f39664)の怒りに満ちた言葉に『カットスローターズ』は首を傾げた。

「俺だって必死に生きているとは言えないか? まあ、人を殺さずにはいられないから殺しているっていうのは、他人からすればはた迷惑だってことはわかっているけれど」
『嘘つきですね、切宮君。どうせそんなこと思ってもいないでしょう』
「あ、わかる? まあ、どっちにしたってやることは変わらないんだ。やろうぜ、『縫村』」
『はい、邪神が最後の一柱になるまで、がんばりましょう。いっぱい殺さないといけないですしね』
 その言葉に文目は己の中の何かが音を立てるのを感じただろう。
 心に亀裂が走ったとも言えるし、何か緒のようなものが切れるようでもあった。
「もともと容赦するつもりはなかったが、ここで……その企み事撃ち抜いてみせる」
 文目は怒り心頭であった。
 人の子、UDC職員たちは懸命だった。
 多くの犠牲を払いながらも邪神達の脅威が他者に及ばぬようにと必死だったのだ。

 それを足蹴にした挙げ句、足手まといの汗枷とまで言い放ったのだ。
 どうしても許せない。
 結界術を張り巡らせ、文目は己の背後にUDC職員たちをかばう。
「おいおい、室内なのにどうして雨が降るんだ?」
『あの六番目の猟兵の仕業でしょう。私のユーベルコード内部でも、こんな力を放つなんて!』
「許しておけるものではない。懸命に生きる生命を足蹴にしていい理由など何処にもないのだ。それを」
 激昂する文目へと『カットスローターズ』は一瞬にして踏み込む。
 凄まじい踏み込みの速度だった。

 まるで瞬間移動したかのような踏み込み文目は呻く。
 だが、手にした七支刀でもってカッターナイフの斬撃を受け流しながら、斬撃をそらす。しかし、そのそらした斬撃は文目の頬を切り裂く。
 鮮血が舞い散る。
 受け流したはずなのに、どうして、と疑問に思うより早くカッターナイフが一度、二度、三度と絶え間なく翻る。
「ハハハッ、どうしたよ。威勢がよかったのは最初だけじゃあないか。ハデに雨なんか降らしちゃってさ、それがどうしたっていうのさ!」
『何かされるまえに切断してしまえばいい。それだけのことです』
『カットスローターズ』の斬撃は鋭いものだった。
 受け流したつもりでも、受け流した先で斬撃の軌道が変わって文目の手足を斬りつけるのだ。

 痛みと共に血潮があふれる。
 けれど、UDC職員たちが結界から何事かを言っているのが聞こえる。
 己を案ずる言葉であった。
 文目は、振り返ることなく僅かに笑む。
 己たちも危険にさらされているのに、それでも己が身を案じてくれるのか、と。
 それは嘗て失ったであろう信仰にも似た感情のエネルギーであった。
 いつだってそうだ。
 誰かを助ける時、誰かが己を助けてくれる。
 ならばこそ、文目の瞳はユーベルコードに輝く。
「人の子達は傷つけさせない。お前たちにも、邪神たちにも」
「言うだけならタダだよな!」
『できないことをやる、というから痛い目に遭うんですよ?』
 彼らの言葉を文目は聞き流した。

 どんなに言葉を弄するのだとしても、今の彼には関係ない。
 天候操作で室内に降り注いだ雨が天井に張り付くようにして水滴へと変わる。
 瞬間、彼のユーベルコードが発露する。
「強き雨よ、敵を穿ちなさい」
 激化された天井の雨粒が一瞬して降り注ぐ。
 雨のさなか、一粒も雨粒に濡れることなく走り抜ける事のできるものがいないように。どれだけ凄まじい速度で踏み込む事のできる技量があるのだとしても。
「雨の礫(アメノツブテ)は逃さない」
 弾丸となった雨が『カットスローターズ』の体躯を貫いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
今回も真剣口調だよ

過去の記憶をはっきり思い出してきて、カットスローターと縫村について妙に知っている風に話すよ

久しぶりね、カットスローター
いや…|切宮《きりみや》・|顕嗣《あきつぐ》の方がよかった?
縫村は…姿無し、か
|グラン・ギニョール《マンチェスター・ハンマーとパラベラム・バレット》といい、セイメイといい、誰かにとり憑くのが流行ってるの?

【第六感/野生の勘/戦闘知識】で邪神たちの攻撃の余波を避けつつ、目の前の敵に集中するよ

UCは「ワタシのソロモンの悪魔変身」
物理攻撃無効のこの姿なら斬り殺される事は無いはず
稲妻の魔法とドスソードによる斬撃で攻撃するね



 雨の礫が謎のオブリビオン『カットスローターズ』の体躯を貫く。
 鮮血が身を汚す。
 けれど、彼は笑っていた。
 痛みよりも喜びが勝っていた。
 替刃を返るようにカッターナイフを取り出し、握りしめる。
「痛ってぇなぁ! くっそ、なんてことしやがる!」
『そう言いながら笑ってますよ、切宮君。ちゃんとしてください』
「おっと、悪い。でもさ、楽しいよ。殺したいのと切りつけたいのと、どっちも俺の心にある。喜ばしいことじゃあないか? そういうものじゃないか?」
『カットスローターズ』は何処からともなく響く少女の声に応えた。

 手にしたカッターナイフの刃をペキペキと折る。
 切れ味が落ちたから、という理由だったし、別にする必要のない行為であったけれど、なんとなくしていた。
「ひさしぶりね、『カットスローター』」
「『カットスローターズ』な。間違えるなよ。失礼なやつだな。なあ、縫村」
『沸点がまるでわかりませんよ』
 彼らの視線の先にいたのは神妙な面持ちのクローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)がいた。
 彼女の瞳に『カットスローターズ』は笑って首を傾げる。
「いや……|切宮《きりみや》・|顕嗣《あきつぐ》のほうがよかった? 縫村は、その中にいるの?」
 彼女の言葉に『カットスローターズ』は手にしたカッターナイフを弄びながら笑う。

「些細なことじゃあないか? 俺達オブリビオンだぜ? 過去の化身。過去の体積に歪んで滲み出た存在だぜ? そりゃあ名前の一つや二つも歪むだろうさ」
『そういうことを言っているわけじゃあないみたいですよ』
「|グラン・ギニョール《マンチェスター・ハンマートパラベラム・バレット》といい、セイメイといい、誰かに取り憑くのが流行ってるの?」
 クローネが紡ぐ言葉よりも疾く、『カットスローターズ』は踏み込んでいた。
 異様なステップ。
 踏み込みが早いとか、そんなレベルではない。
 気がついたら踏み込まれていた、というのが正しいだろう。
 放たれるカッターナイフの一撃がクローネの体躯を斬りつける。

 如何に周囲に似て巻き起こる邪神たちの戦いの余波を躱すことができても、クローネは『カットスローターズ』の一撃をかわせなかった。
「おっと、なんか変な手応え」
『あの人、物理無効状態みたいですよ? ずるくないです?』
「ワタシのソロモンの悪魔変身(ブラック・ソロモン・デビル・メタモルフォーゼ)ね。この姿なら、あなたに斬り殺されることはないわよ」
 その言葉に『カットスローターズ』は辟易した顔になる。
 やってられないと言わんばかりであった。

「なんだよそれ、つまんねーの。ていうか、むしろそれって決め手に欠けるってことじゃねーの?」
『電撃程度で死ねるわけないですし、その程度で私達の執着が終わるわけないじゃあないですか』
 クローネはでしょうね、とつぶやく。
 何か知っているのだろう。
 過去の記憶が鮮明になってきている。
『カットスローターズ』、その内に存在する『縫村』と呼ばれる少女のことも彼女は詳細を承知しているのだろう。
 故に手にしたドスソードを振るう。
 打ち合うカッターナイフ。
 本来ならば打ち合うことすらできないはずだ。けれど、『カットスローターズ』はそれを為している。
 クローネは、それでも稲妻をほとばしらせ、火花散る戦いを邪神たちの戦いの余波渦巻く中にて行うのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明星・ぐれん
ぺらぺら喋る殺人鬼なんてB級映画のやられ役みたいじゃぞ?
ここから先は竜神vs怪物のパニック映画じゃ!
殺人鬼にはさっさとご退場願おうか!

相手はナイフで切り裂いてくるようじゃな
それじゃあUCで距離を取って牽制していこうか
少しでも掠れば消えない魔炎で削っていくことも出来るしの
さあ燃えろ燃えろ!

とはいっても、まったく接近されんとは思っておらん
いずれ距離を詰められる時もあるだろう
体勢を崩さんように支えになるものは常に意識しておこうかの
そうして追い込まれても……肌を晒しUCの威力を上げれば良い!
あ、肌の出る部分は鱗で覆っておくぞ
これも立派な我の素肌じゃ

接近されたなら尚更強い炎で焼くことが出来る
燃え落ちろ!



「まったくよー六番目の猟兵っていうのは、こんなのばかりなのかよ。まったくもって法則性すらないじゃないか」
『生命の埒外ということでしょうね。本当に厄介です。ですが、私達だって執着には一家言ありますよ』
「だよな。こんなところで立ち止まってはいられないからな」
『ええ、最後の一体、邪神を『持ち帰る』までは、この場にとどまらないといけませんから』
 猟兵たちの攻勢を受けて『カットスローターズ』は逃げることなく、攻撃をいなし続けていた。
 驚異的なことである。
 猟兵たちが弱いわけではない。
 だというのに『カットスローターズ』は今も尚、この場にとどまり続けている。

「ぺらぺら喋る殺人鬼なんてB級映画のやられ役みたいじゃぞ?」
 明星・ぐれん(旭日昇天・f40405)は、邪神たち同士の戦いの余波の中を涼し気な顔で歩く。
 眼の前には『カットスローターズ』。
 まるで街中で知り合いにであったカのような気軽さ、気安さだった。
「あいにくと間違っちゃあいないんだよな」
『悲しいことですけどね、なんて、納得している場合じゃあないでしょう!』
「愉快なことじゃ。ここから先は竜神VS怪物のパニック映画じゃ! 殺人鬼にはさっさとご退場願おうか!」
 ぐれんは踏み込む。
 同時に『カットスローターズ』も踏み込んでいた。
 獲物はただ一つ。
 カッターナイフだけだ。

 しかし、そのナイフはただのカッターナイフではない。
 触れたものを切断する力を持つユーベルコード。あらゆるものを切断しなければならないと思っている『カットスローターズ』にっては、これ以上の獲物はない。
 放たれる一閃にぐれんは、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
「距離を取ろうなんて釣れねぇことするなよ!」
『カッターナイフ使っているから距離を取られるんですよ。きます!』
 ぐれんの放つ不死鳥のオーラが『カットスローターズ』を襲う。
 k住めただけで消えぬ魔炎が彼の体を包み込む。
「これ、消えないのかよ!」
『スリップダメージというやつですね!』
「さあ、燃えろ燃えろ!」
 ぐれんは、フェニックスキャノンを打ち込み続ける。

 敵は接近戦をしたいのだろうが、そうはいかない。
 距離をつめられる前に傷を与え続けなければならないのだ。
 だが、『カットスローターズ』は異様に踏み込みが早い。一瞬で距離を詰められる。魔炎に包まれながらも凄絶に笑う『カットスローターズ』は手にしたカッターナイフを振るう。
 斬撃がぐれんの肌を切り裂――かない。
 甲高い音を立ててカッターナイフの刃が折れた。
「あ?」
『切宮くん! あれ、鱗ですよ!』
「フハハ! 我が身は竜神なるぞ。龍鱗の頑強さを知るがいい。そんでもって!」
 ぐれんは大胆に切りつけられた己の着衣を引き裂く。
 すると現れるは素肌覆う鱗。だが、これは彼女にとって素肌と同義。
 故に彼女のユーベルコードが再燃する。

「まだ熱が上がるのかよ!」
『鱗で覆っていても肌って言い張るのずるくありません!?』
「問答無用じゃ。燃え落ちろ!」
 ぐれんの言葉と共に膨れ上がる不死鳥のオーラが接近した『カットスローターズ』を取り込むようにして立ち上り、UDC施設の天井をぶち抜き、煌々とした火柱を立ち上らせるのであった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼノン・サイネスト
職員の守りは他の者に任せよう
…其方が衝動に任せて殺すだけというのなら、自分は守る為に殺すだけだ

序盤は接近戦は極力避け、間合いを取るようにダッシュで足を止めず、
敵が向かってきたらビームウィップで前方を払うように攻撃
敵の回避方向をサイバーアイと瞬間思考で予測して、移動先にクナイで投擲攻撃

凄まじい殺人技巧。
…この者は自分よりも早くて強い。
ならば、紙一重かもしれないが一計を案じるか

閃光弾を仕込んだクナイを投擲
一瞬でも視界を奪った瞬間にUCで分身を出現、
自分は気配を殺しながら、敵の視界外に移動。
敵が分身を攻撃する瞬間の隙を突くように、
敵身体を切断する勢いで赤光で斬る。
以降は分身を盾にしつつ反撃に転じよう



 立ち上る炎がUDC組織支部の施設の天井をぶち抜く。
 それほどの火力を持って放たれた猟兵のユーベルコードを受けて尚、謎のオブリビオン『カットスローターズ』は存在していた。
 身を焼かれ、ボロボロになりながらも、しかし笑うのだ。
「あっつ! ちょっと焼けてね?」
『ちょっとどころじゃないですよ、切宮君。がっつり燃えてます』
「あーもー、一張羅なのに。どこかでまた調達しないとじゃねーか」
『次は手芸店を襲撃しましょうね。私が繕ってあげましょう』
 そんなやり取りを姿の見えぬ少女の声と躱す少年は、屈託ない笑顔を浮かべていた。

 これだけのことをしておきながら、彼は笑っているのだ。
 悍ましきことである。
 故に打倒しなければならない。
 そんな笑顔を浮かべることが出来ても、人を殺す事をやめられない。それが『カットスローターズ』であった。
「……其方が衝動に任せて殺すというのなら、自分は護るために殺すだけだ」
 ゼノン・サイネスト(赤き残光・f36685)の言葉に『カットスローターズ』は首をかしげた。
「殺すのは自分のためだろ。他人のために殺すなんて不思議なことを言うやつだ」
『しかも護るために、だなんて』
「問答をするつもりはない」
 ゼノンは踏み込む。
 互いの踏み込みの速度は、圧倒的に『カットスローターズ』に軍配が上がる。
 独特なステップ。
 単純なものであるというのに初動がまったく目で追えない。
 放たれる斬撃。
 ただのカッターナイフであるというのに、触れたものを容易く寸断してみせるのだ。放ったビームウィップすらもカッターナイフが切断してみせたのだ。

「おいおい、忍者だよ、忍者! 嘘だろ、お前!」
『忍者いいじゃないですか。何びっくりしているんですか』
 調子が狂う。
 だが、それでも振るわれる斬撃、その殺人技巧は凄まじいの一言であった。
 己よりも疾く、強い。
 迫る斬撃をサイバー愛と瞬間思考で予測してやっと致命傷を避けることができる程度であった。
 クナイを投げはなっても、こちらの演算を上回る速度で踏み込んでくるのだ。
 故にゼノンは追い込まれていく。
 単純なことだ。
 敵の実力が自分より上なだけ。

 それはともすれば、いつものことだった。
 オブリビオンの個としての力は猟兵を上回っている。だというのに、数々の強敵を猟兵達は打ち倒してきた。
 それはなぜか。
 簡単な話だ。共に戦ってきたからだ。紡ぎ、つなげ、敵を逃さず、攻撃を叩き込んでいく。紡ぐように戦うのだからこそ、敵を逃さぬ網目となって打倒するのだ。
「どうしたよ。もう品切れか」
『手品にも種がありますからね。仕方ないですよね」
 ゼノンは応えない。
 放ったクナイが閃光を放つ。
 仕込んだ閃光弾が起爆したのだ。強烈な輝きによって視界が塗りつぶされる。瞬間、ゼノンはユーベルコードを発露する。

 己の分身を召喚し、走らせる。
 気配を消す。
 敵は視認した物を殺そうとするだろう。そういう連中なのだ。息をするように殺す。目があった、眼の前にいた、ただそれだけの理由で殺そうとする。
 ならばこそ、その瞳は対象を正しく認識しない。 
 ゼノンの分身と見分けなどつかないだろう。
 故に『カットスローターズ』はゼノンの目論見通りにカゲブンシン・スティールによって召喚された己の分身へと一撃を叩き込む。
 切断される分身の首。
 防御力に優れている分身ですら一瞬で両断してみせる恐るべき力。

 だが、彼の一計は紙一重の賭けながら勝ったのだ。
「一計案じた結果だ、これが」
 踏み込む。
 敵は間に合わない。どれだけ速かろうが、一手の遅れは致命的だった。ゼノンのふるったフォトセイバーの赤い残光が『カットスローターズ』の体躯へと刻み込まれた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
貴様らか…乱痴気騒ぎしてそれをSNSにアーカイブしようってリア充共は…

二つの心が一つになれば!リア充を惨たらしく殺す!【流体金属】君と合体!!これが拙者のハンサム形態だァ!余波程度ならどうとでもなる鋼鉄の身体でござるよ
後は鉄拳で貴様を殴るだけなので大人しく受け入れて欲しい

お前らもしかしてまだ自分が殺す側とでも思ってるんじゃないかね?|笑止《ウケ》る
カッターナイフ程度が鉄の身体を抜けるかなァ?もし壊されてもいくらでも|直せ《流体化しくっつけ》ばいいんでござるよ
顔面パンチだ!貴様らが!死ぬまで殴るのをやめないッ!!

|カットスローターズ《リア充共》
ブッ殺した

後は面白そうな邪神ができるといいでござるね



 赤い残光は『カットスローターズ』の体躯に刻まれる。
 鮮血が迸る。
 痛みにあえぐように声を上げる『カットスローターズ』はしかし、倒れなかった。
「あーくそ! まんまと罠に掛かった感じじゃん! はっず!」
『切宮君は、ちょっと目の前のことに集中し過ぎですよね。視野狭窄?』
 見えぬ少女の声に『カットスローターズ』は肩を竦める。
 傷口は傷むが、それでもなお霧散しないところを見るに、いまだ余力があるのだろう。
 カッターナイフを揺らしながら彼は傷口をなぞる。
「めっちゃ深いじゃん!」
『そりゃそうでしょうよ』

 そんなやり取りを聞いて、エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)は憤慨した。
 許せねぇ。
 許されるわけがねぇ。
「貴様らか……乱痴気騒ぎして、それをSNSにアーカイブしようってリア充共は……」
「おっさん、だいじょうぶ? 体震えてんぞ?」
『このひと六番目の猟兵ですよ。え、本当に?』
「ええい、心配するな。陽キャが見せるたまにの優しさにキュンとしてしまうだろうが! というわけで、拙者の体を貴様に貸すぞ! オウガメタル君!!」
 唐突なユーベルコードに『カットスローターズ』は、うおまぶし、と目をつむる。
 目をつむるんじゃあない! とエドゥアルトは思った。
 これじゃあ、こっちがなんか、こうなんかじゃん!

「二つの心が一つになれば! リア充を惨たらしく殺す! 流体金属合体!! これが拙者のハンサム形態だァ!!」
 メタル黒髭の爆誕である。
 はっきり言って、なんかこう、黒光りするせいか、人間やめてる感じがしてならない。
 具体的に言うなら、劇場版のラストに登場してなんやかんやいい感じのことを言う雰囲気である。
 確かにイケメンっぽい雰囲気がある。
「でも、テラテラしてね?」
『流体金属って言っていましたし』
「ええい、いちいちイチャつくない! というわけで、受けろ拙者の鉄拳制裁を! 殴るだけ! 殴るだけなので、大人しく受け入れて欲しい!」
「さきっぽだけだから、みたいに言われてもなぁ」
『いねぇよなぁ!? みたいな感じで言われるとちょっとイケメンかもって思いました。あ、ヒゲは剃ってもらえます?』
 いいたい放題である。

「というか、お前らもしかして自分がまだ殺す側とでも思ってるんじゃあないかね? |笑止《ウケ》る」
 エドゥアルトは、ぷすーと笑いをこらえていた。
 振るわれたカッターナイフの斬撃はあまりにも自然であったし、ナチュラルであった。シームレスであったし、スムースであった。
 さっくり寸断されれるエドゥアルトの首。
 墜ちた、墜ちた、黒髭墜ちた。
「おっと、! カッターナイフ程度の斬撃、いくらぶった切られても|直せ《流体化してくっつけ》ばいいんでござるよ!」
「うわ、どっかで見た感じのやつ!」
『具体名を出したら怒られるやつですよ!』
「ええい、勝てばよかろうなのだ! 顔面パンチ!」
 おらぁ! とエドゥアルトは問答無用にパンチを繰り出す。
 そのたびにカッターナイフが翻り、これを切断するのだ。

 だが、エドゥアルトのい言うとおりである。
 物理無効の流体金属合体。
 これによってエドゥアルトは、『カットスローターズ』の斬撃を受けてもすぐさま直してしまうのだ。
「貴様らが! 死ぬまで殴るのをやめないッ!!」
「物理無効はずるいだろ!」
『髭は嫌ですー!』
「オラオラ、ダンディな髭もいいって思うまで、やめねぇからなぁ!」
 エドゥアルトは十代の幼気な少年少女の絡みまくる親戚の厄介叔父さんムーヴで、しつこく『カットスローターズ』を追い詰めていくのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルメリー・マレフィカールム
……あなたの目的が、どんなものかは分からないけど……。
……それでも、職員の人たちは殺させない。あなたと邪神を斃して、皆を無事に脱出させる。

職員の人には巻き込まれないよう離れていて貰う。けど、それだけだと危ないかも。
だから【走馬灯視】で周りとカットスローターズの動きを観察して、職員の人に攻撃が飛んできたら庇えるように準備する。
[瞬間思考力]でどう対処するかを判断して、撃ち落とせる攻撃は[ナイフ投げ]、そうじゃない攻撃は職員の人の[体勢を崩して]避けさせる。
どうしようもない攻撃は私が庇って[激痛耐性]で耐えるつもり。

【走馬灯視】で観察したことは、カットスローターズとの戦いにも使う。猟犬みたいに不定形じゃないから、動きは分かりやすいはず。
【疾走ダンスマカブル】の高速ステップのタイミング、衝撃波や他の攻撃が来る箇所……そういうものを[見切って]、ナイフの[急所突き]で反撃する。

【アドリブ歓迎】



 ルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)にとって『カットスローターズ』の目的がどんなことであれ、関係ないと思った。
 そう、どんな事情があり、どんな経緯をたどったにせよ、彼らがしていることはルメリーにとっては無関係ではいられない。
 人を殺そうとしている。
 直接的に殺そうとしていなくても、間接的にUDC組織の職員たちを邪神たちの贄として扱ったのだ。
 そして、その凶行はまだ続いている。
 邪神たち同士の戦いの余波は凄まじいものだった。

 猟兵たちの攻勢も激しい。
 だが、それでも『カットスローターズ』は傷つきながらも存在していた。
 燃やされ、切りつけられ、打ち付けられ。
 そんな数多の傷を受けて尚『カットスローターズ』はむしろ、笑っていた。
 楽しいと言わんばかりだった。
「いや、殺し甲斐がある。これだけ手強いとな。サクッと寸断されるのもいいけれど、尽きない殺人衝動に付き合ってくれるタフさがあるのも嬉しいよな」
『でも、殺せないとフラストレーション溜まりますよね。だから、ちょっと死んでもらえると嬉しいです』
 見えぬ少女の声と交互に『カットスローターズ』はルメリーに告げる。
「……あなたと邪神を斃して、皆を無事に脱出させる」
 そう、職員たちは誰一人として殺させはしない。
 その意思みなぎるルメリーに『カットスローターズ』は両手を広げて、頭上で喝采するように手を叩く。

「高尚なことだよ。うん、立派だと思うよ。けどさ、思うんだ、俺は。高尚なことは確かにすごいことだぜ。でもさ、実現できないことを掲げるのは良くないって思うんだ」
『私達を前にしても、そう豪語できるのは一種才能ですよね。でも、無理なものは無理なんです。私たち、殺したいって思ったら何としても殺さなければならないって思っちゃうんです』
 その言葉が響いたと思った瞬間、ルメリーの眼前に『カットスローターズ』の顔があった。
 瞳が己を覗き込んでいる。
 いつの間に踏み込んだのだと思った。
 瞬間、カッターナイフが翻る。
 剣呑なる輝き。
 殺意を込めた一撃であった。それをルメリーは、走馬灯視(ソウマトウシ)する。
 そう、これは死の間際のように主観時間を引き伸ばすユーベルコード。
 見えている。
 
 だが、早すぎる。
 引き伸ばして尚、通常の斬撃のような速さだった。
 尋常ならざる攻撃速度。
 瞬間的に思考を加速させる。
 どう対処するか。迎撃るのか、それともカウンターを狙うのか。
 迷っている暇はなかった。
「……見えた」
「何が見えたっていうんだよ、なあ!」
『自分の終わりじゃあないでしょうか!』
 振るわれるカッターナイフへとルメリーは手のひらを伸ばす。

 敵の攻撃は自分に向かっている。
 だが、あの凄まじい速度の踏み込みである。こちらがカッターナイフを撃ち落とせば、必ず標的を変える。
 変えた標的の先はきっと職員だ。
 自分が護ると言ったからこそ、此方の心を折ろうとしてくる。
 掲げたものを汚そうとする。
 だからこそ、ルメリーは己の手のひらを犠牲にする。カッターナイフが貫いた手のひらから鮮血がルメリーの頬に飛ぶ。
 けれど、彼女は声一つ挙げなかった。
 握りしめる。
「情熱的だな」
『手のひらで受け止めた!?』
「覚悟の上」
 ルメリーは短く告げ、踏み出す。

 カッターナイフごと『カットスローターズ』の動きを封じる。
 引き抜こうにも引き抜けないだろう。
 ルメリーは己が手のひらを犠牲にして、その手のひらの筋肉を硬直させてカッターナイフを引き抜けないようにしたのだ。
 しかし、刃が折れる。
「逃さない」
 握りしめる。万力のように『カットスローターズ』の手首を掴み上げ、ルメリーは引き寄せる。
 踊るように。
 まるで、熟練のダンサーが初心者を導くようにして彼女は『カットスローターズ』の体躯を引き付け、それこそなんでもない日常の一コマのように己がナイフを彼の胸に突き立て、突き放すのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
あのねえ
仕事ってのの9割は非戦闘員が回してるんだよ
それを足手纏いって言うのは、1割の戦場しか見てない奴の感想だ

けど、まあ
君らは戦場でしか生きられないだろうね
そこの違いに善悪や優劣を持ち出すつもりもないから
……夏報さんは、仕事をする

非戦闘員の保護を最優先に行動
施設内で籠城戦に最適な場所は……彼ら本人が詳しいだろう(情報収集)
夏報さんは前線に立って、できるかぎり敵を撃つ(時間稼ぎ)

(敵を撃つ際、【UC:たとえばで始まる夜】を無意識に発動)
もともと見境が無さそうな連中ではああったけど
なんだか妙に……同士討ちが多くなってきた、ような
結果的にこちらに来る敵が防がれているような?
どういうつもりなんだろう



 胸に突き立てられたナイフの一撃を受けて『カットスローターズ』はよろめく。
 血反吐がこぼれて、胸元に血の痕が刻まれる。
 それでも『カットスローターズ』の減らず口は変わらなかった。
 笑うようにゴボゴボと血を撒き散らしながらも、肩で息をする。
「ゲホッ、ガッ、ホッ……あー、口の中血だらけじゃん。トマトより真っ赤じゃん」
『血染めの服っていいですよね。なんていうか、卒業しちゃった感じがして』
 相変わらず、と言うべきか。
『カットスローターズ』は追い詰められても変わらなかった。

「まったく職員連中を狙うとこれだもんな。ちょっと遊ぼうと思っただけじゃん」
『やっぱり|灼滅者《スレイヤー》と同じで自分たち以外の人員を傷つけようとすると烈火のように怒っちゃうんですねぇ。足手まといでしかないのに、守っちゃうだなんて』
 その言葉に臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は呆れるようにつぶやく。
「あのねえ。仕事ってのの九割は非戦闘員が回してるんだよ。それを足手まといって言うのは、一割の戦場しか見てないやつの感想だよ」
 彼女の言葉に『カットスローターズ』はキョトンとした顔をした。
 なんか急に素面に戻されたような気分であったのかもしれない。
「いやまあ、だって非戦闘員とか俺達にはあんまり、なぁ?」
『殺せない時点で、カウントされないですもんね』
 うんうん、と理解できぬものを見るように『カットスローターズ』は夏報を見やる。

 姿なき少女の声も、血まみれの少年も、やはり人外の理しか持ち得ぬのだろう。
 わかる。 
 理解する。
 彼らは、戦場どころか、日常社会においても生きられない。
 なぜなら、殺すことが日常だからだ。
 戦場であっても彼らは力を発揮しないだろう。シチュエーションが問題なのではない、モチベーションの問題なのだ。
 彼らにとって当たり前のことなのだ。
 息をするように。瞬きをするように、挨拶をするように、そんな気軽さで殺す。
 そういう衝動なのだ。
 故に、夏報は思う。
 そこに善悪はない。優劣さえない。
 だから。
「……夏報さんは、仕事をする」 
 構えた銃の銃口を向ける。

 敵意は此方が引き付ける。
『カットスローターズ』は面白半分でUDC職員を狙う。
 狙えば猟兵が隙を見せるとわかっているのだ。だからこそさせない。
「おいおい、何か忘れちゃいないか、六番目の猟兵。ここは邪神たち同士の蠱毒の真っ只中だぜ?」
『戦いの余波がバンバン来てますよ。それでも、そんな足手まといを護るんですか? 無駄じゃないですか、やっぱり』
「そうでもない」
 夏報はユーベルコードを意識していない。
 けれど、己の弾丸は、この状況における致命的な箇所に殺意を持って放たれる。

 それは邪神同士の激突の最中。
 吹き荒れる超常の力。
 それは夏報の無意識なるユーベルコードの発動によって引き起こされる。
 確かに邪神たちは相争う。
 最後の一体という生存の席を巡って。
 だからこそ、この超常の渦は吹き荒れているのだ。だが、夏報のユーベルコード、その弾丸は、その超常にこそ当たったのだ。
 踏み込んできた『カットスローターズ』など目に入らない。
 たとえばで始まる夜(カジュアル・ロマンス)がある。

 たとえば、邪神の放つ炎が、生み出された風に舞うようにして立ち上る。
 猟兵のユーベルコードによってぶち抜かれた天井があれば、温められた空気は膨れ上がり天井の大穴へと向かうだろう。
 そうなれば、さらに風は荒ぶり空気中の塵を激突させる。
 生まれるのは静電気であるし、邪神たちの生み出す雷の走る道となるだろう。
 雷鳴が轟き、轟音が響くよりも疾く夏報に超常は味方する。
 生まれた雷は『カットスローターズ』の予期せぬ箇所から打ち込まれる。
「ギャッ!? な、んだぁ!?」
『邪神たちの戦いの余波? なんで、私達に……!』
「……ん?」
 夏報は自覚していない。
 邪神の戦いの余波が、無意識なれど己に味方しているなどと思いもしない。
「……同士討ちしてる?」
 わからないけれど、好機と言えば好機だ。
 引き金を引く。
 弾丸は、たとえば、を現実に堕するように『カットスローターズ』へと叩き込まれるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

闇堕ちゲームですか。

本来こういうシリアスはわたしの守備範囲ではないんですけど、
そういう言葉を聞いてしまうと、勇者の魂が目覚めてしまいますね。

なんですか!ありますよ!まだ!
いや、なくなったりしないですけど。たぶん。

善性も悪性もない、とか言ってましたが、
他人に迷惑をかけているんですから悪性です。

もちろん|性質《タチ》が、ですよ。

あなたたちが『目の前にいる』だけで殺す理由になるんなら、
わたしも同じ理由で守ってもいいですよね。

だってわたし光の勇者ですから。

ス・テ・ラ・さん♪(にっこり)
今回はノリます。盾じゃなくて矛としてですけどね!

そちらが技なら、こちらはパワーです!
カンパネラ、いっけー!


ステラ・タタリクス
【ステルク】
毒ガス実験ではなく、次の展開は闇堕ちゲームでした

闇堕ちゲーム……どこかで聞いた気がします
ですがそれも今となっては意味のない事、のはず
ならば、この蠱毒を止めるのが私たちの役目ですね

後ろで佇む邪神も気になりますが、それは後
ルクス様いきますよ!

殺す、というのは概念なのでしょう
命を奪う事だけが殺すではなく、例え猟兵であっても油断は出来ません
しかし、暗殺者は闇であるならばこちらは光の勇者がいます!
つまり、|ルクス様が特攻になるはず《光の勇者を盾にする》!
え?不穏な単語が聞こえた?気のせいですよ
ほら、援護しますから、勇者ごーごー!
【アウクシリウム・グロウバス】でルクス様の攻撃を支援します



 守備範囲じゃあない。
 何がって、シリアスが、である。
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)は正直、本当にそう思った。
 闇堕ちゲーム、とか言われてもなぁ、という気分であった。
 だが、彼らの……謎のオブリビオン『カットスローターズ』たちの言葉を聞いて捨て置けるほど薄情でもなければ、勇者としての本質を忘れることはなかったのだ。
「勇者の魂が目覚めてしまいます」
「いいじゃないですか。お次は毒ガス訓練かと思いましたが、闇堕ちゲームでした。どこかで聞いた気がしますが」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は、どこで聞いたんだっけ? と首を傾げる。
 とは言え、それは今意味のないことだ。
 ステラはこの邪神の蠱毒を止めるために赴いたのだ。
 周囲には邪神同士の戦いによる余波が渦巻いている。
 というか、とステラはルクスを見やる。
「あったんですか、勇者魂」
「なんですか! ありますよ! まだ!」
 まだ?
 なくなったりするの? ならそれってば。

「闇堕ちするってことか?」
『言葉のあや、じゃないですかね切宮君』
『カットスローターズ』は、姿見えぬ少女の言葉に頷いた。
 傷だらけであるのに笑っている。ヘラヘラしていると言ってもいい。
 彼にとって己の傷は大した理由ではないようだった。
 手にしたカッターナイフをぷらぷらと揺らしながら、二人組の猟兵を見やる。
「ルクス様、いきますよ!」
「善性も悪性もない、とか言ってましたが、他人に迷惑をかけているんですから悪性です」
「いや? それって良心があればこそ成り立つものだろ? 別に迷惑掛けているなんて思ったこともない。というか、それって迷惑なのか?」
『六番目の猟兵が止めに来るってことは迷惑なのかもしれませんね。でも、私達の執着を甘く見ないでほしいですね』
 迫る高速ステップ。
 ステップと言っていいのかわからない。
 ただ悠長に一歩を踏み出しただけだというのに、『カットスローターズ』は一気に踏み込んでいた。

 ステラの眼前にいつのまにか立っていたと言っても良い。
 ぞわり、と肌が泡立つ。
 覗き込む瞳に良心の揺らぎはない。
「殺す、というのは概念なのでしょう」
「まあ、俺達が殺すと決めたら殺すんだから、そうなんじゃない? どっちだっていいじゃないか」
『殺したいから殺す。殺さなければならないから殺す。結果は一緒ですものね』
 振るわれるカッターナイフの一撃。
「ルクス様!」
「んえ!? 確かに『眼の前にいる』っていう理由だけで殺す理由になるんんあら、わたしも同じ理由で守っていいとは思いましたけど!?」
 でも盾にしていいってことじゃないんだけど、とルクスは思ったがステラに引っ張り込まれて、思わず叫んだ。
 振るうグランドピアノの一撃とカッターナイフがぶつかる。

「おいおい、楽器を使うやつかよ。しかも物理! 縫村、多分同類だぞ」
『圧殺がお好きなんでしょうか?』
「なにそれこわい」
『怖いですねぇ』
「ルクス様、敵にドン引きされています!」
 光の勇者だから闇の暗殺者には特攻になると思ったのだ。ゲーム脳が過ぎる。
 しかしまあ、一撃は防げたのだから、結果オーライってヤツであろう。そうかな?
「ス・テ・ラさん♪ 今回はノリましたけど、本当は盾としてじゃなくて矛としてですよね?」
「不穏な単語が聞こえました」
 だが、此処で畳み掛けないといけないのは違いない。
 ステラはルクうスの背後から手にした銃を構えて引き金を引く。
 弾丸を弾く『カットスローターズ』。
 そこにルクスが踏み込む。手にしたグランドピアノは圧倒的な重量を持ち得るものであった。
 まさしく圧砕・圧殺。
 ユーベルコードに輝く一撃が『カットスローターズ』の脳天を叩き伏せた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

シャムロック・ダンタリオン
ふん、随分と派手に騒がせてくれたものだな、二番目の猟兵の成れの果てども。
貴様らの目的についてはあえて聞かぬよ。どうせここで滅びるのだからな(【威厳・威圧・恐怖を与える・悪のカリスマ】)。

まずは火の精霊を大剣に【武器改造(+:装甲、-:移動速度)】し、敵の斬撃を【ジャストガード】していく(防ぎきれない攻撃は【オーラ防御・気合い】で乗り切る)。そして頃合いを見て【カウンター】の斬撃で【切断】してやろうか(【属性攻撃・全力魔法・なぎ払い】)――ああ、必要ならくたばり損ないの邪神どもも利用しようか(【挑発・敵を盾にする】)。

※アドリブ・連携歓迎



 轟音が響き渡る。
 それは圧倒的な質量に寄る痛打であったし、謎のオブリビオン『カットスローターズ』は脳天を叩き伏せられて視界が揺れるのを覚えただろう。
 血が噴出する。
 派手に出血しているが、大したことはないというように頭をふる。
「あー、痛ぇ……なんだよ六番目の猟兵ってのは、妙なのばっかりじゃあねーか」
『私達も人のこと言えないですけど、大概ですよね。でも、邪神たちの戦いも大詰めみたいですよ』
 周囲にあふれる戦いの余波。
 それは、この戦いが始まった時のことを考えれば規模が縮小されてきているように思えただろう。
 つまり、決着が近づいているのだ。
「ふん、随分派手に騒がせてくれたものだな、二番目の猟兵の成れの果て共」
 シャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)は謎のオブリビオン『カットスローターズ』をそう呼んだ。
 はじまりの猟兵の言うところの二番目の猟兵『アーカイブ』。
『持ち帰る』ことを目的とする集団。

 彼らがそうである、というのならば、今回の邪神の蠱毒を画策したことも頷ける。
「貴様らの目的については敢えて聞かぬよ」
「語ろうぜ。と言っても、まあ、俺から言えることはないんだけど。どの道」
『ええ、滅ぼし滅ぼされるかでしかないですからね』
「貴様たちはどの道ここで滅びるのだからな」
 シャムロックの言葉に『カットスローターズ』は笑った。
 血潮流れる額を抑えて笑ったのだ。

「おいおい、六番目の猟兵。そうは言うがよ。俺達はオブリビオンってやつだ。過去の化身だ。いくらでも過去からにじみでてくるんだぜ? それを滅ぼす?」
『猟兵が世界に選ばれ続けるのと同じですね』
 その言葉と共に火花が散る。
 それはシャムロックの放った大剣の一撃と『カットスローターズ』の手にしたカッターナイフの激突によって引き起こされたものだ。
 火の精霊武装(エレメンタル・ウェポナイズ)によって叩き込まれた斬撃。
 けれど、『カットスローターズ』は笑う。
「遅いよなぁ」
『きっと移動速度を代償にしているのでしょう。なら』
 振り払われる大剣。
 ただのカッターナイフだというのに、それだけで大剣を弾き返すなど、どう考えても通常のそれではない。
 超常とも言うべき力。
 放たれる一撃いで大剣が寸断される。

「こうなるしかねぇよな!」
『なんでも切断してしまう切宮君ですからね!』
 迫るカッターナイフ。
 あれを受ければ寸断されてしまうことは言うまでもない。だからこそ、シャムロックは邪神同士の戦いの余波に地面を蹴って飛び込む。
 炎と風、雷と氷。
 渦巻くそれらの中に飛び込み、『カットスローターズ』の放つ一撃の盾に邪神をしたのだ。
 寸断される邪神。
「くたばり損ないの邪神どもも、たまには役に立つ」
 シャムロックは踏み出さない。
 移動速度を代償にしているのだ。故に敵が来るのを待つ。
 後の先。
 振るう大剣の刀身は寸断されている。だが、シャムロックの瞳がユーベルコードに輝く。
 宿した精霊は火の精霊。
 ならば、迸る炎が刀身となって振るわれるのだ。斬撃は炎の軌跡を描き、『カットスローターズ』の体躯に叩きつけられた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
壊れろぉおおおおお!!!!

『魔改造能力者』発動。
先に変えた|回転する大蛇大剣《ドリル機械大剣》と騎兵刀の二刀流を【念動力】と【怪力】で制御。
更に自身に発現させた高速移動能力・転移能力と組み合わせ、体勢を崩さずに、
決して破壊できないこの機械大剣でカッターナイフごと【なぎ払い】騎兵刀で【追撃2回攻撃】

……!

【フェイント】敵が見出した己の隙、放たれたカッターナイフを人工魔眼の【動体視力】で捉え、
【瞬間思考力】転送能力で機械大剣のみ転送し【カウンター】
念動力で機械大剣からメガスラスター展開【推力移動】
飛来するドリルでカッターナイフも敵も穿ち抉る!!

アアアアアア!!!

追撃念動力で騎兵刀を頭目掛け【投擲】



 炎の大剣の一撃が『カットスローターズ』の体躯を打ち据える。
「散々だよなぁ。斬られて、ぶっ叩かれて、そんでもって焼かれて」
『死因のオンパレードですね』
 姿見えぬ少女の声に『カットスローターズ』は悠長に笑っている場合かよ、と笑う。
 彼らにとって、これは戦いですらないのかもしれない。
 遊びの延長線でもない。
 ただ、息をするように殺す。瞬きの間に入れ替わるように彼らは人の生命を切断する。そうしたいというより、そうすることが自然なことだ。
 生きるってことなのかもしれない、と『カットスローターズ』は笑う。

 そんな彼らを前に迫るものがあった。
「とびっきりだよ、これまた」
『破壊の権化、なんていうか、あそこまでねじれてしまうと、破滅願望なんてものすら猪口才なって感じがしますね』
 彼らに迫るのは、破壊の衝動であった。
 念動力があふれかえるようにして渦を巻き、螺旋を描く。
 その中心にいたのが、朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)であった。
 彼女の手にした機械大剣。
 そこにさらに騎兵刀を手にした二刀流でもって『カットスローターズ』に突進してきているのだ。
 技術も駆け引きもない。
「ただ突っ込んでくるだけかよ。マジかよ」
『こっちが消耗してなくてもおんなじことしたんでしょうね』

 カッターナイフを構える『カットスローターズ』。
 魔改造能力者(リモデルブレイン)たる小枝子は己の手にした武装を念動制御でもって踏み込んでくる。
 それを単純な猪武者のようだ、と彼らが認識したのが過ちであった。
 真正面から迫る小枝子が突如として姿を消す。
「消えた!?」
『転移能力!』
「壊れろぉおおおおお!!!」
 咆哮と共に小枝子は横合いから『カットスローターズ』へと飛び込み、手にした騎兵刀の一撃を叩き込む。
 カッターナイフで受け止められるが、さらに機械大剣の一撃が追撃として叩き込まれる。
 骨がきしむ音がした。

「馬鹿力がよぉ!」
『切宮君! 大ぶりすぎ!』
 瞬間、小枝子の二連撃をしのいだ『カットスローターズ』がカッターナイフの斬撃を叩き込む。
 小枝子は見ていた。
 確かに己の攻撃は大雑把にして大ぶりだった。
 だからこそ、敵はカウンターで己を刺そうとするだろう。わかっていたことだ。
 瞬間的に思考が回る。
 認識した瞬間、どうするのかなどわかっていた。
 だが、『カットスローターズ』の一撃は小枝子が思う以上に速かった。
 腹部に差し込まれるナイフの一撃。

「大ぶりばっかりしってからだよ!」
『油断大敵ってやつですね』
『カットスローターズ』はしかし、見ただろう。
 小枝子は腹部を貫かれながらも踏み込んでいた。
「いや、待てよ。さっきまでぶん回していた――」
『大剣は……!?』
「アアアアアア!!!!」
 咆哮と共に小枝子の瞳がユーベルコードに輝く。
 そう、小枝子は己が武装を転移させていた。どこに?
 それは『カットスローターズ』の頭上だった。
 飛来する機械大剣を迎え撃つ『カットスローターズ』。しかし、ふるった一撃は、その刃を砕きながら地面へと突き刺さる。
 そして、さらに打ち込まれた騎兵刀が念動力で射出され『カットスローターズ』を吹き飛ばすのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
ッ……震えが止まんねえ……ッ! 
そりゃそうだ。こんな大それたことを思いついて実行に移す奴等なんだ、強くないはずが無ぇ、よな。
……職員さんは救うことができた。なら、最後に救うのは自分じゃねえとな……!

全弾当たったら即死とか、おっかねえことしやがる。……でも、要は1発でも外れれば、ってことだな。
UCを解放して、軌道演算、経路探索……回避だ!
〈第六感〉も併用して、とにかく動きを見切り、当たらねえようにする。

畳みかけられねえようにこっちも〈武器落とし〉や〈マヒ攻撃〉なんかで反撃し、二の矢を撃たせねえようにする。
決定的な隙が見えたなら、〈限界突破〉した〈スナイパー〉ばりの一撃を叩き込む。



 手が震える。
 体が震える。
 心が震える。
 何処までいっても己の震えを止める手立てを鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は持ち得なかった。
 怖い、と思う。
 わかっていたことだ。
 どんな戦いを前にしたって恐ろしいと思ってしまう。
 それどころか、今目の前に対峙する『カットスローターズ』は邪神の蠱毒を行おうとするような連中なのだ。
 恐ろしくないわけがない。
「強くないはずが無ぇ、よな」
 数多の猟兵たちの攻勢を受けて血だらけになりながらも『カットスローターズ』は立っていた。

 恐るべきことである。
 確かに嵐は封鎖された施設に取り残された職員たちを救うことができればいいと思っていた。
 だが、それだけで戦いは終わらない。
「こいつらを倒さないと、どの道終わらないってんなら!」
 最後だ。
 自分のことは最後でいい。ならばこそ、嵐は瞳をユーベルコードに輝かえる。
「考えてるよな。そりゃあ、生存のために思考を回すなんて生物からすれば当然なんだろうな。それが走馬灯ってやつだぜ、六番目の猟兵」
『臨死に至って漸く人の脳は最大に活用されるなんて、皮肉ですよねぇ。普段から本気なら、それくらいできちゃうってわけなんですから』
『カットスローターズ』の言葉に嵐は、忘れられし十三番目の贈り物(マルール・トレーズ)を開封する。

 迫る『カットスローターズ』。
 手にしたカッターナイフでの斬撃。
 必ず敵は此方を切断しようとする。他の駆け引きなど、切断するための布石でしかない。
 そう、彼らは必ず、そうする。
 ならばこそ、嵐は限界まで引き上げられた思考能力と身体能力でもって見極める。
 翻るカッターナイフの煌き。
 頬をかすめる。
 血が吹き出す。
 球体となった血が宙に飛び散る。
 躱さなければならない。あの斬撃は四連撃で死をもたらす。ならばこそ、嵐は絶対に一撃は躱さなければならないと理解している。

 けれど、初撃を受けてしまった。
 あと三撃。
 そう思った瞬間、足に鈍い痛みが走る。
 いつのまにか『カットスローターズ』が放った逆手の一撃が太ももに突き立てられていた。
「躱せばいい、なんて消極的なことを考えてるやつの考えなんてわかりやすいんだよな!」
『人の嫌がることを考えれば、こうなりますよね』
 思考が乱れる。
 恐怖がこみ上げる。こいつらは他者の生命をなんとも思っていない。自分の命と同じように平等に無価値だと思っているからこそできる行為。
 故に、嵐は迫る三撃目を手にしたスリングショットで弾く。

「知るかよ、そんなこと。そんな余裕もねぇよ。ただ、俺は、怖いけど、俺以上に怖い思いをしている人たちに、これ以上がないようにって、ただそれだけだよ!」
 カッターナイフを弾き飛ばした嵐は、そのままスリングショットを引き絞る。
 迫る煌き。
 だが、それすらも放った一撃は刃を砕きながら『カットスローターズ』へと叩き込まれる。
 そう、ただそれだけなのだ。
 戦いは怖い。
 けれど、この場に身を置く彼が、恐怖だけで此処にいるのではないと示すように放たれた一撃は道を拓いた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
さて元凶のお出ましか
邪神なんて集めて何をしたいのか知らないけど
こっちからしたらいい迷惑だから
邪魔させて貰うよ

油断できる相手では無さそうだから
邪神の力も利用して戦おう

まずはガトリングガンで攻撃
範囲攻撃で相手の出方を伺おう
簡単にやられてくれるなら
ありがたいんだけどね

制圧射撃を行って
近付かれる前に少しでも削ろう

接近戦に持ち込まれたなら
カッターナイフの攻撃は神気を使ったり
体の一部を石化で硬化させたりして防ぐよ

接近されたらガトリングガンは使いにくいけど
ワイヤーガンの拘束用ワイヤーは絡ませやすいね
UCを使用して捕まえよう
速そうな相手だから
機動力を殺させて貰おうか
捕まえたら電撃と締め付けでダメージを稼ごうか



 邪神による蠱毒。
 今回の事件を引き起こした張本人、元凶たる謎のオブリビオン『カットスローターズ』は猟兵たちの攻勢によって消耗している。
 けれど、血に塗れながらも彼は立っていた。
「いやぁ、本当に油断ならないっていうか、やってられねぇ強さだよな、六番目の猟兵」
『でも、諦めるつもりなんてありませんよ。きっと|『灼滅者』《スレイヤー》を……殺してみせます。私達の執着を舐めないで貰いたいですね!』
 姿なき少女の声と共に『カットスローターズ』はカッターナイフを、まるで替刃を取り替えるようにして取り出す。
 一体どれだけ持ち得ているのかわからない。
 それほどまでに次から次に彼は得物を取り出すのだ。

「邪神なんて集めて何がしたいのか知らないけど、こっちからしたらいい迷惑だから」
 佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)の言葉に『カットスローターズ』は肩をすくめた。
「迷惑かもしれないけれど、邪魔しないでくれたらお互い衝突しなくってすむんじゃあないのか。棲み分けって大切だと思わないか」
『でも最終的にぶつかるのなら、早いほうがいいのかもしれませんね』
「それは同意するけれど」
 晶は即座にガトリングガンの引き金を引く。
 シリンダーが回転し、放たれる弾丸はまるでばらまくようにして『カットスローターズ』へと飛ぶ。
 しかし、それを容易くカッターナイフ一つで弾くのが『カットスローターズ』である。
 恐るべきことである。
 何をどうすればそんなことができるのかと晶は目を見開く。
 非現実的すぎた。
 だが、現実だ。紛れもなく。

 そして、肉薄する『カットスローターズ』の斬撃。
「これでやられてくれるんなら簡単だったし、ありがたかったんだけどね」
「そうならねぇのが現実ってもんだろ」
『わかっていたのに、やるってどうなんでしょうね? もしかして近づけさせなければ勝てる、とでも?』
 彼我の距離をないもとする踏み込み。 
 それは『カットスローターズ』の独壇場だった。
 放たれる斬撃。しかし、その斬撃は体の一部を石化させた晶の腕に防がれる。
「自分を石化してんのかよ」
『言えた義理じゃないですけど、イカれてますよね!』
「お互い様でしょ!」
 晶は手にしていたガトリングガンを捨て、ワイヤーガンの引き金を引く。放たれたワイヤーが『カットスローターズ』の体躯を絡め取る。

 だが、長くは保たないだろう。
 彼らはあらゆるものを寸断する。ならばこそ、己のワイヤーでさえも切断せしめてしまうだろうということは想像に難くない。
「こんなもんで!」
『捕らえられるとでも?』
「わかっているよ。簡単に引きちぎられないワイヤーなんだけどな……けど、それは君たちを絡め取るだけのものじゃあないよ」
 ワイヤーを『カットスローターズ』が切断するより疾く、電撃が迸る。
 身を焦がすような電流に『カットスローターズ』の肉体が弛緩する。
「試製電撃索発射銃(エレクトリック・パラライザー)っていうんだよ」
 晶は距離をとりながら、電撃を流し続ける。
 拘束し、敵の機動力を削ぐ。
 そして電撃。三段構えの一撃によって『カットスローターズ』は電流によって身の内側を焼かれ、その肉が焦げた匂いを充満させるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
カットスローター…ズ、ねえ
アーカイブはオブリビオン同士の融合合体で世界移動能力を得たって話の、正に見本みたいな感じだね
ま、何であれ他所の世界に来て迷惑をかけるような存在…見過ごすわけにはいかないね

引き続き《RE》IncarnationとBlue Birdを構えて戦闘
【雷鳴・解放】起動
高速移動をしながら、カットスローターズへ斬撃を叩き込もう
零距離から稲妻を纏った斬撃を放ち『吹き飛ばし』、追撃の『斬撃波』でさらに態勢を崩させる
敵の攻撃を『武器受け』して斬り払いつつ、速さ勝負といこうか

|灼滅者《スレイヤー》
ふと思ったんだけど、個人じゃなく複数人なら君達みたいに複数形じゃない?
そう、スレイヤーズとか!



 焼け焦げた匂いが満ちる。
 それは電撃によって肉体を焼かれた謎のオブリビオン『カットスローターズ』の体躯より立ち上るものであった。
 猟兵たちの攻勢は苛烈であった。
 しかし、まだ『カットスローターズ』は立っている。
「散々な目にあったなぁ。でもまあ、邪神の最後の一体になるまでの時間は稼げたか。どっちみち、あれを猟兵がどうにかできるとは思えない。なら、今回『持ち帰る』ことができなくても、チャンスはあるってわけだ」
『戦略的ってやつですね。まあ、私達は此処でやられちゃいそうですけど!』
 姿なき少女の声と対話する『カットスローターズ』を前にして、月夜・玲(頂の探究者・f01605)は理解する。

 一つの肉体に二つの人格。
 多重人格者ではなく、もともと別の存在が組み合わさったような性質。
「『カットスローター』……『ズ』、ねえ」
 思考を巡らせる。
 一瞬であった。
 二番目の猟兵『アーカイブ』は如何なる目的のためか『持ち帰る』ことを目的として多くの世界や、大いなる戦いに姿を現していた。
 これまで遭遇してきた存在の共通点を考えるに、オブリビオンは世界を渡るために代償として欠落めいたものを獲得してしまう。
 故に、その欠落を埋めるように別の存在と融合している……いや、逆なのかもしれない。融合することで世界移動能力を得ているのかもしれない。
 そう云う意味では『カットスローターズ』は見本のような存在であると玲は認識していた。

「ま、なんであれ他所の世界に来て迷惑をかけるような存在……見過ごすわけにはいかないね」
「なんでだよ、見過ごしてくれよ。というか、もう相当痛めつけられてんですけど」
『いくらなんでも集団でボコにしすぎじゃあないですか?』
「うーわ、不平不満と来たよ」
 玲は二振りの模造神器を抜き払う。
 どの道、迷惑を掛けている自覚なんてないし、自分たちが傷つけられていて特別に気にも止めていないだろう。
 ただ、衝動のままに殺す。
 異常者として、異常者らしく振る舞う彼らを前にして玲は己が模造神器に秘められた疑似UDCの力を開放する。
「雷の疑似UDC解放。我が身よ、稲妻となれ!」

 ここからはスピード勝負だった。
 踏み込む。
 いや、同時だった。
 眼前に迫る互いの顔。
 振るわれる斬撃が激突する。四連撃を受ければ、玲は敗北する。それを肌で実感する。迫る死。
 どうしようもない死の気配が濃密になっていくのだ。
「へぇ、邪神の、それも疑似、似非UDC化ってことか!」
『邪神を作り出す、という発想なんですね。それで得た力で戦うなんて、本当に埒外!』
「君たちに言われたくはないな」
 振るわれる斬撃が『カットスローターズ』の体勢を崩す。
 揺れる体躯。
 それを観た瞬間、玲は理解しただろう。
 あれは此方を誘うフェイントだ。揺らめく体躯に玲はさらに斬撃波を叩き込む。
「ハッ、ブラフには乗らねぇか!」
『戦い慣れているのと殺し慣れているのとは違うんですね。経験値の差がでたって感じです。こういうところ、|『灼滅者』《スレイヤー》そっくり!』
「……」
 玲は、己が斬撃を叩き込み『カットスローターズ』を弾き飛ばす。

 そして、一つ思いついたというようにドヤとした顔をする。
「ふと思ったんだけど、個人じゃなく複数人、その|『灼滅者』《スレイヤー》がいるのなら、君たちみたいに複数形じゃない? そう」
「あっぶねぇなぁ!?」
『思っても言っちゃいけないことって、あると思うんです!』
 表記的にアブねぇあれである――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

んもーなにしてんのさー
あっちはあっちでなんかごちゃごちゃやってるしー
まあいいかやるぞー!

●人質作戦
守らなければいけない彼らがいる分だけボクが不利だって?
果たしてそうかな!
いやむしろ逆!
そう多少でもなんでも、キミの動きにはボクが人質に気をするはずっていう意識…甘えや油断がある!
つまりキミを倒すことだけ考えてるボクの方がむしろ有利まである!
とその横でこっそり光を透過する透明状態の[白昼の霊球]くんで職員くんをガードしながらとっかーん!

【第六感】任せにカッターナイフを避けてからのUC『神撃』でドーーーンッ!!
自分たちの甘えをたくさん反省していってね!
さーてあとはー…わあお!



 ごちゃごちゃしている、というのが第一印象だった。
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は、邪神の蠱毒たる戦いの場を見て、そう思った。
 戦いの趨勢は最早決しているようにも思えたが、それでも戦いの余波は絶えず止まない。これが超常の戦いである。
 そして、この蠱毒を画策した謎のオブリビオン『カットスローターズ』と猟兵の戦い。
 あっちもこっちもで戦いが始まっている。
 疎外感を覚える。 
 ロニは自分以外のみんなが自分の知らぬところで大盛り上がりしていると乱入したがる気質がある。
「ごちゃごちゃいちゃいちゃ! まあいいかやるぞー!」
 駆け出す。
 なんかこう、色々考えることはあったのかもしれないが、言ってられない。

 走って飛んで、蹴って、殴って、それから考える!
「おっと、まった厄介なのが」
『大体みんな厄介でしたね』
『カットスローターズ』は見えぬ少女の声に頷く。本当に厄介。
 焼かれて、焦がされて、電撃食らって、斬られて、ぶっ叩かれて。本当に挫けないのが健気だなって自分でも思うほどに『カットスローターズ』は猟兵たちの攻勢を前に消耗していた。
「守らなければいけない彼らがいる分だけでボクが不利だって? 果たしてそうかな!」
「いや、そうじゃね? 自分の身を護るだけで大抵のやつは手一杯だろ」
『というか、私達は自分以外護るつもりもないですし、自分も護る気さらさらないですけどね』
「ふふ、むしろ逆ぢょ! そう、多少でもナンデモ、キミの動きにはボクが人質を気にするはずっていう意識……甘えや油断がある!」
「いやもう、それはいいよ。だって、護るって決めたらお前ら|『灼滅者』《スレイヤー》と一緒でやり通そうとするだろ」
『私達の執着と一緒ですよね。殺すって決めたら殺すまで止めないのと一緒です』
「あ、そうなの? でもまあ、ボクのほうが有利って言ったほうが有利まである!」
 といいながら、ロニはしっかりUDC組織職員たちをガードしていた。
 己が操る球体で戦いの余波が及ばぬようにと守っていたのだ。

 そんなことを悟らせることなくロニは飛びかかる。
 雑な攻撃だった。
「どっかーん! とっかーん! 濁点一つないだけで意味が変わって……ビジュアル的にかわらないからいっか! はい、ドーン!」
 ロニは己の拳を振るう。
 信心無きもの。
 殺人者である『カットスローターズ』でさえも、そこに神々しさを見るであろうユーベルコードの一撃。

 しかし、ロニは気がつく。
 己の拳が血に塗れていることに。
「おや?」
 それは突き立てられたカッターナイフであった。
 あの刹那に『カットスローターズ』は反撃していたのだ。
「痛ぁ! え、なにしてんのーんもー!」
「そりゃ反撃するだろ。殺したいから」
『そうですよ、しますよ反撃。殺したいですから』
 にべにもなく言う『カットスローターズ』。
 振るう一撃をロニは躱しながら、うーんと唸る。やっぱり、なんていうか認識の甘さはあっても、やることは一本筋が通っているのかもしれない。
「まあ、いいや! どっちみちボクの身を傷つけたこと、たくさん反省していってね!」
 振るう神撃(ゴッドブロー)は、さらにUDC組織支部の建物を破壊し、『カットスローターズ』たちをハチャメチャな破壊に巻き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ
すごい殺意を感じると思ったら、『類同』の仕業か
お前達もなんだか見覚えがある気がするね、妙に気分がざわつく様な、高揚するような変な気分。
ただの類同じゃないよね、お前達って本当に何?
…答えをもらう期待はしてないよ。どうせそのうち分かるだろうし、今は目の前のことに集中しとこうか。

さて、職員さん達は出来るだけ離れるか隠れててね。余裕がなくなった時に困るから

UC【悪癖】発動。奴らの殺意に正面から切り結ぼう
カッターの斬撃をカトラリーで[武器受け]して凌ぎながら九度の斬撃を叩き込んでやる
開いた傷口を抉りながら足を狙い[切断]で機動力を削いでやる

たった4回だけの攻撃で殺しちゃって良いの?
俺はお前達相手だったら何度でも切り裂いてあげてもいいくらいだ
それこそ9回じゃ足りないかも

代償を気にせず9回の攻撃を全てカットスローターへお見舞い
死んでも殺し切るまで、何度でも

(口元を抑えながらも戦いに集中。笑いが抑えられないのを職員さん達に気づかれないといいけど)



 殺人衝動とは抗うべきものである。
 諦観に塗れた瞬間、それはただの衝動に堕するものであるから。
 侮蔑すべきことである。唾棄すべきことである。
 きっといつだってそうだ。
 抗うことで人は前に進んでいく事ができる。後退を是としない意志。進むということは、諦観に屈しぬということだ。
 どんなに我が身、我が心が、その闇を恐れても。己が身に宿った力は恐れない。
「『類同』か」
 廻屋・たろ(黄昏の跡・f29873)は謎のオブリビオン『カットスローターズ』に見覚えがあるような気がした。
 気がしただけ、だったのかもしれない。
 けれど、妙に気分がざわつくような、高揚するような気さえする。
 変な気分だ、と彼はつぶやく。

「それもただの、じゃないよね、お前たちって本当に何?」
「言っただろ。『カットスローターズ』ってさ」
『名乗りは大切なことですからね。でもまあ、それって同類ってことでいいんじゃあないですか? なんでまた文字をひっくり返すんです? ご同類さん?』
 姿なき少女の声。
 たろは、期待していなかった。
 彼らからもしかしたら、己の胸に湧き上がる気分に、高揚に説明がもたらされるのかもしれないとは、微塵も思っていなかった。
 どの道わかることだ。
 己がこの衝動を抱えて諦めず進み続けることでいずれわかることだからだ。
 なら、彼らから答えを得ようなんて一つも思わない。

 己がしなければならないことは何か。
 ただ一つ。
 そう、UDC職員たちを護る。
 殺すのではなく、護るために力を振るう。
 猟兵と『カットスローターズ』たちの戦いでUDC組織支部は天井が砕け、更に壁面に亀裂が走っている。
 それほどまでに苛烈な戦いだったのだ。
『カットスローターズ』に至っては、血に塗れ、消耗しきっている。
 だが、ためらいはない。
 これは、【悪癖】(ナオラナイ・ナオセナイ)だ。
 煌めくユーベルコードの光を宿して、たろは踏み出す。
 封ぜられていた殺人衝動に覚醒する。

 開放感が身を震わせる。
 手にしたカトラリーとカッターナイフが打ち合い、火花が散る。
「あはは、楽しいよな、同類! それは開放してこそだよ、やっぱり! そうでなくっちゃあ!」
『カトラリーなんて可愛らしいものを使うんですね。変なの!』
「お前に言われたくはないだろうけどな、縫村!」
『至極真っ当でしょう、縫い針だって刺せば死ぬんですから!』
 そんなやり取りさえ、たろの耳に入っていなかった。

 迫るは死の四連撃。
 煌めくたびに、死に一歩近づいている。
 振るわれるカッターナイフの切っ先が、たろの腕を、足を、頬を切り裂く。
 三撃。
 すでに三撃が、たろの体に打ち込まれている。
「怖いか。あと一撃で、お前死ぬぜ?」
『絶対たる四連撃。確約された死ですからね。でも、切宮君的には切断できないのはフラストレーション溜まりそうですね』
「硬いんだよな、こいつ。それだけの衝動を抑え込んでいたんだから、随分とお硬いんだろうさ」
『身持ちの硬さってやつですかね。でも、そんなの私達を前にして意味ないことだと覆いますけど』
 その通りかもしれない。
 殺人衝動を抑えることは力の抑制に他ならない。

 けれど、たろは思う。
 いや、何を思った、と彼は己が口元を抑える。
 歪む唇の端。
 笑いが抑えられない。
 衝動のままに力を振るうこと。覚醒された己のユーベルコード。
 生命を削るのだとしても構わない。
 誰かを傷つける理由になんてならないから。だからこそ、たろは踏み出すd。
「たった四回だけの攻撃で殺しちゃっていいの?」
「あ?」
『何を言ってるんです? 殺すのが目的なんですから、そりゃ殺しますよ』
「だろうね。でも、俺は」
 たろの瞳が輝く。

 爛々と、煌々と。
 走る刃の煌きは『カットスローターズ』の四連撃最後の一撃が叩き込まれるより疾く迸るように打ち込まれる。
「そうか。俺はお前たち相手だったら、何度でも切り裂いてあげてもいいくらいだ。それこそ」
 その迸る斬撃は九連撃。
 覚醒した殺人衝動のままに振るわれる斬撃は『カットスローターズ』の五体を分断する。
 首への初撃で命脈は絶たれてた。
 しかし、たろは止まらなかった。 
「死んでも殺し切るまで、何度でも」
 数え、9つでは足りない。

 落ちる人体だったもの。
 たろは、口元を抑え続ける
 それは己がこれまで抑えてきた衝動が、己以外の誰かに悟られぬようにと願うものであった。
 まだ、己は同類にはなりたくない。
 抗い、諦観の先へと瞳は向けられているのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ノーズワンコスモス09』

POW   :    無気力なる果ての夢
【千切れた自らの羽 】を降らせる事で、戦場全体が【全て満ち足りた理想の世界】と同じ環境に変化する。[全て満ち足りた理想の世界]に適応した者の行動成功率が上昇する。
SPD   :    全き善なる光
【記憶に刻まれた傷と経験を癒し消す優しい光】【身体に刻まれた傷と鍛錬を癒し消す柔和な光】【心に刻まれた傷と戦意を癒し消す暖かい光】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    願いは叶う、何度でも
あらゆる行動に成功する。ただし、自身の【集めた誰かの成し遂げたいとするエネルギー】を困難さに応じた量だけ代償にできなければ失敗する。

イラスト:Shionty

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は奇鳥・カイトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 切断された『カットスローターズ』の体が霧散していく。
 漸くにして、この事件を企てた存在を打倒することができた。だが、まだ終わっていない。
 UDC職員たちを、この施設の外に脱出させなければならないのだ。
 だが、猟兵達は見ただろう。
 ただ一人佇む白い少女を。
 あまりにも場違い。邪神同士の共食いが起こっていた蠱毒の中にあったとは思えないほどの白き姿。
 血に濡れた片翼は、如何なる理由によってか。
「あなたはなにをほっしますか あなたはなにをのぞみますか あなたはなにをねがいますか」
 その言葉は羅列に過ぎないものであった。
 蠱毒の最後に残った一体。
 それは器。
 オブジェクト名『9番目』――『ノーズワンコスモス09』、北天より来たりて齎す者。

 彼女は優しげなほほえみで言う。
 けれど、猟兵たちは理解するだろう。
 欲望の全てを満たそうとするほほえみであると。
 この場にいた邪神達は、戦い敗れて消えたのではない。彼女の力によって充足によって満たされ、彼女という器に取り込まれていっただけなのだ。
 争うことなく願いを叶え続ける災厄。
 充足なくば欲望持つ知性体は生きてはいけない。
 欠けている物があるからこそ、人は追い求め、歩むことができる。
 欠けることのない、失わない人生に人は歩みを止める。歩みを止めることは、生きることを辞めること。

 そうして彼女はあらゆる物を白紙に戻していく。
 願望を叶える充足によって、世界を停止させるもの。
 人の望みを叶えることは、幸せであるかもしれない。
 けれど、永遠に輝く極光の如き白よりも、一瞬に輝く虹の一滴こそが、生命の輝き。
「あなた あなた あなたをわたしは」
 器たる『ノーズワンコスモス09』はほほえみながら、猟兵ではない誰かを見る遠き目で見つめる。
 その先にあるのは天にして|宙《そら》。
 星写す黒き白は告げる。
「あなたの こどくをみたしておわらせましょう――」
馬県・義透
引き続き『疾き者』なのだが
UC、即使用

陰海月「ぷきゅっ」

…陰海月語を翻訳します…

む、外に出しちゃダメなやつだ!おじーちゃんと合体!
霹靂は、まだ職員さんたち守ってる!

ぼくはね、ぼく自身で願いを叶えたいからね!
ぼくの願いには、あれが欲しいこれが欲しいってあるけれど。お小遣いを貯めて、それで欲しい玩具や小道具を買うの!できたっていう達成感があるんだよ!
それを…無条件で叶えてもらうのは違うんだもん!

光珠をポイポイ投げて、さらに四天霊障(極彩色)で押し潰しちゃう!
避けるにも、追尾するやつだから…ずっとは続かないでしょ?とても難しいんだから!


霹靂「クエー」
友の光は、目に痛いだろうが安心するのだ。



 白い少女はただ佇んでいた。
 身に纏う雰囲気は剣呑なものではなかった。
 穏やかなものであったし、特別何かするわけでもなかった。
「あなたは なにをほっしますか」
 問いかけるばかりである。
 だと言うのに、彼女の周囲には邪神の一柱も存在していなかった。あれだけ吹き荒れていた邪神同士の争いの余波があったというのに彼女、オブジェクト『9番目』と呼ばれた邪神『ノーズワンコスモス09』は静かにほほえみすら浮かべて佇んでいたのだ。

 即座に理解する。
 これが邪神の蠱毒の最後の一柱。
 災厄そのものである。
 願いを叶え続ける器。
 彼女は蠱毒の邪神全ての願望を叶え、その満たされ停滞した彼らを全て飲み干してしまったのだ。
「ぷきゅ」
 馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)の影から飛び出した『陰海月』は四悪霊・『虹』(ゲーミングカゲクラゲノツヨサヲミヨ)によって合体し、その1680万色に輝く四悪霊の呪詛纏う。
 しかし、その姿を見ても『ノーズワンコスモス09』は、ほほえむばかりであった。

「あなたは なにを のぞみますか」
 問いかける声。
 叶えたいと言っているのだ。自分の中にある欲望を、欲求を、望みを。
 言葉面だけ見れば、穏やかなものであった。
 だが、理解した。
 これは外に出してはならない存在だ。
 確実に世界を滅ぼす。
 飽くなき器。
 あらゆる願望を叶え続けて、人が進むべき道筋すらも奪ってしまうものがある。

『陰海月』は思う。
 己自身で願いを叶えたいと思う。
 自身の願い、欲望は確かにあるのだと思える。
 あれが欲しい、これが欲しい。
 当たり前の感情だ。けれど、それは制限された中にあるからこそ絶えず湧き上がるものだ。
「きゅ……!?」
 だが、その願望を形にするように次々と目の前に現れる願望。
 形作られ、周囲を埋めるように己が放っしたものが生み出されていく。
 今の『ノーズワンコスモス09』は蠱毒の邪神全てを呑み込んでいる。その力は凄まじいものだ。あらゆる願いの力が、彼女の中にあると言ってもいい。

 違う、と思った。
 叶えられたいものではない。
 叶えたいものだ。
 達成感が欲しい。けれど、それは形にはできない。得られるはずだったものさえも『ノーズワンコスモス09』は姥ていく。
 無要件で叶えてもらうのは違う。
 だが、そんな欲求さえも『ノーズワンコスモス09』は奪っていく。

 満たされていく。
 心のなかにある欲求という欠けたるものが満たされていく。
 その感触は穏やかな生ぬるい感触だった。気色が悪い。そう思えるほどに穏やかなる日々は、ただの平坦なる道と変わらない。
 何も起こらない。
 悲劇も起こらなければ喜劇さえない。
 その道すがらを『陰海月』は己が投げはなった光珠でもって『ノーズワンコスモス09』に打ち据える。
「どうして あなたの のぞみをかなえたのに」
 違う、と平行線を辿る。
 どんなに言葉を尽くしても、通じない。
 眼の前の存在は、ただ願いを叶え続ける。
 違う、と否定することしかできない道は、きっと長く険しい道筋であった。
 故に『陰海月』は、その穏やかなるほほえみを1680万色に輝く光珠で塗りつぶして遠ざけるしかなかった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

村崎・ゆかり
※眷属召喚+羅睺召喚継続

ここまで来たらみんなでいくよ。あの停滞の邪神を打ち破ろう。
アヤメ、羅睺、ゆりゆりに加えてあたしに、「狂気耐性」「呪詛耐性」「霊的防護」「オーラ防御」。

アヤメは「死角攻撃」で邪神をクナイで不意打ち。
ゆりゆりは「欲望解放」して、あれ食べていいよ。魅了の踊りで、少しでも動きを鈍らせられたら。
羅睺は、スモーク焚くガジェットを作って。あの光を少しでも弱める。

あたしはまた、四足獣型簡易式を幽世千代紙から作るだけね。今回は少数精鋭を意識。心を持たないモノにどれだけその光は影響するかしら。「式神使い」「集団戦術」で一気に削る。

意識が残っているうちに、薙刀で「串刺し」にして「貫通攻撃」!



 ここまで来たのなら、と村崎・ゆかり(“紫蘭”/黒鴉遣い・f01658)は奮起する。
 邪神の蠱毒。
 その中で最後に残った一体。
『ノーズワンコスモス09』は、望みを叶えることで停滞を齎す存在である。
 充足は次なる歩みのためにあるものであって、その場に止まることではない。
 飽くなき渇望があるからこそ、人は前に進んでいくことができるのだ。
 けれど、『ノーズワンコスモス09』は違う。
 願いを叶え続ける。
 本来ならば到底できようものではない。
 けれど、彼女は数多の邪神を飲み干す器として顕現し、その蠱毒たる力を得ているのだ。

 光が満ちる。
 記憶と心、肉体に残る傷を癒やす光。
 それはどんなに願っても得られぬものである。けれど、彼女の放つ光はゆかりの消耗激しい力さえも癒やして見せた。
 みなぎる活力によって、ゆかりはユーベルコードの輝きを瞳に宿す。
「あなたが ほっするのは どんなねがいですか」
 問いかける言葉にゆかりは頭を振る。
 あの光を受け続けるわけにはいかない。
 己の中にある欲望を全て肯定されてしまう前に、少しでも傷を与えなければならない。
「『アヤメ』、『羅睺』、『ゆりゆり』!」
 ゆかりは叫ぶ。
 己の狂気、呪詛に対する耐性すらも突き抜けてくる光。
 悪意がない分、余計にたちが悪い。

 もしも、悪意持って光を放つのならば防御もできよう。
 だが『ノーズワンコスモス09』は悪意なく、ただ器としてゆかりの願望を求めていた。
「あなたは ねがいませんか まだほっしますか」
 紡がれる言葉にゆかりは、己が式神たちに指示を出す。
 放たれるクナイ、欲望を開放する力。
 そのいずれもが光の前に屈することになる。鈍ることなく……いや、動きを鈍らせる必要すらない。
『ノーズワンコスモス09』は佇んでいるだけだ。
 それだけで世界を破滅に導く。
 停滞という一歩も進めぬ過去に、この世界が沈みかねない。
「『羅睺』! ガジェットを!」
「はいさ!」
『アヤメ』も『ゆりゆり』も光の前には無力だった。

 欲望を持ち得る者はすべて、『ノーズワンコスモス』の蠱毒の最後の一体となったが故の力によって、欲望そのものを満たされてしまう。
 光そのものを防ぐしかない。
 スモークがたかれ、光が乱反射して拡散していく。
「……消費が激しい……!」
 膝が崩れそうになる。
『羅睺』を呼び出すと、どうしても霊力を振り絞らねばならない。
 ガジェットを生み出すのならばなおさらである。
 まだ意識を手放せない。
 幽世千代紙を即座に折り、ゆかりは四足獣型の式神を作り上げ『ノーズワンコスモス09』へと突進させる。

 彼女が生み出した式神は心を持たない。
 光の影響は受けないが、激突して式神動きを止める。『ノーズワンコスモス09』は躱す素振りすら見せなかった。
 激突した式神がほどけていく。
 心ないと言え、強大な力を前に霊力が保たないのだろう。
「これが、最後!」
 振り絞った力でゆかりは薙刀を突き出す。
 放たれた一撃をやはり『ノーズワンコスモス09』は躱さない。

 受けれると言わんばかりに広げた腕。
 その胸に薙刀の刃が吸い込まれるように突き立てられた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルメリー・マレフィカールム
……たくさんの邪神も、カットスローターズもいなくなった。
……あとは、あなただけ。あなたを斃して、外への道を開く。

【全て善なる光】はとても厄介。一度でも当たったら、きっと私は戦えなくなる。
だから、建物の柱、壁、大きな瓦礫……そういったものに隠れて、まずは相手の隙を伺う。光が攻撃の源なら、遮蔽は役に立つはず。
[ダッシュ]や[悪路走破]、[軽業]も駆使して遮蔽から遮蔽に渡って、絶対に光に当たらないように動く。

少しでも隙を見せたら、一気に近づいて攻撃に移る。
ただ近づくだけじゃない。【偽影】でジャケットを相手に向かって投げつけて目くらましに、そして光への盾にする。
私自身は投げたジャケットの裏に張り付くように[ダッシュ]して、ジャケット越しに[急所突き]を当てにいく。

【アドリブ歓迎】



 UDC施設を封鎖していたユーベルコード『縫村委員会』は、謎のオブリビオン『カットスローターズ』を打倒したことで解除されている。
 あとは施設の外に保護した職員たちを連れて脱出するだけだった。
 だが、そんな彼らの前に佇むのは一人の少女だった。
 白い少女。
 ほほえみを絶やさぬ白い少女が佇んでいる。
 見た目通りではない。
 ルメリー・マレフィカールム(黄泉歩き・f23530)は、即座に理解する。
 ぞわり、と背筋に寒気が走る。
 眼の前の少女は確かに弱々しい雰囲気を持っているし、殺意すら向けられていない。それどころか、どこか友好的にさえ思えてならなかった。
「あなたは なにをのぞみますか」
 問いかける言葉。
 蠱毒の邪神、最後の一柱『ノーズワンコスモス09』は、そうほほえみながらルメリーに問いかける。
 ほとばしる光。

 それをルメリーは天井が抜けたがゆえに落ちた瓦礫に身を隠すことでやり過ごす。
 直感的に理解する。
 あの光に一度でも当たってしまえば、己は戦えなくなる。
「あなたは なにをほっしますか」
 問いかけに答えたくない。
 答えてしまえば、それは充足と言う名の停滞をルメリーに与えるだろう。身動きすらできなくなってしまう。
「……あの光、厄介。でも」
 遮断してしまえば、効果はないことを確認する。 
 だが、同時にあの光の万能性を示している。『ノーズワンコスモス09』は、他者の願いを叶えることを前提としている。

 全てを満たせば、争う理由もない。飢える理由も、誰かを傷つける理由もなくなる。
 それは一見すればよいことのように思える。
 欠落なき人生。
 それは平坦そのものだ。なんの起伏もない。なら、それは。
「生きているだけ。死んでいるように私は生きていたくはない」
 ルメリーは走り出した。
 瓦礫から瓦礫へと飛ぶようにして走る。迸る光を避けるように遮蔽しながら、動く。
 触れてはならない。
 誘蛾灯そのものだ。あらゆる願いが叶うと誘う光。

 誘惑めいた光にルメリーは決して触れない。
「あなたは なにをねがいますか」
「……あなたを斃して、外への道を開く」
 この場に遺された職員たちを連れて行く。
 多くを救う。
 無為に生命が散らぬようにと。だからこそ、ルメリーは己が羽織ったジャケットを投げ放つ。
 囮だった。
 ルメリーはジャケットの影の中を飛ぶ。
 一種の賭けだった。
 これがダメなら、最早己は戦えないだろう。投げはなったジャケットの裏に彼女は張り付くようにして『ノーズワンコスモス09』へと迫る。

 見ない。
 白い少女の姿をルメリーは見ない。
 見てしまえば、きっと己の中にある何かが崩れるような気がした。
 もう二度とまぶたを開けることさえできない。
 そう思えた。
 赤い瞳がユーベルコードに輝く。単純なことだ。ただ、ナイフを突き立てるだけ。
 ジャケットを脱ぎ去り、囮にするだけ。
 言葉にしてしまえば、なんと単純なのだろう。

 だが、それをユーベルコードにまで昇華させたのがルメリーという猟兵である。
 彼女の赤い瞳は主観時間を引き伸ばす。
 宙を漂う己の体とジャケット。光は差し込まない。
「なら わたしは たおされましょう きっと あなたのねがいは かなう」
 声が聞こえた。
 ジャケット越しに叩きつけたナイフの一撃。
 偽影(ギエイ)に紛れたルメリーの一撃は確かな手応えと共に『ノーズワンコスモス09』の体躯を貫く。
 ジャケットに滲む血潮。
 邪神の一柱でありながら、血の色は己の瞳と同じだった。
 転がるようにルメリーはジャケットにくるまれて影に飛ぶ。

 ルメリーは己が刺し貫いた者を見ない。
 見たところで詮無きことだ。
『ノーズワンコスモス09』ならば、多くの邪神を蠱毒にて飲み込んだ彼女という器ならば、ルメリーが欲するところの自分が何処の誰だったのかを知ることもできたかもしれない。
 けれど、彼女は否定した。
 それは誰かに知らされるものではない。
 今も、彼女は臨死の延長線上、その影の中にいるのだから――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

明星・ぐれん
それらしいことを言いおって
貴様自身が満たされることを知らんのに、他人の欲を満たせると思い込んでおる
だいたいヒトの欲なんて限りがないぞ
だからこそ毒となり、力となる
それを否定はさせん!

今の我が望むのはたった一つ
ヒトの道を阻む貴様をぶっ飛ばすことじゃ!

UCを使用し変身するぞ
我は欲深い存在よ
きっと理想の世界には適応できない
だが貴様はどうだ?
我の欲を満たさねば貴様の理想は成就しない
我も貴様もこの世界には適応出来ぬという訳じゃ

そうなれば後は殴り合いじゃな!
あいつの輝きをかき消すように【神罰】の雷をただ降らせるぞ
怪物の身でありながら神の欲を満たせると思ったその傲慢
罰するにはちょうどいい
骸の海で反省せよ!



 突き立てられたナイフの一撃から胸に赤い染みが広がっていく。
 白い少女『ノーズワンコスモス09』は、それでもほほえんでいた。変わらず、ほほえんでいた。
 蠱毒の邪神全てを飲み干した器。
 あらゆる願いを叶える存在。
 全てを満たして終わらせる脅威にして災厄。
「あなたの ねがいはなんですか わたしに みたせるものですか」
 問いかける言葉はどこまでも優しいものだった。

 故に、明星・ぐれん(旭日昇天・f40405)は激昂する。
「それらしいことを言いおって」
 ぐれんの口の端からは焔が立ち上る。それは彼女の言葉に熱が乗っている証明でもあった。
「貴様自身が満たされることを知らんのに、他人の欲を満たせると思い込んでおる」
「わたしは あなたのそばにいます わたしは きっとねがいを かなえてみせます」
「黙れ! だいたいヒトの欲なんて限りないぞ。だからこそ、毒となり、力となる。それを否定はさせん!」
 ぐれんは見てきた。
 人を見てきた。
 あくなき探求。あらゆるものに手を伸ばす貪欲さを。

 その赤き炎立ち上る中にあって、降り注ぐは千切れた羽であった。
 理想の世界へと変容していく。
 世界に己が領域、そのテクスチャを張り巡らせるユーベルコード。
 全てが満ち足りた理想の世界へと変化していく。
 飢えることも、傷つことも、悲しむこともない世界。
 人の思う艱難辛苦の全てを廃した世界に、ぐれんと『ノーズワンコスモス09』は立つ。
「ひていしません わたしは あなたたちの そばにいるだけ」
「きっと我はこの世界に適応できないのだろうな。わかる」
 己が望むものはただ一つであるが、否定することである。
 この世界を生み出した者を否定すること。ただそれだけなのだ。故に、この全て満たされた世界に適応できないのだ。

「だが、貴様はどうだ。我の欲を満たさねば、貴様の理想は成就しない。我も貴様も、この世界には適応出来ぬという訳じゃ」
「だから あなたの そばにいます あなたをみたせれば どんなそんざいも みたせますから」
 正しく認識されている。
 ぐれんは踏み込む。
 完全竜体へと変身した、ぐれんが飛び込む。
 この光り輝く世界を塗りつぶす紅蓮の輝きが吹き荒れる。かき消す。この理想の世界とやらを塗りつぶす。
「ヒトの道を阻む貴様をぶっ飛ばす! それが今の我の望みじゃ! 怪物の身でありながら、神の欲を満たせると思ったその傲慢」
 ぐれんは、雷をほとばしらせる。
 世界を否定する。
 この理想たる世界を。
 このひどく薄っぺらい世界を許してはおけない。

 ただ覆い隠しただけだ。
 悲劇の根本も、苦しみの根源も、何一つ解決しないでただ蓋をしただけだ。傷口をなかったことにしただけだ。
 それ理想の世界など到底許容できない。
 ぐれんは、その怒りを発露するように雷でもって世界を引き裂く。
「骸の海で反省せよ――!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鏡島・嵐
最後の奴は手強いって、相場が決まってる。蠱毒で生き残った邪神なら、猶更だ。
最後だけに一番怖ぇのも、いつも通り。
泣きたいくらいの恐怖を嚙み殺して、ただの人間として立ち向かう。

琥珀から黄金へ。真の姿は、ただ目力が上がるだけ。

相手の攻撃を〈オーラ防御〉で防ぎながら、当たるとヤバそうなのを〈第六感〉を活かして〈見切る〉ことで躱す。
隙を見せたら〈ダッシュ〉で一気に間合いを詰めて、UCで生み出した針を刺して動きを止める。

叶えたい願いなんてありすぎて挙げられねえよ。……それが人間って生き物の業だ。
すべて、すべてそれらが叶えられたら、|ヒト《おれら》は本当に幸福で満たされるんか。
……途方も無さ過ぎて想像もつかねえけど、これだけはわかる。
きっと、おれらの願いは。
アンタみたいな|邪神《そんざい》に叶えてもらうようなモンじゃねえよ。

……〈限界突破〉した最後の一撃を放つ刹那に、そんなことを思う。



 邪神の蠱毒の最後に立つ少女。
 白い少女だった。
 儚げであったし、到底、この邪神同士の戦い、雷と炎、風と氷が荒ぶ中にあっては存在できないような姿だった。
 けれど、彼女が最後の一体である。
『ノーズワンコスモス09』。
 彼女は微笑んでいた。
 猟兵の一撃を身に受けて、躱す素振りさえ見せない。
 ただ全てを受け入れるように、斬撃も、刺突も、雷さえも受け止めていた。
 体躯に滲む血が痛々しい。

 けれど、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、そんな弱々しささえ感じさせる『ノーズワンコスモス09』と相対して震えが止まらなかった。
「相場が決まってると思っていたが、想像以上じゃあないか」
 いつもどおりだと思った。
 最後に最も恐ろしい存在と相見えなければならない。これもいつも通り。だから、悲嘆にくれている暇なんてない。
 泣きたい位だ。
 こんな化け物と戦わなければならないなんて。
 自分がどうしようもなく弱い人間なのだと思い知らされる。

「あなたの そのおそろしさも わたしは とりのぞきましょう きっとできますよ」
 その言葉にうなずきそうになる自分がいる。
 けれど、嵐は頭をふた。
「おれはただの人間としてアンタに立ち向かう」
 超克の輝きが琥珀の瞳を黄金へと変える。
 見目が変わるわけでもない。力が増す訳でもない。ただ、嵐は自覚しただけだ。
 己の心の中にある弱さを。
 それを克己しなければならないと、そうしなければ、己は人間ですらいられないと知っているのだ。

 降りしきる羽。
 それは世界を理想の世界へと変えていく。
 苦しみも、怒りも、悲しみもない世界。
 極楽浄土というのならば、きっとこの一切合切の辛苦が存在しない世界を言うのだろう。
 けれど、嵐は否定する。
「これが あなたの きょうふをとりのぞいたせかい きっとあなたなら わかるはず」
「そうかもしれない。いや、だろうな。ここはきっと居心地がいいのかもしれない。けれど」
「なら あなたの ねがいは かないましたか」
「叶えたい願いなんてありすぎて挙げられねえよ……」
「どうして きっとあなたは このせかいでならば こわいおもいをしなくてすむはずなのに」
「……それが人間て生き物の業だ」
 地位を得て、金を得て、名声を得て、権力を得て、得るものばかりであっても、死を得ることを遠ざけることなどできない。
 それが恐ろしい。
 避け得ぬ死。
 どんなものにも訪れる死。
 尊き身分の者も、貧する者も、正しき者も、悪しき者も、須らく死という道行きを辿るほかないのだ。
 もしも、そんな死への忌避さえも叶えられるのならば。
 きっとそれが人の望む全てなのだろう。

「もし、すべて、すべてそれらが叶えたれたら、|ヒト《おれら》は本当に幸福で満たされると言えるんか」
 想像できない。
 それがどんなものなのかも。
 でも、と嵐は踏み込む。
「でも、これだけはわかる。きっとおれらの願いは」
 手にした針に込められたのは、持ち主の思いであった。
 針の一刺、鬼をも泣かす(ペインエディター・ペインブレイカー)というが、しかし、あまりにもか細い光だった。

 強大な力はいらない。
「アンタみたいな|邪神《そんざい》に叶えてもらうようなモンじゃねぇよ」
 きっと、そうなのだと思う。
 理想の世界を否定し、嵐は走る。
 無理矢理に己の体を動かしていた。限界を超えろと叫ぶ。
 恐怖を得たのならば、乗り越えろという声がある。
 超えろ。
 超克の時は今だと嵐は限界を超えた己の一撃を『ノーズワンコスモス09』へと叩き込む。
 その一撃は、たしかに彼女の、白き少女の生み出した理想の世界を穿つのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゼノン・サイネスト
この存在をカットスローターズ達に回収されない事は幸いだった
しかし、神など自分には無縁と思っていたが、
崇拝とはこのような感情を言うのだろうか?

…サイバーアイで敵を解析。
奴の光に惑わされないよう、敵は邪神なのだと心に刻む

UCフリーダムブレイズを発動。
たとえ身体を失おうとも失わなかった命の炎。
そう…今を生きているだけで自分は満たされている。故に、何も求めてはいない。

エネルギー炉心を最大出力に、
人工神経ケーブルを通して全身の稼働を限界突破。
サイバーアイで敵行動を推測し、アクセラレッグで加速接近。
赤光で深く斬り込みにかかる。

個を見ようともしないのなら救うなど到底無理だろう。
眩しいだけの光は、ただの害だ。



 猟兵たちの放った雷と針の一撃が『ノーズワンコスモス09』の生み出した理想の世界というテクスチャを引き裂く。
 恐るべき力である。
 生み出されていたのは理想の世界。
 苦しみも悲しみもない世界
 どんな存在であれ、そうした一切の物事から開放される世界。
 言うなれば、極楽浄土の如き世界をテクスチャと言えど生み出したのは、蠱毒の邪神、最後の一柱『ノーズワンコスモス09』であった。

「この存在を『カットスローターズ』たちに『持ち帰る』ことをさせなかったのは、幸いだった」
 ゼノン・サイネスト(赤き残光・f36685)はサイボーグである己の体躯におぞけというエラーが走るの覚えただろう。
『カットスローターズ』。
 彼らの願いを際限なく叶える器。
 あらゆる邪神の望みを叶え、停滞でもって飲み干した存在のちからがあれば確かに彼らは無敵足りえただろう。
 故に、ゼノンは己がサイバーアイからもたらされる計測値が異常をはじき出していることに脅威を覚えた。
「あなたは なにを ほっしますか あなたが のぞむのならば きっと あなたが のぞむ あなたじしんをあなたにするものを あたえられます」
『ノーズワンコスモス09』の言葉は偽りではなかった。
 きっとあの邪神は、ゼノンが己であるべきものを与えるだろう。
 置き換えられた肉体。
 楔たる右目以外の全てを齎すことを『ノーズワンコスモス09』は告げる。

 その言葉に崇拝めいた感情がこみ上げてくる。
 満たされたいという思いが喉からせり上がってくるようだった。腹を満たすような輝き。
 光がゼノンを停滞という名の泥濘へと引きずり込むようだった。
「……――」
「あなたは きっと とりもどすことができる あなたがあなたであるしょうめいを くさびのやくわりは もう おわったのです」
「いいや」
 ゼノンの体躯が燃え盛る炎のオーラに満たされる。

 意志は熾盛する。
 そう、ゼノンは踏み出す。
 光に満たされて尚、彼は己の胸を満たすものが、『ノーズワンコスモス09』のもたらした光ではないと知る。
「たとえ身体を失おうとも失わなかった生命の炎」
「どうして それを あなたは もっているのですか」
「自分だけが特別なのではないさ。そう……今を生きているだけで自分は満たされている。故に何も求めていない」
 きっとこの感情は誰しもに宿るものなのだろう。

 戦闘義体の内にある炉心が燃える。
 人工神経ケーブルを介在して全身に送り込まれる出力されたエネルギー。限界を超えるように体躯から燃え盛る炎のオーラが噴出していく。
 反射された光は『ノーズワンコスモス09』の瞳を焼くだろう。
 踏み出す。
『ノーズワンコスモス09』は身を捩る素振りもなく、動こうともしていない。
 迫るゼノンに対して防御行動を取ろうともしていない。
 脚部の加速装置が起動し、ゼノンは手にしたフォトセイバーを振るう。
「なぜ あなたは みたされているのですか どうしてすくわれているのですか わたしではない だれかにすくわれているのですか」
「個を見ようとしないのなら、救うなど到底無理だろう」
 ゼノンの振るう一撃が残光となって『ノーズワンコスモス09』の体躯を切り裂く。
「眩しいだけの光は、ただの害だ」
 そう、ゼノンは己の心に満たされる物を知っている。
 知らぬのではない。元よりあるのだから、介在する余地はないと、その光をこそ振り切るように彼は斬撃を見舞ったのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱鷺透・小枝子
羽が、降ってくる。全てが満たされる。
全て、全てだ。自分は、その全てを……壊したい!!

この全て満ち足りた理想の世界|に適応する《を否定しない》が故に、その全てを壊したいとどうしようもなく願う己が|【闘争心】《破壊衝動》を曝け出し、機械大剣と化している己がキャバリアに【呪詛】として流し込み、己を巻き込みながら変形、呪詛を受けて溢れる神殺呪毒によってこの|UDC《神》の世界そのものを破損させる!

吠え狂い、回り刳れ!!まつろわぬものよ!!!世界を壊せ!!!!

Gggggggggggggggggggggggggggggggg!!!!!!!!!!!!!!!

機械大剣が元の姿、夜剣大蛇の姿へと再変形し、搭乗【操縦】
長身ドリルが回り、無数の胴部内蔵回転刃が回り、|駆動音《咆哮》を鳴り響かせ【毒使い】躯体の全身から染み出す毒液を回転が振り撒き世界を|浸食《壊し》ながら侵撃し──

祈りも願いも、底も天井もない。どこまでも、どこまでも!

ノーズワンコスモス09を神殺呪毒溢れる口部で呑み込み、
神を【|浄化《破壊》】する



 赤き残光が引き裂かれた世界のテクスチャに走る。
 理想の世界。
 それは苦しみも悲しみもない世界だ。
 怒りに駆られることもない。
 ただ喜びだけがそこにある世界。満たされ、それ以上はない。だが、それ以下もない。
 平坦な世界。
 刺激無き世界は、停滞を生み出す。
 いや、変わらぬことを選んだからこそ、痛みも苦しみも遠きものとする。

 千切れた羽が示すのは、そんな世界だった。
 赤き残光に身を切り裂かれながらも『ノーズワンコスモス09』は、ほほえんでいた。
「わたしは しめします あなたの のぞみを そのおくそこにあるはずであろうものも それも かなえましょう」
 その言葉に朱鷺透・小枝子(亡国の戦塵・f29924)は震えた。
 視線が定まらない。
 眼の前の光景が受け入れられない。
 どうしたって受け入れられないのだ。
 全て満ち足りた理想の世界|に適応する《を否定しない》が故に、その全てを壊したいというどうしようもなく願う己が|闘争心《破壊衝動》がさらけ出されてしまう。

 壊したい。
 壊さねば己ではない。
 己の虚に満たされるものがある。だが、底が抜けているのだ。いくら満たされても、その端から失われていく。
 人はそれをきっと渇望と呼ぶのだろう。
「全て、全てだ。自分は、その全てを……壊したい!!」
 さらけ出された衝動を前にしても『ノーズワンコスモス09』はほほえんでいた。
 それもまた望みであるから。願いであるから。
「かなえましょう すべてを はかいしたいという あなたの ねがいを かなえましょう」
 砕ける世界。
 だが、小枝子は吠えた。
 違う。
 破壊『してほしい』のではない。破壊『したい』のだ。
「Ggggggggggggggggggggggggggg!!!!!!!!!!!!!!!!」
 咆哮する。
 手にした機械大剣が己を取り込みながら変形していく。
 大蛇そのものたる姿。
 我が身を構成する呪詛と共に小枝子は、身に流れ込む神を殺す呪いの置くを噴出させる。
 神を殺す。
 邪神であれど神と字を冠するのならば、殺す。破壊する。
 吠え狂う小枝子。
 回り刳れと叫ぶ。
「まつろわぬものよ!!! 世界を壊せ!!!」
 大蛇の如き姿が戦端に備えた衝角を回転冴える。無数の胴体から生えた刃が回転し、駆動音という名の咆哮を響かせながら一気に『ノーズワンコスモス09』へと迫る。
 防ごうとすらしていない。
 躱そうとしていない。
 侵食するように毒が回っても、尚、彼女は、微笑んでいた。

 受け止める手のひらが回転する刃に力の本流と激突しても、それでも彼女は、ほほえんでいた。
 まるで自分が理想を体現しているかのようなほほえみ。
「あなたの ねがいは これですか あなたの のぞみが あなたを あなたに しますか」
「関係ない! 祈りも願いも、底も天井もない。どこまでも、どこまでも!!」
 食らいつくようにして大蛇の顎が『ノーズワンコスモス09』へと食らいつき、その身に神殺呪毒を流し込む。
 抵抗など一つもない。
 浄化という名の破壊を、その身にもたらされながらも『ノーズワンコスモス09』はほほえみ続けた。
 対象的に小枝子は吠え続けていた。
 理想の世界を否定し続けるには、そうする他なかったのだろう。
 破壊の権化として、破壊だけを求めて、破壊を為していく。
 破滅的、と呼ぶのならばそうなのだろう。
 だが、己が壊すのは停滞である。
 絶えず進む道があるからこそ、小枝子は己の咆哮をもって、彷徨しつづけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エドゥアルト・ルーデル
とりあえずキラキラジャンプをしてもらうでござるよ!
キラキラジャンプって?青空を背景に可愛い女の子が可愛いくジャンプするやつでござるよ

拙者の領域展開でござる
今この世界は大体の攻撃がじゃれあいのようなふわっとしたいい感じになるでござる…怪我もなくぬるま湯の様に揺蕩うぬるついた世界…
この邪神も邪神じゃなく願いをふわっと聞いてくれる可愛いだけの存在になるんでござるよ!
そう、電脳魔術ならね

まだまだ行くぞ!次はドジっ子しぐさが見たいでござるな!他にはバンドでもする?キャンプでもする?施設内だけど
このまま延々ゆるふわっとエネルギーを消費してもらうでござるよ!日常系アニメはいくらでもだらだら見てられるからな!



 神をも殺す毒を受けてよろめく白い少女『ノーズワンコスモス09』。
 雷が満ちて、斬撃が飛び、毒を得てなお、微笑んでいた。
「あなたの のぞみはなんですか?」
 願いを叶える器。
 あらゆる望みを飲み干す停滞の権化。
 幸せな世界を夢見るがゆえに、人は願わずにはいられない。その言葉を否定できない。
 願いの総量は、恐らく過去を見ても最大であろう。
 蠱毒の邪神たちの望みを叶え続け、停滞したそれらをも飲み干した恐るべき存在。

 ならば、どうするか。
「とりあえず、キラキラジャンプをしてもらうでござるよ!」
 エドゥアルト・ルーデル(黒髭・f10354)はこれ幸いとばかりに己の願いを叫ぶ。
 キラキラジャンプ。
 青空を背景にかわいい女の子が可愛くジャンプするあれである。
 具体的に言えば、アニメのオープングテーマと共にカットインしてくる場面である。そういうあれったらあれなのである。

 白い少女『ノーズワンコスモス09』は、エドゥアルトの望みそのままに跳躍する。
 エドゥアルトは背景に青空を幻視した。
 キラキラしている。
 もはや絶対に得ることの出来な異青春の一ページ。
 そもそも自分は男だから、女の子になれない。かわいい女の子になりたいっていう願望があっても、それができないのが現実である。
 頬を流れるは熱い心の汗であったかもしれない。たぶん。
「領域展開でござる!」
 指の形がヤバい。怒られる。
「日常系キラキラタイムふわふわ(キラフワッ)! 拙者の願いを叶えてくれたのならば、平凡なる日常を謳えましょう……平坦に過ごす日々を受け入れろ……シリアスを受け付けないようになれ……ヌルついた日常アニメのようになァ……!」
 世界にバグが降り注ぐ。

 改ざんされていく世界。
 そう、エドゥアルトは、この世界を書き換える。
 あらゆる攻撃はじゃれ合いのようなふわっとしたいい感じのあれになるのだ。たとえ、それは死んでるだろっていう攻撃でも、ギャグアニメのオチ担当のように校舎の三階から窓ガラスをガッシャーンってやりながら落下しても、流血程度で済むようになうるのだ。下手すれば、たんこぶ一つで処理されるようになるのだ。
 恐るべきことである。
 シリアス?
 そんなもん、飼い犬ニでも食わせておけばよかろうである。
「そう、電脳魔術ならね!」
「あなたの ねがいは かなっています」
「でしょうなぁ! 今この場において、お宅も邪神じゃなく、願いをふわっと聞いてくれるかわいいだけの存在になるんでござるよ! まあ、もとから造形はかわいいあれでござるが!」
 そして、エドゥアルトは、ゴゴゴゴと謎のエフェクトを醸し出す。
 只者じゃあない雰囲気があった。雰囲気だけである。
「まだまだ行くぞ! ついてこれるか? これなくても拙者は一向に構わぬでござる! いこうぜぇ、キラフワッの向こう側にぃ!」

 もうやりたい放題である。
 この世界を変えるユーベルコードにおいて、エドゥアルトは独壇場であった。
 これに対応できるのは悪ノリに乗れる者だけであろう。
 そういう意味では猟兵の誰しもに可能性があったが、邪神には無理であった。
「次はドジっ子仕草が見たいでござるな! 他にはバンドでもする? イェーガーバンドクライ的な! もしくはキラフワキャンでもする? 室内だけど、室内泊っていう斬新さもあるでごるなぁ。夢が広がりングってやつでござる!」
 エドゥアルトは次々と己の願望に『ノーズワンコスモス09』を巻き込んでいく。
 そう、蠱毒の邪神たちを飲み干して、願いを叶えたエネルギーが尋常ではないというのならば!

「このまま延々ゆるふわっとエネルギーを消費してもらうでござるよ! なぁに、日常系アニメはいくらでもだらだら見てられるからな!」
 そう、エドゥアルトという猟兵と全ての願いを叶える停滞の邪神は相性最悪だった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャムロック・ダンタリオン
ふん、これが連中が手に入れようとしていた邪神か。
――なに、「何を願うか」だと?生憎だが今の願いは、「貴様を滅ぼす事」だ。それにこっちは、満ち足りた世界とやらに興味はないのでな(【威厳・威圧・存在感・恐怖を与える・傷口をえぐる・悪のカリスマ・覚悟】)。

――さて、あまり時間がかかると外部に影響を及ぼしかねぬ。ここは「【破魔】」の「熱波」で【焼却】してやろうか(【属性攻撃・全力魔法】(一方本人は【オーラ防御】で身を守ってる))――ああ、そうだ、光は時に熱を伴う。そして貴様はそれに耐えることはできるだろうが、果たして貴様の「成し遂げたいとするエネルギー」とやらの許容量はいかほどであろうな?(【世界知識・戦闘知識】)…まあ、せいぜい何も理解せぬまま、無様に滅びるがいいさ。

※アドリブ・連携歓迎



 あるゆる願いを叶える邪神。
 それが『ノーズワンコスモス09』である。
 白い少女は、蠱毒の邪神たちの願いを全て叶えてきた。戦うまでもなく、その望みを叶えてきた。欲するところを与えてきた。
 あれだけの争いの中にあって、傷一つ追わずに佇んでいたのは、彼女が器であるからだろう。
 望み、願い、欲するところを満たされた邪神たちは、全て彼女という器に飲み込まれた。
 願いを叶えたエネルギーに満ちている。
 十全どころではない。
 だが、それも猟兵たちの活躍によって減ぜられてきているのまた事実。
「あなたは なにをのぞみますか」
「ふん、これが連中が手に入れようとしていた邪神か」
「あなたは なにをねがいますか」
 どんな傷を受けようとも、ほほえみ続ける『ノーズワンコスモス09』を前にシャムロック・ダンタリオン(図書館の悪魔・f28206)を訝しむ。

 願いを叶えるのは敵対するものであっても構わないということだろう。
 むしろ、『ノーズワンコスモス09』に敵味方の区別はない。
「――生憎だが、今の願いは『貴様を滅ぼすこと』だ」
「あなたの ねがいは かなうでしょう まつことで それはかなうでしょう」
 ほほえみがシャムロックを見つめている。
 彼が何をしないでも滅びると言わんばっかりであった。その言葉を聞いて、シャムロックは笑ったかもしれない。
 滅びるまで待て、というのだろう。
 この平坦な満ち足りた平和な世界の中で、と。

「興味がない」
 彼はユーベルコードに瞳を輝かせる。
 言葉通りだった。
 まるで食指の動かぬ話だ。怒りも苦しみも、悲しみもない。けれど喜びもない。
 ささやかな幸せという感覚すら、この世界にはない。
 何も感じない。
 満たされているから、如何なる刺激を受けようとも感じることのない世界だ。
 こんなもののために人は生きているのではない。
 死んでいるように生きているだけでしかないのだ、こんな世界は。
 だからこそシャムロックは、その指先を天に掲げる。
 破魔と熱波を組み合わせて放たれるエレメンタル・ファンタジアの一撃。

 荒ぶ熱波に乗る破魔の力。
 邪悪なる者であれば、なんであれ、その身を焼くだろう。
『ノーズワンコスモス09』は、それを防ぐ素振りすら見せなかった。これまでもそうであったように、躱すこともしない。
 ただ受け入れるように攻撃を受け止め続けている。
 きっとそれが己の敵対者のしたいことであろうと受け入れているのだ。
 その身に宿るエネルギーの総量は凄まじいものだった。
「蠱毒の邪神たち全てを飲み干した器か」
 言うまでもなく、人の抱えられるものではない。
 そもそも邪神という物自体が不可解な存在なのだ。人の常識で測れるところのものではない。それらを複数、いや、何十と飲み干したのだ。

 熱波が破魔の力をもたらし、焼き続けて尚、彼女は立っている。
「貴様の『成し遂げたいとするエネルギー』とやらの許容量は如何ほどであろうな。器とて、底が抜ければ際限はない」
『ノーズワンコスモス09』は、まさしくそれであった。 
 器であれど、底が抜けている。
 満たしても満たしても抜けていく。
 叶え果てることない願望は、すでに底が抜けた時に失われているのだろう。

 ならば、シャムロックの言葉は何一つ、あのほほえみに届かない。
 何も理解できないまま『ノーズワンコスモス09』は滅びることになるだろう。
 己が望んだ通りに。
 それをシャムロックは無様だと思うだろう。
 何かを為したいと声たかだかに叫びながら、それを為すための方策一つ取れない。行動に映すことない。ただ漫然と飲み干してきただけの存在が『ノーズワンコスモス09』だ。
 だから、何も為せない。誰かの願いは叶えられても、己自身の願望は何一つ持ち得ぬいびつさを正すことなく、滅びゆく姿が熱波の先にあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

佐伯・晶
齎す者か
以前にも会った事のある邪神だね
この身に宿る邪神と同じように
たぶん悪意は無いんだと思う
あるいは純粋な善意なのかもしれない

でも完全は人間には過ぎた物だよ
何でもできるから全てが無価値だ
悪いけどここから出す訳にはいかないね

何でも叶えるというなら
僕を元の体に戻して欲しい所だけど
前回も無理だったし今回も不可能だろうね

この支部に封じられてた邪神達の力だけで
どうにかなるなら苦労してないし

UCを使用し相手の動きを停めつつ
神気によるマヒ攻撃で敵を硬化させて
石化させていこう
虹とは言えない灰色だけど
目の前の邪神の力を削ぐ事はできるだろうから

まあ、この永遠も人間には過ぎたものだし
どうにかする必要があるんだけどね



 北天より来たりて齎す者。
 それは嘗て佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)が邂逅したことのある邪神の一柱であった。
 願いを叶え続ける存在。
 器。
 底の抜けた器が、そこにあった。
 いびつささえ感じさせる白い少女は、猟兵たちの攻撃を一身に受け止め続けていた。
 躱すこともしない。防ごうともしない。 
 ただ、受け入れ続けている。
 だというのに、倒れないのは飲み干してきた邪神たちの数が尋常ではないからだろう。
 蠱毒の最後の一体。

 その強大さは言うまでもない。
「……きっと悪意はないんだろうね」
「あなたの ねがいは なんですか あなたは なにを ねがいますか あなたが のぞむのならば わたしが かなえましょう」
 きっと叶えてみせる。
 叶えることで、あらゆる欠落を埋めようとするだろう。
 もしかしたら、晶が望む男性の身体を取り戻したいという願いすらも叶えてしまうだろう。それができるだけの力を『ノーズワンコスモス09』は獲得してしまっている。
 そして、それが純粋な善意であることも理解できる。

 それは重々承知であった。
 己の内にある邪神もまた停滞の邪神。
 平坦な世界を、平穏なる世界を齎す者。
 停滞の中にしか、それらはない。変わらないこと。終わらないこと。それが美しさを留める最大のものであると知るからこそ。
「でも、完全は人間には過ぎたものだよ。何でもできるから全てが無価値だ」
「それは あなたが きめることです」
「なら、いらないよ。悪いけど、ここから君を出すわけにはいかないね」
 望みは叶えるものだ。
 叶えられるものではない。

 そこに人の不安定さがある。けれど、その不安定を人は愛するのだろう。
 そうだと言えたらいいのだろうけれど、それを覆すのまた人なのだ。
 故に、晶は、その瞳をユーベルコードに輝かせる。
 降りしきるは雪のような邪神の神気の結晶。
 それは、邪神と眷属以外の時間が停滞する神域へと変貌せしめるもの。
 ここになるのは、神域顕現(サイレント・シオファニー)である。
『私の世界へようこそですの』
 身の内にある邪神が微笑む。
 停滞する時間の中で『ノーズワンコスモス09』は我が身を苛む石化すら砕きながら一歩を踏み出す。

「……この子、まさか」
 自分の内に融合した邪神すらも飲み干そうとしているのか。
 石化の神気を砕きながら『ノーズワンコスモス09』はほへみながら、迫ってくる。
 なぜ、そんなことができるのか。
「邪神たちの願いを叶えたエネルギーを消費し続けている……!」
『そういうことですの。私すらも飲み干そうなんて不遜がすぎるですの』
「けど」
『ええ、無理でしょうね。邪神十数体程度飲み干したくらいでは』
 晶は思う。
 確かに己の力も虹とは言えない灰色の力だ。けれど、それでも思うのだ。

「永遠も人間には過ぎたものだよ」
 そこに懸命さはない。
 なら、きっと人の生きる意味は異なってくる。今という一瞬さえも蔑ろにするのならば、永遠に得られぬものであると知る。
 それこそ、美しさから程遠い。
 その器に宿した願いが如何に美しくても――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルクス・アルブス
【ステルク】

……しりあす(ちもじ
いえまぁ、さすがに生きてますが。

戦う前に、ですね?

なにを欲する、と聞かれましたら
ステラさんがわたしの演奏をしっかり聴いてくれることですし、

なにか望みを叶えてくれるというなら、
さくっと骸の海に還ってもらえると助かるんですが!

え、ほら、無駄に|戦わ《シリアスし》なくていいじゃないですか。
そのぶん練乳の節約にもなりますし。

カロリー的には演奏で消費しますけど、練乳代ばかにならないんですよ。

って、ステラさん、なんかしれっと正妻っぽいこと言ってません?
ノインさんに無理なら、ステラさんにも無rアッハイタタカイマス。

デハミンナノシアワセヲネガッテチョウリツサセテイタダキマスネ。


ステラ・タタリクス
【ステルク】
ああ、なるほど
だから貴女様は……いえ、『ノイン』様は戦いを起こしていたのですね
フュンフ・エイル様の孤独を満たすために

でもあの方の隣には|番外《ヌル様》がいて
子を為して家族を作って……
でもあの方は『しあわせ』を、戦いの無い日常を得られなかった

ってああ、ルクス様がシリアスに死んでる!?
ルクス様ー頑張って戦いだから
あれ倒しましょうねー?

残念ながら貴女の空想では私を満たせません
ええ、貴方の得られなかったものこそが私の欲しいもの
無理なのです、貴女では
だから同担拒否もしたくなるのですけどね?
メイド、参ります
【スクロペトゥム・フォルマ】で仕掛けます
せめて最後は自分のしあわせを願ってくださいませ



「あなたの ねがいは なんですか わたしは あなたのそばにいます きっと きっと あなたのそばに います」
 声が響く。
 神気を強引に砕きながら、その身に宿したエネルギーを消費しながら『ノーズワンコスモス09』は己の存在を顕現する。
 その白き少女の身に飲み干された邪神は十数体。
 圧倒的なエネルギーも、尽くが猟兵達によって削がれていた。
 だが、それでも未だ猟兵達、相対する者たちの願いを全て叶えようとするには十分だった。
 願いを叶える邪神。
 満たされるのではなく、満たすことで停滞に堕とす権能。
『ノーズワンコスモス09』は、ただほほえんでいた。

「ああ……だから貴女様は」
 ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)は理解する。
 戦いを呼び起こす者。
 戦いの中にある者。
 戦いに向かう者。
 いずれにしても、それは戦いなくば存在できないものである。
 故に、とステラは思うのだ。
「孤独を満たすために、戦いを起こすのですね」
 此処にはいない。けれど、此処にいる者にたいしてステラは告げる。

「わたしは そばにいます どんなことがあっても どんなわざわいがあっても どんなさいわいがあっても そばにいます」
「ですが、あの方の隣には多くの人びとが在った。でも、あの方は『しあわせ』ではなかった。戦いのない日常は無常そのもの」
 故に、『フュンフ・エイル』は、あの世界からいなくなったのだ。
 なぜ、と問うまでもない。
 己が争いを呼び込むものだからだ。大切な何かを戦火にさらさぬためには、離れるしかない。
 どうしても平和の後に来る争いが宿命付けられているから。

「って、ああ!?」
 ステラは、地面に描かれた血文字を見て驚愕する。
「しりあす」
 ルクス・アルブス(『魔女』に憧れる『出禁勇者(光属性)』・f32689)であった。
 彼女は地面に血文字で、そう記していた。
 ダイイングメッセージである。そういうやつでしたっけ?
「ルクス様、シリアスに死す! 次回! じゃあないんですよ!」
「いえまぁ、流石に生きてますが」
 むくり。
 ルクスは頭を振る。
 こうでもしてシリアスに差し込まないとやってられないのである。そういうもんなのである。

「あなたは なにを ほっしますか」
「ステラさんがわたしの演奏をしっかり聞いてくれますようにー!!」
「ちょ、えっ!?」
 ステラはルクスの言葉に目を見開く。
 いやまて、それは叶えられてるでしょ、と思わないでもなかった。無論、常に強制的にってやつである。
 だがしかし、ルクスは頭を振る。
「そんでもってさくっと骸の海に還ってもらえると助かるんですが!」
「あなたの ねがいは かないます」
「そうなですか? なら、ほら、無理に|戦わ《シリアス》なくてもいいじゃないですか。その分練乳の節約になりますし」
 もう、諸々お財布が限界なのだろう。
 そのうち、代引きじゃないと購入すら危うくなりそうな頻度で注文しているのだ。

 マジで練乳代馬鹿にならんのである。
 他に何か代わりになるものないのであろうか。練乳がないなら、イチャイチャすればいいじゃない。あまーい! というあれのように、口の中がイガイガするくらいのイチャイチャをすれば、シリアスも中和できるのではないだろうか。
 それはそれで、なんていうか、妨げになりそうな気がしないでもない。
「カロリー的には演奏で十分ですが!」
「ですから、あれ倒しましょうね」
 ステラは漸く入り込む余地を見た。
 ルクスの勢いに全部相殺されそうだった。

「残念ながら、貴女の空想では私を満たせません。貴女の願いを叶える力は……貴女が得られず、私が欲するものです。ですから」
 無理なのだ。
 ステラの願いは、『ノーズワンコスモス09』には答えられない。
「貴女ではできないことなのです」
 だから、同担拒否の感情が湧き上がってくるのだ。
「メイド、参ります」
「なんかステラさん、しれっと正妻は自分! みたなこと言ってません?」
 というかーとルクスは思った。
 なんかシリアスに二丁拳銃を構えているが、合わせろってことなのだろうか。
 いやでもほら。
「『ノイン』さんに無理なら、ステラさんにも無……アッハイタタカイマス」
 メチャクチャな重圧を感じてルクスは背筋を伸ばす。
 下手なこと言ったら、後ろから撃たれるやつである。

「デハミンナノシアワセヲネガッテチョウリツサセテイタダキマスネ」
「よろしい。では、せめて最期は自分の幸せを願ってくださいませ」
 ステラはルクスのユーベルコードの輝きを背に受けて、『ノーズワンコスモス09』へと己のユーベルコードの弾丸を叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

廻屋・たろ
少しばかりムキになっちゃったね
癪だけど今回は俺の勝ちだし、切り替えていかないと
なんでも願いを叶えてくれる邪神だってさ、すごいね

一歩踏み出して見える【満ち足りた理想の世界】は…うん、散々暴れたしそうなるよね。
死体と殺意が溢れる戦場。ここにいる誰もが好き勝手殺し合えるいい環境だ
やっぱり見覚えがある。これはヒーローズアースの光景かな、それともここに来てずっと感じてる既視感の場所かもしれない

今日ばっかりはもう十分お腹いっぱいだ
満ち足りるものも限度を過ぎれば苦しいだけだよ
UC【倫落】でフォークを邪神へ突き立て、自らの殺意を邪神に分け与える

お前もただ生まれ持った力と役割を果たしてるだけだろうにね
俺はムカつくよ、好きで持った力と役割でもないのに頭おかしい奴には同類扱いされて、みんなからは爪弾きにされてさ
ずっとそんなのは嫌だし、だからこの光景にも抗うんだ

お前も好き勝手に暴れてみたらどう?
拒否するならお前が吹っ飛ぶだけだし俺はどっちでも構わないけど

正面から殴り合おうぜと挑発しながら、気が済むまで斬り合うよ



 息を整えるように頭の中を整理する。
 我が身にあるのは衝動である。殺人衝動。それは抑えているからこそ、諦観ではないものへと変わるものである。
 あの『類同』とは違う。
 どうしてこんなにもムキになってしまったのか、癪に障る。
 けれど。
「今回は俺の勝ちだ」
 切り替えよう。
 対するは蠱毒を勝ち抜いた邪神である。

 あらゆる願いを叶える器。
 あれだけの余波齎す戦いの中にあって、白い少女『ノーズワンコスモス09』は傷一つ追っていなかった。
 今彼女の体躯に刻まれた傷は全て猟兵達によるものであった。
 穿たれ、切り裂かれ、雷に撃たれ、それでもなお立っている。
 それどころか、ほほえんでさえいる。
 躱すことはない。防ぐことはない。
 攻撃の全てが、相対する者の望み、願いであると思っているのだろう。
「なんでも叶えてくれる邪神だってさ、冗談じゃあなかったんだね」
「わたしは あなたの ほっするところを かなえましょう あなたの そばにいます いつだって どんなときだって かたときも はなれることは ありません」
 その言葉に、たろは頭を振る。
 瞬間、己の一歩を踏み出した世界が変わるのを見た。

 千切れた羽が降り注ぐことによって世界にテクスチャを張り巡らせるように世界が変わっている。
 満ち足りた世界。
 理想とするもの。
 それは『ノーズワンコスモス09』が求めるものではない。あれに、望むだけの力はない。叶えるだけの力はあっても、己の中にある願望は存在しえない。
 如何に十数体の邪神を飲み干しても、それだけは湧き上がらないのだ。
「……うん」
 たろは理解する。
 これが己の理想とする世界。
 死体と殺意とがあふれる戦場。
 此処にいるだれもが好き勝手に殺しあえる。
 誰も咎めない。倫理観など端からない。あるのは、衝動だけだ。
「やっぱり見覚えがある。これはヒーローズアースの光景かな。それとも、ここに来てずっと感じてる既視感の場所なのかな」
「あなたが のぞんだ せかい です あなたは さいわいですか そのこころにやどしたやみをおそれても そのてにしたちからはおそれないことをのぞむのですか」
「……今日ばっかりはもう十分。お腹いっぱいだ」
 苦しいとさえ思った。

 己の腹は満杯が過ぎる。
 満ち足りるものも、限度を過ぎれば苦しく毒そのものだ。
 故に『ノーズワンコスモス09』は蠱毒の最後の一体になったのだろう。満たされ、停滞した邪神達全てを飲み干すだけの器は、その大きさを誇るのではない。
 底が抜けているだけだ。
 故に、たろは踏み出す。

「お前もただ生まれ持った力と役割を果たしているだけだろうにね」
 生まれ持ったものがある。
 捨てることのできないものがある。否定したくてもできないものがある。
 腹立たしい。
 満杯の腹が唸りを上げるようだった。好き好んで手に入れたものではない。得ようと思ったものではない。その役割だって棚上げしたいくらいだ。
 なのに。
 どうして自分はあの『類同』と『同類』に括らねばならないのだ。
 爪弾き者同士だ。
 世界にあぶれた者同士の戦いだ、これは。
「ずっと、そんなのは嫌だし、だからこの光景にも抗うんだ」
 手にしたカトラリー、そのフォークが『ノーズワンコスモス09』に叩き込まれる。
 躱そうともしていない。防ごうともしていない。
 ただ受け入れるだけ。

 やっぱり、と思う。
 自身の殺人衝動を流し込んでも、反応がない。底が抜けた器。
 それが『ノーズワンコスモス09』なのだ。
 故に、たろは笑う。
「お前も好き勝手に暴れてみたらどう?」
「わたしは かなえつづけるだけです わたしに わたしのしょうどうはりかいできない わたしは わたしは そばにありつづけるだけです そのために おそらのはてからやって――」
「だろうね。じゃあ、俺たちは、きっかりここまでだ」
 炸裂する爆発。
 衝動は流し込まれども理解されず、そして受け止められないままに器の空いた底に流れ落ちていく。
 きっとそんなことだろうなと、たろは理解していたのだ。
 故に、最後に笑ったのだ――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月夜・玲
…流石ドラゴンも何とやら
カットスローターズすら…ってこれあんまり擦ると後で怒られそうだから切り替えよっと
後はあいつらが残した厄なネタを処理しないとね
天然な邪神なんかに負けてられない
今は|養殖《疑似》モノの方が、味は安定しているってもんよ!

《RE》IncarnationとBlue Birdを構えて戦闘態勢
【Unite Dual Core】起動
…流石に雷刃を伸ばし過ぎて、施設が壊れたら元も子もないから長さは控えめに!
追尾蒼炎を発射して敵の移動を牽制
施設にダメージがいかないように一瞬だけ雷刃を伸ばし、ノーズワ…長い!
敵に突きを叩き込んで、『串刺し』にしよう

何でも出来るは凄いけど、それじゃつまんない!



 切り替えねばならない。
 今、眼の前にいる敵は邪神。
 それも蠱毒にて残った最後の一体である。
 その厄介さは言うまでもない。
「……さすがドラゴンもなんとやら。『カットスローターズ』すら……って、これあんまり擦ると後で怒られそうだから切り替えよっと」
 切り替えるってそういう意味で?
 月夜・玲(頂の探究者・f01605)は深く、深く頷いた。
 ネタは鮮度ってもんが大事である。そんでもって、一度笑いが取れたから取ってこすりつづけると、それはそれで後で面倒なことになるのだ。
 即ち、こすりすぎてスベるというやつである。
 いやまあ、そういう意味でなくても、こう、その、ね? 危うい表記が続くと絶対怒られるやつなので。

「後はあいつらが遺した厄ネタを処理しないとね」
「あなたは なにを ほっしますか」
 数多の猟兵たちの攻勢を受けて尚、白い少女、蠱毒の邪神『ノーズワンコスモス09』は立っていた。
 全ての攻撃をかわそうともしない。防ごうともしない。
 ただ、そこに存在し続けるだけに彼女は飲み干した数多の邪神たちの力を使う。
「擦ってもスベらないネタとか? あいや、それはそれでなんていうか……どっちにしたって邪神は間に合ってるよ。こっちは|養殖《疑似》だけど! でもさ!」
 玲の瞳がユーベルコードに輝く。
 手にした二振りの模造神器。
 その刀身が輝き、封じられた雷と焔の疑似邪神と融合を果たすのだ。

「天然な邪神なんかに負けてられないんだよね。今は|養殖《疑似》モノのほうが、味は安定しているってもんよ!」
 たゆみない人の歩み。
 それは食料を流通させるための涙ぐましい努力の結晶……って、話が違うな!? そういう話じゃあなかったよね?
「弐神合一プログラム…Unite Dual Core(ユナイトデュアルコア)、略してUDC…起動!」
 玲の手にした模造神器の刀身が雷刃を形成し、『ノーズワンコスモス09』へと叩きつけられる。
 硬い。
 硬すぎる。
「スイカ割りだってもうちょっと、ぱっかーんっていくでしょ!」
 放たれる浄化の蒼き焔は牽制だった。
 だが、それさえも『ノーズワンコスモス09』は躱さない。
 防ぐ素振りすら見せない。
 ただ、ひたすらに。
「あなたの のぞみは なんですか あなたは なにを もとめていますか そのてんちょうのさきに あるものは きっと」
「あーいい、いいよ。そういうのはさ。確かに君はなんでもできるし、何でも叶えられるのかもしれないけれど」
 玲は踏み込む。
 受け止められた雷刃を押し切るように力を込める。
 踏み出す一歩は、唯の一歩ではない。

 僅かな距離を稼いだだけにすぎないかもしれない。
 けれど、その一歩がなければ何も為し得ることはないのだ。故に、玲はどんなにこの一歩が僅かな道程の、それこそ進んだとも言えぬ結果出会っても積み重ねていく。
 知らぬことを知っていくこと。
「なんでも与えられるなんて、それじゃつまんない!」
 言い切った彼女は、その己の手で生み出した疑似邪神の力を奮って、真の邪神を斬りつけるのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロニ・グィー
アドリブ・連携・絡み歓迎!

●全て満ち足りた理想の世界の終わりに
んもー
わかってないなー
いいかい?あの子たちはただ幸せになりたいだけならキミの助けなんていらないんだよ
なんなら頭の幸せを感じる部分に電極でも刺しちゃえばいいんだからね
でもあの子たちがそうしないのはね…
無限に幸せになり続けたいし、永遠に幸せになり続けたいからなんだ
そんなだから楽園にもいられなくなっちゃうんだよ
キミにはそれは与えられない
だからあの子たちはキミを否定して、拒絶するんだよ
度し難いよねー?愚かだよねー?

だからキミは…やっぱり箱の中でしまわれてる方が幸せだったんだと思うよ
ボクはそんなのごめんだけど!とUC【神撃】でドーーーンッ!!



「んもーわかってないなー」
 ロニ・グィー(神のバーバリアン・f19016)は呆れ果てていた。
 人間の願望をすべて叶える存在。 
 それが『ノーズワンコスモス09』である。
 彼女はあらゆる願いを叶える。争うことなく十数体の邪神を飲み干したのは、そのためである。邪神の望み、願い、欲望すら満たして停滞させることで彼女はこの蠱毒を制したのだ。
 そして、それすらも彼女にとっては意味のないことだった。
 満たすこと。
 願いを叶えること。
 望みを知ること。
 それこそが、器の底が抜けた彼女という存在の目的であったからだ。
「あなたは なにを ほっしますか あらゆるものをほっするのならば きっとあなたは ほっするところのものを すべて てにいれているでしょう」
「いいかい? あの子達はただ幸せになりたいだけなら、キミの助けなんていらないんだよ」
 ロニはため息を吐き出す。
 わかっていない。
 眼の前の『ノーズワンコスモス09』は本当に何もわかっていないのだ。
 望みというものが、願いというものが、欲望というものが。

 多くの他者のそれを呑み込んでなお、理解できないのだ。
「なんなら頭の幸せを感じる部分に電極でも刺しちゃえばいいんだからね。でも、あの子達がそうしないのはね……」
 ロニは思う。
 楽園を追放された人類のことを。
 正しく理解したいと思えばこそ、正しさは遠のいていくように。
 自分自身の言葉で語るのならば、ロニは告げる。
「無限に幸せになり続けたいし、永遠に幸せになりたいだけなんだ。そんなだから楽園にもいられなくなっちゃうんだよ」
「わたしは それを あたえることができます ずっと ずっと ずっと そばにおりますから そのきずも そのいたみも そのくるしみも すべて わたしが」
「無理だよ。キミにはそれは与えられない」
 自分だって与えられない。
 だから、否定されるし、拒絶される。
 だが、それがなくては肯定されることもなく、受け入れることもない。

「人って度し難いよねー? 愚かだよねー?」
 どうして、こんなにも簡単なことを理解してもらえないのだろう。
 自分の真意も伝わらない。
 人の言葉では、それを伝える概念が生まれない。
 何処まで言っても、ヒトはヒトだ。
 そして、その一括りの中にあってさえ、全く同一の、それこそ全てが同じものなど存在し得ない。
 他者という存在を得て個を自覚する愚かさ。
 他者を個としてみることすらできない愚かさ。
「だからキミは……やっぱり箱の中でしまわれてるほうが幸せだったんだと思うよ。底の抜けた器に何を注いだって一緒さ。最初から虚だけしかないんだから」
 だから、とロニは拳を振るう。
 自分はゴメンだけど、それでもまだ理性ある方だから、と彼は神撃(ゴッドブロー)をかわそうともせず、さりとて防ごうともしない『ノーズワンコスモス09』へと叩き込むのだった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

臥待・夏報
邪神たちの大層な欲望をたらふく食べた後なんだろ?
そのうえ人間までつまみ食いするのは止めなよ
僕ら、肉食いたいとか酒飲みたいとか風呂入って寝たいとか、そういう下らない|欲望《こと》しか考えてないんだから

……その欲望にも善悪や優劣はないって話?
参ったなあ

願いって言われてもね
こんな世界、こんな職場、いっそ派手に吹き飛んじゃえばいいのに……とか、昔は思ってたかも
いや、今でも思ってるかも?
何にせよぜんぶ無意味な感傷だ
【月面下にして炎天下】

全力の呪詛の炎はあらゆる感傷を焼き尽くす
君が糧にする「願い」も、だ
願いってのは欲望の感傷的な表現だろ?

ああ……
帰ったら肉食って酒飲んで風呂入って寝て……
それだけで、いいや



 打ち込まれた一撃が施設を揺らす。
 蠱毒の邪神『ノーズワンコスモス09』は立ち上がる。
 白い少女。
 その体躯は血に濡れ、雷に撃たれて焼き焦げるようであった。
 だが、ほほえみを絶やすことはなかった。
 ほほえんでいる。
 猟兵の攻撃を前にして躱す素振りもなく、防ぐような動きさしなかった。
 全てを受け入れる器。
 底の抜けた器にあるのは、満たされたという欲望でも願いでも、なんでもなかった。あるのは虚だけだ。
 注いでも、飲み干しても、それでも底には虚しかない。

「あなたは なにを ほっしますか あなたを あなたにしているかつぼうは なんですか そのけつらくを うめましょう」
 ほほえみを前にして臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)は頭を振る。
「邪神たちの大層な欲望をたらふく食べた後なんだろ? そのうえで人間までつまみ食いするのはやめなよ」
 器なれど底の抜けた存在に投げかける言葉であったとしても、それは虚に呼びかけるだけのものだった。
 跳ね返ってくるだけだ。
 それ故に、虚。
「欠落だ渇望だなんて、そんな大層なことに置き換えなくたっていいんだよ。僕ら、肉食いたいとか酒飲みたいとか風呂入って寝たいとか、そういうくだらない|欲望《こと》っしか考えてないんだから」
「わたしは かなえます すべて かなえます どんな ねがいも ほっするところのものも すべて」
「まいったな。欲望に上も下も善悪も優劣もないって、そう感じる類か。理解しているようで無理解じゃあないか、こいつは」
 夏報は、押し問答だと思った。

 どんなに言葉を尽くしても目の前の『ノーズワンコスモス09』は通じない。
 そもそもの成り立ちが違うのだから当然と言えば当然であるかもしれない。そもそもそんなこと期待すらしていない。
「じゃあ仕方ない。語るよ。自分語りみたいでヤなんだけど。こんな世界、こんな職場、いっそ派手に吹き飛んじゃえばいいのに……とか昔は思ってたかも。いや、今でも思ってるかも?」
 ヒトには破滅衝動がある。
 どうしようもないことだ。
 なぜなら、ヒトは死に向かって生きている。
 どんな存在だって、死ぬために生きているのだ。故に、避けられぬものである。その先があると幻視しなければ、その虚しさに押しつぶされてしまうから。
 故に、夏報は思う。

「なんにせよ、全部無意味な感傷だ。自分で自分を傷つけて、その傷を見つめて、また感じ入ってしまうんだ。これが生きている証だってね。そんなのさ」
「あなたの のぞみは いきることならば」
「いーや! なんちゃってね! そんなのばかみたいだ!」
 夏報の瞳がユーベルコードに輝く。
 思い出話じみた感傷の語り。
 自らを苛む感傷は、なんとなく肩を落とすくらいには重たいものであったけれど、それは笑い飛ばせるくらいの重しでしかないのだ。

「願いってのは欲望の感傷的な表現だろ? 全部虚しいけれど、全部無になってしまうし、無二だって理解してる。でも、それでも」
 笑い飛ばせるくらいのものでしかない。
 例えば、月面下にして炎天下(ネバーランド・イン・フレイム)のような熱が場を支配する位、馬鹿げた光景のように。
 熾盛する炎が『ノーズワンコスモス09』の瞳を塗りつぶしていく。

 猟兵たちの重ねた傷が、消耗させたエネルギーが。
 全てが積み重なって、夏報の放つ最高火力の呪詛の炎と共に白き少女を炎の色に染め上げる。
 善悪はない。
 だが、ないまぜになることはない。
 青と赤が混ざりて紫になるのではなく、人の悪性と善性とが揺れ動くことによって生まれる良心の上に立つものさえ、その呪詛の炎は感傷だと吹き飛ばす。

 立ち上る炎は、北天を示す。
 もと来た場所に戻るように灰になった白い少女は、霧散していくほかなかった。
 それを見やり、夏報はつぶやく。
「ああ……帰ったら肉食って酒飲んで風呂入って寝て……それだけで、いいや」
 ささやかとは言わない望み。
 自分で叶えことのできるもの、くだらない感傷。

 じくじくとする何かを見ることなく灰は天に昇っていく。

「あなたの のぞみは かなえ『ました』――」

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年06月25日


挿絵イラスト